(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032188
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】圧延機および冷間圧延方法
(51)【国際特許分類】
B21B 13/14 20060101AFI20220217BHJP
B21B 1/22 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
B21B13/14 A
B21B1/22 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135728
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】北村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】植野 雅康
【テーマコード(参考)】
4E002
【Fターム(参考)】
4E002AA08
4E002AD05
4E002AD13
4E002BB09
4E002BB11
4E002BB16
4E002BB17
4E002CA08
(57)【要約】
【課題】硬質な極薄材のような鋼帯を圧延する場合であっても、圧延荷重を低減させて生産能率を向上させる。
【解決手段】クラスター型圧延機1A、1Bは、鋼帯を圧延する上下一対のワークロール10A、10Bと、上下のワークロール10A、10Bのそれぞれを支持する複数の中間ロール20A、20Bと、複数の中間ロール20A、20Bを支持するバックアップロール30A、30Bと、複数の中間ロール20A、20Bのうち、上下のワークロール10A、10Bをそれぞれ回転駆動させる機能を有する駆動用中間ロール25と、上下のワークロール10A、10Bの周速が異なるように、上下の駆動用中間ロール25を回転駆動させる回転駆動装置40と、を備える。ワークロール10A、10Bの直径Dwが、20~120mmであり、駆動用中間ロール25の直径DIが、1.7~4.5×Dwであり、ワークロール10A、10Bの表面粗さが、0.05~0.50μmRaであり、駆動用中間ロール25の表面粗さが、0.10~1.00μmRaである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯を圧延する上下一対のワークロールと、
上下の前記ワークロールのそれぞれを支持する複数の中間ロールと、
複数の前記中間ロールを支持するバックアップロールと、
複数の前記中間ロールのうち、上下の前記ワークロールをそれぞれ回転駆動させる機能を有する駆動用中間ロールと、
上下の前記ワークロールの周速が異なるように、上下の前記駆動用中間ロールを回転駆動させる回転駆動装置と、
を備え、
前記ワークロールの直径Dwが、20~120mmであり、
前記駆動用中間ロールの直径DIが、1.7~4.5×Dwであり、
前記ワークロールの表面粗さが、0.05~0.50μmRaであり、
前記駆動用中間ロールの表面粗さが、0.10~1.00μmRaであるクラスター型圧延機。
【請求項2】
複数の前記中間ロールは、それぞれ前記ワークロール及び前記バックアップロールの双方と接触しており、
前記ワークロールの直径Dwが、70~120mmであり、
前記ワークロールの表面粗さが0.05~0.40μmRaであり、
前記駆動用中間ロールの表面粗さが、0.30~0.80μmRaである請求項1に記載のクラスター型圧延機。
【請求項3】
複数の前記中間ロールは、前記ワークロールと接する複数の第1中間ロールと、前記第1中間ロール及び前記バックアップロールと接する複数の第2中間ロールを備え、
前記駆動用中間ロールは、複数の前記第2中間ロールのうち少なくとも1本以上からなる請求項1に記載のクラスター型圧延機。
【請求項4】
前記ワークロールの直径Dwが、20~70mmであり、
前記ワークロールの表面粗さが0.05~0.15μmRaであり、
前記駆動用中間ロールの表面粗さが、0.15~0.25μmRaである請求項3に記載のクラスター型圧延機。
【請求項5】
前記回転駆動装置は、高速側と低速側との前記ワークロールの周速比が1.03~1.10となるように、上下の前記駆動用中間ロールを回転駆動させる請求項1から4のいずれか1項に記載のクラスター型圧延機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のクラスター型圧延機を用いた薄鋼帯の冷間圧延方法であって、
板厚が0.3mm以下の鋼帯に対して、高速側と低速側との前記ワークロールの周速比が1.03~1.10となるように、前記駆動用中間ロールを駆動して冷間圧延を行う冷間圧延方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯の圧延機および冷間圧延方法に関するものであり、特に硬質で薄い鋼帯を圧延する圧延機および冷間圧延方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特殊鋼、ステンレス鋼、電磁鋼帯などの薄鋼帯は、従来よりも合金成分の量が多く、圧延を行う材料の硬質化が進展している。また、箔材等を含む極薄鋼帯の需要が高まっていることから、硬質の極薄鋼帯を効率よく生産するための冷間圧延技術が求められている。
【0003】
従来から小径のワークロールを有するクラスター型圧延機が用いられている。大径のワークロールでは鋼帯が硬質で板厚が薄くなると、大きな圧延荷重を付与しても圧下が進行しない、いわゆる圧延限界によって、圧延可能な最小板厚を低下させることができないからである。クラスター型圧延機は、1本の小径ロールをそれよりもロール径の大きい2本の中間ロールで支持し、この中間ロールを複数のロール群で支持する構造となっている。その結果、クラスター型圧延機は、ワークロールを支持するロール群が扇状に広がって配置された形態を有する。
【0004】
このようなクラスター型圧延機として、特許文献1には20段のクラスター型圧延機が開示されており、特許文献2には12段、14段、16段、20段のクラスター型圧延機が開示されている。特許文献1、2に示すように、小さいロール径のワークロールによって圧延が行われることにより、圧延時のワークロールと材料との接触長さ(接触弧長と呼ぶ)が小さくなり、圧延荷重を低く抑えることができるとともに、ワークロールの鋼帯との接触変形であるロール偏平を抑えることができる。この両者の相乗効果により圧延荷重を低減することができる。
【0005】
一方、ロール径を小径化せずに圧延荷重を低減する方法として、上下のワークロールを異なる周速にして圧延を行う異周速圧延が知られている(例えば特許文献3~5参照)。異周速圧延によって鋼帯にせん断ひずみがロールバイトにおいて積極的に付与されることで、塑性変形を発生させるための垂直方向の圧力を低下させ、圧延荷重を低減させている。特許文献3~5に開示された異周速による圧延は、上下のワークロールを直接駆動している。上下のワークロールに異なる周速を与えて圧延する場合、高速側のワークロールにトルクが集中してしまい、上下で同じ周速を与える通常の冷間圧延よりも大きなトルクが必要となるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4-127901号公報
【特許文献2】特開2011―183450号公報
【特許文献3】特開昭61―176412号公報
【特許文献4】特開昭61―242713号公報
【特許文献5】特開2017-127901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、硬質な箔材などの極薄鋼帯の需要の増加に伴って、より硬く、より薄い鋼帯を圧延することが求められている。その場合、特許文献1、2に開示された小径のワークロールを用いたクラスター型圧延機であっても、薄鋼帯と接するワークロールの偏平変形が大きくなり、圧延荷重が大きくなるという課題がある。圧延荷重が大きいと、1パス当たりの圧下率を下げざるを得ず、その結果、圧延のパス数が増加して、生産能率が低下するという問題が生じる。特に、板厚が薄いほど、コイルの単位重量あたりの鋼帯の長さが長くなるため、1パス当たりの圧延時間が極めて長くなり、生産能率を低下させる大きな要因となる。
【0008】
また、特許文献3~5のようにワークロールを直接駆動する場合、ワークロールに駆動トルクを伝達するスピンドルは、上下のスピンドルが干渉することがないように、ロール径よりも細くする必要がある。しかしながら、スピンドル径が小さくなると、スピンドルの表面に発生するせん断応力が過大となってねじり強度が不足する。このため、小径のワークロールを用いて異周速圧延を行うと、高速側のワークロールが必要とするトルクをスピンドルから伝達できないという問題が生じる。その結果、鋼帯に対する冷間圧延の生産能率を向上できないという問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、硬質な極薄材のような鋼帯を圧延する場合であっても、圧延荷重を低減させて生産能率を向上させることができるクラスター型圧延機および圧延方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 鋼帯を圧延する上下一対のワークロールと、
上下の前記ワークロールのそれぞれを支持する複数の中間ロールと、
複数の前記中間ロールを支持するバックアップロールと、
複数の前記中間ロールのうち、上下の前記ワークロールをそれぞれ回転駆動させる機能を有する駆動用中間ロールと、
上下の前記ワークロールの周速が異なるように、上下の前記駆動用中間ロールを回転駆動させる回転駆動装置と、
を備え、
前記ワークロールの直径Dwが、20~120mmであり、
前記駆動用中間ロールの直径DIが、1.7~4.5×Dwであり、
前記ワークロールの表面粗さが、0.05~0.50μmRaであり、
前記駆動用中間ロールの表面粗さが、0.10~1.00μmRaであるクラスター型圧延機。
[2] 複数の前記中間ロールは、それぞれ前記ワークロール及び前記バックアップロールの双方と接触しており、
前記ワークロールの直径Dwが、70~120mmであり、
前記ワークロールの表面粗さが0.05~0.40μmRaであり、
前記駆動用中間ロールの表面粗さが、0.30~0.80μmRaである[1]に記載のクラスター型圧延機。
[3] 複数の前記中間ロールは、前記ワークロールと接する複数の第1中間ロールと、前記第1中間ロール及び前記バックアップロールと接する複数の第2中間ロールを備え、
前記駆動用中間ロールは、複数の前記第2中間ロールのうち少なくとも1本以上からなる[1]に記載のクラスター型圧延機。
[4] 前記ワークロールの直径Dwが、20~70mmであり、
前記ワークロールの表面粗さが0.05~0.15μmRaであり、
前記駆動用中間ロールの表面粗さが、前記ワークロールの表面粗さより大きく、かつ、0.15~0.25μmRaである[3]に記載のクラスター型圧延機。
[5] 前記回転駆動装置は、高速側と低速側との前記ワークロールの周速比が1.03~1.10となるように、上下の前記駆動用中間ロールを回転駆動させる[1]から[4]のいずれかに記載のクラスター型圧延機。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の圧延機を用いた薄鋼帯の冷間圧延方法であって、
板厚が0.3mm以下の鋼帯に対して、高速側と低速側との前記ワークロールの周速比が1.03~1.10となるように、前記駆動用中間ロールを駆動して冷間圧延を行う冷間圧延方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクラスター型圧延機によれば、駆動用中間ロールを回転駆動させて小径のワークロールによる異周速圧延を行うことにより、小径のワークロールによる圧延荷重の低減効果と、異周速圧延による圧延荷重の抑制効果との両立を図ることで圧下率を大きくとることができるため、生産能率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のクラスター型圧延機の好ましい実施形態を示す模式図である。
【
図2】
図1のクラスター型圧延機における回転駆動装置の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明のクラスター型圧延機の別の実施形態を示す模式図である。
【
図4】板厚0.30mmの鋼帯を1パス圧延したときの周速比と圧下率との関係を示すグラフである。
【
図5】板厚0.10mmの鋼帯を1パス圧延したときの周速比と圧下率との関係を示すグラフである。
【
図6】板厚0.05mmの鋼帯を1パス圧延したときの周速比と圧下率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明のクラスター型圧延機の好ましい実施形態を示す模式図である。
図1のクラスター型圧延機1Aは12段の圧延機であって、上下一対のワークロール10Aと、各ワークロール10Aのそれぞれを支持する複数の中間ロール20Aと、各複数の中間ロール20Aを支持するバックアップロール30Aとを備える。鋼帯Sの上下にそれぞれ6本のロール群が配置されており、上下のワークロール10Aはそれぞれ2本の中間ロール20Aにより支持され、2本の中間ロール20Aは3本のバックアップロール30Aにより支持されている。
【0014】
ワークロール10Aは、コイル2から供給される鋼帯Sに接触しながら回転し、鋼帯Sに板厚方向の圧縮変形を与えて連続的に減厚していく。圧延された鋼帯Sはテンションリール3に巻き取られる。上下1対のワークロール10Aは、それぞれ胴長が600~1800mmであり、同じ直径を有している。ただし、1対のワークロール10A同士のロール径差が±0.5%程度であれば同径とみなしてもよい。
【0015】
各ワークロール10Aは、少なくとも胴部の外層5mmの縦弾性係数が450GPa以上の超硬合金からなることが好ましい。超硬合金ロールは通常の鋼製ロールに比べて縦弾性係数が高いため、弾性変形である偏平変形が軽減されて接触弧長を短くすることができ、圧延荷重および圧延トルクの低減効果を拡大することができる。また、ワークロール10Aの外層に高い硬度と耐摩耗性を有する超硬合金を用いることで、表面に疵が発生するのを抑制することができる。なお、外層の厚みが少なくとも5mmあればよく、内部を鋳鉄や鍛鋼などの鋼製ロールにより構成してもよいし、胴部すべてを超硬合金で構成されていてもよい。
【0016】
ワークロール10Aと鋼帯Sとのロールバイト(接触界面)には潤滑油が供給される。ロールバイトに供給される潤滑油は、ワークロール10Aと中間ロール20Aとの接触部、中間ロール20Aとバックアップロール30Aとの接触部にも供給される。潤滑油は、例えばニート油の他に、乳化剤を用いて水中に乳化させたエマルションを用いてもよい。潤滑油の動粘度は、特に限定されないが、40℃において5~30mm2/sであることが好ましい。動粘度が5mm2/s未満の場合には、ロールバイトに導入される油膜厚が薄くなり、圧延荷重が増加するとともに、焼き付きによる表面欠陥が生じやすい。一方、潤滑油の粘度が30mm2/sを超えると、ロール間スリップが発生しやすくなり、異周速状態を維持できなくなる可能性がある。
【0017】
複数の中間ロール20Aは、上下それぞれ2本ずつ設けられており、2本の中間ロール20Aが1本のワークロール10Aを支持する構造を有する。ワークロール10Aには鋼帯Sからの加工反力が直接負荷されるため、ワークロール10Aが小径である場合にはワークロール10Aがたわみやすい。そこで、上下2本の中間ロール20Aが各ワークロール10Aをそれぞれ支持する構造になっている。複数の中間ロール20Aは、ワークロール10Aよりも大きな直径を有し、ワークロール10Aよりも高い曲げ剛性を有している。
【0018】
複数の中間ロール20Aのうち、上下それぞれ1本以上はワークロール10Aを回転させるための駆動用中間ロール25として機能する。つまり、ワークロール10Aが直接回転駆動するのではなく、駆動用中間ロール25が回転駆動することにより、駆動用中間ロール25に接触しているワークロール10Aが間接的に回転する。
図1において、4本の第1中間ロール20Aのすべてが駆動用中間ロール25として機能しており、上下それぞれ2本の中間ロール20Aが1本のワークロール10Aを回転駆動させている。この場合、2本の駆動用中間ロール25は周速度が同一となるように制御されるとともに、上下の駆動用中間ロール25は互いに異なる周速度になるように制御される。
【0019】
なお、4本の中間ロール20Aのすべてが駆動用中間ロール25である場合について例示しているが、上述の通り、中間ロール20Aのうち、上下に少なくとも1本ずつ駆動用中間ロール25が設けられていればよい。この場合、他の中間ロール20Aはワークロール10Aの回転に伴って回転しながらワークロール10Aを支持することになる。
【0020】
バックアップロール30Aは、上下にそれぞれ3本ずつ設けられており、3本のバックアップロール30Aが2本の中間ロール20Aを支持する構造を有する。複数のバックアップロール30Aのうち、上下それぞれ1本以上は、軸部にロール軸方向に沿って分割された複数の胴部が取り付けられた構造を有するバックアップロールベアリングであることが好ましい。特に、鋼帯Sの圧延方向に対して両端側に設置された上下それぞれ2本のバックアップロール30Aがバックアップロールベアリングからなっていることがより好ましい。すると、バックアップロールベアリング間の軸部を押し込む機構や、バックアップロールベアリングを偏心させる機構を設けることにより、板幅方向のクラウンを調整することができ、形状制御能力を高めることができる。
【0021】
図2は、回転駆動装置の一例を示す模式図である。
図2の回転駆動装置40は、上下のワークロール10Aをそれぞれ異なる周速比で回転させるように、駆動用中間ロール25を回転駆動させる。周速比とは、低速側のワークロール10Aの周速に対する高速側のワークロール10Aの周速の比を意味する。なお、上側もしくは下側のワークロール10Aのどちらを高速側もしくは低速側に設定してもよい。
【0022】
回転駆動装置40は、駆動用中間ロール25を回転駆動させるものであり、駆動モータ41と、駆動モータ41に接続されたディファレンシャルギア(差動歯車)42と、一方がディファレンシャルギア42に接続され他方が駆動用中間ロール25に接続された複数のスピンドル43とを備える。ディファレンシャルギア42は、1つの駆動モータ41から伝達される回転駆動力を上下のスピンドル43に分割して伝達する。この際、ディファレンシャルギア42は、上下のスピンドル43に対し異なる周速になるように回転駆動力を分割する。
図1のように、上下にそれぞれ2本ずつの駆動用中間ロール25が配置されている場合、スピンドル43もそれぞれ上下に2本ずつ設けられ、上側同士もしくは下側同士の周速は同一になるように設定される。
【0023】
なお、1つの駆動モータ41の回転駆動力がディファレンシャルギア42を用いて上下のスピンドル43に分割され伝達される場合について例示しているが、上下の駆動用中間ロール25のそれぞれに個別に駆動モータ41が設置されていてもよい。この場合、上下それぞれの駆動モータ41の周速が独立に調整されることで異周速制御が行われることになる。
【0024】
図3は本発明のクラスター型圧延機の別の実施形態を示す模式図である。なお、
図3のクラスター型圧延機1Bにおいて、
図1のクラスター型圧縮機と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
図3のクラスター型圧延機1Bは、20段の圧延機であって、
図1と同様、上下一対のワークロール10Bと、各ワークロール10Bのそれぞれを支持する複数の中間ロール20Bと、複数の中間ロール20Bを支持する複数のバックアップロール30Bとを備える。20段のクラスター型圧延機1Bとしては、ゼンジミア式圧延機が広く知られており、鋼帯Sの上下にそれぞれ10本のロール群が配置されている。
【0025】
図3のワークロール10Bは、胴長が400~1400mm程度のものが用いられる場合が多く、
図1と同様、例えば超硬合金ロールからなるものであってもよい。また、
図1と同様、鋼帯Sとワークロール10Bとの間のロールバイトには潤滑油が供給される。
図3の場合、接触する中間ロール20B同士の間にも潤滑油が供給される。さらに、バックアップロール30Bについても、
図1と同様、上下それぞれ1本以上は、バックアップロールベアリングによって構成されることが好ましい。
【0026】
特に、
図3の複数の中間ロール20Bは、ワークロール10Bを直接支持する複数の第1中間ロール21Bと、複数の第1中間ロール21Bを支持する複数の第2中間ロール22Bとを備える。2本の第1中間ロール21Bが1本のワークロール10Bを支持し、3本の第2中間ロール22Bが2本の第1中間ロール21Bを支持する。そして、4本のバックアップロール30Bが3本の第2中間ロール22Bを支持する。第1中間ロール21Bの直径(ロール径)は、ワークロール10Bのロール径よりも大きく、第2中間ロール22Bの直径は、第1中間ロール21Bの直径よりも大きい。これは、クラスター型圧延機1Bのロール配置のためのスペース上の制約によるものである。
【0027】
複数の中間ロール20Bのうち、第2中間ロール22Bが駆動用中間ロール25として機能し、第2中間ロール22Bに
図2の回転駆動装置40が接続される。これは、
図3のワークロール10B及び第1中間ロール21Bの直径は、
図1のワークロール10A及び中間ロール20Aに比べて小さいことから、ロール径の大きさがワークロール10B及び第1中間ロール21Bよりも大きい第2中間ロール22Bを駆動用中間ロール25にすることで、スピンドル43の直径を大きくして異周速制御を行うのに必要なトルクを確保するためである。なお、
図3の場合であっても、上下それぞれ3本の第2中間ロール22Bのうち、少なくとも1本が駆動用中間ロール25として機能するものであればよい。そして、駆動用中間ロール25の回転駆動力は第1中間ロール21Bを介してワークロール10Bに伝達されることになる。
【0028】
<ワークロール10A、10Bの直径>
クラスター型圧延機1A,1Bのワークロール10A、10Bは、20~120mmの直径Dwを有する。ワークロール10A、10Bの直径Dwが120mmを超えると、ワークロール10A、10Bのロール偏平が大きくなって、圧延荷重が増加して、1パス当たりの圧下率を大きくとることができない。ワークロール10A、10Bの直径が20mm未満では、圧延の際のワークロール10A、10Bのたわみ変形が大きくなって、たわみ変形を中間ロール20A、20Bで抑制できなくなり、鋼帯Sの形状が不安定化する。一方、ワークロール10A、10Bの直径Dwが20~120mmである場合、鋼帯Sとワークロール10A、10Bとの接触弧長を短くすることができるため、鋼帯Sを塑性変形させるために必要な駆動トルクを小さくすることができる。
【0029】
なお、ワークロール10A、10Bは、段数によらず、直径Dwが20~120mmになっていれば圧延荷重を低減することができるが、さらに段数に応じた好適範囲の直径Dwになっていてもよい。12段のクラスター型圧延機1Aの場合には、上下のワークロール10Aの直径Dwが70~120mmであることが好ましい。これは、中間ロール20Aによるワークロール10Aのたわみの抑制効果が低いため、直径Dwが70mm未満ではワークロール10Aのたわみが大きくなるおそれがあるためである。20段のクラスター型圧延機1Bの場合、ワークロール10Bの直径Dwは20~70mmであることが好ましい。これは、中間ロール20Bとして第1中間ロール21Bと第2中間ロール22Bとを配置しているため、ワークロール10Bのたわみを抑制する効果が高く、小径のワークロール10Bを適用することで圧延荷重を大きく低減できるからである。
【0030】
<ワークロール10A、10Bの表面粗さ>
ワークロール10A、10Bの表面粗さは、0.05~0.50μmRaである。なお、表面粗さとは、JIS B 0601-1994に規定される算術平均粗さであり、測定方向はワークロール10A、10Bの軸に平行な方向である。表面粗さが0.05μm未満の場合、駆動用中間ロール25からワークロール10A、10Bへトルクを伝達する際に、ロール間でスリップが発生することがあり、駆動トルクを伝達できないからである。ワークロール10A、10Bの表面粗さが0.50μmを超えると、鋼帯Sとワークロール10A、10B間での摩擦係数が大きくなり、圧延荷重および圧延トルクが増加するため、ワークロール10A、10Bを小径化する効果を相殺してしまう。
【0031】
特に、
図1の12段のクラスター型圧延機1Aの場合、ワークロール10Aの表面粗さは0.05~0.40μmRaであることが好ましい。一方、
図3の20段のクラスター型圧延機1Bの場合、ワークロール10Bの表面粗さは0.05~0.15μmRaであることが好ましい。ワークロール10A、10Bの直径が大きいほどロール間スリップが生じやすくなり、ワークロール10A、10Bの表面粗さを大きくする必要がある。
図1の12段のクラスター型圧縮機1Aのワークロール10Aの直径は、
図3の20段のクラスター型圧縮機1Bのワークロール10Bの直径よりも大きい。そのため、ワークロール10Bの表面粗さの上限値はワークロール10Aより小さくすることができ、鋼帯Sとワークロール10Bとの間の摩擦係数が増大するのを抑制することができる。
【0032】
<駆動用中間ロール25の直径>
駆動用中間ロール25の直径は、ワークロールの直径Dwに対して、1.7~4.5×Dwになっている。駆動用中間ロール25の直径DIが、1.7×Dwよりも小さい場合、スピンドル43の直径も小さくせざるを得なくなる。異周速圧延を行う際の高速側の駆動用中間ロール25に対するトルク集中が生じると、スピンドル43の強度が不足して、設備破損を生じさせるリスクが高くなる。一方、駆動用中間ロール25の直径DIが4.5×Dwを超えると、クラスター型圧延機1A、1Bとして、ロール群を扇状に配置するための設備配置の自由度が低下して、潤滑油の供給配管等を設置するスペースが制約される。
【0033】
<駆動用中間ロール25の表面粗さ>
駆動用中間ロール25の表面粗さは、0.10~1.00μmRaである。駆動用中間ロール25の表面粗さが、0.10μmRaよりも小さいと、ロール同士の接触面での表面粗さが小さくなり、ロール間スリップが発生しやすくなる。一方、駆動用中間ロール25の表面粗さが1.0μmRaを超えると、駆動中間ロール25に接触するワークロール10Aもしくは第1中間ロール21Bの表面に疵を発生させ、鋼帯Sに転写されることにより、鋼帯Sに表面欠陥を発生させるおそれがある。そのため、駆動用中間ロール25の表面粗さは、0.10~1.00μmRaに形成される。
【0034】
特に、
図1の12段のクラスター型圧延機1Aの場合、駆動用中間ロール25の表面粗さは、0.30~0.80μmRaの範囲にあることが好ましい。一方、
図3の20段のクラスター型圧延機1Bの場合、駆動用中間ロール25の表面粗さは、0.15~0.25μmRaであることが好ましい。直径が小さければ駆動用中間ロール25の表面粗さを小さくしてもロール間スリップを防止することができる。よって、段数を多くして直径が小さくなるほど表面粗さを小さくでき、ロール間で発生する表面疵の発生を抑制できる。
【0035】
さらに、
図1のクラスター型圧延機1Aにおいて、駆動用中間ロール25の表面粗さは、ワークロール10Aの表面粗さよりも大きくすることが望ましい。これは、
図1の場合、ワークロール10A側の表面粗さをできるだけ小さくして圧延荷重を低減させる分、駆動用中間ロール25側の表面粗さを大きくしてロール間スリップを防止するためである。また、
図3の場合、駆動用中間ロール25の回転駆動力は、第1中間ロール21Bを介してワークロール10Bに伝達される。このため、上記圧延荷重低減及びロール間スリップの観点から、第1中間ロール21Bの表面粗さはワークロール10Bの表面粗さより大きくすることが好ましい。また、駆動用中間ロール25は、第1中間ロール21Bとの間でロール間スリップが生じないものであればよいが、ワークロール10Aの表面粗さより大きくすることが好ましい。
【0036】
図3のクラスター型圧延機1Bの場合、第1中間ロール21Bの表面粗さは、ワークロール10Bの表面粗さよりも大きく、駆動用中間ロール25よりも小さくなっている。表面粗さについては、ワークロール10Bよりも表面粗さが小さいとロール間スリップが生じやすく、駆動用中間ロール25よりも表面粗さが大きいと、ロール間で表面損傷が発生しやすくなるからである。
【0037】
なお、上述したワークロール10A、10B及び駆動用中間ロール25の表面仕上げには、上述した所望の表面粗さが得られるものであればどのような加工方法であってもよい。例えば、機械加工によるロール研磨、ショットブラスト、放電加工、電子ビーム加工、レーザー加工などによりロールの表面を仕上げることができる。このうち、研削機を用いたロール研磨を行う場合には、使用する砥石の番手を変更して所望の表面粗さに仕上げる。
【0038】
また、ワークロール10A、10B及び中間ロール20A、20Bの表面には、周方向(ロール軸方向に対し垂直方向)に延びる研磨筋が形成されていることが好ましい。研磨筋とは、研磨によって微視的な凹凸がロール幅方向へ列状に形成された研磨目である。冷間圧延において駆動用中間ロール25からワークロール10A、10Bへころがり接触によりトルクを伝達する際、潤滑油がロール間に導入されて流体膜が形成される。すると、圧延速度の加減速時にロール間スリップが発生しやすい。このため、接触して回転する双方のロール表面に周方向に研磨筋を付与しておくことにより、ロール間から潤滑油が排除されるようにするのが好ましい。
【0039】
<上下ワークロール10A、10Bの周速比>
回転駆動装置40は、上下のワークロール10A、10Bの周速比が1.03~1.10となるように、上下の駆動用中間ロール25で周速度を制御する。周速比が1.03未満では異周速圧延による圧延荷重の低減効果が十分得られない。一方、周速比が1.10を超えると、高速側のワークロールを回転駆動させるための駆動用中間ロール25に掛かるトルクが増大して、ロール間スリップが発生する可能性が高くなる。
【0040】
<冷間圧延方法>
図1から
図3を参照して、本発明の冷間圧延方法の好ましい実施形態について説明する。冷間圧延が行われる際、
図1から
図3のクラスター型圧延機1A、1Bは、例えば圧延方向に鋼帯Sを往復させて圧延を行うリバース圧延機として機能する。なお、圧延方向に沿って複数台のクラスター型圧延機1A、1Bが設置され、各クラスター型圧延機1A、1Bにおいて順次圧延が行われるタンデム圧縮機として機能させてもよい、冷間圧延を行う際の1パスあたりの圧下率としては、5~60%程度の範囲で設定することができる。1パス当たりの圧下率が大きいほど、母材厚から製品厚までのパス数を削減できるため、生産能率の向上を図ることができる。ただし、材料の変形抵抗が大きく、板厚が薄くなるほど、1パス当たりの圧下率を大きくとれなくなるので、クラスター型圧延機1A、1Bごとに異なる最大圧延荷重に応じて、1パス当たりの圧下率を決定する。
【0041】
冷間圧延は、板厚が0.3mm以下の鋼帯Sに対して行われる。板厚が0.3mm以下の極薄材の圧延においては、特に硬質な材料を圧延しようとするとワークロール10A、10Bの偏平変形が大きくなって圧延荷重が増加してしまう条件である。このような条件において本実施形態の有利な特性が発揮できる。特に、板厚が0.1mm以下の鋼帯に適用するのが好ましく、0.07mm以下がより好ましい。また、いわゆる箔材と呼ばれる板厚である0.01~0.02mmを圧延するものであってもよい。
【0042】
鋼帯Sとしては、高炭素鋼などの特殊鋼、ステンレス鋼、電磁鋼帯などの箔材等を含む極薄鋼帯を対象とする。ただし、これに限定されるものではなく、アルミ合金、チタン合金、銅合金など、鉄鋼材料以外に対しても適用できる。
【0043】
上記実施の形態によれば、ワークロール10A、10Bの直径が、20~120mmであり、駆動用中間ロール25の直径が、1.7~4.5×Dwであって、上下のワークロール10A、10Bの周速が異なるように、上下の駆動用中間ロール25の周速比を制御する。これにより、小径のワークロール10A、10Bによる異周速圧延を実現することができ、ワークロール10A、10Bのロール偏平の低減による圧延荷重の低減効果と、異周速圧延でのせん断変形の付与による圧延荷重の低減効果の両者を得ることができる。その結果、従来に比べて一層の圧延荷重の低減効果および圧延トルク低減効果が実現される。
【0044】
特に、異周速圧延では、上下のワークロール10A、10Bのうち、高速側ロールに作用するトルクが大きく、上下で同周速の圧延に比べて大きなトルクが高速側のワークロール10A、10Bに集中することになる。よって、ワークロール10A、10Bが小径である場合、スピンドル43も小径になるため、トルク不足となる。そこで、ワークロール10A、10Bよりも径が大きい駆動用中間ロール25を回転駆動させることにより、異周速圧延を行うのに必要なトルクを確保する。一方、駆動用中間ロール25がワークロール10A、10Bを回転駆動させる場合、駆動用中間ロール25からワークロール10A、10Bへ回転駆動力を伝達する必要があり、ロール間スリップの発生を抑える必要がある。そこで、ワークロール10A、10Bの表面粗さを0.05~0.50μmRaにし、駆動用中間ロール25の表面粗さを0.10~1.0μmRaにする。これにより、小径のワークロール10A、10Bを使用しながら異周速圧延を実現することができ、圧延荷重の低減を行うことで、硬質な薄鋼帯の圧延を行うことができる。
【実施例0045】
図3の20段のクラスター型圧延機1Bを用いて、硬質な極薄材の冷間圧延を実施した実施例について説明する。上下のワークロール10Bの直径Dwを60mm、ワークロール10Bの表面粗さを0.1μmRa、駆動用中間ロール25の直径を170mm(=2.83×Dw)、バックアップロール30Bの直径を300mmとした。駆動用中間ロール25の表面粗さは0.2μmRaであり、周方向に研磨筋が形成されるように円周方向に研磨仕上げした。
【0046】
駆動用中間ロール25の上下の周速比は1.00、1.03、1.05および1.10とした。このとき、上下のワークロール10Bの直径差はほとんどなかったため、上下のワークロール10Bの周速比は、駆動用中間ロール25の上下の周速比と同じであるとみなして、本実施例である圧延条件を実現した。
【0047】
クラスター型圧延機1Bにおける入側(鋼帯Sの進行方向に対してワークロール10Bよりも上流側)の張力は294MPaとし、出側(鋼帯Sの進行方向に対してワークロール10Bよりも下流側)の張力は441MPaとしてそれぞれ一定にした。圧延速度は100m/分であり、動粘度14mm2/sの潤滑油を圧延機入出側より500l/分で供給し、リバース圧延を行った。
【0048】
このような条件下において、鋼帯Sとして板厚0.3mm、板幅910mmの特殊鋼薄板を用いて圧延実験を行った。圧延引張試験によって同定した鋼帯Sの変形抵抗kは、式(1)に示す変形抵抗式に基づき、l=1046MPa、m=0.0.05、n=0.116の硬質材であった。ただし、εは相当ひずみである。
【0049】
k=l×(ε+m)n ・・・(1)
【0050】
先ず、上記板厚0.3mmの鋼帯Sを1パス圧延することにより、その効果を検証した。実験は、単位幅あたりの圧延荷重が3.6kN/mmと一定に制御しながら、ワークロール10Bの周速比を1.00(同周速)、1.03、1.05、1.10と変化させて圧下率を測定した。
図4は、板厚0.3mmの鋼帯Sを1パス圧延したときの周速比と圧下率との関係を示すグラフである。
図4に示すように、同一の圧延荷重であれば、同周速比よりも周速比が大きい場合に1パスあたりの圧下率も大きくなり、周速比1.05の場合、圧下率は従来例に比べて1.2倍となった。
【0051】
次に、上記板厚0.3mmの鋼帯Sを0.1mmまで圧延した後、板厚0.1mmの鋼帯Sを1パス圧延したときの効果を検証した。加工硬化により硬質化した鋼帯Sに対して、上記と同様に、周速比1.00(同周速比)、1.03、1.05、1.10と変化させて圧下率を測定した。その際の圧延荷重は2.2kN/mmと一定に制御した。
図5は、板厚0.1mmの鋼帯を1パス圧延したときの周速比と圧下率との関係を示すグラフである。
図5に示すように、同周速比に対して周速比が1.03以上の場合の方が、1パスあたりの圧下率が増加し、周速比1.05での圧下率は1.2倍となった。
【0052】
さらに、上記0.1mmの鋼帯を板厚0.05mmまで圧延した後、板厚0.05mmの鋼帯Sを1パス圧延したときの効果を検証した。その際の圧延荷重は3.4kN/mmとした。
図6は板厚0.05mmの鋼帯を1パス圧延したときの周速比と圧下率との関係を示すグラフである。
図6に示すように、周速比が大きいほど圧下率が増加し、周速比1.05で圧下率は1.2倍となった。
【0053】
このように、
図3に示す20段のクラスター型圧延機1Bを用いて薄鋼帯Sの冷間圧延を行うことにより、従来(同周速比)よりも同一の圧延荷重において圧下率を増加させることができ、上述の通り、生産効率の向上を図ることができる。
表1の比較例No.10のように、ワークロール10Aの直径Dwが120mmより大きい場合、異周速圧延を行った場合でも、同一の入側板厚の鋼帯に対して圧下率が低下してしまい、生産能率の低下を招いた。また、表2の比較例No.10のように、ワークロール10Bの直径が20mmより小さい場合、所定の圧延荷重を負荷した条件で圧延を開始しても、鋼帯Sの板形状が不安定となってしまい、所望の圧下率を特定できなかった。一方、表1及び表2の発明例No.2、3、5、6、8、9、17~25のように、ワークロール10A、10Bの直径が20~120mmの場合、ロール間スリップ等が生じることなく、圧延荷重の低減効果を得ることができた。
表1及び表2のNo.11のように、駆動用中間ロール25の直径DIが1.7×Dw未満の条件では、所定の圧延荷重を付与した状態で圧延を開始すると、駆動用中間ロール25の制限トルクを超えたため、圧延を中止した。また、表1及び表2のNo.12のように、駆動用中間ロール25の直径DIが4.5×Dwより大きい条件(DI=4.55×Dw)では、中間ロール20A、20B及びバックアップロール30A、30Bを扇状に広がって配置するためのスペース上の制約が生じることが分かったので、圧延を実施することができなかった。一方、表1及び表2の発明例No.17、No.18のように、駆動用中間ロール25の直径DIが1.7~4.5×Dwの場合、制限トルクを超えることなく、異周速圧延を行うことができ、圧延荷重の低減効果を得ることができた。
表1及び表2のNo.13のように、ワークロール10A、10Bの表面粗さが、0.05μmRa未満の場合、駆動用中間ロール25からワークロール10A、10Bにかけて伝達すべきトルクが、ロール間スリップの発生により不十分となって、安定した異周速圧延を実現することができなかった。また、表1及び表2のNo.14のように、ワークロールの表面粗さが0.50μmRaより大きい場合、異周速圧延を行った場合でも、圧下率が低下してしまい、生産能率の低下を招いた。一方、表1及び表2の発明例No.19、20のように、ワークロール10A、10Bの表面粗さが、0.05~0.50μmRaの場合、ロール間スリップの発生を抑え、圧延荷重の低減効果を得ることができた。
表1及び表2のNo.15のように、駆動用中間ロール25の表面粗さが、ワークロール10A、10Bの表面粗さよりも小さく、0.10μmRa未満である場合、駆動用中間ロール25からワークロール10A、10Bにかけて伝達すべきトルクが、ロール間スリップの発生により不十分となって、安定した異周速圧延を実現することができなかった。
また、表1及び表2のNo.16のように、駆動用中間ロール25の表面粗さが、1.00μmRaよりも大きい場合、駆動用中間ロール25からトルクを伝達する際に、接触するワークロール10Aもしくは第1中間ロール21Bの表面に疵が発生したことに起因して鋼帯Sに表面疵が発生したため、圧延を中止した。一方、表1及び表2の発明例No.21、22のように、駆動用中間ロール25の表面粗さが、0.10~1.00μmRaである場合、ロール間スリップの発生を抑え、圧延荷重の低減効果を得ることができた。