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特開2022-32014窒化装置、窒化方法および分子エネルギー放射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032014
(43)【公開日】2022-02-24
(54)【発明の名称】窒化装置、窒化方法および分子エネルギー放射装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 8/24 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
C23C8/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135474
(22)【出願日】2020-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】520302305
【氏名又は名称】株式会社原隆雄分子エネルギー研究所
(71)【出願人】
【識別番号】597015081
【氏名又は名称】原 隆雄
(71)【出願人】
【識別番号】520301238
【氏名又は名称】石川 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】原 隆雄
【テーマコード(参考)】
4K028
【Fターム(参考)】
4K028AA02
4K028AC07
4K028AC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来の装置とは異なる構成で被処理体を窒化する窒化装置および窒化方法、さらには、この窒化装置および窒化方法に好適に用いられる分子エネルギー放射装置を提供する。
【解決手段】窒化装置1は、窒素含有ガスGが導入される螺旋状管と、被処理体Qが収容される収容部411と、を有し、螺旋状管内で窒素含有ガスGに含まれる窒素を振動回転させてエネルギーを放射させ、当該エネルギーによって被処理体を加熱し、振動回転した窒素が加熱された被処理体に衝突することにより、被処理体に前記窒素が浸透して被処理体が窒化される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有ガスが導入される螺旋状管と、
被処理体が収容される収容部と、を有し、
前記螺旋状管内で前記窒素含有ガスに含まれる窒素を振動回転させてエネルギーを放射させ、前記エネルギーによって前記被処理体を加熱し、前記振動回転した前記窒素が加熱された前記被処理体に衝突することにより、前記被処理体に前記窒素が浸透して前記被処理体が窒化されることを特徴とする窒化装置。
【請求項2】
前記螺旋状管は、第1螺旋状管と、前記第1螺旋状管よりも小径で、前記第1螺旋状管の内側に配置された第2螺旋状管とを有する請求項1に記載の窒化装置。
【請求項3】
前記螺旋状管内のエネルギー放射の温度を制御する温度制御部を有する請求項1または2に記載の窒化装置。
【請求項4】
前記温度制御部は、ヒーターを有する請求項3に記載の窒化装置。
【請求項5】
前記窒素含有ガスを前記螺旋状管に循環させる循環部を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の窒化装置。
【請求項6】
窒素含有ガスを螺旋状管に導入し、
被処理体を収容部に収容し、
前記螺旋状管内で前記窒素含有ガスに含まれる窒素を振動回転させてエネルギーを放射させ、前記エネルギーによって前記被処理体を加熱し、前記振動回転した前記窒素を加熱された前記被処理体に衝突させることにより、前記被処理体に前記窒素を浸透させて前記被処理体を窒化することを特徴とする窒化方法。
【請求項7】
窒素含有ガスが導入される螺旋状管を有し、
前記螺旋状管内で前記窒素含有ガスに含まれる窒素を振動回転させてエネルギーを放射させることを特徴とするエネルギー放射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化装置、窒化方法および分子エネルギー放射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、非処理体表面の耐摩耗性を向上させる表面処理の1つとして、硬度の高い窒化化合物の層を表面に形成する窒化処理が知られている。また、その方法として、ガス窒化処理とプラズマ窒化処理とが知られている。このうち、ガス窒化処理では、被処理体の周囲にアンモニアガスなどの窒素含有ガスを供給し、被処理体を加熱することで表面に窒素含有ガス由来の窒素を拡散させる。拡散した窒素は表面原子と結合し、窒化化合物の層が形成される。一方、プラズマ窒化処理では、陰極としての被処理体と陽極との間に窒素含有ガスを供給し、被処理体と陽極との間にプラズマを発生させる。すると、プラズマ中の窒素イオンを被処理体の表面が衝突し、衝突した窒素イオンが表面原子と結合することにより、被処理体の表面に窒化化合物の層が形成される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-084793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、窒化処理の方法として複数の方法が既に知られているが、本発明は、このような従来の方法とは異なる方法で窒化処理を行うことのできる窒化装置および窒化方法、さらには、この窒化装置および窒化方法に好適に用いられる分子エネルギー放射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、以下(1)~(7)の本発明により達成される。
【0006】
(1) 窒素含有ガスが導入される螺旋状管と、
被処理体が収容される収容部と、を有し、
前記螺旋状管内で前記窒素含有ガスに含まれる窒素を振動回転させて分子エネルギーを放射させ、前記分子エネルギーによって前記被処理体を加熱し、前記振動回転した前記窒素が加熱された前記被処理体に衝突することにより、前記被処理体に前記窒素が浸透して前記被処理体が窒化されることを特徴とする窒化装置。
【0007】
(2) 前記螺旋状管は、第1螺旋状管と、前記第1螺旋状管よりも小径で、前記第1螺旋状管の内側に配置された第2螺旋状管とを有する上記(1)に記載の窒化装置。
【0008】
(3) 前記螺旋状管内の前記分子エネルギー放射物質の温度を制御する温度制御部を有する上記(1)または(2)に記載の窒化装置。
【0009】
(4) 前記温度制御部は、ヒーターを有する上記(3)に記載の窒化装置。
【0010】
(5) 前記窒素含有ガスを前記螺旋状管に循環させる循環部を有する上記(1)から(4)のいずれかに記載の窒化装置。
【0011】
(6) 窒素含有ガスを螺旋状管に導入し、
被処理体を収容部に収容し、
前記螺旋状管内で前記窒素含有ガスに含まれる窒素を振動回転させて分子エネルギーを放射させ、前記分子エネルギーによって前記被処理体を加熱し、前記振動回転した前記窒素を加熱された前記被処理体に衝突させることにより、前記被処理体に前記窒素を浸透させて前記被処理体を窒化することを特徴とする窒化方法。
【0012】
(7) 窒素含有ガスが導入される螺旋状管を有し、
前記螺旋状管内で前記窒素含有ガスに含まれる窒素を振動回転させて分子エネルギーを放射させることを特徴とする分子エネルギー放射装置。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明によれば、従来とは全く異なる構成で被処理体の窒化処理を行うことができる。さらに、分子の振動回転によるエネルギー放射を利用して窒化処理を行うため、ガス窒化処理における被処理体の加熱(外部から与えられる熱による加熱)や、プラズマ窒化処理におけるプラズマの発生等の煩雑な作業が不要であり、より簡単かつ効率的に窒化処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、窒化装置を示す全体図である。
図2図2は、処理部を示す平面図である。
図3図3は、処理部を示す断面図である。
図4図4は、循環部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す窒化装置1は、内部に収容した被処理体Qを窒化する装置である。窒化装置1は、4つの管を四角環状に繋げた構成であり、その内部を窒素含有ガスGが矢印Aの方向に循環する。このような窒化装置1は、窒化装置1内に窒素含有ガスGを循環させる循環部3と、窒素含有ガスGに含まれる窒素分子Nを振動回転させて窒素分子Nからエネルギー(分子エネルギー)を放射させるエネルギー放射部2(エネルギー放射装置)と、エネルギー放射部2の下流側端部と循環部3の上流側端部とを接続する第1接続部41と、循環部3の下流側端部とエネルギー放射部2の上流側端部とを接続する第2接続部42と、を有する。また、第1接続部41の途中には被処理体Qを収容する収容部411が設けられている。
【0016】
エネルギー放射部2および循環部3は、Y軸方向に並んで配置され、それぞれ、X軸方向に延在する。また、エネルギー放射部2の下流側端部と循環部3の上流側端部とがY軸方向に対向し、循環部3の下流側端部とエネルギー放射部2の上流側端部とがY軸方向に対向している。第1接続部41および第2接続部42は、X軸方向に並んで配置され、それぞれ、Y軸方向に延在する。このような構成によれば、第1接続部41および第2接続部42の全長を短くでき、窒化装置1内で窒素含有ガスGを効率的に循環させることができる。そのため、窒化装置1の処理効率が向上する。なお、図中のX軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸であり、本実施形態ではZ軸方向が鉛直方向に沿っている。
【0017】
ただし、窒化装置1の構成は、特に限定されない。例えば、エネルギー放射部2、第1接続部41および循環部3を一列に並べて配置し、循環部3の下流側端部とエネルギー放射部2の上流側端部を繋ぐために第2接続部42を湾曲、屈曲させた構成であってもよい。また、第1接続部41および第2接続部42の少なくとも一方を省略し、エネルギー放射部2と循環部3とを直に繋げてもよい。
【0018】
また、図2および図3に示すように、エネルギー放射部2は、螺旋状管Rを有する。特に、本実施形態のエネルギー放射部2は、2本の螺旋状管Rを有する。具体的には、エネルギー放射部2は、第1螺旋状管R1と、第1螺旋状管R1よりも小径で、第1螺旋状管R1の内側に第1螺旋状管R1と同心的に配置された第2螺旋状管R2と、を有する。
【0019】
第1、第2螺旋状管R1、R2は、それぞれ、X軸まわりに回転しながらX軸方向に延びる螺旋状をなす。これら第1、第2螺旋状管R1、R2内に窒素含有ガスGが導入されると、第1、第2螺旋状管R1、R2内で窒素含有ガスG中の窒素分子Nに振動回転が生じ、この振動回転によって高温高圧となった窒素分子Nからエネルギーが放射される。そして、窒素分子Nがエネルギーを放射しながら収容部411に到達し、当該エネルギーを収容部411内の被処理体Qが吸収することによって被処理体Qが高温に加熱される。
【0020】
ただし、螺旋状管Rの構成は、特に限定されない。例えば、第1螺旋状管R1および第2螺旋状管R2のいずれか一方を省略してもよい。また、第1螺旋状管R1および第2螺旋状管R2に加えて、1つまたは複数の螺旋菅を追加してもよい。この場合、追加した螺旋状管を第1螺旋状管R1の外側に同心的に配置してもよいし、第2螺旋状管の内側に同心的に配置してもよいし、別の場所に配置してもよい。
【0021】
また、エネルギー放射部2は、エネルギー放射の温度、具体的には、第1、第2螺旋状管R1、R2内の窒素含有ガスGの温度、特にこれに含まれる窒素の温度を制御する温度制御部29を有する。温度制御部29は、少なくとも1つのヒーターを有する。本実施形態では、温度制御部29は、第1螺旋状管R1と第2螺旋状管R2との間に配置された複数(6本)の第1ヒーター291と、第1螺旋状管R1の内側に配置された1本の第2ヒーター292と、を有する。複数の第1ヒーター291は、それぞれ、X軸方向に延びた棒状であり、第1、第2螺旋状管R1、R2の周方向に沿ってほぼ等間隔に配置されている。また、第2ヒーター292は、X軸方向に延びた棒状であり、第1螺旋状管R1と同心的に配置されている。
【0022】
なお、温度制御部29の構成は、第1、第2螺旋状管R1、R2内の窒素含有ガスGの温度を制御することができれば、特に限定されない。例えば、第1ヒーター291および第2ヒーター292の数や配置は、特に限定されない。また、例えば、第1ヒーター291および第2ヒーター292の少なくとも一方を省略してもよい。また、第1ヒーター291および第2ヒーター292に加えて、これらとは別の位置に、第3ヒーターを追加してもよい。また、温度制御部29は、窒素含有ガスGを加熱する上述のようなヒーターに加えて窒素含有ガスGを冷却する冷却機構を備えていてもよい。これにより、窒素含有ガスGの温度制御が容易となり、窒素含有ガスGの温度をより安定させることができる。また、温度制御部29を省略することもできる。
【0023】
図2および図3に示すように、エネルギー放射部2は、円筒状の第1筒21と、第1筒21の内側に配置され、第1筒21よりも小径な円筒状の第2筒22と、第2筒22の内側に配置され、第2筒22よりも小径な円筒状の第3筒23と、第3筒23の内側に配置され、第3筒23よりも小径な円筒状の第4筒24とを備え、第1筒21、第2筒22、第3筒23および第4筒24が互いに同心的に配置された四重菅20を有する。そして、第2筒22と第3筒23との間の空間S2内に第1ヒーター291が配置され、第4筒24の内側に第2ヒーター292が配置されている。
【0024】
また、エネルギー放射部2は、第1筒21と第2筒22との間の空間S1内に配置された第1螺旋状板25を有する。第1螺旋状板25は、X軸まわりに回転しながらX軸方向に延びた螺旋状をなし、その内周部が第2筒22の外周面に接し、その外周部が第1筒21の内周面に接している。そのため、第1螺旋状板25によって空間S1が螺旋状に仕切られ、これにより、第1螺旋状管R1が形成される。つまり、第1螺旋状管R1は、第1筒21、第2筒22および第1螺旋状板25によって形成されている。このような構成によれば、第1螺旋状管R1を比較的簡単に形成することができる。ただし、第1螺旋状管R1の構成は、特に限定されない。例えば、第1螺旋状板25の内周部と第2筒22の外周面との間に隙間が形成されていてもよいし、その外周部と第1筒21の内周面との間に隙間が形成されていてもよい。また、例えば、長尺な管を螺旋状に巻いて第1螺旋状管R1を形成してもよい。
【0025】
また、エネルギー放射部2は、第3筒23と第4筒24との間の空間S3内に配置された第2螺旋状板26を有する。第2螺旋状板26は、第1螺旋状板25と同様に、X軸まわりに回転しながらX軸方向に延びた螺旋状をなし、その内周部が第4筒24の外周面に接合し、その外周部が第3筒23の内周面に接している。そのため、第2螺旋状板26によって空間S3が螺旋状に仕切られ、これにより、第2螺旋状管R2が形成される。つまり、第2螺旋状管R2は、第3筒23、第4筒24および第2螺旋状板26によって形成されている。このような構成によれば、第2螺旋状管R2を比較的簡単に形成することができる。ただし、第2螺旋状管R2の構成は、特に限定されない。例えば、第2螺旋状板26の内周部と第4筒24の外周面との間に隙間が形成されていてもよいし、その外周部と第3筒23の内周面との間に隙間が形成されていてもよい。また、例えば、長尺な管を螺旋状に巻いて第2螺旋状管R2を形成してもよい。
【0026】
また、第1螺旋状板25は、外周側が上流側に傾斜している。つまり、第1螺旋状板25は、外周端が内周端よりも上流側に位置するように傾斜している。そのため、第1螺旋状管R1内を流れる窒素含有ガスGは、図3中の矢印B1で示すように、第1螺旋状板25によって第1螺旋状管R1の内周側に誘導され、第1螺旋状管R1の内周側に偏りながら第1螺旋状管R1内を流れる。一方、第2螺旋状板26は、第1螺旋状板25とは逆に、外周側が下流側に傾斜している。つまり、第2螺旋状板26は、外周端が内周端よりも下流側に位置するように傾斜している。そのため、第2螺旋状管R2内を流れる窒素含有ガスGは、図3中の矢印B2で示すように、第2螺旋状板26によって第2螺旋状管R2の外周側に誘導され、第2螺旋状管R2の外周側に偏りながら第2螺旋状管R2内を流れる。これにより、窒素含有ガスGが第1ヒーター291の近くを流れ、第1ヒーター291によって窒素含有ガスGの温度を精度よく制御することができると共に、窒素含有ガスGの温度が安定する。
【0027】
ただし、これに限定されず、第1螺旋状板25は、外周側が下流側に傾斜していてもよい。また、第2螺旋状板26は、外周側が上流側に傾斜していてもよい。また、第1螺旋状板25と第2螺旋状板26の傾きの方向が同じであってもよい。すなわち、第1螺旋状板25および第2螺旋状板26が共に、外周側が上流側に傾斜していてもよし、この逆であってもよい。
【0028】
また、第2螺旋状板26のピッチP2は、第1螺旋状板25のピッチP1よりも小さい。つまり、P2<P1である。そのため、第2螺旋状管R2の巻き数が第1螺旋状管R1の巻き数よりも多い。このように、第1螺旋状管R1よりも小径な第2螺旋状管R2の巻き数を第1螺旋状管R1よりも多くすることにより、第1、第2螺旋状管R1、R2の全長差を小さくすることができ、第1、第2螺旋状管R1、R2内の窒素分子Nから同等のエネルギーを放射させることができる。そのため、被処理体Qを効率的に加熱することができる。ただし、これに限定されず、P2≧P1であってもよい。
【0029】
なお、第1螺旋状板25の傾きθ1は、第2螺旋状板26の傾きθ2よりも大きい。つまり、θ1>θ2である。第1螺旋状管R1の方が、第2螺旋状管R2よりも大径であるため、その内部を窒素含有ガスGが流れやすく、流速も出やすい。したがって、θ1>θ2とすることにより、より効果的に、第1螺旋状管R1内を流れる窒素含有ガスGを第1螺旋状管R1の内周側に誘導することができる。
【0030】
また、第1螺旋状板25および第2螺旋状板26は、互いに逆巻きの螺旋である。すなわち、第1螺旋状板25および第2螺旋状板26の一方が右回りの螺旋であり、他方が左回りの螺旋である。これにより、エネルギー放射部2内を窒素含有ガスGがバランスよく流れるようになり、窒化処置の効率が向上する。ただし、これに限定されず、第1螺旋状板25および第2螺旋状板26は、互いに同じ向きに巻かれた螺旋であってもよい。
【0031】
このような四重菅20、第1螺旋状板25および第2螺旋状板26は、例えば、ステンレス鋼で構成されている。また、第1螺旋状板25および第2螺旋状板26のX軸方向の長さは、例えば、800mm~1500mm程度であることが好ましく、1100mm~1300mm程度であることがより好ましい。
【0032】
また、第1螺旋状板25の内径は、例えば、80mm~120mm程度であることが好ましく、90mm~110mm程度であることがより好ましい。また、第1螺旋状板25の外径は、例えば、190mm~230mm程度であることが好ましく、210~220mm程度であることがより好ましい。また、第1螺旋状板25のピッチP1は、例えば、60mm~100mm程度であることが好ましく、70mm~90mm程度であることがより好ましい。また、第1螺旋状板25の傾きθ1は、例えば、40°~70°程度であること好ましく、50°~60°程度であることがより好ましい。
【0033】
また、第2螺旋状板26の内径は、例えば、5mm~40mm程度であることが好ましく、10mm~30mm程度であることがより好ましい。また、第2螺旋状板26の外径は、例えば、40mm~80mm程度であることが好ましく、50mm~70mm程度であることがより好ましい。また、第2螺旋状板26のピッチP2は、例えば、30mm~70mm程度であることが好ましく、40mm~60mm程度であることがより好ましい。また、第2螺旋状板26の傾きθ2は、例えば、20°~50°程度であること好ましく、30°~40°程度であることがより好ましい。
【0034】
各部をこのようなサイズとすることにより、窒化装置1の窒化処理効率が向上する。ただし、各部のサイズは、上述した数値範囲に限定されず、適宜設定することができる。
【0035】
また、図4に示すように、循環部3は、円筒状の外筒31と、外筒31の内側に回転自在に配置されたスクリュー32と、スクリュー32を回転させる図示しないモーターと、を有する。このような循環部3によれば、スクリュー32を回転させることにより、窒素含有ガスGを矢印Aの方向に流動させることができる。
【0036】
また、スクリュー32は、外筒31と同心的に配置され、外筒31に対して回転可能に軸受けされた回転軸321と、回転軸321に固定されたスクリュー羽根322と、を有する。スクリュー羽根322は、X軸まわりに回転しながらX軸方向に延びた螺旋形状をなす。また、スクリュー羽根322のピッチPは、窒素含有ガスGの流動方向の上流側から下流側に向けて漸減している。つまり、上流側から下流側に向けてスクリュー羽根322のピッチPが徐々に狭くなっている。
【0037】
なお、特に限定されないが、下流端部のピッチPは、上流端部のピッチPの3/4以下であることが好ましく、1/2以下であることがより好ましい。これにより、上述の効果がより顕著となる。また、スクリュー羽根322の傾きθは、窒素含有ガスGの流動方向の上流側から下流側に向けて漸増している。つまり、上流側から下流側に向けてスクリュー羽根322の傾きθが徐々に大きくなっている。
【0038】
ここで、窒化装置1内を循環する窒素含有ガスGの流速としては、エネルギー放射部2において窒素分子Nの振動回転によるエネルギー放射が生じる限りなるべく遅い方が好ましい。これにより、窒素分子Nのエネルギー放射が緩やかとなり、窒素分子Nがエネルギー放射したまま、エネルギー放射部2の下流側に配置された被処理体Qに到達しやすくなる。そのため、被処理体Qの窒化処理が安定する。なお、窒素含有ガスGの流速を高めすぎると、循環部3内で窒素含有ガスGの過度な乱流回転が生じ、窒素含有ガスGが過度に冷却されてしまい、窒化装置1内を循環する窒素含有ガスGの温度が不安定となりやすい。そのため、流速を抑えることにより、このような問題が生じ難くなり、窒素含有ガスGの温度を安定させることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、スクリュー羽根322の外径を外筒31の内径に対して若干小さくし、スクリュー羽根322と外筒31の内周面との接触・干渉を防止しつつ、これらの間の隙間を極力小さくしている。これにより、外筒31やスクリュー羽根322の損傷、スクリュー32の回転抵抗の増大等を抑制しつつ、効率的に、窒素含有ガスGを循環させることができる。ただし、これに限定されず、例えば、スクリュー羽根322の外径を外筒31の内径と等しくし、スクリュー羽根322と外筒31の内周面とを接触させ、これらの間の隙間をなくしてもよい。
【0040】
このような外筒31およびスクリュー32は、例えば、ステンレス鋼で構成されている。また、スクリュー羽根322のX軸方向の長さは、例えば、800mm~1500mm程度であることが好ましく、1100mm~1300mm程度であることがより好ましい。また、スクリュー羽根322の内径は、例えば、10mm~60mm程度であることが好ましく、20mm~40mm程度であることがより好ましい。また、スクリュー羽根322の外径は、例えば、180mm~230mm程度であること好ましく、190mm~210mm程度であることがより好ましい。
【0041】
また、スクリュー羽根322の上流端部のピッチPは、例えば、8mm~12mm程度であることが好ましく、9mm~11mm程度であることがより好ましい。また、スクリュー羽根322の下流端部のピッチPは、例えば、3mm~7mm程度であることが好ましく、4mm~6mm程度であることがより好ましい。また、スクリュー羽根322の上流端部の傾きθは、例えば、40°~80°程度であることが好ましく、50°~70°程度であることがより好ましい。また、スクリュー羽根322の下流端部の傾きθは、例えば、45°~85°程度であることが好ましく、55°~75°程度であることがより好ましい。
【0042】
このようなサイズとすることにより、循環部3の循環性能が向上し、窒素含有ガスGをより安定して窒化装置1内で循環させることができる。ただし、各部のサイズは、上述した数値範囲に限定されず、適宜設定することができる。また、循環部3の構成は、窒化装置1内で窒素含有ガスGを循環させることができれば、特に限定されない。
【0043】
第1接続部41は、管状をなし、エネルギー放射部2の下流側端部と循環部3の上流側端部とを接続する。また、第1接続部41の途中には、被処理体Qを収容する収容部411が設けられている。エネルギー放射部2を通過した窒素分子Nは、エネルギーを放射しながら収容部411に到達し、窒素分子Nから放射されたエネルギーは、収容部411内の被処理体Qに吸収され、被処理体Qが高温に加熱される。そして、高温に加熱された被処理体Qに振動回転する窒素分子Nが衝突すると、窒素が分子状のまま或いは被処理体Qの表面において原子状に解離した後、被処理体Qに浸透(侵入)し、溶解する。これにより、被処理体Qの表面部分或いは全域が窒素と反応して窒化される。
【0044】
収容部411を第1接続部41の途中に配置することにより、被処理体Qをエネルギー放射部2のすぐ下流側に配置することができ、窒素分子Nがエネルギーを放射しながら被処理体Qに到達しやすくなる。そのため、上述した窒化処理がより効率的に行われる。ただし、収容部411の配置としては、上述の窒化処理を行うことができれば、特に限定されない。例えば、エネルギー放射部2の螺旋状菅Rの下流側に配置してもよい。
【0045】
第2接続部42は、管状をなし、循環部3の下流側端部とエネルギー放射部2の上流側端部とを接続する。
【0046】
以上、窒化装置1の構成について説明した。次に、窒化装置1を用いた窒化方法について説明する。まず、収容部411に被処理体Qを配置する。被処理体Qとしては、特に限定されず、例えば、各種ガラス材料、各種金属材料等、如何なる材料であってもよい。
【0047】
次に、窒化装置1内に窒素含有ガスGを充填する。窒素含有ガスGには、少なくとも窒素が含まれている。窒素の含有率としては、特に限定されないが、高い程好ましく、100%であることがより好ましい。これにより、窒化装置1内の窒素量が高まるし、窒素含有ガスGに含まれる窒素以外のガス(例えば、水素H、酸素O等)による前記エネルギーの吸収のおそれが少なくなる。そのため、窒化処理の効率が向上する。また、窒素以外のガスが被処理体Qに浸透、溶解するおそれも少なくなる。そのため、窒化処理の純度も高まる。
【0048】
このような窒素含有ガスGとしては、窒素ガスを用いることが最も好ましい。これにより、より効率的に、かつ、より高純度な窒化処理が可能となる。また、空気には窒素が約78.08Vol%含まれているため、空気を窒素含有ガスGとして用いることもできる。これにより、窒化処理のコストを削減することができる。
【0049】
なお、窒化装置1内の気圧は、特に限定されないが、4気圧~10気圧程度であることが好ましい。これにより、窒化装置1内が過度な高圧となるのを防ぎつつ、窒化装置1内により多くの窒素を導入することができる。そのため、窒化装置1の故障や損傷を防止しつつ、窒化処理の効率を高めることができる。
【0050】
窒化装置1内に窒素含有ガスGを導入した後、スクリュー32を回転させ、窒素含有ガスGを窒化装置1内において矢印A方向に循環させる。これにより、窒素含有ガスGが第1、第2螺旋状管R1、R2内に導入される。
【0051】
窒素含有ガスGが第1、第2螺旋状管R1、R2に導入されると、第1、第2螺旋状管R1、R2内において窒素分子Nが振動回転し、窒素分子Nが高温高圧となり、窒素分子Nからエネルギーが放射される。この現象について、一部推測を交えて簡単に説明すると、窒素含有ガスGが第1、第2螺旋状管R1、R2内に導入されると、窒素含有ガスGが圧縮され、窒素含有ガスGに圧力がかかる。すると、窒素含有ガスG中の窒素分子N同士に摩擦が生じ、分子同士がぶつかったり離れたりを繰り返して分子が振動および回転する。そして、振動および回転した窒素分子Nに遠心力が加わり、この遠心力が一定以上の大きさになった時点で窒素分子Nからエネルギーが放射される。
【0052】
そして、窒素分子Nは、エネルギーを放射しながら第1接続部41の収容部411に到達し、窒素分子Nから放射されたエネルギーは、収容部411内の被処理体Qに吸収され、被処理体Qが高温に加熱される。そして、高温に加熱された被処理体Qに振動回転する窒素分子Nが衝突すると、窒素が分子状のまま或いは被処理体Qの表面において原子状に解離した後、被処理体Qに浸透(侵入)し、溶解する。これにより、被処理体Qの表面部分或いは全域が窒素と反応して窒化され、当該部分に窒化化合物が生成される。
【0053】
なお、窒素は、約35℃以上で動きが活発となり、上述のエネルギー放射が生じやすくなる。そこで、窒化装置1では、第1ヒーター291および第2ヒーター292を発熱させて、第1、第2螺旋状管R1、R2内を流れる窒素含有ガスGの温度を35℃以上、好ましくは60℃以上に維持する。これにより、より確実に、窒素分子Nからのエネルギー放射を生じさせ、被処理体Qを窒化することができる。
【0054】
ここで、前述したように、第1螺旋状管R1を形成する第1螺旋状板25は、外周側が上流側に傾斜している。そのため、第1螺旋状管R1内を流れる窒素含有ガスGは、第1螺旋状板25によって第1螺旋状管R1の内周側に誘導され、第1螺旋状管R1の内周側に偏りながら第1螺旋状管R1内を流れる。したがって、窒素含有ガスGが第1ヒーター291の近くを流れることとなり、第1ヒーター291によって窒素含有ガスGの温度を精度よく制御することができ、窒素含有ガスGの温度が安定する。これにより、窒素分子Nから安定したエネルギー放射が生じる。第1螺旋状管R1の外周側にはヒーターが設置されておらず、窒素含有ガスGが第1螺旋状管R1の外周側に偏ってしまうと、窒素含有ガスGの温度が変動しやすく、窒素分子Nからの安定したエネルギー放射が阻害されるおそれがある。
【0055】
また、前述したように、第2螺旋状管R2を形成する第2螺旋状板26は、第1螺旋状板25とは逆に、外周側が下流側に傾斜している。そのため、第2螺旋状管R2内を流れる窒素含有ガスGは、矢印B2で示すように、第2螺旋状板26によって第2螺旋状管R2の外周側に誘導され、第2螺旋状管R2の外周側に偏りながら第2螺旋状管R2内を流れる。したがって、窒素含有ガスGが第1ヒーター291の近くを流れることとなり、第1ヒーター291によって窒素含有ガスGの温度を精度よく制御することができ、窒素含有ガスGの温度が安定する。これにより、窒素分子Nから安定したエネルギー放射が生じる。
【0056】
このように、第1螺旋状板25と第2螺旋状板26との傾きを逆にし、第1螺旋状管R1内で窒素含有ガスGを内周側に偏らせ、第2螺旋状管R2内で窒素含有ガスGを外周側に偏らせることにより、エネルギー放射部2を流れる窒素含有ガスGを第1ヒーター291の周囲に集めることができる。したがって、エネルギー放射部2を流れる窒素含有ガスGの温度を精度よく制御することができ、窒素含有ガスGの温度が安定する。
【0057】
以上のように、窒化装置1および窒化方法は、窒素分子Nの振動回転により放射されるエネルギーを利用して被処理体Qを高温に加熱して窒化させるのであり、従来とは全く異なる構成および方法である。したがって、当該分野のさらなる発展に大きく寄与するものである。また、アンモニア等のガスの導入や、プラズマを発生させる必要ないため、従来よりも簡単かつ効率的に窒化処理を行うことができる。
【0058】
以上、本発明の窒化装置、窒化方法およびエネルギー放射装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、前記実施形態には他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明に係る窒化装置1は、窒素含有ガスGが導入される螺旋状管Rと、被処理体Qが収容される収容部411と、を有し、螺旋状管R内で窒素含有ガスGに含まれる窒素を振動回転させてエネルギーを放射させ、当該エネルギーによって被処理体Qを加熱し、振動回転した窒素が加熱された被処理体Qに衝突することにより、被処理体Qに前記窒素が浸透して被処理体Qが窒化される。このように、窒化装置1は、従来とは全く異なる構成および方法で被処理体Qを窒化する。また、窒化装置1によれば、簡単かつ効率的に窒化処理を行うことができる。したがって、その産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0060】
1 窒化装置
2 エネルギー放射部
20 四重菅
21 第1筒
22 第2筒
23 第3筒
24 第4筒
25 第1螺旋状板
26 第2螺旋状板
29 温度制御部
291 第1ヒーター
292 第2ヒーター
3 循環部
31 外筒
32 スクリュー
321 回転軸
322 スクリュー羽根
41 第1接続部
411 収容部
42 第2接続部
A 矢印
B1 矢印
B2 矢印
G 窒素含有ガス
P ピッチ
P1 ピッチ
P2 ピッチ
Q 被処理体
R 螺旋状管
R1 第1螺旋状管
R2 第2螺旋状管
S1 空間
S2 空間
S3 空間
θ 傾き
θ1 傾き
θ2 傾き
図1
図2
図3
図4