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特開2022-31948筋ジストロフィを処置するためのエキソンスキッピング組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031948
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】筋ジストロフィを処置するためのエキソンスキッピング組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220215BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20220215BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/712
A61K31/7125
A61K31/7115
A61P21/00
A61K48/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021204872
(22)【出願日】2021-12-17
(62)【分割の表示】P 2019212294の分割
【原出願日】2014-03-14
(31)【優先権主張番号】61/782,706
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】501237039
【氏名又は名称】サレプタ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ケー. ベストウィック
(72)【発明者】
【氏名】ダイアン エリザベス フランク
(57)【要約】
【課題】筋ジストロフィを処置するためのエキソンスキッピング組成物の提供。
【解決手段】ヒトジストロフィン遺伝子における選択された標的部位に結合して、エキソン53スキッピングを誘発することができるアンチセンス分子が記載されている。一局面において、ヒトジストロフィン遺伝子において選択された標的に結合してエキソンスキッピングを誘発することができる、長さが20~50のヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが提供され、上記アンチセンスオリゴマーは、H53A(+36+60)、H53A(+30+57)、H53A(+30+56)、H53A(+30+55)およびH53A(+33+57)からなる群より選択されるエキソン53標的領域に特異的にハイブリダイズする塩基の配列を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この特許出願は、2013年3月14日に出願された米国仮特許出願第61/782,706号の利益を主張する。上記で参照された仮特許出願の全体の内容は、参考として本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子におけるエキソンスキッピングを促進するのに適した新規なアンチセンス化合物および組成物に関する。本発明はまた、本発明の方法における使用のために適合された新規なアンチセンス組成物を使用したエキソンスキッピングを誘発するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
アンチセンス技術は、種々の異なるレベル(転写、スプライシング、安定性、翻訳)での遺伝子発現に影響を与える一連の化学を使用して開発されている。その研究の多くは、広範囲の適応症における異常または疾患に関連する遺伝子を補正または補償するアンチセンス化合物の使用に焦点を当ててきた。アンチセンス分子は特異性を伴って遺伝子発現を阻害することができ、このために、遺伝子発現のモジュレーターとしてのオリゴヌクレオチドに関する多くの研究努力は、標的となる遺伝子の発現、またはシス作用性エレメントの機能を阻害することに焦点を当ててきた。アンチセンスオリゴヌクレオチドは典型的には、センス鎖(例えば、mRNA)、またはあるウイルスRNA標的の場合はマイナス鎖のいずれかであるRNAを指向している。特定の遺伝子下方調節の所望の効果を達成するために、オリゴヌクレオチドは一般に、標的とされたmRNAの崩壊を促進するか、mRNAの翻訳をブロックするか、またはシス作用性RNAエレメントの機能をブロックし、それによって、標的タンパク質の新規合成、またはウイルスRNAの複製を効果的に防止する。
【0004】
しかし、このような技術は、目的が未変性タンパク質の産生を上方調節すること、または翻訳の未成熟な終結を誘発する変異、例えば、ナンセンス変異もしくはフレームシフト変異を補償することである場合、有用ではない。これらの場合において、欠陥のある遺伝子転写物は、標的とされた分解または立体的阻害に供されるべきではなく、したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチド化学は、標的mRNAの崩壊を促進するべきではなく、または翻訳をブロックするべきではない。
【0005】
種々の遺伝学的疾患において、遺伝子の最終的な発現に対する変異の効果は、スプライシングプロセスの間の標的とされたエキソンスキッピングのプロセスによってモジュレートすることができる。スプライシングプロセスは、プレmRNAにおける隣接するエキソン-イントロンジャンクションを近傍に導き、かつイントロンの終わりにおけるホスホジエステル結合の切断を行う、複雑な多構成要素の機構によって方向付けられ、これはエキソンの間のホスホジエステル結合のそれに続く再形成を伴い、これは一緒にスプライシングされる。この複雑かつ高度に正確なプロセスは、相対的に短い半保存的RNAセグメントであるプレmRNAにおける配列モチーフによって媒介され、次いでスプライシング反応に関与する様々な核スプライシング因子が配列モチーフに結合する。スプライシング機構が、プレmRNAプロセシングに関与するモチーフを解読または認識する方法を変更することによって、差次的にスプライシングされたmRNA分子を生じさせることが可能である。ヒト遺伝子の大部分は、正常な遺伝子発現の間に選択的にスプライシングされることが今や認識されてきたが、関与する機構は同定されてこなかった。Bennettら(米国特許第6,210,892号)は、標的RNAのRNAse Hが媒介する切断を誘発しないアンチセンスオリゴヌクレオチド類似体を使用した、野性型細胞のmRNAプロセシングのアンチセンスのモジュレーションについて記載している。これによって、膜貫通ドメインをコードするエキソンを欠いている可溶性TNFスーパーファミリー受容体の産生のために、特異的エキソンを欠いている選択的にスプライシングされたmRNA(例えば、Sazani, Koleら、2007年によって記載されているような)を産生することができることにおける有用性が見出される。
【0006】
正常に機能しているタンパク質が、その中の変異のために未成熟に終結される場合、アンチセンス技術によっていくつかの機能タンパク質の産生を回復させるための手段はスプライシングプロセスの間の介入によって可能であることが示されてきており、疾患をもたらす変異と関連するエキソンをいくつかの遺伝子から特異的に欠失させることができる場合、未変性タンパク質の同様の生物学的特性を有するか、またはエキソンと関連する変異によってもたらされる疾患を改善するのに十分な生物活性を有する、短縮されたタンパク質産物を産生することができることがある(例えば、Sierakowska, Sambadeら、1996年;Wilton, Lloydら、1999年;van Deutekom, Bremmer-Boutら、2001年;Lu, Mannら、2003年;Aartsma-Rus, Jansonら、2004年を参照されたい)。Koleら(米国特許第5,627,274号;同第5,916,808号;同第5,976,879号;および同第5,665,593号)は、標的とされたプレmRNAの崩壊を促進しない修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチド類似体を使用した、異常なスプライシングに対抗する方法を開示している。Bennettら(米国特許第6,210,892号)は、標的RNAのRNAse Hが媒介する切断を誘発しないアンチセンスオリゴヌクレオチド類似体をまた使用した、野性型細胞のmRNAプロセシングのアンチセンスのモジュレーションを記載している。
【0007】
標的とされたエキソンスキッピングのプロセスは、多くのエキソンおよびイントロンが存在するか、エキソンの遺伝子構成において重複性が存在するか、またはタンパク質が1つもしくは複数の特定のエキソンを伴わずに機能することができる、長い遺伝子において特に有用である可能性が高い。様々な遺伝子における変異によってもたらされる切断と関連する遺伝学的疾患の処置のための遺伝子プロセシングを再指向させる努力は、(1)スプライシングプロセスに関与するエレメントと完全もしくは部分的にオーバーラップするか、または(2)そのエレメントにおいて起こる特定のスプライシング反応を正常に媒介するスプライシング因子の結合および機能を撹乱するためにエレメントに十分に近い位置においてプレmRNAに結合する、アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用に焦点を合わせてきた。
【0008】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、タンパク質ジストロフィンの発現の欠陥によってもたらされる。タンパク質をコードする遺伝子は、DNAの2百万超のヌクレオチドに亘って広がる79のエキソンを含有する。エキソンのリーディングフレームを変化させるか、もしくは終止コドンを導入するか、または全アウトオブフレームエキソン(複数可)の除去、または1つもしくは複数のエキソンの重複によって特徴付けられる、任意のエキソンの変異は、機能的ジストロフィンの産生を撹乱する可能性を有し、DMDをもたらす。
【0009】
変異、典型的には1つまたは複数のエキソンの欠失が、全ジストロフィン転写物に沿った正確なリーディングフレームをもたらし、その結果、タンパク質へのmRNAの翻訳が未成熟で終結しない場合、筋ジストロフィーのより重度でない形態であるベッカー型筋ジストロフィー(BMD)が生じることが見出されてきた。変異したジストロフィンプレmRNAのプロセシングにおける上流および下流のエキソンの接合によって遺伝子の正確なリーディングフレームが維持される場合、結果は、いくらかの活性を保持する短い内部欠失を有するタンパク質をコードするmRNAであり、ベッカー表現型がもたらされる。
【0010】
何年にも亘って、ジストロフィンタンパク質のリーディングフレームを変化させないエキソン(複数可)の欠失は、BMD表現型を生じさせ、一方では、フレームのシフトをもたらすエキソン欠失は、DMDを生じさせることが公知であった(Monaco, Bertelsonら、1988年)。一般に、リーディングフレームを変化させ、したがって、適切なタンパク質翻訳を中断する点変異およびエキソン欠失を含めたジストロフィン変異は、DMDをもたらす。一部のBMDおよびDMD患者は、複数のエキソンをカバーするエキソン欠失を有することにも留意すべきである。
【0011】
アンチセンスオリゴリボヌクレオチドによる変異体ジストロフィンプレmRNAスプライシングのモジュレーションは、インビトロおよびインビボの両方で報告されてきた(例えば、Matsuo, Masumuraら、1991年;Takeshima, Nishioら、1995年;Pramono, Takeshimaら、1996年;Dunckley, Eperonら、1997年;Dunckley, Manoharanら、1998年;Errington, Mannら、2003年を参照されたい)。
【0012】
mdxマウスモデルにおける特異的および再現性のあるエキソンスキッピングの最初の例は、Wiltonらによって報告された(Wilton, Lloydら、1999年)。アンチセンス分子をドナースプライス部位に向けることによって、培養細胞の処理の6時間以内に、ジストロフィンmRNAにおいて一貫した効率的なエキソン23スキッピングが誘発された。Wiltonらはまた、より長いアンチセンスオリゴヌクレオチドによる、マウスジストロフィンのプレmRNAのアクセプター領域を標的とすることを記載している。イントロン23ドナースプライス部位に向けられた最初のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、初代培養した筋芽細胞において一貫したエキソンスキッピングを誘発した一方で、この化合物は、より高いレベルのジストロフィンを発現している不死化された細胞培養物においてはるかにより効率的ではないことが見出された。しかし、精巧な標的化およびアンチセンスオリゴヌクレオチド設計によって、特定のエキソン除去の効率は、ほぼ一桁分増大した(Mann, Honeymanら、2002年)。
【0013】
最近の研究は、ジストロフィンが存在しないことによって影響を受ける組織における最小の有害効果を伴う、持続性のジストロフィン発現を達成する試みに取り組み始めた。DMDを有する4人の患者の前脛骨筋中へのエキソン51(PRO051)を標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチドの筋肉内注射は、臨床的に明らかな有害効果を伴わずにエキソン51の特異的スキッピングをもたらした(Mann, Honeymanら、2002年;van Deutekom, Jansonら、2007年)。mdxマウスにおいてエキソン23を標的とした細胞透過性ペプチドに結合体化されたアンチセンスホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PPMO)の全身送達に注目した研究は、検出可能な毒性を伴わずに、骨格筋および心筋において高く持続性のジストロフィンタンパク質産物を産生した(Jearawiriyapaisarn, Moultonら、2008年;Wu, Moultonら、2008年;Yin, Moultonら、2008年)。
【0014】
DMDの処置のためのスプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)の安全性および有効性を試験する最近の臨床治験は、スプライソゾームの立体的遮断によるプレmRNAの選択的スプライシングを誘発するSSO技術に基づいている(Cirakら、2011年;Goemansら、2011年;Kinaliら、2009年;van Deutekomら、2007年)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,210,892号明細書
【特許文献2】米国特許第5,627,274号明細書
【特許文献3】米国特許第5,916,808号明細書
【特許文献4】米国特許第5,976,879号明細書
【特許文献5】米国特許第5,665,593号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これらの成功にも関わらず、複数のジストロフィンエキソンを標的とした改善されたアンチセンスオリゴマー、および改善された送達組成物、およびDMDの治療適用のための方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一態様において、本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子において選択された標的に結合してエキソンスキッピングを誘発することができる、長さが20~50のヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーを提供し、このアンチセンスオリゴマーは、H53A(+36+60)、H53A(+30+57)、H53A(+30+56)、H53A(+30+55)およびH53A(+33+57)からなる群より選択されるエキソン53標的領域に特異的にハイブリダイズする塩基の配列を含み、オリゴマーの塩基は、モルホリノ環構造に連結しており、モルホリノ環構造が、1つの環構造のモルホリノ窒素と隣接する環構造の5’環外炭素とを接合するリン含有サブユニット間連結によって接合されている。一実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、配列番号1~5と指定される塩基の配列を含む。別の実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、長さが約20~30のヌクレオチドまたは長さが約25~28のヌクレオチドである。さらに別の実施形態において、配列は、25のヌクレオチドであり、そして配列番号1~5から選択される配列からなる。一実施形態において、本発明は、RNase Hを活性化しないアンチセンスオリゴマーを提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、例えばポリエチレングリコール分子などのアンチセンスオリゴマーの活性、細胞分布、または細胞取込みを増強する1つまたは複数の部分または結合体に化学的に連結しているアンチセンスオリゴマーを提供する。他の実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、アルギニンに富んだペプチド、例えば配列番号16~31から選択される配列に結合体化している。
【0019】
さらに別の態様において、本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子において選択された標的に結合してエキソンスキッピングを誘発することができる、長さが20~50のヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーを提供し、このアンチセンスオリゴマーは、H53A(+36+60)、H53A(+30+57)、H53A(+30+56)、H53A(+30+55)およびH53A(+33+57)からなる群より選択されるエキソン53標的領域に特異的にハイブリダイズする塩基の配列を含み、オリゴマーの塩基は、モルホリノ環構造に連結しており、モルホリノ環構造は、1つの環構造のモルホリノ窒素と隣接する環構造の5’環外炭素とを接合する実質的に荷電していないリン含有サブユニット間連結によって接合されている。一実施形態において、アンチセンスオリゴマーの連結の5%~35%は、正に荷電している。別の実施形態において、アンチセンスオリゴマーのサブユニット間連結は、荷電しておらず、生理学的pHにて正に荷電している連結が散在しており、正に荷電している連結の総数は、2および連結の総数の半分以下の間である。一部の実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、モルホリノ環構造およびホスホロジアミデートサブユニット間連結を含む。一部の実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、ペンダントカチオン性基で修飾されている。
【0020】
別の態様において、本発明は、アンチセンスオリゴマーを提供し、このオリゴマーは、以下:
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
を有し、ここで、
【0026】
【化5】
【0027】
そして、^=リン中心の立体化学は定義されていない。
【0028】
必要に応じて、ウラシル塩基チミン塩基に置き換わり得る。
【0029】
一態様において、アンチセンス化合物は、1つのサブユニットのモルホリノ窒素と隣接するサブユニットの5’環外炭素とを接合するリン含有サブユニット間連結から構成され、連結は、構造:
【0030】
【化6】
【0031】
によるホスホロジアミデート連結であり、
式中、Y=Oであり、Z=Oであり、Pjは、塩基特異的水素結合によって、ポリヌクレオチド中の塩基に結合するのに有効であるプリンまたはピリミジン塩基対合部分であり、Xは、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、またはアルキルアミノ、例えば、X=NRであり、各Rは、独立に、水素またはメチルである。荷電していない上記のサブユニット間連結は、生理学的pHにて正に荷電している連結が散在してもよく、正に荷電している連結の総数は、1およびサブユニット間連結の総数の全てまでの間である。
【0032】
別の例示的な実施形態において、化合物は、本明細書においてその全体が組み込まれている米国特許出願第13/118,298号に記載されているようなサブユニット間連結および末端修飾からなる。
【0033】
一態様によれば、本発明は、ヒトジストロフィンプレmRNAにおける選択された標的に結合し、エキソンスキッピングを誘発することができるアンチセンス分子を提供する。別の態様において、本発明は、一緒に使用されて、単一または複数のエキソンスキッピングを誘発する、2つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。例えば、単一または複数のエキソンのエキソンスキッピングは、2つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチド分子を一緒に連結することによって達成することができる。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、H53A(+36+60)、H53A(+30+57)、H53A(+30+56)、H53A(+30+55)およびH53A(+33+57)からなる群より選択されるアニーリング部位と指定されるジストロフィン遺伝子のエキソン53標的領域に対して相補的である少なくとも10、12、15、17、20または25の連続したヌクレオチドを含めた、長さが20~50のヌクレオチドの単離されたアンチセンスオリゴヌクレオチドに関し、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、エキソン53スキッピングを誘発するアニーリング部位に特異的にハイブリダイズする。一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが20~30または25~28のヌクレオチドである。
【0035】
別の態様において、本発明は、配列番号1~5からなる群より選択されるヌクレオチド配列の少なくとも10、12、15、17、20または25の連続したヌクレオチドを含めた、長さが20~50のヌクレオチドの単離されたアンチセンスオリゴヌクレオチドに関し、オリゴヌクレオチドは、ジストロフィン遺伝子のエキソン53標的領域に特異的にハイブリダイズし、エキソン53スキッピングを誘発する。一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが20~30または25~28のヌクレオチドである。別の実施形態において、配列番号1~5におけるチミン塩基は、任意選択でウラシルである。
【0036】
本発明は、下記で同定するものなどのエキソン53を標的とした例示的なアンチセンス配列を含む:
【0037】
【化7】
【0038】
一実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、アニーリング部位H53A(+30+56)、例えば配列番号3に特異的にハイブリダイズする。なお別の実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、アニーリング部位H53A(+30+57)、例えば配列番号2に特異的にハイブリダイズする。なお別の実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、アニーリング部位H53A(+30+55)、例えば配列番号4に特異的にハイブリダイズする。なお別の実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、アニーリング部位H53A(+33+57)、例えば配列番号5に特異的にハイブリダイズする。なお別の実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、アニーリング部位H53A(+36+60)、例えば配列番号1に特異的にハイブリダイズする。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNase Hによる切断を最小化または防止する1つまたは複数の修飾を含有する。いくつかの実施形態において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNase Hを活性化しない。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、非天然骨格を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドの骨格の糖部分は、非天然部分、例えば、モルホリノで置き換えられている。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、非天然ヌクレオチド間連結、例えば、修飾されたホスフェートで置き換えられた、オリゴヌクレオチドの骨格のヌクレオチド間連結を有する。例示的な修飾されたホスフェートは、メチルホスホネート、メチルホスホロチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデート(phosophropiperazidates)、およびホスホロアミデートを含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’-O-メチル-オリゴリボヌクレオチドまたはペプチド核酸である。
【0040】
いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、塩基の修飾または置換を含有する。例えば、特定の核酸塩基を選択して、本明細書に記載されているアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合親和性を増大し得る。これらは、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6およびO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシンならびに2,6-ジアミノプリンを含めた)を含む。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6~1.2℃だけ増大させることが示されてきており、本明細書に記載されているアンチセンスオリゴヌクレオチド中に組み込み得る。一実施形態において、オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのピリミジン塩基は、5-置換ピリミジン塩基を含み、ピリミジン塩基は、シトシン、チミンおよびウラシルからなる群より選択される。一実施形態において、5-置換ピリミジン塩基は、5-メチルシトシンである。別の実施形態において、オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのプリン塩基は、N-2、N-6置換プリン塩基を含む。一実施形態において、N-2、N-6置換プリン塩基は、2,6-ジアミノプリンである。
【0041】
一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、単独で、または別の修飾、例えば、2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせて、1つまたは複数の5-メチルシトシン置換を含む。さらに別の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、単独で、または別の修飾と組み合わせて、1つまたは複数の2,6-ジアミノプリン置換を含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の部分、例えば、ポリエチレングリコール部分、または結合体、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取込みを増強させるアルギニンに富んだ細胞透過性ペプチド(例えば、配列番号16~31)に化学的に連結している。例示的な一実施形態において、アルギニンに富んだポリペプチドは、そのN末端またはC末端残基においてアンチセンス化合物の3’端または5’端に共有結合的にカップリングしている。また例示的な実施形態において、アンチセンス化合物は、モルホリノサブユニット、および1つのサブユニットのモルホリノ窒素と隣接するサブユニットの5’環外炭素とを接合するリン含有サブユニット間連結から構成される。
【0043】
別の態様において、本発明は、上記のアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えば、配列番号1~5のアンチセンスオリゴヌクレオチドを組み込む発現ベクターを提供する。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、修飾されたレトロウイルスまたは非レトロウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルスベクターである。
【0044】
別の態様において、本発明は、上記のアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびリン酸緩衝液を含む食塩溶液を含む医薬組成物を提供する。
【0045】
別の態様において、本発明は、患者への送達に適した形態の少なくとも1つのアンチセンス分子を含む、遺伝学的障害の予防的または治療的処置において助けるように選択およびまたは適合されたアンチセンス分子を提供する。
【0046】
別の態様において、本発明は、(a)本明細書に記載の方法によってアンチセンス分子を選択するステップと、(b)このような処置を必要としている患者に分子を投与するステップとを含む、特定のタンパク質をコードする遺伝子における変異が存在し、かつ変異の影響をエキソンスキッピングによって抑止することができる、遺伝学的疾患を患っている患者を処置するための方法を提供する。本発明はまた、遺伝学的疾患の処置のための医薬を製造するための、精製および単離された本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用に取り組む。
【0047】
別の態様において、本発明は、患者に、有効量の適当に設計された、その患者における特定の遺伝的病変に関連する本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含む、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはベッカー筋ジストロフィーなど)によって特徴付けられる状態を処置する方法を提供する。さらに、本発明は、患者に有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチド、またはこれらの生物学的分子の1つもしくは複数を含む医薬組成物を投与することによって、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはベッカー筋ジストロフィーなど)を予防または最小化するための患者を予防的に処置するための方法を提供する。
【0048】
別の態様において、本発明はまた、遺伝学的疾患を処置するためのキットを提供し、キットは、適切な容器中にパッケージされた少なくとも1つの本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびその使用のための指示書を含む。
【0049】
これらおよび他の目的および特色は、下記の発明の詳細な説明を図面と併せて読んだときにより完全に理解される。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒトジストロフィン遺伝子において選択された標的に結合してエキソンスキッピングを誘発することができる、長さが20~50のヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーであって、前記アンチセンスオリゴマーは、H53A(+36+60)、H53A(+30+57)、H53A(+30+56)、H53A(+30+55)およびH53A(+33+57)からなる群より選択されるエキソン53標的領域に特異的にハイブリダイズする塩基の配列を含み、前記オリゴマーの前記塩基は、モルホリノ環構造に連結しており、そして前記モルホリノ環構造は、1つの環構造のモルホリノ窒素と隣接する環構造の5’環外炭素とを接合するリン含有サブユニット間連結によって接合されている、アンチセンスオリゴマー。
(項目2)
前記配列が、配列番号1~5である、項目1に記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目3)
長さが約20~30のヌクレオチドである、項目1または2に記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目4)
長さが約25~28のヌクレオチドである、項目1または2に記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目5)
前記配列が、配列番号1~5から選択される配列からなる、項目2に記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目6)
RNase Hを活性化しない、項目1~5のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目7)
前記アンチセンスオリゴマーの活性、細胞分布、または細胞取込みを増強する1つまたは複数の部分または結合体に化学的に連結している、項目1~5のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目8)
ポリエチレングリコール分子に化学的に連結している、項目7に記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目9)
アルギニンに富んだペプチドに結合体化している、項目1~5のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目10)
前記アルギニンに富んだペプチドが、配列番号16~31から選択される配列を含む、項目9に記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目11)
1つの環構造のモルホリノ窒素と隣接する環構造の5’環外炭素とを接合する実質的に荷電していないリン含有サブユニット間連結によって接合されているモルホリノ環構造を含む、前記項目のいずれかに記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目12)
前記連結の5%~35%が正に荷電している、項目11に記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目13)
前記サブユニット間連結が、荷電しておらず、そして前記サブユニット間連結に生理学的pHにて正に荷電している連結が散在しており、ここで正に荷電している連結の総数が、2および連結の総数の半分以下の間である、前記項目のいずれかに記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目14)
モルホリノ環構造およびホスホロジアミデートサブユニット間連結を含む、項目1~13のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴマー。
(項目15)
ペンダントカチオン性基で修飾されている、前記アンチセンスオリゴマー。
(項目16)
以下:
【化25】
【化26】

【化27】
【化28】
【化29】
からなる群より選択される構造を有するアンチセンスオリゴマーであって、ここで、
【化30】

であり、^=リン中心の立体化学が定義されていない、アンチセンスオリゴマー。
(項目17)
前記項目のいずれかに記載のアンチセンスオリゴマーと、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
(項目18)
筋ジストロフィーの処置における使用のための、項目17に記載の組成物。
(項目19)
前記筋ジストロフィーが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である、項目18に記載の組成物。
(項目20)
前記筋ジストロフィーが、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)である、項目18に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1-1】図1Aは、ホスホロジアミデート連結を有する例示的なモルホリノオリゴマー構造を示す。
図1-2】図1Bは、本発明の一実施形態によるアルギニンに富んだペプチドおよびアンチセンスオリゴマーの結合体を示す。
図1-3】図1Cは、図1Bにおけるような結合体を示すが、骨格連結は、1つまたは複数の正に荷電している基を含有する。
図1-4】図1D~Gは、D~Gと指定される例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの繰り返しサブユニットセグメントを示す。
図2A図2A~2Bは、固相合成のためのリンカーおよびオリゴマー合成のための固体支持体の調製のための反応スキームを表す。
図2B図2A~2Bは、固相合成のためのリンカーおよびオリゴマー合成のための固体支持体の調製のための反応スキームを表す。
図3図3は、培養した初代筋芽細胞においてエキソン53スキッピングを誘発するための例示的なアンチセンスオリゴマーの相対的活性を示す、グラフを表す。示したオリゴマーで処理した初代筋芽細胞から単離されたRNAを、エキソン53特異的ネステッドRT-PCR増幅、それに続いてゲル電気泳動およびバンド強度の定量化に供した。データを、PCR、すなわち、完全長PCR産物に対するエキソンスキッピング産物のバンド強度によって評価されるエキソンスキッピング%としてプロットする。
図4図4は、培養したヒト横紋筋肉腫細胞においてエキソン53スキッピングを誘発するための例示的なアンチセンスオリゴマーの相対的活性を示す、グラフを表す。示したオリゴマーで処理した横紋筋肉腫細胞から単離されたRNAを、エキソン53特異的ネステッドRT-PCR増幅、それに続いてゲル電気泳動およびバンド強度の定量化に供した。データを、PCR、すなわち、完全長PCR産物に対するエキソンスキッピング産物のバンド強度によって評価されるエキソンスキッピング%としてプロットする。
図5図5A~Bは、培養した初代筋芽細胞においてエキソン53スキッピングを誘発するための例示的なアンチセンスオリゴマーの相対的活性を示す、グラフを表す。示したオリゴマーで処理した初代筋芽細胞から単離されたRNAを、エキソン53特異的ネステッドRT-PCR増幅、それに続いてゲル電気泳動およびバンド強度の定量化に供した。データを、PCR、すなわち、完全長PCR産物に対するエキソンスキッピング産物のバンド強度によって評価されるエキソンスキッピング%としてプロットする。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の詳細な説明
本発明の実施形態は一般に、ヒトジストロフィン遺伝子においてエキソンスキッピングを誘発するように特異的に設計された、改善されたアンチセンス化合物、およびその使用の方法に関する。ジストロフィンは筋機能において極めて重要な役割を果たし、様々な筋肉に関連する疾患は、変異した形態のこの遺伝子によって特徴付けられる。したがって、ある特定の実施形態において、本明細書に記載されている改善されたアンチセンス化合物は、変異した形態のヒトジストロフィン遺伝子、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)において見出される変異したジストロフィン遺伝子においてエキソンスキッピングを誘発する。
【0052】
変異によってもたらされる異常なmRNAスプライシング事象によって、これらの変異したヒトジストロフィン遺伝子は、欠陥のあるジストロフィンタンパク質を発現するか、または測定可能なジストロフィンを全く発現せず、これは様々な形態の筋ジストロフィーをもたらす状態である。この状態を治療するために、本発明のアンチセンス化合物は、変異したヒトジストロフィン遺伝子のプロセシングを受ける前のRNAの選択された領域にハイブリダイズし、さもないと異常にスプライシングされるジストロフィンmRNAにおけるエキソンスキッピングおよび差次的なスプライシングを誘発し、それによって筋細胞が機能的ジストロフィンタンパク質をコードするmRNA転写物を生じさせることを可能とする。ある特定の実施形態において、このように得られたジストロフィンタンパク質は、必ずしもジストロフィンの「野性型」形態ではないが、むしろ切断型であるが依然として機能的または半機能的形態のジストロフィンである。
【0053】
筋細胞中の機能的ジストロフィンタンパク質のレベルを増大させることによって、これらおよび関連する実施形態は、筋ジストロフィー、特に、異常なmRNAスプライシングによる欠陥のあるジストロフィンタンパク質の発現によって特徴付けられる筋ジストロフィーの形態、例えば、DMDおよびBMDの予防法および処置において有用である。本明細書に記載されている特定のオリゴマーは、使用されている他のオリゴマーよりも改善されたジストロフィン-エキソン-特異的ターゲッティングをさらに提供し、それによって関連する形態の筋ジストロフィーを処置する代替方法を超える有意かつ実施上の利点を提供する。
【0054】
したがって、本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子において選択された標的に結合してエキソンスキッピングを誘発することができる、長さが20~50のヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーを提供し、このアンチセンスオリゴマーは、H53A(+36+60)、H53A(+30+57)、H53A(+30+56)、H53A(+30+55)およびH53A(+33+57)からなる群より選択されるエキソン53標的領域に特異的にハイブリダイズする塩基の配列を含み、オリゴマーの塩基は、モルホリノ環構造に連結しており、モルホリノ環構造は、1つの環構造のモルホリノ窒素と隣接する環構造の5’環外炭素とを接合するリン含有サブユニット間連結によって接合されている。一実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、配列番号1~5と指定される塩基の配列を含む。別の実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、長さが約20~30のヌクレオチドまたは長さが約25~28のヌクレオチドである。さらに別の実施形態において、配列は、25のヌクレオチドであり、そして配列番号1~5から選択される配列からなる。
【0055】
本発明はまた、長さが20~50のヌクレオチドであり、そしてH53A(+36+60)、H53A(+30+57)、H53A(+30+56)、H53A(+30+55)およびH53A(+33+57)からなる群より選択されるアニーリング部位と指定されるジストロフィン遺伝子のエキソン53標的領域に相補的な少なくとも10、12、15、17、20またはそれより多い連続したヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
【0056】
本発明の他のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが20~50のヌクレオチドであり、配列番号1~5の少なくとも10、12、15、17、20またはそれより多い連続したヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、配列番号1~5におけるチミン塩基は、任意選択でウラシルである。
【0057】
本発明の例示的なアンチセンスオリゴマーを以下に示す:
【0058】
【化8】
【0059】
他に定義しない限り、本明細書において使用する全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または同等である任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を記載する。本発明の目的のために、下記の用語を、下記で定義する。
【0060】
I.定義
「約」とは、参照の分量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%ほど変動する、分量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さを意味する。
【0061】
「相補的」および「相補性」という用語は、塩基対合則によって関連するポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、配列「T-G-A(5’-3’)」は、配列「T-C-A(5’-3’)」に対して相補的である。相補性は、「部分的」であり得、ここでは、核酸の塩基のいくつかのみが、塩基対合則によってマッチする。あるいは、核酸の間に「完全な」または「全体的」相補性が存在し得る。核酸鎖の間の相補性の程度は、核酸鎖の間のハイブリダイゼーションの効率および強度に対して有意な効果を有する。完全な相補性が所望であることが多い一方で、いくつかの実施形態は、標的RNAに関して、1つまたは複数ではあるが、好ましくは6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、または1つのミスマッチを含むことができる。オリゴマー内の任意の場所におけるバリエーションが含まれる。ある特定の実施形態において、オリゴマーの末端近くの配列におけるバリエーションは一般に、内部におけるバリエーションより好ましく、存在する場合、典型的には、5’端および/または3’端の約6ヌクレオチド、5ヌクレオチド、4ヌクレオチド、3ヌクレオチド、2ヌクレオチドまたは1ヌクレオチド以内である。
【0062】
「細胞透過性ペプチド」および「CPP」という用語は互換的に使用され、輸送ペプチド、担体ペプチド、またはペプチド伝達ドメインとまた称されるカチオン性細胞透過性ペプチドを指す。ペプチドは、本明細書に示されているように、所与の細胞培養集団の細胞の100%以内の細胞透過を誘発する能力を有し、全身投与によってインビボで複数の組織内での巨大分子のトランスロケーションを可能とする。好ましいCPPの実施形態は、下記でさらに記載されているようなアルギニンに富んだペプチドである。
【0063】
「アンチセンスオリゴマー」および「アンチセンス化合物」および「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は互換的に使用され、環状サブユニットの配列を指し、これはそれぞれが、サブユニット間連結によって連結される塩基対合部分を担持し、サブユニット間連結は、塩基対合部分がワトソン-クリック塩基対合によって核酸(典型的にはRNA)中の標的配列にハイブリダイズし、標的配列内で核酸:オリゴマーヘテロ二重鎖を形成することを可能とする。環状サブユニットは、リボースもしくは別のペントース糖、または好ましい実施形態において、モルホリノ基(下記のモルホリノオリゴマーの記載を参照されたい)をベースとする。オリゴマーは、標的配列と相補性な正確または近似の配列を有し得る。オリゴマーの末端近くの配列におけるバリエーションは一般に、内部におけるバリエーションより好ましい。
【0064】
このようなアンチセンスオリゴマーは、mRNAの翻訳をブロックもしくは阻害するか、または天然のプレmRNAスプライスプロセシングを阻害するように設計することができ、このようなアンチセンスオリゴマーは、ハイブリダイズする標的配列に「向けられ」または「標的として」いると言われてもよい。標的配列は典型的には、mRNAのAUG開始コドン、翻訳抑制オリゴマー、またはプロセシングを受ける前のmRNAのスプライス部位、スプライシング抑制オリゴマー(SSO)を含めた領域である。スプライス部位のための標的配列は、プロセシングを受ける前のmRNA中の通常のスプライスアクセプタージャンクションの1~約25塩基対下流にその5’端を有するmRNA配列を含み得る。好ましい標的配列は、スプライス部位を含むプロセシングを受ける前のmRNAの任意の領域であるか、またはエキソンコード配列内に完全に含有され、またはスプライスアクセプターもしくはドナー部位にまたがる。オリゴマーが上記の様式で標的の核酸を標的としているとき、オリゴマーはより一般に、生物学的に関連する標的、例えば、タンパク質、ウイルス、または細菌を「標的として」いると言われる。
【0065】
「モルホリノオリゴマー」または「PMO」(ホスホロアミデートモルホリノオリゴマーまたはホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー)という用語は、モルホリノサブユニット構造から構成されるオリゴヌクレオチド類似体を指し、(i)構造は、1~3個の原子長、好ましくは2個の原子長であり、好ましくは荷電していないか、またはカチオン性であり、1つのサブユニットのモルホリノ窒素と隣接するサブユニットの5’環外炭素とを接合する、リン含有連結によって一緒に連結されており、(ii)各モルホリノ環は、塩基特異的水素結合によって、ポリヌクレオチド中の塩基に結合するのに有効なプリンまたはピリミジン塩基対合部分を担持する。例えば、好ましいホスホロジアミデート連結タイプを示す図1Aにおける構造を参照されたい。用語「モルホリノ環構造」は、用語「モルホリノサブユニット」と交換可能に使用され得る。バリエーションが結合または活性を妨害しない限り、この連結に対してバリエーションを作製することができる。例えば、リンに付着している酸素は、硫黄で置換され得る(チオホスホロジアミデート)。5’酸素は、アミノまたは低級アルキル置換アミノで置換されていてもよい。リンに付着しているペンダント窒素は、置換されていないか、(任意選択で置換されている)低級アルキルで一置換、または二置換されていてもよい。プリンまたはピリミジン塩基対合部分は典型的には、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、チミンまたはイノシンである。モルホリノオリゴマーの合成、構造、および結合特徴は、これらの全てが参照により本明細書中に組み込まれている米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,521,063号、同第5,506,337号、同第8,076,476号、同第8,299,206号および同第7,943,762号(カチオン性連結)において詳述されている。修飾されたサブユニット間連結および末端基は、これらの全内容が参照により本明細書中に組み込まれているPTC出願US2011/038459および公報WO/2011/150408において詳述されている。
【0066】
「アミノ酸サブユニット」または「アミノ酸残基」は、α-アミノ酸残基(-CO-CHR-NH-)またはβ-アミノ酸残基または他のアミノ酸残基(例えば、-CO-(CHCHR-NH-)を指すことができ、Rは、側鎖(水素を含み得る)であり、nは、1~6、好ましくは1~4である。
【0067】
「天然アミノ酸」という用語は、天然に見出されるタンパク質中に存在するアミノ酸を指す。「非天然アミノ酸」という用語は、天然に見出されるタンパク質において存在しないアミノ酸を指し、例には、ベータ-アラニン(β-Ala)、6-アミノヘキサン酸(Ahx)および6-アミノペンタン酸を含む。
【0068】
「エキソン」は、タンパク質をコードする核酸の規定されたセクション、またはプロセシングを受ける前の(または前駆体)RNAのいずれかの一部がスプライシングによって除去された後の成熟形態のRNA分子において示される核酸配列を指す。成熟RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)または機能的形態の非コードRNA、例えば、rRNAまたはtRNAでよい。ヒトジストロフィン遺伝子は、約79のエキソンを有する。
【0069】
「イントロン」は、タンパク質に翻訳されない核酸領域(遺伝子内)を指す。イントロンは、mRNA前駆体(プレmRNA)に転写され、それに続いて成熟RNAの形成の間にスプライシングによって除去される非コードセクションである。
【0070】
「有効量」または「治療有効量」は、単回用量として、または一連の用量の一部として、所望の治療効果を生じさせるのに有効な、哺乳動物被験体に投与される治療化合物、例えば、アンチセンスオリゴマーの量を指す。アンチセンスオリゴマーについて、この効果は典型的には、選択した標的配列の翻訳または天然のスプライス-プロセシングを阻害することによってもたらされる。
【0071】
「エキソンスキッピング」は一般に、全エキソン、またはその一部が、所与のプロセシングを受ける前のRNAから除去され、それによって成熟RNA、例えば、タンパク質に翻訳される成熟mRNAにおいて存在することから除外されるプロセスを指す。したがって、スキッピングされるエキソンによって別途コードされるタンパク質の一部は、タンパク質の発現した形態において存在せず、典型的には変化してはいるがまだ機能的形態であるタンパク質を生じさせる。ある特定の実施形態において、スキッピングされるエキソンは、異常なスプライシングをさもないともたらすその配列における変異または他の変化を含有し得る、ヒトジストロフィン遺伝子からの異常なエキソンである。ある特定の実施形態において、スキッピングされるエキソンは、ジストロフィン遺伝子のエキソン1~79の任意の1つまたは複数であるが、ヒトジストロフィン遺伝子のエキソン53が好ましい。
【0072】
「ジストロフィン」は、ロッド形状の細胞質タンパク質であり、筋線維の細胞骨格と周囲の細胞外マトリックスとを細胞膜を介して接続するタンパク質複合体の非常に重要な部分である。ジストロフィンは、複数の機能的ドメインを含有する。例えば、ジストロフィンは、約アミノ酸14~240においてアクチン結合ドメイン、および約アミノ酸253~3040において中央ロッドドメインを含有する。この大きな中央ドメインは、約109アミノ酸の24スペクトリン様三重らせんエレメントによって形成され、これはアルファ-アクチニンおよびスペクトリンとの相同性を有する。リピートは典型的には、またヒンジ領域と称される4つのプロリンに富んだ非リピートセグメントによって中断される。リピート15および16は、ジストロフィンのタンパク質分解性切断のための主要な部位を提供するように思われる18アミノ酸のストレッチによって分離されている。大部分のリピートの間の配列同一性は、10~25%の範囲である。1つのリピートは、3つのアルファ-ヘリックス:1、2および3を含有する。アルファ-ヘリックス1および3はそれぞれ、7つのヘリックスターンによって形成され、疎水性界面によってコイルドコイルとしておそらく相互作用する。アルファ-ヘリックス2はより複雑な構造を有し、グリシンまたはプロリン残基によって分離される4つおよび3つのヘリックスターンのセグメントによって形成される。各リピートは2つのエキソンによってコードされ、アルファ-ヘリックス2の最初の部分におけるアミノ酸47および48の間のイントロンによって典型的には中断される。他のイントロンは、リピートにおける異なる位置において見出され、ヘリックス-3に亘って通常点在している。ジストロフィンはまた、約アミノ酸3080~3360において、システインに富んだセグメント(すなわち、280アミノ酸中の15システイン)を含めてシステインに富んだドメインを含有し、粘菌(Dictyostelium discoideum)のアルファ-アクチニンのC末端ドメインとの相同性を示す。カルボキシ末端ドメインは、ほぼアミノ酸3361~3685において存在する。
【0073】
ジストロフィンのアミノ末端はF-アクチンに結合し、カルボキシ末端は筋細胞膜においてジストロフィンが関連するタンパク質複合体(DAPC)に結合する。DAPCは、ジストログリカン、サルコグリカン、インテグリンおよびカベオリンを含み、これらの構成要素のいずれかにおける変異は、常染色体性遺伝した筋ジストロフィーをもたらす。ジストロフィンが存在しないときDAPCは不安定化し、これはメンバータンパク質のレベルの減少をもたらし、進行性の線維損傷および膜漏出に至る。様々な形態の筋ジストロフィー、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)において、筋細胞は、主に遺伝子配列における変異(これは不正確なスプライシングをもたらす)によって、変化した機能的に欠陥のある形態のジストロフィンを産生するか、またはジストロフィンを全く産生しない。欠陥のあるジストロフィンタンパク質の優勢な発現、またはジストロフィンもしくはジストロフィン様タンパク質の完全な欠乏は、上で述べたように筋変性の急速な進行をもたらす。これに関しては、「欠陥のある」ジストロフィンタンパク質は、当技術分野において公知のようにDMDもしくはBMDを有する特定の被験体において産生されるジストロフィンの形態によって、または検出可能なジストロフィンが存在しないことによって特徴付けられ得る。
【0074】
本明細書において使用する場合、「機能」および「機能的」などという用語は、生物学的、酵素的、または治療的機能を指す。
【0075】
「機能的」ジストロフィンタンパク質は一般に、典型的にはDMDまたはBMDを有する特定の被験体において存在するジストロフィンタンパク質の変化した、または「欠陥のある」形態と比較して、別途筋ジストロフィーの特徴である筋組織の進行性の分解を低減させるのに十分な生物活性を有するジストロフィンタンパク質を指す。ある特定の実施形態において、機能的ジストロフィンタンパク質は、当技術分野で通例の技術によって測定して、野性型ジストロフィンのインビトロまたはインビボでの生物活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%(中間の全ての整数を含めた)を有し得る。一例として、筋肉培養物におけるインビトロでのジストロフィンに関連する活性は、筋管サイズ、筋原線維の組織化(または解体)、収縮能、およびアセチルコリン受容体の自発的クラスター形成によって測定することができる(例えば、Brownら、Journal of Cell Science、112巻:209~216頁、1999年を参照されたい)。動物モデルはまた、疾患の病因を研究するための貴重なリソースであり、ジストロフィンに関連する活性を試験する手段を提供する。DMD研究のために最も広範に使用される動物モデルの2つは、mdxマウスおよびゴールデンレトリーバ筋ジストロフィー(GRMD)イヌであり、これらの両方は、ジストロフィンネガティブである(例えば、Collins & Morgan、Int J Exp Pathol、84巻:165~172頁、2003年を参照されたい)。これらおよび他の動物モデルを使用して、様々なジストロフィンタンパク質の機能的活性を測定することができる。含まれるのは、ジストロフィンの切断型、例えば、特定の本発明のエキソンスキッピングアンチセンス化合物によって産生される形態である。
【0076】
「単離した」とは、その天然の状態において材料に通常伴う構成要素が実質的または本質的にない材料を意味する。例えば、「単離したポリヌクレオチド」は、本明細書において使用する場合、天然の状態においてポリヌクレオチドに隣接する配列から精製または取り出されたポリヌクレオチド、例えば、フラグメントに通常隣接する配列から取り出されたDNAフラグメントを指し得る。
【0077】
本明細書において使用する場合、「十分な長さ」とは、標的ジストロフィンプレmRNAにおける少なくとも8、より典型的には8~30の連続的な核酸塩基に対して相補的であるアンチセンスオリゴヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態において、十分な長さのアンチセンスは、標的ジストロフィンプレmRNAにおいて少なくとも8、9、10、11、12、13、14または15の連続的な核酸塩基を含む。他の実施形態において、十分な長さのアンチセンスは、標的ジストロフィンプレmRNAにおいて少なくとも16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25の連続的な核酸塩基を含む。十分な長さのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、エキソン53に特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも最小の数のヌクレオチドを有する。好ましくは、十分な長さのオリゴヌクレオチドは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39および40またはそれより多いヌクレオチドのオリゴヌクレオチドを含めた、長さが約10~約50のヌクレオチドである。一実施形態において、十分な長さのオリゴヌクレオチドは、長さが10~約30のヌクレオチドである。別の実施形態において、十分な長さのオリゴヌクレオチドは、長さが15~約25のヌクレオチドである。さらに別の実施形態において、十分な長さのオリゴヌクレオチドは、長さが20~30、または20~50のヌクレオチドである。さらに別の実施形態において、十分な長さのオリゴヌクレオチドは、長さが22~28、25~28、24~29または25~30のヌクレオチドである。
【0078】
「増強する」もしくは「増強すること」または「増大する」もしくは「増大すること」または「刺激する」もしくは「刺激すること」とは一般に、アンチセンス化合物なしまたは対照化合物によってもたらされる反応と比較して、細胞または被験体においてより大きな生理学的反応(すなわち、下流の効果)を生じさせるか、またはもたらす1つまたは複数のアンチセンス化合物または組成物の能力を指す。測定可能な生理学的反応は、当技術分野における理解および本明細書における記載から明らかな他の反応の中で、筋組織における機能的形態のジストロフィンタンパク質の発現の増大、またはジストロフィンに関連する生物活性の増大を含み得る。約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%だけの筋機能における増大または改善を含めて、筋機能の増大はまた測定することができる。筋線維の約1%、2%、%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%におけるジストロフィン発現の増大を含めて、機能的ジストロフィンを発現している筋線維の百分率をまた測定することができる。例えば、線維の25~30%が、ジストロフィンを発現している場合、概ね40%の筋機能の改善が起こり得ることが示されてきた(例えば、DelloRussoら、Proc Natl Acad Sci USA、99巻:12979~12984頁、2002年を参照されたい)。「増大された」または「増強された」量は典型的には、「統計的に有意な」量であり、アンチセンス化合物なし(薬剤が存在しないこと)または対照化合物によってもたらされる量の1.1倍、1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍またはそれを超える(例えば、500倍、1000倍)(1の間および1を超える全ての整数および小数点を含めた、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)である増大を含み得る。
【0079】
「低減する」または「阻害する」という用語は、診断の技術分野における通例の技術によって測定して、関連する生理学的反応または細胞反応、例えば、本明細書に記載されている疾患もしくは状態の症状を「減少させる」1種または複数の本発明のアンチセンス化合物の能力に関し得る。関連する生理学的反応または細胞反応(インビボもしくはインビトロ)は、当業者には明らかであり、筋ジストロフィーの症状もしくは病理学における低減、または欠陥のある形態のジストロフィン、例えば、DMDもしくはBMDを有する個体において発現している変化した形態のジストロフィンの発現における低減を含み得る。反応における「減少」は、非アンチセンス化合物または対照組成物によって生じる反応と比較して統計的に有意であり得、中間の全ての整数を含めた、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少を含み得る。
【0080】
また含まれるのは、本発明のオリゴマーのジストロフィン標的化配列を発現することができるベクター送達系、例えば、本明細書に記載のような配列番号1および9~18の任意の1つまたは複数を含むポリヌクレオチド配列を発現するベクターである。「ベクター」または「核酸構築物」とは、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、酵母またはウイルスに由来し、ポリヌクレオチドがその中に挿入またはクローニングすることができる、ポリヌクレオチド分子、好ましくはDNA分子を意味する。ベクターは好ましくは、1つまたは複数の独特な制限部位を含有し、標的細胞もしくは組織または前駆細胞もしくはその組織を含めた規定された宿主細胞において自律複製することができるか、あるいはクローニングされた配列が、再現性があるように確定した宿主のゲノムと組み込み可能であることができる。したがって、ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、その複製が染色体の複製と無関係である染色体外実体として存在するベクター、例えば、直鎖状もしくは閉環状プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体でよい。ベクターは、自己複製を確実にするための任意の手段を含有することができる。代わりに、ベクターは、宿主細胞中に導入されたとき、ゲノム中に組み込まれ、かつその中にベクターが組み込まれている染色体(複数可)と一緒に複製されるものでよい。
【0081】
個体(例えば、哺乳動物、例えば、ヒト)または細胞の「処置」は、個体または細胞の自然の成り行きを変化させる試みにおいて使用される任意のタイプの介入である。処置には、これらに限定されないが、医薬組成物の投与が含まれ、予防的に、または病的事象の開始もしくは病原体との接触に続いて行い得る。処置は、特定の形態の筋ジストロフィーにおけるように、ジストロフィンタンパク質と関連する疾患または状態の症状または病理学に対して任意の望ましい効果を含み、例えば、処置される疾患または状態の1つまたは複数の測定可能なマーカーにおける最小の変化または改善を含み得る。また含まれるのは、処置されている疾患もしくは状態の進行の速度を低減させ、その疾患もしくは状態の発症を遅延するか、またはその発症の重症度を低減させることに向けることができる「予防的」処置である。「処置」または「予防法」は、疾患もしくは状態、またはその関連する症状の完全な根絶、治癒、または予防を必ずしも示さない。
【0082】
したがって、含まれるのは、任意選択で医薬製剤または剤形の部分として、1つまたは複数の本発明のアンチセンスオリゴマー(例えば、配列番号1~5、ならびにそのバリアント)を、それを必要とする被験体に投与することによって、筋ジストロフィー、例えば、DMDおよびBMDを処置する方法である。また含まれるのは、1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーを投与することによって、被験体においてエキソンスキッピングを誘発する方法であり、エキソンは、ジストロフィン遺伝子、好ましくはヒトジストロフィン遺伝子からのエキソン53である。「被験体」は、本明細書において使用する場合、本発明のアンチセンス化合物で処置することができる、症状を示すか、または症状を示す危険性がある任意の動物を含み、例えば、DMDもしくはBMD、またはこれらの状態と関連する症状のいずれか(例えば、筋線維の喪失)を有するか、または有する危険性がある被験体である。適切な被験体(患者)は、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、もしくはモルモット)、家畜、および家庭の動物またはペット(例えば、ネコもしくはイヌ)を含む。ヒトではない霊長類、および好ましくは、ヒト患者が含まれる。
【0083】
「アルキル」または「アルキレン」は両方とも、1~18個の炭素を含有する飽和直鎖または分岐鎖の炭化水素ラジカルを指す。例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよびn-ヘキシルが含まれる。「低級アルキル」という用語は、1~8個の炭素を含有する本明細書に定義されているようなアルキル基を指す。
【0084】
「アルケニル」は、2~18個の炭素を含有し、かつ少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、不飽和直鎖または分岐鎖の炭化水素ラジカルを指す。例には、これらに限定されないが、エテニル、プロペニル、イソ-プロペニル、ブテニル、イソ-ブテニル、tert-ブテニル、n-ペンテニルおよびn-ヘキセニルが含まれる。「低級アルケニル」という用語は、2~8個の炭素を含有する本明細書に定義されているようなアルケニル基を指す。
【0085】
「アルキニル」は、2~18個の炭素を含有し、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む、不飽和直鎖または分岐鎖の炭化水素ラジカルを指す。例には、これらに限定されないが、エチニル、プロピニル、イソ-プロピニル、ブチニル、イソ-ブチニル、tert-ブチニル、ペンチニルおよびヘキシニルが含まれる。「低級アルキニル」という用語は、2~8個の炭素を含有する本明細書に定義されているようなアルキニル基を指す。
【0086】
「シクロアルキル」は、単環式または多環式アルキルラジカルを指す。例には、これらに限定されないが、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが含まれる。
【0087】
「アリール」は、18個までの炭素を含有し、1つまたは複数の閉環(複数可)を有する環状芳香族炭化水素部分を指す。例には、これらに限定されないが、フェニル、ベンジル、ナフチル、アントラセニル、フェナントラセニルおよびビフェニルが含まれる。
【0088】
「アラルキル」は、式RaRbのラジカルを指し、Raは、上記に定義されているようなアルキレン鎖であり、Rbは、1つまたは複数の上記に定義されているようなアリールラジカル、例えば、ベンジル、ジフェニルメチルなどである。
【0089】
「チオアルコキシ」は、式-SRcのラジカルを指し、Rcは、本明細書に定義されているようなアルキルラジカルである。「低級チオアルコキシ」という用語は、1~8個の炭素を含有する本明細書に定義されているようなアルコキシ基を指す。
【0090】
「アルコキシ」は、式-ORdaのラジカルを指し、Rdは、本明細書に定義されているようなアルキルラジカルである。「低級アルコキシ」という用語は、1~8個の炭素を含有する本明細書に定義されているようなアルコキシ基を指す。アルコキシ基の例には、これらに限定されないが、メトキシおよびエトキシが含まれる。
【0091】
「アルコキシアルキル」は、アルコキシ基で置換されているアルキル基を指す。
【0092】
「カルボニル」は、C(=O)-ラジカルを指す。
【0093】
「グアニジニル」は、HN(C=NH)-NH-ラジカルを指す。
【0094】
「アミジニル」は、HN(C=NH)CH-ラジカルを指す。
【0095】
「アミノ」は、NHラジカルを指す。
【0096】
「アルキルアミノ」は、式-NHRdまたは-NRdRdのラジカルを指し、各Rdは、独立に、本明細書に定義されているようなアルキルラジカルである。「低級アルキルアミノ」という用語は、1~8個の炭素を含有する本明細書に定義されているようなアルキルアミノ基を指す。
【0097】
「複素環」とは、飽和、不飽和、または芳香族であり、窒素、酸素および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を含有する、5~7員単環式、または7~10員二環式の複素環式環を意味し、窒素および硫黄ヘテロ原子は、任意選択で酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は、任意選択で四級化されてもよく、上記の複素環のいずれかがベンゼン環に縮合している二環式環を含む。複素環は、任意のヘテロ原子または炭素原子を介して付着し得る。複素環は、下記に定義するようなヘテロアリールを含む。このように、下記に列挙したヘテロアリールに加えて、複素環はまた、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペリジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオピラニルなどを含む。
【0098】
「ヘテロアリール」は、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有し、少なくとも1個の炭素原子を含有する5~10員の芳香族複素環式環を意味し、単環式環および二環式環系の両方を含む。代表的なヘテロアリールは、ピリジル、フリル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、ピロリル、インドリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シンノリニル、フタラジニル、およびキナゾリニルである。
【0099】
「任意選択で置換されているアルキル」、「任意選択で置換されているアルケニル」、「任意選択で置換されているアルコキシ」、「任意選択で置換されているチオアルコキシ」、「任意選択で置換されているアルキルアミノ」、「任意選択で置換されている低級アルキル」、「任意選択で置換されている低級アルケニル」、「任意選択で置換されている低級アルコキシ」、「任意選択で置換されている低級チオアルコキシ」、「任意選択で置換されている低級アルキルアミノ」および「任意選択で置換されているヘテロシクリル」という用語は、置換されているとき、少なくとも1個の水素原子が置換基で置き換えられていることを意味する。オキソ置換基(=O)の場合、2個の水素原子が置換されている。これに関しては、置換基は、重水素、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されているアルケニル、任意選択で置換されているアルキニル、任意選択で置換されているアリール、任意選択で置換されている複素環、任意選択で置換されているシクロアルキル、オキソ、ハロゲン、-CN、-ORx、NRxRy、NRxC(=O)Ry、NRxSO2Ry、-NRxC(=O)NRxRy、C(=O)Rx、C(=O)ORx、C(=O)NRxRy、-SOmRxおよび-SOmNRxRyを含み、式中、mは、0、1または2であり、RxおよびRyは、同じまたは異なり、独立に、水素、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されているアルケニル、任意選択で置換されているアルキニル、任意選択で置換されているアリール、任意選択で置換されている複素環または任意選択で置換されているシクロアルキルであり、前記任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されているアルケニル、任意選択で置換されているアルキニル、任意選択で置換されているアリール、任意選択で置換されている複素環および任意選択で置換されているシクロアルキル置換基のそれぞれは、オキソ、ハロゲン、-CN、-ORx、NRxRy、NRxC(=O)Ry、NRxSO2Ry、-NRxC(=O)NRxRy、C(=O)Rx、C(=O)ORx、C(=O)NRxRy、-SOmRxおよび-SOmNRxRyの1つまたは複数でさらに置換され得る。
【0100】
アンチセンス分子の命名システムは、異なるアンチセンス分子を区別するために提案および公開された(Mannら(2002年)、J Gen Med、4巻、644~654頁を参照されたい)。下記に示すように、全てが同じ標的領域に向いているいくつかの僅かに異なるアンチセンス分子を試験するときに、この命名法は特に意味を持った。
H#A/D(x:y)。
【0101】
最初の文字は、種(例えば、H:ヒト、M:マウス、C:イヌ)を指定する。「#」は、標的ジストロフィンエキソン数を指定する。「A/D」は、それぞれ、エキソンの始まりおよび終わりにおけるアクセプターまたはドナースプライス部位を示す。(xy)は、アニーリング座標を表し、「-」または「+」は、それぞれ、イントロンまたはエキソン配列を示す。例えば、A(-6+18)は、標的エキソンに先行するイントロンの最後の6塩基、および標的エキソンの最初の18塩基を示す。最も近いスプライス部位はアクセプターであり、そのためこれらの座標は、「A」が先行する。ドナースプライス部位におけるアニーリング座標の記載は、D(+2-18)でよく、最後の2エキソン塩基および最初の18イントロン塩基は、アンチセンス分子のアニーリング部位に対応する。完全なエキソンアニーリング座標は、A(+65+85)によって表され、すなわち、そのエキソンの開始からの65番目および85番目のヌクレオチドの間の部位である。
【0102】
II.アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンチセンス分子(複数可)がプレmRNA配列内のエキソンのスプライシングに関与するヌクレオチド配列を標的とするとき、エキソンの通常のスプライシングは阻害され、スプライシング機構が成熟mRNAからの標的とされた全エキソンを迂回し得る。多くの遺伝子において、全エキソンの欠失は、重要な機能的ドメインの喪失、またはリーディングフレームの撹乱によって非機能タンパク質の産生をもたらす。しかし、いくつかのタンパク質において、リーディングフレームを撹乱することなく、かつタンパク質の生物活性を重大に変化させることなく、タンパク質内から1つまたは複数のエキソンを欠失させることによってタンパク質を短くすることが可能である。典型的には、このようなタンパク質は、構造的役割を有し、かつ/またはこれらの末端において機能的ドメインを持つ。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、典型的にはリーディングフレームを撹乱することによって、機能的ジストロフィン遺伝子産物の合成を妨げる変異から生じる。変異を含有するジストロフィン遺伝子の領域のエキソンスキッピングを誘発するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、筋細胞が機能的ジストロフィンタンパク質をコードする成熟mRNA転写物を産生することを可能にすることができる。このように得られたジストロフィンタンパク質は、必ずしもジストロフィンの「野性型」形態ではないが、むしろ切断されているが機能的または半機能的形態のジストロフィンである。本発明は、エキソン53における指定したジストロフィンプレmRNA標的に結合し、かつその遺伝子のプロセシングを再指向させることができるアンチセンス分子について記載する。
【0103】
特に、本発明は、下記:H53A(+36+60)、H53A(+30+57)、H53A(+30+56)、H53A(+30+55)およびH53A(+33+57)から選択されるアニーリング部位と指定されるジストロフィン遺伝子のエキソン53標的領域に対して相補的である少なくとも10、12、15、17、20、25またはそれより多い連続したヌクレオチドを含めた、長さが20~50のヌクレオチドの単離されたアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アニーリング部位に特異的にハイブリダイズし、エキソン53スキッピングを誘発する。
【0104】
安定的および特異的な結合が、オリゴヌクレオチドおよび標的の間に起こるように、各分子における十分な数の対応する位置が互いに水素結合することができるヌクレオチドによって占有されるとき、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび標的RNAは、互いに相補的である。このように、「特異的にハイブリダイズ可能」および「相補的」は、安定的および特異的結合が、オリゴヌクレオチドおよび標的の間に起こるように、十分な程度の相補性または正確な対合を示すために使用される用語である。アンチセンス分子の配列は、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的配列の配列に対して100%相補的である必要はないことは当技術分野で理解される。標的分子へのオリゴヌクレオチドの結合が標的RNAの通常の機能を妨げ、かつ特異的結合が望ましい条件下で、すなわち、インビボアッセイまたは治療的処置の場合は生理学的条件下で、およびインビトロのアッセイの場合はアッセイが行われる条件下で、非標的配列へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの非特異的結合を回避する十分な程度の相補性が存在するとき、アンチセンス分子は、特異的にハイブリダイズ可能である。
【0105】
アンチセンス分子の長さは、プレmRNA分子内の意図する場所に選択的に結合することができる限り変化し得る。このような配列の長さは、本明細書に記載されている選択手順によって決定することができる。一般に、アンチセンス分子は、長さが約10のヌクレオチドから約50のヌクレオチドまでである。しかし、この範囲内のヌクレオチドの任意の長さは、この方法において使用し得ることが認識される。好ましくは、アンチセンス分子の長さは、長さが10~30のヌクレオチドである。
【0106】
一実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、長さが20~50のヌクレオチドであり、配列番号1~5のいずれかの少なくとも10、12、15、17、20またはそれより多いヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、配列番号1~5におけるチミン塩基は、任意選択でウラシルである。
【0107】
エキソン欠失は、短縮された転写mRNAにおいてリーディングフレームのシフトをもたらすべきではない。このように、3つのエキソンの直鎖状配列において、第1のエキソンの終わりがコドンにおける3つのヌクレオチドのうちの2つをコードし、次のエキソンが欠失している場合、直鎖状配列における第3のエキソンはコドンのためのヌクレオチドトリプレットを完成させることができる単一のヌクレオチドで始まらなくてはならない。第3のエキソンが単一のヌクレオチドで始まらない場合、リーディングフレームのシフトが起こり、これは切断型または非機能タンパク質の生成をもたらす。
【0108】
構造タンパク質におけるエキソンの終わりにおけるコドン配置は、コドンの終わりにおいて必ずしも切断し得ず、結果的に、mRNAのインフレームのリーディングを確実にするためにプレmRNAから複数種のエキソンを欠失させる必要性があり得ることを認識されたい。このような状況において、複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本発明の方法によって選択する必要があり得、それぞれは、欠失させるエキソンにおけるスプライシングの誘発に関与する異なる領域を対象とする。
【0109】
いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、天然核酸分子の化学組成を有し、すなわち、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、修飾または置換された塩基、糖、またはサブユニット間連結を含まない。好ましい実施形態において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、非天然核酸分子である。例えば、非天然核酸は、1つまたは複数の非天然の塩基、糖、および/またはサブユニット間連結、例えば、天然核酸分子において見出されるものに対して修飾または置換されている塩基、糖、および/または連結を含むことができる。例示的な修飾を、下記に記載する。いくつかの実施形態において、非天然核酸は、複数のタイプの修飾、例えば、糖および塩基の修飾、糖および連結の修飾、塩基および連結の修飾、または塩基、糖、および連結の修飾を含む。例えば、いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、非天然(例えば、修飾または置換された)塩基を含有する。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、非天然(例えば、修飾または置換された)糖を含有する。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、非天然(例えば、修飾または置換された)サブユニット間連結を含有する。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、複数のタイプの修飾または置換、例えば、非天然塩基および/または非天然糖、および/または非天然サブユニット間連結を含有する。
【0110】
アンチセンス分子との二重鎖形成の間の、プレmRNAの分解を回避するために、アンチセンス分子は、内因性RNase Hによる切断を最小化または防止するように適合し得る。細胞内での、またはRNase Hを含有する粗抽出物中の非メチル化オリゴヌクレオチドによるRNAの処理は、プレmRNA:アンチセンスオリゴヌクレオチド二重鎖の分解をもたらすため、この特性は高度に好ましい。迂回することができるか、またはこのような分解を誘発しないことができる修飾されたアンチセンス分子の任意の形態を本方法において使用し得る。RNAと二重鎖化したとき、細胞のRNase Hによって切断されないアンチセンス分子の一例は、2’-O-メチル誘導体である。2’-O-メチル-オリゴリボヌクレオチドは、細胞環境および動物組織において非常に安定的であり、RNAとのこれらの二重鎖は、これらのリボ-またはデオキシリボ-対応物より高いTm値を有する。2’ヒドロキシリボース位置のメチル化、およびホスホロチオエート骨格の組込みは、RNAに表面上は似ているが、ヌクレアーゼ分解に対して非常により耐性である分子を生成するための一般のストラテジである。
【0111】
RNase Hを活性化しないアンチセンス分子は、公知の技術によって作製することができる(例えば、米国特許第5,149,797号を参照されたい)。デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列であり得るこのようなアンチセンス分子は、その1メンバーとしてオリゴヌクレオチドを含有する二重鎖分子へのRNase Hの結合を立体的に妨害または防止する任意の構造的修飾を単純に含有し、この構造的修飾は、二重鎖形成を実質的に妨害または撹乱しない。二重鎖形成に関与するオリゴヌクレオチドの一部は、二重鎖へのRNase H結合に関与するそれらの一部と実質的に異なるため、RNase Hを活性化しない多数のアンチセンス分子が利用可能である。例えば、このようなアンチセンス分子は、オリゴヌクレオチドでよく、ヌクレオチド間架橋ホスフェート残基の少なくとも1つ、または全ては、修飾されたホスフェート、例えば、メチルホスホネート、メチルホスホロチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデートおよびホスホロアミデートである。例えば、ヌクレオチド間架橋ホスフェート残基のどれもが、記載されているように修飾され得る。別の非限定的例において、このようなアンチセンス分子は、ヌクレオチドの少なくとも1つ、または全てが、2’低級アルキル部分を含有する分子である(例えば、C~C直鎖状または分岐状の飽和または不飽和のアルキル、例えば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1-プロペニル、2-プロペニル、およびイソプロピル)。例えば、ヌクレオチドのどれもが、記載されているように修飾され得る。
【0112】
本発明において有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドの具体例には、修飾された骨格または非天然サブユニット間連結を含有するオリゴヌクレオチドを含む。修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドは、骨格においてリン原子を保持するもの、および骨格においてリン原子を有さないものを含む。これらのヌクレオシド間骨格においてリン原子を有さない修飾されたオリゴヌクレオチドはまた、オリゴヌクレオシドであると考えることができる。
【0113】
他のアンチセンス分子において、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間連結の両方、すなわち、骨格は、新規な基で置き換えられている。塩基単位は、適当な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。1つのこのようなオリゴマー化合物、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されてきたオリゴヌクレオチド模倣物は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、特に、アミノエチルグリシン骨格で置き換えられている。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合している。
【0114】
修飾されたオリゴヌクレオチドはまた、1つまたは複数の置換された糖部分を含有し得る。
【0115】
オリゴヌクレオチドはまた、核酸塩基(当技術分野で単純に「塩基」と称されることが多い)の修飾または置換を含み得る。修飾または置換された塩基を含有するオリゴヌクレオチドは、核酸において最も一般に見出される1つまたは複数のプリンまたはピリミジン塩基がより一般でない塩基または非天然の塩基で置き換えられているオリゴヌクレオチドを含む。
【0116】
プリン塩基は、一般式:
【0117】
【化9】
【0118】
によって記載されるようなイミダゾール環に縮合したピリミジン環を含む。
アデニンおよびグアニンは、核酸において最も一般に見出される2つのプリン核酸塩基である。これらは、これらに限定されないが、N-メチルアデニン、N-メチルグアニン、ヒポキサンチン、および7-メチルグアニンを含めた他の天然プリンで置換され得る。
【0119】
ピリミジン塩基は、一般式:
【0120】
【化10】
【0121】
によって記載されるような6員ピリミジン環を含む。
シトシン、ウラシル、およびチミンは、核酸において最も一般に見出されるピリミジン塩基である。これらは、これらに限定されないが、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、プソイドウラシル、および4-チオウラシルを含めた他の天然ピリミジンで置換され得る。一実施形態において、本明細書に記載されているオリゴヌクレオチドは、ウラシルの代わりにチミン塩基を含有する。
【0122】
他の修飾または置換された塩基には、これらに限定されないが、2,6-ジアミノプリン、オロト酸、アグマチジン、リシジン、2-チオピリミジン(例えば、2-チオウラシル、2-チオチミン)、G-クランプおよびその誘導体、5-置換ピリミジン(例えば、5-ハロウラシル、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、5-アミノメチルウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、5-アミノメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、Super T)、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、7-アザ-2,6-ジアミノプリン、8-アザ-7-デアザグアニン、8-アザ-7-デアザアデニン、8-アザ-7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、Super G、Super A、およびN4-エチルシトシン、またはその誘導体;N-シクロペンチルグアニン(cPent-G)、N-シクロペンチル-2-アミノプリン(cPent-AP)、およびN-プロピル-2-アミノプリン(Pr-AP)、プソイドウラシルまたはその誘導体;ならびに縮重塩基もしくはユニバーサル塩基、例えば、2,6-ジフルオロトルエン、または非存在塩基、例えば、脱塩基部位(例えば、1-デオキシリボース、1,2-ジデオキシリボース、1-デオキシ-2-O-メチルリボース;またはピロリジン誘導体(ここで環酸素が窒素で置き換えられている(アザリボース)))が含まれる。Super A、Super GおよびSuper Tの誘導体の例は、参照により本明細書において完全に組み込まれている米国特許第6,683,173号(Epoch Biosciences)において見出すことができる。cPent-G、cPent-APおよびPr-APは、siRNAに組み込まれたときに免疫賦活性効果を低減させることが示された(Peacock H.ら、J. Am. Chem. Soc.、2011年、133巻、9200頁)。プソイドウラシルは、ウリジンにおけるように通常のN-グリコシドよりむしろC-グリコシドを伴うウラシルの天然異性化バージョンである。プソイドウリジン含有合成mRNAは、ウリジン含有mPvNAと比較して改善された安全性プロファイルを有し得る(本明細書において参照によりその全体が組み込まれているWO2009127230)。
【0123】
特定の修飾または置換された核酸塩基は、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合親和性を増大させるために特に有用である。これらは、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6およびO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニンを含めた)、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含む。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6~1.2℃だけ増大させることが示されてきており、さらにより特定すると2’-O-メトキシエチル糖修飾と合わせたときに、現在好ましい塩基置換である。
【0124】
いくつかの実施形態において、修飾または置換された核酸塩基は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの精製を促進するために有用である。例えば、ある特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3つまたはそれより多い(例えば、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれより多い)連続したグアニン塩基を含有し得る。特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、一続きになった3つまたはそれより多い連続したグアニン塩基は、オリゴヌクレオチドの凝集をもたらし、精製を複雑化し得る。このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、連続したグアニンの1つまたは複数は、イノシンで置換することができる。一続きになった3つまたはそれより多い連続したグアニン塩基において1つまたは複数のグアニンをイノシンで置換することは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの凝集を低減させ、それによって精製を促進することができる。
【0125】
一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの別の修飾は、オリゴヌクレオチドに、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取込みを増強させる1つまたは複数の部分または結合体を化学的に連結することを伴う。このような部分には、これらに限定されないが、脂質部分、例えば、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル-5-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が含まれる。
【0126】
所与の化合物における全ての位置が均一に修飾されることは必要ではなく、実際、上記の修飾のうちの1つより多くを、単一の化合物において、またはそれどころかオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドにおいて組み込み得る。本発明はまた、キメラ化合物であるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。「キメラ」アンチセンス化合物または「キメラ」は、本発明の状況において、アンチセンス分子、特に、オリゴヌクレオチドであり、これはそれぞれが、少なくとも1つのモノマー単位、すなわち、オリゴヌクレオチド化合物の場合はヌクレオチドで構成されている、2つ以上の化学的に別個の領域を含有する。これらのオリゴヌクレオチドは典型的には、オリゴヌクレオチドがヌクレアーゼ分解への耐性の増大、細胞取込みの増大を付与するように修飾されている少なくとも1つの領域と、標的核酸に対する結合親和性の増大のためのさらなる領域とを含有する。
【0127】
本発明によって使用されるアンチセンス分子は、固相合成の周知の技術によって好都合かつ慣例通りに作製され得る。このような合成のための設備は、例えば、Applied
Biosystems(Foster City、Calif.)を含めたいくつかの供給業者によって販売されている。修飾された固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成するための1つの方法は、米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0128】
当技術分野において公知のこのような合成のための任意の他の手段を、加えてまたは代わりに用い得る。オリゴヌクレオチド、例えば、ホスホロチオエートおよびアルキル化された誘導体を調製するのに同様の技術を使用することは周知である。1つのこのような自動化された実施形態において、ジエチル-ホスホラミダイトは出発材料として使用され、Beaucageら(1981年)、Tetrahedron Letters、22巻:1859~1862頁によって記載されているように合成され得る。
【0129】
本発明のアンチセンス分子はインビトロで合成され、生物由来のアンチセンス組成物を含まない。本発明の分子はまた、取込み、分布および/または吸収を助けるために、例えば、リポソーム、受容体標的化分子、経口、直腸、局所または他の製剤として、他の分子、分子構造または化合物の混合物と混合され、カプセル化され、結合体化され、または他の方法で会合され得る。
【0130】
A.モルホリノオリゴマー
リン含有骨格連結を有するモルホリノオリゴマーに関する本発明の例示的実施形態を、図1A~1Cにおいて例示する。一実施形態は、図1Cに示されているようなホスホロジアミデート連結したモルホリノオリゴマーであり、本発明の一態様によると、修飾されて、好ましくはその骨格連結の10%~50%において正に荷電している基を含有する。アンチセンスオリゴヌクレオチドを含めた、荷電していない骨格連結を有するモルホリノオリゴマーは、例えば、これらの全てが参照により本明細書において明確に組み込まれている(SummertonおよびWeller、1997年)において、ならびに共有の米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,185,444号、同第5,521,063号、同第5,506,337号、同第8,076,476号、同第8,299,206号および同第7,943,762号において詳述されている。荷電している連結を含めた修飾されている連結を有するモルホリノオリゴマーは、米国出願番号13/118,298(参照によりその全体が本明細書中に組み込まれている)に見出され得る。
【0131】
モルホリノをベースとするサブユニットの重要な特性には、1)オリゴマー形態で安定的な荷電していない、または正に荷電している骨格連結によって連結される能力;2)形成されたポリマーが、相対的に短いオリゴヌクレオチド(例えば、10~15の塩基)における約45℃超のTm値の標的RNAを含めた相補的塩基標的核酸とハイブリダイズすることができるように、ヌクレオチド塩基(例えば、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、ウラシルおよびイノシン)を支持する能力;3)オリゴヌクレオチドが哺乳動物細胞中に能動的または受動的に輸送される能力;ならびに4)それぞれ、リボヌクレアーゼおよびリボヌクレアーゼH分解に抵抗するアンチセンスオリゴヌクレオチド:RNAヘテロ二重鎖の能力が含まれる。
【0132】
特許請求した主題のアンチセンスオリゴヌクレオチドについての例示的な骨格構造は、それぞれ荷電していないまたは正に荷電しているリン含有サブユニット連結によって連結している図1D~Gにおいて示すモルホリノサブユニットタイプを含む。図1Dは、5原子繰返し単位骨格を形成するリン含有連結を示し、モルホリノ環は、1原子ホスホアミド連結によって連結している。図1Eは、6原子繰返し単位骨格を生じさせる連結を示す。この構造において、5’モルホリノ炭素をリン基と連結する原子Yは、硫黄、窒素、炭素、または好ましくは酸素であり得る。リンからペンダントであるX部分は、フッ素、アルキルもしくは置換アルキル、アルコキシもしくは置換アルコキシ、チオアルコキシもしくは置換チオアルコキシ、または非置換、一置換、もしくは二置換窒素(モルホリンもしくはピペリジンなどの環状構造を含む)であり得る。アルキル、アルコキシおよびチオアルコキシは好ましくは、1~6個の炭素原子を含む。Z部分は硫黄または酸素であり、好ましくは酸素である。
【0133】
図1Fおよび1Gにおいて示される連結は、7原子単位長さの骨格のために設計される。構造1Fにおいて、X部分は、構造1Eにおける通りであり、Y部分は、メチレン、硫黄、または好ましくは、酸素であり得る。構造1Gにおいて、X部分およびY部分は、構造1Eにおける通りである。特に好ましいモルホリノオリゴヌクレオチドは、図1Eにおいて示される形態のモルホリノサブユニット構造から構成されるものを含み、X=NH、N(CH、または1-ピペラジンまたは他の荷電している基であり、Y=Oであり、Z=Oである。
【0134】
実質的に荷電していないオリゴヌクレオチドを、本発明の一態様によって修飾し、例えば、2~5の荷電していない連結毎に約1まで、例えば、10の荷電していない連結毎に約4~5の荷電している連結を含み得る。特定の実施形態において、骨格連結の約25%がカチオン性であるとき、アンチセンス活性における最適な改善を見ることができる。特定の実施形態において、増強は、少数、例えば、10~20%のカチオン性連結において見ることができ、またはカチオン性連結の数は、50~80%の範囲内、例えば、約60%である。
【0135】
完全なカチオン性連結オリゴマーを含めた任意の数のカチオン性連結を有するオリゴマーを提供する。しかし好ましくは、オリゴマーは、部分的に荷電している(例えば、10%~80%)。好ましい実施形態において、連結の約10%~60%、好ましくは20%~50%は、カチオン性である。
【0136】
一実施形態において、カチオン性連結は、骨格に沿って散在している。部分的に荷電しているオリゴマーは好ましくは、少なくとも2つの連続的な荷電していない連結を含有する。すなわち、オリゴマーは好ましくは、その全体の長さに沿って厳密に交互になっているパターンを有さない。
【0137】
また考慮されるのは、カチオン性連結のブロックおよび荷電していない連結のブロックを有するオリゴマーである。例えば、荷電していない連結の中央ブロックは、カチオン性連結のブロックが隣接してもよく、または逆もまた同じである。一実施形態において、オリゴマーは、ほぼ等しい長さの5’、3’および中央領域を有し、中央領域におけるカチオン性連結の百分率は、約50%超、好ましくは約70%超である。
【0138】
ある特定の実施形態において、アンチセンス化合物は、混合物または荷電していない骨格連結およびカチオン性骨格連結を有するオリゴヌクレオチドの合成に関して上および下で引用した参照文献において詳述した方法を用いて、段階的固相合成によって調製することができる。場合によっては、さらなる化学部分をアンチセンス化合物に加えて、例えば、薬物動態を増強し、または化合物の捕捉または検出を促進することが望ましくあり得る。このような部分は、標準的な合成法によって共有結合的に付着させ得る。例えば、ポリエチレングリコール部分または他の親水性ポリマー、例えば、1~100のモノマーサブユニットを有するものの付加は、溶解度の増強において有用であり得る。
【0139】
レポーター部分、例えば、フルオレセインまたは放射性標識した基を、検出の目的のために付着し得る。代わりに、オリゴマーに付着したレポーター標識は、標識抗体またはストレプトアビジンを結合することができるリガンド、例えば、抗原またはビオチンであり得る。アンチセンス化合物の付着または修飾のための部分の選択において、一般に当然ながら、生体適合性であり、望ましくない副作用を伴わずに被験体において耐容性を示す可能性が高い基の化合物を選択することが望ましい。
【0140】
アンチセンス適用における使用のためのオリゴマーは一般に、長さが約10~約50のサブユニット、より好ましくは約10~30のサブユニット、および典型的には15~25の塩基の範囲である。例えば、アンチセンス化合物のために有用な長さである19~20のサブユニットを有する本発明のオリゴマーは理想的に、2~10個、例えば、4~8つのカチオン性連結、および残りの荷電していない連結を有し得る。14~15のサブユニットを有するオリゴマーは理想的には、2~7つ、例えば、3つ、4つ、または5つのカチオン性連結、および残りの荷電していない連結を有し得る。好ましい実施形態において、オリゴマーは、25~28のサブユニットを有する。
【0141】
各モルホリノ環構造は、塩基対合部分を支持し、典型的には細胞におけるまたは処置されている被験体における選択したアンチセンス標的にハイブリダイズするように設計される塩基対合部分の配列を形成する。塩基対合部分は、天然DNAまたはRNAにおいて見出されるプリンまたはピリミジン(例えば、A、G、C、TまたはU)、あるいは類似体、例えば、ヒポキサンチン(ヌクレオシドイノシンの塩基構成要素)、または5-メチルシトシンであり得る。
【0142】
上で述べたように、特定の実施形態は、PMO-Xオリゴマーおよび修飾された末端基を有するものを含めた、新規なサブユニット間連結を含むオリゴマーを対象とする。いくつかの実施形態において、これらのオリゴマーは、対応する無修飾オリゴマーよりDNAおよびRNAに対してより高い親和性を有し、他のサブユニット間連結を有するオリゴマーと比較して、改善された細胞送達、効力、および/または組織分布特性を示す。様々な連結タイプおよびオリゴマーの構造的特徴および特性は、下記の考察においてより詳細に記載する。これらおよび関連するオリゴマーの合成は、参照によりその全体が組み込まれている共有の米国特許出願第13/118,298号に記載されている。
【0143】
ある特定の実施形態において、本発明は、ヒト疾患と関連する標的配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド、薬学的に許容されるその塩を提供し、それは、式:
【0144】
【化11】
【0145】
を有するヌクレオチドの配列を含み、式中、
Nuは、核酸塩基であり、
は、式:
【0146】
【化12】
【0147】
を有し、
qは、0、1、または2であり、
は、水素、C~Cアルキル、C~Cアラルキル、およびホルムアミジニル基からなる群より選択され、
は、水素、C~C10アシル、C~C10アミノアシル、天然または非天然のアルファまたはベータアミノ酸のアシル部分、C~C10アラルキル、およびC~C10アルキルからなる群より選択され、あるいは
およびRは接合して、5~7員環を形成し、環は、C~C10アルキル、フェニル、ハロゲン、およびC~C10アラルキルからなる群より選択される置換基で任意選択で置換されていてもよく、
は、電子対、水素、C~CアルキルおよびC~Cアラルキルからなる群より選択され、
Rxは、サルコシンアミド、ヒドロキシル、ヌクレオチド、細胞透過性ペプチド部分、およびピペラジニルからなる群より選択され、
Ryは、水素、C~Cアルキル、ヌクレオチド、細胞透過性ペプチド部分、アミノ酸、ホルムアミジニル基、およびC~Cアシルからなる群より選択され、
Rzは、電子対、水素、C~Cアルキル、およびC~Cアシルからなる群より選択される。
【0148】
Nuは、アデニン、グアニン、チミン、ウラシル、シトシン、およびヒポキサンチンからなる群より選択され得る。より好ましくは、Nuは、チミンまたはウラシルである。
【0149】
好ましい実施形態において、本発明は、式:
【0150】
【化13】
【0151】
を有するヌクレオチドの配列を有するオリゴヌクレオチド、薬学的に許容されるその塩を提供し、
式中、Nuは、核酸塩基であり、
は、R’およびR’’からなる群より選択され、ここでR’は、ジメチル-アミノであり、R’’は、式:
【0152】
【化14】
【0153】
を有し、
式中、少なくとも1つのRは、R’’であり、
qは、0、1、または2であり、ただし、Rの少なくとも1つは、ピペリジニル部分であり、
は、水素、C~Cアルキル、C~Cアラルキル、およびホルムアミジニル基からなる群より選択され、
は、水素、C~C10アシル、C~C10アミノアシル、天然または非天然のアルファまたはベータアミノ酸のアシル部分、C~C10アラルキル、およびC~C10アルキルからなる群より選択され、あるいは
およびRは接合して、5~7員環を形成し、環は、C~C10アルキル、フェニル、ハロゲン、およびC~C10アラルキルからなる群より選択される置換基で任意選択で置換されていてもよく、
は、電子対、水素、C~Cアルキルおよびアラルキルからなる群より選択され、
Rxは、サルコシンアミド、ヒドロキシル、ヌクレオチド、細胞透過性ペプチド部分、およびピペラジニルからなる群より選択され、
Ryは、水素、C~Cアルキル、ヌクレオチド、細胞透過性ペプチド部分、アミノ酸、ホルムアミジニル基、およびC~Cアシルからなる群より選択され、
Rzは、電子対、水素、C~Cアルキル、およびC~Cアシルからなる群より選択される。
【0154】
Nuは、アデニン、グアニン、チミン、ウラシル、シトシン、およびヒポキサンチンからなる群より選択され得る。より好ましくは、Nuは、チミンまたはウラシルである。
【0155】
基の約90~50%は、ジメチルアミノ(すなわち、R’)である。より好ましくは、R基の90~50%は、ジメチルアミノである。最も好ましくは、R基の約66%は、ジメチルアミノである。
【0156】
’’は、
【0157】
【化15】
【0158】
からなる群より選択され得る。
【0159】
好ましくは、オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチドは、式:
【0160】
【化16】
【0161】
を有し、
式中、Rx、Ry、Rz、およびNuは、上記の通りである。最も好ましくは、Nuは、チミンまたはウラシルである。
【0162】
チミン(T)は、上記の化学修飾を含有する好ましい塩基対合部分(NuまたはPi)であるが、当業者に公知の任意の塩基サブユニットは、塩基対合部分として使用することができる。
【0163】
B.ペプチド輸送体
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、CPP、好ましくは、細胞中への化合物の輸送を増強するのに有効なアルギニンに富んだペプチド輸送部分に結合体化されたオリゴヌクレオチド部分を含み得る。輸送部分は、例えば、図1Bおよび1Cにおいて示すように、オリゴマーの末端に好ましくは付着している。ペプチドは、中間の全ての整数を含めて、所与の細胞培養集団の細胞の30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%内で細胞透過を誘発する能力を有し、全身投与によって、複数の組織内でインビボでの巨大分子のトランスロケーションを可能とする。一実施形態において、細胞透過性ペプチドは、アルギニンに富んだペプチド輸送体であり得る。別の実施形態において、細胞透過性ペプチドは、ペネトラチンまたはTatペプチドであり得る。これらのペプチドは当技術分野で周知であり、例えば、参照によりその全体が組み込まれている米国特許出願公開第2010-0016215A1号に開示されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドへのペプチドの結合体化への特に好ましいアプローチは、参照によりその全体が組み込まれているPCT公開WO2012/150960において見出すことができる。本発明のペプチド結合体化オリゴヌクレオチドの好ましい一実施形態は、CPPおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドの間のリンカーとしてグリシンを利用する。例えば、好ましいペプチド結合体化PMOは、R-G-PMOからなる。
【0164】
上記のような輸送部分は、付着した輸送部分の非存在下でのオリゴマーの取込みと比べて、付着したオリゴマーの細胞侵入を大いに増強することが示されてきた。取込みは好ましくは、結合体化されていない化合物と比べて、少なくとも10倍、より好ましくは20倍増強される。
【0165】
アルギニンに富んだペプチド輸送体(すなわち、細胞透過性ペプチド)の使用は、本発明の実行において特に有用である。特定のペプチド輸送体は、筋細胞を含めた初代細胞中へのアンチセンス化合物の送達において高度に有効であることが示されてきた(Marshall, Odaら、2007年;Jearawiriyapaisarn, Moultonら、2008年;Wu, Moultonら、2008年)。さらに、他の公知のペプチド輸送体、例えば、ペネトラチンおよびTatペプチドと比較して、本明細書に記載されているペプチド輸送体は、アンチセンスPMOに結合体化したとき、いくつかの遺伝子転写物のスプライシングを変化させる増強された能力を示す(Marshall,
Odaら、2007年)。モルホリノ-ペプチド輸送体結合体の好ましい実施形態は、その全体が本明細書に援用されるWO/2012/150960に記載されている。
【0166】
リンカーを除いた例示的なペプチド輸送体を、下記で表1において示す。
【0167】
【表1】
【0168】
C.発現ベクター
一実施形態において、本発明は、細胞における本明細書に記載されているジストロフィン標的化配列の発現のための発現ベクターを含む。ベクター送達系は、本発明のオリゴマーのジストロフィン標的化配列を発現することができる。一実施形態において、このようなベクターは、配列番号1~5の1つまたは複数の少なくとも10の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチド配列を発現している。別の実施形態において、このようなベクターは、配列番号1~5の1つまたは複数を含むポリヌクレオチド配列を発現している。遺伝子送達に適した発現ベクターは、当技術分野において公知である。このような発現ベクターを修飾して、本明細書に記載されているジストロフィン標的化配列を発現させることができる。例示的な発現ベクターは、この中にポリヌクレオチドを挿入またはクローニングすることができる、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、酵母またはウイルス(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルスなど)に由来する、ポリヌクレオチド分子、好ましくはDNA分子を含む。ベクターは、1つまたは複数の独特な制限部位を好ましくは含有し、標的細胞もしくは組織または前駆細胞もしくはその組織を含めた規定の宿主細胞において自律複製することができ、あるいはクローニングされた配列が再現性があるように規定の宿主のゲノムと組み込み可能であることができる。したがって、ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、その複製が染色体の複製と無関係である染色体外実体として存在するベクター、例えば、直鎖状もしくは閉環状プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体でよい。ベクターは、自己複製を確実にするための任意の手段を含有することができる。代わりに、ベクターは、宿主細胞中に導入されたとき、ゲノム中に組み込まれ、かつその中にベクターが組み込まれている染色体(複数可)と一緒に複製されるものでよい。
【0169】
一実施形態において、発現ベクターは、特定の対象とする細胞または組織における(例えば、筋肉における)本明細書に記載されているオリゴマーのジストロフィン標的化配列の発現を促進する、組織特異的プロモーター、例えば、筋特異的プロモーターおよび/またはエンハンサーを含む。筋細胞における発現に適したプロモーター配列および発現ベクターは、例えば、その全内容が参照により本明細書中に組み込まれているUS2011/0212529において記載されているものを含む。例示的な筋特異的プロモーターは、デスミンプロモーター、筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、Pitx3プロモーター、骨格アルファ-アクチンプロモーター、またはトロポニンIプロモーターを含む。筋特異的プロモーターの使用は、例えば、Talbotら、Molecular Therapy(2010年)、18巻(3号):601~608頁;Wangら、Gene Therapy(2008年)、15巻(22号):1489~99頁;およびCoulonら、Journal of Biological Chemistry(2007年)、282巻(45号):33192~33200頁においてさらに記載されている。
【0170】
III.製剤および投与様式
特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のアンチセンスオリゴマーの治療的送達に適した製剤または組成物を提供する。したがって、特定の実施形態において、本発明は、1種または複数種の薬学的に許容される担体(添加物)および/または希釈剤と一緒に製剤した、治療有効量の1つまたは複数の本明細書に記載されているオリゴマーを含む薬学的に許容される組成物を提供する。本発明のオリゴマーを単独で投与することは可能である一方、化合物を医薬製剤(組成物)として投与することが好ましい。
【0171】
核酸分子の送達のための方法は、例えば、Akhtarら、1992年、Trends
Cell Bio.、2巻:139頁;およびDelivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics、ed. Akhtar、Sullivanら、PCT WO94/02595に記載されている。これらおよび他のプロトコルは、本発明の単離したオリゴマーを含めた実際上任意の核酸分子の送達のために利用することができる。
【0172】
下記で詳述するように、本発明の医薬組成物は、下記のために適合されたものを含めた、固体または液体形態での投与のために特別に製剤され得る:(1)経口投与、例えば、水薬(水性または非水性の液剤または懸濁剤)、錠剤、例えば、口腔、舌下、および全身的吸収を標的としたもの、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌への適用のためのペースト剤;(2)非経口投与、例えば、皮下、筋内、静脈内もしくは硬膜外注射による、例えば、無菌液剤もしくは懸濁剤、または持続放出製剤として;(3)局所適用、例えば、皮膚に適用するクリーム剤、軟膏剤、または制御放出パッチまたはスプレー剤として;(4)膣内または直腸内、例えば、ペッサリー、クリーム剤またはフォーム剤として;(5)舌下;(6)目;(7)経皮的;あるいは(8)経鼻。
【0173】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書において、合理的な利益/リスク比と釣り合った、過剰な毒性も刺激もアレルギー反応も他の問題も合併症も伴わない、妥当な医学的判断の範囲内で、人間および動物の組織と接触させる使用に適した化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために用いられる。
【0174】
「薬学的に許容される担体」という語句は、本明細書において使用する場合、体の1つの器官または一部から、体の別の器官または一部に対象化合物を運搬または輸送することに関与する、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、滑沢剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、もしくはステアリン酸(steric acid))、または溶媒封入材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、患者に対して傷害性でないという意味で「許容され」なくてはならない。
【0175】
薬学的に許容される担体としての役割を果たすことができる材料のいくつかの例には、これらに限定されないが、(1)糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプン;(3)セルロース、およびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;(4)トラガカント粉末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、カカオバターおよび坐剤ろう;(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝化溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;ならびに(22)医薬製剤中で用いられる他の無毒性の適合性物質が含まれる。
【0176】
本発明のアンチセンスオリゴマーを有する製剤に適した薬剤のさらなる非限定的例には、PEGが結合体化された核酸、リン脂質が結合体化された核酸、親油性部分を含有する核酸、ホスホロチオエート、様々な組織中への薬物の侵入を増強することができるP糖タンパク質阻害剤(例えば、Pluronic P85);生分解性ポリマー、例えば、埋込み後の持続放出送達のためのポリ(DL-ラクチド-coグリコリド)ミクロスフィア(Emerich,D Fら、1999年、Cell Transplant、8巻、47~58頁)Alkermes、Inc.Cambridge、Mass.;および負荷されたナノ粒子、例えば、血液脳関門を越えて薬物を送達することができ、かつニューロン取込み機構を変化させることができる、ポリブチルシアノアクリレートでできたもの(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry、23巻、941~949頁、1999年)が含まれる。
【0177】
本発明はまた、ポリ(エチレングリコール)脂質を含有する表面修飾されたリポソーム(PEG-修飾された分岐状および非分岐状のもの、もしくはこれらの組合せ、または長期循環リポソームもしくはステルスリポソーム)を含む組成物の使用を特徴とする。本発明のオリゴマーはまた、様々な分子量の共有結合的に付着したPEG分子を含むことができる。これらの製剤は、標的組織における薬物の蓄積を増大させるための方法を提供する。このクラスの薬物担体は、単核食細胞系(MPSまたはRES)によるオプソニン化および排除に抵抗し、それによってカプセル化された薬物についてより長い血液循環時間および組織曝露の増強を可能とする(Lasicら、Chem. Rev.、1995年、95巻、2601~2627頁;Ishiwataら、Chem. Pharm. Bull.、1995年、43巻、1005~1011頁)。このようなリポソームは、おそらく血管新生された標的組織における血管外漏出および捕捉によって、腫瘍において選択的に蓄積することが示されてきた(Lasicら、Science、1995年、267巻、1275~1276頁;Okuら、1995年、Biochim. Biophys. Acta、1238巻、86~90頁)。長期循環リポソームは、特に、MPSの組織において蓄積することが公知である従来のカチオン性リポソームと比較して、DNAおよびRNAの薬物動態および薬力学を増強する(Liuら、J. Biol. Chem.、1995年、42巻、24864~24870頁;Choiら、国際PCT出願第WO96/10391号;Ansellら、国際PCT出願第WO96/10390号;Hollandら、国際PCT出願第WO96/10392号)。長期循環リポソームはまた、代謝的に活発なMPS組織、例えば、肝臓および脾臓における蓄積を回避するこれらの能力に基づいて、カチオン性リポソームと比較してより大きな程度まで薬物をヌクレアーゼ分解から保護する可能性が高い。
【0178】
さらなる実施形態において、本発明は、米国特許第6,692,911号、同第7,163,695号および同第7,070,807号において記載されるような、送達のために調製されるオリゴマー組成物を含む。これに関しては、一実施形態において、本発明は、(米国特許第7,163,695号、同第7,070,807号、および同第6,692,911号において記載される)単独での、あるいはPEG(例えば、分岐状もしくは非分岐状PEG、または両方の混合物)と組み合わせた、PEGおよび標的化部分と組み合わせた、あるいは架橋剤と組み合わせた上記のいずれかと組み合わせた、リシンおよびヒスチジン(HK)のコポリマーを含む組成物中の本発明のオリゴマーを提供する。特定の実施形態において、本発明は、グルコン酸で修飾されたポリヒスチジンまたはグルコニル化(gluconylated)-ポリヒスチジン/トランスフェリン-ポリリシンを含む組成物中のアンチセンスオリゴマーを提供する。当業者はまた、HisおよびLysと同様の特性を有するアミノ酸が、組成物内で置換され得ることを認識する。
【0179】
本明細書に記載されているオリゴマーの特定の実施形態は、塩基性官能基、例えば、アミノまたはアルキルアミノを含有してもよく、このように、薬学的に許容される酸と共に薬学的に許容される塩を形成することができる。「薬学的に許容される塩」という用語は、この点において、本発明の化合物の比較的毒性のない無機および有機の酸付加塩を指す。これらの塩は、投与ビヒクルまたは剤形製造工程においてインサイチュで調製することができ、あるいはその遊離塩基の形態の精製した本発明の化合物と適切な有機酸または無機酸とを別々に反応させ、それに続く精製の間にこのように形成された塩を単離することによって調製することができる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナプシル酸(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが含まれる(例えば、Bergeら(1977年)「Pharmaceutical Salts」、J. Pharm. Sci.、66巻:1~19頁を参照されたい)。
【0180】
対象オリゴマーの薬学的に許容される塩には、例えば、無毒性の有機酸または無機酸からの、化合物の従来の無毒性塩または第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、このような従来の無毒性塩には、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などに由来するもの;および有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸(salicyclic)、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸(isothionic)などから調製された塩が含まれる。
【0181】
特定の実施形態において、本発明のオリゴマーは、1つまたは複数の酸性官能基を含有してもよく、したがって薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。「薬学的に許容される塩」という用語は、これらの場合、本発明の化合物の比較的毒性のない無機および有機の塩基付加塩を指す。これらの塩は同様に、投与ビヒクルまたは剤形製造工程においてインサイチュで調製することができ、あるいはその遊離酸の形態の精製した化合物と、適切な塩基、例えば、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩とを、アンモニアとを、または薬学的に許容される有機第一級、第二級もしくは第三級アミンとを別々に反応させることによって調製することができる。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類塩には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびアルミニウム塩などが含まれる。塩基付加塩の形成のために有用な代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが含まれる(例えば、Bergeら、上述を参照されたい)。
【0182】
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、矯味矯臭剤および香料、保存剤および抗酸化剤はまた、組成物中に存在することができる。
【0183】
薬学的に許容される抗酸化剤の例には、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが含まれる。
【0184】
本発明の製剤には、経口、経鼻、局所(口腔および舌下を含めた)、直腸、膣および/または非経口投与に適したものが含まれる。製剤は、単位剤形で好都合に提示し得、製剤分野で周知の任意の方法によって調製し得る。単一の剤形を生成するために担体材料と合わせることができる活性成分の量は、処置されている宿主、特定の投与モードによって変化する。単一の剤形を生成するために担体材料と合わせることができる活性成分の量は一般に、治療効果を生じさせる化合物の量である。一般に、100パーセントの内、この量は、約0.1パーセント~約99パーセントの活性成分、好ましくは、約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは、約10パーセント~約30パーセントの範囲である。
【0185】
特定の実施形態において、本発明の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤、例えば、胆汁酸、およびポリマー担体、例えば、ポリエステルおよびポリ無水物から選択される賦形剤;ならびに本発明のオリゴマーを含む。特定の実施形態において、上記の製剤は、本発明の経口的に生物が利用可能なオリゴマーを与える。
【0186】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明のオリゴマーを、担体、および任意選択で、1種または複数種の補助成分と合わせるステップを含む。一般に、製剤は、本発明の化合物と、液体担体、または微粉化した固体担体、または両方とを、均質および密接に合わせ、次いで必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。
【0187】
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれが、活性成分として所定の量の本発明の化合物を含有する、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(香味を付けた基剤、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを使用した)、散剤、顆粒剤の形態、あるいは水性もしくは非水性液体中の液剤または懸濁剤として、あるいは水中油型もしくは油中水型液体乳剤として、あるいはエリキシル剤またはシロップ剤として、あるいは香錠(不活性な基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアを使用した)として、ならびに/あるいは口内洗浄剤などとしてでよい。本発明のオリゴマーはまた、ボーラス、舐剤またはペースト剤として投与され得る。
【0188】
経口投与のために本発明の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤、トローチ剤(trouches)など)において、活性成分は、1種または複数種の薬学的に許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、ならびに/あるいは下記のいずれか:(1)充填剤または増量剤(extender)、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア;(3)保湿剤(humectant)、例えば、グリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(6)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物および界面活性剤、例えば、ポロキサマーおよびラウリル硫酸ナトリウム;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、および非イオン性界面活性剤;(8)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ;(9)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、およびこれらの混合物;(10)着色剤;ならびに(11)制御放出剤、例えば、クロスポビドンまたはエチルセルロースと混合され得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、医薬組成物はまた、緩衝剤を含み得る。同様のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤、および高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、ソフトおよびハードシェルのゼラチンカプセル中の充填剤として用い得る。
【0189】
錠剤は、任意選択で1種または複数種の補助成分と共に、圧縮または成形によって作製し得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性な希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散化剤を使用して調製し得る。成形錠剤は、適切な機械において不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化した化合物の混合物を成形することによって作製し得る。
【0190】
本発明の医薬組成物の錠剤、および他の固体剤形、例えば、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶性コーティング、および医薬製剤の技術分野において周知の他のコーティングと共に任意選択で刻み目を付け、または調製し得る。これらはまた、例えば、所望の放出プロファイルを提供するために変化する割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフィアを使用して、その中の活性成分の緩徐な放出または制御放出を提供するために製剤され得る。これらは、急速放出のために製剤され得る(例えば、凍結乾燥)。これらは、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過によって、または滅菌水もしくはいくつかの他の無菌の注射用媒体に使用の直前に溶解させることができる無菌の固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって無菌化し得る。これらの組成物はまた、乳白剤を任意選択で含有してもよく、これらが、任意選択で遅延された様式で、胃腸管の特定の部分において活性成分(複数可)のみまたはそれを優先的に放出する組成であり得る。使用することができる包埋組成物の例には、ポリマー物質およびろうが含まれる。活性成分はまた、適切な場合、上記の賦形剤の1つまたは複数を有するマイクロカプセル化された形態でよい。
【0191】
本発明の化合物の経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロ乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性成分に加えて、液体剤形は、当技術分野で通常使用される不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含有し得る。
【0192】
不活性な希釈剤に加えて、経口組成物はまた、佐剤、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、香料および保存剤を含むことができる。
【0193】
懸濁剤は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにこれらの混合物として、懸濁化剤を含有し得る。
【0194】
直腸または膣投与のための製剤は、1種または複数種の本発明の化合物と、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤ろうまたはサリチレートを含む1種または複数種の適切な非刺激性の賦形剤または担体とを混合することによって調製してもよく、かつ室温で固体であるが体温で液体であり、したがって、直腸または膣腔内で融解して活性化合物を放出する、坐剤として提示し得る。
【0195】
本明細書において提供するようなオリゴマーの局所または経皮的投与のための製剤または剤形には、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチおよび吸入剤が含まれる。活性オリゴマーは、無菌条件下にて、薬学的に許容される担体と、および必要とし得る任意の保存剤、緩衝液、または噴霧体と混合し得る。軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤は、本発明の活性化合物に加えて、賦形剤、例えば、動物性および植物性脂肪、油、ろう、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクならびに酸化亜鉛、またはこれらの混合物を含有し得る。
【0196】
散剤およびスプレー剤は、本発明のオリゴマーに加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物を含有することができる。スプレー剤は、通例の噴霧体、例えば、クロロフルオロ炭化水素および揮発性非置換炭化水素、例えば、ブタンおよびプロパンをさらに含有することができる。
【0197】
経皮パッチは、体への本発明のオリゴマーの制御された送達を提供するさらなる利点を有する。このような剤形は、オリゴマーを適当な媒体に溶解または分散させることによって作製することができる。吸収増強剤をまた使用して、皮膚を横切る薬剤のフラックスを増大させることができる。このようなフラックスの速度は、当技術分野において公知の他の方法の中で、速度制御膜を提供することによって、または薬剤をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散させることによって制御することができる。
【0198】
非経口投与に適した医薬組成物は、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、製剤を意図するレシピエントの血液と等張とする溶質、または懸濁化剤もしくは増粘剤(thickening agent)を含有し得る、1種または複数種の薬学的に許容される無菌等張性の水性液剤もしくは非水性液剤、分散剤、懸濁剤または乳剤、あるいは使用の直前に無菌の注射用溶液または分散剤に再構成し得る無菌の粉末と組み合わせて、1種または複数種の本発明のオリゴマーを含有し得る。本発明の医薬組成物において用い得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適切なこれらの混合物、植物性油、例えば、オリーブ油、および注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが含まれる。例えば、コーティング材料、例えば、レシチンの使用によって、分散剤の場合は必要とされる粒径を維持することによって、および界面活性剤の使用によって、適当な流動性を維持することができる。
【0199】
これらの組成物はまた、佐剤、例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散化剤を含有し得る。対象オリゴマーに対する微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含むことによって確実にし得る。組成物中に等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含むことがまた望ましくあり得る。さらに、注射用医薬形態の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによってもたらし得る。
【0200】
場合によっては、薬物の効果を延長させるために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、当技術分野において公知の他の方法の中でも、水溶性が乏しい結晶性またはアモルファス材料の液体懸濁物を使用することによって達成し得る。そして薬物の吸収の速度は溶解のその速度によって決まり、これはまた、結晶サイズおよび結晶形態によって決まり得る。代わりに、非経口的に投与された薬物形態の吸収の遅延は、油性ビヒクルに薬物を溶解または懸濁させることによって達成される。
【0201】
注射用デポー形態は、生分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド-ポリグリコリド中で対象オリゴマーのマイクロカプセル化マトリックスを形成させることによって作製し得る。オリゴマーとポリマーの比、および用いる特定のポリマーの性質によって、オリゴマー放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。デポー注射用製剤はまた、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロ乳剤中に薬物を捕捉することによって調製し得る。
【0202】
本発明のオリゴマーが医薬としてヒトおよび動物に投与されるとき、これらはそれ自体で、または薬学的に許容される担体と組み合わせて、例えば、0.1~99%(より好ましくは、10~30%)の活性成分を含有する医薬組成物として与えることができる。
【0203】
上で述べたように、本発明の製剤または調製物は、経口的、非経口的、局所的、または直腸に与え得る。これらは典型的には、それぞれの投与経路に適した形態で与えられる。例えば、これらは、錠剤またはカプセル剤形態で、注射、吸入、眼用ローション剤(eye lotion)、軟膏剤、坐剤などによる、注射、注入または吸入による投与;ローション剤または軟膏剤による局所;および坐剤による直腸で投与される。
【0204】
「非経口投与」および「非経口的に投与された」という語句は、本明細書において使用する場合、通常、注射による、経腸および局所投与以外の投与モードを意味し、これらに限定されないが、静脈内、筋内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内および胸骨内注射および注入が含まれる。
【0205】
「全身投与」、「全身的に投与された」、「末梢投与」および「末梢的に投与された」という語句は、本明細書において使用する場合、中枢神経系中への直接の投与以外の、化合物、薬物または他の材料が患者の系に入り、したがって代謝および他の同様のプロセスに供されるような、化合物、薬物または他の材料の投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0206】
選択した投与経路に関わらず、適切な水和形態で使用し得る本発明のオリゴマー、および/または本発明の医薬組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容される剤形に製剤され得る。本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対して受容できないほど毒性であることを伴わずに、特定の患者、組成物、および投与モードについて所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量を得るために変化し得る。
【0207】
選択した投与量レベルは、用いられる本発明の特定のオリゴマー、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与の時間、用いられる特定のオリゴマーの排泄または代謝の速度、吸収の速度および程度、処置の持続期間、用いられる特定のオリゴマーと組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、身体全体の健康および従前の病歴、ならびに医学の技術分野において周知の同様の要因を含めた種々の要因によって決まる。
【0208】
当技術分野で通常の技量を有する医師または獣医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりも低いレベルで医薬組成物中に用いられる本発明の化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増大させることができる。一般に、本発明の化合物の適切な1日用量は、治療効果を生じさせるのに有効な最も低い用量である化合物の量である。このような有効用量は一般に、上記の要因によって決まる。一般に、患者のための本発明の化合物の経口、静脈内、脳室内(intracerebroventricular)および皮下用量は、示される効果のために使用されるとき、1日当たり体重1キログラム毎に約0.0001~約100mgの範囲である。
【0209】
所望される場合、活性化合物の有効な1日用量は、任意選択で単位剤形にて、1日を通して適当な間隔で別々に投与される、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれを超える部分用量として投与され得る。特定の状況において、投薬は、1日毎に1回の投与である。特定の実施形態において、投薬は、必要に応じ、機能的なジストロフィンタンパク質の所望される発現を維持するための、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、10日毎、11日毎、12日毎、13日毎、14日毎、または1週間毎、2週間毎、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎、12週間毎、または1カ月毎、2カ月毎、3カ月毎、4カ月毎、5カ月毎、6カ月毎、7カ月毎、8カ月毎、9カ月毎、10カ月毎、11カ月毎、12カ月毎に1回または複数回の投与である。
【0210】
核酸分子は、これらに制限されないが、本明細書に記載され、当技術分野において公知のような、リポソーム中へのカプセル化、イオン導入による、または他のビヒクル、例えば、ヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、および生体付着性ミクロスフィア中への組込みによるものを含めて、当業者には公知の種々の方法によって細胞に投与することができる。特定の実施形態において、マイクロ乳化技術を利用して、親油性(水不溶性)医薬品のバイオアベイラビリティーを改善し得る。例には、トリメトリン(Trimetrine)(Dordunoo, S. K.ら、Drug Development and Industrial Pharmacy、17頁(12号)、1685~1713頁、1991年およびREV5901(Sheen, P. C.ら、J Pharm Sci、80巻(7号)、712~714頁、1991年)が含まれる。様々な利益のなかでもとりわけ、マイクロ乳化は、吸収を循環器系の代わりにリンパ系に優先的に向けることによって増強されたバイオアベイラビリティーを実現し、これによって肝臓を迂回し、肝胆道循環における化合物の破壊を防止する。
【0211】
本発明の一態様において、製剤は、本明細書において提供するようなオリゴマーおよび少なくとも1種の両親媒性担体から形成されるミセルを含有し、ミセルは、約100nm未満の平均直径を有する。より好ましい実施形態は、約50nm未満の平均直径を有するミセルを提供し、さらにより好ましい実施形態は、約30nm未満、またはさらに約20nm未満の平均直径を有するミセルを提供する。
【0212】
全ての適切な両親媒性担体が意図される一方、現在好ましい担体は一般に、一般に安全と認められる(GRAS)ステータスを有し、かつ本発明の化合物を可溶化することができ、溶液が複雑な水相(例えば、ヒト消化管において見出されるもの)と接触するとき、より後の段階でマイクロ乳化することができることの両方であるものである。通常、これらの要件を満足させる両親媒性成分は、2~20のHLB(親水親油バランス)値を有し、これらの構造は、C-6~C-20の範囲の直鎖脂肪族ラジカルを含有する。例は、ポリエチレングリコール化(polyethylene-glycolized)脂肪酸グリセリドおよびポリエチレングリコールである。
【0213】
両親媒性担体の例には、飽和および一不飽和ポリエチレングリコール化(polyethyleneglycolyzed)脂肪酸グリセリド、例えば、完全または部分的に水素付加した様々な植物性油から得られるものが含まれる。このような油は有利には、トリ-、ジ-、およびモノ-脂肪酸グリセリド、ならびに対応する脂肪酸のジ-およびモノ-ポリエチレングリコールエステルからなり、特に好ましい脂肪酸組成物は、カプリン酸4~10%、カプリン酸3~9%、ラウリン酸40~50%、ミリスチン酸14~24%、パルミチン酸4~14%およびステアリン酸5~15%を含む。別の有用なクラスの両親媒性担体には、飽和もしくは一不飽和脂肪酸(SPAN-シリーズ)または対応するエトキシ化類似体(TWEEN-シリーズ)を伴う部分的にエステル化されたソルビタンおよび/またはソルビトールが含まれる。
【0214】
Gelucire-シリーズ、Labrafil、Labrasol、またはLauroglycol(全てGattefosse Corporation、Saint Priest、Franceによって製造および配布されている)、PEG-モノ-オレエート、PEG-ジ-オレエート、PEG-モノ-ラウレートおよびジ-ラウレート、レシチン、ポリソルベート80など(米国および世界中のいくつかの会社によって生産および配布されている)を含めて、市販の両親媒性担体は特に有用であり得る。
【0215】
特定の実施形態において、送達は、適切な宿主細胞中への本発明の組成物の導入のための、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフィア、脂質粒子、小胞などの使用によって起こり得る。特に、本発明の組成物は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフィア、ナノ粒子などのいずれか中にカプセル化されて、送達のために製剤され得る。このような送達ビヒクルの製剤および使用は、公知および従来の技術を使用して行うことができる。
【0216】
本発明における使用に適した親水性ポリマーは、容易に水溶性であり、小胞形成脂質に共有結合的に付着させることができ、毒性効果を伴わずにインビボで耐容性を示す(すなわち、生体適合性である)ものである。適切なポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(ポリラクチドとまた称される)、ポリグリコール酸(ポリグリコリドとまた称される)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー、およびポリビニルアルコールが含まれる。特定の実施形態において、ポリマーは、約100ダルトンもしくは120ダルトンから、約5,000ダルトンもしくは10,000ダルトンまで、または約300ダルトン~約5,000ダルトンの分子量を有する。他の実施形態において、ポリマーは、約100~約5,000ダルトンの分子量を有し、または約300~約5,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールである。特定の実施形態において、ポリマーは、750ダルトンのポリエチレングリコール(PEG(750))である。ポリマーはまた、その中のモノマーの数によって定義し得る。本発明の好ましい実施形態は、少なくとも約3種のモノマーのポリマーを利用し、このようなPEGポリマーは、3種のモノマーからなる(ほぼ150ダルトン)。
【0217】
本発明における使用に適し得る他の親水性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン(polymethoxazoline)、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、および誘導体化セルロース、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースが含まれる。
【0218】
特定の実施形態において、本発明の製剤は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸)(poly(butic acid))、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、多糖類、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリレート、ならびにそのブレンド、混合物、またはコポリマーからなる群より選択される生体適合性ポリマーを含む。
【0219】
シクロデキストリンは、それぞれ、ギリシャ文字α、βまたはγと指定される、6つ、7つまたは8つのグルコース単位からなる環状オリゴ糖である。グルコース単位は、α-1,4-グルコシド結合によって連結している。糖単位のいす形配座の結果として、全ての第二級ヒドロキシル基(C-2、C-3における)は、環の1つの側面上に位置しており、一方、C-6における全ての第一級ヒドロキシル基は、他の側面上に配置されている。その結果、外側の面は親水性であり、シクロデキストリンを水溶性とする。対照的に、シクロデキストリンの空洞は、原子C-3およびC-5の水素によって、ならびにエーテル様酸素で裏打ちされているため疎水性である。これらのマトリックスは、例えば、ステロイド化合物、例えば、17α-エストラジオールを含めた種々の比較的疎水性の化合物と共に複合体を形成することが可能となる(例えば、van Udenら、Plant Cell Tiss. Org. Cult.、38巻:1-3-113(1994年)を参照されたい)。複合体形成は、ファンデルワールス相互作用によって、および水素結合形成によって起こる。シクロデキストリンの化学的性質の一般的概説について、Wenz、Agnew. Chem. Int. Ed. Engl.、33巻:803~822頁(1994年)を参照されたい。
【0220】
シクロデキストリン誘導体の物理化学的特性は、種類および置換度によって強力に決まる。例えば、水中のこれらの溶解度は、不溶性(例えば、トリアセチル-β-シクロデキストリン)から147%可溶性(w/v)(G-2-β-シクロデキストリン)までの範囲である。さらに、これらは、多くの有機溶媒中で可溶性である。シクロデキストリンの特性により、様々な製剤構成要素の溶解度を増大または減少させることによって、これらの溶解度の制御をすることができる。
【0221】
多数のシクロデキストリンおよびこれらの調製のための方法が記載されてきた。例えば、Parmeter(I)ら(米国特許第3,453,259号)およびGrameraら(米国特許第3,459,731号)は、電気的中性のシクロデキストリンを記載した。他の誘導体には、カチオン性特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(II)、米国特許第3,453,257号]、不溶性架橋シクロデキストリン(Solms、米国特許第3,420,788号)、およびアニオン性特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(III)、米国特許第3,426,011号]が含まれる。アニオン性特性を有するシクロデキストリン誘導体の中で、カルボン酸、亜リン酸、亜ホスフィン酸(phosphinous acid)、ホスホン酸、リン酸、チオホスホン酸(thiophosphonic acid)、チオスルフィン酸(thiosulphinic acid)、およびスルホン酸が、親シクロデキストリンに付加されてきた[Parmeter(III)、上述を参照されたい]。さらに、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体は、Stellaらによって記載されてきた(米国特許第5,134,127号)。
【0222】
リポソームは、水性の内部コンパートメントを封入する少なくとも1つの脂質二重層膜からなる。リポソームは、膜タイプにより、およびサイズにより特性決定し得る。小型単層小胞(small unilamellar vesicle)(SUV)は単一の膜を有し、典型的には直径が0.02~0.05μmの範囲であり、大型単層小胞(large unilamellar vesicle)(LUVS)は典型的には、0.05μmより大きい。少層大型小胞(oligolamellar large vesicle)および多層小胞(multilamellar vesicle)は、複数の通常同心円状膜の層を有し、典型的には0.1μmより大きい。いくつかの非同心円状膜を有するリポソーム、すなわち、より大型小胞内に含有されるいくつかのより小型小胞は、多胞体小胞(multivesicular vesicle)と称される。
【0223】
本発明の一態様は、本発明のオリゴマーを含有するリポソームを含む製剤に関し、リポソーム膜は、増大した運搬能力を有するリポソームを提供するように製剤される。代わりにまたはさらに、本発明の化合物は、リポソームのリポソーム二重層中に含有し得、またはリポソームのリポソーム二重層上に吸着し得る。本発明のオリゴマーは、脂質界面活性剤(lipid surfactant)と共に凝集させ、リポソームの内側空間内に運んでもよい。これらの場合、リポソーム膜は、活性剤-界面活性剤凝集物の破壊効果に抵抗するように製剤される。
【0224】
本発明の一実施形態によると、PEG鎖が、脂質二重層の内面からリポソームによってカプセル化された内部空間中に伸長し、脂質二重層の外部から周囲の環境中に伸長するように、リポソームの脂質二重層は、ポリエチレングリコール(PEG)で誘導体化された脂質を含有する。
【0225】
本発明のリポソーム内に含有される活性剤は、可溶化形態である。界面活性剤および活性剤の凝集物(例えば、目的とする活性剤を含有する乳剤またはミセル)は、本発明によるリポソームの内部空間内に捕捉し得る。界面活性剤は、活性剤を分散および可溶化するように作用し、これらに限定されないが、変化する鎖長(例えば、約C14~約C20)の生体適合性リゾホスファチジルコリン(LPG)を含めた任意の適切な脂肪族、脂環式または芳香族の界面活性剤から選択され得る。ポリマー誘導体化脂質は、ミセル/膜融合を阻害するように作用し、界面活性剤分子へポリマーを加えることによって界面活性剤のCMCを減少させ、ミセル形成を助長するため、ポリマー誘導体化脂質、例えば、PEG-脂質をまた、ミセル形成のために利用し得る。好ましいのは、マイクロモル濃度範囲のCMOを有する界面活性剤である。より高いCMCの界面活性剤を利用して、本発明のリポソーム内に捕捉されたミセルを調製し得る。
【0226】
本発明にしたがうリポソームは、当技術分野において公知の種々の技術のいずれかによって調製し得る。例えば、米国特許第4,235,871号;公開されたPCT出願WO96/14057;New RRC, Liposomes:A practical approach、IRL Press、Oxford(1990年)、33~104頁;Lasic DD, Liposomes from physics to applications、Elsevier Science Publishers BV、Amsterdam、1993年を参照されたい。例えば、リポソーム中で望ましい誘導体化された脂質の最終モルパーセントに相当する脂質濃度で、予め形成されたリポソームを脂質グラフトポリマーから構成されるミセルに曝露させることになどによって、親水性ポリマーで誘導体化した脂質を予め形成されたリポソーム中に拡散させることによって、本発明のリポソームは調製し得る。親水性ポリマーを含有するリポソームはまた、当技術分野において公知のように、均質化、脂質領域水和(lipid-field hydration)、または押出技術によって形成することができる。
【0227】
別の例示的な製剤手順において、活性剤は、リゾホスファチジルコリン、または疎水性分子を容易に可溶化する他の低CMCの界面活性剤(ポリマーグラフト脂質を含めた)中で超音波処理によって最初に分散させる。次いで、このように得られた活性剤のミセル懸濁物を使用して、適切なモルパーセントのポリマーグラフト脂質、またはコレステロールを含有する乾燥した脂質試料を再水和させる。次いで、脂質および活性剤懸濁物を、当技術分野において公知のような押出技術を使用してリポソームに形成し、このように得られたリポソームを、標準的なカラム分離によってカプセル化されていない溶液から分離する。
【0228】
本発明の一態様において、リポソームは、選択したサイズ範囲の実質的に均一なサイズを有するように調製される。1つの有効なサイジング方法は、選択した均質な孔径を有する一連のポリカーボネート膜を通してリポソームの水性懸濁物を押し出すことを伴い、膜の孔径は、その膜を通す押出によって生成したリポソームの最も大きなサイズにおおよそ相当する。例えば、米国特許第4,737,323号(1988年4月12日)を参照されたい。特定の実施形態において、試薬、例えば、DharmaFECT(登録商標)およびLipofectamine(登録商標)を利用して、細胞中にポリヌクレオチドまたはタンパク質を導入し得る。
【0229】
本発明の製剤の放出の特徴は、封入材料、カプセル化された薬物の濃度、および放出調節剤の存在によって決まる。例えば、胃におけるように低pHにおいてのみ、または腸におけるようにより高いpHで放出するpH感受性コーティングを使用して、例えば、放出をpH依存性であるように操作することができる。腸溶性コーティングを使用して、胃を通過する後まで放出が起こることを防止することができる。複数のコーティング、または異なる材料中にカプセル化されたシアナミドの混合物を使用して、胃における最初の放出、それに続く腸におけるその後の放出を得ることができる。放出はまた、水の取込みまたはカプセルからの拡散による薬物の放出を増大させることができる、塩またはポア形成剤を含むことによって操作することができる。薬物の溶解度を改変させる賦形剤をまた使用して、放出速度を制御することができる。マトリックスの分解またはマトリックスからの放出を増強する薬剤をまた組み込むことができる。これらは、化合物によって、薬物に加え、別々の相として加えることができ(すなわち、微粒子として)、またはポリマー相に同時溶解することができる。殆どの場合、量は、0.1~30パーセント(w/wポリマー)であるべきである。分解増強剤のタイプには、無機塩、例えば、硫酸アンモニウムおよび塩化アンモニウム、有機酸、例えば、クエン酸、安息香酸、およびアスコルビン酸、無機塩基、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、および水酸化亜鉛、ならびに有機塩基、例えば、硫酸プロタミン、スペルミン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミン、ならびに界面活性剤、例えば、Tween(登録商標)およびPluronic(登録商標)が含まれる。マトリックスに微小構造を加えるポア形成剤(すなわち、水溶性化合物、例えば、無機塩および糖)を、微粒子として加える。範囲は典型的には、1~30パーセント(w/wポリマー)である。
【0230】
腸における粒子の滞留時間を変化させることによって、取込みをまた操作することができる。例えば、粒子を粘膜の接着性ポリマーでコーティングすることによって、または封入材料として粘膜の接着性ポリマーを選択することによって、これは達成することができる。例には、遊離カルボキシル基を有する大部分のポリマー、例えば、キトサン、セルロース、特に、ポリアクリレートが含まれる(本明細書において使用する場合、ポリアクリレートは、アクリレート基および修飾されたアクリレート基、例えば、シアノアクリレートおよびメタアクリレートを含むポリマーを指す)。
【0231】
オリゴマーは、手術デバイスもしくは医療デバイスまたはインプラント内に含有されるように製剤され得るか、あるいはこれらによって放出されるように適合され得る。特定の態様において、インプラントは、オリゴマーでコーティングまたは別の方法で処理し得る。例えば、ヒドロゲル、または他のポリマー、例えば、生体適合性および/または生分解性ポリマーを使用して、インプラントを本発明の組成物でコーティングし得る(すなわち、組成物は、ヒドロゲルまたは他のポリマーを使用することによって医療デバイスと共の使用のために適合し得る)。医療デバイスを薬剤でコーティングするためのポリマーおよびコポリマーは、当技術分野において周知である。インプラントの例には、これらに限定されないが、ステント、薬物溶出ステント、縫合糸、プロテーゼ、血管カテーテル、透析カテーテル、血管移植片、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、埋め込み式電気除細動器、IV針、接骨(bone setting)および骨形成のためのデバイス、例えば、ピン、ネジ、プレート、および他のデバイス、ならびに創傷治癒のための人工組織マトリックスが含まれる。
【0232】
本明細書において提供する方法に加えて、本発明によって使用するためのオリゴマーは、ヒトまたは動物用の薬における使用のために、他の医薬から類推して任意の好都合な方法における投与のために製剤され得る。アンチセンスオリゴマーおよびこれらの対応する製剤は、筋ジストロフィーの処置において、単独で、または他の治療ストラテジ、例えば、筋芽細胞移植、幹細胞治療、アミノグリコシド抗生物質、プロテアソーム阻害剤の投与、および上方調節治療(例えば、ユートロフィン(ジストロフィン常染色体パラログ)の上方調節)と組み合わせて投与され得る。
【0233】
当業者は任意の特定の動物および状態のための最適な投与経路および任意の投与量を容易に決定することができるため、記載される投与経路はガイドとしてのみ意図される。インビトロおよびインビボの両方での細胞中への新規な機能的遺伝物質を導入するための複数のアプローチが試みられてきた(Friedmann(1989年)、Science、244巻:1275~1280頁)。これらのアプローチは、修飾されたレトロウイルス中に発現する遺伝子の組み込み(Friedmann(1989年)同上;Rosenberg(1991年)Cancer Research、51巻(18号)、suppl.:5074S~5079S頁);非レトロウイルスベクター(例えば、アデノ随伴ウイルスベクター)中への組み込み(Rosenfeldら(1992年)、Cell、68巻:143~155頁;Rosenfeldら(1991年)、Science、252巻:431~434頁);またはリポソームを介した異種性プロモーター-エンハンサーエレメントに連結している導入遺伝子の送達(Friedmann(1989年)、同上;Brighamら(1989年)、Am. J. Med. Sci.、298巻:278~281頁;Nabelら(1990年)、Science、249巻:1285~1288頁;Hazinskiら(1991年)、Am. J. Resp. Cell Molec. Biol.、4巻:206~209頁;およびWangおよびHuang(1987年)、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)、84巻:7851~7855頁);リガンド特異的なカチオンベースの輸送系へのカップリング(WuおよびWu(1988年)、J. Biol. Chem.、263巻:14621~14624頁)、またはネイキッドDNA発現ベクターの使用(Nabelら(1990年)、同上);Wolffら(1990年)、Science、247巻:1465~1468頁)を含む。組織中への導入遺伝子の直接注射は、局在化された発現のみを生じさせる(Rosenfeld(1992年)、同上);Rosenfeldら(1991年)、同上;Brighamら(1989年)、同上;Nabel(1990年)、同上;およびHazinskiら(1991年)、同上)。Brighamらのグループ(Am. J. Med. Sci.(1989年)、298巻:278~281頁およびClinical Research(1991年)、39頁(アブストラクト))は、DNAリポソーム複合体の静脈内または気管内投与に続く、マウスの肺のインビボでのトランスフェクションのみを報告している。ヒト遺伝子治療手順の総論の一例は、Anderson、Science(1992年)256巻:808~813頁である。
【0234】
IV.キット
本発明はまた、遺伝学的疾患を有する患者の処置のためのキットを提供し、キットは、その使用のための指示書と一緒に、適切な容器中にパッケージされた、少なくとも1つのアンチセンス分子(例えば、配列番号1~5に示されたアンチセンスオリゴマー)を含む。キットはまた、周辺的試薬、例えば、緩衝液、安定剤などを含有し得る。当技術分野の当業者は、上記の方法の適用は、多くの他の疾患の処置における使用に適したアンチセンス分子を同定するために広範な適用を有することを認識すべきである。
【実施例0235】
理解を明確にするために上記の発明を例示および例として少し詳しく記載してきたが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱することなく、特定の変更および修正をそれに行い得ることは、本発明の教示に鑑みて当業者には容易に明らかであろう。下記の実施例は、限定のためではなく例示としてのみ提供する。当業者は、本質的に同様の結果を得るために変更または修正することができる種々の重大でないパラメーターを容易に認識する。
【0236】
材料および方法
細胞および組織培養処理の条件
ヒト横紋筋肉腫細胞(ATCC、CCL-136;RD細胞)を、組織培養処理したT75フラスコ(Nunc)中に、L-グルタミン(HyClone)、10%ウシ胎仔血清、および1%ペニシリン-ストレプトマイシン抗生剤溶液(CelGro)を有する24mLの温めたDMEM内に1.5×10個の細胞/フラスコで播種した。24時間後、培地を吸引し、細胞を温めたPBS中で一回洗浄し、新鮮な培地を加えた。細胞を5.0%CO2にて37℃のインキュベーター中で80%コンフルエンスまで増殖させ、トリプシンを使用して収集した。凍結乾燥したホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)を、ヌクレアーゼ非含有水に概ね0.5mM~2.0mMで再懸濁した。モル濃度を確認するために、NanoDrop2000分光光度計(Thermo Scientific)を使用して、PMO溶液を測定した。PMOを、製造者の指示書によってヌクレオポレーション、およびSGキット(Lonza)を使用してRD細胞に送達した。PMOを、示されるような様々な濃度(例えば、2.5マイクロモル濃度、5マイクロモル濃度、10マイクロモル濃度、12.5マイクロモル濃度、20マイクロモル濃度および25マイクロモル濃度)で試験した。細胞を、12または24ウェルプレートのウェル(n=2または3)毎に約2~3×10個の細胞でヌクレオポレーション後に24時間インキュベートし、次いで、下記のようなRNA抽出に供した。
【0237】
初代ヒト筋芽細胞を、標準的な技術を使用して骨格筋細胞増殖培地(PromoCell)中で培養した。様々な濃度でのPMOのヌクレオポレーションを、上記のRD細胞について記載されている通りに行なった。次いで、細胞を、PromoCell増殖培地中で12ウェルプレートの3連ウェルに蒔き、下記のようなRNA抽出の前に24時間インキュベートした。
【0238】
RNA抽出およびPCR増幅
RNAは、GE HealthcareからのRNAspin96ウェルRNA単離キットを使用してPMO処理した細胞(RD細胞または初代ヒト筋芽細胞)から抽出し、標準的な技術および下記のプライマー対を使用してネステッドRT-PCRに供した。外側プライマー:フォワード5’-CTTGGACAGAACTTACCGACTGG-3’(配列番号22)、リバース5’-GTTTCTTCCAAAGCAGCCTCTCG-3’(配列番号23);内側プライマー:フォワード5’-GCAGGATTTGGAACAGAGGCG-3’(配列番号25)、リバース5’-CATCTACATTTGTCTGCCACTGG-3’(配列番号25)。エキソンスキッピングをゲル電気泳動によって、またはCaliper LabChipバイオアナライザーを使用して測定し、エキソンスキッピング%(すなわち、完全長PCR産物に対するエキソンスキッピングされた生成物のバンド強度)を、図3~5において示すようにグラフ化した。
【0239】
モルホリノサブユニット、PMOおよび修飾されたサブユニット間連結を含むPMOの調製
【0240】
【化17】
【0241】
反応スキーム1を参照すると、Bは、塩基対合部分を表し、PGは、保護基を表し、モルホリノサブユニットは、示されているように対応するリボヌクレオシド(ribinucleoside)(1)から調製されてもよい。モルホリノサブユニット(2)は、適切な保護基前駆体、例えば塩化トリチルとの反応によって任意選択で保護されてよい。3’保護基は、より詳細に以下に記載する固体オリゴマー合成の間に一般に除去される。塩基対合部分は、固相オリゴマー合成のために適切に保護されてよい。適切な保護基として、アデニンおよびシトシンのためのベンゾイル、グアニンのためのフェニルアセチル、ならびにヒポキサンチン(I)のためのピバロイルオキシメチルが挙げられる。ピバロイルオキシメチル基は、ヒポキサンチン複素環式塩基のN1位に導入され得る。保護されていないヒポキサンチンサブユニットが使用されてもよいが、活性化反応における収率は、塩基が保護されているとき、はるかに優れている。他の適切な保護基として、参照により本明細書においてその全体が組み込まれている米国特許第8,076,476号に開示されているものが挙げられる。
【0242】
3と活性化されたリン化合物4aまたは4bとの反応は、所望の連結部分(5aまたは5b)を有するモルホリノサブユニットを結果として生じる。Rおよび/またはL部分は、P-O結合の形成後に、またはサブユニットがオリゴマーに組み込まれた後にも、複素環式環Zに設けられてもよいことに留意すべきである。
【0243】
構造4aまたは4bの化合物は、実施例に記載されているものを含め、当業者に公知の多くの方法を使用して調製され得る。モルホリノ部分とのカップリングが次いで先に概説したように進行する。
【0244】
構造5aまたは5bの化合物は、サブユニット間連結を含むオリゴマーの調製のための固相オリゴマー合成に使用され得る。かかる方法は、当技術分野において周知である。簡潔には、構造5aまたは5bの化合物は、5’端で修飾されて、固体支持体へのリンカーを含有していてよい。一旦支持されたら、5aまたは5bの保護基(例えば、3’端におけるトリチル))は除去されて、遊離アミンが構造5の第2の化合物(またはその類似体)の活性化されたリン部分と反応する。この順序は、所望の長さのオリゴが得られるまで繰り返される。末端の3’端における保護基は、除去されても、3’修飾が望まれる場合には残されても、いずれであってもよい。オリゴは、多くの方法、例えば固体支持体との連結を切断する塩基での処理を使用して固体支持体から除去され得る。
【0245】
一般のモルホリノオリゴマーおよび本発明の特定のモルホリノオリゴマーの調製は、実施例において、より詳細に記載されている。
【0246】
(実施例1)
モルホリノオリゴマーの調製
本発明の化合物の調製を、以下のプロトコールを使用して実施する:
トリチルピペラジンフェニルカルバメート35の調製(図2):化合物11のジクロロメタン冷却懸濁物(6mL/g 11)に、炭酸カリウム(3.2当量)の水溶液(4mL/g炭酸カリウム)を添加した。この2相混合物に、クロロギ酸フェニル(1.03当量)のジクロロメタン溶液(2g/gクロロギ酸フェニル)をゆっくり添加した。反応混合物を20℃に加温した。反応が完了したら(1~2時間)、層を分離した。有機層を水で洗浄し、無水炭酸カリウムで乾燥させた。生成物35をアセトニトリルから結晶化によって単離した。
【0247】
カルバメートアルコール36の調製:水素化ナトリウム(1.2当量)を1-メチル-2-ピロリジノン(32mL/g水素化ナトリウム)に懸濁した。この懸濁物にトリエチレングリコール(10.0当量)および化合物35(1.0当量)を添加した。得られたスラリーを95℃に加熱した。反応が完了したら(1~2時間)、混合物を20℃に冷却した。この混合物に、30%ジクロロメタン/メチルtert-ブチルエーテル(v:v)および水を添加した。生成物を含有する有機層を、水性NaOH、水性コハク酸、および飽和水性塩化ナトリウムで連続して洗浄した。生成物36をジクロロメタン/メチルtert-ブチルエーテル/ヘプタンから結晶化によって単離した。
【0248】
Tail酸37の調製:化合物36のテトラヒドロフラン(7mL/g 36)溶液に無水コハク酸(2.0当量)およびDMAP(0.5当量)を添加した。混合物を50℃に加熱した。反応が完了したら(5時間)、混合物を20℃に冷却し、水性NaHCO3でpH8.5に調整した。メチルtert-ブチルエーテルを添加し、生成物を水性層に抽出した。ジクロロメタンを添加し、混合物を水性クエン酸でpH3に調整した。生成物を含有する有機層をpH=3のクエン酸塩緩衝液と飽和水性塩化ナトリウムとの混合物で洗浄した。この37のジクロロメタン溶液を、単離せずに化合物38の調製に使用した。
【0249】
38の調製:化合物37の溶液に、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド(HONB)(1.02当量)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.34当量)、次いで1-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(1.1当量)を添加した。混合物を55℃に加熱した。反応が完了したら(4~5時間)、混合物を20℃に冷却し、1:1の0.2Mクエン酸/ブラインおよびブラインで連続して洗浄した。ジクロロメタン溶液を、アセトン、次いでN,N-ジメチルホルムアミドへの溶媒交換に供し、生成物をアセトン/N,N-ジメチルホルムアミドから飽和水性塩化ナトリウムへの沈殿によって単離した。粗生成物を水中で数回再スラリー化し、残存するN,N-ジメチルホルムアミドおよび塩を除去した。
【0250】
活性化された「Tail」のアンカーローディング樹脂上への導入を、固相合成の間のサブユニットの組み込みに使用した手順によって、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)中で実施した。
【0251】
モルホリノオリゴマーの合成用の固体支持体の調製:この手順を、粗い多孔度(40~60μm)のガラスフリット、オーバーヘッドスターラ、およびTeflon三方栓を備えて、フリットを通してのN2のバブリングまたは真空抽出を可能にする、シラン処理されたジャケット付きペプチド容器(ChemGlass、NJ、USA)で実施した。
【0252】
以下の手順における樹脂の処理/洗浄ステップは、樹脂流動化または撹拌床反応器と溶媒/溶液抽出との2つの基本操作からなる。樹脂流動化では、フリットを通してのN2の上方への流れが可能になるように栓を位置付けし、特定の樹脂処理/洗浄液を反応器に添加して、浸透させて、樹脂を完全に湿潤させた。次いで、混合を開始し、樹脂スラリーを、特定の時間混合した。溶媒/溶液抽出では、混合およびN2流を停止し、真空ポンプを始動させ、次いで廃棄物への樹脂処理/洗浄液の排出を可能にするように栓を位置付けた。樹脂処理/洗浄液の全容量は、別途記述のない限り、15mL/g樹脂であった。
【0253】
シラン処理されたジャケット付きペプチド容器中のアミノメチルポリスチレン樹脂(100~200メッシュ、約1.0mmol/g(窒素置換を基準にしたローディング量);75g、1当量、Polymer Labs、UK、部品#1464-X799)に、1-メチル-2-ピロリジノン(NMP;20ml/g樹脂)を添加し、1~2時間混合しながら樹脂を膨潤させた。膨潤溶媒の排出後、樹脂をジクロロメタン(2×1~2分)、25%イソプロパノール/ジクロロメタン中の5%ジイソプロピルエチルアミン(2×3~4分)およびジクロロメタン(2×1~2分)で洗浄した。最終洗浄液の排出後、樹脂を、ジスルフィドアンカー34の1-メチル-2-ピロリジノン溶液(0.17M;15mL/g樹脂、約2.5当量)で処理し、この樹脂/試薬混合物を45℃で60時間加熱した。反応が完了したら、加熱を止め、アンカー溶液を排出し、樹脂を1-メチル-2-ピロリジノン(4×3~4分)およびジクロロメタン(6×1~2分)で洗浄した。樹脂を10%(v/v)ジエチルジカルボネートのジクロロメタン溶液(16mL/g;2×5~6分)で処理し、次いでジクロロメタン(6×1~2分)で洗浄した。樹脂39(図4を参照されたい)をN2流下で1~3時間乾燥し、次いで真空下で一定重量(±2%)まで乾燥した。収率:元の樹脂重量の110~150%。
【0254】
アミノメチルポリスチレン-ジスルフィド樹脂のローディングの決定:樹脂のローディング(潜在的に利用可能な反応性部位の数)を、樹脂1gあたりのトリフェニルメチル(トリチル)基の数に関する分光アッセイにより決定する。
【0255】
既知の重量の乾燥樹脂(25±3mg)を、シラン処理した25mlメスフラスコに移し、約5mLのジクロロメタン中2%(v/v)トリフルオロ酢酸を添加する。内容物を穏やかな旋回により混合し、次いで30分間静置させる。容量をさらなるジクロロメタン中2%(v/v)トリフルオロ酢酸で25mLに増やし、内容物を十分に混合する。容積式ピペットを使用して、トリチル含有溶液(500μL)のアリコートを10mLメスフラスコに移し、容量をメタンスルホン酸で10mLに増やす。
【0256】
最終溶液におけるトリチルカチオン含量を、431.7nmにおけるUV吸光度により測定し、樹脂のローディングを、適切な容量、希釈、吸光率(ε:41μmol-1cm-1)および樹脂重量を使用して、樹脂1g当たりのトリチル基(μmol/g)で算出する。このアッセイを三連で実施し、平均のローディングを算出する。
【0257】
この実施例における樹脂のローディング手順は、概ね500μmol/gのローディングを有する樹脂を提供する。ジスルフィドアンカー組み込みステップを室温で24時間実施すると、300~400μmol/gのローディングが得られた。
【0258】
Tailのローディング:アミノメチルポリスチレン-ジスルフィド樹脂の調製に関するものと同じ設定および容量を使用して、Tailを固体支持体に導入することができる。アンカーローディング樹脂を酸性条件下でまず脱保護し、得られた材料を中和した後カップリングした。カップリングステップでは、ジスルフィドアンカー溶液の代わりに、38(0.2M)の、4-エチルモルホリン(NEM、0.4M)を含有するDMI溶液を使用した。45℃で2時間の後、樹脂39を25%イソプロパノール/ジクロロメタン中の5%ジイソプロピルエチルアミンで2回、DCMで1回洗浄した。この樹脂に、無水安息香酸(0.4M)およびNEM(0.4M)の溶液を添加した。25分後、反応器のジャケットを室温まで冷却し、樹脂を、25%イソプロパノール/ジクロロメタン中の5%ジイソプロピルエチルアミンで2回、そしてDCMで8回洗浄した。樹脂40を濾過し、高真空下で乾燥した。樹脂40のローディングを、Tailのローディングにおいて使用した、元のアミノメチルポリスチレン-ジスルフィド樹脂39のローディングであると定義する。
【0259】
固相合成:モルホリノオリゴマーを、2mLのGilsonポリプロピレン反応カラム(部品#3980270)において、Gilson AMS-422自動ペプチド合成装置にて調製した。水流のためのチャネルを備えたアルミニウムブロックを、合成装置に据えたカラムの周りに設置した。AMS-422は、代替的には、試薬/洗浄溶液を添加し、特定の時間保持し、真空を使用してカラムを排出させる。
【0260】
長さが最大約25サブユニットの範囲のオリゴマーには、500μmol/g樹脂に近いローディングのアミノメチルポリスチレン-ジスルフィド樹脂が好ましい。より長いオリゴマーには、300~400μmol/g樹脂のローディングのアミノメチルポリスチレン-ジスルフィド樹脂が好ましい。5’-Tailを含む分子が望ましい場合、Tailでローディングされた樹脂を、同じローディングガイドラインで選択する。
【0261】
以下の試薬溶液を調製した:
脱トリチル化溶液:4:1ジクロロメタン/アセトニトリル中の10%のシアノ酢酸(w/v);中和溶液:3:1ジクロロメタン/イソプロパノール中の5%のジイソプロピルエチルアミン;カップリング溶液:0.18M(または20サブユニットより長く成長したオリゴマーについては0.24M)の所望の塩基および連結型の活性化されたモルホリノサブユニット、ならびに1,3-ジメチルイミダゾリジノン中の0.4MのN-エチルモルホリン。異なる試薬溶液洗浄液を分離する移行洗浄液として、ジクロロメタン(DCM)を使用した。
【0262】
ブロックを42℃に設定した合成装置において、30mgのアミノメチルポリスチレン-ジスルフィド樹脂(またはTail樹脂)を含有する各カラムに、2mLの1-メチル-2-ピロリジノンを添加し、室温で30分間置いた。2mLのジクロロメタンで2回洗浄した後、以下の合成サイクルを使用した:
【0263】
【表2】
【0264】
各カラムが、適当なカップリング溶液(A、C、G、T、I)を適当な順序で受容するように、個々のオリゴマーの順序を合成装置にプログラムした。カラム内のオリゴマーがその最後のサブユニットの組み込みを完了したら、カラムをブロックから除去し、0.89Mの4-エチルモルホリンを含有する4-メトキシトリフェニルメチルクロリド(DMI中0.32M)から構成されるカップリング溶液によって手動で最後のサイクルを実施した。
【0265】
樹脂からの切断ならびに塩基および骨格保護基の除去:メトキシトリチル化後、樹脂を、2mLの1-メチル-2-ピロリジノンで8回洗浄した。1-メチル-2-ピロリジノン中、0.1Mの1,4-ジチオスレイトール(DTT)および0.73Mのトリエチルアミンからなる切断溶液を1mL添加し、カラムに蓋をして、室温で30分間置いた。その後、この溶液を、12mLのWheatonバイアル中にドレインした。大幅に収縮した樹脂を、300μLの切断溶液で2回洗浄した。この溶液に、4.0mLの濃水性アンモニア(-20℃で保存)を添加し、(Teflonで裏打ちしたスクリューキャップで)バイアルにしっかりと蓋をし、混合物を旋回させて溶液を混合した。バイアルを45℃のオーブンに16~24時間設置し、塩基および骨格保護基の切断を行った。
【0266】
粗生成物の精製:バイアルに入ったアンモノリシス溶液をオーブンから取り出し、室温まで冷却させた。この溶液を、20mLの0.28%水性アンモニアで希釈し、Macroprep HQ樹脂(BioRad)を含有する2.5×10cmのカラムに通した。塩勾配(A:0.28%アンモニアおよびB:0.28%アンモニア中の1M塩化ナトリウム;60分で0~100%のB)を使用して、メトキシトリチル含有ピークを溶離した。合わせた画分をプールし、所望の生成物に応じてさらに加工した。
【0267】
モルホリノオリゴマーの脱メトキシトリチル化:Macroprep精製からのプールした画分を1MのH3PO4で処理してpHを2.5まで下げた。最初の混合の後、試料を室温で4分間置き、このとき、2.8%アンモニア/水でpH10~11に中和する。生成物を、固相抽出(SPE)により精製した。
【0268】
SPEカラム充填およびコンディショニング:Amberchrome CG-300M(Rohm and Haas;Philadelphia、PA)(3mL)を20mLのフリット状カラム(BioRad Econo-Pacクロマトグラフィカラム(732-1011))に充填し、樹脂を3mLの以下:0.28%NH4OH/80%アセトニトリル;0.5M NaOH/20%エタノール;水;50mM H3PO4/80%アセトニトリル;水;0.5NaOH/20%エタノール;水;0.28%NH4OH;ですすぐ。
【0269】
SPE精製:脱メトキシトリチル化からの溶液をカラム上にローディングし、樹脂を、3~6mLの0.28%水性アンモニアで3回すすいだ。Wheatonバイアル(12mL)をカラムの下に設置し、2mLの0.28%水性アンモニア中45%アセトニトリルで2回洗浄することによって、生成物を溶離した。
【0270】
生成物単離:溶液をドライアイス中で凍結させ、バイアルを凍結乾燥器に設置して、綿毛状の白色粉末を生成させた。試料を水に溶解し、シリンジを使用して0.22μフィルタ(Pall Life Sciences、Acrodisc 25mmシリンジフィルタおよび0.2マイクロメートルのHT Tuffrynメンブラン)を通して濾過し、UV分光光度計にて光学密度(OD)を測定して、存在するオリゴマーのOD単位を決定し、分析用の試料を分配した。次いで、溶液をWheatonバイアルに戻して設置し、凍結乾燥した。
【0271】
MALDIによるモルホリノオリゴマーの分析:MALDI-TOF質量分析を使用して、精製物における画分の組成を決定し、オリゴマーの正体のための証拠(分子量)を提供した。試料をマトリクスとしての3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸)、3,4,5-トリヒドロキシアセトフェノン(THAP)またはアルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(HCCA)の溶液で希釈した後、試行した。
【0272】
(実施例2)
実施例1に記載されているプロトコールを使用して、以下のPMOを合成し:H53A(+36+60)、配列番号1(5’-GTTGCCTCCGGTTCTGAAGGTGTTC-3’);実施例において使用した。
【0273】
【化18】
【0274】
(実施例3)
実施例1に記載されているプロトコールを使用して、以下のPMOを合成し:H53A(+30+57)、配列番号2(5’-GCC TCC GGT TCT GAA GGT GTT CTT GTA C-3’);実施例において使用した。
【0275】
【化19】
【0276】
(実施例4)
実施例1に記載されているプロトコールを使用して、以下のPMOを合成し:H53A(+30+56)、配列番号3(5’-CCT CCG GTT CTG AAG GTG TTC TTG TAC-3’);実施例において使用した。
【0277】
【化20】
【0278】
(実施例5)
実施例1に記載されているプロトコールを使用して、以下のPMOを合成し:H53A(+30+55)、配列番号4(5’-CTC CGG TTC TGA AGG TGT TCT TGT AC-3’);実施例において使用した。
【0279】
【化21】
【0280】
(実施例6)
実施例1に記載されているプロトコールを使用して、以下のPMOを合成し:H53A(+33+57)、配列番号5(5’-GCC TCC GGT TCT GAA GGT GTT CTT G-3’);実施例において使用した。
【0281】
【化22】
【0282】
(実施例7)
エキソン53スキッピング
ヒトジストロフィンエキソン53を標的とする一連のアンチセンスオリゴマーを設計し、以下のように合成した:
【0283】
【表3】
【0284】
上記のアンチセンスオリゴマーを、様々な示した濃度で初代ヒト筋芽細胞を処理することによって、エキソンスキッピングの有効性について評価した。これらの実験において、H53A(+33+60)およびH53A(+31+55)に対応するアンチセンスオリゴマーを比較オリゴマーとして使用した。図3および4に示すように、オリゴマーH53A(+36+60)(配列番号1)は、初代ヒト筋芽細胞においてエキソン53スキッピングを誘発するのに高度に有効であった。H53A(+31+55)(配列番号7)およびH53A(+22+46)(配列番号8)もまたエキソン53スキッピングを誘発したが、その程度は、H53A(+33+60)(配列番号6)およびH53A(+36+60)(配列番号1)よりも低かった。図3に示すように、他の高度に活性なアンチセンスオリゴヌクレオチドと比較して、H53A(+33+60)およびH53A(+36+60)(それぞれ配列番号6および配列番号1)は、培養した筋芽細胞においてエキソン53スキッピングを誘発するのに高度に有効であった。
【0285】
上記のさらなるアンチセンスオリゴマーを、様々な示した濃度でRD細胞を処理することによって、エキソンスキッピングの有効性について評価した。これらの実験において、H53A(+33+60)(配列番号6)に対応するアンチセンスオリゴマーを比較オリゴマーとして使用した。図4に示すように、オリゴマーH53A(+30+57)、H53A(+30+56)、H53A(+30+55)およびH53A(+33+57)(それぞれ配列番号2~5)は、活性においてオリゴマーH53A(+33+60)(配列番号6)と匹敵した。
【0286】
別の実験において、本発明のアンチセンスオリゴマーを、公開されたアンチセンスオリゴヌクレオチドと比較して、初代ヒト筋芽細胞におけるエキソン53スキッピングについて試験した。上記のH53A(+23+47)(配列番号9)に加えて、米国特許第8,232,384号からのH53A(+39+69)、H53A(+39+62)およびH53A(+45+69)(それぞれ配列番号10、11および12);WO2004/083446からのh53AON1(+45+62)(配列番号13);ならびにWO2012/029986からのPMO3(+32+56)およびPMO8(+36+56)(それぞれ配列番号14および15)を、本発明のH53A(+36+60)(配列番号1)の例示的なオリゴマーと比較した。図5Aおよび5Bに示すように、最も低いEC50を実証したオリゴマーは、H53A(+36+60)配列番号1であると決定された。このことは、GraphPad Prismプログラム内の3パラメータ回帰分析にこの結果を供し、以下の表に示されるEC50値を生成することによって確認された。
【0287】
【表4】
【0288】
本明細書において引用される全ての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が特におよび個々に参照により組み込まれていることが示されるかのように参照により本明細書に組み込まれている。
【0289】
【化23】
【0290】
【化24】
【0291】
【表5】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2A
図2B
図3
図4
図5
【配列表】
2022031948000001.app
【外国語明細書】