(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031976
(43)【公開日】2022-02-22
(54)【発明の名称】テープフィーダ
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
H05K13/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207871
(22)【出願日】2021-12-22
(62)【分割の表示】P 2019561451の分割
【原出願日】2017-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】仙崎 真昭
(72)【発明者】
【氏名】川谷 隆
(57)【要約】
【課題】カバーテープが剥離される以前に、カバーテープに付着した部品を確実に落下させることができるテープフィーダを提供する。
【解決手段】テープフィーダは、部品を収容する複数のキャビティ部を有するボトムテープと、前記ボトムテープに接着されて前記キャビティ部を覆うカバーテープとからなるキャリアテープが挿入され、少なくとも前記ボトムテープを部品供給位置まで案内する搬送路と、前記キャリアテープを前記搬送路に沿って送るテープ送り部と、前記搬送路の前記部品供給位置よりも手前側の剥離位置で、前記カバーテープを前記ボトムテープから剥離して前記キャビティ部を開放するテープ剥離部と、前記テープ剥離部の下側に配置され、前記キャリアテープの進行方向における前記部品の位置に応じて前記部品に作用する磁束を変化させる単一の磁性部材と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を収容する複数のキャビティ部を有するボトムテープと、前記ボトムテープに接着されて前記キャビティ部を覆うカバーテープとからなるキャリアテープが挿入され、少なくとも前記ボトムテープを部品供給位置まで案内する搬送路と、
前記キャリアテープを前記搬送路に沿って送るテープ送り部と、
前記搬送路の前記部品供給位置よりも手前側の剥離位置で、前記カバーテープを前記ボトムテープから剥離して前記キャビティ部を開放するテープ剥離部と、
前記テープ剥離部の下側に配置され、前記キャリアテープの進行方向における前記部品の位置に応じて前記部品に作用する磁束を変化させる単一の磁性部材と、
を備えるテープフィーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、キャリアテープを用いて部品を供給するテープフィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の部品が装着された基板を生産する対基板作業機として、はんだ印刷機、部品装着機、リフロー機、基板検査機などがある。これらの対基板作業機を連結して基板生産ラインを構成することが一般的になっている。このうち多くの部品装着機は、キャリアテープを用いて部品を供給するテープフィーダを備える。キャリアテープは、キャビティ部を有するボトムテープにカバーテープが接着されて形成される。キャビティ部に収容された部品は、時折りカバーテープに付着する。すると、カバーテープをボトムテープから剥離してキャビティ部を開放する際に、部品にダメージを与えたり、部品を散逸させたりする弊害が生じる。キャビティ部に収容された部品の姿勢安定化に関する技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の部品供給装置は、カバーテープの剥離位置から部品供給位置までの間における部品の下方位置に、S磁極およびN磁極が部品に面するように永久磁石を配設している。これにより、キャビティ部が開放された以降の位置で、部品の吸着姿勢を安定化できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の技術は、部品供給位置における部品の吸着姿勢を安定化できる点で好ましい。しかしながら、特許文献1の技術では、カバーテープが剥離される以前に、カバーテープに付着している部品を落下させることはできない。特に、キャリアテープの保管期間が長いと、部品のカバーテープへの付着力が大きくなりがちであり、部品が落下せず問題点として顕在化する。
【0006】
前述した問題点は、剥離位置でカバーテープのテープ幅方向の片側の接着部のみを剥離して、カバーテープを他側の接着部に折り返す構造において生じる。この構造では、カバーテープに付着した部品は、剥離刃の衝突によってダメージを受けるおそれが生じる。また、前述した問題点は、剥離位置でカバーテープを逆方向に引き戻してボトムテープから完全に剥離させる構造においても生じる。この構造では、カバーテープに付着した部品は、カバーテープの剥離の際に散逸するおそれが生じる。
【0007】
本明細書では、カバーテープが剥離される以前に、カバーテープに付着した部品を確実に落下させることができるテープフィーダを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、部品を収容する複数のキャビティ部を有するボトムテープと、前記ボトムテープに接着されて前記キャビティ部を覆うカバーテープとからなるキャリアテープが挿入され、少なくとも前記ボトムテープを部品供給位置まで案内する搬送路と、前記キャリアテープを前記搬送路に沿って送るテープ送り部と、前記搬送路の前記部品供給位置よりも手前側の剥離位置で、前記カバーテープを前記ボトムテープから剥離して前記キャビティ部を開放するテープ剥離部と、前記テープ剥離部の下側に配置され、前記キャリアテープの進行方向における前記部品の位置に応じて前記部品に作用する磁束を変化させる単一の磁性部材と、を備えるテープフィーダを開示する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で開示するテープフィーダにおいて、テープ剥離部の下側に配置された単一の磁性部材は、部品に作用する磁束を変化させる。このため、カバーテープに付着した部品は、磁束の変化によって揺動され、剥離位置でカバーテープが剥離される以前に確実に落下する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態のテープフィーダを備える部品装着機の全体構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】テープフィーダを模式的に示す側面図である。
【
図3】テープ剥離部の構成および剥離動作を説明する平面図である。
【
図4】
図3中のキャリアテープのみを示した平面図である。
【
図5】
図4のV-V方向から見たキャリアテープの断面図である。
【
図6】磁束変化部の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図7】カバーテープに付着した部品がN磁極の真上に位置する状態を示す側面断面図である。
【
図8】カバーテープに付着した部品がN磁極の真上を少し通り過ぎた位置に位置する状態を示す側面断面図である。
【
図9】カバーテープに付着した部品が磁極境界の真上に位置する状態を示す側面断面図である。
【
図10】カバーテープに付着した部品が磁極境界を少し通り過ぎた位置に位置する状態を示す側面断面図である。
【
図11】第2実施形態のテープフィーダの磁束変化部を模式的に示す平面図である。
【
図12】第3実施形態のテープフィーダの磁束変化部および磁束安定化部を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.部品装着機1の全体構成
第1実施形態のテープフィーダ3について、
図1~
図10を参考にして説明する。
図1は、第1実施形態のテープフィーダ3を備える部品装着機1の全体構成を模式的に示す平面図である。
図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面下側から紙面上側に向かう方向がY軸方向(前後方向)である。部品装着機1は、基板搬送装置2、複数のテープフィーダ3、部品移載装置4、部品カメラ51、および制御装置52などが機台10に組み付けられて構成される。基板搬送装置2、各テープフィーダ3、部品移載装置4、および部品カメラ51は、制御装置52から制御され、それぞれが所定の作業を行う。
【0012】
基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、22、一対のコンベアベルト、および基板クランプ機構などで構成される。コンベアベルトは、基板Kを載置した状態で、ガイドレール21、22に沿って輪転することにより、基板Kを装着実施位置まで搬入する。基板クランプ機構は、装着実施位置の基板Kを押し上げてクランプし、位置決めする。
【0013】
複数のテープフィーダ3は、機台10の上面のパレット台11上に並べて装備される。テープフィーダ3は、本体部31の前側にテープリール39を保持する。本体部31の後側寄りの上部に、部品供給位置32が設定される。テープリール39には、キャリアテープ8(
図4および
図5参照)が巻回されている。
【0014】
部品移載装置4は、X軸方向およびY軸方向に水平移動可能なXYロボットタイプの装置である。部品移載装置4は、ヘッド駆動機構40、装着ヘッド44、ノズルツール45、吸着ノズル46、および基板カメラ47などで構成される。ヘッド駆動機構40は、一対のY軸レール41、42、Y軸スライダ43、および図略の駆動モータを含んで構成される。Y軸スライダ43には、装着ヘッド44が設けられる。ヘッド駆動機構40は、装着ヘッド44を水平方向、すなわちX軸方向およびY軸方向に駆動する。
【0015】
ノズルツール45は、装着ヘッド44に保持される。ノズルツール45は、1本または複数本の吸着ノズル46を有する。吸着ノズル46は、負圧を利用して部品を吸着する。基板カメラ47は、ノズルツール45に並んで装着ヘッド44に設けられる。基板カメラ47は、基板Kに付設された位置基準マークを撮像して、位置決めされた基板Kの正確な装着実施位置を検出する。
【0016】
部品カメラ51は、基板搬送装置2とテープフィーダ3との間の機台10の上面に、上向きに設けられる。部品カメラ51は、装着ヘッド44がテープフィーダ3から基板Kに移動する途中で、吸着ノズル46に吸着されている部品の状態を撮像する。制御装置52は、機台10に組み付けられており、その配設位置は特に限定されない。制御装置52は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置により構成される。制御装置52は、予め記憶した装着シーケンスにしたがって装着作業を制御する。
【0017】
2.第1実施形態のテープフィーダ3の構成
次に、テープフィーダ3の詳細な構成について説明する。
図2は、テープフィーダ3を模式的に示す側面図である。テープフィーダ3は、本体部31、搬送路34、テープ送り部35、テープ剥離部7、および磁束変化部6を備える。本体部31の前側の中間高さ付近に、テープ挿入口33が配設される。搬送路34は、テープ挿入口33から部品供給位置32まで延在する。搬送路34は、上方に開口する矩形溝を有したレール形状に形成される。搬送路34の形成材料には、磁束の影響を受けない銅や樹脂などの非磁性材料が用いられる。搬送路34は、少なくともボトムテープ82(
図4および
図5参照)を部品供給位置32まで案内する。
【0018】
テープ送り部35は、キャリアテープ8を搬送路34に沿って送る。テープ送り部35は、搬送路34の下側に配設される。テープ送り部35は、4個のスプロケットおよび図略の2個のサーボモータなどで構成される。詳述すると、搬送路34の部品供給位置32付近の下側に、第1スプロケット351および第2スプロケット352が回転可能に設けられる。第1スプロケット351および第2スプロケット352の歯は、搬送路34の底面に穿設された孔から突出して、キャリアテープ8のスプロケット孔84に嵌入する。第1スプロケット351および第2スプロケット352は、前側サーボモータにより同期して駆動され、かつ、正転および逆転の切り替えが可能となっている。
【0019】
搬送路34のテープ挿入口33に近い前側寄りの下側に、第3スプロケット353および第4スプロケット354が回転可能に設けられる。第3スプロケット353および第4スプロケット354の歯は、搬送路34の底面に穿設された孔から突出して、キャリアテープ8のスプロケット孔84に嵌入する。第3スプロケット353および第4スプロケット354は、図略の後側サーボモータにより同期して駆動され、かつ、正転および逆転の切り替えが可能となっている。
【0020】
テープ挿入口33の前側には、キャリアテープ8の巻回されたテープリール39が回転可能に支承される。4個のスプロケット(351、352、353、354)は、正転駆動されると、自動装填機能を果たす。これにより、キャリアテープ8の先端は、部品供給位置32まで送られる。また、4個のスプロケット(351、352、353、354)は、逆転駆動されると、自動排出機能を果たす。これにより、キャリアテープ8の先端は、第4スプロケット354の前側まで戻される。
【0021】
図3は、テープ剥離部7の構成および剥離動作を説明する平面図である。また、
図4は、
図3中のキャリアテープ8のみを示した平面図である。
図3および
図4において、キャリアテープ8を構成するカバーテープ81は、便宜的にハッチングを付して示されている。また、接着部85、接着部86、および部品89は、便宜的に黒塗りで示されている。
図5は、
図4のV-V方向から見たキャリアテープ8の断面図である。
【0022】
キャリアテープ8は、カバーテープ81およびボトムテープ82からなる。ボトムテープ82のテープ幅方向の中央から一方の側縁に寄った位置には、テープ長さ方向に等ピッチで多数の矩形孔状のキャビティ部83が設けられる。各キャビティ部83に、それぞれ部品89が収容されている。部品89の多くの種類は、鉄を含んで製造されており、作用する磁束から吸引力を受ける。ボトムテープ82の他方の側縁に寄った位置には、テープ長さ方向に等ピッチで多数のスプロケット孔84が穿設されている。
【0023】
ボトムテープ82の上面には、カバーテープ81が剥離可能に接着されている。詳述すると、ボトムテープ82のキャビティ部83と一方の側縁との間に、テープ長さ方向に延びる接着部85が設定されている。また、ボトムテープ82のキャビティ部83とスプロケット孔84との間に、テープ長さ方向に延びる接着部86が設定されている。二つの接着部85、86に対して、カバーテープ81のテープ幅方向の両側が接着されている。カバーテープ81の幅寸法は、ボトムテープ82の幅寸法よりも小さい。カバーテープ81は、キャビティ部83を覆うが、スプロケット孔84を覆わない。
【0024】
キャビティ部83の内部の広さに対して、部品89の大きさには余裕がある。このため、部品89は、キャビティ部83の中を前後左右に移動し得る。また、キャビティ部83の内部の高さに対して、部品89の高さには余裕がある。このため、部品89は、キャビティ部83の中を上下動し得る。部品89は、時折りカバーテープ81に付着する。付着する原因として、テープリール39を保管したときの荷重の影響や、カバーテープ81に発生した静電気などを例示できる。
【0025】
テープ剥離部7は、部品供給位置32の手前側から後側にかけて配設される。テープ剥離部7は、2枚の側板77、78、第1テープガイド71、第2テープガイド72、剥離刃73、および、テープ折返し板74などで構成される。2枚の側板77、78は、搬送路34を挟んで立設される。第1テープガイド71および第2テープガイド72は、薄板状の部材である。第1テープガイド71および第2テープガイド72は、搬送路34の上側に離隔して平行に配設される。第1テープガイド71および第2テープガイド72と搬送路34との離隔寸法は、キャリアテープ8の厚みよりもわずかに大きい。キャリアテープ8は、この離隔寸法の間を通過する。
【0026】
第1テープガイド71の前部は、2枚の側板77、78の間に架け渡されている。第1テープガイド71の後部は、他方の側板78寄りに配置されている。第1テープガイド71の後方寄りに、長円状のスプロケット孔窓711が形成される。スプロケット孔窓711は、キャリアテープ8のスプロケット孔84を目視可能とする。第1テープガイド71のその他の複数位置にも、符号略の切欠き窓が形成されている。切欠き窓は、キャリアテープ8を目視可能とする。
【0027】
第2テープガイド72は、第1テープガイド71の後方寄りに並んで配置され、一方の側板77に取り付けられている。第2テープガイド72は、部品供給位置32に相当する部分が切り欠かれている。第1テープガイド71と第2テープガイド72との間に、前後方向に延びる開口部75が形成される。開口部75の前側は、第1テープガイド71と一方の側板77との間に形成され、幅方向に広く開口している。開口部75の後側は、第1テープガイド71と第2テープガイド72との間に形成され、幅方向に狭く開口している。開口部75の後側は、部品供給位置32まで通じている。
【0028】
剥離刃73は、一方の側板77から幅方向に張り出して取り付けられており、開口部75の前側寄りに配置される。剥離刃73は、先端の幅が狭くかつ上下に薄く、後尾の幅が広くかつ上下に厚く形成される。剥離刃73は、先端が前方を向いてキャリアテープ8に対向するように配置される。さらに、剥離刃73は、配設高さが調整されて、その先端がボトムテープ82とカバーテープ81との間に進入するようになっている。
【0029】
テープ折返し板74は、剥離刃73の後尾に連なって配設される。テープ折返し板74は、一方の側板77から幅方向に張り出している。テープ折返し板74は、第1テープガイド71および第2テープガイド72の上側に離隔して平行する。テープ折返し板74は、剥離刃73から離れる後方に向かって徐々に拡幅されている。つまり、テープ折返し板74は、テーパ形状の側縁741をもつ。側縁741は、送られてくるカバーテープ81を折り返して、キャビティ部83を開放する。テープ折返し板74と第1テープガイド71との離隔寸法は、カバーテープ81の折り返しが良好に行われるように調整される。テープ折返し板74は、部品供給位置32に相当する部分が切り欠かれている。
【0030】
次に、テープ剥離部7の剥離動作について説明する。テープ剥離部7に向かってキャリアテープ8が送られてくると、キャリアテープ8の先端と剥離刃73とが対向する。さらにキャリアテープ8が送られると、剥離刃73は、ボトムテープ82とカバーテープ81との間に進入し、テープ間を進行する。本実施形態において、剥離刃73は、カバーテープ81のテープ幅方向の片側の接着部85を剥離し、他側の接着部86を剥離しない。このため、カバーテープ81は、一方の接着部85が剥離され、他方の接着部86が接着された状態で送られる。
【0031】
カバーテープ81は、開口部75の後側から前側へと進むにつれ、剥離刃73の側面に沿って、他方の接着部86の上方に立ち上がってゆく。さらに、カバーテープ81は、テープ折返し板74のテーパ形状の側縁741に沿って、他方の側板78の方向に折り返されてゆく。最終的に、キャビティ部83が開放され、部品供給位置32で部品89の吸着が可能となる。部品89が吸着された後、キャリアテープ8は、カバーテープ81がボトムテープ82に接着されたままの状態で、テープフィーダ3の前方へ排出される。
【0032】
磁束変化部6は、搬送路34の下側の位置であって、テープ剥離部7の剥離位置(剥離刃73の位置)よりも手前側に配設される。
図6は、磁束変化部6の構成を模式的に示す斜視図である。図示されるように、磁束変化部6は、N磁極およびS磁極がキャリアテープ8の進行方向(以降ではテープ進行方向と略称する)に交互に配置されて形成される。
【0033】
磁束変化部6は、具体的には、複数組(
図6の例では4組)のN磁極およびS磁極が着磁されて形成された単一の磁性部材で構成される。この種の磁性部材は、マグネットシート等の名称で市販されており、コストが低廉である。磁束変化部6は、キャリアテープ8の進行方向における部品89の位置に応じて、部品89に作用する磁束を変化させる。磁束の変化は、部品89に作用する吸引力の大きさおよび方向の少なくとも一方を変化させる。
【0034】
なお、磁束変化部6は、複数の永久磁石を列設して構成することもできる。さらに、磁束変化部6は、電磁石を用いて構成することも可能である。電磁石からなる磁束変化部6は、加える電圧を変化させることにより、部品89が移動せずとも、部品89に作用する磁束を変化させることができる。ただし、コスト面や組み付けの作業性、取り扱いの容易性などを考慮すると、単一の磁性部材からなる磁束変化部6は、複数の永久磁石を列設する構成や電磁石を用いる構成よりも優れる。
【0035】
3.第1実施形態のテープフィーダ3の作用および効果
次に、第1実施形態のテープフィーダ3の主に磁束変化部6の作用および効果について説明する。テープ送り部35によってキャリアテープ8が送られると、テープ進行方向において、部品89と磁束変化部6との相対的な位置関係が変化する。例えば、相対的な位置関係は、
図7から
図8および
図9を経て、
図10へと時系列的に変化する。
【0036】
図7は、カバーテープ81に付着した部品89がN磁極の真上に位置する状態を示す側面断面図である。
図8は、カバーテープ81に付着した部品89がN磁極の真上を少し通り過ぎた位置に位置する状態を示す側面断面図である。
図9は、カバーテープ81に付着した部品89が磁極境界の真上に位置する状態を示す側面断面図である。
図10は、カバーテープ81に付着した部品89が磁極境界を少し通り過ぎた位置に位置する状態を示す側面断面図である。以降の説明では、
図7~
図10に示された3個の部品89のうち、カバーテープ81に付着した中央の部品89に着目する。
【0037】
図7に示される状態で、部品89は、真下のN磁極から真下方向の吸引力F1を受ける。同時に、部品89は、テープ進行方向前後の二つのS磁極から斜め下方向の吸引力F2、および斜め下方向の吸引力F3を受ける。吸引力F2および吸引力F3は、大きさが等しく、方向が相反する。図示されるように、吸引力F1、吸引力F2、および吸引力F3をベクトル合成した総吸引力FT1は、水平方向の吸引力成分がキャンセルされ、真下方向に向かう。これにより、部品89は、真下方向に吸引される。そして、部品89のカバーテープ81への付着力よりも総吸引力FT1のほうが大きければ、部品89は落下する。
【0038】
図8に示される状態で、部品89は、テープ進行方向後側のN磁極から斜め下方向の吸引力F4を受け、テープ進行方向前側のS磁極から斜め下方向の吸引力F5を受ける。吸引力F4は、吸引力F5より大きく、かつ吸引力F5と方向が相反する。図示されるように、吸引力F4および吸引力F5をベクトル合成した総吸引力FT2は、下向きの吸引力成分だけでなく、テープ進行方向の後向きの吸引力成分を有する。
【0039】
図9に示される状態で、部品89は、テープ進行方向後側のN磁極から斜め下方向の吸引力F6を受け、テープ進行方向前側のS磁極から斜め下方向の吸引力F7を受ける。吸引力F6および吸引力F7は、大きさが等しく、方向が相反する。図示されるように、吸引力F7および吸引力F8をベクトル合成した総吸引力FT3は、水平方向の吸引力成分がキャンセルされ、真下方向に向かう。
【0040】
図10に示される状態で、部品89は、テープ進行方向後側のN磁極から斜め下方向の吸引力F8を受け、テープ進行方向前側のS磁極から斜め下方向の吸引力F9を受ける。吸引力F8は、吸引力F9より小さく、かつ吸引力F9と方向が相反する。図示されるように、吸引力F8および吸引力F9をベクトル合成した総吸引力FT4は、下向きの吸引力成分だけでなく、テープ進行方向の前向きの吸引力成分を有する。
【0041】
以降、
図7~
図10と同様の作用が繰り返される。部品89は、下向きの吸引力成分だけでなくテープ進行方向の後向きおよび前向きの吸引力成分を交互に受ける。これにより、部品89は、テープ進行方向の前後に揺動され、カバーテープ81との付着面が端から開かれてゆく。したがって、部品89の付着力より総吸引力FT1が小さい場合であっても、部品89は、揺動することによりカバーテープ81から離れて落下する。
【0042】
つまり、カバーテープ81に付着した部品89は、磁束の変化によって揺動され、剥離位置でカバーテープ81が剥離される以前に確実に落下する。これにより、部品89は、カバーテープ81に付着した状態で剥離刃73に衝突することが無くなり、剥離刃73からダメージを受けない。なお、厳密には、部品89から遠く離れた磁極の吸引力も関係する。それでも、テープ進行方向の後向きおよび前向きの吸引力成分が交互に発生する作用に変わりはない。
【0043】
また、カバーテープ81への付着は、小さな部品89で発生しやすい。このため、
図6に示されるN磁極およびS磁極の配置ピッチPmは、大小ある様々な部品89のサイズの最小値に基づいて設定されることが好ましい。また、キャビティ部83の形成ピッチPcは、部品89のサイズに対応して変化する。したがって、配置ピッチPmは、キャビティ部83の形成ピッチPcに基づいて設定されてもよい。
図5の例で、配置ピッチPmは、概ね形成ピッチPcに等しく設定されている。
【0044】
仮に配置ピッチPmが過小であると、1個の部品89に多数の磁極が対向する。この場合、テープ進行方向の吸引力成分が顕著に発生せず、前述した作用が生じない。また、仮に配置ピッチPmが過大であると、磁束変化部6を構成する磁極の個数が限定される。この場合、カバーテープ81に付着した部品89の揺動回数が減少して、落下のチャンスが減少する。
【0045】
さらに、磁束変化部6は、着脱可能とされている。これにより、磁束の影響を嫌う部品89に対し、磁束変化部6を取り外して対応することができる。また、磁束変化部6は、既存のテープフィーダに後付け可能とされている。これにより、納入先で稼働しているテープフィーダ3でも、第1実施形態の態様を実施することができる。
【0046】
4.第2実施形態のテープフィーダ
次に、第2実施形態のテープフィーダについて説明する。第2実施形態のテープフィーダは、磁束変化部6Aの構成が第1実施形態と異なり、その他の構成は、第1実施形態と同じである。
図11は、第2実施形態のテープフィーダの磁束変化部6Aを模式的に示す平面図である。
【0047】
図示されるように、磁束変化部6Aは、搬送路34の下側の位置であって、テープ剥離部7の剥離位置(剥離刃73の位置)よりもテープ進行方向の手前側に配設される。磁束変化部6Aは、複数のN磁極のみがテープ進行方向に離隔配置されて形成される。磁束変化部6Aは、例えば、複数の永久磁石のN磁極が上向きとされつつ離隔配置されて形成される。
【0048】
第2実施形態において、磁束変化部6Aが部品89を吸引する吸引力の絶対値は、第1実施形態よりも減少する。それでも、テープ進行方向の後向きおよび前向きの吸引力成分が交互に発生する作用は、同様に発生する。したがって、第2実施形態においても、カバーテープ81に付着した部品89は、磁束の変化によって揺動され、剥離位置でカバーテープ81が剥離される以前に確実に落下する。なお、磁束変化部6Aは、複数のS磁極のみがテープ進行方向に離隔配置されて形成されてもよい。
【0049】
5.第3実施形態のテープフィーダ
次に、第3実施形態のテープフィーダについて説明する。第3実施形態のテープフィーダは、第1実施形態のテープフィーダ3に磁束安定化部9が付加される。
図12は、第3実施形態のテープフィーダの磁束変化部6および磁束安定化部9を模式的に示す平面図である。図示されるように、磁束安定化部9は、テープ剥離部7の剥離位置(剥離刃73の位置)と磁束変化部6との間の搬送路34の下側に配設される。
【0050】
磁束安定化部9は、テープ進行方向に長いN磁極およびS磁極が搬送路34の幅方向に並べられて形成される。磁束安定化部9は、テープ進行方向における部品89の位置に関係なく、部品89に作用する磁束を安定化させる。安定した磁束は、部品89に下向きの吸引力を作用させる。したがって、磁束変化部6を通過するときにキャビティ部83の底面に落下した部品89や、始めからキャビティ部83の底面に位置する部品89は、磁束安定化部9の磁束によって姿勢が安定する。また、落下した部品89のカバーテープ81への再付着が防止される。磁束安定化部9は、部品供給位置32まで延長することも可能である。
【0051】
6.実施形態の応用および変形
なお、磁束変化部(6、6A)の配設位置は、搬送路34の下側に限定されない。例えば、磁束変化部を搬送路34の側面に設けても、作用する磁束の変化により部品89が揺動するので、実施形態と同じ作用が得られる。また、実施形態のテープ剥離部7は片側の接着部85のみを剥離するが、両側の接着部(85、86)を剥離してカバーテープ81を逆方向に引き戻す構造でもよい。第1~第3実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:部品装着機 3:テープフィーダ 31:本体部 32:部品供給位置 33:テープ挿入口 34:搬送路 35:テープ送り部 6、6A:磁束変化部 7:テープ剥離部 73:剥離刃 8:キャリアテープ 81:カバーテープ 82:ボトムテープ 83:キャビティ部 85、86:接着部 89:部品 9:磁束安定化部 F1~F9:吸引力 FT1~FT4:総吸引力 Pm:配置ピッチ Pc:形成ピッチ