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2022-31743窒化アルミニウムウェハの製造方法およびその窒化アルミニウムウェハ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031743
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】窒化アルミニウムウェハの製造方法およびその窒化アルミニウムウェハ
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/581 20060101AFI20220215BHJP
   C04B 41/80 20060101ALI20220215BHJP
   C01B 21/072 20060101ALI20220215BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20220215BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20220215BHJP
   B24B 7/22 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C04B35/581
C04B41/80 Z
C01B21/072 B
C01B21/072 G
C01B21/072 R
B24B1/00 A
B24B9/00 601H
B24B7/22 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186786
(22)【出願日】2021-11-17
(62)【分割の表示】P 2020118296の分割
【原出願日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】109108408
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】519330098
【氏名又は名称】鴻創應用科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】HONG CHUANG APPLIED TECHNOLOGY CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】曾彦凱
(72)【発明者】
【氏名】江柏萱
(57)【要約】
【課題】窒化アルミニウムウェハの製造方法およびその窒化アルミニウムウェハを提供する。
【解決手段】本発明の窒化アルミニウムウェハ材は、その外縁上に少なくとも1以上のノッチまたはオリエンテーションフラットを形成し、前記ノッチまたは前記オリエンテーションフラットにより半導体加工工程において不良率を下げることができ、優れたアライメント効果を発揮することで良品率を高めることができる。本発明の窒化アルミニウムウェハは、優れた熱伝導、誘電率及、絶縁性及び放熱性を有するため、半導体加工工程、電子製品や半導体設備に適している。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化アルミニウムウェハの製造方法であって、
ステップ(a):前記窒化アルミニウムグリーン体をドクターブレードでシート化するか、前記窒化アルミニウムグリーン体をドクターブレードで窒化アルミニウムグリーンロールを形成し裁断することで得られる窒化アルミニウムグリーンシートを用意するステップと、
ステップ(b):前記窒化アルミニウムグリーンシートを高温処理し窒化アルミニウムウェハ材にするステップと、
ステップ(c):前記窒化アルミニウムウェハ材の外縁上に少なくとも1以上のノッチを形成し、前記窒化アルミニウムウェハ材に対し研削と研磨を行うステップと、
を含み、
前記ノッチの形状は、V形状であり、前記V形状の底、左右及び上部はR面取りされていることを特徴とする窒化アルミニウムウェハの製造方法。
【請求項2】
前記高温処理は、脱脂工程と、焼結工程と、を含み、
このうち、前記脱脂工程は、200℃~900℃かつ水素、窒素、酸素、アルゴンまたは空気がある環境下で行い、
前記焼結工程は、1000℃~3000℃かつ真空、常圧または高圧かつ水素、窒素、アルゴンがある環境下で行うことを特徴とする請求項1に記載の窒化アルミニウムウェハの製造方法。
【請求項3】
前記窒化アルミニウムグリーン体は、窒化アルミニウム顆粒を含み、
このうち、前記窒化アルミニウム顆粒は、酸化アルミニウムまたは純アルミニウムの少なくとも一方の粉末と、窒素、炭素、水素原子を含む有機接着剤と混合した後、水素、窒素、炭素原子を含むガス環境下で高温炭素熱還元反応を行い、窒素、酸素または大気を含むガス雰囲気環境下で高温脱炭後に造粒することで得られることを特徴とする請求項1に記載の窒化アルミニウムウェハの製造方法。
【請求項4】
前記高温炭素熱還元反応は、600℃~3000℃の温度で行うことを特徴とする請求項3に記載の窒化アルミニウムウェハの製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(c)のうち、研削および研磨を行う前、または後に、前記窒化アルミニウムウェハ材の外縁にエッジを形成し、
前記エッジの形状は、直角型、半円形、非対称半円形、半楕円形、非対称半楕円形、対称な台形、非対称な台形、対称な半円形と台形の組み合わせまたは非対称な半円形と台形の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の窒化アルミニウムウェハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウムウェハおよびその製造方法に関し、特に、半導体製造プロセスで使用することができる、ノッチ、オリエンテーションフラットまたは周囲のエッジを有し半導体電子製品に使用することができる窒化アルミニウムウェハに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハは一般に、シリコンを引き上げ、溶解、精製、蒸留等の工程により単結晶シリコンインゴットを完成させ、シリコンインゴットを加工、研削、研磨等することでウェハが得られる。ウェハの加工方法には、化学的加工、機械的加工および機械的化学的加工がある。化学的加工には、アルカリエッチングまたは酸エッチングが含まれる。機械的加工には研削または研磨が含まれる。機械的化学的処理には、強酸または強アルカリを利用してシリコンウェハの表面に薄くて柔らかい酸化物層をエッチングした後に機械的研磨を行う。
【0003】
研削の目的はウェハを研磨し厚みを許容範囲内に制御するためであり、研磨の目的は研削により発生した欠陥を改善し、ウェハ表面を平坦化、平面化することでウェハ表面を滑らかにし、微粒子が付着しにくくするためである。ウェハに凹凸が現れる原因の多くは微粒子、ウェハ自体の窪み、残留物または擦れによる傷である。
【0004】
研削の過程でウェハブロックはウェハにスライスされる。一般的なスライス方法は、ブレードまたはワイヤーによる切断であり、続いて必要な厚みになるまで研削が行われる。ウェハが厚すぎると、放熱性に支障が生じる。一般的にパワーセパレーターのウェハの厚みは約350~450μmで、集積回路のウェハは更に薄く、一般的には180μm以下である。
【発明の概要】
【0005】
セラミックは優れた誘電率、絶縁性、熱伝導率、耐熱性及び放熱性を備え、特に高湿度下で安定した性能を発揮する。発明者の研究および調査により、セラミック材料のうち、多結晶窒化アルミニウムは酸化アルミニウムの7~9倍にも達する高い熱伝導率(約170~240W/mk)を備えることがわかった。更に、耐食性、高温耐性、低い膨張係数、高い誘電率、高い機械的強度等の特性を有しているため、ウェハの材料として適しており、シリコンで製造したウェハより優れた効果を発揮する。したがって、本発明は、窒化アルミニウムウェハの製造方法およびそれにより製造される窒化アルミニウムウェハを提供する。本発明の窒化アルミニウムウェハは、窒化アルミニウムを材料に使用するほか、ウェハ上にノッチまたはオリエンテーションフラットを備えるため、加工工程においてアライメント不良、ウェハの破裂または擦り傷の問題を効果的に改善することができる。
【0006】
本発明の目的は、窒化アルミニウムウェハの製造方法を提供することにある。前記製造方法は以下のステップを含む。ステップ(a):高温処理により窒化アルミニウムグリーン体ブロックを窒化アルミニウムウェハブロックに加工する。ステップ(b):前記窒化アルミニウムウェハブロックの外縁上に少なくとも1以上のノッチまたはオリエンテーションフラットを形成し、前記窒化アルミニウムウェハブロックを複数の窒化アルミニウムウェハ材にスライスする。ステップ(c):前記窒化アルミニウムウェハ材それぞれに対し研削と研磨を行う。
【0007】
好ましい実施例においては、前記窒化アルミニウムグリーン体ブロックは、モールド内に窒化アルミニウムグリーン体を設置し、機械または油圧で成型した後、水圧、油圧または気圧で均圧処理することで得られる。このうち、前記機械または油圧成型は、圧力トン数を98066.50N~9806650.00N、前記モールド内の圧力を-0.063atm~100atmで行う。前記水圧、油圧または気圧で行う均圧処理は100atm~8000atmの圧力と、10℃~100℃の温度で行う。
【0008】
本発明の他の目的は、窒化アルミニウムウェハの製造方法を提供することにある。前記製造方法は以下のステップを含む。ステップ(a):窒化アルミニウムグリーンシートを用意する。前記窒化アルミニウムグリーンシートは、前記窒化アルミニウムグリーン体をドクターブレードでシート化するか、前記窒化アルミニウムグリーン体をドクターブレードで窒化アルミニウムグリーンロールを形成し裁断することで得られる。ステップ(b):前記窒化アルミニウムグリーンシートを高温処理し窒化アルミニウムウェハ材にする。ステップ(c):前記窒化アルミニウムウェハ材の外縁上に少なくとも1以上のノッチまたはオリエンテーションフラットを形成し、前記窒化アルミニウムウェハ材に対し研削と研磨を行う。
【0009】
好ましい実施例においては、前記高温処理は脱脂工程と焼結工程を含む。このうち、前記脱脂工程は200℃~900℃かつ水素、窒素、酸素、アルゴンまたは空気がある環境下で行う。前記焼結工程は1000℃~3000℃かつ真空、常圧または高圧かつ水素、窒素、アルゴンがある環境下で行う。
【0010】
好ましい実施例においては、前記窒化アルミニウムグリーン体は窒化アルミニウム顆粒を含む。このうち、前記窒化アルミニウム顆粒は、酸化アルミニウムまたは純アルミニウムの少なくとも一方の粉末と窒素、炭素、水素原子を含む有機接着剤と混合した後、水素、窒素、炭素原子を含むガス環境で高温炭素熱還元反応を行い、窒素、酸素または大気を含むガス雰囲気環境下で高温脱炭後に造粒することで得られる。
【0011】
好ましい実施例においては、前記高温炭素熱還元反応は、600℃~3000℃の温度で行う。
【0012】
好ましい実施例においては、前記ステップ(c)のうち、研削および研磨を行う前、または後に、前記窒化アルミニウムウェハ材の外縁(すなわち周囲)にエッジを形成する。前記エッジの形状は、直角型、半円形、非対称半円形、半楕円形、非対称半楕円形、対称な台形、非対称な台形、対称な半円形と台形の組み合わせまたは非対称な半円形と台形の組み合わせを含む。
【0013】
好ましい実施例においては、前記ノッチの形状は、V形状であり、かつ前記V形状の底、左右及び上部はR面取りされており、これにより応力が集中しウェハが破裂するのを防ぐ。
【0014】
好ましい実施例においては、前記オリエンテーションフラットは、レーザー、ウォーターカッターまたは機械加工により形成される。
【0015】
本発明の他の目的は、上述の製造方法により得られる窒化アルミニウムウェハを提供することにある。このうち、前記窒化アルミニウムウェハの外縁は少なくとも1以上のノッチまたはオリエンテーションフラットを有する。
【発明の効果】
【0016】
従来の技術と比べ、本発明の窒化アルミニウムウェハの製造方法は、耐食性、耐高温性、低膨張係数、高誘電率および高機械的強度を有する窒化アルミニウムウェハを得ることができる。本発明のウェハはノッチまたはフラットエッジを有するため、アライメント不良のために起こるスライス中の過度な歪みの発生、研削および研磨時にウェハ表面がフラットにならず表面が凸凹になり良品率が低下する問題を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】エッジを有さない本発明の窒化アルミニウムウェハを示す説明図である。
図2】エッジおよびV形状のノッチを有する本発明の窒化アルミニウムウェハを示す説明図である。
図3】本発明の窒化アルミニウムウェハにノッチおよびエッジを形成する方法を示す説明図である。
図4】本発明の窒化アルミニウムウェハのエッジの形状を示す説明図である。(a)直角型(b)半円型(c)非対称な半円型(d)半楕円型(e)非対称な半楕円型(f)対称な台形(g)非対称な台形(h)対称な台形および半円形の組み合わせ型(i)非対称な台形および半円形の組み合わせ型
図5】オリエンテーションフラットを有する本発明の窒化アルミニウムウェハを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施例は、本発明を制限するものではない。本発明の技術分野において通常の知識を有する者が本発明の示す実施例について改変を加えたとしても、本発明及び対応する請求の範囲を超えるものではない。
【0019】
本発明の第一実施形態の窒化アルミニウムウェハの製造方法は以下のステップを含む。ステップ(a):高温処理により窒化アルミニウムグリーン体ブロックを窒化アルミニウムウェハブロックに加工する。ステップ(b):前記窒化アルミニウムウェハブロックの外縁上に少なくとも1以上のノッチまたはオリエンテーションフラットを形成し、前記窒化アルミニウムウェハブロックを複数の窒化アルミニウムウェハ材にスライスする。ステップ(c):前記窒化アルミニウムウェハ材それぞれに対し研削と研磨を行う。
【0020】
本発明の第一実施形態のうち、「窒化アルミニウムグリーン体ブロック」とは、モールド内に窒化アルミニウムグリーン体を設置し、機械または油圧で成型した後、水圧、油圧または気圧で均圧処理することで得られる。前記均圧処理は、同じ方向であることが好ましい。このうち、窒化アルミニウムグリーン体をモールド内に設置し真空、常圧または高圧下で機械または油圧により成型する工程は、完成した窒化アルミニウムウェハの穴を減少させ、ウェハの表面に粒子が付着するのを防ぐことができる。水圧、油圧または気圧で均圧処理を行う工程は、圧縮後の窒化アルミニウムグリーン体の密度を均一にし、均質な窒化アルミニウムグリーン体を得ることができる。前記窒化アルミニウムグリーン体をモールド内に設置し、前記機械または油圧成型する工程は、圧力トン数98066.50N~9806650.00N(すなわち10トン~1000トン)で行う。例えば、98066.50N、4900332.50N、980665.00N、1961330.00N、2941995.00N、3922660.00N、4903325.00N、5883990.00N、6864655.00N、7845320.00N、8825985.00Nまたは9806650.00Nであるが、これに限定されない。前記モールド内の圧力は真空、常圧または高圧であり、その圧力の範囲は-0.063atm~100atmである。例えば、-0.063atm、1atm、5atm、10atm、20atm、30atm、40atm、50atm、60atm、70atm、80atm、90atmまたは100atmであるが、これに限定されない。前記水圧、油圧または気圧で行う均圧処理は、100atm~8000atmの圧力と、10℃~100℃の温度で行う。前記圧力は例えば100atm、200atm、300atm、400atm、500atm、600atm、700atm、800atm、900atm、1000atm、1500atm、2000atm、2500atm、3000atm、3500atm、4000atm、4500atm、5000atm、5500atm、6000atm、6500atm、7000atm、7500または8000atm等であるが、これに限定されない。前記温度は例えば10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃または100℃であるが、これに限定されない。
【0021】
本発明の第一実施形態のステップ(b)のうち、前記窒化アルミニウムウェハブロックを複数の窒化アルミニウムウェハ材にスライスする過程において利用することができるウェハブロックスライス方法は、ダイヤモンドカッター切断やピアノ線切断などのカッター切断またはワイヤー切断を含むが、これに限定されない。
【0022】
本発明の第二実施形態の窒化アルミニウムウェハの製造方法は以下のステップを含む。ステップ(a):窒化アルミニウムグリーンシートを用意する。前記窒化アルミニウムグリーンシートは、前記窒化アルミニウムグリーン体をドクターブレードでシート化するか、前記窒化アルミニウムグリーン体をドクターブレードで窒化アルミニウムグリーンロールを形成し裁断することで得られる。(b):前記窒化アルミニウムグリーンシートを高温処理し窒化アルミニウムウェハ材にする。ステップ(c):前記窒化アルミニウムウェハ材の外縁上に少なくとも1以上のノッチまたはオリエンテーションフラットを形成し、前記窒化アルミニウムウェハ材に対し研削と研磨を行う。
【0023】
本発明において「窒化アルミニウムグリーン体」とは、窒化アルミニウムの顆粒と、結合樹脂または分散材の少なくとも一方を混合することで得られる。好ましくは、前記窒化アルミニウムグリーン体は必要に応じ、例えば可塑剤のようなその他の添加剤を加えることもできるが、これに限定されない。可塑剤は前記窒化アルミニウムグリーンシートに可撓性を持たせることができる。
【0024】
本発明において「結合樹脂」とは、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、ポリアセトン、低級アルキルアクリレートコポリマー、プロピオール酸メチルのうちのいずれか、またはこれらの組み合わせである。前記結合樹脂の添加量は、前記窒化アルミニウムグリーン体に対し0.1重量%から10重量%、例えば0.1重量%、1重量%、3重量%、5重量%、7重量%または10重量%を占めるが、これに限定されない。
【0025】
本発明において「分散材」とは、アルコール、ケトン、エステル、カルボン酸または炭化水素などを含む有機溶媒である。具体的には例えば、メタノール、エタノール(95%)、n-ブタノール、ペンタノール、トルエンエタノール(95%)、ジアセトンアルコール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸メチル、酢酸エチル(85%)、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、リン酸トリブチル等のエステル、酢酸等のカルボン酸、四塩化炭素、ジクロロプロパン等のハロゲン置換炭化水素、トルエン、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブのうちのいずれか、またはそれらの組み合わせであるが、これに限定されない。
【0026】
本発明において「窒化アルミニウム顆粒」とは、酸化アルミニウムまたは純アルミニウムの少なくとも一方の粉末と窒素、炭素、水素原子を含む有機接着剤と混合した後、水素、窒素、炭素原子を含むガス環境で高温炭素熱還元反応を行い、窒素、酸素または大気を含むガス雰囲気環境下で高温脱炭後に造粒することで得られる。このうち、炭素源は固体、気体または原子である。「高温炭素熱還元反応」とは、酸化アルミニウムまたはアルミニウムの酸素原子と炭素原子で一酸化炭素または二酸化炭素を形成し、酸素原子の空孔を窒素原子と交換するか、窒素原子を挿入して窒化アルミニウムを形成する。このうち、前記高温炭素熱還元反応は、水素、窒素、炭素原子を含むガス環境で、圧力は-0.063atm~6000atm、温度は600℃~3000℃で行う。前記圧力は、-0.063atm、1atm、100atm、500atm、1000atm、1500atm、2000atm、3000atm、4000atm、5000atmまたは6000atmだが、これに限定されない。前記温度は600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1600℃、2000℃、2100℃、2200℃、2300℃、2400℃、2500℃、2600℃、2700℃、2800℃、2900℃または3000℃だが、これに限定されない。「高温脱炭後」とは、前記高温炭素熱還元反応中に発生する不要な炭素または炭化物を除去することを指す。温度は200℃~900℃で行う。例えば、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃または900℃だが、これに限定されない。前記窒化アルミニウム顆粒の粒径は10nm~200umであり、例えば10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、1um、10um、20um、30um、40um、50um、60um、70um、80um、90um、100um、110um、120um、130um、140um、150um、160um、170um、180um、190umまたは200umだが、これに限定されない。
【0027】
前記「造粒」工程では、必要に応じ、焼結助剤またはバインダーの少なくとも一方と、分散材を加える。前記造粒の方法は、粉末造粒、アトマイズ造粒、スプレー造粒、攪拌転造・混合造粒、加圧成形造粒、焼結成形造粒等を含む。粉末造粒、アトマイズ造粒及びスプレー造粒が好ましく、粉末造粒がより好ましい。このうち、前記焼結助剤は、酸化物または窒化物を含む。前記酸化物は、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化レニウム、酸化イットリウム、酸化ケイ素、ホウ素、炭素のいずれか、またはそれらの組み合わせを含む。前記窒化物は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素のいずれか、またはそれらの組み合わせを含む。前記焼結助剤は更に、セリウム、ユウロピウム、エルビウム、ネオジム、テルビウム、サマリウム、ツリウム、ジスプロシウム、イットリウム、ガドリニウム、プラセオジム、ルテチウム、ホルミウム、プロメチウム、ランタン、イッテルビウムのような金属を含んでもよい。前記焼結助剤の重量は、前記窒化アルミニウムの重量の0wt%~20wt%の間であり、例えば0wt%、0.5%、1wt%、1.5%、2wt%、5wt%、10wt%、15wt%または20wt%であるが、これに限定されない。前記バインダーは、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレングリコール、アラビアガム、アルギン酸、メチルセルロース、ビニルセルロース、エチルセルロース、炭化水素エチルセルロース、メタクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールのいずれか、またはその組み合わせが含まれる。前記バインダーの重量は、前記窒化アルミニウムの重量の0.1wt%~20wt%の間であり、例えば0.1wt%、1wt%、3wt%、5wt%、7wt%、10wt%、15wt%または20wt%であるが、これに限定されない。前記分散材は、ポリアクリル酸、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレングリコール、アラビアガム、ゼラチン、魚油、トビウオ油、オレイン酸、ひまし油のいずれか、またはその組み合わせが含まれる。前記分散材の重量は、前記窒化アルミニウムの重量の0.1wt%~20wt%の間であり、例えば0.1wt%、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、10wt%、15wt%または20wt%であるが、これに限定されない。
【0028】
本発明において「窒素、炭素、水素原子を含む有機接着剤」とは、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル、ABS樹脂、スチレンブタジエンゴム、カーボンパウダーのいずれか、またはこれらの組み合わせであり、フェノール樹脂であることが好ましい。
【0029】
本発明において「高温処理」とは、脱脂工程及び焼結工程を含む。「脱脂工程」とは、窒化アルミニウムグリーン体に含まれる有機物を加熱及びその他の物理的方法で除去する工程を指す。従来の熱脱脂、溶剤脱脂、触媒脱脂、水溶媒抽出脱脂を採用してもよいが、熱脱脂が好ましく、温度は200℃~900℃で、例えば200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃または900℃等であり、かつ水素、窒素、酸素、アルゴンまたは空気がある環境下で行う。この脱脂工程では、前記窒化アルミニウム顆粒からバインダーを除去することができる。「焼結工程」とは、高温かつ真空、常圧または高圧かつ水素、窒素、アルゴンがある環境下で行う焼結処理工程を指す。このうち、前記高温は1000℃~3000℃であり、具体的には例えば1000℃、1200℃、1500℃、2000℃、2500℃または3000℃であるが、これに限定されない。前記真空、常圧または高圧の圧力の範囲は-0.063atm~6000atmであり、具体的には例えば-0.063atm、0atm、1atm、100atm、500atm、1000atm、1500atm、2000atm、3000atm、4000atm、5000atmまたは6000atmだが、これに限定されない。
【0030】
本発明のステップ(c)のうち、研削研磨前または後に、前記窒化アルミニウムウェハ材の周囲にエッジを形成する。図1はエッジを有さない本発明の窒化アルミニウムウェハを示す説明図である。図2はエッジを有する本発明の窒化アルミニウムウェハを示す説明図である。
【0031】
本発明において「エッジ」とは、前記窒化アルミニウムウェハ材の周囲に形成される特定の形状のことを指す。前記エッジは、汎用のエッジグラインダーまたは機械加工機(CNC)で完成させる。具体的には例えば、図3(a)及び(b)に示すように、特定の形状のグラインダー砥石を形成する。前記窒化アルミニウムウェハ材はエッジ研削用のグラインダー砥石6で研削を行うことで、半円形のエッジ2を得ることができる。図4(a)~(i)は、本発明の窒化アルミニウムウェハのエッジの形状を示す説明図である。それぞれ、(a)直角型(b)半円型(c)非対称な半円型(d)半楕円型(e)非対称な半楕円型(f)対称な台形(g)非対称な台形(h)対称な台形および半円形の組み合わせ型(i)非対称な台形および半円形の組み合わせ型であるが、これに限定されない。エッジは、製造工程においてウェハに応力が集中する問題や、バリが発生する問題、ウェハの周囲に亀裂が入る問題を防ぐことができる。これにより、この後の工程で設置するフォトレジスト層やエピタキシャル層の平坦性への影響が良く、フォトレジスト層やエピタキシャル層を表面に均一に分布させることができる。ただし、特殊な製造工程においてはエッジ処理を行わないこともできる。
【0032】
本発明において「ノッチまたはオリエンテーションフラット」とは、前記窒化アルミニウムウェハ材の外縁に設置される1以上の特定形状のものである。図2に示すように、前記ノッチはV形状で、前記V形状のそれぞれの角、すなわちV形状の底部、左右および上部をR面取りすることで、応力が集中しウェハが破裂するのを防ぐ。図5に示すように、前記オリエンテーションフラットは平面状である。このうち、前記ノッチはグラインダー砥石で形成する。図3(a)及び(b)に示すように、ノッチ研削用のグラインダー砥石7で前記窒化アルミニウムウェハの外縁にノッチ2を形成する。前記オリエンテーションフラットはウェハの外縁を切断するための汎用のカッターで完成することができる。切断の方式は、レーザー、ウォーターカッターまたは機械加工を含むが、これに限定されない。前記ノッチまたはオリエンテーションフラットは、前記窒化アルミニウムウェハの製造工程において、位置決めを更に正確にし、良品率を高めることができる。
【0033】
本発明において「研削」とは、乾式研削または湿式研削であり、単方向または双方向に研削することを指す。単方向の研削の場合、前記窒化アルミニウムウェハの裏側にはUV接着剤、ホットメルト接着剤または塗布用接着剤を使用することで、均一性を高めることができる。
【0034】
本発明において「研磨」とは、乾式研磨または湿式研磨であり、単方向または双方向に研磨することを指す。
【0035】
本発明の窒化アルミニウムウェハは、熱伝導率は約100W/mk~250W/mkであるため、放熱しやすく、熱膨張が起こりにくい。具体的には例えば100W/mk、110W/mk、120W/mk、130W/mk、140W/mk、150W/mk、160W/mk、170W/mk、180W/mk、190W/mk、200W/mk、210W/mk、220W/mk、230W/mk、240W/mkまたは250W/mkである。誘電率は8~9(1MHz)であるため、絶縁効果を有する。具体的には例えば8(1MHz)、8.1(1MHz)、8.2(1MHz)、8.3(1MHz)、8.4(1MHz)、8.5(1MHz)、8.6(1MHz)、8.7(1MHz)、8.8(1MHz)、8.9(1MHz)または9(1MHz)である。曲げ強度は200~600MPaであり、具体的には例えば200MPa、250MPa、300MPa、350MPa、400MPa、450MPa、500MPa、550MPaまたは600MPaであるため、機械強度に優れている。
【0036】
本発明の窒化アルミニウムウェハの製造方法により得られる窒化アルミニウムウェハは、18インチ、12インチ、10インチ、8インチ、6インチ、4.5インチ、4インチ、2インチまたは他の加工により製造可能な範囲の円形であり、絶縁性、放熱性、誘電率に優れ、半導体加工工程、フォトマスク、エッチング、パッケージング、テストの後、3次元回路パッケージング、パワー半導体コンポーネントパッケージング、回路製造等のエレクトロニクス産業または半導体産業に利用することができる。
【実施例0037】
以下の実施例は、本発明の技術分野において通常の知識を有する者が本発明の技術を理解するために掲示するものであり、これらの範囲を逸脱せずとも、多様な改変により異なる用途や状況に対応することが可能である。よって、他の実施例もまた本願の請求の範囲である。
【0038】
製造例1-窒化アルミニウム顆粒の形成
【0039】
酸化アルミニウムを1kg、純アルミニウム粉末を1kg及びフェノール樹脂をフェノール樹脂と炭素粉末とボールミルで混合・混合した後、粒子を1atm及び1600℃の高温炉に移し、アセチレン、窒素、水素を供給して高温炭素熱還元反応を20時間行い、還元された粒子を大気中に置き、600℃で24時間高温脱炭後、大川原製作所のフロージェットグラニュレーターを使用して造粒し、60~90umの粒子サイズの窒化アルミニウム顆粒を1.1kg得る。
【0040】
実施例1-窒化アルミニウムウェハの製造方法1
【0041】
上述の製造例1で得られた3kgの窒化アルミニウム顆粒を10%のポリビニルブチラール(PVB)樹脂及び1%の分散剤と混合し窒化アルミニウムグリーン体を得る。そのあと、前記窒化アルミニウムグリーン体を油圧機のモールド内に設置し、圧力1961330Nの真空下、モールド内の圧力は-0.063atmで高圧成型し、EPSIの水圧プレス機を使い30℃の環境下で圧力3000atmで等圧均等化処理を行い、窒化アルミニウムグリーン体ブロックを得る。前記窒化アルミニウムグリーン体ブロックを空気下の600℃の環境で脱脂を行った後、島津の高温炉により10atmかつ1800℃で焼結処理を行い、窒化アルミニウムウェハブロックを得る。前記窒化アルミニウムウェハブロックをグラインダーに移しノッチを削りだした後、ワイヤーソーで8インチの窒化アルミニウムウェハ材にスライスし、両面研削盤で両面を湿式研削し、更に必要なサイズになるまで片面を研削する。更に対応した大きさのグラインダーで研削し、半円形のエッジを形成した後、研磨機で両面を乾式研磨することで窒化アルミニウムウェハが得られる。
【0042】
実施例2-窒化アルミニウムウェハの製造方法2
【0043】
上述の製造例1で得られた3kgの窒化アルミニウム顆粒を10%のポリビニルブチラール(PVB)樹脂及び1%の分散剤と混合し窒化アルミニウムグリーン体を得る。そのあと、ドクターブレードにより窒化アルミニウムグリーンシートを形成し、60℃で10分間乾燥する。前記窒化アルミニウムグリーンシートを空気下の600℃の環境で脱脂を行った後、島津の高温炉により1atmかつ1800℃で焼結処理を行い窒化アルミニウムウェハ材を得る。前記窒化アルミニウムウェハ材をレーザー機に移し、外縁上にノッチを形成し、レーザーで8インチの窒化アルミニウムウェハ材に切断し、両面研削盤で両面を湿式研削し、更に必要なサイズになるまで片面を研削する。更に対応した大きさのグラインダーで研削し、半円形のエッジを形成した後、研磨機で両面を乾式研磨することで窒化アルミニウムウェハが得られる。
【0044】
テスト例、性能テスト
【0045】
実施例1及び2で製造した窒化アルミニウムウェハ、比較例1のシリコンウェハ、比較例2の酸化アルミニウムウェハ及び比較例3のガラスウェハに対し性能テストを行う。テスト項目は熱伝導、曲げ強度及び誘電率である。
【0046】
テスト結果は表1に示すとおりである。他の材質のシリコンウェハと比べ、実施例1及び2の窒化アルミニウムウェハは熱伝導が高く、高い曲げ強度及び誘電率を有するため、性能に優れていることがわかる。
【0047】
【表1】
【0048】
上述の通り、本発明の窒化アルミニウムウェハの製造方法は、耐食性、耐高温性、低膨張係数、高誘電率および高機械的強度を有する窒化アルミニウムウェハを得ることができる。本発明のウェハはノッチまたはフラットエッジを有するため、アライメント不良のために起こる切断中の過度な歪みの発生、研削および研磨時にウェハ表面がフラットにならず表面が凸凹になり良品率が低下する問題を改善することができる。
【0049】
以上、本発明について詳細に説明したが、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0050】
1 窒化アルミニウムウェハ
2 ノッチ
3 エッジ
4 オリエンテーションフラット
6 エッジ研削用のグラインダー砥石
7 ノッチ研削用のグラインダー砥石
図1
図2
図3
図4
図5