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特開2022-32046道路網における気象条件を予測する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032046
(43)【公開日】2022-02-24
(54)【発明の名称】道路網における気象条件を予測する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20220216BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20220216BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20220216BHJP
   G01W 1/10 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
G08G1/01 A
G08G1/09 F
G08G1/13
G01W1/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021129833
(22)【出願日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】2008390
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョナタン ボネ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ルナール
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ アドニ
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC11
5H181EE13
5H181EE14
5H181FF05
5H181MC15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の気象セルに分割される少なくとも1つの気象区域にわたって延在する道路網における特定の位置の気象条件を予測する方法および装置を提供する。
【解決手段】気象区域についての一般的な気象予報に関する第1データ項目を気象予報プロバイダから取得するステップ304と、第1気象セルを移動している第1の車両から、車両の少なくとも1つのセンサによって検出される気象条件の変化に関する第2データ項目を受信するステップ305とを有する。この予測方法は、これがさらに、少なくとも第1データ項目および第2データ項目に、目標セルに関連付けられた予測モデルを適用することにより、少なくとも1つの目標気象セルについての気象条件の確率を予測するステップ306と、少なくとも1つの第2の車両に、予測された気象条件を送信するステップと、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気象セルに分割される少なくとも1つの気象区域にわたって延在する道路網における特定の位置の気象条件を予測する方法であって、前記方法は、
-前記気象区域についての一般的な気象予報に関する第1データ項目を気象予報プロバイダから取得するステップ(304)と、
-第1気象セルを移動している第1の車両から、前記車両の少なくとも1つのセンサによって検出される気象条件の変化に関する第2データ項目を受信するステップ(305)と、
を含み、
前記第2データ項目は、
・前記車両の少なくとも1つの装置要素の第1起動状態と、
・前記車両の少なくとも1つの装置要素の第2起動状態と、
・前記車両の移動の方向と、
を含み、
前記予測方法は、さらに、
-少なくとも前記第1データ項目および前記第2データ項目に、目標セルに関連付けられた予測モデルを適用することにより、少なくとも1つの前記目標気象セルについての気象条件の確率を予測するステップ(306)と、
-少なくとも1つの第2の車両に、予測された前記気象条件を送信するステップ(307)と、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記方法はさらに、前記目標セルに関連付けられた前記予測モデルをトレーニングする先行フェーズを含み、前記トレーニングは、
-前記気象区域に関する一般的な気象予報を含む第3データ項目を取得するステップ(300)と、
-前記気象区域の少なくとも1つの第1セルにおける気象条件の変化であって、前記第1セルを移動する車両の少なくとも1つのセンサによって第1時点に検出される変化に関する第4データ項目を取得するステップ(301)と、
を含み、
前記第4データ項目は、
・前記車両の少なくとも1つの装置要素の第1起動状態と、
・前記車両の少なくとも1つの前記装置要素の第2起動状態と、
・前記車両の移動の方向と、
を含み、
前記方法にはさらに、
-少なくとも前記第3データ項目および前記第4データ項目を有する特性ベクトルに基づき、かつ前記気象区域の前記目標気象セルにおいて第2時点に取得される(302)気象観測に関する目標データ項目に基づいて、前記予測モデルをトレーニングするステップ(303)と、
を含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記モデルのトレーニングのベースである前記第3データ項目、前記第4データ項目および前記目標データ項目は、持続時間があらかじめ定められた閾値以下である同一の1つの時間窓における時点に関連している、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第1起動状態および前記第2起動状態が、以下のリスト、すなわち、
-前記車両のフロントガラスワイパ、
-前記車両のヘッドランプ、
-前記車両のレインセンサ、
-マイクロフォン
にある装置要素の中から選択される、前記車両の少なくとも1つの前記装置要素に関係している、請求項4記載の方法。
【請求項5】
複数の気象セルに分割される少なくとも1つの気象区域にわたって延在する道路網における特定の位置の気象条件を予測する装置であって、前記装置は、通信インタフェース、メモリ(502)およびプロセッサ(501)を有し、前記プロセッサおよび前記通信インタフェース(504)は、前記メモリに記録されている命令によって以下のステップ、すなわち、
-前記気象区域についての一般的な気象予報に関する第1データ項目を気象予報プロバイダから取得するステップと、
-第1気象セルを移動している第1の車両から、前記車両の少なくとも1つのセンサによって検出される気象条件の変化に関する第2データ項目を受信するステップと、
を実現するように構成されており、
前記第2データ項目は、
・前記車両の少なくとも1つの装置要素の第1起動状態と、
・前記車両の少なくとも1つの前記装置要素の第2起動状態と、
・前記車両の移動の方向と、
を含み、
前記装置は、前記プロセッサおよび前記通信インタフェースがさらに、以下のステップ、すなわち、
-少なくとも前記第1データ項目および前記第2データ項目に予測モデルを適用することにより、少なくとも1つの第2気象セルについての気象条件の確率を予測するステップと、
-少なくとも1つの第2の車両に、予測された前記気象条件を送信するステップと、
を実現する、
前記メモリに記憶されている命令によって構成されている、装置。
【請求項6】
前記プロセッサおよび前記通信インタフェースがさらに、前記メモリに記録されておりかつ少なくとも以下のステップにしたがって予測モデルの事前トレーニングを実現するのに適した命令によって構成されており、前記ステップは、
-前記気象区域に関する一般的な気象予報を含む第3データ項目を取得するステップと、
-前記気象区域の少なくとも1つの第1セルにおける気象条件の変化であって、前記第1セルを移動する車両の少なくとも1つのセンサによって第1時点に検出される変化に関する第4データ項目を取得するステップと、
を含み、
前記第4データ項目は、
・前記車両の少なくとも1つの装置要素の第1起動状態と、
・前記車両の少なくとも1つの前記装置要素の第2起動状態と、
・前記車両の移動の方向と、
を含み、
前記ステップは、さらに
-少なくとも前記第3データ項目および前記第4データ項目を有する特性ベクトルに基づき、かつ前記気象区域の少なくとも1つの第2気象セルにおいて第2時点について取得される気象観察に関する目標データ項目に基づいて、前記予測モデルをトレーニングするステップと、
を含む、
請求項5記載の装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の予測装置を有するサーバ。
【請求項8】
コンピュータプログラム命令がプロセッサで実行される場合に請求項1から4までのいずれか1項記載の予測方法のステップを実現するように構成されている前記コンピュータプログラム命令を含むデータ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行技術
気象条件は、交通安全における重要なファクタである。さらに、いくつかの自動運転機能は、特定の気象条件では、例えば雨または薄氷のリスクがある場合には使用されるべきではない。
【0002】
気象予報プロバイダは、1キロメールのオーダの空間分解能で、地理位置情報に基づいて位置特定されかつ約15分のオーダの頻度で更新される予測を提供する。
【0003】
しかしながらこれらの気象予報は、例えば、にわか雨または濃霧の層のような極めて局所化された事象を予測するために必要な精度を有しない。その理由は、これらの予測は、局所的な特性が考慮されない広い区域について提供されるからである。
【0004】
局所化された気象事象が検出できるようにする複数の技術も公知である。例えば、米国特許出願公開第2008/0030370号明細書は、道路網を移動する車両の装置要素の起動状態に基づいて気象条件を検出することを提案している。この方法によれば、フロントガラスワイパの起動状態が、道路網を移動する複数の車両によって送信される。これらのデータに基づき、サーバは、悪天候の区域を計算して、これらの気象条件を他の車両に伝えることができる。
【0005】
しかしながら、車両における装置要素の起動状態だけに基づいて悪天候を検出することは、誤りに結び付いてしまうことがある。例えば、運転者は、濃霧の層を通過し終えた後、そのフォグランプを消灯することを忘れる可能性があり、またはフロントガラスワイパは、雨が降っていない間であっても、汚れたフロントガラスをきれいにするために使用されることがある。
【0006】
したがって、予測の精度を改善し、特に気象予測の空間分解能を増大する必要がある。
【0007】
発明の概要
このことを目的として、複数の気象セルに分割される少なくとも1つの気象区域にわたって延在する道路網における特定の位置の気象条件を予測する方法が提案され、この方法は、以下のステップ、すなわち、
-上記の気象区域についての一般的な気象予報に関する第1データ項目を気象予報プロバイダから取得するステップと、
-第1気象セルを移動している第1の車両から、この車両の少なくとも1つのセンサによって検出される気象条件の変化に関する第2データ項目を受信するステップと、を有する。
【0008】
この予測方法は、これがさらに以下のステップ、すなわち
-少なくとも第1データ項目および第2データ項目に、目標セルに関連付けられた予測モデルを適用することにより、少なくとも1つの目標気象セルについての気象条件の確率を予測するステップと、
-少なくとも1つの第2の車両に、予測された気象条件を送信するステップと、を含む点が特徴である。
【0009】
したがって、領域についての一般的な気象予報と、現在のセルに近接する少なくとも1つの特定のセルにおいて検出される気象条件の変化に関するデータ項目とに予測モデルを適用することにより、この方法は、従来技術に比べて改善された精度で現在のセルにおける気象条件の予測することができる。ここで「気象条件の変化」とは、少なくとも1つの気象パラメータの変化、例えば、乾いた気象から雨天へと移行することもしくはこの逆、濃霧の層への進入もしくここからの退出、外気温の大きな変化などを意味すると理解される。車両により、気象条件のこのような変化の特徴的なデータが送信される場合、これらのデータは、変化が検出される気象セルが属する領域についての一般的な気象予報を改良するために、すなわち、予報の空間的および時間的な分解能を改善するために使用される。このために上で提案されるのは、同じ領域に属する他の近接セルについての気象予報の精度および信頼性を改善するために、1つまたは複数の気象セルにおける気象前線の検出を利用するようにトレーニングされた予測モデルを実現することである。
【0010】
セルが現在のセルと近接しているといわれるのは、このセルが、一般的な予報を取得することできる同じ気象区域に所属する場合であり、かつこのセルを、現在のセルから隔てる間隔が閾値を下回る場合である。例えば、近接セルは、隣り合っているセルであるか、またはそうでなければ、現在のセルから1つまたは複数の別のセルだけ隔てられているセルである。
【0011】
したがって上記の方法により、第2の車両の位置における気候条件が予測可能である。当然のことながら、この予測は、第1の車両を含めた複数の第2の車両に送信可能である。例えば、この予測は、気象区域の複数の現在のセルについて行われた予測によって精度が改善された気象地図の形態で送信可能であり、この気象区域の近傍においてまたはこの気象区域において移動する複数の車両に送信または供給可能である。
【0012】
特定の一実装形態によれば、上記の方法には、目標気象セルに関連付けられた予測モデルをトレーニングする先行フェーズが含まれ、このトレーニングは、少なくとも以下のステップ、すなわち、
-上記の気象区域に関する一般的気象予報を含む第3データ項目を取得するステップと、
-気象区域の少なくとも1つの第1セルにおける気象条件の変化であって、第1セルを移動する車両の少なくとも1つのセンサによって第1時点に検出される変化に関する第4データ項目を取得するステップと、
-少なくとも第3データ項目および第4データ項目を有する特性ベクトルに基づき、かつ気象区域の目標気象セルにおいて第2時点に取得される気象観察に関する目標データ項目に基づいて、予測モデルをトレーニングするステップと、を有する。
【0013】
したがって、上記の提案は、セルを含む領域についての一般的な気象予報に基づき、かつ現在のセルを移動する車両によって検出される気象条件の変化に関するデータ項目に基づき、特定のセルにおける気象条件を予測する予測モデルをトレーニングすることである。気象条件の変化に関するデータ項目には、車両が1つのセルを移動中にこの車両によって連続して検出される少なくとも1つの第1気象条件および第2気象条件が含まれている。このようなデータ項目により、例えば、雨の降っていない区域と雨の降っている区域との境界を定める降雨前線のような気象前線を特徴付けることができる。したがって上記のトレーニング方式により、このような気象前線の特性、一般的な気象予報と、地理的区域の少なくとも1つの別のセルにおいて実際に記録された目標気象条件との間の相関が確立可能である。
【0014】
第1セルにおける気象条件の変化の検出および第2セルにおける気象観測は、単一の車両により、または異なる車両によって行うことができる。
【0015】
特定の一実装形態によれば、モデルをトレーニングするためのベースである第3データ項目、第4データ項目および目標データ項目は、持続時間があらかじめ定められた閾値を下回る同一の1つの時間窓内の時点に関係している。
【0016】
時間範囲を狭くすることにより、第1セルにおける気象条件の変化と、第2セルにおいて観測される気象条件との間のより良好な相関が確立可能である。これにより、予測の信頼性が向上する。
【0017】
特定の一実施形態では、上記の方法は、気象条件の変化に関するデータ項目に少なくとも、
-車両の少なくとも1つの装置要素の第1起動状態と、
-車両の少なくとも1つの装置要素の第2起動状態と、
-車両の移動の方向と、
が含まれる方法である。
【0018】
この提案は、車両の装置要素の起動、停止またはより一般的には状態の変更に基づく気象条件の変化を特定するためのものである。これにより、車両の標準的な装置要素を使用して、気象前線の特性か間接的に特定可能である。
【0019】
検出を実行した車両の移動方向により、その向きについて情報が提供されることによって、気象前線のより優れた特徴付けが可能になる。このようなデータ項目により、モデルにおける相関が強化されることによって、予測を向上させることができる。
【0020】
特定の一実装形態によれば、この方法は、第1起動状態および第2起動状態が、以下のリスト、すなわち
-車両のフロントガラスワイパ、
-車両のヘッドランプ、
-車両のレインセンサ、
-マイクロフォン
-温度計
にある装置要素の中から選択される、車両の少なくとも1つの装置要素に関係する方法である。
【0021】
したがって車両の第1起動状態および第2起動状態は、フロントガラスワイパに関係していてよい。フロントガラスワイパが、第1の停止状態にあり、次に第2の起動状態にあり、またはこの逆にあるという事実により、車両が気象前線を通過しているという推測を行うことができる。同様に、車両のヘッドランプのスイッチオンもしくはスイッチオフまたはレインセンサの状態により、車両が直面する気象条件が変化したことを推測することができる。いくつかの車両は、車両の表面状態を特定するために、車両の走行ノイズを分析できるようにする外部マイクロフォンを装備していてよい。このようなマイクロフォンの状態によっても、車両が気象前線を通過していることを推測することができる。別の一実施例によれば、温度計によって測定される外気温の突然の変化も、気象条件の変化を推測するために使用可能である。
【0022】
別の一態様によれば、本発明は、複数の気象セルに分割される少なくとも1つの気象区域にわたって延在する道路網における特定の位置の気象条件を予測する装置に関し、この装置は、通信インタフェース、メモリおよびプロセッサを有し、プロセッサおよび通信インタフェースは、メモリに記録されている命令によって以下のステップ、すなわち、
-上記の気象区域についての一般的な気象予報に関する第1データ項目を気象予報プロバイダから取得するステップと、
-第1気象セルを移動している第1の車両から、この車両の少なくとも1つのセンサによって検出される気象条件の変化に関する第2データ項目を受信するステップと、を実現するように構成されている。
【0023】
上記の予測装置は、プロセッサおよび通信インタフェースがさらに、以下のステップ、すなわち、
-少なくとも第1データ項目および第2データ項目に予測モデルを適用することにより、少なくとも1つの第2気象セルについての気象条件の確率を予測するステップと、
-少なくとも1つの第2の車両に予測された気象条件を送信するステップと、を実現する、メモリに記録されている命令によって構成される点が特徴である。
【0024】
特定の一実施形態によれば、上記の装置は、プロセッサおよび通信インタフェースがさらに、メモリに記録されておりかつ少なくとも以下のステップにしたがって予測モデルの事前トレーニングを実現するのに適した命令によって構成されている装置であり、上記のステップは、
-上記の気象区域に関する一般的な気象予報を含む第3データ項目を取得するステップと、
-気象区域の少なくとも1つの第1セルにおける気象条件の変化であって、第1セルを移動する車両の少なくとも1つのセンサによって第1時点に検出される変化に関する第4データ項目を取得するステップと、
-少なくとも第3データ項目および第4データ項目を有する特性ベクトルに基づき、かつ気象区域の少なくとも1つの第2気象セルにおいて第2時点について取得される気象観察に関する目標データ項目に基づいて、予測モデルをトレーニングするステップと、である。
【0025】
本発明はまた、上で説明した予測装置を有するサーバに関する。
【0026】
さらに別の一態様によれば、本発明は、コンピュータプログラム命令がプロセッサで実行される場合に上で説明した予測方法のステップを実現するように構成されているコンピュータプログラム命令を含むデータ媒体に関する。
【0027】
データ媒体は、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリまたは光ディスクのような不揮発性データ媒体であってよい。
【0028】
データ媒体は、命令を記憶することができる任意のエンティティまたはデバイスであってよい。例えば、媒体には、記憶手段、例えばROM、RAM、PROM、EPROM、CD ROM、またはそうでなければ磁気記録手段、例えばハードディスクが含まれていてよい。
【0029】
さらに、データ媒体は、電気ケーブルもしくは光ケーブルを介し、無線により、または他の手段により、伝送可能な電気信号もしくは光信号のような伝送可能媒体であってよい。
【0030】
択一的には、データ媒体は、プログラムが組み込まれている集積回路であって、当該の方法の実行、または実行における使用に適している集積回路であってよい。
【0031】
上述のさまざまな実施形態および実装の特徴は、独立してまたは互いに組み合わせて、予測方法のステップに加えることが可能である。サーバおよび装置は、少なくとも、これらが関連する方法によって与えられた利点と類似の利点を有する。
【0032】
本発明の別の特徴および利点は、以下の説明を読むことにより、より明確になろう。この説明は、純粋に説明的なものであり、添付の図面を参照して読まれなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】特定の一実施形態による予測方法を実現するのに適した環境の図である。
図2a】車線の集合から成る道路網を有する気象区域を示す図である。
図2b】複数の気象セルに分割された図2aの気象区域と、車両が移動する道路区画とを示す図である。
図3】特定の一実施形態による予測方法の主要なステップを示すフローチャートである。
図4a】道路区画が延在する複数の気象セルと、それぞれのセルに関連付けられた降水の起こり易さとを示す図である。
図4b】道路区画が延在する複数の気象セルと、それぞれのセルに関連付けられた降水の起こり易さとを示す別の図である。
図4c】道路区画が延在する複数の気象セルと、それぞれのセルに関連付けられた降水の起こり易さとを示すさらに別の図である。
図4d】道路区画が延在する複数の気象セルと、それぞれのセルに関連付けられた降水の起こり易さとを示すさらに別の図である。
図4e】道路区画が延在する複数の気象セルと、それぞれのセルに関連付けられた降水の起こり易さとを示すさらに別の図である。
図5】特定の一実施形態による予測装置の概略図である。
【0034】
詳細な説明
図1には、道路区画101を移動する車両100が示されている。車両100は、通信バス、例えばCAN(controller area network)バスによって複数のセンサが接続されている電子命令ユニット(ECU:electronic command unit)を有する。命令ユニットはさらに、車両がサーバ107とメッセージを交換できるようにする通信インタフェース104に接続されている。一実施例として、これは、セルラアクセスネットワーク106によって通信ネットワーク105への接続を設定するのに適した2G、3G、4G、5G、WiFiまたはWiMaxネットワークインタフェースである。したがって、命令ユニットは、さまざまなセンサからデータを取り込み、httpのような適切な伝送プロトコルによって送信されるメッセージ、例えばjson(JavaScript object notation)メッセージにおいて、サーバ107にこれらのデータを送信することができる。
【0035】
車両100のセンサは、命令ユニットが、車両のさまざまな装置要素、例えば、車両のフロントガラスワイパ102またはフォグランプ103などの起動状態を特定し、このような起動または停止情報をサーバ107に転送できるようにする。車両100は、この車両が移動している区域における気象条件を特定できるようにする別のタイプのセンサ、例えば、マイクロフォン、温度計またはレインセンサを有していてよい。
【0036】
車両はまた、GNSS(global navigation satellite system)タイプの位置特定装置を有しており、これにより、電子命令ユニットは、車両の位置およびグローバル基準座標系におけるその向きを知ることができる。したがって位置特定装置は、命令ユニットが、車両の移動の方向と共に、車両の経度および緯度を取得し、通信インタフェース104を介して適切なメッセージでサーバ107にこの情報を転送できるようにする。
【0037】
サーバ107は、車両100のような車両からデータを受信するのに適した処理サーバである。このためにサーバは、プロセッサと、プロセッサによる実行に適した命令を記憶するメモリとを有する。サーバはさらに、ネットワークインタフェース、例えばイーサネットインタフェースを有しており、これにより、サーバは、通信ネットワーク105に接続可能であり、車両100または別のサーバのような他の装置とメッセージを交換可能である。
【0038】
特に、サーバ107は、気象予報サーバ108とメッセージを交換することができる。サーバ108は、例えば、気象予報プロバイダのサーバである。したがって、例えば地理的区域の識別子を含む特定の要求をサーバ108に送信することにより、サーバ107は、この地理的区域についての気象予報が受信可能である。このような気象予報には、例えば、発生するさまざまな気象事象の確率、例えば、降水のタイプに関連付けられた降水の確率が含まれる。例えば、サーバ108は、サーバ107の要求に応じて、1キロメートルのオーダの寸法の地理的区域についての15分の気象予報を提供する。
【0039】
図2aには、特定の地理的区域にわたって延在する道路網の地図200が示されている。この地図に示されている区域は、例えば、一辺が800メートルの正方形に対応する。この道路網には、複数の道路区画201~203が含まれており、1つの道路区画は、2つの交点によって画定される道路の区分に対応する。図2aに示された区域は、例えば、サーバ107によって問い合わせがなされる場合に、サーバ108が15分の降水予報を提供可能な気象区域に対応する。これらの予報は、例えば、この区域において発生する「雨」タイプの気象事象の確率である。予報は、この区域一般について提供されるため、この区域を通る道路網における特定の位置の雨の確率を正確に特定することができない。
【0040】
図2bには、気象区域が複数の気象セルA1~H8にさらに細分化されている同じ地理的な地図が示されている。これらのセルの寸法は、例えば、辺毎に約100mのオーダである。図2Bには、この気象区域の道路網を移動している複数の車両205も示されている。例えば、セルE3では1つの車両が区画203を右に移動しており、セルB4に示されている別の1つの車両は、区画202を移動している。例えば、これらは、図1に関連して描画されている車両100のような車両であり、これらの車両は、車載センサからまたは装置要素からデータ、特に、車両の装置要素の起動状態の変化に関するデータをサーバ107転送するのに適している。最後に地面には複数の測候所204がセルF3およびB7に示されており、これらの測候所は、気象観測を行いかつこれらの観測を処理サーバ107のようなサーバに転送するのに適している。これらの測候所により、測候所の位置における気象観測、例えば、降水のレベルおよび/またはタイプ、または温度のサーバへのアップロードが可能になる。このような観測をアップロードする別の手段も考えられ、例えば、セルを移動する車両のセンサ、レインセンサ、外部温度計またはフロントガラスワイパを起動するためのセンサなどが、特定の位置における気象観測をサーバにアップロードするために使用可能である。これらの観測により、気象区域の特定のセルにおける気象条件についてのグランドトゥルースがサーバ107に提供可能である。
【0041】
以下では図3を参照して予測方法を説明する。
【0042】
特定の一実装形態では、この方法には、事前学習のフェーズが含まれ、この事前学習のフェーズ中には、セルを含む区域についての気象予報に基づき、かつ1つまたは複数の車両によって送信されたデータに基づき、気象区域の1つまたは複数の上記のセルについての気象条件を予測する予測モデルがトレーニングされる。
【0043】
学習フェーズには、第1ステップ300が含まれ、第1ステップ300中、サーバ107は、区域200についての気象予報PREV1を受信するために気象予報サーバ108に問い合わせる。例えば、これらのような予報は、特定の気象区域についてのさまざまな気象条件に関連付けられた確率に対応する。例えば、これらは、雨、雪、霧、温度などの確率であってよい。サーバ107は、担当区域のさまざまな気象区域についての最新の確率を、例えば15分毎に取得するために定期的にサーバ108に問い合わせ可能である。サーバ108には、適切な通信プロトコル、例えばhttpにしたがって要求を送信することによって問い合わせることができ、この要求には、例えば、予報が要求される地理的区域の、ジオハッシュによって識別される識別子が含まれる。サーバ108からの応答は、区域についての利用可能な予報を含む、JSON形式のメッセージから構成されていてよい。
【0044】
特定の一実装形態によれば、サーバ107はさらに、サーバ108から気象履歴を取得し、この履歴には、あらかじめ定められた移動時間窓、例えば、過去の4時間についての観測および次の2時間についての予報を含む6時間窓についての観測および/または予報が含まれている。
【0045】
ステップ301では、サーバ107は、道路区画を移動する少なくとも1つの車両から、特定の位置において直面した少なくとも1つの気象条件に関する第1データ項目OBS1を受信する。経度および緯度の形態で提供されるこの位置に基づき、サーバ107は、少なくとも1つの気象条件が観察された第1気象セルを決定する。サーバ107は、その通信インタフェースを介してデータOBS1を受信する。受信されるデータは、例えば、JSON形式にしたがってメッセージに整形されており、このJSON形式には、気象条件に関するデータの他に、この気象条件が観測された地理的位置が含まれている。これらのデータは、例えば、図2bのセルB4およびE3に位置している車両205によって送信される。
【0046】
特定の一実施形態によれば、データOBS1には、例えば、車両の外部温度センサによって取得される温度、またはレインセンサによって検出される降水の強さのような車両のセンサからのデータが含まれる。
【0047】
特定の一実装形態では、データOBS1には気象条件の変化に関する指示(indication)が含まれる。気象条件の変化に関する指示には、例えば、車両の装置要素の起動または停止、例えば、フロントガラスワイパの起動、停止または速度の変更、ヘッドランプ、例えばフォグランプの起動または停止に関するデータ項目が含まれる。このような装置要素の起動状態の変化により、気象前線、すなわち、例えば、雨または濃霧の層の区域に進入するまたはここから退出する車両を位置特定することができる。
【0048】
別の特定の一実施形態によれば、データOBS1にはさらに、車両が移動している方向が含まれる。方向のデータ項目は、例えば、車両に搭載されている磁気計タイプのセンサによって特定され、またはそうでなければGNSSタイプの受信機によって取得される連続位置に基づいて特定される。車両の装置要素の起動または停止に関するデータ項目に関連付けられた車両の方向により、雨または濃霧の層の区域が延在する方向が特定可能である。
【0049】
したがって、好ましい一実施形態では、車両により、例えばCAN(controller area network)バスを介して、この車両のヘッドランプまたはフロントガラスワイパが起動されていることが検出されると、この車両は、その位置およびそれが移動している方向と共に、対応する情報をサーバ107に送信する。このようにして、車両が降雨の区域に進入すると、サーバ107は、例えば、フロントガラスワイパの第1の「起動」状態と、第2の「停止」状態と、状態の変化の地理的位置と、車両の移動の方向とを含む情報を受信する。この情報により、サーバは、気象前線のタイプ、位置および向き、すなわち、異なる気象条件間の移行部の位置および向きを特定することができる。
【0050】
ステップ302では、サーバにより、気象区域の少なくとも1つの第2セルに関する気象観測OBS2を受信する。この気象観測OBS2は、複数の固定式測候所204の1つにより、または気象観測を送信するのに適した移動する車両、例えば複数の車両205の1つにより、送信されることが可能なグランドトゥルースを構成する。観測OBS2はまた、ユーザにより、例えば携帯端末を用いて、または別の任意の手段(画像解析装置に関連付けられたカメラ、信号分析装置に関連付けられたマイクロフォン)により、シグナリングされてもよい。第2セルは、第1セルに近接するセルであり、例えば、同じ気象区域に所属するセルであり、このセルは、第1セルに接触しているかまたは1つまたは複数の中間セルによって第1セルから隔てられている。図2bを参照すると、セルF3およびB7は、セルE3およびB4にそれぞれ近接している。
【0051】
好ましくは、ステップ301において第1セルについて取得した第1データ項目OBS1と、ステップ302において、第1セルに近接する第2セルについて取得した第2データ項目OBS2とは、同一の1つの時間窓内にある観測時点に対応し、この時間窓の持続時間は、あらかじめ定められた閾値を下回り、例えば、15分の閾値を下回る。一変形形態として、この閾値は、第1セルと第2の近接セルとを隔てる間隔にしたがって適応的であってよくかつ変化してよい。例として、第1セルと第2セルとを隔てる間隔が大きいほど、対応する観測を含む時間窓の持続時間は短くなる。言い換えると、時間窓の持続時間は、考慮中のセルを隔てる間隔に反比例する。
【0052】
ステップ303では、サーバ107により、ステップ300において気象区域について取得された一般的な気象予報に関する第1データ項目PREV1と、第1セルにおいて車両205によって観測された気象条件に関連しかつステップ301において取得された第2データ項目OBS1と、ステップ302において気象区域の少なくとも1つの第2気象セルについて取得された気象観測に関する目標データ項目OBS2とを少なくとも有する少なくとも1つの特性ベクトルを作成する。このようにして構成されるベクトルは、適切な教師付き学習技術を使用して、ステップ302においてグランドトゥルースが取得されたセルに関連付けられた特定の予測モデルをトレーニングするために使用される。当然のことながら、特定のセルに関連付けられた予測モデルは、さまざまな位置において複数の車両によって送信されたデータを含む複数の特性ベクトルによってトレーニング可能である。
【0053】
特定の一実施形態では、特定の予測モデルは、気象区域のそれぞれのセルに関連付けられており、それが関連付けられたセルにおける気象条件を予測するためにトレーニングされる。
【0054】
したがって、図2bのセルF3に関連付けられた予測モデルは、第1特性ベクトル基づいてトレーニング可能であり、この第1特性ベクトルは、気象区域一般について予報でありかつ例えばサーバ108から取得される特定の気象条件の確率を表す値Pzと、セルE3の車両205によって観測される気象条件または気象条件の変化を表す値Po(E3)と、セルE3の識別子と、例えば、測候所204またはセルF3を移動する車両によって送信される、セルF3に関する気象観測Pc(F3)と、によって構成される。
【0055】
またセルF3に関連付けられた上記のモデルは、複数の第2特性ベクトルに基づき、例えば第2ベクトルに基づいてトレーニング可能であり、この第2特性ベクトルは、気象区域一般について予報でありかつ例えばサーバ108から取得される特定の気象条件の確率を表す値Pzと、セルB4の車両205によって観測される気象条件または気象条件の変化を表す値Po(B4)と、セルB4の識別子と、例えば、測候所204またはセルF3を移動する車両によって送信される、セルF3に関する気象観測Pc(F3)と、によって構成される。
【0056】
このようなトレーニングにより、セルF3に関連付けられたモデルは、考慮中の気象区域についての気象予報PREV1と、特定のセルにおいて観測される第1気象条件OBS1(好ましくは気象条件の変化)と、目標セルにおいて観測される第2気象条件OBS2との間の相関を確立することができる。気象区域のそれぞれのセルに関連付けられた予測モデルについてトレーニングを繰り返すことにより、考慮中の気象区域の特定の目標セルにおける気象条件を正確に予測するようにトレーニングされたシステムが得られる。
【0057】
好ましい一実装形態では、車両205によって特定のセルにおいて観察される気象条件または気象条件の変化を表す値Poは、この特定のセルに関連付けられた予測モデルをトレーニングするためのグランドトゥルースとして使用されることにさらに留意されたい。
【0058】
予測フェーズと称される第2フェーズでは、現在のセルを移動する車両によって送信されたデータに基づき、また選択的には近接セルについて行われた予測に基づき、目標セルにおける気象条件PREDを予測するために、トレーニングされた予測モデルが使用される。
【0059】
このためにこの予測方法は、この気象区域についての一般的な気象予報に関するデータ項目PREV2を気象予報プロバイダから取得するステップ304と、第1気象セルを移動する第1の車両から、この車両の少なくとも1つのセンサによって検出される気象条件の変化に関するデータ項目OBS3を受信するステップ305とを有する。ステップ304および305は、上述したステップ300および301に対応し、またステップ304および305により、ステップ300および301に関連して上述したデータが取得可能になる。
【0060】
ステップ306では、サーバ107により、少なくとも1つの現在の気象セルについての気象条件の確率の予測PREDを取得するために、この気象セルについての少なくとも1つの予測モデルを推測する。このために、サーバ107は、予報サーバ108から取得したデータ項目PREV2と、現在のセルに近接するセルを移動する車両によって送信されるデータ項目OBS3と、データ項目OBS3が関連しているセルの識別子とを少なくとも含む特性ベクトルを作成する。特定の一実装形態では、データ項目OBS3は、現在のセルに近接するセルについてあらかじめ行われた予測の結果である。
【0061】
特定の一実施形態では、予測される条件は、気象前線である。この場合、モデルをトレーニングするために、また予測を行うために使用される特性ベクトルは、特定のセルにおける気象前線の存在に関する指示を含んでいてよい。このような構成は、例えば、現在のセルに東西の前線が検出される場合、同じタイプでありかつ同様に向き付けられた前線が、現在のセルの北または南に位置するセルにおいて存在する確率が高いという事実を利用している。
【0062】
最後にこの方法は、予測された気象条件を少なくとも1つの第2の車両に送信するステップ307を有する。この送信は、例えば、考慮中の気象区域の少なくとも1つのセルについて行われた予測を含む気象地図の形態で行われる。
【0063】
このような方法により、特に、寄与する複数の車両が道路網を移動している場合には、特に正確な気象地図を得ることができる。
【0064】
したがって、気象条件の変化を検出する車両からの指示をサーバ107が受信すると、サーバは、条件の変化が検出されるセルに近接する一連のセルについての予測を更新する。これらの新たな予測は、気象地図を更新し、かつステップ307において少なくとも1つの車両に更新されたこの地図を送信するために、気象区域の別のモデルを段階的に推測するのに使用される。このような地図により、例えば、車両の装置要素を設定するためにかつ/またはユーザに警告するために、降雨前線または濃霧の層の位置を車両に正確に伝えることができる。例えば、このような地図により、車両は、濃霧の層が近づくと自動的にフォグランプをスイッチオンすることできるか、またはそうでなければ音響的または視覚的なメッセージによって、運転者が速度を調整できるようにこの運転者に警告することができる。
【0065】
以下では、図4a~図4cを参照して、この方法の実装形態の別の一実施例を説明する。この実施形態の特徴は、上で説明した実施形態と組み合わせ可能である。
【0066】
図4a~図4cには、気象区域における単一の主要な道路401が、車両410と共に簡略化されて示されており、この気象区画は、道路区画401が通りかつA~Gと記された気象セルから成る集合400に分割されており、車両410の特徴は、図1に関連して前に説明した車両100のそれと同様である。
【0067】
サーバ107には、データベースが含まれており、このデータベースではそれぞれの気象セルA~Gが、気象事象の少なくとも1つの確率に関連付けられている。したがってこのデータベースには、それぞれのセルA~Gについて、雨の確率、霧の確率、薄氷の確率など、またはそうでなければ特定の気象前線が存在する確率が含まれている。これらの確率は、気象予報プロバイダから取得される予報に基づき、また利用可能であれば、車両410などのような移動する車両によって送信される観測に基づいて定期的に更新される。車両からの観測がない場合、確率は、考慮中の気象区域についての気象予報プロバイダの予報に基づいて特定される。したがって図4aでは、車両からのデータ項目がない場合、それぞれのセルA~Gに関連付けられた太陽によって表されている乾いた気象の確率は、気象予報プロバイダによって提供される予報に基づいて決定される。
【0068】
図4bを参照すると、ここでは、車両410は引き続いて、セルCの方向にセルBを移動しており、雨の区域に進入すると仮定される。この区域に進入すると、運転者により、または車両のレインセンサによって自動的にセンサ車両410フロントガラスワイパが起動される。次に、フロントガラスワイパの起動に関する情報および/またはレインセンサによる雨検知の情報は、車両410によって適切なメッセージでサーバ107に送信される。したがってこのメッセージには、車両の位置、例えばその緯度およびその経度、車両が移動する方向、および気象観測の特性、例えばフロントガラスワイパの起動の指示が含まれる。
【0069】
このメッセージを受信すると、サーバ107は、メッセージに含まれている位置に基づいて、車両が移動しているセルを特定し、このセルに関連付けられた雨の確率を更新する。したがって、車両410によって「雨」の観測が送信されると、セルBにおける雨の確率が増大する。セルBにおいて雨が降っているというこの確率は、雲によって表されている。更新されたこの確率は、サーバ107によってデータベースに記憶される。
【0070】
更新された雨のこの確率とは別に、サーバ107はまた、車両によって送信された気象観測の特性もデータベースに記憶する。特に、サーバ107は、車両によって送信されたデータに基づいて気象前線の特性を記憶する。例として、車両100によって送信されたメッセージを受信すると、サーバは、セルBにおいてフロントガラスワイパが起動された位置に、西から東に向かって「乾いた天気」から「雨の天気」への移行部が存在することを特定して記憶する。車両によって送信されたデータのタイプに応じて、サーバは、別のタイプの気象前線、例えば、フォグランプの起動または停止に基づいて濃霧の層の始まりもしくは終わり、または温度の変化に基づいて薄氷のリスクのある区域の始まりもしくは終わりなどを特定可能である。したがって気象前線が検出されるセルについて、サーバは、前線の向きを表す第1の値と、移行の性質をもらわす第2の値とを記憶することができる。
【0071】
図4bでは、セルBにおいて車両100に検出される降雨前線は、雨の区域を表す、陰影が付けられた半分のセル402と、乾いた区域についての明るい半分のセル403とによって示されている。
【0072】
データベースにおいて、セルBに関連付けられたデータが更新されると、サーバ107は、近接セルAおよびCに関連付けられた気象条件の確率を更新する。
【0073】
特定のセルにおける「雨」タイプの気象事象の確率を更新するために、サーバ107は、この特定のセルに関連付けられておりかつあらかじめトレーニングされた予測モデルを使用し、この特定のセルが位置している気象区域についての、気象予報サービスから取得した一般的な気象予報に基づき、またこの特定のセルに近接するセルにおいて検出された気象前線の特性に基づき、この特定のセルにおける「雨」気象事象の確率を予測する。
【0074】
したがって、セルCにおける雨の確率を予測するために、サーバ107は、このセルが属するゾーンについての、予報サーバ108から取得した少なくとも気象予想に基づき、また車両410によって送信されたセルBについて気象特性に基づき、セルCに関連付けられた予想モデルを推測する。当然のことながら、サーバは、別のパラメータ、特に、セルCに近接する別のセルに関連付けられた、例えばセルDに関連付けられた気象前線の確率または特徴を考慮することができる。
【0075】
特定のセルに関連付けられた予測モデルは、例えば、区画401について収集されたデータに基づいて、教師付き方式でトレーニングされる人工ニューラルネットワークである。これらのトレーニングデータには、少なくとも、以下、すなわち、
-予測が行われるセルが位置している地理的区域についての、プロバイダから取得される気象予報および/または履歴、
-予測が行われるセルに近接する少なくとも1つのセルにおいて検出される気象前線の特性、および
-学習目標、すなわち、例えば、地上の測候所から、または別の任意の適切な手段によって取得される、考慮中のセルにおける気象観測が含まれる。
【0076】
当然のことながら、これらのトレーニングデータは、平均または自乗を取るなどのように静的なツールを使用して処理可能であり、これにより、静的な特徴を強調し、学習目標との最善の相関を確立することができる。さらに、例えば1つまたは複数の近接セルについて行われた予測のような、またはそうでなければ、考慮中のセルを通る1つまたは複数の道路区画における車両の平均速度などの交通データのような他のトレーニングデータが使用可能である。
【0077】
このような予測モデルをセルCに適用することにより、サーバは、セルCにおいて「雨」の事象が進行している確率が、乾いた気象の確率よりも高いことを特定する。その理由は、セルBにおいて検出される左から右への降雨前線により、雨の事象が近接セルCに広がることが確実視されるためである。この予測の結果は、図4cのセルCにおいて陰影が付けられた区域404によって表されている。このようにして特定される、セルCについての確率は、サーバ107のデータベースに記憶され、図4cのセルCに関連付けられた雲によって表され、またこの気象区域についての一般的な予測の代わり、他の近接セルについての予測についての変数として使用可能である。
【0078】
この段階において、サーバ107は、このようにして更新された気象事象確率に基づいて地図を構成または更新することができ、またこの地図を少なくとも1つの車両に送信することができる。更新された地図を取得するために、車両は、この地図が記憶されているダウンロードサーバにメッセージ、例えば、関連する地理的指示、例えば車両の位置を含むメッセージを送信する。このようなメッセージを受信すると、サーバは、地図を車両に送信する。
【0079】
図4dには、セルA~Gにわたって延在する同じ道路区画401が示されている。車両410は、この区画上を移動しており、現在はセルFを移動している。この例では、サーバ107は、上記の第1セルにおいて車両が直面した新たな気象条件に関するデータを含む、車両410からの新たなメッセージを受信する。この例では、車両410のフロントガラスワイパの停止と、車両の位置および方向とに関するデータ項目がメッセージに含まれている。サーバ107は、これを使用し、雨の区域から乾いた区域にわたっていく車両によって特徴付けられる第2の前線が存在することを導き出し、この情報をそのデータベースに記憶し、セルFについての「雨」の事象の確率を更新し、少なくとも1つの近接セルについて、例えばセルEおよびGについての予測を、これらのセルのそれぞれに関連付けられた予測モデルに基づいて予測を行う。この例では、この領域についての一般的な気象予報および/または前に更新された、これらのセルについての確率に基づき、またセルFにおいて検出された気象前線の特性に基づき、すなわち前線の移行のタイプおよび向きに基づき、サーバにより、セルEでは「雨」の事象が「乾いた」事象よりも確実視されるが、セルGでは「乾いた」事象が「雨」の事象よりも確実視されることが特定される。このサーバは、対応するセルに関連して、これらの新たな確率をそのデータベースに記憶する。図4dの陰影が付けられた区域405および406は、「雨」の事象が確実視される新たな区域を表す。
【0080】
近接セルB、C、EおよびFについての更新された確率に基づき、セルDに関連付けられたモデルを推測することにより、サーバは、図4eに示されたセルDについての雨の新たな確率を予測することができる。したがってこの方法により、区画401の雨の区域を正確に特定することができる。
【0081】
図5は、本発明の特定の一実施形態による予測装置500の概略図である。
【0082】
装置500は、記憶空間502、例えばメモリMEMと、例えばプロセッサPROCを備えた処理ユニット501とを有する。処理ユニットは、プログラム503、例えばコンピュータプログラムPGRによって制御可能であり、このプログラム503により、特定の一実施形態による予測方法が実現され、特に、気象予報プロバイダから上記の気象区域についての一般的な気象予報に関する第1データ項目PREV2を取得するステップと、第1気象セルを移動する第1の車両から、この車両の少なくとも1つのセンサによって検出される気象条件の変化に関する第2データ項目OBS3を受信するステップと、少なくとも第1データ項目PREV2および第2データ項目OBS3に、目標セルに関連付けられた予測モデルを適用することによって少なくとも1つの目標気象セルについての気象条件の確率PREDを予測するステップと、少なくとも1つの第2の車両に、予想された気象条件PREDを送信するステップとが実現される。
【0083】
特定の一実装形態では、コンピュータプログラムPGRの命令はさらに、上記の気象区域に関する一般的な気象予報を含む第3データ項目PREV1を取得するステップと、この気象区域の少なくとも1つの第1セルにおける気象条件の変化であって、第1セルを移動する車両の少なくとも1つのセンサによって第1時点に検出される変化に関する第4データ項目OBS1を取得するステップと、少なくとも第3データ項目PREV1および第4データ項目OBS1を含む特性ベクトルに基づき、また気象区域の目標気象セルにおいて第2時点に取得される、気象観測に関する目標データ項目OBS2に基づいて、予測モデルをトレーニングするステップと、を実現することにより、特定の気象セルに関連付けられた予測モデルをトレーニングするように構成されている。
【0084】
装置500の初期化の際、コンピュータプログラム503の命令は、処理ユニット501のプロセッサによって実行される前に、例えば、RAM(random access memory)にロードされる。処理ユニット501のプロセッサにより、コンピュータプログラム503の命令にしたがい、予測方法のステップが実現される。
【0085】
このために、メモリおよびプロセッサを別にして、装置500は、通信手段504、例えばイーサネットネットワークインタフェースを有し、これにより、このデバイスは、通信ネットワークを介して他の装置とメッセージを交換でき、特に、特定の地理的区域についての予報および/または予報履歴を取得するために気象予報サーバに要求を行うことができ、道路網を移動する車両とデータを交換でき、特に、車両および/または地上の測候所から気象観測を受信でき、気象セルに関する気象予測を車両に送信できる。
【0086】
特定の一実装形態では、装置500はさらに、予測モデル508をトレーニングするのに適したトレーニングモジュール505を有する。この予想モデルは、例えば、装置のメモリ502に記録されているコンピュータプログラム命令によって実現される人工ニューラルネットワークである。トレーニングモジュール505は、例えば、図3を参照して上で説明された予測方法のステップ300~303を実行するように構成されている命令によって実現される。上記の装置は、気象区域の複数のセルのそれぞれに関連付けられた複数のニューラルネットワークを含んでいてよい。
【0087】
装置500は、特定のセルにおける気象条件を予測するのに適した予測モジュール507を有する。モジュール507は、例えば、メモリ502に記録されているコンピュータプログラム命令によって実現され、これらがプロセッサ501によって実行される場合に予測方法のステップ304~307を実現するように構成されている。
【0088】
最後に、特定の一実施形態では、装置500は、モジュール506を有し、このモジュール506は、予報サーバおよび/または車両から取得した観測および予報に少なくとも1つの統計処理を実行し、予測モデルをトレーニングして気象情報を予測するためにこれらのデータに基づいて特性ベクトルを作成するのに適している。モジュール506は、例えば、メモリ502に記録されているコンピュータプログラム命令によって実現される。
【0089】
特定の一実装形態によれば、装置500は、処理サーバに組み込まれている。
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5
【外国語明細書】