(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032244
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】運転分析装置、および、運転分析方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20220217BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G07C5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135838
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 崇
(72)【発明者】
【氏名】浅井 大輔
【テーマコード(参考)】
3E138
5H181
【Fターム(参考)】
3E138AA07
3E138MA06
3E138MB01
3E138MB08
3E138MB12
3E138MB13
3E138MB15
3E138MC12
3E138MD05
5H181AA01
5H181AA07
5H181AA14
5H181AA15
5H181BB12
5H181BB13
5H181CC04
5H181DD03
5H181DD07
5H181EE12
5H181FF05
5H181FF10
5H181FF12
5H181FF22
5H181MB02
(57)【要約】
【課題】 運転中に記録されたデータに関連する確認すべきシーンと付帯情報をデータベースから自動抽出し、複数の指導員が有する安全ノウハウを運転者と容易に共有する。
【解決手段】 運転中に蓄積した車両認識情報が登録された場合、車両認識情報に関連する付帯情報を出力する運転分析装置であって、過去事例の運転操作情報を蓄積した運転操作履歴データベースと、運転操作履歴データベースに蓄積された過去事例のなかから、車両認識情報に類似した類似シーンを検索する類似シーン検索部と、過去事例に関する主観的な情報である付帯情報を蓄積した付帯情報履歴データベースと、付帯情報履歴データベースから類似シーンに対応する付帯情報を抽出する付帯情報付加部と、車両認識情報を表示する運転操作表示部と、運転操作表示部に表示する車両認識情報と同期して付帯情報を表示する付帯情報表示部と、を具備することを特徴とする運転分析装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転中に蓄積した車両認識情報が登録された場合、該車両認識情報に関連する付帯情報を出力する運転分析装置であって、
過去事例の運転操作情報を蓄積した運転操作履歴データベースと、
該運転操作履歴データベースに蓄積された過去事例のなかから、前記車両認識情報に類似した類似シーンを検索する類似シーン検索部と、
前記過去事例に関する主観的な情報である前記付帯情報を蓄積した付帯情報履歴データベースと、
該付帯情報履歴データベースから前記類似シーンに対応する前記付帯情報を抽出する付帯情報付加部と、
前記車両認識情報を表示する運転操作表示部と、
該運転操作表示部に表示する前記車両認識情報と同期して前記付帯情報を表示する付帯情報表示部と、
を具備することを特徴とする運転分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転分析装置において、
前記付帯情報には、指導員が入力した主観的な情報である、場所区分、交通量、見通し、ランドマーク、危険兆候、危険の対象、危険の理由、注意事項、警戒の対象、安全の理由の少なくとも一つが含まれていることを特徴とする運転分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の運転分析装置において、
前記車両認識情報と前記運転操作情報には、車載カメラ映像が含まれており、
前記類似シーン検索部は、前記運転操作履歴データベースに蓄積された過去事例の中から、前記車両認識情報の車載カメラ映像に類似する過去車載カメラ映像を持った過去事例を前記類似シーンとして検索することを特徴とする運転分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の運転分析装置において、
前記車載カメラ映像は、動画または静止画の車外映像および車内映像であることを特徴とする運転分析装置。
【請求項5】
請求項2に記載の運転分析装置において、
前記車両認識情報と前記運転操作情報には、環境情報が含まれており、
前記類似シーン検索部は、前記運転操作履歴データベースに蓄積された過去事例の中から、前記車両認識情報の環境情報に類似する過去環境情報を持った過去事例を前記類似シーンとして検索することを特徴とする運転分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の運転分析装置において、
前記環境情報は、位置情報、時刻情報、道路情報、交通情報、天候情報、イベント情報の少なくとも一つであることを特徴とする運転分析装置。
【請求項7】
請求項2に記載の運転分析装置において、
前記車両認識情報と前記運転操作情報には、車両制御情報が含まれており、
前記類似シーン検索部は、前記運転操作履歴データベースに蓄積された過去事例の中から、前記車両認識情報の車両制御情報に類似する過去車両制御情報を持った過去事例を前記類似シーンとして検索することを特徴とする運転分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の運転分析装置において、
前記車両制御情報は、ペダル操作量、自車速度、自車加速度、ハンドルの操舵角、ブレーキタイミングの少なくとも一つであることを特徴とする運転分析装置。
【請求項9】
請求項2に記載の運転分析装置において、
前記車両認識情報と前記運転操作情報には、車載カメラ映像、環境情報、および、車両制御情報が含まれており、
前記類似シーン検索部は、前記運転操作履歴データベースに蓄積された過去事例の中から、前記車両認識情報の車載カメラ映像、環境情報、車両制御情報の何れかに対し、類似度の最も高い、過去車載カメラ映像、過去環境情報、または、過去車両制御情報を持った過去事例を前記類似シーンとして検索することを特徴とする運転分析装置。
【請求項10】
請求項9に記載の運転分析装置において、
前記運転操作表示部には、
前記環境情報に含まれる地図情報と、
前記車両制御情報に含まれる自車速度と自車加速度の時系列データのグラフと、
前記付帯情報を同期表示した前記車載カメラ映像の前方映像と、
前記付帯情報を同期表示した前記車載カメラ映像の車内映像と、
を表示することを特徴とする運転分析装置。
【請求項11】
運転中に蓄積した車両認識情報が登録された場合、該車両認識情報に関連する付帯情報を出力する運転分析方法であって、
過去事例の運転操作情報を蓄積した運転操作履歴データベースに蓄積された過去事例のなかから、前記車両認識情報に類似した類似シーンを検索するステップと、
前記過去事例に関する主観的な情報である前記付帯情報を蓄積した付帯情報履歴データベースから前記類似シーンに対応する前記付帯情報を抽出するステップと、
前記車両認識情報と前記付帯情報を同期して表示するステップと、
を具備することを特徴とする運転分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレコーダが記録したデータを分析して、運転者への安全運転教育を支援する運転分析装置、および、運転分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるドライブレコーダには、車載カメラの撮影映像のほか、GPS(Global Positioning System)を利用して検出した走行データ(走行位置、走行時刻、速度、加速度等)を記録するものがある。このドライブレコーダには、事故発生時の状況や、事故には至らずとも客観的には危険な状況が記録されるため、ドライブレコーダが記録したデータを事後分析することで、事故原因を正確に把握したり、危険な運転操作(急加速、急ブレーキ、急ハンドル等)を抽出したりすることができる。このため、貨物運送事業者や旅客運送事業者等の様々な業種で、事故原因の分析や安全運転教育のために、ドライブレコーダの導入が進んでいる。
【0003】
ここで、ドライブレコーダの記録データを利用した安全運転教育は、次のように行われる。例えば、運行管理者等の指導員が、トラックやタクシー等のドライブレコーダから回収した記録データに基づいて各運転者の運転操作を評価し、より安全に運転できるよう各運転者を指導するというものである。しかしながら、貨物運送事業者や旅客運送事業者等では、一人の運行管理者(指導員)が多数の運転者を管理する形態が一般的であるため、少数の指導員が多数の車両の記録データを通観評価して危険操作を抽出したり、抽出された全ての危険操作に対して状況に応じた模範的な運転操作を指導したりすることは現実的ではない。また、複数の指導員がいる環境では、各指導員の指導内容にバラツキが生じる可能性もある。そこで、安全運転教育時の指導員の負担を軽減するとともに、各指導員の指導内容のバラツキを抑制すべく、安全運転教育のためのデータ処理の一部を自動化する装置が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1の要約書では、「ドライブレコーダによって記録された撮影画像および加速度情報を読み出す読出手段と、読出手段によって読み出された撮影画像の中からトリガ発生に関連する画像を選択してサムネイル表示するとともに、サムネイル表示された画像に対応する加速度情報を該画像に対応付けて表示する表示制御手段とを有する」運転支援装置が提案されている。そして、この運転支援装置によれば、指導員が複数の運転情報を効率よくチェックできるように、各種データを整理した状態で視覚的にわかりやすく表示することができる。
【0005】
また、特許文献2の要約書では、「車両の運転操作に関係する操作データに基づき、前記運転操作の評価を行う運転操作評価装置であって、地図を表示する地図表示手段と、前記車両を運転する運転者の前記操作データに関する時系列グラフを表示する運転者操作表示手段と、当該運転操作評価装置で定める模範的な前記操作データに関する時系列グラフを表示する模範操作表示手段と、を有し、前記地図表示手段により表示される所定の場所に関する地図と、前記運転者操作表示手段により表示される前記場所に対応する前記時系列グラフと、前記模範操作表示手段により表示される前記場所に対応する前記時系列グラフとを、一の画面に並列して表示することを特徴とする」運転操作評価装置が提案されている。そして、この運転操作評価装置によれば、地図と模範的運転操作と運転者の運転操作とを並列して提示することにより、各地点での運転の振り返りを可能とし、運転者に対する教示効果を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-28748号公報
【特許文献2】特開2009-294250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の運転支援装置や、特許文献2運転操作評価装置によれば、上記した作用によって、運転教育時の指導員の負担がある程度軽減される。
【0008】
しかしながら、特許文献1では、撮像された条件がマークで表示されるため、複数の運転情報を逐一選択して表示させる手間がないものの、マークが多数ある場合は視認性が低下する問題がある。また、特許文献1の運転支援装置は、加速度等の物理量の条件によって撮像トリガがかかるものでしかないため、運転支援装置を操作する指導員が有する安全ノウハウを教育中の運転者に伝授することはできても、他の指導員の有する安全ノウハウを教育中の運転者に伝達することはできなかった。
【0009】
また、特許文献2では、運転操作評価装置で定める模範的な操作データに関する時系列グラフを表示する模範操作表示手段が前提となっているが、実際の道路状況に応じた模範操作を予め網羅的に作成することが必要であり、これには相当の作業時間を要する。
【0010】
そこで、本発明の目的は、指導員の負担を軽減しつつ各運転者に適切な指導ができるようにするために、運転中に記録されたデータに関連する確認すべきシーンと付帯情報をデータベースから自動抽出し、複数の指導員が有する安全ノウハウを運転者と容易に共有することができる運転分析装置、および、運転分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の運転分析装置は、運転中に蓄積した車両認識情報が登録された場合、該車両認識情報に関連する付帯情報を出力する運転分析装置であって、過去事例の運転操作情報を蓄積した運転操作履歴データベースと、該運転操作履歴データベースに蓄積された過去事例のなかから、前記車両認識情報に類似した類似シーンを検索する類似シーン検索部と、前記過去事例に関する主観的な情報である前記付帯情報を蓄積した付帯情報履歴データベースと、該付帯情報履歴データベースから前記類似シーンに対応する前記付帯情報を抽出する付帯情報付加部と、前記車両認識情報を表示する運転操作表示部と、該運転操作表示部に表示する前記車両認識情報と同期して前記付帯情報を表示する付帯情報表示部と、を具備する運転分析装置とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運転中に記録されたデータに関連する確認すべきシーンと付帯情報をデータベースから自動抽出し、複数の指導員が有する安全ノウハウを運転者と容易に共有することができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施例の運転分析装置の概要を示すブロック図
【
図4】付帯情報履歴データベースのデータ構成の一例
【
図6】一実施例の運転分析装置の処理のフローチャートの一例
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の運転分析装置、および、運転分析方法の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【0016】
<運転教育システム100>
まず、
図7を用いて、本発明の一実施例に係る運転分析装置10を利用した、運転教育システム100の概要を説明する。この図において、符号1は車両、符号2は指導員、符号3は車両1の運転者である。
【0017】
車両1は、運転者3が運転するトラックやタクシー等の営業用車両であり、本発明に関連する構成として、車載カメラ1a、環境情報データベース1b、車両制御装置1cを備えている。車載カメラ1aには、車両1の運転中に撮影した、車外映像および車内映像からなる車載カメラ映像D21が蓄積される。車載カメラ映像D21は、動画でも静止画でも良いし、また無音でも音声を含むものでも良い。環境情報データベース1bには、車両1の運転中にGPS、VICS(登録商標、Vehicle Information and Communication System)、地図データ等から取得した、位置情報、時刻情報、道路情報(道路区分、法定速度、道幅など)、交通情報(渋滞情報、工事情報、道路規制など)、天候情報(天気、路面状況など)、イベント情報等からなる環境情報D22が蓄積される。なお、運転者3が所有するスマートフォン等の携帯端末を環境情報データベース1bとして利用しても良い。車両制御装置1cには、車両1の運転中に検出した、運転者3によるアクセルやブレーキのペダル操作量、自車速度、自車加速度、ハンドルの操舵角、ブレーキタイミング等からなる車両制御情報D23が蓄積される。なお、車両制御装置1cに代え、デジタルタコメータなど外部計測器を利用して、車両制御情報D23を記録しても良い。以下では、同時間帯に蓄積した、車載カメラ映像D21、環境情報D22、車両制御情報D23の組み合わせを、車両認識情報D2と称する。
【0018】
ここで、本実施例の運転教育システム100が機能する前提として、指導員2は予め、運転分析装置10に登録済みの車両認識情報D2の一部に、後述する付帯情報D1(各指導員の知見・安全ノウハウ等の主観的な情報)を登録しているものとする。なお、複数の指導員2がいる場合は、各指導員が運転分析装置10に付帯情報D1を登録するため、運転分析装置10からは複数の指導員2の主観的な情報を得ることができる。
【0019】
営業運転を終えて営業所等に戻った運転者3は、車両1の車両認識情報D2を、営業所等に設置された運転分析装置10に登録する。なお、運転中に記録された車両認識情報D2の全てを運転分析装置10に登録する必要は無く、指導員2による指導が必要と思われる部分のみを抜き出して登録しても良い。また、車両認識情報D2の登録には、メモリカード等の記憶媒体を介在させても良いし、無線通信を利用しても良い。
【0020】
新たな車両認識情報D2が運転分析装置10に登録されると、指導員2はその車両認識情報D2に関する付帯情報D1を運転分析装置10に登録する。次に、運転分析装置10は、新規登録された車両認識情報D2に類似するシーンをデータベースから自動抽出し、そのシーンに関連する付帯情報D1(各指導員の主観的情報)を、分析結果D6の形式で出力する。これにより、指導員2は、自己の知見や安全ノウハウを伝達するだけでなく、他の指導員の知見や安全ノウハウが反映された分析結果D6を運転者3に見せながら、運転者3を指導することができる。なお、運転分析装置10が提示する類似シーンや付帯情報D1が適切でない場合もある。そのような場合には、指導員2と運転者3が決定したより適切な付帯情報D1を、新規登録した車両認識情報D2に関連付けてデータベースに蓄積する。
【0021】
これにより、指導員2は、複数の指導員の知見や安全ノウハウを提示しながら、運転者3に安全運転を指導することができる。以下、上記システムの構成要素である、本実施例の運転分析装置10を詳細に説明する。
【0022】
<運転分析装置10>
図1は、運転分析装置10の概要を示すブロック図である。上記したように、運転分析装置10は、運転者3等が車両認識情報D
2を新規登録したときに、分析結果D
6を生成する装置であり、また、生成した分析結果D
6が適切でないと判断される場合には、指導員2等が入力した新たな付帯情報D
1を蓄積する装置である。このような機能を実現するため、運転分析装置10は、情報分配部11、運転操作履歴データベース12、類似シーン検索部13、付帯情報履歴データベース14、付帯情報付加部15、付帯情報修正部16、運転操作表示部17、付帯情報表示部18を備えている。
【0023】
なお、運転分析装置10は、具体的には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、ハードディスク等の補助記憶装置、キーボードやマウス等の入力装置、液晶ディスプレイ等の表示装置、および、通信装置などのハードウェアを備えたコンピュータである。そして、主記憶装置にロードされたプログラムを演算装置が実行することで、後述する各機能を実現するが、以下では、このような周知技術を適宜省略しながら、情報分配部11等の各構成を順次説明する。
【0024】
<情報分配部11>
情報分配部11は、
図2に示すように、運転者3等が運転分析装置10に新規登録した車両認識情報D
2(車載カメラ映像D
21、環境情報D
22、車両制御情報D
23)を運転操作履歴データベース12、類似シーン検索部13、運転操作表示部17に分配する。なお、
図2では、車載カメラ映像D
21の入出力を実線で、環境情報D
22の入出力を破線で、車両制御情報D
23の入出力を一点鎖線で表示している。
【0025】
<運転操作履歴データベース12>
運転操作履歴データベース12は、情報分配部11が分配した、車載カメラ映像D21と車両制御情報D23の組み合わせを、運転操作情報として蓄積する。なお、運転操作履歴データベース12には、新規登録した運転操作情報以外に、自車両の過去の運転操作情報や他車両の運転操作情報も蓄積されている。以下では、運転操作履歴データベース12に登録された運転操作情報を纏めて、過去運転操作情報D4と称する。
【0026】
<運転操作表示部17>
運転操作表示部17は、具体的には、運転分析装置10のディスプレイの表示領域の一部であり、情報分配部11が分配した車載カメラ映像D21、環境情報D22、車両制御情報D23を指導対象事例として表示する。
【0027】
車載カメラ映像D21の表示領域には、車内および車外の映像を並べて配置し、時刻同期させて表示する方法が考えられる。また、操作者が一時停止や巻き戻して確認できるように、映像再生のコントローラー機能を備えることが考えられる。例えば、予め5分おきに映像ファイルを分割して用意しておき、映像ファイルのリスト一覧を表示することで、作業者が任意の時間の映像を容易に頭出しできる機能が考えられる。
【0028】
環境情報D22の表示領域には、GPS等の位置情報は地図を使って表示し、地図の拡大・縮小をコントロールする機能を備えることが考えられる。サービスカーの移動経路を地図上に示し、危険なシーンが発生した場所には予め決められたマーカーを表示し、作業者が容易に危険シーンを確認できるようにする。また幼稚園や小学校など、付近を通行する際に注意が必要な建物はランドマークとして色を変えて表示したり、各道路に法定速度を表示する方法が考えられる。また道路交通情報を使って渋滞発生個所や道路工事の個所を地図上にマーカーで表示することによって、運転分析が容易になる。同様に天候に起因する交通規制等のマーカーも地図上に表示する。
【0029】
車両制御情報D23の表示領域には、車速や加速度の経時変化をグラフで表示する方法が考えられる。
【0030】
<類似シーン検索部13>
類似シーン検索部13は、運転操作履歴データベース12に蓄積された過去運転操作情報D
4の中から、情報分配部11から分配された車両認識情報D
2に近い運転操作情報を検索し、類似シーンD
41を出力する。このような機能を実現するため、類似シーン検索部13は、
図3に示すように、類似映像検索部13a、類似情報検索部13b、類似シーン選択部13cを備えている。
【0031】
類似映像検索部13aは、運転操作履歴データベース12に蓄積された過去運転操作情報D4の過去車載カメラ映像に対して、類似映像検索または類似画像検索をおこない、情報分配部11からの車載カメラ映像D21に類似する過去車載カメラ映像を抽出する。類似映像検索は、例えば、機械学習を使って映像にシーンの内容を表すラベル付けを行い、類似シーンを検索する方法が考えられる。類似画像検索は、機械学習を使って類似画像検索をおこなう方法や、画像の特徴量を算出して、特徴量が近い画像を検索する方法が考えられる。過去車載カメラ映像類似シーンとともに、どれだけ映像または画像が似ているかを示す類似度を同時に出力する。
【0032】
類似情報検索部13bは、運転操作履歴データベース12に蓄積された過去運転操作情報D4の過去環境情報と過去車両制御情報に対して類似検索を行い、情報分配部11からの環境情報D22と車両制御情報D23に類似する過去環境情報と過去車両情報を抽出する。類似検索は、例えば、環境情報や車両制御情報のテキストデータに対して機械学習を使って自然言語処理を行う方法や、環境情報や車両制御情報の数値データに対して機械学習を使ってクラスタリングをおこなうことで類似検索する方法、およびテキストデータと数値データを組み合わせる方法が考えられる。前述した類似映像検索および類似画像検索と同様に類似度も出力する。
【0033】
類似シーン選択部13cには、類似映像検索部13aで抽出した過去車載カメラ映像とその類似度、および、類似情報検索部13bで抽出した過去環境情報、過去車両制御情報とそれらの類似度が入力され、より類似度の高い過去の運転操作データを類似シーンD41として選択する。ここで選択した類似シーンD41は、付帯情報付加部15に出力される。
【0034】
<付帯情報履歴データベース14>
付帯情報履歴データベース14には、複数の過去事例の付帯情報D1が蓄積されており、付帯情報付加部15から事例Noが入力された場合に、該当する事例Noの付帯情報D1を出力する。
【0035】
ここで、
図4を用いて、付帯情報D
1の内容を説明する。付帯情報D
1とは、センサ値や交通情報としては取得できない、運転状況に対する主観的な情報であり、例えば、場所区分、交通量、見通し、ランドマーク、危険兆候、危険の対象、危険の理由といった項目からなるテーブルが考えられる。例えば、「場所区分」は幹線道路や高速道路といった道路区分や、繁華街、住宅地といった走行場所の特徴であり、「交通量」は多い、普通、少ないの3区分であり、「見通し」は良い/悪いの2区分であり、「ランドマーク」は信号や交差点、小学校付近など危険が生じやすい場所の目印となる建物であり、「危険兆候」とは早朝、昼食後やドライバーの疲れなど事故が生じやすい状況であり、「危険の対象」とは前方車や歩行者など交通事故の相手となりうる対象であり、「危険の理由」とは指導者が当事例を選択した理由であることが考えられる。
【0036】
これらの主観的な情報は、基本的には、運転操作履歴データベース12に蓄積された過去運転操作情報D4の内容を確認しながら、指導員2が手作業で入力したものであるが、運用開始時の運転分析装置10は未だ過去運転操作情報D4を持たないため、指導員2は付帯情報D1を入力することができない。
【0037】
そのため、運転分析装置10の実運用開始前には、危険予測トレーニング情報D3を利用して、ある程度の規模の付帯情報履歴データベース14を予め構築しておく必要がある。具体的には、自動車メーカーなどが公開している危険予測トレーニング情報D3を運転操作表示部17に表示し、指導員2はその事例に対して付帯情報D1を入力する。これを繰り返し、複数の事例に対して付帯情報D1を入力することで、実運用開始前にある程度の規模の付帯情報履歴データベース14を構築することができ、運転分析装置10の実運用開始後、車両認識情報D2が最初に登録された場合であっても、危険予測トレーニング情報D3に対して入力した付帯情報D1のなかから有用なものを抽出することができる。
【0038】
<付帯情報付加部15>
付帯情報付加部15は、類似シーン検索部13で選択した類似シーンD41に、付帯情報履歴データベース14で抽出した付帯情報D1を紐づける。なお、紐づけるとは、具体的には、関連づけることであり、類似シーンD41と付帯情報D1の間で相互リンクを形成したり、類似シーンD41の運転操作データと付帯情報D1を含む新規のテーブルを作成したりすることが考えられる。
【0039】
<付帯情報表示部18>
付帯情報表示部18は、具体的には、運転分析装置10のディスプレイの表示領域の一部であり、運転操作表示部17の表示と同期して関連する付帯情報D
1を表示する。付帯情報表示部18への付帯情報D
1の表示は、テキストで表示する方法であっても良いし、予め決められたマークで表示する方法であっても良い。また、運転操作表示部17と付帯情報表示部18の表示領域が別領域である必要は無く、例えば、運転操作表示部17の一部(例えば、車載カメラ映像D
21の表示領域)に重ねて、付帯情報D
1を表示しても良い。なお、運転操作表示部17と付帯情報表示部18の両方の表示内容を合わせたものが、
図7の分析結果D
6である。
【0040】
<付帯情報修正部16>
図7で説明したように、本実施例の運転教育システム100では、運転分析装置10が生成した分析結果D
6を見せながら、指導員2が運転者3を教育する。しかし、分析結果D
6に含まれる付帯情報D
1は、別事例に対して作成した付帯情報D
1であるため、その付帯情報D
1が教示する「危険兆候」、「危険の対象」、「危険の理由」等の主観的な情報が、教育対象の事例に適さない場合もある。
【0041】
そこで、本実施例の運転分析装置10では、分析結果D6として表示された付帯情報D1が、教育対象事例に対するものとして不適切と確認された場合に、指導員2や運転者3がその付帯情報D1を修正できるよう、付帯情報修正部16を設けた。
【0042】
なお、付帯情報修正部16を利用して修正した付帯情報D1は、新たな事例の付帯情報D1として付帯情報履歴データベース14に蓄積される。
【0043】
<運転分析結果の表示方法>
図5は、運転操作表示部17と付帯情報表示部18に表示される分析結果D
6の一例である。
【0044】
ここに示すように、運転操作表示部17として、例えば、地図情報と車速や加速度といった時系列データを表示するグラフと、環境情報やドライバー情報と、付帯情報をタグのように配置した車載カメラ前方映像と、付帯情報をタグのように配置した車載カメラ車内映像を配置した構成が考えられる。上記の構成に車載カメラ後方映像を追加する構成も考えられる。地図情報に走行経路が表示され、経路上のある一地点を指定することで、その地点に対応する車速や加速度、環境情報、ドライバー情報、車載カメラ前方映像、および車載カメラ車内映像が同期して表示される。
【0045】
一方で、付帯情報表示部18として、付帯情報D1に含まれる、場所区分やランドマークを指定することで、該当する地図の位置や車速や加速度、環境情報、ドライバー情報、車載カメラ前方映像、および車載カメラ車内映像が同期して表示される機能も考えられる。
【0046】
<運転教育システム100の処理のフローチャート>
図6は、運転教育システム100の処理の一例を示すフローチャートである。基本的には既に説明したことの繰り返しとなるので、重複説明は一部省略する。
【0047】
まず、運転者3が車両1を運転している期間は、ステップS1a~S1cが並列して実行される。ステップS1aでは、車載カメラ1aが車載カメラ映像D21を蓄積する。ステップS1bでは、環境情報データベース1bに環境情報D22を蓄積する。ステップS1cでは、車両制御装置1cに車両制御情報D23を蓄積する。
【0048】
車両1の運転を終えると、ステップS2では、運転者3は、教育が必要と思われる事例に相当する車両認識情報D2を運転分析装置10に登録する。
【0049】
ステップS3では、運転分析装置10の類似シーン検索部13は、登録された車両認識情報D2に類似する類似シーンD41を検索する。なお、運転分析装置10には、事故シーン等の問題ある状況下での車両認識情報D2が登録されることを想定しているため、このステップでは、類似の事故シーンなどが抽出されることを想定している。
【0050】
ステップS4では、運転分析装置10の付帯情報付加部15は、類似シーンD41に関連する付帯情報D1(各指導員の知見・安全ノウハウ等の主観的な情報)を出力する。
【0051】
ステップS5では、ステップS2で登録された車両認識情報D2を運転操作表示部17に表示するとともに、ステップS4で出力された付帯情報D1を付帯情報表示部18に表示する。
【0052】
ステップS6では、指導員2と運転者3が表示された付帯情報D1が適切であるかを判定する。そして、適切な付帯情報D1が表示されている場合は、指導員2はその付帯情報D1を参照して運転者3を指導し、教育を終了する。
【0053】
一方、表示された付帯情報D1が不適切だった場合は、ステップS7で、指導員2と運転者3は、その事例に対する適切な付帯情報D1を、運転分析装置10の付帯情報履歴データベース14に登録してから、教育を終了する。
【0054】
<変形例>
前述の実施例では安全運転教育にかかわる危険な運転を検出し、危険な理由など主観による付帯情報を付加して指導者と運転者の認識を共有できるシステムについて述べた。一方で、安全な運転を検出し、安全な理由など主観による付帯情報を付加して指導者と運転者の認識を共有できるシステムも考えられる。
【0055】
例えば、付帯情報D1は、事例や場所区分、交通量、見通し、ランドマーク、注意事項、警戒の対象、安全の理由といった項目が考えられる。また、危険な運転と安全な運転を両方検出し、主観による付帯情報を付加して指導者と運転者の認識を共有することで、指導者の安全ノウハウが伝わり、より効果的な安全運転教育が実施できる。
【0056】
すなわち、運転分析装置10に事故シーンの車両認識情報D2が登録された場合、類似シーン検索部13は、同じく事故を回避できなかった失敗例として類似シーンD41を抽出しても良いし、事故を回避できた成功例として類似シーンD41を抽出しても良い。
【0057】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明しているものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、またある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0058】
また、上記の各構成、機能、処理部などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成や機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、またはICカード、SDカード、DVDなどの記録媒体に置くことができる。
【0059】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんどすべての構成が相互
に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…車両、
1a…車載カメラ、
1b…環境情報データベース、
1c…車両制御装置、
2…指導員、
3…運転者、
10…運転分析装置、
11…情報分配部、
12…運転操作履歴データベース、
13…類似シーン検索部、
13a…類似映像検索部、
13b…類似情報検索部、
13c…類似シーン選択部、
14…付帯情報履歴データベース、
15…付帯情報付加部、
16…付帯情報修正部、
17…運転操作表示部、
18…付帯情報表示部、
100…運転教育システム、
D1…付帯情報、
D2…車両認識情報、
D21…車載カメラ映像、
D22…環境情報、
D23…車両制御情報、
D3…危険予測トレーニング情報、
D4…過去運転操作情報、
D41…類似シーン、
D5…付帯情報履歴、
D6…分析結果