(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032085
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】送受信独立一体型プローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20220217BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
A61B8/00
H04R17/00 332B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135563
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】512117683
【氏名又は名称】永井 清
(72)【発明者】
【氏名】永井 清
【テーマコード(参考)】
4C601
5D019
【Fターム(参考)】
4C601EE01
4C601EE03
4C601GA01
4C601GB02
4C601GB41
5D019AA13
5D019AA21
5D019BB02
5D019BB18
5D019FF04
5D019GG01
(57)【要約】
【課題】超音波診断装置用プローブの感度(Gain)は非常に低かった。その要因は同一のデバイスを使用して送受を行うため受波感度が非常に低いことに起因していた。本特許は、この課題を解決する手段を提案した。
【解決手段】解決の手段として超音波の発信部と、その受信部を分離し其々適切なデバイスを設けて効率化を計った。すなわち、発振部はパワーを必要とする為、剛性体で構成されているデバイスを使い、受信部には受波感度が極めて良い有機フィルムからなるデバイスを使用した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波診断装置用のプローブに於いて超音波を発信するデバイスと超音波を受信するデバイスが独立し、一体化されていることを特徴とするプローブ。
【請求項2】
請求項1を包含し、送信部デバイスおよび受信部デバイスは1対以上、保有することを特徴とするプローブ。
【請求項3】
請求項1および2を包含し、超音波の送信部は剛性体である圧電セラミック、金属または金属窒化物および金属酸化物等で構成さるデバイスからなり、超音波の受信部は柔軟体の圧電性有機フィルム或いは有機フィルムからなるデバイスで構成する事を特徴とするプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置に使用するプローブ(探触子)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は他の診断装置と異なり放射線等の被曝がない事、無侵襲であることから内科外科を問わず医療機関で広く利用されてきた。
超音波診断装置のキーデバイス(プローブ)は電気信号を超音波に変換(電気機械結合係数)する機能が高い事、またその感度を考慮すると比誘電率が大きいことが好ましい。
医療用超音波診断装置のプローブに用いられてきた圧電材料は1951~1952年に画期的な進歩を来した。すなわち従前から使用されてきたチタン酸バリュームに比べて比誘電率も大きく電気機械結合係数が大きいPZT(チタン酸ジルコン酸鉛 )(非特許文献1) が発見された。
【0003】
このPZTは以降も比誘電率および電気機械結合係数が高いものを求めて改良研究がなされ数多くのPZT系の圧電材料が開発(非特許文献2)されてきた。
【0004】
一方、圧電特性を持つセラミックスにおいて特に優れた圧電、誘電特性を示すPZTを単結晶にすれば更なる特性の改善が見込めるとの認識から1960年代後半からPZTの単結晶化の研究開発が推し進められてきた。
然しながら、高温からの冷却過程でチタン酸鉛とジルコン酸鉛が分離し単結晶となってしまうため、多結晶PZTが示す優れた特性の再現どころか、特性的には全く期待外れの内容であった。
1980年代に入りPZTに微量のリラクサ系材料(PZT圧電材料のジルコンの部分をマグネシウムおよびニオビウムで置換した材料)を添加して圧電単結晶の製造に成功した。
此の圧電特性を保有した単結晶(PMNT90/10)は電気機械結合係数92%、比誘電率は約5000 、d33は1550と言う、従前からあったPZTと比べたら驚異的な値を示し医療用プローブ材料として新たな道を開いた。特性的には非常に優れているが最大の欠点は、脆弱性が高く加工に難点があること、また現時点では結晶の育成に長時間かかる事や、大型のサイズが出来ない等々から非常に高価である欠点が挙げられる。
当初、大きなサイズのPZT単結晶はできなかったが昨今では~200Φmm程度のものまで製造可能になった。ただし、パルス特性は従前のPZTに比べて、やや劣る。
この様な欠点があるにもかかわらず、プローブの主流となりつつあるのは、先に触れた特性と併せ、周波数帯域特性が抜群に広いことがあげられる。
すなわち、第一に、大幅に改善された圧電特性は言うまでもないが周波数帯域幅が従来のPZTセラミック圧電材料に比して格段に広くなったため、従前は、2.5MHzのプロー ブと5MHzのプローブ2本を用意する必要が有ったところを、3.5MHzのプローブ1本で両周波数を賄える事になった。プローブの価格が1本数万円から数十万する事を考えると 、その経済効果は抜群である。
感度が向上したことにより、人体深部の高品位画像が得られる様になったことも大きな理由である。
ちなみに、生体の診断に用いられる超音波パルスの周波数は、体表から臓器までの深さや超音波の減衰等を加味して決まる。循環器や腹部では中心周波数2~5MHz、小児や乳腺、抹消部位で5~7.5MHz、血管内で10~30 MHzと言われている。
【0005】
以上説明してきた通りPZTに他の金属を微量加えて単結晶化した圧電材料が従前からあるPZT系圧電材料の一部特性を凌ぐことが判った。当然のことながら、PZTをベースにリラクサ成分と称せられる他の元素を加えた三成分系の多結晶PZT圧電材料も開発されてきた。適当な添加物の選定等により電気機械結合係数は50%~70%、比誘電率は3500~6000の範囲で、その特性の改善が図られることが判った。それ故プローブに要求される目的の性能に応じて、これら材料の選択が可能となった。
これにより医療用プローブに使われる圧電材料の電気機械結合係数および比誘電率が時間の経過と共に大幅に改善された。
しかし、細かに観ると誘電率の向上に対して電気機械結合係数の改善は半世紀の間、微々たる水準に留まった。また、電気的特性の内、帯域幅の改善はされたものの、パルス特性は旧態然たる状態で改善の跡は観られなかった。
【0006】
圧電材料自体の研究開発とは別に電気機械結合係数を改善する目的でPZT圧電材料からなる薄板を用意し、これの縦横方向に所望の切込みを入れる。次に、この切り込みに有機樹脂を満たし所謂1-3コンポジット構成(特許文献2)の圧電材料を製造し、これを用いた医療用超音波診断装置のプローブが提案された。この複合圧電材料の電気機械結合係数は素材の圧電材料の値を大きく上回り30~50%増しの電気機械結合係数が得られた。然しながら比誘電率は素材の圧電材料が保有する値の45~30%以下となってしまった。従って感度の点で製品化は難しかった。
ただし、この材料の帯域特性は極めて良く、ピーク周波数の-6dBの点で140%と言う驚異的な値を示した。単結晶を用いた1-3コンポジットの開発も行われたが上記理由により実用化は図られなかった。
【0007】
この他、PZT圧電セラミックスを焼結する段階で圧電セラミック中に空孔を存在させ、その特性を改善する目的でポーラスPZTが開発されてきた。非特許文献2には空孔率20% ~70%のPZT圧電セラミックの場合、以下に示す特性が紹介されている。 密度が低いことから、そのヤング率が低くなる。ヤング率の低減化は圧電素子のg定数( 圧電出力係数)が高くなる。
圧電振動子の縦方向の振動で測定したd定数(圧電歪定数)は原材料の PZTと比べ高くなるが比誘電率は大幅に減少する。
また、上記文献を参考にしたと推測される超音波診断装置用プローブが特許出願されている。(特許文献8)
【0008】
圧電材料中に空孔を介在させ、PZTの特性を根本的に改善する研究開発は長期に亘り精力的に行われてきた。
(特許文献1、3、4,5,6および7)
特性改善がなされたPZTは多結晶体にも拘らず、その特性の一部は単結晶圧電材料の特性に匹敵する。PZTより諸特性が優れている多結晶三成分系PZTも当然のことながら商品化され始めた。該多結晶三成分系PZT粉末原料を用いて、先に示した空孔を介在させた多結晶圧電セラミックを製造すると、その特性は単結晶圧電材料の特性とほぼ匹敵、一部の特性は、それより優れていることが判った。介在する空孔により機械的なエネルギー損失が増加するので、圧電素子に電圧を印加して超音波を発生させた後、振動の減衰率(ダンピング特性)が高くなる。従って、短パルスに近い超音波を送信する事が可能になり高分解能のプローブが製造できる。
このパルス特性は多孔質PZT特有の優れた特性で、同類のPZT系の圧電材料では得られない独特のものである。
【0009】
一方で1969年有機フィルムPVDF(ポリフッ化ビニリデン)に強い圧電効果がある事が見いだされた。その後さらに開発研究が進みP(VD/TrFE)(トリフッ化エチルビニリデン:非特許文献7)等、特性が改善された有機圧電材料が紹介された。周波数帯域が広い、パルス幅が短い、生体との音響インピーダンスのマッチングが良い等の特徴から高分子超音波プローブとして検討された事例は或る。普及しなかった理由として受信感度は無機セラミック圧電材料の約200倍良いが、発信する超音波の強度に難があった為と思料する。
【0010】
1994年スタンフォード大ヤクブ教授が全く新しい方式による電気機械変換素子を開発した。
半導体技術を駆使してSiウェハー上にSIN(窒化ケイ素)製のエンブレムを形成させ、これを上下電極で挟み超音波を発生せるものである。CMUT(Capacitive Micromachined Urutorasound Transducer)と呼ばれている。2017年に日立メディコが世界で初めて実用化しCMUT超音波探触子「Mappie」を発表した。
電気的特性として広帯域、短パルスを強調し、音響インピーダンスが限りなく人体に近い特徴を謳っている。更に、この変換デバイスは鉛フリィーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第1809202号:圧電振動子誘電材料
【特許文献2】特願昭56-120752:複合圧電材料の製造法
【特許文献3】特許第2994778号:多孔質圧電素子の製造法
【特許文献4】特願2018-134157:圧電材料の製造方法
【特許文献5】特願2018-211945:多孔質圧電材料の製造方法
【特許文献6】特願2019-096657:多孔質成形体とその製造方法
【特許文献7】特願昭63-240819:多孔質圧電セラミック材料の製造方法
【特許文献8】特願昭61-221960:複合圧電型超音波探触子
【特許文献9】特願平9-94718:圧電磁器
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】B.Jaffe and Others ‘’Properties of piezoelectric ceramic in the solid-solution series lead titanate-lead zircnate-lead oxide ‘’J.Reserch Natl.Bur.Standerds.Vol.55No.5pp239-254.1955
【非特許文献2】H.Jaffe and D.A.Berlincourt,"Piezoelectric transducer materials" Proc.IEEE,Vol.53.No.10,pp1372~1386,1965
【非特許文献3】J.Kuwata,K.uchino and S.Nomura"Dielectric and Piezoelectric proper of 0.91Pb(Zn1/3Nb2/3)O3-0.09PbTio3 single crystals"Jpn.J.Appl.Phys.Vol.21,No.9,pp1298-1302,1982
【非特許文献4】超広帯域イメージング送受2層構造プローブによる高調波の発生と検出:電子情報痛心学会技術研究報告、EA,応用音響(03/608),73-78:2004-01-21
【非特許文献5】非線形効果を用いた超広帯域超音波イメージング:非線形音響研究会資料(24-3):秋山いねま他、湘南工科大学工学部
【非特許文献6】"送受分離型プローブによる高次ハーモニックイメージの形成とスペックルリグクッション"電気情報通信学会技術報告:山本清之、他電気情報通信学会技術報告、US2002-107pp49-52,2003
【非特許文献7】高分子圧電材料:大東 弘二、化学と教育:44巻7号(1966)444-446
【非特許文献8】CMUT技術による超音波探触子「Mappie]の開発:佐光ほか:MEDIX Vol.51 31-34
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
先ず課題について触れる。PZTは高誘電体特性を持ち、これを代替する物質が見つかってない事とエレクトロニックスおよび医療用診断装置に於いて人類に多大な貢献をしてきたことを併せ鉛化合物であるにも拘わらずHoHS指令の規制除外品とされてきた。
然し、根底には常に鉛フリーの制約が有るがために超音波診断装置用プローブのキーマテリアルである素材も例外ではない。
【0014】
プローブ用の変換材料として圧電材料が用いられる場合、まず第一に感度を考慮すると比誘電率が高いことが第一条件となる。従って、これまでの開発は比誘電率の向上を目途に為されてきた。同時にプローブの電気的特性は広帯域であること,また、高品位の画像を得るためにシャープなパルスであることが強く望まれてきた。
【0015】
プローブとして、その送信超音波のパワーは可成り強力な領域まで要求される。その点剛性体である圧電セラミックは強力な超音波の発生源として極めて適している。反面、体内に発射された超音波が密度の変化により反射されてくる超音波をを受信する場合、剛体である圧電セラミックの受波感度は極めて悪い。従って、同一の圧電セラミックエレメントを用いて超音波の送受を行なう送受一体型の圧電セラミックを用いたプローブでは避けて通れない欠点となる。すなわちプローブとしてのゲイン(感度)が大変悪いと言う重欠陥が有る。
【0016】
有機フィルム製の圧電材料は柔軟性が極めて高い。これを送受一体型のプローブで使う場合には(0015)のケースとは見掛け逆の結果となる。
すなわち、受信感度は極めて高いのだが要求された送信パワーを全うできない難点がある。特に、受波感度g33は単純比較で無機圧電材料が15×10-3Vm/N、有機フィルムが約3Vm/Nなので有機フィルムは無機圧電材料の約200倍である。
【0017】
PZT或いは三成分系PZTおよび鉛フリー圧電材料をベースに、これを多孔質化した所謂ポーラス圧電材料は基本的には(0015)で述べた特性から逃れることはできないが(0014)で示した特性は全うしている。
【0018】
最近、全く新しい原理を利用した変換材料が実用化された。半導体の製造技術を使いSiウェハー上にSiの窒化物を形成し、これを以って微細なエンブレンを形成し、該エンブレムの上下に電極を設けて、此の電極間に電気信号を与え機械的振動を発生させて電気機械変換法としたものである。cMUT(Capacitive Micromachined Ultrasound transducer)と呼称されているもので既に、これをプローブとした超音波診断装置が発表されている。(非特許文献8)
この新しい方式の変換材料も超音波の送受と言う観点からすると、超音波の発信に関しては可成り強力なパワーを持ち合わせていると思われるが受波に関してはセラミック系圧電材料と同じく極めて不得意と想定される。特出している点は、ポーラスセラミック以外の従前からのセラミック圧電材料と比較して、極めてシャープなパルスが出る。従って、分解能が高い分、得られる画像は高画質である。此の点ポーラス圧電材料のパルス特性も同等の切れが有る。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は無機圧電材料、有機圧電材料および加工を施した無機圧電材料の長短所を解析し、最善の組み合わせによる新規プローブの提案に有る。
【0020】
歴史的に見た「電気―超音波変換材料」の変遷の跡を特性等に注目して概括するならば、既に述べた様に感度を向上させるため比誘電率を向上させることに腐心してきた経過が有る。しかしながら剛体である超音波発信源を使用する限り、同一剛体で反射超音波の受信を行う場合、受波感度が非常に小さいことは避けて通れない原理原則がある。付随的な電気的特性は開発例で示した通り原材料のPZTを多孔質化する等の改良研究により大幅に改善可能なことも判明している。
同時に、受波感度が非常に優れている有機圧電材料も開発されてきた。これらを使用し送受信別体で構成し、これらを一体化したセンサーについて検討(非特許文献3~5)されてきた。
これは医療用プローブに頻用されているアレイ型のセンサーではなく円筒形状のシングルブロックセンサーとして検討されたものであった。
【0021】
超音波診断装置用プローブとしての理想的なスペックは(イ)強力な超音波を発する能力を保有すること(ロ)人体の中で密度変化に応じて反射してくる微弱超音波を受信する能力が高いこと、である。
表1に今迄に知られている圧電材料の送受信等に関する得失を纏めて掲げた。これまではプローブの構成が単独圧電材料で構成されていたがため上記、要求特性に対して無理が有った。このため発振超音波の電圧に対して、反射してくる超音波の受信電圧の比(Gain)が非常に低かった。
【0022】
そこでプローブを発信部と受信部から構成し、送受信を別構成のセンサーで司る事を特徴とする超音波診断装置用プローブを考案した。
【0023】
表1に示した通り送信部の構成は強力な超音波を発することができる圧電セラミック系や最近開発されたcMUT、或いはその類似デバイスを使用する。受信部には受波感度が圧電セラミック系に対して約200倍の感度を有する有機圧電フィルム等を使用する。
【表1】
【発明の効果】
【0024】
プローブの受波感度が非常に高くなったため超音波発信入力を減少すことができた。消費電力の減少はプローブ自体の発熱を防ぎプローブを構成する部材および構成電気部品のスペックダウンを許容することになり、大幅なコストダウンならびに信頼性の向上に寄与した。
【0025】
受波感度の向上は入力パルス特性と相まって高画質を得る上で多大な貢献を果たすことに繋がった。
【0026】
プローブの設計上、プローブ構成上のキーマテリアルである圧電材料の選択肢を広げ、設計の自由度が厚くなった。
【0027】
従前のプローブはプローブの所要電力の関係でケーブルが必要であった。しかし送受信の効率化により先に記述した通り消費電力が極めて少なくなった。昨今32(エレメント)チャンネル程度のケーブルレスプローブが商品化された。しかし64,128,196チャンネルプローブとなると放熱の関係でケーブルレスの実用化が困難であった。本発明のデバイスを使用することによりケーブルレス多チャンネルプローブの実用化を可能とした画期的な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の1実施例を示す。超音波の発振部は従前からあるPZTで構成し、受信部をPVDFで構成した送受信独立一体型のプローブの単位構成エレメントの断面図である。
【
図2】従前からあるプローブの代用的な外観図を示す。
【
図3】プローブ構成細部を説明するための図である。
【
図4】有機圧電フィルムを用いた受信部構成の詳細を説明する図である。各エレメントに有機圧電フィルムを固定するハウジングと有機圧電フィルムの構成の詳細を拡大図により示した。
【
図5】本発明による1実施例を示す細目説明図で、超音波の発振部は
図3(a)に示した従前からあるPZTを使用した実施例である。その単位エレメントの断面を示す。超音波の受信はPVDFを使用した単位エレメントの構成(b)により、これを受ける。すなわち、超音波の発信と受信を完全に分離独立させて、これらを一体化した新しい方式のプローブの提案である。
【
図6】Semi-cMUTとでも言うべき新しい方式の超音波発信装置と、これとは別に独立した受信部を設けた超音波送受単位エレメントの説明図である。
【実施例0029】
PZT等圧電材料を使用したプローブの外観は
図1に示した通りである。このプローブは一般的には次に示した作業工程を通して製造される。工程の細目を
図2により説明する。予め圧電材料である薄板状PZT3の両面に下部電極2および上部電極4を設けて置く。下部電極2側にバッキング材1を張り付ける。次に上部電極4面上に音響整合層5および6を順次張り合わせる。
上記、所望の加工を施した圧電材料PZTを、目的とする構成エレメント数に切込みを入れて独立したエレメントとする。各エレメントをハウジング端子と電気的な結線を行う。この段階でプローブのハウジング内に収め最終仕上げとして音響レンズ7を整合層6の上に形成する。
【0030】
図4(a)に本特許で使用した超音波送信部の単一エレメントの詳細を示した。PZTエレメントの構成は
図3と同じである。従って、図面各部の付与番号の説明については割愛する。
【0031】
超音波の受信部の単位エレメントの構成を
図4(b)に示した。構成としてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の薄いフィルム13の両面に蒸着法等により金属の薄膜電極12および14を設けて置く。そのエレメントを受信部ハウジング15に接着剤を用いて固定する。
【0032】
超音波受信部の設計に当たっては次の設計基準、ルールに従う。
【表2】
【0033】
圧電材料PZTを用いた超音波発信部として、汎用的に使用される5MHzプローブを想定して受信部の設計について触れる。
PVDFの特性として広帯域およびパルス特性が極めて良いと言われているが、超音波の受信中心周波数として発信側に合わせることにする。
すなわち、5MHzに共振するPVDFの膜厚は表2に示された各種計算式より、その値を求めると約240μmの膜厚となる。
従って、膜厚240μmを指定しメーカー製造標準サイズのPVDFを用意する。ただし、予め所要の電極用金属を蒸着しておく。本特許に於いては下地蒸着金属として金5μm、その上にNi20μmとした。
この有機圧電フィルムを送信側構成エレメントに並行して設けた受信部ハウジング15に張り合わせて受信部セルとする。この工程の詳細を
図4を用いて説明する。
【0034】
図4(a)は受信部の有機圧電フィルムを固定する受信部ハウジング15の斜視図である。
図4(b)は(a)で示した指示軸X-X'で切断した断面図である。
【0035】
(c)図は、その両面に電極を設けた有機圧電フィルムを(b)図に示した受信部ホルダー15に固定した状態を示す。状態の詳細を示すため点線円で示す単位受信部セル(*3*)の拡大図を(c)に示した。
【0036】
本実施例では送信セルに対応した受信セルを設けるケースを説明したが、受信側のセルは必ずしも送信側セルと1対1の対応をとる必要は無い。すなわち、極端なケースでは送信側セル複数個に対して受信側セル1個を設ける事でも、所望の機能を全うできる。
また、送信側全セルに対して受信側セルが1個である構成の受信デバイスでも、目的とする機能を保持することは可能である。
【0037】
(0029)で説明した送信部と(0035で説明した受信部を一体として組み上げ
図1に示した。
送信部を構成する送信ユニット(*1*)と受信部は受信部を構成する受信ユニット(*2*)を絶縁物からなるスペーサー15を介して有機材料の受信部カーバー16で固定保護する。
図1は本発明の送受分離一体型のプローブを構成する単位エレメントの構成図である。
【0038】
図6はcMUTと同じ様な発想であるが効率よく振動版が振動(超音波を発する)する新たな提案である。言うなればSemi-cMUTと命名するに相応しい新しいデバイスである。
(A)に受信部の構成を示した。超音波を受信する金属または有機フィルム(少なくとも片側に電極としての金属を蒸着)33はスペーサー34を介して上下電極31および32で固定されている。
受信部は圧電性有機フィルムを使用しても良いが、ここでは柔軟性が特に高いフィルムを使用し受信感度を優先させた。
送信部(B)は金属製振動板43を絶縁物からなるスペサー44を介して、予め上下表面に電極41および42を設けた誘電体45の表面に固定する。電極45は金属メッシュからなり誘電体上部電極と同電位のため番号の付与はしていない。
超音波の発信は比誘電率が高い誘電体を使用し、振動板にはリン青銅合金等、極めて高いバネ性を持った金属を使用することにより効率よく超音波の発信ができる。