(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031825
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】画像ベース診断システム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/08 20060101AFI20220215BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61B8/08
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021193816
(22)【出願日】2021-11-30
(62)【分割の表示】P 2019517180の分割
【原出願日】2017-06-13
(31)【優先権主張番号】1610269.1
(32)【優先日】2016-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】アプトン,ロス
(72)【発明者】
【氏名】リーソン,ポール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】心臓状態を診断するために、心臓の変形を測定するためのシステムを提供する。
【解決手段】心臓状態を診断するためのシステムは、心周期におけるそれぞれのポイントにおいて心臓の2つの画像を収集するように構成された撮像システムと、画像上のポイントの一連のペアの位置を特定するための、手動で操作されるかまたは自動であり得る、位置特定手段とを備える。ポイントの各ペアは、2つの画像中の心臓の単一の部分のそれぞれの位置を示す。本システムは、ポイントの前記ペアの位置から、心臓の変形の少なくとも1つのパラメータの値を計算するように構成されたプロセッサをさらに備える。それは、診断出力を生成するために少なくとも1つのパラメータの値を基準データと比較するようにさらに構成され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓状態を診断するためのシステムであって、心周期におけるそれぞれのポイントにおいて心臓の2つの画像を収集するように構成された撮像システムと、前記画像上のポイントの一連のペア(a series of pairs of points)の位置を特定するための位置特定手段で
あって、ポイントの各ペアが、前記2つの画像中の前記心臓の単一の部分のそれぞれの位置を示す、位置特定手段と、ポイントの前記ペアの前記位置から、前記心臓の変形の少なくとも1つのパラメータの値を計算し、診断出力を生成するために前記少なくとも1つのパラメータの前記値を基準データと比較するように構成された処理手段とを備える、システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのパラメータが少なくとも1つの方向における変位を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記変位が、少なくとも1つの方向における前記心臓の前記部分のすべてについての前記変位の平均である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのパラメータが、前記心臓の前記部分のうちの少なくとも1つについての長手方向における変位と半径方向における変位との和を含む、請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記位置特定手段は、ユーザがポイントの前記ペアの位置を特定し、ポイントの前記ペアの前記位置を記録することを可能にするように構成されたユーザ入力デバイスを備える、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記撮像システムが、前記画像をそれぞれの画像データセットとして記憶するように構成され、前記位置特定手段が、ポイントの前記ペアのロケーションを決定することと、ポイントの前記ペアの前記位置を記録することとを行うために前記画像データセットを処理するように構成された、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのパラメータが複数のパラメータを含み、前記処理手段が、前記パラメータの各々の前記値をそれぞれの基準値と比較するように構成された、請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記処理手段が、前記パラメータの前記値から前記診断出力を生成するための決定ツリーを定義するように構成された、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のシステムを製作する方法であって、前記方法は、画像のセットを分析するステップであって、前記画像の各々が、それに関連する診断結果を有する、分析するステップを含み、前記方法は、前記画像の各々についての前記少なくとも1つのパラメータの値を計算するステップと、前記値と前記診断結果との間の関係または相関を決定するために前記値と前記診断結果とを分析するステップとを含む、方法。
【請求項10】
前記パラメータの前記値から前記診断出力を生成するための決定ツリーを展開するために機械学習を使用するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の前記方法を実行するように構成されたシステム。
【請求項12】
心臓の変形を測定するためのシステムであって、前記システムは、心周期におけるそれぞれのポイントにおいて前記心臓の2つの画像を収集するように構成された撮像システム
と、前記画像上のポイントの一連のペアの位置を特定するための位置特定手段であって、ポイントの各ペアが、前記2つの画像中の前記心臓の単一の部分のそれぞれの位置を示す、位置特定手段と、ポイントの前記ペアの前記位置から、前記心臓の前記変形の少なくとも1つのパラメータの値を計算するように構成された処理手段とを備える、システム。
【請求項13】
請求項2から8のいずれか一項に記載の追加の特徴をさらに備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
心臓の変形を測定する方法であって、前記方法は、心周期におけるそれぞれのポイントにおいて前記心臓の2つの画像を収集するステップと、前記画像上のポイントの一連のペアの位置を特定するステップであって、ポイントの各ペアが、前記2つの画像中の前記心臓の単一の部分のそれぞれの位置を示す、位置を特定するステップとを含む、方法。
【請求項15】
少なくとも1つのパラメータが少なくとも1つの方向における変位を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記変位が、少なくとも1つの方向における前記心臓の前記部分のすべてについての前記変位の平均である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのパラメータが、前記心臓の前記部分のうちの少なくとも1つについての長手方向における変位と半径方向における変位との和を含む、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ポイントの前記ペアのロケーションを決定するために画像データセットを処理するステップと、ポイントの前記ペアの前記位置を記録するステップとをさらに含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのパラメータが複数のパラメータを含み、処理手段が、前記パラメータの各々の前記値をそれぞれの基準値と比較するように構成された、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記パラメータの前記値から前記診断出力を生成するための決定ツリーを定義するステップをさらに含む、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば心臓の、医療画像を分析し、撮像される対象者のパラメータを測定するためのシステムに関する。本発明は、心エコー検査(echocardiography)において適用されるが、X線コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴撮像(MRI)、および陽電子放射断層撮影(PET)など、他の撮像モダリティの場合にも適用される。
【背景技術】
【0002】
心エコー検査は、心臓を撮像する方法として広く使用される。心エコー検査は、たとえば、心臓のリアルタイムビデオ画像を構築するために、一連の迅速に収集されたパルスエコー超音波画像を使用する。画像は、一般に2次元(2D)であり、画像は、一般に、熟練した臨床医によって視覚的に分析されるが、たとえば、US8077944による画像のコンピュータ分析が知られている。負荷心エコー検査では、心臓は、安静状態(rest condition)で、すなわち、対象者が安静時であるときに撮像され、負荷状態(stress condition)の下で、たとえば、運動後に撮像される。2つの状態での心臓の機能は、心臓がどのように負荷に反応するかに関する情報を与えるために比較され得る。運動することが対象者に適していない場合、負荷は、たとえば、ドブタミンなどの刺激剤を対象者に注入することによって、誘起またはシミュレートされ得る。ドブタミン負荷エコー(DSE:dobutamine stress echo)は、冠状動脈疾患(CAD:coronary artery disease)を診断する際に広く使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明の一実施例は、例えば、画像ベース診断システムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、たとえば、心臓状態を診断するために、心臓の変形を測定するためのシステムを提供し、本システムは、心周期におけるそれぞれのポイントにおいて心臓の2つの画像を収集するように構成された撮像システムを備える。本システムは、画像上のポイントの一連のペアの位置を特定するための位置特定手段であって、ポイントの各ペアが、2つの画像中の心臓の単一の部分のそれぞれの位置を示す、位置特定手段を備え得る。本システムは、たとえば、ポイントの前記ペアの位置から、心臓の変形の少なくとも1つのパラメータの値を計算するように構成された処理手段を備え得る。
【0005】
処理手段は、診断出力を生成するために少なくとも1つのパラメータの値を基準データと比較するように構成され得る。
少なくとも1つのパラメータは、心臓の部分の少なくとも1つの方向における変位と、心臓の前記部分のすべてについての、少なくとも1つの方向における変位の平均と、心臓の前記部分のうちの少なくとも1つについての2つの異なる方向、たとえば、長手方向および半径方向における変位の和と、心臓の前記部分のすべてについての、変位のその和の平均と、以下でより詳細に説明される原理変換とのうちのいずれか1つまたは複数を含み得る。
【0006】
位置特定手段は、ユーザが、画像中のポイントの前記ペアの位置を特定することと、たとえば、2次元座標系におけるポイントの各々の座標を記録することによって、ポイントの前記ペアの位置を記録することとを可能にするように構成されたユーザ入力デバイスを
備え得る。
【0007】
撮像システムは、画像をそれぞれの画像データセットとして記憶するように構成され得、位置特定手段は、ポイントの前記ペアのロケーションを決定することと、ポイントの前記ペアの位置を記録することとを行うために画像データセットを処理するように構成され得る。
【0008】
少なくとも1つのパラメータは複数のパラメータを含み得、処理手段は、パラメータの各々の値をそれぞれの基準値と比較するように構成され得る。
本システムは、心臓が第2の状態にある、心周期におけるそれぞれのポイントにおいて心臓の2つの画像のさらなるセットを収集するように構成され得、第2の状態は、2つの画像の第1のセットが収集されたときの心臓の状態とは異なる。たとえば、状態のうちの1つは、対象者が安静時であるときの安静状態であり得、状態のうちの1つは、対象者が負荷を受けているときの負荷状態であり得る。パラメータの各々は、画像の各セットについて1回決定され得る。画像の2つのセットからのデータを組み合わせる、1つまたは複数のさらなるパラメータが定義され得る。たとえば、画像の2つのセット間の、パラメータのうちの1つの値の差分が、さらなるパラメータとして使用され得る。
【0009】
処理手段は、パラメータの値から診断出力を生成するための決定ツリーを定義するように構成され得る。決定ツリーは複数の決定ポイントを含み得る。各決定ポイントは、パラメータのうちの1つの基準値を定義し得る。たとえば、決定ポイントのうちの1つは主変換(principal transformation)の基準値を定義し得、および/または決定ポイントのうちの1つは、以下でより詳細に説明されるようにせん断変換(shear transformation)の値を定義し得、および/または決定ポイントのうちの1つは、心臓の2つの異なる状態での主変換の間の差分の基準値を定義し得る。C4.5およびJ48など、トレーニングデータから決定ツリーを構築するためのシステムが、よく知られている。
【0010】
本発明は、たとえば、心臓状態を診断するために、心臓の変形を測定する方法をさらに提供し、本方法は、心周期におけるそれぞれのポイントにおいて心臓の2つの画像を収集するステップと、画像上のポイントの一連のペアの位置を特定するステップであって、ポイントの各ペアが、2つの画像中の心臓の単一の部分のそれぞれの位置を示す、位置を特定するステップとを含む。本方法は、たとえば、ポイントの前記ペアの位置から、心臓の変形の少なくとも1つのパラメータを計算するステップをさらに含み得る。本方法は、診断出力を生成するために少なくとも1つのパラメータを基準データと比較するステップをさらに含み得る。
【0011】
本発明は、心臓状態を診断するためのシステムを製作する方法をさらに提供し、本方法は、画像のセットを分析するステップであって、画像の各々が、それに関連する診断結果を有する、分析するステップを含み、本方法は、画像の各々についての少なくとも1つのパラメータの値を計算するステップと、値と診断結果との間の関係または相関を決定するために値と診断結果とを分析するステップとを含む。
【0012】
本方法は、パラメータの値から診断出力を生成するための決定ツリーを展開するために機械学習を使用するステップをさらに含み得る。本方法は、撮像システムの一部を形成し得るコンピュータシステムまたはプロセッサシステム上で実行され得るか、または別個のコンピュータを備え得る。
【0013】
診断出力は、冠状動脈疾患(CAD)、または僧帽弁逆流、または肥大型心筋症など、様々な心臓状態に関係し得る。
撮像システムは、心エコー検査システムを備え得るか、あるいは、それは、X線コンピュータ断層撮影(CT)スキャナ、磁気共鳴撮像(MRI)スキャナ、または陽電子放射断層撮影(PET)スキャナなど、X線撮像システムであり得る。
【0014】
本システムまたは本方法は、添付の図面を参照しながら次に説明されるように、任意の実行可能な組合せで、本発明の好ましい実施形態の任意の1つまたは複数の特徴またはステップをさらに備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態によるシステムの概略図である。
【
図2】心臓の四腔像(four chamber view)を概略的に示す図である。
【
図3】
図1のシステムによって実行される診断方法の主要なステップを示す流れ図である。
【
図4】
図1のシステムによって実行される、2つの画像の比較の概略図である。
【
図5】
図5aは、
図1のシステムによって実行される、分析の2つの段階におけるサンプル画像を示す図である。
図5bは、
図1のシステムによって実行される、分析の2つの段階におけるサンプル画像を示す図である。
【
図6】
図6aは、図のシステムを使用して取得されるサンプルデータの分析の結果を示す図である。
図6bは、図のシステムを使用して取得されるサンプルデータの分析の結果を示す図である。
【
図7】
図6aおよび
図6bの結果を製作するために使用されるアルゴリズムを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照すると、心エコー検査システム100は、患者104の体の近くに、一般に、心臓にできるだけ近くに位置するように構成されたトランスデューサアレイ102と、デジタル電子プロセッサであり得るプロセッサ108を含む処理ユニット106と、ハードディスクなどのメモリ110と、フラットスクリーンモニタまたはLEDディスプレイなどのディスプレイ112とを備える。本システムは、ユーザ入力デバイス、たとえば、ディスプレイ112に組み込まれたタッチスクリーン114をさらに含み得、ユーザ入力デバイスは、ユーザがシステム100に入力を与えることを可能にするユーザ入力を与える。マウス、タッチパッドまたはキーボードなどの他のユーザ入力も、当然使用され得る。プロセッサユニット106は、トランスデューサアレイ102に接続され、一連のパルスにおいて患者にわたってスキャンする超音波ビームを放出し、各パルスから、心臓からの反射された超音波を検出するように、トランスデューサアレイをフェーズドアレイとして制御するように構成される。心臓の1回のスキャンは単一の画像を構築し、スキャンは、一般に、心周期中に心臓の運動を示す心臓のリアルタイムビデオ画像を構築するために、1秒当たり25~50個の画像で繰り返される。各画像は、画像データセットとしてメモリ110に記憶され得、画像データセットは、たとえば、画像がそれから成るピクセルの各々についての強度値を含み得る。
【0017】
本システムは、上記では概括的な言葉で説明されたが、好適な心エコー検査システムは、たとえば、Philips Epic iE33、GE vivid e9、またはPhilips CX50などのポータブルシステム、またはハンドヘルドシステムを含む。
【0018】
心エコー検査のプロセスは、よく知られており、詳細に説明されない。いくつかの異なる撮像方法があるが、2次元撮像が使用され得る。それは、心臓の4つの主腔、すなわち、左心室(LV)、右心室(RV)、左心房(LA)および右心房(RA)の異なる態様
を示す、心臓を通るいくつかの異なる平面上の画像を与えることが知られている。そのような像は、たとえば、心尖部(apical)四腔像、心尖部二腔像または心尖部三腔像、ならびに傍胸骨(parasternal)長軸像および傍胸骨短軸像を含む。各場合において、単一の静止画像が取得され得るが、一般に、心臓の運動が記録および分析され得るように一連の像が心臓の周期にわたって収集される。
【0019】
図2を参照すると、画像が四腔心尖部像である場合、それらは、左心室202と、右心室204と、左心房206と、右心房208とを示す、心臓200の2D平面を示す。平面はLVの長軸210を含み、また、LVの頂点212と、LVの外側壁214と、中隔216とを通って延びる。
【0020】
図3を参照すると、心エコー検査システム100は、ステップ300において、2D画像のシーケンスを収集し、それらを心エコー検査システム100のメモリ110に記憶するように構成され得る。画像は、単一の心周期にわたって収集され得、たとえば、1つの周期をカバーする10から50個の画像を含み得る。画像の収集は、当然、従来の心エコー検査システム100上で行われ得る。画像の以下の分析は、
図1に示されているように、心エコー検査システムの一部を形成する同じ処理ユニット106を使用して行われ得る。しかしながら、画像は、ラップトップまたはPCなどのコンピュータ上にダウンロードされ得、コンピュータは、制御ユニット106のものと同様にこのために動作するプロセッサ、メモリ、ユーザ入力およびディスプレイを有し、画像のさらなる分析は、そのコンピュータ上で専用ソフトウェアの制御下で行われ得る。
【0021】
ステップ302において、収縮末期(end systole)、すなわち最大収縮に最も近い画像と、拡張末期(end distole)、すなわち、LVの最大容積に最も近い画像とが識別され得る。これは、ユーザが、ディスプレイ112上で画像のすべてを閲覧することと、ユーザ入力デバイス114を使用して、それらの画像のうちの1つを収縮末期に最も近いものとして選択し、それらの画像のうちの1つを拡張末期に最も近いものとして選択することとによって行われ得る。この選択は、ユーザによって、眼によって判定される画像の各々中のLVの容積の評価および比較に基づいて、または僧帽弁の開および閉のポイントに気づくことによって、またはECGプロット上にQRS群を使用して、またはこれらの任意の組合せによって行われ得る。これは、熟練した臨床医が行うには適度に容易である。代替的に、プロセッサ108は、画像の各々中のLVを識別し、LVの容積を測定することと、異なる画像中のLVの容積を比較することと、最小のLV容積をもつ画像を収縮末期画像として識別し、最大のLV容積をもつ画像を拡張末期画像として識別することとを行うために画像処理技法を使用するように構成され得る。いずれの場合も、収縮末期画像および拡張末期画像が識別されると、収縮末期画像および拡張末期画像は、メモリ110中で識別され、それらがユーザによって選択および閲覧され得るように、たとえば、適切なフラグを用いてマークされ得る。
【0022】
図4を参照すると、収縮末期画像および拡張末期画像が識別されると、ステップ304において、収縮末期400aと、拡張末期400bとにおけるLVの壁上の対応するポイント401は、識別され得る。また、たとえば、LVの頂点402を通り、それの長手方向軸に沿って延びる(本明細書ではy軸と呼ばれる)垂直軸と、それの頂点402とそれのベース404との間の中間のLVの中点を通る(本明細書ではx軸と呼ばれる)水平軸とを有する直交座標系が定義され得る。頂点402およびベース404は、ユーザによってユーザ入力を介して、または画像処理によって識別され得る。次いで、座標系上のポイント400a、400bの各々の座標が決定および記録され得る。画像のスケールが心エコー検査システムから知られているので、ポイントの各々の座標は、画像の平面におけるポイントの位置を定義し、したがって、各ペア中の2つのポイント間の距離は、収縮末期と拡張末期との間で心臓の重要な部分が運動した距離を示す。同じく、ポイントの識別は
、ユーザが、ユーザ入力114を使用して画像の各々上のポイントの各々を選択することによって手動で行われ得るか、または、ポイントの識別は、システム100上で動作し、収縮末期画像と拡張末期画像との各々中のLVの形状を分析し、特定のポイントを識別するように構成された画像処理ソフトウェアによって行われ得る。これらは、2つの画像の各々について、たとえば、収縮末期と拡張末期の両方におけるLVの頂点402a、402bにおけるポイント、LVのベースの片側におけるポイント404a、およびLVのベースの反対側におけるポイント406a、LVの中点における2つのポイント、頂点の始端における2つのポイント、ならびにその間に離間した様々な中間ポイントを含み得る。これらのポイントのうちのいくつかが、
図5aおよび
図5bを参照しながら以下でより詳細に説明される。
【0023】
図5aを参照すると、
図5aは、造影剤を用いて収集されたエコー画像を示し、LVの画像の各々において、LVの頂点602は、LVの最端部として位置を特定され得、各側604、605のLVのベースは、側壁の形状から位置を特定され得る。次いで、y軸が、頂点602、およびベースの2つの側、604と605との間の中点を通過するラインとして定義され得る。次いで、x軸が、頂点と、ベースの2つの側の間の中点との間でy軸の中間に直角なラインとして定義され得る。各側の中点606、607が、x軸がその側の側壁と交差するポイントとして識別され得る。また、各側の頂点の下端608、609が、側壁が頂点602にむかって先細りになり始めるところにおいて、識別され得る。上述のように、これらのポイントの各々は、ユーザによって識別され得る。代替的に、それらを識別するために画像処理が使用され得る。画像処理が使用される場合、LVの輪郭が、最初に、LV内のより明るいエリアとその周りの壁を形成する心筋のより暗いエリアとの間の境界として識別される(または造影剤の使用なしに収集される画像の場合、その逆も同様である)。この境界は鮮鋭でないが、そのような境界を識別するためのアルゴリズムは、よく知られている。境界が識別されると、アルゴリズムは、次いで、境界の最高ポイント(最大y値)を、頂点602であるものとして識別し、境界が下端において方向を変更するポイントを、たとえば、
図5a中のベースラインの右側のポイント605において見られ得るように識別するように構成され得る。同じく、湾曲の半径および方向、ならびにそれが境界の周りでどのように変化するかを分析するためのアルゴリズムが、これらのポイントと、頂点の下端におけるポイント608、609とを識別するために使用され得る。
【0024】
図5bを参照すると、LVの壁上のさらなるポイントが、手動で、または単純なアルゴリズムを使用するプロセッサによってのいずれかで識別され得る。たとえば、これらは、
図5a中で示されているポイント間のy方向において等間隔に離間された側壁上のポイントであり得る。
【0025】
再び
図3を参照すると、これらのポイントのすべてが識別されると、直交座標系におけるそれらのxおよびy座標は、たとえば、収縮末期画像上のポイントの座標を含む収縮末期座標セット、および拡張末期画像上のポイントの座標を含む拡張末期座標セットとしてメモリ110に記憶され得る。プロセッサは、ステップ306において、その2つの座標セットから、収縮末期と拡張末期との間のLVのジオメトリにおける変換を計算するように構成され得る。プロセッサは、たとえば、次により詳細に説明されるように、1つまたは複数の方向における運動を計算するために座標セットを使用するように構成され得る。
【0026】
再び
図4を参照すると、プロセッサ108は、収縮末期と拡張末期との間のLVの形状の変形について、収縮末期と拡張末期との間のLVの運動を定量化する様々なパラメータについての値を計算するように構成される。
【0027】
計算は、x軸とy軸の両方に沿った位置の変化(拡張末期-収縮末期)を理解すること
によって、各ポイントがx方向およびy方向の各々においてどのくらい遠くに運動したかを理解することを含み得る。これは、ポイント404a、404bについて
図4に示されているように、ポイントの各対応するペアについての1つの値をもつx軸運動Δxのセットを与え、同じく、ポイントの各対応するペアについての1つの値をもつy軸運動Δyのセットを与える。これらの値の各々は、方向の指示のない単純な距離であり得る。次いで、x軸におけるすべてのポイントの平均変化(ΔX)とy軸におけるすべてのポイントの平均変化(ΔY)との両方が、心室全体についての、平均Δx値またはx方向運動ΔXと、平均Δy値またはy方向運動ΔYとを与えるように別々に計算され得る。個々の運動値の各々が単に距離であり、それらが正または負のx方向またはy方向にあるかどうかの指示がない場合、これらの平均は、総運動量を表すが、方向の指示、またはLV壁の異なる部分が同じ方向において運動しているのか反対方向において運動しているのかの指示を与えないことになる。
【0028】
計算され得る別のパラメータは、LV上の各ポイント、すなわち、画像上のポイントの各ペアについて、x方向運動Δxおよびy方向運動Δyの平均を計算することであり、ここで、各ポイントについての平均値は、Δxy=(Δx+Δy)/2である。次いで、すべてのポイントについてのΔxyのすべての値の平均が計算されて、心室全体についての値ΔXYになり得る。この計算は、せん断ひずみ(shear strain)の計算と同様であり、したがって、本明細書ではせん断変換と呼ばれる。運動の所与の距離の場合、このパラメータは、x軸とy軸の両方に対して45度の運動の場合に最も大きくなり、軸のうちの1つに沿った運動の場合に最も小さくなることが諒解されよう。
【0029】
計算され得るさらなるパラメータは、xひずみ成分およびyひずみ成分から計算され得る主変換と同様であり、したがって、本明細書では主変換と呼ばれ、
主変換=C1(ΔX+ΔY-√(ΔX+ΔY)^2+C2ΔXY^2)
によって与えられ、
ここで、C1およびC2は定数である。たとえば、C1は1/2であり得、C2は4であり得る。これらの値は、以下で説明される例において使用された。
【0030】
この変換は、せん断変換に密接に関係し、したがって、そのパラメータと同様に変動する傾向があるが、心臓の収縮を示す負値を有する。しかしながら、以下のテスト結果によって示されるように、主変換値は、いくつかの場合には、特にCADのより信頼できる診断を与えることができる。
【0031】
これらのパラメータの各々が、単一の冠状周期における収縮末期と拡張末期との間の変化に関係することが諒解されよう。しかしながら、負荷心エコー検査(または他の撮像方法を用いて行われる対応するテスト)では、安静時の心臓の場合、各パラメータについて1つの値があり、負荷時の心臓の場合、1つの値がある。それらの値を比較すること、たとえば、それらの値の間の差分を決定することは、診断において使用され得る心臓機能に関するさらなる情報を与える。
【0032】
x運動およびy運動、ならびにせん断変換値および主変換値が計算されると、プロセッサは、次いで、ステップ308において、1つまたは複数の特定の心臓状態の診断を行うためにこれらをメモリ110に記憶された基準値と比較することと、診断出力を生成することとを行うように構成される。出力は、陽性または陰性の診断を示す単純なバイナリ出力であり得る。プロセッサユニット106は、ディスプレイ112上に出力を表示するように構成され得る。代替的に、または追加として、プロセッサユニット106は、たとえば、診断を示す出力データを、画像が記憶されるファイルに追加することによって、出力がそれに基づく画像に関連するデータとして出力を記憶するように構成され得る。
【0033】
基準値は、たとえば、心臓の画像の分析によって決定され得、それらのうちの一部は、たとえば、特定の状態を示すしきい値を決定するための特定の心臓状態を有し、それらのうちの一部は、特定の心臓状態を有しない。
【0034】
基準値は、学習アルゴリズムによって決定され得、学習アルゴリズムは、たとえば、プロセッサユニット106上で動作され得、学習アルゴリズムは、メモリ110に記憶され得る、従来の方法によって決定された関連する診断をもつ負荷エコー画像のデータベースを使用する。詳細には、データベースは画像の多数のセットを含み得、各セットは、画像の各セットについて、CADについての陽性または陰性の診断など、関連する診断とともに、安静状態と負荷状態の両方の場合の収縮末期画像および拡張末期画像を備える。学習アルゴリズムは、上記で説明された様々なパラメータの値を計算するように画像を分析し、次いで、診断と様々なパラメータの各々の値との間の相関を決定するように構成され得る。
【0035】
分析は、70人の対象者からのサンプル画像に対して行われた。生成されたすべての結果は、心尖部四腔像からのものであった。最初に、値は、DSE結果から決定された陽性および陰性の結果について比較された。次いで、DSE結果において確認された偽陽性について補正されたDSE結果との比較が繰り返された。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
機械学習結果
サンプルデータから取得された様々なパラメータの値から、機械学習は、調整されたDSE結果のインジケータとして各パラメータの精度を決定するために使用され得る。上記のデータを使用して、10分割交差検証方法(10 fold cross validation method)を用いたJ48プルーニング済み決定ツリーが、データを分類するために使用された。診断結果のインジケータとしての各パラメータの精度は、以下の表において要約され、ここで、使用される以下の略語は、以下の通りである。
【0040】
TP=真陽性
FP=偽陽性
FN=偽陰性
TN=真陰性
PPV=陽性予測値
NPV=陰性予測値
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
次いで、変数のすべてから、機械学習を使用して、
図7に示されている決定ツリーが、データからの正確な診断を与えるために導出された。決定ツリーは一連の決定ポイントを定義し、その各々がパラメータの基準値またはしきい値を定義する。決定ツリーは、以下のように動作する単純なアルゴリズムを略記する。最初に、上記で説明されたLVの主変換は、心臓の負荷状態の場合に決定される。変換が-5.95mmよりも小さい(すなわち、5.95mmよりも大きい大きさをもつ負値である)場合、診断は陰性である。値が-5.95mmよりも大きい場合、安静状態と負荷状態との間の主変換の差分は12.278053mmよりも大きく、診断は陰性であるが、その値がその距離よりも小さい場合、診断は陽性である。決定ツリーの構造、および決定ツリー中の各決定ポイントにおける基準値またはしきい値は、行われるべきである診断に依存することになることが諒解されよう。
【0047】
決定ツリーは、次いで、サンプルデータに対して、それの精度をテストするために使用され、結果は以下に与えられる。
すべての変数に対する機械学習
【0048】
【0049】
同様の診断システムにおいて二腔像が四腔像の代わりに使用され得るかどうかをテストするために、サンプルデータ中の四腔像の各々に対応する二腔像が、主変換、せん断変換、ならびに半径方向(X)運動および長手方向(Y)運動の同じパラメータを導出するために同様に分析された。
【0050】
【0051】
極めて有意な結果は、四腔像と二腔像との間の主変換値の類似度である。これは、主ベクトル(principal vector)が、疾患を検出するための高感度パラメータであることを暗示するだけでなく、それは、2D像からの3D機能的評価を与えることをも暗示する。
【0052】
【0053】
表11は、主変換が、他の疾患コホート(disease cohort)(肥大型心筋症(HCM)および僧帽弁逆流)において低減されることを示し、主変換が肥大、心筋症および弁膜疾患を検出することにおいても高感度であることを暗示する。主ベクトルが四腔像と二腔像の両方において低減され、主ベクトルが、ただ単一の平面から心臓における異常を検出することにおいて高感度であることを示すことに留意されたい。詳細には、肥大がさらに四腔像においてのみ発生したHCMに関して、主変換は、依然として、二腔像において著しく低減された。
【0054】
ただ1つの平面における画像の分析が、様々な疾患を診断するために使用され得、単一のパラメータよりも正確な診断を与える決定ツリーを展開するために様々な異なるパラメータが使用され得ることが諒解されよう。
【外国語明細書】