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特開2022-31742望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療のための治療剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031742
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療のための治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220215BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220215BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20220215BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20220215BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220215BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20220215BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220215BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61P35/00
A61P25/00
A61P43/00 111
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
G01N33/53 D
G01N33/53 M
G01N33/53 Y
C07K16/24
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186785
(22)【出願日】2021-11-17
(62)【分割の表示】P 2020016672の分割
【原出願日】2010-04-06
(31)【優先権主張番号】P200900928
(32)【優先日】2009-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(71)【出願人】
【識別番号】510322708
【氏名又は名称】フンダシオ プリバーダ インスティトゥシオ カタラナ デ レセルカ イ エストゥディス アバンカッツ
(71)【出願人】
【識別番号】510322719
【氏名又は名称】フンダシオ プリバーダ インスティトゥト ディンベスティガシオ オンコロジカ デ バル ヘブロン
(71)【出願人】
【識別番号】510322694
【氏名又は名称】フンダシオ プリバーダ インスティトゥト デ レセルカ ホスピタル ウニベルシタリ バル ヘブロン
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】セオアネ スアレス,ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ペヌエラス プリエト,シルビア
(72)【発明者】
【氏名】バセルガ トルレス,ホセ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】グリオーマ幹細胞またはグリオーマ開始細胞を効率的に消失させることができる医薬組成物を提供する。
【解決手段】抗LIF抗体を含む、グリオーマの治療のための医薬組成物であって、抗LIF抗体が腫瘍幹細胞の増殖を阻害する、医薬組成物を使用する。本発明はまた、幹細胞の増殖を遮断/阻害することができる化合物の同定のための方法、および被験体における望ましくない細胞増殖と関連する疾患の診断のため、または被験体が望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患に罹患する素因を決定するため、または前記腫瘍に罹患する被験体の平均余命の予後のためのin vitro方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗LIF抗体を含む、グリオーマの治療のための医薬組成物であって、抗LIF抗体が腫瘍幹細胞の増殖を阻害する、医薬組成物。
【請求項2】
前記グリオーマが、参考値よりも少なくとも5%高いLIF発現を特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗体が腫瘍幹細胞の自己再生の阻害を介して作用する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記グリオーマが、参考値よりも少なくとも100%高いLIF発現を特徴とする、請求項2または3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記グリオーマが、JAK-STATシグナリング経路の高い活性により引き起こされる、請求項1、2または4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記グリオーマがグレードIVのグリオーマである、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗体と、製薬上許容し得る担体とを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
腫瘍幹細胞の増殖を阻害することが可能な抗LIF抗体による処置について、グリオーマに罹患する被験体の選択を補助するためのin vitro方法であって、
前記被験体に由来する生物学的サンプル中の、LIFをコードする遺伝子の発現レベルまたは該遺伝子によりコードされるタンパク質の発現レベルを定量すること
を含み、前記被験体に由来する生物学的サンプル中の、LIFをコードする遺伝子の発現レベルまたは該遺伝子によりコードされるタンパク質の発現レベルが、参考値よりも高い場合に、前記被験体が腫瘍幹細胞の増殖を阻害することが可能な抗LIF抗体による処置のために選択される、前記方法。
【請求項9】
前記グリオーマが、参考値よりも少なくとも5%高いLIFをコードする遺伝子の発現レベルまたは該遺伝子によりコードされるタンパク質の発現レベルを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記グリオーマが、JAK-STATシグナリング経路の高い活性により引き起こされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記グリオーマが、グレードIVのグリオーマである、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
LIFをコードする遺伝子の発現レベルの定量が、前記遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)、該mRNAの断片、前記遺伝子の相補的DNA(cDNA)、該cDNAの断片、またはその混合物の定量を含む、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
LIFをコードする遺伝子の発現レベルの定量を、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて実施する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
タンパク質の発現レベルの定量を、ウェスタンブロット、免疫組織化学分析またはELISAを用いて実施する、請求項8~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
タンパク質の発現レベルの定量を、該タンパク質の活性の測定を用いて実施する、請求項8~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、望ましくない細胞増殖と関連する疾患、より具体的には、癌および腫瘍幹細胞の治療のためのIL-6型サイトカインの発現および/または活性の阻害剤に関する。同様に、前記疾患の診断および患者の平均余命の予後のための方法も記載される。
【背景技術】
【0002】
幹細胞のような特性を有する腫瘍細胞のサブ集団が最近、癌において発見された。癌幹細胞と呼ばれるこの細胞集団は、腫瘍の開始、増殖および再発の原因となると考えられ、最も有効な治療法が腫瘍幹細胞の区分化に対する療法に由来することを示している。腫瘍幹細胞の分子特性およびその生態を制御する調節機構に関してはほとんど知られていない。腫瘍幹細胞が有意な役割を果たす腫瘍の1つはグリオーマ、いわゆるグリオーマ幹細胞またはグリオーマ開始細胞(GIC)である。
【0003】
GICはその高い癌原性、その自己再生能および複数の細胞系に分化する能力を特徴とする。腫瘍における幹細胞のような細胞の数は、その自己再生能により調節される。GICおよび、一般的には、癌幹細胞は、幹細胞が自身の2個の同一のコピーまたは幹細胞のコピーとより分化した細胞(非対称的分裂)を生成する手段によって対称的分裂および非対称的分裂を経験する。癌幹細胞の自己再生能は、対称的分裂と非対称的分裂との平衡によって調節され、この自己再生を制御する機構の脱調節が腫瘍の開始に関与する可能性が非常に高い。
【0004】
グリオーマは、脳の最も一般的な原発腫瘍であり、その組織および予後に応じて4つの臨床等級に分類することができる。グレードIVのグリオーマ(多形性グリア芽細胞腫(グリオブラストーマ))は高悪性度であり、放射線療法と化学療法の両方に対して耐性である。グリオーマの発生および進行に関与する分子機構の理解における前進にもかかわらず、この型の腫瘍の予測および治療は引き続き無効である。グリオーマの治療選択肢は、外科的介入である。にもかかわらず、外科的治療は通常、薬理学的アジュバント治療または放射線療法を伴う。グリオーマの治療のための薬剤の選択肢としては、プロカルバジン、CCNU(ロムスチン)およびビンクリスチンを含むPCVと呼ばれる組合せ、放射線療法と組み合わせたテモゾロミドが挙げられる。
【0005】
GICは腫瘍の開始、増殖および再発の原因となると考えられ、最も有効な治療法がグリオーマ幹細胞の区分化に対する療法に由来することを示している。GICが消失しない場合、腫瘍は根絶されないであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、当業界で公知の治療の欠点を防止し、GICを効率的に消失させることができる代替的な治療を有する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様において、本発明は、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療のためのIL-6型サイトカインの発現および/または活性の阻害剤に関する。
【0008】
別の態様においては、本発明は、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療のための、治療上有効量の本発明に記載の阻害剤と、製薬上許容し得る担体とを含む医薬組成物に関する。
【0009】
別の態様においては、本発明は、IL-6型サイトカインにより誘導される腫瘍細胞の細胞増殖を遮断/阻害することができる化合物またはその機能的に等価な変異体の同定のためのin vitro方法であって、
(i)IL-6型サイトカインの受容体を発現する細胞を、IL-6型サイトカインおよび候補化合物と接触させる工程、ならびに
(ii)前記細胞の細胞増殖を遮断する化合物を同定する工程、
を含む前記方法に関する。
【0010】
別の態様においては、本発明は、被験体における望ましくない細胞増殖と関連する疾患の診断のため、または望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患に罹患する被験体の素因を決定するため、または被験体における望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患の段階もしくは重篤度を決定するため、または望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患を有する被験体に施された療法の効果をモニターするためのin vitro方法であって、前記被験体に由来する生物学的サンプルにおけるIL-6型サイトカインをコードする遺伝子または前記遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現レベルを定量することを含み、対照サンプルにおけるIL-6型サイトカインをコードする遺伝子または前記遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現と比較した、IL-6型サイトカインをコードする遺伝子または前記遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現の増加が、望ましくない細胞増殖と関連する疾患を示すものであるか、または望ましくない細胞増殖と関連する疾患に罹患する前記被験体の素因がより高いことを示すものであるか、または前記被験体に施された療法に対する無応答性(非応答性)を示するものである、前記方法に関する。
【0011】
別の態様においては、本発明は、被験体における癌の診断のため、または前記癌に罹患する被験体の素因を決定するため、または被験体における前記癌の段階もしくは重篤度を決定するため、または前記癌に罹患する被験体の生存確率および/もしくは平均余命を予測するため、または前記癌を有する被験体に施された療法の効果をモニターするための、IL-6型サイトカインをコードする遺伝子または前記遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは前記タンパク質の機能的に等価な変異体の発現レベルの定量のための試薬を含むキットの使用であって、該試薬が対照サンプルと比較して前記遺伝子または前記タンパク質もしくはその機能的に等価な変異体の発現の増加を検出する場合、前記被験体は望ましくない細胞増殖と関連する疾患に罹患し得るか、または望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患に罹患するより高い素因を示すか、または前記疾患のより高い重篤度を示すか、または施された療法が有効ではない、前記使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】患者由来GICの自己再生に対するTGFβの効果を示す図である。(A)GBMを有する3人の異なる患者(GBM1、GBM2、GBM3)のサンプルから作製されたPCTCおよびGBMのニューロスフェアの代表的な画像である。(B)Musashi-1(Msi-1)、Sox2、ネスチンおよびβ-アクチンを、ヒトGBMの3つのサンプルのPCTCおよびニューロスフェアのRT-PCR分析を用いて決定した。(C)GBM1、GBM2およびGBM3腫瘍のサンプルから得られた100,000個のニューロスフェア(nsph.)またはPCTC細胞を、それぞれ、3匹のBalbc nu/nuマウスに頭蓋内接種した。各マウスにおいて30~40日目に磁気共鳴画像化(MRI)試験を実施した。画像は、GBM1から得られたニューロスフェアまたはPCTC細胞を接種したマウスの例を示す。マウスを週に2回、体重計測した。グラフは、GBM1に由来する細胞を接種したマウスを示す。(D)および(E)示されたGBMのニューロスフェア細胞を、増殖因子の非存在下で、100 pMのTGFβ1および/または2μMのTβRI阻害剤と共に7日間インキュベートし、新しく形成されたニューロスフェアの数(D)および総細胞数(E)を決定した。(F)DおよびEで示されたように処理したGBM1ニューロスフェアの代表的な画像を示す。
図2】GBM1に由来するニューロスフェア、およびGBM1に由来する血清中で分化したニューロスフェアにおける示されたマーカーの免疫細胞化学分析を示す図である。
図3】TGFβがPCTCおよびGBMニューロスフェアにおいてLIFの発現を誘導することを示す図である。(A)示されたGBMの11個のサンプル(GBM1-11)のPCTC細胞を、血清を含まない培地中で3時間、100 pMのTGFβ1で処理するか、または未処理のまま放置し、LIFの発現レベルをqRT-PCRを用いて決定した。β-アクチンを内部正規化対照として決定した。(B)GBMニューロスフェア細胞をAと同様に処理し、LIFの発現レベルをAと同様にqRT-PCRを用いて決定した。(C)GBMニューロスフェアを、血清を含まない培地中で3時間、100 pMのTGFβ1および/または2μMのTβRI阻害剤と共にインキュベートし、LIFのmRNAレベルをAと同様にqRT-PCRを用いて決定した。(D)GBM1ニューロスフェアを、血清を含まない培地中で3時間、100 pMのTGFβ1、TGFβ2およびTGFβ3と共にインキュベートし、LIFのmRNAレベルをAと同様にqRT-PCRを用いて決定した。(E)分泌されたLIFタンパク質のレベルを、100 pMのTGFβ1で48時間処理した後、GBM1ニューロスフェアにおいてELISAを用いて決定した。
図4】TGFβが活性化Smad複合体を介してLIFの転写を誘導することを示す図である。(A)ルシフェラーゼLIFの指示因子構築物の略図である。(B)A172グリオーマ細胞を、ルシフェラーゼLIF(-634/+32)、(-276/+32)、(-276/+32)mutSBEまたは(-73/+32)の指示因子構築物を用いてトランスフェクトした。トランスフェクションの16時間後、細胞を100 pMのTGFβ1で20時間処理し、ルシフェラーゼ活性について分析した。(C)U373MG細胞を100 pMのTGFβ1で3時間処理し、指示された抗体と指示されたPCRプライマーを用いてChIPアッセイを行った。(D、E)LIFのレベルを、示されたSmadファミリーの示されたメンバーのsiRNAにより媒介されるサイレンシングの後、100 pMのTGFβ1で3時間処理したU373MG(D)またはGBMニューロスフェア(E)においてqRT-PCRを用いて決定した。Smadに特異的な抗体を用いてウェスタンブロッティングを行うか、またはSmad4のqRT-PCRを行った。β-アクチンを内部正規化対照として決定した。
図5】TGFβが患者由来GBMニューロスフェアにおいてLIF-JAK-STAT経路を誘導することを示す図である。(A)指示された時間、20 ng/mlのLIFで処理されたGBM1のサンプルのニューロスフェアのウェスタンブロッティングを用いて、p-STAT3およびSTAT3のレベルを決定した。(B)GBM1のサンプルのニューロスフェアを、20 ng/mlのLIFおよび/または0.5μMのP6で15分間処理し、総p-STAT3およびSTAT3のレベルをウェスタンブロッティングを用いて決定した。(C)GBM1のサンプルのニューロスフェアを、EGFおよびFGFの非存在下で4時間、100 pMのTGFβ1または2μMのTβRI阻害剤で処理し、ウェスタンブロッティングを用いてp-STAT3、STAT3、p-Smad2、Smad2およびα-チューブリンのレベルを決定した。(D)GBM1のサンプルのニューロスフェアを、EGFおよびFGFの非存在下で4時間、100 pMのTGFβ1、0.5μMのP6またはLIFに対する遮断抗体で処理し、ウェスタンブロッティングを用いて総p-STAT3およびSTAT3のレベルを決定した。
図6】LIFがTGFβによるGICの自己再生の増加を媒介することを示す図である。(A、B)GBM1、GBM2およびGBM3ニューロスフェア細胞を、EGFおよびFGFの非存在下で100 pMのTGFβ1、20 ng/mlのLIFおよび/または抗LIF中和抗体ならびに0.5μMのP6で処理し、新しく形成されたニューロスフェアの数(A)または総細胞数(B)を決定した。(C)AおよびBに記載のように処理されたGBM1ニューロスフェアの代表的な画像である。
図7】TGFβおよびLIFがGBMニューロスフェアの分化を阻害することを示す図である。(A)示されたタンパク質の免疫細胞化学分析を、増殖因子の非存在下で7日間および最後の3日間はポリ-L-リジンで被覆されたスライド上で、100 pMのTGFβ1または20 ng/mlのLIFで処理したGBM1に由来するニューロスフェアにおいて行った。(B)Musashi-1(Msi-1)、Sox2およびネスチンのmRNAレベルを、増殖因子を用いない指示された処理の7日後にGBM1ニューロスフェアにおいて決定した。18SのRNAレベルを内部正規化対照として用いた。
図8】正常なヒト神経前駆細胞の自己再生能に対するTGFβの効果を示す図である。(A)ヒト神経前駆細胞ニューロスフェアにおいて指示されたマーカーの免疫細胞化学分析を行った。(B)GBM1のサンプルおよびヒト神経前駆細胞のニューロスフェアを、100 pMのTGFβファミリーの指示されたメンバーと共に3時間インキュベートし、LIFのmRNAレベルを決定した。(C、D)正常なヒト神経前駆細胞のニューロスフェア細胞を、100 pMのTGFβ1または20 ng/mlのLIFの存在下で7日間、図1Dに上記されたのと同じ条件でインキュベートし、新しく形成されたニューロスフェアの数(C)および総細胞数(D)を決定した。
図9】ヒトグリオーマ腫瘍におけるLIFの発現を示す図である。(A)LIF、TGFβ2、Musashi-1(Msi-1)、Sox2およびネスチン転写物のものを、ヒトグリオーマ患者に由来する39個のサンプル中、qRT-PCR分析を用いて決定した。(B)LIFとTGFβ2、Musashi-1(Msi-1)、Sox2またはネスチンとの相関を示す。スピアマンの順位相関係数(Rho)、両側有意性を示す。(C)TGFβが腫瘍塊内の幹細胞様細胞群の量を増加させるLIFの誘導を用いてGSCの自己再生を助長することを示す図である。
図10】グリオーマ患者のLIF mRNAレベルが平均余命と関連することを示す図である。LIF mRNAレベルが2倍以上上方調節されたグリオーマ患者の全体の生存率が、log-rank検定により残りの患者よりも有意に低い(p = 7.2E-8)ことを示すKaplan-Meier曲線である。米国立癌研究所のREpository for Molecular BRAin Neoplasia DaTa (REMBRANDT)プログラムから得られたデータである。
図11】グリア芽腫(グリオブラストーマ:GBM)患者のLIF mRNAレベルが平均余命と関連することを示す図である。LIF mRNAレベルが9倍以上上方調節されたGBM患者の全体の生存率が、log-rank検定により残りの患者よりも有意に低い(p = 6.9E-4)ことを示すKaplan-Meier曲線である。国立癌研究所のREpository for Molecular BRAin Neoplasia DaTa (REMBRANDT)プログラムから得られたデータである。
図12】特定の腫瘍型のいくらかの患者が異常に高いレベルのLIFを有することを示す図である。いくらかの患者(円)が異常に高いレベルのLIFを有することを示す様々な腫瘍型におけるLIF mRNAレベルを示す。GeneSapiensバイオインフォマティックスチーム(www.genesapiens.org)から得られたデータである。番号は以下のものを表す:1)プレB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL);2)プレT細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL);3)B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL);4)急性骨髄性白血病(AML);5)形質細胞性白血病;6)骨髄腫;7)B細胞リンパ腫;8)バーキットリンパ腫;9)T細胞リンパ腫;10)軟骨肉腫;11)骨肉腫;12)ユーイング肉腫;13)滑膜肉腫;14)平滑筋肉腫;15)横紋筋肉腫;16)脂肪肉腫;17)特定不能(NOS)肉腫;18)皮膚扁平上皮癌;19)黒色腫;20)グリオーマ;21)神経芽腫;22)悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST);23)脊索腫;24)口腔扁平上皮癌;25)咽喉頭扁平上皮癌;26)耳下腺癌;27)肺腺癌;28)大細胞肺癌;29)小細胞肺癌;30)肺扁平上皮癌;31)肺カルチノイド腫瘍;32)中皮腫;33)食道腺癌;34)胃腺癌;35)消化管間質腫瘍(GIST);36)小腸腺癌;37)結腸直腸癌;38)肝臓癌;39)膵臓癌;40)副腎癌;41)甲状腺癌;42)腎臓好酸性顆粒細胞腫;43)腎臓癌;44)腎芽細胞腫;45)膀胱癌;46)精巣精上皮腫;47)精巣非精上皮腫;48)前立腺癌;49)乳管癌;50)乳腺小葉癌;51)乳腺髄様癌;52)その他の乳癌;53)特定不能乳癌;54)卵巣明細胞癌;55)卵巣類内膜癌;56)卵巣胚細胞腫瘍;57)卵巣粘液癌;58)卵巣漿液性癌;59)特定不能(NOS)卵巣腺癌;60)その他の卵巣腫瘍;61)腹膜腺癌;62)子宮肉腫;63)子宮腺癌;64)子宮扁平上皮癌;65)子宮ミュラー管腫瘍;66)頸部腺癌;67)頸部扁平上皮癌;68)膣/外陰部癌。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の治療方法
本発明者らは、驚くべきことに、IL-6型サイトカイン、より具体的には、LIFが、TGFβにより媒介されるJAK-STATカスケードの活性化に関与し、かくして、細胞増殖プロセスおよび腫瘍幹細胞(癌幹細胞)の増加を誘導することを見出した。この事実に基づいて、本発明者らは、IL-6型サイトカインの阻害剤の使用に基づく、癌などの望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療のため、例えば、特にJAK-STATシグナリング経路の高い活性により引き起こされる癌の治療のための新しい治療域を開いた。JAK-STATの活性化におけるTGFβから下流のエレメントとしてのLIFの同定はさらに、それがTGFβだけでなく、インターロイキン、エリスロポエチン、増殖ホルモン、プロラクチンなどの任意の他の刺激原によって活性化された時にもその活性化を阻害するため、前記JAK-STATカスケードのより効率的な阻害を可能にする。
【0014】
従って、一態様においては、本発明は、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療のためのIL-6型サイトカインの発現および/または活性の阻害剤に関する。
【0015】
いかなる理論によっても束縛されることを望むものではないが、腫瘍の増殖に対するLIFおよびその阻害剤の効果は、腫瘍幹細胞の増殖を促進するLIFの能力に依ると考えられる。従って、LIF阻害剤を用いる治療は、IL-6型サイトカイン、およびより具体的にはLIFの高い発現が存在する腫瘍において特に指示されるであろう。また、化学療法に対して耐性である腫瘍幹細胞の既知の能力を考えれば、化学療法に耐性である腫瘍の治療についても興味深い。最後に、腫瘍幹細胞が再発の原因となるようであることを考えれば、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療のためのLIF阻害剤の使用は、再発の発生を防止するのに特に好適であろう。
【0016】
従って、第1の態様において、本発明は、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療のためのIL-6型サイトカインの発現および/または活性の阻害剤に関する。
【0017】
別の態様においては、本発明は、IL-6型サイトカインの発現および/または活性の阻害剤の投与を含む、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療のための方法に関する。
【0018】
別の態様においては、本発明は、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療のための医薬組成物の製造のための、IL-6型サイトカインの発現および/または活性の阻害剤に関する。
【0019】
本発明の文脈において、「IL-6型サイトカイン」は、IL-6、IL-11、白血病阻害因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびカルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)を含み、Jak-STATシグナリング経路を活性化するIL-6ファミリーのサイトカインメンバーと理解される。これらのサイトカインは、糖タンパク質-130(gp-130)受容体のサブユニットが共通の構成成分である同じ受容体複合体を共有する。
【0020】
従って、本発明の特定の実施形態においては、IL-6型サイトカインを、LIF、IL-6、IL-11、オンコスタチンM、カルジオトロフィン-1、CNTFおよびCLCから選択する。別のさらにより特定の実施形態においては、IL-6型サイトカインはLIFである。
【0021】
本発明の文脈において、「阻害剤」は、IL-6型サイトカインをコードする遺伝子の転写および翻訳を阻害もしくは遮断する(すなわち、前記遺伝子の発現を阻害もしくは遮断する)ことができるか、または前記遺伝子によりコードされるタンパク質がその機能(活性)を実施するのを阻害する、すなわち、IL-6型サイトカインがJAK-STATシグナリング経路の活性化を誘導することができないように阻害することができる任意の物質または化合物と理解される。化合物がIL-6型サイトカインの阻害剤であるかどうかを決定するためのアッセイは、当業界でよく知られている。例えば、Mezt S.ら(J. Biol. Chem, 2007, vol. 282: 1238-1248)は、IL-6サイトカインに対して感受性であるプロモーターの制御下にあるリポーター遺伝子の発現を遮断する阻害剤の能力に基づくアッセイを記載している。LIFの具体的事例においては、阻害剤の同定のためのアッセイとしては、LIFの非存在下でのM1マウス骨髄性白血病細胞分化の阻害(WO2005/30803)、ジャーカット細胞からのカルシウムの放出刺激の阻害(US5980894)、IL-6型サイトカインによるSTAT-3リン酸化の測定(本明細書の実施例の第2.4節、実施例2を参照)などが挙げられる。
【0022】
実例として、本発明におけるその使用にとって好適なLIFの発現の阻害剤は、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、干渉RNA(siRNA)、触媒RNAまたは特異的リボザイム、デコイ活性を有する、すなわち、遺伝子の発現にとって重要な因子(一般的には、タンパク質性のもの)に特異的に結合する能力を有するRNAなどである。同様に、IL-6型サイトカインをコードする前記遺伝子によりコードされるタンパク質がその機能を実施するのを阻害することができる阻害剤は、例えば、タンパク質の阻害ペプチド、その機能を実行するために必須であるタンパク質のエピトープに対して特異的な抗体、またはIL-6型サイトカイン受容体に対して特異的な抗体などである。
【0023】
従って、本発明の特定の実施形態においては、前記阻害剤を、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特異的リボザイム、抗体、ポリペプチドおよびIL-6型サイトカイン受容体の阻害剤からなる群より選択する。
【0024】
siRNA
低分子干渉RNA、またはsiRNAは、RNA干渉により標的遺伝子の発現を阻害することができる薬剤である。siRNAを化学的に合成するか、in vitroでの転写によって取得するか、または標的細胞中、in vivoで合成することができる。典型的には、siRNAは15~40ヌクレオチド長の二本鎖RNAからなり、1~6ヌクレオチドの3'および/または5'突出領域を含んでもよい。突出領域の長さは、siRNA分子の全長とは無関係である。siRNAは、標的メッセンジャーの分解または転写後サイレンシングによって作動する。
【0025】
siRNAを、shRNA(短ヘアピンRNA)と呼んでもよく、これはsiRNAを形成する逆平行鎖がループまたはヘアピン領域によって接続されることが特徴である。これらのsiRNAは、短いアンチセンス配列(19~25ヌクレオチド)、次いで、5~9ヌクレオチドのループ、次いで、センス鎖の化合物である。shRNAを、プラスミドまたはウイルス、具体的には、レトロウイルスによりコードさせることができ、RNAポリメラーゼIIIのU6プロモーターなどのプロモーターの制御下に置くことができる。
【0026】
本発明のsiRNAは、IL-6型サイトカインをコードする遺伝子のmRNAまたは前記タンパク質をコードするゲノム配列と実質的に相同である。「実質的に相同」とは、siRNAがRNA干渉により標的mRNAの分解を引き起こすことができるような、標的mRNAと十分に相補的であるか、またはそれと類似する配列を有することと理解される。前記干渉を引き起こすのに好適なsiRNAとしては、RNAにより形成されるsiRNA、ならびに:
・ヌクレオチド間の結合が、ホスホロチオエート結合などの天然に認められるものとは異なるsiRNA、
・RNA鎖と、フルオロフォアなどの機能的試薬とのコンジュゲート、
・2'位置のヒドロキシルの様々な官能基を用いる改変によるRNA鎖の末端、特に、3'末端の改変、
・2'-O-メチルリボースp2'-O-フルオロリボースなどの、2'位置のO-アルキル化残基などの糖が改変されたヌクレオチド、
・ハロゲン化塩基(例えば、5-ブロモウラシルおよび5-ヨードウラシル)、アルキル化塩基(例えば、7-メチルグアノシン)などの塩基が改変されたヌクレオチド、
などの様々な化学的改変を含むsiRNAが挙げられる。
【0027】
本発明のsiRNAおよびshRNAを、当業者には公知の一連の技術を用いて取得することができる。例えば、siRNAを、従来のDNA/RNA合成装置中で、ホスホルアミダイトで保護されたリボヌクレオシドから化学的に合成することができる。あるいは、siRNAを、siRNAを形成する鎖をコードする領域がRNAポリメラーゼIIIプロモーターの動作制御下にあるプラスミドおよびウイルスベクターから組換え様式で産生させることができる。細胞中では、Dicer RNaseがshRNAを機能的siRNAに加工する。
【0028】
siRNAを設計するための基礎として取られるヌクレオチド配列の領域は限定的ではなく、コード配列の領域(開始コドンと終止コドンの間)を含むか、またはあるいは、好ましくは25~50ヌクレオチド長であり、開始コドンに関して3'位置の任意の位置にある5'または3'非翻訳領域の配列を含んでもよい。siRNAを設計する1つの方法は、NがIL-6型サイトカインをコードする配列中の任意のヌクレオチドであってよいAA(N19)TTモチーフの同定および高いG/C含量を有するものの選択を含む。前記モチーフが見つからない場合、Nが任意のヌクレオチドであってよいNA(N21)モチーフを同定することができる。
【0029】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
本発明のさらなる態様は、例えば、IL-6型サイトカインをコードする核酸の転写および/もしくは翻訳、阻害しようとする活性を阻害する、発現を阻害するための単離された「アンチセンス」核酸の使用に関する。アンチセンス核酸は、従来の塩基相補性によって、または、例えば、二本鎖DNAへの結合の場合、二重らせんの主溝における特異的相互作用を介して、潜在的な薬剤標的に結合することができる。これらの方法は、一般的には、当業界で一般的に用いられる様々な技術に関し、オリゴヌクレオチド配列への特異的結合に基づく任意の方法を含む。
【0030】
本発明のアンチセンス構築物を、例えば、細胞中で転写された場合、IL-6型サイトカインをコードする細胞mRNAの少なくとも単一の部分と相補的であるRNAを産生する発現プラスミドとして送達することができる。あるいは、アンチセンス構築物は、ex vivoで生成され、細胞中に導入された場合、標的核酸のmRNAおよび/またはゲノム配列とハイブリダイズすることにより発現の阻害をもたらす、オリゴヌクレオチドプローブである。好ましくは、そのようなオリゴヌクレオチドプローブは、内因性ヌクレアーゼ、例えば、エキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼに対して耐性であり、従ってin vivoで安定である改変オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドとしてのその使用のための核酸分子の例は、ホスホルアミダート、ホスホチオネートおよびメチルホスホナートDNA類似体である(米国特許第5,176,996号;第5,264,564号;および第5,256,775号も参照されたい)。アンチセンス療法において有用なオリゴマーを構築するための一般的手法は、例えば、Van der Krolら、BioTechniques 6: 958-976, 1988; およびSteinら、Cancer Res 48: 2659-2668, 1988にさらに概説されている。
【0031】
アンチセンスDNAに関しては、翻訳開始部位、例えば、標的遺伝子の-10~+10に由来するオリゴデオキシリボヌクレオチドの領域が好ましい。アンチセンス手法は、標的ポリペプチドをコードするmRNAと相補的であるオリゴヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)の設計を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNA転写物に結合し、翻訳を阻害するであろう。絶対的な相補性は必要ないが、それが好ましい。かくして、二本鎖アンチセンス核酸の場合、二本鎖DNAの一本鎖をアッセイすることができるか、または三本鎖DNAの形成をアッセイすることができる。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度と、アンチセンス核酸の長さの両方に依存するであろう。一般的には、ハイブリダイズする核酸が長くなるほど、それが含み得るRNA対形成の誤りが多くなるが、それは依然として安定な二本鎖(または場合によっては、三本鎖)を形成する。当業者であれば、ハイブリダイズした複合体の融点を決定するための標準的なプロセスの使用によって、対形成の誤りの許容し得る程度を決定することができる。
【0032】
mRNAの5'末端と相補的であるオリゴヌクレオチド、例えば、AUG開始コドンまで、およびそれを含む非翻訳5'配列は、翻訳を阻害するためにできるだけ効率よく機能しなければならない。しかしながら、mRNAの非翻訳3'配列と相補的な配列も、mRNAの翻訳を阻害するのに有効であることが最近示された(Wagner, Nature 372: 333, 1994)。従って、遺伝子の非翻訳非コード5'または3'領域と相補的なオリゴヌクレオチドをアンチセンス手法において用いて、そのmRNAの翻訳を阻害することができる。mRNAの非翻訳5'領域と相補的なオリゴヌクレオチドは、AUG開始コドンの相補体を含むべきである。mRNAのコード領域と相補的なオリゴヌクレオチドは、翻訳の阻害剤としてはあまり有効ではないが、それらを本発明に従って用いることもできる。mRNAの5'、3'またはコード領域とハイブリダイズするように設計された場合、アンチセンス核酸は少なくとも6ヌクレオチド長を有するべきであり、好ましくは、約100未満およびより好ましくは、約50、25、17または10ヌクレオチド長を有するべきである。
【0033】
in vitro試験を最初に行って、遺伝子発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドの能力を定量することが好ましい。これらの試験はオリゴヌクレオチドのアンチセンス遺伝子阻害と非特異的生物学的効果とを区別する対照を用いる。また、これらの試験はRNAまたは標的タンパク質のレベルと、内部RNAまたはタンパク質対照のレベルとを比較することが好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて得られた結果を、対照オリゴヌクレオチドを用いて得られた結果と比較することができる。対照オリゴヌクレオチドは、アッセイしようとするオリゴヌクレオチドと同じ長さのものであり、そのオリゴヌクレオチド配列は標的配列への特異的ハイブリダイゼーションを阻害するのに必要であるもの以上にアンチセンス配列と異ならないことが好ましい。
【0034】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNAもしくはRNAまたはそのキメラ混合物もしくは改変誘導体もしくは変異体のものであってよく、一本鎖でも二本鎖でもよい。オリゴヌクレオチドを塩基類、糖類、またはリン酸主鎖において改変して、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーションなどを改善することができる。オリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、それらを宿主細胞受容体に対して指向させるため)、または細胞膜(例えば、Letsingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86: 6553-6556, 1989; Lemaitreら、Proc. Natl. Acad. Sci. 84: 648-652, 1987; PCT公開第WO88/09810号を参照されたい)もしくは血液脳関門(例えば、PCT公開第WO89/10134号を参照されたい)を介する輸送をより容易にする薬剤、ハイブリダイゼーションにより誘発される切断剤(例えば、Krolら、BioTechniques 6: 958-976, 1988を参照されたい)、挿入剤(例えば、Zon, Pharm. Res. 5: 539-549, 1988を参照されたい)などの他の結合基を含んでもよい。この目的のために、オリゴヌクレオチドを別の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーションにより誘発される架橋剤、担体、ハイブリダイゼーションにより誘発される切断剤などにコンジュゲートさせることができる。
【0035】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されるものではないが、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシチエチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルクエオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6-ジアミノプリンを含む群より選択される少なくとも1個の改変塩基類を含んでもよい。
【0036】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、限定されるものではないが、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロース、およびヘキソースを含む群より選択される少なくとも1個の改変糖類を含んでもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、天然ペプチドと類似する主鎖を含んでもよい。そのような分子を、ペプチド核酸(PNA)オリゴマーと呼び、例えば、Perry-O’Keefeら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93: 14670, 1996、およびEglomら、Nature 365: 566, 1993に記載されている。PNAオリゴマーの利点は、DNAの中性主鎖に起因して媒体のイオン力とは本質的には無関係な様式で相補的DNAに結合するその能力である。さらに別の実施形態においては、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミダート、ホスホロジアミダート、メチルホスホナート、アルキルホスホトリエステル、およびホルムアセタールまたはその類似体からなる群より選択される少なくとも1個の改変リン酸主鎖を含む。
【0037】
さらに別の実施形態においては、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、α-アノマーオリゴヌクレオチドである。α-アノマーオリゴヌクレオチドは、典型的な逆平行方向とは対照的に、鎖が互いに平行である相補的RNAとの特異的二本鎖ハイブリッドを形成する(Gautierら、Nucl. Acids Res. 15: 6625-6641, 1987)。このオリゴヌクレオチドは、2'-O-メチルリボヌクレオチド(Inoueら、Nucl. Acids Res. 15: 6131-6148, 1987)またはRNA-DNAキメラ類似体(Inoueら、FEBS Lett. 215: 327-330, 1987)である。
【0038】
標的mRNA配列のコード領域と相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることができるが、非翻訳転写領域と相補的なものを用いてもよい。
【0039】
いくつかの場合、内因性mRNAの翻訳を抑制するのに十分なアンチセンスの細胞内濃度を達成するのが困難なことがある。従って、好ましい手法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを強力なpol IIIまたはpol IIプロモーターの制御下に置く組換えDNA構築物を用いる。標的細胞をトランスフェクトするためのそのような構築物の使用は、薬剤の潜在的な標的内因性転写物と相補的塩基対を形成し、従って翻訳を阻害するであろう十分な量の一本鎖RNAの転写をもたらすであろう。例えば、ベクターが細胞により捕捉され、アンチセンスRNAの転写を指令するようなベクターを導入することができる。そのようなベクターは、エピソーム中に残存することができるか、または染色体中に組込まれるが、転写されて所望のアンチセンスRNAを産生することができる。そのようなベクターを、当業界で標準的な組換えDNA技術の方法を用いて構築することができる。このベクターはウイルスプラスミドであってよく、または哺乳動物細胞中での複製および発現のために用いられる当業界で公知の他のプラスミドであってもよい。アンチセンスRNAをコードする配列の発現は、哺乳動物細胞、好ましくは、ヒト細胞に対して作用する当業界で公知の任意のプロモーターを用いるものであってよい。そのようなプロモーターは、誘導性であってもよいし、または構成的であってもよい。そのようなプロモーターとしては、限定されるものではないが、SV40初期領域のプロモーター(BernoistおよびChambon, Nature 290: 304-310, 1981)、ラウス肉腫ウイルスの3'LTRに含まれるプロモーター(Yamamotoら、Cell 22: 787-797, 1980)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78: 1441-1445, 1981)、メタロチオネイン遺伝子調節配列(Brinsterら、Nature 296: 39-42, 1982)などが挙げられる。任意の型のプラスミド、コスミド、YACまたはウイルスベクターを用いて、組換えDNA構築物を調製し、組織の部位に直接導入することができる。
【0040】
あるいは、標的遺伝子の発現を、遺伝子の調節領域(すなわち、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に対して相補的デオキシリボヌクレオチド配列を指向させて、三重らせん構造を形成させ、体内の標的細胞中での前記遺伝子の転写を阻害することにより発現させることができる(一般的には、Helene, Anticancer Drug Des. 6(6): 569-84, 1991; Heleneら、Ann. N.E. Acad. Sci., 660: 27-36, 1992; およびMaher, Bioassays 14(12): 807-15, 1992を参照されたい)。
【0041】
転写の阻害のための三重らせんの形成において用いることができる核酸分子は、一本鎖であるのが好ましく、デオキシリボヌクレオチドにより形成される。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成は、Hoogsteenの塩基対形成規則を介して三重らせんの形成を増強しなければならず、一般的には、二重らせん鎖中にかなり大きい部分のプリンまたはピリミジンの存在を必要とする。ヌクレオチド配列はピリミジンに基づくものであってよく、それは得られる三重らせんの3個の結合した鎖を介してTATおよびCGCトリプレットをもたらすであろう。ピリミジンに富む分子は、前記鎖と平行な向きに二重らせんの一本鎖プリンに富む領域と相補的な塩基を提供する。さらに、プリンに富む核酸分子、例えば、G残基の一部を含む核酸分子を選択することができる。これらの分子は、多くのプリン残基が標的二重らせんの一本鎖に位置し、トリプレット中の3個の鎖を介してCGCトリプレットをもたらす、GC対に富む二本鎖DNAと三重らせんを形成するであろう。
【0042】
あるいは、三重らせんの形成のために選択することができる潜在的な標的配列を増加させ、「ヘアピン状」と呼ばれる核酸分子を作製することができる。ヘアピン状分子を、それらが二重らせんの一方の鎖と第1の塩基対を形成した後、他方の鎖と塩基対を形成し、二重らせんの鎖中のかなり大きな部分のプリンまたはピリミジンの存在にとっての必要性を排除するように、交互に5'-3'、3'-5'形態で合成する。
【0043】
いくつかの実施形態においては、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスモルホリンである。モルホリンは、天然核酸構造の再設計の産物である合成分子である。典型的には、25塩基長であり、それらは標準的な核酸塩基対形成によって相補的RNA配列に結合する。構造的に言えば、モルホリンとDNAとの差異は、モルホリンが標準的な核酸塩基を有するとしても、これらの塩基がデオキシリボース環の代わりにモルホリン環に結合し、それらがリン酸の代わりにホスホロジアミダート基を用いて結合するという点である。細胞または生物中のモルホリンが非荷電分子であるように、陰イオン性リン酸を中性ホスホロジアミダート基で切り替えることにより、通常の生理学的pH範囲でのイオン化を排除する。モルホリンはキメラオリゴではない;モルホリンの主鎖全体は3個の改変サブユニットから作られる。モルホリンは、一本鎖オリゴとしてより一般的に用いられているが、モルホリン鎖と相補的DNA鎖とのヘテロ二本鎖を細胞質分布を用いて陽イオン試薬と共に用いることができる。
【0044】
多くのアンチセンス構造型(例えば、ホスホロチオエート)と違って、モルホリンはその標的RNA分子を分解しない。対照的に、モルホリンは「立体障害」によって作用し、RNA中の標的配列に結合し、さもなければRNAと相互作用することができる分子の通り道に単に置かれる。モルホリンオリゴは、卵、または「モルファント」胚を産生するゼブラフィッシュ、アフリカツメガエル(Xenopus)、ニワトリ、およびウニの胚などの胚における特異的mRNA転写物の役割を調査するのに一般的に用いられている。好適な細胞質分布系を用いれば、モルホリンは細胞培養において有効である。
【0045】
モルホリンは、AVI BioPharma Inc.によって「NeuGenes」の名称で薬剤として開発された。それらはマウスからヒトまでの哺乳動物において用いられ、そのうちのいくつかは現在臨床試験において試験されている。
【0046】
メッセンジャーRNA(mRNA)の5'非翻訳領域に結合した場合、モルホリンは5'キャップから開始コドンまでのリボソーム開始複合体の進行を阻害することができる。これは、標的転写物のコード領域の翻訳を阻害する(遺伝子発現の「サイレンシング」と呼ばれる)。モルホリンは、タンパク質の発現をサイレンシングするための好適な培地を提供し、この減少がどのように細胞または生物を変化させるかを学習することができる。いくつかのモルホリンは、効率的に発現を沈黙化させ、元から存在するタンパク質の分解後に、標的タンパク質はウェスタンブロッティングにより検出不可能になる。
【0047】
モルホリンはまた、プレmRNAを加工する工程を阻害することができ、典型的には、プレRNAらせん中のイントロン境界において結合からその標的へのスプライシングを指令するRNPnp複合体を阻害する。U1結合(供与体側で)またはU2/U5結合(ポリピリミジン基および受容部位において)の阻害は、スプライシングの改変を引き起こすことができ、典型的には、成熟mRNAエクソンの切り出しを誘導する。いくつかのスプライシング標的の指令により、イントロンの含有が引き起こされるが、クリプティックなスプライシング部位の活性化は部分的含有または切り出しを誘導し得る。U11/U12 RNPnp標的を遮断することもできる。スプライシングの改変を、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて好適にアッセイすることができ、それはRT-PCR産物のゲル電気泳動後にバンドの移動として認められる。
【0048】
また、モルホリンを用いて、miRNA活性、リボザイム活性、イントロンスプライシングサイレンサー、およびスプライシングエンハンサーを遮断した。U2およびU12 RNPnpの機能を、モルホリンによって阻害した。タンパク質のコード領域内の「不安定な」RNA配列に対して指向するモルホリンは、翻訳の読み枠の変化を誘導することができる。この様々な標的に対するモルホリンの活性は、タンパク質または核酸とmRNAとの相互作用を遮断するための一般的な多目的ツールとしてモルホリンを用いることができることを示唆している。
【0049】
LIF特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドの例は、Kamoharaら(Int J Oncol, 2007, 30:977-983)およびChengら(Biol Reprod, 2004, 70:1270-1276)に記載されている。
【0050】
DNA酵素
本発明の別の態様は、本発明のIL-6型サイトカインをコードする遺伝子の発現を阻害するDNA酵素の使用に関する。DNA酵素は、アンチセンス技術とリボザイム技術の両方に特徴的ないくつかの機構を含む。DNA酵素がアンチセンスオリゴヌクレオチドと類似する、特定の標的核酸配列を認識するが、リボザイムと同様、それらが触媒的であり、標的核酸を特異的に切断するように、それらを設計する。
【0051】
現在、2つの型のDNA酵素が存在し、両方ともSantoroおよびJoyce(例えば、米国特許第6,110,462号を参照されたい)により同定されたものである。DNA酵素10-23は、2本のアームを接続するループ構造を含む。2本のアームは、特定の標的核酸配列を認識することにより特異性を提供するが、ループ構造は生理学的条件で触媒機能を提供する。
【0052】
簡単に述べると、標的核酸を特異的に認識し、それを切断する理想的なDNA酵素を設計するために、当業者はまず、ユニークな標的配列を同定しなければならない。これを、アンチセンスオリゴヌクレオチドについて記載されたものと同じ手法を用いて行うことができる。ユニークな配列または実質的にユニークな配列は、約18~22ヌクレオチドのG/Cに富むものであるのが好ましい。高いG/C含量は、DNA酵素と標的配列とのより強い相互作用を確保するのに役立つ。
【0053】
DNA酵素を合成する場合、該酵素をメッセンジャーに指向させる特異的アンチセンス認識配列を、それが2本のアームのDNA酵素を含むように、およびDNA酵素のループが2本の特異的アームの間に位置するように分割する。
【0054】
DNA酵素を作製し、投与するための方法を、例えば、米国特許第6,110,462号に見出すことができる。同様に、in vitroまたはin vivoでのDNAリボザイムの送達のための方法としては、上記で詳細に説明されたような、RNAリボザイムの送達のための方法が挙げられる。あるいは、当業者であれば、アンチセンスヌクレオチドと同様、DNA酵素を必要に応じて改変して、安定性を改善し、分解に対する耐性を改善することができることを認識できるであろう。
【0055】
本発明のアンチセンスRNAおよびDNA、リボザイム、iRNAおよび三重らせん分子を、DNAおよびRNA分子の合成のための当業界で公知の任意の方法を用いて調製することができる。これらのものとしては、例えば、固相中でのホスホルアミダイトの化学合成などの、当業界でよく知られたオリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドを化学的に合成するための方法が挙げられる。あるいは、RNA分子を、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のin vitroおよびin vivoでの転写を用いて作製することができる。そのようなDNA配列を、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターなどの、好適なRNAポリメラーゼプロモーターを含む様々なベクターに組込むことができる。あるいは、用いるプロモーターに応じて、アンチセンスRNAを構成的または誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築物を、細胞系中に安定に導入することができる。さらに、いくつかのよく知られた改変を、細胞内安定性および半減期を増加させるための手段として核酸分子中に導入することができる。可能な改変としては、限定されるものではないが、分子の5'および/もしくは3'末端でのフランキングするリボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド配列の付加、またはオリゴデオキシリボヌクレオチドの主鎖中でのホスホジエステラーゼよりもむしろホスホロチオエートもしくは2'-O-メチル結合の使用が挙げられる。
【0056】
リボザイム
標的mRNAの転写物を触媒的に切断するように設計されたリボザイム分子を用いて、IL-6型サイトカインをコードするmRNAの翻訳および阻害しようとする活性を阻害することもできる。リボザイムは、特異的RNA切断を触媒することができる酵素的RNA分子である(概説については、Rossi, Current Biology 4: 469-471, 1994を参照されたい)。リボザイムの作用機構は、相補的な標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーション、次いで、エンドヌクレアーゼ切断事象を含む。リボザイム分子の組成は、好ましくは、標的mRNAと相補的な1個以上の配列、およびmRNAまたは機能的に等価な配列を切断するのを担うよく知られた配列を含む(例えば、その全体が参照により本明細書に組入れられるものとする米国特許第5,093,246号を参照されたい)。
【0057】
mRNAを部位特異的認識配列に切断するリボザイムを用いて標的mRNAを破壊することができるが、ハンマーヘッドリボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッドリボザイムは、標的mRNAのものと相補的塩基対を形成するフランキング領域により指令される位置でmRNAを切断する。好ましくは、標的mRNAは以下の2個の塩基配列:5'-UG-3'を有する。ハンマーヘッドリボザイムの構築および産生は当業界でよく知られており、HaseloffおよびGerlach, Nature 334: 585-591, 1988; ならびにPCT出願第WO89/05852号(その内容は参照により本明細書に組入れられるものとする)に完全に記載されている。ハンマーヘッドリボザイムの配列を、転移RNA(tRNA)などの安定なRNAに包含させて、in vivoでの切断の効果を増加させることができる(Perrimanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 6175-79, 1995; FeyterおよびGaudron, Methods in Molecular Biology, Vol. 74, Chapter 43, “Expressing Ribozymes in Plants”, Turner, P. C(編), Humana Press Inc., Totowa, N.J.)。特に、RNAポリメラーゼIIIにより媒介されるtRNAを含む融合リボザイムの発現が当業界でよく知られている(Kawasakiら、Nature 393: 284-9, 1998; Kuwabaraら、Nature Biotechnol. 16: 961-5, 1998; およびKuwabaraら、Mol. Cell. 2: 617-27, 1998; Kosekiら、J Virol 73: 1868-77, 1999; Kuwabaraら、Proc Natl Acad Sci USA 96: 1886-91, 1999; Tanabeら、Nature 406: 473-4, 2000を参照されたい)。典型的には、標的cDNA配列中にハンマーヘッドリボザイムのいくつかの潜在的な切断部位が存在する。好ましくは、切断認識部位が標的mRNAの5'末端の近くに位置して、非機能的mRNA転写物の効果を増加させ、その細胞内蓄積を最小化するように、リボザイムを操作する。さらに、例えば、短い、および長い形態の標的のC末端アミノ酸ドメインの様々な部分をコードする標的配列中に位置する任意の切断認識部位の使用により、いずれかの形態の標的に対して選択的に指向させ、かくして、標的遺伝子産物の形態に対する選択効果を有することが可能になる。
【0058】
遺伝子に対して指向するリボザイムは、ヒトRAP80タンパク質のいずれかに表される配列のmRNAなどの、標的mRNAのそれぞれ少なくとも5個、および好ましくはそれぞれ6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の連続するヌクレオチド長の2個の領域と相補的なハイブリダイゼーション領域を含む必要がある。さらに、リボザイムは、コードする標的mRNAを自己触媒的に切断する非常に特異的なエンドヌクレアーゼ活性を有する。本発明は、治療剤の候補標的遺伝子などの標的遺伝子をコードするコードmRNAとハイブリダイズし、従って、コードmRNAとハイブリダイズし、それが機能的ポリペプチド産物を合成するために最早翻訳されないようにそれを切断するリボザイムにまで拡張される。
【0059】
また、本発明の組成物において用いられるリボザイムとしては、Thomas Cechら(Zaugら、Science 224:574-578, 1984; Zaugら、Science 231: 470-475, 1986; Zaugら、Nature 324: 429-433, 1986; University Patents Inc.の国際公開出願第WO88/04300号; Beenら、Cell 47: 207-216, 1986)により広く記載された、テトラヒメナ・サーモフィラ(Tetrahymena thermophila)において天然に見出されるもの(IVS、もしくはL-19 IVS RNAとして知られる)などのエンドリボヌクレアーゼRNA(本明細書では以後「Cech型リボザイム」と呼ぶ)が挙げられる。Cech型リボザイムは、標的RNA配列とハイブリダイズする8塩基対の活性部位を有し、標的RNAの切断が後に起こる。本発明は、標的遺伝子または核酸配列中に提供される8塩基対の活性部位を有する標的配列として有するこれらのCech型リボザイムを含む。
【0060】
リボザイムを、改変オリゴヌクレオチド(例えば、安定性、誘導などを改善するため)により形成させることができ、それらをin vivoで標的遺伝子を発現する細胞に送達すべきである。送達のための好ましい方法は、トランスフェクトされた細胞が十分な量のリボザイムを産生して、内因性標的メッセンジャーを破壊し、翻訳を阻害するように、pol IIIまたはpol IIの強力な構成的プロモーターの制御下でリボザイムを「コードする」DNA構築物を用いることを含む。他のアンチセンス分子と違って、リボザイムは触媒的であるため、それらが有効であるために必要な細胞内濃度はより低い。
【0061】
特定の実施形態においては、まず、iRNAを用いて効力の減少を引き起こすのに十分な配列の一部を同定することにより、リボザイムを設計することができる。後に、同じ部分の配列をリボザイムに組込むことができる。本発明のこの態様においては、前記遺伝子を指向するリボザイムまたはiRNAの部分は、ヒトRAP80配列のいずれかの核酸などの、標的核酸の少なくとも5個および好ましくは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個以上の連続するヌクレオチドの実質的に同じ配列である。標的RNAの長い鎖においては、有意な数の標的部位が二次および三次構造中に隠れているため、それらはリボザイムにより接近することはできない(Birikhら、Eur J Biochem 245: 1-16, 1997)。標的RNAへの接近性の問題を克服するために、典型的にはコンピューターにより生成した二次構造予測を用いて、一本鎖である可能性が最も高いか、または「オープン」配置を有する標的を同定する(Jaegerら、Methods Enzymol 183: 281-306, 1989を参照されたい)。他の手法は、ハイブリダイズさせようとする多数の候補オリゴヌクレオチド分子を含む二次構造を予測するための体系的手法を用いる(Milnerら、Nat Biotechnol 15: 537-41, 1997; ならびにPatzelおよびSczakiel, Nat Biotechnol 16: 64-8, 1998を参照されたい)。さらに、米国特許第6,251,588号(その内容は参照により本明細書に組入れられるものとする)は、標的核酸配列にハイブリダイズする能力を予測するためのオリゴヌクレオチドプローブ配列を評価するための方法を記載している。本発明の方法は、一本鎖であると予測された標的mRNA配列の好ましい断片を選択するためのそのような方法の使用、およびさらに、その便乗的使用のための、iRNAオリゴヌクレオチドと本発明のリボザイムの両方の設計における、好ましくは標的mRNAの約10~20個の連続するヌクレオチドを含む、実質的に同一の標的mRNA配列を提供する。
【0062】
阻害ペプチド
本明細書で用いられる用語「阻害ペプチド」は、IL-6型サイトカインに結合し、上記で説明されたようにその活性を阻害する、すなわち、IL-6型サイトカインがJAK-STATシグナリング経路の活性化を誘導することができないように阻害することができるペプチドに関する。
【0063】
阻害ペプチドの例は、Whiteら(J.Biol.Chem., 2007, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 104:19357-19362)に記載のLIFのペグ化変異体である。
【0064】
サイトカイン受容体結合の阻害剤
本明細書で用いられる表現「サイトカイン受容体結合の阻害剤」とは、IL-6型サイトカインに対する親和性を示し、従って、このサイトカインを抑制し、その生理学的受容体へのその結合を阻害することができる任意の化合物を示す。阻害ポリペプチドは、好ましくは、可溶性形態のIL-6型サイトカイン受容体(いわゆるデコイ受容体)である。LIFの特定の事例においては、LIF受容体の可溶性変異体またはLIF結合タンパク質(LBP)、天然に認められ、関節軟骨外植片中でのプロテオグリカンの代謝に対するLIFの効果を効率的に阻害することができることがわかった可溶性形態のαLIF受容体を使用することができる(Bellら、1997, J. Rheumatol. 24:2394)。
【0065】
阻害抗体
「阻害抗体」は、本発明の文脈においては、IL-6型サイトカインがJAK-STATシグナリング経路の活性化を誘導することができないように阻害する、IL-6型サイトカインまたはIL-6型サイトカインの受容体に結合することができる任意の抗体であると理解される。この抗体を、当業者には公知の任意の方法を用いて調製することができる。かくして、阻害しようとするタンパク質を用いる動物の免疫化を用いて、ポリクローナル抗体を調製する。Kohler, Milsteinら(Nature, 1975, 256: 495)により記載された方法を用いて、モノクローナル抗体を調製する。IL-6型サイトカイン結合能力を有するか、または該サイトカインの受容体に結合する能力を有する抗体を同定したら、このタンパク質の活性を阻害することができるものを、上記(Metz, 2007、上掲)の阻害剤の同定のためのアッセイを用いて選択することができる。
【0066】
従って、より特定の実施形態においては、前記抗体は、前記IL-6型サイトカインに特異的な阻害抗体またはIL-6型サイトカイン受容体を遮断する抗体である。
【0067】
LIFに特異的な抗体は、米国特許第5,654,157A号、Kimら(J. Immunol. Meth., 156: 9-17, 1992)、Alphonsoら(J. Leukocyte Biology (28th National Meeting of the Society for Leukocyte Biologyの要約, vol. 0, no. SP.2 (1991) (NY, N.E., p. 49) (Mabs D4.16.9、D25.1.4、およびD62.3.2)に記載されている。
【0068】
本発明においては、用語「抗体」は幅広く解釈されなければならず、それらが目的の抗原、本発明の文脈においては、IL-6型サイトカインまたは該IL-6型サイトカインの受容体を特異的に認識することができるという条件で、ポリクローナル、モノクローナル、多特異的抗体およびそのフラグメント(F(ab')2、Fab)などを含む。本発明の文脈において用いることができる抗体の例は、非限定例として、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体などである。
【0069】
ポリクローナル抗体は元々、抗原で免疫された動物の血清中で産生される抗体分子の異種混合物である。それらはまた、例えば、目的の抗原の単一エピトープのペプチドを用いるカラムクロマトグラフィーを用いて、異種混合物から得られた一特異的ポリクローナル抗体も含む。
【0070】
モノクローナル抗体は、抗原の単一エピトープに対して特異的な抗体の均一集団である。これらのモノクローナル抗体を、例えば、KohlerおよびMilstein [Nature, 1975; 256:495-397]またはHarlowおよびLane [“Using Antibodies. A Laboratory Manual”、E. HarlowおよびD. Lane(編): Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York; 1998 (ISBN 978-0879695439)]に既に記載された従来の技術を用いて調製することができる。
【0071】
キメラ抗体は、異なる動物種に由来する抗体のクローニングまたは組換えを用いて構築されたモノクローナル抗体である。本発明の典型的であるが、非限定的な形態においては、キメラ抗体はモノクローナル抗体の一部、一般的には、抗原認識と結合のための部位を含む可変フラグメント(Fv)、およびヒト抗体に対応する他の部分、一般的には、定常領域と隣接する定常領域を含む部分を含む。
【0072】
完全ヒト抗体は、ヒト免疫系を有するトランスジェニック動物において、またはヒト免疫細胞のin vitroでの免疫化(アジュバントと純粋な、もしくは純粋でない抗原とを用いるか、もしくは用いない遺伝的および伝統的免疫化の両方を含む;または免疫系への抗原の曝露のための任意の方法を用いる)によるか、またはヒト免疫細胞から産生された天然/合成ライブラリーを用いて産生された抗体である。これらの抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子をクローニングし、標的抗原(本発明においては、前記抗原はIL-6型サイトカインまたは該IL-6型サイトカインの受容体である)で免疫されたトランスジェニック動物(例えば、マウス)から取得し、選択することができる。これらの抗体を、ファージ展示中に提示されるヒト一本鎖可変フラグメント(scFv)または抗原結合フラグメント(Fab)を選択した後、クローニングし、ヒト抗体中に移植することによるか、または両鎖の可変フラグメントをクローニングした後、その混合/突然変異を行って抗体ライブラリーを作製することにより作製されたライブラリーの、当業者には公知の任意の他の製造方法および展示方法を用いて取得することができる。
【0073】
ヒト化抗体は、ヒトの超可変CDR領域の代わりにヒト抗体中にマウスモノクローナル抗体の超可変相補性決定領域(CDR)をクローニングおよび移植することにより構築されたモノクローナル抗体である。
【0074】
さらに、本発明の文脈においては、用語「抗体」はまた、糖鎖パターンが変化した変異体、ならびにタンパク質から得られたか、または組換え技術を用いて得られた糖鎖付加された、または糖鎖付加されていない抗体フラグメントであって、(i)結合ペプチドにより互いに結合した抗体の可変領域(scFv)、(ii)システインにより、もしくは結合ペプチドとジスルフィド結合により軽鎖に結合した重鎖(Fd)のCH1定常領域を一緒に含む可変領域(scFab)、(iii)単一重鎖などの新規変異体、または(iv)それらをより類似するようにし、免疫原性をより低くするか(ヒト化)、もしくは生物学的液体中でより安定にし、本発明の文脈においては、IL-6型サイトカインがその機能(活性)を実施する、すなわち、JAK-STATシグナリング経路の活性化を誘導するのを阻害する目的で抗体フラグメントに対して為された任意の改変からなってよい前記フラグメントも含む。
【0075】
当業者であれば理解できるように、従来の遺伝子工学技術もしくは組換え技術、抗体産生技術、生物学的液体もしくは組織からの抽出および精製のための技術を用いて、または当業者には広く知られたタンパク質および抗体を取得するための任意の他の従来技術により、前記抗体を取得することができる。抗体の産生のための技術の例示的な非限定例は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のためのトランスジェニック動物などの動物における免疫化技術、ハイブリドーマを用いるモノクローナル抗体の産生、天然、合成のものであってよく、または目的の抗原に対して免疫された生物から誘導され、非常に異なる展示方法(ファージ展示、リボゾーム展示など)を用いて、続いて、様々なサイズ、組成および構造の組換え抗体の産生のために設計されたベクター中でそれらを再設計し、発現させることができる遺伝子工学技術を用いて選択することができる抗体ライブラリーを用いる産生である。抗体の産生および精製のための主な方法の概説については、例えば、
“Handbook of Therapeutic Antibodies”、S. Dubel(編): Wiley-VCH, 2007, Vol: I to III (ISBN 978-3527314539);
“Antibodies: Volume 1: Production and Purification”、G. Subramanian(編)、編集: Springer、第1版、2004 (ISBN 978-0306482458);
“Antibodies: Volume 2: Novel Technologies and Therapeutic Use”、G. Subramanian(編)、編集: Springer、第1版、2004 (ISBN 978-0306483158);
“Molecular Cloning: a Laboratory manual”、J. SambrookおよびD.W. Russel(編)、出版: Cold Spring Harbor Laboratory Press、第3版、2001 (ISBN 978-0879695774)、
に見出すことができる。
【0076】
IL-6型サイトカインの活性を阻害する他の化合物
IL-6型サイトカインの発現を阻害する能力を有する他の化合物としては、その生物学的活性の改変の結果得られるタンパク質に特異的に結合する、一本鎖もしくは二本鎖のDもしくはL型核酸である、アプタマーおよびスピーゲルマーが挙げられる。アプタマーおよびスピーゲルマーは、15~80ヌクレオチド、好ましくは20~50ヌクレオチドの長さを有する。
【0077】
IL-6型サイトカインの阻害活性を有するポリペプチド
具体的には、本発明の文脈において有用であり得るLIF(IL-6型サイトカイン)のアンタゴニストは、
-LIFに対する低い親和性を示すか、または受容体の一方の鎖のみに結合することができる受容体結合部位中に突然変異を提供するLIF変異体である。前記突然変異体の例としては、
・Hudsonら(J. Biol. Chem., 1996, 271: 11971-11978)により記載された突然変異体、
・Q29A、G124RおよびN128Aの群より選択される1個以上の突然変異を有し、LIF受容体およびgp130に対する低い親和性を示す、WO05030803に記載のLIF変異体、Fairlie, W.D.ら(J. Biol. Chem., 2004, 279: 2125-2134)により記載されたMH35-BD/Q29A+G124Rを含む変異体であるLIFの高い効力のアンタゴニスト、
・受容体結合領域に、および具体的には、ヒトLIFの番号に関して位置25-38、150-160または161-180に1個以上の置換を有することを特徴とするWO9601319に記載の突然変異体、
が挙げられる。
【0078】
-Metz; S.ら(J. Biol. Chem., 2008, 283: 5985-5995)により記載されたような、LIF受容体の細胞外領域の一部とgp130リガンド結合ドメインを含む融合タンパク質などの、一次構造に基づき、LIFに結合し、それが細胞表面上でその天然受容体と相互作用するのを阻害する能力を有するLIF受容体の可溶性変異体である。
【0079】
説明の始めに表したように、本発明者らは、本明細書に記載の本発明を用いる、癌などの望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療における、特に、高い活性のJAK-STATシグナリング経路により引き起こされる癌の治療のための新しい治療域を開いた。
【0080】
本発明の文脈においては、「望ましくない細胞増殖と関連する疾患」は、癌および腫瘍の増殖、進行および転移を含む。本発明に記載の方法に従って治療することができる望ましくない細胞増殖と関連する疾患の例は、癌、再狭窄、動脈硬化症、血管新生疾患、線維症、皮膚疾患および炎症疾患である。
【0081】
本発明の特定の実施形態においては、望ましくない細胞増殖と関連する疾患は、癌である。
【0082】
用語「癌」および「腫瘍」は、脱調節された細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理的症状に関する。本発明の化合物は、乳房、心臓、肺、小腸、結腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部、頸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣および肝臓の腫瘍の治療にとって有用である。特に、本発明の化合物を用いて治療することができる腫瘍としては、アデノーマ、血管肉腫、星状細胞腫、上皮癌、胚細胞腫、グリア芽腫(グリオブラストーマ)、グリオーマ、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、黒色腫、神経芽腫、骨肉腫、網膜芽腫、横紋筋肉腫、肉腫および奇形腫が挙げられる。特に、腫瘍/癌は、末端性黒子性黒色腫、光線角化症、腺癌、腺様嚢胞癌、アデノーマ、腺肉腫、腺扁平上皮癌、星細胞腫、バルトリン腺癌、基底細胞癌、気管支腺癌、毛細血管カルチノイド、癌腫、癌肉腫、胆管癌、軟骨肉腫、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、上衣肉腫、スウィング肉腫、限局性結節性過形成、ガストロノーマ、生殖細胞腫瘍、グリア芽腫、グルカゴノーマ、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝細胞腺腫、肝細胞腺腫症、肝細胞癌、インスリナイト(insulinite)、上皮内癌、上皮内扁平細胞癌、浸潤性扁平上皮癌、大細胞癌、脂肪肉腫、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、平滑筋肉腫、黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、神経鞘腫瘍、髄芽腫、髄様上皮腫、中皮腫、粘膜表皮癌、骨髄性白血病、神経芽腫、神経上皮腺癌、結節型黒色腫、骨肉腫、卵巣癌、乳頭漿液性腺癌、下垂体部腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽細胞腫、腎細胞癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性腺癌、扁平細胞癌、小細胞癌、柔組織癌、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平上皮癌、扁平細胞癌、未分化癌、ぶどう膜黒色腫、いぼ状癌、膣/外陰部癌、ビポーマ、ウィルムス腫瘍の群より選択される。さらにより好ましくは、本発明の化合物を用いて治療しようとする腫瘍/癌としては、脳の癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、急性骨髄性白血病、プレB細胞急性リンパ芽球性白血病、膀胱癌、星状細胞腫、好ましくは、グレードII、IIIまたはIVの星状細胞腫、グリア芽腫、好ましくは、多形成グリア芽細胞腫、小細胞癌、および非小細胞癌、好ましくは、非小細胞肺癌、転移性黒色腫、アンドロゲン非依存的転移性前立腺癌、アンドロゲン依存的転移性前立腺癌および胸部癌、好ましくは、乳管癌または乳癌が挙げられる。
【0083】
本発明の特定の実施形態においては、癌または癌において生じる腫瘍を形成する細胞は、高レベルのIL-6型サイトカインを提示することを特徴とする。本発明の文脈においては、「高レベル」のIL-6型サイトカインについて、サイトカインの濃度は対照サンプル中に生じる濃度よりも、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%以上高いと理解される。
【0084】
対照サンプルは、試験サンプル中のIL-6型サイトカインの相対レベルの決定のための参考として用いられる前記サイトカインのレベルを有するサンプルと理解される。典型的には、参考サンプルを、臨床的な観点から文書で十分に立証された患者、および疾患を提示しない患者から取得する。前記サンプル中で、バイオマーカー濃度を、例えば、参考集団中の平均濃度の決定を用いて決定することができる。特定のマーカーの参考濃度の決定においては、患者の年齢、性別、身体状態などのサンプルの型のいくつかの特徴を考慮に入れる必要がある。例えば、参考サンプルを、集団が統計的に有意となるように、少なくとも2人、少なくとも10人、少なくとも100人から1000人以上の個人群の同一量から取得することができる。
【0085】
IL-6型サイトカインの濃度を、間質ギャップ中で細胞内で、または細胞内タンパク質と間質ギャップ中に認められるものの両方がある抽出物中で決定することができる。IL-6サイトカインのレベルを、その目的にとって好適なアッセイを用いて前記サイトカインの活性を測定する手段により、または免疫学的方法を用いてタンパク質量を測定する手段により、またはIL-6型サイトカインに対応するmRNAを測定する手段により決定することができる。
【0086】
別の特定の実施形態においては、前記癌はJAK-STATシグナリング経路の高い活性により引き起こされ、それは、別のさらにより特定の実施形態においては、グリオーマ、好ましくはグレードIVのグリオーマである。
【0087】
上記のように、本発明の阻害剤は、腫瘍幹細胞の増殖を阻害することができ、その使用は幹細胞の増殖の阻害から利益を得ることができる疾患の治療にとって特に有用である。かくして、好ましい実施形態においては、前記阻害剤は、腫瘍幹細胞の自己再生を介して作用する。
【0088】
用語「動脈硬化症」は、動脈壁の肥厚および硬化に関する。特殊な型の動脈硬化症がアテローム性動脈硬化症であり、これは多くの冠動脈疾患、大動脈瘤および下肢の動脈疾患の原因であり、それはさらに脳血管疾患に寄与する。典型的には、正常な動脈は単一層の内皮細胞により形成される内部部分(内膜)を有する。この層の上にある層は、平滑筋細胞のみを含む、いわゆる中層である。次いで、外側の層は外膜である。加齢と共に、内膜の幅は、一部には平滑筋細胞の移住および増殖の結果として継続的に増加する。また、膨張プロセスが血管壁に対する損傷を引き起こす時に起こるものなどの、いくつかの外傷的事象または介入の結果として、内膜の幅の同様の増加も起こる。本発明において用いられる化合物は、内皮細胞、平滑筋細胞および線維芽細胞の増殖を阻害するのに有用である可能性がある。従って、本発明に記載のラブダン型ジテルペノイド化合物も、動脈硬化症状の治療に用いることができる。「動脈硬化症状」は、古典的なアテローム性動脈硬化症、加速性アテローム性動脈硬化症ならびに糖尿病および糖尿病性糸球体硬化症に由来する血管合併症などの、内皮細胞および/または血管平滑筋細胞の望ましくない増殖を特徴とする任意の他のアテローム性動脈硬化症状と理解される。
【0089】
用語「再狭窄」は、冠動脈を形成する内皮細胞への機械的損傷により引き起こされる増殖因子の放出の結果としての細胞の過度の増殖および移住を示す疾患と理解される。
【0090】
「血管新生疾患」は、異常な新血管形成を示す疾患または医学的症状と理解される。そのような疾患または症状としては、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、慢性関節リウマチならびに血管内皮腫、血管腫およびカポジ肉腫などのいくつかの癌が挙げられる。内皮細胞および血管平滑筋細胞の増殖が、血管新生の主な特徴である。本発明に記載の化合物は、前記増殖を阻害する、および従って、前記血管新生に全面的に、または部分的に依存する血管新生症状の進行を阻害するのに有用である。
【0091】
用語「線維症」は、器官または組織における線維性結合組織の形成または過剰な発達に関する。線維症としては、例えば、心内膜心筋線維症、特発性肺線維症、肺気腫、肺線維症(慢性閉塞性肺疾患を誘導する)、ペイロニー病、強皮症、びまん性実質性肺疾患、ケロイド、縦隔線維症、進行性塊状線維症、増殖性線維症、新生物線維症、間質性腎線維症、肝線維症、手術痕または熱傷が挙げられる。
【0092】
用語「皮膚疾患」は、任意の増殖性機能障害と関連する細胞増殖を示す皮膚の疾患と理解される。これらの機能障害としては、例えば、ケロイド、肥大熱傷痕、脂漏性角化症、パピローマウイルス感染、光線角化症および皮膚炎が挙げられる。
【0093】
用語「炎症疾患」は、任意の増殖性機能障害と関連する細胞増殖の結果として炎症を引き起こす疾患と理解される。それらのものとしては、例えば、増殖性糸球体腎炎、エリテマトーデス、強皮症、一時的関節炎、血栓血管炎および皮膚粘膜リンパ節症候群が挙げられる。
【0094】
別の態様においては、本発明は、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療のための、治療上有効量の本発明に従う阻害剤と共に製薬上許容し得る担体を含む医薬組成物に関する。望ましくない細胞増殖と関連する疾患の例は本明細書に上記されている。
【0095】
本発明の文脈において、「治療上有効量」は、この特定の事例においては、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療である望ましい効果を達成するのに必要である、IL-6型サイトカインの発現および/または活性を阻害する薬剤の量と理解される。一般的には、投与される本発明に記載の阻害剤の治療上有効量は、他の因子のうち、治療しようとする個体、前記個体が罹患している疾患の重篤度、選択される剤形などに依存するであろう。この理由から、本発明に記載の用量は、当業者にとっての指針に過ぎないことを考慮しなければならず、後者は以前に記載の変数に従って用量を調整しなければならない。にもかかわらず、本発明に記載の阻害剤を、0.1~1000 mg/kg体重/日、好ましくは10 mg/kg体重/日を含む典型的な総日用量で、1日に1回以上、例えば、1日に1、2、3または4回投与することができる。
【0096】
本明細書の文脈において、用語「治療」または「治療すること」とは、望ましくない細胞増殖と関連する疾患または該疾患と関連する1種以上の症候を防止、軽減または除去するための本発明に従う阻害剤の投与を意味する。「治療」はまた、前記疾患の生理学的後遺症を防止、軽減または除去することを含む。本発明の文脈においては、用語「軽減する」とは、主観的(患者の感覚もしくは患者について)および客観的(測定されたパラメーター)に、治療される患者の状況の任意の改善を意味すると理解される。
【0097】
用語「ビヒクル、アジュバントおよび/または担体」は、活性成分と共に投与される分子的実体または物質に関する。そのような医薬ビヒクル、アジュバントまたは担体は、石油もしくは動物のもの、植物もしくは合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの水および油などの滅菌液体、賦形剤、崩壊剤、湿潤剤または希釈剤であってよい。好適な医薬担体は、E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0098】
本発明の文脈においては、用語「製薬上許容し得る」は、生理学的に許容し得るものであり、典型的には、それらをヒトに対して投与した場合、アレルギー反応または消化管障害、眩暈などの同様の副作用を引き起こさない分子的実体および組成物に関する。用語「製薬上許容し得る」は、連邦もしくは州政府の規制当局により認可されるか、または米国薬局方もしくは動物、およびより具体的には、ヒトにおける使用のための他の一般的に認識される薬局方に含まれることを意味するのが好ましい。
【0099】
IL-6型サイトカインの発現および/もしくは活性の阻害剤、ならびにそれらを含む医薬組成物を、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療において有用な他のさらなる薬剤と一緒に用いることができる。前記さらなる薬剤は、同じ医薬組成物の一部を形成してもよく、またはあるいは、それらを、IL-6型サイトカインの発現および/もしくは活性の前記阻害剤を含む医薬組成物の投与と同時であっても、もしくは同時でなくてもよいそれらの投与のために別々の組成物の形態で提供してもよい。
【0100】
望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療において有用な他のさらなる薬剤の例としては、限定されるものではないが、例えば、シクロホスファミド、カルムスチン、ダウノルビシン、メクロレタミン、クロラムブシル、ニムスチン、メルファランなどのアルキル化剤;例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシンなどのアントラサイクリン;例えば、パクリタキセル、ドセタキセルなどのタキサン化合物;例えば、エトポシド、テニポシド、ツリポシド、イリノテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤;例えば、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、メルカプトプリン、メトトレキサート、チオグアニン、フトラフルなどのヌクレオチド類似体;例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチンなどの白金に基づく薬剤;例えば、ビンクリスチン、ロイコボリン、ロムスチン、プロカルバジンなどの抗新生物剤;例えば、タモキシフェン、フィナステリド、5-α-リダクターゼ阻害剤などのホルモン調節剤;例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンなどのビンカアルカロイドが挙げられる。好適な化学療法剤は、The Merck Index in CD-ROM、第13版などの文献により詳細に記載されている。
【0101】
本発明の医薬組成物を、任意の好適な投与経路、例えば、経口、非経口(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内など)、直腸などにより、典型的には、治療しようとする疾患の慢性的性質に起因して経口経路により投与することができる。
【0102】
経口経路により投与される医薬剤形の実例としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、溶液、懸濁液などが挙げられ、それらは結合剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、湿潤剤などの従来の賦形剤を含んでもよく、従来の方法により調製することができる。また、前記医薬組成物は、例えば、好適な剤形中、滅菌溶液、懸濁液もしくは凍結乾燥産物の形態での非経口投与に好適なものであってよく、この場合、前記医薬組成物は結合剤、試薬などの好適な賦形剤を含むであろう。いずれの場合でも、賦形剤を、選択した医薬剤形に応じて選択することができる。
【0103】
薬剤の様々な医薬剤形およびその調製に関する概説を、教科書「Tratado de Farmacia Galenica」、C. Fauli i Trillo、第10版、1993、Luzan 5, S.A. de Edicionesに見出すことができる。
【0104】
当業者であれば理解できるように、本発明に記載のIL-6型サイトカインの発現および/もしくは活性の阻害剤が、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、干渉RNA(siRNA)、触媒的RNAまたは特異的リボザイム、デコイ活性を有するRNAなどのヌクレオチド配列を含む場合、本発明の医薬組成物を、遺伝子療法におけるその使用のために意図される組成物の形態で製剤化することができる;非限定例として、この場合、本発明の医薬組成物は、前記ヌクレオチド配列または上記配列を含む遺伝子構築物を含むウイルスまたは非ウイルスベクターを含んでもよい。非限定例として、前記ベクターは、例えば、レトロウイルス、アデノウイルスなどに基づくウイルスベクター、またはDNA-リポソーム、DNA-ポリマー、DNA-ポリマー-リポソーム複合体などの非ウイルスベクターであってよい[「Nonviral Vectors for Gene Therapy」、Huang, HungおよびWagner(編)、Academic Press (1999)を参照されたい]。前記ベクターを、従来の方法によりヒトまたは動物の体内に直接投与することができ、あるいはそれらを用いて、細胞、例えば、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞をex vivoで形質転換し、トランスフェクトするか、または感染させた後、それらをヒトまたは動物の体内に埋込み、所望の治療効果を得ることができる。ヒトまたは動物の体内へのそれらの投与のために、前記細胞を、該細胞の生存能力に有害に作用しない好適な培地中で製剤化することができる。
【0105】
本発明のスクリーニング方法
本発明者らにより為され、本明細書に記載された知見は、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療または該疾患の診断に適用されるだけでなく、JAK/STATカスケードの活性化におけるLIFの関与を、IL-6型サイトカインまたはその機能的に等価な変異体により誘導される腫瘍細胞の細胞増殖を遮断/阻害することができる化合物の同定のためのスクリーニング方法の開発に用いることもできる。
【0106】
従って、別の態様においては、本発明は、IL-6型サイトカインまたはその機能的に等価な変異体により誘導される腫瘍細胞の細胞増殖を遮断/阻害することができる化合物の同定のためのin vitro方法であって、
(i)IL-6型サイトカインの受容体を発現する細胞と、IL-6型サイトカインおよび候補化合物とを接触させる工程、ならびに
(ii)前記細胞の細胞増殖を遮断する化合物を同定する工程、
を含む、前記方法に関する。
【0107】
第1の工程において、本発明の方法は、IL-6型サイトカインの受容体を発現する細胞と、IL-6型サイトカインとを、任意の純度の候補化合物の存在下で接触させることを含む。
【0108】
本発明の文脈において、「細胞」は、IL-6型サイトカインの受容体を発現する任意の細胞と理解される。IL-6型サイトカインの受容体が発現され、本発明の方法において用いることができる細胞としては、乳癌細胞、膀胱癌細胞、黒色腫細胞、卵巣癌細胞、膵臓癌細胞、前立腺癌細胞、結腸癌細胞、肺癌細胞などの固形腫瘍に由来する細胞、ならびに白血病およびリンパ腫細胞などの液体腫瘍に由来する細胞が挙げられる。特定の実施形態においては、IL-6型サイトカインの受容体を発現する細胞は、グリオーマ細胞、好ましくは、グリオーマ開始細胞(GIC)である。
【0109】
LIF受容体(LIFR)、オンコスタチンM受容体(OMSR)などの、IL-6型サイトカインの受容体の例を、AuernhammerおよびMelmed, 2000(Endocrine reviews, vol. 21(3): 313-345)に見出すことができる。かくして、研究対象の細胞としては、高等真核細胞、好ましくは、哺乳動物細胞が挙げられる。好ましくは、本発明において用いられる細胞は、IL-6型サイトカインの受容体が構成的に発現される細胞である。あるいは、従来の細胞系がIL-6型サイトカインの受容体を好適に発現することがわかっている場合には直接的に、または前記受容体の発現を可能にするDNA構築物の以前のトランスフェクションの後に、それらを用いることもできる。この目的にとって好適な細胞としては、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK 293、3T3、WI38系などの細胞が挙げられる。好ましい実施形態においては、本発明の方法において用いられる細胞は、グリオーマ細胞、好ましくは、グレードIVのグリオーマ細胞である。
【0110】
当業者であれば、本発明のスクリーニング方法において用いられる細胞中で発現される受容体の型に応じて、対応するサイトカインを使用する必要があることを観察できるであろう。このサイトカインを、LIF、IL-6、IL-11、オンコスタチンM、カルジオトロフィン-1、CNTFおよびCLCの群より選択するのが好ましい。
【0111】
前記細胞と候補化合物との接触を、IL-6型サイトカインの受容体を発現する培養細胞と、DMSOなどのその相互作用にとって好適な溶媒中のIL-6型サイトカインおよび候補化合物とを直接接触させることなどの当業者には公知の任意の方法を用いて行うことができる。
【0112】
本発明に従えば、細胞と候補化合物とを「接触させること」は、標的細胞の近く、細胞の表面上、またはその内部に候補化合物を運搬する任意の可能な方法を含む。かくして、候補化合物が低分子量の分子である事象においては、前記分子を培地に添加するだけで十分である。候補化合物が高分子量の分子(例えば、核酸もしくはタンパク質、抗体またはポリペプチドなどの生物学的ポリマー)である事象においては、この分子を細胞内部に接近させるための手段を供給することが必要である。候補分子が核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、干渉RNA(siRNA)、触媒的RNAまたは特異的リボザイム、デコイ活性を有するRNA)である事象においては、従来のトランスフェクション方法をDNA構築物の導入に用いることができる。候補化合物がタンパク質である事象においては、一度それらが細胞内部に入ったら、前記細胞はタンパク質と直接接触し、かつその転写/翻訳を可能にするエレメントに結合したそれをコードする核酸と接触することができる。その目的のために、以前に記載された方法のいずれかを用いて、細胞内部へのその進入を可能にすることができる。あるいは、前記細胞を、HIV-1 TATタンパク質に由来するTatタンパク質、D. melanogaster Antennapediaタンパク質のホメオドメインの第3へリックス、単純ヘルペスウイルスVP22タンパク質およびアルギニンオリゴマーなどの、細胞内部へのタンパク質の転位を促進することができるペプチドで改変された、試験しようとするタンパク質の変異体と接触させることができる(Lindgren, A.ら、2000, Trends Pharmacol. Sci, 21:99-103、Schwarze, S.R.ら、2000, Trends Pharmacol. Sci., 21:45-48、Lundberg, M.ら、2003, Mol. Therapy 8:143-150ならびにSnyder, E.L.およびDowdy, S.F., 2004, Pharm. Res. 21:389-393)。
【0113】
好ましくは、候補化合物は単離されていないが、多かれ少なかれ天然起源に由来する複雑な混合物の一部を形成するか、または化合物のライブラリーの一部を形成する。本発明の方法に従ってアッセイすることができる化合物ライブラリーの例としては、限定されるものではないが、ペプチドとD-アミノ酸を含むペプチド類似体もしくは非ペプチド結合を含むペプチドの両方を含むペプチドのライブラリー、ホスホロチオエートの非ホスホジエステル結合を有する核酸もしくはペプチド核酸型を含む核酸のライブラリー、抗体、炭水化物、低分子量化合物、好ましくは、有機化合物、ペプチド模倣物質などのライブラリーが挙げられる。低分子量有機化合物のライブラリーを用いる事象においては、前記ライブラリーが細胞内部により容易に接近できる化合物を含むように、該ライブラリーを予備選択することができる。かくして、前記化合物を、サイズ、親油性、親水性、水素結合を形成する能力などの決定されたパラメーターに基づいて選択することができる。
【0114】
あるいは、候補化合物は、天然起源から得られた抽出物の一部を形成してもよい。天然起源は、限定されるものではないが、陸生生物、空中生物、海洋生物などの抽出物などの、任意の環境から得られた動物、植物であってよい。
【0115】
第2の工程において、本発明は、IL-6型サイトカインの受容体を発現する細胞の細胞増殖を遮断する化合物を同定することを含む。細胞増殖が遮断されたかどうかを検出するのに好適な方法の例としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
【0116】
・テロメラーゼ活性の決定
テロメラーゼの酵素活性を、当業界で公知の任意の方法を用いて決定することができる。例えば、単一のテロメア配列の2、3回以上の反復を含む特定の反復配列の伸長速度を決定することにより、テロメラーゼ活性を決定することができる(Yegorov,E.E.ら、1997, Mol.Biol., 31:130-136)。前記活性を測定するために、細胞質抽出物、核抽出物、細胞溶解物または全細胞を用いることができる。テロメラーゼ活性の「増加」は、特定の細胞におけるテロメラーゼ活性の絶対レベルが、同じ個体中の通常の細胞と比較して、または前記症状に罹患していない被験体中の通常の細胞と比較して増加していることを意味すると理解される。
【0117】
・テロメアの長さの決定
テロメアの長さを決定するための方法は、特に、Harley, C. B.ら(Nature, 1990, 345:458-460); Levy, M. Z.ら(J. Mol.Biol., 1992, 225:951-960); Lindsey, J.ら(Mutat. Res., 1991, 256:45-48)およびAllsopp, R. C.ら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1992, 89:10114-10118)により当業界で大きく記載されている。テロメアDNAを断片化しない制限エンドヌクレアーゼを従来通り用いて、その分子量により得られた断片を後に分離し、テロメアの配列に特異的なプローブを用いるハイブリダイゼーションによりテロメアを検出する。
【0118】
・細胞増殖の決定
Harleyら(Nature, 1990, 345: 458-460)により記載されたような、細胞分裂時間の決定などの当業者には広く知られた方法を用いて、細胞増殖を決定することができる。細胞中へのトリチウム化ウリジンの取込みの決定により、またはBrdUを用いる比色分析により、細胞増殖速度を決定することができる。
【0119】
本発明において、「IL-6型サイトカインの機能的に等価な変異体」は、アミノ酸配列が(i)IL-6型サイトカインのアミノ酸配列と実質的に相同である、および(ii)前記IL-6型サイトカインと同じ機能を実施するタンパク質と理解される。別の特異的機能を有するタンパク質の機能的類似性を、発現の低下時に、タンパク質の活性を低下させ、次いで、他のタンパク質の配列を発現することによりその活性を回復させる特定のタンパク質をコードする遺伝子の発現を用いる干渉アッセイを用いて決定することができる。これらの実験を、特異的タンパク質および誘導性プロモーターにより調節されるか、または調節されない他のタンパク質に特異的な配列を含む発現ベクターの配列に特異的かつ相補的な干渉RNA配列を用いて実施する。
【0120】
アミノ酸配列が、特定のアミノ酸配列に関して、少なくとも70%、有利には、少なくとも75%、典型的には、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%、97%、98%または99%の同一性の程度を有する場合、前記アミノ酸配列は前記特定のアミノ酸配列と実質的に相同である。2個のアミノ酸配列間の同一性の程度を、従来の方法により、例えば、BLAST[Altschul S.F.ら、Basic local alignment search tool. J Mol Biol. 1990 Oct 5; 215(3):403-10]などの、当業界で公知の標準的な配列アラインメントアルゴリズムを用いて決定することができる。
【0121】
当業者であれば、タンパク質の機能にとって重要でない位置でのアミノ酸の保存的置換をもたらすIL-6型サイトカインをコードする遺伝子のヌクレオチド配列中の突然変異が、その全体のグローバル構造または機能に影響しない進化的に中立の突然変異であることを理解できるであろう。前記変異体は本発明の範囲内にある。IL-6型サイトカインに関して1個以上のアミノ酸の挿入、欠失または改変を有し、およびさらに、前記サイトカインと同じ機能を保存するIL-6型サイトカインの機能的に等価な変異体も、本発明の範囲に含まれる。
【0122】
従って、本明細書で用いられる用語「機能的に等価な変異体」はまた、IL-6型サイトカインの任意の機能的に等価な断片を含む。用語「断片」は、タンパク質の一部を含むペプチドに関する。この場合、IL-6型サイトカインの機能的に等価な断片は、IL-6型サイトカインの一部を含み、該サイトカインと同じ機能を有するペプチドまたはタンパク質である。
【0123】
本発明の診断方法
本発明者らは、IL-6型サイトカイン、より具体的には、LIFが、JAK-STATカスケードの活性化に関与し、かくして、腫瘍幹細胞(癌幹細胞)の細胞増殖プロセスおよび増加を誘導することを示した。この知見により、IL-6型サイトカインのレベルの決定に基づいて望ましくない細胞増殖と関連する疾患を診断するための診断方法を開発することができる。
【0124】
かくして、別の態様においては、本発明は、被験体における望ましくない細胞増殖と関連する疾患の診断のため、または望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患に罹患する被験体の素因を決定するため、または被験体における望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患の段階もしくは重篤度を決定するため、または望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患を有する被験体に施された療法の効果をモニターするためのin vitro方法であって、前記被験体に由来する生物学的サンプル中のIL-6型サイトカインをコードする遺伝子または該遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現レベルを定量することを含み、対照サンプル中のIL-6型サイトカインをコードする遺伝子または該遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現と比較して、IL-6型サイトカインをコードする遺伝子または該遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現の増加が、望ましくない細胞増殖と関連する疾患、または望ましくない細胞増殖と関連する疾患に罹患する前記被験体のより大きい素因または前記被験体に施された療法に対する無応答性を示す、前記方法に関する。
【0125】
本明細書で用いられる診断することとは、被験体が疾患に罹患する確率を評価することに関する。当業者であれば理解できるように、そのような評価は通常、診断しようとする被験体の100%について正確でなくてもよいが、そうであるのが好ましい。しかしながら、この用語は、被験体の統計的に有意な部分が疾患に罹患するか、またはそれに対する素因を有すると同定できる必要がある。当業者であれば、いくつかのよく知られた統計的評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、Mann-Whitney検定などを単純に用いることにより、一部が統計的に有意であるかどうかを決定することができるであろう。その詳細は、DowdyおよびWearden、Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York, 1983に記載されている。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は、好ましくは0.2、0.1、0.05である。
【0126】
本明細書で用いられる用語「素因」とは、被験体が依然として疾患、または上記の疾患の症候のいずれか、または他の診断基準を生じていないが、特定の確率で将来疾患を生じるであろうことを意味する。前記確率は、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の開始の統計的確率とは有意に異なるであろう。望ましくない細胞増殖と関連する疾患を生じる確率が、素因の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%であることを診断することが好ましい。素因の診断を、予後または疾患を生じる被験体の確率の予測と呼ぶこともある。
【0127】
本発明の文脈において、「対照サンプル」は、本発明において用いられる遺伝子およびタンパク質の発現レベルの変動を決定するのに用いられる参考サンプルと理解される。一実施形態においては、健康な個体から得られた組織サンプルを用いて、提供されたシグナルから参考値を取得する。好ましくは、サンプル中のmRNAまたはポリペプチドの量が、集団中の前記分子の平均値を反映するように、いくらかの健康な個体の同じ組織からサンプルを取得、混合する。
【0128】
IL-6型サイトカインをコードする遺伝子の発現レベルの定量を、該遺伝子の転写の結果生じるRNA(mRNA)から、またはあるいは、前記遺伝子の相補的DNA(cDNA)から実施することができる。さらに、本発明の方法は、従来の技術(Chomczynskiら、Anal. Biochem., 1987, 162:156; Chomczynski P., Biotechniques, 1993, 15:532)を用いて実施することができる、総RNAを取得するための抽出工程を実施することを含んでもよい。
【0129】
実質的に任意の従来方法を本発明の文脈内で用いて、IL-6型サイトカインをコードする遺伝子によりコードされるmRNAまたはその対応するcDNAのレベルを検出および定量することができる。非限定例として、前記遺伝子によりコードされるmRNAのレベルを、従来の方法、例えば、mRNAの増幅および該mRNAの増幅産物の定量を含む方法、例えば、電気泳動および染色を用いて、またはあるいは、ノーザンブロットおよび目的の遺伝子のmRNAもしくはその対応するcDNAに特異的なプローブの使用、S1ヌクレアーゼを用いるマッピング、RT-PCR、ハイブリダイゼーション、マイクロアレイなどを用いて、好ましくは、プローブとプライマーの好適なセットを用いる定量的リアルタイムPCRを用いて定量することができる。同様に、IL-6型サイトカインをコードする遺伝子によりコードされる前記mRNAに対応するcDNAのレベルを、従来の技術を用いて定量することもできる;この場合、本発明の方法は、対応するmRNAの逆転写(RT)を用いる対応するcDNAの合成、次いで、該cDNAの増幅産物の増幅および定量の工程を含む。発現レベルを定量する従来の方法を、例えば、Sambrookら、2001. “Molecular cloning: a Laboratory Manual”、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.E., Vol. 1-3に見出すことができる。
【0130】
かくして、本発明の方法の特定の実施形態においては、IL-6型サイトカインをコードする遺伝子の発現レベルの定量は、前記遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)、前記mRNAの断片、前記遺伝子の相補的DNA(cDNA)、前記cDNAの断片、またはその混合物の定量を含む。
【0131】
別の特定の実施形態においては、IL-6型サイトカインをコードする遺伝子の発現レベルの定量を、定量的ポリメラーゼ連鎖反応を用いて実施する。
【0132】
さらに、本発明の方法を実行するために、IL-6型サイトカインをコードする前記遺伝子、すなわち、IL-6、IL-11、白血病阻害因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、カルジオトロフィン-1(CT-I)、毛様体神経栄養因子(CNTF)またはカルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)をコードする遺伝子によりコードされるタンパク質の発現レベルを定量することもできる。
【0133】
当業者には理解されるように、タンパク質の発現レベルを、任意の従来方法を用いて定量することができる。非限定例として、タンパク質のレベルを、例えば、該タンパク質(または抗原決定基を含むその断片)に結合する能力を有する抗体の使用および形成された複合体のその後の定量により定量することができる。これらのアッセイにおいて用いられる抗体を標識してもよいし、または標識しなくてもよい。用いることができるマーカーの実例としては、放射性アイソトープ、酵素、フルオロフォア、化学発光試薬、酵素基質もしくはコファクター、酵素阻害剤、粒子、染料などが挙げられる。非標識抗体(一次抗体)および標識抗体(二次抗体)を用いる本発明において用いることができる様々な公知のアッセイが存在する;これらの技術としては、ウェスタンブロット、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、競合的EIA(競合的酵素免疫アッセイ)、DAS-ELISA(二重抗体サンドイッチELISA)、免疫細胞化学技術および免疫組織化学技術、特異的抗体を含むタンパク質のバイオチップもしくはマイクロアレイの使用に基づく技術またはディップスティックなどの形式でのコロイド沈降に基づくアッセイが挙げられる。タンパク質を検出、定量するための他の方法としては、アフィニティクロマトグラフィー技術、リガンド結合アッセイなどが挙げられる。別の特定の実施形態においては、タンパク質レベルの定量を、ウェスタンブロット、免疫組織化学分析またはELISAを用いて実施する。
【0134】
別の好ましい実施形態においては、高い発現レベルは、一般的にはサンプル中のタンパク質のより高い特異的活性をもたらすため、IL-6型サイトカインの発現レベルの決定を、前記タンパク質の活性の測定により実行することができる。IL-6型サイトカインの活性を測定するためのアッセイは、本発明の治療方法の本文中に前記されている。
【0135】
望ましくない細胞増殖のマーカーとして用いることができるIL-6型サイトカインのレベルは本明細書に前記されており、本発明の方法に適用可能である。同様に、本発明の診断方法を、上記で定義された望ましくない細胞増殖と関連する任意の疾患に適用することができる。好ましい実施形態においては、望ましくない細胞増殖と関連する疾患は、癌、好ましくは、高レベルのIL-6型サイトカインまたは高い活性のJAK-STATシグナリング経路を有する癌である。
【0136】
本発明の方法の実施は、試験しようとする被験体から生物学的サンプルを取得することを含む。前記サンプルの非限定例としては、様々な型の生物学的液体、例えば、血液、血清、血漿、脳脊髄液、腹水、糞便、尿および唾液、ならびに組織サンプルが挙げられる。組織サンプルなどの生物学的液体のサンプルを、任意の従来方法により取得することができる;例えば、組織サンプルは、外科的切除により得られた生検サンプルであってよい。
【0137】
別の態様においては、本発明は、被験体における癌の診断のため、または被験体が前記癌に罹患する素因を決定するため、または被験体における前記癌の段階もしくは重篤度を決定するため、または前記癌を有する被験体に施された療法の効果をモニターするための、IL-6型サイトカインをコードする遺伝子または該遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現レベルの定量のための試薬を含むキットの使用であって、該試薬が、対照サンプルにおける前記遺伝子または前記タンパク質もしくはその機能的に等価な変異体の発現の増加を検出した場合、前記被験体が望ましくない細胞増殖と関連する疾患に罹患し得るか、または望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患に罹患するより高い素因を示すか、または前記疾患のより高い重篤度を示すか、または施された療法が有効でない、前記使用に関する。
【0138】
前記キットの使用の定義において用いられる全ての用語および表現は、他の本発明の態様および本発明の特定の実施形態について以前に記載され、説明された通りであり、本明細書に記載のキットの使用にも適用可能である。
【0139】
特注療法を設計するため、およびIL-6阻害剤に基づく療法から利益を得ることができる患者を選択するための方法
本発明者らは、IL-6ファミリーに属するサイトカインおよび、より具体的には、LIFの阻害剤が、腫瘍細胞の増殖の阻害を引き起こすことを示した。同様に、彼らは、非常に高いレベルの前記サイトカインを有する腫瘍が存在することを観察し、従って、彼らは、IL-6阻害剤の使用に基づく療法が、高レベルのIL-6型サイトカインが存在する患者の治療にとって特に有益であり得ると提唱した。
【0140】
かくして、別の態様において、本発明は、望ましくない細胞増殖と関連する疾患に罹患する患者のための特注療法を設計するためのin vitro方法であって、
(a)前記患者におけるIL-6型サイトカインの発現レベルを定量すること、および
(b)前記発現レベルと、対照レベルとを比較すること、
を含み、前記患者におけるIL-6型サイトカインの発現レベルが対照値よりも高い場合、IL-6型サイトカインの阻害剤を前記患者に投与する、前記方法に関する。
【0141】
別の態様においては、本発明は、IL-6型サイトカインの阻害剤を用いて治療しようとする、望ましくない細胞増殖と関連する疾患に罹患する患者を選択するためのin vitro方法であって、
a)前記患者におけるIL-6型サイトカインの発現レベルを定量すること、および
b)前記発現レベルと対照レベルとを比較すること、
を含み、前記患者におけるIL-6型サイトカインの発現レベルが対照値よりも高い場合、前記患者を、IL-6型サイトカインの阻害剤を用いる治療を受けるように選択する、前記方法に関する。
【0142】
両態様において、好ましい実施形態は、望ましくない細胞増殖と関連する疾患を、望ましくない幹細胞増殖と関連させることである。
【0143】
好ましい実施形態においては、IL-6型サイトカインの阻害剤を、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特異的リボザイム、抗体およびポリペプチドからなる群より選択する。前記阻害剤は、好ましくは、抗体、および、より好ましくは、前記IL-6型サイトカインに特異的な阻害抗体またはIL-6型サイトカイン受容体を遮断する抗体である。
【0144】
患者を選択するため、または特注療法を設計するためのマーカーとして用いることができるIL-6型サイトカインは、上記で詳細に説明されており、LIF、IL-6、IL-11、オンコスタチンM、カルジオトロフィン-1、CTNFおよびCLCから選択される。
【0145】
望ましくない細胞増殖を示す疾患は、上記のものである。好ましい実施形態においては、望ましくない細胞増殖を示す前記疾患は、癌である。さらにより好ましくは、前記癌は、高い活性のJAK-STATシグナリング経路により引き起こされる。
【0146】
好ましい実施形態においては、前記癌は、以下のもの:グリオーマ、プレB細胞急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、結腸直腸癌、膀胱癌、乳管癌または乳癌のうちの1つである。さらにより好ましくは、前記グリオーマはグレードIVのグリオーマである。
【0147】
本発明の予後方法
別の態様においては、本発明は、望ましくない細胞増殖と関連する疾患に罹患する患者の平均余命を予測するための予後的in vitro方法に関する。この方法は、例えば、グリオーマの場合、対照患者よりもより高いLIF発現レベルを示す患者について平均余命が減少しているという観察に基づくものである(図12)。
【0148】
この方法は、
a)前記患者におけるIL-6型サイトカインの発現レベルを定量すること、および
b)前記発現レベルと対照レベルとを比較すること、
に基づき、前記患者におけるIL-6型サイトカインの発現レベルが、同疾患の対照患者の値よりも高い場合、前記患者は対照群よりも少ない平均余命を有する。
【0149】
より具体的な態様においては、IL-6型サイトカインの濃度を予後目的で、すなわち、前記疾患に罹患する個体の平均余命の予測のために測定することができる。この目的のために、腫瘍患者のIL-6型サイトカインの濃度を、それと同じIL-6型サイトカインの参考濃度と比較する。典型的には、参考患者群は、十分に立証され、同じ疾患に罹患する患者からなる。例えば、参考サンプルを、同じ疾患に罹患する患者集団が統計的に有意であるように、少なくとも2、少なくとも10、少なくとも100から1000を超える個体群の同一量から取得することができる。参考群は、以下の項目:
a)同じ疾患に罹患する全ての患者、
b)有意に上方調節されたIL-6型サイトカインのレベルを示さない同じ疾患に罹患する全ての患者、
c)有意に下方調節されたIL-6型サイトカインのレベルを示す同じ疾患に罹患する全ての患者、
のうちの1つ以上からなってよい。
【0150】
IL-6型サイトカインの濃度を、細胞内で、間質ギャップ中で、または細胞内タンパク質と間質ギャップ中に認められるものの両方を含む抽出物中で決定することができる。IL-6サイトカインのレベルを、その目的にとって好適なアッセイを用いる前記サイトカインの活性を測定することによるか、または免疫学的方法を用いてタンパク質量を測定することによるか、またはIL-6型サイトカインに対応するmRNAを測定することにより決定することができる。
【0151】
この態様において、好ましい実施形態は、望ましくない細胞増殖と関連する疾患である。より特定の実施形態においては、望ましくない細胞増殖と関連する疾患は、癌である。さらにより好ましくは、癌の型は、前記癌の患者のサブセット(部分集合)においてIL-6型サイトカインの異常に高いレベルと関連する。より特定の実施形態においては、前記癌は、以下のもの:白血病、グリオーマ、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌のうちの1つである。より特定の実施形態においては、白血病は、プレB細胞急性リンパ芽球性白血病または急性骨髄性白血病であり、乳癌は乳管癌または乳腺癌である。
【0152】
予後目的で患者を試験するためのマーカーとして用いることができるIL-6型サイトカインは、上記で詳述されており、LIF、IL-6、IL-11、オンコスタチンM、カルジオトロフィン-1、CNTFおよびCLCから選択される。
【0153】
統計学的方法により、IL-6型サイトカインのレベルに基づいて患者の平均余命を予測することができる。
【0154】
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]LIFの発現および/または活性の阻害剤を含む、望ましくない細胞増殖と関連する疾患の治療のための医薬組成物であって、望ましくない細胞増殖と関連する疾患が癌であり、癌が、乳房、心臓、肺、小腸、結腸、脾臓、膀胱、頭部、頸部、卵巣、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣および肝臓の腫瘍から選択される、医薬組成物。
[実施形態2]前記剤が腫瘍幹細胞の自己再生の阻害を介して作用する、実施形態1に記載の医薬組成物。
[実施形態3]前記阻害剤が、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特異的リボザイム、抗体、ポリペプチドおよびサイトカイン受容体結合の阻害剤からなる群より選択される、実施形態1または2に記載の医薬組成物。
[実施形態4]前記抗体が前記LIFに特異的な阻害抗体またはLIF受容体を遮断する抗体である、実施形態3に記載の医薬組成物。
[実施形態5]前記癌が、高レベルのLIFを示すことを特徴とする、実施形態1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態6]前記癌が、JAK-STATシグナリング経路の高い活性により引き起こされる、実施形態1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態7]前記癌が、以下のもの:グリオーマ、プレB細胞急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、結腸直腸癌、膀胱癌、乳管癌または乳腺癌のうちの1つである、実施形態5~6のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態8]前記グリオーマがグレードIVのグリオーマである、実施形態7に記載の医薬組成物。
[実施形態9]治療上有効量の前記剤と、製薬上許容し得る担体とを含む、実施形態1~8のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態10]LIFにより誘導される腫瘍細胞の細胞増殖を遮断/阻害することができる化合物の同定のためのin vitro方法であって、
(i)LIFの受容体を発現する細胞と、LIFおよび候補化合物とを接触させる工程、ならびに
(ii)前記細胞の細胞増殖を遮断する化合物を同定する工程、
を含む、前記方法。
[実施形態11]LIFの受容体を発現する細胞が、グリオーマ細胞、好ましくは、グリオーマ開始細胞(GIC)である、実施形態10に記載の方法。
[実施形態12]望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患に罹患する被験体の素因の決定を補助するため、または被験体における望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患の段階もしくは重篤度の決定を補助するため、または望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患を有する被験体に施された療法の効果のモニターを補助するためのin vitro方法であって、
前記被験体に由来する生物学的サンプル中の、LIFをコードする遺伝子または該遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現レベルを定量すること
を含み、対照サンプル中でのLIFをコードする遺伝子または該遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現と比較した、LIFをコードする遺伝子または該遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現の増加が、前記被験体が望ましくない細胞増殖と関連する疾患に罹患するより高い素因を有することを示すものであるか、または前記疾患のより高い重篤度を示すものであるか、または前記被験体に施された療法に対する無応答性を示すものである、前記方法。
[実施形態13]望ましくない細胞増殖と関連する疾患に罹患する患者のための特注療法の設計を補助するためのin vitro方法であって、
(a)前記患者におけるLIF遺伝子またはタンパク質の発現レベルを定量すること、および
(b)前記発現レベルと対照レベルとを比較すること、
を含み、前記患者におけるLIF遺伝子またはタンパク質の発現レベルが、対照値よりも高い場合、LIFの阻害剤を前記患者に投与する、前記方法。
[実施形態14]LIFの阻害剤を用いて治療すべき、望ましくない細胞増殖と関連する疾患に罹患する患者の選択を補助するためのin vitro方法であって、
(a)前記患者におけるLIF遺伝子またはタンパク質の発現レベルを定量すること、および
(b)前記発現レベルと対照レベルとを比較すること、
を含み、前記患者におけるLIF遺伝子またはタンパク質の発現レベルが対照値よりも高い場合、LIFの阻害剤を用いる治療を受けるように前記患者を選択する、前記方法。
[実施形態15]望ましくない細胞増殖と関連する疾患に罹患する被験体の平均余命の予後判定を補助するためのin vitro方法であって、前記被験体に由来する生物学的サンプル中での、LIFをコードする遺伝子または該遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現レベルの定量を含み、対照サンプル中でのLIFをコードする遺伝子または該遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現と比較した、LIFをコードする遺伝子または該遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現の増加が、平均余命の減少を示すものである、前記方法。
[実施形態16]望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患が癌である、実施形態12~15のいずれかに記載の方法。
[実施形態17]前記癌が、高レベルのLIFを示すことを特徴とする、実施形態16に記載の方法。
[実施形態18]前記癌が患者の部分集合において異常に高レベルのLIFを示すことを特徴とする、実施形態16または17に記載の方法。
[実施形態19]前記癌が、JAK-STATシグナリング経路の高い活性により引き起こされる、実施形態16~18のいずれかに記載の方法。
[実施形態20]前記癌が、以下のもの:グリオーマ、プレB細胞急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、結腸直腸癌、膀胱癌、乳管癌または乳腺癌のうちの1つである、実施形態16~19のいずれかに記載の方法。
[実施形態21]前記グリオーマが、グレードIVのグリオーマである、実施形態20に記載の方法。
[実施形態22]LIFをコードする遺伝子の発現レベルの定量が、前記遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)、該mRNAの断片、前記遺伝子の相補的DNA(cDNA)、該cDNAの断片、またはその混合物の定量を含む、実施形態12~21のいずれかに記載の方法。
[実施形態23]LIFをコードする遺伝子の発現レベルの定量を、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて実施する、実施形態12~21のいずれかに記載の方法。
[実施形態24]タンパク質レベルの定量を、ウェスタンブロット、免疫組織化学分析またはELISAを用いて実施する、実施形態12~21のいずれかに記載の方法。
[実施形態25]タンパク質レベルの定量を、該タンパク質の活性の測定を用いて実施する、実施形態12~21のいずれかに記載の方法。
[実施形態26]前記剤が腫瘍幹細胞の自己再生の阻害を介して作用する、実施形態13~25のいずれかに記載の方法。
[実施形態27]前記阻害剤が、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特異的リボザイム、抗体、ポリペプチドおよびサイトカイン受容体結合の阻害剤からなる群より選択される、実施形態13~26のいずれかに記載の方法。
[実施形態28]前記抗体が、LIFに特異的な阻害抗体またはLIF受容体を遮断する抗体である、実施形態27に記載の方法。
[実施形態29]被験体が前記癌に罹患する素因を決定するため、または被験体における前記癌の段階もしくは重篤度を決定するため、または前記癌を有する被験体に施された療法の効果をモニターするためのキットであって、
LIFをコードする遺伝子または該遺伝子によりコードされるタンパク質もしくは該タンパク質の機能的に等価な変異体の発現レベルの定量のための試薬
を含み、前記試薬が対照サンプルと比較して前記遺伝子または前記タンパク質もしくはその機能的に等価な変異体の発現の増加を検出する場合、前記被験体が望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患に罹患するより高い素因を示すか、または前記疾患のより高い重篤度を示し得るか、または施された療法が有効でない、前記キット。
[実施形態30]望ましくない細胞増殖と関連する前記疾患が癌である、実施形態29に記載のキット。
[実施形態31]前記癌が、高レベルのLIFを示すことを特徴とする、実施形態30に記載のキット。
[実施形態32]前記癌がJAK-STATシグナリング経路の高い活性により引き起こされる、実施形態30に記載のキット。
[実施形態33]前記癌が、以下のもの:グリオーマ、プレB細胞急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、結腸直腸癌、膀胱癌、乳管癌または乳腺癌のうちの1つである、実施形態30~32のいずれかに記載のキット。
[実施形態34]前記グリオーマがグレードIVのグリオーマである、実施形態33に記載のキット。
[実施形態35]望ましくない細胞増殖と関連する疾患に罹患する患者においてLIFのレベルを測定するためのin vitro方法であって、
(a)前記患者におけるLIFの発現レベルを定量すること、および
(b)前記発現レベルと、同じ疾患に罹患する患者の対照レベルとを比較すること、
を含む、前記方法。
本発明を、以下の実施例を用いて説明するが、これは単に例示的なものであり、その非限定例として考慮しなければならない。
【実施例0155】
〔実施例1〕
1. 材料および方法
1.1 細胞系および一次細胞培養物
U373MGおよびA172細胞はJ. Rich氏およびD. Bigner氏から寛大にも贈られたものであり、それらを10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むDMEM中で培養した。腫瘍細胞の一次培養物(PCTC)およびGBMニューロスフェアを、記載のように作製した(Brunaら(2007) Cancer Cell 11, 147-160; Guntherら(2008) Oncogene. May 1;27(20):2897-909)。簡単に述べると、腫瘍のサンプルを、外科的切除後30分以内に処理した。ヒトグリオーマのサンプルの粉砕した小片を、PBS中の200 U/mlのコラゲナーゼI(Sigma)および500 U/mlのDNase I(Sigma)を用いて37℃で2時間、定常的に激しく攪拌しながら消化した。個々の細胞の懸濁液を、70μmの細胞濾紙(BD Falcon)を通して濾過し、PBSで洗浄した。最後に、細胞を再懸濁した後、PCTCの培養については、10%FBSを含むDMEM中で培養するか、またはGBMニューロスフェアの場合はニューロスフェア培地中で培養した。正常なヒト神経前駆細胞のニューロスフェアを、妊娠中絶後に回収されたヒト胎児大脳皮質組織(受胎後12~16週)から作製した。記載のようにサンプルを処理し、培養した(Poltavtsevaら(2002) Brain Res Dev Brain Res 134, 149-154)。ニューロスフェア培地は、B27(Gibco)、L-グルタミン(Gibco)、ペニシリン/ストレプトマイシン、および増殖因子(20 ng/mLのEGFおよび20 ng/mLのFGF-2(Peprotech))を補給した神経基礎培地(Gibco)からなる。
【0156】
ヒトグリオーマおよびヒト胚組織のサンプルは、Hospital Vall d'Hebronから取得したものである。臨床プロトコルは全ての被験者から得られたインフォームドコンセントと共にVall d'Hebronの倫理委員会(CEIC)により認可されたものである。
【0157】
1.2 プラスミドおよび試薬
U373MGのゲノムDNAを用いて、pGL2-basicルシフェラーゼベクター中にクローニングされるヒトLIFプロモーターの-634/+32領域を増幅した。欠失構築物(-267/+32)、および(-73/+32)を、前記構築物(-634/+32)の消化により作製した。前記構築物(-267/+32)中の-183 bpと-184 bpの位置に2個の点突然変異を導入して、Smad結合エレメント(SBE)を遮断し、構築物(-267/+32) mutSBEを作製した。TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3(R&D Systems)、TβRI阻害剤(SB431542、Tocris)、LIF(Chemicon)、LIFに対する中和抗体(R&D)、JAK阻害剤(四環式ピリドン6(P6)、Calbiochem)、Smad2、Smad3およびSmad5に標的化されたSMART siRNAの集合体(Dharmacon)、ならびに対照siRNA siGlo(Dharmacon)を、指示された濃度で用いた。p-Smad2、Smad2、p-STAT3(p-Tyr705)および総STAT3(Cell Signalling)ならびにSmad2、Smad3およびSmad4(Hataら(2000) Cell 100, 229-240)に対して特異的な抗体を、ウェスタンブロッティングに用いた。
【0158】
1.3 免疫細胞化学分析、ELISAおよびクロマチン免疫沈降
ニューロスフェアと分化したニューロスフェアの免疫細胞化学分析を、以下の抗体:抗ネスチン(Chemicon)、抗GFAP(Dako)、抗TuJ1(Chemicon)、抗O4(Chemicon)、抗Sox2(Chemicon)、抗α-チューブリン(Sigma)を用いて記載のように実施した(Geshwindら、2001)。4',6'-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)を用いて核を対抗染色した。
【0159】
培地中に分泌されたLIFタンパク質レベルの定量的測定のために、ヒトLIF ELISAキット(R&D Systems)を、製造業者の明細書に従って用いた。予め血清を枯渇させたU373MG細胞またはGBMニューロスフェアの上清を、指示された処理の48時間後に回収した。浮遊している細胞を廃棄し、5 mLの上清を、Amicon Ultra-4 PLCC Ultracel-PL 5 kDa膜(Millipore)を用いて、200μlの最終容量まで濃縮した。
【0160】
クロマチン免疫沈降を記載のように実施した(Brunaら、上掲)。一連のLIFプロモーターの近位および遠位プライマーは、それぞれ、(-410/-165)および(-4534/-4293)領域を含む。
【0161】
1.4 自己再生アッセイ
96穴プレートのウェル中に非常に低密度で同一数の細胞を播種することにより、ニューロスフェアの自己再生を評価した。細胞を、増殖因子の非存在下で、指示された化合物で処理し、培養物中で7日後に新しく形成されたニューロスフェアの総数を計数した(Leeら(2008) Cancer Cell 13, 69-80; ReynoldsおよびWeiss, (1996) Dev Biol 175, 1-13; Seabergおよびvan der Kooy, (2002) J Neurosci 22, 1784-1793)。
【0162】
1.5 定量的リアルタイムPCR
製造業者の推奨に従って、Applied Biosystems社製Taqmanプローブを用いて、qRT-PCRを実施した。反応をABI 7000配列検出装置(Perkin Elmer)中で実行し、対照サンプルまたは最初に定量したサンプルと比較したDDCt方法を用いて算出された倍数変化として結果を表した。18Sまたはβ-アクチンのリボゾームユニットを、内部正規化対照として用いた。
【0163】
1.6 ルシフェラーゼアッセイ
Lipofectamine 2000 (Invitrogen)を用いて、LIFプロモーターの様々な指示因子構築物および正規化対照としてのウミシイタケルシフェラーゼ(Promega)のプラスミドpRL-TKでA172細胞を一過的にトランスフェクトした。
【0164】
1.7 頭蓋内腫瘍アッセイ
7週齢のBalbc nu/nuメスマウス(Charles River Laboratories)の脳の右半球の線条体(ブレグマに関して1 mm前方、1.8 mm側方、および3.0 mm実質内)に、指示された量の細胞を定位的に接種した。マウスが神経症候を示すか、または有意な体重減少を示した時にマウスを犠牲にした。AVANCE 400システム(Bruker)と接続した9.4Tの垂直磁場での磁気共鳴画像化(MRI)により、試験を行った。キシラジン/ケタミンを用いる麻酔下で、0.25 mmol Gd/kg体重の用量でMRI造影剤、ガドリニウムジエチレントリアミン五酢酸をマウスに静脈内注射し、18無線周波数コイル(内径、35 mm)中に入れた。3つの直交軸上でローカライザーが画像を撮った後、マウスの全脳の画像を獲得した。
【0165】
1.8 統計分析
スピアマン相関検定を用いて、LIFとTGFβ2、Musashi-1、Sox2およびネスチンとの関係を分析した。グラフ中のデータを平均±標準偏差として提供する。
【0166】
〔実施例1〕
TGFβは患者由来GICの自己再生を誘導する
GIC(グリオーマ開始細胞)の自己再生能力に対するTGFβの効果を試験するために、外科的に除去されたヒトGBM(多形成グリア芽細胞腫)のサンプルから細胞を取得した。同じ腫瘍サンプルから、一方では腫瘍細胞の一次培養物(PCTC)を血清の存在下で作製し、平行して、腫瘍細胞をEGFおよびFGFの存在下で無血清培地中で培養した。EGFおよびFGFを補給した無血清培地中で培養した細胞は、記載のように(Galliら(2004) Cancer Res 64, 7011-7021; Guntherら、上掲; Leeら(2006) Cancer Cell 9, 391-403; Singhら(2003) Cancer Res 63, 5821- 5828)、非接着性多細胞スフェア(ニューロスフェア)を迅速に生成した(図1A)。腫瘍サンプルから生成されたニューロスフェアは、高レベルの神経前駆細胞マーカーMusashi-1、Sox2およびネスチンを発現し(図1B)、それらを血清の存在下で培養した場合、GFAP(アストロサイトマーカー)、Tuj-1(ニューロンマーカー)、およびO4(オリゴデンドロサイトマーカー)の発現を獲得する多系列分化を経験した(図2)。さらに、腫瘍由来ニューロスフェアは、PCTCと比較して非常に癌原性が高かった。ニューロスフェアの細胞とPCTCを、免疫抑制されたマウスの脳に同所移植した。磁気共鳴画像化(MRI)を用いて腫瘍増殖を評価し、マウスの体重をモニターした。ニューロスフェアの細胞は接種の30~60日後に腫瘍を生成し、激しい体重減少を引き起こしたが、PCTCは全ての事例において同じ間隔で腫瘍中で増殖しなかった(図1C)。かくして、ヒトGBMのサンプルから生成されたニューロスフェアは、神経前駆細胞マーカーを発現し、多系列分化能力を示し、非常に癌原性が高かった。これらの特徴は全て、患者由来GBMから得られたニューロスフェアがGICに富むことを示していた。
【0167】
ニューロスフェアを生成するGICの能力に基づくよく記載されたプロトコルに従って、GICの自己再生能力に対するTGFβの効果を評価することを決定した(ReynoldsおよびWeiss, 1996, Dev Biol. 175:1-13; Seabergおよびvan der Kooy, 2002, J Neurosci 22:1784-1793)。患者由来ニューロスフェアを個々の細胞に切り離し、増殖因子の非存在下で7日間、TGFβで処理するか、または未処理のまま放置し、新規に形成されたニューロスフェアと総細胞数を計数した。このプロトコルに従って、3人の異なる患者に由来するGICの自己再生に関する能力に対するTGFβの効果を評価した。TGFβによる処理は、ニューロスフェア数を有意に増加させ、総細胞数を増加させた(図1D、1E、1F)。これらの効果は、TGFβ I受容体阻害剤(TβRI)をTGFβと同時に添加した場合に遮断された。単離されたTβRI阻害剤は、有意な効果を有さなかった(図1D、1E、1F)。これらの結果は、TGFβ経路がGICの自己再生を増加させることを示していた。
【0168】
〔実施例2〕
TGFβはヒトGBMの細胞中でのLIFの発現を誘導する
GICに対するTGFβの効果を担う分子機構を精査することに決定した。GICの自己再生の調節に関与し得るGBM細胞中のTGFβへの遺伝子応答を精査した。以前の研究(Brunaら、2007)において、トランスクリプトーム分析を、TGFβおよび/またはTβRI阻害剤で処理したU373MGグリオーマ細胞系において行った。LIFはTβRIの活性に依存するU373MG中でTGFβに応答する63個の遺伝子のうちであった。LIF-LIFR/gp130-JAK-STATシグナリング経路は、胚性幹細胞(Niwaら、1998, Genes Dev, 12: 2048-2060; Williamsら、1988, Nature, 336:684-687)と神経前駆細胞(BauerおよびPaterson, 2006, J Neurosci, 26:12089-12099; Molneら、2000, J Neurosci Res, 59:301-311; Wrightら、2003, J. Neurochem, 86:179-195)の両方において、幹細胞の自己再生に関与し、LIFはGICに対するTGFβの効果を媒介することができると仮定された。TGFβにより媒介されるLIF転写の誘導が、患者由来の腫瘍細胞において観察されるかどうかを最初に決定した。11種の異なるヒトGBMに由来するPCTCの一団を、TGFβで3時間処理し、LIF mRNAのレベルを決定した。TGFβは、アッセイした全てのPCTCにおいて、LIFを誘導した(図3A)。これらの結果は、TGFβによるLIFの誘導が、多くのヒトGBMにおいて起こる一般的な現象であることを示していた。さらに、TGFβは、患者由来のニューロスフェアにおいてLIF転写を誘導することができ(図3B)、TGFβによるLIFの誘導がTβRI阻害剤の存在下で遮断されるため、この効果はTβRIの活性に依存していた(図3C)。TGFβファミリーの3つのメンバー(TGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3)は、患者由来のニューロスフェアにおいてLIFを誘導することができ(図3D)、予想されたように、TGFβによるLIF転写の誘導は、それを条件化ニューロスフェア培地におけるELISAを用いて測定した場合、LIFタンパク質の分泌の増加をもたらした(図3E)。
【0169】
〔実施例3〕
TGFβはLIFプロモーターに結合する活性化Smad複合体を介してLIFの発現を誘導する
TGFβによるLIFの転写調節を試験するために、ヒトLIFプロモーターを、pGL2-basic受容体構築物中にクローニングした。TGFβは、U373MG細胞中でLIFプロモーターの-634/+32および-276/+32領域を含むリポーター構築物をトランス活性化することができた。LIFプロモーターの-73/+32断片はTGFβに対する転写応答を失い、これはTGFβに応答するエレメントが-276/-73領域中に含まれることを示している(図4A、4B)。この領域は、SP1結合部位の近くに1個のSmad結合エレメント(SBE、5'GTCT-3')を含む(図4A)。SBEを突然変異させたところ、TGFβに対する応答が消失することが観察されたが(図4B)、これは活性化されたSmad複合体がLIFプロモーター中の近いSBEに結合して転写を誘導することを示している。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイを実施したところ、TGFβで処理した細胞において、内因性Smad2がLIFプロモーターの近い領域に結合するが、転写開始部位から4 kb上流の遠い領域には結合しないことが観察された(図4C)。SmadがTGFβによるLIFの発現の誘導に関与することを最終的に示すために、Smad2、Smad3、Smad2と3の両方、およびSmad4を、干渉RNAを用いて沈黙化させた。TGFβによるLIFの誘導は、Smad2およびSmad3、またはSmad4が低下した場合に減少したが、これは活性化されたSmad複合体がTGFβに対するLIFの転写応答にとって必要であることを示している(図4D)。それぞれのSmadのサイレンシングはTGFβにより誘導されるLIFのレベルに有意に影響しなかったため、Smad2およびSmad3は、このプロセスにおいては冗長である。予想されたように、患者由来のニューロスフェアにおけるTGFβによるLIFの誘導は、Smadにも依存していた。ヒトGBMにおけるSmad4のサイレンシングは、TGFβに対するLIFの応答を無効化した(図4E)。
【0170】
〔実施例4〕
TGFβは患者由来のニューロスフェアにおけるLIFの誘導を介してJK-STAT経路を誘導する LIFシグナリング経路がGBMニューロスフェアにおいて機能的であるかどうかを区別するために、ニューロスフェアを組換えLIFで処理し、LIF受容体複合体の下流の基質、STAT3のリン酸化レベルを決定した。組換えLIFはSTAT3の迅速なリン酸化を誘導したが、これは患者由来のニューロスフェアが機能的LIF受容体複合体を発現することを示している(図5A)。さらに、p-STAT3の誘導は、薬理学的JAK特異的四環式ピリドン6(P6)の存在によって阻害された(Pedranziniら、2006, Cancer Res, 66: 9714-9721; Thompsonら、2002, Bioorg Med Chem Lett, 12:1219-1223)(図5B)。興味深いことに、TGFβはGBMニューロスフェアにおいてSTAT3のリン酸化を誘導し、TβRI阻害剤はその効果を阻害した(図5C)。LIFがTGFβによるp-STAT3の誘導を媒介しているかどうかを評価することに決定した。この目的のために、LIFに対する中和抗体を用いて、TGFβで処理した細胞に対する分泌されたLIFの効果を特異的に遮断した。LIFの中和抗体の存在は、TGFβによるp-STAT3の誘導を低下させた。さらに、TGFβで処理した細胞中のp-STAT3のレベルは、P6での処理により抑制された(図5D)。これらの結果は、TGFβが自己分泌/傍分泌ループにより動作するLIF分泌の誘導を介して、患者由来のニューロスフェアにおいてJAK-STAT経路を活性化することができたことを示していた。
【0171】
〔実施例5〕
LIFはTGFβによるGICの自己再生の誘導を媒介する
LIFおよびJAK-STAT経路がTGFβによるGICの自己再生の増加を媒介するかどうかを評価することに決定した。この目的のために、LIFおよびP6に対する中和抗体を用いて、TGFβで処理された細胞に対する分泌されたLIFの効果を特異的に遮断した。ニューロスフェアを個々の細胞に切り離し、TGFβ、組換えLIF、抗LIF抗体および/またはP6で処理した。新しく形成されたニューロスフェアと総細胞数を計数した。組換えLIFは、新しく形成されたニューロスフェアの量ならびに総細胞数を増加させたが、これはLIFがGICの自己再生を誘導することを示唆している(図6A、6B、6C)。LIFの中和抗体を用いる処理は、TGF3によるGICの自己再生の誘導を低下させた。さらに、P6はGICの自己再生に対するTGFβの効果を抑制したが、これは自己再生に対するTGFβの効果がJAKの活性に依存することを示している(図6A、6B、6C)。全体として、これらのデータは、TGFβがLIF-JAK-STAT経路を介して患者由来のGICの自己再生能力を誘導することを示していた。
【0172】
〔実施例6〕
TGFβはLIFを介してGICの分化を阻害する
増殖因子の非存在下で増殖させ、ポリ-L-リジン被覆プレート中に播種したGBMに由来するニューロスフェアは、神経前駆細胞マーカーMusashi-1、Sox2およびネスチンの発現を喪失するように分化し、培養プレートに付着する傾向がある。この分化プロセスに対するTGFβおよびLIFの効果を評価することに決定した。ニューロスフェアを、EGFまたはFGFを用いずに7日間、TGFβまたはLIFの存在下で培養した後、神経前駆細胞マーカーMusashi-1、Sox2およびネスチンのレベルを決定するために、免疫組織化学的染色およびqRT-PCRアッセイのために処理した。TGFβまたはLIFで処理したニューロスフェアは、それらが培養プレートにあまり付着せず、球状構造を維持しているという点で、対照細胞とは形態的に異なっていた。さらに、TGFβまたはLIFで処理した細胞は、Musashi-1、Sox2およびネスチンの発現を維持しており、免疫細胞化学アッセイ(図7A)により検出され、qRT-PCRを用いて定量された(図7B)。これは、TGFβおよびLIFが、GICの自己産生を調節するだけでなく、GICの分化の阻害にも関与する因子であることを示していた。
【0173】
〔実施例7〕
正常なヒト神経前駆細胞に対するTGFβおよびLIFの効果
これらのデータは、TGFβおよびLIFがGICの自己再生および分化を調節していることを示していた。この効果が腫瘍細胞に特異的であるか、または正常な神経前駆細胞に存在するかどうかを評価することに決定した。この問題に答えるために、神経前駆細胞をヒト胎児大脳皮質のサンプル(受胎後12~16週間)から取得した。以前に記載のように(Carpenterら、1999, Exp Neurol, 158: 265-278; Poltavtsevaら、2002, Brain Res Dev Brain Res, 134: 149-154; Wrightら、2003, J Neurochem, 86: 179-195)、ヒト神経前駆細胞は、EGFおよびFGFを補給した無血清培地中でそれらを増殖させた場合、ニューロスフェアを生成し、これらのニューロスフェアはGBMニューロスフェアと同様、Musashi-1、Sox2およびネスチンを発現した(図8A)。まず、TGFβが正常なヒト神経前駆細胞中でLIFを誘導するかどうかを決定した。正常なニューロスフェアは、GBMニューロスフェアと比較して、TGFβ1、TGFβ2またはTGFβ3に応答してLIFを誘導しなかった(図8B)。さらに、TGFβは、マウス胚から、または成体マウスの脳室下帯から得られたマウス神経前駆細胞中でLIFを誘導しなかった(データは示さない)。これは、TGFβによるLIFの誘導が、GBMニューロスフェアに特異的であることを示していた。予想されたように、TGFβはLIFを誘導しなかったため、TGFβは正常な神経前駆細胞の自己再生能力を増加させず、神経前駆細胞ニューロスフェアの数および大きさはTGFβを用いる処理によって増加しなかった。事実、TGFβで処理したニューロスフェアはより小さく、総細胞数はTGFβの存在に起因して減少した(図8C、8D)。一方、LIFは、以前の論文(BauerおよびPatterson, 2006; Wrightら、2003)に従えば、新しく形成されたニューロスフェアの数および大きさ、ならびに総細胞数を増加させた(図8C、8D)。かくして、LIFは、GBMと正常なニューロスフェアにおける自己再生に対する同じ効果を有する。対照的に、TGFβが正常な神経前駆細胞においてLIFを誘導することができないことに起因して、正常なニューロスフェアおよび腫瘍ニューロスフェアの自己再生能力に対するTGFβの効果における差異が存在する。
【0174】
〔実施例8〕
ヒトグリオーマにおけるLIFの発現はTGFβ2および神経前駆細胞マーカーと相関する
LIFがヒトグリオーマにおいて発現されるかどうかを評価するために、39個のグリオーマの一団におけるLIFのレベルを分析した。LIFは39個のグリオーマのうち、17個において発現され、4~6個において高度に発現されることが観察された(図9A)が、これは大部分のヒトグリオーマがLIFを発現することを示している。LIFはTGFβにより誘導され、TGFβ2はグリオーマにおいて観察される高いTGFβ活性の原因となることが以前の研究でわかったため(Brunaら、2007、上掲)、TGFβ2がLIFの発現に関与するかどうかを評価した。実際、LIFのレベルはグリオーマの一団においてTGFβ2と相関しており、TGFβ2がヒトグリオーマにおけるLIFの誘導の原因となるという事実をさらに支持している(図9A、B)。LIFがGICの自己再生を促進する場合、この型の細胞群は、高レベルのLIFを発現する腫瘍において豊富であるべきである。この仮説を試験するために、LIFのレベルを、GIC/神経前駆細胞マーカーの発現と比較した。LIFのレベルはMusashi-1およびネスチンの発現と相関していたが、Sox2の発現とは相関していなかった(図9A、B)。これはLIFがGICの自己再生を助長し、腫瘍塊中に存在するGIC群を増加させることを示している。
【0175】
〔実施例9〕
グリオーマまたはグリア芽細胞腫(グリオブラストーマ)を有する患者は全体としてより短い平均余命を有する
全グリオーマ患者のサブセットにおいて、LIFレベルは2倍以上上方調節される。長期間にわたって、これらの患者は対照患者と比較して有意に低い生存確率を有する。例えば、1000日後の生存確率は、全グリオーマ患者と比較して約50%に低下し、LIFレベルが2倍以上上方調節されていないグリオーマ患者と比較して約35%に低下する(図10)。データは、米国立癌研究所のREpository for Molecular BRAin Neoplasia DaTa (REMBRANDT)プログラムから得られたものである。
【0176】
全グリア芽細胞腫患者のサブセットにおいて、LIFレベルは9倍以上上方調節される。長期間にわたって、これらの患者は対照患者と比較して有意に低い生存確率を有する。例えば、500日後の生存確率は、全グリア芽細胞腫患者と比較して約50%に低下する(図11)。データは、米国立癌研究所のREpository for Molecular BRAin Neoplasia DaTa (REMBRANDT)プログラムから得られたものである。
【0177】
〔実施例10〕
LIF mRNAレベルは多様な型の腫瘍において異常に高い
特定の腫瘍型のいくらかの患者は、異常に高レベルのLIF mRNAにより示されるように、異常に高レベルのLIFを有する(図12)。データは、GeneSapiensバイオインフォマティックスチーム(www.genesapiens.org)から得られたものである。
【0178】
これは、LIFが様々な型の腫瘍の進行において選択的利点を提供し得ることを示している。試験した10人以上の患者がエラーバーよりも上のLIF mRNAレベルを有する腫瘍型は、プレB細胞急性リンパ球性白血病(B-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、グリオーマ、肺腺癌、結腸直腸癌、膀胱癌、乳管癌および乳腺癌である。
【0179】
高レベルのLIFを発現する腫瘍を有する患者においては、LIFは癌幹細胞の調節を介して癌原因子として作用し得る。かくして、LIFの遮断はこのセットの腫瘍において有益であり、また、LIFをこれらの患者における診断因子および/または予後因子として用いることもできる。
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