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▶ 鈴木 計芳の特許一覧

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  • 特開-抜歯方法および抜歯用具 図1
  • 特開-抜歯方法および抜歯用具 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032018
(43)【公開日】2022-02-24
(54)【発明の名称】抜歯方法および抜歯用具
(51)【国際特許分類】
   A61C 3/14 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
A61C3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020145056
(22)【出願日】2020-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】504230246
【氏名又は名称】鈴木 計芳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 計芳
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA20
4C052BB14
4C052DD09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】これから抜こうとしている歯に準備段階で掛かる負担を少なくすることが出来、ハンドル部を指で摘むなり鉗子の顎部で挟むなりして歯を抜くことが出来る抜歯方法、抜歯用具を提供する。
【解決手段】アンカー部12とハンドル部10とから成る抜歯用具1を用いる。切削によって歯2に開けた窩洞部20の中に、ホットメルト注入具3で溶融させたホットメルト接着剤30を注入して固化させる。抜歯用具1がホットメルト接着剤30の固化部31で、しっかりと歯2に固定されたならば、ハンドル部10を指先で摘まんで歯2を捻り歯槽骨から浮かせつつ引き抜くようにする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯内に固定するためのアンカー部とこのアンカー部を引くためのハンドル部とから成る抜歯用具を用意しておいて、歯を前記アンカー部の径よりも大きく切削して窩洞部を形成し、この窩洞部に前記アンカーを納めてホットメルト注入具を用いてホットメルト接着剤を注入し、このホットメルト接着剤が冷えて前記アンカーが固定されたら、前記ハンドル部を以て抜歯を行う、抜歯方法。
【請求項2】
空気を吹くかまたは水を流すかしてホットメルト接着剤を冷やすようにする、請求項1に記載の抜歯方法。
【請求項3】
前記ハンドル部に滑り止め部を備えた抜歯用具を用い、前記ハンドル部を指で摘まむようにして抜歯を行う、請求項1に記載の抜歯方法。
【請求項4】
前記ハンドル部に掛止部を備えた抜歯用具を用い、前記掛止部を引き抜き工具に掛止させるようにして抜歯を行う、請求項1に記載の抜歯方法。
【請求項5】
歯内に設けた窩洞部に固定するためのアンカー部と、このアンカー部を引くためのハンドル部と、両者を繋ぐ軸部とから成り、軸部を介してアンカー部とハンドル部との間隔を変える間隔調節部を有する、抜歯用具。
【請求項6】
前記軸部にネジが刻設され、このネジに前記ハンドル部が螺合して、前記間隔調節部を構成している、請求項5に記載の抜歯用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抜歯を安全にかつ容易に行うことが出来て患者の負担が軽くなるような抜歯の施術方法および施術用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歯科治療に於いて抜歯を行う場合には、歯と歯槽骨との間で歯根の周りにある歯根膜の部位に梃子(ヘーベル)を挿入して歯を脱臼させてから、歯科用の鉗子(ペンチ)で歯を挟んで抜き取るのが一般的である。この鉗子の実例は特開2002-291753号に、また梃子の実例は特開2009-119095号に詳述されている。
【0003】
しかしながら梃子で歯をこじる際に誤って歯を押し込むようなことが起ると、これが原因で神経を痛めたり血管を破損して出血が多くなったり、歯槽骨を陥没させてしまうような場合があり問題となっている。
【0004】
そこでかつて当発明者は、抜歯をより安全に且つ容易に行えるようにすべく、実用新案登録第3162169号の抜歯用具を提供した。このものは歯内にねじ込むためのネジ部とハンドル部とから成り、前記ハンドル部に滑り止め部を備えている抜歯用具としたものである。ハンドル部を以てネジ部を歯の中心部の穴にねじ込み、ネジ部が歯にしっかりと食い込んだら、ハンドル部を以て引き抜くようにする。歯根は捻る力に弱く捻ると比較的容易に歯槽骨から浮かせることが出来る。これを引き抜くようにすれば簡単に抜歯を行うことが可能である。従って抜歯に当って梃子を用いることなく、また抜歯を行う歯にのみ抜歯の力が加わるため、隣合う歯に影響されたり影響を与えたりすることが少なく、安全である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-291753号(図1
【特許文献2】特開2009-119095号(図15
【特許文献3】実用新案登録第3162169号
【特許文献4】実用新案登録第3162226号(後出)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに実用新案登録第3162169号によれば、それまでの問題がうまく解決されている。しかしながらネジ部を歯にしっかりと食い込ませる必要があるため、この時に捻る方向の力が歯に掛かってしまうのは致し方ない。それでもハンドル部を以てネジ部を歯の中心部の穴にねじ込んで歯にしっかりと食い込ませて固定するに当たっては、捻る方向の力が歯にあまり掛からないようにすることは出来ないだろうか、すなわちこれから抜こうとしている歯や、この部位の歯槽骨や、隣り合う歯に負担が掛からないようにすることは出来ないだろうか、と言うのが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決に先立ち当発明者は、このような抜歯用具を歯に固定するのに、ネジ部を歯に直接的にねじ込むこと以外の方法で行えば良いと言う知見を得た。
【0008】
そこで本発明では、歯内に固定するためのアンカー部と、このアンカー部を引くためのハンドル部とから成る抜歯用具を用意しておいて、歯を前記アンカー部の径よりも大きく切削して窩洞部(窪み)を形成し、この窩洞部に前記アンカーを納めてホットメルト注入具を用いてホットメルト接着剤を注入し、このホットメルト接着剤が冷えて前記アンカーが固定されてから、前記ハンドル部を以て抜歯を行う、抜歯方法を提供する。この発明で特徴的なのは、抜歯を行う時点ではなくて、抜歯用具を歯に固定する時点である。
【0009】
この使用法と作用は次のようである。先ず抜歯する歯を切削して窩洞部(窪み)を作るのであるが、この窪みの大きさはアンカー部を納めることが出来る程度の大きさであれば良いため(歯とアンカー部との間にはホットメルト接着剤が入るため)、アンカー部を窪みに納めた時の緩さの程度は歯科医の任意判断に任される。この窩洞部に先に抜歯用具のアンカー部を納めてから、ホットメルト注入具を使用してホットメルト接着剤を注入し、ホットメルト接着剤が冷えて固化すれば、アンカー部が固定されたことになる。このようであるから上述した実用新案登録第3162169号のようにネジ部を歯に捩じ込ませる必要がなくなっている。なお固化したホットメルト接着剤は、従来技術からの類推でプラコアなどと呼んで良い。後述するがレジンを用いた場合がレジンコアである。
【0010】
なおホットメルト接着剤が固化すると、歯と抜歯用具とが一体となるため、ハンドル部を指で摘むなり鉗子の顎部で挟むなりして抜くようにする。この際に歯根を捻るようにすると、歯が歯槽骨から浮いて来るために、抜歯は比較的容易であり且つ安全である。また抜歯を行う歯にのみ抜歯の力が加わるので、隣合う歯に影響されたり影響を与えたりすることが少ない。なおハンドル部に滑り止め部があるものでは、ここを指で摘んだり鉗子で挟んで引く力をアンカー部、すなわちこれから抜こうとしている歯に効果的に及ぼすことが出来る。またハンドル部に掛止部を備えているものでは、掛止部に鉗子や鈎具の先をしっかりと掛けることが出来る。なおハンドル部に孔部を設けた場合もこれを掛止部として使用することが出来る。アンカー部とハンドル部との間に形成された段部も掛止部として使用し得る。
【0011】
上記ホットメルト接着剤にはどのようなものを用いても良いが、治療時間の制約もあることから出来るだけ早く固化するものであることが好ましい。一般的にはAPOA(Amorphous Poly Alpha Orefin)樹脂やEVA(Ethylene Vinyl Acetate)樹脂などが使用可能である。ホットメルト接着剤の固化を早めるには、強制的に空気を吹くか水を流すかして、ホットメルト接着剤を冷やすようにする施術の方法もある。なおホットメルト接着剤は、他の接着剤が粘液状でチューブに納められており、キャップを外したり締めたりと言った煩わしさがあることに比して、ホットメルト注入具にセットしておきさえすれば、何時でもそのまま使用可能である点が、抜歯の施術には最適である。ホットメルト注入具がピストルを模したものであると、目的の歯に狙いを定めやすいと言う利点もある。
【0012】
さてアンカー部の形状は任意であるが、柱状のものや錐状のものが良い。また万が一にも固化したホットメルト接着剤からの離脱が起こらないように、アンカー部の先端部に玉形状や皿形状や棘形状の逆止突起を設けると良い。なおアンカー部の形状をネジ状(歯にネジ込むためのものではない)にすれば、逆止突起と同様の効果が得られる。
【0013】
ところで上記アンカー部とこのアンカー部を引くためのハンドル部とから成る抜歯用具で、ハンドル部に、例えば梃の先に設けられたこの部位を二股にするための掛止溝を掛止させて梃で抜歯するのであるが、この際に次のような課題がある。すなわちアンカー部とハンドル部との間に両者を繋ぐ軸部があるが、ここが長いとアンカー部とハンドル部との距離が長くなり、梃でハンドル部を掛止しようとしても上手く掛止されなかったり、梃の先を大きく動かさないとハンドル部が引けない傾向を生ずる。軸部を短くしてアンカー部とハンドル部との間を狭くすれば良い分けであるが、そうすると今度はホットメルト注入具を用いてホットメルト接着剤を窩洞部に注入する際に、ハンドル部が邪魔になる場合があるのである。そこで当発明者は、アンカー部とハンドル部との距離を可変とすれば良いと言う知見を得た。
【0014】
すなわち本発明では、歯内に設けた窩洞部に固定するためのアンカー部とこのアンカー部を引くためのハンドル部と両者を繋ぐ軸部とから成り、この軸部を介してアンカー部とハンドル部との間隔を変える間隔調節部を有する抜歯用具とした。この間隔調節部によりアンカー部とハンドル部との間を空けておき、ホットメルト注入具を用いてホットメルト接着剤を窩洞部に注入するのであるから、ハンドル部がホットメルト接着剤注入の邪魔になることはない。そして上記梃をハンドル部に掛止するに当たっては、上記間隔調節部によりアンカー部とハンドル部との間を狭めるようにするのである。
【0015】
また前記軸部にネジが刻設され、このネジに前記ハンドル部が螺合して、前記間隔調節部を構成しているものとしても良い。このネジを指先で左回りに回せばアンカー部とハンドル部との間を空けることが出来、逆に右回りに回せばアンカー部とハンドル部との間を狭めることが出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば抜歯用具を歯に固定する準備段階に当たって、歯をアンカー部の径よりも適宜大きな径で切削して窩洞部(窪み)を形成し、この窩洞部の中でアンカーをホットメルト接着剤で固定するようにしているため、これから抜こうとしている歯に上記準備段階で掛かる負担を少なくすることが出来ると言う効果を奏する。なおこのように固定してしまえば、ハンドル部を指で摘むなり鉗子の顎部で挟むなりして歯を抜くことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の説明図である。
図2】実施例1の説明図である。
図3】実施例1の施術方法の説明図である。
図4】実施例2の説明図である。
図5】実施例2の説明図である。
図6】実施例2の説明図である。
図7】実施例2の施術方法の説明図である。
図8】実施例3の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の3種類の実施例を図1図8を参照しつつ説明するが、本発明はこれ等の実施例に限定されるものではない。
【実施例0019】
医師が抜歯の処置を行うこの実施例の抜歯方法では、図2の抜歯用具1と、接着剤としてのホットメルト接着剤30を装着したホットメルト注入具3を用いる。抜歯用具1は、後述する切削によって歯2に開けた窩洞部20の中に納めるアンカー部12と、ハンドル部10とから成り、このハンドル部10に滑り止めの凸条部13が設けられている。これ等のアンカー部12とハンドル部10とは、回転中心軸としての軸部11を介して接続されている。またアンカー部12は球形状を呈する。なお抜歯用具1の素材の選択は任意であるが、ここではニッケル-チタン合金を用いている。またハンドル部10の滑り止め部に関して、凸条部13の代わりに凹条部としたり、凸条部と凹条部とを混在させたりしても良い。あるいは梵鐘にある乳のような丸い凸部をたくさん配設するようにしても良い。
【0020】
このような抜歯用具1を用意した上で、歯2に球形状のアンカー部12が入り込む程度の窩洞部20を切削器具によって形成して、この中にアンカー部12を納める(ステップS1)。次に、図2はホットメルト注入具3を実際よりは随分と小さく模式的に表したものであるが、アンカー部12を納めた窩洞部20に、ホットメルト注入具3に通電することで発生した熱で溶解したホットメルト接着剤30を注入して、ホットメルト接着剤30を固化させる。こうして抜歯用具1がホットメルト接着剤30の固化部31でしっかりと歯2に固定される(ステップS2)。そこでハンドル部10を指先で摘まんで歯2を捻るようにすると、歯根は捻る力に弱く捻ると比較的容易に歯槽骨から浮かせることが出来るので、これに合わせるようにしてハンドル部10を引き抜けば、楽に抜歯が行えるのである(ステップS3)。
【0021】
ハンドル部10を親指と人差し指や中指とで摘んで左右何れかの方向に回転させるようにするが、この際にハンドル部10には滑り止めの凸条部13が設けられているために、唾液などによって指が滑るようなことが少ない。この際虫歯に掛かる捩りによって虫歯が浮いて来ている。そこで次にハンドル部10を指で強く摘むなり、鉗子の顎部で挟むなりして歯を抜く方向に引くようにすると容易に抜歯される。この固化したホットメルト接着剤30の接着力はとても強固であり、またこの一連の治療はとても安全である。この抜歯の処置を図1乃至図3で表した。なお図中の符号21は歯茎を指す。
【実施例0022】
図4乃至図7でこの実施例の抜歯方法を説明する。この実施例の抜歯方法で用いる抜歯用具4は、図4で表すように、歯に開けた窩洞部20の中に納める略ネジ形状のアンカー部42とハンドル部40と、これ等を繋ぐ軸部41とから成る。この軸部41とハンドル部40とでT字形状を呈している。
【0023】
またこの実施例の抜歯方法で用いる抜歯用具5はハンドル50とこの先端部分に設けられた略長円形状の掛止部51とから構成されている。特に掛止部51の底部は抜歯用具5の長手方向にかつ下方向に凸湾曲する船底部52とされている。これはスプーンの形状に近いが、掛止部51のハンドル50に近い部位は太く形成されている。また掛止部51の先端部にはこの部位を二股にするための掛止溝53が形成されている。また掛止部51の後端部には、略ネジ形状の抜歯用具4のハンドル部40を通し得る大きさの円形の孔とこれに後方へ続くハンドル部40を通さない細さの長形の孔とを連続させて構成した掛止孔54が形成されている。上記掛止溝53は掛止部51の縁部に至るが、この掛止孔54は掛止部51の縁部には至っていない。なお上記掛止溝53の代わりに掛止孔54を設けることが出来る。この掛止溝53や掛止孔54に、上記抜歯用具4が掛止されるのである。ハンドル部40は長形の孔に入ることで抜歯時に抜けないようになる。なお便利のため、ハンドル50の他端部には紐通し孔55が設けられている。
【0024】
このような抜歯用具4,5を用意した上で、歯に略螺子形状のアンカー部42が納まる程度の窩洞部20を切削器具によって形成し、ここに抜歯用具4の上記アンカー部42を納める(ステップS4)。続いてアンカー部42の回りの窩洞部20に図示しないホットメルト注入具3に通電することによって、発生した熱で溶解したホットメルト接着剤30を注入して、ホットメルト接着剤30を固化させる。こうして抜歯用具4がホットメルト接着剤30の固化部31でしっかりと歯2に固定される(ステップS5)。
【0025】
次に、抜歯用具5のハンドル50を握って掛止部51の掛止孔54を抜歯用具4のハンドル部40に掛けるべく、船底部52でこの虫歯の前方に隣り合う歯列の上面部分を探りながら掛止孔54をハンドル部40に掛けるようにする。こうして抜歯用具5のハンドル50を上方に引き上げるようにして抜歯用具4を引き抜くのである(ステップS6)。
【0026】
この船底部52の探りに関して、スプーンの形状に類似した幅の広い船底部52を有していることによって、歯列の上面部分のみならず歯列の角を探ることが出来る。歯の角部分や歯列の段差部分をも探ることが出来ることから、患者の口が開きにくい状況やその時々の口の形や、その時の医師の体勢や、歯並びや噛み合わせなどと言った特殊な事情に対応することが出来る。このことを言い表すとしたら、掛止孔54の抜歯用具4と船底部52の歯との接点とハンドル50とで軸が合っていると言うことである。
【0027】
こうして隣り合う歯への影響が殆どなく、抜歯を安全に安定的にかつ容易に行うことが出来て、患者の負担が軽くなる。また同様に歯科医師の仕事がより楽になり、疲労もより少なくなると言う効果がある。なお掛止部51の形状が略長円形であることから、患者の口内へ入れる際に抵抗感が少なく、この意味でも安心な抜歯用具である。
【0028】
なおステップS6に於いて、上記とは逆に抜歯用具5のハンドル50を握って、掛止部51の先端部を二股にした掛止溝53を抜歯用具4のハンドル部40に掛けるべく、船底部52でこの虫歯の後方に隣り合う歯列の上面部分を探りながら掛止溝53をハンドル部40に掛けるようにする。こうしておいて抜歯用具5のハンドル50を下方に押し下げるようにして抜歯用具4を引き抜く、と言う施術方法も可能である。
【0029】
なお本実施例の抜歯用具4は、上述したスプーンの形状に類似した抜歯用具5を用いることなく指先のみで操作することも可能である。すなわちハンドル部40を指で摘むようにして歯を引き抜くようにするのである。
【実施例0030】
医師が抜歯の処置を行うこの実施例の抜歯方法では、図8の抜歯用具6と、接着剤としてのホットメルト接着剤30を装着したホットメルト注入具3を用いるが、ホットメルト注入具3は実際よりも小さく模式的に表されている。
【0031】
抜歯用具6は、上述した切削によって歯2に開けた窩洞部20の中に納めるアンカー部60と、滑り止めの凸条部13があるハンドル部63とから成り、アンカー部60とハンドル部63とは回転中心軸としての軸部61を介して接続されている。また軸部61にはネジ62が刻設されており、ハンドル部63はネジ62に螺合して軸部61を上下方向に移動することが出来るように構成されている。この部位が本発明で言う所の間隔調節部である。なおアンカー部60は球形状を呈する。
【0032】
先ず、間隔調節部によってハンドル部63を指先で左回りに回して、アンカー部60とハンドル部63との間を空けておく。これはハンドル部63がホットメルト接着剤注入の邪魔にならないようにしておくためである。次に切削器具によって形成した窩洞部20の中にアンカー部60を納める。そしてホットメルト注入具を用いてホットメルト接着剤を窩洞部20に注入して固化部31を設ける。
【0033】
続いて、間隔調節部によってハンドル部63を指先で右回りに回して、アンカー部60とハンドル部63との間を狭めてから、この間に例えば上述した実施例2の抜歯用具5の掛止溝53を掛けるようにする。アンカー部60とハンドル部63との感覚は狭まっているため、抜歯用具5を梃のように操作した時には、抜歯の力が効率良くハンドル部63に伝えられることになる。
【0034】
なおアンカー部60とハンドル部63とは軸部61を介して接続され、ハンドル部63はネジ62に螺合して軸部61を上下方向に移動することが出来る間隔調節部を備えている。しかしながら間隔調節部はネジ62による螺合ではなく、例えばアンテナ式で長さを固定出来るような構造にすることによっても、上記間隔調節部を構成することは可能であるから、この辺は任意に設計して良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の抜歯方法および抜歯用具によれば、子供や老人の患者にとっても安心かつ安全であり負担が少ない。従って本発明をペット用のものとして提供することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 抜歯用具 10 ハンドル部 11 軸部
12 アンカー部 13 凸条部
2 歯 20 窩洞部 21 歯茎
3 ホットメルト注入具 30 ホットメルト接着剤 31 固化部
4 抜歯用具 40 ハンドル部 41 軸部
42 アンカー部
5 抜歯用具 50 ハンドル部 51 掛止部
52 船底部 53 掛止溝 54 掛止孔
55 紐通し孔
6 抜歯用具 60 アンカー部 61 軸部
62 ネジ 63 ハンドル部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8