(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031740
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】モノオキシゲナーゼ突然変異体並びにその製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/53 20060101AFI20220215BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20220215BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20220215BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220215BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220215BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220215BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220215BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C12N15/53 ZNA
C12N15/10 200Z
C12N9/02
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021186553
(22)【出願日】2021-11-16
(62)【分割の表示】P 2020542065の分割
【原出願日】2018-02-08
(31)【優先権主張番号】201810123656.0
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519153006
【氏名又は名称】アシムケム ラボラトリーズ (ティエンジン) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ASYMCHEM LABORATORIES (TIANJIN) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲージ
(72)【発明者】
【氏名】ル,ジャンピン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,シュエチェン
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ナ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ケジャン
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ユ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】形質転換効率や安定性を向上させ、製薬分野における応用に有利なモノオキシゲナーゼ突然変異体並びにその製造方法及び応用を提供する。
【解決手段】モノオキシゲナーゼ活性を備える突然変異体であって、特定のアミノ酸配列で示されるアミノ酸配列の23~508番目のアミノ酸の、1又は数個のアミノ酸が修飾、置換、欠失または付加されたアミノ酸配列を有する、突然変異体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)、(II)で示されるアミノ酸配列のいずれかを有するモノオキシゲナーゼ突然変異体であって、
(I)SEQ ID NO.1で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列、
(II)SEQ ID NO.1で示されるアミノ酸配列の23~508番目のアミノ酸の、1又は数個のアミノ酸が修飾、置換、欠失または付加されたアミノ酸配列(前記置換は、1~34個のアミノ酸が置換されることである。)
前記突然変異体は、モノオキシゲナーゼ活性を備える
ことを特徴とするモノオキシゲナーゼ突然変異体。
【請求項2】
前記置換は、23番目、25番目、47番目、75番目、93番目、106番目、110番目、117番目、137番目、153番目、159番目、166番目、260番目、265番目、284番目、289番目、334番目、359番目、360番目、377番目、380番目、426番目、428番目、435番目、436番目、437番目、439番目、457番目、474番目、479番目、490番目、495番目、500番目または508番目のうちのいずれか1つまたは少なくとも2つのアミノ酸が置換されることであり、
好ましくは、前記突然変異体の突然変異部位は、M23L、M25A、A74D、M75L、A93E、P106R、L110F、M117A、T137R、W153F、R159L、M166L、M260L、A265E、M284I、C289S、C334L、A359E、M360I、M377V、L380F、M426L、M428F、P435L、P435A、F436L、F436Y、F436A、T437S、T437A、T437Y、L439G、L439A、L439S、M457L、A474E、C479V、Q490K、I495F、I495V、I495A、S500IまたはM508Lのうちのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の突然変異体。
【請求項3】
前記置換は、25番目、106番目、159番目、265番目、289番目、377番目、380番目、435番目、436番目、437番目、439番目、474番目、479番目、490番目、495番目または500番目のうちのいずれか1つまたは少なくとも2つのアミノ酸が置換されることであり、
好ましくは、前記突然変異体の突然変異部位は、M25A、P106R、R159L、A265E、C289S、M377V、L380F、P435L、F436Y、T437A、L439S、A474E、C479V、Q490K、I495AまたはS500Iのうちのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせであり、
好ましくは、前記突然変異体の突然変異部位が、M25A、P106R、R159L、A265E、C289S、M377V、L380F、P435L、F436Y、T437A、L439S、A474E、C479V、Q490K、I495AまたはS500Iのうちのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせである場合、前記突然変異体モノオキシゲナーゼの形質転換率は40%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の突然変異体。
【請求項4】
前記置換は、25番目、106番目、265番目、474番目、490番目または500番目のうちのいずれか1つまたは少なくとも2つのアミノ酸が置換されることであり、 好ましくは、前記突然変異体の突然変異部位は、M25A、P106R、A265E、A474E、Q490KまたはS500I のうちのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせであり、
好ましくは、前記突然変異体の突然変異部位が、M25A、P106R、A265E、A474E、Q490KまたはS500Iのうちのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせである場合、前記突然変異体モノオキシゲナーゼの形質転換率は48%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の突然変異体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のモノオキシゲナーゼ突然変異体をコードするヌクレオチド配列。
【請求項6】
請求項5に記載のヌクレオチド配列を少なくとも1コピー含むことを特徴とする発現ベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の発現ベクターを含むことを特徴とする宿主細胞。
【請求項8】
(1)請求項1~4のいずれか一項に記載の突然変異体をコードする核酸配列を含むDNA分子を含む組換え宿主細胞を作製するステップと、
(2)前記突然変異体の発現に適した培地で前記宿主細胞をインキュベートするステップと、
(3)ステップ(2)で前記宿主細胞によって発現された前記突然変異体のポリペプチドを前記培地から回収するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の突然変異体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の突然変異体のポリペプチドを含む組成物であって、
前記組成物は、乾燥粉末、錠剤または液体のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであるのが好ましいことを特徴とする組成物。
【請求項10】
キラルな薬物の製造における請求項1~4のいずれか一項に記載の突然変異体の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学の技術分野に関し、特に、モノオキシゲナーゼ突然変異体並びにその製造方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
キラルスルホキシドは、多くの重要な生理活性分子の構造単位として、自然界に広く存在しており、天然物やキラルな薬物を合成するための重要な中間体である。キラルスルホキシドはほとんど1つ又は複数のキラル中心を有する。異なるキラルな薬物は薬理活性、代謝プロセス、代謝速率及び毒性に差が大きく、通常、一方のエナンチオマーは有効であるが、もう一方のエナンチオマーは効果が薄いか無効であり、さらに有毒である場合もある。このため、如何にしてキラル中心を含む化合物を効率的かつ立体選択的に構築するかは、医薬品の研究開発において非常に重要である。
【0003】
Baeyer Villigerモノオキシゲナーゼ(BVMOs)は、フラビン系モノオキシゲナーゼであり、通常、鎖状および環状のケトンを立体選択的に酸化し、対応するエステルまたはラクトンを生成するために使用され、硫黄、窒素およびリンの求電子酸化反応を触媒することもでき、同時に、BVMOsは、ケトンおよびホウ素の求核酸化反応を触媒することもできる。シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMOs)は、最初に発見されたBVMOファミリーのメンバーである。CN105695425Aには、CHMOsがキラルな薬物の合成に広く応用され、硫黄含有キラル前駆体の酸化を触媒することができ、キラルな薬物であるモダフィニルおよびオメプラゾールの合成に使用され、一方、既存のCHMOsは酵素活性が低く、安定性が悪く、可溶性発現が劣り、選択性が低く、大量の酵素の添加量が多く、後処理が困難となることが開示された。
【0004】
単胞菌Brachymonas petroleovorans由来のモノオキシゲナーゼCHMOは、チオエーテル化合物の形質転換を比較的高い選択性で触媒することができるが、しかし、その活性が低く、安定性が悪く、大腸菌における可溶性発現が劣り、反応時に大量の酵素が添加される。
【0005】
CN107384880Aには、フラビンモノオキシゲナーゼ突然変異体及びその製造方法において、エラープローンPCR技術により、野生型フラビンモノオキシゲナーゼをランダムに突然変異させ、酵素の比活性が野生型フラビンモノオキシゲナーゼの酵素の比活性よりも35%高められたフラビンモノオキシゲナーゼ突然変異体を得たことが開示された。しかし、単に酵素の比活性を向上させただけであり、モノオキシゲナーゼの安定性、可溶性発現、選択性および酵素の使用量には寄与しなかった。
【0006】
いくつかのCHMOsは商業的に応用されているが、CHMOsは、可溶性発現が劣り、酵素活性が低く、酵素安定性が悪く、選択性が高くないなどの問題が一般的に存在している。一般的には、野生型酵素を、指向進化の手段により、酵素の様々な性質を向上させるように改良することで、生産に応用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の欠陥および実際のニーズを考慮して、本発明は、形質転換効率や安定性を向上させ、製薬分野における応用に有利なモノオキシゲナーゼ突然変異体並びにその製造方法及び応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0009】
第1形態によれば、本発明は、(I)、(II)で示されるアミノ酸配列のいずれかを有し、モノオキシゲナーゼ活性を備えるモノオキシゲナーゼ突然変異体を提供する。
【0010】
(I)SEQ ID NO.1で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列、
(II)SEQ ID NO.1で示されるアミノ酸配列の23~508番目のアミノ酸の、1又は数個のアミノ酸が修飾、置換、欠失または付加されたアミノ酸配列(前記置換は、1~34個のアミノ酸が置換されることである。)
本発明では、本発明者らは、23~508番目のアミノ酸のうち複数の異なる部位の突然変異を設計することで、モノオキシゲナーゼの性質を調べた結果、これらの部位の突然変異は、モノオキシゲナーゼの活性、安定性、可溶性発現、選択性を向上させることができるとともに、酵素の使用量を減らすことができることを見出した。
【0011】
本発明において、前記SEQ ID NO.1で示されるアミノ酸配列は以下の通りである。
【0012】
本発明の他の実施例において、モノオキシゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、モノオキシゲナーゼのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を示した配列を有し、かつモノオキシゲナーゼ活性を備える。
【0013】
本発明のいくつかの実施例において、モノオキシゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、モノオキシゲナーゼのアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を示した配列を有し、かつモノオキシゲナーゼ活性を備える。
【0014】
本発明のいくつかの実施例において、モノオキシゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、モノオキシゲナーゼのアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を示した配列を有し、モノオキシゲナーゼ活性を備える。
【0015】
本発明のいくつかの実施例において、モノオキシゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、モノオキシゲナーゼのアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を示した配列を有し、モノオキシゲナーゼ活性を備える。
【0016】
本発明において、前記修飾は、アミド化、リン酸化、メチル化、アセチル化、ユビキチン化、グリコシル化またはカルボニル化のうちのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0017】
前記置換は、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個または34個が置換されることであってもよい。
【0018】
本発明において、前記モノオキシゲナーゼ突然変異体は、チオエーテル化合物の形質転換を触媒することができ、前記チオエーテル化合物は
【0019】
【化1】
(ただし、R1およびR2は、それぞれ独立して、C1~C8アルキル基、C5~C10シクロアルキル基、C5~C10アリール基若しくはC5~C10ヘテロアリール基であるか、又は、R1およびR2は、カルボニル基の炭素と共にC5~C10ヘテロシクリル基、C5~C10カルボシクリル基若しくはC5~C10ヘテロアリール基を形成し、前記C5~C10ヘテロシクリル基およびC5~C10ヘテロアリール基におけるヘテロ原子は、それぞれ独立して、窒素、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種であり、前記C5~C10アリール基におけるアリール基、C5~C10ヘテロアリール基におけるヘテロアリール基、C5~C10カルボシクリル基におけるカルボシクリル基、またはC5~C10ヘテロシクリル基におけるヘテロシクリル基は、それぞれ独立して、非置換であるか、又は、ハロゲン、アルコキシ基若しくはアルキル基の少なくとも1つによって置換される)であり、好ましくは、前記チオエーテル化合物は式Iで示される。
【0020】
具体的な反応式は以下の通りである。
【0021】
【0022】
本発明によれば、前記置換は、23番目、25番目、47番目、75番目、93番目、106番目、110番目、117番目、137番目、153番目、159番目、166番目、260番目、265番目、284番目、289番目、334番目、359番目、360番目、377番目、380番目、426番目、428番目、435番目、436番目、437番目、439番目、457番目、474番目、479番目、490番目、495番目、500番目または508番目のうちのいずれか1つまたは少なくとも2つのアミノ酸が置換されることである。
【0023】
本発明によれば、前記突然変異体の突然変異部位は、M23L、M25A、A74D、M75L、A93E、P106R、L110F、M117A、T137R、W153F、R159L、M166L、M260L、A265E、M284I、C289S、C334L、A359E、M360I、M377V、L380F、M426L、M428F、P435L、P435A、F436L、F436Y、F436A、T437S、T437A、T437Y、L439G、L439A、L439S、M457L、A474E、C479V、Q490K、I495F、I495V、I495A、S500IまたはM508Lのうちのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせである。
【0024】
本発明において、本発明者らは、さらに実験検証することにより、これら43個の部位の突然変異は、モノオキシゲナーゼの性質をさらに向上させることができ、そのうち、25番目、106番目、159番目、265番目、289番目、377番目、380番目、435番目、436番目、437番目、439番目、474番目、479番目、490番目、495番目または500番目の突然変異は、モノオキシゲナーゼの触媒活性、形質転換率およびイソプロパノールに対する耐性を大幅に向上させることができる一方、他の部位の突然変異は、モノオキシゲナーゼの可溶性発現および選択性を大幅に向上させることができることを見出した。
【0025】
本発明によれば、前記置換は、25番目、106番目、159番目、265番目、289番目、377番目、380番目、435番目、436番目、437番目、439番目、474番目、479番目、490番目、495番目または500番目のうちのいずれか1つまたは少なくとも2つのアミノ酸が置換されることである。
【0026】
本発明によれば、前記突然変異体の突然変異部位は、M25A、P106R、R159L、A265E、C289S、M377V、L380F、P435L、F436Y、T437A、L439S、A474E、C479V、Q490K、I495AまたはS500Iのうちのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせである。
【0027】
本発明によれば、前記突然変異体の突然変異部位が、M25A、P106R、R159L、A265E、C289S、M377V、L380F、P435L、F436Y、T437A、L439S、A474E、C479V、Q490K、I495AまたはS500Iのうちのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせである場合、前記突然変異体モノオキシゲナーゼの形質転換率は40%以上である。
【0028】
本発明によれば、前記置換は、25番目、106番目、265番目、474番目、490番目または500番目のうちのいずれか1つまたは少なくとも2つのアミノ酸が置換されることである。
【0029】
本発明によれば、前記突然変異体の突然変異部位は、M25A、P106R、A265E、A474E、Q490KまたはS500Iのうちのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせである。
【0030】
本発明によれば、前記突然変異体の突然変異部位が、M25A、P106R、A265E、A474E、Q490KまたはS500Iのうちのいずれか1つまたは少なくとも2つの組み合わせである場合、前記突然変異体モノオキシゲナーゼの形質転換率は48%以上である。
【0031】
本発明において、本発明者らは、さらなる調べにより、S500I-A265E-M25A、S500I-A265E-M25A-Q490K、S500I-A265E-M25A-A474E-P106R、S500I-A265E-M25A-Q490K-P106RおよびS500I-A265E-M25A-A474E-Q490Kの5つの突然変異体は、収率が最も高く、86%以上に達し、イソプロパノールにおける酵素の残存活性が60%以上に達し、形質転換率が90%以上に達することを見出した。
【0032】
第2形態によれば、本発明は、第1形態に記載のモノオキシゲナーゼ突然変異体をコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0033】
第3形態によれば、本発明は、第2形態に記載のヌクレオチド配列を少なくとも1コピー含む発現ベクターを提供する。
【0034】
第4形態によれば、本発明は、第3形態に記載の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0035】
第5形態によれば、本発明は、
(1)第1形態に記載の突然変異体をコードする核酸配列を含むDNA分子を含む組換え宿主細胞を作製するステップと、
(2)前記突然変異体の発現に適した培地で前記宿主細胞をインキュベートするステップと、
(3)ステップ(2)で前記宿主細胞によって発現された前記突然変異体のポリペプチドを前記培地から回収するステップと、
を含む第1形態に記載の突然変異体の製造方法を提供する。
【0036】
第6形態によれば、本発明は、第1形態に記載の突然変異体のポリペプチドを含む組成物を提供する。
【0037】
本発明によれば、前記組成物は、乾燥粉末、錠剤または液体のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせである。
【0038】
第七形態によれば、本発明は、キラルな薬物の製造における第1形態に記載の突然変異体の応用を提供する。
【発明の効果】
【0039】
従来技術に比べ、本発明は以下の有益な効果を有する
(1)本発明では、23~508番目のアミノ酸の複数の異なる部位における突然変異を設計することで、これらの突然変異体は、モノオキシゲナーゼの活性、安定性、可溶性発現、選択性を向上させたとともに、モノオキシゲナーゼの使用量を減らすことができることを見出した。
【0040】
(2)本発明では、検証により、元のモノオキシゲナーゼに基づいて、M25A、P106R、R159L、A265E、C289S、M377V、L380F、A474E、C479V、Q490K、I495AおよびS500Iの12個の部位を単独に突然変異させることで、モノオキシゲナーゼの活性を向上させることができ、また、これら12個の部位の突然変異を組み合わせて得られる突然変異体のうち、S500I-A265E-M25A突然変異体、S500I-A265E-M25A-Q490K突然変異体、S500I-A265E-M25A-A474E-P106R突然変異体、S500I-A265E-M25A-Q490K-P106R突然変異体およびS500I-A265E-M25A-A474E-Q490K突然変異体の5つの突然変異体は、収率が最も高く、86%以上に達し、イソプロパノールにおける酵素の残存活性が60%以上に達し、形質転換率が90%以上に達することを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明が採用する技術的手段及びその効果をより詳しく説明するために、以下、具体的な実施形態によって本発明の技術的構成をさらに説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
【0042】
本発明は、遺伝子工学および分子生物学の分野で使用される通常の技術および方法を使用し、当業者が知っている定義および方法は一般的な参照文献によって提供される。ただし、当業者は、本発明の具体的な実施例に限定されることなく、本発明に記載された技術的構成に基づいて、本分野の他の通常の方法、実験プロトコルおよび試薬を使用することができる。
【0043】
実施例において具体的な技術または条件が示されていない場合、本分野の文献に記載された技術または条件に従うか、又は、製品仕様書に従うものとする。使用される試薬または機器は生産メーカーが明記されていない場合、正規の市販ルートで購入できる通常の製品であるものとする。
【0044】
実施例1 単一部位突然変異(M25A)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
モノオキシゲナーゼ突然変異体遺伝子の構築:
単胞菌Brachymonas petroleovorans由来のモノオキシゲナーゼCHMO(そのアミノ酸配列がSEQ ID NO.1であり、それをコードするヌクレオチド配列がSEQ ID NO.2である)の活性、安定性、可溶性発現、選択性を向上させ、酵素の使用量を減らすために、M25A部位をそれぞれ突然変異させ、具体的なステップは下記の通りである。
【0045】
前記SEQ ID NO.2で示されるヌクレオチド配列は、以下の通りである。
【0046】
(1)突然変異の導入:SEQ ID NO.2で示されるヌクレオチドに基づいてプライマーを設計し、M25A部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0047】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.3):gccggttttggcggcatgtatgcgctgcacaagc;
リバースプライマー(SEQ ID NO.4):gcttgtgcagcgcatacatgccgccaaaaccggc;
プライマーと鋳型プラスミドを混合した後、ハイフィデリティTaqポリメラーゼKOD-Plusを加え、フルプラスミドPCR増幅を行い、PCR終了後にPCR産物を電気泳動によって検出し、前記PCR増幅システムは以下の通りである。
【0048】
【0049】
(2)形質転換:Dpn I酵素を加え、鋳型を消化し、大腸菌コンピテントBL21(DE3)に形質転換させ、37℃で一晩培養し、モノクローナル抗体を選び試験管に入れた。
【0050】
(3)発現誘導:試験管から1.5Lの振とうフラスコに接種し、37℃で培養してOD600が1になると、培養温度を25℃に下げ、終濃度が0.1mMのIPTGを加え、16h発現誘導した。
【0051】
(4)反応の検証:10mLの反応瓶に(3-クロロベンジル)ジメチルスルフィド40mgを基質として加え、そして0.1MのTris-HCl 9.0、イソプロパノール20mg、NADP+ 0.4mg、アルコールデヒドロゲナーゼ4mgをそれぞれ加え、それからモノオキシゲナーゼCHMO(0.1wt)4mgを加え、十分に混合し、総体積が1mLであり、50℃で200回転数のシェーカーにて16時間反応した。
【0052】
実施例2 単一部位突然変異(P106R)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
P106Rに対して部位特異的突然変異を行い、具体的なステップは以下の通りである。
【0053】
突然変異の導入:P106R部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0054】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.5):cgtctggatttacgccgtgacattcagctgaac;
リバースプライマー(SEQ ID NO.6):gttcagctgaatgtcacggcgtaaatccagacg;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0055】
実施例3 単一部位突然変異(R159L)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:R159L部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0056】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.7):cgaacatcccgggccttgagtcttttcaagg;
リバースプライマー(SEQ ID NO.8):ccttgaaaagactcaaggcccgggatgttcg;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0057】
実施例4 単一部位突然変異(A265E)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:A265E部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0058】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.9):gagcgttagcgaggaagaacgccagcgtg;
リバースプライマー(SEQ ID NO.10):cacgctggcgttcttcctcgctaacgctc;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0059】
実施例5 単一部位突然変異(C289S)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:C289S部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0060】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.11):tttactatatgtttggcacctttagcgatatcgccacag;
リバースプライマー(SEQ ID NO.12):ctgtggcgatatcgctaaaggtgccaaacatatagtaaa;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0061】
実施例6 単一部位突然変異(M377V)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:M377V部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0062】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.13):ggagcatgaactggacgtgctgattctggcaac;
リバースプライマー(SEQ ID NO.14):gttgccagaatcagcacgtccagttcatgctcc;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0063】
実施例7 単一部位突然変異(L380F)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:L380F部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0064】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.15):agcatgaactggacatgctgattttcgcaaccggctac;
リバースプライマー(SEQ ID NO.16):gtagccggttgcgaaaatcagcatgtccagttcatgct;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0065】
実施例8 単一部位突然変異(P435L)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:P435L部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0066】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.17):gggccctaacggcctgttcaccaatctgc;
リバースプライマー(SEQ ID NO.18):gcagattggtgaacaggccgttagggccc;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0067】
実施例9 単一部位突然変異(F436Y)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:F436Y部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0068】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.19):gggccctaacggcccgtataccaatctgccg;
リバースプライマー(SEQ ID NO.20):cggcagattggtatacgggccgttagggccc;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0069】
実施例10 単一部位突然変異(T437A)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:T437A部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0070】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.21):taacggcccgttcgccaatctgccgcc;
リバースプライマー(SEQ ID NO.22):ggcggcagattggcgaacgggccgtta; 残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0071】
実施例11 単一部位突然変異(L439S)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:L439S部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0072】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.23):cctaacggcccgttcaccaattcgccgccgagta;
リバースプライマー(SEQ ID NO.24):tactcggcggcgaattggtgaacgggccgttagg;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0073】
実施例12 単一部位突然変異(A474E)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:A474E部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0074】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.25):gcgatgccgaagatgagtggggtcgtacctg;
リバースプライマー(SEQ ID NO.26):caggtacgaccccactcatcttcggcatcgc;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0075】
実施例13 単一部位突然変異(C479V)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:C479V部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0076】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.27):gcctggggtcgtaccgttgcagagattgccga;
リバースプライマー(SEQ ID NO.28):tcggcaatctctgcaacggtacgaccccaggc;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0077】
実施例14 単一部位突然変異(Q490K)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:Q490K部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0078】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.29):agaccctgttcggcaaggtggaaagctgg;
リバースプライマー(SEQ ID NO.30):ccagctttccaccttgccgaacagggtct;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0079】
実施例15 単一部位突然変異(I495A)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:I495A部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0080】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.31):ccaggtggaaagctgggcctttggcgcaaacagc;
リバースプライマー(SEQ ID NO.32):gctgtttgcgccaaaggcccagctttccacctgg;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0081】
実施例16 単一部位突然変異(S500I)したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:S500I部位が含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、前記フォワードとリバースのプライマーは以下の通りである。
【0082】
フォワードプライマー(SEQ ID NO.33):gctggatctttggcgcaaacatcccgggtaaga;
リバースプライマー(SEQ ID NO.34):tcttacccgggatgtttgcgccaaagatccagc;
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0083】
形質転換率の検測
反応サンプルシステムにアセトニトリル3mLを加え、十分に混合した後5mLのEPチューブに入れ、12000回転数で3分間遠心分離し、上清を100μL取って試薬ボトルに入れ、90%のアセトニトリル900μLを加え、HPLC検測を行い、検測波長が210nmであり、その結果を表1に示す。
【0084】
安定性の検測
質量が4mgのモノオキシゲナーゼSEQ ID NO.1を2つ取り、一つに対して終濃度が10%であるイソプロパノールを加え30℃で1h放置し、もう一つに対してイソプロパノールを加えずに30℃で1h放置し、そして以下のシステムに従って反応した。
【0085】
10mLの反応瓶に(3-クロロベンジル)ジメチルスルフィド40mgを基質として加え、そして0.1MのTris-HCl9.0、イソプロパノール20mg、NADP+ 0.4mg、アルコールデヒドロゲナーゼ4mgをそれぞれ加え、それからモノオキシゲナーゼCHMO 4mgを加え、十分に混合し、総体積が1mLであり、50℃で200回転数のシェーカーにて16時間反応した。反応サンプルシステムにアセトニトリル3mLを加え、十分に混合した後5mLのEPチューブに入れ、12000回転数で3分間遠心分離した。上清を100μL取って試薬ボトルに入れ、90%のアセトニトリル900μLを加え、HPLC検測を行い、検測波長が210nmであった。
【0086】
突然変異体の安定性は、イソプロパノールにて保温したモノオキシゲナーゼの形質転換率がイソプロパノールなしで保温したモノオキシゲナーゼの形質転換率に対して占めるパーセンテージとして表され、その結果を表1に示す。
【0087】
【0088】
表1から分かるように、単一部位突然変異体の形質転換効果が親株に比べて向上したが、望ましい効果を達成しておらず、単一部位突然変異体のうち実施例4(A265E)、実施例8(A474E)、実施例10(A490K)のイソプロパノールにおける残存活性が60%以上に向上された。一般的には、単一部位突然変異した突然変異体は親株に比べて特性に大きな差が生じにくく、突然変異部位の組み合わせによってより優れた突然変異体を得ることができる。
【0089】
実施例17 単一部位突然変異したモノオキシゲナーゼ突然変異体
突然変異の導入:その他の23個の部位(M23L、A74D、M75L、A93E、L110F、M117A、T137R、W153F、M166L、M260L、M284I、C334L、A359E、M360I、M426L、M428F、P435A、F436L、F436A、T437S、T437Y、L439G、L439A、M457L、I495F、I495VまたはM508L)がそれぞれ含まれるフォワードとリバースのプライマーを設計し、具体的なプライマーを下記の表2に示す。
【0090】
【0091】
残りの方法及びステップは、実施例1と同様である。
【0092】
活性の検証
培養した菌株を超音波破砕し、上清及び沈殿物中のタンパク質の発現量を検出し、その結果を表3に示す。
【0093】
【0094】
表3から分かるように、これらの部位はモノオキシゲナーゼの形質転換率を向上させなかったが、モノオキシゲナーゼの可溶性発現を高めることができ、特に、A74D、M153Fは上清中の発現量を大幅に高めた。
【0095】
実施例18 マルチ部位突然変異したモノオキシゲナーゼ突然変異体
DNA shuffling方法により突然変異部位をランダムに組み換え、突然変異ライブラを作成し、その後スクリーニングし、マルチ部位突然変異したモノオキシゲナーゼ突然変異体を調製した。具体的なステップは以下の通りである。
【0096】
(1)PCRによりM25A、P106R、A265E、M377V、A474E、C479V、Q490K、I495AおよびS500I突然変異部位を持つ相同遺伝子を得て、PCR産物を精製した後、これらの遺伝子を等モル量で混合し、そしてヌクレアーゼIによりランダムな断片になるように消化し、これらのランダムな断片は、ライブラリーを形成し、お互いにプライマー及び鋳型としてPCR増幅を行い、一方の遺伝子コピー断片を他方の遺伝子コピーのプライマーとした場合に、鋳型交換及び遺伝子組換えが起こり、前記N-PCRの反応システムは以下の通りである。
【0097】
【0098】
(2)形質転換及びスクリーニング:調製した産物を大腸菌に形質転換し、培養した。
【0099】
(3)酵素溶液の調製:96ウェルプレートにて遠心分離し、上清の培地を除去し、ウェルごとに200μLの酵素加水分解反応液(リゾチーム2mg/mL、ポリミキシン0.5mg/mL、pH=7.0)を加え、37℃で3h保温破砕した。
【0100】
(4)ハイスループットスクリーニング:250μLの酵素活性測定用反応システム:基質である(3-クロロベンジル)ジメチルスルフィドの終濃度が2mM、NADPHの終濃度が0.3mMであり、破砕後の酵素溶液の添加量が100μLであり、pH=9.0、温度30℃でスクリーニングして得られた突然変異体を振とうフラスコにて培養し、それから増幅反応を行った。
【0101】
(5)誘導発現:25℃で、0.1mM IPTGにより一晩誘導した。
【0102】
(6)反応の検証:10mLの反応容器に基質40mgを加え、そして0.1MのTris-HCl9.0、イソプロパノール20mg、NADP+ 0.4mg、アルコールデヒドロゲナーゼ4mgをそれぞれ加え、それからモノオキシゲナーゼCHMO(0.1wt)4mgを加え、十分に混合し、総体積が1mLであり、50℃で200回転数のシェーカーにて16時間反応した。
【0103】
形質転換率の検測
反応サンプルシステムにアセトニトリル3mLを加え、十分に混合した後5mLのEPチューブに入れ、12000回転数で3分間遠心分離し、上清を100μL取って試薬ボトルに入れ、90%のアセトニトリル900μLを加え、HPLC検測を行い、検測波長が210nmであり、その結果を表2に示す。
【0104】
安定性の検測
質量が4mgのモノオキシゲナーゼSEQ ID NO.1を2つ取り、一つに対して終濃度が10%のイソプロパノールを加え30℃で1h放置し、もう一つに対してイソプロパノールを加えずに30℃で1h放置し、そして以下のシステムに従って反応した。
【0105】
10mLの反応容器に基質40mgを加え、そして0.1MのTris-HCl9.0、イソプロパノール20mg、NADP+ 0.4mg、アルコールデヒドロゲナーゼ4mgをそれぞれ加え、それからモノオキシゲナーゼCHMO 4mgを加え、十分に混合し、総体積が1mLであり、50℃で200回転数のシェーカーにて16時間反応した。反応サンプルシステムにアセトニトリル3mLを加え、十分に混合した後5mLのEPチューブに入れ、12000回転数で3分間遠心分離した。上清を100μL取って試薬ボトルに入れ、90%のアセトニトリル900μLを加え、HPLC検測を行い、検測波長が210nmであった。
【0106】
突然変異体の安定性は、イソプロパノールにて保温したモノオキシゲナーゼの形質転換率がイソプロパノールなしで保温したモノオキシゲナーゼの形質転換率に対して占めるパーセンテージとして表され、その結果を表4に示す。
【0107】
【0108】
表4から分かるように、単一部位突然変異に比べると、マルチ部位突然変異体はほとんど形質転換効果がさらに向上され、一部は形質転換効果が向上しなかったが、安定性が向上した。これから、マルチ部位突然変異はモノオキシゲナーゼの性質を一段と向上させることが分かる。マルチ部位突然変異体のうち、S500I-A265E-M25A突然変異体、S500I-A265E-M25A-A474E突然変異体、S500I-A265E-M25A-Q490K突然変異体、S500I-A265E-M25A-A474E-P106R突然変異体、S500I-A265E-M25A-Q490K-P106R突然変異体およびS500I-A265E-M25A-A474E-Q490K突然変異体は、形質転換率が90%以上に達し、イソプロパノールにおける残存活性が60%以上に達し、これら6つの突然変異体の増幅反応効果がさらに検証された。
【0109】
実施例19 マルチ部位突然変異体の増幅反応の検証
調製したS500I-A265E-M25A突然変異体、S500I-A265E-M25A-A474E突然変異体、S500I-A265E-M25A-Q490K突然変異体、S500I-A265E-M25A-A474E-P106R突然変異体、S500I-A265E-M25A-Q490K-P106R突然変異体およびS500I-A265E-M25A-A474E-Q490K突然変異体の収率をさらに検証し、具体的なステップは以下の通りである。
【0110】
(1)250mLの反応容器に(3-クロロベンジル)ジメチルスルフィド1gを基質として加え、そして0.1MのTris-HCl9.0、イソプロパノール500mg、NADP+ 10mg、アルコールデヒドロゲナーゼ100mgをそれぞれ加え、それからモノオキシゲナーゼCHMO 100mgを加え、十分に混合し、総体積が25mLであり、50℃で200回転数のシェーカーにて16時間反応した。
【0111】
(2)反応サンプルシステムから1mLサンプリングし、アセトニトリル3mlを加え、十分に混合した後5mlのEPチューブに入れ、12000回転数で3分間遠心分離した。上清を100μL取って試薬ボトルに入れ、90%のアセトニトリル900μLを加え、HPLC検測を行い、検測波長が210nmであった。
【0112】
(3)反応完了後、酢酸エチル50mLを加え、3回抽出し、抽出した有機相を合わせて後硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、回転蒸発乾固させ、計量し、その結果を表5に示す。
【0113】
【0114】
表5から分かるように、これら6つの突然変異体は、収率がいずれも86%以上に達し、e.e.値がいずれも99%であり、特にSEQ ID NO.5(S500I-A265E-M25A-Q490K)突然変異体は、収率が90.2%に達し、e.e.値が99%であった。これから、マルチ部位突然変異は優れた効果を達成したことが分かる。
【0115】
以上のように、本発明では、元のモノオキシゲナーゼに基づいて、M25A、P106R、R159L、A265E、C289S、M377V、L380F、A474E、C479V、Q490K、I495AおよびS500Iの12個の部位を単独に突然変異させることで、モノオキシゲナーゼの活性を向上させることができ、これら12個の部位の突然変異を組み合わせた突然変異体のうち、S500I-A265E-M25A突然変異体、S500I-A265E-M25A-Q490K突然変異体、S500I-A265E-M25A-A474E-P106R突然変異体、S500I-A265E-M25A-Q490K-P106R突然変異体およびS500I-A265E-M25A-A474E-Q490K突然変異体の5つの突然変異体は、収率が最も高く、86%以上に達し、イソプロパノールにおける酵素の残存活性が60%以上に達し、形質転換率が90%以上に達したことを検証により発見した。
【0116】
出願人は、本発明では上述した実施例によって本発明の詳細な方法を説明したが、しかし、本発明は上述した詳細な方法に限定されるものではなく、つまり本発明は上述した詳細な方法に従わなければ実施できないことを意味しないと言明する。当業者であれば、本発明のいかなる改善、本発明の製品の様々な原材料の同等の置換、補助成分の追加、具体的な方法の選択などは、いずれも本発明の保護範囲及び開示の範囲内にあることが分かるはずである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-11-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノオキシゲナーゼ活性を備える突然変異体であって、
SEQ ID NO.1で示されるアミノ酸配列の23~508番目のアミノ酸の、1又は数個のアミノ酸が修飾、置換、欠失または付加されたアミノ酸配列を有し、
前記突然変異体の突然変異部位は、S500I、または、S500Iと、M25A、P106R、A265E、M377V、A474E、Q490K、I495A、A74D、M75L、A93E、L110F、M117A、T137R、W153F、R159L、M166L、M260L、M284I、C289S、C334L、A359E、M360I、L380F、M426L、M428F、P435L、P435A、F436L、F436Y、F436A、T437S、T437A、T437Y、L439G、L439A、L439S、M457L、C479V、I495F、I495VまたはM508Lのうちの少なくとも1つとの組み合わせであることを特徴とするモノオキシゲナーゼ突然変異体。
【請求項2】
前記突然変異体の突然変異部位が、S500I、または、S500Iと、M25A、P106R、A265E、M377V、A474E、Q490K、I495A、R159L、C289S、L380F、P435L、F436Y、T437A、L439SまたはC479Vのうちの少なくとも1つとの組み合わせである場合、前記突然変異体モノオキシゲナーゼの形質転換率は40%以上であることを特徴とする請求項1に記載の突然変異体。
【請求項3】
前記突然変異体の突然変異部位が、S500I、または、S500Iと、M25A、P106R、A265E、A474EまたはQ490Kのうちの少なくとも1つとの組み合わせである場合、前記突然変異体モノオキシゲナーゼの形質転換率は48%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の突然変異体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のモノオキシゲナーゼ突然変異体をコードするヌクレオチド。
【請求項5】
請求項4に記載のヌクレオチドを少なくとも1コピー含むことを特徴とする発現ベクター。
【請求項6】
請求項5に記載の発現ベクターを含むことを特徴とする宿主細胞。
【請求項7】
(1)請求項1~3のいずれか一項に記載の突然変異体をコードするDNA分子を含む組換え宿主細胞を作製するステップと、
(2)前記突然変異体の発現に適した培地で前記宿主細胞をインキュベートするステップと、
(3)ステップ(2)で前記宿主細胞によって発現された前記突然変異体のポリペプチドを前記培地から回収するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の突然変異体の製造方法。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の突然変異体のポリペプチドを含む組成物であって、
前記組成物は、乾燥粉末、錠剤または液体のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであるのが好ましいことを特徴とする組成物。
【請求項9】
キラルな薬物の製造における請求項1~3のいずれか一項に記載の突然変異体の使用。
【外国語明細書】