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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031806
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】アルテスナート含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/357 20060101AFI20220215BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61K31/357
A61P33/06
A61P31/10
A61P35/00
A61P33/00
A61P31/12
A61P37/02
A61P29/00
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191932
(22)【出願日】2021-11-26
(62)【分割の表示】P 2018534844の分割
【原出願日】2017-01-13
(31)【優先権主張番号】62/279,368
(32)【優先日】2016-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】201610243279.5
(32)【優先日】2016-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518228910
【氏名又は名称】ザオ,ミン
【氏名又は名称原語表記】ZHAO,Ming
【住所又は居所原語表記】2426 Abbey Drive Darien,IL 60561-6720 United States
(71)【出願人】
【識別番号】518228921
【氏名又は名称】ジョウ,リ-ミン
【氏名又は名称原語表記】ZHOU,Li-Ming
【住所又は居所原語表記】2426 Abbey Drive Darien,IL 60561-6720 United States
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,リ-ミン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アルテスナートを含有する医薬組成物、組成物の作製工程、及び薬剤としての組成物の使用を提供する。
【解決手段】有機緩衝溶液に溶解されたアルテスナートを含む水性組成物であって、有機塩基は、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、1,2-ジアミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、及び4(5)-メチルイミダゾールから成る群から選択され、酸は、酢酸、クエン酸、コハク酸、燐酸、塩酸、及び硫酸から選択され、前記有機塩基の濃度は、0.1mol/L~0.5mol/Lの範囲内であり、前記水性組成物のpHは、7.2~8.0の範囲内である、水性組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機緩衝溶液に溶解されたアルテスナートを含む水性組成物であって、
有機塩基は、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、1,2-ジアミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、及び4(5)-メチルイミダゾールから成る群から選択され、
酸は、酢酸、クエン酸、コハク酸、燐酸、塩酸、及び硫酸から選択され、
前記有機塩基の濃度は、0.1mol/L~0.5mol/Lの範囲内であり、
前記水性組成物のpHは、7.2~8.0の範囲内である、
水性組成物。
【請求項2】
アルテスナートと前記有機塩基のモル比が、1:1~1:15の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アルテスナートの濃度は、0.01~20重量/体積%の範囲内である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記酸は、酢酸又は燐酸から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物のpHは、7.5である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は、0.3~0.35mol/Lである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
アルテスナートの濃度は、0.1~2重量/体積%の範囲内である、請求項1に記載の組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年1月15日に提出された米国仮出願第62/279,368号と、2016年4月19日に提出された中国出願第201610243279.5号に対する優先権を主張し、全文を参考として本明細書に組み込む。
本開示は、アルテスナートを含有する医薬組成物、組成物の作製工程、及び薬剤としての組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルテスナートは、1972年に植物のクソニンジン(チンハオス)から分離され、ジヒドロアルテミシニンと塩基媒体中の琥珀酸無水物との反応によって合成される有効な抗マラリア成分、アルテミシニンの誘導体である(CN85100781)。アルテスナートはマラリアの治療に広く使用されており、重篤な複数の薬剤耐性マラリアの治療に特に有効である。より重要なことに、アルテスナートは、静脈内から投与可能な唯一のアルテミシニン類似物であり、世界保健機関(WHO)のガイドラインは、重篤なマラリアの第1選択療法として静脈内アルテスナートを推奨している(世界保健機関、マラリア治療ガイドライン;2010年第2版)。さらに、最近の研究が示すように、アルテスナートは、抗マラリア以外に、抗癌、抗ウィルス、炎症性及び免疫性疾病及びその他の寄生虫関連感染(たとえば、日本住血吸虫及びトキソプラズマ)の治療、抗真菌と幅広い生物活性を有する(Hoら、Pharmacol Ther、2014、142(1):126-139)。
【0003】
Liuは、マラリア治療のためのアルテスナートの使用について記載している(アルテスナート研究開発、Lijiang Press、2010年7月1日、3-20)。Efferthらは、国立衛生研究所の部門治療プログラムの55癌細胞株、及びドキソルビシン、ビンクリスチン、メトトレキサート、及びヒドロキシウレアに耐性のある癌細胞に対するアルテスナートの抗癌作用について報告している(Int J Oncol、2001、18、276-273)。Hoらは、癌、ウィルス、真菌感染、その他の寄生虫感染、及び炎症性障害など、マラリア以外の疾病におけるアルテミシニンの使用について広範に検討している(Phamacol Ther、2014、142、(1):126-39)。Yuらは、アルテスナートを用いた狼瘡の治療について記載している(Chinese J Derm、1997、30、51~53)。
【0004】
Sunらは、アルテミシニンが、隔離されたラットの心筋層の局所貧血/再灌流損傷に及ぼす効果を記載している(Zhongguo Zhong Yao Za Zhi、2007、32、15:1547-51 )。Zhangらは、ビノレルビン及びシスプラチンの化学療法と組み合わせたアルテスナートの使用による進行非小細胞肺癌患者の治療について記載している(J Chin Integr Med、2008、6(2):134)。Liらは、アルテスナートを使用した加熱殺菌大腸菌攻撃に対する敗血症モデルマウスの治療について報告している(Int Immnopharmacol、2008、8、379-389)。Liuらは、重篤なマラリア及び敗血症又はマラリア感染によるその他の臓器損傷の治療でのアルテスナートの使用について記載している(J Trop Med、2009、7、655-656)。WO2012168450は、外傷性大量出血、脳卒中、及び火傷損傷によって生じた臓器損傷を保護する、心筋梗塞の梗塞サイズを低減する、又は梗塞発生後の損傷度を低減するというアルテスナート及びその類似物の能力について記載している。WO2014090306は、急性及び慢性腎臓損傷、尿毒症の治療や虚血再灌流を引き起こす手術(腎臓移植、腎臓及び膵臓移植、冠状動脈バイパスグラフト)に使用されるアルテスナートについて記載している。
【0005】
Reidらは、左心室退化を抑止するアルテスナートの能力が、横断大動脈狭窄の成熟マウスの心機能を向上させることを記載している(J Mol Cell Cardiol、2016、97:106-13)。Liらは、アルテミシニン及び類似体を使用して、高度GABAシグナリングによる膵臓のα細胞をβ細胞に変換し、インシュリン生産を回復することを記載している(Cell、2017、167、1-15)。
【0006】
WO2010/0137246は、喘息及び呼吸障害症候群の治療でのアルテスナートの使用について記載している。CN20151513816は、特発性肺繊維症の治療でのアルテスナートの使用について記載している。Laiらは、アルテスナートを使用した、複数の発病要因によって生じる肝繊維症の緩和について記載している(Eur J Pharmacol、2015、765、234-241)。本明細書に記載されるすべての引例は引用により組み込む。
【0007】
アルテスナートはアセトン及びメタノールなどの有機溶媒に溶けやすく、水にはわずかに溶ける。いったん5%重炭酸ナトリウム溶液に配合されると水溶性となり、本配合物は非経口薬としてのみ30年以上病院で使用されてきた。多くの研究から判明したように、アルテスナートは基本的な酸性状態下で不安定である。また、水分や熱によって劣化しやすい(Agnihotri Jら、J Pharmacy Res、2013、6:117-122)。したがって、アルテスナート注射液は、使用直前に作製しなければならない。重炭酸ナトリウム配合物は、製造業者(中国、広西、Guilin Pharmaceuticals)によって指示されるような2ステップの調製を要する。60mgの単位投与量で、第1のステップでは、0.6mL又は1mLの5%重炭酸ナトリウム(それぞれ2.3当量又は3.8当量)をアルテスナート粉末に添加して、数分間激しく混合することによってアルテスナートを溶解させて透明溶液を得る。次の第2のステップでは、5.4mL又は5mLの5%グルコース又は生理食塩液を60mg/6mLの最終濃度まで希釈する。5%炭酸ナトリウム溶液の投入時、溶解によって二酸化炭素の泡が多数発生し、薬剤粉末と溶出溶媒との接触が低下して、完全な溶解に必要な時間を長引かせる。また、発泡によって生じる濁りのせいで、アルテスナートが完全に溶解したか否かを判定するのが非常に困難である。この方法は時間がかかるうえ、複雑である。この溶液では、アルテスナートは10分内に劣化し始め、沈降は2~3時間以内に始まる(CN104414977)。したがって、水溶液中のアルテスナートの溶解性を向上し、安定性を高める新たな非経口配合物が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
第1の側面では、組成物はアルテスナート及び有機塩基を含む。
【0009】
第2の側面では、組成物はアルテスナートと有機塩基を含み、有機塩基は5~8員環状化合物であり、環要素は個々に炭素、窒素、酸素、硫黄から選択され、少なくとも1つの環要素は窒素であり、
環は0、1、2、又は3の二重結合を含み、
環はR1aから個々に選択されるk個の置換基によって置換され、kは0、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、2以上の置換基R1aは個別に選択され、
1aは水素、ハロゲン、シアノ、アジド、ニトロ、SCN、非置換又は置換のアルキル、非置換又は置換のアルケニル、非置換又は置換のアルキニル、非置換又は置換の炭素環、非置換又は置換のC6-12アリル、非置換又は置換の3~12員複素環、及び非置換又は置換の5~12員ヘテロアリールから成る群から選択され、又はR1aは結合する1つ又は複数の原子と化合されて、非置換又は置換のC3-12シクロアルキル、非置換又は置換の3~12員複素環、非置換又は置換のC6-12アリル、又は非置換又は置換の5~12員ヘテロアリールを形成することができる。
【0010】
第3の側面では、組成物の作製工程は、アルテスナートを提供することと、有機塩基を含む溶液を提供することと、溶液をアルテスナートに添加して組成物を得ることとを含む。
【0011】
第4の側面では、本開示は治療方法を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本願のすべての文言は、別に明確に定義されない限り、当業者によって理解される一般的な意味を有する。
【0013】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上別に明確に示されない限り、複数を含む。
【0014】
別に指定されない限り、本開示のすべてのアリル、シクロアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリル基は、それぞれの定義で説明されるように置換することができる。たとえば、ベンジルなどのアリルアルキル基のアリル部分は、「アリル」という用語の定義に記載されるように置換することができる。
【0015】
本明細書で使用されるとき、「アルコキシ」という文言は、酸素原子を通じて親分子部分に結合されるC-C12、好ましくはC-Cアルキル基を指す。アルコキシ基の代表例はメトキシ(CHO)、エトキシ(CHCHO)、及びt-プトキシ((CHCO)であるが、それらに限定されない。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」という文言は、飽和炭素の1つから水素を除去することによって直鎖又は分鎖飽和炭化水素から得られる基を指す。アルキル基は好ましくは1~10炭素原子、より好ましくは1~6炭素原子を含む。アルキル基の代表例はメチル、エチル、イソプロピル、及びt-ブチルであるが、それらに限定されない。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「アリル」という文言は、芳香環から水素原子を除去することによってC-C12、好ましくはC-C10芳香炭素環から得られる基を指す、アリル基は単環、二環、又は多環とすることができる。アリル基の好適な例はフェニル基とナフチル基である。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「シアノ」という文言はCNを指す。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキル」という文言は、飽和炭素環から水素原子を除去することによって、好ましくは3~8、より好ましくは3~6の炭素原子を有する単環飽和炭素環から得られる基を指す。シクロアルキル基の代表例はシクロプロピル、シクロロペンチル、及びシクロヘキシルであるが、それらに限定されない。シクロアルキル基が環に1以上の二重結合を含むが芳香性ではないとき、「シクロアルケニル」基を形成する。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「ハロ」及び「ハロゲン」という文言は、F、Cl、Br又はIを指す。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「ハロアルキル」という文言は、少なくとも1のハロゲン原子によって置換されるC-C10、好ましくはC-C、より好ましくはC-Cアルキル基を指す。ハロアルキル基は、すべての水素原子がハロゲンによって置換されるアルキル基とすることができる。ハロアルキルの代表例はトリフルオロメチル(CF)、1-クロロエチル(ClCHCH)、及び2,2,2-トリフルオロエチル(CFCH)であるが、それらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロキシルアルキル」という文言は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換される上述のアルキル基を指す。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロアリール」という文言は、芳香環の窒素、酸素、及び硫黄から個々に選択される1以上、好ましくは1~3のヘテロ原子を含む5~10員単環又は二環芳香族基を指す。当業者にとって周知なように、ヘテロアリール環は、すべての炭素同等物よりも芳香族の特徴が少ない。よって、本発明の目的上、ヘテロアリール基は、ある程度の芳香族特徴を備えるだけでよい。ヘテロアリール基の例はピリジル、ピリダニジル、ピリミジル、ピラジル、トリアニジル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾジル、ピリミジニル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾジル、インドキシル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾオキサゾリニル、ベンドチアゾール、及びベンゾチエニルなどであるが、それらに限定されない。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクリル」という文言は、非芳香環の窒素、酸素、及び硫黄から個々に選択される1以上、好ましくは1~3のヘテロ原子を含む3~10員単環又は二環非芳香族基を指す。本開示のヘテロシクリル基は、基内の炭素原子又は窒素原子を通じて親分子部分に結合することができる。ヘテロシクリル基は飽和でも不飽和でもよく、たとえば、環に1以上の二重結合を含む。ヘテロシクリル基の例はモリホリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、チオモリホリニル、インドリニルなどであるが、それらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」という文言はOHを指す。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「ニトロ」という文言はNOを指す。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「置換」という文言は、1、2、又は3以上の水素原子の個別の置き換えを指し、置換基は、-F、-Cl、-Br、-I、-OH、保護ハイドロキシ、-NO、-CN、-NH、N、保護アミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、オキソ、-ハロ-C-C12-アルキル、-ハロ-C-C12-アルケニル、-ハロ-C-C12-アルキニル、-ハロ-C-C12-シクロアルキル、-NH-アルキル、-NH-アルケニル、-NH-アルキニル、-NH-シクロアルキル、-NH-アリル、-NH-ヘテロアリール、-NH-ヘテロシクロアルキル、-ジアルキルアミノ、-ジアリルアミノ、-ジヘテロアリールアミン、-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル、-O-シクロアルキル、-O-アリル、-O-ヘテロアリール、-O-ヘテロシクロアルキル、-C(O)-アルキル、-C(O)-アルケニル、-C(O)-アルキニル、-C(O)-シクロアルキル、-C(O)-アリル、-C(O)-ヘテロアリール、-C(O)-ヘテロシクロアルキル、-CONH、-CONH-アルキル、-CONH-アルケニル、-CONH-アルキニル、-CONH-シクロアルキル、-CONH-アリル、-CONH-ヘテロアリール、-CONH-ヘテロシクロアルキル、-OCO-アルキル、-OCO-アルケニル、-OCO-アルキニル、-OCO-シクロアルキル、-OCO-アリル、-OCO-ヘテロアリール、-OCO-ヘテロシクロアルキル、-OCONH、-OCONH-アルキル、-OCONH-アルケニル、-OCONH-アルキニル、-OCONH-シクロアルキル、-OCONH-アリル、-OCONH-ヘテロアリール、-OCONH-ヘテロシクロアルキル、-NHC(O)-アルキル、-NHC(O)-アルケニル、-NHC(O)-アルキニル、-NHC(O)-シクロアルキル、-NHC(O)-アリル、-NHC(O)-ヘテロアリール、-NHC(O)-ヘテロシクロアルキル、-NHCO-アルキル、-NHCO-アルケニル、-NHCO-アルキニル、-NHCO-シクロアルキル、-NHCO-アリル、-NHCO-ヘテロアリール、-NHCO-ヘテロシクロアルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NH-アルキル、-NHC(O)NH-アルケニル、-NHC(O)NH-アルキニル、-NHC(O)NH-シクロアルキル、-NHC(O)NH-アリル、-NHC(O)NH-ヘテロアリール、-NHC(O)NH-ヘテロシクロアルキル、NHC(S)NH、-NHC(S)NH-アルキル、-NHC(S)NH-アルケニル、-NHC(S)NH-アルキニル、-NHC(S)NH-シクロアルキル、-NHC(S)NH-アリル、-NHC(S)NH-ヘテロアリール、-NHC(S)NH-ヘテロシクロアルキル、-NHC(NH)NH、-NHC(NH)NH-アルキル、-NHC(NH)NH-アルケニル、-NHC(NH)NH-アルキニル、-NHC(NH)NH-シクロアルキル、-NHC(NH)NH-アリル、-NHC(NH)NH-ヘテロアリール、-NHC(NH)NH-ヘテロシクロアルキル、-NHC(NH)-アルキル、-NHC(NH)-アルケニル、-NHC(NH)-アルキニル、-NHC(NH)-シクロアルキル、-NHC(NH)-アリル、-NHC(NH)-ヘテロアリール、-NHC(NH)-ヘテロシクロアルキル、-C(NH)NH-アルキル、-C(NH)NH-アルケニル、-C(NH)NH-アルキニル、-C(NH)NH-シクロアルキル、-C(NH)NH-アリル、-C(NH)NH-ヘテロアリール、-C(NH)NH-ヘテロシクロアルキル、-S(O)-アルキル、-S(O)-アルケニル、-S(O)-アルキニル、-S(O)-シクロアルキル、-S(O)-アリル、-S(O)-ヘテロアリール、-S(O)-ヘテロシクロアルキル-SONH、-SONH-アルキル、-SONH-アルケニル、-SONH-アルキニル、-SONH-シクロアルキル、-SONH-アリル、-SONH-ヘテロアリール、-SONH-ヘテロシクロアルキル、-NHSO-アルキル、-NHSO-アルケニル、-NHSO-アルキニル、-NHSO-シクロアルキル、-NHSO-アリル、-NHSO-ヘテロアリール、-NHSO-ヘテロシクロアルキル、-CHNH、-CHSOCH、-アリル、-アリルアルキル、-ヘテロアリール、-ヘテロアリールアルキル、-ヘテロシクロアルキル、-シクロアルキル、ポリアルコキシアルキル、ポリアルコキシ、-メトキシメトキシ、-メトキシエトキシ、-SH、-S-アルキル、-S-アルケニル、-S-アルキニル、-S-シクロアルキル、-S-アリル、-S-ヘテロアリール、-S-ヘテロシクロアルキル、メチルチオメチル、又は-L’-R’、ただし、L’はC1-Cアルキレン、C-Cアルケニレン、又はC-Cアルキニレンであり、及びR’はアリル、ヘテロアリール、複素環、C-C12シクロアルキル、又はC-C12シクロアルケニルを含むがそれらに限定されない。アリル、ヘテロアリール、アルキルなどもさらに置換することができると理解される。場合によっては、置換部分の各置換基は、任意に1以上の基でさらに置換され、各基は個々に-F、-Cl、-Br、-I、-OH、-NO、-CN、又は-NHから選択される。
【0028】
たとえば、アルキル、アルケニル、「シクロアルキル」、「アリル」、「ヘテロシクリル」、又は「ヘテロアリール」などのどの基も、「任意に置換される」と言われる場合、特に定義されない限り、置換基が当業者にとって既知な結合原則に反しないことを条件として、基がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハイドロキシ、オキソ、アシル、シアノ、ニトロ、及びアミノ基から個々に選択される1~5、好ましくは1~3置換基によって置換される又はされないことを意味する。「任意に置換される」という節が基のリストの前で使用されるとき、列挙される各基を任意に置換できることを意味する。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「アルテスナート」という文言は、アルテスナートの個別の鏡像体をすべて包含する。その文言は、単独の鏡像体もしくは鏡像体のラセミ又は非ラセミ混合物を指すことができる。「アルテスナート」という文言は、アルテスナートの多形体と水和物も含む。「アルテスナート」という文言は、アルテスナートの塩とエステルも含む。塩の1例はナトリウム塩である。「アルテスナート」という文言は、アルテスナートのプロドラッグと、上記プロドラッグの鏡像体、ラセミ混合物、非ラセミ混合物、多形体、水和物、塩、及びエステルも含む。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「薬学上有効量」という文言は、有意な患者の利益、たとえば、ウィルス量の持続的な低減を示すのに十分な各有効成分の総量を指す。単独で投与される個々の有効成分に適用されるとき、この文言はその成分のみの量を示す。組み合わせに適用されるとき、この文言は、連続的にせよ同時にせよ組み合わせて投与されて治療効果をもたらす有効成分の総合量を指す。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「薬学上許容可能な」という文言は、正当な医学的判断の範囲内で、患者の組織との接触使用に適し、過剰な毒性、炎症、アレルギー応答、もしくはその他の問題又は合併症を起こさずに、妥当な利益/リスク比に応じて使用目的にとって有効である、化合物、材料、組成物、及び/又は投薬量を指す。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「緩衝剤」という文言は、薬学的調製のpHを安定させる薬学上許容可能な賦形剤を指す。適切な緩衝剤は当該技術において周知であり、文献で発見することができる。好適な薬学上許容可能な緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤、グリシン緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、琥珀酸緩衝剤、アセテート緩衝剤、アンモニウム緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝剤(トリス)、及び燐酸塩緩衝剤などであるがそれらに限定されない。好適な緩衝剤は酢酸、琥珀酸(20~50mM)、及び燐酸(20~50mM)を含む。最も好適な緩衝剤はクエン酸塩、燐酸塩、L-ヒスチジン、又はL-ヒスチジンとL-ヒスチジンヒドロクロリドの混合物を含む。その他の好適な緩衝剤はアセテート緩衝剤、L-アルギニン緩衝剤、L-リシン緩衝剤、及びL-グリシン緩衝剤である。使用される緩衝剤に関係なく、pHは当該技術において既知な酸又は塩基、たとえば、塩酸、酢酸、燐酸、硫酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、及び重炭酸カリウムを使用して調節することができる。
【0033】
「対象」という文言はヒトとその他の哺乳動物の両方を含む。
【0034】
「治療」という文言は、(i)疾病、障害、及び/又は症状に罹患しやすいが、まだそれと診断されていない患者において疾病、障害、又は症状が発生するのを予防すること、(ii)疾病、障害、又は症状を抑制する、すなわち、発症を抑止すること、(iii)疾病、障害、又は症状を緩和する、すなわち、疾病、障害、及び/又は症状を軽減させることを指す。
【0035】
組成物
組成物I
一実施形態では、組成物は、アルテスナート(スキーム1)及び有機塩基を含む。
【化1】
【0036】
いくつかの実施形態では、組成物は、アルテスナートと式(I)の有機塩基とを含む。
【化2】
、R、及びRは個々に、非存在、水素、非置換又は置換のアルキル、非置換又は置換のアルケニル、非置換又は置換のアルキニル、非置換又は置換の炭素環、非置換又は置換のC6-12アリル、非置換又は置換の3~12員複素環、及び非置換又は置換5~12員ヘテロアリールから成る群から選択され、又はR及びRは結合する1つ又は複数の原子と化合されて、非置換又は置換のC3-12シクロアルキル、非置換又は置換の3~12員複素環、非置換又は置換のC12アリル、又は非置換又は置換の5~12員ヘテロアリールを形成することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、Rが水素である。いくつかの実施形態では、R及びRが水素である。
【0038】
いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシル、チオール、カルボキシル、カルボキシレート、カルバモイル、エステル、及びアミンから成る群から選択される要素で置換されるC1-6アルキルである。
【0039】
いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシル基によって置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの2つはヒドロキシル基で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRはヒドロキシル基で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはヒドロキシアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも2つはヒドロキシアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはC1-6ヒドロキシアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも2つはC1-6ヒドロキシアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRはC1-6ヒドロキシアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは-(CHOHであり、qは1~6の整数である。一実施形態では、qは2である。いくつかの実施形態では、qは3である。いくつかの実施形態では、R、R、及びRは-(CHOHである。いくつかの実施形態では、qは2である。いくつかの実施形態では、qは3である。
【0040】
いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはカルボキシル基で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの2つはカルボキシル基で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRはカルボキシル基で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはカルボキシレート基で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの2つはカルボキシレート基で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRはカルボキシレート基で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRは個々に-(CHCOOHである。nは1~6の整数である。いくつかの実施形態では、nは1である。Mはカチオンである。いくつかの実施形態では、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウムである。いくつかの実施形態では、Mはナトリウムである。いくつかの実施形態では、Mはカリウムである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは-(CHCOONaである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは-CHCOONaである。
【0041】
いくつかの実施形態では、R、R、及びRは個々に、水素、トリス(ヒドロキシアルキル)メチル、及び-(CHCOOHから成る群から選択される。
【0042】
いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはトリス(ヒドロキシアルキル)アルキル、トリス(ヒドロキシC1-6アルキル)C1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、Rはトリス(ヒドロキシアルキル)アルキルである。いくつかの実施形態では、Rはトリス(ヒドロキシルC1-6アルキル)C1-6アルキルである。R及びRは水素である。いくつかの実施形態では、Rはトリス(ヒドロキシルC1-2アルキル)C1-2アルキルである。いくつかの実施形態では、Rはトリス(ヒドロキシメチル)メチルである。R及びRは水素である。
【0043】
いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの1つのみはトリス(ヒドロキシアルキル)メチルである。いくつかの実施形態では、R及びRは水素である。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはトリス(ヒドロキシC1-6アルキル)メチルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはトリス(ヒドロキシC1-2アルキル)メチルである。
【0044】
いくつかの実施形態では、Rはトリス(ヒドロキシC1-6アルキル)メチルであり、R及びRはヒドロキシルアルキルである。いくつかの実施形態では、Rはトリス(ヒドロキシC1-6アルキル)メチルであり、R及びRはヒドロキシルアルキルである。いくつかの実施形態では、Rはトリス(ヒドロキシメチル)メチルである。R及びRはヒドロキシルエチルである。
【0045】
いくつかの実施形態では、有機塩基は、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、グリシンナトリウム、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4(5)-メチルイミダゾール、及び1,2-ジアミノエタンから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、有機塩基はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン誘導体である。
【0046】
いくつかの実施形態では、有機塩基は2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1、3-ジオール、グリシンナトリウム、リシンナトリウム、ヒスチジンナトリウム及びアルギニンナトリウムから成る群から選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、アルテスナートと有機塩基のモル比は約1:0.25~約1:15の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートと有機塩基のモル比は約1:0.5~約1:15の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートと有機塩基のモル比は約1:1~約1:15の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートと有機塩基のモル比は約1:1.5~約1:11の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートと有機塩基のモル比は約1:4~約1:6の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートと有機塩基のモル比は約1:1~約1:2の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートと有機塩基のモル比は約1:5である。いくつかの実施形態では、有機塩基はイミダゾール又はその誘導体であり、アルテスナートとイミダゾール又はその誘導体のモル比は約1:1.5~約1:2である。いくつかの実施形態では、有機塩基はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)又はその誘導体であり、アルテスナートとトリス又はその誘導体のモル比は約1:1.5~約1:2である。いくつかの実施形態では、有機塩基はトリエタノールアミン又はその誘導体であり、アルテスナートとトリエタノールアミン又はその誘導体のモル比は約1:4~約1:6である。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物はアルテスナート、有機塩基、及び水溶液を含む。有機塩基は緩衝剤として作用する。いくつかの実施形態では、アルテスナートは重量/体積で約0.01%~約20%の範囲内である。いくつかの実施形態では、水溶液は塩化ナトリウム溶液である。いくつかの実施形態では、水溶液は生理食塩液である。いくつかの実施形態では、塩化ナトリウム溶液は約0.9重量%である。いくつかの実施形態では、組成物は約5%グルコース溶液をさらに含む。いくつかの実施形態では、有機塩基の濃度は約0.1~約0.8、好ましくは約0.2~約0.4M、より好ましくは約0.3~約0.35Mの範囲内である。本明細書に記載される溶液のpHは約7.5~約9.0、好ましくは約8.0~約8.5、より好ましくは約8.0±0.2の範囲内である。
【0049】
いくつかの実施形態では、組成物はアルテスナート、有機塩基、及びグルコース溶液を含む。いくつかの実施形態では、グルコース溶液は重量/体積で約5%である。
【0050】
いくつかの実施形態では、組成物は水溶液中でアルテスナートとトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.1~約0.8Mmol/Lの範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートとトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのモル比は約1:2~約1:15の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートとトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのモル比は約1:2~約1:12の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートの濃度は約10mg/mL~約20mg/Lである。
【0051】
いくつかの実施形態では、組成物は約0.9%塩化ナトリウム溶液中にアルテスナートとトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む。いくつかの実施形態では、アルテスナートの濃度は約10mg/mL~約20mg/Lである。
【0052】
いくつかの実施形態では、組成物は水溶液中にアルテスナート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及び燐酸を含む。いくつかの実施形態では、組成物は水溶液中にアルテスナート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及び酢酸を含む。いくつかの実施形態では、アルテスナートの濃度は約10mg/mL~約20mg/Lである。いくつかの実施形態では、組成物は約7.2~約8.0±0.2の範囲のpHを有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、組成物は緩衝剤を含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アンモニウム、ヒスチジン、クエン酸塩、琥珀酸、アセテート、燐酸塩、グリシン、アルギニン、及びリシンから成る群から選択される。
【0054】
いくつかの実施形態では、組成物は燐酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は約7.2~約8の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態では、組成物は約7.2~約7.8の範囲のpHを有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、組成物は、第1の治療薬であるアルテスナート、有機塩基、第2の治療薬を含む。第2の治療薬は任意の適切な治療薬とすることができる。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、ピロナリジン、メフロキン、ピペラキン、プリマキン、アモジアキン、スルファドシキン-ピリメサミン、及びルメファントリンなどの他の抗マラリア薬である。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は抗癌薬である。治療効果を得るため、任意の適切な抗癌薬を使用することができる。
【0056】
組成物II
本開示は、アルテスナート及び有機塩基を含む組成物を提供する。有機塩基は5~8員環状化合物であり、環要素は個々に炭素、窒素、酸素、硫黄から選択され、少なくとも1つの環要素は窒素である。環は0、1、2、又は3の二重結合を含む。環はR1aから個々に選択されるk個の置換基によって置換され、kは0、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、2以上の置換基R1aは個別に選択される。
【0057】
1aは水素、ハロゲン、シアノ、アジド、ニトロ、SCN、非置換又は置換のアルキル、非置換又は置換のアルケニル、非置換又は置換のアルキニル、非置換又は置換の炭素環、非置換又は置換のC6-12アリル、非置換又は置換の3~12員複素環、及び非置換又は置換の5~12員ヘテロアリールから成る群から選択され、R1aは結合する1つ又は複数の原子と化合されて、非置換又は置換のC3-12シクロアルキル、非置換又は置換の3~12員複素環、非置換又は置換のC6-12アリル、又は非置換又は置換の5~12員ヘテロアリールを形成することができる。
【0058】
本開示は、アルテスナートと式(II)の有機塩基とを含む組成物を提供する。
【化3】
、X、X、及びXは個々に、炭素、窒素、酸素、及び硫黄から成る群から選択される。環は0、1、または2の二重結合を含む。Rは非存在、水素、非置換又は置換のアルキル、非置換又は置換のアルケニル、非置換又は置換のアルキニル、非置換又は置換の炭素環、非置換又は置換のC6-12アリル、非置換又は置換の3~12員複素環、及び非置換又は置換の5~12員ヘテロアリールから成る群から選択される。R、R、R、及びRは個々に、非存在、水素、ハロゲン、シアノ、アジド、ニトロ、SCN、非置換又は置換のアルキル、非置換又は置換のアルケニル、非置換又は置換のアルキニル、非置換又は置換の炭素環、非置換又は置換のC6-12アリル、非置換又は置換の3~12員複素環、及び非置換又は置換の5~12員ヘテロアリールから成る群から選択される。
【0059】
及びR、R及びR、R及びR、R及びR、又はR及びRは個々に、結合する1つ又は複数の原子と化合されて、非置換又は置換のC3-12シクロアルキル、非置換又は置換の3~12員複素環、非置換又は置換のC6-12アリル、又は非置換又は置換の5~12員ヘテロアリールを形成することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、環は2つの二重結合を含む。いくつかの実施形態では、X、X、X、及びXの少なくとも3つは炭素である。
【0061】
いくつかの実施形態では、Rは水素である。いくつかの実施形態では、Rは存在しない。
【0062】
いくつかの実施形態では、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはメチルである。
【0063】
いくつかの実施形態では、有機塩基は式(III)によって表される。
【化4】
は水素、非置換又は置換のアルキル、非置換又は置換のアルケニル、非置換又は置換のアルキニル、非置換又は置換の炭素環、非置換又は置換のC6-12アリル、非置換又は置換の3~12員複素環、及び非置換又は置換の5~12員ヘテロアリールから成る群から選択される。R、R、及びRは、非存在、水素、ハロゲン、シアノ、アジド、ニトロ、SCN、非置換又は置換のアルキル、非置換又は置換のアルケニル、非置換又は置換のアルキニル、非置換又は置換の炭素環、非置換又は置換のC6-12アリル、非置換又は置換の3~12員複素環、及び非置換又は置換の5~12員ヘテロアリールから成る群から選択される。
【0064】
及びR、R及びR、又はR及びRは個々に1つ又は複数の原子と化合させて、非置換又は置換のC3-12シクロアルキル、非置換又は置換の3~12員複素環、非置換又は置換のC6-12アリル、又は非置換又は置換の5~12員ヘテロアリールを形成することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、Rは水素である。
【0066】
いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシル、チオール、カルボキシル、カルバモイル、エステル、アミン、ハロゲン、ニトロ、及びシアノから成る群から選択される要素で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはC1-20非置換又は置換のアルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、ブチル、シクロブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、及びシクロヘキシルから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはメチルである。
【0067】
いくつかの実施形態では、有機塩基はイミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、及び4(5)-メチルイミダゾールから成る群から選択される。
【0068】
いくつかの実施形態では、アルテスナートと有機塩基のモル比は約1:0.25~約1:15の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートと有機塩基のモル比は約1:1~約1:15の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートと有機塩基のモル比は約1:1.5~約1:11の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートと有機塩基のモル比は約1:2~約1:6の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートと有機塩基のモル比は約1:1~約1:3の範囲内である。いくつかの実施形態では、基材はイミダゾール又はその誘導体であり、アルテスナートとイミダゾール又はその誘導体のモル比は約1:1.5~約1:2の範囲内である。
【0069】
いくつかの実施形態では、組成物はアルテスナート、式(II)又は式(III)の有機塩基、及び水溶液を含む。有機塩基は緩衝剤として作用する。いくつかの実施形態では、アルテスナートは重量/体積で約0.01%~約20%の範囲内である。いくつかの実施形態では、水溶液は塩化ナトリウム溶液である。いくつかの実施形態では、水溶液は生理食塩液である。いくつかの実施形態では、塩化ナトリウム溶液は重量/体積で約0.9%である。
【0070】
いくつかの実施形態では、組成物はアルテスナート、式(II)又は式(III)の有機塩基、及びグルコース溶液を含む。いくつかの実施形態では、グルコース溶液は約5重量%である。
【0071】
いくつかの実施形態では、組成物は燐酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は酢酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約7.2~約7.8、たとえば、7.8±0.2の範囲内のpHを有する。
【0072】
いくつかの実施形態では、有機塩基の濃度は約0.1~約0.8M、好ましくは約0.2~約0.4M、より好ましくは約0.3~約0.35Mの範囲内である。本明細書に記載される溶液のpHは約7.5~約9.0、好ましくは約8.0~約8.5、より好ましくは約8.0±0.2の範囲内である。
【0073】
いくつかの実施形態では、組成物は、第1の治療薬であるアルテスナート、有機塩基、第2の治療薬を含む。第2の治療薬は任意の適切な治療薬とすることができる。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、ピロナリジン、メフロキン、ピペラキン、プリマキン、アモジアキン、スルファドシキン-ピリメサミン、及びルメファントリンなどの他の抗マラリア薬である。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は抗癌薬である。治療効果を得るため、任意の適切な抗癌薬を使用することができる。
【0074】
配合物
本開示は、非経口注射用のアルテスナート配合物を提供する。配合物はアルテスナート、有機塩基、及び溶出溶媒を含む。開示される配合物は、静脈内、筋肉内、髄膜下、直腸内、腹腔内、経口又は局所投与に適する。
【0075】
溶出溶媒は、注射用の任意の適切な溶媒とすることができる。いくつかの実施形態では、溶出溶媒は水溶液である。いくつかの実施形態では、溶出溶媒は燐酸ナトリウム緩衝液である。いくつかの実施形態では、溶出溶媒は塩化ナトリウム、燐酸塩、及びグルコースを含有する緩衝液である。いくつかの実施形態では、溶出溶媒は、重量/体積で約0.9%の塩化ナトリウム、重量/体積で約5%のグルコース、及び燐酸ナトリウムを含有する。いくつかの実施形態では、配合物はデキストリン、レシチン、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、燐酸、又は酢酸をさらに含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、配合物のpHは約7.2~約8の範囲内である。いくつかの実施形態では、配合物のpHは約7.2~約7.8の範囲内である。開示される配合物は、筋肉注射又は筋肉内注射などの非経口投与に適する。
【0077】
いくつかの実施形態では、有機塩基は式(I)、(II)、又は(III)によって表される。
【0078】
開示される配合物の塩基の例は、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、1,2-ジアミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール、グリシン、リシン、ヒスチン、アルギニン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、及び4(5)-メチルイミダゾールである。
【0079】
いくつかの実施形態では、配合物はアルテスナート、有機塩基、水溶液を含む。いくつかの実施形態では、水溶液は塩化ナトリウム溶液である。いくつかの実施形態では、塩化ナトリウムは重量/体積が約0.9%である。いくつかの実施形態では、配合物は約5%のグルコース溶液をさらに含む。いくつかの実施形態では、有機塩基の濃度は約0.1~約0.5Mの範囲内である。いくつかの実施形態では、有機塩基の濃度は約0.2~約0.4Mである。いくつかの実施形態では、有機塩基の濃度は約0.3~約0.35Mである。本明細書に開示される溶液のpHは、約7.5~約9.0、好ましくは約8.0~約8.5、より好ましくは約8.0±0.2の範囲内である。
【0080】
いくつかの実施形態では、配合物は、アルテスナート、有機塩基、及びグルコース溶液を含む。いくつかの実施形態では、グルコース溶液は約5重量%である。いくつかの実施形態では、組成物は燐酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は約7.2~約8.2の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態では、組成物は約7.2~約7.8の範囲のpHを有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、配合物は水溶液中に、アルテスナート及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む。いくつかの実施形態では、組成物は約0.9%塩化ナトリウム溶液中にアルテスナートとトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.1~約0.5Mの範囲内である。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.2~約0.4Mの範囲内であり、いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.3~約0.35Mの範囲内である。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.03mol/L、約0.039mol/L、又は約0.078mol/Lである。
【0083】
いくつかの実施形態では、アルテスナートは重量/体積で0.01%~20%の範囲内である。1例では、アルテスナートの濃度は重量/体積で約0.1~約2%の範囲内である。別の例では、アルテスナートの濃度は重量/体積で約1~約10%の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートの濃度は約10mg/mLである。いくつかの実施形態では、アルテスナートとトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのモル比は約1:2~約1:15の範囲内である。いくつかの実施形態では、アルテスナートとトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのモル比は約1:2~約1:12の範囲内である。
【0084】
いくつかの実施形態では、配合物は緩衝溶液中にアルテスナートとトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む。緩衝溶液は緩衝剤を含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤はアンモニウム、ヒスチジン、クエン酸塩、琥珀酸、アセテート、燐酸塩、グリシン、アルギニン、及びリシンから成る群から選択される。本明細書に記載される溶液のpHは約7.5~約9.0、好ましくは約8.0~約8.5、より好ましくは約8.0±0.2の範囲内である。
【0085】
いくつかの実施形態では、配合物は、水溶液中にアルテスナート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及び燐酸を含む。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.1~約0.8Mの範囲内である。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.1~約0.5Mである。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.2~約0.4Mである。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.3~約0.35Mである。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.039mol/Lである。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.078mol/Lである。
【0086】
いくつかの実施形態では、配合物は、水溶液内にアルテスナート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及び酢酸を含む。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.1~約0.8Mの範囲内である。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.1~約0.5Mの範囲内である。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.2~約0.4Mである。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.3~約0.35Mである。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.039mol/Lである。いくつかの実施形態では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は約0.078mol/Lである。
【0087】
いくつかの実施形態では、配合物は、燐酸溶液中に約10mg/mLのアルテスナートと約0.039mol/Lのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む。いくつかの実施形態では、配合物は、燐酸溶液中に約10mg/mLのアルテスナートと約0.078mol/Lのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む。いくつかの実施形態では、配合物は、燐酸溶液中に約10mg/mLのアルテスナートと約0.3mol/Lのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、配合物は水溶液中に、第1の治療薬であるアルテスナート、有機塩基、及び第2の治療薬を含む。第2の治療薬は任意の適切な治療薬とすることができる。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、ピロナリジン、メフロキン、ピペラキン、プリマキン、アモジアキン、スルファドシキン-ピリメサミン、及びルメファントリンなどのその他の抗マラリア薬である。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は抗癌薬である。治療効果のために、任意の適切な抗癌薬を使用することができる。
【0089】
配合物は、アルテスナートを提供することと、有機塩基を含む溶液を提供することと、溶液をアルテスナートに添加して配合物を得ることとによって、使用前に作製した。たとえば、本開示の注射可能配合物は、アルテスナートと本明細書に記載の塩基を含む水溶液とを混合することによって作製した。特定の理論に束縛されるものではないが、アルテスナートは負に帯電し溶解する。配合物は使用直前に新鮮に作製されて、不安定性を最小限に抑える。いくつかの実施形態では、注射可能配合物は、開示される塩基の溶液をアルテスナート粉末に添加することによって作製される。溶液は約5%グルコース、生理食塩液、又は約5%グルコース食塩溶液である。次に、混合物は緩やかに混合されて、透明な注射可能溶液を得る。
【0090】
本開示の方法は、アルテスナートを高速かつ完全に溶解させて、非経口投与用の透明な溶液を生成する。該方法は、マラリア及びその他の病気の治療に適したアルテスナート配合物の注射を提供する。
【0091】
本開示の配合物は、現在臨床上使用されている2ステップのアルテスナート/重炭酸ナトリウム方法を超える多くの利点を備える。本開示の塩基は有機化合物であり、水性相でアルテスナートを溶解させると、5%重炭酸ナトリウムを使用する場合のように二酸化炭素の泡を生成しない。さらに、アルテスナート/重炭酸ナトリウム方法が溶解と希釈という2ステップを含む一方、本開示の調整は単ステップの溶解であり、水性基材溶液をアルテスナート粉末に添加して、緩やかに旋回させて所望の注射可能溶液を生成する。本開示の配合物は、非常に作製が簡便である。結果として生じる透明注射可能溶液では、通常は炭酸ナトリウム配合物で観察されるような発泡や持続的な濁りが見られない。比較実験で発明者らは、1mlのイミダゾール食塩溶液(0.039M)に10mgのアルテスナートを溶解させるのに必要な時間は2~3分であり、5%重炭酸ナトリウム溶液では5~7分かかることを観察した。
【0092】
また、本開示の配合物中のアルテスナートの安定性は、アルテスナート/重炭酸ナトリウム方法よりも向上した。室温では、本開示のアルテスナート配合物は濁り始め、5~7時間後に沈殿するが、アルテスナート/重炭酸ナトリウムの配合物では、濁りと沈殿が2~3時間以内に発生する。濁り又は沈殿は、病院で注射溶液を破棄する目安として使用されている。配合物からの沈殿物は、主に有効な抗マラリア薬であるジヒドロアルテミシニンとして特定されている。配合物の安定性が向上すると、注射可能配合物の適用のタイムウィンドウが延長される。これは、静脈注射によるアルテスナートの投与の可能性を示唆しており、短い血漿半減期の欠点を克服することによってアルテスナートの治療効果を向上させることができる(約20分、Zaloumisら、CPT Pharmacometrics&Syst Pharmacol、2014、5;3:e145)。さらに、本開示の配合物を10mg/mLから1mg/mL又は0.1mg/mLまで希釈した場合、12時間内に沈殿が観察されなかった。つまり、本配合物は、静脈注射に適し、血漿中で安定したアルテスナートの濃度を数時間維持することができる。また、本開示の配合物は、ナトリウム塩なしでも作製することができ、塩を避ける必要がある患者にとって望ましい。また、本開示の配合物は、市販のTHAM溶液[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアセテート緩衝液0.3M]にアルテスナート粉末を溶解させることで作製して、アシドーシス症状(たとえば、急性肺損傷)の患者を治療することができる。
【0093】
その他の所望の特徴は、配合物(のpH7.2~7.6)が筋肉注射又は静脈注射にとって理想的なことである。対照的に、アルテスナート/重炭酸ナトリウム配合物のpHは約7.9~8.0である.たとえば、イミダゾール生理食塩液中の10mg/mLのアルテスナートのpHは7.4±0.2である(モル比1:1.5/アルテスナート:イミダゾール)。
【0094】
本開示の好適な有機塩基は、薬学上許容可能であり、注射可能配合物に適用されている。たとえば、イミダゾールは、selezen(イミダゾールサリチラート)の非経口配合物で使用されており、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンは、静脈注射用にZybrestat(フォスブレタブリントリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)で、非経口投与用にHemabate(カルボプロストトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)で使用されている。
【0095】
本開示によるアルテスナートの配合物は、筋肉注射又は静脈注射、及び経口又は局所的に投与することができる。配合物中のアルテスナートの濃度は、重量/体積で約0.01~約20%とすることができる。1例では、濃度は重量/体積で約0.1~約2%の範囲内である。別の例では、濃度は重量/体積で約1~約10%の範囲内である。使用に所望される濃度は当業者によって決定することができる。有効投与量は、年齢、体重、又は治療される疾病に影響を受ける場合があり、当業者によって選択することができる。たとえば、マラリアの治療時、製造時に一般的な単位量は60mg又は110mgであり、標準的な注射投与量は2.4mg/体重kg、10mg/mLであり、1日1回の静脈注射を1クール5~7日間、初回の投与の場合倍増し、総投与量は成人で360~480mgである(中国、広西、Guilin Pharmaceuticalsによる指示)。
【0096】
治療方法
寄生虫感染に関連する疾病又は障害の治療方法は、薬学的有効量の開示される組成物又は配合物を対象に投与することを含む。場合によっては、寄生虫感染は、マラリア、日本住血吸虫、及びトキソプラズマ感染から成る群から選択される。一部の例では、マラリア感染は重篤な熱帯熱マラリア原虫マラリアによって生じる。
【0097】
さらに、本開示によるアルテスナートの配合物は、日本住血吸虫、抗トキソプラズマ感染、抗癌及び抗ウィルスの予防と治療、炎症性及び免疫性機能不全(たとえば、リューマチ性関節炎、ネフローゼ症候群、及び狼瘡性腎炎)、膵炎、バースコントロールの治療などの、マラリア以外の他の多くの疾病を治療するために使用することができる。
【0098】
本開示によるアルテスナート配合物は、他の治療薬と組み合わせて投与し、治療効率を高めることができる。たとえば、本発明の配合物は、その他の抗マラリア薬と組み合わせてマラリア患者を治療する(たとえば、ピロナリジン、アモジアキン、又はスルファドシキン-ピリメサミン、Bukirwaら、Cochrane Database Syst Rev、2014年3月4日;Angus B、Expert Rev Clin Pharmacol、2014、7(3):299-316。)、又は抗癌薬と組み合わせて癌患者を治療することができる(たとえば、ビノレルビン及びシスプラチン、Zhangら、J Chin Integr Med、2008、6:134)。
【0099】
いくつかの実施形態では、患者に投与される薬学的有効量のアルテスナートの量は、約2~30日間、1日に1又は2回、約0.2~10mg/体重kgである。
【0100】
いくつかの実施形態では、開示される組成物又は配合物は、癌、臓器損傷、炎症性障害、心臓病、敗血症、脳卒中、火傷損傷、ウィルス感染、糖尿病、肝臓病、及び肺障害の治療時に使用される。いくつかの実施形態では、癌は、白血病、結腸直腸癌、脳/CNS癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、メラノーマ、口腔及び口咽頭癌、膵臓癌、及び骨癌から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、心臓病は、心肥大、心不全、心筋梗塞、及び冠動脈性疾患から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、臓器損傷は、マラリア、火傷、敗血症、及び狼瘡によって生じる。いくつかの実施形態では、臓器損傷は、腎臓損傷、肺損傷、肝臓損傷、頭部損傷、及び腸損傷から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、腎臓病は、急性腎臓、慢性腎臓、腎臓障害、及び尿毒症から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、炎症性疾病は、リューマチ性関節炎、ネフローゼ症候群、及び狼瘡性腎炎から成る群から選択される。
【0101】
いくつかの実施形態では、臓器損傷は大量出血によって生じる。臓器損傷は、外傷性損傷、膵炎損傷、腸損傷、脳及び頭損傷、肺損傷、脊髄損傷、及び呼吸障害症候群から成る群から選択される。
【0102】
いくつかの実施形態では、糖尿病はI型糖尿病である。
【0103】
いくつかの実施形態では、肝臓病は肝繊維症である。
【0104】
いくつかの実施形態では、肺病は、喘息、呼吸障害症候群及び特発性肺繊維症から成る群から選択される。
【0105】
いくつかの実施形態では、手術中の虚血再灌流損傷の治療方法は、開示される薬学的有効量の組成物又は配合物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、手術は、腎臓移植、肝臓及び膵臓移植、及び冠状動脈バイパスグラフトから成る群から選択される。
【0106】
キット
本開示は、1回分の投与量のアルテスナート配合物を作製するキットを提供する。キットは以下を備える。
1.薬学的有効量のアルテスナートを含有するバイアル瓶A
2.有機塩基の薬学上許容可能な注射溶液を含有するバイアル瓶B
【0107】
使用前に、バイアル瓶B内の溶液をバイアル瓶Aに添加して、完全に溶解するまで混合した。バイアル瓶Bからバイアル瓶Aへ溶液を添加するために医療用シリンジを使用した。次に、非経口注射の場合と同じシリンジを使用して、配合された溶液を取り出した。
【0108】
もしくは、バイアル瓶Bは、純個体又は液体状の有機塩基を含有することができる。有機塩基は、アルテスナート粉末への添加前に適切な溶出溶媒内で溶解させた。
【0109】
アルテスナートは粉末形状とした。バイアル瓶A内のアルテスナート粉末とバイアル瓶B内の基材溶液は、臨床用途のために薬学的に製造、殺菌、及び梱包した。
【0110】
バイアル瓶A内のアルテスナートの単位投与量は約60mg~約110mgとすることができる、又は治療に必須の投与量によって決定することができる。いくつかの実施例では、バイアル瓶Aは60mgのアルテスナート粉末を含有し、バイアル瓶Bは5%グルコース溶液、生理食塩液、又は任意の適切な緩衝液中に6mLの有機塩基を含有する。
【0111】
アルテスナート乾燥粉末の使用によって劣化を最小化できることが判明した。開示による配合物は、注射の直前に簡便に作製することができる。
【0112】
以下の実施例は、本開示の方法及び組成物の例示であるが限定ではない。
【0113】
実施例
実施例1.トリエタノールアミン生理食塩液(0.13M)。
【0114】
生理食塩液(0.9%NaCl)にトリエタノールアミン(1.94g、13mmol)を添加して攪拌し、最終体積を100mLに調節して、0.13Mトリエタノールアミン生理食塩液を得た。
【0115】
実施例2.イミダゾール生理食塩液(0.039M)
【0116】
生理食塩液(約0.9%NaCl)にイミダゾール(0.265g、3.9mmol)を添加して攪拌し、最終体積を100mLに調節して0.039Mイミダゾール生理食塩液を得た。
【0117】
実施例3.2-メチルイミダゾール生理食塩液(0.039M)
【0118】
生理食塩液(0.9%NaCl)に2-メチルイミダゾール(0.32g、3.9mmol)を添加して攪拌し、最終体積を100mLに調節して0.039M2-メチルイミダゾール生理食塩液を得た。
【0119】
実施例4.イミダゾール生理食塩液(0.052M)
【0120】
生理食塩液(0.9%NaCl)にイミダゾール(0.354g、5.2mmol)を添加して攪拌し、最終体積を100mLに調節して、0.052Mイミダゾール生理食塩液を得た。
【0121】
実施例5.トリエタノールアミンアルテスナート生理食塩液配合物(10mg/mL)
【0122】
アルテスナート粉末(60mg、0.156mmol)に実施例1(6mL、0.78mmol)の0.13Mトリエタノールアミン生理食塩液を添加して、混合物を緩やかに2~3分旋回させて、トリエタノールアミンアルテスナートの透明溶液を得た。HNMR(D0、360MHz)δ5.66-5.69(10-H)、5.59(12a-H)、3.65(t,トリエタノールアミン、CHCHOH、2H)、2.80(t,トリエタノールアミン、CHCHOH、2H)、2.38-2.42(15-H)、2.17-2.24(14-H)、1.31(3-CH)、0.84-0.86(6-CH)、0.77-0.79(9-CH)。
【0123】
実施例6.イミダゾールアルテスナート生理食塩液配合物(10mg/mL)
【0124】
アルテスナート粉末(60mg、0.156mmol)に実施例2(6mL、0.234mmol)の0.039イミダゾール溶液生理食塩液を添加して、混合物を緩やかに2~3分旋回させて、イミダゾールとアルテスナートの透明溶液を得た。HNMR(D0、360MHz)δ7.27(s、イミダゾール、2H)、5.65-5.68(10-H)、5.58(12a-H)、2.40-2.42(15-H)、2.17-2.24(14-H)、1.30(3-CH)、0.83-0.85(6-CH)、0.76-0.78(9-CH)、pH7.4±0.2。
【0125】
実施例7.イミダゾールアルテスナート生理食塩液配合物(10mg/mL)
【0126】
アルテスナート粉末(60mg、0.156mmol)に実施例4(6mL、0.312mmol)の0.052Mイミダゾール生理食塩液を添加して、混合物を緩やかに2~3分旋回させてイミダゾールアルテスナートの透明溶液を得た。
【0127】
実施例8.2-メチルイミダゾールアルテスナート生理食塩液配合物(10mg/mL)
【0128】
アルテスナート粉末(60mg、0.156mmol)に実施例3(6mL、0.234mmol)の0.039M2-メチルイミダゾール生理食塩液を添加して、混合物を緩やかに2~3分旋回させて、アルテスナート及び2-メチルイミダゾールの透明溶液を得た。HNMR(D0、360MHz)δ7.08(s、2-メチルイミダゾール、2H)、5.65-5.68(10-H)、5.58(12a-H)、2.41(s,2-メチルイミダゾール、CH)、2.38-2.42(15-H)、2.16-2.23(14-H)、1.30(3-CH)、0.83-0.85(6-CH)、0.76-0.78(9-CH)、pH7.4±0.2、pH7.4±0.2。
【0129】
実施例9.トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン生理食塩液(0.039M)
【0130】
生理食塩液(0.9%NaCl)にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(0.47g、3.9mmol)を添加して攪拌し、最終体積を100mLに調節して、0.039Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン生理食塩液を得た。
【0131】
実施例10.トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアルテスナート生理食塩液配合物(10mg/mL)
【0132】
アルテスナート粉末(60mg、0.156mmol)に実施例9(6mL、0.234mmol)の0.039Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン生理食塩液を添加して、混合物を緩やかに2~3分旋回させてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとアルテスナートの透明溶液を得た。HNMR(D0、360MHz)δ5.66-5.69(10-H)、5.59(12a-H)、3.57(s,トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、2.38-2.42(15-H)、2.17-2.24(14-H)、1.30(3-CH)、0.84-0.86(6-CH)、0.77-0.79(9-CH)。
【0133】
実施例11.トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン生理食塩液(0.078M)
【0134】
生理食塩液(0.9%NaCl)にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(0.94g、7.9mmol)を添加して攪拌し、最終体積を100mLに調節して、0.078Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン生理食塩液を得た。
【0135】
実施例12.トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアルテスナート生理食塩液配合物(10mg/mL)
【0136】
アルテスナート粉末(60mg、0.156mmol)に実施例11(6mL、0.468mmol)の0.078Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン溶液6mLを添加して、混合物を緩やかに2-3分旋回させて、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとアルテスナートの透明生理食塩液を得た。pH7.4±0.2。
【0137】
実施例13.トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアセテート緩衝液(0.3M)
【0138】
脱イオン水にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(3.6g、30mmol)を添加して、溶液を酢酸でpH8に最終体積100mLまで調節して、0.3Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアセテート緩衝液を得た。
【0139】
実施例14.トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアセテート緩衝液(10mg/mL)中のアルテスナート
【0140】
アルテスナート粉末(60mg、0.156mmol)に実施例13(0.3M、1.8mm)のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアセテート緩衝液6mLを添加して、混合物を緩やかに2~3分旋回させて、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアセテート緩衝液に透明アルテスナート溶液を得た。pH7.5±0.2。
【0141】
実施例15.トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン燐酸塩緩衝液(0.3M)
【0142】
脱イオン水にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(1.82g、15mmol)を添加して、溶液を5%燐酸でpH8に調節し、最終体積50mLに調節して、0.3Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン燐酸塩緩衝液を得た。
【0143】
実施例16.トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン燐酸塩緩衝液(10mg/mL)中のアルテスナート
【0144】
アルテスナート粉末(60mg、0.156mmol)に実施例15(0.3M、1.8mmol)のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン燐酸塩緩衝液6mLを添加して、混合物を緩やかに2~3分旋回させて、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン燐酸塩緩衝剤に透明アルテスナート溶液を得た。pH7.5±0.2。
【0145】
実施例17.トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアセテート緩衝液(0.3M)
【0146】
脱イオン水にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(3.6g、30mmol)を添加して、溶液を酢酸でpH8.6(8.4~8.7)に調節し、脱イオン水の最終体積を100mLに調節して、0.3トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアセテート緩衝液を得た。
【0147】
実施例18.トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアセテート緩衝液(10mg/mL)中のアルテスナート
【0148】
アルテスナート粉末(60mg、0.156mmol)に実施例17(0.3M、1.8mmol)のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアセテート緩衝液6mLを添加して、混合物を緩やかに1~2分旋回させて、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンアセテート緩衝剤に透明アルテスナート溶液を得た。