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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031853
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】レーダシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/76 20060101AFI20220215BHJP
   G01S 13/91 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
G01S13/76
G01S13/91 200
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021197102
(22)【出願日】2021-12-03
(62)【分割の表示】P 2018524483の分割
【原出願日】2016-11-09
(31)【優先権主張番号】1519867.4
(32)【優先日】2015-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】306032578
【氏名又は名称】レオナルド・ユーケー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Leonardo UK Ltd
【住所又は居所原語表記】1 Eagle Place,St.James’s,London,SW1Y 6AF,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ユアン・トーマス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電子走査質問機のためのモードS ISLS(Interrogation Side Lobe Suppression System)。
【解決手段】レーダシステム及び方法であって、主ビームと制御ビームとの間に90°の位相オフセットを導入し、それにより、TRUの全電力能力が効率的に利用されること、及びモードSにおける有効ビーム幅がシャープに規定されることを可能にする。このシステムは、モードSのオールコール質問の同時のISLSパルスの送信が、主ビームによって使用されるアレイと同じアレイを使用して送信されることを可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信受信モジュールを備える電子走査SSR質問機であって、前記送信/受信モジュールにわたって漸進的な位相テーパを適用することによって、ビームをステアリングするように適合される、電子走査SSR質問機。
【請求項2】
複数の送信/受信モジュールを備える請求項1に記載の電子走査SSR質問機であって、前記質問機が4つのチャネルを利用し、前記送信/受信モジュールが増幅器ラインナップを備える、電子走査SSR質問機。
【請求項3】
前記質問機が、同時のISLSパルスを用いたモードSオールコールが可能であるように適合され、増幅器ラインナップにおいて、差パルスP5が主ビームパルスP6に足し合わされる、請求項1又は2に記載の電子走査SSR質問機。
【請求項4】
増幅器ラインナップが、主ビーム及び制御ビームの線形重畳を可能にする線形増幅器チェーンを備える、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
【請求項5】
増幅器ラインナップがさらに、精密制御の和及び差ビーム形成を可能にするために、主ビームと制御ビームとの間の位相コヒーレンスを維持する線形増幅器チェーンを備える、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
【請求項6】
線形増幅器チェーンが、主ビームにおいて送信される電力を最大化するために、前記主ビームと制御ビームとの間に90°の位相オフセットを導入する、請求項1~5のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
【請求項7】
線形増幅器チェーンが、有効ビームの境界規定のシャープさを最大化するために、主ビームと制御ビームとの間に90°の位相オフセットを導入する、請求項1~6のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
【請求項8】
線形増幅器チェーンが、局所又は隣接空域における他のATCユーザに対する干渉を減少させるために、精密な送信機電力制御を可能にする、請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
【請求項9】
線形増幅器チェーンが、主ビーム及び制御ビームの相対電力密度を変えることによって、有効質問機ビーム幅の制御を可能にする、請求項1~8のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
【請求項10】
線形増幅器チェーンがクラスAB増幅器を備え、それにより電力効率を改善し、温度管理を単純化する、請求項1~9のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
【請求項11】
請求項1~10のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機を備える、レーダシステム。
【請求項12】
請求項1~10のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機を備える、航空管制システム。
【請求項13】
添付の線図を参照して上で説明された、電子走査SSR質問機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次レーダに関する。限定するわけではないが、より具体的には、それは電子走査質問機のためのモードS インタロゲーション サイドローブ サプレッション(ISLS)に関する。
【背景技術】
【0002】
二次監視レーダを使用した空域監視の一般原理
航空管制システムは、付近の航空機から飛行データを取得するために、二次監視レーダ(SSR)を用いる。情報を求めるコード化された要求が、通常地上に配置される質問機によって、無線信号としてプラットフォームに送られる。この信号を受信すると、航空機上のトランスポンダが、要求されたデータを提供する応答を、質問機に送る。航空機までの距離は、双方向時間遅延及び質問時刻におけるアンテナ方位からのターゲットへの向きから取得されることができる。航空機データは、一次監視レーダ(PSR)によって決定される位置と相関関係を持ち、SSRによって取得されるデータは、航空管制官に表示されるレーダ航跡にオーバレイされる。
【0003】
質問機は通常、モードSとして知られるシステムを使用する。モードSの重要な特徴は、質問要求が、データを要求する対象の航空機のアドレスを含んでおり、その航空機におけるトランスポンダのみが返答する点である。これは、不必要な信号トラフィック及び無線干渉を減少させることを大きな利点とし、加えて、それをしなかった場合に潜在的に多くの返答のうちのいずれが求められた返答に対応するのかを決定するために要求されたであろう大規模な処理から、質問機を開放する。
【0004】
これは必然的に、航空機のアドレスはそもそも質問機によってどのように取得されるか、という疑問を生じさせる。2つの方法が存在する。
【0005】
1.航空機は、自身のアドレスを自発的に送信してアドレスがパッシブリスニングによって獲得されることを可能にする、好適なトランスポンダを装備する。質問機はすると、これらの新しく到着した航空機に要求される飛行データを獲得するためにロールコールとして質問されることになるアドレスのリストを、コンパイルすることができる。
【0006】
2.質問機は、その質問機について現在ロールコール中でないビーム内のすべての航空機がそれらのアドレスを用いて返答することになる、オールコール(アドレス指定されていない)質問を送ることができる。
【発明の概要】
【0007】
本明細書において説明されることになる本発明は、2番目の方法のみに適用される。
【0008】
本発明によれば、送信受信モジュールを備える電子走査SSR質問機が提供され、質問機は、送信/受信モジュールにわたって漸進的な位相テーパ(phase taper)を適用することによってビームをステアリングするように適合される。
【0009】
このような方法で、本発明は、モードSのオールコール質問の同時のISLSパルスの送信が主ビームによって使用されるアレイと同じアレイを使用して送信されることを可能にする。従来の技術システムにおいては、アクティブな電子走査質問機を介して同時のISLSパルスを送信する必要はこれまで生じなかった。
【0010】
本発明は、これより添付の線図を参照して説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、アンテナ軸に対称に配置されたメインローブと共にメインローブの両側のいくつかの補助(サイド)ローブを有する、典型的な出力ビームを示す図である。
図2図2は、パルスP5及びP6を示すモードSオールコール波形を示す図である。
図3図3は、送信受信ユニット(TRU)に適用される無線周波数(RF)主(和)及び制御(差)ビームを低電力で生じさせる低電力質問機(LPI:low power interrogator)を示す、本発明によるシステムの全般的なアーキテクチャの送信部分のみを示す概略図である。
図4図4は、様々な強調を用いて、同相のP5及びP6(主ビーム及び制御ビーム)についてのISLS挙動を示すグラフであり、制御ビームの強調を増加させることの影響は、有効ビーム幅を狭めることである。
図5図5は、強調なしで、P5とP6と(主ビームと制御ビームと)の間の位相オフセットを変えるためのISLS挙動を示すグラフであり、位相オフセットを増加させることの影響は、有効ビーム幅に影響を与えることなく、ビーム内からビーム外への遷移をシャープにすることである。
図6図6は、変化する強調で、P5とP6と(主ビームと制御ビームと)の間の提案された90°の位相オフセットについてのISLS挙動を示すグラフであり、遷移はそれのシャープさ(sharpness)を保つが、強調を増加させることは有効ビーム幅を狭め、その結果、変化する強調と組み合わせた90°の位相オフセットの導入がモードSビーム幅の優れた制御を可能にすることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
質問サイドローブ抑制
ISLS(Interrogation Side-lobe Suppression)は、質問ビームの有効ビーム幅を減少させるために、二次監視レーダ(SSR)で使用される。これは、トランスポンダの返答の数を明らかに減少させ、それは質問機の処理タスクを減少させ、且つ他のSSRユーザへの一般的な干渉背景を減少させる。
【0013】
ISLSの原理が、図1を参照して以下で説明される。
【0014】
SSRアンテナは、主ビーム及び制御ビームとして知られる2つのビームを送信するために使用される。主ビームは、質問要求の本体を含み、すべてのアンテナ要素が同相で励振されるものである和ビームとして送信される。このビームは、アンテナ軸に対称に配置されたメインローブと共にメインローブの両側のいくつかの補助(サイド)ローブを有する――下の図1を参照。
【0015】
制御ビームは、主ビームと同時に、ただしアンテナの一方の側の要素が同相で、他方の側の要素が逆相で励振されるものである差パターンとして送信される短いパルスである。これは、軸に対称なビームを生じさせるが、軸上の同相放射成分と逆相放射成分との間の高度のキャンセレーションに起因して、中心部に深いヌルを有する――下の図1を参照。しかしながら、図1はまた、ずれ角(angle off-axis)を増加させると主ビームの強度は減少する一方で制御ビームの強度は増加することを示す。それらが交差するポイントは、主ビームの強度が制御ビームの強度をそこで超えるビーム幅である、有効ビーム幅を決定する。
【0016】
図2を参照すると、P6と表される主ビームパルスは、データストリームに先立つプリアンブルに位相反転を含む。この位相反転がトランスポンダによって検出される場合、それはモードS送信の残りを処理し、そして適切に応答する。この位相反転が検出されない場合、トランスポンダはその送信を無視する。制御パルスP5は、P6において位相反転が発生している期間中に送信される。もしP5パルスが、それがP6における位相反転を圧倒する大きさである場合、トランスポンダは明らかに返答を行わない。よって、そこでトランスポンダが返答することになる有効ビーム幅は、制御ビームにおけるヌルがP6において位相反転が検出されることになることを意味する、主ビームの中央の領域にある。有効ビーム幅の外側では、位相反転はP5パルスによって消失する。
【0017】
モードSの管理文書(governing document)であるICAO Vol4 Annex10は、P5パルスとP6パルスとの間の相対的な位相関係を規定しておらず、その結果、位相反転の検出などは、2つの信号の相対強度に依存するか、依存すると見なされる。
【0018】
モードS質問機のためのSSRアンテナは通常、一次監視レーダ(PSR)アンテナに取り付けられており、これらは通常、同じ回転板上で共に機械的に回転(走査)される。モードSのための従来の質問機は、主ビーム及び制御ビームのための2つの別々の送信機を用い、それは、それらが同時に放射しなければならないからである。
【0019】
電子走査質問機におけるISLS
例えば、機械的に走査されるアンテナを設置するためのスペースが十分にない航空機上の空中質問機などで質問機が電子的に走査される必要がある場合、アンテナは、電子的にステアリング可能なアレイの形態をとる。各要素は、それの高電力送信機増幅器によって駆動され、漸進的な位相テーパが、ビームをステアリングするためにアレイにわたって適用される。この位相テーパの量を変えることで、ビームステアリング角がそれに応じて変化する。
【0020】
図3は、無線周波数(RF)主(和)及び制御(差)ビームを低電力で生じさせる低電力質問機(LPI)を示し、それらは送信受信ユニット(TRU)に適用される。TRUは、(典型的には本発明のこの事例にあるように4つであるが、いくつの便利な数でもあり得る)アレイ要素の数に対応するある数の送信/受信モジュール(TRM)を含む。TRUは、LPIからの複数の信号を、TRMへの入力のための4つの方向へ分割するビームスプリッタ/コンバイナモジュール(BSCM:beam splitter/combiner module)を含む。各TRMは、デジタル移相器、デジタル減衰器、(質問送信のための)高電力増幅器ラインナップ、及び(返答の受信のための)低雑音増幅器を含む。TRMのすべてがビームの形成及びステアリングに参加することが要求されるので、このアーキテクチャから、TRMが主(和)ビーム又は制御(差)ビームのいずれかに一意に割り当てられることができないことは明らかである。この状況は新しいものであることによく留意されたい。レガシー民間航空管制質問モード、モードA(便名)及びモードC(高度)、におけるISLSパルスは、同時ではなく逐次的に送信されたので、その結果、この問題は生じなかった。
【0021】
しかしながら、これより以下で我々が示すように、TRMにおいて、従来の質問機で使用されたクラスC送信機ではなく線形増幅器(効率及び温度管理を考慮して好ましくはクラスAB、又はクラスA)を使用することによって、主パターンと制御パターンは、TRUにおいて合成されることができる。さらに以下では、4つの要素のインプリメンテーションが言及されるが、この技法は、いかなる便利な数の要素、好ましくは偶数の、にも準用される。
【0022】
モードS ISLSは、送信受信ユニットTRUの各TRMの電力増幅器(PA)におけるP6(主ビーム)及びP5(制御)ビーム電圧振幅の線形重畳によって、電子走査質問機において機械化される。
【0023】
ここで一旦主ビームと制御ビームとを別々に考えてみたい。軸上(ビームステアリングの無い)において、主ビームは、同相で駆動されるすべてのアンテナ要素を用いて和パターンとして送信される。制御ビームは、2つの右側要素において反転された位相で、差パターンとして送信される。別々に送信される場合、その影響は、例示されるように、和パターンを生じさせ、そして差パターンを生じさせることになるだろう(上の図1参照)。
【0024】
するとアレイ要素内の合計電圧vは、アレイ要素電流iを生じさせることになる。空間中のポイントPにおける和パターンEのフィールドはiに比例する(マクスウェルの方程式の線形性)ので、Pにおける合計フィールドは、増幅器ラインナップが線形であるため、vに正比例する。
【0025】
同じ根拠により、同じポイントPにおける差パターンEのフィールドは、全体のセットアップが線形であるので、vに正比例することが分かる。
【0026】
再び、システは線形であるので、重畳によって差電圧vに合計電圧vを足し合わせて、同じポイントPにおいて干渉パターンE+E及び要素電流i+iを与えることができる。しかし、これは従来のSSR質問機において別々の和及び差ビーム送信機によって生み出されたであろうものと全く同じ干渉パターンである。再現可能な干渉パターンが作り出されるようにするために、主ビーム及び制御ビームの位相はコヒーレントなままとなることが必要である。これらのコヒーレントなモードS送信は、LPIにおいて低電力で生成され、続いてTRUにおいて重畳及び電力増幅される。簡単に言えば、システムは線形であるので、主パターン及び制御パターンは遠距離場において(受信トランスポンダの近隣においては尚更)干渉する独立した送信と考えられることができる。
【0027】
最後に、ビームをステアリングするために、適切な位相テーパが、4つのアレイ要素駆動電流の各々に、TRMによって適用されることができる。
【0028】
実際には、様々な信号の利得が容易に制御されることができるので(線形システム)、和及び差パターンの相対的な大きさ(強調)もまた変化させられることができ、有効ビーム幅が要望通りに調整されることを可能にする――クラスC増幅器を用いた従来のSSR質問機では通常利用可能でない特徴。追加的な利点として、線形増幅器ラインナップによって精密に与えられる出力電力を制御するための能力は、干渉を減少させるのを助けることは注目に値する。電力は、所望の航空機からの返答を引き出すために要求されるレベルにまで減少させられることができる。これは、管制空域内の又は管制空域に隣接したSSR質問機の使用権限を当局から得るのを助けることになる。
【0029】
各TRMの電力出力は、主パターンと差パターンとの間で共有されなければならないので、質問機の電力出力は、TRUの合計電力定格の半分のみである。しかしながら、主パターンにおいてこの最大の、TRU電力の半分を達成するために、主ビーム及び制御ビームは相互にコヒーレントであり、且つ位相が直交しなければならず、さもなければ増幅器は、ビームパターンについての予測不可能な結果により限定する(非線形となる)恐れがある。位相の直交は、制御ビームの位相を、それがLPIにおいて生成されるときに90°オフセットすることによって、容易に生成されることができる。
【0030】
分析
主ビーム電力
P5及びP6パルスの許容振幅は、それらを直交に(すなわち90°の相対位相差で)足し合わせるという単純な方法によって、V/2からV/√2に増加させられることができ、ここでVは増幅器における最大電圧スウィングである。
【0031】
TRUの左側のチャネルでは、P6とP5が足し合わされ、以下が得られる。
【0032】
total=V/√2+iV/√2
これらはベクトル的に足し合わされ、振幅|Vtotal|=Vが与えられ、それは最大電圧スウィングを超えない。[P5及びP6パルスが同相で足し合わされたとしたら、各ケースにおいて電圧振幅はV/2に限定されることになり、それは直交のケース(振幅V/√2)と比較して主ビームの電力出力を半分にすることになる。]
TRUの右側チャネルでは、P5が位相反転され、以下が得られる。
【0033】
total=V/√2-iV/√2
再びこれらは、ベクトル的に足し合わされ、振幅|Vtotal|=Vが与えられる。
【0034】
合計電力出力は、すると以下のようになる。
{[V/√2+iV/√2][V/√2-iV/√2]}/Z=V/Z(左側のチャネル)
及び
{[V/√2-iV/√2][V/√2+iV/√2]}/Z=V/Z(右側のチャネル)
すべてのチャネルが最大電力(V/Z)を放射しているので、TRUの電力能力は最大限に利用される。
【0035】
主ビームにおける電力はすると[V/√2]/Z=V/2Z、又は当初の想定通り合計電力の半分である。
【0036】
モードSの主チャネルと制御チャネルとの間の位相コヒーレンスは、常に維持されなくてはならないことは、上記から容易に理解される。もしP5とP6との間の位相差が90°とは著しく異なる場合には、増幅器は飽和する恐れがある。すると、TRU内での主ビーム及び制御ビームの生成のための線形性の議論の妥当性が問われる。
【0037】
トランスポンダの挙動に対する影響
「P5とP6との間の90°のこの追加的な相対位相シフトは、返答するトランスポンダの挙動に対してどのような影響があるのか」という疑問が即座に生じる。
【0038】
上述したように、ICAO Annex10自体は、P5とP6の位相間の明確な関係を規定していないので、これの影響は深刻になる可能性は低いことが即座に分かるだろう。また、P5及びP6パルスについて別々のクラスC送信機を活用する著者に知られた従来のモードS質問機が存在する。これらについて、パルスターンオンにおけるP5とP6との間の位相関係は、大体恣意的であり、そのような質問機は、実際には完全にうまく機能するようである。しかしながら、この問題はもっと厳密に、よく検討するべきである。
【0039】
軸方向に沿って主ビームを形成するために、アレイ要素は同相で駆動される。すべての要素について同じユニット振幅を仮定すると、あるずれ角(off-axis angle)についての遠距離場における主ビーム振幅Mは、以下によって与えられる。
【0040】
M=1+eiφ+e2iφ+e3iφ (1)
ここでφ=k d sinθであり、kは波数(=2π/λ)であり、dは、アンテナ要素ピッチであり、θはずれ角(the off-axis angle)である。距離Rにおける乗算伝播係数(multiplicative propagation factor)eikR/Rは、分析において何の機能も果たさないので、省略されている。
【0041】
ビームをステアリングするために、一連の要素の駆動に対して追加的な漸進的な位相オフセット(位相テーパ)α、2α、3αを導入する必要がある。これをすることの影響は、空間中の全パターンをステアリングすることであり、これは局所トランスポンダの挙動に対しては何の影響もなく、よってそれは無視される。
同様に、制御ビームCは、2つの右側の要素のサインを反転させることによって、又は追加的な位相シフトπを適用することによって同等に、構成される。
【0042】
C=1+eiφ-e2iφ-e3iφ (2)
和ビームMについての等比級数を合計することとそれに続く何らかの三角法の操作は、振幅Mが以下によって与えられることを示す。
【0043】
M=4cosφ cos(φ/2) e3iφ/2 (3)
P6パルスの位相反転(M_ビーム)において、Mビームの振幅のサインは、単純に反転させられる、すなわち、
M_=-4cosφ cos(φ/2) e3iφ/2 (4)
制御ビームCについて(3)のようにすると、以下を生じさせる。
【0044】
C=-4i sinφ cos(φ/2) e3iφ/2 (5)
制御ビームは、主からのπ/2度の位相差に対応する追加的な因数iを含むことに留意されたい。また、正弦項の存在が原因で、主ビームと比較した制御ビームの位相は、照準を横切るとき量πだけ急増する。これは、左/右の照準決定を行うために単パルスで活用される。
【0045】
位相反転が無いため、制御ビームについては(4)に対応する方程式は無い。
【0046】
主ビームと制御ビームとの間の位相シフトγの導入を可能にするために、制御ビームは、追加的な項eiγで乗算される。γは、最終的にはπ/2(90°)に設定されることになるが、当面は分析を一般的に保つ方がよい。これにより、以下が得られる。
【0047】
C=-4i sinφ cos(φ/2) e3iφ/2iγ (6)
トランスポンダにおいて、これらのビームは、P6位相反転の前では振幅U=M+KC、後ではV=M_+KCと、遠距離場において重畳され、ここで係数Kは、必要な場合、制御ビームの強調の導入を可能にする。通常K=1(強調なし)である。
【0048】
U=4cos(φ/2)e3iφ/2[cosφ-iK sinφ eiγ] (7)
V=-4cos(φ/2)e3iφ/2[cosφ+iK sinφ eiγ] (8)
トランスポンダは、結果として得られる2つのベクトルUとVとの間の角度ωを検出し、この角度がπ/2とπとの間である場合、すなわち主ビームの位相反転が検出された場合に、応答する。ωを決定する際、両方のベクトルを乗じる共通の係数4cos(φ/2)e3iφ/2は、無視されることができる。
【0049】
U及びVを以下のように実部及び虚部に拡張することは便利である。
【0050】
U=[(cosφ+K sinφ sinγ)-iK sinφ cosγ] (9)
V=-[(cosφ+K sinφ sinγ)+iK sinφ cosγ] (10)
現段階では、U及びVを(複素数ではなく)通常のベクトル(ordinary vectors)と考えて、それらのスカラー積をとることがより便利である。これにより、cosωに関して角度が得られ、tan関数の不便な不連続性が避けられる、すなわち、
U=[(cosφ+K sinφ sinγ),-K sinφ cosγ] (11)
V=[-(cosφ+K sinφ sinγ),-K sinφ cosγ] (12)
そしてωは、以下によって得られる。
【0051】
ω=cos-1{(U.V)/(|U||V|)} (13)
ωの挙動は、P5 ISLSパルスの位相オフセット及び制御ビームの強調の異なる値について調査された。以下の図4は、様々な強調で、同相のP5及びP6についてのISLS挙動を示す。予想されるように、制御ビームの強調を増加させることの影響は、明らかに有効ビーム幅を狭めることであり、位相オフセットのサインは挙動に影響を与えない。ビームのエッジは、検出された位相変化が90°になるところである。
【0052】
以下の図5は、強調なしで、P5とP6との間の位相オフセットを変えるためのISLS挙動を示す。位相オフセットを増加させることの影響は、有効ビーム幅に影響を与えることなく、ビーム内からビーム外への遷移をシャープにすることである。提案された90°オフセットにおいて、遷移は非常にシャープである。これは、有効ビーム幅が明確に規定されていることをそれが意味するので、極めて望ましい特徴である。
【0053】
最後に、図6は、変化する強調の、P5とP6との間の提案された90°の位相オフセットについてのISLS挙動である。各ケースにおいて、遷移は、それのシャープさを保つが、強調を増加させることは、有効ビーム幅を狭める。これは、変化する強調と組み合わせた90°の位相オフセットの導入が、モードSビーム幅の優れた制御を可能にすることを示す。
【0054】
よって結論は、90°の位相オフセットを導入することの影響は、それが以下を可能にするので、全面的に有益であるということである。
【0055】
・TRUの全電力能力が効率的に利用されることになる。
【0056】
・モードSにおける有効ビーム幅がシャープに規定されることになる。
【0057】
このような方法で、本発明は、モードSのオールコール質問の同時のISLSパルスの送信が、主ビームによって使用されるアレイと同じアレイを使用して送信されることを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-12-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時のISLSパルスを用いてモードSオールコールを送信するように適合された電子走査SSR質問機であって、前記電子走査SSR質問機は送信モジュールを備え、各送信モジュールは、主ビームパルスと制御ビームパルスを線形に、コヒーレントに重畳するように適合された線形増幅器チェーンを備え、
前記電子走査SSR質問機は、前記送信モジュール/受信モジュールにわたって漸進的な位相テーパを適用することによって、重畳された前記主ビームパルスと制御ビームパルスをステアリングするように適合されている、電子走査SSR質問機。
【請求項2】
前記主ビームパルスP6と制御ビームパルスP5は直交に組み合わせられる、請求項1に記載の電子走査SSR質問機。
【請求項3】
前記線形増幅器チェーンがクラスAB増幅器を備える、請求項1又は2に記載の電子走査SSR質問機。
【請求項4】
請求項1~のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機を備える、レーダシステム。
【請求項5】
請求項1~のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機を備える、航空管制システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明によれば、請求項1に係る電子走査SSR質問機が提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
このような方法で、本発明は、モードSのオールコール質問の同時のISLSパルスの送信が、主ビームによって使用されるアレイと同じアレイを使用して送信されることを可能にする。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 送信受信モジュールを備える電子走査SSR質問機であって、前記送信/受信モジュールにわたって漸進的な位相テーパを適用することによって、ビームをステアリングするように適合される、電子走査SSR質問機。
[2] 複数の送信/受信モジュールを備える[1]に記載の電子走査SSR質問機であって、前記質問機が4つのチャネルを利用し、前記送信/受信モジュールが増幅器ラインナップを備える、電子走査SSR質問機。
[3] 前記質問機が、同時のISLSパルスを用いたモードSオールコールが可能であるように適合され、増幅器ラインナップにおいて、差パルスP5が主ビームパルスP6に足し合わされる、[1]又は[2]に記載の電子走査SSR質問機。
[4] 増幅器ラインナップが、主ビーム及び制御ビームの線形重畳を可能にする線形増幅器チェーンを備える、[1]~[3]のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
[5] 増幅器ラインナップがさらに、精密制御の和及び差ビーム形成を可能にするために、主ビームと制御ビームとの間の位相コヒーレンスを維持する線形増幅器チェーンを備える、[1]~[4]のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
[6] 線形増幅器チェーンが、主ビームにおいて送信される電力を最大化するために、前記主ビームと制御ビームとの間に90°の位相オフセットを導入する、[1]~[5]のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
[7] 線形増幅器チェーンが、有効ビームの境界規定のシャープさを最大化するために、主ビームと制御ビームとの間に90°の位相オフセットを導入する、[1]~[6]のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
[8] 線形増幅器チェーンが、局所又は隣接空域における他のATCユーザに対する干渉を減少させるために、精密な送信機電力制御を可能にする、[1]~[7]のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
[9] 線形増幅器チェーンが、主ビーム及び制御ビームの相対電力密度を変えることによって、有効質問機ビーム幅の制御を可能にする、[1]~[8]のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
[10] 線形増幅器チェーンがクラスAB増幅器を備え、それにより電力効率を改善し、温度管理を単純化する、[1]~[9]のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機。
[11] [1]~[10]のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機を備える、レーダシステム。
[12] [1]~[10]のうちのいずれか1項に記載の電子走査SSR質問機を備える、航空管制システム。
[13] 添付の線図を参照して上で説明された、電子走査SSR質問機。
【外国語明細書】