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特開2022-31757毛包およびデノボ乳頭の作製方法ならびにインビトロ試験およびインビボ移植のためのそれらの使用
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  • 特開-毛包およびデノボ乳頭の作製方法ならびにインビトロ試験およびインビボ移植のためのそれらの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031757
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】毛包およびデノボ乳頭の作製方法ならびにインビトロ試験およびインビボ移植のためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20220215BHJP
   A61K 35/33 20150101ALI20220215BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20220215BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20220215BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20220215BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20220215BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220215BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20220215BHJP
   A61L 27/60 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C12N5/071
A61K35/33
A61K35/36
A61K35/44
A61L27/22
A61L27/36 130
A61L27/36 300
A61L27/36 430
A61L27/38 200
A61L27/38 300
A61L27/40
A61L27/60
A61P17/14
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021188693
(22)【出願日】2021-11-19
(62)【分割の表示】P 2018525687の分割
【原出願日】2016-11-14
(31)【優先権主張番号】102015119880.0
(32)【優先日】2015-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518319388
【氏名又は名称】プロビオ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】provio GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】リンドナー,ゲルド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デノボ乳頭または毛包を作製できる方法を提供する。
【解決手段】a)少なくとも1個の毛包の少なくとも1個の真皮乳頭(DP)から単離した真皮毛乳頭線維芽細胞(DPF)を提供するステップ、b)少なくとも1個の毛包から単離した結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)を提供するステップ、およびc)球状細胞凝集体を形成するために実質的に非付着性の細胞培養条件下でDPFとCTSFとを共培養するステップを含み、前記ステップc)の共培養で、内皮細胞(EC)および/または間質血管細胞群(SVF)を追加的に含むことを特徴とするデノボ乳頭の作製方法による。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デノボ乳頭の作製方法であって、
a)少なくとも1個の毛包の少なくとも1個の真皮乳頭(DP)から単離した真皮毛乳頭線維芽細胞(DPF)を提供するステップ、
b)少なくとも1個の毛包から単離した結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)を提供するステップ、および
c)球状細胞凝集体を形成するために実質的に非付着性の細胞培養条件下で前記DPFと前記CTSFとを共培養するステップ
を含むことを特徴とするデノボ乳頭の作製方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記DPFと前記CTSFとを、1~20:1~20の比で共培養することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記ステップc)の共培養で、内皮細胞(EC)および/または間質血管細胞群(SVF)を追加的に含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、前記デノボ乳頭は、2~20,000個、好ましくは10~15,000個、より好ましくは1,000~10,000個、より一層好ましくは1,500~5,000個の細胞から構成されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、前記デノボ乳頭を細胞外マトリックスタンパク質で被覆することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法において、前記共培養を回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法において、前記共培養を少なくとも10分間、好ましくは20分間~48時間行うことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法により作製されてなることを特徴とするデノボ乳頭。
【請求項9】
毛包の作製方法であって、
a)請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法により作製された少なくとも1個のデノボ乳頭を提供するステップ、
b)角化細胞(KC)、メラニン細胞(MC)または結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)から選択される少なくとも1種のさらなる細胞集団を提供するステップ、および
c)実質的に非付着性の細胞培養条件下で、前記デノボ乳頭を前記少なくとも1種のさらなる細胞集団と共培養するステップ
を含むことを特徴とする毛包の作製方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記デノボ乳頭をKC、MCおよび/またはCTSFと1~10:1~50の比で共培養することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、前記少なくとも1種のさらなる細胞集団は、毛包から得ることができる、および/または毛包から得られることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9乃至11の何れか1項に記載の方法において、前記共培養を少なくとも10分間、好ましくは20分間~48時間行うことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項8乃至12の何れか1項に記載の方法により作製されてなることを特徴とする毛包。
【請求項14】
請求項8に記載のデノボ乳頭および/または請求項13に記載の毛包を含むことを特徴とする毛髪均等物。
【請求項15】
請求項14に記載の有効量の皮膚均等物を、任意選択により薬学的に許容される賦形剤と共に含むことを特徴とするトランスプラント。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アンドロゲン性脱毛症としても知られる遺伝による脱毛は、非常な拡がりを見せている、精神的および感情的苦痛を引き起こす疾患であり、我々の社会でこの疾患は患者の仕事能力に重大な影響を及ぼしている。遺伝による脱毛は、毛包がステロイドホルモンであるジヒドロテストステロンに過敏であることが原因であると考えられる。
【0002】
アンドロゲン性脱毛症の薬物治療に加えて、移植の可能性もあり、これは今もなお美容上圧倒的に最良の結果を与えている。この方法では、後頭部の首または外側側頭領域から頭頂部または前頭部の毛髪のない部分へアンドロゲン非感受性毛包をそのまま再分布させる。
【0003】
最新の毛髪移植技術は急速に高度化し、かつ効率的になってきてはいるが、かなり進行した脱毛では特に、美容上十分に豊富な髪を提供するには、したがって満足できる治療結果を達成するには、利用できる天然のドナーの髪は十分ではない。毛髪移植を行うには、レシピエントに移植すべき材料として、適切な毛髪トランスプラントまたは細胞が必要である。一般に、必要とする細胞を再生するには数週間が必要である。さらに、この再生はクリーンルームの条件下で行わなければならないので、生成物は、極めて高い開発とマーケティングのハードルをクリアしなければならないいわゆるATMP(先端医療医薬品)に分類される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の1つ以上の欠点を軽減または回避することである。具体的には、本発明の目的は、デノボ乳頭または毛包を作製できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次のステップ、a)少なくとも1個の毛包の少なくとも1個の真皮乳頭(DP)から単離した真皮毛乳頭線維芽細胞(DPF)を提供するステップと、b)少なくとも1個の毛包から単離した結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)を提供するステップと、c)球状の細胞凝集体を形成させるために、実質的に非付着性の細胞培養条件下でDPFとCTSFとを共培養するステップとを含むデノボ乳頭の作製方法を提供することにより、この目的を達成する。
【0006】
驚いたことに、少なくともDPFとCTSFとの混合物からデノボ乳頭を作製できることがわかった。本発明の作製方法は、従来技術で知られている毛包再生方法より短時間で行うことができる。したがって、毛包から細胞集団を得、これらの細胞を使用してデノボ乳頭および/または毛包を大量に作製し、これらの新たに作られたデノボ乳頭または毛包を、治療すべき無毛の頭皮に移植して、これらの場所で新たな毛髪が再び形成されるようにするのに1日以内で可能である。
【0007】
以下では、特段の断りがない限り、使用した単数形または複数形は、常にそれぞれの複数形および単数形をそれぞれ含むものとする。
【0008】
本発明の方法は、デノボ乳頭の作製に関する。用語「デノボ乳頭」、「新生乳頭」または「球状体」は同義語として使用され、基本的に真皮毛乳頭線維芽細胞(DPF)および結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)の球状の細胞凝集体を指す。したがって、デノボ乳頭は、少なくともDPFとCTSFとの混合物を含む。デノボ乳頭は、約2~20,000個の、好ましくは10~15,000個の、より好ましくは500~10,000個の、より一層好ましくは1,000~5,000個の細胞から構成される。デノボ乳頭の大きさは、単離後、毛包の生理学的真皮乳頭(DP)の大きさの少なくとも半分であることが好ましい。デノボ乳頭はまた、単離後、毛包の生理学的DPとほぼ同じ形状であることが好ましい。
【0009】
デノボ乳頭は、コラーゲンIV、フィブロネクチンおよび/またはラミニンなどの、1つまたは複数の異なる細胞外マトリックスタンパク質を含有する被膜を含み得る。この被膜はDPFおよびCTSF自身が形成し得るが、一方でこれらの細胞はデノボ乳頭を形成する。これに代えて、またはこれに加えて、デノボ乳頭にはまた、その形成中および/または形成後に、1つまたは複数の異なる細胞外マトリックスタンパク質を培養培地にさらに加えることによって、被膜が形成され得る。
【0010】
本発明の作製方法はインビトロで行われる。「インビトロ」は、生命体、例えばヒトまたは動物の体内でない環境を意味すると理解される。したがって、本発明のインビトロ検出法は、ヒトまたは動物の体に対して行われるいかなる方法も明示的に含まない。
【0011】
本発明の方法では、最初の方法ステップa)で、少なくとも1個の真皮乳頭(DP)から単離した真皮毛乳頭線維芽細胞(DPF)が提供され、このDPは少なくとも1個の毛包から得られる。
【0012】
例えば、毛包からのDPの提供、およびDPからのDPFの単離は次のように行うことができる:単離した毛包を例えばピンセットを使用して毛幹に固定し、結合組織鞘を例えばさらに別のピンセットを使用して毛幹から直径方向に分離して、毛球を反転させ、それによりDPFおよび毛幹を毛母体と共に露出させる。このようにして、DPを毛包の残りの部分から分離することができるが、これは例えば針またはカニューレを使用して行うことができる。
【0013】
その後、単離したDPを例えば細胞培養容器に移し、細胞培養容器の表面に機械的に固定する。DPFは、例えば針の先端またはメスを使用し、単離したDPを細胞培養容器の底に機械的に固定して得ることが好ましい。このプロセスでは、DPのモルホロジーはほぼ保持されるが、DPの基底膜には、DPFがDPから移動できるよう、僅かに穴が開けられる。DPFはまた、DPの酵素的分離または非酵素的分離によっても得ることができる。
【0014】
本発明の方法では、DPFを単離後、それらの使用前に、例えばそれらを複製するために中間培養に供することができる。したがって、本発明の方法で使用するDPFは、初めに単離したDPFの子孫またはクローンであり得る。
【0015】
DPおよびDPFを単離する毛包は組織から得られる。組織から毛包を取り出す方法は、当業者に知られている。毛包は、良好な医療行為の基準にしたがって組織から取り出すことが好ましい。毛包は、実質的にそのままの状態を保って、すなわち無傷で組織から取り出すことが好ましい。例えば、組織から毛包を取り出すには次のように行うことができる:i)好ましくはメスを使用した、表皮の、その下にある真皮からの、または皮下組織の場合は脂肪組織からの分離;ii)真皮からの、または皮下組織の場合は脂肪組織からの毛髪の解剖。取り出した毛髪には、その近位端に毛包が含まれる。ステップii)の前に、任意選択により真皮または脂肪組織を圧縮して、その中に含まれる毛包がより容易に解剖されるようにすることができる。この場合、圧縮は、例えばピンセットで行うことができる。
【0016】
毛包の取り出しは顕微鏡下で行うことが好ましい。毛包は、パンチ生検から得ることが好ましく、これは個人の毛包単位(FU)から構成されることが好ましい。毛包単位は、互いに近接して生えている1~4本の毛髪群に対する呼称であって、組織膜に囲まれており、共通の筋肉(立毛筋)によって動かされる。毛包単位は、先に取り出した一片の頭皮を実体顕微鏡下で解剖するか、またはより正確な方法では、中空針で頭皮に直接穴を開けることにより得られる。後者の方法は毛包単位の摘出(FUE)と呼ばれる。
【0017】
例えばDPまたはDPFを単離するために毛包を得ることができる組織は、哺乳動物から得られる。この哺乳動物はヒト、サル、ブタ、イヌ、ネコまたは齧歯動物であり得るが、好ましくはヒトである。このように、哺乳動物は毛包を含有する組織のドナーとして寄与する。哺乳動物としては、脱毛に悩むヒト患者が特に好ましい。
【0018】
組織には皮膚が含まれることが好ましい。ここで、組織は毛髪を有するあらゆる身体部分から得ることができるが、好ましくは、頭部、胸部、眉、顎鬚、性器部分、脚部または他の身体部分である。組織は、脱毛の影響がある身体部位に近接する身体部分から採取することが特に好ましい。例えば、脱毛の影響が頭頂部、すなわち前頭部と後頭部の間の頭の部分にあるならば、首筋または側頭部から組織を採取することが好ましい。組織は生検により得ることが好ましい。
【0019】
例えばDPまたはDPFを単離するために毛包を組織から取り出す前に、存在する可能性のある妨害物質を前記組織から除去する目的で、この組織を1つ以上のクリーニングステップに供することができる。
【0020】
本発明の方法のステップb)では、少なくとも1個の毛包から単離した結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)が提供される。
【0021】
例えば、毛包からのCTSFの提供は次のように行うことができる:単離した毛包を例えばピンセットを使用して毛幹に固定し、結合組織鞘を例えばさらに別のピンセットを使用して毛幹から直径方向に分離して毛球を反転させる。このようにして、CTSFを有する毛球の近位部を毛包の残りの部分から分離することができるが、これは例えば針またはカニューレを使用して行うことができる。
【0022】
その後、単離した結合組織鞘を例えば細胞培養容器に移し、細胞培養容器の表面に機械的に固定する。CTSFは、例えば針の先端またはメスを使用し、単離した結合組織鞘を細胞培養容器の底に機械的に固定して得ることが好ましい。このプロセスでは、結合組織鞘のモルホロジーはほぼ保持されるが、結合組織には、CTSFが結合組織から移動できるよう、僅かに穴が開けられる。CTSFはまた、好ましくは結合組織の酵素的分離または非酵素的分離によっても得ることができる。
【0023】
本発明の方法では、CTSFを単離後、それらの使用前に、例えばそれらを複製するために中間培養に供することができる。したがって、本発明の方法で使用するCTSFは、初めに単離したCTSFの子孫またはクローンであり得る。
【0024】
CTSFを単離する毛包は組織から得られる。組織から毛包を取り出す方法は、当業者に知られている。毛包は、良好な医療行為の基準にしたがって組織から取り出すことが好ましい。毛包は、実質的にそのままの状態を保って、すなわち無傷で組織から取り出すことが好ましい。例えば、組織からの毛包の取り出しは次のように行うことができる:i)好ましくはメスを使用した、表皮の、その下にある真皮からの、または皮下組織の場合は脂肪組織からの分離;ii)真皮からの、または皮下組織の場合は脂肪組織からの毛髪の解剖。取り出した毛髪には、その近位端に毛包が含まれる。ステップii)の前に、任意選択により真皮または脂肪組織を圧縮して、その中に含まれる毛包がより容易に解剖されるようにすることができる。この場合、圧縮は、例えばピンセットで行うことができる。毛包の取り出しは顕微鏡下で行うことが好ましい。
【0025】
例えばCTSFを単離するために毛包を得ることができる組織は、哺乳動物から得られる。この哺乳動物はヒト、サル、ブタ、イヌ、ネコまたは齧歯動物であり得るが、好ましくはヒトである。このように、哺乳動物は毛包を含有する組織のドナーとして寄与する。哺乳動物としては、脱毛に悩むヒト患者が特に好ましい。
【0026】
組織には皮膚が含まれることが好ましい。ここで、組織は毛髪を有するあらゆる身体部分から得ることができるが、好ましくは、頭部、胸部、眉、顎鬚、性器部分、脚部または他の身体部分である。組織は、脱毛の影響がある身体部位に近接する身体部分から採取することが特に好ましい。例えば、脱毛の影響が頭頂部、すなわち前頭部と後頭部の間の頭の部分にあるならば、首筋または側頭部から組織を採取することが好ましい。組織は生検により得ることが好ましい。
【0027】
例えばCTSFを単離するために毛包を組織から取り出す前に、存在する可能性のある妨害物質を前記組織から除去する目的で、この組織を1つ以上のクリーニングステップに供することができる。
【0028】
このように、DPFおよびCTSFは単離した毛包から得られる。DPFおよびCTSFは同じ毛包から得ることができる。しかしながら、DPFおよびCTSFは異なる毛包から得ることもできる。DPFおよびCTSFを異なる毛包から得る場合、これらの毛包は同じ組織、例えばドナーの頭部首筋部分などの組織から単離したものでもよい。DPFおよびCTSFを異なる毛包から得る場合、例えば組織の1つは例えばドナーの頭部首筋部分から採取し、他の組織は例えばドナーの顎鬚から採取するというように、これらの毛包は異なる組織から単離したものでもよい。この場合、ドナーは同じドナーであっても、異なるドナーであってもよい。異なるドナーの場合、同種のドナーであることが好ましい。ドナーは同じドナー、すなわち自己ドナーであることが好ましい。
【0029】
本発明の方法の次のステップc)では、球状の細胞凝集体を形成させるために、実質的に非付着性の細胞培養条件下でDPFとCTSFとの共培養を行う。
【0030】
本発明の方法の意味では、「非付着性の細胞培養条件」という用語は、細胞が実質的に細胞培養容器の表面と直接および/または持続的に接触しない細胞培養条件を指すものとする。これは、例えば、細胞培養容器の表面を、細胞の付着を低減もしくは本質的に防止する材料で構成し、および/または細胞培養容器の表面に細胞の付着を低減もしくは防止する付着防止コーティングを施すことで、達成することができる。適切な培養容器および/またはこれらの細胞培養容器に適切なコーティングは、当業者に知られている。そのような非付着性細胞培養容器は、例えばガラスまたはポリスチレンから作ることができる。細胞培養容器の表面は、PTFE、ポリHEMA、アガロースまたはフルオロカーボン溶液などの接触防止材料でコーティングすることが好ましい。
【0031】
本発明によれば、非付着性の細胞培養条件の定義にはまた、細胞が培養培地の液滴内部に存在する、いわゆる「ハンギングドロップ」培養法も含まれる。液体の表面張力によって、液滴は細胞培養容器の表面上で吊るされた姿勢を維持し、その中に存在する細胞を包み込む。重力下では、細胞は液滴の下部に集まり、培養容器と実質的に直接接触することはない。細胞は液滴内部で球形になることができる。
【0032】
DPFとCTSFとの共培養により、形と大きさが生理学的にDPに類似した、実質的に球形の細胞凝集体が生じる。
【0033】
DPFとCTSFは同一比または異なる比で共培養することができる。DPFとCTSFは1~20:1~20、好ましくは1~10:1~10、より好ましくは1~5:1~5、より一層好ましくは1~2.5:1~2.5、特に好ましくは1:1の比で共培養することが好ましい。
【0034】
ある実施形態では、ステップc)のDPFとCTSFとの共培養の細胞濃度として、細胞培養容器1mm当たり、DPF+CTSFが2~20,000個、好ましくは10~15,000個、より好ましくは500~10,000個、より一層好ましくは1,000~5,000個が選択される。
【0035】
DPFとCTSFとの共培養は、当業者に知られている適切な細胞培養容器を用いてその中で行われる。例えば、これらの細胞培養容器は商業的に入手可能な細胞培養用のプレート、皿またはフラスコであり得る。細胞培養容器は1つまたは複数の窪みを含み得る。DPFとCTSFとの共培養は、細胞培養容器の窪みの中で行うことが好ましい。細胞培養容器は、1つより多い窪みを有する、いわゆるマルチウエルプレートとすることができる。細胞培養容器は、好ましくは2~10,000個、より好ましくは4~1536個、より一層好ましくは6~384個の窪みを有する。
【0036】
細胞培養容器の窪みの底は平坦、または平坦でない構造とすることができる。窪みの底は半円アーチ形の構造が好ましい。ロート状構造の窪みも好ましい。
【0037】
ある実施形態では、ステップc)で共培養する前に、遠心分離によりDPFおよびCTSFを沈殿物として細胞培養容器の底に沈殿させる。細胞培養容器の底でのDPFおよびCTSFのこの初期濃縮により、より急速に細胞凝集体が形成される。
【0038】
DPFおよびCTSFの共培養は、少なくとも1分間、好ましくは10分間~14日間、より好ましくは20分間~48時間、より一層好ましくは30分間~24時間、特に好ましくは1時間~4時間行う。
【0039】
本発明の方法のステップc)におけるDPFおよびCTSFの共培養は、血漿および/または血清の存在下に行うことが好ましい。血漿および/または血清はヒトの血漿および/または血清が好ましく、自己の血漿および/または血清が好ましい。血漿および/または血清は、1~100%の、好ましくは15~75%の、より好ましくは30~50%の血漿または血清が好ましい。
【0040】
本発明の方法のステップc)におけるDPFおよびCTSFの共培養は、実質的に静的な条件または運動条件下で行うことができる。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことが好ましい。
【0041】
さらに、本発明の方法のステップc)におけるDPFおよびCTSFの共培養では、さらに別の種類の細胞も存在することができる。内皮細胞(EC)および/または間質血管細胞群(SVF)の細胞が、共培養にさらに存在することが好ましい。
【0042】
ECを得る方法は当業者に知られている。ECは血管から、好ましくは毛包上または毛包内の血管から得ることができる。ECはヒトドナーから得ることが好ましい。これらは自己ECであることが特に好ましい。本発明の方法では、ECを単離後、それらの使用前に、例えばそれらを複製するために中間培養に供することができる。したがって、本発明の方法で使用するECは、初めに単離したECの子孫またはクローンであり得る。本発明の方法のステップc)におけるDPFとCTSFの共培養でECが存在するので、DPF、CTSFおよびECを含むデノボ乳頭が形成される。哺乳動物の皮膚の脱毛を伴う疾患を治療するために、そうしたデノボ乳頭またはそれから生成した毛包を導入することができる。皮膚への移植後、そのようなデノボ乳頭またはそれから生成した毛包は、乳頭または毛包の周りにより急速に血管を形成し、したがってその結果として毛髪の形成または成長速度を向上させることができる。
【0043】
SVFを得る方法は当業者に知られている。例えば、SVFは脂肪組織の解剖または吸引により得ることができる。SVFはヒトのドナーから得ることが好ましく、自己SVFであることがより好ましい。SVFには、脂肪細胞前駆体(前脂肪細胞)、内皮細胞、内皮筋肉細胞、線維芽細胞、マクロファージまたは血液細胞などの各種細胞集団が含まれる。ドナーから得た後、SVFの特定の成分をSVFから除くことが可能であり、これは、1回以上の洗浄、クリーニングもしくは単離ステップにより、または成分の選択分離もしくは除去によっても行うことができる。SVFを単離後、それらの使用前に、例えばそれらを複製するために中間培養に供することは同様に可能である。したがって、本発明の方法で使用するSVFは、初めに単離したSVFの子孫またはクローンであり得る。本発明の方法のステップc)における共培養にはSVFが存在するので、DPFおよびCTSFの細胞増殖を増大させるか、またはより急速に起こすことができ、したがってデノボ乳頭の作製が加速される。
【0044】
別の種類の細胞は、DPFおよびCTSFと同じ比で存在していても、異なる比で存在していてもよい。DPF、CTSFおよびECまたはSVFは1~20:1~20:1~20、好ましくは1~10:1~10:1~10、より好ましくは1~5:1~5:1~5、より一層好ましくは1~2.5:1~2.5:1~2.5、特に好ましくは1:1:1の比で共培養することが好ましい。DPFおよびCTSFをECおよびSVFと共に培養する場合、共培養は1~20:1~20:1~20:1~20、好ましくは1~10:1~10:1~10:1~10、より好ましくは1~5:1~5:1~5:1~5、より一層好ましくは1~2.5:1~2.5:1~2.5:1~2.5、特に好ましくは1:1:1:1の比で行うことが好ましい。
【0045】
一般に、デノボ乳頭の作製中に、細胞外マトリックスタンパク質の層が細胞凝集体の中および/または周りに形成されるが、前記層は一般にDPFおよび/またはCTSFから構成される。これに代えて、またはこれに加えて、本発明の方法におけるステップc)の過程で、および/または後で、デノボ乳頭を細胞外マトリックスタンパク質で被覆することが可能である。例えばこれは、この乳頭の被膜の形成を促進および/または加速するために、これらの細胞外マトリックスタンパク質を含む組成物を培養培地にさらに加えることで達成することができる。最初にデノボ乳頭を培養培地から分離し、その後、デノボ乳頭をこれらの細胞外マトリックスタンパク質を含む組成物と混合することも可能である。細胞外マトリックスタンパク質を加えたこの組成物は、コラーゲンIV、フィブロネクチンおよび/またはラミニンを含むことが好ましい。細胞外マトリックスタンパク質をさらに加えたこの組成物は、コラーゲンIV、フィブロネクチンおよびラミニンを、好ましくは2~6:0.5~2:0.5~2の重量部の比で、より好ましくは3~5:0.5~1.5:0.5~1.5の重量部の比で、より一層好ましくは4:1:1.15の重量部の比で含むか、または構成されていることが好ましい。細胞外マトリックスタンパク質組成物は他のマトリックスと組み合わせて使用することもできる。ある実施形態では、細胞外マトリックスタンパク質組成物は、さらに別のコラーゲン(コラーゲンI、コラーゲン10A1、コラーゲン18A1など)、グリコサミノグリカンおよび/またはプロテオグリカンを、好ましくはヘパラン硫酸、デコリン、ケラタン硫酸、バイグリカン、アグリカン、バーシカン、パールカン、オステオポンチン、CD44v3および/またはシンデカンを含む。
【0046】
デノボ乳頭は、これらのマトリックスタンパク質を細胞培養培地に加えることにより、細胞外マトリックスタンパク質で被覆することが好ましい。細胞外マトリックスタンパク質によるデノボ乳頭の被膜の形成もまた、実質的に非付着性の細胞培養条件下で行うことが好ましい。デノボ乳頭の被膜の形成は少なくとも1分間、好ましくは10分間~14日間、より好ましくは20分間~48時間、より一層好ましくは30分間~24時間、特に好ましくは1時間~4時間行う。
【0047】
本発明はまた、本発明の方法で作製したデノボ乳頭に関する。
【0048】
好ましい実施形態では、デノボ乳頭を作製する方法は、次のステップを含む:a)少なくとも1個の毛包の少なくとも1個のDPから単離したDPFを提供するステップ;b)少なくとも1個の毛包のCTSFを提供するステップ;およびc)球状の細胞凝集体を形成させるために、実質的に非付着性の細胞培養条件下でDPFおよびCTSFならびに追加のECの共培養を行うステップ。DPF、CTSFおよびECは、1~20:1~20:1~20の比で共培養することが好ましい。デノボ乳頭は、細胞外マトリックスタンパク質を細胞培養培地に加えることにより、これらのマトリックスタンパク質で被覆することが好ましい。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことができる。共培養は、好ましくは円形の底を有する円柱状の窪みの中で行い得ることが好ましい。例えば96または384ウエルのマルチウエル細胞培養容器中で共培養を行うことが可能である。さらに、共培養は血漿および/または血清の存在下に行うことができる。DPF、CTSFおよびECはドナーから採取することが好ましい。
【0049】
さらなる好ましい実施形態では、デノボ乳頭を作製する方法は、次のステップを含む:a)少なくとも1個の毛包の少なくとも1個のDPから単離したDPFを提供するステップ;b)少なくとも1個の毛包のCTSFを提供するステップ;c)球状の細胞凝集体を形成するために、実質的に非付着性の細胞培養条件下でDPFおよびCTSFならびに追加のSVFの共培養を行うステップ。DPF、CTSFおよびSVFは、1~20:1~20:1~20の比で共培養することが好ましい。デノボ乳頭は、細胞外マトリックスタンパク質で被覆することが好ましい。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことができる。さらに、共培養は血漿および/または血清の存在下に行うことができる。DPF、CTSFおよびSVFはドナーから採取することが好ましい。
【0050】
さらなる好ましい実施形態では、デノボ乳頭を作製する方法は、次のステップを含む:a)少なくとも1個の毛包の少なくとも1個のDPから単離したDPFを提供するステップ;b)少なくとも1個の毛包のCTSFを提供するステップ;c)実質的に非付着性の細胞培養条件下でDPF、CTSFならびに追加のECおよびSVFの共培養を行うステップ。DPF、CTSF、ECおよびSVFは、1~20:1~20:1~20:1~20の比で共培養することが好ましい。デノボ乳頭は、細胞外マトリックスタンパク質で被覆することが好ましい。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことができる。さらに、共培養は血漿および/または血清の存在下に行うことができる。DPF、CTSF、ECおよびSVFはドナーから採取することが好ましい。
【0051】
さらに、本発明は次のステップを含む毛包の作製方法に関する:a)本発明のデノボ乳頭を作製する方法によって作製された少なくとも1個のデノボ乳頭を提供するステップ;b)角化細胞(KC)、メラニン細胞(MC)または結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)から選択される少なくとも1種のさらなる細胞集団を提供するステップ;c)実質的に非付着性の培養条件下でデノボ乳頭を少なくとも1種のさらなる細胞集団と共培養するステップ。
【0052】
天然の毛包と比べると、本発明の方法により作製される「毛包」は、間葉起源の線維芽細胞が凝結したコア(乳頭)と、周りの外および/または内上皮毛根鞘とを含み得るが、筋肉または神経細胞、血管などのさらなる種類の細胞または構造体を含有しない不完全な毛包構造体を与え、それゆえ、毛包は天然の毛包と比べてサイズが小さい。毛包は、角化細胞(KC)、メラニン細胞(MC)またはCTSFなどの線維芽細胞から選択される少なくとも1種のさらなる細胞集団によって安定に被覆またはコロニー化された、少なくともDPFおよびCTSFのデノボ乳頭から構成される。毛包は、KC、MCまたはCTSFから選択される少なくとも1種のさらなる細胞集団(この少なくとも1種のさらなる細胞集団は、毛包から得ることができるか、または得られる)によって安定に被覆またはコロニー化されたデノボ乳頭からなることが好ましい。この毛包は、生理学的毛包の3次元的外観に似た、3次元で、かつ任意選択により空間的に限られた形態を有する。毛包は、極性構造、例えば、毛包の一方の側に先の尖った突起物を有し得るが、これは生理学的毛包の形態形成初期の構造を連想させるものである。
【0053】
本発明の毛包作製方法では、最初の方法ステップa)で、少なくとも1個のデノボ乳頭が提供されるが、このデノボ乳頭は上記方法にしたがって作製されたものである。
【0054】
本発明の毛包作製方法のステップb)では、KC、MCまたはCTSFから選択される少なくとも1種のさらなる細胞集団が提供される。
【0055】
本発明の毛包作製方法の次のステップc)では、実質的に非付着性の細胞培養条件下で、デノボ乳頭を、角化細胞(KC)、メラニン細胞(MC)または結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)から選択される少なくとも1種のさらなる細胞集団と共培養することが行われる。この場合、KC、MCおよび/またはCTSFは、毛包を起源とするものである必要はなく、他の哺乳動物の組織、例えば皮膚から得ることができる。少なくとも1種のさらなる細胞集団は毛包から得ることができ、および/または毛包から得ることが好ましい。
【0056】
この場合、KC、MCおよび/またはCTSFは同じ毛包から得ることができる。しかしながら、KC、MCおよび/またはCTSFは異なる毛包から得ることもできる。KC、MCおよび/またはCTSFを異なる毛包から得る場合、これらの毛包は同じ組織から単離したもの、例えばドナーの頭部首筋部分などの組織から取り出したものであってよい。KC、MCおよび/またはCTSFを異なる毛包から得る場合、例えば組織の1つは例えばドナーの頭部首筋部分から採取し、他の組織はドナーの顎鬚から採取するというように、これらの毛包は異なる組織から単離したものであってもよい。後者の場合、ドナーは同じドナーであっても、異なるドナーであってもよい。異なるドナーの場合、同種のドナーであることが好ましい。ドナーは同じドナー、すなわち自己ドナーであることが好ましい。
【0057】
少なくとも1種のさらなる細胞集団は、DPを単離した毛包と同じ毛包から得ることが特に好ましい。本発明の方法では、KC、MCおよび/またはCTSFは単離後、それらの使用前に、例えばそれらを複製するために中間培養に供することができる。したがって、本発明の方法で使用するKC、MCおよび/またはCTSFは、初めに単離したKC、MCおよび/またはCTSFの子孫またはクローンであり得る。
【0058】
少なくとも1種のさらなる細胞集団は、デノボ乳頭と同じ比でまたは異なる比で存在することができる。デノボ乳頭は好ましくは1~10:1~50の比で、より好ましくは1~5:1~40の比で、KC、MCおよび/またはCTSFと共培養する。デノボ乳頭は1~10:1~50:1~50の比で、好ましくは1~5:1~20:1~20の比でKCおよびMCと共培養することが好ましい。デノボ乳頭は1~10:1~50:1~50:1~50の比でKC、MCおよびCTSFと共培養することが特に好ましい。この場合、KCおよびMCがデノボ乳頭の周りに層を形成するように、デノボ乳頭のKCおよびMCとの共培養を最初に行うことが好ましく、その後、CTSFとの共培養を行う。CTSFにより形成された被膜によって、皮膚への移植を改善し得る毛包が形成される。
【0059】
デノボ乳頭と少なくとも1種のさらなる細胞集団との共培養は、少なくとも10分間、好ましくは20分間~3週間、より好ましくは30分~24時間、より一層好ましくは1時間~4時間行う。
【0060】
本発明の毛包作製方法のステップc)におけるデノボ乳頭と少なくとも1種のさらなる細胞集団との共培養は、実質的に静的な条件下または運動下で行うことができる。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことが好ましい。
【0061】
ある好ましい実施形態では、毛包を作製する方法は、次のステップを含む:a)本発明のデノボ乳頭作製方法により作製された少なくとも1つのデノボ乳頭を提供するステップ;b)KCおよびMCを提供するステップ;ならびにc)デノボ乳頭をKCおよびMCと実質的に非付着性の細胞培養条件下で共培養するステップ。ここで、デノボ乳頭はDPF、CTSFならびに追加のECおよび/またはSVFを含むことが好ましい。デノボ乳頭は細胞外マトリックスタンパク質で被覆することが好ましい。デノボ乳頭、KCおよびMCは、1~10:1~50:1~50の比で共培養することが好ましい。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことができる。共培養は、好ましくは円形の底を有する円柱状の窪みの中で行い得ることが好ましい。例えば、96または384ウエルのマルチウエル細胞培養容器中で共培養を行うことが可能である。デノボ乳頭を作製する細胞ならびにKCおよびMCはドナーから採取することが好ましい。
【0062】
さらなる好ましい実施形態では、毛包を作製する方法は、次のステップを含む:a)本発明のデノボ乳頭作製方法により作製された少なくとも1つのデノボ乳頭を提供するステップ;b)KC、MCおよびCTSFを提供するステップ;ならびにc)デノボ乳頭をKC、MCおよびCTSFと実質的に非付着性の細胞培養条件下で共培養するステップ。ここで、デノボ乳頭はDPF、CTSFならびに追加のECおよび/またはSVFを含むことが好ましい。デノボ乳頭は細胞外マトリックスタンパク質で被覆することが好ましい。デノボ乳頭、KC、MCおよびCTSFは、1~10:1~50:1~50:1~50の比で共培養することが好ましい。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことができる。共培養は、好ましくは円形の底を有する円柱状の窪みの中で行い得ることが好ましい。例えば96または384ウエルのマルチウエル細胞培養容器中で共培養を行うことが可能である。デノボ乳頭を作製する細胞ならびにKC、MCおよびCTSFはドナーから採取することが好ましい。
【0063】
本発明はさらに、本発明の方法で作製された毛包を含む。
【0064】
本発明の方法の1つにより作製されたデノボ乳頭および/または毛包は、皮膚均等物の作製に使用することができる。皮膚均等物は、皮膚マトリックスを基に作製することが好ましいが、前記皮膚マトリックスは、例えばMatriderm(登録商標)などの人工の皮膚マトリックス、またはドナーの皮膚である。例えばパーフォレーションの形態をした、デノボ乳頭および/または毛包の挿入部位は、例えば型、メスまたはレーザーを使用して、この皮膚マトリックスに形成される。これらの挿入部位は、互いに規則的または不規則的な間隔で皮膚マトリックスに挿入することができる。デノボ乳頭および/または毛包は、皮膚マトリックスの挿入部位に挿入される。したがって本発明はまた、本発明の方法の1つにより作製されたデノボ乳頭および/または毛包を含む皮膚均等物に関する。皮膚均等物はさらに、KCおよび/またはMCの1つまたは複数の層を含むことができ、この/これらの層は皮膚マトリックスに存在するデノボ乳頭および/または毛包の上に施されることが好ましい。さらに、皮膚均等物はまた、他の細胞および/または細胞構造体、例えば天然の健康なまたは病気の皮膚が含有する、免疫細胞(樹枝状細胞、リンパ球など)、神経細胞、脂腺および汗腺細胞/組織、筋肉細胞/繊維、血管構造体、ならびにさらに別の種類の細胞も含むことができる。
【0065】
本発明の方法の1つにより作製されたデノボ乳頭および/または毛包は、インプラントの作製に使用することができる。したがって本発明はまた本発明の方法の1つにより作製されたデノボ乳頭および/または毛包を、任意選択により薬学的に許容される賦形剤と共に含むインプラントに関する。
【0066】
本発明はまた、有効量の皮膚均等物を、任意選択により薬学的に許容される賦形剤と共に含むトランスプラントを含む。
【0067】
本発明はまた、デノボ乳頭、本発明の方法により作製された毛包、ならびに/またはデノボ乳頭および/もしくは毛包を含む皮膚均等物の、脱毛を伴う疾患を治療するための使用に関する。脱毛を伴う疾患の治療では、デノボ乳頭および/または毛包の作製に同種の細胞を使用することが好ましく、これは使用する細胞のドナーと、作製されたデノボ乳頭および/または毛包のレシピエントが同じ種に属すること、すなわちドナーおよびレシピエントの両者とも、例えばヒトであることを意味する。脱毛を伴う疾患の治療では、デノボ乳頭および/または毛包の作製に自己の細胞を使用することが特に好ましく、これは使用する細胞のドナーならびに作製したデノボ乳頭および/または毛包のレシピエントが同一であること、例えば同一人であることを意味する。
【0068】
本発明はまた、本発明のデノボ乳頭、毛包および/または皮膚均等物の、毛髪成長調節物質のインビトロ試験のための使用に関する。
【0069】
さらに本発明はまた、本発明のデノボ乳頭、毛包および/または皮膚均等物の、物質の毒性インビトロ試験のための使用に関する。
【0070】
本発明はまた、本発明の方法を実施するためのキットを含む。この目的のために、キットは、例えば脱毛を伴う疾患の治療または物質のスクリーニング用として本発明の方法を実施するために、本発明のデノボ乳頭、毛包、皮膚均等物、インプラントおよび/またはトランスプラントを含むことができる。キットはまた、任意選択により、キットを使用するため、および/または本発明の方法を実施するための取扱説明書を含むことができる。キットはまた、本発明の方法を実施するための、例えば反応容器、フィルター、溶液および/または他の手段などの、さらなる構成要素を含むことができる。
【0071】
本発明はさらに、脱毛を伴う疾患を治療する方法において、この治療を必要とする哺乳動物の皮膚に、本発明のデノボ乳頭、毛包および/または皮膚均等物を挿入する方法を含む。
【0072】
本発明はまた、次のステップを含む、毛髪の成長調節特性を有する物質をインビトロでスクリーニングする方法に関する:a)本発明のデノボ乳頭、毛包および/または皮膚均等物の試料を提供するステップ;b)対応する試料をいくつかの部分に分割するステップ;c)少なくとも1つの部分を試験物質と共にインキュベーとするステップ;およびd)前記部分の毛髪特性のパラメータを、物質と共にインキュベートしていない別の部分のものと比較するステップ。
【0073】
以下に、実施例と添付の図面により、本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1図1は以下を示す。A)FUT毛髪トランプラントのために採取された頭皮生検(これから細胞を単離するために個々の毛包を切り出すことができる)。B)FUE毛髪トランスプラントのために採取された個々の毛包単位。個々の細胞種もまた、これらから単離することができる。C)FUを切り出された近位毛包(これを、次に、CTSおよびDP(赤色の円)を露出させるために、カットし直径方向に反転させる)。D)反転させ、DPを含むCTSを除去した後の近位毛包。上皮組織(KC、Mel)に囲まれた毛幹のみが依然存在する。赤色の円はDPが無くなったことを示す。E)依然DPに結合し、CTFSおよび内皮細胞を含有しているCTS組織鞘。F)組織混合物からさらに細胞を解離させるために分離したCTSのDP。
図2図2は以下を示す。毛包単位の顕微鏡写真、および毛包単位の概略構造を示す図。デノボ乳頭およびインビトロ毛包に必要な細胞を、それぞれの組織から単離することができる。FUは、実質的に、毛幹、上皮、真皮、皮脂腺、結合組織鞘(CTS;CTSF)、毛根鞘(ORS、IRS;KC)、汗腺、血管(内皮細胞)、色素単位(メラニン細胞)、真皮乳頭(DPF)および脂肪組織(脂肪細胞;SVF)からなる。
図3図3は以下を示す。A)反転させ、CTSを分離した後の真皮乳頭の走査電子顕微鏡写真。B)非付着性の培養条件下でDPFとCTSFから発生したデノボ乳頭の走査型電子顕微鏡写真。C)マルチウエル細胞培養プレートの非付着性丸底窪み中でインビトロ毛包を形成した、デノボ乳頭と、その周りの角化細胞およびメラニン細胞からなるインビトロ毛包。周りの角化細胞層の極性形成および分化が明瞭に観察できる。色素沈着(暗色メラニン微小体)も見られる。D)組織免疫学的観点から、DPの標識であるコンドロイチン4硫酸に対する蛍光標識で染色した、インビトロ毛包の凍結組織切片。ここで、DP(デノボ乳頭)と周りの上皮(KC)細胞の明確な区画化を観察することができる。E)組織免疫学的観点から、メラニン細胞の標識であるTRP1タンパク質に対する蛍光標識で染色した、インビトロ毛包の凍結組織切片。インビトロ毛包区画に、色素形成メラニン細胞の一様な分布を見ることができる。F)組織免疫学的観点から、ケラチン15(赤)およびケラチン10(緑)に対する2重蛍光標識で染色したインビトロ毛包の凍結組織切片。ここで、最初は幹細胞特性(K15の発現)を示し、そして周囲の層で既に分化が一段と進んでいる(K10)、デノボ乳頭周囲の角化細胞の分化を観察することができる。
【実施例0075】
実施例1
毛包からの各種細胞の単離
標準のプロトコールの修正法(例えば、「Magerl et al.」に記載)を使用し、ヒトの毛包からDPF、CTSF、MC、KCを単離した。パンチ生検から単離した毛包、またはFUT毛髪移植から切り出した毛包を、ピンセットを使用して毛幹に固定し、結合組織鞘を切開し、毛球を反転させ、真皮乳頭および毛幹が毛母体と共に露出するよう、別のピンセットを使用して直径方向に注意深く互いを分離させる。この方法で、毛球の近位部は結合組織鞘線維芽細胞および真皮乳頭と共に、針/カニューレを使用して、極めて容易に毛包の残りの部分から分離することができる。この過程で、他に必要な毛母体角化細胞およびメラニン細胞を含有する毛幹もまた、その後の培養のために最適に切り離される。
【0076】
取り出した毛包から、このようにして抽出した真皮乳頭および結合組織鞘のそれぞれを、培地が入った別々の容器に集める。組織ディソシエーターと付属の抽出キット(例えば、gentleMACS Dissociator#130-093-235、whole skin dissociation kit#130-101-540、Miltenyi Biotec)とを使用して穏やかに分離させることにより、組織培地からDPFおよびCTSFが溶出し単離される。この目的のために、それぞれの場合に、単離した組織断片(真皮乳頭、結合組織鞘および表皮/神経外胚葉細胞を有する毛幹)、435μlのバッファーLならびに12.5mgの酵素Pおよび/または4.50mgの酵素Dおよび/または2.5mgの酵素Aの酵素混合物をgentleMACS Cチューブに入れ、注意深く混合する。
【0077】
試料を37℃の水浴中で1~3時間または終夜インキュベートするが、インキュベーション時間を長くすれば細胞収量が多くなる。インキュベーション後、0.5mlの冷細胞培養培地を加えて試料を希釈する。Cチューブに封をし、上下を逆にしてgentleMACS Dissociatorのスリーブにセットする。その後、プログラム「h_skin_01」を実行する。プログラムの終了後、試料物質を底に集めるために短時間の遠心分離工程を加える。細胞は新鮮な培地で洗浄することができ、細胞懸濁液は70μmのフィルターで分離することができる。さらなる分離操作により、直接的な自家療法には望ましくない酵素の直接添加を行わずに済ませることができるが、この場合、細胞収量が減少することを考慮しておかなければならない。
【0078】
実施例2
間質血管細胞群(SFV)の作製
例えば、確立されたPureGraft(商標)法(Cytori GmbH、Switzerland)により、チューメセント脂肪吸引溶液の1リットル画分を腹部または臀部の皮下脂肪から取り出し、調製する。この方法では、チューメセント溶液を除去するために遠心分離および濃縮を実施する。その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Gibco)で希釈した、クロストリジウム・ヒストリチカム(Clostridium histolyticum)からの0.15%(重量/体積)Collagenase NB 6(GMPグレード)(0.12U/mgコラゲナーゼ;SERVA Electrophoresis GmbH)中、37℃で60分間解離を行った。180gで10分間の遠心分離後、脂質に富んだ上清を捨て、細胞のペレットをPBSで1回洗浄する。溶解緩衝液(0.15M塩化アンモニウム、Sigma-Aldrich)中で2分間のインキュベーションを行うことにより、赤血球を溶解させる。得られた間質血管細胞群(SVF)を完全培地(CM、Gibco)に取る。
【0079】
実施例3
外毛根鞘からの細胞(ORS KC)の作製
頭髪または顎鬚を有する対応部位を洗浄および消毒(70%エタノール)し、ゴムでコーティングしたピンセットで毎回20~30本の毛髪を引き抜く。組織層が付着している毛髪のみを容器に移し、PBS中で濯ぐ。その後、2mlのトリプシン/EDTA溶液中、37℃で20分間毛髪をインキュベートし、続いて、撹拌機により短時間混合する。4mlのトリプシン阻害剤で酵素反応を停止させる。これをPBSで洗浄し、懸濁液を200gで5分間遠心分離する。その後、細胞を培地に取り、引き続き培養に使用するか、または細胞の計数後、引き続きインビトロの毛包作製に使用することができる。
【0080】
実施例4
デノボ乳頭の作製
1,500個のDPFおよびCTSF細胞をピペットに取り、384ウエルの超低付着性丸底マルチウエルプレート(Corning)(1:1比のDMEM+10%FCSおよびDermaLife培地中)の窪みに移すか、または最初にSVF細胞または内皮細胞と混合し、その後マルチウエルプレートの窪みに移す。後者は200gで2分間遠心分離し、室温、20rpmで20分間インキュベートする。より長期の培養では、毎日培地を変える。
【0081】
実施例5
インビトロの毛包作製
分離した、または引き抜いた毛幹の組織分離で生じるメラニン細胞および角化細胞の混合物を細胞培養培地に取り、ピペットにより各デノボ乳頭(15,000細胞/マルチウエルプレートの窪み)に加える。この懸濁液を200gで1分間遠心分離し、室温、20rpmで30分間インキュベートする。より長期の培養では、毎日培地を変える。

図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アンドロゲン性脱毛症としても知られる遺伝による脱毛は、非常な拡がりを見せている、精神的および感情的苦痛を引き起こす疾患であり、我々の社会でこの疾患は患者の仕事能力に重大な影響を及ぼしている。遺伝による脱毛は、毛包がステロイドホルモンであるジヒドロテストステロンに過敏であることが原因であると考えられる。
【0002】
アンドロゲン性脱毛症の薬物治療に加えて、移植の可能性もあり、これは今もなお美容上圧倒的に最良の結果を与えている。この方法では、後頭部の首または外側側頭領域から頭頂部または前頭部の毛髪のない部分へアンドロゲン非感受性毛包をそのまま再分布させる。
【0003】
最新の毛髪移植技術は急速に高度化し、かつ効率的になってきてはいるが、かなり進行した脱毛では特に、美容上十分に豊富な髪を提供するには、したがって満足できる治療結果を達成するには、利用できる天然のドナーの髪は十分ではない。毛髪移植を行うには、レシピエントに移植すべき材料として、適切な毛髪トランスプラントまたは細胞が必要である。一般に、必要とする細胞を再生するには数週間が必要である。さらに、この再生はクリーンルームの条件下で行わなければならないので、生成物は、極めて高い開発とマーケティングのハードルをクリアしなければならないいわゆるATMP(先端医療医薬品)に分類される。
【0004】
国際公開第2009/118283A1号パンフレットおよび国際公開第2007/100870A2号パンフレットは、デノボ乳頭、毛包および皮膚均等物、ならびにこれらを含むトランスプラントの作製方法を開示している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の1つ以上の欠点を軽減または回避することである。具体的には、本発明の目的は、デノボ乳頭または毛包を作製できる方法を提供することである。
【0006】
本発明は、次のステップ、a)少なくとも1個の毛包の少なくとも1個の真皮乳頭(DP)から単離した真皮毛乳頭線維芽細胞(DPF)を提供するステップと、b)少なくとも1個の毛包から単離した結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)を提供するステップと、c)球状の細胞凝集体を形成させるために、実質的に非付着性の細胞培養条件下でDPFとCTSFとを共培養するステップとを含み、ステップc)の共培養で、内皮細胞(EC)および/または間質血管細胞群(SVF)を追加的に含む請求項1に記載のデノボ乳頭の作製方法を提供することにより、この目的を達成する。
【0007】
驚いたことに、少なくともDPFとCTSFとの混合物からデノボ乳頭を作製できることがわかった。本発明の作製方法は、従来技術で知られている毛包再生方法より短時間で行うことができる。したがって、毛包から細胞集団を得、これらの細胞を使用してデノボ乳頭および/または毛包を大量に作製し、これらの新たに作られたデノボ乳頭または毛包を、治療すべき無毛の頭皮に移植して、これらの場所で新たな毛髪が再び形成されるようにするのに1日以内で可能である。
【0008】
以下では、特段の断りがない限り、使用した単数形または複数形は、常にそれぞれの複数形および単数形をそれぞれ含むものとする。
【0009】
本発明の方法は、デノボ乳頭の作製に関する。用語「デノボ乳頭」、「新生乳頭」または「球状体」は同義語として使用され、基本的に真皮毛乳頭線維芽細胞(DPF)および結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)の球状の細胞凝集体を指す。したがって、デノボ乳頭は、少なくともDPFとCTSFとの混合物を含む。デノボ乳頭は、約2~20,000個の、好ましくは10~15,000個の、より好ましくは500~10,000個の、より一層好ましくは1,000~5,000個の細胞から構成される。デノボ乳頭の大きさは、単離後、毛包の生理学的真皮乳頭(DP)の大きさの少なくとも半分であることが好ましい。デノボ乳頭はまた、単離後、毛包の生理学的DPとほぼ同じ形状であることが好ましい。
【0010】
デノボ乳頭は、コラーゲンIV、フィブロネクチンおよび/またはラミニンなどの、1つまたは複数の異なる細胞外マトリックスタンパク質を含有する被膜を含み得る。この被膜はDPFおよびCTSF自身が形成し得るが、一方でこれらの細胞はデノボ乳頭を形成する。これに代えて、またはこれに加えて、デノボ乳頭にはまた、その形成中および/または形成後に、1つまたは複数の異なる細胞外マトリックスタンパク質を培養培地にさらに加えることによって、被膜が形成され得る。
【0011】
本発明の作製方法はインビトロで行われる。「インビトロ」は、生命体、例えばヒトまたは動物の体内でない環境を意味すると理解される。したがって、本発明のインビトロ方法は、ヒトまたは動物の体に対して行われるいかなる方法も明示的に含まない。
【0012】
本発明の方法では、最初の方法ステップa)で、少なくとも1個の真皮乳頭(DP)から単離した真皮毛乳頭線維芽細胞(DPF)が提供され、このDPは少なくとも1個の毛包から得られる。
【0013】
例えば、毛包からのDPの提供、およびDPからのDPFの単離は次のように行うことができる:単離した毛包を例えばピンセットを使用して毛幹に固定し、結合組織鞘を例えばさらに別のピンセットを使用して毛幹から直径方向に分離して、毛球を反転させ、それによりDPFおよび毛幹を毛母体と共に露出させる。このようにして、DPを毛包の残りの部分から分離することができるが、これは例えば針またはカニューレを使用して行うことができる。
【0014】
その後、単離したDPを例えば細胞培養容器に移し、細胞培養容器の表面に機械的に固定する。DPFは、例えば針の先端またはメスを使用し、単離したDPを細胞培養容器の底に機械的に固定して得ることが好ましい。このプロセスでは、DPのモルホロジーはほぼ保持されるが、DPの基底膜には、DPFがDPから移動できるよう、僅かに穴が開けられる。DPFはまた、DPの酵素的分離または非酵素的分離によっても得ることができる。
【0015】
本発明の方法では、DPFを単離後、それらの使用前に、例えばそれらを複製するために中間培養に供することができる。したがって、本発明の方法で使用するDPFは、初めに単離したDPFの子孫またはクローンであり得る。
【0016】
DPおよびDPFを単離する毛包は組織から得られる。組織から毛包を取り出す方法は、当業者に知られている。毛包は、良好な医療行為の基準にしたがって組織から取り出すことが好ましい。毛包は、実質的にそのままの状態を保って、すなわち無傷で組織から取り出すことが好ましい。例えば、組織から毛包を取り出すには次のように行うことができる:i)好ましくはメスを使用した、表皮の、その下にある真皮からの、または皮下組織の場合は脂肪組織からの分離;ii)真皮からの、または皮下組織の場合は脂肪組織からの毛髪の解剖。取り出した毛髪には、その近位端に毛包が含まれる。ステップii)の前に、任意選択により真皮または脂肪組織を圧縮して、その中に含まれる毛包がより容易に解剖されるようにすることができる。この場合、圧縮は、例えばピンセットで行うことができる。
【0017】
毛包の取り出しは顕微鏡下で行うことが好ましい。毛包は、パンチ生検から得ることが好ましく、これは個人の毛包単位(FU)から構成されることが好ましい。毛包単位は、互いに近接して生えている1~4本の毛髪群に対する呼称であって、組織膜に囲まれており、共通の筋肉(立毛筋)によって動かされる。毛包単位は、先に取り出した一片の頭皮を実体顕微鏡下で解剖するか、またはより正確な方法では、中空針で頭皮に直接穴を開けることにより得られる。後者の方法は毛包単位の摘出(FUE)と呼ばれる。
【0018】
例えばDPまたはDPFを単離するために毛包を得ることができる組織は、哺乳動物から得られる。この哺乳動物はヒト、サル、ブタ、イヌ、ネコまたは齧歯動物であり得るが、好ましくはヒトである。このように、哺乳動物は毛包を含有する組織のドナーとして寄与する。哺乳動物としては、脱毛に悩むヒト患者が特に好ましい。
【0019】
組織には皮膚が含まれることが好ましい。ここで、組織は毛髪を有するあらゆる身体部分から得ることができるが、好ましくは、頭部、胸部、眉、顎鬚、性器部分、脚部または他の身体部分である。組織は、脱毛の影響がある身体部位に近接する身体部分から採取することが特に好ましい。例えば、脱毛の影響が頭頂部、すなわち前頭部と後頭部の間の頭の部分にあるならば、首筋または側頭部から組織を採取することが好ましい。組織は生検により得ることが好ましい。
【0020】
例えばDPまたはDPFを単離するために毛包を組織から取り出す前に、存在する可能性のある妨害物質を前記組織から除去する目的で、この組織を1つ以上のクリーニングステップに供することができる。
【0021】
本発明の方法のステップb)では、少なくとも1個の毛包から単離した結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)が提供される。
【0022】
例えば、毛包からのCTSFの提供は次のように行うことができる:単離した毛包を例えばピンセットを使用して毛幹に固定し、結合組織鞘を例えばさらに別のピンセットを使用して毛幹から直径方向に分離して毛球を反転させる。このようにして、CTSFを有する毛球の近位部を毛包の残りの部分から分離することができるが、これは例えば針またはカニューレを使用して行うことができる。
【0023】
その後、単離した結合組織鞘を例えば細胞培養容器に移し、細胞培養容器の表面に機械的に固定する。CTSFは、例えば針の先端またはメスを使用し、単離した結合組織鞘を細胞培養容器の底に機械的に固定して得ることが好ましい。このプロセスでは、結合組織鞘のモルホロジーはほぼ保持されるが、結合組織には、CTSFが結合組織から移動できるよう、僅かに穴が開けられる。CTSFはまた、好ましくは結合組織の酵素的分離または非酵素的分離によっても得ることができる。
【0024】
本発明の方法では、CTSFを単離後、それらの使用前に、例えばそれらを複製するために中間培養に供することができる。したがって、本発明の方法で使用するCTSFは、初めに単離したCTSFの子孫またはクローンであり得る。
【0025】
CTSFを単離する毛包は組織から得られる。組織から毛包を取り出す方法は、当業者に知られている。毛包は、良好な医療行為の基準にしたがって組織から取り出すことが好ましい。毛包は、実質的にそのままの状態を保って、すなわち無傷で組織から取り出すことが好ましい。例えば、組織からの毛包の取り出しは次のように行うことができる:i)好ましくはメスを使用した、表皮の、その下にある真皮からの、または皮下組織の場合は脂肪組織からの分離;ii)真皮からの、または皮下組織の場合は脂肪組織からの毛髪の解剖。取り出した毛髪には、その近位端に毛包が含まれる。ステップii)の前に、任意選択により真皮または脂肪組織を圧縮して、その中に含まれる毛包がより容易に解剖されるようにすることができる。この場合、圧縮は、例えばピンセットで行うことができる。毛包の取り出しは顕微鏡下で行うことが好ましい。
【0026】
例えばCTSFを単離するために毛包を得ることができる組織は、哺乳動物から得られる。この哺乳動物はヒト、サル、ブタ、イヌ、ネコまたは齧歯動物であり得るが、好ましくはヒトである。このように、哺乳動物は毛包を含有する組織のドナーとして寄与する。哺乳動物としては、脱毛に悩むヒト患者が特に好ましい。
【0027】
組織には皮膚が含まれることが好ましい。ここで、組織は毛髪を有するあらゆる身体部分から得ることができるが、好ましくは、頭部、胸部、眉、顎鬚、性器部分、脚部または他の身体部分である。組織は、脱毛の影響がある身体部位に近接する身体部分から採取することが特に好ましい。例えば、脱毛の影響が頭頂部、すなわち前頭部と後頭部の間の頭の部分にあるならば、首筋または側頭部から組織を採取することが好ましい。組織は生検により得ることが好ましい。
【0028】
例えばCTSFを単離するために毛包を組織から取り出す前に、存在する可能性のある妨害物質を前記組織から除去する目的で、この組織を1つ以上のクリーニングステップに供することができる。
【0029】
このように、DPFおよびCTSFは単離した毛包から得られる。DPFおよびCTSFは同じ毛包から得ることができる。しかしながら、DPFおよびCTSFは異なる毛包から得ることもできる。DPFおよびCTSFを異なる毛包から得る場合、これらの毛包は同じ組織、例えばドナーの頭部首筋部分などの組織から単離したものでもよい。DPFおよびCTSFを異なる毛包から得る場合、例えば組織の1つは例えばドナーの頭部首筋部分から採取し、他の組織は例えばドナーの顎鬚から採取するというように、これらの毛包は異なる組織から単離したものでもよい。この場合、ドナーは同じドナーであっても、異なるドナーであってもよい。異なるドナーの場合、同種のドナーであることが好ましい。ドナーは同じドナー、すなわち自己ドナーであることが好ましい。
【0030】
本発明の方法の次のステップc)では、球状の細胞凝集体を形成させるために、実質的に非付着性の細胞培養条件下でDPFとCTSFとの共培養を行う。
【0031】
本発明の方法の意味では、「非付着性の細胞培養条件」という用語は、細胞が実質的に細胞培養容器の表面と直接および/または持続的に接触しない細胞培養条件を指すものとする。これは、例えば、細胞培養容器の表面を、細胞の付着を低減もしくは本質的に防止する材料で構成し、および/または細胞培養容器の表面に細胞の付着を低減もしくは防止する付着防止コーティングを施すことで、達成することができる。適切な培養容器および/またはこれらの細胞培養容器に適切なコーティングは、当業者に知られている。そのような非付着性細胞培養容器は、例えばガラスまたはポリスチレンから作ることができる。細胞培養容器の表面は、PTFE、ポリHEMA、アガロースまたはフルオロカーボン溶液などの接触防止材料でコーティングすることが好ましい。
【0032】
本発明によれば、非付着性の細胞培養条件の定義にはまた、細胞が培養培地の液滴内部に存在する、いわゆる「ハンギングドロップ」培養法も含まれる。液体の表面張力によって、液滴は細胞培養容器の表面上で吊るされた姿勢を維持し、その中に存在する細胞を包み込む。重力下では、細胞は液滴の下部に集まり、培養容器と実質的に直接接触することはない。細胞は液滴内部で球形になることができる。
【0033】
DPFとCTSFとの共培養により、形と大きさが生理学的にDPに類似した、実質的に球形の細胞凝集体が生じる。
【0034】
DPFとCTSFは同一比または異なる比で共培養することができる。DPFとCTSFは1~20:1~20、好ましくは1~10:1~10、より好ましくは1~5:1~5、より一層好ましくは1~2.5:1~2.5、特に好ましくは1:1の比で共培養することが好ましい。
【0035】
ある実施形態では、ステップc)のDPFとCTSFとの共培養の細胞濃度として、細胞培養容器1mm当たり、DPF+CTSFが2~20,000個、好ましくは10~15,000個、より好ましくは500~10,000個、より一層好ましくは1,000~5,000個が選択される。
【0036】
DPFとCTSFとの共培養は、当業者に知られている適切な細胞培養容器を用いてその中で行われる。例えば、これらの細胞培養容器は商業的に入手可能な細胞培養用のプレート、皿またはフラスコであり得る。細胞培養容器は1つまたは複数の窪みを含み得る。DPFとCTSFとの共培養は、細胞培養容器の窪みの中で行うことが好ましい。細胞培養容器は、1つより多い窪みを有する、いわゆるマルチウエルプレートとすることができる。細胞培養容器は、好ましくは2~10,000個、より好ましくは4~1536個、より一層好ましくは6~384個の窪みを有する。
【0037】
細胞培養容器の窪みの底は平坦、または平坦でない構造とすることができる。窪みの底は半円アーチ形の構造が好ましい。ロート状構造の窪みも好ましい。
【0038】
ある実施形態では、ステップc)で共培養する前に、遠心分離によりDPFおよびCTSFを沈殿物として細胞培養容器の底に沈殿させる。細胞培養容器の底でのDPFおよびCTSFのこの初期濃縮により、より急速に細胞凝集体が形成される。
【0039】
DPFおよびCTSFの共培養は、少なくとも1分間、好ましくは10分間~14日間、より好ましくは20分間~48時間、より一層好ましくは30分間~24時間、特に好ましくは1時間~4時間行う。
【0040】
本発明の方法のステップc)におけるDPFおよびCTSFの共培養は、血漿および/または血清の存在下に行うことが好ましい。血漿および/または血清はヒトの血漿および/または血清が好ましく、自己の血漿および/または血清が好ましい。血漿および/または血清は、1~100%の、好ましくは15~75%の、より好ましくは30~50%の血漿または血清が好ましい。
【0041】
本発明の方法のステップc)におけるDPFおよびCTSFの共培養は、実質的に静的な条件または運動条件下で行うことができる。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことが好ましい。
【0042】
さらに、本発明の方法のステップc)におけるDPFおよびCTSFの共培養では、さらに別の種類の細胞も存在する。内皮細胞(EC)および/または間質血管細胞群(SVF)の細胞が、共培養にさらに存在する。
【0043】
ECを得る方法は当業者に知られている。ECは血管から、好ましくは毛包上または毛包内の血管から得ることができる。ECはヒトドナーから得ることが好ましい。これらは自己ECであることが特に好ましい。本発明の方法では、ECを単離後、それらの使用前に、例えばそれらを複製するために中間培養に供することができる。したがって、本発明の方法で使用するECは、初めに単離したECの子孫またはクローンであり得る。本発明の方法のステップc)におけるDPFとCTSFの共培養でECが存在するので、DPF、CTSFおよびECを含むデノボ乳頭が形成される。哺乳動物の皮膚の脱毛を伴う疾患を治療するために、そうしたデノボ乳頭またはそれから生成した毛包を導入することができる。皮膚への移植後、そのようなデノボ乳頭またはそれから生成した毛包は、乳頭または毛包の周りにより急速に血管を形成し、したがってその結果として毛髪の形成または成長速度を向上させることができる。
【0044】
SVFを得る方法は当業者に知られている。例えば、SVFは脂肪組織の解剖または吸引により得ることができる。SVFはヒトのドナーから得ることが好ましく、自己SVFであることがより好ましい。SVFには、脂肪細胞前駆体(前脂肪細胞)、内皮細胞、内皮筋肉細胞、線維芽細胞、マクロファージまたは血液細胞などの各種細胞集団が含まれる。ドナーから得た後、SVFの特定の成分をSVFから除くことが可能であり、これは、1回以上の洗浄、クリーニングもしくは単離ステップにより、または成分の選択分離もしくは除去によっても行うことができる。SVFを単離後、それらの使用前に、例えばそれらを複製するために中間培養に供することは同様に可能である。したがって、本発明の方法で使用するSVFは、初めに単離したSVFの子孫またはクローンであり得る。本発明の方法のステップc)における共培養にはSVFが存在するので、DPFおよびCTSFの細胞増殖を増大させるか、またはより急速に起こすことができ、したがってデノボ乳頭の作製が加速される。
【0045】
別の種類の細胞は、DPFおよびCTSFと同じ比で存在していても、異なる比で存在していてもよい。DPF、CTSFおよびECまたはSVFは1~20:1~20:1~20、好ましくは1~10:1~10:1~10、より好ましくは1~5:1~5:1~5、より一層好ましくは1~2.5:1~2.5:1~2.5、特に好ましくは1:1:1の比で共培養することが好ましい。DPFおよびCTSFをECおよびSVFと共に培養する場合、共培養は1~20:1~20:1~20:1~20、好ましくは1~10:1~10:1~10:1~10、より好ましくは1~5:1~5:1~5:1~5、より一層好ましくは1~2.5:1~2.5:1~2.5:1~2.5、特に好ましくは1:1:1:1の比で行うことが好ましい。
【0046】
一般に、デノボ乳頭の作製中に、細胞外マトリックスタンパク質の層が細胞凝集体の中および/または周りに形成されるが、前記層は一般にDPFおよび/またはCTSFから構成される。これに代えて、またはこれに加えて、本発明の方法におけるステップc)の過程で、および/または後で、デノボ乳頭を細胞外マトリックスタンパク質で被覆することが可能である。例えばこれは、この乳頭の被膜の形成を促進および/または加速するために、これらの細胞外マトリックスタンパク質を含む組成物を培養培地にさらに加えることで達成することができる。最初にデノボ乳頭を培養培地から分離し、その後、デノボ乳頭をこれらの細胞外マトリックスタンパク質を含む組成物と混合することも可能である。細胞外マトリックスタンパク質を加えたこの組成物は、コラーゲンIV、フィブロネクチンおよび/またはラミニンを含むことが好ましい。細胞外マトリックスタンパク質をさらに加えたこの組成物は、コラーゲンIV、フィブロネクチンおよびラミニンを、好ましくは2~6:0.5~2:0.5~2の重量部の比で、より好ましくは3~5:0.5~1.5:0.5~1.5の重量部の比で、より一層好ましくは4:1:1.15の重量部の比で含むか、または構成されていることが好ましい。細胞外マトリックスタンパク質組成物は他のマトリックスと組み合わせて使用することもできる。ある実施形態では、細胞外マトリックスタンパク質組成物は、さらに別のコラーゲン(コラーゲンI、コラーゲン10A1、コラーゲン18A1など)、グリコサミノグリカンおよび/またはプロテオグリカンを、好ましくはヘパラン硫酸、デコリン、ケラタン硫酸、バイグリカン、アグリカン、バーシカン、パールカン、オステオポンチン、CD44v3および/またはシンデカンを含む。
【0047】
デノボ乳頭は、これらのマトリックスタンパク質を細胞培養培地に加えることにより、細胞外マトリックスタンパク質で被覆することが好ましい。細胞外マトリックスタンパク質によるデノボ乳頭の被膜の形成もまた、実質的に非付着性の細胞培養条件下で行うことが好ましい。デノボ乳頭の被膜の形成は少なくとも1分間、好ましくは10分間~14日間、より好ましくは20分間~48時間、より一層好ましくは30分間~24時間、特に好ましくは1時間~4時間行う。
【0048】
本発明はまた、本発明の方法で作製したデノボ乳頭に関する。
【0049】
好ましい実施形態では、デノボ乳頭を作製する方法は、次のステップを含む:a)少なくとも1個の毛包の少なくとも1個のDPから単離したDPFを提供するステップ;b)少なくとも1個の毛包のCTSFを提供するステップ;およびc)球状の細胞凝集体を形成させるために、実質的に非付着性の細胞培養条件下でDPFおよびCTSFならびに追加のECの共培養を行うステップ。DPF、CTSFおよびECは、1~20:1~20:1~20の比で共培養することが好ましい。デノボ乳頭は、細胞外マトリックスタンパク質を細胞培養培地に加えることにより、これらのマトリックスタンパク質で被覆することが好ましい。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことができる。共培養は、好ましくは円形の底を有する円柱状の窪みの中で行い得ることが好ましい。例えば96または384ウエルのマルチウエル細胞培養容器中で共培養を行うことが可能である。さらに、共培養は血漿および/または血清の存在下に行うことができる。DPF、CTSFおよびECはドナーから採取することが好ましい。
【0050】
さらなる好ましい実施形態では、デノボ乳頭を作製する方法は、次のステップを含む:a)少なくとも1個の毛包の少なくとも1個のDPから単離したDPFを提供するステップ;b)少なくとも1個の毛包のCTSFを提供するステップ;c)球状の細胞凝集体を形成するために、実質的に非付着性の細胞培養条件下でDPFおよびCTSFならびに追加のSVFの共培養を行うステップ。DPF、CTSFおよびSVFは、1~20:1~20:1~20の比で共培養することが好ましい。デノボ乳頭は、細胞外マトリックスタンパク質で被覆することが好ましい。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことができる。さらに、共培養は血漿および/または血清の存在下に行うことができる。DPF、CTSFおよびSVFはドナーから採取することが好ましい。
【0051】
さらなる好ましい実施形態では、デノボ乳頭を作製する方法は、次のステップを含む:a)少なくとも1個の毛包の少なくとも1個のDPから単離したDPFを提供するステップ;b)少なくとも1個の毛包のCTSFを提供するステップ;c)実質的に非付着性の細胞培養条件下でDPF、CTSFならびに追加のECおよびSVFの共培養を行うステップ。DPF、CTSF、ECおよびSVFは、1~20:1~20:1~20:1~20の比で共培養することが好ましい。デノボ乳頭は、細胞外マトリックスタンパク質で被覆することが好ましい。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことができる。さらに、共培養は血漿および/または血清の存在下に行うことができる。DPF、CTSF、ECおよびSVFはドナーから採取することが好ましい。
【0052】
さらに、本発明は次のステップを含む毛包の作製方法に関する:a)本発明のデノボ乳頭を提供する方法を行うステップ;b)角化細胞(KC)、メラニン細胞(MC)または結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)から選択される少なくとも1種のさらなる細胞集団を提供するステップ;c)実質的に非付着性の培養条件下でデノボ乳頭を少なくとも1種のさらなる細胞集団と共培養するステップ。
【0053】
天然の毛包と比べると、本発明の方法により作製される「毛包」は、間葉起源の線維芽細胞が凝結したコア(乳頭)と、周りの外および/または内上皮毛根鞘とを含み得るが、筋肉または神経細胞、血管などのさらなる種類の細胞または構造体を含有しない不完全な毛包構造体を与え、それゆえ、毛包は天然の毛包と比べてサイズが小さい。毛包は、角化細胞(KC)、メラニン細胞(MC)またはCTSFなどの線維芽細胞から選択される少なくとも1種のさらなる細胞集団によって安定に被覆またはコロニー化された、少なくともDPFおよびCTSFのデノボ乳頭から構成される。毛包は、KC、MCまたはCTSFから選択される少なくとも1種のさらなる細胞集団(この少なくとも1種のさらなる細胞集団は、毛包から得ることができるか、または得られる)によって安定に被覆またはコロニー化されたデノボ乳頭からなることが好ましい。この毛包は、生理学的毛包の3次元的外観に似た、3次元で、かつ任意選択により空間的に限られた形態を有する。毛包は、極性構造、例えば、毛包の一方の側に先の尖った突起物を有し得るが、これは生理学的毛包の形態形成初期の構造を連想させるものである。
【0054】
本発明の毛包作製方法では、最初の方法ステップa)で、少なくとも1個のデノボ乳頭が提供されるが、このデノボ乳頭は上記方法にしたがって作製されたものである。
【0055】
本発明の毛包作製方法のステップb)では、KC、MCまたはCTSFから選択される少なくとも1種のさらなる細胞集団が提供される。
【0056】
本発明の毛包作製方法の次のステップc)では、実質的に非付着性の細胞培養条件下で、デノボ乳頭を、角化細胞(KC)、メラニン細胞(MC)または結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)から選択される少なくとも1種のさらなる細胞集団と共培養することが行われる。この場合、KC、MCおよび/またはCTSFは、毛包を起源とするものである必要はなく、他の哺乳動物の組織、例えば皮膚から得ることができる。少なくとも1種のさらなる細胞集団は毛包から得ることができ、および/または毛包から得ることが好ましい。
【0057】
この場合、KC、MCおよび/またはCTSFは同じ毛包から得ることができる。しかしながら、KC、MCおよび/またはCTSFは異なる毛包から得ることもできる。KC、MCおよび/またはCTSFを異なる毛包から得る場合、これらの毛包は同じ組織から単離したもの、例えばドナーの頭部首筋部分などの組織から取り出したものであってよい。KC、MCおよび/またはCTSFを異なる毛包から得る場合、例えば組織の1つは例えばドナーの頭部首筋部分から採取し、他の組織はドナーの顎鬚から採取するというように、これらの毛包は異なる組織から単離したものであってもよい。後者の場合、ドナーは同じドナーであっても、異なるドナーであってもよい。異なるドナーの場合、同種のドナーであることが好ましい。ドナーは同じドナー、すなわち自己ドナーであることが好ましい。
【0058】
少なくとも1種のさらなる細胞集団は、DPを単離した毛包と同じ毛包から得ることが特に好ましい。本発明の方法では、KC、MCおよび/またはCTSFは単離後、それらの使用前に、例えばそれらを複製するために中間培養に供することができる。したがって、本発明の方法で使用するKC、MCおよび/またはCTSFは、初めに単離したKC、MCおよび/またはCTSFの子孫またはクローンであり得る。
【0059】
少なくとも1種のさらなる細胞集団は、デノボ乳頭と同じ比でまたは異なる比で存在することができる。デノボ乳頭は好ましくは1~10:1~50の比で、より好ましくは1~5:1~40の比で、KC、MCおよび/またはCTSFと共培養する。デノボ乳頭は1~10:1~50:1~50の比で、好ましくは1~5:1~20:1~20の比でKCおよびMCと共培養することが好ましい。デノボ乳頭は1~10:1~50:1~50:1~50の比でKC、MCおよびCTSFと共培養することが特に好ましい。この場合、KCおよびMCがデノボ乳頭の周りに層を形成するように、デノボ乳頭のKCおよびMCとの共培養を最初に行うことが好ましく、その後、CTSFとの共培養を行う。CTSFにより形成された被膜によって、皮膚への移植を改善し得る毛包が形成される。
【0060】
デノボ乳頭と少なくとも1種のさらなる細胞集団との共培養は、少なくとも10分間、好ましくは20分間~3週間、より好ましくは30分~24時間、より一層好ましくは1時間~4時間行う。
【0061】
本発明の毛包作製方法のステップc)におけるデノボ乳頭と少なくとも1種のさらなる細胞集団との共培養は、実質的に静的な条件下または運動下で行うことができる。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことが好ましい。
【0062】
ある好ましい実施形態では、毛包を作製する方法は、次のステップを含む:a)本発明のデノボ乳頭作製方法により作製された少なくとも1つのデノボ乳頭を提供するステップ;b)KCおよびMCを提供するステップ;ならびにc)デノボ乳頭をKCおよびMCと実質的に非付着性の細胞培養条件下で共培養するステップ。ここで、デノボ乳頭はDPF、CTSFならびに追加のECおよび/またはSVFを含むことが好ましい。デノボ乳頭は細胞外マトリックスタンパク質で被覆することが好ましい。デノボ乳頭、KCおよびMCは、1~10:1~50:1~50の比で共培養することが好ましい。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことができる。共培養は、好ましくは円形の底を有する円柱状の窪みの中で行い得ることが好ましい。例えば、96または384ウエルのマルチウエル細胞培養容器中で共培養を行うことが可能である。デノボ乳頭を作製する細胞ならびにKCおよびMCはドナーから採取することが好ましい。
【0063】
さらなる好ましい実施形態では、毛包を作製する方法は、次のステップを含む:a)本発明のデノボ乳頭作製方法により作製された少なくとも1つのデノボ乳頭を提供するステップ;b)KC、MCおよびCTSFを提供するステップ;ならびにc)デノボ乳頭をKC、MCおよびCTSFと実質的に非付着性の細胞培養条件下で共培養するステップ。ここで、デノボ乳頭はDPF、CTSFならびに追加のECおよび/またはSVFを含むことが好ましい。デノボ乳頭は細胞外マトリックスタンパク質で被覆することが好ましい。デノボ乳頭、KC、MCおよびCTSFは、1~10:1~50:1~50:1~50の比で共培養することが好ましい。共培養は回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことができる。共培養は、好ましくは円形の底を有する円柱状の窪みの中で行い得ることが好ましい。例えば96または384ウエルのマルチウエル細胞培養容器中で共培養を行うことが可能である。デノボ乳頭を作製する細胞ならびにKC、MCおよびCTSFはドナーから採取することが好ましい。
【0064】
さらに、本発明の方法で作製された毛包を開示する。
【0065】
本発明の方法の1つにより作製されたデノボ乳頭および/または毛包は、皮膚均等物の作製に使用することができる。皮膚均等物は、皮膚マトリックスを基に作製することが好ましいが、前記皮膚マトリックスは、例えばMatriderm(登録商標)などの人工の皮膚マトリックス、またはドナーの皮膚である。例えばパーフォレーションの形態をした、デノボ乳頭および/または毛包の挿入部位は、例えば型、メスまたはレーザーを使用して、この皮膚マトリックスに形成される。これらの挿入部位は、互いに規則的または不規則的な間隔で皮膚マトリックスに挿入することができる。デノボ乳頭および/または毛包は、皮膚マトリックスの挿入部位に挿入される。したがって本開示はまた、本発明の方法の1つにより作製されたデノボ乳頭および/または毛包を含む皮膚均等物に関する。皮膚均等物はさらに、KCおよび/またはMCの1つまたは複数の層を含むことができ、この/これらの層は皮膚マトリックスに存在するデノボ乳頭および/または毛包の上に施されることが好ましい。さらに、皮膚均等物はまた、他の細胞および/または細胞構造体、例えば天然の健康なまたは病気の皮膚が含有する、免疫細胞(樹枝状細胞、リンパ球など)、神経細胞、脂腺および汗腺細胞/組織、筋肉細胞/繊維、血管構造体、ならびにさらに別の種類の細胞も含むことができる。
【0066】
本発明の方法の1つにより作製されたデノボ乳頭および/または毛包は、インプラントの作製に使用することができる。したがって本開示はまた本発明の方法の1つにより作製されたデノボ乳頭および/または毛包を、任意選択により薬学的に許容される賦形剤と共に含むインプラントに関する。
【0067】
本開示はまた、有効量の皮膚均等物を、任意選択により薬学的に許容される賦形剤と共に含むトランスプラントを含む。
【0068】
本開示はまた、デノボ乳頭、本発明の方法により作製された毛包、ならびに/またはデノボ乳頭および/もしくは毛包を含む皮膚均等物の、脱毛を伴う疾患を治療するための使用に関する。脱毛を伴う疾患の治療では、デノボ乳頭および/または毛包の作製に同種の細胞を使用することが好ましく、これは使用する細胞のドナーと、作製されたデノボ乳頭および/または毛包のレシピエントが同じ種に属すること、すなわちドナーおよびレシピエントの両者とも、例えばヒトであることを意味する。脱毛を伴う疾患の治療では、デノボ乳頭および/または毛包の作製に自己の細胞を使用することが特に好ましく、これは使用する細胞のドナーならびに作製したデノボ乳頭および/または毛包のレシピエントが同一であること、例えば同一人であることを意味する。
【0069】
本開示はまた、本発明のデノボ乳頭、毛包および/または皮膚均等物の、毛髪成長調節物質のインビトロ試験のための使用に関する。
【0070】
さらに本開示はまた、本発明のデノボ乳頭、毛包および/または皮膚均等物の、物質の毒性インビトロ試験のための使用に関する。
【0071】
本開示はまた、本発明の方法を実施するためのキットを含む。この目的のために、キットは、例えば脱毛を伴う疾患の治療または物質のスクリーニング用の方法を実施するために、説明されたデノボ乳頭、毛包、皮膚均等物、インプラントおよび/またはトランスプラントを含むことができる。キットはまた、任意選択により、キットを使用するため、および/または本発明の方法を実施するための取扱説明書を含むことができる。キットはまた、本発明の方法を実施するための、例えば反応容器、フィルター、溶液および/または他の手段などの、さらなる構成要素を含むことができる。
【0072】
本開示はさらに、脱毛を伴う疾患を治療する方法において、この治療を必要とする哺乳動物の皮膚に、本発明のデノボ乳頭、毛包および/または皮膚均等物を挿入する方法を含む。
【0073】
本開示はまた、次のステップを含む、毛髪の成長調節特性を有する物質をインビトロでスクリーニングする方法に関する:a)説明されたデノボ乳頭、毛包および/または皮膚均等物の試料を提供するステップ;b)対応する試料をいくつかの部分に分割するステップ;c)少なくとも1つの部分を試験物質と共にインキュベーとするステップ;およびd)前記部分の毛髪特性のパラメータを、物質と共にインキュベートしていない別の部分のものと比較するステップ。
【0074】
以下に、実施例と添付の図面により、本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1図1は以下を示す。A)FUT毛髪トランプラントのために採取された頭皮生検(これから細胞を単離するために個々の毛包を切り出すことができる)。B)FUE毛髪トランスプラントのために採取された個々の毛包単位。個々の細胞種もまた、これらから単離することができる。C)FUを切り出された近位毛包(これを、次に、CTSおよびDP(赤色の円)を露出させるために、カットし直径方向に反転させる)。D)反転させ、DPを含むCTSを除去した後の近位毛包。上皮組織(KC、Mel)に囲まれた毛幹のみが依然存在する。赤色の円はDPが無くなったことを示す。E)依然DPに結合し、CTFSおよび内皮細胞を含有しているCTS組織鞘。F)組織混合物からさらに細胞を解離させるために分離したCTSのDP。
図2図2は以下を示す。毛包単位の顕微鏡写真、および毛包単位の概略構造を示す図。デノボ乳頭およびインビトロ毛包に必要な細胞を、それぞれの組織から単離することができる。FUは、実質的に、毛幹、上皮、真皮、皮脂腺、結合組織鞘(CTS;CTSF)、毛根鞘(ORS、IRS;KC)、汗腺、血管(内皮細胞)、色素単位(メラニン細胞)、真皮乳頭(DPF)および脂肪組織(脂肪細胞;SVF)からなる。
図3図3は以下を示す。A)反転させ、CTSを分離した後の真皮乳頭の走査電子顕微鏡写真。B)非付着性の培養条件下でDPFとCTSFから発生したデノボ乳頭の走査型電子顕微鏡写真。C)マルチウエル細胞培養プレートの非付着性丸底窪み中でインビトロ毛包を形成した、デノボ乳頭と、その周りの角化細胞およびメラニン細胞からなるインビトロ毛包。周りの角化細胞層の極性形成および分化が明瞭に観察できる。色素沈着(暗色メラニン微小体)も見られる。D)組織免疫学的観点から、DPの標識であるコンドロイチン4硫酸に対する蛍光標識で染色した、インビトロ毛包の凍結組織切片。ここで、DP(デノボ乳頭)と周りの上皮(KC)細胞の明確な区画化を観察することができる。E)組織免疫学的観点から、メラニン細胞の標識であるTRP1タンパク質に対する蛍光標識で染色した、インビトロ毛包の凍結組織切片。インビトロ毛包区画に、色素形成メラニン細胞の一様な分布を見ることができる。F)組織免疫学的観点から、ケラチン15(赤)およびケラチン10(緑)に対する2重蛍光標識で染色したインビトロ毛包の凍結組織切片。ここで、最初は幹細胞特性(K15の発現)を示し、そして周囲の層で既に分化が一段と進んでいる(K10)、デノボ乳頭周囲の角化細胞の分化を観察することができる。
【実施例0076】
実施例1
毛包からの各種細胞の単離
標準のプロトコールの修正法(例えば、「Magerl et al.」に記載)を使用し、ヒトの毛包からDPF、CTSF、MC、KCを単離した。パンチ生検から単離した毛包、またはFUT毛髪移植から切り出した毛包を、ピンセットを使用して毛幹に固定し、結合組織鞘を切開し、毛球を反転させ、真皮乳頭および毛幹が毛母体と共に露出するよう、別のピンセットを使用して直径方向に注意深く互いを分離させる。この方法で、毛球の近位部は結合組織鞘線維芽細胞および真皮乳頭と共に、針/カニューレを使用して、極めて容易に毛包の残りの部分から分離することができる。この過程で、他に必要な毛母体角化細胞およびメラニン細胞を含有する毛幹もまた、その後の培養のために最適に切り離される。
【0077】
取り出した毛包から、このようにして抽出した真皮乳頭および結合組織鞘のそれぞれを、培地が入った別々の容器に集める。組織ディソシエーターと付属の抽出キット(例えば、gentleMACS Dissociator#130-093-235、whole skin dissociation kit#130-101-540、Miltenyi Biotec)とを使用して穏やかに分離させることにより、組織培地からDPFおよびCTSFが溶出し単離される。この目的のために、それぞれの場合に、単離した組織断片(真皮乳頭、結合組織鞘および表皮/神経外胚葉細胞を有する毛幹)、435μlのバッファーLならびに12.5mgの酵素Pおよび/または4.50mgの酵素Dおよび/または2.5mgの酵素Aの酵素混合物をgentleMACS Cチューブに入れ、注意深く混合する。
【0078】
試料を37℃の水浴中で1~3時間または終夜インキュベートするが、インキュベーション時間を長くすれば細胞収量が多くなる。インキュベーション後、0.5mlの冷細胞培養培地を加えて試料を希釈する。Cチューブに封をし、上下を逆にしてgentleMACS Dissociatorのスリーブにセットする。その後、プログラム「h_skin_01」を実行する。プログラムの終了後、試料物質を底に集めるために短時間の遠心分離工程を加える。細胞は新鮮な培地で洗浄することができ、細胞懸濁液は70μmのフィルターで分離することができる。さらなる分離操作により、直接的な自家療法には望ましくない酵素の直接添加を行わずに済ませることができるが、この場合、細胞収量が減少することを考慮しておかなければならない。
【0079】
実施例2
間質血管細胞群(SFV)の作製
例えば、確立されたPureGraft(商標)法(Cytori GmbH、Switzerland)により、チューメセント脂肪吸引溶液の1リットル画分を腹部または臀部の皮下脂肪から取り出し、調製する。この方法では、チューメセント溶液を除去するために遠心分離および濃縮を実施する。その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Gibco)で希釈した、クロストリジウム・ヒストリチカム(Clostridium histolyticum)からの0.15%(重量/体積)Collagenase NB 6(GMPグレード)(0.12U/mgコラゲナーゼ;SERVA Electrophoresis GmbH)中、37℃で60分間解離を行った。180gで10分間の遠心分離後、脂質に富んだ上清を捨て、細胞のペレットをPBSで1回洗浄する。溶解緩衝液(0.15M塩化アンモニウム、Sigma-Aldrich)中で2分間のインキュベーションを行うことにより、赤血球を溶解させる。得られた間質血管細胞群(SVF)を完全培地(CM、Gibco)に取る。
【0080】
実施例3
外毛根鞘からの細胞(ORS KC)の作製
頭髪または顎鬚を有する対応部位を洗浄および消毒(70%エタノール)し、ゴムでコーティングしたピンセットで毎回20~30本の毛髪を引き抜く。組織層が付着している毛髪のみを容器に移し、PBS中で濯ぐ。その後、2mlのトリプシン/EDTA溶液中、37℃で20分間毛髪をインキュベートし、続いて、撹拌機により短時間混合する。4mlのトリプシン阻害剤で酵素反応を停止させる。これをPBSで洗浄し、懸濁液を200gで5分間遠心分離する。その後、細胞を培地に取り、引き続き培養に使用するか、または細胞の計数後、引き続きインビトロの毛包作製に使用することができる。
【0081】
実施例4
デノボ乳頭の作製
1,500個のDPFおよびCTSF細胞をピペットに取り、384ウエルの超低付着性丸底マルチウエルプレート(Corning)(1:1比のDMEM+10%FCSおよびDermaLife培地中)の窪みに移すか、または最初にSVF細胞または内皮細胞と混合し、その後マルチウエルプレートの窪みに移す。後者は200gで2分間遠心分離し、室温、20rpmで20分間インキュベートする。より長期の培養では、毎日培地を変える。
【0082】
実施例5
インビトロの毛包作製
分離した、または引き抜いた毛幹の組織分離で生じるメラニン細胞および角化細胞の混合物を細胞培養培地に取り、ピペットにより各デノボ乳頭(15,000細胞/マルチウエルプレートの窪み)に加える。この懸濁液を200gで1分間遠心分離し、室温、20rpmで30分間インキュベートする。より長期の培養では、毎日培地を変える。

【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デノボ乳頭の作製方法であって、
a)少なくとも1個の毛包の少なくとも1個の真皮乳頭(DP)から単離した真皮毛乳頭線維芽細胞(DPF)を提供するステップ、
b)少なくとも1個の毛包から単離した結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)を提供するステップ、および
c)球状細胞凝集体を形成するために実質的に非付着性の細胞培養条件下で前記DPFと前記CTSFとを共培養するステップ
を含み、
前記ステップc)の共培養で、内皮細胞(EC)および/または間質血管細胞群(SVF)を追加的に含むことを特徴とするデノボ乳頭の作製方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記DPFと前記CTSFとを、1~20:1~20の比で共培養することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記デノボ乳頭は、2~20,000個の細胞から構成されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、前記デノボ乳頭に細胞外マトリックスタンパク質を加えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、前記共培養を回転運動、旋回運動または振動運動下で行うことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法において、前記共培養を少なくとも10分間行うことを特徴とする方法。
【請求項7】
哺乳類の真皮毛乳頭線維芽細胞、結合組織鞘線維芽細胞、内皮細胞および/または間質血管細胞群由来の細胞の球状の細胞凝集体からなるデノボ乳頭であって、前記細胞凝集体が、単離後の毛包の生理学的真皮乳頭(DP)と同様のサイズおよび形状を示し、かつ、細胞外マトリックスタンパク質でコーティングされており、前記デノボ乳頭が、請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法により作製されてなることを特徴とするデノボ乳頭。
【請求項8】
毛包の作製方法であって、
a)請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法による少なくとも1個のデノボ乳頭を作製するステップ、
b)角化細胞(KC)、メラニン細胞(MC)または結合組織鞘線維芽細胞(CTSF)から選択される少なくとも1種のさらなる細胞集団を提供するステップ、および
c)実質的に非付着性の細胞培養条件下で、ステップa)の前記デノボ乳頭をステップb)の前記少なくとも1種のさらなる細胞集団と共培養するステップ
を含むことを特徴とする毛包の作製方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記デノボ乳頭をKC、MCおよび/またはCTSFと1~10(デノボ乳頭):1~50(KC、MCおよび/またはCTSF)の比で培養することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の方法において、前記少なくとも1種のさらなる細胞集団は、毛包から得ることができる、および/または毛包から得られることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8乃至10の何れか1項に記載の方法において、前記共培養を少なくとも10分間行うことを特徴とする方法。
【外国語明細書】