(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032410
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】エレベーター制御方法及びエレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
B66B5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136144
(22)【出願日】2020-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東田 一夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 才明
(72)【発明者】
【氏名】松本 良史
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA24
(57)【要約】
【課題】エレベーターによる搬送サービスを休止することなく、乗りかご内や乗り場のボタンの清掃を容易に行えるようにする。
【解決手段】乗りかごに配置された操作ボタンの特定の操作態様を検出したとき、乗りかごの運転モードを清掃運転モードに設定する清掃運転モード設定処理と、清掃運転モード設定処理で清掃運転モードが設定された場合に、乗りかごを複数の階床に停止させる各階停止運転を実行する運転制御処理と、清掃運転モードが設定された状態で、所定の条件を満たしたとき、清掃運転モードを解除する清掃運転モード解除処理とを行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路を走行することで、複数の階床の間を移動する乗りかごを制御するエレベーター制御方法であって、
前記乗りかごに配置された操作ボタンの特定の操作態様を検出したとき、前記乗りかごの運転モードを清掃運転モードに設定する清掃運転モード設定処理と、
前記清掃運転モード設定処理で前記清掃運転モードが設定された場合に、前記乗りかごを前記複数の階床に停止させる各階停止運転を実行する運転制御処理と、
前記清掃運転モードが設定された状態で、所定の条件を満たしたとき、前記清掃運転モードを解除する清掃運転モード解除処理と、を含む
エレベーター制御方法。
【請求項2】
前記運転制御処理で各階停止運転を行う際には、各階床に停止したときに、通常の各階床への停止時よりも長い所定時間、乗りかごのドアを開放する
請求項1に記載のエレベーター制御方法。
【請求項3】
前記清掃運転モード解除処理において判断される所定の条件は、前記清掃運転モードが設定されてから一定の時間が経過したとき、又は前記清掃運転モードが設定されてから前記乗りかごが全ての階床に停止したときである
請求項2に記載のエレベーター制御方法。
【請求項4】
前記清掃運転モード設定処理で前記清掃運転モードが設定された場合に、前記運転制御処理では、前記乗りかごに配置された操作ボタンの内の停止階登録ボタンを、全ての階床について点灯又は点滅させる
請求項3に記載のエレベーター制御方法。
【請求項5】
前記清掃運転モード設定処理で前記清掃運転モードが設定された場合に、さらに前記運転制御処理で、各階床の乗り場に設置されたかご呼びボタンについても点灯又は点滅させる
請求項4に記載のエレベーター制御方法。
【請求項6】
昇降路を走行することで、複数の階床の間を移動する乗りかごを備えたエレベーターシステムであって、
前記乗りかごに配置された操作ボタンの特定の操作態様を検出したとき、前記乗りかごの運転モードを清掃運転モードに設定し、前記清掃運転モードの設定中に、所定の条件を満たしたとき、前記清掃運転モードを解除するモード設定部と、
前記モード設定部が前記清掃運転モードを設定した場合に、前記乗りかごを前記複数の階床に停止させる各階停止運転を実行する運転制御部と、を備える
エレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター制御方法及びエレベーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
清掃員がエレベーターの乗りかごを清掃する際には、清掃員が乗りかご内の操作盤の特別な操作で、運転を停止させるモードにして、乗りかごのドアを開放した状態で清掃作業を行っている。したがって、通常、清掃作業中は、エレベーターの運転を休止した状態になる。なお、運転を停止させるモードを設定するためには、例えば乗りかご内の操作盤に取り付けられた保守作業用スイッチ格納扉を開錠して、その保守作業用スイッチ格納扉に格納されている停止用スイッチを操作するなどの特別な操作が必要になる。
【0003】
特許文献1には、清掃員が乗りかご内で所定の操作を行うことで、そのエレベーターの乗り場でのかご呼び登録の無効化と、所定時間のドア開放を行う機能を備えるエレベーター制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の乗りかごの清掃は、例えば1日に1回などの比較的少ない頻度で行われることを想定しており、例えば、早朝・夜間や休日などのエレベーターの使用が少ない時間帯に行われるのが一般的であった。
【0006】
これに対して近年、ウィルスなどの感染症対策として、乗りかご内の操作ボタンなどの人が触れる箇所を頻繁に清掃したいという要望がある。ここで、特許文献1に記載されるような、かご呼び登録を清掃作業中に無効化して清掃作業を行う技術を感染症対策に適用した場合、清掃作業が行われる毎に、エレベーターの運転は休止状態となる。つまり、エレベーターの運転が頻繁に休止されるため、エレベーターの利用者にとって好ましくない状態になってしまう。
【0007】
また、乗りかご内の保守作業用スイッチ格納扉を開錠して、その保守作業用スイッチ格納扉で格納されている停止用スイッチを操作して運転を休止させた場合、清掃員は、清掃作業終了後に、この停止用スイッチで休止を解除する操作を行う必要がある。
万一、清掃員が休止の解除操作を忘れた場合には、エレベーターの運転が再開しないので、エレベーターを利用できない状態が長時間継続することになる。
【0008】
さらに、エレベーターの清掃時には、清掃員は、乗りかご内の操作ボタン(停止階登録ボタンや開閉ボタンなど)の清掃だけでなく、各階床の乗り場に設置されたかご呼びボタンについても清掃を行う場合がある。
特に、感染症対策として清掃する場合には、乗り場のかご呼びボタンについても高い頻度で清掃することが望ましい。しかし、各階の乗り場のかご呼びボタンを清掃するためには、清掃員が各階に順に移動して、各階の乗り場のかご呼びボタンを清掃しなければならない。このため、清掃員が全ての階の乗り場のかご呼びボタンを清掃するためには、極めて多くの時間と手間がかかっていた。
【0009】
本発明は、エレベーターによる搬送サービスを休止することなく、乗りかご内や乗り場のボタンの清掃を容易に行うことができるエレベーター制御方法及びエレベーターシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、エレベーター制御方法は、昇降路を走行することで、複数の階床の間を移動する乗りかごを制御するエレベーター制御方法であって、乗りかごに配置された操作ボタンの特定の操作態様を検出したとき、乗りかごの運転モードを清掃運転モードに設定する清掃運転モード設定処理と、清掃運転モード設定処理で清掃運転モードが設定された場合に、乗りかごを複数の階床に停止させる各階停止運転を実行する運転制御処理と、清掃運転モードが設定された状態で、所定の条件を満たしたとき、清掃運転モードを解除する清掃運転モード解除処理と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、清掃運転モードを設定することで、各階停止運転が行われるため、乗りかごに乗り込んだ清掃員は、各階に乗りかごが停止した際に、停止階の乗り場のかご呼びボタンを清掃することができる。したがって、清掃員は、乗りかご内の操作ボタンの清掃の他に、各階の乗り場のかご呼びボタンを効率よく清掃することが可能になる。また、清掃運転モード時であっても、各階停止運転による最低限の搬送サービスが行われ、清掃時にエレベーターを利用できない状態が発生することがない。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態例によるエレベーターシステム全体の構成図である。
【
図2】本発明の一実施の形態例による制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施の形態例による清掃運転モードでの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施の形態例による操作盤の操作と表示の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態例(以下「本例」と称する)を、添付図面を参照して説明する。
【0014】
[エレベーターシステム全体の構成]
図1は、本例のエレベーターシステム全体の概略構成を示す。
本例のエレベーターシステムは、昇降路内に乗りかご30が配置される。乗りかご30は主ロープ21の一端に接続され、主ロープ21の他端にウェイト22が接続されている。
そして、乗りかご30は、巻上機23による主ロープ21の駆動により昇降路内を走行(昇降)する。
巻上機23は、駆動部24からの駆動電力の供給により作動する。また、駆動部24による駆動電力の供給は、制御装置10によって制御される。
【0015】
乗りかご30内には、停止階登録ボタンやドア開閉ボタンなどの操作ボタンを備えるかご内操作盤31が配置される。かご内操作盤31に配置された操作ボタンは、乗りかご30内の乗客がタッチしたとき、該当する操作ボタンが点灯し、その点灯した操作ボタンに対応した停止階などが登録される。かご内操作盤31の操作ボタンの操作データは、制御装置10に伝送される。
【0016】
また、本例のエレベーターシステムが設置されたビルの各階の乗り場41~44には、乗り場操作盤51~54が設置されている。乗り場操作盤51~54は、上り又は下りのかご呼びボタン及び不図示の乗りかご走行位置表示部を備える。乗り場操作盤51~54に配置された操作ボタンは、各階の乗り場41~44の乗客がタッチしたとき、該当する操作ボタンが点灯し、その点灯したボタンに対応した方向のかご呼びが登録される。
乗り場操作盤51~54の操作ボタンの操作データは、制御装置10に伝送される。なお、
図1では、4つの階の乗り場41~44及び乗り場操作盤51~54が設置された構成を示すが、階床の数は一例である。
【0017】
制御装置10は、運転制御部11、モード設定部12、かご内通信部13、乗り場通信部14、及びボタン操作検知部15を備える。
運転制御部11は、乗りかご30を走行させるために、駆動部24による巻上機23の駆動を制御する。
【0018】
モード設定部12は、運転制御部11による乗りかご30の運転モードを設定する。モード設定部12により設定される運転モードとしては、通常運転を行うモード(通常運転モード)の他に、清掃運転モードや保守モードなどがある。
【0019】
清掃運転モードは、清掃員がかご内操作盤31や乗り場操作盤51~54を清掃するモードである。この清掃運転モードは、かご内操作盤31の操作ボタンに対して、予め決められた特定の操作があるときに設定される。モード設定部12が清掃運転モードを設定した場合には、運転制御部11は、乗りかご30を各階に順に停止させる各階停止運転を行う。この清掃運転モードの詳細については後述する。
【0020】
保守モードは、エレベーターを運転停止として、保守作業員による保守作業を行うモードである。保守モードは、例えばかご内操作盤31の保守作業用スイッチ格納扉で格納されている停止用スイッチ(不図示)の操作で設定される。
【0021】
かご内通信部13は、かご内操作盤31とのデータ転送(通信処理)を行う。
乗り場通信部14は、各階の乗り場操作盤51~54とのデータ転送(通信処理)を行う。
【0022】
ボタン操作検知部15は、かご内通信部13及び乗り場通信部14による通信で、かご内操作盤31や乗り場操作盤51~54に配置されたボタンの操作を検知する。ボタン操作検知部15が検知したボタン操作についての情報は、運転制御部11に供給される。運転制御部11は、ボタンの操作情報に基づいて、乗りかご30の運転状態を制御する。例えば運転制御部11は、かご内操作盤31の停止階登録ボタンの操作や、乗り場操作盤51~54のかご呼びボタンの操作に基づいて、乗りかご30の停止階を設定する。
【0023】
また、ボタン操作検知部15が検知したボタンの操作情報は、モード設定部12にも供給される。モード設定部12は、操作情報に基づいて特定のボタンの操作を検知したとき、上述した清掃運転モードの設定や解除を行う。なお、モード設定部12による清掃運転モードの解除は、ボタン操作以外で行われる場合もある。
【0024】
[制御装置の構成]
図2は、制御装置10のハードウェア構成例を示す。
図2に示す例は、制御装置10をコンピュータ装置で構成した場合の例である。
図2に示す制御装置(コンピュータ装置)10は、バスにそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit:中央処理ユニット)10aと、ROM(Read Only Memory)10bと、RAM(Random Access Memory)10cを備える。さらに、制御装置10は、不揮発性ストレージ10dと、第1通信部10fと、第2通信部10gとを備える。
【0025】
CPU10aは、制御装置10での制御処理を実行するソフトウェアのプログラムコードをROM10bから読み出して実行する演算処理部であり、運転制御部11やモード設定部12として機能する。ROM10bには、制御装置10が実行する制御機能に関係するプログラムが記録される。このプログラムには、エレベーターの運転モードを切り替える処理を実行するプログラムが含まれる。
RAM10cには、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。
【0026】
不揮発性ストレージ10dは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの大容量情報記憶部である。不揮発性ストレージ10dには、エレベーターの運転履歴や保守履歴などが記憶される。
【0027】
ネットワークインタフェース10eには、例えば、NIC(Network Interface Card)などが用いられる。ネットワークインタフェース10eは、外部(エレベーター監視用のサーバや保守管理用のサーバなど)と各種情報の送受信を行う。
【0028】
第1通信部10f及び第2通信部10gは、所定の機器との通信処理を行うインタフェースである。第1通信部10f及び第2通信部10gは、それぞれかご内通信部13及び乗り場通信部14として機能する。
また、
図2には示していないが、制御装置(コンピュータ装置)10には、表示装置や各種入力装置(キーボード,マウスなど)が接続されていてもよい。
【0029】
なお、制御装置10を
図2に示すコンピュータ装置で構成するのは一例であり、コンピュータ装置以外のその他の演算処理装置で構成してもよい。例えば、制御装置10が行う機能の一部又は全部を、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアによって実現してもよい。
【0030】
[清掃運転モードでの処理]
図3は、本例のエレベーターシステムで、運転モードを清掃運転モードに切り替えた場合の処理の流れを示す。
まず、制御装置10のモード設定部12は、かご内操作盤31の操作ボタンの特定の操作の検知で、動作モードを通常運転モードから、清掃運転モードに切り替える(清掃運転モード設定処理:ステップS11)。ここで、操作ボタンの特定の操作とは、通常時に利用客が操作することがない特別な操作であり、例えばかご内操作盤31の特定階(1階など)の停止階登録ボタンとドア開ボタンとドア閉ボタンとの3つのボタンを同時にタッチする操作などが考えられる。
【0031】
モード設定部12が清掃運転モードを設定すると、制御装置10は、乗りかご30のかご内操作盤31の全ての停止階登録ボタンを点灯させると共に、全ての階の乗り場41~44の乗り場操作盤51~54のかご呼びボタンを点灯させる(ステップS12)。
そして、運転制御部11は、乗りかご30を各階に順に停止させる各階停止を繰り返す往復運転を開始する(運転制御処理:ステップS13)。
なお、各階に停止した際には、ドア開からドア閉までの時間を、通常時よりも比較的長い時間に設定してもよい。例えば、通常は各階に停止してドア開の状態で、数秒間乗降がないとき、ドア閉とするが、清掃運転モード時には、各階に停止してドア開から、少なくとも十数秒間はドア閉とならないようにして、停止時間を長く設定する。このような処理を行うことで、停止した階の乗り場操作盤51~54の清掃(消毒)ができる時間を確保することができる。
【0032】
その後、モード設定部12は、ステップS11で清掃運転モードに切り替えてから、予め設定された所定時間経過したか否かを判断する(ステップS14)。ここで設定される所定時間は、乗りかご30がステップS13における各階停止状態での運転で、全ての階に停止したと想定される時間、あるいは清掃運転モードで1往復以上の走行が行われたと想定される時間とする。例えば、最下階から最上階まで各階停止で約3分かかる場合に、所定時間として、余裕を見て6分とする。
【0033】
ステップS14で所定時間が経過していない場合(ステップS14のNO)、モード設定部12は、かご内操作盤31の操作ボタンの特定の操作があるか否かを判断する(ステップS15)。ここでいう操作ボタンの特定の操作も、ステップS11で清掃運転モードに切り替えたときの特定の操作と同じでよい。
【0034】
ステップS14で所定時間が経過した場合(ステップS14のYES)及びステップS15で特定の操作を検知した場合(ステップS15のYES)には、モード設定部12は、清掃運転モードを解除して、エレベーターを通常運転モードに復帰させる(ステップS16)。通常運転モードへの復帰時には、モード設定部12は、例えば、清掃運転モード中に全て点灯させた、かご内操作盤31の停止階登録ボタンや乗り場操作盤51~54のかご呼びボタンを消灯させる。
また、ステップS15で特定の操作を検知しない場合には、モード設定部12は、ステップS13に戻り、各階停止を繰り返す清掃運転モードを継続させる。
【0035】
図4は、清掃運転モード時における、かご内操作盤31の状態の例を示す。
かご内操作盤31は、例えば
図4(a)に示すように、各階の停止階登録ボタンB11~B14と、ドア開ボタンB21と、ドア閉ボタンB22とを備える。また、かご内操作盤31の下部には、保守作業用スイッチ格納扉31aを備える。この保守作業用スイッチ格納扉31aは、保守作業員が所持する鍵で開けることができ、内部に保守モードに設定するための停止用スイッチが配置されている。
【0036】
ここで、
図4(a)に示すように、1階の停止階登録ボタンB11と、ドア開ボタンB21と、ドア閉ボタンB22との3つのボタンが同時にタッチされたとする。このとき、本例のエレベーターは、ステップS11での清掃運転モードへの切り替えが行われる。
【0037】
図4(b)は、清掃運転モード中のかご内操作盤31と、3階の乗り場操作盤53の状態を示す。清掃運転モード中は、かご内操作盤31に配置された停止階登録ボタンB11~B14と、ドア開ボタンB21と、ドア閉ボタンB22とは、全て点灯した状態である。
但し、清掃運転モード中には、各階停止での運転が行われるため、例えば乗りかご30が停止した階の停止階登録ボタンを点滅させるようにして、停止階が判るようにしてもよい。例えば、1階に停止中には、1階の停止階登録ボタンB11を点滅させる。また、清掃運転モード中でのドア閉の動作中には、ドア閉ボタンB22を点滅させるようにしてもよい。
【0038】
このように表示を行って清掃運転モード中に各階に順に停止することで、乗りかご30に乗り込んだ清掃作業員は、かご内操作盤31の清掃や消毒を行うことができる。また、清掃作業員は、エレベーターが各階に停止した際に、各階の乗り場操作盤53の清掃と消毒作業を行うことができる。
【0039】
乗り場操作盤53には、
図4(b)に示すように、上りのかご呼びボタンB31と、下りのかご呼びボタンB32と、乗りかご停止階表示部53aとが配置されている。ここでは3階の乗り場操作盤53を示すので、上りのかご呼びボタンB31と、下りのかご呼びボタンB32の双方が配置されているが、最上階や最下階の場合には、かご呼びボタンはいずれか1つのみが配置される。なお、乗り場操作盤53は、乗りかご停止階表示部53aを備えない構成にしてもよい。
【0040】
乗り場操作盤53でも、清掃運転モード中には、かご呼びボタンB31,B32が全て点灯し、乗りかご30が停止することが示される。なお、通常は、例えば上りのかご呼びボタンB31をタッチして点灯させて、上り運転中の乗りかご30が、該当する階に到着した場合には、かご呼びボタンB31は消灯する。
【0041】
これに対して、本例の清掃運転モード中には、乗りかご30が到着しても、かご呼びボタンB31は点灯を継続させる。あるいは、乗りかご30が該当する階に到着した場合のみ、対応した運転方向のかご呼びボタンB31又はB32を消灯させ、乗りかご30が該当する階から出発後に再度点灯させるようにしてもよい。また、乗りかご30が該当する階に到着した場合に、対応した運転方向のかご呼びボタンB31又はB32を点灯から点滅に変化させるようにしてもよい。
【0042】
そして、清掃運転モード中に、
図4(c)に示すように、再び、かご内操作盤31の1階の停止階登録ボタンB11と、ドア開ボタンB21と、ドア閉ボタンB22との3つのボタンが同時にタッチされたとする。このとき、本例のエレベーターシステムでは、ステップS16の通常運転モードに復帰する(復帰処理)。
なお、本例の場合、通常運転モードへの復帰処理は、
図4(c)に示す特定操作の他に、清掃運転モードに設定してからの経過時間によっても行われる。
【0043】
乗りかご30が通常運転に復帰した場合には、かご内操作盤31の各ボタンの点灯を終了させる。あるいは、乗りかご30が通常運転に復帰した場合であっても、各階の停止階登録ボタンB11~B14の点灯は継続して、それぞれの階に停止することで、対応する階の停止階登録ボタンを消灯させてもよい。
【0044】
また、各階の乗り場操作盤51~54も、乗りかご30が通常運転に復帰した場合には、各ボタンの点灯を終了させる。あるいは、通常運転に復帰した場合であっても、各ボタンの点灯を継続させ、それぞれの階に乗りかご30が停止したとき、消灯させる通常動作に戻るようにしてもよい。
【0045】
以上説明したように、本例のエレベーターシステムによると、清掃運転モードを設定することで、乗りかご30が各階に順に停止する運転モードになる。このため、乗りかご30に乗り込んだ清掃作業員は、エレベーターの走行中であっても、乗りかご30内のかご内操作盤31の清掃や消毒作業を行うことができる。また、清掃作業員は、乗りかご30が各階に停止した際に、乗り場操作盤51~54についても清掃や消毒作業を行うことができるので、効率の良い清掃や消毒作業を行うことが可能になる。
また、清掃運転モード中には、各階に停止しながらの乗りかご30の運転が継続するため、乗客の搬送サービスは継続して行うことができ、乗客の搬送サービス継続と清掃作業の実行とを両立させることができる。
【0046】
また、本例のエレベーターシステムでは、清掃運転モードを設定してから、一定時間が経過すると通常運転モードに復帰するようにしたため、万一、清掃作業員が通常運転モードへの復帰操作を忘れた場合でも、確実に通常運転モードに復帰できるようになる。このため、清掃運転モードが長時間継続することによる搬送サービス効率の低下を防ぐことができる。
【0047】
[変形例]
なお、本発明は、上述した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0048】
例えば、上述した実施の形態例では、清掃運転モードを設定してから一定時間が経過したとき、通常運転モードに復帰するようにした。これに対して、例えば、清掃運転モードを設定してから乗りかご30が全ての階に停止したとき、全ての階の乗り場操作盤51~54の清掃が完了したとして、通常運転モードに自動的に復帰させるようにしてもよい。あるいは、清掃作業員が清掃運転モードを設定してから、1往復の運転が行われて、清掃運転モードを設定した際の停止階と同じ階に戻ったとき、通常運転モードに自動的に復帰させてもよい。
【0049】
また、
図4の例では、清掃運転モードを設定する特殊な操作と、清掃運転モードを解除する特殊な操作を、停止階登録ボタンB11、ドア開ボタンB21及びドア閉ボタンB22の3つのボタンを同時にタッチするという同じ操作としたが、設定する操作と解除する操作とを、それぞれを別の操作としてもよい。
【0050】
また、
図3のフローチャートでは、清掃運転モードを設定してから一定時間が経過したとき(又は一往復などの一定の運転が行われたとき)、通常運転モードに復帰する処理と、特定の操作があるとき、通常運転モードに復帰する処理とを組み合わせるようにしたが、いずれか一方のみで通常運転モードに復帰するようにしてもよい。
【0051】
さらに、上述した実施の形態例では、清掃運転モード時に、かご内操作盤31の各ボタンや乗り場操作盤51~54の各ボタンを点灯させるようにした。これに対して、清掃運転モード時に、かご内操作盤31の各ボタンや乗り場操作盤51~54の各ボタンは、点滅などの通常時とは異なる点灯状態として、通常運転でないことが容易に判るようにしてもよい。また、複数台の乗りかご30が設置されたエレベーターの場合には、清掃運転モード時には、清掃運転モードを設定した乗りかご30のかご内操作盤31の各ボタンのみを点灯(点滅)させるようにしてもよい。この場合、乗り場操作盤51~54の各ボタンについては、通常モード時と同様の利用客の操作に基づいた点灯を行うことになる。
【0052】
また、上述した実施の形態例では、清掃運転モード時に、全ての階床に順に停止させるようにしたが、全ての階床に順に停止させるのは一例であり、必ずしも全ての階床に停止させなくてもよい。例えば、エレベーターの停止階として、地階、1階、2階、・・・、N階(Nは任意の整数)に停止する構成で、地階に停止する頻度が非常に低い場合には、清掃運転モード時に、1階からN階まで順に停止する運転を行い、地階の停止を省略してもよい。
【0053】
さらに、上述した実施の形態例において、本発明の主旨を変えない範囲内で、装置又はシステム構成の変更や、一部の処理手順の省略や入れ替えを行ってもよい。
【0054】
さらにまた、
図1や
図2のブロック図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。また、
図3に示すフローチャートにおいて、処理結果に影響を及ぼさない範囲で、複数の処理を同時に実行するか、あるいは処理順序を変更してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…制御装置、10a…中央処理ユニット(CPU)、10b…ROM、10c…RAM、10d…不揮発性ストレージ、10e…ネットワークインタフェース、10f…第1通信部、10g…第2通信部、11…運転制御部、12…モード設定部、13…かご内通信部、14…乗り場通信部、15…ボタン操作検知部、21…主ロープ、22…ウェイト、23…巻上機、24…駆動部、30…乗りかご、31…かご内操作盤、41~44…乗り場、51~54…乗り場操作盤、B11~B14,B21,B22,B31,B32…操作ボタン