IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロッキード マーティン コーポレイションの特許一覧

特開2022-32051飛行中の迎え角に対する航空機表面上の着氷のリアルタイムの影響を決定するためのシステム及び方法
<>
  • 特開-飛行中の迎え角に対する航空機表面上の着氷のリアルタイムの影響を決定するためのシステム及び方法 図1A
  • 特開-飛行中の迎え角に対する航空機表面上の着氷のリアルタイムの影響を決定するためのシステム及び方法 図1B
  • 特開-飛行中の迎え角に対する航空機表面上の着氷のリアルタイムの影響を決定するためのシステム及び方法 図2
  • 特開-飛行中の迎え角に対する航空機表面上の着氷のリアルタイムの影響を決定するためのシステム及び方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032051
(43)【公開日】2022-02-24
(54)【発明の名称】飛行中の迎え角に対する航空機表面上の着氷のリアルタイムの影響を決定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 15/20 20060101AFI20220216BHJP
   B64D 45/00 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
B64D15/20
B64D45/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021130564
(22)【出願日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】16/989,475
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504019881
【氏名又は名称】ロッキード マーティン コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】LOCKHEED MARTIN CORPORATION
【住所又は居所原語表記】6801 Rockledge Drive, Bethesda, MD 20817, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ベトゥシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル ガイ トーティ
(57)【要約】
【課題】迎え角に対する航空機表面上の着氷の影響を決定するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】システムは、第1の時刻に第1の組の氷厚み値を測定し第2の時刻に第2の組の氷厚み値を測定するように作動可能な複数のセンサを翼の表面に沿って含む。システムは、第1の複数の揚力計算変数と第2の複数の揚力計算変数とを決定するように構成されたプロセッサを更に含む。プロセッサはまた、迎え角閾値を生成し、第1の組の氷厚み値と第2の組の氷厚み値との間及び第1の複数の揚力計算変数と第2の複数の揚力計算変数との間の1又は2以上の差に基づいて第2の時刻に迎え角閾値を更新する。プロセッサは、更新された迎え角閾値に基づき、翼の実際の迎え角を調節するための飛行データに対する1又は2以上の変更を、ディスプレイに送るように更に構成される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のタイプの航空機に対応する少なくとも1又は2以上の氷厚み値と該第1のタイプの航空機に対応する1又は2以上の揚力計算変数とを含むデータテーブルを格納するように構成された1又は2以上のメモリユニットと、
複数のセンサから第1の時刻に対応する第1の組の氷厚み値を受け入れるように作動可能なインタフェースであって、該第1の組の氷厚み値内の各氷厚み値が、該複数のセンサのそれぞれ1つの各々の翼の表面に沿った位置での氷の厚みに対応する、前記インタフェースと、
前記メモリと前記インタフェースとに通信可能に結合された1又は2以上のプロセッサであって、
前記第1の組の氷厚み値内の各氷厚み値をデジタル信号処理でフィルタリングし、
前記第1の組の氷厚み値内の各氷厚み値に対して信号平均化を適用し、
測定された飛行データに基づいて、前記翼の対気速度に対応する少なくとも1又は2以上の値と該翼の高度に対応する1又は2以上の値とを含む第1の複数の揚力計算変数を決定し、
少なくとも前記第1の組の氷厚み値を第1の組の複数の揚力計算変数と共に前記データテーブルに対して比較し、
少なくとも前記第1の組の氷厚み値と、前記第1の複数の揚力計算変数とに基づいて、前記翼が失速しないことになる最大迎え角を含む迎え角閾値を生成する、
ように作動可能な前記1又は2以上のプロセッサと、
を備え、
前記インタフェースは、前記複数のセンサから第2の時刻に対応する第2の組の氷厚み値を受け入れるように更に作動可能であり、
前記1又は2以上のプロセッサは、
前記第2の組の氷厚み値内の各氷厚み値をデジタル信号処理でフィルタリングし、
前記第2の組の氷厚み値内の各氷厚み値に対して信号平均化を適用し、
測定された飛行データに基づいて、前記翼の対気速度に対応する少なくとも1又は2以上の値と該翼の高度に対応する1又は2以上の値とを含む第2の複数の揚力計算変数を決定し、
少なくとも前記第2の組の氷厚み値を前記第2の複数の揚力計算変数と共に前記データテーブルに対して比較し、
前記第1の組の氷厚み値と前記第2の組の氷厚み値との間、及び、前記第1の複数の揚力計算変数と前記第2の複数の揚力計算変数との間の、1又は2以上の差に基づいて、前記迎え角閾値を前記第2の時刻に更新し、
前記更新された迎え角閾値に基づいて、前記翼の実際の迎え角を調節するための前記飛行データに対する1又は2以上の変更をディスプレイに送る、
ように更に作動可能である、
システム。
【請求項2】
コンピュータシステムにより、
複数のセンサにより、翼の表面に沿った位置で該複数のセンサの各々を用いて氷の厚みを測定することによって第1の時刻に対応する第1の組の氷厚み値を生成する段階と、
測定された飛行データに基づいて第1の複数の揚力計算変数を決定する段階と、
少なくとも前記第1の組の氷厚み値と、前記第1の複数の揚力計算変数とに基づいて、前記翼が失速しない最大迎え角を含む迎え角閾値を生成する段階と、
第2の時刻に対応する第2の組の氷厚み値及び第2の複数の揚力計算変数を生成する段階と、
前記第1の組の氷厚み値と前記第2の組の氷厚み値との間、及び、前記第1の複数の揚力計算変数と前記第2の複数の揚力計算変数との間の、1又は2以上の差に基づいて、前記迎え角閾値を前記第2の時刻に更新する段階と、
前記更新された迎え角閾値に基づいて、前記翼の実際の迎え角を調節するための前記飛行データに対する1又は2以上の変更をディスプレイに送る段階と、
を含む方法。
【請求項3】
前記第1の複数の揚力計算変数は、前記翼の対気速度に対応する少なくとも1又は2以上の値を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記迎え角閾値を生成する段階は、前記第1の組の氷厚み値及び前記第1の複数の揚力計算変数を、格納されたデータテーブルに対して比較し、該格納されたテーブルは、第1のタイプの航空機に対応する少なくとも1又は2以上の氷厚み値と該第1のタイプの航空機に対応する1又は2以上の揚力計算変数とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記閾値は、臨界迎え角である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
デジタル信号処理を用いて、前記第1の組の氷厚み値内の各氷厚み値をフィルタリングする段階を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の組の氷厚み値内の各氷厚み値に対して信号平均化を適用する段階を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のセンサ内の各センサが、無線通信を使用して前記第1の組の氷厚み値を提供する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のセンサは、超音波センサで構成される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記翼の前記実際の迎え角が前記迎え角閾値よりも上であると決定する段階と、
前記実際の迎え角が前記迎え角閾値よりも上であると決定することに応答して、警告信号を生成する段階と、
を更に含む請求項2に記載の方法。
【請求項11】
第1の時刻に対応する第1の組の氷厚み値を測定するように作動可能な複数のセンサであって、各センサが翼の表面に沿った位置における氷の厚みを決定するように構成される前記複数のセンサと、
測定された飛行データに基づいて第1の複数の揚力計算変数を決定し、
少なくとも前記第1の組の氷厚み値と、前記第1の複数の揚力計算変数とに基づいて、前記翼が失速しない最大迎え角を含む迎え角閾値を生成する、
ように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記複数のセンサは、第2の時刻に対応する第2の組の氷厚み値を測定するように更に作動可能であり、
前記プロセッサは、
第2の時刻に対応する第2の複数の揚力計算変数を決定し、
前記第1の組の氷厚み値と前記第2の組の氷厚み値との間、及び、前記第1の複数の揚力計算変数と前記第2の複数の揚力計算変数との間の、1又は2以上の差に基づいて、前記迎え角閾値を前記第2の時刻に更新し、
前記更新された迎え角閾値に基づいて、前記翼の実際の迎え角を調節するための前記飛行データに対する1又は2以上の変更をディスプレイに送る、
ように更に作動可能である、
システム。
【請求項12】
前記第1の複数の揚力計算変数は、前記翼の対気速度に対応する少なくとも1又は2以上の値を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記第1の組の氷厚み値及び前記第1の複数の揚力計算変数を、格納されたデータテーブルに対して比較するように更に構成され、該格納されたテーブルは、第1のタイプの航空機に対応する少なくとも1又は2以上の氷厚み値と、該第1のタイプの航空機に対応する1又は2以上の揚力計算変数とを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記閾値は、臨界迎え角である、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の組の氷厚み値内の各氷厚み値が、デジタル信号処理でフィルタリングされる、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
信号平均化が、前記第1の組の氷厚み値内の各氷厚み値に対して適用される、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記複数のセンサ内の各センサが、無線通信を使用して前記第1の組の氷厚み値を提供する、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数のセンサは、超音波センサで構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサは、
前記翼の前記実際の迎え角が前記迎え角閾値を超えていると決定し、
前記実際の迎え角が前記迎え角閾値を超えていると決定することに応答して警告信号を生成する、
ように更に作動可能である、
請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
前記警告信号は、航空機コックピット内の視覚インジケータを含む、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、一般的に航空機飛行監視に関し、より具体的には、迎え角に対する航空機表面上の着氷の影響を決定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機のピッチがその飛行経路から大きく異なり、臨界迎え角を超えると、航空機は、飛行に必要な揚力を失って失速することになる。翼は、それが有効に機能する迎え角の限られた範囲を有する。翼の臨界迎え角及び従って翼の最大揚力は、翼面上の氷の蓄積のようないくつかの悪条件によって影響を受ける可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
翼が飛行中である間に翼が失速する迎え角に対するこれらの条件のリアルタイムの影響を考慮するための現在の技術及びツールは、限られている可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態により、システムは、データテーブルを格納するように構成された1又は2以上のメモリユニットを含む。データテーブルは、第1のタイプの航空機に対応する少なくとも1又は2以上の氷厚み値と、第1のタイプの航空機に対応する1又は2以上の揚力計算変数とを含む。システムはまた、インタフェースを含む。インタフェースは、複数のセンサから第1の時刻に対応する第1の組の氷厚み値を受け入れるように作動可能である。第1の組の氷厚み値内の各氷厚み値は、複数のセンサのそれぞれ1つの各々の翼の表面に沿った位置での氷の厚みに対応する。システムはまた、メモリとインタフェースとに通信的に結合された1又は2以上のプロセッサを含む。プロセッサは、第1の組の氷厚み値内の各氷厚み値をデジタル信号処理でフィルタリングするように作動可能である。プロセッサはまた、第1の組の氷厚み値内の各氷厚み値に対して信号平均化を適用し、測定された飛行データに基づいて第1の複数の揚力計算変数を決定するように作動可能である。第1の複数の揚力計算変数は、翼の対気速度に対応する少なくとも1又は2以上の値と翼の高度に対応する1又は2以上の値とを含む。プロセッサは、少なくとも第1の組の氷厚み値を第1の組の複数の揚力計算変数と共にデータテーブルに対して比較し、少なくとも第1の組の氷厚み値と第1の組の複数の揚力計算変数とに基づいて迎え角閾値を生成するように更に構成される。閾値は、翼が失速しない最大迎え角を含む。インタフェースは、複数のセンサから第2の時刻に対応する第2の組の氷厚み値を受け入れるように更に作動可能である。1又は2以上のプロセッサは、第2の組の氷厚み値内の各氷厚み値をデジタル信号処理でフィルタリングし、第2の組の氷厚み値内の各氷厚み値に対して信号平均化を適用するように更に作動可能である。プロセッサは、測定された飛行データに基づいて第2の複数の揚力計算変数を決定するように更に構成される。第2の複数の揚力計算変数は、翼の対気速度に対応する少なくとも1又は2以上の値と翼の高度に対応する1又は2以上の値とを含む。プロセッサはまた、少なくとも第2の組の氷厚み値を第2の複数の揚力計算変数と共にデータテーブルに対して比較し、第2の時刻に第1及び第2の組の氷厚み値及び第1及び第2の複数の揚力計算変数の間の1又は2以上の差に基づいて迎え角閾値を更新する。プロセッサはまた、更新された迎え角閾値に基づいて、翼の実際の迎え角を調節するための飛行データに対する1又は2以上の変更を、ディスプレイに送る。
【0005】
別の実施形態により、コンピュータシステムによって実行される方法は、複数のセンサにより、翼の表面に沿った位置で複数のセンサの各々を使用して氷の厚みを測定することによって第1の時刻に対応する第1の組の氷厚み値を生成する段階を含む。本方法はまた、測定された飛行データに基づいて第1の複数の揚力計算変数を決定する段階と、少なくとも第1の組の氷厚み値及び第1の複数の揚力計算変数に基づいて迎え角閾値を生成する段階とを含む。閾値は、翼が失速しない最大迎え角を含む。本方法は、第2の時刻に対応する第2の組の氷厚み値と第2の複数の揚力計算変数とを生成する段階と、第2の時刻に第1の組の氷厚み値と第2の組の氷厚み値との間、及び、第1の複数の揚力計算変数と第2の複数の揚力計算変数との間の、1又は2以上の差に基づいて迎え角閾値を更新する段階とを更に含む。最後に、本方法は、更新された迎え角閾値に基づいて、翼の実際の迎え角を調節するための飛行データに対する1又は2以上の変更を、ディスプレイに送る段階を含む。
【0006】
更に別の実施形態では、システムは、第1の時刻に対応する第1の組の氷厚み値を測定するように作動可能な複数のセンサを含む。各センサは、翼の表面に沿った位置で氷の厚みを決定するように構成される。システムは、測定された飛行データに基づいて第1の複数の揚力計算変数を決定するように構成されたプロセッサを更に含む。プロセッサは、少なくとも第1の組の氷厚み値と第1の複数の揚力計算変数とに基づいて迎え角閾値を生成するように更に構成される。閾値は、翼が失速しない最大迎え角を含む。複数のセンサは、第2の時刻に対応する第2の組の氷厚み値を測定するように更に作動可能である。プロセッサはまた、第2の時刻に対応する第2の複数の揚力計算変数を決定し、第2の時刻に第1の組の氷厚み値と第2の組の氷厚み値との間、及び、第1の複数の揚力計算変数と第2の複数の揚力計算変数との間の、1又は2以上の差に基づいて迎え角閾値を更新するように作動可能である。プロセッサは、更新された迎え角閾値に基づいて、翼の実際の迎え角を調節するための飛行データに対する1又は2以上の変更を、ディスプレイに送るように更に作動可能である。
【0007】
特定の実施形態の技術的利点は、航空機の性能、安定性、及び制御を改善すること、及び飛行中にリアルタイムの警告を与えることによって氷及び他の汚染物質に関連付けられた失速及び墜落を防止することを含むことができる。他の技術的利点は、以下の図、説明、及び特許請求の範囲から当業者には容易に明らかであろう。更に、特定の利点を上に列挙したが、様々な実施形態は、列挙した利点の全て又は一部を含む又はその一切を含まない場合がある。
【0008】
本発明の開示及びその利点のより完全な理解のために、添付図面と共に以下の説明をここで参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】ある一定の実施形態による、航空機表面上のリアルタイムの着氷とリアルタイムの迎え角閾値とを決定するためのシステムを備えた航空機を示す図である。
図1B】ある一定の実施形態による、航空機表面上のリアルタイムの着氷とリアルタイムの迎え角閾値とを決定するためのシステムを備えた航空機を示す図である。
図2】ある一定の実施形態による、図1の例示的システム100を使用して航空機表面上のリアルタイムの着氷とリアルタイムの迎え角閾値とを決定する方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の開示のある一定の実施形態を実施することができる例示的コンピュータシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
航空機のピッチが臨界迎え角を超える程に飛行経路から大きく異なると、航空機は飛行に必要な揚力を失い、失速する。言い換えれば、航空機は、飛行中に翼によって生成される揚力が減少する点まで翼の迎え角が増加した場合に、失速する可能性がある。ここでいう「揚力」とは、飛行中に空気が翼の上を流れる時に発生する力のことである。この力は、航空機の重量とは正反対であり、航空機を空中に保持する。
【0011】
翼は、有効に機能する迎え角の範囲が限られている。翼の臨界迎え角、すなわち、それを超えると翼によって生成される揚力が減少する特定の迎え角は、翼に関連するか又は環境内のいくつかの悪条件によって影響を受ける可能性がある。例えば、翼面に氷が蓄積すると、最大揚力性能が低下し、それに伴い、それを超えると航空機が失速する可能性がある臨界迎え角が減少する。従来の氷感知システムは、航空機の操縦者に氷の存在について警告することにより、操縦者が習得した技能を使用して飛行中又は着陸時の失速を回避することができるようにする。その結果、航空機の操縦者に事前の警告を与えるような視覚的、触覚的、又は性能的な手掛かりがほとんど又は全くなしに、航空機の操縦者が通常危険と見なす角度よりも遥かに低い迎え角で航空機が空気力学的に失速する可能性がある。例えば、着陸時には高い迎え角が一般的に使用されるので、翼に着氷した着陸機が減少した臨界角を期せずして超えた場合、失速とそれに続く制御不能とが発生する可能性がある。従って、飛行中に航空機を臨界迎え角以下に維持するのに必要なリアルタイム情報を航空機の操縦者に提供するように構成されたシステムを使用して、氷結状態での予期せぬ失速を防止することは有利である。
【0012】
本開示の教示は、飛行中の翼面上の着氷に関するリアルタイム測定値に基づいて、失速を回避するために1又は2以上のリアルタイム迎え角閾値基準を生成するデバイスの使用を認識するものである。そのようなデバイスを使用することにより、飛行中のリアルタイム着氷データに基づいて、1又は2以上のリアルタイムの臨界迎え角及び/又はリアルタイムの最適迎え角を提供することにより、航空機の性能、安定性、及び制御を改善することを含むがこれらに限定されない様々な利益がもたらされる可能性がある。更に、氷及び他の翼汚染物質に関連付けられた失速及び墜落は、悪影響が生じる前に、航空機の操縦者が1又は2以上のリアルタイムの迎え角閾値に基づいて航空機の迎え角を修正するために適宜行動することができるように警告を与えることによって防止することができる。更なる利点は、システムの基礎を成すコンピュータハードウエアの作動を改善するために特定の航空機に対して事前にモデル化された空力シナリオを有する1又は2以上のルックアップテーブルを使用することを含むことができる。このようにして、基礎を成すコンピュータハードウエアは、空中にある間、ルックアップテーブルについて特定の飛行モデルを計算するタスクを課せられないことになり、それにより、飛行中の計算効率を高め、飛行中にシステムが使用する計算リソースを節約する。以下では、これらのかつ他の望ましい特徴を提供するために、飛行中の迎え角に対する航空機表面上の着氷のリアルタイムの影響を決定するシステム及び方法を説明する。
【0013】
図1A及び図1Bは、ある一定の実施形態に従って航空機表面上のリアルタイム着氷と、飛行中に翼が失速しないリアルタイム迎え角閾値とを決定するためのシステム100を含む航空機102を示している。図示のように、システム100は、複数のセンサ104、第1の通信経路116、処理ユニット118、ルックアップテーブル120、第2の通信経路122、及び表示ユニット126を含む。
【0014】
一般的に、システム100は、複数のセンサ104で航空機102の翼108の表面に沿った特定の位置における着氷106と関連する氷厚み値の1又は2以上の組を測定するように構成される。氷厚みデータは、第1の通信経路116を通して処理ユニット118に送られ、処理ユニット118は、測定された氷厚み値及び複数の揚力計算変数をルックアップテーブル120と比較し、航空機が失速することのない迎え角閾値を表す値をリアルタイムで生成する。ある一定の実施形態により、迎え角閾値データは、航空機102の角度128に対する調節を示唆するのに使用することができ、第2の通信経路122を通してコックピット124の表示ユニット126に送ることができる。従って、一部の実施形態では、システム100は、翼の表面状態に関するリアルタイムデータを使用してその状態下での翼境界層の挙動に関する情報を提供することができるので、航空機の操縦者は、氷結状態を考慮して航空機102の角度128を修正し、失速を回避することができる。
【0015】
図1Aは、航空機100の一例を描いている。航空機100は、例示的実施形態に従ってシステム100を実施することができる航空機の一例である。本発明の開示では、その航空機100が飛行機であることを説明して描いているが、本発明の開示はまた、航空機100が無人航空機のような飛行可能な翼を有する何らかの機械であり得ることを考えている。図示のように、航空機100は、左翼(描写せず)、右翼108、及びコックピット124を含む。翼108は、特定の実施形態により、前縁110及び後縁112を有する航空機の翼とすることができる。翼108は、その翼に固定されたいずれかのフラップ114、スラット、及び/又は他の制御面を含むことができる。
【0016】
角度128は、一部の実施形態では、航空機100の迎え角を表すことができる。例えば、角度128は、図示のように、翼108の翼弦線130と相対風132の間の角度とすることができる。図1に示すように、翼弦線130は、翼108の後縁112と翼108の断面に関する前縁110の曲率中心との間の仮想直線である。図示のように、相対風132は、航空機100と空気の相対的な動きを表すベクトルである。
【0017】
図示のように、着氷106は、翼108の表面に形成される場合がある。本発明の開示は着氷を説明して描いているが、本発明の開示はまた、翼108が霜及び/又は液体水膜の形成、戦闘による損傷、又は1又は2以上のセンサで感知可能な翼108のいずれかの他の境界層の変化により影響を受ける可能性があることも考えている。着氷106は、空気力学的に有意ないずれかの厚みとすることができる。
【0018】
図示のように、複数のセンサ104は、翼108の表面に定められた配列で配置されたセンサから構成される。必要な数のセンサを幾つでも設けることができる。複数のセンサ104内のセンサは、翼108の前縁110、翼108の後縁112、又は翼又は航空機102の他の部分のいずれかの他の位置に設置することができる。氷は、全ての状況において翼108の表面に沿って均等に分布するとは限らないので、特定の実施形態により、複数のセンサ104内の各センサは、翼108の表面に沿ったその特定の位置における氷の厚みを決定するように構成することができる。複数のセンサ104内の各センサは、氷厚みを独立して決定することができるので、一部の実施形態では、感知結果も独立して処理ユニット118に送ることができる。複数のセンサ104内の各センサは、特定の実施形態による超音波測定デバイス、又は翼面108上の氷又はいずれかの他の表面障害の厚みをリアルタイムで測定することができるいずれか他タイプのデバイスとすることができる。複数のセンサ104は、例えば、限定することなく、以下のうちの少なくとも1つを更に含むことができる:迎え角表示器、位置センサ、温度センサ、モーションセンサ、及び他の対応するタイプのセンサ。複数のセンサ104は、氷厚み値の1又は2以上の組を生成することができ、図示のように、第1の通信経路116を通して氷厚みデータを処理ユニット118に送ることができる。氷厚みデータは、特定の実施形態では、連続的に実質的にリアルタイムで生成される場合がある。氷厚みデータの一部は、特定の実施形態では、設定された時間間隔で生成される場合がある。
【0019】
第1の通信経路116は、図示のように、複数のセンサ104と処理ユニット118の間の通信を容易にする。本発明の開示は、第1の通信経路116が複数のセンサ104と処理ユニット118の間の通信を容易にするいずれかの適切な手段であるように考えている。例えば、第1の通信経路116は、有線、無線、又はBluetooth(登録商標)リンクを使用して通信を提供することができる。
【0020】
処理ユニット118は、図示のように、第1の通信経路116を通して複数のセンサ104からデータを受け入れるように構成される。図1に示す例では、処理ユニット118は、ルックアップテーブル120を使用して、複数のセンサ104から受け入れた氷厚み値と、測定された飛行データから受け入れた複数の揚力計算変数とに基づいて、1又は2以上のリアルタイム迎え角閾値を生成する。処理ユニット118が生成することができる1又は2以上の迎え角閾値は、特定の実施形態により、臨界迎え角及び/又は最適化された迎え角、及び/又は航空機102の失速を引き起こすことのないいずれかの他の迎え角を含むことができる。処理ユニット118は、図示のように、第2の通信経路122を通して表示ユニット126にデータを送る。処理ユニット118が表示ユニット126に送るデータは、特定の実施形態では、リアルタイム迎え角閾値及び/又は迎え角閾値に基づく角度128の推奨修正値を含むことができる。処理ユニット118は、図3に関連して以下で更に説明する。
【0021】
ルックアップテーブル120は、図示のように、処理ユニット118に格納されている。ルックアップテーブル120は、特定の実施形態により、システム100が装備される航空機102のタイプに独特の用途に関して較正される。ルックアップテーブル120は、一部の実施形態では、航空機102のタイプに対応する少なくとも1つの氷厚み測定値と、航空機102のタイプに対応する少なくとも1つの揚力計算変数とを含むことができる。揚力計算変数は、限定することなく、高度、航空機重量又は同等値のような航空機の物理特性、速度、対気速度、及び温度のような環境条件を含むことができる。揚力計算変数については、図2に関連して以下で更に説明する。ルックアップテーブル120の空力シナリオは、一部の実施形態では事前にモデル化することができる。ルックアップテーブルは、単一ルックアップテーブルとして示されているが、本発明の開示は、システム100が複数のルックアップテーブル120を含むことができることも考慮している。
【0022】
第2の通信経路122は、処理ユニット118と表示ユニット126の間の通信を容易にする。本発明の開示は、第2の通信経路122が処理ユニット118と表示ユニット126の間の通信を容易にするいずれかの適切な手段であるように考えている。例えば、第2の通信経路122は、有線、無線、又はBluetoothリンクを使用して通信を提供することができる。
【0023】
図1Bは、コックピット124に設けられた表示ユニット126の一例を描いている。表示ユニット126は、第2の通信経路122を通して処理ユニット118からデータを受け入れ、航空機の操縦者に当該データを表示するように構成することができる。表示ユニット126は、一部の実施形態では、画面、数字付き指針盤、ホログラフィックディスプレイ、警告灯、又は必要な情報を航空機の操縦者に与えるいずれかの他の手段とすることができる。表示ユニット126は、一部の実施形態では、1又は2以上の数値を表示することができる。表示ユニット126は、特定の実施形態により、航空機102の角度128が閾値を超えた場合に音、視覚的な手掛かり、又は航空機操縦者の注意を引くいずれかの他の手段のような警告を発することができる。
【0024】
作動において、システム100は、複数のセンサ104により、翼108の表面上の着氷106について氷厚み値の組を測定するように構成することができる。システム100は、処理ユニット118で複数の揚力計算変数を受け入れるように更に構成することができ、一部の実施形態では、デジタル信号処理で各氷厚み値をフィルタリングし、及び/又は氷厚み値の組内の各氷厚み値に対して信号平均化を適用することができる。飛行中に、システム100は、特定の実施形態により、リアルタイムに処理ユニット118でルックアップテーブル120を使用して、氷厚み値の組と複数の揚力計算変数とに基づいて翼108が失速することのない迎え角閾値を示す値を生成することができる。特定の実施形態により、1又は2以上の迎え角閾値及び/又は航空機102の角度128に対する1又は2以上の推奨調節値を表示ユニット126に送ることができる。角度128が迎え角閾値よりも上である場合に、警告信号を生成することができる。一部の実施形態では、角度128に対する推奨調節値をオートパイロットに送ることができる。実際の迎え角128に対する推奨調節値を受け入れることに応答して、オートパイロットは、航空機102が失速することを防ぐために、航空機操縦者指令を入力しなくても複数の飛行制御デバイスを制御するアクションを自動的に取るように構成することができる。オートパイロットは、一部の実施形態では、航空機102の失速を防止するために複数の制御面の中でラダー及びスラットのうちの少なくとも1つを制御することができる。より具体的には、オートパイロットは、航空機102の迎え角を小さくするためにラダーの偏向度を大きくすることができる。更に、オートパイロットは、航空機102の翼108の前縁110にあるスラットを伸ばす指令を発することができる。システム100の作動については、図2に関連して以下でより詳細に説明する。
【0025】
本発明の範囲から逸脱することなく本明細書に説明したシステムに修正、追加、又は省略を行うことができる。例えば、システム100は、複数のセンサ104の中に幾つものセンサを含むことができる。更に、この実施形態では、複数のセンサ104内の全てのセンサがセンサの場所に起因して同じ着氷事象によって影響を受けるとは限らないことを認識している。例えば、着氷は、センサの場所に起因して、複数のセンサ104内の1又は2以上のセンサに影響を及ぼさない場合があり、一部の実施形態では、これらの影響されなかったセンサは、処理ユニット118にデータを送らない可能性がある。構成要素は、統合されていても、分離されていてもよい。更に、作動は、より多い、より少ない、又は他の構成要素によって実行することができる。
【0026】
図2は、ある一定の実施形態に従って図1の例示的システム100を使用して航空機表面上のリアルタイム着氷とリアルタイム迎え角閾値とを決定する方法を示すフローチャートである。
【0027】
方法200は段階202で始まり、一部の実施形態では、翼108の表面に沿う複数のセンサ104が、第1の時刻に対応する着氷値の第1の組を生成する。各センサは、特定の実施形態により、翼108の表面に沿った位置での着氷106の厚みを決定するように構成される。
【0028】
段階204では、特定の実施形態により、第1の組の氷厚み値内の各氷厚み値がデジタル信号処理でフィルタリングされる。一部の実施形態では、段階204は、処理ユニット118で行われる場合がある。複数のセンサ104は、一部の実施形態では、デジタル信号処理と併せて較正することができる。フィルタリングは、信号のフーリエ変換を計算することにより、及び周波数成分を抑制するフィルタ関数を適用することにより、周波数領域で実行される場合がある。それにより、不要な成分のない信号を得ることができる
【0029】
段階206において、一部の実施形態では、信号平均化が、第1の組の氷厚み値内の各氷厚み値に適用される。一部の実施形態では、段階206は、処理ユニット118で行われる場合がある。信号平均化は、信号の歪みを持ち込むことなく、反復信号をノイズから分離するためのデジタル技術とすることができる。信号平均化は、時間領域で適用することができ、特定の実施形態により、信号を不明瞭にしているノイズに対して信号の強度を増大させることができる。反復測定値の組を平均化することにより、SN比を増大することができる。一部の実施形態では、得られた測定値の数に比例して、SN比を増大することができる。
【0030】
段階208において、プロセッサ118は、測定された飛行データに基づいて、一部の実施形態では第1の複数の揚力計算変数を決定する。揚力計算変数は、限定することなく、飛行機のタイプ、高度、対気速度、速度、環境温度、静圧、航空機の大きさ、航空機の形状、航空機の重量、航空機の翼形、又は揚力を計算するのに使用されるいずれかの適切な値を有することができる。航空機100の高度は、一部の実施形態では、全地球測位システムによって収集される場合がある。対気速度は、ピトー管で検出することができ、外部高度情報は、一部の実施形態では全地球測位システムで検出することができる。説明したファクタは、航空機102が発生させる揚力に影響を与える可能性がある様々な揚力計算変数の中でただ単に特定タイプのファクタの例として使用されることを意図している。これらの例は、処理ユニット118が決定することができる揚力計算変数を限定又は決定することを意図していない。
【0031】
段階210では、特定の実施形態により、第1の組の氷厚み値と第1の複数の揚力計算変数がルックアップテーブル120と比較される。
【0032】
段階212において、一部の実施形態では、少なくとも第1の組の氷厚み値と第1の複数の揚力計算変数とに基づいて迎え角閾値が生成される。迎え角閾値は、特定の実施形態により、臨界角、すなわち、航空機の現在の状態を考慮して翼が失速しない最大迎え角値とすることができる。迎え角閾値の出力というよりむしろ又はこれに加えて、一部の実施形態では、翼上の特定の氷厚みを補償する最適な迎え角の正確な値とすることができる。この最適値は、限定することなく、特定の実施形態により、失速角及び揚力係数に基づく場合がある。更新された迎え角閾値は、航空機102が失速しないいずれかの値とすることができる。この閾値は、システム100に含まれるデフォルトの設定値とすることができ、又は第三者(例えば、製造業者、ユーザ、又は保守群)によって入力及び/又は更新される場合がある。システム100は、飛行中の航空機100の状態変化を考慮して、一部の実施形態では、リアルタイムで蓄積した氷106の厚みに関連して迎え角閾値を更新することができる。
【0033】
段階214において、複数のセンサ104は、特定の実施形態により、第2の時刻に対応する第2の組の氷厚み値を生成する。一部の実施形態では、段階214は、処理ユニット118で行われる場合がある。
【0034】
段階216では、特定の実施形態により、第2の組の氷厚み値内の各氷厚み値が、デジタル信号処理でフィルタリングされる。
【0035】
段階218において、一部の実施形態では、信号平均化が、第2の組の氷厚み値内の各氷厚み値に適用される。一部の実施形態では、段階218は、処理ユニット118で行われる場合がある。
【0036】
段階220において、プロセッサ118は、測定された飛行データに基づいて、一部の実施形態では第2の複数の揚力計算変数を決定する。
【0037】
段階222において、処理ユニット118は、一部の実施形態では、第1の組の氷厚み値及び第1の複数の揚力計算変数、及び第2の組の氷厚み値及び揚力計算変数の第2の組の間に差があるか否かを決定する。処理ユニット118が、第1の組の氷厚み値及び第1の複数の揚力計算変数、及び第2の組の氷厚み値及び揚力計算変数の第2の組の間に差がないと決定した場合に、本方法は段階214に戻る。処理ユニット118が、第1の組の氷厚み値及び第1の複数の揚力計算変数、及び第2の組の氷厚み値及び揚力計算変数の第2の組の間に差があると決定した場合に、本方法は段階224へ続く。
【0038】
段階224では、特定の実施形態により、第2の組の氷厚み値と第2の複数の揚力計算変数が、ルックアップテーブル120と比較される。
【0039】
段階226において、一部の実施形態では、第1及び第2の組の氷厚み値及び第1及び第2の複数の揚力計算変数の間の1又は2以上の差に基づいて迎え角閾値が更新される。更新された迎え角閾値は、特定の実施形態により、臨界角、すなわち、航空機の現在の状態を考慮して、翼が失速しない最大迎え角値を表すことができる。更新された迎え角閾値の出力は、一部の実施形態では、翼上の特定の氷厚みを補償する最適な迎え角の正確な値とすることができる。この最適値は、限定することなく、一部の実施形態では、失速角及び揚力係数に基づく場合がある。更新された迎え角閾値は、航空機102が失速しないいずれかの値とすることができる。
【0040】
段階228において、更新された迎え角に基づく飛行データの1又は2以上の変更は、実際の迎え角128を調節するために表示ユニット126に送られる。角度128は、一部の実施形態では、インジケータベーンセンサの角度を使用して測定することができる。飛行データのリアルタイム推奨修正は、一部の実施形態により、全体的な飛行の安全性を改善するために飛行中に航空機の操縦者によって又はオートパイロットシステムによって利用される場合がある。実際の迎え角128に対する推奨調節値を受け入れることに応答して、オートパイロットは、一部の実施形態では、航空機102が失速することを防ぐために航空機操縦者指令を入力しなくても複数の飛行制御デバイスを制御するアクションを自動的に取るように構成することができる。オートパイロットは、一部の実施形態では、航空機102の失速を防止するために複数の制御面の中でラダー及びスラットのうちの少なくとも1つを制御することができる。より具体的には、オートパイロットは、航空機102の迎え角を小さくするためにラダーの偏向度を大きくすることができる。更に、オートパイロットは、航空機102の翼108の前縁110にあるスラットを伸ばす指令を発することができる。
【0041】
段階230において、処理ユニット118は、一部の実施形態では、角度128が更新された迎え角閾値よりも上であるか否かを決定する。段階230で、角度128が更新された迎え角閾値よりも上であると処理ユニット118が決定した場合に、本方法は段階232へ続く。段階230で、角度128が更新された迎え角閾値を超えていないと処理ユニット118が決定した場合に、本方法は繰り返され、段階202から始まる。
【0042】
段階232で、特定の実施形態により、警告信号が生成される。警告信号は、ルックアップテーブル120に従って実際の迎え角128に対するリアルタイム着氷106の影響に基づく場合があり、一部の実施形態では、潜在的な失速条件を示すことができる。例えば、警告信号は、少なくとも航空機102の角度128が迎え角閾値よりも大きい場合に生成される場合がある。表示ユニット126は、特定の実施形態では、飛行中の氷厚みに基づいて航空機102が迎え角閾値に近づいたことをコックピット124内の航空機操縦者に通知することができる。ディスプレイ126からの警告信号は、航空機100の操縦者によって検出されるような方法で生成される場合がある。例えば、警告信号は、表示ユニット126から発出される可聴警報、コックピット124内の表示ユニット126上の視覚インジケータ、及び/又は触覚警報のうちの少なくとも1つとすることができる。視覚インジケータは、例えば、色の点滅、太字、フォントの修正、アニメーション、数字の点滅、ライトの点滅、又は何らかの他の適切なタイプのインジケータのうちの少なくとも1つを含むことができる。可聴警報は、例えば、限定することなく、音色、言葉によるメッセージ、又は何らかの他の適切なタイプの可聴警報を含むことができる。触覚警報は、例えば、限定することなく、コックピット124内の制御ハンドルに取り付けられたデバイスに送る指令とすることができ、警告信号を生成するための信号を受け入れることに応答して制御ハンドルを揺らす又は振動させるように構成される。
【0043】
本発明の範囲から逸脱することなく本明細書に説明した方法200に修正、追加、又は省略を行うことができる。例えば、適切な場合は段階を組み合わせる、修正する、又は削除することができ、追加の段階を加えることができる。更に、段階は、本発明の開示の範囲から逸脱することなくいずれかの適切な順序で実行することができる。システム100の様々な構成要素が段階を実行するものとして説明したが、システム100のいずれかの適切な構成要素又は構成要素の組合せが、本方法の1又は2以上の段階を実行することもできる。
【0044】
図3は、本発明の開示のある一定の実施形態を実施することができるコンピュータシステムの例を示している。図1の処理ユニット118は、本発明の開示のある一定の実施形態により、コンピュータシステム300であるか又はそれを含むことができる。コンピュータシステム300は、1又は2以上のインタフェース304、メモリ302、及び1又は2以上のプロセッサ306を含むことができる。本発明の開示は、特定の配置で特定数の特定の構成要素を含む特定のコンピュータシステム300を説明して図示するが、本発明の開示は、いずれかの適切な配置でいずれかの適切な数のいずれかの適切な構成要素を含むコンピュータシステム300を考えている。
【0045】
インタフェース304は、ハードウエア及び/又はソフトウエアを含むことができる。インタフェース304は、入力(例えば、センサデータ又はシステムデータ)を受け入れ、出力(例えば、命令)を送り、入力及び/又は出力を処理し、及び/又は他の適切な作動を実行する。一例として、インタフェース304は、図1の複数のセンサ104から翼108の表面に関連付けられた氷厚み値の1組のような情報を受け入れる。インタフェース304は、一部の実施形態では、1又は2以上の生成された迎え角閾値及び/又は航空機102の角度128に対する1又は2以上の推奨調節値をプロセッサ306から受け入れ、そのデータをディスプレイ126に送る。インタフェース304は、適切な場合に1又は2以上のインタフェース304を含むことができる。本発明の開示では、特定のインタフェースを説明して図示するが、本発明の開示は、いずれかの適切なインタフェースを考えている。
【0046】
メモリ(又はメモリユニット)302は、情報を格納することができる。一例として、メモリは、図1のルックアップテーブル120を格納することができる。メモリ302は、1又は2以上の非一時的有形コンピュータ可読及び/又はコンピュータ実行可能ストレージ媒体を含むことができる。メモリ302の例は、コンピュータメモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は読取専用メモリ(ROM))、大容量ストレージ媒体(例えば、ハードディスク)、リムーバブルストレージ媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)又はデジタルビデオディスク(DVD))、データベース及び/又はネットワークストレージ(例えば、サーバ)及び/又はいずれかの他の適切なコンピュータ可読ストレージ媒体又はこれらのデバイスの組合せを含む。
【0047】
プロセッサ306は、一部の実施形態では、メモリ302及びインタフェース304を含むコンピュータシステム300の1又は2以上の構成要素に通信的に結合される場合がある。プロセッサ306は、命令を実行し、データを操作して処理ユニット118の説明した機能の一部又は全てを実行するために、1又は2以上のモジュールに実施されたハードウエア及びソフトウエアのいずれかの適切な組合せを含むことができる。プロセッサ306は、例えば、一部の実施形態では、1又は2以上のコンピュータ、1又は2以上の中央演算処理装置(CPU)、1又は2以上のマイクロプロセッサ、1又は2以上のアプリケーション、1又は2以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、1又は2以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び/又は他の論理部を含むことができる。プロセッサ306は、特定の実施形態により、少なくとも処理装置118で受け入れた氷厚み値の組及び複数の揚力計算変数に基づいて、測定された氷厚み値及び複数の揚力計算変数をメモリ302に格納することができるルックアップテーブル120と比較することにより、翼の飛行中にリアルタイムで図1の翼108が失速しない迎え角閾値を生成することができる。
【0048】
本発明の範囲から逸脱することなく本明細書に説明したシステムに修正、追加、又は省略を行うことができる。例えば、システム300は、いずれの数のプロセッサ306、メモリユニット302、及び/又はインタフェース304も含むことができる。構成要素は、統合されていても、分離されていてもよい。更に、作動は、より多い、より少ない、又は他の構成要素で実行することができる。
【0049】
本明細書では、「又は」は、明示的に別段の指示がない限り又は関連上その他を意味しない限り、包括的であって限定的ではない。従って、本明細書では、「A又はB」は、明示的に別段の指示がない限り又は関連上その他を意味しない限り、「A、B、又は両方」を意味する。更に、「及び」は、明示的に別段の指示がない限り又は関連上その他を意味しない限り、「共同的」と「個別的」の両方である。従って、本明細書では、「A及びB」は、明示的に別段の指示がない限り又は関連上その他を意味しない限り、「共同的又は個別的にAとB」を意味する。
【0050】
本発明の開示の範囲は、当業者が理解するであろう本明細書に説明し又は図示した例示的実施形態に対する全ての変更、置換、変形、代替、及び修正を包含する。本発明の開示の範囲は、本明細書で説明又は図示の例示的実施形態に限定されない。更に、本発明の開示は、本明細書でそれぞれの実施形態を特定の構成要素、要素、機能、作動、又は段階を含むものとして説明して図示したが、これらの実施形態は、いずれも本明細書の任意的な場所で説明又は図示した構成要素、要素、機能、作動、又は段階のいずれかに関して当業者が理解することになるいずれの組合せ又は並べ替えも含むことができる。更に、特許請求の範囲において、装置又はシステム又は装置又はシステムの構成要素が特定の機能を実行するようになっている、配置される、機能を含む、構成される、有効にされる、作動可能であるか又は作動するという言及は、その装置、システム、構成要素がそのようになっている、配置される、機能を含む、構成される、有効にされる、作動可能であるか又は作動する限り、その装置、システム、構成要素、又はその特定の機能が起動している、オンになっている、又はアンロックされているか否かに関わらずその装置、システム、構成要素を包含する。
図1A
図1B
図2
図3
【外国語明細書】