(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031769
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】深部イントロン突然変異の遺伝子編集
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20220215BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220215BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220215BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220215BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20220215BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220215BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220215BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20220215BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220215BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220215BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20220215BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220215BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220215BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20220215BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20220215BHJP
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C12Q 1/6851 20180101ALI20220215BHJP
C12Q 1/6883 20180101ALI20220215BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220215BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20220215BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20220215BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20220215BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20220215BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20220215BHJP
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C12N 15/867 20060101ALN20220215BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K31/7105 ZNA
A61P25/28
A61P7/00
A61P7/04
A61P9/00
A61P13/12
A61P27/12
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A61P35/02
A61P7/06
A61P35/00
A61P37/02
A61K38/48 100
C12N7/01
C12Q1/02
C12Q1/6851 Z
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C12N15/09 110
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C12N15/864 100Z
C12N15/869 Z
C12N15/867 Z
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021189812
(22)【出願日】2021-11-24
(62)【分割の表示】P 2018511592の分割
【原出願日】2016-04-15
(31)【優先権主張番号】62/162,720
(32)【優先日】2015-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】グゥオシィアン・ルアン
(72)【発明者】
【氏名】アブラハム・スカリア
(57)【要約】 (修正有)
【課題】個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するための組成物および方法を提供する。
【解決手段】組成物は、a)該深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを含み、Casタンパク質は、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す、組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物は、
a)該深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、
b)Casタンパク質と
を含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを含み、該Casタンパク質は、該深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、該深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す、前記組成物。
【請求項2】
個体の核酸における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物は、
a)該深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、
b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と
を含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含み、該Casタンパク質は、該深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、該深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す、前記組成物。
【請求項3】
深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
深部イントロン突然変異は、表1に示される深部イントロン突然変異である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
個体の核酸における、深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物は、
a)該深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、
b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と
を含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含み、該Casタンパク質は、該深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、該深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す、前記組成物。
【請求項6】
個体の核酸における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物は、
a)該深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、
b)Casタンパク質と
を含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを含み、該Casタンパク質は、該深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、該深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す、前記組成物。
【請求項7】
眼の疾患は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症である、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である、請求項5~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
眼の疾患は、レーバー先天黒内障である、請求項5~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAガイド配列は、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、請求項5~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である、請求項5~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
第1のガイドRNAは、配列番号41、配列番号45、配列番号46または配列番号47の配列を含むDNAによってコードされる、請求項5~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
第1のガイドRNAは、配列番号19、配列番号50、配列番号51または配列番号52の配列を含むDNAによってコードされる、請求項5~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
第2のガイドRNAは、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号48または配列番号49の配列を含むDNAによってコードされる、請求項5~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
第2のガイドRNAは、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号53または配列番号54の配列を含むDNAによってコードされる、請求項5~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
CEP290は、ヒトCEP290である、請求項10~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む、請求項10~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
深部イントロン突然変異は、核酸の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
深部イントロン突然変異は、核酸の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
深部イントロン突然変異は、核酸中にスプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項1~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9タンパク質またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
Cas9は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項24】
真核細胞は、哺乳動物細胞である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
真核細胞は、ヒト細胞である、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
CRISPR-Casシステムは、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をさらに含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
Casタンパク質は、1つまたはそれ以上のNLSを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
NLSは、SV40ラージT抗原中のC末端配列である、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
NLSは、配列PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている、請求項1~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
tracr配列は、配列番号25によってコードされるヌクレオチド配列を含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質をコードする核酸は、真核細胞において発現される、請求項2~4および6~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよび/またはCasタンパク質をコードする核酸は、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている、請求項2~4および6~32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターと作動可能に連結されている、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、U6、7SKまたはH1プロモーターである、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
Casタンパク質をコードする核酸は、RNAポリメラーゼIIプロモーターと作動可能に連結されている、請求項33~35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
RNAポリメラーゼIIプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター(minCMVプロモーター)由来の最小プロモーター断片、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、EF1αプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーターまたは光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
CRISPR-Casシステムは、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸および/もしくはタンパク質の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている、請求項1、3~5または7~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、システムの同一または異なるベクター上に位置する、請求項2~4および6~37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
ベクターは、プラスミドである、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
ベクターは、送達システムと複合体形成されている、請求項39または40に記載の組成物。
【請求項42】
ベクターは、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである、請求項29に記載の組成物。
【請求項44】
ベクターは、組換えアデノウイルスベクターである、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来する、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5の変異体に由来する、請求項44または45に記載の組成物。
【請求項47】
ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである、請求項43に記載の組成物。
【請求項48】
組換えレンチウイルスベクターは、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたレンチウイルスに由来する、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
ベクターは、rHSVベクターである、請求項43に記載の組成物。
【請求項50】
rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2に由来する、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである、請求項43に記載の組成物。
【請求項52】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列がその両端に位置する、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、2つのAAV ITRがその両端に位置する、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシド血清型ITRである、請求項52または請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
AAV ITRは、AAV2 ITRである、請求項52~54のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項56】
ベクターは、自己相補的ベクターである、請求項52~55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項57】
ベクターは、ウイルス粒子中にキャプシド封入されている、請求項43に記載の組成物。
【請求項58】
ウイルス粒子は、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド封入する組換えアデノウイルス粒子である、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3に由来するキャプシドを含む、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2キャプシドまたはアデノウイルス血清型5キャプシドの変異体を含む、請求項58または59に記載の組成物。
【請求項61】
ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド封入する組換えレンチウイルス粒子である、請求項57に記載の組成物。
【請求項62】
組換えレンチウイルス粒子は、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたキャプシドを含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
ウイルス粒子は、組換えHSVベクターをキャプシド封入する組換えHSV粒子である、請求項57に記載の組成物。
【請求項64】
組換えHSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2ウイルス粒子である、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
ウイルス粒子は、組換えAAVベクターを含む組換えAAVウイルス粒子である、請求項57に記載の組成物。
【請求項66】
組換えAAVウイルス粒子は、クレードA~Fに由来するAAV血清型キャプシドを含む、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む、請求項65または66に記載の組成物。
【請求項68】
rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、同一AAV血清型に由来する、請求項65~67のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項69】
rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、異なるAAV血清型に由来する、請求項65~67のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項70】
組換えAAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドを含む、請求項65~69のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項71】
AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドは、チロシン突然変異またはヘパラン結合突然変異を含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
rAAVベクターは、AAV2 ITRを含む、請求項65~71のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項73】
個体の核酸における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するための方法であって、該方法は、
a)該深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、
b)Casタンパク質と
を含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを含む組成物の治療有効量を、個体に投与することを含み、該Casタンパク質は、該深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、該深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す、前記方法。
【請求項74】
個体の核酸における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するための方法であって、該方法は、
a)該深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、
b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と
を含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含む組成物の治療有効量を、個体に投与することを含み、該Casタンパク質は、該深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、該深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す、前記方法。
【請求項75】
深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症である、請求項73または74に記載の方法。
【請求項76】
深部イントロン突然変異は、表1に示される深部イントロン突然変異である、請求項73~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
個体の核酸における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための方法であって、該方法は、
a)該深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、
b)Casタンパク質と
を含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを含む組成物の治療有効量を、個体に投与することを含み、該深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、該深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す、前記方法。
【請求項78】
個体の核酸における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための方法であって、該方法は、
a)該深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、
b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と
を含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含む組成物の治療有効量を、個体に投与することを含み、該深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、該深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す、前記方法。
【請求項79】
眼の疾患は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症である、請求項77または78に記載の方法。
【請求項80】
深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である、請求項77~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
個体は、哺乳動物である、請求項73~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
哺乳動物は、ヒトである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
眼の疾患は、レーバー先天黒内障である、請求項77~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
組成物は、個体の眼に投与される、請求項77~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
投与は、網膜下または硝子体内である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAガイド配列は、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、請求項77~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である、請求項77~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
第1のガイドRNAは、配列番号41、配列番号45、配列番号46または配列番号47の配列を含むDNAによってコードされる、請求項77~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
第1のガイドRNAは、配列番号19、配列番号50、配列番号51または配列番号52の配列を含むDNAによってコードされる、請求項77~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
第2のガイドRNAは、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号48または配列番号49の配列を含むDNAによってコードされる、請求項77~89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
第2のガイドRNAは、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号53または配列番号54の配列を含むDNAによってコードされる、請求項77~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
CEP290は、ヒトCEP290である、請求項86~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む、請求項86~92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
深部イントロン突然変異は、核酸の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する、請求項73~93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
深部イントロン突然変異は、核酸の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する、請求項73~94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
深部イントロン突然変異は、核酸中にスプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する、請求項73~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項73~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9タンパク質またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
Cas9は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される、請求項97または98に記載の方法。
【請求項100】
真核細胞は、哺乳動物細胞である、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
真核細胞は、ヒト細胞である、請求項99または100に記載の方法。
【請求項102】
CRISPR-Casシステムは、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をさらに含む、請求項73~101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
Casタンパク質は、1つまたはそれ以上のNLSを含む、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
NLSは、SV40ラージT抗原中のC末端配列である、請求項102または103に記載の方法。
【請求項105】
NLSは、配列PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)を含む、請求項102~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている、請求項73~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
tracr配列は、配列番号25によってコードされるヌクレオチド配列を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質は、真核細胞において発現される、請求項73~107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよび/またはCasタンパク質をコードする核酸は、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている、請求項74~76および78~108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターと作動可能に連結されている、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、U6、7SKまたはH1プロモーターである、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
Casタンパク質をコードする核酸は、RNAポリメラーゼIIプロモーターと作動可能に連結されている、請求項109~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
RNAポリメラーゼIIプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター(minCMVプロモーター)由来の最小プロモーター断片、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、EF1αプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーターまたは光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
CRISPR-CASシステムは、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている、請求項73、75~77および79~107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、システムの同一または異なるベクター上に位置する、請求項74~76および78~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
ベクターは、プラスミドである、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
ベクターは、送達システムと複合体形成されている、請求項115または116に記載の方法。
【請求項118】
ベクターは、脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである、請求項115に記載の方法。
【請求項120】
ベクターは、組換えアデノウイルスベクターである、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来する、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5の変異体に由来する、請求項120または121に記載の方法。
【請求項123】
ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである、請求項119に記載の方法。
【請求項124】
組換えレンチウイルスベクターは、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたレンチウイルスに由来する、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
ベクターは、rHSVベクターである、請求項119に記載の方法。
【請求項126】
rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2に由来する、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである、請求項119に記載の方法。
【請求項128】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列がその両端に位置する、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、2つのAAV ITRがその両端に位置する、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシド血清型ITRである、請求項128または129に記載の方法。
【請求項131】
AAV ITRは、AAV2 ITRである、請求項128~130のいずれか1項に記載の方法。
【請求項132】
ベクターは、自己相補的ベクターである、請求項127~131のいずれか1項に記載の方法。
【請求項133】
ベクターは、ウイルス粒子中にキャプシド封入されている、請求項119に記載の方法。
【請求項134】
ウイルス粒子は、アデノウイルスベクターをキャプシド封入する組換えアデノウイルス粒子である、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来するキャプシドを含む、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2キャプシドまたはアデノウイルス血清型5キャプシドの変異体を含む、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド封入する組換えレンチウイルス粒子である、請求項133に記載の方法。
【請求項138】
組換えレンチウイルス粒子は、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたキャプシドを含む、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
ウイルス粒子は、組換えHSVベクターをキャプシド封入する組換えHSV粒子である、請求項133に記載の方法。
【請求項140】
組換えHSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2ウイルス粒子である、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
ウイルス粒子は、組換えAAVベクターを含む組換えAAVウイルス粒子である、請求項133に記載の方法。
【請求項142】
組換えAAVウイルス粒子は、クレードA~Fに由来するAAV血清型キャプシドを含む、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む、請求項141または142に記載の方法。
【請求項144】
rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、同一AAV血清型に由来する、請求項141~143のいずれか1項に記載の方法。
【請求項145】
rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、異なるAAV血清型に由来する、請求項141~143のいずれか1項に記載の方法。
【請求項146】
組換えAAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドを含む、請求項141~145のいずれか1項に記載の方法。
【請求項147】
AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドは、チロシン突然変異またはヘパラン結合突然変異を含む、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
rAAVベクターは、AAV2 ITRを含む、請求項141~147のいずれか1項に記載の方法。
【請求項149】
組成物は、医薬組成物である、請求項73~148のいずれか1項に記載の方法。
【請求項150】
個体の核酸における深部イントロン突然変異と関連している障害を治療するための、請求項1~72のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項151】
個体の核酸における深部イントロン突然変異と関連している障害を治療するための医薬の製造における、請求項1~72のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項152】
深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症である、請求項150または151に記載の使用。
【請求項153】
深部イントロン突然変異は、表1に示される深部イントロン突然変異である、請求項150~152のいずれか1項に記載の使用。
【請求項154】
深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害は、眼の疾患である、請求項150~153のいずれか1項に記載の使用。
【請求項155】
眼の疾患は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症である、請求項154の使用。
【請求項156】
深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である、請求項154または155に記載の使用。
【請求項157】
個体は、哺乳動物である、請求項150~156のいずれか1項に記載の使用。
【請求項158】
哺乳動物は、ヒトである、請求項157に記載の使用。
【請求項159】
眼の疾患は、レーバー先天黒内障である、請求項154~158のいずれか1項に記載の使用。
【請求項160】
組成物は、個体の眼への投与のために製剤化される、請求項154~159のいずれか1項に記載の使用。
【請求項161】
投与は、網膜下または硝子体内投与のために製剤化される、請求項160に記載の使用。
【請求項162】
第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAガイド配列は、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、請求項154~161のいずれか1項に記載の使用。
【請求項163】
深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である、請求項154~162のいずれか1項に記載の使用。
【請求項164】
第1のガイドRNAは、配列番号41、配列番号45、配列番号46または配列番号47の配列を含むDNAによってコードされる、請求項154~163のいずれか1項に記載の使用。
【請求項165】
第1のガイドRNAは、配列番号19、配列番号50、配列番号51または配列番号52の配列を含むDNAによってコードされる、請求項154~164のいずれか1項に記載の使用。
【請求項166】
第2のガイドRNAは、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号48または配列番号49の配列を含むDNAによってコードされる、請求項154~165のいずれか1項に記載の使用。
【請求項167】
第2のガイドRNAは、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号53または配列番号54の配列を含むDNAによってコードされる、請求項154~166のいずれか1項に記載の使用。
【請求項168】
CEP290は、ヒトCEP290である、請求項162~167のいずれか1項に記載の使用。
【請求項169】
CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む、請求項162~168のいずれか1項に記載の使用。
【請求項170】
深部イントロン突然変異は、核酸の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する、請求項150~169のいずれか1項に記載の使用。
【請求項171】
深部イントロン突然変異は、核酸の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する、請求項150~170のいずれか1項に記載の使用。
【請求項172】
深部イントロン突然変異は、スプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する、請求項150~171のいずれか1項に記載の使用。
【請求項173】
請求項1~72のいずれか1項に記載の組成物を含むキット。
【請求項174】
請求項73~149のいずれか1項に記載の方法において使用するためのキットであって、請求項1~73のいずれか1項に記載の組成物を含む前記キット。
【請求項175】
使用のための説明書をさらに含む、請求項173または174に記載のキット。
【請求項176】
ウイルスベクターを含むウイルス粒子であって、該ウイルスベクターは、
a)個体の核酸における深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、
b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と
を含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含み、該深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、該深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す、前記ウイルス粒子。
【請求項177】
個体の核酸における深部イントロン突然変異は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症と関連する、請求項176に記載のウイルス粒子。
【請求項178】
個体の核酸における深部イントロン突然変異は、表1に示される深部イントロン突然変異である、請求項176または177に記載のウイルス粒子。
【請求項179】
無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症を有する個体を治療するために使用される、請求項176~178のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項180】
ウイルスベクターを含むウイルス粒子であって、該ウイルスベクターは、
a)眼の疾患または障害と関連する個体の核酸における深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、
b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と
を含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含み、該深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、該深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す、前記ウイルス粒子。
【請求項181】
眼の疾患または障害は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症である、請求項180に記載のウイルス粒子。
【請求項182】
深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である、請求項180または181に記載のウイルス粒子。
【請求項183】
レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症を治療するために使用される、請求項180~182のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項184】
眼の疾患は、レーバー先天黒内障である、請求項180~183のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項185】
第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAガイド配列は、中心体タンパク質290kDa(CEP290)核酸の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、請求項180~184のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項186】
深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である、請求項180~185のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項187】
第1のガイドRNAは、配列番号41、配列番号45、配列番号46または配列番号47の配列を含むDNAによってコードされる、請求項180~186のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項188】
第1のガイドRNAは、配列番号19、配列番号50、配列番号51または配列番号52の配列を含むDNAによってコードされる、請求項180~187のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項189】
第2のガイドRNAは、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号48または配列番号49の配列を含むDNAによってコードされる、請求項180~188のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項190】
第2のガイドRNAは、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号53または配列番号54の配列を含むDNAによってコードされる、請求項180~189のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項191】
CEP290は、ヒトCEP290である、請求項185~190のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項192】
CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む、請求項185~191のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項193】
深部イントロン突然変異は、核酸の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する、請求項176~192のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項194】
深部イントロン突然変異は、核酸の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する、請求項176~193のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項195】
深部イントロン突然変異は、核酸中にスプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する、請求項176~194のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項196】
Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項176~195のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項197】
Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9タンパク質またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質である、請求項196に記載のウイルス粒子。
【請求項198】
Cas9は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される、請求項196または197に記載のウイルス粒子。
【請求項199】
真核細胞は、哺乳動物細胞である、請求項198に記載のウイルス粒子。
【請求項200】
真核細胞は、ヒト細胞である、請求項198または199に記載のウイルス粒子。
【請求項201】
CRISPR-Casシステムは、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をさらに含む、請求項176~200のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項202】
Casタンパク質は、1つまたはそれ以上のNLSを含む、請求項201に記載のウイルス粒子。
【請求項203】
NLSは、SV40ラージT抗原中のC末端配列である、請求項201または202に記載のウイルス粒子。
【請求項204】
NLSは、配列PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)を含む、請求項201~203のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項205】
第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている、請求項176~204のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項206】
tracr配列は、配列番号25によってコードされるヌクレオチド配列を含む、請求項205に記載のウイルス粒子。
【請求項207】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質は、真核細胞において発現される、請求項176~206のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項208】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよび/またはCasタンパク質をコードする核酸は、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている、請求項176~207のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項209】
第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターと作動可能に連結されている、請求項208に記載のウイルス粒子。
【請求項210】
RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、U6、7SKまたはH1プロモーターである、請求項209に記載のウイルス粒子。
【請求項211】
Casタンパク質をコードする核酸は、RNAポリメラーゼIIプロモーターと作動可能に連結されている、請求項208~210のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項212】
RNAポリメラーゼIIプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター(minCMVプロモーター)由来の最小プロモーター断片、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、EF1αプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーターまたは光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである、請求項211に記載のウイルス粒子。
【請求項213】
ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである、請求項176~212のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項214】
ベクターは、組換えアデノウイルスベクターである、請求項213に記載のウイルス粒子。
【請求項215】
組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来する、請求項214に記載のウイルス粒子。
【請求項216】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来するキャプシドを含む、請求項214または215に記載のウイルス粒子。
【請求項217】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2キャプシドまたはアデノウイルス血清型5キャプシドの変異体を含む、請求項216に記載のウイルス粒子。
【請求項218】
ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである、請求項213に記載のウイルス粒子。
【請求項219】
組換えレンチウイルスベクターは、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたレンチウイルスに由来する、請求項218に記載のウイルス粒子。
【請求項220】
組換えレンチウイルス粒子は、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたキャプシドを含む、請求項218または219に記載のウイルス粒子。
【請求項221】
ベクターは、rHSVベクターである、請求項213に記載のウイルス粒子。
【請求項222】
rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2に由来する、請求項221に記載のウイルス粒子。
【請求項223】
組換えHSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2ウイルス粒子である、請求項221または222に記載のウイルス粒子。
【請求項224】
ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである、請求項213に記載のウイルス粒子。
【請求項225】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列がその両端に位置する、請求項224に記載のウイルス粒子。
【請求項226】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、2つのAAV ITRがその両端に位置する、請求項225に記載のウイルス粒子。
【請求項227】
AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシド血清型ITRである、請求項225または226に記載のウイルス粒子。
【請求項228】
AAV ITRは、AAV2 ITRである、請求項224~227のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項229】
ベクターは、自己相補的ベクターである、請求項224~228のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項230】
組換えAAVウイルス粒子は、クレードA~Fに由来するAAV血清型キャプシドを含む、請求項224~229のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項231】
AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む、請求項224~230のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項232】
rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、同一AAV血清型に由来する、請求項225~231のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項233】
rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、異なるAAV血清型に由来する、請求項225~231のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項234】
組換えAAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドを含む、請求項224~233のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項235】
AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドは、チロシン突然変異またはヘパラン結合突然変異を含む、請求項234に記載のウイルス粒子。
【請求項236】
rAAVベクターは、AAV2 ITRを含む、請求項224~235のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項237】
医薬製剤中にある、請求項176~236のいずれか1項に記載のウイルス粒子。
【請求項238】
核酸における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患のin vitroモデルを作製するための方法であって、
a)真核細胞に、
i)核酸中のイントロンの標的DNA配列への単一ガイドRNA、
ii)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列、
iii)所望のイントロン突然変異およびプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の両端に位置する相同性アームを含む相同性組換え修復(HDR)鋳型を含む一本鎖オリゴヌクレオチド
を含むCRISPR-Casシステムをコードする核酸を導入することと、
b)核酸中に組み込まれた突然変異を含む細胞を単離することと
を含む前記方法。
【請求項239】
深部イントロン突然変異は、核酸の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する、請求項238に記載の方法。
【請求項240】
深部イントロン突然変異は、核酸の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する、請求項238または239に記載の方法。
【請求項241】
深部イントロン突然変異は、核酸中にスプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する、請求項238~240のいずれか1項に記載の方法。
【請求項242】
PAMは、細胞において発現されたCasタンパク質による一本鎖オリゴヌクレオチドの切断を避けるために突然変異を含む、請求項238~241のいずれか1項に記載の方法。
【請求項243】
Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項238~242のいずれか1項に記載の方法。
【請求項244】
Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9タンパク質またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質である、請求項243に記載の方法。
【請求項245】
Cas9は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される、請求項243または244に記載の方法。
【請求項246】
真核細胞は、哺乳動物細胞である、請求項238~245のいずれか1項に記載の方法。
【請求項247】
真核細胞は、ヒト細胞である、請求項246に記載の方法。
【請求項248】
真核細胞は、眼の細胞である、請求項238~247のいずれか1項に記載の方法。
【請求項249】
眼の細胞は、網膜細胞である、請求項248に記載の方法。
【請求項250】
CRISPR-Casシステムは、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をさらに含む、請求項238~249のいずれか1項に記載の方法。
【請求項251】
Casタンパク質は、1つまたはそれ以上のNLSを含む、請求項250に記載の方法。
【請求項252】
NLSは、SV40ラージT抗原中のC末端配列である、請求項250または251に記載の方法。
【請求項253】
NLSは、配列PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)を含む、請求項250~252のいずれか1項に記載の方法。
【請求項254】
単一ガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている、請求項238~253のいずれか1項に記載の方法。
【請求項255】
tracr配列は、配列番号25によってコードされるヌクレオチド配列を含む、請求項254に記載の方法。
【請求項256】
単一ガイドRNAおよび/またはCasタンパク質をコードする核酸および一本鎖オリゴヌクレオチドは、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている、請求項238~255のいずれか1項に記載の方法。
【請求項257】
単一ガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターと作動可能に連結されている、請求項256に記載の方法。
【請求項258】
RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、U6、7SKまたはH1プロモーターである、請求項257に記載の方法。
【請求項259】
Casタンパク質をコードする核酸および/または一本鎖オリゴヌクレオチドは、RNAポリメラーゼIIプロモーターと作動可能に連結されている、請求項256~258のいずれか1項に記載の方法。
【請求項260】
RNAポリメラーゼIIプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター(minCMVプロモーター)由来の最小プロモーター断片、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、EF1αプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーターまたは光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである、請求項259に記載の方法。
【請求項261】
単一ガイドRNA、Casタンパク質または一本鎖オリゴヌクレオチドのうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、システムの同一または異なるベクター上に位置する、請求項238~260のいずれか1項に記載の方法。
【請求項262】
眼の疾患は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症である、請求項238~261のいずれか1項に記載の方法。
【請求項263】
深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である、請求項262に記載の方法。
【請求項264】
眼の疾患は、レーバー先天黒内障である、請求項262または263に記載の方法。
【請求項265】
単一ガイドRNAは、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子のイントロン配列をターゲッティングする、請求項262~264のいずれか1項に記載の方法。
【請求項266】
導入された深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である、請求項262~265のいずれか1項に記載の方法。
【請求項267】
単一ガイドRNAは、配列番号1および配列番号2の配列を含むDNAによってコードされる、請求項262~266のいずれか1項に記載の方法。
【請求項268】
一本鎖オリゴヌクレオチドは、配列番号3の配列を含む、請求項262~267のいずれか1項に記載の方法。
【請求項269】
CEP290は、ヒトCEP290である、請求項262~268のいずれか1項に記載の方法。
【請求項270】
CEP290は、配列番号23に示される深部配列(deep the sequence)を含む、請求項269に記載の方法。
【請求項271】
細胞において標的核酸を切断するための方法であって、該方法は、
細胞に、
a)突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸と、
b)i)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
ii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第1のガイドRNA標的部位
を含むCas発現カセットと
を含む組成物の有効量を送達することを含み、
該Casタンパク質は、該Cas発現カセットから発現され、
該Casタンパク質は、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し、
該Casタンパク質は、該第1のガイドRNA標的部位で該Cas発現カセットを切断し、それによって、該Cas発現カセットの切断前の該Casタンパク質の発現と比較して、該Casタンパク質の発現を低減する、前記方法。
【請求項272】
個体の核酸における突然変異と関連する疾患または障害を治療するための方法であって、該方法は、
a)突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸と、
b)i)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
ii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第1のガイドRNA標的部位
を含むCas発現カセットと
を含む組成物の治療有効量を個体に投与することを含み、
該Casタンパク質は、該Cas発現カセットから発現され、
該Casタンパク質は、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し、
該Casタンパク質は、該第1のガイドRNA標的部位で該Cas発現カセットを切断し、それによって、該Cas発現カセットの切断前の該Casタンパク質の発現と比較して、該Casタンパク質の発現を低減する、前記方法。
【請求項273】
個体の核酸における突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための方法であって、該方法は、
a)突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸と、
b)i)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
ii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第1のガイドRNA標的部位
を含むCas発現カセットと
を含む組成物の治療有効量を個体に投与することを含み、
該Casタンパク質は、該Cas発現カセットから発現され、
該Casタンパク質は、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し、
該Casタンパク質は、該Cas発現カセットを、該第1のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、該Cas発現カセットの切断前の該Casタンパク質の発現と比較して、該Casタンパク質の発現を低減する、前記方法。
【請求項274】
Cas発現カセットは、
iii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第2のガイドRNA標的部位
をさらに含み、
Casタンパク質は、該Cas発現カセットを、第1および第2のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、該Cas発現カセットの切断前の該Casタンパク質の発現と比較して、該Casタンパク質の発現を低減する、請求項271~273のいずれか1項に記載の方法。
【請求項275】
第1のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位および第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズする、請求項274に記載の方法。
【請求項276】
第2のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位および第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズする、請求項274に記載の方法。
【請求項277】
第1のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位とハイブリダイズし、第2のガイドRNAは、第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズする、請求項274に記載の方法。
【請求項278】
Cas発現カセットは、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されているポリアデニル化(ポリA)配列をさらに含む、請求項271~277のいずれか1項に記載の方法。
【請求項279】
ポリA配列は、SV40ポリA配列である、請求項278に記載の方法。
【請求項280】
Casタンパク質による第1または第2のガイドRNA標的部位の切断は、該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリA配列間の作動可能な連結を妨げる、請求項278または279に記載の方法。
【請求項281】
第1または第2のガイドRNA標的部位は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間にある、請求項278~280に記載の方法。
【請求項282】
Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、Cas発現カセットから発現される該Casタンパク質が、1つまたはそれ以上のNLSとインフレームで融合されるように、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されている、請求項271~281のいずれか1項に記載の方法。
【請求項283】
1つまたはそれ以上のNLSをコードするヌクレオチド配列は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリアデニル化(ポリA)配列の間にある、請求項282に記載の方法。
【請求項284】
第1または第2のガイドRNA標的部位は、1つまたはそれ以上のNLSをコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間にある、請求項283に記載の方法。
【請求項285】
1つまたはそれ以上のNLSは、SV40ラージT抗原中のC末端配列を含む、請求項282~284のいずれか1項に記載の方法。
【請求項286】
1つまたはそれ以上のNLSは、配列PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)を含む、請求項282~285のいずれか1項に記載の方法。
【請求項287】
CRISPR-Casシステムをコードする核酸および/またはCas発現カセットは、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている、請求項271~286のいずれか1項に記載の方法。
【請求項288】
Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、プロモーターと作動可能に連結されている、請求項287に記載の方法。
【請求項289】
Casタンパク質による第1または第2のガイドRNA標的部位の切断は、調節制御エレメントおよび該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間の作動可能な連結を妨げる、請求項287または288に記載の方法。
【請求項290】
第1または第2のガイドRNA標的部位は、プロモーターおよびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間にある、請求項288または289に記載の方法。
【請求項291】
Cas発現カセットは、
iii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第2のガイドRNA標的部位であって、Casタンパク質に特異的なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と隣接する、前記第2のガイドRNA標的部位
をさらに含み、
Casタンパク質による第1のガイドRNA標的部位の切断は、調節制御エレメントおよび該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間の作動可能な連結を妨げ、
Casタンパク質による第2のガイドRNA標的部位の切断は、該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間の作動可能な連結を妨げ、
該Casタンパク質の発現および標的DNA配列の切断の際に、該Casタンパク質は、該Cas発現カセットを、第1および第2のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、該Cas発現カセットの切断前の該Casタンパク質の発現と比較して、該Casタンパク質の発現を低減する、請求項271~273のいずれか1項に記載の方法。
【請求項292】
Cas発現カセットは、
iii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする、第2のガイドRNA標的部位
をさらに含み、
第1のガイドRNA標的部位は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列および該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されているプロモーターの間にあり、
第2のガイドRNA標的部位は、該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列および該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されているポリA配列の間にあり、
該Casタンパク質は、該Cas発現カセットを、第1および第2のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、該Cas発現カセットの切断前の該Casタンパク質の発現と比較して、該Casタンパク質の発現を低減する、請求項271~273のいずれか1項に記載の方法。
【請求項293】
第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターと作動可能に連結されている、請求項288~292のいずれか1項に記載の方法。
【請求項294】
RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、U6、7SKまたはH1プロモーターである、請求項293に記載の方法。
【請求項295】
Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、RNAポリメラーゼIIプロモーターと作動可能に連結されている、請求項288~294のいずれか1項に記載の方法。
【請求項296】
RNAポリメラーゼIIプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター(minCMVプロモーター)由来の最小プロモーター断片、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、EF1αプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーターまたは光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである、請求項295に記載の方法。
【請求項297】
突然変異は、深部イントロン突然変異である、請求項272~296のいずれか1項に記載の方法。
【請求項298】
個体の核酸における深部イントロン突然変異は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症と関連している、請求項297に記載の方法。
【請求項299】
個体の核酸における深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である、請求項297または298に記載の方法。
【請求項300】
無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症を有する個体を治療するために使用される、請求項297~299のいずれか1項に記載の方法。
【請求項301】
疾患または障害は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群およびX連鎖網膜色素変性症からなる群から選択される眼の疾患または障害である、請求項272~297のいずれか1項に記載の方法。
【請求項302】
眼の疾患は、レーバー先天黒内障である、請求項301に記載の方法。
【請求項303】
深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である、請求項297に記載の方法。
【請求項304】
個体は、哺乳動物である、請求項272~303のいずれか1項に記載の方法。
【請求項305】
哺乳動物は、ヒトである、請求項304に記載の方法。
【請求項306】
組成物は、個体の眼に投与される、請求項273~305のいずれか1項に記載の方法。
【請求項307】
投与は、網膜下または硝子体内である、請求項306に記載の方法。
【請求項308】
第1および第2のガイドRNAは、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、請求項272~307のいずれか1項に記載の方法。
【請求項309】
深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である、請求項308に記載の方法。
【請求項310】
第1のガイドRNAは、配列番号41、配列番号45、配列番号46または配列番号47の配列を含むDNAによってコードされる、請求項272~309のいずれか1項に記載の方法。
【請求項311】
第1のガイドRNAは、配列番号19、配列番号50、配列番号51または配列番号52の配列を含むDNAによってコードされる、請求項272~309のいずれか1項に記載の方法。
【請求項312】
該第2のガイドRNAは、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号48または配列番号49の配列を含むDNAによってコードされる、請求項272~311のいずれか1項に記載の方法。
【請求項313】
第2のガイドRNAは、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号53または配列番号54の配列を含むDNAによってコードされる、請求項272~312のいずれか1項に記載の方法。
【請求項314】
CEP290は、ヒトCEP290である、請求項308~313のいずれか1項に記載の方法。
【請求項315】
CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む、請求項308~314のいずれか1項に記載の方法。
【請求項316】
深部イントロン突然変異は、核酸の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する、請求項297~315のいずれか1項に記載の方法。
【請求項317】
深部イントロン突然変異は、核酸の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する、請求項297~316のいずれか1項に記載の方法。
【請求項318】
深部イントロン突然変異は、核酸中にスプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する、請求項297~317のいずれか1項に記載の方法。
【請求項319】
Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項271~318のいずれか1項に記載の方法。
【請求項320】
Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9タンパク質またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質である、請求項319に記載の方法。
【請求項321】
Cas9は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される、請求項319または320に記載の方法。
【請求項322】
真核細胞は、哺乳動物細胞である、請求項321に記載の方法。
【請求項323】
真核細胞は、ヒト細胞である、請求項321または322に記載の方法。
【請求項324】
第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている、請求項271~323のいずれか1項に記載の方法。
【請求項325】
tracr配列は、配列番号25によってコードされるヌクレオチド配列を含む、請求項324に記載の方法。
【請求項326】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質は、真核細胞において発現される、請求項271~325のいずれか1項に記載の方法。
【請求項327】
CRISPR-CASシステムは、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている、請求項271~326のいずれか1項に記載の方法。
【請求項328】
CRISPR-Casシステムをコードする核酸およびCas発現カセットは、同一または異なるベクター上に位置する、請求項271~327のいずれか1項に記載の方法。
【請求項329】
ベクターは、プラスミドである、請求項328に記載の方法。
【請求項330】
ベクターは、送達システムと複合体形成されている、請求項328または329に記載の方法。
【請求項331】
ベクターは、脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている、請求項330に記載の方法。
【請求項332】
ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである、請求項328に記載の方法。
【請求項333】
ベクターは、組換えアデノウイルスベクターである、請求項332に記載の方法。
【請求項334】
組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来する、請求項333に記載の方法。
【請求項335】
組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5の変異体に由来する、請求項333または334に記載の方法。
【請求項336】
ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである、請求項332に記載の方法。
【請求項337】
組換えレンチウイルスベクターは、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたレンチウイルスに由来する、請求項336に記載の方法。
【請求項338】
ベクターは、rHSVベクターである、請求項332に記載の方法。
【請求項339】
rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2に由来する、請求項338に記載の方法。
【請求項340】
ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである、請求項332に記載の方法。
【請求項341】
CRISPR-Casシステムをコードする核酸およびCas発現カセットは、異なるrAAVベクター上にある、請求項340に記載の方法。
【請求項342】
CRISPR-Casシステムをコードする核酸および/またはCas発現カセットは、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列がその両端に位置する、請求項340または341に記載の方法。
【請求項343】
CRISPR-Casシステムをコードする核酸および/またはCas発現カセットは、2つのAAV ITRがその両端に位置する、請求項342に記載の方法。
【請求項344】
AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシド血清型ITRである、請求項342または343に記載の方法。
【請求項345】
AAV ITRは、AAV2 ITRである、請求項342~344のいずれか1項に記載の方法。
【請求項346】
ベクターは、自己相補的ベクターである、請求項340~345のいずれか1項に記載の方法。
【請求項347】
ベクターは、ウイルス粒子中にキャプシド封入されている、請求項332に記載の方法。
【請求項348】
ウイルス粒子は、アデノウイルスベクターをキャプシド封入する組換えアデノウイルス粒子である、請求項347に記載の方法。
【請求項349】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来するキャプシドを含む、請求項348に記載の方法。
【請求項350】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2キャプシドまたはアデノウイルス血清型5キャプシドの変異体を含む、請求項348または349に記載の方法。
【請求項351】
ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド封入する組換えレンチウイルス粒子である、請求項347に記載の方法。
【請求項352】
組換えレンチウイルス粒子は、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたキャプシドを含む、請求項351に記載の方法。
【請求項353】
ウイルス粒子は、組換えHSVベクターをキャプシド封入する組換えHSV粒子である、請求項347に記載の方法。
【請求項354】
組換えHSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2ウイルス粒子である、請求項353に記載の方法。
【請求項355】
ウイルス粒子は、組換えAAVベクターを含む組換えAAVウイルス粒子である、請求項347に記載の方法。
【請求項356】
CRISPR-Casシステムをコードする核酸は、第1の組換えAAVウイルス粒子の第1のrAAVベクター上にあり、Cas発現カセットは、第2の組換えAAVウイルス粒子の第2のrAAVベクター上にある、請求項347または355に記載の方法。
【請求項357】
組換えAAVウイルス粒子は、クレードA~Fに由来するAAV血清型キャプシドを含む、請求項355または356に記載の方法。
【請求項358】
AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む、請求項355~357のいずれか1項に記載の方法。
【請求項359】
rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、同一AAV血清型に由来する、請求項355~358のいずれか1項に記載の方法。
【請求項360】
rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、異なるAAV血清型に由来する、請求項355~358のいずれか1項に記載の方法。
【請求項361】
組換えAAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドを含む、請求項355~360のいずれか1項に記載の方法。
【請求項362】
AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドは、チロシン突然変異またはヘパラン結合突然変異を含む、請求項361に記載の方法。
【請求項363】
rAAVベクターは、AAV2 ITRを含む、請求項355~362のいずれか1項に記載の方法。
【請求項364】
組成物は、医薬組成物である、請求項272~363のいずれか1項に記載の方法。
【請求項365】
細胞において標的核酸を切断するための組成物であって、該組成物は、
a)突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸と、
b)i)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
ii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第1のガイドRNA標的部位
を含むCas発現カセットと
を含み、
該Casタンパク質は、該Cas発現カセットから発現され、
該Casタンパク質は、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し、
該Casタンパク質は、該第1のガイドRNA標的部位で該Cas発現カセットを切断し、それによって、該Cas発現カセットの切断前の該Casタンパク質の発現と比較して、該Casタンパク質の発現を低減する、前記組成物。
【請求項366】
個体の核酸における突然変異と関連する疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物は、
a)突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸と、
b)i)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
ii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第1のガイドRNA標的部位
を含むCas発現カセットと
を含み、
該Casタンパク質は、該Cas発現カセットから発現され、
該Casタンパク質は、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し、
該Casタンパク質は、該第1のガイドRNA標的部位で該Cas発現カセットを切断し、それによって、該Cas発現カセットの切断前の該Casタンパク質の発現と比較して、該Casタンパク質の発現を低減する、前記組成物。
【請求項367】
個体の核酸における突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物は、
a)突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸と、
b)i)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列、および
ii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第1のガイドRNA標的部位
を含むCas発現カセットと
を含み、
該Casタンパク質は、該Cas発現カセットから発現され、
該Casタンパク質は、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し、
該Casタンパク質は、該Cas発現カセットを、該第1のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、該Cas発現カセットの切断前の該Casタンパク質の発現と比較して、該Casタンパク質の発現を低減する、前記組成物。
【請求項368】
Cas発現カセットは、
iii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第2のガイドRNA標的部位
をさらに含み、
Casタンパク質は、該Cas発現カセットを、第1および第2のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、該Cas発現カセットの切断前の該Casタンパク質の発現と比較して、該Casタンパク質の発現を低減する、請求項365~367のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項369】
第1のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位および第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズする、請求項368に記載の組成物。
【請求項370】
第2のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位および第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズする、請求項368に記載の組成物。
【請求項371】
第1のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位とハイブリダイズし、第2のガイドRNAは、第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズする、請求項368に記載の組成物。
【請求項372】
Cas発現カセットは、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されているポリアデニル化(ポリA)配列をさらに含む、請求項365~371のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項373】
ポリA配列は、SV40ポリA配列である、請求項372に記載の組成物。
【請求項374】
Casタンパク質による第1または第2のガイドRNA標的部位の切断は、該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリA配列間の作動可能な連結を妨げる、請求項372または373に記載の組成物。
【請求項375】
第1または第2のガイドRNA標的部位は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間にある、請求項372~374のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項376】
Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、Cas発現カセットから発現される該Casタンパク質が、1つまたはそれ以上のNLSとインフレームで融合されるように、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されている、請求項365~375のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項377】
1つまたはそれ以上のNLSをコードする該ヌクレオチド配列は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリアデニル化(ポリA)配列の間にある、請求項376に記載の組成物。
【請求項378】
第1または第2のガイドRNA標的部位は、1つまたはそれ以上のNLSをコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間にある、請求項377に記載の組成物。
【請求項379】
1つまたはそれ以上のNLSは、SV40ラージT抗原中のC末端配列を含む、請求項376~378のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項380】
1つまたはそれ以上のNLSは、配列PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)を含む、請求項376~379のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項381】
CRISPR-Casシステムをコードする核酸および/またはCas発現カセットは、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている、請求項365~380のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項382】
Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、プロモーターと作動可能に連結されている、請求項381に記載の組成物。
【請求項383】
Casタンパク質による第1または第2のガイドRNA標的部位の切断は、調節制御エレメントおよび該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間の作動可能な連結を妨げる、請求項381または382に記載の組成物。
【請求項384】
第1または第2のガイドRNA標的部位は、プロモーターおよびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間にある、請求項382または383に記載の組成物。
【請求項385】
Cas発現カセットは、
iii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第2のガイドRNA標的部位であって、Casタンパク質に特異的なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と隣接する、前記第2のガイドRNA標的部位をさらに含み、
Casタンパク質による第1のガイドRNA標的部位の切断は、調節制御エレメントおよび該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間の作動可能な連結を妨げ、
Casタンパク質による第2のガイドRNA標的部位の切断は、該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間の作動可能な連結を妨げ、
該Casタンパク質の発現および標的DNA配列の切断の際に、該Casタンパク質は、該Cas発現カセットを、第1および第2のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、該Cas発現カセットの切断前の該Casタンパク質の発現と比較して、該Casタンパク質の発現を低減する、請求項365~384のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項386】
Cas発現カセットは、
iii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第2のガイドRNA標的部位を
をさらに含み
第1のガイドRNA標的部位は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列および該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されているプロモーターの間にあり、
該第2のガイドRNA標的部位は、該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列および該Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されているポリA配列の間にあり、
該Casタンパク質は、該Cas発現カセットを、第1および第2のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、該Cas発現カセットの切断前の該Casタンパク質の発現と比較して、該Casタンパク質の発現を低減する、請求項365~367のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項387】
第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターと作動可能に連結されている、請求項382~386のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項388】
RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、U6、7SKまたはH1プロモーターである、請求項387に記載の組成物。
【請求項389】
Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、RNAポリメラーゼIIプロモーターと作動可能に連結されている、請求項382~388のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項390】
RNAポリメラーゼIIプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター(minCMVプロモーター)由来の最小プロモーター断片、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、EF1αプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーターまたは光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである、請求項389に記載の組成物。
【請求項391】
突然変異は、深部イントロン突然変異である、請求項366~390のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項392】
個体の核酸における深部イントロン突然変異は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症と関連している、請求項391に記載の組成物。
【請求項393】
個体の核酸における深部イントロン突然変異は、表1に示される深部イントロン突然変異である、請求項391または392に記載の組成物。
【請求項394】
無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症を有する個体を治療するために使用される、請求項391~393のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項395】
疾患または障害は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群およびX連鎖網膜色素変性症からなる群から選択される眼の疾患または障害である、請求項366~391のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項396】
眼の疾患は、レーバー先天黒内障である、請求項395に記載の組成物。
【請求項397】
深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である、請求項391に記載の組成物。
【請求項398】
個体は、哺乳動物である、請求項366~397のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項399】
哺乳動物は、ヒトである、請求項398に記載の組成物。
【請求項400】
個体の眼に投与される、請求項367~399のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項401】
投与は、網膜下または硝子体内である、請求項400に記載の組成物。
【請求項402】
第1および第2のガイドRNAは、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、請求項367~401のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項403】
深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である、請求項402に記載の組成物。
【請求項404】
第1のガイドRNAは、配列番号41、配列番号45、配列番号46または配列番号47の配列を含むDNAによってコードされる、請求項367~403のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項405】
第1のガイドRNAは、配列番号19、配列番号50、配列番号51または配列番号52の配列を含むDNAによってコードされる、請求項367~403のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項406】
第2のガイドRNAは、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号48または配列番号49の配列を含むDNAによってコードされる、請求項367~405のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項407】
第2のガイドRNAは、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号53または配列番号54の配列を含むDNAによってコードされる、請求項367~406のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項408】
CEP290は、ヒトCEP290である、請求項402~407のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項409】
CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む、請求項402~408のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項410】
深部イントロン突然変異は、核酸の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する、請求項391~409のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項411】
深部イントロン突然変異は、核酸の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する、請求項391~410のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項412】
深部イントロン突然変異は、核酸中にスプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する、請求項365~411のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項413】
Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項365~412のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項414】
Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9タンパク質またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質である、請求項413に記載の組成物。
【請求項415】
Cas9は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される、請求項413または414に記載の組成物。
【請求項416】
真核細胞は、哺乳動物細胞である、請求項415に記載の組成物。
【請求項417】
真核細胞は、ヒト細胞である、請求項415または416に記載の組成物。
【請求項418】
第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている、請求項365~417のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項419】
tracr配列は、配列番号25によってコードされるヌクレオチド配列を含む、請求項418に記載の組成物。
【請求項420】
第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質は、真核細胞において発現される、請求項365~419のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項421】
CRISPR-CASシステムは、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている、請求項365~420のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項422】
CRISPR-Casシステムをコードする核酸およびCas発現カセットは、同一または異なるベクター上に位置する、請求項365~421のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項423】
ベクターは、プラスミドである、請求項422に記載の組成物。
【請求項424】
ベクターは、送達システムと複合体形成されている、請求項422または423に記載の組成物。
【請求項425】
ベクターは、脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている、請求項424に記載の組成物。
【請求項426】
ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである、請求項422に記載の組成物。
【請求項427】
ベクターは、組換えアデノウイルスベクターである、請求項426に記載の組成物。
【請求項428】
組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来する、請求項427に記載の組成物。
【請求項429】
組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5の変異体に由来する、請求項427または428に記載の組成物。
【請求項430】
ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである、請求項426に記載の組成物。
【請求項431】
組換えレンチウイルスベクターは、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたレンチウイルスに由来する、請求項430に記載の組成物。
【請求項432】
ベクターは、rHSVベクターである、請求項426に記載の組成物。
【請求項433】
rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2に由来する、請求項432に記載の組成物。
【請求項434】
ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである、請求項426に記載の組成物。
【請求項435】
CRISPR-Casシステムをコードする核酸およびCas発現カセットは、異なるrAAVベクター上にある、請求項434に記載の組成物。
【請求項436】
CRISPR-Casシステムをコードする核酸および/またはCas発現カセットは、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列がその両端に位置する、請求項434または435に記載の組成物。
【請求項437】
CRISPR-Casシステムをコードする核酸および/またはCas発現カセットは、2つのAAV ITRがその両端に位置する、請求項436に記載の組成物。
【請求項438】
AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシド血清型ITRである、請求項436または437に記載の組成物。
【請求項439】
AAV ITRは、AAV2 ITRである、請求項436~438のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項440】
ベクターは、自己相補的ベクターである、請求項436~439のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項441】
ベクターは、ウイルス粒子中にキャプシド封入されている、請求項426に記載の組成物。
【請求項442】
ウイルス粒子は、アデノウイルスベクターをキャプシド封入する組換えアデノウイルス粒子である、請求項441に記載の組成物。
【請求項443】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来するキャプシドを含む、請求項442に記載の組成物。
【請求項444】
組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2キャプシドまたはアデノウイルス血清型5キャプシドの変異体を含む、請求項442または443に記載の組成物。
【請求項445】
ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド封入する組換えレンチウイルス粒子である、請求項442に記載の組成物。
【請求項446】
組換えレンチウイルス粒子は、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたキャプシドを含む、請求項445に記載の組成物。
【請求項447】
ウイルス粒子は、組換えHSVベクターをキャプシド封入する組換えHSV粒子である、請求項442に記載の組成物。
【請求項448】
組換えHSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2ウイルス粒子である、請求項447に記載の組成物。
【請求項449】
ウイルス粒子は、組換えAAVベクターを含む組換えAAVウイルス粒子である、請求項442に記載の組成物。
【請求項450】
CRISPR-Casシステムをコードする核酸は、第1の組換えAAVウイルス粒子の第1のrAAVベクター上にあり、Cas発現カセットは、第2の組換えAAVウイルス粒子の第2のrAAVベクター上にある、請求項442または449に記載の組成物。
【請求項451】
組換えAAVウイルス粒子は、クレードA~Fに由来するAAV血清型キャプシドを含む、請求項449または450に記載の組成物。
【請求項452】
AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む、請求項449~451のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項453】
rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、同一AAV血清型に由来する、請求項449~452のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項454】
rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、異なるAAV血清型に由来する、請求項449~452のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項455】
組換えAAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドを含む、請求項449~454のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項456】
AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドは、チロシン突然変異またはヘパラン結合突然変異を含む、請求項455に記載の組成物。
【請求項457】
rAAVベクターは、AAV2 ITRを含む、請求項449~456のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項458】
医薬組成物である、請求項365~457のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、すべての目的のために参照によってその全文を本明細書に組み入れる2015年5月16日に出願された米国特許仮出願番号第62/162,720号の優先権を主張する。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出の内容は、その全文を参照によって本明細書に組み入れる:配列表のコンピュータによって読み取り可能な形式(CRF)(ファイル名:159792013440SEQLIST.TXT、記録日時:2016年4月14日、サイズ:49KB)。
【0003】
本発明は、遺伝子操作された、天然に存在しないクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(Clustered Regularly Interspaced
Short Palindromic Repeats)(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを使用して、深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するための方法ならびにそれと関連する組成物、キットおよびウイルス粒子に関する。
【背景技術】
【0004】
イントロンのような非コード配列中の突然変異は、幅広い疾患に関連している。ヒトゲノムは、虫およびハエのようなその他の生物よりも長いイントロンをより高い割合で含有し;ヒトイントロンの90%超は、100ヌクレオチドを超える長さであり、すべてのイントロンの3分の1より多くは、2,000ヌクレオチドまたはそれより長い(非特許文献1)。さらに、深部イントロン突然変異は、ヒト疾患の重要な、無視されている可能性がある原因と同定されており、疾患と関連のある突然変異を同定する多くの試みは、コード配列に焦点を合わせていた(非特許文献2)。ヒトにおけるmRNAスプライシングの複雑性のために、これらの深部イントロン突然変異は、とりわけ、mRNA不安定化、分解およびミススプライシング(例えば、潜在スプライシング部位を生成する)を含む機序のために、種々の病状を潜在的に引き起こし得る。実際、ヒトにおける、メンデルの法則に従った疾患の最大5%は、深部イントロン突然変異と関連している可能性があると推定した人もいる(非特許文献3)。
【0005】
いくつかの場合に深部イントロン突然変異と関連していた障害の例示的例として、レーバー先天黒内障(LCA)は、人生の最初の1年において症状が発生する遺伝性網膜ジストロフィーの最も重症な形態である(非特許文献4)。LCA患者における視力は、20/400よりも良好であることは稀である(非特許文献5)。LCAは、一般集団中、30,000人の個体あたりおよそ1人に影響を及ぼし、すべての遺伝性網膜ジストロフィーの5%を占める(非特許文献6)。欧州諸国におけるおよび米国におけるすべてのLCA症例のおよそ15%を占める、LCAの最も頻繁な遺伝子的原因は、CEP290遺伝子のイントロン26中の深部イントロン突然変異c.2991+1655A>Gであり、これは、潜在スプライス供与部位を生成し、その結果、CEP290 mRNAの未熟な停止コドン(p.C998X)を含有する異常なエキソンを含むことになる(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)。CEP290突然変異によって引き起こされるLCA疾患は、LCA10として知られている。ホモ接合性患者における、すべてではないがいくつかのmRNA転写物において、潜在エキソンのCEP290 mRNAへの選択的スプライシングが起こっており(非特許文献11)、これは、このイントロン突然変異の低形質性を強調する。
【0006】
ヒトCEP290遺伝子は、2479アミノ酸のタンパク質をコードする54個のエキソンを包含する。CEP290は、繊毛の構築および繊毛タンパク質輸送の両方において重要な役割を果たす中心体タンパク質である(非特許文献12;非特許文献13)。CEP290突然変異によって最も影響を受ける網膜細胞である光受容体では、CEP290は、結合繊毛に局在し(非特許文献14)、これは、光受容体の内側セグメントおよび外側セグメントを結合する。
【0007】
現在、CEP290突然変異によって引き起こされるLCAの治療法はない。この疾患に立ち向かうための2つの前臨床アプローチとして、遺伝子増強およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)がある。ヒトCEP290相補的DNA(cDNA)の大きさは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)のカーゴサイズ(約4.8kb)を超える。レンチウイルスベクター系は、全長CEP290 cDNAを収容し得る;しかし、CEP290の発現レベルを正確に制御できない場合がある。これまでの報告は、光受容体は、導入遺伝子発現のレベルに対して感受性があり、CEP290の過剰発現は、細胞傷害性であることを実証した(非特許文献15;非特許文献16)。代替戦略は、AONを使用して、CEP290の異常なスプライシングを干渉することである(非特許文献17;非特許文献18)。しかし、このアプローチは、網膜の専門家による数年間にわたる毎週または毎月の網膜下注射を必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Molecular Biology of the Cell、第6版(Alberts,B.ら編、2014)
【非特許文献2】Homolova,K.ら(2010)Hum.Mutat.第31巻:437~444頁
【非特許文献3】Cooper,D.N.ら(2010)Hum.Mutat.第31巻:631~655頁
【非特許文献4】Leber,T.K.G.v.(1869)Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology第15巻:1~25頁
【非特許文献5】Cremers,F.P.ら(2002)Human molecular genetics第11巻:1169~1176頁
【非特許文献6】Koenekoop,R.K.(2004)Survey of ophthalmology第49巻:379~398頁
【非特許文献7】den Hollander,A.I.ら(2006)Am.J.Hum.Genet.第79巻:556~561頁
【非特許文献8】Perrault,I.ら(2007)Hum.Mutat.第28巻:416頁
【非特許文献9】Stone,E.M.(2007)Am.J.Ophthalmol.第144巻:791~811頁
【非特許文献10】Wiszniewski,W.ら(2011)Hum.Genet.第129巻:319~327頁
【非特許文献11】den Hollander,A.I.ら(2006)Am.J.Hum.Genet.第79巻:556~561頁
【非特許文献12】Barbelanne,M.ら(2013)Hum.Mol.Genet.第22巻:2482~2494頁
【非特許文献13】Craige,B.ら(2010)J.Cell Biol.第190巻:927~940頁
【非特許文献14】Chang,B.ら(2006)Hum.Mol.Genet.第15巻:1847~1857頁
【非特許文献15】Burnight,E.R.ら(2014)Gene Ther.第21巻:662~672頁
【非特許文献16】Tan,E.ら(2001)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.第42巻:589~600頁
【非特許文献17】Collin,R.W.ら(2012)Mol.Ther.Nucleic Acids第1巻:e14
【非特許文献18】Gerard,X.ら(2012)Mol.Ther.Nucleic Acids第1巻:e29
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、CEP290突然変異によって引き起こされるLCA10のような、深部イントロン突然変異と関連のある障害を治療するための改善された治療アプローチが緊急に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物が、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物が、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す組成物を提供する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、表1に示される深部イントロン突然変異である。
【0011】
いくつかの態様では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物が、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物が、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す組成物を提供する。いくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である。
【0012】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAガイド配列は、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号41(SpCas9の)、配列番号45(SaCas9の)、配列番号46(SaCas9の)または配列番号47(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号19(SpCas9の)、配列番号50(SaCas9の)、配列番号51(SaCas9の)または配列番号52(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号42(SpCas9の)、配列番号43(SpCas9の)、配列番号44(SpCas9の)、配列番号48(SaCas9の)または配列番号49(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号20(SpCas9の)、配列番号21(SpCas9の)、配列番号22(SpCas9の)、配列番号53(SaCas9の)または配列番号54(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、CEP290は、ヒトCEP290である。いくつかの実施形態では、CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む。
【0013】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子中にスプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する。
【0014】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質(配列番号40)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質(配列番号55)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9タンパク質またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、ヒト細胞である。
【0015】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステムは、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をさらに含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つまたはそれ以上のNLSを含む。いくつかの実施形態では、NLSは、SV40ラージT抗原中のC末端配列である。いくつかの実施形態では、NLSは、配列PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)を含む。
【0016】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている。いくつかの実施形態では、tracr配列は、配列番号25によってコードされるヌクレオチド配列を含む。
【0017】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステム(例えば、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質)は、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸および/もしくはタンパク質の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている。
【0018】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質をコードする核酸は、真核細胞において発現される。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよび/またはCasタンパク質をコードする核酸は、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、U6、7SKまたはH1プロモーターである。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸は、RNAポリメラーゼIIプロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター由来の最小プロモーター断片(minCMVプロモーター)、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、EF1αプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーターまたは光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである。
【0019】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、システムの同一または異なるベクター上に位置する。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドである。いくつかの実施形態では、ベクターは、送達システムと複合体形成されている。いくつかの実施形態では、ベクターは、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている。
【0020】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来する。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5の変異体に由来する。
【0021】
いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたレンチウイルスに由来する。
【0022】
いくつかの実施形態では、ベクターは、rHSVベクターである。いくつかの実施形態では、rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2に由来する。
【0023】
いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列がその両端に位置する。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、2つのAAV ITRがその両端に位置する。いくつかの実施形態では、AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシド血清型ITRである。いくつかの実施形態では、AAV ITRは、AAV2 ITRである。いくつかの実施形態では、ベクターは、自己相補的ベクターである。
【0024】
いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルス粒子中にキャプシド封入されている。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド封入する組換えアデノウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイ
ルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来するキャプシドを含む。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2キャプシドまたはアデノウイルス血清型5キャプシドの変異体を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド封入する組換えレンチウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えレンチウイルス粒子は、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたキャプシドを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えHSVベクターをキャプシド封入する組換えHSV粒子である。いくつかの実施形態では、組換えHSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2ウイルス粒子である。
【0027】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えAAVベクターを含む組換えAAVウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えAAVウイルス粒子は、クレードA~Fに由来するAAV血清型キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、同一AAV血清型に由来する。いくつかの実施形態では、rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、異なるAAV血清型に由来する。いくつかの実施形態では、組換えAAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9、および/またはAAVrh10キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドは、チロシン突然変異またはヘパラン結合突然変異を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、AAV2 ITRを含む。
【0028】
いくつかの態様では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するための方法であって、該方法が、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを含む組成物の治療有効量を、個体に投与することを含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するための方法であって、該方法が、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブ
リダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含む組成物の治療有効量を個体に投与することを含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す方法を提供する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、表1に示される深部イントロン突然変異である。
【0029】
態様では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための方法であって、該方法が、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを含む組成物の治療有効量を、個体に投与することを含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための方法であって、該方法が、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含む組成物の治療有効量を、個体に投与することを含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す方法を提供する。いくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である。
【0030】
上記の方法のいくつかの実施形態では、個体は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、組成物は、個体の眼に投与さ
れる。いくつかの実施形態では、投与は、網膜下または硝子体内である。
【0031】
上記の方法のいくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAガイド配列は、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号41(SpCas9の)、配列番号45(SaCas9の)、配列番号46(SaCas9の)または配列番号47(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号19(SpCas9の)、配列番号50(SaCas9の)、配列番号51(SaCas9の)または配列番号52(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号42(SpCas9の)、配列番号43(SpCas9の)、配列番号44(SpCas9の)、配列番号48(SaCas9の)または配列番号49(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号20(SpCas9の)、配列番号21(SpCas9の)、配列番号22(SpCas9の)、配列番号53(SaCas9の)または配列番号54(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、CEP290は、ヒトCEP290である。いくつかの実施形態では、CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む。
【0032】
上記の方法のいくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子中にスプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する。
【0033】
上記の方法のいくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Casタンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9タンパク質またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、ヒト細胞である。
【0034】
上記の方法のいくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステムは、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をさらに含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つまたはそれ以上のNLSを含む。いくつかの実施形態では、NLSは、SV40ラージT抗原中のC末端配列である。いくつかの実施形態では、NLSは、配列PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)を含む。
【0035】
上記の方法のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている。いくつかの実施
形態では、tracr配列は、配列番号25によってコードされるヌクレオチド配列を含む。
【0036】
上記の方法のいくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステム(例えば、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質)は、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸および/もしくはタンパク質の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている。
【0037】
上記の方法のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質をコードする核酸は、真核細胞において発現される。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよび/またはCasタンパク質をコードする核酸は、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、U6、7SKまたはH1プロモーターである。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸は、RNAポリメラーゼIIプロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター由来の最小プロモーター断片(minCMVプロモーター)、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、EF1αプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーターまたは光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである。
【0038】
上記の方法のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、システムの同一または異なるベクター上に位置する。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドである。いくつかの実施形態では、ベクターは、送達システムと複合体形成されている。いくつかの実施形態では、ベクターは、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている。
【0039】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来する。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5の変異体に由来する。
【0040】
いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたレンチウイルスに由来する。
【0041】
いくつかの実施形態では、ベクターは、rHSVベクターである。いくつかの実施形態では、rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2に由来する。
【0042】
いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列がその両端に位置する。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、2つのAAV ITRがその両端に位置する。いくつかの実施形態では、AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシド血清型ITRである。いくつかの実施形態では、AAV ITRは、AAV2 ITRである。いくつかの実施形態では、ベクターは、自己相補的ベクターである。
【0043】
いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルス粒子中にキャプシド封入されている。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド封入する組換えアデノウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来するキャプシドを含む。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2キャプシドまたはアデノウイルス血清型5キャプシドの変異体を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド封入する組換えレンチウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えレンチウイルス粒子は、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたキャプシドを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えHSVベクターをキャプシド封入する組換えHSV粒子である。いくつかの実施形態では、組換えHSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2ウイルス粒子である。
【0046】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えAAVベクターを含む組換えAAVウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えAAVウイルス粒子は、クレードA~Fに由来するAAV血清型キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、
AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、同一AAV血清型に由来する。いくつかの実施形態では、rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、異なるAAV血清型に由来する。いくつかの実施形態では、組換えAAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9、および/またはAAVrh10キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドは、チロシン突然変異またはヘパラン結合突然変異を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、AAV2 ITRを含む。
【0047】
上記の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、医薬組成物である。
【0048】
いくつかの態様では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する障害を治療するための、上記の実施形態のいずれか1つの組成物の使用を提供する。いくつかの態様では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する障害を治療するための医薬の製造における、上記の実施形態のいずれか1つの組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、表1に示される深部イントロン突然変異である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害は、眼の疾患である。いくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である。いくつかの実施形態では、個体は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障である。
【0049】
上記の使用のいくつかの実施形態では、組成物は、個体の眼への投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、投与は、網膜下または硝子体内投与のために製剤化される。
【0050】
上記の使用のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAガイド配列は、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施
形態では、深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号41(SpCas9の)、配列番号45(SaCas9の)、配列番号46(SaCas9の)または配列番号47(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号19(SpCas9の)、配列番号50(SaCas9の)、配列番号51(SaCas9の)または配列番号52(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号42(SpCas9の)、配列番号43(SpCas9の)、配列番号44(SpCas9の)、配列番号48(SaCas9の)または配列番号49(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号20(SpCas9の)、配列番号21(SpCas9の)、配列番号22(SpCas9の)、配列番号53(SaCas9の)または配列番号54(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、CEP290は、ヒトCEP290である。いくつかの実施形態では、CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む。
【0051】
上記の使用のいくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、スプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する。
【0052】
いくつかの態様では、本発明は、上記の実施形態のいずれか1つの組成物を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載される方法のいずれかにおいて使用するための、上記の実施形態のいずれか1つの組成物を含む。いくつかの実施形態では、キットは、使用のための説明書をさらに含む。
【0053】
いくつかの態様では、本発明は、ウイルスベクターを含むウイルス粒子であって、該ウイルスベクターが、a)個体の遺伝子における深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出すウイルス粒子を提供する。いくつかの実施形態では、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症と関連する。いくつかの実施形態では、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異は、表1に示される深部イントロン突然変異である。
【0054】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症を有する個体を治療するために使用される。
【0055】
いくつかの態様では、本発明は、ウイルスベクターを含むウイルス粒子であって、該ウイルスベクターが、a)眼の疾患または障害と関連する個体の遺伝子における深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出すウイルス粒子を提供する。いくつかの実施形態では、眼の疾患または障害は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症を治療するために使用される。
【0056】
いくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAガイド配列は、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号41(SpCas9の)、配列番号45(SaCas9の)、配列番号46(SaCas9の)または配列番号47(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号19(SpCas9の)、配列番号50(SaCas9の)、配列番号51(SaCas9の)または配列番号52(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号42(SpCas9の)、配列番号43(SpCas9の)、配列番号44(SpCas9の)、配列番号48(SaCas9の)または配列番号49(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号20(SpCas9の)、配列番号21(SpCas9の)、配列番号22(SpCas9の)、配列番号53(SaCas9の)または配列番号54(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、CEP290は、ヒトCEP290である。いくつかの実施形態では、CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む。
【0057】
上記のウイルス粒子のいくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子中にスプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する。
【0058】
上記のウイルス粒子のいくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9タンパク質またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、ヒト細胞である。
【0059】
上記のウイルス粒子のいくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステムは、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をさらに含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つまたはそれ以上のNLSを含む。いくつかの実施形態では、NLSは、SV40ラージT抗原中のC末端配列である。いくつかの実施形態では、NLSは、配列PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)を含む。
【0060】
上記のウイルス粒子のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている。いくつかの実施形態では、tracr配列は、配列番号25によってコードされるヌクレオチド配列を含む。
【0061】
上記のウイルス粒子のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質をコードする核酸は、真核細胞において発現される。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよび/またはCasタンパク質をコードする核酸は、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、U6、7SKまたはH1プロモーターである。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸は、RNAポリメラーゼIIプロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター由来の最小プロモーター断片(minCMVプロモー
ター)、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、EF1αプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーターまたは光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである。
【0062】
上記のウイルス粒子のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、システムの同一または異なるベクター上に位置する。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドである。いくつかの実施形態では、ベクターは、送達システムと複合体形成されている。いくつかの実施形態では、ベクターは、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている。
【0063】
上記のウイルス粒子のいくつかの実施形態では、ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来する。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5の変異体に由来する。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド封入する組換えアデノウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来するキャプシドを含む。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2キャプシドまたはアデノウイルス血清型5キャプシドの変異体を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたレンチウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド封入する組換えレンチウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えレンチウイルス粒子は、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたキャプシドを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、ベクターは、rHSVベクターである。いくつかの実施形態では、rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2に由来する。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えHSVベクターをキャプシド封入する組換えHSV粒子である。いくつかの実施形態では、組換えHSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2ウイルス粒子である。
【0066】
いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列が両端に位置する。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、2つのAAV ITRが両端に位置する。いくつかの実施形態では、AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシド血清型ITRである。いくつかの実施形態では、AAV ITRは、AAV2 ITRである。いくつかの実施形態では、ベクターは、自己相補的ベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えAAVベクターを含む組換えAAVウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えAAVウイルス粒子は、クレードA~Fに由来するAAV血清型キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、同一AAV血清型に由来する。いくつかの実施形態では、rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、異なるAAV血清型に由来する。いくつかの実施形態では、組換えAAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドは、チロシン突然変異またはヘパラン結合突然変異を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、AAV2 ITRを含む。
【0067】
上記のウイルス粒子のいくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、医薬組成物中にある。
【0068】
いくつかの態様では、本発明は、a)真核細胞に、i)遺伝子中のイントロンの標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする単一ガイドRNAと、ii)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と、iii)所望のイントロン突然変異およびプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の両端に位置する相同性アームを含む相同性組換え修復(HDR)鋳型を含む一本鎖オリゴヌクレオチドとを含む、CRISPR-Casシステムをコードする核酸を導入することと、b)遺伝子中に組み込まれた突然変異を含む細胞を単離することとを含む、遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患のin vitroモデルを作製するための方法を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子中にスプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する。
【0070】
いくつかの実施形態では、PAMは、細胞において発現されたCasタンパク質による一本鎖オリゴヌクレオチドの切断を避けるために突然変異を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus
pyogenes)Cas9タンパク質、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9タンパク質またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、眼の細胞である。いくつかの実施形態では、眼の細胞は、網膜細胞である。
【0072】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステムは、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をさらに含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つまたはそれ以上のNLSを含む。いくつかの実施形態では、NLSは、SV40ラージT抗原中のC末端配列である。いくつかの実施形態では、NLSは、配列PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている。いくつかの実施形態では、tracr配列は、配列番号25によってコードされるヌクレオチド配列を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質をコードする核酸は、真核細胞において発現される。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよび/またはCasタンパク質をコードする核酸は、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、U6、7SKまたはH1プロモーターである。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸は、RNAポリメラーゼIIプロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター由来の最小プロモーター断片(minCMVプロモーター)、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、EF1αプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーターまたは光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである。
【0075】
いくつかの実施形態では、単一ガイドRNA、Casタンパク質または一本鎖オリゴヌクレオチドのうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、システムの同一または異なるベクター上に位置する。
【0076】
いくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症を治療するために使用される。
【0077】
いくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAガイド配列は、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号41(SpCas9の)、配列番号45(SaCas9の)、配列番号46(SaCas9の)または配列番号47(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号19(SpCas9の)、配列番号50(SaCas9の)、配列番号51(SaCas9の)または配列番号52(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号42(SpCas9の)、配列番号43(SpCas9の)、配列番号44(SpCas9の)、配列番号48(SaCas9の)または配列番号49(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号20(SpCas9の)、配列番号21(SpCas9の)、配列番号22(SpCas9の)、配列番号53(SaCas9の)または配列番号54(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、CEP290は、ヒトCEP290である。いくつかの実施形態では、CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む。
【0078】
いくつかの態様では、本発明は、細胞において標的核酸を切断するための方法であって、該方法が、細胞に、a)突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸と、b)i)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第1のガイドRNA標的部位を含むCas発現カセットとを含む組成物の有効量を送達することを含み、該Casタンパク質は、Cas発現カセットから発現され、Casタンパク質は、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し、Casタンパク質は、第1のガイドRNA標的部位でCas発現カセットを切断し、それによって、Cas発現カセットの切断前のCasタンパク質の発現と比較して、Casタンパク質の発現を低減する方法を提供する。いくつかの態様では、本発明は、個体の核酸における突然変異と関連する疾患または障害を治療するための方法であって、該方法が、a)突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸と、b)i)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第1のガイドRNA標的部位を含むCas発現カセットとを含む組成物の治療有効量を個体に投与することを含み、該Casタンパク質が、Cas発現カセットから発現され、該Casタンパク質が、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し、該Casタンパク質が、第1のガイドRNA標的部位でCas発現カセットを切断し、それによって、Cas発現カセットの切断前のCasタンパク質の発現と比較して、Casタンパク質の発現を低減する方法を提供する。いくつかの態様では、本発明は、個体の核酸における突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための方法であって、該方法が、a)突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸と、b)i)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第1のガイドRNA標的部位を含むCas発現カセットとを含む組成物の治療有効量を個体に投与することを含み、該Casタンパク質が、Cas発現カセットから発現され、該Casタンパク質が、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し、該Casタンパク質が、Cas発現カセットを、第1のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、Cas発現カセットの切断前のCasタンパク質の発現と比較して、Casタンパク質の発現を低減する方法を提供する。いくつかの実施形態では、Cas発現カセットは、iii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第2のガイドRNA標的部位をさらに含み、Casタンパク質が、Cas発現カセットを、第1および第2のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、Cas発現カセットの切断前のCasタンパク質の発現と比較して、Casタンパク質の発現を低減する。
【0079】
上記の方法のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位および第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位および第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位とハイブリダイズし、第2のガイドRNAは、第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、Cas発現カセットは、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されているポリアデニル化(ポリA)配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリA配列は、SV40ポリA配列である。いくつかの実施形態では、Casタンパク質による第1または第2のガイドRNA標的部位の切断は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間の作動可能な連結を妨げる。いくつかの実施形態では、第1または第2のガイドRNA標的部位は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間にある。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、Cas発現カセットから発現されるCasタンパク質が、1つまたはそれ以上のNLSとインフレームで融合されるように、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のNLSをコードするヌクレオチド配列は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリアデニル化(ポリA)配列の間にある。いくつかの実施形態では、第1または第2のガイドRNA標的部位は、1つまたはそれ以上のNLSをコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間にある。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のNLSは、SV40ラージT抗原中のC末端配列を含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のNLSは、配列PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステムをコードする核酸および/またはCas発現カセットは、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、プロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、Casタンパク質による第1または第2のガイドRNA標的部位の切断は、調節制御エレメントおよびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間の作動可能な連結を妨げる。いくつかの実施形態では、第1または第2のガイドRNA標的部位は、プロモーターおよびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間にある。
【0080】
上記の方法のいくつかの実施形態では、Cas発現カセットは、iii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第2のガイドRNA標的部位であって、Casタンパク質に特異的なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と隣接する、第2のガイドRNA標的部位をさらに含み、Casタンパク質による第1のガイドRNA標的部位の切断が、調節制御エレメントおよびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間の作動可能な連結を妨げ、Casタンパク質による第2のガイドRNA標的部位の切断が、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間の作動可能な連結を妨げ、Casタンパク質の発現および標的DNA配列の切断の際に、Casタンパク質が、Cas発現カセットを、第1および第2のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、Cas発現カセットの切断前のCasタンパク質の発現と比較して、Casタンパク質の発現を低減する。いくつかの実施形態では、Cas発現カセットは、iii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする、第2のガイドRNA標的部位をさらに含み、第1のガイドRNA標的部位は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されているプロモーターの間にあり、第2のガイドRNA標的部位は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されているポリA配列の間にあり、Casタンパク質は、Cas発現カセットを、第1および第2のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、Cas発現カセットの切断前のCasタンパク質の発現と比較して、Casタンパク質の発現を低減する。
【0081】
上記の方法のいくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、表1に示される深部イントロン突然変異である。
【0082】
いくつかの態様では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物が、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物が、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す組成物を提供する。いくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である。
【0083】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAガイド配列は、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号41(SpCas9の)、配列番号45(SaCas9の)、配列番号46(SaCas9の)または配列番号47(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号19(SpCas9の)、配列番号50(SaCas9の)、配列番号51(SaCas9の)または配列番号52(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号42(SpCas9の)、配列番号43(SpCas9の)、配列番号44(SpCas9の)、配列番号48(SaCas9の)または配列番号49(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号20(SpCas9の)、配列番号21(SpCas9の)、配列番号22(SpCas9の)、配列番号53(SaCas9の)または配列番号54(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、CEP290は、ヒトCEP290である。いくつかの実施形態では、CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む。
【0084】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子中にスプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する。
【0085】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質(配列番号40)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質(配列番号55)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9タンパク質またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、ヒト細胞である。
【0086】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている。いくつかの実施形態では、tracr配列は、配列番号25によってコードされるヌクレオチド配列を含む。
【0087】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステム(例えば、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質)は、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸および/もしくはタンパク質の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている。
【0088】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質をコードする核酸は、真核細胞において発現される。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよび/またはCasタンパク質をコードする核酸は、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、U6、7SKまたはH1プロモーターである。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸は、RNAポリメラーゼIIプロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター由来の最小プロモーター断片(minCMVプロモーター)、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、EF1αプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーターまたは光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである。
【0089】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNA
またはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、システムの同一または異なるベクター上に位置する。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドである。いくつかの実施形態では、ベクターは、送達システムと複合体形成されている。いくつかの実施形態では、ベクターは、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている。
【0090】
上記の実施形態のいくつかの実施形態では、ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来する。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5の変異体に由来する。
【0091】
いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたレンチウイルスに由来する。
【0092】
いくつかの実施形態では、ベクターは、rHSVベクターである。いくつかの実施形態では、rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2に由来する。
【0093】
いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列がその両端に位置する。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、2つのAAV ITRがその両端に位置する。いくつかの実施形態では、AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシド血清型ITRである。いくつかの実施形態では、AAV ITRは、AAV2 ITRである。いくつかの実施形態では、ベクターは、自己相補的ベクターである。
【0094】
いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルス粒子中にキャプシド封入されている。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド封入する組換えアデノウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来するキャプシドを含む。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2キャプシドまたはアデノウイルス血清型5キャプシドの変異体を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド封入する組換えレンチウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えレンチウイルス粒子は、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたキャプシドを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えHSVベクターをキャプシド封入する組換えHSV粒子である。いくつかの実施形態では、組換えHSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2ウイルス粒子である。
【0097】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えAAVベクターを含む組換えAAVウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えAAVウイルス粒子は、クレードA~Fに由来するAAV血清型キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、同一AAV血清型に由来する。いくつかの実施形態では、rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、異なるAAV血清型に由来する。いくつかの実施形態では、組換えAAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9、および/またはAAVrh10キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドは、チロシン突然変異またはヘパラン結合突然変異を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、AAV2 ITRを含む。
【0098】
いくつかの態様では、本発明は、細胞において標的核酸を切断するための組成物であって、該組成物が、a)突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸と、b)i)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第1のガイドRNA標的部位を含むCas発現カセットとを含み、該Casタンパク質が、Cas発現カセットから発現され、該Casタンパク質が、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し、該Casタンパク質が、第1のガイドRNA標的部位でCas発現カセットを切断し、それによって、Cas発現カセットの切断前のCasタンパク質の発現と比較して、Casタンパク質の発現を低減する組成物を提供する。いくつかの態様では、本発明は、個体の核酸における突然変異と関連する疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物が、a)突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸と、b)i)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第1のガイドRNA標的部位を含むCas発現カセットとを含み、該Casタンパク質が、Cas発現カセットから発現され、該Casタンパク質が、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し、該Casタンパク質が、第1のガイドRNA標的部位でCas発現カセットを切断し、それによって、Cas発現カセットの切断前のCasタンパク質の発現と比較して、Casタンパク質の発現を低減する組成物を提供する。いくつかの態様では、本発明は、個体の核酸における突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物が、a)突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸と、b)i)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第1のガイドRNA標的部位を含むCas発現カセットとを含み、該Casタンパク質が、Cas発現カセットから発現され、該Casタンパク質が、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し、該Casタンパク質が、Cas発現カセットを、第1のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、Cas発現カセットの切断前のCasタンパク質の発現と比較して、Casタンパク質の発現を低減する組成物を提供する。いくつかの実施形態では、Cas発現カセットは、iii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第2のガイドRNA標的部位をさらに含み、Casタンパク質が、Cas発現カセットを、第1および第2のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、Cas発現カセットの切断前のCasタンパク質の発現と比較して、Casタンパク質の発現を低減する。
【0099】
上記の組成物のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位および第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位および第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位とハイブリダイズし、第2のガイドRNAは、第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、Cas発現カセットは、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されているポリアデニル化(ポリA)配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリA配列は、SV40ポリA配列である。いくつかの実施形態では、Casタンパク質による第1または第2のガイドRNA標的部位の切断は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間の作動可能な連結を妨げる。いくつかの実施形態では、第1または第2のガイドRNA標的部位は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間にある。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、Cas発現カセットから発現されるCasタンパク質が、1つまたはそれ以上のNLSとインフレームで融合されるように、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のNLSをコードするヌクレオチド配列は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリアデニル化(ポリA)配列の間にある。いくつかの実施形態では、第1または第2のガイドRNA標的部位は、1つまたはそれ以上のNLSをコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間にある。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のNLSは、SV40ラージT抗原中のC末端配列を含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のNLSは、配列PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステムをコードする核酸および/またはCas発現カセットは、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、プロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、Casタンパク質による第1または第2のガイドRNA標的部位の切断は、調節制御エレメントおよびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間の作動可能な連結を妨げる。いくつかの実施形態では、第1または第2のガイドRNA標的部位は、プロモーターおよびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間にある。
【0100】
上記の組成物のいくつかの実施形態では、Cas発現カセットは、iii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第2のガイドRNA標的部位であって、Casタンパク質に特異的なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と隣接する、第2のガイドRNA標的部位をさらに含み、Casタンパク質による第1のガイドRNA標的部位の切断は、調節制御エレメントおよびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間の作動可能な連結を妨げ、Casタンパク質による第2のガイドRNA標的部位の切断は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリA配列の間の作動可能な連結を妨げ、Casタンパク質の発現および標的DNA配列の切断の際に、Casタンパク質は、Cas発現カセットを、第1および第2のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、Cas発現カセットの切断前のCasタンパク質の発現と比較して、Casタンパク質の発現を低減する。いくつかの実施形態では、Cas発現カセットは、iii)第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAがハイブリダイズする第2のガイドRNA標的部位をさらに含み、第1のガイドRNA標的部位は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されているプロモーターの間にあり、第2のガイドRNA標的部位は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されているポリA配列の間にあり、Casタンパク質は、Cas発現カセットを、第1および第2のガイドRNA標的部位で切断し、それによって、Cas発現カセットの切断前のCasタンパク質の発現と比較して、Casタンパク質の発現を低減する。
【0101】
上記の組成物のいくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、βサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病を伴う家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症またはX連鎖低リン酸血症である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、表1に示される深部イントロン突然変異である。
【0102】
いくつかの態様では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための組成物であって、該組成物が、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイ
ドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するための組成物であって、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを含み、該Casタンパク質が、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す組成物を提供する。いくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群またはX連鎖網膜色素変性症である。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である。
【0103】
上記の組成物のいくつかの実施形態では、眼の疾患は、レーバー先天黒内障である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAガイド配列は、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号41(SpCas9の)、配列番号45(SaCas9の)、配列番号46(SaCas9の)または配列番号47(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAは、配列番号19(SpCas9の)、配列番号50(SaCas9の)、配列番号51(SaCas9の)または配列番号52(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号42(SpCas9の)、配列番号43(SpCas9の)、配列番号44(SpCas9の)、配列番号48(SaCas9の)または配列番号49(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、第2のガイドRNAは、配列番号20(SpCas9の)、配列番号21(SpCas9の)、配列番号22(SpCas9の)、配列番号53(SaCas9の)または配列番号54(SaCas9の)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態では、CEP290は、ヒトCEP290である。いくつかの実施形態では、CEP290は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む。
【0104】
上記の組成物のいくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の5’スプライス供与部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド下流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子の3’スプライス受容部位の約1~10,000ヌクレオチド、約1~1000ヌクレオチドまたは約100~1000ヌクレオチド上流に位置する。いくつかの実施形態では、深部イントロン突然変異は、遺伝子中にスプライス供与部位またはスプライス受容部位を導入する。
【0105】
上記の組成物のいくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Strept
ococcus pyogenes)Cas9タンパク質(配列番号40)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質(配列番号55)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)Cas9タンパク質またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、ヒト細胞である。
【0106】
上記の組成物のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている。いくつかの実施形態では、tracr配列は、配列番号25によってコードされるヌクレオチド配列を含む。
【0107】
上記の組成物のいくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステム(例えば、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質)は、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸および/もしくはタンパク質の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている。
【0108】
上記の組成物のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよびCasタンパク質をコードする核酸は、真核細胞において発現される。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAおよび/またはCasタンパク質をコードする核酸は、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、U6、7SKまたはH1プロモーターである。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸は、RNAポリメラーゼIIプロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター由来の最小プロモーター断片(minCMVプロモーター)、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、EF1αプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーターまたは光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである。
【0109】
上記の組成物のいくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、システムの同一または異なるベクター上に位置する。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドである。いくつかの実施形態では、ベクターは、送達システムと複合体形成されている。いくつかの実施形態では、ベクターは、脂質、カチオン性脂質、リポソーム、ポリカチオンまたは核酸の細胞取り込みを増強する物質と複合体形成されている。
【0110】
上記の組成物のいくつかの実施形態では、ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(r
AAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来する。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5の変異体に由来する。
【0111】
いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたレンチウイルスに由来する。
【0112】
いくつかの実施形態では、ベクターは、rHSVベクターである。いくつかの実施形態では、rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2に由来する。
【0113】
いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列がその両端に位置する。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA、第2のガイドRNAまたはCasタンパク質のうちの1つまたはそれ以上をコードする核酸は、2つのAAV ITRがその両端に位置する。いくつかの実施形態では、AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシド血清型ITRである。いくつかの実施形態では、AAV ITRは、AAV2 ITRである。いくつかの実施形態では、ベクターは、自己相補的ベクターである。
【0114】
いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルス粒子中にキャプシド封入されている。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド封入する組換えアデノウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAdまたはブタAd3型に由来するキャプシドを含む。いくつかの実施形態では、組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2キャプシドまたはアデノウイルス血清型5キャプシドの変異体を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド封入する組換えレンチウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えレンチウイルス粒子は、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカ
ラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはその変異体で偽型化されたキャプシドを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えHSVベクターをキャプシド封入する組換えHSV粒子である。いくつかの実施形態では、組換えHSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2ウイルス粒子である。
【0117】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、組換えAAVベクターを含む組換えAAVウイルス粒子である。いくつかの実施形態では、組換えAAVウイルス粒子は、クレードA~Fに由来するAAV血清型キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAVまたはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、同一AAV血清型に由来する。いくつかの実施形態では、rAAVウイルス粒子のITRおよびキャプシドは、異なるAAV血清型に由来する。いくつかの実施形態では、組換えAAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9、および/またはAAVrh10キャプシドを含む。いくつかの実施形態では、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9および/またはAAVrh10キャプシドは、チロシン突然変異またはヘパラン結合突然変異を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、AAV2 ITRを含む。
【0118】
特許出願および刊行物を含む、本明細書において引用されるすべての参考文献は、参照によりその全文を組み入れる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】CEP290遺伝子におけるイントロンc.2291+1655A>G突然変異の模式図である。A>G突然変異は、イントロン26内に位置する潜在性エキソンの5’スプライス部位の+5位で起こる。CEP290エキソン26からエキソン27領域のエキソン-イントロン構造を、野生型(実線)および突然変異体(破線)の転写物に関するスプライシングパターンと共に、それぞれ、四角および線で表す。突然変異ヌクレオチドを太字および下線で示し、黒い星印で表す。潜在性エキソンの5’スプライス部位配列を、BDGP:ニューラルネットワークによるスプライス部位予測(例えば、www.fruitfly.org/seq_tools/splice.html、およびReese,M.G.et al.(1997)J.Comput.Biol.4:311~323頁を参照されたい)によって計算したそのスプライス部位の強さスコアと共に示す。エキソンヌクレオチドを大文字で示す。エキソンおよびイントロンのサイズを図の下に注釈する。
【
図2】CEP290のc.2291+1655A>G突然変異の両端に位置するイントロン領域を欠失させる戦略を示す模式図である。上流のsgRNAは、イントロン突然変異の上流に位置する第1のCas9切断を導き、下流のsgRNAは、突然変異の下流に位置する第2のCas9切断を導く。上流の標的座は、潜在性エキソンの上流または潜在性エキソン内のいずれかに位置することができることに注目されたい。2つの切断末端を、非相同性末端結合(NHEJ)プロセスを通して直接ライゲートすると、c.2991+1655A>G突然変異の両端に位置するイントロン断片が欠失される。イントロン26はさらに、mRNAプロセシングの際にRNAスプライシングによって除去される。
【
図3】異なる細胞株におけるmRNA(
図3Aおよび3B)およびタンパク質(
図3C)発現レベルを示す。
図3Aおよび3Bは、野生型細胞(白色の棒グラフ)、c.2991+1655A>Gおよびc.2991+1666C>G突然変異を有する染色体に関してヘテロ接合である細胞(灰色の棒グラフ)、ならびにホモ接合c.2991+1655A>Gおよびc.2991+1666C>G細胞(突然変異体細胞;黒色の棒グラフ)における、RT-qPCRによって決定した野生型(
図3A)および突然変異体(
図3B)mRNAの基礎発現レベルのグラフを示す。データは、3回の独立したトランスフェクションからの試料の平均値±標準偏差(n=3)として表す。一元配置ANOVAの後にテューキーのHSD事後検定を使用して比較を実施した。
*=p<0.05、
**=p<0.01、
***=p<0.001。
図3Cは、野生型細胞(WT)、ヘテロ接合細胞(Het)、および突然変異体細胞(MT)から調製したライセートのイムノブロットである。メンブレンを、CEP290(上)およびローディング対照としてのベータ-アクチン(下)に関してプロービングした。
【
図4】PCR(
図4A)および次世代シークエンシング(
図4B)によって決定した、sgRNA対およびSpCas9による標的化欠失の効率を示す。
図4Aでは、予想される欠失領域の外側のプライマーを使用した。上のバンドは、野生型CEP290のイントロン26から増幅されたPCR産物であり、下のバンドは、予想されるゲノム欠失後のCEP290対立遺伝子から増幅されたPCR産物である(それぞれ、「Wt」および「Trunc」と表示する)。M、1kb DNAラダー。
図4Bは、次世代シークエンシング(NGS)によって決定した、sgRNA対およびSpCas9をトランスフェクトした突然変異体細胞におけるDNAの野生型およびトランケート型の百分率を示す。
【
図5】sgRNA対およびSpCas9によるCEP290発現のレスキューを示す。
図5Aおよび5Bは、RT-qPCRによって測定した、sgRNA対およびSpCas9をトランスフェクトした野生型(白色の棒グラフ)、ヘテロ接合(灰色の棒グラフ)、および突然変異体(黒色の棒グラフ)細胞における野生型(
図5A)および突然変異体(
図5B)mRNAの発現レベルを示す。データを、2回の独立したトランスフェクションからの試料の平均値±標準偏差(n=2)として表す。一元配置ANOVAの後にテューキーのHSD事後検定を使用して比較を実施した。
*=p<0.05、
**=p<0.01。
図5Cは、sgRNA対およびSpCas9をトランスフェクトした突然変異体細胞から調製したライセートのイムノブロットである。メンブレンを、CEP290(上)およびローディング対照としてのベータ-アクチン(下)に関してプロービングした。
【
図6-1】自己限定性CRISPR-SpCas9システムを示す。
図6Aは、自己限定性CRISPR-SpCas9システムにおいて使用されるpAAV-SpCas9ベクターの模式図である。SpCas9ヌクレアーゼの認識配列(spRNA標的配列プラスPAMモチーフ)を、挿入部位1(minCMVプロモーターとSpCas9の間)および/または挿入部位2(SpCas9-NLSとSV40pAの間)に組み込む。NLS、核局在化シグナル、SV40pA、サルウイルス40ポリアデニル化シグナル。
図6Bは、U1D3 sgRNA対を発現する第1のAAVパッケージングプラスミドおよびSpCas9を発現する第2のAAVパッケージングプラスミドをトランスフェクトした突然変異体細胞から調製したライセートのイムノブロットである。SpCas9プラスミドは、2つの挿入部位においてU1 sgRNA認識配列(U1T)および/またはD3 sgRNA認識配列(D3T)を含む。U1D3プラスミド単独をトランスフェクトした突然変異体細胞を、この場合の対照とした。メンブレンをSpCas9(上)およびローディング対照としてのベータ-アクチン(下)に関してプロービングした。
図6Cは、PCRによって決定した、突然変異体細胞にU1D3 sgRNA対と自己限定性SpCas9をトランスフェクトした後の標的化欠失を示す。上のバンドは、野生型CEP290イントロン26から増幅されたPCR産物であり、下のバンドは、U1およびD3 sgRNAにより導かれたゲノム欠失後のCEP290対立遺伝子から増幅されたPCR産物である。M、1kb DNAラダー。
図6Dおよび6Eは、RT-qPCRによって測定した、U1D3 sgRNA対および自己限定性SpCas9をトランスフェクトした突然変異体細胞における野生型(
図6D)および突然変異体(
図6E)mRNAの発現レベルを示す。データは、3回の独立したトランスフェクションからの試料の平均値±標準偏差(n=3)として表す。一元配置ANOVAの後にテューキーのHSD事後検定を使用して比較を実施した。U1D3 sgRNA対単独をトランスフェクトした細胞と比較して、
*=p<0.05、
**=p<0.01、
***=p<0.001。
【
図7】デュアルAAVシステムによるマウス網膜におけるCep290遺伝子のイントロン25における領域の欠失を示す。
図7Aは、網膜下注射に使用したデュアルAAVの模式図である。
図7Bは、PCRによって決定した、(1)AAV5-RK-EGFP(対照)、またはAAV5-U11D11 sgRNA対-RK-EGFPおよび(2)AAV5-SpCas9による標的化欠失を示す。上のバンドは、野生型マウスCep290イントロン25から増幅されたPCR産物であり、下のバンドは、U11およびD11 sgRNAにより導かれたゲノム欠失後のCep290対立遺伝子から増幅されたPCR産物である。M、1kb DNAラダー。
【
図8】PCR(
図8A)およびRT-qPCR(
図8Bおよび8C)によって決定した、黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9(SaCas9)およびSpCas9による標的化欠失を示す。突然変異体細胞に、SaCas9またはSpCas9のいずれかと共に、対になったsgRNA対をトランスフェクトした。sgRNA対およびSaCas9は、1つのAAVパッケージングプラスミドに存在するが、sgRNA対およびSpCas9は、2つの異なるAAVパッケージングプラスミドに存在することに注意されたい。
図8Aにおいて、上のバンドは野生型CEP290のイントロン26から増幅されたPCR産物であり、下のバンドは、予想されるゲノム欠失後のCEP290対立遺伝子から増幅されたPCR産物である(それぞれ、「Wt」および「Trunc」と表示)。M、1kb DNAラダー。
図8Aおよび8Bは、RT-qPCRによって測定した、SaCas9(白色の棒グラフ)またはSpCas9(灰色の棒グラフ)のいずれかと共にsgRNA対をトランスフェクトした突然変異体細胞における野生型(
図8A)および突然変異体(
図8B)mRNAの発現レベルを示す。データは、3回の独立したトランスフェクションからの試料の平均値±標準偏差(n=3)として表す。一元配置ANOVAの後にテューキーのHSD事後検定を使用して比較を実施した。
*=p<0.05、
**=p<0.01、
***=p<0.001。SaCas9単独をトランスフェクトした突然変異体細胞と比較して、#=p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0120】
本発明は、深部イントロン突然変異を編集するための組成物、方法およびウイルス粒子を提供する。いくつかの実施形態では、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するための組成物は、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムを含み、該Casタンパク質は、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す。その他の実施形態では、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するための組成物は、a)深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、b)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含む、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムをコードする核酸を含み、該Casタンパク質は、深部イントロン突然変異の両端
に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す。
【0121】
いくつかの態様では、本発明は、眼の疾患を治療するための組成物、方法およびウイルス粒子を提供する。上記のように、LCAの最も頻繁な遺伝子的原因は、CEP290遺伝子のイントロン26中の深部イントロン突然変異c.2991+1655A>Gであり、これは、潜在スプライス供与部位を生成し、その結果、CEP290 mRNAの未熟な停止コドン(p.C998X)を含有する異常なエキソンを含むことになる(
図1)。本発明者らは、単一ガイドRNA(sgRNA)およびClustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)およびCRISPR関連タンパク質(Cas)システムの対による、ヒト細胞におけるターゲッティングされたゲノムDNA欠失によって、CEP290遺伝子中にイントロン性c.2991+1655A>G突然変異を有するLCA患者を治療するための簡単で効率的な方法を設計した(
図2)。このアプローチは、イントロン性c.2991+1655A>G突然変異を効率的に、永久に欠失させ、CEP290 mRNA中に挿入された潜在エキソンのスプライシングを防ぎ、一方で、内因性ゲノム調節エレメントは無傷のまま残る。
【0122】
I.一般技術
本明細書において記載されるか、または参照される技術および手順は、一般的に十分に理解され、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrookら、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、2012);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、2003);the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);PCR2:A Practical Approach(M.J.MacPherson、B.D.HamesおよびG.R.Taylor編、1995);Antibodies、A Laboratory Manual(HarlowおよびLane編、1988);Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications(R.I.Freshney、第6版、J.Wiley and Sons、2010);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、Academic Press、1998);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、Plenum Press、1998);Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、J.WileyおよびSons、1993~8);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1996);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、J.WileyおよびSons、2002);Immunobiology(C.A.Janewayら、2004);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.HarlowおよびD.Lane、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編、J.B.Lippincott Company、2011)において記載される、広く使用される方法論などの従来方法論を使用して当業者によって一般的に使用される。
【0123】
II.定義
本明細書において、「CRISPR-Cas」は、ガイドRNAおよびCasエンドヌクレアーゼを有する2成分リボヌクレオタンパク質複合体を指す。CRISPRは、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats II型システムを指す。CRISPRは、細菌および古細菌が、外来核酸(例えば、ウイルスまたはプラスミド由来の)を検出し、サイレンシングすることを可能にする適応防御システムとして発見されたが、配列特異的にポリヌクレオチド編集することを可能にするために種々の細胞種における使用のために適応されてきた(例えば、Jinek,M.ら(2012)Science 第337巻:816~821頁およびRan,F.A.ら(2013)Nat.Protoc.第8巻:2281~2308頁を参照のこと)。II型システムでは、ガイドRNAは、Casと相互作用し、Cas酵素のヌクレアーゼ活性を、ガイドRNAガイド配列と同一の標的DNA配列に向ける。ガイドRNAは、標的配列の逆鎖と塩基対形成する。次いで、Casヌクレアーゼ活性は、標的DNAにおいて二本鎖切断を生成する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質である。
【0124】
本明細書において、「CRISPR-Cas単一ガイドRNA」(用語「単一ガイドRNA」および「sgRNA」は、本明細書において同義的に使用することができる)は、標的DNAのCas媒介性切断を導くことができる単一RNA種を指す。いくつかの実施形態では、単一ガイドRNAは、Cas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼ活性に必要な配列および目的の標的DNAと同一のガイド配列を含有し得る。
【0125】
用語「キメラRNA」、「キメラガイドRNA」、「ガイドRNA」、「単一ガイドRNA」および「合成ガイドRNA」は、本明細書において同義的に使用され得、ガイド配列、tracr配列およびtracrメイト配列を含むポリヌクレオチド配列を指す。用語「ガイド配列」は、本明細書において、標的部位を特定するガイドRNA内の約20bpの配列を指し、用語「ガイド」または「スペーサー」または「プロトスペーサー」と同義的に使用することができる。用語「tracrメイト配列」はまた、用語「ダイレクトリピート」と同義的に使用することができる。
【0126】
本明細書において、「sgRNAガイド配列」は、標的DNA配列の逆鎖と結合し、Cas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼ活性をその遺伝子座に向けるsgRNAのヌクレオチド配列を指し得る。いくつかの実施形態では、sgRNAガイド配列は、標的配列と同一である。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な類似性があれば、完全同一性は必ずしも必要ではない。ガイド配列は、DNAまたはRNAポリヌクレオチドなどの任意のポリヌクレオチドを含み得る。
【0127】
本明細書において、「Cas」ポリペプチドは、ガイドRNA、例えば、sgRNAと複合体形成された場合にヌクレアーゼとして機能するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、Casポリペプチドは、Cas9ポリペプチド(Csn1としても知られるCRISPR関連9)である。Casポリペプチド(例えば、Cas9)は、crRNA:tracrRNAガイドまたは単一ガイドRNAと結合されると、標的DNAを、sgRNAガイド配列と同一の、PAMモチーフと隣接する配列で切断できる。Cas9ポリペプチドは、その他のCasポリペプチドとは異なり、II型CRISPR-Casシステムに特徴的である(種々のCRISPR-CasシステムのCasタンパク質の説明については、Makarova,K.S.ら(2011)Nat.Rev.Microbiol.第9巻(6号):467~77頁を参照のこと)。本明細書において、「Cas」は、特に断りのない限り、sgRNAまたは複合体のポリペプチド成分とのリボヌクレオタンパク質複合体を指し得る。
【0128】
用語「CRISPR RNA(crRNA)」は、本明細書において、標的DNA配列に対して切断を導くためにCRISPR-Casシステムによって使用されるガイド配列を含むRNAを指す。用語「トランス活性化crRNA(tracrRNA)」は、本明細書において、DNA切断を媒介するCRISPR-Casエフェクター複合体に必要な構造を形成する配列を含むRNAを指す。内因性細菌性および古細菌性II型CRISPR-Casシステムでは、エフェクターCRISPR-Cas複合体は、2つのポリリボヌクレオチド分子:crRNAおよびtracrRNAと複合体形成されたCasタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)を含む。crRNAは、標的認識を媒介する約20ヌクレオチドのガイド配列およびtracrRNAと二本鎖を形成する配列を含有する。crRNA:tracrRNA二本鎖は、Casタンパク質と結合し、CRISPR-Casエフェクター複合体機能に必要である。いくつかの実施形態では、crRNAおよびtracrRNA機能は、標的認識を媒介する配列およびCRISPR-Casエフェクター複合体にとって必要な構造を生成する配列の両方を含有する単一RNA(単一ガイドRNAまたはsgRNA)によって実施される。
【0129】
用語「深部イントロン突然変異」は、本明細書において、野生型スプライス受容配列およびスプライス供与配列の外側の領域のイントロン配列内の突然変異を指す。いくつかの場合には、深部イントロン突然変異は、関連遺伝子のスプライシングの変更、例えば、成熟mRNA中にイントロン配列を含むことにつながり得る。限定されない例では、深部イントロン突然変異は、エキソンの約100bp超下流(すなわち、3’)、エキソンの約100bp超上流(すなわち、5’)または第1のエキソンの約100bp超下流かつ第2のエキソンの約100bp超上流である。
【0130】
用語「レーバー先天黒内障(LCA)」は、本明細書において、視力喪失、網膜機能不全および眼振を特徴とする早期発症型障害の群を指す。種々の突然変異が、LCAと関与しているが、LCAは、通常、常染色体劣性遺伝疾患として遺伝性である。さらなる説明および例示的LCA疾患遺伝子および遺伝子座については、例えば、OMIM Entry204000を参照のこと。
【0131】
用語「CEP290」は、本明細書において、MKS4、CT87、POC3、rd16、BBS14、LCA10、JBTS5、NPHP6、SLSN6および3H11Agとしても知られる、繊毛形成に関与する中心体タンパク質をコードする遺伝子を指す。CEP290中の突然変異は、LCAと関与している。このような突然変異の1つの例として、潜在スプライス供与部位を導入し、その結果、未熟な停止コドンを有する異常なエキソンを含むことになるc.2991+1655A>G突然変異がある。例えば、それぞれ、例示的ヒト遺伝子およびタンパク質配列について、NCBI遺伝子番号80184およびUniProt番号O15078を参照のこと。CEP290遺伝子のその他の例として、制限するものではないが、マウスCEP290(例えば、NCBI遺伝子番号216274)、ラットCEP290(例えば、NCBI遺伝子番号314787)、アカゲザルCEP290(例えば、NCBI遺伝子番号708286)、ゼブラフィッシュCEP290(例えば、NCBI遺伝子番号560588)、イヌCEP290(例えば、NCBI遺伝子番号482591)、チンパンジーCEP290(例えば、NCBI遺伝子番号452113)、ネコCEP290(例えば、NCBI遺伝子番号100113471)、ニワトリCEP290(例えば、NCBI遺伝子番号417887)およびウシCEP290(例えば、NCBI遺伝子番号282707)が挙げられる。いくつかの実施形態では、CEP290遺伝子は、配列番号23に示される配列の深部イントロン突然変異を含む。
【0132】
「ベクター」は、本明細書において、in vitroまたはin vivoいずれかにおいて宿主細胞中に送達されるべき核酸を含む組換えプラスミドまたはウイルスを指す。
【0133】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書において、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドいずれかの任意の長さのヌクレオチドの多量体型を指す。したがって、この用語は、それだけには限らないが、一本鎖、二本鎖または多重鎖DNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッドまたはプリンおよびピリミジン塩基もしくはその他の天然、化学もしくは生化学的に修飾された非天然もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーを含む。ポリヌクレオチドの主鎖は、糖およびリン酸基(RNAまたはDNA中に通常見られるような)または修飾されたもしくは置換された糖またはリン酸基を含み得る。あるいは、ポリヌクレオチドの主鎖は、ホスホロアミド酸などの合成サブユニットのポリマーを含むこともあり得、したがって、オリゴデオキシヌクレオシドホスホルアミダート(P-NH2)または混合ホスホルアミダート-ホスホジエステルオリゴマーであり得る。さらに、二本鎖ポリヌクレオチドは、相補鎖を合成することおよび適当な条件下で鎖をアニーリングすることまたは適当なプライマーととともにDNAポリメラーゼを使用して相補鎖をde novo合成することによって、化学合成の一本鎖ポリヌクレオチド産物から得ることができる。
【0134】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すように同義的に使用され、最小の長さに制限されない。アミノ酸残基のこのようなポリマーは、天然または非天然アミノ酸残基を含有し得、それだけには限らないが、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体および多量体を含み得る。全長タンパク質およびその断片の両方が、定義によって包含される。用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化などを含む。さらに、本発明の目的上、「ポリペプチド」は、タンパク質が、所望の活性を維持する限り、天然配列に対する欠失、付加および置換(一般的に、天然に保存的)などの修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発によってのような意図的なものである場合も、PCR増幅によるタンパク質またはエラーをもたらす宿主の突然変異による偶発的なものである場合もある。
【0135】
「組換えウイルスベクター」は、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、ウイルス起源ではない核酸配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターを指す。組換えAAVベクターの場合には、組換え核酸は、少なくとも1つの逆方向末端反復配列(ITR)がその両端に位置する。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、2つのITRがその両端に位置する。
【0136】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」は、少なくとも1つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)がその両端に位置する1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、
AAV起源ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。このようなrAAVベクターは、適したヘルパーウイルスに感染しており(または適したヘルパー機能を発現している)ならびにAAV repおよびcap遺伝子産物(すなわち、AAV RepおよびCapタンパク質)を発現している宿主細胞中に存在する場合に、複製され、感染性ウイルス粒子中にパッケージングされる。rAAVベクターが、より大きなポリヌクレオチド中に(例えば、染色体中またはクローニングもしくはトランスフェクションのために使用されるプラスミドなどの別のベクター中に)組み込まれる場合には、rAAVベクターは、AAVパッケージング機能および適したヘルパー機能の存在下での複製およびキャプシド封入によって「レスキュー」される「プロベクター」と呼ばれる。rAAVベクターは、それだけには限らないが、プラスミド、線形人工染色体を含む、いくつかの形態のいずれかであり得、脂質と複合体形成され、リポソーム内にカプセル封入され、ウイルス粒子、例えば、AAV粒子中にキャプシド封入される。rAAVベクターを、AAVウイルスキャプシド中にパッケージングし、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV粒子)」を作製することができる。
【0137】
「rAAVウイルス」または「rAAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVキャプシドタンパク質およびキャプシド封入されたrAAVベクターゲノムから構成されるウイルス粒子を指す。
【0138】
「組換えアデノウイルスベクター」は、少なくとも1つのアデノウイルス逆方向末端反復配列(ITR)がその両端に位置する、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、アデノウイルス起源ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、2つの逆方向末端反復配列(ITR)がその両端に位置する。このような組換えウイルスベクターは、組換えウイルスゲノムから欠失された必須アデノウイルス遺伝子(例えば、E1遺伝子、E2遺伝子、E4遺伝子など)を発現している宿主細胞中に存在する場合に、複製され、感染性ウイルス粒子中にパッケージングされる。組換えウイルスベクターが、より大きなポリヌクレオチド中に(例えば、染色体中またはクローニングもしくはトランスフェクションのために使用されるプラスミドなどの別のベクター中に)組み込まれる場合には、組換えウイルスベクターは、アデノウイルスパッケージング機能の存在下での複製およびキャプシド封入によって「レスキュー」される「プロベクター」と呼ばれる。組換えウイルスベクターは、それだけには限らないが、プラスミド、線形人工染色体を含む、いくつかの形態のいずれかであり得、脂質と複合体形成され、リポソーム内にカプセル封入され、ウイルス粒子、例えば、アデノウイルス粒子中にキャプシド封入される。組換えウイルスベクターを、アデノウイルスのウイルスキャプシド中にパッケージングして、「組換えアデノウイルス粒子」を作製することができる。
【0139】
「組換えレンチウイルスベクター」は、少なくとも1つのレンチウイルス末端反復配列(LTR)がその両端に位置する1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、レンチウイルス起源ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、2つのレンチウイルス末端反復配列(LTR)がその両端に位置する。このような組換えウイルスベクターは、適したヘルパー機能を有する感染している宿主細胞中に存在する場合に、複製され、感染性ウイルス粒子中にパッケージングされる。組換えレンチウイルスベクターを、レンチウイルスキャプシド中にパッケージングし、「組換えレンチウイルス粒子」を作製することができる。
【0140】
「組換え単純ヘルペスベクター(組換えHSVベクター)」は、HSV末端反復配列がその両端に位置する、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、HSV起源ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。このような組換えウイルスベクターは、適したヘルパー機能を有する感染している宿主細胞中に存在する場合に、複製され、感染性ウイルス粒子中にパッケージングされる。組換えウイルスベクターが、より大きなポリヌクレオチド中に(例えば、染色体中またはクローニングもしくはトランスフェクションのために使用されるプラスミドなどの別のベクター中に)組み込まれる場合には、組換えウイルスベクターは、HSVパッケージング機能の存在下での複製およびキャプシド封入によって「レスキュー」される「プロベクター」と呼ばれる。組換えウイルスベクターは、それだけには限らないが、プラスミド、線形人工染色体を含む、いくつかの形態のいずれかであり得、脂質と複合体形成され、リポソーム内にカプセル封入され、ウイルス粒子、例えば、HSV粒子中にキャプシド封入される。組換えウイルスベクターを、HSVキャプシド中にパッケージングして、「組換え単純ヘルペスウイルス粒子」を作製することができる。
【0141】
「異種」とは、それと比較されるまたはその中に導入されるもしくは組み込まれる実体の残部のものとは遺伝子型的に異なる実体に由来することを意味する。例えば、遺伝子工学技術によって、異なる細胞型中に導入されるポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである(発現されると、異種ポリペプチドをコードし得る)。同様に、ウイルスベクター中に組み込まれる細胞性配列(例えば、遺伝子またはその一部)は、ベクターに対して異種ヌクレオチド配列である。
【0142】
用語「導入遺伝子」は、細胞中に導入され、適当な条件下で、RNA中に転写され、場合により、翻訳され、および/または発現されることが可能であるポリヌクレオチドを指す。態様では、導入遺伝子は、それが導入された細胞に所望の特性を付与する、もしくはそうでなければ、所望の療法または診断結果につながる。別の態様では、miRNA、siRNAまたはshRNAなどのRNA干渉を媒介する分子中に転写される。
【0143】
ウイルス力価に関連して使用されるような、用語「ゲノム粒子(gp)」、「ゲノム等価物」または「ゲノムコピー」は、感染性または機能性にかかわらず、組換えAAV DNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。特定のベクター調製物中のゲノム粒子の数を、本明細書における実施例に、または例えば、Clarkら(1999)Hum.Gene Ther.、第10巻:1031~1039頁;Veldwijkら(2002)Mol.Ther.、第6巻:272~278頁に記載されるような手順によって測定することができる。
【0144】
用語「ベクターゲノム(vg)」は、本明細書において、ベクター、例えば、ウイルスベクターのポリヌクレオチド配列のセットを含む1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを指し得る。ベクターゲノムは、ウイルス粒子中にキャプシド封入される。特定のウイルスベクターに応じて、ベクターゲノムは、一本鎖DNA、二本鎖DNAまたは一本鎖RNAまたは二本鎖RNAを含み得る。ベクターゲノムは、特定のウイルスベクターおよび/または組換え技術によって特定のウイルスベクター中に挿入された任意の異種配列と会合する内因性配列を含み得る。例えば、組換えAAVベクターゲノムは、プロモーターの両端に位置する少なくとも1つのITR配列、スタッファー、目的の配列(例えば、RNAi)およびポリアデニル化配列を含み得る。完全ベクターゲノムは、ベクターのポリヌクレオチド配列の完全セットを含み得る。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの核酸力価を、vg/mLの単位で測定することができる。この力価を測定するのに適した方法は、当技術分野で公知である(例えば、定量的PCR)。
【0145】
ウイルス力価に関連して使用されるような、用語「感染単位(iu)」、「感染性粒子」または「複製単位」は、複製中心アッセイとしても知られる、例えば、McLaughlinら(1988)J.Virol.、第62巻:1963~1973頁に記載されるような感染中心アッセイによって測定されるような感染性および複製可能な組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0146】
ウイルス力価に関連して使用されるような、用語「形質導入単位(tu)」は、本明細書における実施例に、または、例えば、Xiaoら(1997)Exp.Neurobiol.、第144巻:113~124頁に;またはFisherら(1996)J.Virol.、第70巻:520~532頁(LFUアッセイ)に記載されるものなどの機能的アッセイにおいて測定されるような、機能的導入遺伝子産物の製造をもたらす感染性組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0147】
「逆方向末端反復」または「ITR」配列は、当技術分野で十分に理解されている用語であり、反対の配向にある、ウイルスゲノムの末端に見られる比較的短い配列を指す。
【0148】
当技術分野で十分に理解されている用語である、「AAV逆方向末端反復(ITR)」配列は、天然一本鎖AAVゲノムの両端に存在するおよそ145ヌクレオチドの配列である。最も外側の125ヌクレオチドのITRは、2つの代替配向のいずれかで存在し得、異なるAAVゲノム間および単一AAVゲノムの2つの末端間の不均一性につながる。最も外側の125ヌクレオチドはまた、自己相補性のいくつかのより短い領域(A、A’、B、B’、C、C’およびD領域と表される)を含有し、ストランド内塩基対合がITRのこの部分内に生じることを可能にする。
【0149】
「末端解離配列」または「trs」は、ウイルスDNA複製の際にAAV repタンパク質によって切断されるAAV ITRのD領域中の配列である。突然変異体末端解離配列は、AAV repタンパク質による切断に対して抵抗性である。
【0150】
AAVの「ヘルパーウイルス」は、AAV(欠陥パルボウイルスである)が、宿主細胞によって複製され、パッケージングされることを可能にするウイルスを指す。いくつかのこのようなヘルパーウイルスは同定されており、アデノウイルス、ヘルペスウイルスおよびワクシニアなどのポックスウイルスが挙げられる。サブグループCのアデノウイルス5型(Ad5)が、最もよく知られているが、アデノウイルスは、いくつかの異なるサブグループを包含する。ヒト、非ヒト哺乳動物および鳥類起源の多数のアデノウイルスが公知であり、ATCCなどの寄託機関から入手可能である。同様に、ATCCなどの寄託機関から入手可能であるヘルペス科のウイルスとして、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)が挙げられる。
【0151】
参照ポリペプチドまたは核酸配列と関連する「配列同一性パーセント(%)」は、最大配列同一性パーセントを達成するように、配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入した後に、いかなる保存的置換も配列同一性の部分として考慮せずに、参照ポリペプチドまたは核酸配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一である候補配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージとして定義される。アミノ酸または核酸配列同一性パーセントを決定する目的のアラインメントは、当業者の範囲内である種々の方法で、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1987)、付録30、7.7.18節、表7.7.1に記載されたものおよびBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを含め、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェアプログラムを使用して達成することができる。アラインメントプログラムの一例として、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software、Pennsylvania)がある。当業者ならば、比較されている配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含め、アラインメントを測定するための適当なパラメータを決定することができる。本明細書における目的上、所与のアミノ酸配列Bに対しての、との、またはそれに
対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(所与のアミノ酸配列Bに対しての、との、またはそれに対する特定のアミノ酸配列同一性%を有する、または含む所与のアミノ酸配列Aと言い換えることができる)は、以下のとおりに算出される:分数X/Y(式中、Xは、AおよびBのそのプログラムのアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムによって同一マッチとしてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)を100倍する。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さと等しくない場合には、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくないことが認められよう。本明細書における目的上、所与の核酸配列Dに対しての、との、またはそれに対する所与の核酸配列Cの核酸配列同一性%(所与の核酸配列Dに対しての、との、またはそれに対する特定の核酸配列同一性%を有する、または含む所与の核酸配列Cと言い換えることができる)は、以下のとおりに算出される:分数W/Z(式中、Wは、CおよびDのそのプログラムのアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムによって同一マッチとしてスコア化されたヌクレオチドの数であり、Zは、D中のヌクレオチドの総数である)を100倍する。核酸配列Cの長さが、核酸配列Dの長さと等しくない場合には、CのDに対する核酸配列同一性%は、DのCに対する核酸配列同一性%と等しくないことが認められよう。
【0152】
「単離された」分子(例えば、核酸またはタンパク質)または細胞とは、それが同定され、その天然環境の成分から分離および/または回収されていることを意味する。
【0153】
「有効量」とは、臨床結果(例えば、症状の回復、臨床エンドポイントの達成など)を含む、有益なまたは所望の結果を達成するのに十分な量である。有効量は、1回またはそれ以上の投与で投与される。疾患状態の点では、有効量とは、疾患を回復させ、安定化させ、またはその発生を遅延するのに十分な量である。
【0154】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物として、それだけには限らないが、家畜化動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギおよびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられる。特定の実施形態では、個体または対象は、ヒトである。
【0155】
本明細書において、「治療」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的上、有益なまたは所望の臨床結果として、それだけには限らないが、検出可能であろうと、検出不可能であろうと、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の安定化された(例えば、悪化しない)状態、疾患の広がり(例えば、転移)を防ぐこと、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の回復または緩和および緩解(部分的であろうと、全体であろうと)が挙げられる。「治療」はまた、治療を受けていない場合に予測される生存と比較した生存の延長を意味することもある。
【0156】
本明細書において、用語「予防的処置」は、個体が、障害を有すると知られている、または有すると疑われる、または有するリスクがあるが、障害の症状を示していない、または障害の最小症状を示している場合の処置を指す。予防的処置を受けている個体は、症状の発生に先立って治療される。
【0157】
本明細書において、「治療的」薬剤(例えば、治療的ポリペプチド、核酸または導入遺伝子)は、上記の例示的臨床結果などの有益なまたは所望の臨床結果を提供するものである。したがって、治療的薬剤は、上記のような治療において使用される。
【0158】
用語「中心網膜」は、本明細書において、外部黄斑および/または内部黄斑および/または中心窩を指す。用語「中心網膜細胞種」は、本明細書において、例えば、RPEおよび光受容体細胞などの中心網膜の細胞種を指す。
【0159】
用語「黄斑」は、末梢網膜と比較して高い相対濃度の光受容体細胞、具体的には、桿体および錐体を含有する霊長類における中心網膜の領域を指す。用語「外部黄斑」は、本明細書においてまた、「末梢黄斑」とも呼ばれる。用語「内部黄斑」は、本明細書においてまた、「中心黄斑」とも呼ばれる。
【0160】
用語「中心窩」は、末梢網膜および黄斑と比較して高い相対濃度の光受容体細胞、具体的には錐体を含有する直径およそ0.5mm以下の霊長類の中心網膜中の小さい領域を指す。
【0161】
用語「網膜下空間」は、本明細書において、光受容体細胞および網膜色素上皮細胞の間の網膜中の位置を指す。網膜下空間は、流体の任意の網膜下注射などに先立つ、潜在空間であり得る。網膜下空間はまた、潜在空間中に注射される流体を含有し得る。この場合には、流体は、「網膜下空間と接触して」いる。「網膜下空間と接触して」いる細胞として、RPEおよび光受容体細胞などの網膜下空間と隣接する細胞が挙げられる。
【0162】
用語「ブレブ」は、本明細書において、眼の網膜下空間内の流体空間を指す。本発明のブレブは、単一空間への流体の単回注射によって、同一空間への1つまたはそれ以上の流体の複数回注射によって、または複数空間への複数回注射によって作製され、これは、再配置されると、網膜下空間の所望の部分にわたる治療効果を達成するのに有用な総流体空間を作製する。
【0163】
本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」を言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0164】
本明細書において、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」の単数形は、特に断りのない限り、複数の言及を含む。
【0165】
本明細書に記載される本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態を「含んでいる(comprising)」、「からなる(consisting)」および/または「本質的にからなる(consisting essentially of)」を含むと理解される。
【0166】
III.CRISPR-Cas
本開示の特定の態様は、遺伝子操作された、天然に存在しないClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムに関する。これらのシステムは、とりわけ、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害、例えば、深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患または障害を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステムは、深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAと、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含み、Casタンパク質は、深部イントロン突然変異の両端に位置する部位で標的DNA分子を切断し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す。
【0167】
上記のように、CRISPR-Casシステムは、細菌および古細菌における外来核酸に対する適応防御として元々発見された。実際、CRISPR遺伝子座は、制限するものではないが、アエロピルム属(Aeropyrum)、ピロバキュラム属(Pyroba
culum)、スルホロブス属(Sulfolobus)、アーケオグロブス属(Archaeoglobus)、ハロアーキュラ属(Halocarcula)、メタノバクテリウム属(Methanobacteriumn)、メタノコッカス属(Methanococcus)、メタノサルシナ属(Methanosarcina)、メタノピルス属(Methanopyrus)、ピロコッカス属(Pyrococcus)、ピクロフィルス(Picrophilus)、サーモプラズマ属(Thernioplasnia)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、アクウェイフェクス属(Aquifrx)、ポルフィロモナス属(Porphvromonas)、クロロビウム属(Chlorobium)、サーマス属(Thermus)、バチルス属(Bacillus)、リステリア属(Listeria)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、クロストリジウム属(Clostridium)、サーモアナエロバクター属(Thermoanaerobacter)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、アザーカス属(Azarcus)、クロモバクテリウム属(Chromobacterium)、ナイセリア属(Neisseria)、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、デスルホビブリオ属(Desulfovibrio)、ジオバクター属(Geobacter)、マイクロコッカス属(Myrococcus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ウォリネラ属(Wolinella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、エシェリキア属(Escherichia)、レジオネラ属(Legionella)、メチロコッカス属(Methylococcus)、パスツレラ属(Pasteurella)、フォトバクテリウム属(Photobacterium)、サルモネラ属(Salmonella)、キサントモナス属(Xanthomonas)、エルシニア属(Yersinia)、トレポネーマ属(Treponema)およびサーモトガ属(Thermotoga)を含む、40種を超える原核生物において同定されている(例えば、Jansen,R.ら(2002)Mol.Microbiol.第43巻:1565~1575頁およびMojica,F.J.ら(2005)J.Mol.Evol.第60巻:174~182頁を参照のこと)。
【0168】
細菌では、Cas(例えば、Cas9)タンパク質は、2つの異なるガイドRNA:CRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)と結合する。crRNAおよびtracrRNAリボヌクレオチドが塩基対形成し、標的DNAのCas媒介性切断に必要な構造を形成する。しかし、単一ガイドRNA(sgRNA)を、crRNA:tracrRNA構造を形成し、標的DNAのCas媒介性切断を導くように遺伝子操作することができることが最近実証された(Jinek,M.ら(2012)Science第337巻(6096):816~21頁)。Casヌクレアーゼ活性の特異性は、ガイドRNAによって決定されるので、CRISPR-Casシステムが、異種細胞における二本鎖DNA切断を導き、カスタマイズ可能なゲノム編集を可能にするツールとして調査された(Mali,P.ら(2013)Science第339巻(6121):823~6頁)。例示的CRISPR-Casシステムおよびそれに関連する使用の方法のさらなる説明の記載は、とりわけ、米国特許第8,697,359号に見ることができる。いくつかの実施形態では、本明細書において記載されるようなガイドRNA(例えば、第1または第2のガイドRNA)は、CRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)を含む単一ガイドRNA(sgRNA)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるようなガイドRNA(例えば、第1または第2のガイドRNA)は、トランス活性化cr(tracr)配列と融合されている。いくつかの実施形態では、トランス活性化cr(tracr)配列は、配列番号25の配列を含む。
【0169】
したがって、本明細書において記載されるCRISPR-Casシステムは、多くの理由のために天然に存在するCRISPR-Casシステムと対照的であり得る。例えば、とりわけ、本開示のCRISPR-Casシステムは、非天然配列(例えば、真核細胞のイントロン)とハイブリダイズする1つまたはそれ以上のガイドRNAを含み得る。天然に存在するCRISPR-Casシステムは、プラスミドまたはファージ配列などの、細菌および古細菌が通常曝露される配列を認識する。また、本開示のCRISPR-Casシステムの多くは、単一ガイドRNAを含むが、天然に存在するCRISPR-Casシステムは、通常、別個のCRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCRISPR-Casシステムは、自己限定性(self-limiting)であり得る。例えば、以下に記載されるように、CRISPR-Casシステムは、そのシステム自体内の標的配列(単数または複数)、例えば、その切断が、Casタンパク質などのシステム成分の発現レベルに影響を及ぼす配列(単数または複数)とハイブリダイズする1つまたはそれ以上のガイドRNAを含み得る。理論に捉われることを望むものではないが、CRISPR-Casシステムは、宿主細胞において持続的に発現される必要はないので、システムを「自己限定性」である(例えば、持続および/または発現の低減を特徴とする)ように遺伝子操作することは、例えば、オフターゲット効果を低減し、不要な免疫応答および/または安全性の問題の可能性を低減するなどのために有利であり得ると考えられる。
【0171】
自己限定性CRISPR-Casシステムでは、CRISPR-Cas複合体は、複合体自体の1つまたはそれ以上の成分を発現させるために使用されるベクター中の1つまたはそれ以上の部位を標的とする。したがって、ガイドRNA(単数または複数)およびCasタンパク質の発現の際、CRISPR-Casシステムは、目的の遺伝子座(例えば、本明細書に記載されるような突然変異の部位)ならびにCasベクター中の1つまたはそれ以上の標的(単数または複数)を標的とし、最終的に、Casベクターの切断およびCasタンパク質発現の低減または排除(目的の遺伝子座での切断後)につながる。実施例3は、このような自己限定性CRISPR-Casシステムは、目的の標的配列(単数または複数)での効果的な切断(例えば、深部イントロン突然変異の切除)を依然として可能にしながら、Cas持続時間の低減を特徴とすることを以下で実証する。
【0172】
本開示の特定の態様は、自己限定性CRISPR-Casシステムを使用する、個体の遺伝子における突然変異と関連する疾患または障害を治療するための方法に関する。例えば、突然変異は、CRISPR-Casシステムによって個体の遺伝子から切り出される不要な配列(例えば、深部イントロン突然変異)であり得る。その他の実施形態では、突然変異は、CRISPR-Casシステムによって修正される(例えば、特に、相同性鋳型が含まれる場合には、相同DNAが切断されたDNA配列で修復する)ミスセンス、点またはその他の突然変異であり得る。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステムは、組成物中にある。いくつかの実施形態では、組成物は、治療有効量で個体に投与される。
【0173】
いくつかの実施形態では、組成物は、a)目的の突然変異(それだけには限らないが、本明細書に記載される深部イントロン突然変異を含む)の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含むCRISPR-Casシステムをコードする核酸;およびb)Cas発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、Cas発現カセットは、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびガイドRNA標的部位を含む。第1または第2のガイドRNAは、ガイドRNA標的部位とハイブリダイズし、したがって、CRISPR-Casシステムが、ガイドRNA標的部位での切断を触媒することを可能にする。ガイドRNA標的部位はまた、
Casタンパク質に特異的な、ガイドRNAとハイブリダイズする配列に隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含み得る。Casタンパク質が発現すると、Casタンパク質は、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAを切り出す。Casタンパク質が発現すると、Casタンパク質はまた、Cas発現カセットをガイドRNA標的部位で切断し、それによって、Casタンパク質の発現を低減する。したがって、Cas発現は、細胞へのCas発現カセットの導入後、最初は増大するが、Casタンパク質が細胞中に蓄積するにつれ、Casタンパク質は、Cas発現カセットを切断する。Cas発現カセットの多くが、Casタンパク質によって妨げられるにつれ、さらなるCasタンパク質の発現が低減される(すなわち、Casは、それ自身の発現カセットの発現を制限し、自己限定性Cas発現カセットと考えられる)。いくつかの実施形態では、Casタンパク質の発現は、最初の増大と、それに続くガイドRNA標的部位での切断後の発現の減少を特徴とする。本明細書において記載されるように、Casタンパク質の発現の低減は、Casタンパク質の量および/または持続の低減を指し得る。いくつかの実施形態では、Casタンパク質の発現は、Cas発現カセットの切断の前と比較して(例えば、Casの最初の発現と比較して)低減される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質の発現は、ガイドRNA標的部位を欠くCas発現カセットの使用と比較して低減される。いくつかの実施形態では、自己限定性Cas発現カセットを含む組成物は、標的核酸を切断するために使用される。いくつかの実施形態では、組成物は、in vitroまたはin vivoで標的核酸を切断するために使用される。いくつかの実施形態では、組成物は、突然変異(例えば、深部イントロン突然変異)を含む標的核酸を切断するために使用される。例えば、自己限定性Cas発現カセットは、核酸における突然変異と関連する疾患または障害を治療するために使用される。
【0174】
いくつかの実施形態では、Cas発現カセットは、第2のガイドRNA標的部位をさらに含み、第1のガイドRNAまたは第2のガイドRNAは、第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズし、第2のガイドRNA標的部位は、Casタンパク質に特異的なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と隣接している。Casタンパク質が発現すると、Casタンパク質は、突然変異の両端に位置する標的DNA配列を切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す。さらに、Casタンパク質が発現すると、Casタンパク質は、Cas発現カセットを両ガイドRNA標的部位で切断し、それによって、Casタンパク質の発現を低減する。以下に例示されるように、1つのガイドRNAは、2つのガイドRNA標的部位とハイブリダイズし得、第1のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位とハイブリダイズし得、第2のガイドRNAは、第2のガイドRNA標的部位とハイブリダイズし得るか、または第2のガイドRNAは、第1のガイドRNA標的部位とハイブリダイズし得、第1のガイドRNAは、第2のガイドRNA部位とハイブリダイズし得る。
【0175】
いくつかの実施形態では、Cas発現カセットは、Casタンパク質の発現を導く/促進するのに有用な、5’または3’非翻訳領域中に存在する、1つまたはそれ以上のプロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化(ポリA)配列、ターミネーター、調節エレメントなどを含み得る。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、プロモーターと作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、ガイドRNA標的部位は、プロモーターおよびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間にあり得、その結果、切断の際、Casタンパク質の発現の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、Casタンパク質の発現は、プロモーターおよびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間の作動可能な連結の切断によって低減される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、ポリA配列と作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、ガイドRNA標的部位は、ポリA配列およびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間にあり得、その結果、切断の際に、Casタンパク質の発現の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、Casタンパク質の発現は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびポリアデニル化配列の間の作動可能な連結の切断によって低減される。いくつかの実施形態では、第1のガイドRNA標的部位は、プロモーターおよびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間にあり得、第2のガイドRNA標的部位は、ポリA配列およびCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の間にあり得、その結果、切断の際、Casタンパク質の発現の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つまたはそれ以上のNLSとインフレームで融合され、ガイドRNA標的部位は、1つまたはそれ以上のNLSをコードする配列およびポリA配列の間にあり得(特に、NLSが、Casタンパク質のC末端と融合されている場合には)、その結果、切断の際に、NLSが融合しているCasタンパク質の発現の低減をもたらす。
【0176】
本明細書において記載されるように、自己限定性CRISPR-CasシステムなどのCRISPR-Casシステムは、本明細書において記載されるベクターまたはウイルスベクター/粒子のいずれかなどの、1つまたはそれ以上のベクター上にコードされる。いくつかの実施形態では、第1および第2のガイドRNAをコードする核酸は、Cas発現カセットと同一のベクター上にあり得る。その他の実施形態では、第1および第2のガイドRNAをコードする核酸は、Cas発現カセットとは異なるベクターであり得る。例えば、第1および第2のガイドRNAは、第1のrAAVベクターによってコードされ、Cas発現カセットは、第2のrAAVベクターによってコードされる。いくつかの実施形態では、標的細胞は、両ベクターをトランスフェクトされ、ひいては、自己限定性CRISPR-Casシステムの発現につながる。
【0177】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、標的DNA分子を突然変異(例えば、深部イントロン突然変異)の両端に位置する部位で切断し、それによって、突然変異を含む標的DNAの部分を切り出す。例えば、非相同末端結合(NHEJ)などのDNA修復プロセスは、切断された末端を結合することによって、切断されたDNA配列を修復し、それによって、深部イントロン突然変異を含む標的DNAの部分を切り出し得る。その他の実施例では、相同DNA修復は、特に、相同性鋳型が含まれる場合に、切断されたDNA配列を修復し得る。本明細書において記載され、例示されるように、標的DNA配列(例えば、深部イントロン突然変異を有する配列)の両端に位置する2つのガイドRNAの使用は、深部イントロン突然変異を有する配列などの標的DNA配列の部分の切り出しを可能にする(また、CRISPR-Casシステムを使用する例示的遺伝子欠失戦略の説明については、Brandl,C.ら(2014)FEBS Open Bio.第5巻:26~35頁;Zheng,Q.ら(2014)Biotechniques第57巻:115~124頁を参照のこと)。いくつかの実施形態では、標的DNA配列の切り出された部分は、イントロンDNAを含む。いくつかの実施形態では、標的DNA配列の切り出された部分は、イントロンDNAのみからなる。
【0178】
いくつかの実施形態では、第1および/または第2のガイドRNAは、突然変異(例えば、深部イントロン突然変異)の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする。理論に捉われることを望むものではないが、第1および/または第2のガイドRNAは、深部イントロン突然変異から任意の距離離れたイントロン内に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズし得ると考えられる。いくつかの実施形態では、第1および/または第2のガイドRNAは、深部イントロン突然変異から、1塩基対から約10,000塩基対の間の標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、第1および/または第2のガイドRNAは、深部イントロン突然変異から、(ヌクレオチドの単位で)およそ、以下の距離のいずれか未満の距離に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする:10,000;9,500;9,000;8,500;8,000;7,500;7,000;6,500;6,000;5,500;5,000;4,500;4,000;3,500;3,000;2,500;2,000;1,500;1,000;950;900;850;800;750;700;650;600;550;500;450;400;350;300;250;200;150;100;95;90;85;80;75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4;3;2;またはその間の任意の値。いくつかの実施形態では、第1および/または第2のガイドRNAは、深部イントロン突然変異から、(ヌクレオチドの単位で)およそ、以下の距離のいずれかを超える距離に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズする:1;2;3;4;5;6;7;8;9;10;15;20;25;30;35;40;45;50;55;60;65;70;75;80;85;90;95;100;150;200;250;300;350;400;450;500;550;600;650;700;750;800;850;900;950;1,000;1,500;2,000;2,500;3,000;3,500;4,000;4,500;5,000;5,500;6,000;6,500;7,000;7,500;8,000;8,500;9,000;9,500;またはそれらの間の任意の値。すなわち、第1および/または第2のガイドRNAは、10,000;9,500;9,000;8,500;8,000;7,500;7,000;6,500;6,000;5,500;5,000;4,500;4,000;3,500;3,000;2,500;2,000;1,500;1,000;950;900;850;800;750;700;650;600;550;500;450;400;350;300;250;200;150;100;95;90;85;80;75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4;3;2;またはそれらの間の任意の値の上限および1;2;3;4;5;6;7;8;9;10;15;20;25;30;35;40;45;50;55;60;65;70;75;80;85;90;95;100;150;200;250;300;350;400;450;500;550;600;650;700;750;800;850;900;950;1,000;1,500;2,000;2,500;3,000;3,500;4,000;4,500;5,000;5,500;6,000;6,500;7,000;7,500;8,000;8,500;9,000;9,500;またはそれらの間の任意の値の独立して選択された下限を有する距離の範囲(ヌクレオチドの単位で)であって、下限が上限未満である範囲のうちの任意のもののであり得る、深部イントロン突然変異からの距離に位置する標的DNA配列の逆鎖とハイブリダイズし得る。
【0179】
Casタンパク質の限定されない例として、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、その相同体またはその修飾されたものが挙げられる。これらの酵素は、当技術分野で一般的に知られている。
【0180】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質(例えば、CRISPR酵素)は、Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas9などの未修飾CRISPR酵素は、DNA切断活性を有する。例示的Cas9タンパク質として、制限するものではないが、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9(例えば、SwissProtデータベース受託番号Q99ZW2を参照のこと)、S.オーレウス(S.aureus)Cas9(例えば、GenBank受託番号CCK74173を参照のこと)、S.サーモフィルス(S.thermophilus)Cas9(例えば、SwissProtデータベース受託番号G3ECR1を参照のこと)、N.メニンギティディス(N.meningitidis)Cas9(例えば、UniProt受託番号C9X1G5を参照のこと)およびT.デンティコラ(T.denticola)Cas9(例えば、GenBank受託番号EMB41078を参照のこと)が挙げられる。いくつかの実施形態では、Cas9は、S.ピオゲネス(S.pyogenes)またはS.ニューモニエ(S.pneumoniae)由来である。いくつかの実施形態では、CRISPR酵素は、標的配列内および/または標的配列の相補体内などの、標的配列の位置での一方の鎖または両鎖の切断を導く。いくつかの実施形態では、CRISPR酵素は、標的配列の第1のまたは最後のヌクレオチドから約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、100、200、500またはそれ以上の塩基対内の一方の鎖または両鎖の切断を導く。
【0181】
いくつかの実施形態では、本開示のCasタンパク質をコードする酵素コード配列は、真核細胞などの特定の細胞における発現のためにコドン最適化される。真核細胞は、それだけには限らないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌまたは非ヒト霊長類を含む、哺乳動物などの特定の生物のものまたはそれに由来するものであり得る。一般に、コドン最適化とは、天然アミノ酸配列を維持しながら、天然配列の少なくとも1つのコドンを、その宿主細胞の遺伝子においてより頻繁にもしくは最も頻繁に使用されるコドンで置換することによって、目的の宿主細胞における増強された発現のために核酸配列を修飾するプロセスを指す。種々の種は、特定のアミノ酸の特定のコドンについて特定のバイアスを示す。コドン使用表は、例えば、「コドン使用データベース」で容易に入手可能であり、これらの表は、いくつかの方法で適応させることができる(例えば、Nakamura,Y.ら(2000)Nucleic Acids Res.第28巻:292頁)。特定の宿主細胞における発現のために特定の配列をコドン最適化するためのコンピュータアルゴリズムも入手可能であり、Gene Forge(Aptagen;Jacobus、Pa.)なども入手可能である。
【0182】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つまたはそれ以上の異種タンパク質ドメイン(CRISPR酵素に加えて、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上のドメインまたは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上を超えるドメイン)を含む融合タンパク質である。Cas融合タンパク質は、任意のさらなるタンパク質配列および場合により、任意の2つのドメイン間のリンカー配列を含み得る。Casタンパク質と融合されるタンパク質ドメインの例として、制限するものではないが、エピトープタグ、リポーター遺伝子配列および以下の活性:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写放出因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性および核酸結合活性のうちの1つまたはそれ以上を有するタンパク質ドメインが挙げられる。エピトープタグの例として、制限するものではないが、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザ血球凝集素(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグおよびチオレドキシン(Trx)タグが挙げられる。リポーター遺伝子の例として、制限するものではないが、グルタチオン-5-トランスフェラーゼ(GST)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼおよび蛍光タンパク質(例えば、GFP、CFP、YFP、BFPなど)が挙げられる。Casタンパク質は、それだけには限らないが、マルトース結合タンパク質(MBP)、S-タグ、Lex A DNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4A DNA結合ドメイン融合物および単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合物を含む、DNA分子と結合するか、またはその他の細胞性分子と結合するタンパク質またはタンパク質の断片をコードする遺伝子配列と融合される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、機能の増強のために修飾される。
【0183】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、突然変異体Casタンパク質である。いくつかの実施形態では、Casタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)は、ニッカーゼ突然変異体である(Ranら、2013 Cell第156巻(6):1380~9頁)。いくつかの実施形態では、Cas9ニッカーゼ突然変異体は、ターゲッティングされた二本鎖切断を導入し、オフターゲットDNA切断を低減するために、ガイドRNAの対とともに使用される。
【0184】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、アミノ酸変更を有し、頑強なオンターゲット活性を示すが、オフターゲット切断は無視できる正確性が高いCasタンパク質変異体である(Slaymaker,I.M.ら(2016)Science第351巻(6268):84~88頁;Kleinstiver,B.P.ら(2016)Nature第529巻:490~495頁)。
【0185】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Casシステムは、1つまたはそれ以上の核局在性シグナル(NLS)をさらに含む。例えば、Casタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)は、1つまたはそれ以上のNLSを含み得る。NLSとともにCas9を含む例示的プラスミドは、Ran,F.A.ら(2013)Nat.Protoc.第8巻:2281~2308頁に見ることができる。さまざまな宿主細胞に適した種々のNLSが、当技術分野で公知である。例えば、制限するものではないが、NLSは、SV40 NLS(例えば、Mali,P.ら(2013)Science第339巻(6121):823~6頁に記載されるような)、SV40ラージT抗原単節型(monopartite)NLS、ヌクレオプラスミンNLSおよびhnRNP A1 NLSであり得る。使用される例示的NLS配列として、制限するものではないが、PKKKRKV(配列番号26)またはPKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号27)が挙げられる(例えば、Jinek,M.ら(2013)eLife 2:e00471を参照のこと)。
【0186】
CRISPR複合体(標的配列の逆鎖とハイブリダイズし、1つまたはそれ以上のCasタンパク質と複合体形成されたガイド配列を含む)の形成は、通常、内因性CRISPRシステム中の標的配列中またはその付近の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50またはそれ以上の塩基対内の)一方の鎖または両鎖の切断をもたらす。野生型tracr配列のすべてまたは一部を含み得るtracr配列もまた、tracr配列の少なくとも一部に沿った、tracrメイト配列のすべてまたは一部、例えば、ガイド配列と作動可能に連結されているtracrメイト配列とのハイブリダイゼーションなどによって、CRISPR複合体の一部を形成することができると考えられる。
【0187】
一般に、tracrメイト配列は、対応するtracr配列を含有する細胞における、tracrメイト配列がその両端に位置するガイド配列の切り出し;標的配列でのtracr配列とハイブリダイズしたtracrメイト配列を含むCRISPR複合体の形成;またはその両方を促進するのに十分な、tracr配列との相補性を有する任意の配列を含み得る。いくつかの実施形態では、tracr配列は、tracrメイト配列にハイブリダイズし、CRISPR複合体の形成に加わるのに十分な相補性を有する。標的配列に関して以下に記載されるように、少なくとも機能的であるために十分な相補性が必要である(すなわち、tracrおよびtracrメイト配列の間の完全相補性は必要ではない)と考えられる。
【0188】
一般に、相補性の程度は、2つの配列の短い方の長さに沿ったtracrメイト配列およびtracr配列の最適アラインメントを指す。最適アラインメントは、任意の適したアラインメントアルゴリズム(例えば、本明細書に記載されるような)によって決定され、tracr配列またはtracrメイト配列のいずれか内の自己相補性などの二次構造をさらに構成し得る。いくつかの実施形態では、tracr配列は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50もしくはそれ以上のヌクレオチド長または約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50もしくはそれ以上を超えるヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、tracr配列は、最適にアラインされた場合にtracrメイト配列の長さに沿って、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%の配列相補性を有する(例えば、本明細書において記載される例示的アラインメント方法のいずれかによって決定されるような)。
【0189】
理論に捉われることを望むものではないが、任意の目的とする所望の標的DNA配列が、sgRNAガイド配列によってターゲッティングされ、標的DNA配列の唯一の必要条件は、sgRNA標的配列に隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の存在であると考えられる(Mali,P.ら(2013)Science第339巻(6121):823~6頁)。異なるCas複合体は、異なるPAMモチーフを有すると知られている。例えば、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来のCas9は、GGジヌクレオチドPAMモチーフを有する。さらなる例を挙げると、S.オーレウス(S.aureus)Cas9のPAMモチーフは、GRRT(式中、Rは、プリン(AまたはG)である)であり、N.メニンギティディス(N.meningitidis)Cas9のPAMモチーフは、GATTであり、S.サーモフィルス(S.thermophilus)Cas9のPAMモチーフは、AGAAであり、T.デンティコラ(T.denticola)Cas9のPAMモチーフは、AAAACである。
【0190】
一般に、ガイド配列は、標的配列の逆鎖とハイブリダイズし、CRISPR複合体の標的配列との配列特異的結合を導くのに十分な、標的ポリヌクレオチド配列との類似性を有する任意のポリヌクレオチド配列であり得る。いくつかの実施形態では、ガイド配列とその対応する標的配列との間の同一性度は、適したアラインメントアルゴリズムを使用して最適にアラインされた場合に、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%もしくはそれ以上または約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%もしくはそれ以上を超える。最適アラインメントは、配列をアラインするための任意の適したアルゴリズムを使用して決定される;限定されない例として、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler Transform(例えば、Burrows Wheeler Aligner)に基づくアルゴリズム、ClustalW、ClustalX、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies、ELAND(Illumina、San Diego、Calif.)、SOAP(soap.genomics.org.cnで入手可能)、Maq(maq.sourceforge.netで入手可能)などが挙げられる。
【0191】
いくつかの実施形態では、ガイド配列は、約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75もしくはそれ以上のうちいずれか1つのヌクレオチド長または約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75もしくはそれ以上のうちいずれか1つのヌクレオチド長を超える。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、約75、50、45、40、35、30、25、20、15、12もしくはそれ以下のうちいずれか1つのヌクレオチド長未満である。CRISPR複合体の標的配列との配列特異的結合を導くガイド配列の能力を調べるためのアッセイは、当技術分野で公知である。例えば、試験されるべきガイド配列を含むCRISPR複合体を形成するのに十分なCRISPRシステムの成分が、例えば、米国特許第8,697,359号に記載されるように、CRISPR配列の成分をコードするベクターのトランスフェクションと、それに続く、標的配列内の好ましい切断の評価などによって、対応する標的配列を有する宿主細胞に提供される。
【0192】
いくつかの実施形態では、本開示のガイドRNA(例えば、第1のガイドRNA)は、配列番号41(SpCas9の)、配列番号45(SaCas9の)、配列番号46(SaCas9の)または配列番号47(SaCas9の)の配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示のガイドRNA(例えば、第1のガイドRNA)は、配列番号19(SpCas9の)、配列番号50(SaCas9の)、配列番号51(SaCas9の)または配列番号52(SaCas9の)の配列を含む。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、CEP290遺伝子のCas切断のガイドRNAとしてのその機能を維持しながら、配列番号41(SpCas9の)、配列番号45(SaCas9の)、配列番号46(SaCas9の)、配列番号47(SaCas9の)、配列番号19(SpCas9の)、配列番号50(SaCas9の)、配列番号51(SaCas9の)または配列番号52(SaCas9の)の配列の1、2、3、4または5つの置換、欠失または挿入を含む。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、CEP290遺伝子のCas切断のためのガイドRNAとしての機能が増強した、配列番号41(SpCas9の)、配列番号45(SaCas9の)、配列番号46(SaCas9の)、配列番号47(SaCas9の)、配列番号19(SpCas9の)、配列番号50(SaCas9の)、配列番号51(SaCas9の)または配列番号52(SaCas9の)のガイドRNAの変異体である。
【0193】
いくつかの実施形態では、本開示のガイドRNA(例えば、第2のガイドRNA)は、配列番号42(SpCas9の)、配列番号43(SpCas9の)、配列番号44(SpCas9の)、配列番号48(SaCas9の)または配列番号49(SaCas9の)の配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示のガイドRNA(例えば、第2のガイドRNA)は、配列番号20(SpCas9の)、配列番号21(SpCas9の)、配列番号22(SpCas9の)、配列番号53(SaCas9の)または配列番号54(SaCas9の)の配列を含む。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、CEP290遺伝子のCas切断のためのガイドRNAとしてのその機能を維持しながら、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17または配列番号18の配列の1、2、3、4または5つの置換、欠失または挿入を含む。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、CEP290遺伝子のCas切断のためのガイドRNAとしての機能が増強した、配列番号42(SpCas9の)、配列番号43(SpCas9の)、配列番号44(SpCas9の)、配列番号48(SaCas9の)、配列番号49(SaCas9の)、配列番号20(SpCas9の)、配列番号21(SpCas9の)、配列番号22(SpCas9の)、配列番号53(SaCas9の)または配列番号54(SaCas9の)のガイドRNAの変異体である。
【0194】
いくつかの実施形態では、tracr配列およびtracrメイト配列は、これら2つの間のハイブリダイゼーションが、二次構造(例えば、ヘアピン)を有する転写物をもたらすように、単一転写物内に含有される。いくつかの実施形態では、ヘアピン構造において使用するためのループ形成配列は、4ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、ループ形成配列は、配列GAAAを有する。しかし、代替配列のように、より長いまたはより短いループ配列が使用される。その他のループ形成配列の例として、制限するものではないが、CAAAおよびAAAGが挙げられる。いくつかの実施形態では、転写物または転写されたポリヌクレオチド配列は、少なくとも2以上のヘアピン、例えば、2、3、4または5つのヘアピンを有する。いくつかの実施形態では、単一転写物は、転写終結配列、例えば、6つのTヌクレオチドなどのポリT配列をさらに含む。
【0195】
IV.深部イントロン突然変異
本開示のある特定の態様は、深部イントロン突然変異に関する。上記のように、深部イントロン突然変異によって、成熟(例えば、スプライスされた)mRNAに異常にイントロン配列を含めることが起こりうる。例えば、深部イントロン突然変異は、遺伝子にスプライス供与部位、スプライス受容部位、またはスプライシングエンハンサー部位を導入しうる。その結果、イントロン配列が潜在性エキソンとして含められる。これによって典型的に、特に潜在性エキソンがフレームシフト突然変異または未成熟終止コドンを含む場合は、突然変異したポリペプチドが起こる。
【0196】
上記のように、深部イントロン突然変異は、内因性のスプライス受容部またはスプライス供与部での突然変異とは対照的に、野生型スプライス受容配列およびスプライス供与配列の外側の突然変異を指す。典型的に、深部イントロン突然変異は、内因性のスプライス受容部位/スプライス供与部位からある程度の距離で起こる。
【0197】
いくつかの実施形態において、深部イントロン突然変異は、遺伝子の5’スプライス供与部位から少なくとも約100ヌクレオチドに位置する。いくつかの実施形態において、深部イントロン突然変異は、遺伝子の3’スプライス受容部位から少なくとも約100ヌクレオチドに位置する。いくつかの実施形態において、深部イントロン突然変異は、遺伝子の5’スプライス供与部位から少なくとも約100ヌクレオチド、かつ3’スプライス受容部位から少なくとも約100ヌクレオチドに位置する。いくつかの実施形態において、深部イントロン突然変異は、内因性のスプライス受容部位および/またはスプライス供与部位(例えば、5’スプライス供与部位および/または3’スプライス受容部位)から約100ヌクレオチド超、約150ヌクレオチド超、約200ヌクレオチド超、約250ヌクレオチド超、300ヌクレオチド超、約350ヌクレオチド超、約400ヌクレオチド超、約450ヌクレオチド超、約500ヌクレオチド超、約550ヌクレオチド超、約600ヌクレオチド超、約650ヌクレオチド超、約700ヌクレオチド超、約750ヌクレオチド超、約800ヌクレオチド超、約850ヌクレオチド超、約900ヌクレオチド超、約950ヌクレオチド超、約1,000ヌクレオチド超、約1,500ヌクレオチド超、約2,000ヌクレオチド超、約2,500ヌクレオチド超、約3,000ヌクレオチド超、約3,500ヌクレオチド超、約4,000ヌクレオチド超、約4,500ヌクレオチド超、約5,000ヌクレオチド超、約5,500ヌクレオチド超、約6,000ヌクレオチド超、約6,500ヌクレオチド超、約7,000ヌクレオチド超、約7,500ヌクレオチド超、約8,000ヌクレオチド超、約8,500ヌクレオチド超、約9,000ヌクレオチド超、約9,500ヌクレオチド超、約10,000ヌクレオチド超、約15,000ヌクレオチド超、約20,000ヌクレオチド超、約25,000ヌクレオチド超、約30,000ヌクレオチド超、約35,000ヌクレオチド超、約40,000ヌクレオチド超、約45,000ヌクレオチド超、約50,000ヌクレオチド超、約55,000ヌクレオチド超、約60,000ヌクレオチド超、約65,000ヌクレオチド超、約70,000ヌクレオチド超、約75,000ヌクレオチド超、約80,000ヌクレオチド超、または約85,000ヌクレオチド超で起こる。
【0198】
いくつかの実施形態において、深部イントロン突然変異は、内因性のスプライス受容部位および/またはスプライス供与部位(例えば、5’スプライス供与部位または3’スプライス受容部)から、(ヌクレオチドの単位で)およそ、以下の距離のいずれか未満の距離で起こる:約85,000;80,000;75,000;70,000;65,000;60,000;55,000;50,000;45,000;40,000;35,000;30,000;25,000;20,000;15,000;10,000;9,500;9,000;8,500;8,000;7,500;7,000;6,500;6,000;5,500;5,000;4,500;4,000;3,500;3,000;2,500;2,000;1,500;1,000;950;900;850;800;750;700;650;600;550;500;450;400;350;300;250;200;または150。いくつかの実施形態において、深部イントロン突然変異は、内因性のスプライス受容部位および/またはスプライス供与部位から、(ヌクレオチドの単位で)およそ、以下の距離のいずれかを超える距離で起こる:約100,150,200,250,300,350,400,450,500,550,600,650,700,750,800,850,900;950;1,000;1,500;2,000;2,500;3,000;3,500;4,000;4,500;5,000;5,500;6,000;6,500;7,000;7,500;8,000;8,500;9,000;9,500;10,000;15,000;20,000;25,000;30,000;35,000;40,000;45,000;50,000;55,000;60,000;65,000;70,000;75,000;または80,000。すなわち、深部イントロン突然変異から内因性のスプライス受容部位および/またはスプライス供与部位(例えば、5’スプライス供与部位)までの距離は、85,000;80,000;75,000;70,000;65,000;60,000;55,000;50,000;45,000;40,000;35,000;30,000;25,000;20,000;15,000;10,000;9,500;9,000;8,500;8,000;7,500;7,000;6,500;6,000;5,500;5,000;4,500;4,000;3,500;3,000;2,500;2,000;1,500;1,000;950;900;850;800;750;700;650;600;550;500;450;400;350;300;250;200;または150の上限と、独立して選択される、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900;950;1,000;1,500;2,000;2,500;3,000;3,500;4,000;4,500;5,000;5,500;6,000;6,500;7,000;7,500;8,000;8,500;9,000;9,500;10,000;15,000;20,000;25,000;30,000;35,000;40,000;45,000;50,000;55,000;60,000;65,000;70,000;75,000;または80,000の下限を有する距離の範囲(ヌクレオチドの単位で)であって、下限が上限未満である範囲のうちの任意のものでありうる。
【0199】
本開示のある特定の態様は、例えば中でも個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療するために使用することができる方法、キット、組成物、およびウイルス粒子に関する。多様な深部イントロン突然変異が当技術分野で公知である。疾患と関連する例示的な深部イントロン突然変異を、以下の表1に提供する(表1に提供される特異的突然変異、遺伝子、およびイントロンサイズは、参照としてヒトDNA配列を指すことに注意されたい)。
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
いくつかの実施形態において、深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害は、無フィブリノーゲン血症、アルポート症候群、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、バース症候群、ベータサラセミア、先天性無フィブリノーゲン血症、先天性白内障・顔貌異常・ニューロパチー症候群、先天性グリコシル化異常症Ia型、先天性グリコシル化異常症II型、嚢胞性線維症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠乏症、ファブリー病、急性骨髄性白血病の素因を有する家族性血小板異常症、ファンコニ貧血、ギテルマン症候群、成長ホルモン不応症、フリードライヒ運動失調症、血友病A、遺伝性巨赤芽球性貧血1、ヘルマンスキー・パドラック症候群、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、マルファン症候群、メチオニンシンターゼ欠乏症、メチルマロン酸血症、ミトコンドリア三機能タンパク質欠乏症、ムコ多糖症II型、マルチミニコア病、筋ジストロフィー、神経線維腫症I型、ニーマン・ピック病C型、眼白子症I型、オルニチンデルタアミノトランスフェラーゼ欠損症、全身性エリテマトーデスの素因、プロピオン酸血症、ラブドイド腫瘍、シュワルツ・ヤンペル症候群、スティックラー症候群、全身性エリテマトーデス、結節性硬化症、ウェルナー症候群、X連鎖高免疫グロブリンM血症、またはX連鎖低リン酸血症である。いくつかの実施形態において、深部イントロン突然変異は、表1に示される深部イントロン突然変異である。
【0204】
いくつかの実施形態において、深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害は、眼の疾患である。本明細書において使用される用語「眼の疾患」は、最も広い意味で使用され、角膜、光彩、水晶体、網膜、視神経、房水、結膜、1つまたはそれ以上の眼筋、強膜、硝子体、黄斑、中心窩、毛様体、1つまたはそれ以上の靱帯または水晶体支持靱帯小帯、瞳孔、前眼房、および/または後眼房を含むがこれらに限定されるわけではない、眼の任意の構造の病的状態を起源とする、または起因する疾患を指しうる。眼の疾患と関連する例示的な深部イントロン突然変異を、以下の表2に提供する(表2に提供される特異的突然変異、遺伝子、およびイントロンサイズは、参照としてヒトDNA配列を指すことに注意されたい)
【0205】
【0206】
いくつかの実施形態において、眼の疾患は、レーバー先天黒内障、視神経萎縮症、網膜色素変性症、網膜芽細胞腫、シュタルガルト病、アッシャー症候群、またはX連鎖網膜色素変性症である。いくつかの実施形態において、深部イントロン突然変異は、表2に示される深部イントロン突然変異である。
【0207】
いくつかの実施形態において、眼の疾患は、レーバー先天黒内障である。レーバー先天黒内障(LCA)は、重度の視力喪失、眼振、網膜機能障害、羞明、眼指兆候(例えば、眼をこする、突く、および押すこと)、および円錐角膜のような症状によって特徴付けられる眼の障害群を指す。LCAは、典型的に出生時に重度の視力喪失および眼振と共に現れる。LCAの症例は、典型的に常染色体劣性障害として遺伝するが、多様な遺伝子座の突然変異が関係している。例えば、表3はLCAの型に関係する座のいくつかを記載する。
【0208】
【0209】
LCAの最も頻繁な型は、中心体および繊毛の発達において重要な役割を果たす中心体タンパク質をコードするCEP290の突然変異によって引き起こされる(例えば、例示的なヒト遺伝子およびタンパク質配列に関してはそれぞれ、NCBI Gene ID No.80184およびUniProt ID No.O15078を参照されたい)。CEP290は、網膜後部の光受容体、ならびに体の腎臓、脳、および他の多くの臓器において重要な役割を果たす細胞膜上の一次繊毛の形成において必須である。CEP290はまた、MKS4、CT87、POC3、rd16、BBS14、LCA10、JBTS5、NPHP6、SLSN6、および3H11Agとしても知られる。いくつかの実施形態において、原因となる突然変異は、潜在性スプライス供与部位を導入するc.2991+1655A>G突然変異であり、それによって未成熟終止コドンと共に異常なエキソンを含めることが起こる。いくつかの実施形態において、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAのガイド配列は、中心体タンパク質290kDa(CEP290)遺伝子の深部イントロン突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖にハイブリダイズする。ある特定の実施形態において、深部イントロン突然変異は、c.2991+1655A>G突然変異である。いくつかの実施形態において、CEP290は、ヒトCEP290である(例えば、NCBI参照配列NG_008417に従うヒトCEP290配列を参照されたい)。いくつかの実施形態において、CEP290は、配列番号23に記載の配列の深部イントロン突然変異を含む。
【0210】
本開示のある特定の態様はさらに、遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患のin vitroモデルを作製する方法に関する。いくつかの実施形態において、方法は、真核細胞に、i)遺伝子におけるイントロンの標的DNA配列への単一ガイドRNA、ii)Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列、iii)所望のイントロン突然変異およびプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の両端に位置する相同性アームを含む相同性組換え修復(HDR)鋳型を含む一本鎖オリゴヌクレオチド、を含むCRISPR-Casシステムをコードする核酸を導入することと、遺伝子に組み込まれた突然変異を含む細胞を単離することとを含む。このアプローチと関連する例示的な方法を以下の実施例に例証する。上記のように、CRISPR-Cas媒介DNA切断は、N
HEJによって修復され、それによって例えば標的DNA配列の切り出しが起こりうる。しかし、CRISPR-Cas媒介DNA切断はまた、相同性組換え修復(HDR)によっても修復され、それによって例えばHDR鋳型に存在する配列の導入(例えば、深部イントロン突然変異の導入)が起こる。例えば、Ran,F.A.et al.(2013)Nat.Protoc.8:2281~2308頁を参照されたい。これらの方法は、治療方法、ウイルス粒子、組成物、およびキットに関して本明細書において記述される任意の特徴、態様、または要素を含みうる。
【0211】
相同性組換え修復(HDR)鋳型は、二本鎖DNAポリヌクレオチド、または一本鎖DNAオリゴヌクレオチド(ssODN)のような多様な形態をとることができる。HDR鋳型は、所望のイントロン突然変異の両端に位置する1つまたはそれ以上の相同性アームを含みうる。これらの相同性アームは、標的座と比較してセンスまたはアンチセンス方向でありうる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の相同性アームは、標的座から少なくとも約40塩基対、少なくとも約50塩基対、少なくとも約60塩基対、少なくとも約70塩基対、少なくとも約80塩基対、少なくとも約90塩基対、または少なくとも約100塩基対離れうる。
【0212】
HDR鋳型はまた、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)も含みうる。いくつかの実施形態において、PAMは、細胞中の発現されたCasタンパク質による一本鎖オリゴヌクレオチドの切断を回避するために突然変異を含む。例えば、PAMは、特定の発現されたCasタンパク質がHDR鋳型を切断しないように突然変異させてもよく、またはゲノム座のCRISPR-Cas媒介編集時に、識別配列(例えば、以下の実施例に例証される独自の制限部位)が、導入されるように突然変異させてもよい。
【0213】
任意の適した真核細胞をin vitroモデルのために使用してもよい。いくつかの実施形態において、真核細胞は哺乳動物またはヒト細胞である。いくつかの実施形態において、真核細胞は、ヒト細胞株(例えば、HeLa、A549、293等)、哺乳動物細胞株、脊椎動物細胞株、または昆虫細胞株(例えば、Sf9、またはS2)のような細胞株である。いくつかの実施形態において、真核細胞は、光受容細胞のような網膜細胞(例えば、WERI細胞)である。
【0214】
V.送達方法
本開示のある特定の態様は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療することに関する。いくつかの態様において、本発明は、個体の遺伝子における深部イントロン突然変異と関連する疾患または障害を治療する方法であって、個体に本開示の組成物、例えば本開示の遺伝子操作された、天然に存在しないCRISPR-Casシステムをコードする核酸を含む組成物の治療有効量を投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、遺伝子操作された、天然に存在しないCRISPR-Casシステムをコードする核酸は、DNAまたはRNAでありうる。いくつかの実施形態において、Casタンパク質はタンパク質として送達される。
【0215】
ベクター
いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の第1のガイドRNA、第2のガイドRNA、またはCasタンパク質をコードする核酸は、システムの同じまたは異なるベクターに位置する。いくつかの実施形態において、CRISPRシステムの1つまたはそれ以上のエレメントの発現を駆動する(driving)1つまたはそれ以上のベクターは、CRISPRシステムのエレメントの発現が、1つまたはそれ以上の標的部位でCRISPR複合体の形成を導くように、細胞に導入される。例えば、Cas酵素、tracrメイト配列に連結したガイド配列、およびtracr配列をそれぞれ、別個のベクター上の別個の調節エレメントに作動可能に連結することができる。あるいは、2つまたはそ
れ以上の上記のエレメントを、同じもしくは異なる調節エレメントから発現させてもよく、および/または場合により第1のベクターに含まれないCRISPRシステムの任意の構成要素を提供する1つもしくは複数の追加のベクターと共に単一のベクターにおいて組み合わせてもよい。ベクターにおいて組み合わせたCRISPRシステムのエレメントを、任意の適した方向に配置してもよい。例えば、1つのエレメントのコード配列は、第2のエレメントのコード配列の同じもしくは逆の鎖に位置してもよく、および/または同じもしくは逆方向を向いてもよい。
【0216】
いくつかの実施形態において、1つのプロモーターが、Casタンパク質と、1つまたはそれ以上のガイド配列、tracrメイト配列(場合によりガイド配列に作動可能に連結された)、および1つまたはそれ以上のイントロン配列内に埋もれたtracr配列(例えば、それぞれが異なるイントロン、少なくとも1つのイントロンのうちの2つもしくはそれ以上、または単一のイントロンにおける全て)をコードする転写物の発現を駆動する。いくつかの実施形態において、Casタンパク質、ガイド配列、tracrメイト配列、およびtracr配列は、同じプロモーターに作動可能に連結され、同じプロモーターから発現される。いくつかの実施形態において、第1のガイドRNA、第2のガイドRNA、および/またはCasタンパク質をコードする核酸は、1つまたはそれ以上の調節制御エレメントおよび/またはプロモーターに作動可能に連結される。
【0217】
いくつかの実施形態において、ベクターはプラスミドである。
【0218】
いくつかの実施形態において、第1のガイドRNA、第2のガイドRNA、およびCasタンパク質は、真核細胞において発現される。いくつかの実施形態において、第1のガイドRNA、第2のガイドRNA、およびCasタンパク質は、真核細胞における発現を可能にする1つまたはそれ以上のプロモーターに作動可能に連結される。真核細胞において発現される多様なプロモーターが当技術分野で公知である。限定されない例示的なプロモーターを以下に提供する。
【0219】
いくつかの実施形態において、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターに作動可能に連結される。RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、RNAポリメラーゼIIIによる転写を駆動するために十分な完全長のプロモーターまたはその断片を含みうる。RNAポリメラーゼIIIプロモーターの型、構造特徴、およびRNAポリメラーゼIIIとの相互作用、ならびに適したRNAポリメラーゼIIIプロモーターのより詳細な説明に関しては、Schramm,L.and Hernandez,N.(2002)Genes Dev.16:2593~620頁を参照されたい。tRNA、5S RNA、U6 snRNA、H1、7SK、RNアーゼP、シグナル認識粒子のRNA構成要素、およびsnoRNAを含むがこれらに限定されるわけではない、当技術分野で公知の任意の適したRNAポリメラーゼIIIプロモーターを使用してもよい(例えば、Ma,H.et al.(2014)Mol.Ther.Nucleic Acids 3:e161を参照されたい)。いくつかの実施形態において、RNAポリメラーゼIIIプロモーターはU6、H1、または7SKプロモーターである。いくつかの実施形態において、第1のガイドRNAおよび/または第2のガイドRNAは、RNAポリメラーゼIIIターミネーターに作動可能に連結する。RNAポリメラーゼIIIターミネーターの例には、長さが少なくとも5~6塩基の一連のウリジンヌクレオチドが挙げられるがこれらに限定されるわけではない(RNAポリメラーゼIIIターミネーターに関するより詳細な情報に関しては、Marck,C.,et al.(2006)Nucleic Acids Res 34(6):1816~35頁を参照されたい)。
【0220】
いくつかの実施形態において、Casタンパク質をコードする核酸は、RNAポリメラ
ーゼIIプロモーターに作動可能に連結する。RNAポリメラーゼIIプロモーターは、RNAポリメラーゼIIによる転写を駆動するために十分な完全長のプロモーターまたはその断片を含みうる。当技術分野で公知の任意の適したRNAポリメラーゼIIプロモーターを使用してもよく、これらにはサイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、CMVプロモーター由来の最小プロモーター断片(minCMVプロモーター)、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、およびCK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギベータ-グロビンプロモーター(CAGプロモーター;Niwa et al.,Gene,1991,108(2):193~9頁)、および伸長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーター(Kim et al.,Gene,1990,91(2):217~23頁およびGuo et al.,Gene Ther.,1996,3(9):802~10頁)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ヒトベータ-グルクロニダーゼプロモーター、またはニワトリベータ-アクチン(CBA)プロモーターに連結したサイトメガロウイルスエンハンサーを含む。プロモーターは、構成的、誘導可能、または抑制可能なプロモーターでありうる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、眼の細胞において異種核酸を発現することができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、光受容細胞またはRPEにおいて異種核酸を発現することができる。実施形態において、プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、例えばヒトRKプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターはオプシンプロモーター、例えばヒトオプシンプロモーターまたはマウスオプシンプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、桿体オプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、ベータホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーター、または光受容体間レチノイド結合タンパク質遺伝子(IRBP)プロモーターである。
【0221】
誘導可能なプロモーターは、遺伝子発現の調節を可能にし、外部から供給された化合物、温度のような環境要因、もしくは特異的生理状態、例えば急性期、細胞の特定の分化状態の存在によって、または複製中の細胞に限って調節することができる。誘導可能なプロモーターおよび誘導可能なシステムは、Invitrogen、Clontech、およびAriadを含むがこれらに限定されるわけではない、多様な販売元から入手可能である。他の多くのシステムが記載されており、当業者が容易に選択することができる。外部から供給されるプロモーターによって調節される誘導可能なプロモーターの例には、亜鉛で誘導可能なヒツジメタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)で誘導可能なマウス乳腺腫瘍ウイルス(MMMV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーターシステム(国際公開第98/10088号)、エクジソン昆虫プロモーター(No et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346~3351頁(1996))、テトラサイクリン発現抑制可能なシステム(Gossen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547~5551頁(1992))、テトラサイクリンで誘導可能なシステム(Gossen et al.,Science,268:1766~1769頁(1995)、同様にHarvey et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.,2:512~518頁(1998)も参照されたい)、RU486で誘導可能なシステム(Wang et al.,Nat.Biotech.,15:239~243頁(1997)、およびWang et al.,Gene Ther.,4:432~441頁(1997))ならびにラパマイシンで誘導可能なシステム(Magari et al.,J.Clin.Invest.,100:2865~2872頁(1997))が挙げられる。本文において有用でありうるさらに他の型の誘導可能なプロモーターは、特異的生理状態、例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態によって、または複製中の細胞に限って調節されるプロモーターである。
【0222】
別の実施形態において、トランスジーンのネイティブプロモーターまたはその断片が使用される。ネイティブプロモーターは、トランスジーンの発現がネイティブの発現を模倣することが望ましいときに使用することができる。トランスジーンの発現を時間的もしくは発達的に、または組織特異的に、または特異的転写刺激に応答して調節しなければならないとき、ネイティブプロモーターを使用してもよい。さらなる実施形態において、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位、またはコザックコンセンサス配列のような他のネイティブ発現制御エレメントもまた、ネイティブ発現を模倣するために使用してもよい。
【0223】
いくつかの実施形態において、調節配列は、組織特異的遺伝子発現能を付与する。一部の場合において、組織特異的調節配列は、組織特異的に転写を誘導する組織特異的転写因子に結合する。そのような組織特異的調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー等)は、当技術分野で周知である。例示的な組織特異的調節配列には、以下の組織特異的プロモーターが挙げられるがこれらに限定されるわけではない:ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersen et al.,Cell.Mol.Neurobiol.,13:503~15頁(1993))、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5611~5頁(1991))、およびニューロン特異的vgf遺伝子プロモーター(Piccioli et al.,Neuron,15:373~84頁(1995))のようなニューロン特異的プロモーター。いくつかの実施形態において、組織特異的プロモーターは、神経核(NeuN)、グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、腺腫性大腸ポリポーシス(APC)、およびイオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba-1)から選択される遺伝子のプロモーターである。他の適切な組織特異的プロモーターは、当業者に明らかであろう。いくつかの実施形態において、プロモーターはニワトリベータ-アクチンプロモーターである。
【0224】
本発明は、ウイルス粒子、例えば以下に記述されるウイルス粒子にパッケージングするために、1つまたはそれ以上の核酸配列(例えば、ガイドRNAおよび/またはCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列)を導入するための組み換え型ウイルスゲノムの使用を企図する。組換えウイルスゲノムは、ガイドRNAおよび/またはCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列の発現を確立するための任意のエレメント、例えば、プロモーター、ITR、リボソーム結合エレメント、ターミネーター、エンハンサー、選択マーカー、イントロン、ポリAシグナル、および/または複製開始点を含みうる。例示的なウイルスゲノムエレメントおよび多様なウイルス粒子の送達方法を以下により詳細に説明する。
【0225】
非ウイルス送達システム
通常の非ウイルス遺伝子移入方法もまた、細胞または標的組織に核酸を導入するために使用することができる。非ウイルスベクター送達システムは、DNAプラスミド、RNA(例えば、ガイドRNAまたはCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列)、裸の核酸(例えば、DNAまたはRNA)、および送達システムと複合体形成した核酸(例えば、DNAまたはRNA)を含む。例えば、ベクターは、脂質(例えば、カチオン性または中性脂質)、リポソーム、ポリカチオン、ナノ粒子、または核酸の細胞取り込みを増強する試剤と複合体形成してもよい。ベクターは、本明細書において記述されるいかなる送達方法にも適した試剤と複合体を形成することができる。
【0226】
核酸の非ウイルス送達方法は、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ナノ粒子(例えば、Jin,S.et al.(2009)Methods Mol.Biol.544:547~557頁)、ビロゾーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン、または脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、および試剤によるDNAの取り込みの増強を含む。リポフェクションは、例えば米国特許第5,049,386号、第4,946,787号;および第4,897,355号に記述され、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Lipofectamine(登録商標)、Transfectam(商標)、およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションにとって適したカチオン性および中性の脂質は、Felgner、国際公開第91/17424号;国際公開第91/16024号に記載の脂質を含む。
【0227】
免疫脂質複合体のような標的化リポソームを含む、脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal,Science 270:404~410頁(1995);Blaese et al.,Cancer Gene Ther.2:291~297頁(1995):Behr et al.,Bioconjugate Chem.5:382~389頁(1994);Remy et al.,Bioconjugate Chem.5:647~654頁(1994);Gao et al.,Gene Therapy 2:710~722頁(1995);Ahmad et al.,Cancer Res.52:4817~4820頁(1992);米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、および第4,946,787号を参照されたい)。
【0228】
本開示のベクターと複合体形成することができる他の化合物には、カチオン性ペプチド(例えば、ポリL-リシン)、塩(例えば、リン酸カルシウム)、DEAEデキストラン、デンドリマー(例えば、ポリアミドアミンまたはPAMAM)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン(PEI)、およびそのコンジュゲート等が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。そのような試剤のより詳細な考察に関しては、例えば、Luo,D.and Saltzman,W.M.(2000)Nature Biotechnology 18:33~37頁を参照されたい。
【0229】
いくつかの実施形態において、核酸は医薬製剤中にある。いくつかの実施形態において、医薬製剤は、薬学的に許容される担体を含む。そのような担体は当技術分野で周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Edition,1035~1038頁および1570~1580頁を参照されたい)。いくつかの実施形態において、本明細書において記述される核酸と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物は、眼の注射にとって適している。そのような薬学的に許容される担体は、滅菌液体、例えば水、および石油、動物、植物、または合成起源の油を含む油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油等を含む油でありうる。食塩水溶液およびデキストロース水溶液、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセロール溶液もまた、特に注射用溶液のための液体担体として使用することができる。医薬組成物はさらに、追加の成分、例えば保存剤、緩衝剤、等張剤、抗酸化剤および安定剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、増粘剤等を含みうる。本明細書において記述される医薬組成物は、単回単位用量または複数回単位用量に包装することができる。組成物は一般的に、無菌的で実質的に等張の溶液として製剤化される。
【0230】
ウイルス粒子
いくつかの実施形態において、ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベ
クター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクター、または組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである。
【0231】
rAAV粒子
いくつかの実施形態において、ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである。いくつかの実施形態において、第1のガイドRNA、第2のガイドRNA、またはCasタンパク質の1つまたはそれ以上をコードする核酸は、1つまたはそれ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列がその両端に位置する。いくつかの実施形態において、ウイルス粒子は、1つまたは2つのITRが両端に位置するトランスジーンを含む核酸を含む組換えAAV粒子である。いくつかの実施形態において、第1のガイドRNA、第2のガイドRNA、またはCasタンパク質の1つまたはそれ以上をコードする核酸は2つのAAV ITRがその両端に位置する。
【0232】
いくつかの実施形態において、核酸は、転写の方向に構成要素が作動可能に連結された、本開示の1つまたは2つのガイドRNA、および/または本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列、転写開始および終止配列を含む制御配列を含み、それによって発現カセットを形成する。発現カセットは、5’および3’末端上で少なくとも1つの機能的AAV ITR配列が両端に位置する。「機能的AAV ITR配列」とは、ITR配列がAAVビリオンのレスキュー、複製、およびパッケージングに関して意図されるように機能することを意味する。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Davidson et al.,PNAS,2000,97(7)3428~32頁;Passini et al.,J.Virol.,2003,77(12):7034~40頁;およびPechan et al.,Gene Ther.,2009,16:10~16頁を参照されたい。本発明のいくつかの態様の実施に関して、組換えベクターは、キャプシド封入に必須のAAVの配列およびrAAVによる感染のための物理的構造の少なくとも全てを含む。本発明のベクターにおいて使用するためのAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列(例えば、Kotin,Hum. Gene Ther.,1994,5:793~801頁に記述されるように)を有する必要はなく、ヌクレオチドの挿入、欠失、もしくは置換によって変化してもよく、またはAAV ITRはいくつかのAAV血清型のいずれに由来してもよい。AAVの40超の血清型が現在公知であり、新規血清型および既存の血清型の変異体が絶えず同定されている。Gao et al.,PNAS,2002,99(18):11854~6頁;Gao et al.,PNAS,2003,100(10):6081~6頁;およびBossis et al.,J.Virol.,2003,77(12):6799~810頁を参照されたい。
【0233】
任意のAAV血清型の使用が本発明の範囲内で検討される。いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、以下を含むがこれらに限定されるわけではないAAV血清型に由来するベクターである。AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV ITRなどである。いくつかの実施形態において、AAV中の核酸は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAVなどである、AAV ITRのITRを含む。ある特定の実施形態において、AAV ITRsはAAV2 ITRである。
【0234】
いくつかの実施形態において、ベクターは、スタッファー核酸を含みうる。いくつかの実施形態において、スタッファー核酸は、緑色蛍光タンパク質をコードしうる。いくつかの実施形態において、スタッファー核酸は、プロモーターと、1つまたはそれ以上の本開
示の1つもしくは2つのガイドRNAおよび/または本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列との間に位置しうる。
【0235】
いくつかの態様において、本発明は、組換え自己相補的ゲノムを含むウイルス粒子を提供する。いくつかの実施形態において、ベクターは自己相補的ベクターである。自己相補的ゲノムを有するAAVウイルス粒子および自己相補的AAVゲノムを使用する方法は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第6,596,535号;第7,125,717号;第7,765,583号;第7,785,888号;第7,790,154号;第7,846,729号;第8,093,054号;および第8,361,457号;ならびにWang Z.,et al.,(2003)Gene Ther 10:2105~2111頁に記述されている。自己相補的ゲノムを含むrAAVは、その部分的に相補的な配列(例えば、トランスジーンの相補的なコードおよび非コード鎖)のために、急速に二本鎖DNA分子を形成する。いくつかの実施形態において、本発明は、AAVゲノムを含むAAVウイルス粒子を提供し、rAAVゲノムは、第1の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、本開示の1つまたは2つのガイドRNAおよび/または本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列)と、第2の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、本開示の1つまたは2つのガイドRNAの非コードまたはアンチセンス鎖および/または本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列)とを含み、第1の異種ポリヌクレオチド配列は、その長さのほとんどまたは全てに沿って、第2のポリヌクレオチド配列と鎖内塩基対を形成することができる。
【0236】
いくつかの実施形態において、第1の異種ポリヌクレオチド配列および第2の異種ポリヌクレオチド配列は、鎖内塩基対形成、例えばヘアピンDNA構造を促進する配列によって連結される。例えばsiRNA分子におけるヘアピン構造は、当技術分野で公知である。いくつかの実施形態において、第1の異種ポリヌクレオチド配列および第2の異種ポリヌクレオチド配列は、突然変異ITR(例えば、右のITR)によって連結される。突然変異ITRは、末端解離配列を含むD領域の欠失を含む。その結果、AAVウイルスゲノムが複製すると、repタンパク質は、突然変異ITRでウイルスゲノムを切断せず、そのため、以下を5’から3’の順に含む組換えウイルスゲノムが、ウイルスキャプシドにパッケージングされる:AAV ITR、調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチド配列、突然変異AAV ITR、第1の異種ポリヌクレオチドとは逆方向の第2の異種ポリヌクレオチド、および第3のAAV ITR。
【0237】
いくつかの実施形態において、第1の異種核酸配列および第2の異種核酸配列は、突然変異ITR(例えば、右のITR)によって連結される。いくつかの実施形態において、ITRは、ポリヌクレオチド配列5’-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCG-3’(配列番号24)を含む。突然変異ITRは、末端解離配列を含むD領域の欠失を含む。その結果、AAVウイルスゲノムが複製すると、repタンパク質は、突然変異ITRでウイルスゲノムを切断せず、そのため、以下を5’から3’の順に含む組換えウイルスゲノムが、ウイルスキャプシドにパッケージングされる:AAV ITR、調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチド配列、突然変異AAV ITR、第1の異種ポリヌクレオチドとは逆方向の第2の異種ポリヌクレオチド、および第3のAAV ITR。
【0238】
いくつかの実施形態において、ベクターはウイルス粒子にキャプシド封入される。いくつかの実施形態において、ウイルス粒子は、組換えAAVベクターを含む組換えAAVウイルス粒子である。異なるAAV血清型を使用して、特定の標的細胞の形質導入を最適化する、または特定の標的組織(例えば、眼の組織)内の特異的細胞型を標的とすることができる。rAAV粒子は、同じ血清型または混合血清型のウイルスタンパク質およびウイ
ルス核酸を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、本発明のAAV2キャプシドタンパク質と少なくとも1つのAAV2 ITRとを含むことができ、またはAAV2キャプシドタンパク質と少なくとも1つのAAV1 ITRとを含むことができる。rAAV粒子の産生のためのAAV血清型のいかなる組み合わせも、それぞれの組み合わせが本明細書において明白に述べられていたかのように本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明のAAV2キャプシドを含むrAAV粒子を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明のAAVrh8Rキャプシドを含むrAAV粒子を提供する。
【0239】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV1キャプシド、AAV2キャプシド、AAV3キャプシド、AAV4キャプシド、AAV5キャプシド、AAV6キャプシド(例えば、野生型AAV6キャプシド、または米国特許付与前公報第2012/0164106号に記述されるShH10のような変異体AAV6キャプシド)、AAV7キャプシド、AAV8キャプシド、AAVrh8キャプシド、AAVrh8Rキャプシド、AAV9キャプシド(例えば、野生型AAV9キャプシド、または米国特許付与前公報第2013/0323226号に記述される改変されたAAV9キャプシド)、AAV10キャプシド、AAVrh10キャプシド、AAV11キャプシド、AAV12キャプシド、チロシンキャプシド突然変異体、ヘアピン結合キャプシド突然変異体、AAV2R471Aキャプシド、AAVAAV2/2-7m8キャプシド、AAV DJキャプシド(例えば、AAV-DJ/8キャプシド、AAV-DJ/9キャプシド、または米国特許付与前公報第2012/0066783号に記述される他の任意のキャプシド)、AAV2 N587Aキャプシド、AAV2 E548Aキャプシド、AAV2 N708Aキャプシド、AAV V708Kキャプシド、ヤギAAVキャプシド、AAV1/AAV2キメラキャプシド、ウシAAVキャプシド、マウスAAVキャプシド、rAAV2/HBoV1キャプシド、または米国特許第8,283,151号もしくは国際出願国際公開第2003/042397号に記述されるAAVキャプシドを含む。いくつかの実施形態において、突然変異体キャプシドタンパク質は、AAVキャプシドの形成能を維持する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子はAAV5チロシン突然変異体キャプシドを含む(Zhong L.et al.,(2008)Proc Natl Acad Sci USA 105(22):7827~7832頁)。さらなる実施形態において、rAAV粒子は、クレードA~FのAAV血清型のキャプシドタンパク質を含む(Gao,et al.,J.Virol.2004,78(12):6381頁)。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV1キャプシドタンパク質またはその突然変異体を含む。他の実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV2キャプシドタンパク質またはその突然変異体を含む。いくつかの実施形態において、AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、またはAAVrh10である。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型1(AAV1)キャプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型2(AAV2)キャプシドを含む。いくつかの実施形態において、組換えAAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9、および/またはAAVrh10キャプシドを含む。いくつかの実施形態において、AAV1、AAV2、AAV8、AAVrh8R、AAV9、および/またはAAVrh10キャプシドは、例えば以下に記述されるチロシン突然変異またはヘパラン結合突然変異を含む。
【0240】
AAV(例えば、AAV2、AAVrh8R等)のキャプシドは、3つのキャプシドタンパク質:VP1、VP2、およびVP3を含むことが知られている。これらのタンパク質は、有意な量の重なり合うアミノ酸配列および独自のN末端配列を含む。AAV2キャプシドは、正二十面体の対称性で配置される60のサブユニットを含む(Xie,Q.,et al.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.99(16):10
405~10頁)。VP1、VP2、およびVP3は、1:1:10の比率で存在することが見出されている。
【0241】
AAV2キャプシドタンパク質とHSPGの間の結合は、塩基性のAAV2キャプシドタンパク質残基と陰性荷電のグリコサミノグリカン残基との間の静電気相互作用を介して起こることが知られている(Opie,SR et al.,(2003)J.Virol.77:6995~7006頁;Kern,A et al.,(2003)J.Virol.77:11072~11081頁)。これらの相互作用に関係する特異的キャプシド残基は、R484、R487、K532、R585、およびR588を含む。これらの残基における突然変異は、Hela細胞およびヘパランそのものに対するAAV2の結合を低減させることが示されている(Opie,SR et al.,(2003)J.Virol.77:6995~7006頁;Kern,A et al.,(2003)J.Virol.77:11072~11081頁;国際公開第2004/027019
A2号、米国特許第7,629,322号)。さらに、理論に捉われることを望むものではないが、AAV2のVP1ナンバリングに基づくナンバリングのアミノ酸484、487、532、585、または588位に対応する1つまたはそれ以上の残基でのアミノ酸置換は、HSPGに結合しないAAVキャプシド型の形質導入特性を調節し得るか、またはそのHSPGの結合能とは無関係にAAVキャプシド型の形質導入特性を調節し得ると考えられている。
【0242】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、HSPGと相互作用する残基で、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づくナンバリングのアミノ酸484、487、532、585、または588位に対応する1つまたはそれ以上の残基で、キャプシドタンパク質において突然変異を有する。したがって、いくつかの実施形態において、送達時に、rAAVベクターによってコードされる異種核酸は、参照rAAVキャプシドタンパク質(例えば、野生型rAAVキャプシドタンパク質)を含むrAAVキャプシドを含むrAAV粒子の異種核酸の発現レベルと比較して、増加した発現レベルで発現される。いくつかの実施形態において、核酸の発現は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加する。いくつかの実施形態において、送達時に、rAAV粒子は、参照rAAVキャプシドタンパク質(例えば、野生型rAAVキャプシドタンパク質)を含むrAAV粒子と比較して、低減された神経炎症を引き起こす。いくつかの実施形態において、神経炎症は、なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減される。適した参照rAAVキャプシドタンパク質は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置で1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を欠如する任意のキャプシドタンパク質を含みうる(このため、参照キャプシドは、HSPGに対する結合を変化させない1つまたはそれ以上の「バックグラウンド」置換を含みうる)。
【0243】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置で1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVキャプシドタンパク質を含むrAAVキャプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆方向末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む。
【0244】
いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換により、ヘパラン硫酸プロテオグリカンに対するrAAV粒子の結合は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換により、ヘパラン硫酸プロテオグリカンに対するrAAV粒子の結合は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも
約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%(野生型キャプシドを含むrAAV粒子の結合と比較して)低減する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換により、ヘパラン硫酸プロテオグリカンに対するrAAV粒子の結合は、約10%~約100%、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約10%~約90%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約70%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、約50%~約70%、約60%~約70%、約10%~約60%、約20%~約60%、約30%~約60%、約40%~約60%、約50%~約60%、約10%~約50%、約20%~約50%、約30%~約50%、約40%~約50%、約10%~約40%、約20%~約40%、約30%~約40%、約10%~約30%、約20%~約30%、または約10%~約20%のうちの任意の割合だけ(野生型キャプシドを含むrAAV粒子の結合と比較して)低減する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換によって、野生型rAAV粒子の結合と比較して、ヘパラン硫酸プロテオグリカンに対するrAAV粒子の検出可能な結合が起こらない。HSPGに対するAAV粒子の結合、例えば、ヘパラン硫酸クロマトグラフィー培地に対する結合、またはその表面上にHSPGを発現することが知られている細胞に対する結合を測定する手段は、当技術分野で公知である。例えば、Opie,SR et al.,(2003)J.Virol.77:6995~7006頁およびKern,A et al.,(2003)J.Virol.77:11072~11081頁を参照されたい。
【0245】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンに対するrAAV粒子の結合を低減または消失させるキャプシドタンパク質の1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、および/または1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づくナンバリングのアミノ酸484、487、532、585、または588位に存在する。本明細書において使用される「AAV2のVP1に基づくナンバリング」とは、AAV2のVP1の列挙されたアミノ酸に対応する列挙されたキャプシドタンパク質のアミノ酸を指す。例えば、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換が、AAV2のVP1に基づくナンバリングの347、350、390、395、448、451、484、487、527、532、585、および/または588位に存在する場合、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1のアミノ酸347、350、390、395、448、451、484、487、527、532、585、および/または588に対応する列挙されたキャプシドタンパク質のアミノ酸におけるものである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1の484、487、532、585、または588位に存在する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づくナンバリングの、AAV3のVP1の484、487、532、585、または588位に存在する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づくナンバリングの485、488、528、533、586、または589位に存在する。いくつかの実施形態において、アミノ酸585および/または588(AAV2のVP1に基づくナンバリング)に対応する位置の1つまたはそれ以上のアミノ酸は、アルギニン残基で置換されている(例えば、AAV1またはAAV6に関してS586および/またはT589;AAV9に関してS586および/またはA589;AAVrh8Rに関してA586および/またはT589;AAV8に関してQ588および/またはT591;ならびにAAVrh10に関してQ588および/またはA591)。他の実施形態において、アミノ酸484、487、527、および/または532(AAV2のVP1に基づくナンバリング)に対応する位置の1つまたはそれ以上のアミノ酸(例えば、アルギニンまたはリシン)は、アラニンのような非陽性荷電アミノ酸で置換されている(例えば、AAV1またはAAV6に関してR485、R488、K528、および/またはK533;AAV9またはAAVrh8Rに関してR485、R488、K528、および/またはR533;ならびにAAV8またはAAVrh10に関してR487、R490、K530、および/またはR535)。
【0246】
他のウイルス粒子
いくつかの実施形態において、ベクターは組換えアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルス粒子はアデノウイルス粒子である。いくつかの実施形態において、アデノウイルス粒子は組換えアデノウイルス粒子、例えば本開示の1つまたは2つのガイドRNAおよび/または2つのITRの間に本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドベクターである。いくつかの実施形態において、アデノウイルス粒子は、アデノウイルスを複製欠損にする1つまたはそれ以上のE1遺伝子を欠如するか、または欠損コピーを含む。アデノウイルスは、大きい(約950Å)非エンベロープの正二十面体キャプシド内に直線状の二本鎖DNAゲノムを含む。アデノウイルスは、30kb超の異種配列を組み込むことができる大きいゲノムを有し(例えば、E1および/またはE3領域の代わりに)、それによって、それらはより大きい異種遺伝子と共に使用するために独自に適している。それらはまた、分裂中および非分裂細胞に感染することが知られており、宿主ゲノムに本来組み込まれない(ハイブリッド変異体はこの能力を保有しうる)。いくつかの実施形態において、アデノウイルスベクターは、E1の代わりに異種配列を有する第一世代アデノウイルスベクターでありうる。いくつかの実施形態において、アデノウイルスベクターは、E2A、E2B、および/またはE4に追加の突然変異または欠失を有する第二世代アデノウイルスベクターでありうる。いくつかの実施形態において、アデノウイルスベクターは、全てのウイルスコード遺伝子を欠如するが、ITRおよびパッケージングシグナルのみを保持し、複製およびパッケージングのためにヘルパーアデノウイルスをトランスで必要とする第三世代またはguttedアデノウイルスベクターでありうる。アデノウイルス粒子は、哺乳動物細胞の一過性のトランスフェクションのためのベクターとしてならびに遺伝子治療ベクターとしての使用が研究されている。詳しい説明に関しては、Danthinne,X.and Imperiale,M.J.(2000)Gene Ther.7:1707~14頁およびTatsis,N.and Ertl,H.C.(2004)Mol.Ther.10:616~29頁を参照されたい。
【0247】
いくつかの実施形態において、ウイルス粒子は、本開示の1つまたは2つのガイドRNAおよび/または本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組換えアデノウイルス粒子である。任意のアデノウイルス血清型の使用が、本発明の範囲内で検討される。いくつかの実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAd、またはブタAd3型を含むがこれらに限定されるわけではない、アデノウイルス血清型に由来するベクターである。いくつかの実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5の変異体に由来する。
【0248】
いくつかの実施形態において、ベクターは、ウイルス粒子にキャプシド封入されている。いくつかの実施形態において、ウイルス粒子は、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド封入する組換えアデノウイルス粒子である。いくつかの実施形態において、組換えウイルス粒子は、1つまたはそれ以上の外来のウイルスキャプシドタンパク質と組み合わせてアデノウイルス粒子を含む。そのような組み合わせを、偽型化された組換えアデノウイルス粒子と呼ぶ。いくつかの実施形態において、偽型化された組換えアデノウイルス粒子において使用される外来のウイルスキャプシドタンパク質は、外来のウイルスまたはもう一つのアデノウイルスの血清型に由来する。いくつかの実施形態において、外来のウイルスキャプシドタンパク質は、レオウイルス3型を含むがこれらに限定されるわけではないウイルスに由来する。偽型化されたアデノウイルス粒子において使用されるベクターとキャプシドタンパク質の組み合わせの例は、以下の参考文献に見出すことができる(Tatsis,N.et al.(2004)Mol.Ther.10(4):616~629頁、およびAhi,Y.et al.(2011)Curr.Gene Ther.11(4):307~320頁)。異なるHSV血清型を使用して、特定の標的細胞の形質導入を最適化する、または特定の標的組織(例えば、疾患組織)内の特異的細胞型を標的とすることができる。特異的アデノウイルス血清型が標的とする組織または細胞には、肺(例えば、HuAd3)、脾臓および肝臓(例えば、HuAd37)、平滑筋、滑膜細胞、樹状細胞、心血管細胞、腫瘍細胞株(例えば、HuAd11)、および樹状細胞(例えば、レオウイルス3型によって偽型化されたHuAd5、HuAd30、またはHuAd35)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。詳しい説明に関しては、Ahi、Y.et al.(2011)Curr.Gene Ther.11(4):307~320頁、Kay、M.et al.(2001)Nat.Med.7(1):33~40頁、およびTatsis、N.et al.(2004)Mol.Ther.10(4):616~629頁を参照されたい。いくつかの実施形態において、組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24-30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAd、またはブタAd3型を含むがこれらに限定されるわけではない、アデノウイルス血清型からのキャプシドを含みうる。いくつかの実施形態において、組換えアデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2キャプシドまたはアデノウイルス血清型5キャプシドの変異体を含む。
【0249】
いくつかの実施形態において、ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルス粒子はレンチウイルス粒子である。いくつかの実施形態において、レンチウイルス粒子は、組換えレンチウイルス粒子、例えば2つのLTRの間に本開示の1つまたは2つのガイドRNAおよび/または本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドベクターである。レンチウイルスは、およそ10kbのゲノムを有するプラスセンスのssRNAレトロウイルスである。レンチウイルスは、分裂中および非分裂細胞のゲノムに組み込まれることが知られている。レンチウイルス粒子は、例えば、多数のプラスミド(典型的に、レンチウイルスゲノムと、複製および/またはパッケージングのために必要な遺伝子とは、ウイルス複製を防止するために分離される)を、改変されたレンチウイルスゲノムをレンチウイルス粒子にパッケージングするパッケージング細胞株にトランスフェクトすることによって産生することができる。いくつかの実施形態において、レンチウイルス粒子は、エンベロープタンパク質を欠如する第一世代ベクターを指しうる。いくつかの実施形態において、レンチウイルス粒子は、gag/polおよびtat/rev領域を除く全ての遺伝子を欠如する第二世代ベクターを指しうる。いくつかの実施形態において、レンチウイルス粒子は、内因性のrev、gag、およびpol遺伝子のみを含み、tat遺伝子を有しない形質導入のためのキメラLTRを有する第三世代ベクターを指しうる(Dull,T.et al.(1998)J.Virol.72:8463~71頁を参照されたい)。詳しい説明に関しては、Durand,S.and Cimarelli,A.(2011)Viruses 3:132~59頁を参照されたい。
【0250】
いくつかの実施形態において、ウイルス粒子は、本開示の1つまたは2つのガイドRNAおよび/または本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組換えレンチウイルス粒子である。任意のレンチウイルスベクターの使用が、本発明の範囲内において検討される。いくつかの実施形態において、レンチウイルスベクターは、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス-2(HIV-2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ジェンブラナ病ウイルス(JDV)、ビスナウイルス(VV)、およびヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)を含むがこれらに限定されるわけではないレンチウイルスに由来する。
【0251】
いくつかの実施形態において、ベクターは、ウイルス粒子にキャプシド封入される。いくつかの実施形態において、ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド封入する組換えレンチウイルス粒子である。いくつかの実施形態において、組換えウイルス粒子は、1つまたはそれ以上の外来のウイルスキャプシドタンパク質と組み合わせてレンチウイルスベクターを含む。そのような組み合わせを、偽型化された組換えレンチウイルス粒子と呼ぶ。いくつかの実施形態において、偽型化された組換えレンチウイルス粒子に使用される外来ウイルスキャプシドタンパク質は、外来ウイルスに由来する。いくつかの実施形態において、偽型化された組換えレンチウイルス粒子に使用される外来ウイルスキャプシドタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-GP)である。VSV-GPは、遍在する細胞受容体と相互作用して、偽型化された組換えレンチウイルス粒子に対して広い組織向性を提供する。加えて、VSV-GPは、偽型化された組換えレンチウイルス粒子に対してより高い安定性を提供すると考えられる。他の実施形態において、外来のウイルスキャプシドタンパク質は、チャンディプラウイルス、狂犬病ウイルス、モコラウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス(SFV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、エボラウイルスレストン株、エボラウイルスザイール株、マールブルグウイルス、ラッサウイルス、トリ白血病ウイルス(ALV)、ヤーグジークテヒツジレトロウイルス(JSRV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、ネコ内在性レトロウイルス(RD114)、ヒトT-リンパ好性ウイルス(HTLV-1)、ヒトフォーミーウイルス、マエディ・ビスナウイルス(MVV)、SARS-CoV、センダイウイルス、RSウイルス(RSV)、ヒトパラインフルエンザウイルス3型、C型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルス、トリペストウイルス(FPV)、またはカイコ核多角体病ウイルス(AcMNPV)を含むがこれらに限定されるわけではないウイルスに由来する。
【0252】
いくつかの実施形態において、組換えレンチウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス、狂犬病ウイルス、RD114、またはその変異体によって偽型化されたレンチウイルスに由来する。偽型化されたレンチウイルス粒子において使用されるベクターとキャプシドタンパク質の組み合わせの例は、例えば、Cronin,J.et al.(2005).Curr.Gene Ther.5(4):387-398に見出すことができる。異なる偽型化された組換えレンチウイルス粒子を使用して、特定の標的細胞の形質導入を最適化する、または特定の標的組織(例えば、疾患組織)内の特異的細胞型を標的とすることができる。例えば、特異的偽型化された組換えレンチウイルス粒子が標的とする組織には、肝臓(例えば、VS
V-G、LCMV、RRV、またはSeV Fタンパク質によって偽型化される)、肺(例えば、エボラ、マールブルグ、SeV FおよびHN、またはJSRVタンパク質によって偽型化される)、膵島細胞(例えば、LCMVタンパク質によって偽型化される)、中枢神経系(例えば、VSV-G、LCMV、狂犬病、またはモカラタンパク質によって偽型化される)、網膜(例えば、VSV-Gまたはモカラタンパク質によって偽型化される)、単球または筋肉(例えば、モカラまたはエボラタンパク質によって偽型化される)、造血系(例えば、RD114またはGALVタンパク質によって偽型化される)、またはがん細胞(例えば、GALVまたはLCMVタンパク質によって偽型化される)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。詳しい説明に関しては、Cronin,J.et al.(2005).Curr.Gene Ther.5(4):387~398頁およびKay,M.et al.(2001)Nat.Med.7(1):33~40頁を参照されたい。いくつかの実施形態において、組換えレンチウイルス粒子は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モカラウイルス、狂犬病ウイルス、RD114、またはその変異体によって偽型化されたキャプシドを含む。
【0253】
いくつかの実施形態において、ベクターは、rHSVベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルス粒子は単純ヘルペスウイルス(HSV)粒子である。いくつかの実施形態において、HSV粒子は、rHSV粒子、例えば、2つのTRの間に本開示の1つまたは2つのガイドRNAおよび/または本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドベクターである。HSVは、およそ152kbのゲノムを有するエンベロープを有する二本鎖DNAウイルスである。有利なことには、その遺伝子のおよそ半数が非必須であり、異種配列に適合させるために欠失させてもよい。HSV粒子は非分裂細胞に感染する。加えて、それらは、本来ニューロンに潜伏して定着し、逆行性輸送によって移動し、シナプスを越えて運ばれることから、神経系を巻き込むニューロンのトランスフェクションおよび/または遺伝子治療アプローチにとって有用となる。いくつかの実施形態において、HSV粒子は、複製欠損または複製コンピテント(例えば、1つまたはそれ以上の後期遺伝子の不活化を通して単一の複製サイクルに関してコンピテント)でありうる。詳しい説明に関しては、Manservigi,R.et al.(2010)Open Virol.J.4:123~56頁を参照されたい。
【0254】
いくつかの実施形態において、ウイルス粒子は、本開示の1つまたは2つのガイドRNAおよび/または本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むrHSV粒子である。任意のHSVベクターの使用が、本発明の範囲内において考慮される。いくつかの実施形態において、HSVベクターは、HSV-1およびHSV-2を含むがこれらに限定されるわけではないHSV血清型に由来する。
【0255】
いくつかの実施形態において、ベクターはウイルス粒子にキャプシド封入される。いくつかの実施形態において、ウイルス粒子は、組換えHSVベクターをキャプシド封入する組換えHSV粒子である。いくつかの実施形態において、組換えウイルス粒子は、1つまたはそれ以上の外来のウイルスキャプシドタンパク質と組み合わせたHSVベクターを含む。そのような組み合わせを、偽型化されたrHSV粒子と呼ぶ。いくつかの実施形態において、偽型化されたrHSV粒子に使用される外来ウイルスキャプシドタンパク質は、外来ウイルスまたはもう一つのHSV血清型に由来する。いくつかの実施形態において、偽型化されたrHSV血清型に使用される外来ウイルスキャプシドタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-GP)である。VSV-GPは、遍在する細胞受容体と相互作用し、偽型化されたrHSV粒子に対して広い組織向性を提供する。いくつかの実施形態において、VSV-GPは、偽型化されたrHSV粒子に対してより高い安定性を提供すると考えられる。他の実施形態において、外来ウイルスキャプシドタンパク質は、異なるHSV血清型に由来しうる。例えば、HSV-1ベクターは、1つまたはそ
れ以上のHSV-2キャプシドタンパク質を含みうる。異なるHSV血清型を使用して、特定の標的細胞の形質導入を最適化する、または特定の標的組織(例えば、疾患組織)内の特異的細胞型を標的とすることができる。特異的アデノウイルス血清型が標的とする組織または細胞には、中枢神経系およびニューロン(例えば、HSV-1)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。詳しい説明に関しては、Manservigi,R.et al.(2010)Open Virol J 4:123~156頁,Kay,M.et al.(2001)Nat.Med.7(1):33~40頁、およびMeignier,B.et al.(1987)J.Infect.Dis.155(5):921~930頁を参照されたい。いくつかの実施形態において、組換えHSV粒子は、rHSV-1粒子、またはrHSV-2ウイルス粒子である。
【0256】
ウイルス粒子の産生
アデノウイルスベクター粒子の産生に関して、多数の方法が当技術分野で公知である。例えば、guttedアデノウイルスベクターに関して、アデノウイルスベクターゲノムおよびヘルパーアデノウイルスゲノムを、パッケージング細胞株(例えば、293細胞株)にトランスフェクトしてもよい。いくつかの実施形態において、ヘルパーアデノウイルスゲノムは、そのパッケージングシグナルの両端に位置する組換え部位を含み、両方のゲノムを、目的のアデノウイルスベクターがヘルパーアデノウイルスより効率的にパッケージングされるように、リコンビナーゼ(例えば、Cre/loxPシステムを使用してもよい)を発現するパッケージング細胞株にトランスフェクトしてもよい(例えば、Alba,R.et al.(2005)Gene Ther.12 Suppl 1:S18~27頁を参照されたい)。アデノウイルスベクターは、本明細書において記述される方法のような標準的な方法を使用して回収および精製してもよい。
【0257】
レンチウイルスベクター粒子の産生に関して、多数の方法が当技術分野で公知である。例えば、第3世代のレンチウイルスベクターに関して、gagおよびpol遺伝子を有する目的のレンチウイルスゲノムを含むベクターを、rev遺伝子を含むベクターと共に、パッケージング細胞株(例えば、293細胞株)に同時トランスフェクトしてもよい。目的のレンチウイルスゲノムはまた、Tatの非存在下で転写を促進するキメラLTRも含む(Dull,T.et al.(1998)J.Virol.72:8463~71頁を参照されたい)。レンチウイルスベクターは、本明細書において記述される方法(例えば、Segura MM,et al.,(2013)Expert Opin Biol Ther.13(7):987~1011頁)を使用して回収および使用してもよい。
【0258】
HSV粒子の産生に関して、多数の方法が当技術分野で公知である。HSVベクターは、本明細書において記述される方法のような標準的な方法を使用して回収および精製してもよい。例えば、複製欠損HSVベクターに関して、最初期(IE)遺伝子の全てを欠如する目的のHSVゲノムを、ICP4、ICP27、およびICP0のような、ウイルス産生に必要な遺伝子を提供する相補的細胞株にトランスフェクトしてもよい(例えば、Samaniego,L.A.et al.(1998)J.Virol.72:3307~20頁を参照されたい)。HSVベクターは、記述の方法を使用して回収および精製してもよい(例えば、Goins,WF et al.,(2014)Herpes Simplex Virus Methods in Molecular Biology 1144:63~79頁)。
【0259】
rAAVベクターの産生に関して、トランスフェクション、安定な細胞株産生、およびアデノウイルス-AAVハイブリッド、ヘルペスウイルス-AAVハイブリッド(Conway,JE et al.,(1997)J. Virology 71(11):8780~8789頁)およびバキュロウイルス-AAVハイブリッドを含む感染性ハイブ
リッドウイルス産生系を含む多数の方法が当技術分野で公知である。rAAVウイルス粒子を産生するためのrAAV産生培養は全て、1)適した宿主細胞、2)適したヘルパーウイルス機能、3)AAV repおよびcap遺伝子および遺伝子産物、4)少なくとも1つのAAV ITR配列(例えば、サイズ超過のrAAVベクターゲノム)が両端に位置する核酸(例えば、治療核酸)、および5)rAAV産生を支持するために適した培地および培地成分、を必要とする。いくつかの実施形態において、適した宿主細胞は霊長類の宿主細胞である。いくつかの実施形態において、適した宿主細胞は、HeLa、A549、293、またはPerc.6細胞のようなヒト由来の細胞株である。いくつかの実施形態において、適したヘルパーウイルス機能は、野生型または突然変異体アデノウイルス(温度感受性アデノウイルスのような)、ヘルペスウイルス(HSV)、バキュロウイルス、またはヘルパー機能を提供するプラスミド構築物によって提供される。いくつかの実施形態において、AAV repおよびcap遺伝子産物は、任意のAAV血清型に由来しうる。一般的に、しかし必須ではないが、AAV rep遺伝子産物は、rep遺伝子産物がrAAVゲノムを複製およびパッケージングするように機能しうる限り、rAAVベクターゲノムのITRと同じ血清型の遺伝子産物である。当技術分野で公知の適した培地を、rAAVベクターの産生のために使用してもよい。これらの培地には、改変イーグル培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を含む、Hyclone LaboratoriesおよびJRHが製造する培地、米国特許第6,566,118号に記述される配合のようなカスタム配合、および米国特許第6,723,551号に記述されるSf-900 II SFM培地が挙げられるがこれらに限定されるわけではなく、これらの特許文献は、特に組換えAAVベクターの産生に使用するためのカスタム培地配合に関して、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの実施形態において、AAVヘルパー機能は、アデノウイルスまたはHSVによって提供される。いくつかの実施形態において、AAVヘルパー機能は、バキュロウイルスによって提供され、宿主細胞は昆虫細胞(例えば、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)細胞)である。AAVの複製に関するアデノウイルスヘルパー機能の例には、E1A機能、E1B機能、E2A機能、VA機能、およびE4orf6機能が挙げられる。寄託所から入手可能なバキュロウイルスには、カイコ核多角体病ウイルスが挙げられる。
【0260】
rAAV粒子は、当技術分野で公知の方法を使用して産生することができる。例えば、米国特許第6,566,118号;第6,989,264号;および第6,995,006号を参照されたい。本発明の実践において、rAAV粒子を産生するための宿主細胞には、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、微生物および酵母が挙げられる。宿主細胞はまた、AAV repおよびcap遺伝子が宿主細胞において安定に維持されるパッケージング細胞、またはAAVベクターゲノムが安定に維持される産生細胞でありうる。例示的なパッケージングおよび産生細胞は、293、A549、またはHeLa細胞に由来する。AAVベクターは、当技術分野で公知の標準的な技術を使用して精製および製剤化される。
【0261】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、以下に提供される例示的なトリプルトランスフェクション法のようなトリプルトランスフェクション法によって産生することができる。簡単に説明すると、rep遺伝子およびキャプシド遺伝子を含むプラスミドをヘルパーアデノウイルスプラスミドと共に、細胞株(例えば、HEK293細胞)にトランスフェクトして(例えば、リン酸カルシウム法を使用して)、ウイルスを収集して、場合により精製してもよい。
【0262】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、産生細胞株法によって産生してもよい(例えば、Martin et al.,(2013)Human Gene Therapy Methods 24:253~269頁を参照されたい)。簡単に説明すると
、細胞株(例えば、HeLa細胞株)に、rep遺伝子、キャプシド遺伝子、およびプロモーター-トランスジーン配列を含むプラスミドを安定にトランスフェクトしてもよい。細胞株をスクリーニングして、rAAV産生のためのリードクローンを選択して、次に、これを産生バイオリアクターにおいて増殖させて、rAAV産生を開始するためのヘルパーとしてのアデノウイルス(例えば、野生型アデノウイルス)を感染させてもよい。次に、ウイルスを回収して、アデノウイルスを不活化(例えば、熱によって)および/または除去し、rAAV粒子を精製してもよい。いくつかの実施形態において、産生細胞株は、HeLa、293、A549、またはPerc.6細胞に由来する。いくつかの実施形態において、産生細胞株は、浮遊培養での増殖に適合させる。いくつかの実施形態において、AAVヘルパー機能は、アデノウイルス、HSV、またはバキュロウイルスによって提供される。
【0263】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、ヘルパー機能の提供後約48時間~約96時間の間に回収される。例えば、いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、ヘルパー機能の提供の約48時間後、約60時間後、約72時間後、約84時間後、または約96時間後に回収される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、ヘルパー機能の提供の、約48時間および約96時間後、約48時間および約84時間後、約48時間および約72時間後、約48時間および約60時間後、約60時間および約96時間後、約60時間および約84時間後、約60時間および約72時間後、約72時間および約96時間後、約72時間および約84時間後、または約84時間および約96時間後に回収される。
【0264】
本発明の適したrAAV産生培養培地に、0.5%~20%(v/vまたはw/v)のレベルで血清または血清由来組換えタンパク質を補充してもよい。あるいは、当技術分野で公知であるように、rAAVベクターを、動物由来産物を有しない培地とも呼ばれる無血清条件で産生してもよい。当業者は、産生培養物におけるrAAVの力価を増加させるために、rAAVベクターの産生を支持するように設計された市販のまたはカスタム培地に、グルコース、ビタミン、アミノ酸、および/または増殖因子を含むがこれらに限定されるわけではない、当技術分野で公知の1つまたはそれ以上の細胞培養構成要素を補充してもよいことを認識し得る。
【0265】
rAAV産生培養物は、利用される特定の宿主細胞にとって適した多様な条件(広い温度範囲、多様な期間等)で増殖させることができる。当技術分野で公知であるように、rAAV産生培養物は、例えばローラーボトル、中空繊維フィルター、マイクロキャリア、および充填床または流動床バイオリアクターのような適した付着依存的容器中で培養することができる、付着依存的培養物を含む。rAAVベクター産生培養物はまた、例えばスピナーフラスコ、攪拌タンクバイオリアクター、およびWaveバッグシステムのような使い捨てシステムを含む多様な方法で培養することができるHeLa、293、およびSF-9細胞のような浮遊培養に適合させた宿主細胞を含みうる。
【0266】
本発明のrAAVベクター粒子は、米国特許第6,566,118号により詳しく記述されているように、インタクト細胞からの培地にrAAV粒子を放出させるために細胞を当技術分野で公知の条件で培養することを条件として、産生培養物の宿主細胞の溶解によって、または産生培養物から消費された培地を回収することによってrAAV産生培養物から回収することができる。細胞の適した溶解方法もまた当技術分野で公知であり、例えば多数の凍結/融解サイクル、超音波処理、マイクロフルイダイゼーション、ならびに洗浄剤および/またはプロテアーゼのような化学物質による処理が挙げられる。
【0267】
さらなる実施形態において、ウイルス粒子は精製される。本明細書において使用される用語「精製」は、ウイルス粒子が本来存在するまたは当初そこから調製される場所に同様
に存在しうる他の構成要素の少なくとも一部を含まないウイルス粒子の調製を含む。このため、例えば、単離ウイルス粒子は、培養物ライセートまたは産生培養物上清のような起源混合物からそれを濃縮するための精製技術を使用して調製することができる。濃縮は、例えば溶液中に存在するDNアーゼ抵抗性粒子(DRP)もしくはゲノムコピー(gc)の割合、もしくは感染度のような多様な方法で測定することができ、またはヘルパーウイルス、培地構成要素等を含む産生培養混入物質または処理中の混入物質を含む混入物質のような、起源混合物に存在する第2の場合によっては干渉性の物質に関連して測定することができる。
【0268】
いくつかの実施形態において、ウイルス産生培養回収物は、宿主細胞破片を除去するために清澄化される。いくつかの実施形態において、産生培養回収物は、例えばグレードDOHC Millipore Millistak+HC Podフィルター、グレードA1HC Millipore Millistak+HC Podフィルター、および0.2μmフィルターOpticap XL1O Millipore Express
SHC親水性メンブレンフィルターを含む一連の深さのフィルターを通した濾過によって清澄化される。清澄化はまた、遠心分離または当技術分野で公知の孔サイズ0.2μmもしくはそれ以上の任意の酢酸セルロースフィルターを通しての濾過のような、当技術分野で公知の多様な他の標準的な技術によって得ることができる。
【0269】
いくつかの実施形態において、ウイルス産生培養回収物を、産生培養物に存在する任意の高分子量DNAを消化するためにBenzonase(登録商標)によってさらに処理する。いくつかの実施形態において、Benzonase(登録商標)の消化は、例えば最終濃度1~2.5単位/mlのBenzonase(登録商標)を、周囲温度から37℃の範囲の温度で30分間から数時間の期間を含む、当技術分野で公知の標準的な条件下で実施される。
【0270】
rAAV粒子は、1つまたはそれ以上の以下の精製工程を使用して単離または精製することができる:平衡遠心分離;フロースルー陰イオン交換濾過;rAAV粒子を濃縮するための接線流濾過(TFF);アパタイトクロマトグラフィーによるrAAVの捕捉;ヘルパーウイルスの熱不活化;疎水性相互作用クロマトグラフィーによるrAAVの捕捉;サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による緩衝液交換;ナノフィルトレーション;および陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、またはアフィニティクロマトグラフィーによるrAAV捕捉。これらの工程は、単独で、様々な組み合わせで、または異なる順序で使用してもよい。rAAV粒子を精製する方法は、例えばXiao et al.,(1998)Journal of Virology 72:2224~2232頁;米国特許第6,989,264号および第8,137,948号;ならびに国際公開第2010/148143号に見出される。アデノウイルス粒子を精製する方法は、例えば、Bo,H et al.,(2014)Eur.J.Pharm.Sci.67C:119~125頁に見出される。レンチウイルス粒子を精製する方法は、例えばSegura MM,et al.,(2013)Expert Opin Biol Ther.13(7):987~1011頁に見出される。HSV粒子を精製する方法は、例えばGoins,WF et al.,(2014)Herpes Simplex Virus Methods in Molecular Biology 1144:63~79頁に見出される。
【0271】
いくつかの実施形態において、ウイルス粒子は医薬製剤中にある。いくつかの実施形態において、医薬製剤は、薬学的に許容される担体を含む。そのような担体は当技術分野で周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Edition,1035~1038頁および1570~1580頁を参照されたい)。いくつかの実施形態において、本明細書において記述されるウイルス粒子と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物は、眼の注射に適している。そのような薬学的に許容される担体は、滅菌液体、例えば水、および石油、動物、植物、または合成起源の油を含めた油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油等でありうる。食塩水溶液およびデキストロース水溶液、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセロール溶液もまた、特に注射用溶液のための液体担体として使用することができる。医薬組成物はさらに、追加の成分、例えば保存剤、緩衝剤、等張剤、抗酸化剤および安定剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、増粘剤等を含みうる。本明細書において記述される医薬組成物は、単回単位用量または複数回単位用量に包装することができる。組成物は一般的に、無菌的で実質的に等張の溶液として製剤化される。
【0272】
VI.治療方法
本開示のある特定の態様は、例えば上記のような、本開示の遺伝子操作された、天然に存在しないCRISPR-Casシステムをコードする核酸を含む組成物の治療有効量を個体に投与することを含む。
【0273】
いくつかの実施形態において、本開示の態様は、本開示のCasタンパク質と、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む1つまたはそれ以上の核酸とを含む組成物の治療有効量を個体に投与することを含み、第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAは、例えば上記の深部イントロン突然変異を含む突然変異の両端に位置する標的DNA配列の逆鎖にハイブリダイズする。すなわち、本開示の方法、組成物、およびキットのいずれに関しても、Casタンパク質は、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列として、またはポリペプチドとして供給することができる。非制限的な例として、Casタンパク質は、カチオン性脂質媒介送達(例えば、Zuris,J.A.et al.Nat Biotechnol.33:73~80頁を参照されたい)を使用して、1つまたはそれ以上のガイドRNA(例えば、sgRNA)と共に投与することができる。いくつかの実施形態において、Casタンパク質を、例えばCRISPR-Casエフェクター複合体として1つまたはそれ以上のガイドRNAとの複合体として投与してもよい。以下に記述される送達および/または投与方法のいずれも、1つまたはそれ以上のガイドRNAと共に投与されるCasタンパク質の送達のために使用してもよいと認識される。いくつかの実施形態において、Casタンパク質は、上記の自己限定性発現カセットから発現される。
【0274】
いくつかの実施形態において、本開示の遺伝子操作された、天然に存在しないCRISPR-Casシステムをコードする核酸を含む組成物(または本開示のCasタンパク質と本開示の1つまたはそれ以上のガイドRNAとを含む組成物)は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、植え込み、吸入、髄腔内、脳室内、または鼻腔内投与される。
【0275】
いくつかの実施形態において、本開示の遺伝子操作された、天然に存在しないCRISPR-Casシステムをコードする核酸を含む組成物(または本開示のCasタンパク質と本開示の1つまたはそれ以上のガイドRNAとを含む組成物)は、網膜下または硝子体内に投与される。深部イントロン突然変異と関連する眼の疾患のような網膜疾患の遺伝子治療プロトコールは、網膜の細胞への核酸の局所送達を必要とする。これらの疾患における治療標的である細胞は、網膜の光受容細胞または網膜神経感覚上皮の下にあるRPEの細胞のいずれかである。これらの細胞に対する核酸の送達は、網膜とRPEとの間の網膜下腔への注射を必要とする。
【0276】
いくつかの態様において、本発明は、場合により薬学的に許容される賦形剤中に本明細書に記述される任意の核酸を含む組成物を提供する。当技術分野において周知であるように、薬学的に許容される賦形剤は、薬理学的に有効な物質の投与を促進する比較的不活性
な物質であり、液体溶液もしくは懸濁液、乳剤、または使用前に液体に溶解もしくは懸濁するために適した固体剤形として供給することができる。例えば、賦形剤は、形もしくはコンシステンシーを与えることができ、または希釈剤として作用することができる。適した賦形剤には、安定剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変化させるための塩、カプセル化剤、pH緩衝物質、および緩衝剤が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。そのような賦形剤は、過度の毒性を示すことなく投与される、眼に直接送達するために適した任意の薬剤を含む。薬学的に許容される賦形剤には、ソルビトール、様々なTWEEN化合物のいずれか、および水、食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。薬学的に許容される賦形剤には、薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等のような無機酸の塩;ならびに酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等のような有機酸の塩を含めることができる。薬学的に許容される賦形剤の詳しい考察は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub. Co.,N.J.1991)において利用可能である。
【0277】
一般的に、これらの組成物は、網膜下注射によって投与されるように製剤化される。したがって、これらの組成物は、食塩水、リンゲル緩衝塩類溶液(pH7.4)等のような薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせることができる。必要ではないが、組成物は場合により、正確な量を投与するために適した単位投与剤形で供給してもよい。
【0278】
網膜下送達方法
網膜下送達方法は当技術分野において公知である。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、国際公開第2009/105690号を参照されたい。簡単に説明すると、組成物(例えば、上記のウイルス送達または非ウイルス送達を通して送達してもよい、本開示の遺伝子操作された、天然に存在しないCRISPR-Casシステムをコードする核酸)を黄斑および中心窩の網膜下に送達する一般的な方法を、以下の簡単な概要によって例証する。この例は、単に方法の特定の特徴を例証することを意味しており、決して制限的であることを意味しない。
【0279】
一般的に、ベクターは、手術用顕微鏡を使用して直接観察下で眼内(網膜下)に注射される組成物の形態で送達することができる。この技法は、硝子体切除後に、細いカニューレを使用して1つまたはそれ以上の小さい網膜切開部を通してベクター懸濁液の網膜下腔への注射を伴いうる。
【0280】
簡単に説明すると、手術の間を通して、輸注(例えば、食塩水の)によって正常な眼球の体積を維持するために、輸注カニューレを留置して縫合することができる。硝子体切除を、適切な孔径(例えば、20~27ゲージ)のカニューレを使用して実施し、除去される硝子体ゲルの体積を、輸注カニューレから食塩水または他の等張溶液を輸注することによって交換する。硝子体切除は、(1)その皮質(後部硝子体膜)の除去により、カニューレによる網膜の貫通が容易となる;(2)その除去および流体(例えば、食塩水)との交換により、ベクターの眼内注射に適合する空間が作製される、および(3)その制御された除去により、網膜裂傷および計画外の網膜剥離の可能性が低減することから、実施することが都合がよい。
【0281】
いくつかの実施形態において、ベクター組成物は、適切な孔サイズ(例えば27~45ゲージ)のカニューレを利用することによって中心網膜外部の網膜下腔に直接注射され、このようにして網膜下腔にブレブを作製する。他の実施形態において、ベクター組成物の網膜下注射の前に、適切な流体(食塩水またはリンゲル液のような)の少量(例えば、約0.1~約0.5ml)を、中心網膜外の網膜下腔に網膜下注射する。網膜下腔へのこの初回注射により、網膜下腔内に最初の流体ブレブが確立され、最初のブレブの位置で局所
網膜剥離を引き起こす。この最初の流体ブレブにより、網膜下腔へのベクター組成物の標的化送達が促進され(ベクター送達の前に注射平面を定義することにより)、脈絡膜への起こりうるベクター投与、および硝子体腔への注射または逆流の可能性を最小限にすることができる。いくつかの実施形態において、この最初の流体ブレブにさらに、1つまたはそれ以上のベクター組成物および/または1つまたはそれ以上の追加の治療剤を含む流体を、同じまたは追加の細孔(fine bore)カニューレのいずれかによって、これらの流体を最初の流体ブレブに直接投与することによって注射することができる。
【0282】
ベクター組成物および/または最初の少量の流体の眼内投与は、シリンジに取り付けた細孔カニューレ(例えば、27~45ゲージ)を使用して実施することができる。いくつかの実施形態において、このシリンジのプランジャーは、フットペダルを押すことのような、機械的装置によって駆動することができる。細孔カニューレを、強膜切除術を通して硝子体腔を越えて、標的となる網膜の領域(しかし、中心網膜の外部)に従ってそれぞれの対象において予め決定された網膜の部位まで前進させる。直接可視下で、ベクター懸濁液を、自己閉鎖非拡大網膜切除術によって局所網膜剥離を引き起こす神経感覚上皮の下に機械的に注射する。上記のように、ベクター組成物を、中心網膜外部のブレブを作製する網膜下腔に直接注射するか、またはベクターを中心網膜外の最初のブレブに注入して、それを拡大させる(および網膜剥離領域を拡大させる)ことができる。いくつかの実施形態において、ベクター組成物の注射後に、別の流体のブレブへの注射を行う。
【0283】
理論に捉われることを望むものではないが、網膜下注射の速度および位置によって、黄斑、中心窩、および/またはその下のRPE細胞の損傷を引き起こしうる局所剪断力が起こりうる。網膜下注射は剪断力を最小限にするまたは回避する速度で実施することができる。いくつかの実施形態において、ベクター組成物を約15~17分間かけて注射する。いくつかの実施形態において、ベクターを約17~20分間かけて注射する。いくつかの実施形態において、ベクター組成物を約20~22分間かけて注射する。いくつかの実施形態において、ベクター組成物を約35~約65μl/分の速度で注射する。いくつかの実施形態において、ベクター組成物を約35μl/分の速度で注射する。いくつかの実施形態において、ベクター組成物を約40μl/分の速度で注射する。いくつかの実施形態において、ベクター組成物を約45μl/分の速度で注射する。いくつかの実施形態において、ベクター組成物を約50μl/分の速度で注射する。いくつかの実施形態において、ベクター組成物を約55μl/分の速度で注射する。いくつかの実施形態において、ベクター組成物を約60μl/分の速度で注射する。いくつかの実施形態において、ベクター組成物を約65μl/分の速度で注射する。当業者は、ブレブの注射速度および時間が例えば、中心網膜の細胞に近づくために十分な網膜剥離を作製するために必要な、ベクター組成物の体積またはブレブのサイズ、ベクター組成物を送達するために使用されるカニューレのサイズ、および本発明のカニューレの位置を安全に維持する能力によって指示されることを認識するであろう。
【0284】
本発明のいくつかの実施形態において、網膜の網膜下腔に注射される組成物の体積は、約1μl、2μl、3μl、4μl、5μl、6μl、7μl、8μl、9μl、10μl、15μl、20μl、25μl、50μl、75μl、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、もしくは1mL、またはその間の任意の量のいずれか1つより多い。
【0285】
いくつかの実施形態において、方法は、本開示のベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量の眼への投与(例えば、網膜下および/または硝子体内投与によって)を含む。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、9×1012、10×1012、11×1012、15×1012、20×1012、25×1012、30×1012、または50×1012ゲ
ノムコピー/mLの少なくともいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1012~6×1012、6×1012~7×1012、7×1012~8×1012、8×1012~9×1012、9×1012~10×1012、10×1012~11×1012、11×1012~15×1012、15×1012~20×1012、20×1012~25×1012、25×1012~30×1012、30×1012~50×1012、または50×1012~100×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1012~10×1012、10×1012~25×1012、または25×1012~50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×109、6×109、7×109、8×109、9×109、10×109、11×109、15×109、20×109、25×109、30×109、または50×109形質導入単位/mLの少なくともいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×109~6×109、6×109~7×109、7×109~8×109、8×109~9×109、9×109~10×109、10×109~11×109、11×109~15×109、15×109~20×109、20×109~25×109、25×109~30×109、30×109~50×109、または50×109~100×109形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×109~10×109、10×109~15×109、15×109~25×109、または25×109~50×109形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、10×1010、11×1010、15×1010、20×1010、25×1010、30×1010、40×1010、または50×1010感染単位/mLの少なくともいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1010~6×1010、6×1010~7×1010、7×1010~8×1010、8×1010~9×1010、9×1010~10×1010、10×1010~11×1010、11×1010~15×1010、15×1010~20×1010、20×1010~25×1010、25×1010~30×1010、30×1010~40×1010、40×1010~50×1010、または50×1010~100×1010感染単位/mLの少なくともいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1010~10×1010、10×1010~15×1010、15×1010~25×1010、または25×1010~50×1010感染単位/mLの少なくともいずれかである。
【0286】
いくつかの実施形態において、方法は、本開示のベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量の個体(例えば、ヒト)の眼(例えば、網膜下および/または硝子体内投与)への投与を含む。いくつかの実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、約1×108~約1×1013ゲノムコピー/kg体重の少なくともいずれかである。いくつかの実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、約1×108~約1×1013ゲノムコピー/kg体重のいずれかである。
【0287】
1つまたはそれ以上(例えば、2、3、またはそれ以上)のブレブを作製することができる。一般的に、本発明の方法およびシステムによって作製されるブレブまたは複数のブレブの総体積は、眼の流体体積、例えば典型的なヒト対象において約4mlを超えてはならない。それぞれの個々のブレブの総体積は、中心網膜の細胞型を露出するため、および最適な操作のために十分な依存性のブレブを作製するために十分なサイズの網膜剥離を促進するため、少なくとも約0.3ml、または少なくとも約0.5mlでありうる。当業者は、眼の構造に対する損傷を回避するために、本発明の方法およびシステムに従うブレブの作製において、適切な眼内圧を維持しなければならないことを認識する。それぞれの個々のブレブのサイズは、例えば、約0.5~約1.2ml、約0.8~約1.2ml、
約0.9~約1.2ml、約0.9~約1.0ml、約1.0~約2.0ml、約1.0~約3.0mlでありうる。このように、一例において、ベクター組成物懸濁液の全量3mlを注射するために、各約1mlのブレブ3個を確立することができる。組み合わせた全てのブレブの総体積は、例えば、約0.5~約3.0ml、約0.8~約3.0ml、約0.9~約3.0ml、約1.0~約3.0ml、約0.5~約1.5ml、約0.5~約1.2ml、約0.9~約3.0ml、約0.9~約2.0ml、約0.9~約1.0mlでありうる。
【0288】
ブレブの当初の位置の端部の外側の標的網膜(例えば、中心網膜)の領域に安全かつ効率的に形質導入するために、形質導入の標的領域にブレブを再配置するようにブレブを操作してもよい。ブレブの操作は、ブレブの体積によって作製されるブレブの依存性、ブレブを含む眼の再配置、1つまたはそれ以上のブレブを含む眼または複数の眼を有するヒトの頭部の再配置、および/または流体-空気交換によって行うことができる。これは特に、中心網膜が典型的に網膜下注射による剥離に耐えることから、中心網膜に特に適切である。いくつかの実施形態において、流体-空気交換は、ブレブを再配置するために利用され、輸注カニューレからの流体を、例えば網膜の表面上に空気を流れさせることによって、一時的に空気に交換する。空気の体積が、網膜の表面から硝子体腔の流体を押しのけると、硝子体腔内の流体がカニューレから流れ出ることがある。硝子体腔の流体からの圧の一時的な欠如により、ブレブが、眼の依存部分へと移動して引き寄せられる。眼球を適切に配置することによって、網膜下ベクター組成物のブレブを、隣接する領域(例えば、黄斑および/または中心窩)を巻き込むように操作する。一部の例において、ブレブの質量は、流体-空気交換を使用しない場合であっても、それを引き寄せるために十分である。ブレブの所望の位置への移動は、ブレブを眼の中の所望の位置に引き寄せるために、対象の頭部の位置を変更することによってさらに促進することができる。ブレブの所望の形状が達成されると、流体を硝子体腔に戻す。流体は適切な流体、例えば、新鮮な食塩水である。一般的に、網膜下ベクター組成物は、網膜切除に対する網膜復位を行わなくとも、および眼内タンポナーデを行わなくともその場に留まり、網膜は約48時間位内に自然に再接着するであろう。
【0289】
眼の細胞(例えば、黄斑および/または中心窩の、例えばRPEおよび/または光受容細胞)に本開示のベクターを安全かつ有効に形質導入することによって、本発明の方法は、深部イントロン突然変異と関連する眼の障害を有する個体、例えばヒトを治療するために使用することができ、形質導入細胞は、眼の障害を治療するために十分量のCRISPR-Casシステムを産生する。
【0290】
ベクター(いくつかの実施形態において、ウイルス粒子の形状)の有効量を、治療の目的に応じて投与する。例えば、低い百分率の形質導入が所望の治療効果を達成することができる場合、治療の目的は一般的に、形質導入のこのレベルに合致するか、または超えることである。一部の例において、このレベルの形質導入は、標的細胞のわずか約1~5%、いくつかの実施形態において、所望の組織型の細胞の少なくとも約20%、いくつかの実施形態において少なくとも約50%、いくつかの実施形態において少なくとも約80%、いくつかの実施形態において少なくとも約95%、いくつかの実施形態において少なくとも約99%の形質導入によって達成することができる。手引きとして、注射あたりに投与されるウイルス粒子の数は、一般的に1x106~約1x1014個の粒子の間、約1x107~1x1013個の粒子の間、約1x109~1x1012個の粒子の間、または約1x1011個の粒子である。ベクター組成物は、同じ技法の間に、または数日、数週間、数カ月、もしくは数年の間隔を空けて1回または複数回の網膜下注射によって投与してもよい。いくつかの実施形態において、多数のベクターをヒトを治療するために使用してもよい。
【0291】
いくつかの実施形態において、本開示のベクターまたは核酸の有効量の網膜への投与は、投与部位またはその近傍の光受容細胞に形質導入する。いくつかの実施形態において、光受容細胞の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または100%超のいずれかが形質導入される。いくつかの実施形態において、光受容細胞の約5%~約100%、約10%~約50%、約10%~約30%、約25%~約75%、約25%~約50%、または約30%~約50%が形質導入される。形質導入された光受容細胞を同定する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、免疫組織化学または増強緑色蛍光タンパク質のようなマーカーを使用して形質導入を検出することができる。
【0292】
本発明のいくつかの実施形態において、方法は、眼の障害を有する個体、例えば深部イントロン突然変異と関連する眼の障害を有するヒトを治療するために、本開示のベクターまたは核酸の有効量を、哺乳動物の網膜下(例えば、網膜下腔)に投与することを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、光受容細胞において核酸を発現させるために網膜下の1つまたはそれ以上の位置に注射される。いくつかの実施形態において、組成物は、網膜下の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10超の位置のいずれか1つに注射される。
【0293】
いくつかの実施形態において、組成物は、1つ超の位置に同時または連続的に投与される。いくつかの実施形態において、複数回注射はわずか1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間、または24時間の間隔である。いくつかの実施形態において、複数回の注射は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、15日、20日、25日、または30日の間隔である。いくつかの実施形態において、複数回注射は、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、8カ月、10カ月、または11カ月の間隔である。いくつかの実施形態において、複数回の注射は、1年、2年、3年、4年、5年、6年、8年、10年、15年、20年、25年、30年、35年、40年、45年、55年、または60年の間隔である。
【0294】
硝子体内注射方法
一般的な硝子体内注射方法を以下の簡単な概要によって例証する。本実施例は、方法のある特定の特徴を例証することを意味しており、決して制限することを意味していない。硝子体内注射の技法は当技術分野で公知である(例えば、Peyman,G.A.,et
al.(2009)Retina 29(7):875~912頁およびFagan,X.J.and Al-Qureshi,S.(2013)Clin.Experiment.Ophthalmol.41(5):500~7頁を参照されたい)。
【0295】
簡単に説明すると、硝子体内注射の対象に、瞳孔散大、眼の消毒、および麻酔薬の投与によって技法の準備を行う。当技術分野で公知の任意の適した散瞳剤を瞳孔散大のために使用することができる。瞳孔散大が適切であるかを治療前に確認することができる。眼の消毒処置剤、例えばポビドンヨード(BETADINE(登録商標))のようなヨウ化物含有溶液を適用することによって、消毒を行ってもよい。類似の溶液を使用して、眼瞼、まつげ、および他の任意の近傍の組織(例えば、皮膚)を清浄にする。リドカインまたはプロパラカインのような任意の適した麻酔薬を、任意の適した濃度で使用してもよい。麻酔薬は、局所用滴剤、ジェル、またはゼリー、および麻酔薬の結膜下適用を含むがこれらに限定されるわけではない当技術分野で公知の任意の方法によって投与してもよい。
【0296】
注射前に、滅菌眼瞼用検鏡を使用して、領域のまつげをきれいにしてもよい。注射部位にシリンジで印をつけてもよい。注射部位は、患者の水晶体に基づいて選択される。例えば、注射部位は、偽水晶体眼または無水晶体眼の患者では辺縁部から3~3.5mmであり、有水晶体眼の患者では辺縁部から3.5~4mmでありうる。患者は、注射部位と反
対方向を見ていてもよい。
【0297】
いくつかの実施形態において、方法は、本開示のベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量を、眼(例えば、網膜下および/または硝子体内投与によって)に投与することを含む。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、9×1012、10×1012、11×1012、15×1012、20×1012、25×1012、30×1012、または50×1012ゲノムコピー/mLの少なくともいずれかである.いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1012~6×1012、6×1012~7×1012、7×1012~8×1012、8×1012~9×1012、9×1012~10×1012、10×1012~11×1012、11×1012~15×1012、15×1012~20×1012、20×1012~25×1012、25×1012~30×1012、30×1012~50×1012、または50×1012~100×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1012~10×1012、10×1012~25×1012、または25×1012~50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×109、6×109、7×109、8×109、9×109、10×109、11×109、15×109、20×109、25×109、30×109、または50×109形質導入単位/mLの少なくともいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×109~6×109、6×109~7×109、7×109~8×109、8×109~9×109、9×109~10×109、10×109~11×109、11×109~15×109、15×109~20×109、20×109~25×109、25×109~30×109、30×109~50×109、または50×109~100×109形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×109~10×109、10×109~15×109、15×109~25×109、または25×109~50×109形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、10×1010、11×1010、15×1010、20×1010、25×1010、30×1010、40×1010、または50×1010感染単位/mLの少なくともいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1010~6×1010、6×1010~7×1010、7×1010~8×1010、8×1010~9×1010、9×1010~10×1010、10×1010~11×1010、11×1010~15×1010、15×1010~20×1010、20×1010~25×1010、25×1010~30×1010、30×1010~40×1010、40×1010~50×1010、または50×1010~100×1010感染単位/mLの少なくともいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1010~10×1010、10×1010~15×1010、15×1010~25×1010、または25×1010~50×1010感染単位/mLの少なくともいずれかである。
【0298】
いくつかの実施形態において、方法は、本開示のベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量の個体(例えば、ヒト)の眼(例えば、網膜下および/または硝子体内投与)への投与を含む。いくつかの実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、約1×108~約1×1013ゲノムコピー/kg体重の少なくともいずれかである。いくつかの実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、約1×108~約1×1013ゲノムコピー/kg体重のいずれかである。
【0299】
注射の間、針を強膜に垂直に挿入して、眼の中心を指してもよい。針を、先端が、網膜下腔ではなくて硝子体で終わるように挿入してもよい。注射に関して当技術分野で公知の
任意の適した量を使用してもよい。注射後、針を抗生物質のような消毒剤によって処置してもよい。また、過剰量の消毒剤を除去するために眼をすすいでもよい。
【0300】
網膜の構造および核酸送達の有効性を決定する手段
網膜は多数の層を含むことが知られている。網膜の細胞層は、内境界膜、神経線維、神経節細胞、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、光受容体、および網膜色素上皮層を含みうる。硝子体に対して最も近位の層は、内境界膜である。この層は、神経膠細胞の一種であるミュラー細胞を含みうる。神経線維層は、視神経を形成する神経節細胞からの軸索を含みうる。神経節細胞層は、神経節細胞およびアマクリン細胞を含みうる。内網状層は、神経節およびアマクリン細胞の樹状突起と、双極細胞の軸索との間のシナプスを含みうる。内顆粒層はアマクリン、双極、および水平細胞の細胞核を含みうる。外網状層は、水平細胞樹状突起と光受容細胞の突起との間のシナプスを含みうる。外顆粒層は、光受容細胞体を含みうる。外または内境界膜は、ミュラー細胞の先端突起における接着結合およびデスモゾームのような、ならびにこれらの突起と光受容細胞の内部セグメントとの間の細胞接続部を含みうる。光受容体層は、桿錐状体層およびヤコブ膜としても知られ、桿体および椎体を含む光受容細胞を含みうる。硝子体に対して最も遠位の網膜層は、網膜色素上皮(RPE)であり、これは色素顆粒を含む六角形の上皮細胞の層を含みうる。
【0301】
網膜はまた、多くの異なる細胞型を含むことが知られている。網膜ニューロンは、光受容細胞、双極細胞、神経節細胞、アマクリン細胞、および水平細胞を含みうる。光受容細胞は、光に対して感受性である。光受容細胞は、光を感知して、双極細胞および神経節細胞を通して、シグナルを視神経に伝達することによって応答しうる。光受容細胞は、一般的に弱い光の条件で光を感知する桿体細胞と、一般的に色およびより明るい光の認識を感知する椎体細胞とを含みうる。双極細胞は、光受容細胞からの入力を受容して、シナプスを介してアマクリンまたは神経節細胞へと伝達する。神経節細胞は、アマクリン細胞または水平細胞からの情報を受容し得、その軸索は視神経を形成する。水平細胞は、多数の光受容体からの入力を統合し得、光のレベルの調節を助ける。アマクリン細胞は、双極細胞を調節するために役立ち、神経節細胞に入力を提供する介在ニューロンである。網膜の神経膠細胞は、ミュラー細胞、星状膠細胞、および小膠細胞を含みうる。
【0302】
網膜下または硝子体内注射による核酸送達の有効性は、本明細書において記述されるいくつかの基準によってモニターすることができる。いくつかの実施形態において、有効性は、核酸が送達された1つまたはそれ以上の細胞を含む試料における深部イントロン突然変異および/または両端に位置する配列の欠失を検出することによってアッセイされる。欠失は、サザンブロッティング、PCR、qPCR、DNAシークエンシング(例えば、サンガーシークエンシングおよび次世代シークエンシング)、in situハイブリダイゼーション、DNAマイクロアレイ、およびSurveyorヌクレアーゼアッセイ(例えば、Ran,F.A.et al.(2013)Nat.Protoc.8:2281~2308頁を参照されたい)を含むがこれらに限定されるわけではない当技術分野で公知の任意の手段によって検出することができる。例示的な方法を以下の実施例に例証する。
【0303】
いくつかの実施形態において、有効性は機能的にアッセイされる。例えば、本発明の方法を使用する対象の治療の後、対象を、例えば、1つまたはそれ以上の臨床パラメータによって疾患状態の1つまたはそれ以上の兆候または症状の改善、および/または安定化、および/または進行の遅延に関して評価してもよい。そのような試験の例は、当技術分野で公知であり、客観的測定ならびに主観的測定(例えば、対象が報告する)を含む。例えば、対象の視機能に及ぼす治療の有効性を測定するために、以下の1つまたはそれ以上を評価してもよい:対象の主観的な見え方の質または中心視機能の改善(例えば、対象が流
ちょうに読む能力および顔を認識する能力の改善)、対象の眼のモビリティ(例えば、迷路を通り抜けるのに要する時間の減少)、視力(例えば、対象のLogMARスコアの改善)、マイクロ視野計(例えば、対象のdBスコアの改善)、暗順応視野計(例えば、対象のdBスコアの改善)、ファインマトリックスのマッピング(例えば、対象のdBスコアの改善)、ゴルドマン視野計(例えば、暗点領域(すなわち盲点)のサイズの低減およびより小さい視標の解像能の改善)、フリッカー感受性(例えば、ヘルツの改善)、自発蛍光、および電気生理学測定(例えば、ERGの改善)。いくつかの実施形態において、視機能は、対象の視覚モビリティによって測定される。いくつかの実施形態において、視機能は、対象の視力によって測定される。いくつかの実施形態において、視機能は、マイクロ視野計によって測定される。いくつかの実施形態において、視機能は、暗順応視野計によって測定される。いくつかの実施形態において、視機能はERGによって測定される。いくつかの実施形態において、視機能は、対象の主観的な見え方の質によって測定される。
【0304】
進行性の視機能変性が起こる疾患の場合、対象を若年齢で治療すれば、疾患の進行を遅延または停止させるのみならず、後天性の弱視による視機能喪失を改善または予防することができる。弱視には2つの型がある。出生後数カ月まで完全な暗闇に置いた非ヒト霊長類および仔ネコの研究において、動物をその後光に曝露すると、網膜が機能的シグナルを送っているにもかかわらず、機能的に非可逆的盲目である。この盲目は、皮質の神経接続および「教育」が、刺激停止により出生後から発達時に停止しているために起こる。この機能が回復するか否かは不明である。網膜変性疾患の場合、通常の視覚野の回路は、当初、変性により有意な機能障害が引き起こされる時点までは、「学習した」かまたは発達上適切であった。機能障害の眼におけるシグナル伝達という観点での視覚刺激の喪失は、「後天性」または「学習性」の機能障害(「後天性弱視」)を生じ、それによって脳がシグナルを解釈できなくなるか、またはその眼を「使用する」ことができなくなる。これらの「後天性弱視」の場合、弱視の眼の遺伝子治療の結果としての網膜からのシグナル伝達の改善によって、疾患状態の進行の遅延または安定化に加えて、より正常な機能の獲得がさらに起こるか否かは不明である。いくつかの実施形態において、治療されるヒトは年齢30歳未満である。いくつかの実施形態において、治療されるヒトは年齢20歳未満である。いくつかの実施形態において、治療されるヒトは年齢18歳未満である。いくつかの実施形態において、治療されるヒトは年齢15歳未満である。いくつかの実施形態において、治療されるヒトは年齢14歳未満である。いくつかの実施形態において、治療されるヒトは年齢13歳未満である。いくつかの実施形態において、治療されるヒトは年齢12歳未満である。いくつかの実施形態において、治療されるヒトは年齢10歳未満である。いくつかの実施形態において、治療されるヒトは年齢8歳未満である。いくつかの実施形態において、治療されるヒトは年齢6歳未満である。
【0305】
一部の眼の障害では、1つの細胞型の機能の改善が別の機能を改善する「ナース細胞」現象が存在する。例えば、中心網膜のRPEに本発明の核酸を形質導入すると、桿体の機能を改善し、次に改善された桿体機能により椎体機能の改善が起こる。したがって、1つの細胞型の治療によって、別の細胞型の機能の改善が起こりうる。
【0306】
特定のベクターおよび組成物の選択は、個々のヒトの病歴、ならびに治療される状態および個体の特徴を含むがこれらに限定されるわけではない、多数の異なる要因に依存する。そのような特徴の評価および適切な治療レジメンの設計は、最終的には、主治医の責任である。
【0307】
いくつかの実施形態において、治療されるヒトは、遺伝性の眼の障害(例えば、深部イントロン突然変異と関連する)を有するが、まだ臨床徴候または症状を発現していない。いくつかの実施形態において、治療されるヒトは、眼の障害(例えば、深部イントロン突
然変異と関連する)を有する。いくつかの実施形態において、治療されるヒトは、眼の障害(例えば、深部イントロン突然変異と関連する)の1つまたはそれ以上の兆候または症状を発現している。いくつかの実施形態において、深部イントロン突然変異は、治療されるヒトにおいて同定されている。
【0308】
本発明の組成物は、単独で、または眼の障害を治療するための1つもしくは複数の追加の治療剤との併用のいずれかで使用することができる。連続的投与の間の間隔は、少なくとも数分、数時間、または数日(またはあるいはそれ未満)でありうる。
【0309】
いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の追加の治療剤を、網膜下または硝子体に投与してもよい(例えば、硝子体内投与を通して)。追加の治療剤の非制限的な例には、ポリペプチド神経栄養因子(例えば、GDNF、CNTF、BDNF、FGF2、PEDF、EPO)、ポリペプチド抗血管新生因子(例えば、sFlt、アンジオスタチン、エンドスタチン)、抗血管新生核酸(例えば、siRNA、miRNA、リボザイム)、例えばVEGFに対する抗血管新生核酸、抗血管新生モルホリノ、例えばVEGFに対する抗血管新生モルホリノ、抗血管新生抗体、および/または抗体断片(例えば、Fab断片)、例えばVEGFに対する抗血管新生抗体および/または抗体断片が挙げられる。
【0310】
VII.キット
本明細書において記述される組成物、核酸、およびウイルス粒子は、本明細書において記述される本発明の方法の1つにおいて使用するために設計されたキットに含めることができる。
【0311】
本発明の組成物、核酸、およびウイルス粒子を、さらにキットにパッケージしてもよく、キットはさらに使用説明書を含みうる。いくつかの実施形態において、使用説明書は、本明細書に記述される方法の1つに従う説明書を含む。
【0312】
いくつかの実施形態において、キットはさらに、緩衝液および/または薬学的に許容される賦形剤を含む。当技術分野で周知であるように、薬学的に許容される賦形剤は、薬理学的に有効な物質の投与を促進する比較的不活性な物質であり、液体溶液もしくは懸濁液、乳液、または使用前に液体に溶解または懸濁させるために適した固体剤形として供給することができる。例えば、賦形剤は、形状もしくはコンシステンシーを生じることができ、または希釈剤として作用することができる。適した賦形剤には、安定剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変化させるための塩、カプセル化剤、pH緩衝物質、および緩衝剤を含むがこれらに限定されるわけではない。そのような賦形剤は、過度の毒性を起こすことなく投与することができる、眼に直接送達するために適した任意の医薬剤を含みうる。薬学的に許容される賦形剤には、ソルビトール、様々なTWEEN化合物のいずれか、および水、食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。薬学的に許容される賦形剤には、薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等のような無機酸の塩、ならびに酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等のような有機酸の塩を含めることができる。薬学的に許容される賦形剤の詳しい考察は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.,N.J.1991)において利用可能である。
【0313】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、薬学的に許容される担体を含みうる。そのような薬学的に許容される担体は、滅菌液体、例えば水、および石油、動物、植物、または合成起源の油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油等を含む油でありうる。食塩水溶液およびデキストロース水溶液、ポリエチレングリコール(PEG)および
グリセロール溶液もまた、特に注射用溶液のための液体担体として使用することができる。追加の成分、例えば保存剤、緩衝剤、等張剤、抗酸化剤および安定化剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、増粘剤等も同様に使用することができる。本明細書において記述されるキットは、単回単位用量または複数回単位用量に包装することができる。キットの内容物は一般的に、無菌的で実質的に等張の溶液として製剤化される。
【実施例0314】
本発明は、以下の実施例を参照してより十分に理解されるであろう。しかし、以下の実施例は、本発明の範囲を制限すると解釈すべきではない。本明細書において記述される実施例および実施形態は、単に説明目的のためであり、それに照らして様々な変更または変化が当業者に示唆されるが、それらも本出願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれると理解される。
235個の単細胞クローンを同定して、CEP290のc.2991+1655A>G突然変異に関してスクリーニングした。ゲノムDNAを、QuickExtract DNA抽出溶液(Epicentre)を使用して抽出し、GoTaq Hot Star
t Greenマスターミックス(Promega)およびイントロン突然変異の両端に位置するPCRプライマー(配列番号4~5)によって増幅した。PCR産物の増幅は、以下のサイクリングパラメータによって得られた:95℃で2分間を1サイクル;95℃で30秒、60℃で30秒、および72℃で3分間を35サイクル;72℃で15分間を1サイクル。PCR産物を、SnaBI消化およびシークエンシングプライマー(配列番号6)によるサンガーシークエンシングに供した。
細菌型II CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集を、sgRNA標的配列およびプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)によって定義される標的化ゲノム座での二本鎖切断(DSB)の導入によって開始した後、相同性組換え修復(HDR)または非相同末端結合(NHEJ)のいずれかを通してDSBの修復を行った(Jinek,M.et al.(2012)Science 337:816~821頁;Ran,F.A.et al.(2013)Nat.Protoc.8:2281~2308頁)。HDR鋳型の存在下では、CRISPR-Cas9システムを使用して、HDRプロセスを通して標的座で正確かつ定義された遺伝子操作を行うことができる。
標的化ゲノムDNA置換を得るために、sgRNAおよび化膿連鎖球菌Cas9(SpCas9)の両方を発現するプラスミドを、直線状のHDR鋳型と共に293FT細胞にヌクレオフェクションによって導入した。HDR鋳型は、突然変異PAM(c.2991+1666C>G)と共にc.2991+1655A>G突然変異の両端に位置する75bpの相同性アームを含む一本鎖DNAオリゴヌクレオチド(ssODN;配列番号3)であった。突然変異PAMは、細胞においてドナーssODNがCas9によって分解されるのを回避して、その間にCEP290のイントロン26に独自のSnaBI制限部位を導入した。
CEP290のc.2991+1655A>G突然変異を有する細胞を得るために、sgRNA/SpCas9およびssODN同時トランスフェクト細胞から、235個の単細胞クローンを単離してスクリーニングした。ゲノムDNAを抽出して、イントロン突然変異の両端に位置するPCRプライマー(配列番号4~5)によって増幅した。PCR産物を、SnaBI消化およびシークエンシングプライマー(配列番号6)によるサンガーシークエンシングに供した。
野生型、ヘテロ接合、および突然変異体細胞における野生型および突然変異体CEP290 mRNAの発現レベルを、野生型CEP290 mRNA(配列番号7~8)および突然変異体CEP290 mRNA(配列番号9~10)をそれぞれ特異的に検出するプライマーを使用して、逆転写定量的PCR(RT-qPCR)によって測定した。結果を、PPIA mRNA(配列番号31~32)の発現レベルに対して標準化した。