(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032195
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】廃棄物埋め立て方法
(51)【国際特許分類】
B09B 1/00 20060101AFI20220217BHJP
B09B 3/20 20220101ALI20220217BHJP
【FI】
B09B1/00 A ZAB
B09B3/00 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135740
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】509164164
【氏名又は名称】地方独立行政法人山口県産業技術センター
(71)【出願人】
【識別番号】000166443
【氏名又は名称】戸田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】前 英雄
(72)【発明者】
【氏名】中邑 敦博
(72)【発明者】
【氏名】猪野 陽佳
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 龍二
(72)【発明者】
【氏名】西野 文善
(72)【発明者】
【氏名】山野 義雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 誠一
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA46
4D004AB05
4D004AB10
4D004AC07
4D004BB03
4D004CA34
4D004CA50
4D004CC11
4D004DA03
4D004DA20
(57)【要約】
【課題】鉄化合物による吸着成分と鉄以外の一部の遷移金属の化合物による抗菌成分とからなる硫化水素抑制剤を廃棄物に添加することで、硫酸還元菌が生成する硫化水素を化学的に吸着するとともに、硫酸還元菌の生育をも抑制して廃棄物から硫化水素の発生を抑制する廃棄物埋め立て方法を提供する。
【解決手段】 酸化鉄、水酸化鉄及びオキシ水酸化鉄から成る群のうち少なくとも1種類から成る硫化水素吸着成分と、ニッケル、銅及びマンガンそれぞれの酸化物、水酸化物、又は塩化物から成る群のうち少なくとも1種類から成る抗硫酸還元菌成分と、を含有する硫化水素抑制剤を廃棄物に混合させて埋め立てる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を埋め立て処分する処分場において、酸化鉄、水酸化鉄及びオキシ水酸化鉄から成る群のうち少なくとも1種類から成る硫化水素吸着成分と、ニッケル、銅及びマンガンそれぞれの酸化物、水酸化物、又は塩化物から成る群のうち少なくとも1種類から成る抗硫酸還元菌成分と、を含有する硫化水素抑制剤を前記廃棄物に混合させて埋め立てることを特徴とする廃棄物埋め立て方法。
【請求項2】
廃棄物を埋め立て処分する処分場において、酸化鉄、水酸化鉄及びオキシ水酸化鉄から成る群のうち少なくとも1種類から成る硫化水素吸着成分と、ニッケル、銅及びマンガンそれぞれの酸化物、水酸化物、又は塩化物から成る群のうち少なくとも1種類から成る抗硫酸還元菌成分と、を含有する硫化水素抑制剤を覆土材に混合させ、前記廃棄物を埋め立てた後に前記覆土材で覆土することを特徴とする廃棄物埋め立て方法。
【請求項3】
前記硫化水素抑制剤(乾燥重量)における前記抗硫酸還元菌成分の含有率は、8重量%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物埋め立て方法。
【請求項4】
被混合物に対し、前記硫化水素抑制剤(乾燥重量)を1重量%以上混合させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の廃棄物埋め立て方法。
【請求項5】
前記硫化水素吸着成分と前記抗硫酸還元菌成分とを含有する前記硫化水素抑制剤は、事業所から排出される汚泥を成分とすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の廃棄物埋め立て方法。
【請求項6】
前記汚泥に焼却灰、スラグ、フライアッシュ、真砂土、石英スラグ、ペーパースラッジの煤塵、プラスチック系の煤塵又は樹脂系の煤塵を混合させることを特徴とする請求項5に記載の廃棄物埋め立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の埋め立て処分場において問題となっている硫化水素の発生を長期間に亘って抑える廃棄物埋め立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国内における家庭等から排出される一般廃棄物の排出量は約0.43億トン(出典:一般廃棄物の排出及び処理状況(平成29年度)について 環境省)、また、産業廃棄物の排出量は年間約3.8億トン(出典:令和元年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 平成30年度速報値(概要版) 環境省)にも及んでいる。
これらの廃棄物は再生利用されたり、焼却等の中間処理によって減量されるものの、それでも処分できないものは最終処分場等で埋め立て処理されることになるが、最終処分場の数は減少傾向にあり、最終処分場の確保は厳しい状況である。
しかも、廃棄物最終処分場では廃棄物中に含まれる有機成分やその分解産物を栄養源とする硫酸還元菌が、嫌気性状態下で硫酸イオンを還元して硫化水素を発生させることが知られており、その濃度によっては最終処分場の作業員が死亡したり、中毒を起こす事例も発生している。都市部の再開発等で発生する建設廃棄物に含まれる有機物や廃石膏ボード類の廃棄物においても同様に硫酸還元菌による硫化水素の発生が認められている。さらに、硫化水素に関しては、卵の腐ったような悪臭や黒い水が発生することも環境問題として挙がっている。硫酸還元菌は土壌中に広く存在しているため、嫌気性環境と栄養源となる有機物の存在によって硫化水素は容易に発生してしまう。
そこで、これまで廃棄物の最終処分場で発生する硫化水素に対する対応策が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「産業廃棄物埋立処分場における硫化水素の発生抑制方法」という名称で、産業廃棄物を覆う覆土として、火力発電所の燃焼工程において燃えかすとして残留するクリンカアッシュを用いて硫化水素を吸着させる発明が開示されている。
また、特許文献2には、「廃棄物処分場における硫化水素生成の防止方法」という名称で、廃棄物処分場の廃棄物層を掘り起こし、その掘り起こした廃棄物にアントラキノン化合物からなる硫化水素抑制剤を混ぜて埋め戻す発明が開示されている。アントラキノン化合物は、硫酸塩還元菌に作用して、硫酸塩還元菌による硫化水素の生成を抑制する効果が知られていることから、硫化水素抑制剤として機能するものである。
特許文献3には、「汚泥処理工程における硫化水素の発生抑制方法」という名称で、汚泥処理工程の汚泥又は汚水に殺菌、酸化作用を有する薬剤として2-プロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール又は亜塩素酸ナトリウムを添加することで、硫化水素の発生を効果的に抑制する発明が開示されている。
さらに、特許文献4には、「石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制方法、および、石膏含有廃棄物処理設備、ならびに、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制に用いられるための水溶液」という名称で、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウムからなる群から選択される1種以上の可溶性塩水溶液又はチオ尿素様物質を含有する水溶液と石膏含有廃棄物を接触させる接触工程を有して、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生を抑制する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-186927号公報
【特許文献2】特開2003-251301号公報
【特許文献3】特開2013-111560号公報
【特許文献4】特開2020-22960号公報
【特許文献5】特開昭62-193697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される発明では、クリンカアッシュは15cm以上必要で、廃棄物層、クリンカアッシュ層を繰り返し積層する必要があった。また、クリンカアッシュへの硫化水素の吸着は物理的な吸着であるため、長期間埋立し、硫化水素の吸着許容量を超えた場合には、硫化水素が高濃度で発生する可能性があるという課題があった。
また、特許文献2乃至特許文献4に開示される発明では、硫化水素抑制剤として、アントラキノン化合物の水性スラリーや2-プロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール又は亜塩素酸ナトリウム、あるいは塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウムからなる群から選択される1種以上の可溶性塩水溶液やチオ尿素様物質等の薬剤を予め調達する課題があった。さらに、特許文献2に開示される発明では、廃棄物処分場の覆土層の下の廃棄物層の最上層を掘り起こして。硫化水素抑制剤を混ぜてから埋め戻す工程を必要としているという課題があり、特許文献3に開示される発明では、薬剤の添加量を減らすために、対象系の汚泥や汚水における酸化還元電位、硫化水素又は溶存硫化物の有無などの性状を測定して、その測定結果に基づいて薬剤の添加場所を定める必要があり煩雑であるという課題もあった
さらに、特許文献4に開示される発明では、可溶性塩水溶液やチオ尿素様物質を含有する水溶液では、水溶液であるがために廃棄物中に浸透しやすいものの、埋立による廃棄物処分場では流出する可能性が高く安定的に薬剤の効果が発揮されない可能性があるという課題があった。
【0006】
逆に、硫酸還元菌を有効に利用する発明も開示されている。
例えば、特許文献5には、「硫酸還元菌による重金属含有廃水の処理方法」という名称で嫌気性下において、硫酸還元菌とこの硫酸還元菌の生育に必要な栄養塩類と重金属含有廃水を混合して、硫酸還元菌が生成する硫化水素と重金属を反応させて硫化物として沈殿させて除去又は回収する発明が開示されている。
【0007】
一方、ベンガラや磁性体を製造する事業所から排出される鉄成分を含んだ汚泥や電池メーカーから排出されたり廃棄物中間処理業者の燃焼灰として排出されるリチウム電池の正極材(リチウム遷移金属酸化物)の成分を含んだ汚泥の処理に多額の費用と人手が必要とされ、それらの事業所のコストを押し上げていた。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、鉄化合物による吸着成分と鉄以外の一部の遷移金属の化合物による抗菌成分とからなる硫化水素抑制剤を廃棄物に添加することで、硫酸還元菌が生成する硫化水素を化学的に吸着するとともに、硫酸還元菌の生育をも抑制して廃棄物から硫化水素の発生を抑制することができる廃棄物埋め立て方法を提供することを目的とし、また、鉄成分を含んだ汚泥やリチウム電池の正極材成分を含んだ汚泥を硫化水素抑制剤として廃棄物の埋め立て処分場で活用することで、硫酸還元菌による硫化水素の発生を抑制することができる廃棄物埋め立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明である廃棄物埋め立て方法は、廃棄物を埋め立て処分する処分場において、酸化鉄、水酸化鉄及びオキシ水酸化鉄から成る群のうち少なくとも1種類から成る硫化水素吸着成分と、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びマンガン(Mn)それぞれの酸化物、水酸化物、又は塩化物から成る群のうち少なくとも1種類から成る抗硫酸還元菌成分と、を含有する硫化水素抑制剤を廃棄物に混合させて埋め立てることを特徴とするものである。
上記構成の廃棄物埋め立て方法においては、酸化鉄、水酸化鉄及びオキシ水酸化鉄から成る群のうち少なくとも1種類から成る硫化水素吸着成分が、廃棄物内において硫酸還元菌から発生する硫化水素を吸着するように作用し、Ni、Cu及びMnそれぞれの酸化物、水酸化物、又は塩化物から成る群のうち少なくとも1種類から成る抗硫酸還元菌成分は、廃棄物内で硫酸還元菌の生育を抑制するように作用する。
【0010】
また、第2の発明である廃棄物埋め立て方法は、廃棄物を埋め立て処分する処分場において、酸化鉄、水酸化鉄及びオキシ水酸化鉄から成る群のうち少なくとも1種類から成る硫化水素吸着成分と、Ni、Cu及びMnそれぞれの酸化物、水酸化物、又は塩化物から成る群のうち少なくとも1種類から成る抗硫酸還元菌成分と、を含有する硫化水素抑制剤を覆土材に混合させ、前記廃棄物を埋め立てた後に前記覆土材で覆土することを特徴とするものである。
上記構成の廃棄物埋め立て方法においては、硫化水素吸着成分が覆土内に浸透してきた硫化水素を吸着するという作用を有すると共に、廃棄物内の硫酸還元菌が覆土内に侵入すること及び覆土内での生育を抑制するという作用を有する。
【0011】
第3の発明である廃棄物埋め立て方法は、第1の発明又は第2の発明において、前記硫化水素抑制剤(乾燥重量)における前記抗硫酸還元菌成分の含有率は8重量%以上であることを特徴とするものである。
上記構成の廃棄物埋め立て方法における作用は第1又は第2の発明と同様である。
【0012】
第4の発明である廃棄物埋め立て方法は、第1乃至第3の発明のいずれか1つの発明において、被混合物に対し、前記硫化水素抑制剤(乾燥重量)を1重量%以上混合させることを特徴とするものである。
上記構成の廃棄物埋め立て方法における作用は第1乃至第3のいずれか1つの発明と同様である。なお、被混合物とは硫化水素抑制剤が混合される対象物を意味するが、廃棄物及び覆土が該当する。
【0013】
第5の発明である廃棄物埋め立て方法は、第1乃至第4の発明のいずれか1つの発明において、前記硫化水素吸着成分と前記抗硫酸還元菌成分とを含有する硫化水素抑制剤は、事業所から排出される汚泥を成分とすることを特徴とするものである。
上記構成の廃棄物埋め立て方法においては、硫化水素抑制剤をベンガラや磁性体、あるいはリチウム電池等を生産する工場、あるいは鉄酸化物、磁性体あるいは遷移金属を含む廃棄物を処理する処分場等の事業所から排出される汚泥から調達するという作用を有する。なお、汚泥は含水率が50重量%程度であることから、汚泥そのものを硫化水素抑制剤として用いる場合には、2倍の重量濃度を必要とする。
【0014】
第6の発明である廃棄物埋め立て方法は、第5の発明において、前記汚泥に焼却灰、スラグ、フライアッシュ、真砂土、石英スラグ、ペーパースラッジの煤塵、プラスチック系の煤塵又は樹脂系の煤塵を混合させることを特徴とするものである。
上記構成の廃棄物埋め立て方法においては、汚泥は含水率が50%程度あり、ハンドリング特性が低いことから、これらの物質を取扱性向上剤として添加することで、その取扱い性を向上する作用がある。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、第1の発明の廃棄物埋め立て方法においては、廃棄物埋め立て処分場において、発生する硫化水素を吸着して廃棄物埋め立て処分場からの排出を防止できると共に、硫化水素発生の原因となる硫酸還元菌の生育を抑制することで発生自体を予防することができる。
【0016】
また、第2の発明の廃棄物埋め立て方法においては、覆土において硫化水素を吸着し、硫酸還元菌の生育を抑制することができるので、廃棄物埋め立て処分場から排出される硫化水素を低減することができる。
【0017】
さらに、第3の発明の廃棄物埋め立て方法においては、第1又は第2の発明の効果と同様の効果を発揮することができる。
【0018】
第4の発明の廃棄物埋め立て方法においては、第1乃至第3の発明のいずれか1つの発明の効果と同様の効果を発揮することができる。
【0019】
第5の発明の廃棄物埋め立て方法においては、第1乃至第4の発明のいずれか1つの発明の効果に加えて、ベンガラや磁性体、あるいはリチウム電池等を生産する工場、あるいは鉄酸化物、磁性体あるいは遷移金属を含む廃棄物を処理する処分場等の事業所から排出される汚泥を有効活用することができると共に、事業所の廃棄物処理にかかる金銭的コストと人的コストを削減することができる。
【0020】
第6の発明の廃棄物埋め立て方法においては、第5の発明の効果に加えて、混合させる物質もまた本来廃棄されるものがほとんどであることから、これらを廃棄できることに加えて、汚泥を乾燥させると発生する莫大なコストや時間を抑制し、広大な場所を不要とすることができるという効果を発揮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)はH
2Sの吸着特性を確認するための実験装置の画像であり、(b)は(a)において符号Aで示される部分の拡大画像である。
【
図2】汚泥のサンプル充填密度が1.09g/cm
3と0.87g/cm
3の場合のH
2Sの吸着量とカラム管通過前のH
2Sの濃度との関係を示すグラフである。
【
図3】本発明の実施の形態に係る廃棄物埋め立て方法を実施する廃棄物埋立処分場を模した実証試験で用いたメディウム瓶の画像である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る廃棄物埋め立て方法を実施する廃棄物埋立処分場を模した実証試験の結果を示すグラフである。
【
図5】(a)-(g)は追加で行った廃棄物埋立処分場を模した実証試験における試験系を表す概念図である。
【
図6】本実施の形態に係る廃棄物埋め立て方法の工程を示すフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に係る廃棄物埋め立て方法を実施した廃棄物埋立処分場の縦断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る廃棄物埋め立て方法の実施の形態を
図1乃至
図7に基づき説明する。
まず、廃棄物埋め立て方法に用いる硫化水素抑制剤(以下、単に抑制剤という場合もある。)の成分について説明する。
硫化水素抑制剤は、ベンガラや磁性体、あるいはリチウム電池等を生産する工場、あるいは鉄酸化物、磁性体あるいは遷移金属を含む廃棄物を処理する処分場等の事業所から排出される汚泥の成分であるが、この汚泥に対し、X線回折法(XRD)を用いて成分の測定を行ったところ、主成分はヘマタイト(Fe
2O
3)、マグネタイト(Fe
3O
4)、硫酸バリウム(BaSO
4)、また、リチウムイオン電池の正極材(LiNiO
2,Li(NiCoMn)O
2等)であることが示唆された。また、この汚泥を焼成した後のサンプルをガラスビード法にて蛍光X線(XRF)測定を行った。
その成分分析結果を表1に示す。なお、Liは装置の性能上検出できなかったため表には掲載していない。
【0023】
【0024】
これらの成分に含まれる金属イオンの影響を調べるために、汚泥中に含まれる金属イオンを用いて、硫酸還元菌の存在下で硫化水素(H2S)の発生に影響があるか否かについて実験を行った。
実験は、金属塩としてLiCl,MnSO4,FeSO4,NiSO4,NiCl2,CuSO4,BaSO4を用いて実施した。硫酸還元菌の栄養源となる廃棄物を廃石膏で模し、廃石膏5gにイオン交換水20mL(ミリリットル)、乳酸Naを1mmol(ミリモル)、硫酸還元菌を培養したシード液を1mL、金属塩を金属が10mg(ミリグラム)となるように添加し、硫酸還元菌の生育条件に合わせてpHを6.5~8.0に調整した。pH調整後、Arバブリングを3分間行い、35℃で静置し、1週間後にH2S測定を行った。
その結果を表2に示す。
【0025】
【0026】
表2において、基準試料とは金属塩を含まないものを意味している。N.D.は検出されなかったことを意味し、臭いはH2Sの発生に伴う腐敗臭の有無を確認した。基準試料及びLiでは2ppmのH2Sの発生が確認され、石膏粉の色も黒に変色した。
表2には示していないが、1週間でFeとBaでもH2Sの発生が確認された。 一方、Ni,Cu,MnではH2Sの発生は見られなかった。但し、表2にもあるとおり、Mnでは石膏粉に黒い斑点が観察され、微量のH2Sの発生が推測された。そこで、Ni,Cuについて1ヶ月静置すると、NiではH2Sの発生は見られなかったが、CuはH2Sの発生が見られた。
NiイオンではH2Sの発生に対し強い抑制力を発揮することがわかったため、Niの濃度に幅を持たせて実験を行った。
NiCl26H2Oを用いて金属イオン(Niイオン)が100mg,10mg,1mgとなるように添加しH2S発生の実験を行った。実験方法は表2の結果を得た実験と同様である。その結果、Niを1mg添加したものでは、1週間でH2Sの発生が見られたが、10mgと100mg添加したものでは発生しなかった(表3参照)。
【0027】
【0028】
次に、汚泥中に含まれると示唆されたリチウムイオン電池の正極材を用いてH2Sの抑制効果を確かめる実験を行った。正極材としては、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM)を用いた。廃棄物を模した廃石膏5gにイオン交換水20mL,乳酸Naを1mmol、硫酸還元菌を培養したシード液を1mL、Niが10mgとなるようにLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を添加した。したがって、Co及びMnも当量(ほぼ10mg)含まれている。
この実験結果を表4に示す。表4より、1週間及び1ヶ月ではH2Sの発生は見られなかった。
【0029】
【0030】
以上の結果から、Ni及びCuにおいては硫酸還元菌に対して抗菌作用を備えていることが確認された。また、MnはNiやCuほどではないが、FeやBaよりも抗菌作用を発揮することが確認された。
したがって、Ni,Cu及びMnを併せて、表1に示される汚泥(乾燥)の10重量%程度が抗菌成分であると考えられる。また、特に抗菌力が強いNiのみを考慮すれば表1に示される汚泥(乾燥)の少なくとも8重量%程度が抗菌成分であると考えられる。
また、Ni、Cu及びMnの量としては、いずれも1週間程度の抗菌であれば、表3及び表4の結果から、廃石膏5gに対して金属元素として10mg程度、すなわち0.2重量%程度が必要であり、特に、Niについてはその作用が大きく1ヶ月程度持続することが分かった。
また、リチウムイオン電池の正極材を用いることでも十分に硫酸還元菌に対する抗菌性が発揮されることもわかった。したがって、リチウム電池等を生産する工場等の事業所から排出される汚泥を成分とした硫化水素抑制剤を廃棄物埋立処分場で用いてもH2Sの発生を抑制できると考えられる。
【0031】
次に、汚泥を用いて、H
2Sの吸着特性を確認するための実験を行った。その実験装置を
図1(a)に示す。
図1(b)は(a)のA部拡大図である。
図1において、1.6gの汚泥のサンプルを1.09g/cm
3,0.87g/cm
3,0.70g/cm
3の充填密度で厚さを変えて、それぞれφ14mmのカラム管2内に堆積させた系を用意し、下方に配置されたメディウム瓶1内で発生させたH
2Sをカラム管2内の汚泥サンプルに通過させ、その後、ガス収容袋3に導いて、カラム管2通過前後の硫化水素の濃度を測定することにより調べた。
通過させる初期硫化水素濃度は500~8000ppmの範囲であり、ポンプにより流入させた。ポンプの流速は0.5L/minとした。結果は表5に示すとおりであり、充填密度1.09g/cm
3でおよそ半分の濃度のH
2Sが吸着され、充填密度0.87g/cm
3で約18%、充填密度0.70g/cm
3で約5%の濃度のH
2Sが吸着されることが分かった。
また、汚泥のサンプル充填密度が1.09g/cm
3と0.87g/cm
3の場合のH
2Sの吸着量とカラム管2通過前のH
2Sの濃度との関係を示すグラフを
図2に示す。
図2において、符号4で表されているのが充填密度1.09g/cm
3の線であり、符号5で表されているのが充填密度0.87g/cm
3の線である。それぞれの充填密度の場合でH
2S濃度と吸着量に比例関係があることが確認できる。R
2は標準偏差Rの2乗であり分散を示している。
そして、反応時間が十分にあれば、汚泥サンプルの主成分である酸化鉄成分が硫化鉄に変換されるまで吸着可能であると考えられる。
【0032】
【0033】
次に、
図3及び
図4を参照しながら、廃棄物埋立処分場を模した実証試験について説明を行う。
図3は、本発明の実施の形態に係る廃棄物埋め立て方法を実施する廃棄物埋立処分場を模した実証試験で用いたメディウム瓶の画像であり、
図4は、本発明の実施の形態に係る廃棄物埋め立て方法を実施する廃棄物埋立処分場を模した実証試験の結果を示すグラフである。
廃棄物埋立処分場では、廃棄物を埋め立てた後に、雨の浸透と地下水の影響があるため、水と一緒に酸素が入り、常に地下水が流れているような「好気性条件」が維持されていれば、硫酸還元菌の育成条件には当てはまらず、H
2Sは発生しない。地下水が淀み、「嫌気性条件」となって硫酸還元菌とその栄養源となる有機物が存在するとH
2Sが発生する。また、海面埋立処分場の場合、常に、海面と同レベルの地下水が存在する。その場合、一般的には地下水をくみ上げて常に好気性を維持しているものの、何らかの原因によってスポット的に嫌気性環境が発生する場合も考えられるため、廃棄物埋立処分場としては、「地下水の淀み」を想定する必要がある。
【0034】
そこで、発明者らは、地下水の淀みも考慮した廃棄物埋立処分場を想定すべく、
図3に示されるように気相、液相(上澄み液)、固相(石膏)を形成した実証試験系を用いて試験を行った。
図3に示される3本の500mL用のメディウム瓶は、廃棄物を想定した廃石膏粉末を50g、淀んでいる地下水を想定した水200mL、硫酸還元菌を培養したシード液を1mL、汚泥サンプルを左から0,10g,30g封入し密閉されている。実際の試験では、これらに加えて、4gの汚泥サンプルを封入した同様のメディウム瓶も用いられた。これらのメディウム瓶は密閉後、撹拌した後に35℃に保温した。培養条件としては、メディウム瓶内を窒素曝気することによって嫌気条件を構築し、35℃で2ヶ月間静置培養を行った。50日後に気相におけるH
2Sの濃度を測定した。その結果を
図4及び表6に示す。
【0035】
【0036】
図4において、横軸の数字は日数を示している。
図4及び表6に示されるとおり、抑制剤(汚泥サンプル)を含まないものでは50日経過後にはH
2Sが6100ppmに到達したものの、抑制剤を4g、10g、30g加えた場合にはH
2Sがそれぞれ810ppm、205ppm、10ppmにまで減少した。
すなわち、汚泥サンプルの乾燥重量ベースで換算すると、30gは15gとなり、廃石膏粉末に対し汚泥サンプル成分を30重量%の濃度で混合させることでH
2Sの発生を十分に抑制することが可能であることが確認された。
なお、本実証試験では上澄み液中に汚泥成分は検出されなかったので、汚泥による硫酸還元菌に対する抗菌効果やH
2Sに対する吸着効果は上澄み液中では発揮されていないものと考えられる。
【0037】
次に、地下水の淀みの有無の影響を詳細に確認すべく、
図5(a)~(g)に示されるようなメディウム瓶を用いた試験系で追加の実証試験を行った。試験条件としては、
図3を用いて説明した実証試験と同様である。
図5は、追加で実施した廃棄物埋立処分場を模した実証試験における試験系を表す概念図であるが、(a)は、
図3の左端のメディウム瓶と同一の条件で汚泥サンプルを含まない場合である。また、(b)は(a)で攪拌後に沈殿物を除いて上澄み液のみを静置培養したものであり、(c)は(a)で攪拌後に除いた沈殿物のみを静置培養したものであり、(d)は(b)の上澄み液と(c)の沈殿物に抑制剤(汚泥サンプル)を1%(0.5g)加えて静置培養したものであり、(e)は(c)の沈殿物に抑制剤(汚泥サンプル)を2%(1g)加えて静置培養したものであり、(f)は(c)の沈殿物に四酸化鉄(マグネタイト,Fe
3O
4)を1%(0.5g)加えて静置培養したものであり、(g)は(c)の沈殿物に三酸化鉄(ヘマタイト,Fe
2O
3)を1%(0.5g)加えて静置培養したものである。汚泥サンプルは50重量%程度の水分を含むものである。
このような追加の実証試験の結果、いずれも気相におけるH
2Sの発生として表7に示されるような結果を得た。
【0038】
【0039】
表7より、まず、(a)は実証試験の抑制剤を添加しない場合と同様に5日目で200ppmの濃度のH
2Sが発生している。また、(b)及び(c)の結果から、硫酸還元菌は液相にも固相にも存在し、いずれもH
2Sを発生させることが確認された。また、
図3及び
図4に示される最初の実証試験と比較すると、(e)のように直接沈殿部へ抑制剤を混合させ、沈殿部のみで静置培養する場合には、抑制剤の量は少なくてよいことが確認された。すなわち、上澄み液には抑制剤が含まれていないことから、
図3の最初の実証試験や追加の実証試験(d)では上澄み液において硫酸還元菌によるH
2Sが発生した可能性が高く、沈殿物にいくら高濃度の抑制剤が含まれていてもH
2Sは発生することとなり、実際に抑制剤で硫酸還元菌の活動を抑制するために必要な量は、(e)において使用された汚泥サンプル成分の乾燥重量ベース(0.5g)で1重量%であると考えられる。
また、比較例として四酸化鉄と酸化鉄を沈殿部に混合させた(f)と(g)では共に5日目に180ppmのH
2Sが発生しているが、これはいずれの酸化鉄も混合されなかった(c)に比較して20ppmほど濃度が低いことからマグネタイト(四酸化鉄)とヘマタイト(三酸化鉄)のいずれの鉄成分であってもH
2Sを吸着することが理解される。
なお、本実施の形態においては、鉄成分としてマグネタイト及びヘマタイトの酸化鉄のみを用いたが、鉄イオンとH
2Sの存在によって硫化鉄が生成されることから、酸化鉄の他、水酸化鉄又はオキシ水酸化鉄が含まれていればよい。
以上の追加実証試験により、廃石膏成分に対して汚泥サンプル成分の乾燥重量ベースで1重量%の抑制剤を混合させることで硫酸還元菌によるH
2Sの発生を抑制できることが確認された。すなわち、乾燥させずにそのまま汚泥成分を使用する場合には、水分を50%程度含む汚泥であれば、その2倍の2重量%の汚泥を必要とすることになる。
但し、地下水の淀みを考慮すると、その地下水中での硫酸還元菌によるH
2Sの発生は抑制剤(汚泥成分)では効果を発揮することができないため、排水設備の拡充や埋立処分場の地表の水はけに留意して地下水の淀みをなくすことが重要であることが理解された。
【0040】
次に、事業所から排出される硫化水素吸着成分である鉄成分及び抗硫酸還元菌成分であるNi,Cu及びMnそれぞれの酸化物、水酸化物、又は塩化物を含む汚泥を硫化水素抑制剤として使用する際には、汚泥は、自体が含有する約50重量%の水分によって強い粘着性を有しているため造粒による細分化ができず、廃棄物や覆土材に混ぜる際のハンドリング特性が悪い場合もあることが判明した。既に述べたとおり、乾燥させて水分量を減らすことも考えられるが、乾燥費用が莫大かかることや自然乾燥場合には場所と時間がかかること、そして乾燥すると固化してしまうのでやはりハンドリング特性の向上が図れないという難点があった。
そこで、発明者らは、汚泥の取扱い性を向上できる物質(取扱性向上剤)を添加してハンドリング特性の向上を図るため、ハンドリング特性の向上が期待できる焼却灰、スラグ、フライアッシュを混ぜてみたところ、明らかなハンドリング特性の向上が図れた。
さらに、これらの他にハンドリング特性向上の可能性がある真砂土、石英スラグ、ペーパースラッジの煤塵、プラスチック系の煤塵及び樹脂系の煤塵については、ふるい試験とタッピング試験を実施し、その臭いの有無も含めて実験を実施した。ふるい試験は目開き10mmのふるいを用いて通過するか否かを試験した。タッピング試験はメディウム瓶内に入れて固着するかあるいは排出可能であるかを試験した。また、それぞれpHを測定したが問題はなかった。
その結果を表8に示す。
【0041】
【0042】
表8に示されるとおり、発明者らは、まず汚泥自体のハンドリング特性の低さを確かめ、その後、真砂土、石英スラグ、ペーパースラッジについて、臭いもなくハンドリング特性としては良好であることを確認した。また、プラスチック系の煤塵と樹脂系の煤塵については、アンモニア臭があるもののハンドリング特性としては良好であることを確認した。
したがって、汚泥の取扱性向上剤としては、焼却灰、スラグ、フライアッシュ、真砂土、石英スラグ、ペーパースラッジの煤塵、プラスチック系の煤塵及び樹脂系の煤塵を用いることができる。
汚泥のハンドリング特性が良い場合にはこれらの取扱性向上剤を加える必要はないが、悪い場合には、汚泥の50重量%を上限に添加することで汚泥のハンドリング特性が良好となることを確認した。
汚泥は事業所からそのままの状態で廃棄物埋立処分場に搬入し、現地で造粒してハンドリング特性を向上させてから廃棄物や覆土材と混合させる。
なお、これらの添加物には基本的に有機物は含まれておらず無機物のみであることから、汚泥の硫化水素吸着成分と抗硫酸還元菌成分の希釈にはならない。
【0043】
次に、
図6及び
図7を参照しながら、本実施の形態に係る廃棄物埋め立て方法について説明する。
図6は本実施の形態に係る廃棄物埋め立て方法の工程を示すフローチャートである。
図6において、前提として、汚泥が、硫化水素吸着成分を含有し、抗硫酸還元菌成分が8重量%以上であることを確認する。硫化水素吸着成分とは、酸化鉄、水酸化鉄及びオキシ水酸化鉄から成る群のうち少なくとも1種類から成る成分であり、抗硫酸還元菌成分とは、Ni,Cu及びMnそれぞれの酸化物、水酸化物、又は塩化物から成る群のうち少なくとも1種類から成る成分をいう。
ステップS1として、この汚泥を排出する事業所から廃棄物埋立処分場へ汚泥を搬出する。事業所とは、ベンガラや磁性体、あるいはリチウム電池等を生産する工場、あるいは鉄酸化物、磁性体あるいは遷移金属を含む廃棄物を処理する処分場等をいい、1ヶ所とは限らない。複数個所の事業所から排出される汚泥を混合することで硫化水素吸着成分が、表1に示される汚泥サンプルの酸化鉄(ヘマタイト,Fe
2O
3)含有量である50重量%以上となってもよく、抗硫酸還元菌成分が8重量%以上となってもよい。
ステップS2では、廃棄物埋立処分場で汚泥に取扱性向上剤を添加する。この工程によって、汚泥のハンドリング特性が向上し、その後のステップS3の汚泥の造粒工程へ進むことが可能である。汚泥のハンドリング特性が良好の場合にはステップS2をスキップしてもよい。
ステップS4では造粒後の汚泥を廃棄物や覆土材とそれぞれ混合する。混合割合としては、廃棄物及び覆土といった被混合物に対して、1重量%以上を混合させる。いずれか一方でもよいが、前述のとおり、地下水の淀み等水には効果がないことから、廃棄物及び覆土材の両方に汚泥を混合して地下水の淀み水への硫酸還元菌の拡散を防止すべく廃棄物及び即日覆土用の覆土材にも汚泥を混合させて、汚泥を混合させた廃棄物を、汚泥を混合させた覆土材で被覆することが望ましい。
【0044】
具体的な埋め立ての方法については
図7も参照しながら説明する。
図7は本実施の形態に係る廃棄物埋め立て方法を実施した廃棄物埋立処分場の縦断面概念図である。
図7において、廃棄物埋立処分場10は地面11に掘削された穴に廃棄物を覆土材で覆うように埋め立てることで廃棄物を最終処分している。
ステップS4で日々持ち込まれる廃棄物に汚泥を混合した廃棄物は汚泥混合済廃棄物12として、
図7に示されるように廃棄物埋立処分場10内に配列されて廃棄される。この工程が
図6のステップS5である。
その日に持ち込まれた廃棄物に対しては、その日のうちに覆土材で覆うが、これを即日覆土13といい、このように廃棄物を細胞のように包み込んで覆土する方法はセル方式と呼ばれている。これが
図6のステップS6である。この即日覆土13にも汚泥が混合されている。
数日後に、汚泥混合済廃棄物12が即日覆土13で覆われると、その即日覆土13を覆うように水平に蓋をするように中間覆土14を行う。これはサンドイッチ方式と呼ばれる方法で、
図6のステップS7として示される。この中間覆土14にも汚泥が混合されている。
さらに、地面11に掘削された穴が汚泥混合済廃棄物12と汚泥を混合した即日覆土13や中間覆土14で覆われると、最後に最終覆土15で覆う。最終覆土15にも汚泥を混合させる。これが
図6のステップS8である。
ステップS6からステップS7の間には、適宜、ステップS1からステップS6が繰り返され、ステップS7からステップS8の間には、適宜、ステップS1からステップS7が繰り返される。
また、ステップS4では造粒済汚泥を廃棄物と覆土材にそれぞれ混合としたが、造粒済汚泥と廃棄物及び覆土材との混合は、効果に応じて廃棄物のみあるいは覆土材のみでもよいし、両方でもよい。さらに、混合は、必ずしも同時に同じ場所で行う必要はなく、適宜時間をずらしたり廃棄物埋立処分場10以外の別の場所で行ってもよい。
なお、本実施の形態においては、即日覆土13、中間覆土14及び最終覆土15に対してそれぞれ汚泥を混合したが、廃棄物の状態や廃棄物埋立処分場10の状態によって、いずれかの覆土に対しては、あるいはすべての覆土に対して汚泥を混合しない場合があってもよい。
このような廃棄物埋め立て方法によれば、これまで費用をかけていた事業所からの鉄成分や遷移金属成分を含んだ汚泥を廃棄物埋立処分場において有効に活用することが可能であり、廃棄物埋立処分場においても有害なH
2Sガスの発生を抑制することが可能であるため、地元住民の安全や環境保全に寄与することが可能である。
なお、本実施の形態おいては、事業所から排出される汚泥を用いて廃棄物内での硫酸還元菌によるH
2S発生を抑制させる廃棄物埋め立て方法を説明したが、この汚泥と同等の成分からなる硫化水素抑制剤を汚泥に代えて用いてもよい。その場合は、硫化水素抑制剤を製造するコストがかかるため現実的ではないと考えられるものの、
図6において、ステップS1―S3の工程は省略することが可能である。また、汚泥が水分を50%程度含んでいるとすれば、汚泥として加えた重量の乾燥重量を当量とすると汚泥の半分の重量%の硫化水素抑制剤として混合させることでH
2Sの抑制効果を発揮させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明の請求項1乃至請求項6に記載された発明は、産業廃棄物や一般廃棄物を問わず、廃棄物の埋立処理方法として広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…メディウム瓶 2…カラム管 3…ガス収容袋 4…充填密度1.09g/cm3の線 5…充填密度0.87g/cm3の線 6…石膏ボード50gの線 7…石膏ボード50g+抑制剤4gの線 8…石膏ボード50g+抑制剤10gの線 9…石膏ボード50g+抑制剤30gの線 10…廃棄物埋立処分場 11…地面 12…汚泥混合済廃棄物 13…即日覆土 14…中間覆土 15…最終覆土