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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032311
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】セメント添加剤及びセメント組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/14 20060101AFI20220217BHJP
   C04B 22/02 20060101ALI20220217BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
C04B22/14 Z ZAB
C04B22/02
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135956
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB11
4G112PB02
4G112PB10
(57)【要約】
【課題】セメントコンクリートの良好な流動性の保持効果、自己収縮低減効果、即効性と持続性を併せ持つ六価クロムの還元作用が得られ、加えて、曲げ強度促進の効果を奏するセメント添加剤及びセメント組成物を提供する。
【解決手段】本発明のセメント添加剤は、チオ硫酸塩と、亜硫酸塩と、ホウ素と、を含む、セメント添加剤であって、当該セメント添加剤の固形分中の前記チオ硫酸塩の含有量をX(質量%)、前記亜硫酸塩の含有量をY(質量%)としたとき、X,Yが、10≦X/Y≦100を満たし、かつ、JIS K 0102に準拠して測定される、セメント添加剤中のホウ素の含有量が、0.01mg/L以上1.0mg/L以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオ硫酸塩と、亜硫酸塩と、ホウ素と、を含む、セメント添加剤であって、
当該セメント添加剤の固形分中の前記チオ硫酸塩の含有量をX(質量%)、前記亜硫酸塩の含有量をY(質量%)としたとき、
X,Yが、10≦X/Y≦100を満たし、かつ、
JIS K 0102に準拠して測定される、当該セメント添加剤中のホウ素の含有量が、
0.01mg/L以上5.0mg/L以下である、
セメント添加剤。
【請求項2】
請求項1に記載のセメント添加剤であって、
前記チオ硫酸塩が、チオ硫酸ナトリウム、及びチオ硫酸カルシウムからなる群から選ばれる一または二以上を含む、セメント添加剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセメント添加剤であって、
前記亜硫酸塩が、亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸カルシウムからなる群から選ばれる一または二以上を含む、セメント添加剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のセメント添加剤であって、
当該セメント添加剤中の固形分濃度は、質量換算で、5質量%以上60質量%以下である、セメント添加剤。
【請求項5】
セメントと、請求項1~4のいずれか一項に記載のセメント添加剤と、を含む、セメント組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のセメント組成物であって、
前記セメント添加剤の添加量が、前記セメント100部に対して、0.01部以上8部以下である、セメント組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のセメント組成物であって、
前記セメントがポルトランドセメントを含む、セメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木建築業界において使用されるセメント添加剤及びセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでセメント添加剤について様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1~5には、セメントからの六価クロム溶出を抑制する方法として、亜硫酸カルシウムなどの亜硫酸塩を使用することが記載されている。特許文献6~10には、スランプの経時低下量を改善する方法として亜硫酸塩を使用することが記載されている。特許文献11には、石灰硫黄合剤を製造する際の副産物である亜硫酸カルシウムを使用することによって、特許文献1~10記載のセメントコンクリートと比較して、良好な流動性の保持効果や自己収縮低減効果が得られ、加えて、即効性と持続性を併せ持つ六価クロムの還元作用を発揮するセメント添加剤及びセメント組成物を提供することが記載されている。また特許文献12には、六価クロムの還元剤として亜硫酸ナトリウムやチオ硫酸ナトリウムを使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-302644号公報
【特許文献2】特開2007-246306号公報
【特許文献3】特開2008-174436号公報
【特許文献4】特開2010-201406号公報
【特許文献5】特開2012-24763号公報
【特許文献6】特開平9-295843号公報
【特許文献7】特開平10-265249号公報
【特許文献8】特開平10-291844号公報
【特許文献9】特開平11-79819号公報
【特許文献10】特開平11-79822号公報
【特許文献11】特開2016-121047号公報
【特許文献12】特開2010-222795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが検討した結果、上記特許文献11に記載の還元剤を用いたセメント添加剤において、六価クロム低減、自己収縮低減、流動保持性、及び曲げ強度促進をバランスよく向上させる点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、特定の割合のチオ硫酸塩及び亜硫酸塩と、特定の含有量のホウ素とを含むセメント添加剤を使用することによって、それを用いたセメント組成物において、良好な流動性の保持効果、自己収縮低減効果、即効性と持続性を併せ持つ六価クロムの還元作用が得られ、加えて、曲げ強度促進の効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、
チオ硫酸塩と、亜硫酸塩と、ホウ素と、を含む、セメント添加剤であって、
当該セメント添加剤の固形分中の前記チオ硫酸塩の含有量をX(質量%)、前記亜硫酸塩の含有量をY(質量%)としたとき、
X,Yが、10≦X/Y≦100を満たし、かつ、
JIS K 0102に準拠して測定される、当該セメント添加剤中のホウ素の含有量が、
0.01mg/L以上5.0mg/L以下である、
セメント添加剤が提供される。
【0007】
また本発明によれば、
上記のセメント添加剤と、セメントと、を含む、セメント組成物が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、六価クロム低減、自己収縮低減、流動保持性、及び曲げ強度促進に優れたセメント添加剤、それを用いたセメント組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態のセメント添加剤を概説する。
【0010】
セメント添加剤は、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、及びホウ素を含む。
セメント添加剤の固形分中のチオ硫酸塩の含有量をX(質量%)、亜硫酸塩の含有量をY(質量%)としたとき、セメント添加剤は、X,Yが、10≦X/Y≦100を満たすように構成される。
JIS K 0102に準拠して測定される、セメント添加剤中のホウ素の含有量は、0.01mg/L以上5.0mg/L以下である。
【0011】
このセメント添加剤は、セメント組成物を形成するための混和剤として使用できる。
【0012】
本発明者の知見によれば、セメント添加剤中に、特定の割合のチオ硫酸塩及び亜硫酸塩を特定の含有量のホウ素を含めることで、フレッシュコンクリート及び硬化コンクリートからの六価クロムの溶出量を低減でき、自己収縮を低減でき、流動保持性を高めることができ、その上、セメント組成物の硬化体の曲げ強度を向上できることが見出された。
【0013】
本実施形態によれば、セメント組成物やセメントコンクリートからの六価クロムの溶出が低減され、セメントコンクリートの自己収縮が低減され、セメント組成物やスライムの流動保持性を高められ、これらの硬化体における曲げ強度を向上できるセメント添加剤を実現できる。また、セメント組成物のブリーディング率を低減することも可能である。
【0014】
本実施形態のセメント添加剤及びセメント組成物は、良好な流動性の保持効果、自己収縮低減効果、即効性と持続性を併せ持つ六価クロムの還元作用が得られ、加えて、曲げ強度促進の効果を奏するため、主に、土木・建築業界等において広範な用途に適できる。
【0015】
以下、本実施形態のセメント添加剤を詳述する。
【0016】
セメント添加剤は、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、及びホウ素を含む液状組成物で構成されてもよい。これにより、セメント中への分散性を高められる。
液状のセメント添加剤は、これらの成分と水とを含む水溶液で構成されてもよい。
【0017】
液状のセメント添加剤の固形分濃度は、目的に応じて適宜変更できる。セメント添加剤の固形分濃度の下限は、例えば、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。これにより、セメント添加剤の効果が十分に得られる。一方、セメント添加剤の固形分濃度の上限は、例えば、60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。これにより、セメント添加剤の液安定性を高められる。
【0018】
チオ硫酸塩は、チオ硫酸ナトリウム、及びチオ硫酸カルシウムからなる群から選ばれる一または二以上を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これによって、セメント添加剤中やその硬化体からの六価クロムの溶出を抑制でき、セメントコンクリートの自己収縮が低減される。
【0019】
亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸カルシウムからなる群から選ばれる一または二以上を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これによって、セメント組成物やスライムの流動保持性を向上できる。
【0020】
セメント添加剤中のチオ硫酸塩の含有量をX(質量%)、亜硫酸塩の含有量をY(質量%)とする。
セメント添加剤中、X,Yは、10≦X/Y≦100、好ましくは15≦X/Y≦70、より好ましくは20≦X/Y≦50を満たすように構成されてもよい。X/Yを上記下限値以上かつ上記上限値以下とすることで、六価クロムの溶出量の低減、流動保持性の向上、自己収縮の低減のバランスを図ることができる。
【0021】
セメント添加剤中の亜硫酸塩、チオ硫酸塩の含有量を測定する方法の一つは、以下の通りである。
(1)まず、セメント添加剤からなる試料10mlを、ホールピペットを用いてメスフラスコに入れ、水を添加して全量を500mlとし、これらを施栓混合して、混合物を得る。
(2)続いて、300mlコニカルビーカーに、約100mlの水を入れ、(1)の混合物20mlをホールピペットを用いて加え、サンプルを得る。このサンプルを2つ準備する。
(3)(2)の一方のサンプルに、20%酢酸5mlを加えて混合する。
(4)(2)のもう一方のサンプルに、20%酢酸5ml、37%ホルマリン5mlを加えて混合し、2~3分放置する。
(5)デンプン溶液を指示薬として、N/10ヨウ素溶液で(3)のサンプルを滴定し、その添加量をAmlとし、同様にして、(4)のサンプルを滴定し、その添加量をBmlとする。
(6)下記の式に基づいて、セメント添加剤中の亜硫酸塩、チオ硫酸塩の含有量を算出する。
・Na:w/w%=B×f×3.953÷比重
・NaSO:w/w%=(A-B)×f×1.576÷比重
・f:N/10 ヨウ素溶液ファクター
【0022】
セメント添加剤中のホウ素の含有量の下限は、例えば、0.01mg/L以上、好ましくは0.05mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上である。これにより、硬化体の曲げ強度を高められる。一方、上記のホウ素の含有量の上限は、例えば、5.0mg/L以下、好ましくは3.0mg/L以下、より好ましくは1.0mg/L以下である。これにより、環境負荷を低減できる。
【0023】
ホウ素の含有量は、JIS K 0102に準拠し、ICP発光分光分析法により測定されてもよい。
【0024】
本実施形態では、例えば、セメント添加剤中に含まれる各成分の種類や配合量、セメント添加剤の調製方法等を適切に選択することにより、上記セメント添加剤中の亜硫酸塩の含有量、X/Y、及びホウ素含有量を制御することが可能である。これらの中でも、例えば、亜硫酸イオン源として、亜硫酸塩を添加すること、水を適量添加すること等が、上記セメント添加剤中の亜硫酸塩の含有量、X/Y、及びホウ素含有量を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0025】
本実施形態のセメント組成物は、上記のセメント添加剤とセメントとを含む。
【0026】
セメント組成物中、セメント添加剤の固形分の含有量は、セメント100部に対し、例えば、0.01部~8部、好ましくは0.03部~6部、より好ましくは0.1部~5部である。上記範囲であることで、流動性の保持効果及びセメントコンクリートの自己収縮の低減、高い強度を実現できる。
本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
【0027】
セメントとしては、例えば、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や石膏や高炉徐冷スラグ微粉末等を混合したフィラーセメント、ならびに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)等のポルトランドセメント、ならびに、市販されているセメント系固化材、市販されている微粒子セメント等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本実施形態のセメント組成物では、セメント及びセメント添加剤に加えて、砂などの細骨材や砂利などの粗骨材、更には、膨張材、急硬材、急結剤、高強度混和剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、発泡剤、起泡剤、防水剤、増粘剤、従来の防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、凝結調整剤、ベントナイトなどの粘土鉱物、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体、ポリマー、繊維、高炉水砕スラグ微粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などのスラグ、石灰石微粉末などの混和材料からなる群のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
【0029】
本実施形態のセメント組成物は、そこで使用される上記の成分について、予め一部あるいは全部を混合しておいても差し支えない。各種成分を混合するための混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、プロシェアミキサ及びナウタミキサ等の使用が可能である。
なお、本実施形態のセメント添加剤は、セメントクリンカーの粉砕助剤として用いる場合には、上記した効果がより顕著には発揮される。
【0030】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0031】
「実施例A」
<セメント組成物の調製>
各実施例及び各比較例のセメント添加剤は、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、ホウ素及び純水を、下記に示す配合比率と、固形分濃度に基づいて混合し、得られた混合物を、スターラーで10分間攪拌して、調整した。
得られた各セメント添加剤をセメントとセメント添加剤からなるセメント組成物において、セメント100部に対して0.5部使用し、単位セメント組成物量が500kg/m、水/セメント組成物比が33%、全骨材容積に対する細骨材容積比(s/a)が46%、空気量4.5%、スランプ21cmのコンクリートを調製した。この際、高性能減水剤をセメント組成物100部に対して1.4部添加した。このコンクリートについて、スランプの経時変化、自己収縮、六価クロムの還元効果、曲げ強度の確認を行った。結果を表1に併記する。
【0032】
<使用材料>
上記セメント組成物の調製で使用した原料の情報を示す。
・セメント:普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積3210cm/g、市販品(デンカ社製、普通ポルトランドセメント)を使用。
・実施例A1セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸ナトリウム含有量3質量%、X/Y=32、ホウ素含有量0.1mg/L、固形分濃度33質量%。
・実施例A2セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸カルシウム含有量96質量%、亜硫酸ナトリウム含有量3質量%、X/Y=32、ホウ素含有量0.1mg/L、固形分濃度35質量%。
・実施例A3セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸カルシウム含有量3質量%、X/Y=32、ホウ素含有量0.1mg/L、固形分濃度34質量%。
・実施例A4セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸ナトリウム含有量3質量%、X/Y=32、ホウ素含有量0.2mg/L、固形分濃度36質量%。
・実施例A5セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量95質量%、亜硫酸ナトリウム含有量3.6質量%、X/Y=26.4、ホウ素含有量0.2mg/L、固形分濃度36質量%。
・実施例A6セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量94質量%、亜硫酸ナトリウム含有量5質量%、X/Y=18.8、ホウ素含有量0.2mg/L、固形分濃度36質量%。
・実施例A7セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量94質量%、亜硫酸ナトリウム含有量5質量%、X/Y=18.8、ホウ素含有量5.0mg/L、固形分濃度36質量%。
【0033】
・比較例A1セメント添加剤:添加剤なし
・比較例A2セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸塩含有量0質量%、X/Y=100超え(Yの0の場合、X/Yを100超えと見なした)、ホウ素含有量0.1mg/L、固形分濃度4質量%。
・比較例A3セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸ナトリウム含有量0.6質量%、X/Y=160、ホウ素含有量0.1mg/L、固形分濃度質量70%。
・比較例4セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量50質量%、亜硫酸ナトリウムA含有量40質量%、X/Y=1.25、ホウ素含有量0mg/L、固形分濃度22質量%。
・比較例A5セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸塩含有量0質量%、X/Y=100超え(Yの0の場合、X/Yを100超えと見なした)、ホウ素含有量10.0mg/L、固形分濃度4質量%。
【0034】
なお、セメント添加剤の固形分中の前記チオ硫酸塩の含有量をX(質量%)、前記亜硫酸塩の含有量をY(質量%)とした。セメント添加剤中のホウ素の含有量は、JIS K 0102に準拠してICP発光分光分析法により測定した。
【0035】
・細骨材:新潟県姫川産の川砂、粒径:篩5mm下、粗粒率2.82、比重2.64。
・粗骨材:新潟県姫川産の砕石、最大粒径25mm、粗粒率6.98、比重2.62。
・高性能減水剤:ポリカルボン酸塩系、市販品(BASF、MELFLUX 2651 F)。
【0036】
<試験方法>
・スランプの経時変化:JIS A 1150に準じてスランプを測定し、練り上がり直後から30分後および90分後および120分後測定値の変化量を調べた。
【0037】
・自己収縮:JCI自己収縮研究委員会報告書に準じて測定。材齢56日における自己収縮ひずみとして表示。
【0038】
・六価クロムの溶出量:六価クロム標準溶液を希釈して、六価クロム濃度が100mg/lの溶液を調製し、この六価クロム溶液をコンクリート1mに対して2リットルとなるようにコンクリートの練り水に置換して加えた。まだ固まらないフレッシュコンクリートからの溶出量と、硬化したコンクリートからの溶出量を調べた。
フレッシュコンクリートからの溶出量は、練りあがり30分後にブリーディング水や遠心分離より得られる上澄みをろ過することで得た試料を、純水に塩酸を加えて水素イオン濃度指数が5.8以上6.3以下となるようにした溶液と重量体積比10%の割合で混合し、JIS K 0102に準じてICP発光分光分析法により測定した。
硬化コンクリートからの溶出量は、材齢28日後の硬化コンクリートを破砕し、2mm下の試料を用いた。ただし、六価クロムの残存濃度は、JIS K 0102に準じ、ICP発光分光分析法により測定した。
【0039】
・曲げ強度測定:得られたコンクリートを10cm×10cm×40cmの型枠に流し込み、硬化後脱型して得た供試体を、温度20℃で封緘養生し、材齢28日における曲げ強度を測定した。単位はN/mmである。
【0040】
表1中、「ND」は、検出しなかったことを意味する。
【0041】
【表1】
【0042】
表1より、実施例A1~A7のセメント添加剤は、比較例A1~A5と比較して、硬化体の曲げ強度を高め、スランプロスを低減し、自己収縮を低減し、六価クロムの溶出量を低減する結果を示した。このような実施例A1~A7は、六価クロム低減、自己収縮低減、流動保持性、曲げ強度促進に優れたセメント添加剤を実現できることが分かった。また、実施例A1~A7のセメント添加剤は、上記効果を発揮しつつも、セメントに添加したときに比較例A5と比べて環境負荷を低減できる。
【0043】
「実施例B」
<セメント組成物の調製>
各実施例及び各比較例のセメント添加剤は、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、ホウ素及び純水を、下記に示す配合比率と、固形分濃度に基づいて混合し、得られた混合物を、スターラーで10分間攪拌して、調整した。
セメントとセメント添加剤からなるセメント組成物において、セメント100部に対して得られた各セメント添加剤を0.5部、膨張剤を7.1部、標準砂を83.3部、水53.6部使用し、水/セメント組成物比が50%のモルタルを調製した。このモルタルについて、膨張性の確認を行った。結果を表2に併記する。
【0044】
<使用材料>
上記セメント組成物の調製で使用した原料の情報を示す。
・セメント:普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積3210cm/g、市販品(デンカ社製、普通ポルトランドセメント)を使用。
・膨張材:デンカ社製「デンカパワーCSAタイプS」、エトリンガイト-石灰複合型。
・標準砂:一般社団法人セメント協会
・水:水道水
・実施例B1セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸ナトリウム含有量3質量%、X/Y=32、ホウ素含有量0.1mg/L、固形分濃度33質量%。
・実施例B2セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量95質量%、亜硫酸ナトリウム含有量3.6質量%、X/Y=26.4、ホウ素含有量0.2mg/L、固形分濃度36質量%。
・実施例B3セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量94質量%、亜硫酸ナトリウム含有量5質量%、X/Y=18.8、ホウ素含有量0.2mg/L、固形分濃度36質量%。
【0045】
・比較例B1セメント添加剤:添加剤なし
・比較例B2セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸塩含有量0質量%、X/Y=100超え(Yの0の場合、X/Yを100超えと見なした)、ホウ素含有量0.1mg/L、固形分濃度4質量%。
・比較例B3セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸ナトリウム含有量0.6質量%、X/Y=160、ホウ素含有量0.1mg/L、固形分濃度質量70%。
・比較例B4セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量50質量%、亜硫酸ナトリウム含有量40質量%、X/Y=1.25、ホウ素含有量0mg/L、固形分濃度22質量%。
【0046】
<測定方法>
長さ変化率:20℃・相対湿度60%の環境でJISA6202に準拠して供試体を採取。材齢1日後に脱型し、水中養生しその後、材齢7日で長さ変化を測定した。材齢7日の測定後,供試体を直ちに20℃・相対湿度60%の環境で養生し,材齢28日に長さ変化を測定した。
【0047】
【表2】
【0048】
表2より、実施例B1~B3のセメント添加剤は、比較例B1~B4と比較して、膨張材の膨張性を高める結果を示した。このような実施例B1~B3は、膨張材と併用することで膨張性に優れたセメント添加剤を実現できることが分かった。
【0049】
「実施例C」
<セメント組成物の調製>
各実施例及び各比較例のセメント添加剤は、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、ホウ素及び純水を、下記に示す配合比率と、固形分濃度に基づいて混合し、得られた混合物を、スターラーで10分間攪拌して、調整した。
セメントとセメント添加剤からなるセメント組成物において、セメント100部に対して得られた各セメント添加剤を0.5部、膨張材を6.7部使用し、単位セメント組成物量が500kg/m、水/セメント組成物比が33%、全骨材容積に対する細骨材容積比(s/a)が46%、空気量4.5%、スランプ21cmのコンクリートを調製した。この際、高性能減水剤をセメント組成物100部に対して1.4部添加した。このコンクリートについて、曲げ強度の確認を行った。結果を表3に併記する。
【0050】
<使用材料>
上記セメント組成物の調製で使用した原料の情報を示す。
・セメント:普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積3210cm/g、市販品(デンカ社製、普通ポルトランドセメント)を使用。
・膨張材:デンカ社製「デンカパワーCSAタイプS」、エトリンガイト-石灰複合型。
・実施例C1セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸ナトリウム含有量3質量%、X/Y=32、ホウ素含有量0.1mg/L、固形分濃度33質量%。
・実施例C2セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量95質量%、亜硫酸ナトリウム含有量3.6質量%、X/Y=26.4、ホウ素含有量0.2mg/L、固形分濃度36質量%。
・実施例C3セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量94質量%、亜硫酸ナトリウム含有量5質量%、X/Y=18.8、ホウ素含有量0.2mg/L、固形分濃度36質量%。
【0051】
・比較例C1セメント添加剤:添加剤なし
・比較例C2セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸塩含有量0質量%、X/Y=100超え(Yの0の場合、X/Yを100超えと見なした)、ホウ素含有量0.1mg/L、固形分濃度4質量%。
・比較例C3セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸ナトリウム含有量0.6質量%、X/Y=160、ホウ素含有量0.1mg/L、固形分濃度質量70%。
・比較例C4セメント添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量50質量%、亜硫酸ナトリウム含有量40質量%、X/Y=1.25、ホウ素含有量0mg/L、固形分濃度22質量%。
【0052】
・曲げ強度測定:得られたコンクリートを10cm×10cm×40cmの型枠に流し込み、硬化後脱型して得た供試体を、温度20℃で封緘養生し、材齢28日における曲げ強度を測定した。単位はN/mmである。
【0053】
【表3】
【0054】
表3より、実施例C1~C3のセメント添加剤は、比較例C1~C4と比較して、曲げ強度を高める結果を示した。このような実施例C1~C3は、膨張材と併用することで曲げ強度に優れたセメント添加剤を実現できることが分かった。