(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032316
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】土壌舗装材料
(51)【国際特許分類】
E01C 7/36 20060101AFI20220217BHJP
E01C 7/10 20060101ALI20220217BHJP
C09K 17/10 20060101ALI20220217BHJP
C09K 17/02 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
E01C7/36
E01C7/10
C09K17/10 P
C09K17/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135962
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
【テーマコード(参考)】
2D051
4H026
【Fターム(参考)】
2D051AA04
2D051AF02
2D051AF13
2D051AF14
2D051AF15
2D051AF17
2D051AH02
2D051AH03
2D051EA06
2D051EB02
4H026CA01
4H026CB01
4H026CB02
4H026CB03
4H026CB05
(57)【要約】
【課題】速硬性で凍害への抵抗性に優れ、かつさらに六価クロム溶出量が少なく、防草効果、ひび割れ抵抗性に優れる土壌舗装材料を提供する。
【解決手段】本発明の土壌舗装材料は、セメントと、土壌と、ガラス化率が70%以上、CaO/Al2O3モル比が1.0~2.7、不純物含有量が15質量%以下であるカルシウムアルミネートと、添加剤を含み、その添加剤はチオ硫酸塩と、亜硫酸塩と、ホウ素を含み、かつ、固形分中のチオ硫酸塩の含有量をX(質量%)、亜硫酸塩の含有量をY(質量%)としたとき、X,Yが、10≦X/Y≦100を満たすものである。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、
土壌と、
ガラス化率が70%以上、CaO/Al2O3モル比が1.0~2.7、不純物含有量が15質量%以下であるカルシウムアルミネートと、
添加剤と、を含む、土壌舗装材料であって、
当該土壌舗装材料中の前記添加剤は、
チオ硫酸塩と、亜硫酸塩と、ホウ素と、を含み、かつ、
固形分中の前記チオ硫酸塩の含有量をX(質量%)、前記亜硫酸塩の含有量をY(質量%)としたとき、X,Yが、10≦X/Y≦100を満たす、
土壌舗装材料。
【請求項2】
請求項1に記載の土壌舗装材料であって、
JIS K 0102に準拠して測定される、前記ホウ素の含有量が、0.01mg/L以上5.0mg/L以下である、土壌舗装材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の土壌舗装材料であって、
石膏を含有する、土壌舗装材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の土壌舗装材料であって、
前記チオ硫酸塩が、チオ硫酸ナトリウム、及びチオ硫酸カルシウムからなる群から選ばれる一または二以上を含む、土壌舗装材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の土壌舗装材料であって、
前記亜硫酸塩が、亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸カルシウムからなる群から選ばれる一または二以上を含む、土壌舗装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌舗装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌舗装は天然の土壌が持つ弾力性や保水性を残し、衝撃の吸収や路面温度の安定化や防草性に寄与する舗装である。特に路面温度の上昇を抑える効果が高く、ヒートアイランド現象の対策として注目されている。また周囲の自然環境に調和しやすいため、公園や遊歩道、河川の土手、田畑の畦畔、鉄道、電気設備施設の周辺、道路、歴史的建造物の周囲など景観を重視する用途や雑草の生育を抑制する用途でも採用されている。
【0003】
従来、土壌舗装の材料としては、生石灰系またはセメント系あるいはマグネシア系の固化剤を土壌に対して添加したものが知られている。
【0004】
セメントに土質材料を一定量加え、均一に混合した後、特定の無機硬化剤を含有する添加水を配合した舗装用組成物が記載されている(特許文献1)。また、真砂土に対してセメント及び炭酸カルシウムと珪石粉を主成分とする透水性土壌硬化混和剤を混練して舗装基礎上に敷設することが記載されている(特許文献2)。天然土、セメント及び少量の硬化剤を水練りする舗装組成物において、硬化剤として塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムを含むものを用いてなる天然土舗装組成物が記載されている(特許文献3)。
【0005】
これらのセメント系あるいは生石灰系を用いた土壌舗装材料による舗装は、硬化に時間を要するため、早期開放ができない課題があり、特に低温時には固まらず、初期凍害をうけてしまうという課題、収縮量が大きくひび割れが生じるという課題、及び六価クロム溶出量が高いという課題がある。
【0006】
また、マグネシア系の固化剤を土壌に対して添加するものが提案されている。酸化マグネシウムと異種金属塩とを含有する土壌舗装材料(特許文献4)や、平均ペリクレース結晶子径が330~430Åの酸化マグネシウムと、土壌とを予め混合した舗装材料(特許文献5)、さらに、マグネシア系固化剤、セメント混和用ポリマー及び水を含有する透水性舗装材組成物混合物(特許文献6)などの土壌改良剤がある。
【0007】
これらのマグネシアを含有する固化剤(硬化剤)を用いた土壌舗装材料による舗装は、硬化時間が長く、低温時には固まらず、凍害を受けてしまうという課題があった。
【0008】
また、カルシウムアルミネート系スラグを用いた土系固化材が提案されている(特許文献7)。このカルシウムアルミネート系スラグは、不純物が多く、さらにガラス化率が低いことから、CaO/Al2O3モル比を高くし反応活性を上げているが、セメント系や生石灰系やマグネシアを含有する固化剤と同様、硬化時間が長く、低温時には固まらず、凍害を受けてしまうといった課題があった。さらに特許文献8は、有害重金属の封じ込めのための重金属固定化剤や地盤改良材に関するものであり、CaとSを含む化合物である多硫化カルシウムを生石灰などの固定化材に担持させ、改良処理土の強度の低下をもたらすことなく、六価クロムなどの有害重金属溶出を著しく抑制する機能を有する地盤改良材が開示されている。さらに特許文献9は、pH8以上、-450mV以下の酸化還元電位を有する石灰硫黄合剤を含むことで速硬性、かつ、凍害への抵抗性に優れ、かつ、六価クロム溶出量の少ない土壌舗装材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6-10305号公報
【特許文献2】特開平6-306814号公報
【特許文献3】特開平9-87621号公報
【特許文献4】特開2005-154735号公報
【特許文献5】特開2014-51849号公報
【特許文献6】特開2005-290679号公報
【特許文献7】特許第5561921号公報
【特許文献8】特開2001-342461号公報
【特許文献9】特開2018-96028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、上記特許文献9に記載の土壌舗装材料において、特定の割合のチオ硫酸塩、亜硫酸塩と、特定の含有量のホウ素を使用することでさらなる速硬性で凍害への抵抗性に優れ、かつ、防草性に優れ、耐ひび割れや六価クロム溶出量の少ない、かつ、自己収縮の少ない土壌舗装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は、セメントと、土壌と、ガラス化率が70%以上、CaO/Al2O3モル比が1.0~2.7、不純物含有量が15質量%以下であるカルシウムアルミネートと、添加剤を含む、土壌舗装材料であって、当該土壌舗装材料の添加剤はチオ硫酸塩と、亜硫酸塩と、ホウ素を含む、かつ、固形分中の前記チオ硫酸塩の含有量をX(質量%)、前記亜硫酸塩の含有量をY(質量%)としたとき、X,Yが、10≦X/Y≦100を満たすものである、土壌舗装材料。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、速硬性であることから早期開放でき、寒冷地や低温環境下でも安定した舗装ができ、自己収縮量が少なく、耐ひび割れや六価クロム溶出量が低くい、さらに防草性に優れる土壌舗装材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明で使用する部や%は、特に規定しない限り質量基準である。
【0014】
本実施形態の土壌舗装材料は、セメントと、土壌と、ガラス化率が70%以上、CaO/Al2O3モル比が1.0~2.7、不純物含有量が15質量%以下であるカルシウムアルミネートと、添加剤を含み、その添加剤は、チオ硫酸塩と、亜硫酸塩と、ホウ素を含み、かつ、固形分中のチオ硫酸塩の含有量をX(質量%)、亜硫酸塩の含有量をY(質量%)としたとき、X,Yが、10≦X/Y≦100を満たすものである。
【0015】
本実施形態の土壌舗装材料により、速硬性であることから早期開放でき、寒冷地や低温環境下でも安定した舗装ができ、さらに六価クロム溶出量が少なく、防草効果、ひび割れ抵抗性に優れるので、建築、土木分野などで広範に使用される。
【0016】
セメントとは、特に限定されるものではなく、例えば、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や石膏や高炉徐冷スラグ微粉末等を混合したフィラーセメント、ならびに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)等のポルトランドセメント、ならびに、市販されているセメント系固化材、市販されている微粒子セメント等が挙げられる。各種セメントや各種混合セメントを微粉末化して使用することも可能である。また、通常セメントに使用されている成分(例えば石膏等)の量を増減して使用することも可能である。
これらセメントは、単独あるいは2種以上併用して使用することも可能である。中でも普通セメントは流通面で好ましい。
【0017】
添加剤は、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、及びホウ素を含む液状組成物で構成されてもよい。これにより、セメント中への分散性を高められる。
液状の添加剤は、これらの成分と水とを含む水溶液で構成されてもよい。
【0018】
液状の添加剤の固形分濃度は、目的に応じて適宜変更できる。添加剤の固形分濃度の下限は、例えば、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。これにより、添加剤の効果が十分に得られる。一方、添加剤の固形分濃度の上限は、例えば、60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。これにより、添加剤の液安定性を高められる。
【0019】
チオ硫酸塩は、チオ硫酸ナトリウム、及びチオ硫酸カルシウムからなる群から選ばれる一または二以上を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これによって、添加剤中やその硬化体からの六価クロムの溶出を抑制でき、固化体の自己収縮が低減される。
【0020】
亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸カルシウムからなる群から選ばれる一または二以上を含んでもよい。これらを単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。これによって、固化体の自己収縮が低減される。
【0021】
添加剤中のチオ硫酸塩の含有量をX(質量%)、亜硫酸塩の含有量をY(質量%)とする。添加剤中、X,Yは、例えば、10≦X/Y≦100、好ましくは15≦X/Y≦70、より好ましくは20≦X/Y≦50を満たすように構成されてもよい。上記範囲内とすることで、六価クロムの溶出量の低減と自己収縮低減のバランスを図ることができる。
【0022】
添加剤中の亜硫酸塩、チオ硫酸塩の含有量を測定する方法の一つは、以下の通りである。
(1)まず、添加剤からなる試料10mlを、ホールピペットを用いてメスフラスコに入れ、水を添加して全量を500mlとし、これらを施栓混合して、混合物を得る。
(2)続いて、300mlコニカルビーカーに、約100mlの水を入れ、(1)の混合物20mlをホールピペットを用いて加え、サンプルを得る。このサンプルを2つ準備する。
(3)(2)の一方のサンプルに、20%酢酸5mlを加えて混合する。
(4)(2)のもう一方のサンプルに、20%酢酸5ml、37%ホルマリン5mlを加えて混合し、2~3分放置する。
(5)デンプン溶液を指示薬として、N/10ヨウ素溶液で(3)のサンプルを滴定し、その添加量をAmlとし、同様にして、(4)のサンプルを滴定し、その添加量をBmlとする。
(6)下記の式に基づいて、添加剤中の亜硫酸塩、チオ硫酸塩の含有量を算出する。
・Na2S2O3:w/w%=B×f×3.953÷比重
・Na2SO3:w/w%=(A-B)×f×1.576÷比重
・f:N/10 ヨウ素溶液ファクター
【0023】
添加剤中のホウ素の含有量の下限は、例えば、0.01mg/L以上、好ましくは0.05mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上である。これにより、初期強度を高められる。一方、上記のホウ素の含有量の上限は、例えば、5.0mg/L以下、好ましくは3.0mg/L以下、より好ましくは1.0mg/L以下である。これにより、環境負荷を低減できる。
【0024】
ホウ素の含有量は、JIS K 0102に準拠し、ICP発光分光分析法により測定されてもよい。
【0025】
本実施形態では、例えば、添加剤中に含まれる各成分の種類や配合量、添加剤の調製方法等を適切に選択することにより、上記添加剤中の亜硫酸塩の含有量、X/Y、及びホウ素含有量を制御することが可能である。これらの中でも、例えば、亜硫酸イオン源として、亜硫酸塩を添加すること、水を適量添加すること等が、上記添加剤中の亜硫酸塩の含有量、X/Y、及びホウ素含有量を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0026】
カルシウムアルミネートは、カルシア原料とアルミナ原料などを混合して、キルンで焼成し、あるいは、電気炉で溶融し冷却して得られるCaOとAl2O3とを主成分とする水和活性を有する物質の総称であり、結晶質、非晶質のいずれも使用可能である。硬化時間が早く、初期強度発現性が高い材料である。
本発明のカルシウムアルミネートは、CaOとAl2O3とのモル比(CaO/Al2O3モル比)は、1.0~2.7が好ましく、2.0~2.5がより好ましい。1.0未満では硬化時間が長くなり、2.7を超えると硬化が早過ぎる場合がある。
【0027】
本実施形態では、カルシウムアルミネート中に含まれるCaOやAl2O3以外の不純物含有量が15質量%以下であることが初期強度発現性の点から好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。不純物含有量が15質量%を超えると硬化時間が長くなり、低温時に固まらない場合がある。不純物の代表的なものとして酸化ケイ素が挙げられ、その他、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等がある。
【0028】
カルシウムアルミネートのガラス化率は、反応性の点で70%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。ガラス化率が70%未満であると初期強度発現性が低下する場合がある。ガラス化率は粉末X線回折法により測定する。加熱前のサンプルについて、結晶鉱物のメインピーク面積Sを測定し、その後1000℃で2時間加熱後、1℃/分の冷却速度で徐冷する。徐冷後のサンプルについて、結晶鉱物のメインピーク面積S0を求め、次の式によりガラス化率χを算出する。
ガラス化率χ(%)=100×(1-S/S0)
【0029】
カルシウムアルミネートの粒度は、初期強度発現性の点で、ブレーン比表面積値2500cm2/g以上が好ましく、5000cm2/g以上がより好ましい。2500cm2/g未満であると、硬化時間が長くなり初期強度発現性が低下する場合がある。
【0030】
カルシウムアルミネートの使用量は、セメント100質量部に対して、0.5~50質量部が好ましい。0.5質量部未満では、初期強度発現性が低下する場合がある。一方、50質量部を超えると、作業時間が得られない場合がある。
【0031】
石膏としては、半水石膏と無水石膏が使用でき、強度発現性の面では無水石膏が好ましく、弗酸副生無水石膏や天然無水石膏が使用できる。石膏は、水に浸漬させたときのpHが8以下の弱アルカリから酸性のものが好ましい。pHが高い場合、石膏成分の溶解度が高くなり、初期の強度発現性を阻害する場合がある。ここでいうpHは、石膏とイオン交換水の質量比が1/100のスラリーの20℃におけるpHであり、イオン交換電極等を用いて測定する。
【0032】
石膏の粒度は、ブレーン比表面積値で3000cm2/g以上が好ましく、初期強度発現性と、適正な作業時間が得られる点から、5000cm2/g以上がより好ましい。
【0033】
石膏の使用量は、特に限定されるものではないが、セメント100質量部に対して、0.5~50質量部が好ましい。0.5質量部未満では、作業時間が取れなくなり、強度発現性が低下する場合がある。一方、50質量部を超えると作業時間は十分に取れるが、初期強度が得られない場合がある。
【0034】
土壌は、砂利、砂、礫、粘土のいずれか1種又は2種以上を含むもので特に限定されるものではない。山砂、川砂、海砂等のサンド質土壌やシルト質土壌、クレイ質土壌、工事から発生する残土、軽量骨材、再生骨材、路盤材や防草処理を行う箇所の土をそのまま用いることなどいずれも使用できる。一般には、天然土である真砂土や赤玉土や鹿沼土や乾燥砂は品質が安定しており、より好ましい。
【0035】
土壌舗装材料において、土壌の使用量は、特に限定されるものではないが、セメント100質量部に対して、50~1000質量部が好ましく、100~700質量部がより好ましい。土壌の使用量が50質量部より低いと、強度発現性は高いが経済的に好ましくない。一方、1000質量部より高いと強度が低く、凍害融解抵抗性に劣り、凹んでしまう可能性がある。
【0036】
水の使用量は、本発明の土壌舗装材料100質量部に対して5~100質量部が好ましい。5質量部未満では混合が困難となる場合があり、一方、100質量部を超えると十分な強度が得られない場合がある。
【0037】
本実施形態では、凝結調整剤を本発明の効果に影響しない範囲で使用することが可能である。凝結調整剤は、カルシウムアルミネートの凝結を促進、遅延するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、水酸化アルカリ、アルカリ金属塩化物塩、アルカリ金属炭酸塩、オキシカルボン酸又はその塩、リン酸又はその塩、デキストリン、ショ糖、ポリアクリル酸又はその塩、減水剤、高性能減水剤などを1種又は2種以上、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0038】
本実施形態では、酸化マグネシウムなどの低pHの固化材、ウッドチップ、もみ殻などの嵩をあげる増量材、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、石灰石微粉末などの混和材料、発泡剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、減水剤、流動化剤、ポリマー、中空微粒子、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体、着色剤、ゴムチップなどを1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0039】
本実施形態に係る土壌舗装材料を施工するには、各土壌舗装材料が均一に混合されれば、特に施工方法が限定されるものではない。土壌舗装材料を敷き詰めてジョウロや散水機で散水して被覆する方法、または、事前に水と練混ぜた土壌舗装材料を被覆する方法があり、草刈してその後に除草剤を散布してから被覆するとより好ましい。さらに本発明土壌舗装材料の土壌を除いたものを地面に敷設し、地面の土と混合攪拌させて被覆することも可能である。
なお、土壌舗装を行うには、施工個所の基礎地盤上に該土壌舗装材料を投入し、レーキ等を使用して均一に敷設を行うのが好ましい。この際転圧が有効に及ぼされるように、施工個所の周囲を境界ブロックや木枠等で予め囲っておいて、外部にまで土壌舗装材料が流出、拡散するのを防止するのが望ましい。
【0040】
上記のようにして土壌舗装材料の均一な敷設を行った後は、施工個所周縁部をハンド振動機等で強く締め固め、次いでプレート・ローラー等を用いて全面的に締め固めを充分に行うのが望ましい。
【0041】
このような本実施形態に係る土壌舗装材料は、例えば公園や遊歩道、河川の土手、田畑の畦畔、鉄道、電気設備施設の周辺、道路、歴史的建造物の周囲など景観を重視する箇所に好適に適用される。
【実施例0042】
以下、本発明の実験例に基づいて説明する。
【0043】
「実験例1」
セメント100質量部に対して、表1に示すカルシウムアルミネートを15質量部、固形分濃度33%の添加剤を0.3質量部、石膏を15質量部、凝結調整剤0.5質量部、土壌を700質量部加えて舗装材料を調製した。この舗装材を型枠に敷設後、土壌舗装材料100質量部に対して水を20部散水して舗装材料を調製し、硬化時間、初期凍害性、収縮量、六価クロム溶出量の測定を行った。結果を表1に示す。
なお、カルシウムアルミネートのブレーン比表面積は、5000cm2/gとなるように調整した。
また、添加剤は、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、ホウ素及び純水を、表1に示す配合比率に基づいて混合し、得られた混合物を、スターラーで10分間攪拌して、調整した。
【0044】
<使用材料>
・セメント:普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積3350cm2/g
・石膏:天然無水石膏、ブレーン比表面積5000cm2/g
・土壌:新潟県産川砂乾燥品、1.2mm篩下
・凝結調整剤:無水クエン酸、磐田化学工業社製
・砂:(一社)セメント協会製標準砂
・水:水道水
【0045】
比較例として、カルシウムアルミネート、添加剤を含有しないモルタル、マグネシア系固化材を用いて舗装材料を調整した。
マグネシア系固化材は、中国産マグネシウムを焼成した市販の酸化マグネシウムを使用した。
モルタルは、水セメント比50%、砂とセメントの割合を3/1として、JISR5201に記載のモルタルを調製した。
また、マグネシア系固化材100質量部に対して、又はモルタル100質量部に対して、土壌を600質量部、水を20質量部加えて、舗装材料を調製した。
【0046】
<測定方法>
・硬化時間:練混ぜた土壌舗装材を指で押してもへこまない時間を測定した。
・初期凍害抵抗性:20℃、相対湿度60%の環境下で、安定処理混合物の一軸圧縮試験方法(舗装試験法便覧 日本道路協会)に準拠し、供試体寸法を直径100mm、高さ127mmの円柱状とし、供試体は3層にわけて詰め、各層25回突き棒でつき、作製した。供試体を作製後、直ちに、-10℃の環境下で材齢7日まで養生した。その後、材齢28日まで20℃、相対湿度60%の環境下で気乾養生した後、圧縮強度を測定した。初期凍害抵抗性は、20℃、相対湿度60%の環境下で気乾養生した供試体の28日圧縮強度に対する、強度残存割合とした。
・収縮量:JIS A 6202の膨張コンクリートの拘束膨張及び収縮試験方法に準拠した。温度20℃、相対湿度60%の環境下で4×4×16cmの供試体を作製し、材齢1日後に脱型、材齢30日後の収縮量を測定した。
・六価クロム溶出量:20℃、相対湿度60%の環境下で、5×5×20cm供試体を作製した。材齢7日の供試体について、環境庁告示46号法に基づき測定した。
【0047】
表1中、「ND」は、検出しなかったことを意味する。
【0048】
【0049】
表1より、実施例の土壌舗装材料が、優れた硬化特性、初期凍害抵抗性を有し、六価クロム溶出量が少なく、モルタルやマグネシア系固化材の比較例と比べて収縮量が少ないことが分かる。
【0050】
「実験例2」
表2に示す通り、セメント100質量部に対して、カルシウムアルミネートと添加剤と石膏と土壌の添加割合を変え、さらに、セメント100質量部に対し、凝結調整剤0.5質量部を加え、土壌舗装材料を調製した。この土壌舗装材料を型枠に敷設後、土壌舗装材料100質量部に対して水を20質量部散水して舗装材料を調製した。
収縮量、六価クロム溶出量は実験例1と同様に測定し、さらに防草試験・ひび割れ試験を実施した。結果を表2に示す。
【0051】
<使用材料>
・カルシウムアルミネート:CaO/Al2O3モル比2.2、ガラス化率97%、不純物含有量2.0%、ブレーン比表面積5000cm2
・添加剤:固形分100質量%中のチオ硫酸ナトリウム含有量96質量%、亜硫酸ナトリウム含有量3質量%、X/Y=32、ホウ素含有量0.1mg/L、固形分濃度33質量%。
【0052】
防草試験・ひび割れ試験:30cm×40cmのトレーに田畑の土を15cm敷きならし、芝生の種であるトールフェスク、ケンタッキーブルーグラス、ペレニアルライグラスの混合品を40g/m2撒き、その上に土壌舗装材料を基礎面上に均一に厚み3cmに敷設した後、土壌舗装材料100質量部に対して水を15質量部散水した。材齢1日後、1日間-10℃の恒温室に入れた後、1日間20℃の恒温室に入れ、これを10サイクル繰り返した後、屋外に置き、100日後のひび割れの本数、防草材表面からの生えた芝の本数を測定した。
【0053】
表2中、「ND」は、検出しなかったことを意味する。
【0054】
【0055】
表2より、実施例の土壌舗装材料は、高いひび割れ抵抗性、高い防草効果、六価クロム溶出量が少なく、モルタルやマグネシア系固化材の比較例と比べて収縮量が少ない結果を示すことが分かる。