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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032082
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】線材搬送装置及び線材搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
B24B27/06 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135547
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】白木 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】日下田 裕司
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA05
3C158AA11
3C158AA14
3C158AA16
3C158AC02
3C158BA02
3C158BA09
3C158BC02
3C158CB01
3C158DA03
(57)【要約】
【課題】 線材に与えられた張力の変動を防止するとともに、複数のプーリにより引き回されている線材の張力を部分的に均一にする。
【解決手段】線材搬送装置10は、線材11を操出す線材供給部と、操出された線材11を回収する線材回収部と、線材供給部と線材回収部の間の線材11を引き回す複数のプーリ51とを備える。一又は二以上のプーリ51が導電性非磁性体から成り、導電性非磁性体から成るプーリ51に対向して永久磁石54が同軸に回転可能に設けられ、永久磁石54を回転させる回転手段56,57が設けられる。複数のプーリ51の全てが導電性非磁性体から成り、線材11が交互に掛け回される様に複数のプーリ51が配置され、回転手段が奇数番目のプーリ51にそれぞれ対向する永久磁石54を回転させる奇数番用モータ56と偶数番目のプーリ51にそれぞれ対向する永久磁石54を回転させる偶数番用モータ57とを有することが好ましい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材(11)を操出す線材供給部(20)と、操出された前記線材(11)を回収する線材回収部(120)と、前記線材供給部(20)と前記線材回収部(120)の間の前記線材(11)を引き回す複数のプーリ(51)とを備えた線材搬送装置において、
一又は二以上の前記プーリ(51)が導電性非磁性体から成り、
導電性非磁性体から成る前記プーリ(51)に対向して永久磁石(54)が同軸に回転可能に設けられ、
前記永久磁石(54)を回転させる回転手段(56,57)が設けられた
ことを特徴とする線材搬送装置。
【請求項2】
複数のプーリ(51)の全てが導電性非磁性体から成り、
線材(11)が交互に掛け回される様に前記複数のプーリ(51)が配置され、
回転手段が奇数番目のプーリ(51)にそれぞれ対向する永久磁石(54)を回転させる奇数番用モータ(56)と偶数番目のプーリ(51)にそれぞれ対向する永久磁石(54)を回転させる偶数番用モータ(57)とを有する
ことを特徴とする請求項1記載の線材搬送装置。
【請求項3】
単一の奇数番用モータ(56)が奇数番目の導電性非磁性体プーリ(51)にそれぞれ対向する複数の永久磁石(54)の全てを回転させ、
単一の偶数番用モータ(57)が偶数番目の導電性非磁性体プーリ(51)にそれぞれ対向する複数の永久磁石(54)の全てを回転させるように構成された
ことを特徴とする請求項2記載の線材搬送装置。
【請求項4】
奇数番目のプーリ(51)が単一の奇数番用支軸(58)に枢支され、前記奇数番目のプーリ(51)に対向する永久磁石(54)が前記奇数番用支軸(58)に取付けられ、奇数番用モータ(56)が前記奇数番用支軸(58)を回転させるように構成され、
偶数番目のプーリ(51)が単一の偶数番用支軸(59)に枢支され、前記偶数番目のプーリ(51)に対向する永久磁石(54)が前記偶数番用支軸(59)に取付けられ、奇数番用モータ(57)が前記奇数番用支軸(59)を回転させるように構成された
ことを特徴とする請求項3記載の線材搬送装置。
【請求項5】
線材供給部(20)から操出された線材(11)を複数のプーリ(51)に掛け回して搬送させた後に線材回収部(120)に回収させる線材搬送方法において、
複数のプーリ(51)の一又は二以上を導電性非磁性体とし、
少なくとも前記線材(11)の搬送中に前記導電性非磁性体プーリ(51)に対向させた永久磁石(54)を回転させて前記導電性非磁性体プーリ(51)を連れ回す
ことを特徴とする線材搬送方法。
【請求項6】
複数のプーリ(51)の全てを導電性非磁性体とし、
前記複数のプーリ(51)に線材(11)を交互に掛け回し、
奇数番目の前記導電性非磁性体プーリ(51)に対向する永久磁石(54)の回転速度と偶数番目の導電性非磁性体プーリ(51)に対向する永久磁石(54)の回転速度を異ならせ、
奇数番目の前記導電性非磁性体プーリ(51)を通過した線材(11)に加えられる負荷を偶数番目の前記導電性非磁性体プーリ(51)を通過させる際に減じる
ことを特徴とする請求項5記載の線材搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材を処理するために、又はその線材を用いて他の部材の処理を行うためにその線材を搬送させる線材搬送装置及び線材搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイヤモンド等の砥粒を電着や樹脂によって線材に固定した固定砥粒線材を走行させ、その線材をワークに接触させてそのワークを切断する線材搬送装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この線材搬送装置では、線材供給部から線材を操出し、その線材を線材回収部において巻き取るようにしており、その間を移動する線材をワークに接触させて切断するように構成される。
【0003】
ここで、線材供給部と線材回収部の間を移動する一本の線材は、複数のプーリに掛け回されて、処理に必要なように引き回される。例えば、線材をワークに接触させて切断するような場合、複数のプーリに線材を掛け回して並列状で同一方向に走行するよう引き回し、このように引き回されて形成された複数の線材からなる切断部にワークを押し当てることにより、そのワークを多数の薄片に同時に切断加工し得るとしている。
【0004】
一方、このような線材搬送装置は、搬送する線材自体を処理する場合にも用いられる。そして、例えば銅線のように比較的軟らかい材料から成る線材を処理するために、その線材を搬送する場合には、搬送される線材の延びを防止するために、線材に低い張力を加えた状態で搬送するようなことが求められる。
【0005】
このような線材搬送装置において、線材に低い張力を加える場合、線材が掛け回されるプーリにはグリスを抜いたベアリングを使用し、そのプーリの回転抵抗を最小限に抑えるようなことが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-89016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、プーリの回転抵抗を最小限に抑えたとしても、プーリを支持するベアリングによる抵抗がゼロになるようなことはなく、プーリが増えるほど、そのプーリに掛け回されて搬送される線材の張力は複数のプーリを通過する毎に徐々に増加してしまう不具合があった。
【0008】
また、プーリの慣性モーメントによりそのプーリに掛け回されて搬送される線材の搬送速度を加速する場合には、直ちにプーリの回転速度が増加することは無く、線材の張力が大幅に増加する不具合があり、逆に、そのプーリに掛け回されて搬送される線材の搬送速度を減速させる場合には、プーリの慣性モーメントによりプーリの回転速度が線材の減速速度に追従出来ずに、そこに掛け回されている線材が緩んでプーリから外れてしまうような不具合もある。
【0009】
ここで、線材の張力が低くない通常の張力の場合は、プーリの回転をモータで制御することにより、線材の加速及び減速時にそのプーリの回転を線材の加速又は減速に追従させることが考えられる。
【0010】
けれども、モータの制御が比較的煩雑で、プーリの回転をモータで直接制御しても、プーリの回転を線材の加速又は減速に完全に一致させることは困難であり、線材に加えられた張力の変動を完全にゼロにすることは不可能であった。
【0011】
このため、線材に加えられる張力が極めて低い、例えば、1g以下の張力を線材に加えているような場合、そのような線材に加えられた張力に変動が生じると、その線材に伸びが生じ、時に切断が生じるような不具合があった。
【0012】
本発明の目的は、線材に与えられた張力の変動を防止し得る線材搬送装置及び線材搬送方法を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、複数のプーリにより引き回されている線材の張力を部分的に均一にし得る線材搬送装置及び線材搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、線材を操出す線材供給部と、操出された線材を回収する線材回収部と、線材供給部と線材回収部の間の線材を引き回す複数のプーリとを備えた線材搬送装置の改良である。
【0015】
その特徴ある構成は、一又は二以上のプーリが導電性非磁性体から成り、導電性非磁性体から成るプーリに対向して永久磁石が同軸に回転可能に設けられ、永久磁石を回転させる回転手段が設けられたところにある。
【0016】
複数のプーリの全てが導電性非磁性体から成る場合、線材が交互に掛け回される様に複数のプーリが配置され、回転手段が奇数番目のプーリにそれぞれ対向する永久磁石を回転させる奇数番用モータと偶数番目のプーリにそれぞれ対向する永久磁石を回転させる偶数番用モータとを有することが好ましい。
【0017】
また、単一の奇数番用モータが奇数番目の導電性非磁性体プーリにそれぞれ対向する複数の永久磁石の全てを回転させ、単一の偶数番用モータが偶数番目の導電性非磁性体プーリにそれぞれ対向する複数の永久磁石の全てを回転させるように構成されたことが好ましく、奇数番目のプーリが単一の奇数番用支軸に枢支され、奇数番目のプーリに対向する永久磁石が奇数番用支軸に取付けられ、奇数番用モータが奇数番用支軸を回転させるように構成され、偶数番目のプーリが単一の偶数番用支軸に枢支され、偶数番目のプーリに対向する永久磁石が偶数番用支軸に取付けられ、奇数番用モータが奇数番用支軸を回転させるように構成されたことが更に好ましい。
【0018】
また、別の本発明は、線材供給部から操出された線材を複数のプーリに掛け回して搬送させた後に線材回収部に回収させる線材搬送方法の改良である。
【0019】
その特徴ある点は、複数のプーリの一又は二以上を導電性非磁性体とし、少なくとも線材の搬送中に導電性非磁性体プーリに対向させた永久磁石を回転させて導電性非磁性体プーリを連れ回すところにある。
【0020】
複数のプーリの全てを導電性非磁性体とした場合、複数のプーリに線材を交互に掛け回し、奇数番目の導電性非磁性体プーリに対向する永久磁石の回転速度と偶数番目の導電性非磁性体プーリに対向する永久磁石の回転速度を異ならせ、奇数番目の導電性非磁性体プーリを通過した線材に加えられる負荷を偶数番目の導電性非磁性体プーリを通過させる際に減じることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の線材搬送装置及び線材搬送方法にあっては、線材の加速及び減速時に、線材が掛け回されたプーリの回転速度を加速又は減速させるようにアシストするけれども、そのアシストは、導電性非磁性体プーリに対向させた永久磁石を回転させて導電性非磁性体プーリを連れ回すので、その導電性非磁性体プーリはモータに非接触でその回転が加速又は減速することになる。
【0022】
このため、プーリの回転の加速又は減速の程度と実際の線材の加速又は減速の程度との間に差が生じたとしても、その差による線材にかかる負荷の変動は、永久磁石の回転に対してプーリの回転がずれてその変動を吸収することができる。よって、本発明の線材搬送装置及び線材搬送方法では、線材に与えられた張力の変動を防止することが可能となるのである。
【0023】
また、複数のプーリに線材を交互に掛け回し、奇数番目の導電性非磁性体プーリに対向する永久磁石の回転速度と偶数番目の導電性非磁性体プーリに対向する永久磁石の回転速度を異ならせ、奇数番目の導電性非磁性体プーリを通過した線材に加えられる負荷を偶数番目の導電性非磁性体プーリを通過させる際に減じるようにすれば、複数のプーリにより引き回されている線材の張力を部分的に均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明実施形態の線材搬送装置を示す図3のA-A線断面図である。
図2図3のB-B線断面図である。
図3】その線材搬送装置の正面図である。
図4】その複数のプーリの回転をアシストしない場合の線材の張力を示す概念図である。
図5】その複数のプーリの回転を同一方向にアシストした場合の線材の張力を示す図4に対応する概念図である。
図6】その複数のプーリの回転を交互に逆方向にアシストした場合の線材の張力を示す図4に対応する概念図である。
図7】複数のプーリを同一の平面に設けた別の線材搬送装置を示す図3に対応する図である。
図8図7のC-C線断面図である。
図9】複数の永久磁石を複数のモータにより回転させる場合を示す図8に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図3に本発明の線材搬送装置10を示す。本発明の線材搬送装置10は、線材11を比較的低い張力で搬送するものであり、その線材11を操出す線材供給部20と、操出された線材11を回収する線材回収部120と、それらの間において移動することにより搬送される線材11を引き回す複数のプーリ51とを備える。
【0027】
図では、互いに直交するX、Y及びZの3軸を設定し、X軸が略水平前後方向、Y軸が略水平横方向、Z軸が鉛直方向に延びるものとして説明する。
【0028】
この実施の形態における線材供給部20と線材回収部120は対称構造をなしてその構造が等しく作られる。このため、線材供給部20に関する説明を中心に行い、線材回収部120にあっては、線材供給部20に付された符号に100を加えた符号を付すものとして、その詳細な説明は省略するものとする。
【0029】
図3に示すように、線材供給部20は、複数の取付脚21aを有する台板21を備える。この台板21は、伸長された複数の取付脚21aを介して水平に設置可能に構成される。この台板21の上面には、X軸に直交してYZ平面に平行な鉛直板25が取付けられ、この鉛直板25には軸方向をX軸方向に向ける繰出しリール22が設けられる。
【0030】
この実施の形態では、鉛直板25に繰出しリール22を回転させる繰出しモータ23がその回転軸23aをX軸方向に向けて設けられ、その回転軸23aに操出しリール22が同軸に設けられる場合を示す。
【0031】
この実施の形態における繰出しモータ23は、繰出しリール22が同軸に設けられた回転軸23aの回転速度を変更可能なサーボモータであり、この繰出しモータ23には図示しないコントローラの制御出力が接続される。そして、コントローラからの指令に基づいて繰出しモータ23がその回転軸23aを所定の速度で回転させることにより、その回転軸23aに同軸に設けられた繰出しリール22から線材11を解きほぐして繰出すように構成される。
【0032】
この繰出しリール22は、線材11をその巻胴部に巻回して貯線するものであり、この繰出しリール22に巻回される線材11は、この実施の形態では、軟らかい銅から成る比較的細い線材である場合を示す。けれども、この線材11は、この銅からなるものに限らず、例えば金線や銀線のように、比較的低い張力で搬送する必要があるものである限り、他のものであっても良い。
【0033】
鉛直板25には、繰出しリール22から繰出された線材11に一定の張力を付与する張力装置27が設けられる。この張力装置27は、繰出しリール22から繰出された線材11がS字状に掛け回される一対のガイドローラ27a,27bと、その一対のガイドローラ27a,27bが両端に枢支されて、その一対のガイドローラ27a,27bの中間を中心として回転可能に鉛直板25に枢支されたダンサーアーム27cと、そのダンサーアーム27cを所定のトルクで回転させようとするトルク用モータ27dとを備える。
【0034】
そして、トルク用モータ27dとしては、トルク制御により一定のトルクを生じさせるサーボモータが用いられ、このトルク用モータ27dにより付与されるダンサーアーム27cの回転しようとする付勢力によって、その両端に設けられた一対のガイドローラ27a,27bに掛け回された線材11に所定の張力を与えるように構成される。
【0035】
図示しないが、この張力装置27には、ダンサーアーム27cの基準位置に対する回転角度を検出する角度検出センサが設けられ、角度検出センサの検出出力は図示しないコントローラの制御入力に接続される。そして、コントローラは、図示しない角度センサが基準位置からずれるような回転角度を検出すると、繰出しモータ23を制御して繰出しリール22の回転速度を変化させ、繰出しリール22からの線材11の繰出し量を増減させて、ダンサーアーム27cを基準位置に一致させるように構成される。
【0036】
ここで、符号28は鉛直板25に枢支されて繰出しリール22から繰出された線材11を張力装置27に導くローラ28であって、符号29は鉛直板25に枢支されて張力装置27を通過した線材11を次に説明する基準速度ローラ31,32に導くローラ29を示す。そして、鉛直板25には、張力装置27を通過した線材11を挟持する一対の基準速度ローラ31,32が設けられる。
【0037】
この実施の形態において基準速度ローラ31,32は、Y軸方向に延びて線材回収部120に向かう線材11を鉛直方向の上下から挟むように鉛直板15に設けられる。鉛直板25には、下側の基準速度ローラ31を回転させる送りモータ33がその回転軸33aをX軸方向に向けて設けられ、その回転軸33aに下側の基準速度ローラ31が同軸に設けられる。この実施の形態における送りモータ33は、回転軸33aの回転速度を変更可能なサーボモータである。
【0038】
一方、下側の基準速度ローラ31より上方の鉛直板25には取付具34が取付けられ、この取付具34には鉛直棒36が鉛直方向に移動可能に支持するスライドベアリング37が設けられ、スライドベアリング37に挿通された鉛直棒36の下端には、上側の基準速度ローラ32を回転可能に支持する支持具38が取付けられる。
【0039】
取付具34と支持具38の間には鉛直棒36を下方に付勢するスプリング39が設けられ、支持具38に枢支された上側の基準速度ローラ32を下側の基準速度ローラ31に接触させるように構成され、その間に線材11が介在すると、その線材11を一対の基準速度ローラ31,32が上下から挟持するように構成される。
【0040】
更に、鉛直板25には、一対の基準速度ローラ31,32を通過した線材11が掛け回されて、その線材11の張力を検出する繰出線材用ロードセル41が設けられる。このロードセル41は、一対のガイドプーリ41a,41bと、その間に設けられた計測プーリ41cを有し、計測プーリ41cに加わる荷重により、このロードセル41を通過した線材11の張力を検出可能に構成される。
【0041】
この線材供給部20からY軸方向に離間して設けられた線材回収部120では、その線材11は回収線材用ロードセル141に掛け回され、その後、線材回収部120における一対の基準速度ローラ131,132及び回収側張力装置127を通過した後、その回収側リール122に巻回されるように構成される。
【0042】
けれども、この実施の形態における線材回収部120は、線材供給部20に無い張力設定ダンサー142と回収される線材11を回収側プーリ122の軸方向に案内するガイド装置143が設けられる場合を示す。張力設定ダンサー142は回収側ロードセル141より上流側に設けられるものとし、前述した線材供給部20の張力装置27と同一構造のものが用いられるので、繰り返しての説明を省略する。
【0043】
そして、その張力設定ダンサー142におけるダンサーアーム142cの基準位置に対する回転角度を検出する図示しない角度検出センサの検出出力は図示しないコントローラの制御入力に接続され、コントローラは、その角度センサが基準位置からずれるようなダンサーアーム142cの回転角度を検出すると、回収側送りモータ133を制御して基準速度ローラ131,132の回転速度を変化させ、その基準速度ローラ131,132が挟持して複数のプーリ51から引き出す線材11の回収速度を増減させて、ダンサーアーム142cを基準位置に一致させ、線材供給部20と線材回収部120の間における線材11の張力を所定の値に維持するように構成される。
【0044】
ガイド装置143は、回収側張力装置127を通過した線材11が掛け回される案内プーリ143aと、その案内プーリ143aを回収側リール122の軸方向となるX軸方向に移動させるアクチュエータ143bとを有し、アクチュエータ143bが案内プーリ143aを回収側リール122の軸方向に往復移動させることにより、回収側張力装置127を通過して案内プーリ143aに掛け回された線材11を回収側リール122の軸方向に案内してその回収側リール122に巻き取らせるように構成される。
【0045】
そして、線材供給部20におけるロードセル41及び線材回収部120におけるロードセル141におけるそれぞれの検出出力は図示しないコントローラに接続され、双方の基準速度ローラ31,131を回転させる送りモータ33,133には図示しないコントローラの制御出力が接続される。そして、コントローラはそれらロードセル41,141における検出出力に基づいて双方の送りモータ33,133を制御し、線材供給部20と線材回収部120の間を移動する線材11の張力を所定の値に維持するように構成される。
【0046】
このように構成された線材供給部20と線材回収部120の間に複数のプーリ51が設けられる。この実施の形態において、線材供給部20と複数のプーリ51と線材回収部120はY軸方向にこの順序に並んで設けられる場合を示す。そして、この実施の形態における複数のプーリ51は複数の取付脚52aを有する台板52に立設された支持板53に取付けられるものとする。
【0047】
本発明の特徴ある構成は、図1及び図2に示す様に、これら複数のプーリ51の一又は二以上が導電性非磁性体から成り、導電性非磁性体から成るプーリ51に対向して永久磁石54が回転可能に設けられ、その永久磁石54を回転させる回転手段56,57が設けられたところにある。
【0048】
この実施の形態では、線材11が交互に掛け回される様に複数のプーリ51が配置され、その複数のプーリ51の全てが導電性非磁性体から成り、回転手段が奇数番目のプーリ51にそれぞれ対向する永久磁石54を回転させる奇数番用モータ56と偶数番目のプーリ51にそれぞれ対向する永久磁石54を回転させる偶数番用モータ57とを有する場合を示す。
【0049】
具体的に、図2に示す様に、支持板53には鉛直方向に離間してX軸方向に延びる一対の支軸58,59がベアリング58a,59aを介して回転可能に設けられ、奇数番目のプーリ51が上側の奇数番用支軸58に同軸に所定の間隔を開けて枢支され、偶数番目のプーリ51が下側の偶数番用支軸59に同軸に所定の間隔を開けて枢支される。
【0050】
これら複数のプーリ51はそれぞれベアリング61(図1)を介して支軸58,59に低抵抗にて回転可能に枢支され、プーリ51間の支軸58,59には、そのプーリ51に対向して支軸58,59とともに回転する円板62がそれぞれ取付けられ、これらの円板62に永久磁石54がプーリ51に対向してそれぞれ取付けられる。そして、奇数番用モータ56は上側の奇数番用支軸58を回転可能に支持板53に取付けられ、偶数番用モータ57は下側の偶数番用支軸59を回転可能に支持板53に取付けられる。
【0051】
この実施の形態における奇数番用モータ56及び偶数番用モータ57はそれぞれ単一のものであり、それらの回転軸56a,57aをX軸方向に向けて支持板53に直接取付けられ、それらの回転軸56a,57aに支軸58,59が継ぎ手58b,59bを介してそれぞれ同軸に取付けられる場合を示す。
【0052】
これらのモータ56,57は、それら回転軸56a,57aの回転速度を変更可能なサーボモータであり、図示しないコントローラの制御出力が接続される。そして、コントローラはそれぞれのモータ56,57を制御して、それらの回転軸56a,57aに接続された支軸58,59を所定の速度で回転させるように構成される。
【0053】
コントローラからの指令に基づいて単一の奇数番用モータ56が駆動すると、上側の奇数番用支軸58が回転して、奇数番目の導電性非磁性体プーリ51にそれぞれ対向する複数の永久磁石54の全てが同時に回転し、その奇数番用支軸58に回転可能に設けられた奇数番目のプーリ51は、その永久磁石54に吸引されて連れ回ることになり、単一の偶数番用モータ57が駆動すると、下側の偶数番用支軸59が回転して、偶数番目の導電性非磁性体プーリ51にそれぞれ対向する複数の永久磁石54の全てが回転し、その偶数番用支軸59に回転可能に設けられた偶数番目のプーリ51は、その永久磁石54に吸引されて連れ回るように構成される。
【0054】
図2及び図3に示す様に、線材供給部20からY軸方向に操出された線材11の引き回しは、上側の奇数番用支軸58の基端側の奇数番目のプーリ51に最初に掛け回して下方に転向させ、下側の偶数番用支軸59の基端側における偶数番プーリ51に掛け回して上方に転向させ、上側の奇数番用支軸58の基端側から2番目の奇数番目のプーリ51に掛け回して再び下方に転向させる。
【0055】
このようなことを繰り返して線材11が交互に掛け回される様に複数のプーリ51が配置される。そして、最終的に、上側の奇数番用支軸58の先端側の奇数番目のプーリ51に最後に掛け回した線材11を線材回収部120に向けて転向させるものとする。
【0056】
この実施の形態における線材搬送装置10は線材11を処理するためのものであり、上側の奇数番目のプーリ51と下側の偶数番プーリ51の間に延びる線材11が処理範囲の線材11と成り、その処理範囲の線材11に所定の加工を施す処理装置71が、その線材11に対向して支持板53に取付けられる。
【0057】
例えば、処理装置71が、その複数のプーリ51間に掛け渡されて搬送される線材11に被覆を形成するようなものであれば、上側の奇数番目のプーリ51と下側の偶数番プーリ51の間に延びて移動する線材11の外表面に、処理装置71によって被膜がコーティングされることになる。
【0058】
次に、本発明の線材搬送方法について説明する。
【0059】
本発明の線材搬送方法は、線材供給部20から操出された線材11を複数のプーリ51に掛け回して搬送させた後に線材回収部120に回収させる方法であって、複数のプーリ51の一又は二以上を導電性非磁性体とし、少なくとも線材11の搬送中に導電性非磁性体プーリ51に対向させた永久磁石54を回転させてその導電性非磁性体プーリ51を連れ回すことを特徴とする。
【0060】
上述した線材搬送装置10を用い、搬送される線材11に処理装置71が被覆を形成する場合で説明すると、上述した線材搬送装置10では、複数のプーリ51の全てが導電性非磁性体とされ、奇数番目のプーリ51が単一の奇数番用支軸58に枢支され、偶数番目のプーリ51が単一の偶数番用支軸59に枢支されているので、それら複数のプーリ51に線材11を交互に掛け回して搬送することになる。
【0061】
具体的に、図3に示すように、処理すべき線材11が巻回されて貯線された繰出しリール22を線材供給部における繰出しモータ23の回転軸23aに同軸に取付け、その操出しリール22から引き出された線材11を張力装置27における一対のガイドローラ27a,27bにS字状に掛け回す。その張力装置27を通過させた線材11を一対の基準速度ローラ31,32に挟持させ、ロードセル41を通過させることにより線材供給部20から線材11を操出す。
【0062】
このように線材供給部22から操出された線材11を複数のプーリ51に交互に掛け回す。上述した搬送装置10において、線材供給部20から操出された線材11の引き回しは、図2に示す様に、上側の奇数番用支軸58における奇数番目のプーリ51と、下側の偶数番用支軸59における偶数番プーリ51に線材11を交互に掛け回し、その後に、図3に示す様に、その線材11を線材回収部120に向ける。
【0063】
線材回収部120では、複数のプーリ51から延びる線材11を張力設定ダンサー142に通過させ、その後、その線材11を回収線材用ロードセル141に掛け回し、線材回収部120における一対の基準速度ローラ131,132及び回収側張力装置127を通過させた後、ガイド装置143を介して回収側リール122に巻回させて回収する。
【0064】
上述したように線材11を引き回した後には、線材回収部120における一対の基準速度ローラ131,132を回転させて、それらが挟持する線材11を引っ張り、張力設定ダンサー142により複数のプーリ51に掛け回された線材11に所定の張力を加える。このときの張力は回収線材用ロードセル141により検出され、図示しないコントローラにフィードバックされることになる。この状態から線材11を搬送して、その線材11に処理装置71が所定の処理を行うことになる。
【0065】
この線材11の搬送は、処理装置71を稼働させた状態で線材11を線材供給部20から複数のプーリ51に向けて操出すとともに、複数のプーリ51を通過する際に処理装置71において所定の処理が成された線材11を線材回収部120において回収することにより行われる。
【0066】
線材供給部20からの線材11の操出しは、線材供給部20における一対の基準速度ローラ31,32を回転させて、それらが挟持する線材11を操出すことにより行われ、線材回収部120における線材11の回収は、一対の基準速度ローラ131,132を線材供給部20における一対の基準速度ローラ31,32と同一の速度で回転させて、それらが挟持する線材11を引っ張ることにより行われる。このようにして、それらの間にあって、複数のプーリ51に掛け回された線材11を所定の張力が加えられた状態で搬送させる。
【0067】
ここで、複数のプーリ51はそれぞれ支軸58,59にベアリング61を介して回転自由な状態となっている(図1)。このようにベアリング61を介していても、複数のプーリ51の回転抵抗はゼロでは無いので、図4に示す様に、複数のプーリ51に掛け回されて搬送される線材11の張力は、複数のプーリ51を通過する毎に、そのプーリ51の回転抵抗に基づく負荷が加わって徐々に増加することになる。図4では、プーリ51の回転抵抗により0.06グラムの負荷が線材11に加えられる場合を示し、この場合では、複数のプーリ51を通過する毎に0.06グラムの負荷が線材11に新たに加えられて、線材11の張力は徐々に増加することになる。
【0068】
けれども、本発明では、この線材11の搬送中に、導電性非磁性体からなる複数のプーリ51に対向する永久磁石54を回転させることを特徴とする。この永久磁石54の回転は、図2に示すモータ56,57を駆動させて、永久磁石54が設けられた円板61が取付けられたそれぞれの支軸58,59を回転させることにより行うことになる。
【0069】
永久磁石54を回転させると、永久磁石54における磁界が回転移動し、電磁誘導により導電性非磁性体からなるプーリ51の中に渦電流が生じ、その渦電流による磁界と永久磁石54による磁界の相互作用によりプーリ51の回転運動が起きる(アラゴーの円板)。すると、複数の導電性非磁性体プーリ51は回転する磁石54に連れ回ることになり、そこに掛け回された線材11の移動を助ける(アシストする)ことになる。
【0070】
従って、プーリ51の回転抵抗に等しい加重で導電性非磁性体プーリ51を回転させることにより、プーリ51を通過する毎に線材11の張力が増加する様なことを回避することができる。この結果、プーリ51を通過する際に生じる線材11の張力の変動は防止され、複数のプーリ51に掛け回された線材11の所定の張力を維持した状態で線材11を搬送することが可能となるのである。
【0071】
ここで、線材11を搬送するためには、その搬送を始める時点において、当初静止させた状態の線材11を徐々に移動させて加速する必要がある。この線材11の搬送速度の加速において、線材11が掛け回されたプーリ51の回転を補助(アシスト)しないと、そのプーリ51の回転速度が直ちに増加することは無く、線材11の張力が大幅に増加することになる。このため、線材11の搬送開始時の線材11の移動速度を加速する際にも、複数のプーリ51を徐々に回転するように補助することになる。
【0072】
しかし、搬送される線材11が比較的細い場合には、その切断や伸びを回避するために、線材11に付加する張力は比較的低い値とする必要がある。このような状態で、複数のプーリ51の回転速度の加速の程度と実際の線材11の加速の程度との間に誤差が生じ、プーリ51の加速が線材11の加速より上回っていると、その差により線材11における負荷が一時的に過大となって、線材11の伸びや切断が生じることになり、プーリ51の加速が線材11の加速より下回っていると、その差により線材11が緩んでプーリ51から外れてしまう様なことが生じ得る。
【0073】
けれども、本発明ではモータ56,57で永久磁石54を回転させることによりプーリ51を連れ回すので、そのプーリ51はモータ56,57に非接触で回転することになる。このため、ベアリング61の抵抗及びプーリ51の慣性モーメントを打ち消すようにプーリ51の回転速度を加速させた場合に、その加速の程度と実際の線材11の加速の程度との間に差が生じたとしても、その差による線材11にかかる負荷の変動は、永久磁石54の回転に対してプーリ51の回転がずれてその変動を吸収することができる。
【0074】
この結果、線材11における負荷が一時的に過大となるようなことや、プーリ51の加速が線材11の加速より著しく下回る様なことは回避される。よって、比較的細い線材11であって、その張力の変動に弱い線材11であっても、その伸びや切断を防止しつつ安定して線材11の搬送速度を加速させることが可能になる。
【0075】
この点は、線材11の搬送を終了させる際の、線材11の搬送速度を徐々に低下させて最終的に静止させる場合においても同様であって、プーリ51に掛け回されて搬送される線材11の搬送速度を減速させる場合にも、複数のプーリ51の回転速度が徐々に減速するように補助(アシスト)することになる。
【0076】
この時、複数のプーリ51の回転速度の減速の程度と実際の線材11の減速の程度との間に差が生じ、プーリ51の減速が線材11の減速より上回っていると、その差により線材11が緩んでプーリ51から外れてしまう様なことが生じ、プーリ51の減速が線材11の減速より下回っていると、その差により線材11における負荷が一時的に過大となって、線材11の伸びや切断が生じることになる。
【0077】
けれども、本件ではモータ56,57で永久磁石54を回転させることによりプーリ51を連れ回すので、そのプーリ51はモータ56,57に非接触で回転することになり、ベアリング61の抵抗及びプーリ51の慣性モーメントを打ち消すようにプーリ51の回転速度を減速させた場合に、その減速の程度と実際の線材11の減速の程度との間に差が生じたとしても、その差による線材11にかかる負荷の変動は、永久磁石54の回転に対してプーリ51の回転がずれてその変動を吸収することができる。
【0078】
この結果、線材11における負荷が一時的に過大となるようなことや、線材11の減速がプーリ51の減速より著しく下回る様なことは回避される。よって、比較的細い線材11であって、その張力の変動に弱い線材11であっても、その伸びや切断を防止しつつ安定して線材11の搬送速度を減速させることが可能になる。
【0079】
また、本発明では、線材11を等速に搬送して処理装置71によりその線材11を処理している処理時においても、モータ56,57で永久磁石54を回転させることによりプーリ51をモータ56,57に非接触で連れ回して回転させ、ベアリング61の抵抗及びプーリ51の慣性モーメントを打ち消す。
【0080】
この処理時においても、モータ56,57と非接触でプーリ51を回転させるので、線材11にかかる負荷に変動が生じても、永久磁石54の回転に対してプーリ51の回転がずれてその変動を吸収し、線材11における負荷が一時的に過大となるようなことは回避されて、比較的細い線材11であっても、その伸びや切断を防止しつつ、所定の張力を維持した状態で線材11に処理を施すことが可能となるのである。
【0081】
ただし、図5に示す様に、複数のプーリ51の数が比較的多い場合において、その全てのプーリ51を同じ方向(図5では線材11の進む方向)に補助(アシスト)すると、単一のプーリ51が線材11に加える負荷が積算されることから、張力を線材11の全長においてコントロールすることが困難となる場合がある。
【0082】
図5では、プーリ51の回転抵抗が0.06グラムであり、単一のプーリ51が線材11に加える負荷が線材11の進む方向に0.12グラムである場合を示し、この場合、その差である0.06グラムの負荷が複数のプーリ51を通過する毎に線材11の張力から新たに減じられ、線材11における張力が徐々に減少する場合を示す。
【0083】
一方、この実施の形態では、図2及び図3に示すように、線材11が複数のプーリ51に交互に掛け回される場合であって、複数のプーリ51に交互に掛け回されて互いに平行になる線材11の内の一方の線材11に対向させて処理装置71を支持板53に取付けるので、この処理装置71は、その一方の線材11に処理を施すことになる。
【0084】
そして、本実施の形態では、複数のプーリ51の全てを導電性非磁性体とし、回転手段が奇数番目のプーリ51にそれぞれ対向する永久磁石54を回転させる奇数番用モータ56と、偶数番目のプーリ51にそれぞれ対向する永久磁石54を回転させる偶数番用モータ57とを有するので、複数のプーリ51の数が比較的多く、張力を線材11の全長においてコントロールすることが困難となる様な場合には、奇数番目の導電性非磁性体プーリ51に対向する永久磁石54の回転速度と偶数番目の導電性非磁性体プーリ51に対向する永久磁石54の回転速度を異ならせることが好ましい。
【0085】
具体的に、図6に示す様に、1グラムの張力が付与された線材11を搬送する場合であって、プーリ51の回転抵抗により0.06グラムの負荷が線材11に加えられる場合で説明すると、例えば、奇数番目のプーリ51に対向する永久磁石54の回転を僅かに遅くして、それに連れ回る奇数番目のプーリ51を通過した線材11に搬送方向と逆に0.12グラムの負荷がかかるようにすると、その奇数番目のプーリ51を通過した線材11には、プーリ51の回転抵抗との差である0.06グラムの負荷が加わり、その張力は1.06グラムとなる。
【0086】
一方、奇数番目の導電性非磁性体プーリ51に対向する永久磁石54の回転速度と偶数番目の導電性非磁性体プーリ51に対向する永久磁石54の回転速度を異ならせ、偶数番目のプーリ51に対向する永久磁石54の回転を僅かに速くして、それに連れ回る偶数番目のプーリ51を通過した線材11に搬送方向に0.12グラムの負荷がかかるようにすると、その偶数番目のプーリ51を通過した線材11には、プーリ51の回転抵抗との差であるマイナス0.06グラムの負荷が加えられて、その張力は減少して1グラムに戻ることになる。
【0087】
従って、奇数番目の導電性非磁性体プーリ51に対向する永久磁石54の回転速度と偶数番目の導電性非磁性体プーリ51に対向する永久磁石54の回転速度を異ならせ、奇数番目のプーリ51を通過した線材11に加えられる負荷を、偶数番目のプーリ51を通過させる際に減じるようにすることにより、少なくとも、偶数番目のプーリ51を通過した線材11の張力を一定に保つようにすることが出来る。
【0088】
これにより、本発明では、複数のプーリ51により引き回されている線材11の張力を、部分的、この実施の形態では偶数番目のプーリ51を通過した線材11において均一にすることが出来る。このため、張力が均一となった線材11の部分、この実施の形態では、偶数番目のプーリ51を通過した線材11に処理装置71を対向させ、偶数番目のプーリ51を通過した線材11に処理装置71による所定の処理を行うことにより、線材11の均一な処理が期待できるのである。
【0089】
また、回転手段であるモータ56,57による永久磁石54の回転を制御することにより、線材11の張力を部分的に均一にするようにすれば、線材11に張力を付与する張力設定ダンサー142のようなテンション装置を不要にすることも可能となり、その線材11の部分における処理中の線材11の張力を変更することも比較的容易となる。
【0090】
なお、上述した実施の形態では、複数のプーリ51を支軸58,59に同軸に枢支され、処理装置71を支持板53に取付ける場合を説明した。けれども、図7に示すように、複数のプーリ51を同一平面に設け、図示しない処理装置を支持板53に対向して設置するようにしても良い。
【0091】
この場合、図8に示す様に、複数のプーリ51に対向する永久磁石54をベルト81により連結し、その複数の永久磁石54を単一の回転手段56により同時に回転するようにしても良く、図9に示す様に、複数のプーリ51に対向する永久磁石54毎に回転手段となるモータ56を設けても良い。ここで、図8に示す符号82は、プーリ51に対向する永久磁石54が取付けられた円板62に同軸に取付けられてベルト81が掛け回される連結用プーリ82を示す。
【0092】
また、図9に示す様に、複数のプーリ51に対向する永久磁石54毎に回転手段となるモータ56を設ければ、プーリ51を支持するベアリング61(図1)の抵抗のばらつきもプーリ51ごとにコントロールすることにより吸収が可能になったり、それらのプーリ51間のテンション値を別々にコントロールしたりすることも可能になる。
【0093】
即ち、複数のプーリ51に対向する永久磁石54毎に回転手段となるモータ56を設け、個々のプーリ51又は何個かのプーリ51をセットにして駆動すれば、プーリ51間に掛け渡される線材11の張力を個別に設定できるようになり、例えば線材11にコーティングを施した後に乾燥させる等、異なる線材11の張力値を単一の線材搬送装置10の中で設定するようなことも可能となる。
【0094】
また、上述した実施の形態では、引用する図面において支軸58,59を支持するベアリング58a,59aや、その支軸58,59に枢支される複数のプーリ51との間に設けられたベアリング61が、転動する球体を有するボールベアリングであるとして描いたけれども、これらのベアリング58a,59a,61は、軸と軸受の間に空気膜を形成して非接触で支持するエアベアリングであっても良い。
【符号の説明】
【0095】
10 線材搬送装置
11 線材
20 線材供給部
51 プーリ
54 永久磁石
56 奇数番用モータ(回転手段)
57 偶数番用モータ(回転手段)
58 奇数番用支軸
59 偶数番用支軸
120 線材回収部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9