(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032122
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/02 20060101AFI20220217BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20220217BHJP
G01N 33/10 20060101ALI20220217BHJP
G06N 20/20 20190101ALI20220217BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20220217BHJP
【FI】
G01N33/02
G06Q50/10
G01N33/10
G06N20/20
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135632
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】里川 英生
(72)【発明者】
【氏名】中越 裕行
(72)【発明者】
【氏名】加賀 千文
(72)【発明者】
【氏名】丹保 岳人
(72)【発明者】
【氏名】陳 勝男
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】飲食品の官能評価におけるパネリストの招集とトレーニングの実施にかかっていた時間と労力を無くすことができる情報処理装置などを提供することを課題とする。
【解決手段】本実施形態では、飲食品の物性データおよび振幅データ(飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するもの)が入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを用いて、予測対象の飲食品の物性データおよび振幅データから当該予測対象の飲食品の官能評価の結果を予測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備える情報処理装置であって、
前記制御部は、
飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを用いて、予測対象の飲食品の物性データおよび振幅データから当該予測対象の飲食品の官能評価の結果を予測する予測手段
を備え、
前記振幅データは、飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するものであること、
を特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
制御部を備える情報処理装置であって、
前記制御部は、
飲食品の物性データおよび振幅データならびにパネリストが行った当該飲食品の官能評価の結果を訓練データとして、飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを作成するモデル作成手段
を備え、
前記振幅データは、飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するものであること、
を特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
前記所定の周波数解析手法は、フーリエ変換であること、
を特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記機械学習モデルは、アンサンブル学習アルゴリズムによるものであること、
を特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記アンサンブル学習アルゴリズムは、ランダムフォレストであること、
を特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記振幅値は、ノイズの除去を目的として設定した所定値以上のものであること、
を特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記物性データは、前記波形データから得られた、平均値、標準偏差、極大値、当該極大値が発生した極大値発生時刻、極小値、当該極小値が発生した極小値発生時刻、波形の傾き、および、当該極小値発生時刻から測定物理量が当該極小値からゼロ付近に戻った時刻までの時間のうちの少なくとも1つを含むこと、
を特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記波形の傾きは、極大点から極小点までの部分波形を分割して得た複数の分割波形のうちの少なくとも1つの分割波形の傾きであること、
を特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記波形データは、応力波形データであること、
を特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記飲食品は、米飯であること、
を特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記波形データは、集団粒を被測定物として実施した物性測定により得られたものであること、
を特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記波形データは、枠に収められている状態の集団粒を被測定物として実施した物性測定により得られたものであること、
を特徴とする請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記官能評価は、粒立ち、表面の水っぽさ、ほぐれやすさ、表面のざらつき、硬さ、粒の弾力、もろさ、咀嚼初期の粘り、べちゃつき、粒感、咀嚼中の粘り、および、まとまりやすさのうちのいずれか1つの評価項目に関するものであること、
を特徴とする請求項10から12のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項14】
制御部を備える情報処理装置で実行される情報処理方法であって、
前記制御部で実行される、
飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを用いて、予測対象の飲食品の物性データおよび振幅データから当該予測対象の飲食品の官能評価の結果を予測する予測ステップ
を含み、
前記振幅データは、飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するものであること、
を特徴とする情報処理方法。
【請求項15】
制御部を備える情報処理装置で実行される情報処理方法であって、
前記制御部で実行される、
飲食品の物性データおよび振幅データならびにパネリストが行った当該飲食品の官能評価の結果を訓練データとして、飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを作成するモデル作成ステップ
を含み、
前記振幅データは、飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するものであること、
を特徴とする情報処理方法。
【請求項16】
制御部を備える情報処理装置に実行させるためのプログラムであって、
前記制御部に実行させるための、
飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを用いて、予測対象の飲食品の物性データおよび振幅データから当該予測対象の飲食品の官能評価の結果を予測する予測ステップ
を含み、
前記振幅データは、飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するものであること、
を特徴とするプログラム。
【請求項17】
制御部を備える情報処理装置に実行させるためのプログラムであって、
前記制御部に実行させるための、
飲食品の物性データおよび振幅データならびにパネリストが行った当該飲食品の官能評価の結果を訓練データとして、飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを作成するモデル作成ステップ
を含み、
前記振幅データは、飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するものであること、
を特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品の官能評価を行うためには、パネリストを集め、各パネリストに対しトレーニングを行う必要があった。
【0003】
なお、特許文献1には、生理応答を利用した飲食品の風味の好ましさを予測できる新規な方法が開示されている。特許文献2には、ディープラーニングによる学習で得られる飲食品の品質予測モデルを用いた飲食品の品質予測方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-184528号公報
【特許文献2】特開2018-018354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パネリストの招集とトレーニングの実施には、多大な時間と労力がかかっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、飲食品の官能評価におけるパネリストの招集とトレーニングの実施にかかっていた時間と労力を無くすことができる情報処理装置、情報処理方法およびプログラム、ならびに、当該時間と労力を無くすことに貢献する、飲食品の官能評価を予測する機械学習モデルを作成することができる情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる情報処理装置は、制御部を備える情報処理装置であって、前記制御部は、飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを用いて、予測対象の飲食品の物性データおよび振幅データから当該予測対象の飲食品の官能評価の結果を予測する予測手段を備え、前記振幅データは、飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するものであること、を特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる情報処理装置は、制御部を備える情報処理装置であって、前記制御部は、飲食品の物性データおよび振幅データならびにパネリストが行った当該飲食品の官能評価の結果を訓練データとして、飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを作成するモデル作成手段を備え、前記振幅データは、飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するものであること、を特徴とする。
【0009】
なお、本発明にかかる情報処理装置において、前記所定の周波数解析手法は、フーリエ変換でもよい。
【0010】
また、本発明にかかる情報処理装置において、前記機械学習モデルは、アンサンブル学習アルゴリズムによるものでもよい。また、本発明にかかる情報処理装置において、前記アンサンブル学習アルゴリズムは、ランダムフォレストでもよい。
【0011】
また、本発明にかかる情報処理装置において、前記振幅値は、ノイズの除去を目的として設定した所定値以上のものでもよい。
【0012】
また、本発明にかかる情報処理装置において、前記物性データは、前記波形データから得られた、平均値、標準偏差、極大値、当該極大値が発生した極大値発生時刻、極小値、当該極小値が発生した極小値発生時刻、波形の傾き、および、当該極小値発生時刻から測定物理量が当該極小値からゼロ付近に戻った時刻までの時間のうちの少なくとも1つを含んでもよい。また、本発明にかかる情報処理装置において、前記波形の傾きは、極大点から極小点までの部分波形を分割して得た複数の分割波形のうちの少なくとも1つの分割波形の傾きでもよい。
【0013】
また、本発明にかかる情報処理装置において、前記波形データは、応力波形データでもよい。
【0014】
また、本発明にかかる情報処理装置において、前記飲食品は、米飯でもよい。また、本発明にかかる情報処理装置において、前記波形データは、集集団粒を被測定物として実施した物性測定により得られたものでもよい。また、本発明にかかる情報処理装置において、前記波形データは、枠に収められている状態の集団粒を被測定物として実施した物性測定により得られたものでもよい。
【0015】
また、本発明にかかる情報処理装置において、前記官能評価は、粒立ち、表面の水っぽさ、ほぐれやすさ、表面のざらつき、硬さ、粒の弾力、もろさ、咀嚼初期の粘り、べちゃつき、粒感、咀嚼中の粘り、および、まとまりやすさのうちのいずれか1つの評価項目に関するものでもよい。
【0016】
また、本発明にかかる情報処理方法は、制御部を備える情報処理装置で実行される情報処理方法であって、前記制御部で実行される、飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを用いて、予測対象の飲食品の物性データおよび振幅データから当該予測対象の飲食品の官能評価の結果を予測する予測ステップを含み、前記振幅データは、飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するものであること、を特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる情報処理方法は、制御部を備える情報処理装置で実行される情報処理方法であって、前記制御部で実行される、飲食品の物性データおよび振幅データならびにパネリストが行った当該飲食品の官能評価の結果を訓練データとして、飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを作成するモデル作成ステップを含み、前記振幅データは、飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するものであること、を特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかるプログラムは、制御部を備える情報処理装置に実行させるためのプログラムであって、前記制御部に実行させるための、飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを用いて、予測対象の飲食品の物性データおよび振幅データから当該予測対象の飲食品の官能評価の結果を予測する予測ステップを含み、前記振幅データは、飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するものであること、を特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかるプログラムは、制御部を備える情報処理装置に実行させるためのプログラムであって、前記制御部に実行させるための、飲食品の物性データおよび振幅データならびにパネリストが行った当該飲食品の官能評価の結果を訓練データとして、飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると当該飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデルを作成するモデル作成ステップを含み、前記振幅データは、飲食品の物性測定を実施して得られた波形データを時系列に並べて生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法による処理を行って得られた振幅値に関するものであること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、飲食品の官能評価におけるパネリストの招集とトレーニングの実施にかかっていた時間と労力を無くすことができるという効果を奏する。また、本発明によれば、当該時間と労力を無くすことに貢献する、飲食品の官能評価を予測する機械学習モデルを作成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、情報処理装置100の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、応力波形データの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、集団粒・枠あり測定と集団粒・枠なし測定の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、測定手法ごと評価項目ごとの、モデルにより予測可能なクラス値の範囲を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例1で作成した評価項目5(硬さ)に対応する各モデルの精度の結果を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例1で作成した評価項目10(粒感)に対応する各モデルの精度の結果を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例2で作成した評価項目5(硬さ)に対応する各モデルの精度の結果を示す図である。
【
図10】
図10は、モデル作成に用いられた各特徴量の重要度を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例2で作成した評価項目6(粒の硬さ)に対応する各モデルの精度の結果を示す図である。
【
図12】
図12は、モデル作成に用いられた各特徴量の重要度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる情報処理装置、情報処理方法およびプログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0023】
[1.構成および処理]
図1は、本実施形態にかかる情報処理装置100の構成の一例を示す図である。情報処理装置100は、例えばネットワーク300(例えばインターネット、イントラネットまたはLAN(有線/無線の双方を含む)等)を介して、飲食品を被測定物として適用可能な物性測定器200(具体的には、テクスチャーアナライザーなどの食品用物性測定器)と通信可能に接続される。ここで、例えば飲食品が米飯の場合、集団粒を被測定物として物性測定を実施してもよく、また、枠に収められている状態の集団粒を被測定物として物性測定を実施してもよい。
【0024】
情報処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)等の当該装置を統括的に制御する制御部102と、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して当該装置をネットワーク300に通信可能に接続する通信インターフェース部104と、各種のデータベース、テーブルまたはファイルなどを記憶する記憶部106と、入力装置112および出力装置114に接続する入出力インターフェース部108と、を備える。情報処理装置100が備える各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続される。
【0025】
通信インターフェース部104は、情報処理装置100とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信を媒介する。すなわち、通信インターフェース部104は、他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。
【0026】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタの他、スピーカまたはプリンタなどを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウスまたはマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタ、または、タッチパネルなどを用いることができる。
【0027】
記憶部106は、ストレージ手段である。記憶部106として、例えば、RAM・ROM等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、または光ディスク等を用いることができる。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPUまたはGPUに命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されていてもよい。
【0028】
記憶部106は、機械学習モデルの作成に用いられるデータ等を記憶する作成用データ等記憶部106a、作成された機械学習モデルを記憶するモデル記憶部106b、および、作成された機械学習モデルを用いた飲食品の官能評価の結果の予測に用いられるデータ等を記憶する予測用データ等記憶部106cを備える。
【0029】
制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0030】
制御部102は、機能概念的に、作成制御部102a、物性データ作成部102b、振幅データ作成部102cおよび予測制御部102dを備える。
【0031】
作成制御部102aは、機械学習モデルの作成に関する処理を制御および実行する。作成制御部102aは、官能評価結果取得部102a1、分類部102a2、波形データ取得部102a3、モデル作成部102a4およびモデル検証部102a5を備え、これら各部の動作を制御する。
【0032】
官能評価結果取得部102a1は、パネリストが行った、評価項目に関する飲食品の官能評価の結果(具体的には、評価項目に関する評点に関するデータ)を取得し、取得した結果を作成用データ等記憶部106aに格納する。ここで、例えば飲食品が米飯の場合、官能評価は、粒立ち、表面の水っぽさ、ほぐれやすさ、表面のざらつき、硬さ、粒の弾力、もろさ、咀嚼初期の粘り、べちゃつき、粒感、咀嚼中の粘り、および、まとまりやすさのうちのいずれか1つの評価項目に関するものでもよい。
【0033】
分類部102a2は、取得した結果を所定のクラス分類基準に従って分類することで、当該取得した結果に対応する、評価項目のクラス値を決定する。具体的には、分類部102a2は、評点の平均値を算出し、評点の範囲とクラス値との対応表を基に、当該算出した平均値に対応するクラス値を決定する。
【0034】
波形データ取得部102a3は、飲食品を被測定物として物性測定器200を用いて物性測定を実施したことにより得られた、物性測定器200から送信された測定物理量に関する波形データ(例えば、応力波形データなど)を取得し、取得した波形データを作成用データ等記憶部106aに格納する。
【0035】
作成制御部102aは、取得した波形データを物性データ作成部102bと振幅データ作成部102cに転送し、物性データ作成部102bと振幅データ作成部102cから返された物性データと振幅データを取得し、当該取得した物性データと振幅データを作成用データ等記憶部106aに格納する。
【0036】
モデル作成部102a4は、飲食品の物性データおよび振幅データが入力されると評価項目に関する飲食品の官能評価の結果を出力する機械学習モデル(例えば、ランダムフォレスト、バギングおよびブースティングなどのアンサンブル学習(集団学習)アルゴリズムによる機械学習モデル(分類器)など)を、取得した物性データおよび振幅データならびに評価項目に関する官能評価の結果に基づく情報(具体的には、官能評価結果取得部102a1が取得した評点、または、決定部102a2が決定したクラス値)を訓練データとして作成し、当該作成した機械学習モデルをモデル記憶部106bに格納する。
【0037】
モデル検証部102a5は、作成した機械学習モデルの精度を、取得した物性データおよび振幅データならびに評価項目に関する官能評価の結果に基づく情報(具体的には、官能評価結果取得部102a1が取得した評点、または、分類部102a2が決定したクラス値)をテストデータとして、所定の評価指標(例えば、機械学習モデルがアンサンブル学習アルゴリズムによるものである場合は、分類器の精度の検証に有用な評価指標(例えばMicro-F1やMacro-F1)など)により検証する。なお、モデル記憶部106bには、一定以上の精度を有する機械学習モデルを残しておくのが好ましい。
【0038】
物性データ作成部102bは、作成制御部102aから転送された波形データまたは予測制御部102dから転送された波形データを基に物性データを作成し、作成した物性データを転送元に返す。具体的には、物性データ作成部102bは、波形データから、以下の物性値のうちの少なくとも1つを計算し、計算した物性値を含む物性データを作成する。
・測定物理量の平均値
・標準偏差
・極大値
・当該極大値が発生した極大値発生時刻
・極小値
・当該極小値が発生した極小値発生時刻
・波形の傾き(例えば、極大点から極小点までの部分波形を分割して得た複数の分割波形のうちの少なくとも1つの分割波形の傾き、など)
・当該極小値発生時刻から測定物理量が当該極小値からゼロ付近に戻った時刻までの時間
【0039】
振幅データ作成部102cは、作成制御部102aから転送された波形データまたは予測制御部102dから転送された波形データを基に振幅データを作成し、作成した振幅データを転送元に返す。具体的には、振幅データ作成部102cは、波形データを時系列に並べて周期的波形データを生成し、生成した周期的波形データに対し所定の周波数解析手法(例えばフーリエ変換(例えば高速フーリエ変換など)やウェーブレット変換など)による処理を行って振幅値(例えば、ノイズの除去を目的として設定した所定値以上の振幅値)を取得し、取得した振幅値を含む振幅データを転送元に返す。
【0040】
予測制御部102dは、機械学習モデルを用いた評価項目に関する飲食品の官能評価の予測に関する処理を制御および実行する。予測制御部102dは、波形データ取得部102d1および予測部102d2を備え、これら各部の動作を制御する。
【0041】
波形データ取得部102d1は、予測対象の飲食品を被測定物として物性測定器200を用いて物性測定を実施したことにより得られた、物性測定器200から送信された測定物理量に関する波形データ(例えば、応力波形データなど)を取得し、取得した波形データを予測用データ等記憶部106cに格納する。
【0042】
予測制御部102dは、取得した波形データを物性データ作成部102bと振幅データ作成部102cに転送し、物性データ作成部102bと振幅データ作成部102cから返された物性データと振幅データを取得し、取得した物性データと振幅データを予測用データ等記憶部106cに格納する。
【0043】
予測部102d2は、モデル記憶部106bに格納されている機械学習モデル(具体的には、一定以上の精度を有する機械学習モデル)を用いて、取得した物性データおよび振幅データから評価項目に関する官能評価の結果(例えば評点またはクラス値)を予測する。
【0044】
以上、本実施形態の構成および処理について説明してきたが、本実施形態の対象とする飲食品について、上記説明において例示した米飯に限定されず、特に制限はない。例えば、飲食品は、1種類であっても、2種類以上であってもよい。また、飲食品は、組成が異なる2種類以上であってもよい。また、飲食品の具体例としては、以下のものが挙げられる。なお、官能評価の評価項目については、対象とする飲食品に適したものを採用すればよい。
・せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストなどのペースト類、などの菓子類
・コーラ飲料、果汁入り炭酸飲料、乳類入り炭酸飲料などの炭酸飲料類;果汁飲料、野菜飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、乳飲料などのソフト飲料類;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、ミルクティー、コーヒー飲料などの嗜好飲料類;チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒などのアルコール飲料類;などの飲料類
・パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類
・糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、及び、それらの漬物の素、などの漬物類
・サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類
・缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食品類
・鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類
・カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食品類
・卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類
・その他、チーズ、バターなどの乳製品、野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類、持ち帰り弁当の具や惣菜類、トマトジュースなど
【0045】
[2.他の実施形態]
さて、これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0046】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0047】
このほか、上記文献中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0048】
また、各装置に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0049】
例えば、情報処理装置100が備える処理機能、特に制御部102にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUまたはGPUおよび当該CPUまたはGPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、情報処理装置に本発明にかかる情報処理方法を実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて情報処理装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDDなどの記憶部106には、OSと協働してCPUまたはGPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUまたはGPUと協働して制御部を構成する。
【0050】
また、このコンピュータプログラムは、情報処理装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0051】
また、本発明にかかるプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM、MO、DVD、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0052】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0053】
記憶部106に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0054】
また、情報処理装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、情報処理装置100は、当該情報処理装置に本発明の情報処理方法を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0055】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【実施例0056】
飲食品を米飯とした場合の第一の実施例について、以下の詳細に説明する。
【0057】
[1.官能評価]
まず、配合種別(添加酵素および水分量)が互いに異なる8つの米飯サンプル(米飯サンプル1~8)を用意した。
【0058】
つぎに、各米飯サンプルの官能評価を実施して、各米飯サンプルに対する各評価項目の評価点(0点~100点)を得た。評価項目は、以下の12項目である。パネラーは8名用意した。各パネラーは、一つの米飯サンプルに対し2回、官能評価を実施した。結果、米飯サンプルごと評価項目ごとに、16個の評価点が得られた。
評価項目1:粒立ち
評価項目2:表面の水っぽさ
評価項目3:ほぐれやすさ
評価項目4:表面のざらつき
評価項目5:硬さ
評価項目6:粒の弾力
評価項目7:もろさ
評価項目8:咀嚼初期の粘り
評価項目9:べちゃつき
評価項目10:粒感
評価項目11:咀嚼中の粘り
評価項目12:まとまりやすさ
【0059】
つぎに、米飯サンプルごと評価項目ごとに、評価点の平均値を計算し、当該平均値を、各米飯サンプルに対する各評価項目の官能評価値とした。結果、米飯サンプルごと評価項目ごとに、1個の官能評価値が得られた。なお、各平均値の計算においては、16個の評価点を基に上内境界点および下内境界点を算出し、算出した上内境界点および下内境界点を基準として当該16個の評価点から外れ値を除外した。
【0060】
つぎに、米飯サンプルごと評価項目ごとに、官能評価値を、以下の基準に従ってクラスに分類した。結果、米飯サンプルごと評価項目ごとに、1個のクラス値が得られた。
クラス1:0≦官能評価値≦8
クラス2:8<官能評価値≦21
クラス3:21<官能評価値≦29
クラス4:29<官能評価値≦38
クラス5:38<官能評価値≦46
クラス6:46<官能評価値≦54
クラス7:54<官能評価値≦63
クラス8:63<官能評価値≦71
クラス9:71<官能評価値≦79
クラス10:79<官能評価値≦92
クラス11:92<官能評価値≦100
【0061】
[2.物性測定]
各米飯サンプルに対し、一粒に対する低・高圧縮2バイト法による物性測定(以下、「一粒測定」と記す。)および集団粒に対する低・高圧縮2バイト法による物性測定(以下、「集団粒測定」と記す。)を実施して、各米飯サンプルから応力波形データ(
図2,3参照)を得た(「J.Appl.Glycosci.,Vol.47,No.3&4,p.343-353(2000)」参照)。集団粒測定に関しては、円柱状の枠に収められた状態で試台上に置かれた集団粒に対する物性測定(以下、「集団粒・枠あり測定」と記す。
図4参照)と、円柱状の枠に収められていない通常の状態で試台上に置かれた集団粒に対する物性測定(以下、「集団粒・枠なし測定」と記す。
図4参照)の2種類の測定を実施した。使用機器は、英弘精機製のテクスチャーアナライザーである。圧縮治具は、φ25mmのアクリル製円柱プランジャーである。圧縮条件は、30%圧縮、90%圧縮の2回圧縮である。
【0062】
一粒測定は、米飯サンプル1,3,4,5,6に対し実施した。一粒測定は、一つの米飯サンプルに対し30回実施した。結果、各米飯サンプルから、30個の応力波形データが得られた。そして、各応力波形データから、以下の6個の物性値を計算した。結果、各米飯サンプルから、30個の物性値セットが得られた。また、応力波形データごとに、周期的応力波形データを生成し、周期的応力波形データのフーリエ変換(FFT(Fast Fourier Transform))を行い、変換後のデータから所定値(例:1500)以上の振幅値を抽出した(
図5参照)。結果、各米飯サンプルから、30個の振幅値セットが得られた。なお、所定値未満の振幅値は、変換後のデータに含まれるノイズの影響によるものと見做した。
・平均値
・標準偏差
・一つ目のピーク値(第一ピーク値)
・第一ピーク値が発生した時刻(第一ピーク時刻)
・二つ目のピーク値(第二ピーク値)
・第二ピーク値が発生した時刻(第二ピーク時刻)
【0063】
集団粒・枠なし測定は、全8種類の米飯サンプルに対し実施した。集団粒・枠なし測定は、一つの米飯サンプルに対し10回実施した。結果、各米飯サンプルから、10個の応力波形データが得られた。そして、各応力波形データから、上記6個の物性値を計算した。結果、各米飯サンプルから、10個の物性値セットが得られた。また、応力波形データごとに、周期的応力波形データを生成し、周期的応力波形データのフーリエ変換(FFT)を行い、変換後のデータから所定値(例:1500)以上の振幅値を抽出した。結果、各米飯サンプルから、10個の振幅値セットが得られた。
【0064】
集団粒・枠あり測定は、全8種類の米飯サンプルに対し実施した。集団粒・枠あり測定は、一つの米飯サンプルに対し10回実施した。結果、各米飯サンプルから、10個の応力波形データが得られた。そして、各応力波形データから、上記6個の物性値を計算した。結果、各米飯サンプルから、10個の物性値セットが得られた。また、応力波形データごとに、周期的応力波形データを生成し、生成した周期的応力波形データのフーリエ変換(FFT)を行い、変換後のデータから所定値(例:1500)以上の振幅値を抽出した。結果、各米飯サンプルから、10個の振幅値セットが得られた。
【0065】
[3.モデル作成]
一粒測定に関するデータについて、上記1.および2.に示す工程を実施した結果、評価項目ごとに150個用意できたので(以下のデータ参照)、当該150個のデータを用いて、「一粒測定による物性値から、評価項目xのクラス値を予測する、ランダムフォレストの分類器」(以下、「モデル11
x」と記す(x=1~12)。)を作成した。なお、実施例1では、評価項目5(硬さ)に対応するモデル11
5および評価項目10(粒感)に対応するモデル11
10の作成について説明する。ここで、評価項目5に対し用意できた一粒測定に関するデータにおいて、クラス値の範囲は5~8であった(
図6参照)。また、評価項目10に対し用意できた一粒測定に関するデータにおいて、クラス値の範囲は5~7であった(
図6参照)。
図6に、測定手法ごと評価項目ごとの、モデルにより予測可能なクラス値の範囲を示す。
[評価項目xに対し用意できた一粒測定に関するデータ]
米飯サンプル1:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(30個)
米飯サンプル3:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(30個)
米飯サンプル4:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(30個)
米飯サンプル5:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(30個)
米飯サンプル6:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(30個)
【0066】
上記150個のデータのうち、各米飯サンプルから10個ずつ計50個のデータを抽出した。そして、当該50個のデータのうち、各米飯サンプルから8個ずつ計40個のデータを、訓練データとして抽出した。当該40個のデータを用いて、モデル115およびモデル1110を作成した。残り10個のデータを、各モデルのテストデータとした。
【0067】
集団粒・枠なし測定に関するデータについて、上記1.および2.に示す工程を実施した結果、評価項目ごとに80個用意できたので(以下のデータ参照)、当該80個のデータを用いて、「集団粒・枠なし測定による物性値から、評価項目xのクラス値を予測する、ランダムフォレストの分類器」(以下、「モデル21
x」と記す。)と、「集団粒・枠なし測定による物性値と振幅値から、評価項目xのクラス値を予測する、ランダムフォレストの分類器」(以下、「モデル22
x」と記す。)を作成した。なお、実施例1では、評価項目5に対応するモデル21
5とモデル22
5および評価項目10に対応するモデル21
10とモデル22
10の作成について説明する。ここで、評価項目5に対し用意できた集団粒・枠なし測定に関するデータにおいて、クラス値の範囲は4~8であった(
図6参照)。また、評価項目10に対し用意できた集団粒・枠なし測定に関するデータにおいて、クラス値の範囲は4~7であった(
図6参照)。
[評価項目xに対し用意できた集団粒・枠なし測定に関するデータ]
米飯サンプル1:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル2:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル3:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル4:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル5:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル6:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル7:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル8:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
【0068】
一粒測定対応のモデルとの精度比較のため、米飯サンプル1,3~6のそれぞれから8個ずつ計40個のデータを、訓練データとして抽出した。当該40個のデータを用いて、モデル215(比較用)およびモデル2110(比較用)を作成した。残り10個のデータを、各モデルのテストデータとした。
【0069】
また、集団粒・枠あり測定対応のモデルとの精度比較のため、各米飯サンプルから8個ずつ計64個のデータを、訓練データとして抽出した。当該64個のデータを用いて、モデル215とモデル225およびモデル2110とモデル2210を作成した。残り16個のデータを、各モデルのテストデータとした。
【0070】
集団粒・枠あり測定に関するデータについて、上記1.および2.に示す工程を実施した結果、評価項目ごとに80個用意できたので(以下のデータ参照)、当該80個のデータを用いて、「集団粒・枠あり測定による物性値から、評価項目xのクラス値を予測する、ランダムフォレストの分類器」(以下、「モデル31
x」と記す。)と、「集団粒・枠あり測定による物性値と振幅値から、評価項目xのクラス値を予測する、ランダムフォレストの分類器」(以下、「モデル32
x」と記す。)を作成した。なお、実施例1では、評価項目5に対応するモデル31
5とモデル32
5および評価項目10に対応するモデル31
10とモデル32
10の作成について説明する。ここで、評価項目5に対し用意できた集団粒・枠あり測定に関するデータにおいて、クラス値の範囲は4~8であった(
図6参照)。また、評価項目10に対し用意できた集団粒・枠あり測定に関するデータにおいて、クラス値の範囲は4~7であった(
図6参照)。
[評価項目xに対し用意できた集団粒・枠あり測定に関するデータ]
米飯サンプル1:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル2:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル3:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル4:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル5:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル6:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル7:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
米飯サンプル8:「(物性値セット,振幅値セット),クラス値」(10個)
【0071】
一粒測定対応のモデルとの精度比較のため、米飯サンプル1,3~6のそれぞれから8個ずつ計40個のデータを、訓練データとして抽出した。当該40個のデータを用いて、モデル315(比較用)およびモデル3110(比較用)を作成した。残り10個のデータを、各モデルのテストデータとした。
【0072】
また、集団粒・枠なし測定対応のモデルとの精度比較のため、各米飯サンプルから8個ずつ計64個のデータを、訓練データとして抽出した。当該64個のデータを用いて、モデル315とモデル325およびモデル3110とモデル3210を作成した。そして、残り16個のデータを、各モデルのテストデータとした。
【0073】
[4.精度比較]
作成した各モデルの精度について、訓練データおよびテストデータを用いて確認した。精度確認に用いるデータは、訓練データおよびテストデータのそれぞれから、米飯サンプル別にランダムに選択した。精度の評価指標として、マルチクラス分類器の評価指標としてよく用いられるMicro-F1とMacro-F1を採用した。Micro-F1の値とMacro-F1の値には、共に、適合率と再現率のバランスが反映される。各値の範囲は、0~1である。値が1に近いほど、モデルの性能が良いことを意味する。Micro-F1とMacro-F1の違いは、個々のクラス値の正答率に対する影響の受けやすさが異なる点である。
【0074】
図7には、評価項目5(硬さ)に対応する各モデルの精度の結果が示されている。集団粒・枠なし測定対応のモデル21
5(比較用)、および、集団粒・枠あり測定対応のモデル31
5とモデル32
5の性能は、良好であった。また、集団粒・枠なし測定対応のモデルの精度の方が、一粒測定対応のモデルのそれよりも高かった。また、振幅値を考慮した集団粒対応のモデルの精度の方が、物性値のみを考慮した集団粒対応のモデルのそれよりも高かった。
【0075】
図8には、評価項目10(粒感)に対応する各モデルの精度の結果が示されている。集団粒・枠なし測定対応のモデル21
10(比較用)と集団粒・枠あり測定対応のモデル31
10(比較用)、集団粒・枠なし測定対応のモデル21
10、および、集団粒・枠あり測定対応のモデル32
10の性能は、良好であった。また、集団粒測定対応のモデルの精度の方が、一粒測定対応のモデルのそれよりも高かった。また、振幅値を考慮した集団粒・枠あり測定対応のモデルの精度の方が、物性値のみを考慮した集団粒・枠あり測定対応のモデルのそれよりも高かった。