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特開2022-32013炭化装置、炭化方法およびエネルギー放射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032013
(43)【公開日】2022-02-24
(54)【発明の名称】炭化装置、炭化方法およびエネルギー放射装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20220216BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
C01B32/05
B01J19/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135473
(22)【出願日】2020-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】520302305
【氏名又は名称】株式会社原隆雄分子エネルギー研究所
(71)【出願人】
【識別番号】597015081
【氏名又は名称】原 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】原 隆雄
【テーマコード(参考)】
4G075
4G146
【Fターム(参考)】
4G075AA04
4G075AA63
4G075BA05
4G075BD12
4G075CA02
4G075CA03
4G075CA66
4G075DA02
4G075EA05
4G075EB25
4G075EB27
4G075EC11
4G075ED03
4G075FB02
4G146AA01
4G146AB01
4G146BA09
4G146BC03
4G146BC15
4G146BC23
4G146DA21
4G146DA26
4G146DA40
4G146JA02
4G146JB04
4G146JC34
(57)【要約】
【課題】従来の装置とは異なる構成で二酸化炭素等の炭素化合物から炭素を生成する炭化装置および炭化方法、さらに、この炭化装置および炭化方法に好適に用いられるエネルギー放射装置を提供すること。
【解決手段】炭化装置1は、二酸化炭素と窒素とを含む混合ガスGが導入される螺旋状管Rを有し、螺旋状管R内で窒素分子を振動回転させ、窒素分子を高温高圧にしてエネルギーを放射させ、このエネルギーによって二酸化炭素から炭素原子を分離する。また、螺旋状管Rは、第1螺旋状管R1と、第1螺旋状管R1よりも小径で、第1螺旋状管R1の内側に配置された第2螺旋状管R2とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素化合物とエネルギー放射物質とを含む混合ガスが導入される螺旋状管を有し、
前記螺旋状管内で前記エネルギー放射物質の分子を振動回転させてエネルギーを放射させ、前記エネルギーによって前記炭素化合物から炭素を分離することを特徴とする炭化装置。
【請求項2】
前記螺旋状管は、第1螺旋状管と、前記第1螺旋状管よりも小径で、前記第1螺旋状管の内側に配置された第2螺旋状管とを有する請求項1に記載の炭化装置。
【請求項3】
前記螺旋状管内の前記エネルギー放射物質の温度を制御する温度制御部を有する請求項1または2に記載の炭化装置。
【請求項4】
前記温度制御部は、ヒーターを有する請求項3に記載の炭化装置。
【請求項5】
前記炭素を冷却して析出させる冷却部を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の炭化装置。
【請求項6】
前記冷却部は、前記炭素を乱流回転させることにより冷却する請求項5に記載の炭化装置。
【請求項7】
炭素化合物とエネルギー放射物質との混合物を螺旋状管に導入し、
前記螺旋状管内で前記エネルギー放射物質の分子を振動回転させてエネルギーを放射させ、
前記エネルギーによって前記炭素化合物から炭素を分離することを特徴とする炭化方法。
【請求項8】
前記炭素化合物から前記炭素を分離した後、前記炭素を冷却して析出させる請求項7に記載の炭化方法。
【請求項9】
エネルギー放射物質を含むガスが導入される螺旋状管を有し、
前記螺旋状管内で前記エネルギー放射物質の分子を振動回転させてエネルギーを放射させることを特徴とするエネルギー放射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化装置、炭化方法およびエネルギー放射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、まず、二酸化炭素をシフト反応装置に導入し、外部より導入された水素との反応により水と一酸化炭素を生成し、次に、生成された一酸化炭素をデコーキング反応装置に導入し、外部より導入された水素との反応により水と炭素を析出させる装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-116614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来の装置とは異なる方法で二酸化炭素等の炭素化合物から炭素を生成することのできる炭化装置および炭化方法、さらに、この炭化装置および炭化方法に好適に用いられるエネルギー放射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、以下(1)~(9)の本発明により達成される。
【0006】
(1) 炭素化合物とエネルギー放射物質とを含む混合ガスが導入される螺旋状管を有し、
前記螺旋状管内で前記エネルギー放射物質の分子を振動回転させてエネルギーを放射させ、前記エネルギーによって前記炭素化合物から炭素を分離することを特徴とする炭化装置。
【0007】
(2) 前記螺旋状管は、第1螺旋状管と、前記第1螺旋状管よりも小径で、前記第1螺旋状管の内側に配置された第2螺旋状管とを有する上記(1)に記載の炭化装置。
【0008】
(3) 前記螺旋状管内の前記エネルギー放射物質の温度を制御する温度制御部を有する上記(1)または(2)に記載の炭化装置。
【0009】
(4) 前記温度制御部は、ヒーターを有する上記(3)に記載の炭化装置。
【0010】
(5) 前記炭素ガスの熱を吸熱させ冷却して析出させる冷却部を有する上記(1)から(4)のいずれかに記載の炭化装置。
【0011】
(6) 前記冷却部は、前記炭素を乱流回転させ熱を吸熱させることにより冷却する上記(5)に記載の炭化装置。
【0012】
(7) 炭素化合物とエネルギー放射物質との混合物を螺旋状管に導入し、
前記螺旋状管内で前記エネルギー放射物質の分子を振動回転させてエネルギーを放射させ、
前記エネルギーによって前記炭素化合物から炭素を分離することを特徴とする炭化方法。
【0013】
(8) 前記炭素化合物から前記炭素を分離した後、前記炭素を冷却して析出させる上記(7)に記載の炭化方法。
【0014】
(9) エネルギー放射物質を含むガスが導入される螺旋状管を有し、
前記螺旋状管内で前記エネルギー放射物質の分子を振動回転させてエネルギーを放射させることを特徴とするエネルギー放射装置。
【発明の効果】
【0015】
このような本発明によれば、従来とは全く異なる構成で二酸化炭素等の炭素化合物から炭素を生成することができる。また、分子の振動回転によるエネルギー放射を利用して炭素を生成するため、従来で行っている水素の導入等の煩雑な作業が不要であり、より簡単にかつ効率的に炭素を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、炭化装置を示す全体図である。
図2図2は、処理部を示す平面図である。
図3図3は、処理部を示す断面図である。
図4図4は、冷却部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示す炭化装置1は、二酸化炭素を炭化して炭素を生成する装置である。炭化装置1は、4つの管を四角環状に繋げた構成であり、その内部を二酸化炭素(炭酸ガス)と窒素(窒素ガス)とを含む混合ガスGが矢印Aの方向に循環する。炭化装置1は、二酸化炭素を高温高圧にしてガス化し、酸素原子と炭素原子とに分解(解離)する処理部2と、処理部2で分解された炭素原子および酸素原子を瞬時冷却して炭素および酸素を析出させる冷却部3と、処理部2の下流側端部と冷却部3の上流側端部とを接続する第1接続部41と、冷却部3の下流側端部と処理部2の上流側端部とを接続する第2接続部42と、を有する。なお、炭化装置1では、前述した処理部2が本発明のエネルギー放射装置を構成している。
【0018】
処理部2および冷却部3は、Y軸方向に並んで配置され、それぞれ、X軸方向に延在する。また、処理部2の下流側端部と冷却部3の上流側端部とがY軸方向に対向し、冷却部3の下流側端部と処理部2の上流側端部とがY軸方向に対向している。第1接続部41および第2接続部42は、X軸方向に並んで配置され、それぞれ、Y軸方向に延在する。このような構成によれば、第1接続部41および第2接続部42の全長を短くでき、混合ガスGを処理部2から冷却部3へ或いは冷却部3から処理部2へスムーズに循環させることができる。そのため、炭化装置1の炭素生成効率が向上する。なお、図中のX軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸であり、Z軸方向が鉛直方向に沿っている。
【0019】
ただし、炭化装置1の構成は、特に限定されない。例えば、処理部2、第1接続部41および冷却部3を一列に並べて配置し、冷却部3の下流側端部と処理部2の上流側端部を繋ぐために第2接続部42を湾曲、屈曲させた構成であってもよい。また、第1接続部41および第2接続部42の少なくとも一方を省略し、処理部2と冷却部3とを直に繋げてもよい。
【0020】
また、図2および図3に示すように、処理部2は、螺旋状管Rを有する。特に、本実施形態の処理部2は、2本の螺旋状管Rを有する。具体的には、処理部2は、第1螺旋状管R1と、第1螺旋状管R1よりも小径で、第1螺旋状管R1の内側に第1螺旋状管R1と同心的に配置された第2螺旋状管R2と、を有する。
【0021】
第1、第2螺旋状管R1、R2は、それぞれ、X軸まわりに回転しながらX軸方向に延びる螺旋状をなす。これら第1、第2螺旋状管R1、R2内に混合ガスGが導入されると、第1、第2螺旋状管R1、R2内で窒素分子Nの振動回転が生じ、この振動回転によって高温高圧となった窒素分子Nからエネルギー(分子エネルギー)が放射され、放射されたエネルギーによって二酸化炭素が高温高圧ガスとなって炭素原子と酸素原子とに分解される。つまり、二酸化炭素から炭素原子が分離する。
【0022】
ただし、螺旋状管Rの構成は、特に限定されない。例えば、第1螺旋状管R1および第2螺旋状管R2のいずれか一方を省略してもよい。また、第1螺旋状管R1および第2螺旋状管R2に加えて、少なくとも1つの螺旋菅を追加してもよい。この場合、追加した螺旋状管を第1螺旋状管R1の外側に同心的に配置してもよいし、第2螺旋状管の内側に同心的に配置してもよいし、別の場所に配置してもよい。
【0023】
また、処理部2は、第1、第2螺旋状管R1、R2内の窒素の温度を制御する温度制御部29を有する。また、温度制御部29は、少なくとも1つのヒーターを有する。本実施形態では、温度制御部29は、第1螺旋状管R1と第2螺旋状管R2との間に配置された複数(6本)の第1ヒーター291と、第1螺旋状管R1の内側に配置された1本の第2ヒーター292と、を有する。複数の第1ヒーター291は、それぞれ、X軸方向に延びた棒状であり、第1、第2螺旋状管R1、R2の周方向に沿ってほぼ等間隔に配置されている。また、第2ヒーター292は、X軸方向に延びた棒状であり、第1螺旋状管R1と同心的に配置されている。
【0024】
なお、温度制御部29の構成は、第1、第2螺旋状管R1、R2内の窒素の温度を制御することができれば特に限定されない。例えば、第1、第2ヒーター291、292の数や配置は、特に限定されない。また、例えば、第1、第2ヒーター291、292の少なくとも一方を省略してもよい。また、第1、第2ヒーター291、292に加えて、これらとは別の位置に、第3ヒーターを追加してもよい。また、温度制御部29は、窒素を加熱する上述のようなヒーターに加えて、窒素を冷却する冷却機構を有していてもよい。また、温度制御部29を省略することもできる。
【0025】
図2および図3に示すように、処理部2は、円筒状の第1筒21と、第1筒21の内側に配置され、第1筒21よりも小径な円筒状の第2筒22と、第2筒22の内側に配置され、第2筒22よりも小径な円筒状の第3筒23と、第3筒23の内側に配置され、第3筒23よりも小径な円筒状の第4筒24とを備え、第1筒21、第2筒22、第3筒23および第4筒24が互いに同心的に配置された四重菅20を有する。そして、第2筒22と第3筒23との間の空間S2内に第1ヒーター291が配置され、第4筒24の内側に第2ヒーター292が配置されている。
【0026】
また、処理部2は、第1筒21と第2筒22との間の空間S1内に配置された第1螺旋状板25を有する。第1螺旋状板25は、X軸まわりに回転しながらX軸方向に延びた螺旋状をなし、その内周部が第2筒22の外周面に接し、その外周部が第1筒21の内周面に接している。そのため、第1螺旋状板25によって空間S1が螺旋状に仕切られ、これにより、第1螺旋状管R1が形成される。つまり、第1螺旋状管R1は、第1筒21、第2筒22および第1螺旋状板25によって形成されている。このような構成によれば、第1螺旋状管R1を比較的簡単に形成することができる。ただし、第1螺旋状管R1の構成は、特に限定されない。例えば、第1螺旋状板25の内周部と第2筒22の外周面との間に隙間が形成されていてもよいし、その外周部と第1筒21の内周面との間に隙間が形成されていてもよい。また、例えば、長尺な管を螺旋状に巻いて第1螺旋状管R1を形成してもよい。
【0027】
また、処理部2は、第3筒23と第4筒24との間の空間S3内に配置された第2螺旋状板26を有する。第2螺旋状板26は、第1螺旋状板25と同様に、X軸まわりに回転しながらX軸方向に延びた螺旋状をなし、その内周部が第4筒24の外周面に接合し、その外周部が第3筒23の内周面に接している。そのため、第2螺旋状板26によって空間S3が螺旋状に仕切られ、これにより、第2螺旋状管R2が形成される。つまり、第2螺旋状管R2は、第3筒23、第4筒24および第2螺旋状板26によって形成されている。このような構成によれば、第2螺旋状管R2を比較的簡単に形成することができる。ただし、第2螺旋状管R2の構成は、特に限定されない。例えば、第2螺旋状板26の内周部と第4筒24の外周面との間に隙間が形成されていてもよいし、その外周部と第3筒23の内周面との間に隙間が形成されていてもよい。また、例えば、長尺な管を螺旋状に巻いて第2螺旋状管R2を形成してもよい。
【0028】
また、第1螺旋状板25は、外周側が上流側に傾斜している。つまり、第1螺旋状板25は、外周端が内周端よりも上流側に位置するように傾斜している。そのため、第1螺旋状管R1内を流れる窒素は、図3中の矢印B1で示すように、第1螺旋状板25によって第1螺旋状管R1の内周側に誘導され、第1螺旋状管R1の内周側に偏りながら第1螺旋状管R1内を流れる。
【0029】
一方、第2螺旋状板26は、第1螺旋状板25とは逆に、外周側が下流側に傾斜している。つまり、第2螺旋状板26は、外周端が内周端よりも下流側に位置するように傾斜している。そのため、第2螺旋状管R2内を流れる窒素は、図3中の矢印B2で示すように、第2螺旋状板26によって第2螺旋状管R2の外周側に誘導され、第2螺旋状管R2の外周側に偏りながら第2螺旋状管R2内を流れる。これにより、窒素が第1ヒーター291の近くを流れ、第1ヒーター291によって窒素の温度を精度よく制御することができると共に、窒素の温度が安定する。
【0030】
ただし、これに限定されず、第1螺旋状板25は、外周側が下流側に傾斜していてもよい。また、第2螺旋状板26は、外周側が上流側に傾斜していてもよい。また、第1螺旋状板25と第2螺旋状板26の傾きの方向が同じであってもよい。すなわち、第1螺旋状板25および第2螺旋状板26が共に、外周側が上流側に傾斜していてもよし、この逆であってもよい。
【0031】
また、第2螺旋状板26のピッチP2は、第1螺旋状板25のピッチP1よりも小さい。つまり、P2<P1である。そのため、第2螺旋状管R2の巻き数が第1螺旋状管R1の巻き数よりも多い。このように、第1螺旋状管R1よりも小径な第2螺旋状管R2の巻き数を第1螺旋状管R1よりも多くすることにより、第1、第2螺旋状管R1、R2の全長差を小さくすることができ、第1、第2螺旋状管R1、R2内の窒素分子から同等のエネルギーを放射させることができる。そのため、二酸化炭素を効率的に分解することができる。ただし、これに限定されず、P2≧P1であってもよい。
【0032】
なお、第1螺旋状板25の傾きθ1は、第2螺旋状板26の傾きθ2よりも大きい。つまり、θ1>θ2である。第1螺旋状管R1の方が、第2螺旋状管R2よりも大径であるため、その内部を混合ガスGが流れ易く、流速も出易い。したがって、θ1>θ2とすることにより、より効果的に、第1螺旋状管R1内を流れる窒素を第1螺旋状管R1の内周側に誘導することができる。
【0033】
また、第1螺旋状板25および第2螺旋状板26は、互いに逆巻きの螺旋である。すなわち、第1螺旋状板25および第2螺旋状板26の一方が右回りの螺旋であり、他方が左回りの螺旋である。これにより、混合ガスGが第1螺旋状管R1内を流れ易くなり、二酸化炭素を効率的に分解することができる。ただし、これに限定されず、第1螺旋状板25および第2螺旋状板26が互いに同じ向きに巻かれた螺旋であってもよい。
【0034】
このような四重菅20、第1螺旋状板25および第2螺旋状板26は、例えば、ステンレス鋼で構成されている。また、第1螺旋状板25および第2螺旋状板26のX軸方向の長さは、例えば、800mm~1500mm程度であることが好ましく、1100mm~1300mm程度であることがより好ましい。
【0035】
また、第1螺旋状板25の内径は、例えば、80mm~120mm程度であることが好ましく、90mm~110mm程度であることがより好ましい。また、第1螺旋状板25の外径は、例えば、190mm~230mm程度であることが好ましく、210~220mm程度であることがより好ましい。また、第1螺旋状板25のピッチP1は、例えば、60mm~100mm程度であることが好ましく、70mm~90mm程度であることがより好ましい。また、第1螺旋状板25の傾きθ1は、例えば、40°~70°程度であること好ましく、50°~60°程度であることがより好ましい。
【0036】
また、第2螺旋状板26の内径は、例えば、5mm~40mm程度であることが好ましく、10mm~30mm程度であることがより好ましい。また、第2螺旋状板26の外径は、例えば、40mm~80mm程度であることが好ましく、50mm~70mm程度であることがより好ましい。また、第2螺旋状板26のピッチP2は、例えば、30mm~70mm程度であることが好ましく、40mm~60mm程度であることがより好ましい。また、第2螺旋状板26の傾きθ2は、例えば、20°~50°程度であること好ましく、30°~40°程度であることがより好ましい。
【0037】
このようなサイズとすることにより、炭化装置1の炭素生成効率が向上する。ただし、各部のサイズは、上述した数値範囲に限定されず、適宜設定することができる。
【0038】
また、図4に示すように、冷却部3は、円筒状の外筒31と、外筒31の内側に配置されたスクリュー32と、スクリュー32を回転させる図示しないモーターと、を有する。
【0039】
また、スクリュー32は、外筒31と同心的に配置され、外筒31に対して回転可能に軸受けされた回転軸321と、回転軸321に固定されたスクリュー羽根322と、を有する。スクリュー羽根322は、X軸まわりに回転しながらX軸方向に延びた螺旋形状をなす。また、スクリュー羽根322のピッチPは、混合ガスGの流動方向の上流側から下流側に向けて漸減している。つまり、上流側から下流側に向けてスクリュー羽根322のピッチPが徐々に狭くなっている。
【0040】
モーターの駆動によってスクリュー32を回転させると、外筒31内に混合ガスGの乱流回転が生じ、混合ガスG中の炭素原子および酸素原子が乱流回転する。また、ピッチPが徐々に狭くなることから、下流側に向けて混合ガスGの圧力が徐々に高まる。このように、混合ガスGに乱流回転が生じると共に混合ガスGの圧力が高まることにより、窒素分子のエネルギー吸収が生じ、窒素分子が炭素原子および酸素原子からエネルギーを吸収することにより、炭素原子および酸素原子が吸熱されて瞬時冷却され、炭素および酸素が析出する。つまり、個体の炭素および酸素が生成される。なお、析出する炭素は、主に炭素単体であり、析出する酸素は、主に酸素単体である。
【0041】
なお、特に限定されないが、下流端部のピッチPは、上流端部のピッチPの3/4以下であることが好ましく、1/2以下であることがより好ましい。これにより、上述の効果がより顕著となる。また、スクリュー羽根322の傾きθは、混合ガスGの流動方向の上流側から下流側に向けて漸増している。つまり、上流側から下流側に向けてスクリュー羽根322の傾きθが徐々に大きくなっている。これにより、外筒31内で下流側に向けて炭素原子および酸素原子がより活発に移動するようになり、より効率的に、炭素および酸素が析出する。特に、本実施形態のように、下流側に向けてピッチPを徐々に狭くしつつ傾きθを徐々に大きくすることにより、この効果がより顕著となる。
【0042】
なお、本実施形態では、スクリュー羽根322の外径を外筒31の内径に対して若干小さくし、スクリュー羽根322と外筒31の内周面との接触・干渉を防止しつつ、これらの間の隙間を極力小さくしている。これにより、外筒31やスクリュー羽根322の損傷、スクリュー32の回転抵抗の増大等を抑制しつつ、効率的に、外筒31内に混合ガスGの乱流回転を発生させることができる。ただし、これに限定されず、例えば、スクリュー羽根322の外径を外筒31の内径と等しくし、スクリュー羽根322と外筒31の内周面とを接触させ、これらの間の隙間をなくしてもよい。
【0043】
このような外筒31およびスクリュー32は、例えば、ステンレス鋼で構成されている。また、スクリュー羽根322のX軸方向の長さは、例えば、800mm~1500mm程度であることが好ましく、1100mm~1300mm程度であることがより好ましい。また、スクリュー羽根322の内径は、例えば、10mm~60mm程度であることが好ましく、20mm~40mm程度であることがより好ましい。また、スクリュー羽根322の外径は、例えば、180mm~230mm程度であること好ましく、190mm~210mm程度であることがより好ましい。
【0044】
また、スクリュー羽根322の上流端部のピッチPは、例えば、8mm~12mm程度であることが好ましく、9mm~11mm程度であることがより好ましい。また、スクリュー羽根322の下流端部のピッチPは、例えば、3mm~7mm程度であることが好ましく、4mm~6mm程度であることがより好ましい。また、スクリュー羽根322の上流端部の傾きθは、例えば、40°~80°程度であることが好ましく、50°~70°程度であることがより好ましい。また、スクリュー羽根322の下流端部の傾きθは、例えば、45°~85°程度であることが好ましく、55°~75°程度であることがより好ましい。
【0045】
このようなサイズとすることにより、冷却部3の冷却性能が向上し、炭素原子および酸素原子をより瞬時に冷却することができる。ただし、各部のサイズは、上述した数値範囲に限定されず、適宜設定することができる。
【0046】
第1接続部41は、管状をなし、処理部2の下流側端部と冷却部3の上流側端部とを接続する。また、第1接続部41には、混合ガスGを貯留する図示しない貯留タンクが接続されている。貯留タンクを接続することにより、炭化装置1で一度に処理できる二酸化炭素の量が増え、炭化装置1の炭素生成効率が向上する。なお、貯留タンクの容量としては、特に限定されないが、例えば、2m~10m程度とすることができる。これにより、十分な量の混合ガスGを貯留することができる。また、これら第1接続部41および貯留タンクは、例えば、ステンレス鋼で構成されている。また、貯留タンクは、省略してもよい。
【0047】
第2接続部42は、管状をなし、冷却部3の下流側端部と処理部2の上流側端部とを接続する。第2接続部42には、冷却部3で析出した炭素および酸素を回収する図示しない回収タンクが接続されている。これにより、析出した炭素および酸素を簡単に回収することができる。また、冷却部3で析出した炭素および酸素が再び処理部2へ導入されて原子に分解されたり、第1、第2螺旋状管R1、R2の内壁へ付着したりするのを抑制することができる。また、それに伴う炭素生成効率の低減を抑制することもできる。なお、第2接続部42および回収タンクは、例えば、ステンレス鋼で構成されている。また、回収タンクは、省略してもよい。
【0048】
以上、炭化装置1の構成について説明した。次に、炭化装置1を用いた炭素生成方法について説明する。まず、炭化装置1内に炭素化合物である二酸化炭素とエネルギー放射物質である窒素との混合ガスGを導入する。二酸化炭素は、炭素の原料である。一方、窒素は、分子の回転振動によってエネルギーを放射して二酸化炭素を高温高圧として酸素原子と炭素原子とに分解する機能と、反対に、エネルギーを吸収して、炭素原子および酸素原子を冷却して固体の炭素および酸素を生成する機能と、を有する。
【0049】
なお、炭素化合物としては、炭素原子を分離することができれば、二酸化炭素に限定されず、例えば、一酸化炭素であってもよいし、メタン、プロパン等の炭化水素であってもよいし、これら以外のものであってもよい。また、エネルギー放射物質としては、上述した窒素と同様の機能、つまり、二酸化炭素を炭素原子と酸素原子とに分解できるだけのエネルギーを放射することができれば、窒素に限定されない。
【0050】
混合ガスGとしては、特に限定されないが、例えば、空気を用いることが好ましい。空気には窒素が約78.08Vol%、二酸化炭素が約0.04Vol%含まれている。そのため、混合ガスGとして空気を用いることにより、二酸化炭素と窒素とを一括して炭化装置1に導入することができる。また、材料のコスト削減を図ることもできる。
【0051】
また、混合ガスGとしては、空気の中でも、特に、工場等から発生する煤煙(物の燃焼に伴って発生する煙)を用いることがより好ましい。煤煙には純粋な空気と比べて極めて高い20Vol%程度の二酸化炭素が含まれている。そのため、混合ガスGとして煤煙を用いることにより、より多くの二酸化炭素を炭化装置1に導入することができ、炭素生成効率を高めることができる。また、煤煙を処理することにより、大気中に放出される二酸化炭素COを削減することもでき、地球温暖化の抑制にも寄与することができる。
【0052】
なお、炭化装置1内の気圧は、4気圧~10気圧程度であることが好ましい。これにより、炭化装置1内が過度な高圧となるのを防ぎつつ、炭化装置1内により多くの二酸化炭素を導入することができる。そのため、炭化装置1の故障や損傷を防止しつつ、炭素生成効率を高めることができる。
【0053】
炭化装置1内に混合ガスGを導入した後、スクリュー32を回転させ、混合ガスGを炭化装置1内において矢印A方向に循環させる。これにより、混合ガスGが第1、第2螺旋状管R1、R2内に導入される。
【0054】
窒素が第1、第2螺旋状管R1、R2に導入されると、第1、第2螺旋状管R1、R2内において窒素分子Nが振動回転し、窒素分子Nが高温高圧となり、窒素分子Nからエネルギーが放射される。この現象について、一部推測を交えて簡単に説明すると、窒素が第1、第2螺旋状管R1、R2内に導入されると、窒素が圧縮され、窒素に圧力がかかる。すると、窒素分子N同士に摩擦が生じ、分子同士がぶつかったり離れたりを繰り返して分子が振動および回転する。そして、振動および回転した分子に遠心力が加わり、この遠心力が一定以上の大きさになった時点で分子からエネルギーが放射される。
【0055】
窒素分子Nから放射されたエネルギーは、窒素と共に第1、第2螺旋状管R1、R2内を流れる二酸化炭素に吸収され、二酸化炭素が高温高圧ガスとなる。これにより、二酸化炭素が酸素原子と炭素原子とに分解される。つまり、二酸化炭素から炭素原子が分離する。なお、二酸化炭素が酸素原子と炭素原子とに分解される温度は、約3500℃である。したがって、炭化装置1では、窒素分子Nから放射されたエネルギーによって二酸化炭素が約3500℃以上まで昇温する。
【0056】
なお、窒素は、約35℃以上で動きが活発となり、上述のエネルギー放射が生じやすくなる。そこで、炭化装置1では、第1ヒーター291および第2ヒーター292を発熱させて、第1、第2螺旋状管R1、R2内を流れる窒素の温度を35℃以上、好ましくは60℃以上に維持する。これにより、より確実に、窒素分子からのエネルギー放射を生じさせ、二酸化炭素を炭素原子と酸素原子とに分解することができる。
【0057】
ここで、前述したように、第1螺旋状管R1を形成する第1螺旋状板25は、外周側が上流側に傾斜している。そのため、第1螺旋状管R1内を流れる窒素は、第1螺旋状板25によって第1螺旋状管R1の内周側に誘導され、第1螺旋状管R1の内周側に偏りながら第1螺旋状管R1内を流れる。したがって、窒素が第1ヒーター291の近くを流れることとなり、第1ヒーター291によって窒素の温度を精度よく制御することができると共に、窒素の温度が安定する。これにより、窒素分子から安定したエネルギー放射が生じる。第1螺旋状管R1の外周側にはヒーターが設置されておらず、窒素が第1螺旋状管R1の外周側に偏ってしまうと、窒素の温度が変動しやすく、窒素分子からの安定したエネルギー放射が阻害されるおそれがある。
【0058】
また、前述したように、第2螺旋状管R2を形成する第2螺旋状板26は、第1螺旋状板25とは逆に、外周側が下流側に傾斜している。そのため、第2螺旋状管R2内を流れる窒素は、矢印B2で示すように、第2螺旋状板26によって第2螺旋状管R2の外周側に誘導され、第2螺旋状管R2の外周側に偏りながら第2螺旋状管R2内を流れる。したがって、窒素が第1ヒーター291の近くを流れることとなり、第1ヒーター291によって窒素の温度を精度よく制御することができると共に、窒素の温度が安定する。これにより、窒素分子から安定したエネルギー放射が生じる。
【0059】
このように、第1螺旋状板25と第2螺旋状板26との傾きを逆にし、第1螺旋状管R1内で窒素を内周側に偏らせ、第2螺旋状管R2内で窒素を外周側に偏らせることにより、処理部2を流れる窒素を第1ヒーター291の周囲に集めることができる。したがって、処理部2を流れる窒素の温度を精度よく制御することができると共に、窒素の温度が安定する。
【0060】
処理部2で二酸化炭素が分解されることにより発生した炭素原子および酸素原子は、混合ガスG中に浮遊した状態で第1接続部41を通って冷却部3に導入される。冷却部3では、回転するスクリュー32によって混合ガスGを乱流回転させ、処理部2でエネルギーを放射した窒素が、今度は、炭素原子および酸素原子からエネルギーを奪う。これにより、炭素原子および酸素原子が瞬時に冷却され、炭素原子同士が結合して個体(粉状)の炭素が析出し、酸素原子同士が結合して個体(粉状)の酸素が析出する。特に、本実施形態の冷却部3では、前述したように、スクリュー羽根322のピッチPを下流側に向けて狭くし、冷却部3内を進むにつれて混合ガスGの圧力が高まる。圧力が高まるほど窒素の吸熱作用(エネルギー吸収作用)が高まるため、その分、酸素原子および炭素原子をより瞬時に冷却することができる。
【0061】
そして、冷却部3で析出した粉状の炭素および酸素は、回収タンクに回収される。以上のようなサイクルを繰り返すことにより、炭素および酸素の析出が進み、原料となる二酸化炭素がなくなった時点で、炭素および酸素の析出が終了する。このような方法によれば、簡単かつ効率的に二酸化炭素から炭素を生成することができる。
【0062】
以上のように、炭化装置1および炭化方法は、窒素分子から放射されるエネルギーを利用して二酸化炭素から炭素を生成するものであり、従来とは全く異なる構成および方法である。したがって、当該分野のさらなる発展に大きく寄与するものである。また、水素等の反応ガスの導入も必要ないため、従来よりも簡単かつ効率的に炭素を生成することもできる。
【0063】
以上、本発明の炭化装置、炭化方法およびエネルギー放射装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、前記実施形態には他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明に係る炭化装置1は、二酸化炭素(炭素化合物)と窒素(エネルギー放射物質)とを含む混合ガスGが導入される螺旋状管Rを有し、螺旋状管R内で窒素分子を振動回転させ、窒素分子を高温にしてエネルギーを放射させ、このエネルギーによって二酸化炭素から炭素原子を分離する。このように、炭化装置1は、従来とは全く異なる構成および方法で炭素を生成する。また、炭化装置1によれば、簡単かつ効率的に炭素原子を生成することができる。したがって、その産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0065】
1 炭化装置
2 処理部
20 四重菅
21 第1筒
22 第2筒
23 第3筒
24 第4筒
25 第1螺旋状板
26 第2螺旋状板
29 温度制御部
291 第1ヒーター
292 第2ヒーター
3 冷却部
31 外筒
32 スクリュー
321 回転軸
322 スクリュー羽根
41 第1接続部
42 第2接続部
A 矢印
B1 矢印
B2 矢印
G 混合ガス
P ピッチ
P1 ピッチ
P2 ピッチ
R 螺旋状管
R1 第1螺旋状管
R2 第2螺旋状管
S1 空間
S2 空間
S3 空間
θ 傾き
θ1 傾き
θ2 傾き
図1
図2
図3
図4