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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032306
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】水処理設備及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/00 20060101AFI20220217BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
C02F3/00 G
C02F3/34 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135942
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境サ-ビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】城野 晃志
(72)【発明者】
【氏名】安部 剛
(72)【発明者】
【氏名】宇佐見 良介
【テーマコード(参考)】
4D040
【Fターム(参考)】
4D040BB12
4D040BB52
(57)【要約】
【課題】優占化された特定微生物群を効果的に生物処理に活用できる水処理設備を提供する。
【解決手段】有機性排水を前脱水する脱水設備2と、前脱水設備で固液分離した液分を処理対象となる有機性排水として貯留する貯留槽3と、貯留槽3から送液された有機性排水を生物処理する生物処理槽4と、生物処理槽4から送液された有機性排水を固液分離する固液分離槽5と、を備えている水処理設備10であって、固液分離槽5から引き抜いた汚泥から送液され、当該汚泥に含まれる特定微生物群を優占化する生物処理助剤が充填または投入されるリアクター8と、リアクター8で優占化された特定微生物の芽胞が含まれた汚泥を、脱水設備2より下流側で生物処理槽4より上流側に投入する汚泥供給路R2を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排水を前脱水する脱水設備と、前記脱水設備で固液分離した液分を処理対象となる有機性排水として貯留する貯留槽と、前記貯留槽から送液された有機性排水を生物処理する生物処理槽と、前記生物処理槽から送液された有機性排水を固液分離する固液分離槽と、を備えている水処理設備であって、
前記固液分離槽から引き抜いた汚泥が送液され、当該汚泥に含まれる特定微生物群を優占化する生物処理助剤が充填または投入されるリアクターと、
前記リアクターで優占化された特定微生物の芽胞が含まれた汚泥を、前記脱水設備より下流側で前記生物処理槽より上流側に投入する汚泥供給路を備えている水処理設備。
【請求項2】
前記生物処理槽は上流側から順に脱窒槽と硝化槽と固液分離槽を備え、前記リアクターは前記固液分離槽から引き抜いた汚泥を前記固液分離槽に戻す循環路に配置されている請求項1記載の水処理設備。
【請求項3】
前記生物処理槽は上流側から順に脱窒槽と硝化槽と固液分離槽を備え、前記リアクターは前記固液分離槽から引き抜いた汚泥を前記脱窒槽に戻す循環路に配置されている請求項1記載の水処理設備。
【請求項4】
前記貯留槽と前記生物処理槽との間に前記固液分離槽から引き抜いた汚泥を導入して調質する汚泥調質槽をさらに備え、前記リアクターは前記汚泥調質槽に導入した汚泥を循環させる汚泥循環路に配置されている請求項1記載の水処理設備。
【請求項5】
前記生物処理助剤が投入されるリアクターは、前記貯留槽と、前記生物処理槽の何れかに配置されている請求項1から4の何れかに記載の水処理設備。
【請求項6】
有機性排水を前脱水する脱水設備と、前記脱水設備で固液分離した液分を処理対象となる有機性排水として貯留する貯留槽と、前記貯留槽から送液された有機性排水を生物処理する生物処理槽と、前記生物処理槽から送液された有機性排水を固液分離する固液分離槽と、を備えている水処理設備における水処理方法であって、
前記固液分離槽から引き抜いた汚泥が送液され、当該汚泥に含まれる特定微生物群を生物処理助剤が充填または投入されたリアクターにより優占化するステップと、
前記リアクターで優占化された特定微生物の芽胞が含まれた汚泥を、前記脱水設備より下流側で前記生物処理槽より上流側に投入する水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水を生物処理する水処理設備及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機性排水を生物処理する水処理設備に搬入された汚水は、し渣の除去等の前処理が行なわれた後に、貯留槽に貯留され、貯留槽から生物処理槽に定量的に送水される。そして、生物処理された被処理水は固液分離され、活性炭ろ過等の高度処理が行なわれた後に河川等に放流される。一方、固液分離された汚泥はフィルタプレス脱水機などを用いて脱水された後に焼却などの処理が行なわれる。
【0003】
このような有機性排水に対する従来の水処理設備では、生物処理で生じた余剰汚泥の処理コストが水処理に掛かるコストの中で大きな割合を占めていることから、コスト低減のために余剰汚泥の減容化が求められている。
【0004】
そこで、本願発明者らは、活性汚泥法を採用する水処理装置の処理槽に生物処理助剤を供給して特定の微生物叢を汚泥中で優占化させ、特定の微生物叢を用いた生物処理によって悪臭の発生を軽減させるとともに余剰汚泥の発生量を低減させるべく鋭意研究開発を進めてきた。
【0005】
特許文献1には、少なくとも生し尿と浄化槽汚泥を含むし尿廃水を導入して脱リン剤を含む添加剤を添加混合する添加部と、該添加部で添加剤が添加混合されたし尿廃水を導入して酸化処理する前反応手段と、該前反応手段で処理された廃水を上澄み液と汚泥に重力式固液分離を行う汚泥沈降槽と、該汚泥沈降槽で分離された汚泥を脱水する脱水手段と、前記汚泥沈降槽で分離された上澄み液を導入して硝化脱窒処理する反応手段と、該反応手段から送られる懸濁液を汚泥と処理液に固液分離する固液分離手段とを有し、且つ前記反応手段内で発生する余剰汚泥を前記添加部あるいはその前工程に返送する返送手段を備えたし尿処理装置が提案されている。
【0006】
そして、添加剤として腐植物を主体とする土壌成形体が用いられることにより、生し尿や浄化槽汚泥等の凝集や有用細菌の優占化が図られ、生し尿中の有機物、特に高分子有機物の分解を向上させ、悪臭を発生させず、固液分離性を向上させることができる。
【0007】
特許文献2には、有機性廃水である浄化槽汚泥を受け入れる浄化槽汚泥受入槽と、前記浄化槽汚泥受入槽に受け入れられた有機性廃水を脱水処理する脱水設備と、前記脱水設備で固液分離された有機性廃水を微生物によって生物処理する生物処理設備とを備えている廃水処理設備であって、前記微生物のうち特定微生物群を優占化する生物処理助剤が充填されたリアクターを前記生物処理設備に備えるとともに、前記リアクターによって特定微生物群が優占化された汚泥を前記脱水設備で脱水処理される前の有機性廃水に供給する廃水処理設備が提案されている。
【0008】
当該廃水処理設備では、リアクターによって生物処理助剤に接触した汚泥が生物処理槽に返送されることにより、生物処理槽で通性嫌気性の土壌微生物群である特定微生物群が優占化され、当該特定微生物群によって硝化・脱窒等の生物処理が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11-33591号公報
【特許文献2】特開2015-188817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されたし尿処理装置は、腐植物を主体とする土壌成形体によって優占化が図られた有用細菌が供給された生し尿が汚泥沈降槽によって固液分離される過程で有用細菌の殆どが汚泥側に移行するため、固液分離された液分が生物処理される反応槽で有用細菌を効果的に利用するような構成ではなかった。
【0011】
特許文献2に記載された廃水処理設備でも、リアクターによって特定微生物群が優占化された汚泥が脱水設備で脱水処理される前の有機性廃水に供給されるので、特定微生物群が脱水設備で汚泥側に分離される点で、特許文献1と変わるものではなかった。
【0012】
また、近年、廃水処理設備に搬入されるし尿は低負荷化の傾向が高まり、リアクターによって強固な芽胞が形成された特定微生物群が低負荷の生物処理槽に返送されても良好に発芽せず、生物処理に寄与できないという課題が生じている。
【0013】
本発明の目的は、優占化された特定微生物群を効果的に生物処理に活用できる水処理設備及び水処理方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明による水処理設備の第一特徴構成は、有機性排水を前脱水する脱水設備と、前記脱水設備で固液分離した液分を処理対象となる有機性排水として貯留する貯留槽と、前記貯留槽から送液された有機性排水を生物処理する生物処理槽と、前記生物処理槽から送液された有機性排水を固液分離する固液分離槽と、を備えている水処理設備であって、前記固液分離槽から引き抜いた汚泥が送液され、当該汚泥に含まれる特定微生物群を優占化する生物処理助剤が充填または投入されるリアクターと、前記リアクターで優占化された特定微生物の芽胞が含まれた汚泥を、前記脱水設備より下流側で前記生物処理槽より上流側に投入する汚泥供給路を備えている点にある。
【0015】
脱水設備で有機性排水が前脱水された液分が生物処理槽で生物処理され、固液分離槽で固液分離される。固液分離槽から引き抜いた汚泥がリアクターに供給されて優占化され、リアクターで芽胞が形成された特定微生物群を含む汚泥が、汚泥供給路を介して脱水設備より下流側で生物処理槽より上流側、つまり生物処理前の栄養リッチな液分に供給されることで、効果的に発芽が促され、良好に生物処理が促進される。
【0016】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記生物処理槽は上流側から順に脱窒槽と硝化槽と固液分離槽を備え、前記リアクターは前記固液分離槽から引き抜いた汚泥を前記固液分離槽に戻す循環路に配置されている点にある。
【0017】
栄養源の乏しい固液分離槽から引き抜いた汚泥を固液分離槽に戻す循環路にリアクターを配置することで、効果的に特定微生物群が優占化され、優占化された特定微生物群が汚泥供給路を介して脱水設備より下流側で生物処理槽より上流側、つまり生物処理前の栄養源が十分な液分に供給されることで、効果的に発芽が促され、良好に生物処理が促進される。
【0018】
同第三の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記生物処理槽は上流側から順に脱窒槽と硝化槽と固液分離槽を備え、前記リアクターは前記固液分離槽から引き抜いた汚泥を前記脱窒槽に戻す循環路に配置されている点にある。
【0019】
固液分離槽から引き抜いた汚泥を脱窒槽に戻す循環路にリアクターを設置することにより、リアクターで優占化され芽胞が形成された特定微生物群が脱窒槽から固液分離槽に送られた後に、汚泥供給路を介して脱水設備より下流側で生物処理槽より上流側、つまり生物処理前の栄養源が十分な液分に供給されることで、効果的に発芽が促され、良好に生物処理が促進される。
【0020】
同第四の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記貯留槽と前記生物処理槽との間に前記固液分離槽から引き抜いた汚泥を導入して調質する汚泥調質槽をさらに備え、前記リアクターは前記汚泥調質槽に導入した汚泥を循環させる汚泥循環路に配置されている点にある。
【0021】
固液分離槽から引き抜いた汚泥が汚泥調質槽に導入され、導入された汚泥を循環させる汚泥循環路にリアクターを配置することにより、特定微生物群の優占化が促進され、優占化された汚泥が汚泥供給路を介して脱水設備より下流側で生物処理槽より上流側、つまり生物処理前の栄養源が十分な液分に供給されることで、効果的に発芽が促され、良好に生物処理が促進される。
【0022】
同第五の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記生物処理助剤が投入されるリアクターは、前記貯留槽と、前記生物処理槽の何れかに配置されている点にある。
【0023】
生物処理助剤が充填されたリアクターではなく、生物処理助剤を投入することによりリアクターとして機能させる場合には、受入槽と、貯留槽と、生物処理槽の何れに生物処理助剤を投入してもよい。
【0024】
本発明による水処理方法の第一の特徴構成は、有機性排水を前脱水する脱水設備と、前記脱水設備で固液分離した液分を処理対象となる有機性排水として貯留する貯留槽と、前記貯留槽から送液された有機性排水を生物処理する生物処理槽と、前記生物処理槽から送液された有機性排水を固液分離する固液分離槽と、を備えている水処理設備における水処理方法であって、前記固液分離槽から引き抜いた汚泥が送液され、当該汚泥に含まれる特定微生物群を生物処理助剤が充填または投入されたリアクターにより優占化するステップと、前記リアクターで優占化された特定微生物の芽胞が含まれた汚泥を、前記脱水設備より下流側で前記生物処理槽より上流側に投入する点にある。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した通り、本発明によれば、優占化された特定微生物群を効果的に生物処理に活用できる水処理設備及び水処理方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による水処理設備の第一の実施形態の説明図
図2】本発明による水処理設備の第二の実施形態の説明図
図3】本発明による水処理設備の第三の実施形態の説明図
図4】本発明による水処理設備の第四の実施形態の説明図
図5】本発明による水処理設備の第五の実施形態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明による水処理設備及び水処理方法の実施形態を説明する。
[第1の態様]
図1に示すように、水処理設備10は、し尿や浄化槽汚泥を含む有機性排水を受け入れる受入槽1と、受入槽1に受け入れた有機性排水を前脱水する脱水設備である脱水機2と、脱水機2で脱水されて固形分が分離された有機性排水を貯留する貯留槽3と、貯留槽3から送液された有機性排水を生物処理する生物処理槽4と、生物処理槽4から送液された有機性排水を固液分離する固液分離槽5などを備えている。
【0028】
生物処理槽4は微生物の集合体である活性汚泥を用いて有機性排水を生物処理する槽で、好気状態で有機性排水に含まれるBODを分解するとともにアンモニア性窒素を硝酸性窒素に硝化する硝化槽4Bと、硝化槽4Bで硝化された硝酸性窒素を嫌気状態で窒素ガスに還元して有機性排水から窒素を除去する脱窒槽4Aを備えている。なお、本実施形態では有機性排水としてし尿や浄化槽汚泥が対象となるが、し尿や浄化槽汚泥以外に下水汚泥、生活排水、食品工場などで生じる工場排水、家畜の糞尿などの各種の有機性排水も対象となる。硝化槽4Bと固液分離槽5を同一の処理槽に一体に校正することも可能であり、固液分離槽5は生物処理槽4の一つの構成要素として位置付けることも可能である。
【0029】
活性汚泥中の微生物は、有機性排水に含まれるBODを二酸化炭素、水、アンモニア性窒素などの無機物に分解し、アデノシン三リン酸(ATP)を産生する異化反応を生起し、産生したアデノシン三リン酸(ATP)と有機物からアミノ酸などを生合成する同化反応を生起する。生合成物は微生物の細胞成分や分泌物となる。一部の生合成物は、自己酸化反応によって二酸化炭素や水になって消失する。
【0030】
固液分離槽5は生物処理槽4で有機性排水が生物処理された後の処理水と汚泥とを固液分離する槽であり、本実施形態では槽内に膜分離装置Mが浸漬配置されて構成され、膜分離装置Mの分離膜を介して汚泥と分離された分離液が処理水として取り出される。
【0031】
膜分離装置Mを硝化槽4Bに浸漬配置して固液分離槽5と硝化槽4Bを兼用するように構成してもよい。また、膜分離装置Mを備えた固液分離槽5に代えて汚泥を沈降させて上澄み液となる被処理水を取り出す沈殿槽を固液分離槽5として用いることも可能である。
【0032】
硝化槽4B及び固液分離槽5には散気装置Aが設置されており槽内が好気状態に維持されている。固液分離槽5で固液分離された処理水は活性炭吸着設備などを用いて高度処理し、高度処理した処理水は消毒設備で消毒した後に河川など外部に放流する。
【0033】
生物処理の過程で増殖し固液分離槽5からポンプを介して引き出された余剰汚泥の一部は汚泥引抜路R0を介して受入槽1に引き抜かれて、脱水機2で前脱水される。
【0034】
また、固液分離槽5からポンプを介して引き出された余剰汚泥の一部は第1循環路R1を介して脱窒槽4Aに返送汚泥として戻されて、硝化処理された汚泥に含まれる硝酸性窒素を窒素ガスに還元する脱窒素処理が行なわれる。
【0035】
さらに、余剰汚泥の一部を脱水機2より下流側で生物処理槽4より上流側、つまり貯留槽3または貯留槽3から生物処理槽4までの経路に投入する汚泥供給路としての第2循環路R2を備えている。
【0036】
第2循環路R2にはリアクター8が設けられている。リアクター8は、活性汚泥を構成する微生物のうち特定微生物群を優占化する生物処理助剤が充填された装置で、ケーシングの内部に生物処理助剤が保持された容器が設置されている。容器は内部に汚泥が通流するように少なくとも上下がパンチングメタルを含むメッシュ状の支持板で挟まれている。
【0037】
生物処理助剤として、ペレット状に成形した腐植成分やミネラル塊、詳しくは腐植、腐植抽出物、フミン酸、フルボ酸、珪砂、珪石等のうちの一種または複数種が用いられる。
【0038】
固液分離槽5の汚泥に含まれる微生物は、栄養源となるBOD濃度が低いために、自分の細胞質を補充することなく代謝する内生呼吸(自己酸化)により減容化される傾向にある。しかし、通性嫌気性菌である土壌微生物群、例えばバチルス属細菌のような土壌微生物群は不等分裂して休眠細胞である芽胞を形成して生存する。特に上述した生物処理助剤の下では強固な芽胞が形成される。そのため、このような成分からなる生物処理助剤に汚泥が接触すると通性嫌気性菌である土壌微生物群が優占化されるようになる。この様なリアクター8が導入された設備をASB(Activation of Soil Bacteria)導入設備という。
【0039】
芽胞が形成された土壌微生物を含む土壌微生物群は栄養源となるBOD濃度が十分な環境になると、発芽して等分裂を繰り返して栄養増殖するが、十分な栄養源がないと発芽が良好に行われず、効率的な生物処理が実現できなくなる。
【0040】
そこで、リアクター8で優占化され芽胞が形成された土壌微生物を含む汚泥を、第2循環路R2を介して貯留槽3または貯留槽3から生物処理槽4までの経路に投入することで栄養豊富な有機性排水に投入することで、良好な発芽を促すように構成されている。脱水機2で固液分離される前の有機性排水にリアクター8で優占化され芽胞が形成された汚泥を投入すると、脱水ケーキ側に大半の芽胞が移行するが、脱水機2で固液分離された後の有機性排水にリアクター8で優占化され芽胞が形成された汚泥を投入するため、生物処理に有効に活用されるようになる。
【0041】
[第2の態様]
図2に示すように、生物処理槽4を上流側から順に脱窒槽4Aと硝化槽4Bと固液分離槽5を備えて構成し、リアクター8を固液分離槽5から引き抜いた汚泥を固液分離槽5に戻す第3循環路R3に配置することも可能である。
【0042】
第3循環路R3に備えたリアクター8で優占化した特定微生物群の芽胞を含む汚泥を、固液分離槽5から第2循環路R2を経由して、特定微生物群を含む汚泥が脱水機2より下流側で生物処理槽4より上流側に投入されるようになる。
【0043】
[第3の態様]
図3に示すように、生物処理槽4を上流側から順に脱窒槽4Aと硝化槽4Bと固液分離槽5を備えて構成し、リアクター8を固液分離槽5から引き抜いた汚泥を脱窒槽4Aに戻す第1循環路R1に配置してもよい。この場合、リアクター8で優占化した特定微生物群の芽胞を含む汚泥が、先ず脱窒槽4Aに投入される。
【0044】
脱窒槽4Aの窒素MLSS負荷が低ければ生物処理槽4で十分に発芽することなく、固液分離槽5から第2循環路R2を経由して、特定微生物群を含む汚泥が脱水機2より下流側で生物処理槽4より上流側に投入されるようになる。
【0045】
[第4の態様]
図4に示すように、貯留槽3と生物処理槽4との間に固液分離槽5から引き抜いた汚泥を導入して調質する汚泥調質槽9をさらに備え、汚泥調質槽9に導入した汚泥を循環させる汚泥循環路R4にリアクター8を配置してもよい。汚泥循環路R4は汚泥調質槽9の外部に形成してもよいし、汚泥調質槽9の内部に形成してもよい。後者の場合には、汚泥調質槽9の内部に発生させた汚泥循環路にリアクター8が配置されるので、リアクター8は汚泥調質槽9の内部に配置されることになる。
【0046】
汚泥調質槽9に導入された汚泥は、ポンプを介してリアクター8との間に形成される循環路R4に沿って循環される。汚泥調質槽9からポンプアップされた汚泥は上方の流入部からリアクター8に流入し、ケーシングの底部に備えた散気装置により散気されつつケーシング内で循環し、その後ケーシング上方の流出部から汚泥調質槽9に返送される。
【0047】
汚泥調質槽9を含めてこの循環路R4を循環する汚泥には生物処理槽4に供給される有機性排水のような高BODを有する環境下には無く、また散気装置Aからの散気によって自己酸化反応が促進される過酷な環境となる。
【0048】
バチルス属細菌などの有芽胞菌は芽胞を形成して耐久性を発揮するが、他の微生物は淘汰されるようになる。その結果、汚泥調質槽9に導かれた汚泥は効果的に特定微生物群に優占化され、汚泥全体として効果的に減容化される。
【0049】
また、そのようにして優占化された特定微生物群が、汚泥調質槽9から脱水機2より下流側で生物処理槽4より上流側に投入される。
【0050】
[第5の態様]
上述した例では生物処理助剤を充填した専用のリアクター8を備えた態様を示したが、図5に示すように、貯留槽3と、生物処理槽4の何れかに生物処理助剤を投入し、生物処理助剤が投入された処理槽をリアクター8として機能するように構成してもよい。
【0051】
また、第4の態様で示した汚泥調質槽9に生物処理助剤を投入し、生物処理助剤が投入された汚泥調質槽9をリアクター8として機能するように構成してもよい。汚泥調質槽9の汚泥は低BOD環境であり、生物処理助剤を投入する処理槽として最も好ましい。
【0052】
以上説明したように、本発明による水処理方法は、有機性排水を前脱水する脱水設備と、脱水設備で固液分離した液分を処理対象となる有機性排水として貯留する貯留槽と、貯留槽から送液された有機性排水を生物処理する生物処理槽と、生物処理槽から送液された有機性排水を固液分離する固液分離槽と、を備えている水処理設備における水処理方法であって、固液分離槽から引き抜いた汚泥が送液され、当該汚泥に含まれる特定微生物群を生物処理助剤が充填または投入されたリアクターにより優占化するステップと、リアクターで優占化された特定微生物の芽胞が含まれた汚泥を、脱水設備より下流側で生物処理槽より上流側に投入するように構成されている。
【0053】
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、大きさや素材の選択など各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1:受入槽
2:脱水設備(脱水機)
3:貯留槽
4:生物処理槽
4A:脱窒槽
4B:硝化槽
5:固液分離槽
6:汚泥貯留槽
7:脱水機
8:リアクター
9:汚泥調質槽
10:水処理設備
R0:汚泥引抜路
R1:第1循環路
R2:第2循環路
R3:第3循環路
R4:第4循環路
図1
図2
図3
図4
図5