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特開2022-32047加熱可能なカバーガラスを有する自動車用照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032047
(43)【公開日】2022-02-24
(54)【発明の名称】加熱可能なカバーガラスを有する自動車用照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/60 20180101AFI20220216BHJP
   H05B 3/84 20060101ALI20220216BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20220216BHJP
   F21V 23/04 20060101ALI20220216BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20220216BHJP
   B60S 1/02 20060101ALI20220216BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20220216BHJP
   F21W 103/20 20180101ALN20220216BHJP
   F21W 103/10 20180101ALN20220216BHJP
   F21W 103/35 20180101ALN20220216BHJP
   F21W 103/45 20180101ALN20220216BHJP
   F21W 103/40 20180101ALN20220216BHJP
   F21W 103/15 20180101ALN20220216BHJP
【FI】
F21S45/60
H05B3/84
F21S41/20
F21V23/04 100
F21V23/00 140
F21V23/00 117
B60S1/02 310
F21W102:00
F21W103:20
F21W103:10
F21W103:35
F21W103:45
F21W103:40
F21W103:15
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021129853
(22)【出願日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】10 2020 121 024.8
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521349093
【氏名又は名称】マレリ オートモーティヴ ライティング ロイトリンゲン (ジャーマニー) ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Marelli Automotive Lighting Reutlingen (Germany) GmbH
【住所又は居所原語表記】Tuebinger Str. 123, 72762 Reutlingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クラウス クラッチュマン
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ブライテンバッハ
【テーマコード(参考)】
3D225
3K014
3K034
【Fターム(参考)】
3D225AA04
3D225AB01
3D225AC11
3D225AD12
3D225AG72
3K014AA00
3K034AA02
3K034AA04
3K034AA05
3K034AA16
3K034BB05
3K034BB14
3K034BC03
3K034DA00
3K034HA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自動車用照明装置のカバーガラスの効果的な解氷を実現すると同時に、このことが配光の温度依存性の不所望な局所的変動につながらない、簡単で安価な手段を提供する。
【解決手段】本発明は、カバーガラス12は加熱可能である。可及的に均一なカバーガラス12の加熱を可能にするために、ビームパス19におけるカバーガラス12が、少なくとも1つの導電性材料からなるナノチューブを有する導電層26を備え、少なくとも一時的にこの層26に電圧Uが印加され、それによって、この層26を通って電流Iが通流し、その結果、この層26が一様に加熱され、この層26の熱がカバーガラス12を加熱する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なカバーガラス(12)によって閉じられた光出射開口部(14)を有するハウジング(10)と、
配光を生成しかつ前記カバーガラス(12)を貫通してビームパス(19)に沿って配光を放射するために前記ハウジング(10)内に配置された光モジュール(18)とを含み、
前記カバーガラス(12)は加熱可能である、自動車用照明装置(4)において、
前記ビームパス(19)における前記カバーガラス(12)が、少なくとも1つの導電性材料からなるナノチューブを有する導電層(26)を備え、少なくとも一時的に前記層(26)に電圧(U)が印加され、それによって、前記層(26)を通って電流(I)が通流し、その結果、前記層(26)が一様に加熱され、前記層(26)の熱が前記カバーガラス(12)を加熱する
ことを特徴とする、自動車用照明装置(4)。
【請求項2】
前記ナノチューブの材料は、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、亜鉛、ニッケル、リチウム、白金、チタン、炭素、グラファイトのうちの1つ以上を含む、請求項1記載の自動車用照明装置(4)。
【請求項3】
前記導電層(26)は、球状フラーレンを有する、請求項1または2記載の自動車用照明装置(4)。
【請求項4】
前記導電層(26)は、少なくとも前記カバーガラス(12)の内側または外側の一部に直接平らに被着されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の自動車用照明装置(4)。
【請求項5】
前記導電層(26)は、透明な支持フィルム(34)に被着され、該支持フィルム(34)自体は、少なくとも前記カバーガラス(12)の内側または外側の一部に平らに被着されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の自動車用照明装置(4)。
【請求項6】
前記支持フィルム(34)をその上に被着される前記導電層(26)と共に被着させることは、前記支持フィルム(34)を前記カバーガラス(12)の内側または外側に平らに接着させることを含み、または前記支持フィルム(34)をその上に被着されるナノチューブを有する前記層(26)と共に前記カバーガラス(12)の製造中に射出成形法を用いてプラスチックまたはガラス材料でオーバーモールドまたはインサートモールドすることを含む、請求項5記載の自動車用照明装置(4)。
【請求項7】
前記導電層(26)の電気的接続のために、端子電極(36)が、前記層(26)の異なる箇所に取り付けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の自動車用照明装置(4)。
【請求項8】
前記端子電極(36)を取り付けることは、前記電極(36)を前記導電層(26)に接着することを含む、請求項7記載の自動車用照明装置(4)。
【請求項9】
前記導電層(26)は、好適には前記端子電極(36)を用いて、手動または自動で操作可能なスイッチ(40)または制御器を介して前記自動車の電圧源(38)に接続されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の自動車用照明装置(4)。
【請求項10】
前記導電層(26)には、前記導電層(26)の温度もしくは該温度に依存する変数を測定し、対応する測定信号(46)を出力するセンサ(42)が割り当てられており、前記照明装置(4)には、測定信号(46)を受信し、該測定信号(46)に依存して前記導電層(26)のための電気的駆動制御信号(48)を生成する処理電子機器(44)が割り当てられている、請求項1から9までのいずれか1項記載の自動車用照明装置(4)。
【請求項11】
前記照明装置(4)は、自動車用ヘッドライトとして構成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の自動車用照明装置(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明なカバーガラスによって閉じられた光出射開口部を有するハウジングと、配光(Lichtverteilung)を生成しかつカバーガラスを貫通してビームパスに沿って配光を放射するためにハウジング内に配置された光モジュールとを含み、ここで、カバーガラスは加熱可能である、自動車用照明装置に関する。
【0002】
そのような自動車用照明装置は、例えば、特開平10-109587号公報から公知である。そこでは、自動車用ヘッドライトのカバーガラスの内側または外側に固定された平らな発熱体が提案されている。この発熱体は、ポリカーボネート製の透明フィルムを含み、このフィルム上に、相互に平行に、または蛇行状に導体路が被着されている。発熱体の固定のために、この発熱体は、カバーガラスの製造中に射出成形法を用いて、プラスチックまたはガラス材料でオーバーモールドまたはインサートモールドされる。カバーガラスが導体路の通電によって暖められると、それによって、カバーガラスの内側の結露や外側の氷や雪の堆積物の形態の湿気を除去もしくは防止することができる(いわゆるカバーガラスの解氷または除霜装置)。
【0003】
公知の自動車用照明装置における問題は、カバーガラスがプラスチック(例えば、ポリカーボネート(PC)またはポリメチルメタクリレート(PMMA))で製造され、それと同時に発熱体は、相互に離間された個別の導体路を有している点にあり、それらの導体路は、導体路のすぐ近くのカバーガラスを局所的に暖めることだけにしか作用しない。プラスチックの熱伝導率は比較的悪く、そのため、カバーガラスの温度は、導体路との距離の増加に伴い過度に低下し、したがって隣接する導体路間で急峻な温度勾配(大きな温度勾配)が生じる。ただし、カバーガラスに使用されるプラスチックの屈折率は、温度に強く依存する。このことは、カバーガラスの表面全体にわたる屈折率が、隣接する表面領域間の領域ごとの強い変動または大きな差異の影響下にあることを意味する。つまり、カバーガラスを通過する光は、局所的に異なって屈折する。これは、結果として生じる空間配光の不所望な強い温度依存性の結果となる。要約すれば、このことは、カバーガラス上もしくはカバーガラス内の温度勾配と、その結果として生じるカバーガラスのプラスチック材料の屈折率の局所的な差異とに基づいて、事前設定される目標配光からの配光の不所望な局所的偏差もしくは領域ごとの偏差につながることを意味する。
【0004】
それゆえ、説明した先行技術から出発して、本発明が基礎とする課題は、自動車用照明装置のプラスチック製カバーガラスの効果的な解氷を実現すると同時にこのことが配光の温度依存性の不所望な局所的変動につながらない、簡単で安価な手段を提供することである。
【0005】
この課題を解決するために、請求項1の特徴を有する自動車用照明装置が提案される。特に、冒頭で述べたような形式の自動車用照明装置から出発して、ビームパスにおけるカバーガラスが、少なくとも1つの導電性材料からなるナノチューブ(いわゆるナノ筒状体)を有する導電層を備え、少なくとも一時的にこの層に電圧が印加され、それによって、この層を通って電流が通流し、その結果、この層が一様に加熱され、この層の熱がカバーガラスを加熱することが提案されている。ここでは、ナノチューブを有する導電層は、カバーガラスの内側および/または外側に配置されてよい。
【0006】
層を通流する電流は、ナノチューブの抵抗に当接し、これによって、電気エネルギーが熱に変換される。多数のナノチューブと、層内でのそれらの均一な分布とが、端子電極間の層の特に均一で一様な加熱を保証し、ひいてはカバーガラスの特に均一で一様な加熱ももたらす。したがって、カバーガラスは、加熱された表面全体にわたって実質的に一定の屈折率を有し、空間光分布における変動も防止される。特に、結果として生じる照明装置の配光は、カバーガラスの加熱にもかかわらず、その全体において不変のままであるか、もしくはカバーガラスの加熱された表面全体にわたって場合によってはごく僅かだけ一様に変化する。
【0007】
本発明のさらなる利点は、ナノチューブを有する加熱層が、カバーガラスに直接被着されていることにあり、ヘッドライトハウジング内の他の部品、例えばトリム、反射器、レンズなどではない点に見られる。
【0008】
ナノチューブを有する導電層は、比較的高い透明度を有しており、そのため、特に透明性損失が僅かであることが保証される。これらの透明性損失は、通常、10%をはるかに下回っている。偶発的な透明性損失は、照明装置の設計または動作における適切な手段によって、例えば、より多くの数の光源またはより強力な光源の使用、より大きな電流を用いた光源の動作、光源のPWM駆動制御のオン時間の延長、より大きなもしくはより効率的な光学部品、例えば反射器、遮蔽板などの使用によって補償することが可能である。ナノチューブを含めた層の厚さは、数マイクロメートルにすぎない。この層は、特に軽量である。
【0009】
つまり、本発明では、初めて、ナノチューブの僅かな寸法もしくはナノチューブからなる層の僅かな厚み、層の良好な透明性、ならびに層内のナノチューブの微細で一様な分布の組み合わせが新規な使用目的のために使用される。
【0010】
ナノチューブの材料は、以下の材料、すなわち、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、亜鉛、ニッケル、リチウム、白金、チタン、炭素、グラファイトのうちの1つ以上を含むことができる。もちろん、ナノチューブの材料は、例えば半導体材料(例えば、シリコン、ゲルマニウム、および/またはガリウムヒ素)、またはナノ構造化によって初めて半導体特性または導電性を得られる材料などの他の材料も含むことができる。さらに、ナノチューブの材料は、前述した材料相互の任意の組み合わせ、またはさらに他の材料との任意の組み合わせも含むことができる。
【0011】
ナノチューブは、単層(「single」)、二層(「double」)、三層(「triple」)、または多層(「multi」)の筒状体であってもよい。多層のナノ筒状体(「multi-wall nano tubes」)は、入れ子式になった単層のナノ筒状体からなっている。「カーボンナノチューブ」(「carbon nano tube;CNT」)という用語は、しばしば、多重壁カーボンナノチューブ(「multi-wall carbon nano tubes;MWCNTs」)に関係する。
【0012】
「ナノチューブ」という用語は、本発明の趣旨では、「ナノチューブ」に由来する材料または構造体、例えばナノワイヤ(「Nano-Wires」)またはナノバッド(登録商標)(「Nanobuds」)などを含む。ナノワイヤは、直径が典型的には10~200nm(10-9m)の範囲にあり、長さが5~100μm(10-6m)の範囲にある構造体である。ナノテクノロジーにおいて、カーボンナノバッド(CNB)は、カーボンナノチューブ(「carbon nanotubes」)の他に、炭素の両同素体の球状フラーレンも同じ構造で組み合わせ、ナノ筒状体に固定された「芽」(「Buds」)を形成する材料である。ナノバッドは、カーボンもしくは炭素とは別の材料も含むことができる。
【0013】
つまり、本発明は、例えばカーボンナノチューブ層の形態のほぼ透明なナノチューブ層、またはそこから派生した例えばカーボンナノバッド(CNB)または銀ナノワイヤー(AgNW)を有し、カバーガラスへの特に均一で一様な熱放散を可能にする層であるシステムに関する。この層は、端子電極間で加熱される。好適には、これらの電極は、外側から層を取り囲むように延び、ここで、特に好適には、一方の電極は、層周りの周面の一部を覆い、他方の電極は、周面の他の一部を覆う。このようにして、層全体の特に均一な加熱が可能になる。
【0014】
本発明は、特に、車両支援システム用の機能を装備している、もしくは装備される(例えば、光学センサ、カメラ、LiDARなどを備えた)自動車用ヘッドライトの場合には利点を有する。本発明は、カバーガラス上の湿気、氷、雪、および/または結露を安全にかつ確実に除去し、それによって、悪天候条件下でもカバーガラスの完全な透明性を維持し続けるシステムを提案している。同時に、車両支援システムの正常な機能を損ないかねないカバーガラスの材料の屈折率の不所望な局所的変動には至らない。
【0015】
ここで説明するシステムは、カバーガラスの外側の湿気、氷、および雪、ならびに/または内側の結露膜を除去し、それによって、照明装置内に統合されたセンサが所要のすべての情報を検出できることを確実にすることが可能である。
【0016】
ナノチューブを有する導電層をどのようにカバーガラスに被着して固定させることができるかについては、様々な手段が考えられる。そのため、例えば、導電層もしくはナノチューブを、少なくともカバーガラスの内側および/または外側の一部に直接平らに(flaechig)被着することが考えられるであろう。この目的のために、カバーガラスの本来の製造に続いて、ナノチューブ分散に関連する噴霧法またはナノチューブインクに関連する印刷法を使用することができる。
【0017】
好適には、ナノチューブを有する導電層は、最初に、透明な支持フィルムに被着され、次いで、支持フィルム自体が少なくともカバーガラスの内側または外側の一部に平らに固定される。この支持フィルムは、可撓性であり、好適にはポリカーボネート(PC)からなる。可撓性により、このフィルムは、カバーガラスの異なる形状に、特に2次元領域(円柱形など)または3次元領域(球形など)の曲率に適合可能である。特に、フィルムは、適切な技術を用いて、例えば、熱支援深絞りプロセスを用いて、例えば球面またはトロイダル表面などの立体形状部に被着させることができる。PCの使用によれば、フィルムは、気象条件ならびに化学的もしくは物理的影響に対する耐性を備える。支持フィルムは、好適には、同様に数マイクロメートルにすぎない厚さを有する。
【0018】
支持フィルムをその上に被着される導電層と共にカバーガラスに固定させることは、支持フィルムをカバーガラスの内側または外側に平らに接着させることを含み、または支持フィルムをその上に被着される層と共にカバーガラスの製造中に射出成形法を用いて、カバーガラスを製造するプラスチックまたはガラス材料でオーバーモールドまたはインサートモールドすることを含み得る。支持フィルムをナノチューブ層と共にプラスチックまたはガラス材料でオーバーモールドするために、支持フィルムがナノチューブ層と共に好適には射出成形ツール内に載置され、プラスチックまたはガラス材料でオーバーモールドされる。続いて、ナノチューブ層は、引っかき傷に強いおよび/またはUV耐性のあるコーティング(いわゆるハードコートコーティング)を備えることができる。インサートモールドの場合、好適には、最初に第1のステップにおいて、第1のプラスチックまたはガラス層が射出成形ツールに設けられ、それに次いで支持フィルムがナノチューブ層と共に載置され、次いでこれが第2のステップにおいてさらなるプラスチックまたはガラス材料でインサートモールドされ、それによって、第2のプラスチックまたはガラス層が形成される。
【0019】
本発明の好適な発展形態によれば、導電層の電気的接続のために、端子電極が、層の異なる箇所に、好適には層の反対側に取り付けられることが提案される。これらは、様々なやり方で層に取り付けることができる。例えば、電極を導電層に接着することが考えられる。この目的のために、例えば、自己粘着性の電極を使用することができる。層とは反対側の電極端部は、電圧源、例えば車両バッテリーまたは処理電子機器(ECU)に接続される。この場合、ナノチューブを有する導電層は、車両バッテリーと同じ電圧(例えば12Vまたは24V)で動作すべきであろう。ただし、車両バッテリーの電圧(例えば48V)を、ナノチューブを有する層の動作電圧に逓減変換することも考えられるであろう。
【0020】
特に好適には、導電層は、好適には端子電極を用いて、手動または自動で操作可能なスイッチまたは制御器を介して自動車の電圧源、例えば車両バッテリーに接続されている。そのため、カバーガラスの加熱は、スイッチを用いて手動もしくは自動でスイッチオンおよびスイッチオフすることができるか、または制御器を用いて所望の電流値を印加することができる。自動回路は、カバーガラスの加熱を、他の負荷と一緒に、例えば、室内ヒーター、リアウィンドウヒーター、および/またはフロントウィンドウ用のワイパーと一緒に自動的にスイッチオンもしくはスイッチオフするか、または対応する電流値を印加することができよう。カバーガラスの加熱のスイッチオフは、時間遅延させて行うことができる。同様に、カバーガラスの加熱を、特定の時点で(例えば、定期的な間隔で、例えば自動車による走行開始時に、次いで最初の1時間は10分ごと、その後は30分ごとに)それぞれ特定の持続時間、例えば1分間、自動的にスイッチオンすることも考えられよう。この手順は、好適には車両周辺温度に合わせて自動的に定義され制御される。
【0021】
好適な実施形態によれば、導電層には、導電層の温度もしくは該温度に依存する変数を測定し、対応する測定信号を出力するセンサが割り当てられており、照明装置には、測定信号を受信し、該測定信号に依存して導電層のための電気的駆動制御信号を生成する処理電子機器が割り当てられていることが提案される。温度センサは、例えば、導電層の温度を直接検出することができるが、あるいは導電層の温度を、他の測定された変数から、例えば、カバーガラスの温度、照明装置のハウジングの温度、ハウジングの内部の温度、および/または外気温から導出することもできる。処理電子機器は、ECU(electronic control unit)と称することもでき、例えば、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを含む。処理電子機器上では、カバーガラスの加熱の動作を開ループ制御もしくは閉ループ制御するためのコンピュータプログラムを実行することができる。説明した例では、ナノチューブを有する導電層の検出された温度または求められた温度が、閉ループ制御のための実際値として用いられる。閉ループ制御の制御区間は、カバーガラスによって形成され、アクチュエーターは、ナノチューブを有する導電層によって形成される。電気的駆動制御信号は、閉ループ制御の制御変数に対応し、操作変数は、導電層から放出される温度によって形成され、カバーガラスの温度は、閉ループ制御変数を形成する。閉ループ制御の基準変数(目標値)、すなわち、カバーガラスの目標温度は、カバーガラスの内側および外側における安全でかつ確実な解氷が保証されるように事前設定されている。基準変数は、現下の周辺温度に依存して、特に周辺温度に反比例させて変更することができる。外乱変数として、例えば、周辺温度もしくは外気温、ならびに/または自動車エンジンからの放熱が作用する可能性もある。
【0022】
特に好適には、本発明による自動車照明装置は、自動車用ヘッドライトとして構成されている。ヘッドライトは、信号機能だけでなく、むしろヘッドライトを装備した自動車の前方領域の照明機能も有しているため、カバーガラスに湿気、結露、氷、および/または雪がないことは、車両の運転者の安全にとって特に重要である。このことは、ヘッドライト内に車両支援用の付加的システムが統合されている場合にはなおさら当てはまり、それらの正常な機能は、湿気、結露、氷、および/または雪のないカバーガラスによるクリアーで制限のない視界が前提となる。しかしながら、もちろん、本発明による自動車照明装置が車両灯(例えば、フロントライト、サイドライト、またはリアライト)として構成されることも考えられる。さらに、照明装置は、スタンドアロンモジュール(例えば、緊急車両用の個別のサーチライト)として構成されてもよい。
【0023】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下で図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ヘッドライトとして構成された本発明による2つの自動車用照明装置を備えた自動車を示した図である。
図2】ヘッドライトとして構成された本発明による自動車用照明装置の一実施例を垂直断面図で示した図である。
図3】ヘッドライトとして構成された本発明による自動車用照明装置のさらなる実施例を垂直断面図で示した図である。
図4】本発明による自動車用照明装置のカバーガラス上に被着された、ナノチューブを有する層の例示的な熱分布を示した図である。
図5】ナノチューブを有する層が部分的に被着された本発明による自動車用照明装置のカバーガラスを示した図である。
図6】本発明による自動車用照明装置のカバーガラスに被着されたもしくは設けられた、ナノチューブを有する導電層を動作させるための概略的電気回路を示した図である。
【0025】
図1には、車両2の両側面側のフロント領域に配置された2つのヘッドライト4を備えた自動車2が示されている。これらのヘッドライト4の各々は、本発明の趣旨では自動車用照明装置を示すことができる。これらの照明装置は、図1に例示的に示されているように、前部車両灯6として構成されてもよい。この前部車両灯6は、ウインカーライト、ポジションライト、パーキングライト、および/またはデイドライビングライト用のライトとして構成されてよい。もちろん、照明装置は、リアライト(図示せず)またはサイドライト8として構成されてもよい。リアライトは、ウインカーライト、ポジションライト、パーキングライト、ブレーキライト、バックライト、および/またはリアフォグライト用のライトとして構成されてよい。サイドライト8は、ウインカーライトおよび/またはマーカーライト用のライトとして構成されてもよい。
【0026】
以下では本発明を、例示的に自動車用ヘッドライト4に基づいてより詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、任意の車両灯6,8ならびにスタンドアロンモジュール(例えば緊急車両用の別個のサーチライトなど)にも一様に当てはまる。
【0027】
図2には、本発明による自動車用ヘッドライト4が垂直断面図で示されている。このヘッドライト4は、透明なカバーガラス12によって閉じられた光出射開口部14を有するハウジング10を含んでいる。このカバーガラスは、プラスチック、好適にはPCまたはPMMAからなっている。ハウジング10の内部16には、少なくとも1つの光モジュール18が、配光を生成しかつカバーガラス12を貫通してビームパス19に沿って配光を放射するために配置されている。図示の例では、2つの光モジュール18が設けられている。もちろん、より少ない光モジュール18またはより多くの光モジュール18を設けてもよい。図示の例では、光モジュール18は、LEDモジュールとして構成されており、これらのLEDモジュールは、それぞれ光源として1つ以上のLEDを有している。LEDは、好適には、冷却体20に取り付けられる。LEDの主要照射方向は好適には上向きであり、この場合、光は、通常、LED上方の180°の半空間に照射される。照射された光は、図示の例では、反射器22としての、特に180°の半空間を包含するハーフシェル反射器としての一次光学系を用いて形成される。LEDから照射された光は、反射器22を用いて集束され、この光束は、事前設定された配光を生成するように成形され、走行方向でカバーガラス12を通って自動車2の前方領域に配向される。もちろん、一次光学系は、固体の透明な材料からなる1つ以上の補助光学系を有していてもよく、この補助光学系に照射された光が入力結合され、屈折および/または内部全反射を用いて集束される。反射器22と補助光学系との組み合わせも考えられるであろう。一次光学系の下流側のビームパス19には、各光モジュール18は、前方領域への配光を生成するための成形された光束を結像する投影レンズ24を有する。
【0028】
カバーガラス12は加熱可能である。カバーガラス12が可及的に均一にかつ加熱された表面全体にわたって一様に加熱されることを確実にできるようにするために、ビームパス19におけるカバーガラス12が、少なくとも1つの導電性材料からなるナノチューブを有する導電層26を備え、少なくとも一時的にこの層26に電圧が印加され、それによって、この層26を通って電流が通流し、その結果、この層26が一様に加熱され、この層26の熱がカバーガラスを加熱することが提案される。ナノチューブを有する層26は、好適には透明であり、すなわち、この層は、10%未満の透過損失を有する。
【0029】
ナノチューブの材料は、以下の材料、すなわち、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、亜鉛、ニッケル、リチウム、白金、チタン、炭素、グラファイトのうちの1つ以上を含むことができる。もちろん、ナノチューブの材料は、他の材料も、例えば半導体材料(例えば、シリコン、ゲルマニウム、および/またはガリウムヒ素)、またはナノ構造化によって初めて半導体特性または導電性を得られる材料なども含むことができる。さらに、ナノチューブの材料は、前述した材料相互の任意の組み合わせ、またはさらに他の材料との任意の組み合わせも含むことができる。
【0030】
ナノチューブは、単層(「single」)、二層(「double」)、三層(「triple」)、または多層(「multi」)の筒状体であってもよい。多層のナノ筒状体(「multi-wall nano tubes」)は、入れ子式になった単層のナノ筒状体からなっている。「カーボンナノチューブ」(「carbon nano tube;CNT」)という用語は、しばしば、多重壁カーボンナノチューブ(「multi-wall carbon nano tubes;MWCNTs」)に関係する。
【0031】
「ナノチューブ」という用語は、本発明の趣旨では、「ナノチューブ」に由来する材料または構造体、例えばナノワイヤ(「Nano-Wires」)またはナノバッド(登録商標)(「Nanobuds」)などを含む。ナノワイヤは、直径が典型的には10~200nm(10-9m)の範囲にあり、長さが5~100μm(10-6m)の範囲にある構造体である。ナノテクノロジーにおいて、カーボンナノバッド(CNB)は、カーボンナノチューブ(「carbon nanotubes」)の他に、炭素の両同素体の球状フラーレンも同じ構造で組み合わせ、ナノ筒状体に固定された「芽」(「Buds」)を形成する材料である。ナノバッドは、カーボンもしくは炭素とは別の材料も含むことができる。
【0032】
図2では、ナノチューブを有する導電層26は、カバーガラス12のプラスチック材料によってインサートモールドされているのに対して、図3の層26は、カバーガラス12の外側に被着されている。代替的または付加的に、この層26は、カバーガラス12の内側に被着されてもよい。ナノチューブを有する層26は、射出成形ツールに挿入され、次いで、カバーガラス12のプラスチック材料でオーバーモールドされ得る(図3参照のこと)。同様に、射出成形ツールにおいて、最初にカバーガラス12の第1の層12aがカバーガラス12のプラスチック材料から形成され、次いで、ナノチューブを有する層26が射出成形ツール内の第1の層12a上に載置され、次いで、層26が、カバーガラス12のさらなるプラスチック材料でオーバーモールドされて、第2の層12bが形成される(図2参照)場合も考えられるであろう。
【0033】
特に好適には、ナノチューブを有する層26は、最初に、可撓性の透明な支持フィルム上に被着され、次いで、これは、カバーガラス12のプラスチック材料によって被覆されるか、またはカバーガラス12の外側に被着される。支持フィルムも同様に好適にはプラスチック、特にPCからなる。支持フィルムは、層26とは反対側に接着層を有することができ、この接着層により、支持フィルムを、ナノチューブを有する層26と一緒にカバーガラス12上に容易に固定することができる(図3参照)。支持フィルムおよび層26の可撓性に基づいて、これらはカバーガラス12への被着の際に、カバーガラス12の曲率に追従することができる。特に、層26は、適切な技術を用いて、例えば、熱支援深絞りプロセスを用いて、例えば球面またはトロイダル表面などの立体形状部に被着させることができる。
【0034】
図4は、ナノチューブを有する層26が通電された場合の熱分布を示している。図の右側に示されている温度スケールは、例示的に、14.7℃~117℃まで延びている。層26の縁部領域28は、本例では約60℃に対応する温度範囲T_28にある。縁部領域28の外側の領域30は、著しく低い温度を有し、これは、約30℃に対応する温度範囲T_30にある。本来の層26の領域は、約90℃に対応する温度範囲T_26にある温度を有している。小さな接触領域32を除いて、層26全体が均一でかつ一様に加熱されることは特に注目に値する。
【0035】
図5には、黒く縁取られたカバーガラス12の外側が示されており、これに、ナノチューブを有する導電層26を備えた透明な支持フィルム34が被着される。好適には、この支持フィルム34は、自己粘着性である。図5では、層26を備えた支持フィルム34の被着が手動で行われている。もちろん、この被着は自動化されて行うことも可能である。
【0036】
図6は、ナノチューブを有する層26を動作させるための電気回路を例示的に示している。端子電極36は、層26に固定され、例えば接着され、エネルギー源、例えば車両バッテリー38に接続されている。導電層は、手動または自動で操作可能なスイッチ40または制御器を介してエネルギー源38に接続されてよい。それにより、カバーガラス12の加熱は、スイッチ40を用いて手動もしくは自動でスイッチオンおよびスイッチオフすることができるか、または制御器を用いて所望の電流値を印加することができる。
【0037】
さらに、導電層26には、該導電層26の温度もしくは該温度に依存する変数を測定し、対応する測定信号を出力するセンサ42が割り当てられてもよい。照明装置4には、測定信号46を受信し、該測定信号46に依存して導電層26のための電気的駆動制御信号48を生成する処理電子機器44(ECU;電子制御ユニット)が割り当てられてもよい。より正確に言えば、駆動制御信号48はスイッチ40を制御し、それによって、層26への電流供給を変更することができる。処理電子機器44は、カバーガラス12の(層26の)加熱の動作を開ループ制御または閉ループ制御するためのコンピュータプログラムが実行されるマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを含むことができる。説明した例では、ナノチューブを有する導電層26の検出された温度もしくは求められた温度が、閉ループ制御のための実際値として用いられる。電気的駆動制御信号48は、閉ループ制御の制御変数に対応する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】