(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032070
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】高周波ホットバルーンカテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20220217BHJP
A61B 18/08 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B18/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135529
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】513000333
【氏名又は名称】有限会社日本エレクテル
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 修太郎
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK37
4C160KK47
4C160KK63
4C160KK64
(57)【要約】
【課題】アブレーションによる肺静脈隔離の進行状況を精度よくモニターすることができる、高周波ホットバルーンカテーテルシステムを提供する。
【解決手段】本発明の高周波ホットバルーンカテーテルシステムは、互いにスライド可能な外筒2と内筒3との間に、弾性を有するバルーン6が設置され、内筒3の先端に、バルーン6の膜面に近接して双極電極16a,16bが設置され、この双極電極16a,16bは通電線43,44を介して、体外の心内心電計41と電気刺激装置42に接続される。これにより、電気刺激装置42を用いた肺静脈ペーシングに伴う心房捕捉の有無を、心内心電計41で確認する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにスライド可能な外筒と内筒の間には、弾性を有するバルーンが設置され、
前記内筒先端には、前記バルーン膜面に近接して双極電極が設置され、
前記双極電極は、第1の通電線を介して体外の心内心電計と電気刺激装置に接続され、
前記バルーン内には、高周波通電用電極と温度センサーが設置され、
前記高周波通電用電極と前記温度センサーは、第2の通電線により体外の高周波発生器と温度計に接続され、
前記外筒と前記内筒の間には、前記バルーン内に通じる送液路が形成され、
前記送液路の一方は前記バルーン内に接続し、他方は前記バルーン内への液注入吸引用のシリンジと体外振動発生器に接続することを特徴とする高周波ホットバルーンカテーテルシステム。
【請求項2】
前記双極電極がバルーン膜に近接し、金、銀、銅やプラチナのような電気良導体でリング状であり、リング幅が1.5~3ミリメートルであり、内径は2~5ミリメートルであることを特徴とする請求項1に記載の高周波ホットバルーンカテーテルシステム。
【請求項3】
前記双極電極が近位電極と遠位電極とから構成され、前記近位電極はバルーン膜面と0.5~2.0ミリメートルの距離で近接する位置に設置され、前記遠位電極は前記近位電極より電極間距離が2~5ミリメートル遠位に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波ホットバルーンカテーテルシステム。
【請求項4】
前記電気刺激装置は、出力が5~100ミリアンペアで、パルス幅は5~30ミリセコンドであり、1分間あたり60~150のレートで連続ペーシングが可能であるように構成されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の高周波ホットバルーンカテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電界を放射してバルーンと接触する標的組織を適正に加温し、治療するための高周波ホットバルーンカテーテルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動(AF)の多くは、肺静脈内心筋スリーブに起因する事が分かっており、AFの根治療法としてバルーンカテーテルを利用したアブレーションによる肺静脈(PV)隔離が広く行われて成果をあげている。このとき診断用環状電極にて肺静脈電位(PVP)をモニターし、その電位消失をもって肺静脈隔離を判定している。
【0003】
バルーンカテーテルの内筒内を通過して肺静脈内に展開する極細の環状電極カテーテル(ラッソ型)を用いて、肺静脈電位をモニターする方法がある。
図1は、その方法を実現する従来の電極カテーテルアブレーションシステムの要部構成を示している。同図において、100は外筒101と内筒102とバルーン104とを含むバルーンカテーテルであり、弾性を有するバルーン104は、バルーンカテーテル100の先端遠位側で、互いにスライド可能な外筒101と内筒102との間に収縮膨張可能に設置される。バルーン104の内部には、高周波通電用電極105と温度センサー106がそれぞれ設置される一方で、中空な内筒102の内部を通過して、内筒102の先端部から突出する極細の環状電極107が設置される。
【0004】
図1に示すバルーンカテーテル100を利用したアブレーションでは、肺静脈PVと左房LAとの間の管腔臓器内で、バルーン104を電解質溶液で拡張させて肺静脈口に圧着し、バルーン104内部の電極105に高周波電流を通電してバルーン104内の充填液を加熱すると同時に、振動波をバルーン104内に送り、充填液を撹拌してバルーン膜の温度を例えば70℃に均一化する。バルーン膜を肺静脈口周囲組織の標的部位Sに接触させ、熱伝導によって標的部位Sを全周囲性に貫壁性に加熱焼灼して肺静脈隔離を目指す。このときバルーン104内に設置された温度センサー103と、バルーンカテーテル100の先端部に設置された電極107を用いて、バルーン104の温度と肺静脈電位をモニターすることで、アブレーションの進行を推測する。
【0005】
また本願出願人は、バルーンアブレーションカテーテルの先端に多極電極を付け、肺静脈電位をモニターしながら肺静脈隔離する方法を特許文献1で提案している。
図2Aは、その方法を実現する従来の電極カテーテルアブレーションシステムの要部構成を示している。同図において、ここでもバルーンカテーテル200は、バルーンカテーテル200の先端遠位側で、互いにスライド可能な外筒201と内筒202との間に、弾性を有するバルーン204を収縮膨張可能に設置した構成を有する。バルーン204の内部には、高周波通電用電極205と温度センサー206がそれぞれ設置される。またここでは、中空な内筒202の内部を通過して、内筒202の先端部から突出するガイドワイアー207と、バルーン204の前方側端部に近接する内筒202のバルーン近接部位に取り付けられ、バルーン204が膨張した状態で標的部位Sの近傍の電位等の電気的状態をモニター可能なモニター用電極208とを備えている。
【0006】
モニター用電極208は、内筒202の外側回りに配設され、ガイドシース209内にある拘束状態から抜け出ると、内筒202の軸心に直交する方向に展開可能な針金部材211と、各々の針金部材211に取り付けられ、標的部位Sの近傍の電位を検出する電極部212とを有する。バルーン204の前方側端部の内筒202の部位には、後方電極保持部213が固定して設けられており、後方電極保持部213は、針金部材211の後方側端部が取り付けられ電気的絶縁性に形成されており、バルーン204の外側にバルーン204に接して設けられている。また、後方電極保持部213とは別な電気的絶縁性の前方電極保持部214が、内筒202の軸心方向にスライド可能に、後方電極保持部213の前方側の内筒202に設けられている。前方電極保持部214には、針金部材211の前方側端部が取り付けられている。
【0007】
図2Aに示すバルーンカテーテル200を利用したアブレーションも、バルーン204を電解質溶液で拡張させて肺静脈口に圧着し、バルーン204内部の電極205に高周波電流を通電してバルーン204内の充填液を加熱すると同時に、振動波をバルーン204内に送り、充填液を撹拌してバルーン膜の温度を均一化する。バルーン膜を肺静脈口周囲組織の標的部位Sに接触させ、熱伝導によって標的部位Sを全周囲性に貫壁性に加熱焼灼して肺静脈隔離を目指す。ここでモニター用電極208は、ガイドシース209から抜け出ると、前方電極保持部214が後方側へスライドするとともに針金部材211が弓状に展開する。この状態で、
図2Aに示すように、針金部材211の中央部にある電極部212が標的部位Sの近傍に接触し、そこでの電位を検出することにより、バルーン204で焼灼中の標的部位Sの電位等の電気的状態を把握することが可能になる。
【0008】
図2Bは、特許文献1で提案した別な電極カテーテルアブレーションシステムの要部構成を示しており、
図2Aと共通する構成には同一の符号を付し、その説明は極力省略する。ここでのモニター用電極228は、ガイドシース209内にある拘束状態から抜け出ると、内筒202の軸心に直交する方向に転回可能である針金部材231と、各々の針金部材231の先端部に取り付けられ標的部位Sの近傍の電位を検出する球状の電極部232とを有する。後方電極保持部213は、バルーン204の内側にバルーン204に接して内筒202に固定して設けられている。モニター用電極228の針金部材231において、その後方側端部は後方電極保持部213に取り付けられており、その前方側端部は自由端として形成されている。針金部材231は、ガイドシース209内にある拘束状態から抜け出ると釣鐘状に展開し、針金部材231の自由端に取り付けられた電極部232が標的部位Sの近傍に接触して、そこでの電位を検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、
図1に示す従来の方法では、内筒102のルーメンを診断カテーテルとなる環状電極107で占拠すると、ガイドワイアーを挿入出来ないため、拡張したバルーン104の肺静脈口への保持が難しくなり、アブレーションの効率が下がる欠点がある。
【0011】
一方、特許文献1による方法を用い、アブレーション中に肺静脈電位が消失することによって、バルーン204による肺静脈隔離の達成を知ることができる。しかし、これは先端電極となるモニター用電極208,228を肺静脈内壁に密着しなければ、肺静脈電位の正確な記録が出来ないため、電極形状がバスケット型や釣り鐘型を呈する必要がある(
図2A、
図2B)。このため制作に手数がかかり、このような形状のモニター用電極208,228がバルーンカテーテル200の先端に付くと、操作が難しくなり、操作を誤ると破損し、部品の一部が飛んで塞栓をおこす可能性もあり、安全性に問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで上記問題点に鑑み、バルーンアブレーションカテーテルの先端に双極型のシンプルな電極を付ける発明を考案した。これにより一本のカテーテルで、バルーンにて肺静脈口を全周性にアブレーションしながら、バルーン先端電極で肺静脈電位をモニターすることが可能である。しかし、しばしばバルーン先端電極と肺静脈内壁との間が離れていて、肺静脈電位が判然としないときには肺静脈電位消失の判定が困難である。また肺静脈口近傍では心筋スリーブが発達しているが、肺静脈遠位では発達していない場合がある。心筋スリーブの発達が悪いと起電力は小さく、肺静脈電位も小さい。しかし、このような小さな心筋スリーブでも心房筋に繋がっていて不整脈の発生源となりうる。
【0013】
そこで本発明では、アブレーション中にバルーン先端電極より肺静脈内心筋スリーブを電気刺激(肺静脈ペーシング)し、その興奮波が心房に伝わり心房を興奮する様を心内心電計で観測し、この心房捕捉が消失することをもって肺静脈隔離の達成の指標とするような高周波ホットバルーンカテーテルシステムを考案した。このときバルーン先端電極が肺静脈壁に接触せず離れていても肺静脈ペーシングできるように、先端電極は双極電極とし、後方の近位電極はバルーン膜面に近接させて肺静脈口の心筋スリーブに接近させた。同時に先端の双極電極間距離を2~5ミリメートル、好ましくは2.5~5ミリメートルと広くとり、電気刺激としてパルス幅の広い(5~30ミリセコンド、好ましくは10~30ミリセコンド)かつ出力の大なるもの(5~100ミリアンペア、好ましくは10~100ミリアンペア)を用いた。そして、このために専用の大出力心臓電気刺激装置を作成した。この電気刺激装置からの強力な刺激電流は、バルーン先端の双極電極と肺静脈内壁が離れていても、この間に存在する血液の電気容量を満たした上で、肺静脈内壁の心筋スリーブに伝導してこれを興奮させることができる。そのためバルーン先端の双極電極と肺静脈内壁が離れていて肺静脈電位が判然としないときでも、肺静脈ペーシングが可能となり、バルーンアブレーション中、心房捕捉の有無によって肺静脈隔離の判定が可能となる。
【0014】
すなわち請求項1の発明は、互いにスライド可能な外筒と内筒の間には、弾性を有するバルーンが設置され、前記内筒先端には、前記バルーン膜面に近接して双極電極が設置され、前記双極電極は、第1の通電線を介して体外の心内心電計と電気刺激装置に接続され、前記バルーン内には、高周波通電用電極と温度センサーが設置され、前記高周波通電用電極と前記温度センサーは、第2の通電線により体外の高周波発生器と温度計に接続され、前記外筒と前記内筒の間には、前記バルーン内に通じる送液路が形成され、前記送液路の一方は前記バルーン内に接続し、他方は前記バルーン内への液注入吸引用のシリンジと体外振動発生器に接続することを特徴とする高周波ホットバルーンカテーテルシステムである。
【0015】
請求項2の発明は、前記双極電極がバルーン膜に近接し、それぞれ金、銀、銅やプラチナのような電気良導体でリング状であり、リング幅が1.5~3ミリメートルであり、内径は2~5ミリメートルとなるものである。
【0016】
請求項3の発明は、前記双極電極が近位電極と遠位電極とから構成され、前記近位電極はバルーン膜面と0.5~2.0ミリメートルの距離で近接する位置に設置され、前記遠位電極は前記近位電極より電極間距離が2~5ミリメートル遠位に設置されているものである。
【0017】
請求項4の発明は、前記電気刺激装置の出力が5~100ミリアンペアで、パルス幅は5~30ミリセコンドであり、1分間あたり60~150のレートで連続ペーシング可能となるものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明では、内筒先端でバルーン膜面に近接して双極電極が設置され、この双極電極は第1の通電線を介して心内心電計に接続されている。バルーン先端に双極性の電極を設けることにより、導電性が比較的良好な血液を介して、肺静脈電位を心内心電計に記録し、アブレーションによる肺静脈隔離の進行状況を確認することができる。さらに双極電極は第1の通電線を介して電気刺激装置に接続されているため、肺静脈隔離に伴う肺静脈電位の消失が判然としなくとも、電気刺激装置を用いた肺静脈ペーシングに伴う心房捕捉の有無を、心内心電計で確認することにより、肺静脈隔離の進行状況を精度よくモニターすることができる。
【0019】
請求項2の発明では、バルーン膜面に近接した双極電極が金、銀、銅やプラチナのような電気良導体でリング状であり、そのリング幅が1.5~3ミリメートルで、内径は2~5ミリメートルである。このため、心筋組織の電位を感度よく感知することができると共に、パルス幅が広く、強度の大きな電気刺激の使用に適合させることができる。
【0020】
請求項3の発明では、双極電極が近位電極と遠位電極とから構成され、近位電極はバルーン膜面と0.5~2.0ミリメートルの距離で近接する位置に設置されている。このため、心筋スリーブが発達している肺静脈口近傍に近接させて、肺静脈電位のモニターや肺静脈ペーシングを行うことができる。さらに、遠位電極は近位電極より電極間距離が2~5ミリメートル遠位に設置されていることで、バルーン先端の双極電極が肺静脈壁に接触せず離れていても、肺静脈ペーシングを支障なく行うことができる。
【0021】
請求項4の発明では、電気刺激装置の出力強度を5~100ミリアンペア(mA)、出力パルス幅を5~30ミリセコンド(ms)とすることにより、バルーン先端の双極電極が肺静脈壁に接触せず離れていても、肺静脈ペーシングを適切に行うことができるため、肺静脈ペーシングや肺静脈電位の計測に使用する電極の構造として、シンプルな双極電極を採用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来のラッソ型の電極を有する電極カテーテルアブレーションシステムの要部構成を示す説明図である。
【
図2A】従来のバスケット型の電極を有する電極カテーテルアブレーションシステムの要部構成を示す説明図である。
【
図2B】従来の釣鐘型の電極を有する電極カテーテルアブレーションシステムの要部構成を示す説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態における高周波ホットバルーンカテーテルシステムの要部構成を示す説明図である。
【
図4】本発明で使用する高周波ホットバルーンカテーテルシステムの使用状態を示す図である。
【
図5A】肺静脈口付近にて、アブレーションの処置前に、左心房(LA)から肺静脈(PV)に伝わる電気信号を概念的に表す説明図である。
【
図5B】ブレーションの処置後に、左心房(LA)で発生する電気信号の伝導がアブレーション処置部分でブロックされる様子を示した説明図である。
【
図6】アブレーションの処置前に本発明の双極電極で観測した、左心房(LA)から肺静脈(PV)に伝わる肺静脈電位(PVP)が記録されている心電図波形である。
【
図7】本発明に係る高周波ホットバルーンカテーテルシステムを用いて治療を行っている際のX線透視図である。
【
図8】肺静脈ペーシングの際、電気刺激装置で生成されたパルス波電気信号が、双極電極から肺静脈内心筋スリーブを電気刺激して、その興奮波が左心房に伝わる様子を表した説明図である。
【
図9】アブレーションの前に肺静脈ペーシングが行われたときの、心電図波形である。
【
図10】電気刺激による興奮波の伝導がアブレーション処置部位でブロックされる様子を概念的に表した説明図である。
【
図11】アブレーションを行いながら肺静脈ペーシングを実際に行ったときの心電図波形である。
【
図12】肺静脈を興奮させるために必要とされる刺激電気の強度と、そのパルス幅の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明で提案する高周波ホットバルーンカテーテルシステムについて、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、別段の定めがない限り、「前方」または「前方側」との記載は、後述するガイドワイアー10の先端部がある遠位側を指し、「後方」または「後方側」との記載は、操作者によって扱われる近位側を指すものとする。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態におけるバルーンカテーテルアブレーションシステムの要部構成を示している。同図において、1は管腔臓器内に挿入可能な柔軟性に富む筒状のカテーテルシャフトであって、このカテーテルシャフト1は、互いに前後方向にスライド可能な外筒2と内筒3とにより構成される。外筒2の先端部4と、内筒3の先端部5近傍との間には、収縮拡張可能なバルーン6が設けられている。バルーン6は、ポリウレタンやPET(ポリエチレンテレフタラート)などの耐熱性に富むレジンで薄膜状に形成され、バルーン6の内部に液体(通常は、生理食塩水と造影剤の混合液)が充填されることによって、回転体形状である例えば略球形に膨らむようになっている。
【0025】
カテーテルシャフト1内部の外筒2と内筒3との間には、バルーン6の内部に形成した充填部8に通じて、この充填部8に液体を送ると共に振動波を伝える送液路9が形成される。10は、バルーン部8を標的部位Sに誘導するためのガイドワイアーであり、このガイドワイアー10は、内筒3の内部を挿通して設けられている。
【0026】
バルーン6の内部には、高周波通電用電極11と温度センサー12がそれぞれ設置される。高周波通電用電極11は、バルーン6の内部を加熱する電極として、内筒3にコイル状に巻回されて設けられている。また、高周波通電用電極11は単極構造であって、カテーテルシャフト1の外部に設けられた対極板13との間で高周波通電を行なうように構成され、高周波通電することにより高周波通電用電極11が発熱するようになっている。なお、高周波通電用電極11を双極構造として、両極間にて高周波通電を行なうように構成してもよい。
【0027】
温度検知部としての温度センサー12は、バルーン6の内部において内筒3の基端部側に設けられており、高周波通電用電極11に接して、この高周波通電用電極11の温度を検知する構成となっている。なお、本実施形態では図示しないが、当該温度センサー12の他に、バルーン6の内部温度を検知する別な温度センサーを、内筒3の先端部5近傍に固定してもよい。
【0028】
さらに、バルーン6の外部において、内筒3の先端部5には、対をなす双極電極16a,16bがバルーン6よりも前方に設置される。このとき、前記双極電極16a,16bのうち、後方側の近位電極となる双極電極16bは、バルーン6の膜面に好ましくは0.5~2.0ミリメートルの距離で近接して設けられ、且つ肺静脈口の心筋スリーブに接近される。また前記双極電極16a,16bのうち、前方側の遠位電極となる双極電極16aは、後方側の双極電極16bから内筒3の先端に向かって所定の位置に設けられており、一実施形態において、前方側の双極電極16aは後方側の双極電極16bから2~5ミリメートル、好ましくは2.5~5.0ミリメートル離れた位置に設置されている。これら双極電極16a,16bは、それぞれ通電線43,44を通じて、心内心電計41および電気刺激装置42に電気的に接続されている。
【0029】
バルーン6の内膜に近接する双極電極16a,16bは何れも、金、銀、銅やプラチナのような電気良導体であって、内筒3の先端部5外周に装着できるようにリング状に形成される。これら双極電極16a,16bのリング幅D1は、1.5~3ミリメートルで、内径D2は2~5ミリメートルである。
【0030】
双極電極16a,16bは、左心房から肺静脈(PV)に伝達される電気信号を感知するように構成されており、当該電気信号が、通電線43を介して肺静脈電位として心内心電計41に記録されるように構成されている。同時に、電気刺激装置42は通電線44を介して双極電極16a,16bに刺激電流を流せるように構成されており、バルーン6を管腔臓器内の壁面に密着させて、管腔臓器内を流れる血流を完全に遮断した状態で、双極電極16a,16bから左心房に刺激電流を流せるように構成されている。そして後に詳しく説明する通り、アブレーション中にバルーン6の先端に設けられた双極電極16a,16bより肺静脈内心筋スリーブを電気刺激し(肺静脈ペーシング)、その興奮波が心房に伝わり心房を興奮する様を心内心電計41で観測し、この心房捕捉が消失することをもって肺静脈隔離の達成の指標とすることができるようになっている。心内心電計41は、RA電極やCS電極など、心内の図示しない各種電極と電気的に接続可能な構成となっており、心房や心室の捕捉に伴う心電位を記録/モニターできるようになっている。
【0031】
なお、バルーンシャフト1の外部には、図示されない電位増幅装置や、高周波フィルターを設置することができる。電位増幅装置は体外の心電計41の一部として組み込むことも、心電計41とは独立に設けることもできる。電位増幅装置は、通電線43を通じてバルーン6の先端に設置した双極電極16a,16bにそれぞれ接続することができ、双極電極16a,16bから得られる遠隔電位を増幅して記録する増幅装置としての機能を備え、これらの電位波形の変化をモニターして、標的組織の焼灼の進行具合を追跡するためのものである。またここでは、後述する高周波発生器31から発生する高周波ノイズの影響をなくすために、高周波フィルターを組み込むことができる。通電線43,44は、内筒3の軸方向全長にわたり、内筒3に沿って固定することができる。
【0032】
上述したカテーテルシャフト1とバルーン6とによって、体内に挿入可能な形状を有するバルーンカテーテル21が構成される。バルーンカテーテル21の外部において、前記送液路9の基端には送液管22が連通接続される。この送液管22の途中には、三方活栓23の二つの接続口が接続され、三方活栓23の残りの一つの接続口に、バルーン6の収縮拡張用のシリンジ24が接続される。また、送液管22の基端には、バルーン6の内部撹拌用の振動発生器25が接続される。三方活栓23には指で回動操作可能な操作片27が設けられており、この操作片27を操作することで、シリンジ24と振動発生器25の何れかを、送液路9に連通接続させる構成になっている。
【0033】
液体注入吸引器としてのシリンジ24は、三方活栓23に接続する筒状体28に可動式のプランジャ29を備えて構成される。そして、三方活栓23によりシリンジ24と送液路9とを連通させた状態で、プランジャ29を押し込むと、筒状体28の内部から送液路9を通過してバルーン6の内部に液体が供給され、逆にプランジャ29を引き戻すと、バルーン6の内部から送液路9を通過して、筒状体28の内部に液体が回収されるようになっている。
【0034】
送液管22と共にバルーン内攪拌装置を構成する振動発生器25は、三方活栓23により送液路9と連通した状態で、送液路9を通じてパルーン6内部の液体に非対称の振動波を与えて、定常的に渦を発生させるものである。このパルーン6内の渦によって、バルーン6の内液が振動攪拌され、バルーン6の内部温度が均一に保たれるようになっている。
【0035】
また、バルーンカテーテル21の外部には高周波発生器31が設けられ、バルーン6の内部に設置された高周波通電用電極11と温度センサー12は、それぞれカテーテルシャフト1の内部に設けた通電線32,33によって、高周波発生器31と電気的に接続される。高周波発生器31は、通電線32を通じて高周波通電用電極11と対極板13との間に電力である高周波エネルギーを供給して、液体で満たされたバルーン6全体を加温するもので、別な通電線33を通じて送られてくる温度センサー12からの検知信号により、高周波通電用電極11ひいてはバルーン6の内部温度を測定出力し、その温度を表示する温度計(図示せず)を備えている。また、高周波発生器31は温度計で測定された温度情報を逐次取り込み、通電線32を通じて高周波通電用電極11と対極板13との間に供給する高周波電流のエネルギーを決定する構成となっている。通電線32,33は、内筒3の軸方向全長にわたり、内筒3に沿って固定されている。
【0036】
カテーテルシャフト1およびバルーン6を含むバルーンカテーテル21は、その内部を加熱する際に、熱変形などを起こさずに耐え得る耐熱性レジン(樹脂)の素材で全て構成される。バルーン6の形状は、短軸と長軸が等しい球形の他に、例えば短軸を回転軸とした扁球や、長軸を回転軸とした長球や、俵型などの各種回転体形状とすることができるが、どのような形状であっても、管腔内壁に密着した場合に変形するコンプライアンスの高い弾性部材で形成される。
【0037】
次に、本発明のバルーンカテーテルアブレーションシステムにおける実際の使用法について、
図3のバルーンカテーテル21の使用状態を示す
図4を参照して説明する。
【0038】
本発明に係るバルーンカテーテルアブレーションシステムは、心房細動の患者にて、心房細動の発生源となる肺静脈(PV)を隔離して、心房細動そのものを根治する目的に使用する。
【0039】
まず、麻酔下に大腿静脈を穿刺してガイドワイアー10を挿入し、ガイドワイアー10を介してガイドシース51を左心房(LA)内に挿入し、ガイドシース51を介してバルーンカテーテル21を挿入し、バルーン6よりも先端部にある双極電極16a,16bを肺静脈開口部に留置する。次にバルーンカテーテル21に付属するシリンジ24より造影剤と生理食塩水の混合液をバルーン6内に注入することによりバルーン6を拡張し、バルーン6の膜面を肺静脈口の標的部位Sに押し当てる。
図4には、拡張した状態のバルーン6および双極電極16a,16bが、肺静脈開口部に留置されている様子が図示されている。
【0040】
図5Aは、アブレーションの処置前に、肺静脈口付近にて左心房(LA)から肺静脈(PV)に伝わる電気信号を概念的に表した説明図である。双極電極16a,16bが肺静脈口の心筋スリーブに近接して配置されると、肺静脈(PV)の肺静脈電位(PVP)が、双極電極16a,16bに接続された通電線43を介して、心内心電計41にて記録される。図中、左側のPVは肺静脈を表し、右側のLAは左心房のある側を表す。図中、先端電極16a,16bの上に示された三角形の波形は左心房(LA)から肺静脈(PV)に伝わる電気信号を概念的に表したものであり、また図中、バルーン6の上下において肺静脈部分に認められる2つの太矢印記号は、この電気信号が伝播する方向を表している。双極電極16a,16bは左心房から肺静脈(PV)に伝達される電気信号を感知するように構成されており、当該電気信号は、通電線43を介して肺静脈電位(PVP)として心内心電計41に記録される。
【0041】
図5Bは、アブレーションの処置後に、左心房(LA)で発生する電気信号の伝導がアブレーション処置部分でブロックされることにより、左心房(LA)から肺静脈(PV)に電気信号が伝わらなくなる様子を示した説明図である。図中、バルーン6に接している肺静脈口において、ハッチングで色濃く示された部分は、アブレーション処置が行われた標的部位S’を示す。このアブレーション処置後の標的部位S’で左心房からの電気信号がブロックされ、双極電極16a,16bでこのような肺静脈電位(PVP)が感知されなくなったことを、心内心電計41で確認することにより、アブレーションが成功したか否かを判定することができる。
【0042】
図6は、アブレーションの処置前に、本発明の双極電極16a,16bを介して心内心電計41で観測された、左心房(LA)から肺静脈(PV)に伝わる肺静脈電位(PVP)が記録されている心電図波形である。図中、左端のHot1-2と記された波形は、バルーンカテーテル21の先端に設けられた双極電極16a,16bでの肺静脈電位記録を示す。またRAと記された計10本の線は、右心房(RA)に留置されたRA電極で感知した心内電位の心電図波形を表している。また図中、3つの太矢印記号T1の先に認められる小さな波P1は、左心房(LA)から肺静脈(PV)に伝わる電気信号に伴う肺静脈電位を示したものである。しかしながら、このような肺静脈電位の波形P1は極めて小さく、アブレーションが成功したか否かの判定には供さない。
【0043】
そこで本発明では、電気刺激装置42より双極電極16a,16bにパルス波電気信号を送出することにより、双極電極16a,16から肺静脈内心筋スリーブを電気刺激して肺静脈ペーシングを行い、その興奮波が心房に伝わり心房を興奮する様を心内心電計41で観測し、この心房捕捉が消失することをもって、肺静脈隔離の達成の指標とすることができるようになっている。
【0044】
そのために、まずバルーン6の先端から造影剤を注入する。
図7は、本発明に係る高周波ホットバルーンカテーテルシステムを用いて左下肺静脈隔離術が行われているときの、バルーンカテーテル21のX線透視図である。閉塞性PVを示すX線造影画像が得られたら、バルーン6は肺静脈口に密着しているので、バルーン6内の中心温度を温度計で測定しながら、高周波発生器31による高周波通電を開始する。そして、バルーン6内の中心温度が70度℃に達してから2~3分間通電を続行する。このとき心内心電計41で測定される肺静脈電位(PVP)が、30秒以内に消失したらアブレーションによる肺静脈隔離は順調に進行していることを示す。
【0045】
その後、肺静脈電位(PVP)が消失したら下記の肺静脈ペーシングを行い心房捕捉が起こるか否かを確認する。肺静脈ペーシングは、上記の肺静脈電位(PVP)の記録がうまく行かないときでも、ペーシングによる心房捕捉を確認しながら高周波発生器31による高周波通電を行うことで、アブレーション処置が成功したか否かを確認できるというものである。
【0046】
図8は、アブレーション処置が完了する前の肺静脈ペーシングに際し、電気刺激装置42で生成されたパルス波電気信号が、双極電極16a,16bから肺静脈内心筋スリーブを電気刺激して、その興奮波が左心房に伝わる様子を概念的に表した説明図である。図中、双極電極16a,16bの上に示されたパルス波形状の波形は、肺静脈内心筋スリーブを電気刺激するために双極電極16a,16bから肺静脈内心筋スリーブに送出される電気刺激パルス波信号を表している。また図中、バルーン6の上下において肺静脈部分に認められる2つの太矢印記号は、ペーシングにより電気刺激された肺静脈内心筋スリーブの興奮波が、心房に伝わる方向を示している。このようにして、肺静脈ペーシングにより肺静脈内心筋スリーブの興奮波が心房に伝播されると、心房が捕捉する。
【0047】
図9は、本発明に係る高周波ホットバルーンカテーテルシステムを用いて、アブレーション処置が完了する前に肺静脈ペーシングを実際に行ったときの心電図波形を表している。図中、4つの太矢印記号T2は、電気刺激装置42により双極電極16a,16bから電気刺激を行った位置を表しており、またRA電極ラインの下に記された丸記号R2は、双極電極16a,16bによるペーシングにより、心房が捕捉された波形P2の位置を表している。この心内心電図波形から、アブレーション処置が完了する前では、双極電極16a,16bから肺静脈口近傍の心筋スリーブに電気刺激を与えると、ペーシングによる電気刺激に対して心房捕捉の波形P2が1対1の割合で同期して起こっている様子が認められる。
【0048】
図10は、アブレーション処置後の肺静脈ペーシングに際し、電気刺激装置42で生成された電気刺激パルス波信号が、双極電極16a,16bから肺静脈内心筋スリーブを電気刺激するものの、その興奮波の伝導が、ハッチングで表されたアブレーション処置後の標的部位S’でブロックされる様子を、概念的に表した説明図である。図中、双極電極16a,16bの上に示されたパルス波形状の波形は、肺静脈内心筋スリーブを電気刺激するために、双極電極16a,16bから肺静脈内心筋スリーブに送出される、電気刺激パルス波信号を表している。ここでの電気刺激パルス波は、刺激時間幅(パルス幅)が5~10msで、刺激電圧が10~20Vとする。また図中、バルーンの上下の左側において肺静脈部分に認められる2つの太矢印記号は、ペーシングにより電気刺激された肺静脈内心筋スリーブの興奮波が伝わる方向を示している。このようにして、肺静脈ペーシングにより肺静脈内心筋スリーブの興奮波が生成されるものの、その興奮波はアブレーションによりブロックされるため、心房には伝導されない。故にアブレーション処置が成功した場合には、以下に詳しく説明する通り、肺静脈ペーシングに伴う心房捕捉が消失し、肺静脈ペーシングと心房リズムが同期せずに乖離が認められるため、このような心房捕捉の消失を以ってアブレーションの成功を判定することができる。
【0049】
図11は、本発明に係る高周波ホットバルーンカテーテルシステムを用いて、アブレーションを行いながら肺静脈ペーシングを実際に行ったときの心電図波形を表している。
図9と同様に、4つの太矢印記号T2は、電気刺激装置42により双極電極16a,16bから電気刺激を行った位置を表している。この心電図波形から、アブレーションが進行して肺静脈隔離が進むと、電気刺激と心房波が同期せずに乖離する様子が読み取れる。このように肺静脈ペーシングと心房リズムが乖離していたら、肺静脈(PV)から心房への伝導はブロックされ、アブレーションによる肺静脈隔離は順調であると判断することができる。一方で、バルーン温度が70度セ氏に達してから30秒以上たっても肺静脈電位消失や心房―肺静脈乖離が観られないときは、アブレーションは不成功であり、高周波発生器31による高周波通電を中止してバルーン6の位置を変える必要がある。
【0050】
このように、肺静脈電位(PVP)の記録がうまく行かないときであっても、肺静脈ペーシングによる心房捕捉を心内心電計41でみながら、高周波発生器31による高周波通電を行うことができる。また、肺静脈電位消失と肺静脈ペーシングによる心房捕捉の消失は、肺静脈と左心房間の両方向性ブロックを示すものとなる。
【0051】
図12は、本発明に係る高周波ホットバルーンカテーテルシステムを用いて、肺静脈を興奮させるために必要とされる電気刺激装置42からの刺激電気の強度とそのパルス幅の関係を、縦軸を刺激電流の電流強度[単位;mA]とし、横軸を刺激電流のパルス幅[単位;ms]として表したグラフである。図中、記号Aで記された破線は双極電極16a,16bが肺静脈内壁に近接している場合のグラフを表し、記号Bで記された破線は、記号Aの破線で示される場合よりも双極電極16a,16bが肺静脈内壁から離れている場合のグラフを表す。
【0052】
電気刺激装置42は、双極電極16a,16bに送出する刺激電流パルスの出力強度が5~100mA(ミリアンペア)の範囲となり、各刺激電流パルのパルス幅が5~30ms(ミリセコンド)の範囲となり、刺激電流パルスが周期的に1分間あたり60~150のレートで連続ペーシングが可能であるように、例えば図示しない操作体への操作で各々設定できるような電気回路を内蔵して構成するのが好ましい。
図12のグラフで示したように、双極電極16a,16bと肺静脈内壁との距離に拘わらず、刺激電流パルスのパルス幅が広くなるほど、より小さい電流強度で肺静脈を電気的に興奮させることが認められる。また、双極電極16a,16bが肺静脈内壁から離れるにつれ、より強い電流強度が必要となることも認められよう。
【0053】
こうして本実施形態では、バルーンカテーテル21の先端にバルーン6の膜面に近接して双極電極16a,16bを設置し、電気刺激装置42から双極電極16a,16bに広いパルス幅で強度の大きな刺激電流パルスを供給することにより、肺静脈口近傍の心筋スリーブに近接して肺静脈ペーシングが可能となり、その心房捕捉の有無を心内心電計41で確認することにより、アブレーションによる肺静脈隔離の進行状況をモニターすることができる。
【0054】
以上のように、本実施形態の高周波ホットバルーンカテーテルシステムは、互いにスライド可能な外筒2と内筒3との間に、弾性を有するバルーン6が設置され、内筒3の先端に、バルーン6の膜面に近接して先端電極となる双極電極16a,16bが設置され、この双極電極16a,16bは、第1の通電線となる通電線43,44を介して、体外の心内心電計41と電気刺激装置42にそれぞれ接続され、バルーン6内には、高周波通電用電極11と温度センサー12が設置され、これらの高周波通電用電極11と温度センサー12は、第2の通電線となる通電線32,33により体外の高周波発生器31と温度計に接続され、外筒2と内筒3との間には、バルーン6内に通じる送液路9が形成され、送液路9の一方はバルーン6内に接続し、送液路9の他方はバルーン6内への液注入吸引用のシリンジ24と体外振動発生器25に接続されるものである。
【0055】
この場合、内筒3の先端でバルーン6の膜面に近接して双極電極16a,16bが設置され、この双極電極16a,16bは通電線43を介して心内心電計41に接続されている。バルーン6先端に双極性の電極を設けることにより、導電性が比較的良好な血液を介して、肺静脈電位を心内心電計41に記録し、アブレーションによる肺静脈隔離の進行状況を確認することができる。さらに双極電極16a,16bは、通電線44を介して電気刺激装置42にも接続されているため、肺静脈隔離に伴う肺静脈電位の消失が判然としなくとも、電気刺激装置42を用いた肺静脈ペーシングに伴う心房捕捉の有無を、心内心電計41で確認することにより、肺静脈隔離の進行状況を精度よくモニターすることができる。
【0056】
また、上記の高周波ホットバルーンカテーテルシステムでは、双極電極16a,16bがバルーン6の膜面に近接し、それぞれ金、銀、銅やプラチナのような電気良導体でリング状であり、リング幅D1が1.5~3ミリメートルであり、内径D2は2~5ミリメートルとなるように構成される。
【0057】
この場合、バルーン6の膜面に近接した双極電極16a,16bが、金、銀、銅やプラチナのような電気良導体でリング状であり、そのリング幅D1が1.5~3ミリメートルで、内径D2は2~5ミリメートルである。このため、心筋組織の電位を感度よく感知することができると共に、パルス幅が広く、強度の大きな電気刺激の使用に適合させることができる。
【0058】
また、上記の高周波ホットバルーンカテーテルシステムでは、双極電極16a,16bが近位電極と遠位電極とから構成され、近位電極となる双極電極16bは、バルーン6の膜面と0.5~2.0ミリメートルの距離で近接する位置に設置され、遠位電極となる双極電極16aは、近位電極となる双極電極16bより電極間距離が2~5ミリメートル遠位に設置される。
【0059】
この場合、双極電極16a,16bが近位電極と遠位電極とから構成され、近位電極となる双極電極16bは、バルーン6の膜面と0.5~2.0ミリメートルの距離で近接する位置に設置されている。このため、心筋スリーブが発達している肺静脈口近傍に近接させて、肺静脈電位のモニターや肺静脈ペーシングを行うことができる。さらに、遠位電極となる双極電極16aは、近位電極となる双極電極16bより電極間距離が2~5ミリメートル遠位に設置されていることで、バルーン6先端の双極電極16a,16bが肺静脈壁に接触せず離れていても、肺静脈ペーシングを支障なく行うことができる。
【0060】
また、上記の高周波ホットバルーンカテーテルシステムでは、電気刺激装置42の出力強度が5~100ミリアンペアで、パルス幅は5~30ミリセコンドであり、1分間あたり60~150のレートで連続ペーシング可能となるものである。
【0061】
この場合、電気刺激装置の出力強度を5~100ミリアンペア(mA)、出力パルス幅を5~30ミリセコンド(ms)とし、1分間あたり60~150のレートで連続ペーシングをすることにより、バルーン先端の双極電極が肺静脈壁に接触せず離れていても、肺静脈ペーシングを適切に行うことができるため、肺静脈ペーシングや肺静脈電位の計測に使用する電極の構造として、シンプルな双極電極16a,16bを採用することが可能となる。
【0062】
なお本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。本発明は、血管や胆管の他に、尿道、尿管、膵管、気管、食道、腸管などの管腔臓器の狭窄部拡張に適用できる。また、電極16a,16b、カテーテルシャフト1、バルーン6、ガイドワイアー10などの各形状は、上記実施形態で示したものに限定されず、治療部位に応じた種々の形状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
2 外筒
3 内筒
6 バルーン
9 送液路
11 高周波通電用電極
12 温度センサー
16a 双極電極(遠位電極)
16b 双極電極(近位電極)
24 シリンジ
25 体外振動発生器
32,33 通電線(第2の通電線)
41 心内心電計
42 電気刺激装置
43,44 通電線(第1の通電線)