(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032095
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】座屈拘束建材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
E04B1/58 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135580
(22)【出願日】2020-08-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】320007424
【氏名又は名称】有限会社ISBT
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】岩田 衛
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA33
2E125AB12
2E125AC02
2E125AC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】芯材と2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間に所定量の隙間を高精度に確保することができる座屈拘束建材の製造方法を提供する。
【解決手段】芯材2と該芯材を挟み込む2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dとの間に所定量の隙間を確保するための隙間保持部材18を、2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に配置した座屈拘束建材の製造方法であって、芯材対向面の一部であって隙間保持部材が当接する部分である隙間基準面部3eに対しては、隙間の量を調整するための表面処理を施し、芯材対向面における隙間基準面部以外の面部に対しては、表面処理を施さない隙間調整工程を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と該芯材を挟み込む2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間に所定量の隙間を確保するための隙間保持部材を、該2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に配置した座屈拘束建材の製造方法であって、
前記芯材対向面の一部であって前記隙間保持部材が当接する部分である隙間基準面部に対しては、前記隙間の量を調整するための表面処理を施し、前記芯材対向面における該隙間基準面部以外の面部に対しては、該表面処理を施さない隙間調整工程を有することを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の座屈拘束建材の製造方法において、
前記隙間保持部材は、前記芯材よりも剛性又は強度の低い部材であって、前記2つの座屈拘束部材のうちの少なくとも一方の前記芯材対向面と前記芯材との間に挟み込まれることを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の座屈拘束建材の製造方法において、
前記芯材及び前記隙間保持部材を前記2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に配置して該2つの座屈拘束部材が互いに近づく方向へ加圧する加圧工程を含むことを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の座屈拘束建材の製造方法において、
前記隙間の量を把握するための測定を行う測定工程を含み、
前記隙間調整工程は、前記測定工程の測定結果が前記所定量の目標精度範囲内となるまで、前記隙間調整工程を繰り返し行うことを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の座屈拘束建材の製造方法において、
前記隙間調整工程の前に、前記芯材対向面を平滑化処理する平滑化工程を有することを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の座屈拘束建材の製造方法において、
前記隙間基準面部は、前記芯材対向面上の互いに離間した複数の箇所に設けられることを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【請求項7】
枠板内に硬化性材料を充填した2つの座屈拘束部材により芯材を挟み込んだ座屈拘束建材の製造方法であって、
前記2つの座屈拘束部材のうちの少なくとも一方の芯材対向面を形成する硬化前の硬化性材料上に、前記2つの座屈拘束部材の芯材対向面と前記芯材との間に所定量の隙間を確保するための隙間保持部材を設置し、前記隙間の量が前記所定量となる位置まで該隙間保持部材を前記硬化前の硬化性材料に押し込む工程を含むことを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【請求項8】
枠板内に硬化性材料を充填した2つの座屈拘束部材により芯材を挟み込んだ座屈拘束建材の製造方法であって、
前記2つの座屈拘束部材のうちの少なくとも一方について、該枠板内に硬化前の硬化性材料を充填する前又は後に、前記硬化性材料を介して前記芯材と対向することになる前記枠板内の面上に、前記2つの座屈拘束部材の芯材対向面と前記芯材との間に所定量の隙間を確保するための隙間保持部材を設置する工程と、
前記隙間保持部材に当接するように前記芯材を配置して、前記2つの座屈拘束部材を併合する工程とを含むことを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の主要骨組の層間に組み込まれ、層間変形が生じたときに塑性変形することでエネルギーを吸収して構造物の損傷を抑制する座屈拘束ブレースなどの座屈拘束建材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の座屈拘束建材としては、従来、2つの座屈拘束部材で芯材を挟み込んで構成される座屈拘束ブレースが知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、鋼板からなる枠板内にコンクリート又はモルタル(硬化性材料)を充填した2つの座屈拘束部材で、鋼材からなる芯材を挟み込んで、当該2つの座屈拘束部材の枠板同士を溶接して製造される座屈拘束ブレースが開示されている。この座屈拘束ブレースには、芯材と2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間に所定量の隙間を確保するための隙間保持部材が、当該2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6644370号公報
【特許文献2】特許第6709452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
座屈拘束ブレースなどの座屈拘束建材においては、芯材を長手方向に圧縮させるような荷重が加わることがある。このような荷重時に芯材が座屈せずに適切な復元力を発揮することで、座屈拘束建材は耐震部材/制振部材としての機能も果たすことが可能となる。このように座屈拘束建材を耐震部材/制振部材として機能させるためには、芯材と2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間に、所定量の隙間を高精度に確保することが重要となる。詳しくは、この隙間が広すぎると、芯材の軸方向圧縮荷重時に、芯材が、2つの座屈拘束部材の対向方向(芯材の長手方向に直交する方向、かつ、2つの座屈拘束部材が対向する方向)において、局所的に塑性変形してしまう。逆に、この隙間が狭すぎると、芯材の軸方向圧縮荷重時に、芯材が2つの座屈拘束部材に規制されて2つの座屈拘束部材の対向方向へ十分に変形できなくなる。この場合、芯材の圧縮軸力が座屈拘束部材に流れてしまう。
【0005】
ところが、前記隙間を確保する従来の方法では、所定量の隙間を高精度に確保することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、芯材と該芯材を挟み込む2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間に所定量の隙間を確保するための隙間保持部材を、該2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に配置した座屈拘束建材の製造方法であって、前記芯材対向面の一部であって前記隙間保持部材が当接する部分である隙間基準面部に対しては、前記隙間の量を調整するための表面処理を施し、前記芯材対向面における該隙間基準面部以外の面部に対しては、該表面処理を施さない隙間調整工程を有することを特徴とするものである。
本発明では、座屈拘束部材の芯材対向面上における隙間保持部材の当接する隙間基準面部に対して、前記隙間の量を調整するための表面処理を施す。例えば、芯材対向面上の隙間基準面部を削ったり、芯材対向面上の隙間基準面部にシートを貼付したり塗布材を塗布したりするような表面処理を施して、隙間基準面部のレベル調整を行い、隙間の量を調整する。
本発明においては、このような表面処理を芯材対向面の一部(隙間基準面部を含む面部分)に施すため、芯材対向面の全体に表面処理を施す場合よりも、当該表面処理を行う面積が小さくて済む。表面処理を行う面積が小さいほど、当該表面処理による隙間基準面部のレベル調整の精度が出しやすくなる。したがって、本発明によれば、隙間の量を調整するための表面処理を芯材対向面の全体に施す場合よりも、隙間基準面部の高精度なレベル調整が容易となる。
そして、隙間基準面部を高精度にレベル調整できると、2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に、隙間保持部材を空隙なくかつ適切な挟持力で挟持することが可能となる。これにより、芯材と2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間の隙間の量が、隙間保持部材の寸法精度に適切に対応したものとなるので、所定量の隙間を高精度に確保することができる。
【0007】
なお、上述した特許文献1や特許文献2には、芯材対向面のうち隙間保持部材が当接する部分である隙間基準面部だけに平滑化処理を施す技術が開示されている。しかしながら、この平滑化処理は、いわゆる凹凸を均して平滑にする処理であって、隙間の量を調整するための表面処理(当該隙間基準面部のレベル調整を行う表面処理)ではない。特許文献1や特許文献2に開示の技術では、隙間基準面部のレベル調整は、別途、芯材対向面の全体に対するレベル調整処理(平滑化処理とは別途に行われるレベル調整処理)によって行われる。すなわち、芯材対向面の全体に対するレベル調整処理によって隙間基準面部のレベルを調整した後、隙間基準面部だけに平滑化処理を施して凹凸を均すというものであり、本発明とは技術思想を異にするものと解される。
【0008】
また、本発明は、前記座屈拘束建材の製造方法において、前記隙間保持部材は、前記芯材よりも剛性又は強度の低い部材であって、前記2つの座屈拘束部材のうちの少なくとも一方の前記芯材対向面と前記芯材との間に挟み込まれることを特徴とするものである。
隙間保持部材としては、上述した特許文献1や特許文献2に記載のように、芯材の長手方向側方に配置されるものが知られている。この隙間保持部材は、芯材の長手方向側方で、2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に挟み込まれるものであるため、隙間保持部材の厚みには、芯材の厚みと隙間の量とを加算した分の厚みが必要となる。そのため、隙間保持部材が大型化、重量化し、隙間保持部材の取り扱い時における作業負荷が大きくなる。
これに対し、本発明の隙間保持部材は、2つの座屈拘束部材のうちの少なくとも一方の芯材対向面と芯材との間に挟み込まれるものである。そのため、隙間保持部材の厚みは隙間の量の分だけで済むので、隙間保持部材を小型化、軽量化でき、隙間保持部材の取り扱い時における作業負荷を軽減できる。
しかも、本発明の隙間保持部材は、芯材よりも剛性又は強度の低い部材である。そのため、座屈拘束建材の使用時に、芯材と2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間に介在する隙間保持部材が、芯材の軸方向圧縮荷重時における芯材の変形を妨げないような特性を発揮することができる。
【0009】
また、本発明は、前記座屈拘束建材の製造方法において、前記芯材及び前記隙間保持部材を前記2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に配置して該2つの座屈拘束部材が互いに近づく方向へ加圧する加圧工程を含むことを特徴とするものである。
隙間基準面部の高精度なレベル調整を行った場合でも、芯材及び隙間保持部材を2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に配置して2つの座屈拘束部材を併合したときに、各種製造誤差が積みあがって、隙間保持部材と座屈拘束部材の芯材対向面との間、あるいは、隙間保持部材と芯材との間、空隙が生じるおそれがある。このような空隙が生じると、芯材と2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間の隙間の量が、隙間保持部材の厚み分よりも、その空隙の量の分だけ増えてしまい、所定量の隙間を高精度に確保することができないおそれがある。
本発明によれば、このように2つの座屈拘束部材を併合した際、2つの座屈拘束部材を互いに近づく方向へ加圧する加圧工程を行うことで、2つの座屈拘束部材を変位させて前記空隙を無くすことができる。よって、2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に、隙間保持部材を空隙なく挟持することが可能となり、所定量の隙間を高精度に確保することができる。
ここで、確実に空隙を無くすためには、生じ得る最大の空隙を無くすまで座屈拘束部材を変位させるように加圧工程を行う必要がある。そのため、生じ得る空隙の量の範囲が大きいと、実際の空隙の量が最小であった場合に、加圧工程で隙間保持部材が大きく押しつぶされてしまい、芯材と2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間の隙間の量が、隙間保持部材の寸法精度に適切に対応したものとならず、所定量の隙間を高精度に確保することができないおそれがある。
しかしながら、本発明によれば、上述したように、隙間保持部材の当接する隙間基準面部が前記隙間調整工程により高精度にレベル調整されるため、従来よりも、生じ得る空隙の量の範囲が小さいものとなる。そのため、生じ得る最大の空隙を無くすまで座屈拘束部材を変位させるように加圧工程を行う際、実際の空隙の量が最小であったとしても、隙間保持部材が大きく押しつぶされるようなことはない。したがって、2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に、隙間保持部材を空隙なくかつ適切な挟持力で挟持することができるので、隙間の量を隙間保持部材の寸法精度に適切に対応したものとすることができ、所定量の隙間を高精度に確保することができる。
【0010】
また、本発明は、前記座屈拘束建材の製造方法において、前記隙間の量を把握するための測定を行う測定工程を含み、前記隙間調整工程は、前記測定工程の測定結果が前記所定量の目標精度範囲内となるまで、前記隙間調整工程を繰り返し行うことを特徴とするものである。
本発明においては、測定工程の測定結果により把握される隙間の量が所定量の目標精度範囲内となるまで、隙間調整工程を繰り返し行うことで、所定量の目標精度範囲(許容誤差範囲)内に隙間の量を高精度に調整することができる。
なお、隙間の量を把握するための測定方法は、特に制限はないが、隙間の量を直接的に測定することが困難であれば、例えば、芯材及び隙間調整部材を挟み込んだ状態の2つの座屈拘束部材の外壁間の距離を測定した結果から隙間の量を推定するような間接的な測定方法であってもよい。
【0011】
また、本発明は、前記座屈拘束建材の製造方法において、前記隙間調整工程の前に、前記芯材対向面を平滑化処理する平滑化工程を有することを特徴とするものである。
本発明においては、隙間調整工程の前に、芯材対向面を平滑化処理する前処理を行っておくことで、隙間調整工程における隙間の量を調整するための表面処理(隙間基準面部のレベル調整を行う表面処理)の作業が容易となり、隙間の量をより高精度に調整することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、前記座屈拘束建材の製造方法において、前記隙間基準面部は、前記芯材対向面上の互いに離間した複数の箇所に設けられることを特徴とするものである。
本発明においては、隙間基準面部が芯材対向面上の互いに離間した複数の箇所に設けられるので、隙間保持部材が分散して配置される。これにより、座屈拘束部材の芯材対向面において隙間保持部材が当接する隙間基準面部の占める面積割合を少なく抑えつつ、芯材と座屈拘束部材の芯材対向面との間の隙間の量を全面にわたって所定量とすることができる。座屈拘束部材の芯材対向面における隙間基準面部の占める面積割合が少なければ、隙間基準面部に表面処理を施す面積を少なくでき、隙間基準面部の高精度なレベル調整がより一層容易となるので、所定量の隙間を高精度に確保することが更に容易になる。
【0013】
また、本発明は、枠板内に硬化性材料を充填した2つの座屈拘束部材により芯材を挟み込んだ座屈拘束建材の製造方法であって、前記2つの座屈拘束部材のうちの少なくとも一方の芯材対向面を形成する硬化前の硬化性材料上に、前記2つの座屈拘束部材の芯材対向面と前記芯材との間に所定量の隙間を確保するための隙間保持部材を設置し、前記隙間の量が前記所定量となる位置まで該隙間保持部材を前記硬化前の硬化性材料に押し込む工程を含むことを特徴とするものである。
本発明においては、座屈拘束部材のうちの少なくとも一方の芯材対向面に隙間保持部材を設置するとき、その芯材対向面は硬化性材料(コンクリートやモルタル等)の硬化前の状態であるため、隙間保持部材を当該硬化前の硬化性材料に押し込むことができる。そのため、本発明では、隙間保持部材を当該硬化前の硬化性材料に押し込むことで、隙間の量が所定量となる位置(2つの座屈拘束部材の対向方向における位置)に、隙間保持部材を位置決めする。これにより、座屈拘束部材の芯材対向面(硬化後の硬化性材料)に対して隙間の量を調整するための表面処理を施すことなく、隙間の量を調整することができる。よって、所定量の隙間を高精度に確保することを容易化することができる。
【0014】
また、本発明は、枠板内に硬化性材料を充填した2つの座屈拘束部材により芯材を挟み込んだ座屈拘束建材の製造方法であって、前記2つの座屈拘束部材のうちの少なくとも一方について、該枠板内に硬化前の硬化性材料を充填する前又は後に、前記硬化性材料を介して前記芯材と対向することになる前記枠板内の面上に、前記2つの座屈拘束部材の芯材対向面と前記芯材との間に所定量の隙間を確保するための隙間保持部材を設置する工程と、前記隙間保持部材に当接するように前記芯材を配置して、前記2つの座屈拘束部材を併合する工程とを含むことを特徴とするものである。
本発明においては、硬化前の硬化性材料を枠板内に充填する前に、枠板内の面上に隙間保持部材を設置し、その後、その枠板内に硬化前の硬化性材料を充填する。または、枠板内に硬化前の硬化性材料を充填した後に、隙間保持部材を硬化前の硬化性材料内に入れ込んで、枠板内の面上に隙間保持部材を設置する。これによれば、枠板内の前記面からの隙間保持部材の高さを高精度に管理することで、枠板内に充填される硬化性材料によって形成される芯材対向面と、枠板内の面上に設置される隙間保持部材に当接するように配置される芯材との隙間が所定量となるように、芯材を位置決めすることが可能である。本発明における隙間保持部材は、硬化性材料によって形成される芯材対向面上に設置されるものではないので、芯材対向面(硬化後の硬化性材料)に対して隙間の量を調整するための表面処理を施すことなく、隙間の量を調整することができる。よって、所定量の隙間を高精度に確保することを容易化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、芯材と2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間に所定量の隙間を高精度に確保することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1における座屈拘束ブレースの斜視図。
【
図3】同座屈拘束ブレースの内部構造を示す縦断面図。
【
図4】同座屈拘束ブレースの内部構造を示す横断面図。
【
図5】同座屈拘束ブレースの他の内部構造を示す縦断面図。
【
図6】実施形態1における製造方法の流れを示すフローチャート。
【
図7】変形例における座屈拘束ブレースの分解斜視図。
【
図8】同座屈拘束ブレースの内部構造を示す横断面図。
【
図9】実施形態2における製造方法の流れを示すフローチャート。
【
図10】実施形態3における製造方法の流れを示すフローチャート。
【
図11】(a)~(c)は、それぞれ実施形態3における隙間保持部材の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態1〕
以下、本発明を、座屈拘束建材としての座屈拘束ブレースの製造方法に適用した一実施形態(以下、本実施形態を「実施形態1」という。)について説明する。
なお、本発明に係る製造方法によって製造される座屈拘束建材は、ブレース(筋交い)としての用途に限らず、例えば梁、柱、土台などの用途にも利用可能であり、以下に述べる本実施形態1の座屈拘束ブレースを梁、柱、土台などに用いることも可能である。
【0018】
図1は、本実施形態1における座屈拘束ブレースの斜視図である。
図2は、本実施形態1における座屈拘束ブレースの分解斜視図である。
図3は、本実施形態1における座屈拘束ブレースの内部構造を示す縦断面図である。
図4は、本実施形態1における座屈拘束ブレースの内部構造を示す横断面図である。
【0019】
本実施形態1の座屈拘束ブレース10は、鋼板からなる芯材2と、この芯材2を挟む2つの座屈拘束部材1,1とから構成されている。2つの座屈拘束部材1,1は、同じ構造のものである。本実施形態1における座屈拘束部材1,1は、枠板4,4内に硬化性材料としてのコンクリート又はモルタル(以下の説明では、モルタルを用いた例で説明する。)3,3を充填したものである。
【0020】
本実施形態1の芯材2は、平板形状であり、より詳しくは、芯材2の長手方向に直交する横断面(
図4に示す断面)において、2つの座屈拘束部材1,1の対向方向(
図4中上下方向)における長さが、2つの座屈拘束部材1,1の対向方向に対して直交する方向(
図4中左右方向)における長さよりも短い形状である。なお、芯材2の横断面形状は、これに限らず、例えば、円形状、楕円形状、十字形状などであってもよい。
【0021】
本実施形態1の芯材2は、平板状の芯材中間部6と、その両端に設けられる連結部8,8とからなる鋼板の一枚板構造である。なお、連結部8,8は、芯材中間部6から延びる鋼板(芯材2の基材)の上下面に、補強用の補強板が接合されたものであってもよい。この補強板によって、連結部8,8の強度は、芯材中間部6の強度よりも増強される。
【0022】
また、芯材2の連結部8,8にはリブ13,13が接合されており、横断面形状が十字形状となるように構成されている。また、連結部8,8には、当該座屈拘束ブレース10を建物に設置する場合になどに用いられる設置用のボルト穴14が形成されている。
【0023】
本実施形態1の座屈拘束部材1,1を構成するモルタル材3,3は、枠板4,4に充填されて製造されたモルタル、又は枠板4,4とは別の場所で製造されたモルタル製ブロックである。モルタル材3,3の両端部分には、
図2に示すように、芯材2の連結部8,8上に設けられるリブ13,13が挿入される斜溝20,20を設けている。
【0024】
本実施形態1の座屈拘束部材1,1を構成する枠板4,4は、鋼板によって形成され、
図4に示すように、底面4aと、その幅方向(
図4中左右方向)両端から立ち上る立面4b,4cとからなり、横断面形状がコの字形状となるように構成されている。なお、立面4b,4cの底面4aからの高さは、
図4に示すように、一方の立面4cよりも他方の立面4bの方が高くなっている。
【0025】
また、枠板4,4の長手方向両端部には、
図2に示すように、連結部8,8上に設けられるリブ13,13が挿入される間隔をあけて、一対の当て金24,24が設けられている。各枠板4,4の内部には、その開口側から、硬化前のモルタル材を充填し、又は、モルタル製ブロックからなるモルタル材3,3が挿入される。
【0026】
次に、芯材2と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d(モルタル材3,3の芯材対向面3d)との間に所定量の隙間Δt=Δt1+Δt2を確保する方法について説明する。
芯材2と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3dとの隙間Δtは、特に本座屈拘束ブレース10を耐震部材/制振部材として機能させる場合には、高精度に設定することが要求される。すなわち、この隙間Δtが広すぎると、芯材2の軸方向圧縮荷重時に、芯材2の芯材中間部6が、2つの座屈拘束部材1,1の対向方向(
図4中上下方向)において局所的に塑性変形してしまう。逆に、この隙間Δtが狭すぎると、芯材2の軸方向圧縮荷重時に、芯材2が2つの座屈拘束部材1,1に規制されて当該対向方向(
図4中上下方向)へ十分な変形(歪み)ができなくなる。この場合、芯材2の圧縮軸力が座屈拘束部材1,1へ流れてしまう。
【0027】
この隙間Δtを確保する方法として、本実施形態1では、
図2~
図4に示すように、芯材2と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dとの間に、隙間保持部材18を設ける。
【0028】
従来の隙間保持部材は、芯材2の長手方向側方で、2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dの間に挟み込まれるものであったため、隙間保持部材の厚みには、芯材2の厚みtと隙間Δtの量とを加算した分の厚みが必要となる。そのため、隙間保持部材が大型化、重量化し、隙間保持部材の取り扱い時における作業負荷が大きいものとなる。
【0029】
これに対し、本実施形態1の隙間保持部材18は、
図4に示すように、2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dと芯材2との間に挟み込まれるものである。そのため、隙間保持部材18の厚みは、隙間Δtの量の分だけで済むので、隙間保持部材18を小型化、軽量化でき、隙間保持部材18の取り扱い時における作業負荷が大幅に軽減される。
【0030】
特に、本実施形態1の隙間保持部材18は、
図2及び
図3に示すように、座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3d上の互いに離間した複数の箇所に分散して配置される。そのため、個々の隙間保持部材18は、非常に小型で軽量となり、隙間保持部材18の取り扱い作業が非常に楽である。
【0031】
隙間保持部材18の個数や配置箇所などの配置方法は、芯材2の全面にわたってほぼ均一に、2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dと芯材2との間に所定量の隙間Δtを保持できるものであれば、特に制限はない。したがって、例えば、
図3に示すように、長手方向(
図3中左右方向)における複数の箇所に、所定個数の隙間保持部材18を分散して配置してもよい。なお、配置する隙間保持部材18の個数は、個々の隙間保持部材18の寸法、芯材2や座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dの寸法などに応じて決められる。
【0032】
また、幅方向(
図3中上下方向)については、図中左側に示すように1つの隙間保持部材18を配置するようにしてもよい。また、図中左右中央付近に示すように2つの隙間保持部材18を配置するようにしてもよい。また、図中右側に示すように3つの隙間保持部材18を配置するようにしてもよい。また、図示しないが4つ以上の隙間保持部材18を配置するようにしてもよい。
【0033】
また、本実施形態1では、
図3に示すように、幅方向については、幅方向中心を通る線に対して線対称となるように配置される一方、長手方向については、非対称の配置となっているが、これに限られない。例えば、幅方向及び長手方向の両方について、対称となるように配置してもよいし、非対称となるように配置してもよい。
【0034】
また、配置される隙間保持部材18は、
図3に示すように、寸法や形状が異なるものが混在していてもよいが、
図5に示すように、全隙間保持部材18の寸法や形状が共通していてもよい。この場合、配置される隙間保持部材18は1種類で済むので、製造コストの削減に有利である。
【0035】
また、本実施形態1の隙間保持部材18は、2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dと芯材2との間に挟み込まれるため、芯材2の軸方向圧縮荷重時における芯材2の変形を妨げないような特性をもつ必要がある。言い換えると、2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dと芯材2との間に設けられる隙間Δtの機能(芯材2の軸方向圧縮荷重時における芯材2の適切な変形を確保する機能)を阻害しないような特性をもつ必要がある。そのためには、隙間保持部材18としては、少なくとも、芯材2よりも剛性又は強度の低い部材を用いる必要がある。
【0036】
一方で、本実施形態1の隙間保持部材18は、製造過程において、芯材2及び隙間保持部材18を2つの座屈拘束部材1,1で挟み込んだ後の状態で、2つの座屈拘束部材1,1の枠板同士を固定するまでの間、2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dと芯材2との間に所定量の隙間Δtを維持するのに十分な剛性又は強度も求められる。例えば、芯材2及び隙間保持部材18を2つの座屈拘束部材1,1で挟み込む作業は、製造作業の容易化のため、通常は、
図2に示すように、2つの座屈拘束部材1,1を上下方向に重ねるようにして行われる。そのため、本実施形態1の隙間保持部材18は、最低でも、一方の座屈拘束部材1の荷重が加わっても(更に芯材2の荷重も加わっても)、所定量の隙間Δtを維持できるような剛性又は強度が求められる。
【0037】
以上のような隙間保持部材18に求められる特性を得るための材料としては、例えば、ブチルゴムなどのゴム、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂、バルサ材などの木材が好適である。なお、隙間保持部材18の材料は、これらに限られるものではなく、適宜選択したものを用いることができる。
【0038】
本実施形態1において、隙間Δt(芯材2を一方の芯材対向面3dへ片寄せしたときの隙間)の下限値は、鋼材の塑性時のポアソン比が0.5であるとすると、芯材2の芯材中間部6における厚みtに対する塑性歪みaを用いて、Δt≧t×a/100×0.5で表すことができる。一例として、芯材2の芯材中間部6における厚みtが40mmであり、芯材2の塑性歪みaが最大3%程度であるとき、隙間Δtの下限値は0.6mm程度となる。なお、隙間Δtの上限値は、上述したように、芯材2の軸方向圧縮荷重時に芯材2の芯材中間部6が局所的に塑性変形してしまうことが防止できる範囲に適宜設定されるが、あまり大きな値に設定することができないため、隙間Δtの設定可能範囲が狭く、隙間Δtの高精度な管理が求められる。
【0039】
なお、本実施形態1では、芯材2の芯材中間部6と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3dとの隙間Δtと同様、芯材2の芯材中間部6の側面と座屈拘束部材1の内側壁19との隙間ΔW(芯材2を座屈拘束部材1の一方の内側壁19へ片寄せしたときの隙間)も、隙間Δtほどではないものの、比較的高い精度が求められる。例えば、前記の例においては、芯材2の芯材中間部6における幅が400mmである場合、芯材2の塑性歪みaが最大3%程度であるときには、隙間ΔW=ΔW1+ΔW2の下限値は6mm程度となる。この隙間ΔWの上限値も、上述したように、芯材2の軸方向圧縮荷重時に芯材2の芯材中間部6が局所的に塑性変形してしまうことが防止できる範囲に適宜設定されるが、あまり大きな値に設定することができないため、隙間ΔWの設定可能範囲が狭く、隙間ΔWも相応の高精度な管理が求められる。
【0040】
次に、本発明の特徴部分である、隙間Δtを高精度に管理することを可能にする本実施形態1における座屈拘束ブレース10の製造方法について説明する。
図6は、本実施形態1における製造方法の流れを示すフローチャートである。
まず、座屈拘束部材1を作製する(S1)。具体的には、まず、枠板4を製造するため、平板状の鋼板を折り曲げて底面4a及び立面4b、4cを形成した後、別の鋼板からなる一対の当て金24,24を溶接により取り付ける。その後、この枠板4内に、硬化前のモルタル材を充填し、又は別途作製しておいたモルタル製ブロックからなるモルタル材3を収納する。モルタル材3は、座屈拘束部材1の芯材対向面3dとなる面は、左官仕上げされている。
【0041】
この時点において、座屈拘束部材1の芯材対向面3dのレベル(ここでは、枠板4の底面4aの外壁面を基準にした芯材対向面3dの高さをいう。)は、平均的には、所定のレベル精度範囲内に粗調整されているが、局所的にはレベル精度範囲を超える突起部分が存在し得る。また、座屈拘束部材1の芯材対向面3dは、まだ凹凸の残る粗い面であり、凹凸によるレベルばらつきも残っている。
【0042】
そこで、本実施形態1では、必要に応じて、作製した座屈拘束部材1の芯材対向面3dの全体を平滑化する平滑化処理を行う(S2)。この平滑化処理は、硬化した状態のモルタル面である芯材対向面3dの全体に対して、表面の粗さをとり、平面性を向上させる処理であれば特に制限はなく、局所的にレベル精度範囲を超える突起部分を取り除き、また、凹凸を軽減できるものであればよい。平滑化処理は、例えば、芯材対向面3dの全体に対して、モルタル面上の突起部分や凹凸の凸部を削ることのできる電動工具を用いて行うことができる。この平滑化処理により、芯材対向面3dの全体のレベルをレベル精度範囲内に収め、かつ、凹凸によるレベルばらつきが抑制される。なお、平滑化処理では、例えば、芯材対向面3d上に分散して設定される複数の基準箇所におけるレベルを測定しながら、芯材対向面3dの全体に対して平滑化処理を行うのが好ましい。
【0043】
次に、本実施形態1では、芯材対向面3dの一部であって隙間保持部材18が当接する部分である隙間基準面部3eに対し、隙間Δtの量を調整するための表面処理(以下「レベル調整処理」という。)を施す(S3)。このレベル調整処理は、隙間基準面部3eのレベルが上述したレベル精度範囲よりも狭い調整範囲(例えば0.1mm)内に収まるように、隙間基準面部3eのレベルを高精度に調整する処理である。
【0044】
このような隙間基準面部3eのレベルの高精度調整を行う理由は次のとおりである。
本実施形態1の座屈拘束ブレース10には、上述したように、芯材2と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3dとの間の隙間Δtを高精度に管理することが求められる。この隙間Δtは、主として、芯材2と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3dとの間に挟み込まれる隙間保持部材18の厚みによって規定される。よって、この隙間Δtを高精度に管理するためには、まずもって、2つの座屈拘束部材1,1を併合した状態において芯材2と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3dとの間に全部の隙間保持部材18が空隙なく適切に挟持されることが重要となる。そのため、2つの座屈拘束部材1,1の併合時には、例えば万力やクランプなどの工具を使って、2つの座屈拘束部材1,1を互いに近づく方向へ全体的に加圧することが好ましい。そして、これにより全部の隙間保持部材18について芯材2及び芯材対向面3dとの間の空隙を無くした状態にしてから、2つの座屈拘束部材1,1を接合し、固定することで、高精度な隙間Δtを得ることができる。
【0045】
ところが、このとき、隙間保持部材18が当接する芯材対向面3d上の隙間基準面部3eのレベル精度が不十分であると、以下の問題が発生する。
全部の隙間保持部材18について芯材2及び芯材対向面3dとの間の空隙を無くすためには、2つの座屈拘束部材1,1を互いに近づく方向へ全体的に加圧する加圧作業時に、座屈拘束部材1,1を変位させることのできる大きな圧力を加えることになる。この座屈拘束部材1,1の変位により、空隙が無くなって、隙間保持部材18が挟持された状態になる。その後、更に加圧されて座屈拘束部材1,1の変位が進むと、隙間保持部材18が押しつぶされることになる。隙間保持部材18の変形が始まるタイミングでは、加圧に対する負荷が大きくなるので、この負荷変動を把握して、当該タイミングで座屈拘束部材1,1の変位を止めることができれば、芯材2と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3dとの間に全部の隙間保持部材18を空隙なく適切に挟持して、所定量の隙間Δtを高精度に得ることが可能である。
【0046】
しかしながら、上述したように、隙間保持部材18は、芯材2よりも剛性又は強度の低い部材を用いる必要があり、その剛性又は強度はあまり大きいものではない。そのため、加圧作業時において、空隙を無くしている時の負荷と、空隙が無くなって隙間保持部材18が押しつぶされる時の負荷との差が小さく、隙間保持部材18が押しつぶされ始めるタイミングを把握することが非常に困難である。そのため、加圧作業時において、隙間保持部材18を大きく押しつぶすほど座屈拘束部材1,1を変位させてしまって隙間Δtが狭くなり過ぎたり、また、座屈拘束部材1,1の変位が空隙を無くすには不足していて隙間Δtが広くなり過ぎたりして、所定量の隙間Δtを高精度に得ることができない。
【0047】
ここで、従来、芯材対向面3d上の隙間基準面部3eのレベル精度は、隙間基準面部3e以外の芯材対向面3d上の部分と同じく、芯材2と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3dとの間に全部の隙間保持部材18が空隙なく適切に挟持された状態において、隙間Δtが所定量の目標精度範囲内に収まるような精度範囲に設定される。隙間基準面部3eのレベルがこのような精度範囲で調整される場合、生じ得る空隙の量の範囲が広すぎて、生じ得る最大の空隙量を無くすまで座屈拘束部材1,1を変位させて空隙を確実に無くす場合、例えば、実際の空隙量が最小の空隙量であったときには、隙間保持部材18を大きく押しつぶしてしまい、隙間Δtが所定量の目標精度範囲から外れるほど狭くなってしまう。逆に、隙間Δtが所定量の目標精度範囲から外れるほど隙間保持部材18が押しつぶれることがない程度に座屈拘束部材1,1を変位させると、実際の空隙量が最大の空隙量であったときに、空隙が残ってしまって隙間Δtが所定量の目標精度範囲から外れるほど広くなってしまう。
【0048】
そこで、本実施形態1は、隙間保持部材18が当接する芯材対向面3d上の隙間基準面部3eのレベル精度を高め、隙間Δtを所定量の目標精度範囲に設定することを可能にしている。すなわち、芯材対向面3d上の隙間基準面部3eのレベル精度を高めることで、生じ得る空隙の量の範囲を狭めることができる。生じ得る空隙の量の範囲が狭くなれば、生じ得る最大の空隙量を無くすまで座屈拘束部材1,1を変位させて空隙を確実に無くす場合、実際の空隙量が最小の空隙量であった場合でも、隙間Δtが所定量の目標精度範囲から外れてしまうほど大きく隙間保持部材18が押しつぶされることがない。したがって、隙間Δtを所定量の目標精度範囲に設定することができる。
【0049】
芯材対向面3d上の隙間基準面部3eに対するレベル調整処理は、例えば、硬化した状態のモルタル面のレベル調整が可能な電動工具(電動カンナなど)を用いて行うことができる。本実施形態1では、このレベル調整処理を、芯材対向面3dの全体ではなく、隙間保持部材18が当接する隙間基準面部3eの部分だけに行うので、芯材対向面3dの全体に対してレベル調整処理を行う場合よりも、個々の隙間基準面部3eについて高いレベル精度を出すことが比較的容易であり、全部の隙間基準面部3e間のレベルバラツキも抑制できるので、全部の隙間基準面部3eを所望の調整範囲内に収めることが可能である。
【0050】
このようにして座屈拘束部材1の芯材対向面3d上の隙間基準面部3eに対するレベル調整処理が完了したら(S3)、次に、隙間保持部材18を芯材対向面3d上の各隙間基準面部3eに設置する(S4)。このとき、隙間保持部材18の製造誤差(厚み誤差)による隙間Δtの誤差を軽減するために、隙間保持部材18の上面レベル(枠板4の底面4aの外壁面を基準にして、芯材対向面3d上の隙間基準面部3eに設置された状態の隙間保持部材18の上面の高さ)を測定し、隙間保持部材18の上面に薄い隙間調整用シートを必要枚数だけ重ねて設置することにより、レベル不足分を調整してもよい。
【0051】
隙間保持部材18を芯材対向面3d上の各隙間基準面部3eに設置したら、次に、芯材2を挟み込んで2つの座屈拘束部材1,1を併合する(S5)。その後、万力やクランプなどの工具を使って、2つの座屈拘束部材1,1を互いに近づく方向へ全体的に加圧する加圧作業を行う(S6)。これにより、各隙間基準面部3e上に設置された全部の隙間保持部材18と芯材2との間の空隙が無くなるように座屈拘束部材1,1を変位させることができ、芯材2と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3dとの間に全部の隙間保持部材18が空隙なく適切に挟持され、所定量の隙間Δtを高精度に得ることが可能となる。
【0052】
本実施形態1では、上述したレベル調整処理(S3)により、隙間保持部材18が当接する芯材対向面3d上の隙間基準面部3eのレベルが高精度に調整されていることから、上述したように、併合時に芯材2と隙間保持部材18との間に生じ得る空隙の量の範囲が狭いものとなっている。そのため、この加圧作業時において、生じ得る最大の空隙の量を無くすまで座屈拘束部材1,1を変位させても、隙間Δtが目標精度範囲から外れてしまうほど大きく隙間保持部材18が押しつぶされることはない。そのため、本実施形態1の加圧作業では、レベル調整処理により高精度にレベルが調整された状態において生じ得る最大の空隙の量が無くなるまで、座屈拘束部材1,1を変位させる。
【0053】
その後、このように2つの座屈拘束部材1,1を併合して加圧した状態において、必要に応じて、隙間Δtの量を測定する(S7)。このとき、隙間Δtは座屈拘束部材1,1によって取り囲まれた状態になっているため、隙間Δtの量を直接的に測定することは非常に困難である。そのため、本実施形態1では、この状態における2つの座屈拘束部材1,1の枠板4の底面4aの外壁面間の距離を測定し、その計測結果を隙間Δtの量の指標値として用いることで、隙間Δtの量を間接的に測定する。その後、2つの座屈拘束部材1,1の各枠板4,4間における立面4bと立面4cとを、
図4に示すように隅肉溶接4dによって接合する(S8)。これにより、座屈拘束ブレース10が製造される。
【0054】
なお、前記測定で、隙間Δtの測定値(2つの座屈拘束部材1,1の枠板4の底面4aの外壁面間の距離)が隙間Δtの目標値(所定量)の目標精度範囲内(許容範囲内)から外れているような場合には、2つの座屈拘束部材1,1の併合を解いて、隙間保持部材18の上面に薄い隙間調整用シートを追加したり除去したり、あるいは、隙間保持部材18を交換したりするといった微調整処理を行っても良い。
【0055】
〔変形例〕
次に、本実施形態1における座屈拘束ブレース10の一変形例について説明する。
図7は、本変形例における座屈拘束ブレースの分解斜視図である。
図8は、本変形例における座屈拘束ブレースの内部構造を示す横断面図である。
本変形例は、従来のように、芯材2の長手方向側方で隙間保持部材が2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dの間に挟み込まれるタイプの座屈拘束ブレースである。なお、芯材2及び座屈拘束部材1,1の基本的な構成は、上述した実施形態1のものと同じである。
【0056】
本変形例の隙間保持部材17,17は、芯材2と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d(モルタル材3,3の芯材対向面3d)との間に所定量の隙間Δtを確保することのできる直径をもった断面円形状の基材である丸棒部材(丸鋼)17aと、その周面に巻き付けられた隙間調整用シートからなる隙間調整材17bとから構成されている。本変形例で用いられる隙間調整用シート17bは、この曲面に沿って変形できるような可撓性又は柔軟性が必要である。
【0057】
丸棒部材17aの周面(曲面)に沿って変形(湾曲)させて接着する場合の隙間調整用シート17bの一例としては、例えば、内側の隙間調整用シートとして、厚み1mm程度のフッ素樹脂製シートを好適に用いることができ、最外側の隙間調整用シートとして、厚み0.1mm程度のフッ素樹脂製シートを好適に用いることができる。
【0058】
また、本変形例においては、
図8に示すように、隙間調整材(隙間調整用シート)17bが、丸棒部材17aの周面上における長手方向の互いに離間した複数の箇所に設けられている。このような構成とすることで、長手方向における丸棒部材17aの周面全域にわたって隙間調整用シート17bを設ける場合よりも、使用する隙間調整用シート17bの量を減らすことができ、より低コストを実現することができる。
【0059】
加えて、複数の箇所ごとに、隙間調整用シート17bの厚み又はシート重ね枚数を変更するということが可能になる。これにより、長手方向で芯材2の厚みムラがあったり、2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3dが長手方向で高さのムラがあったりする場合でも、各箇所の隙間調整用シート17bの厚み又はシート重ね枚数を調整して、長手方向における隙間Δtのムラを低減することができる。その結果、長手方向にムラの少ない隙間Δtを得ることができる。
【0060】
なお、本変形例の隙間保持部材17,17は、断面円形状の丸棒部材(丸鋼)の例であるが、これに限られず、例えば、断面矩形状の角棒部材(角鋼)であってもよい。この場合、隙間調整用シートが設けられる面(角棒部材の外面)が平面であるため、隙間調整用シートには、曲面に沿って変形できるような可撓性又は柔軟性は不要である。
【0061】
また、本変形例の隙間保持部材17,17は、芯材2の側面と2つの座屈拘束部材1,1の芯材側方対向面との間の芯材側方隙間ΔW=ΔW1+ΔW2+ΔW3+ΔW4を調整するための隙間調整部材としても機能している。そのため、隙間保持部材17,17は、連結部8,8の長手方向側方にも存在するように構成されている。
【0062】
本変形例の座屈拘束ブレース10も、上述した実施形態1と同様の製造工程(
図6のS1~S9)によって製造される。本変形例では、隙間保持部材17,17が、芯材2と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dとの間に挟み込まれるタイプ(上述した実施形態1のタイプ)ではなく、芯材2の長手方向側方で2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dの間に挟み込まれるタイプである。そのため、座屈拘束部材1の芯材対向面3d上における隙間基準面部3eの配置位置が異なるが、隙間基準面部3eのレベル調整処理などの製造工程は同様である。
【0063】
しかも、本変形例において、隙間保持部材17,17を構成する隙間調整材17bは、上述した実施形態1の隙間保持部材18と同様に、芯材2よりも剛性又は強度の低い部材を用いることが望まれる。なぜなら、座屈拘束ブレース10の使用中に隙間調整材17bが丸棒部材17aから剥離して、2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dと芯材2との間に入り込むおそれがある。そのため、上述した実施形態1の隙間保持部材18と同様、芯材2の軸方向圧縮荷重時における芯材2の変形を妨げないような特性をもつことが望まれるからである。
【0064】
このように隙間保持部材17,17を構成する隙間調整材17bとして剛性又は強度の低い部材を用いる場合、上述した実施形態1で説明したように、隙間保持部材17,17が当接する芯材対向面3d上の隙間基準面部3eのレベル精度が不十分であると、所定量の隙間Δtを高精度に得ることができない。そのため、本変形例においても、隙間基準面部3eのレベル調整処理などを含む上述した実施形態1と同様の製造工程を採用することで、所定量の隙間Δtを高精度に得ることが可能になる。
【0065】
〔実施形態2〕
次に、本発明を、上述した実施形態1と同様、座屈拘束建材としての座屈拘束ブレースの製造方法に適用した他の実施形態(以下、本実施形態を「実施形態2」という。)について説明する。
なお、本実施形態2における座屈拘束ブレースは、隙間保持部材18が芯材2と2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dとの間に挟み込まれるタイプであるが、上述した変形例のように、芯材2の長手方向側方で隙間保持部材17が2つの座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dの間に挟み込まれるタイプにも同様に適用可能である。
【0066】
上述した実施形態1における製造方法では、隙間保持部材18が当接する隙間基準面部3eのレベルを高精度に調整するために、硬化後のモルタル面である隙間基準面部3eを表面処理して、隙間基準面部3eのレベル調整を行う。本実施形態2の製造方法では、このような表面処理を用いずに、隙間基準面部3eのレベル調整を行うものであり、上述した実施形態1の製造方法よりも簡素化されたものである。
【0067】
図9は、本実施形態2における製造方法の流れを示すフローチャートである。
まず、座屈拘束部材1を作製する(S11)。本実施形態2では、まず、枠板4を製造し、この枠板4内に硬化前のモルタル材3’を充填する。そして、座屈拘束部材1の芯材対向面3dとなる面を左官仕上げする。この時点において、座屈拘束部材1の芯材対向面3dのレベルは、平均的には、所定のレベル精度範囲内に粗調整されているが、局所的にはレベル精度範囲を超える突起部分が存在し得る。また、座屈拘束部材1の芯材対向面3dは、まだ凹凸の残る粗い面であり、凹凸によるレベルばらつきも残っている。
【0068】
次に、本実施形態2では、座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dを形成する硬化前のモルタル材3’上に、隙間保持部材18を所定の場所に設置する。そして、隙間保持部材18の上面レベル(枠板4の底面4aの外壁面を基準にしたときの隙間保持部材18の上面の高さ)が所定の目標値(隙間Δtが所定量となる値)になるように測定しながら、隙間保持部材18を硬化前のモルタル材3’に押し込む(S12)。そして、モルタル材3’が硬化した後、芯材2を挟み込んで2つの座屈拘束部材1,1を併合する(S13)。その後、全部の隙間保持部材18について芯材2及び芯材対向面3dとの間の空隙を無くすために、万力やクランプなどの工具を使って、2つの座屈拘束部材1,1を互いに近づく方向へ全体的に加圧する加圧作業を行う(S14)。
【0069】
この加圧作業は、隙間Δtが許容範囲内になるまで行われ、この加圧作業後に、2つの座屈拘束部材1,1の各枠板4,4間における立面4bと立面4cとを
図4に示すように隅肉溶接4dによって接合する(S15)。
【0070】
なお、隙間Δtの測定方法は、例えば、上述した実施形態1と同様、2つの座屈拘束部材1,1の枠板4の底面4aの外壁面間の距離を測定し、その計測結果を隙間Δtの量の指標値として用いることで、隙間Δtの量を間接的に測定する。この測定で、隙間Δtの測定値の目標精度範囲内(許容範囲内)から外れているような場合には、2つの座屈拘束部材1,1の併合を解いて、隙間調整用シートを追加したり除去したり、あるいは、隙間保持部材18を交換したりするといった微調整処理を行っても良い。
【0071】
本実施形態2では、座屈拘束部材1,1の芯材対向面3d,3dを形成するモルタル材3’がまだ硬化しきっていない状態、より詳しくは、モルタル材3’の硬さが隙間保持部材18よりも低い状態で、隙間保持部材18をモルタル材3’に押し込む。この押し込みによって、隙間保持部材18に接するモルタル材3’の面の凹凸を無くすことができるとともに、隙間保持部材18が当接する芯材対向面3d,3dのレベルが微調整されることになる。よって、隙間保持部材18が過剰に押しつぶされて隙間Δtが所定量の目標精度範囲から外れてしまうような事態が起きず、隙間Δtを所定量の目標精度範囲に設定することができる。
【0072】
〔実施形態3〕
次に、本発明を、上述した実施形態1及び2と同様、座屈拘束建材としての座屈拘束ブレースの製造方法に適用した他の実施形態(以下、本実施形態を「実施形態3」という。)について説明する。
本実施形態3の製造方法でも、上述した実施形態2と同様、隙間基準面部3eのレベル調整を行うために硬化後のモルタル面を表面処理する必要のない製造方法であり、上述した実施形態1の製造方法よりも簡素化されたものであるが、具体的な製造工程が上述した実施形態2とは異なっている。
【0073】
図10は、本実施形態3における製造方法の流れを示すフローチャートである。
本実施形態3では、まず、枠板4を製造したら(S21)、この枠板4内の底面4a上に1又は2以上の隙間保持部材16を設置する(S22)。隙間保持部材16は、枠板4内に必要量のモルタルを充填できる空間が確保されるように、枠板4内の底面4a上に部分的に配置される。2以上の隙間保持部材16が設置される場合、隙間保持部材16は、枠板4内の底面4a上に分散して配置するのが好ましい。隙間保持部材16は、その高さ(枠板4内の底面4aから隙間保持部材16の上面までの高さ)が高精度に管理されたものであれば、その形状、寸法、材質などに特に制限はない。
【0074】
このようにして枠板4内に隙間保持部材16を設置したら、その後、その枠板4内に硬化前のモルタル材3’を流し込んで充填する(S23)。なお、上述した実施形態1の場合と同様、モルタル材3’における芯材対向面3dとなる面は左官仕上げされる。この時点で、隙間保持部材16の大部分はモルタル材3’の内部に埋まるが、隙間保持部材16の上面部分は、隙間Δtに相当する分だけ、モルタル材3’の上面(芯材対向面3dとなる面)から露出する。本実施形態3では、モルタル材3’を左官仕上げするにあたって、高さが高精度に管理されている隙間保持部材16の上面を基準にすることができるので、モルタル材3’の上面の仕上げが容易かつ高精度に行うことができる。
【0075】
モルタル材3’が硬化すると、隙間保持部材16は、モルタル材3と一体となって枠板4内に固定され、座屈拘束部材1が作製される。次に、作製された2つの座屈拘束部材1,1を用いて芯材2を挟み込み、2つの座屈拘束部材1,1を併合する(S24)。これにより、芯材2は、2つの座屈拘束部材1,1の各芯材対向面と対向する位置で、各座屈拘束部材1,1の隙間保持部材16,16に当接して挟持される。そして、2つの座屈拘束部材1,1の各枠板4,4間における立面4bと立面4cとを
図4に示すように隅肉溶接4dによって接合する(S25)。
【0076】
本実施形態3では、隙間保持部材16の高さが高精度に管理されているため、立面4b,4cの底面4aからの芯材2の高さが高精度に管理でき、所定量の隙間Δtを高精度に得ることができる。もし隙間Δtが目標精度範囲内(許容範囲内)から外れているような場合には、2つの座屈拘束部材1,1の併合を解いて、隙間保持部材16の上面に薄い隙間調整用シートを追加したり除去したりするといった微調整処理を行っても良い。
【0077】
図11(a)~(c)は、それぞれ隙間保持部材16の一例を示す説明図である。
図11(a)に示す隙間保持部材16Aは、モルタル又はコンクリート製ブロックである。このようなブロックは、その寸法精度を高精度に作製することが比較的容易であるため、隙間保持部材16Aの高さを高精度に管理しやすい。なお、隙間調整用シート等の隙間調整材によって微調整することで、更に高精度に管理することができる。隙間保持部材16Aは、脱落防止又は移動防止のため、そのブロックの底面を枠板4内の底面4a上に接着剤で接着しておくのが好ましい。
【0078】
図11(b)及び(c)に示す隙間保持部材16B,16Cは、例えば鋼製の線材を曲げ加工や溶接等して足部16aとし、その上面に例えばコンクリート若しくはモルタル製又は鋼製の天板16bを設けたテーブルタイプのものである。これらの隙間保持部材16B,16Cは、その上面が天板16bの比較的広い平面で形成されるので、隙間保持部材16B,16Cの上面に芯材を載せたときに安定して保持でき、2つの座屈拘束部材1,1を併合する作業が容易になる。
【0079】
また、このような隙間保持部材16B,16Cも、その寸法精度を高精度に作製することが比較的容易であるため、隙間保持部材16B,16Cの高さを高精度に管理しやすい。なお、隙間調整用シート等の隙間調整材によって微調整することで、更に高精度に管理することができる。また、隙間保持部材16B,16Cは、その足部16aが例えばコンクリート用の鉄筋としての機能を果たすこともできる。隙間保持部材16B,16Cは、脱落防止又は移動防止のため、その足部16aを枠板4内の底面4a上に溶接等によって固定しておくのが好ましい。
【0080】
なお、
図11(b)及び(c)に示す隙間保持部材16B,16Cのような細い足部16aを備えている場合、枠板4内に隙間保持部材16B,16Cを設置するよりも先に、枠板4内に硬化前のモルタル材3’を流し込んで充填し、その後、硬化前のモルタル材3’内に足部16aを入れ込んで、足部16aが枠板4内の底面4a上に到達させて、隙間保持部材16B,16Cを設置してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 :座屈拘束部材
2 :芯材
3 :モルタル材
3d :芯材対向面
3e :隙間基準面部
4 :枠板
4a :底面
4b,4c:立面
6 :芯材中間部
8 :連結部
10 :座屈拘束ブレース
13 :リブ
16,17,18:隙間保持部材
17a :隙間調整部材
17b :隙間調整材
Δt1,Δt2:隙間
ΔW1,ΔW2,ΔW3,ΔW4:芯材側方隙間
【手続補正書】
【提出日】2020-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と該芯材を挟み込む2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間に所定量の隙間を確保するための隙間保持部材を、該2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に配置した座屈拘束建材の製造方法であって、
前記芯材対向面の一部であって前記隙間保持部材が当接する部分である隙間基準面部に対して、前記隙間の量を調整するための表面処理を施す隙間調整工程と、
前記隙間調整工程の前に前記芯材対向面を平滑化処理する平滑化工程とを有し、
前記隙間調整工程では、前記芯材対向面における前記隙間基準面部以外の面部に対しては、前記表面処理を施さないことを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の座屈拘束建材の製造方法において、
前記隙間保持部材は、前記芯材よりも剛性又は強度の低い部材であって、前記2つの座屈拘束部材のうちの少なくとも一方の前記芯材対向面と前記芯材との間に挟み込まれることを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の座屈拘束建材の製造方法において、
前記芯材及び前記隙間保持部材を前記2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に配置して該2つの座屈拘束部材が互いに近づく方向へ加圧する加圧工程を含むことを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の座屈拘束建材の製造方法において、
前記隙間の量を把握するための測定を行う測定工程を含み、
前記隙間調整工程は、前記測定工程の測定結果が前記所定量の目標精度範囲内となるまで、前記隙間調整工程を繰り返し行うことを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の座屈拘束建材の製造方法において、
前記隙間基準面部は、前記芯材対向面上の互いに離間した複数の箇所に設けられることを特徴とする座屈拘束建材の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、芯材と該芯材を挟み込む2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間に所定量の隙間を確保するための隙間保持部材を、該2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に配置した座屈拘束建材の製造方法であって、前記芯材対向面の一部であって前記隙間保持部材が当接する部分である隙間基準面部に対して、前記隙間の量を調整するための表面処理を施す隙間調整工程と、前記隙間調整工程の前に前記芯材対向面を平滑化処理する平滑化工程とを有し、前記隙間調整工程では、前記芯材対向面における前記隙間基準面部以外の面部に対しては、前記表面処理を施さないことを特徴とするものである。
本発明では、座屈拘束部材の芯材対向面上における隙間保持部材の当接する隙間基準面部に対して、前記隙間の量を調整するための表面処理を施す。例えば、芯材対向面上の隙間基準面部を削ったり、芯材対向面上の隙間基準面部にシートを貼付したり塗布材を塗布したりするような表面処理を施して、隙間基準面部のレベル調整を行い、隙間の量を調整する。
本発明においては、このような表面処理を芯材対向面の一部(隙間基準面部を含む面部分)に施すため、芯材対向面の全体に表面処理を施す場合よりも、当該表面処理を行う面積が小さくて済む。表面処理を行う面積が小さいほど、当該表面処理による隙間基準面部のレベル調整の精度が出しやすくなる。したがって、本発明によれば、隙間の量を調整するための表面処理を芯材対向面の全体に施す場合よりも、隙間基準面部の高精度なレベル調整が容易となる。
そして、隙間基準面部を高精度にレベル調整できると、2つの座屈拘束部材の芯材対向面の間に、隙間保持部材を空隙なくかつ適切な挟持力で挟持することが可能となる。これにより、芯材と2つの座屈拘束部材の芯材対向面との間の隙間の量が、隙間保持部材の寸法精度に適切に対応したものとなるので、所定量の隙間を高精度に確保することができる。
また、本発明においては、隙間調整工程の前に、芯材対向面を平滑化処理する前処理を行っておくことで、隙間調整工程における隙間の量を調整するための表面処理(隙間基準面部のレベル調整を行う表面処理)の作業が容易となり、隙間の量をより高精度に調整することが可能となる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】