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  • 特開-溶接方法およびシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032416
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】溶接方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20220217BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20220217BHJP
   H01M 50/10 20210101ALN20220217BHJP
【FI】
B23K26/21 P
B23K26/00 Q
B23K26/00 N
B23K26/00 P
H01M2/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136157
(22)【出願日】2020-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 元彦
【テーマコード(参考)】
4E168
5H011
【Fターム(参考)】
4E168BA30
4E168CA11
4E168CB22
4E168KA04
4E168KA15
5H011AA09
5H011DD13
(57)【要約】
【課題】溶接の不良を容易に把握する。
【解決手段】熱流センサ101は、溶接対象のケース105の側面の開口の近傍の測定領域に配置され、測定領域の熱流を測定する。レーザ溶接機102は、ケース105の開口の上に載置され、ケース105に接合部で溶接される蓋106の上側に、レーザ溶接のためのレーザ121を照射する。測定器103は、レーザ溶接機102が蓋106の上側よりレーザを照射するときに、熱流センサ101を用いて測定領域におけるケース105の側面からの熱流を測定する。表示装置104は、測定器103が測定した熱流の測定結果を表示する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接対象のケースの側面の開口の近傍の測定領域に熱流センサを配置する第1工程と、
前記ケースの前記開口の上に蓋を載置する第2工程と、
前記熱流センサを用いて前記測定領域における前記ケースの側面からの熱流を測定する状態で、前記ケースと前記蓋との接合部の前記蓋の上側よりレーザを照射して前記ケースと前記蓋とを前記接合部でレーザ溶接する第3工程と、
前記第3工程で測定した熱流の測定結果をもとに、前記ケースと前記蓋との前記接合部における溶接の状態を把握する第4工程と
を備える溶接方法。
【請求項2】
請求項1記載の溶接方法において、
前記第4工程は、前記接合部における溶接の良不良を把握することを特徴とする溶接方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の溶接方法において、
前記第1工程は、前記測定領域に前記熱流センサを複数配置し、
前記第4工程は、複数配置した前記熱流センサの各々の測定結果より前記接合部における溶接の不良箇所を把握する
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の溶接方法において、
前記第3工程は、測定している熱流の変動に対応させて、照射するレーザの出力を制御することを特徴とする溶接方法。
【請求項5】
溶接対象のケースの側面の開口の近傍の測定領域に配置され、前記測定領域の熱流を測定する熱流センサと、
前記ケースの前記開口の上に載置され、前記ケースに接合部で溶接される蓋の上側に、レーザ溶接のためのレーザを照射するレーザ溶接機と、
前記レーザ溶接機が前記蓋の上側よりレーザを照射するときに、前記熱流センサを用いて前記測定領域における前記ケースの側面からの熱流を測定する測定器と、
前記測定器が測定した熱流の測定結果を表示する表示装置と
を備える溶接システム。
【請求項6】
請求項5記載の溶接システムにおいて、
前記測定器が測定した熱流の測定結果を元に、前記ケースと前記蓋との前記接合部における溶接の状態を判定する判定装置をさらに備えることを特徴とする溶接システム。
【請求項7】
請求項6記載の溶接システムにおいて、
前記判定装置は、前記接合部における溶接の良不良を判定することを特徴とする溶接システム。
【請求項8】
請求項6記載の溶接システムにおいて、
前記測定領域に配置された複数の前記熱流センサを備え、
前記判定装置は、複数配置した前記熱流センサの各々の測定結果より前記接合部における溶接の不良箇所を判定する
ことを特徴とする溶接システム。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の溶接システムにおいて、
前記測定器が測定している熱流の変動に対応させて、照射するレーザの出力を制御する制御装置をさらに備えることを特徴とする溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接による溶接方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン二次電池は、正極、負極を含めた電池の構成部分を、アルミニウムなどの金属によるケースに収容し、ケースに蓋を溶接して封止している。この種の溶接において、一般には、レーザ溶接が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-195490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザ溶接において、ケースや蓋の溶接する箇所が異物などにより汚染されている場合、照射したレーザが汚染物質に吸収され、当該箇所が異常に高温となる場合がある。このような異常な発熱箇所においては、ピンホールなどが発生し、溶接不良となり、結果として、蓋による封止の不良となる場合がある。このような溶接不良は、外観から確認することが容易ではなく、見落とされる場合がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、溶接の不良が容易に把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る溶接方法は、溶接対象のケースの側面の開口の近傍の測定領域に熱流センサを配置する第1工程と、ケースの開口の上に蓋を載置する第2工程と、熱流センサを用いて測定領域におけるケースの側面からの熱流を測定する状態で、ケースと蓋との接合部の蓋の上側よりレーザを照射してケースと蓋とを接合部でレーザ溶接する第3工程と、第3工程で測定した熱流の測定結果をもとに、ケースと蓋との接合部における溶接の状態を把握する第4工程とを備える。
【0007】
上記溶接方法の一構成例において、第4工程は、接合部における溶接の良不良を把握する。
【0008】
上記溶接方法の一構成例において、第1工程は、測定領域に熱流センサを複数配置し、第4工程は、複数配置した熱流センサの各々の測定結果より接合部における溶接の不良箇所を把握する。
【0009】
上記溶接方法の一構成例において、第3工程は、測定している熱流の変動に対応させて、照射するレーザの出力を制御する。
【0010】
また、本発明に係る溶接システムは、溶接対象のケースの側面の開口の近傍の測定領域に配置され、測定領域の熱流を測定する熱流センサと、ケースの開口の上に載置され、ケースに接合部で溶接される蓋の上側に、レーザ溶接のためのレーザを照射するレーザ溶接機と、レーザ溶接機が蓋の上側よりレーザを照射するときに、熱流センサを用いて測定領域におけるケースの側面からの熱流を測定する測定器と、測定器が測定した熱流の測定結果を表示する表示装置とを備える。
【0011】
上記溶接システムの一構成例において、測定器が測定した熱流の測定結果をもとに、ケースと蓋との接合部における溶接の状態を判定する判定装置をさらに備える。
【0012】
上記溶接システムの一構成例において、判定装置は、接合部における溶接の良不良を判定する。
上記溶接システムの一構成例において、測定領域に配置された複数の熱流センサを備え、判定装置は、複数配置した熱流センサの各々の測定結果より接合部における溶接の不良箇所を判定する。
【0013】
上記溶接システムの一構成例において、測定器が測定している熱流の変動に対応させて、照射するレーザの出力を制御する制御装置をさらに備える。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、ケースと蓋とのレーザ溶接において、熱流センサを用いて測定領域におけるケースの側面からの熱流を測定するので、溶接の不良が容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る溶接システムの構成を示す構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1に係る溶接システムの一部構成を示す構成図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1に係る溶接方法を説明するフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施の形態2に係る溶接システムの構成を示す構成図である。
図5図5は、本発明の実施の形態3に係る溶接システムの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る溶接システムについて説明する。
【0017】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る溶接システムについて図1を参照して説明する。この溶接システムは、熱流センサ101、レーザ溶接機102、測定器103、表示装置104を備える。この溶接システムは、溶接対象のケース105の開口の上に載置された蓋106を、接合部において接合するために用いられる。接合部は、例えば、ケース105と蓋106との合わせ面である。ケース105および蓋106は、例えば、リチウムイオン二次電池などの外装容器である。
【0018】
熱流センサ101は、溶接対象のケース105の側面の開口の近傍の測定領域に配置され、測定領域の熱流を測定する。例えば、測定領域には、複数の熱流センサ101を配置することができる。例えば、ケース105に蓋106をレーザ溶接するときには、溶接中にケース105が膨張しないように、図2に示すように、平面視でケース105の四方から、押さえ治具107を用いてケース105を拘束する。熱流センサ101は、ケース105の外側側面と、押さえ治具107との間に配置することができる。熱流センサ101は、例えば、ビスマス-テルル系の熱流センサである。なお、図2は、蓋106が開口の上に載置されているケース105の上面から見た状態を模式的に示している。
【0019】
レーザ溶接機102は、ケース105の開口の上に載置され、ケース105に接合部で溶接される蓋106の上側に、レーザ溶接のためのレーザ121を照射する。レーザ溶接機102は、例えば、日本アビオニクス株式会社製のLW-S1000やLW-S1500とすることができる。
【0020】
測定器103は、レーザ溶接機102が蓋106の上側よりレーザを照射するときに、熱流センサ101を用いて測定領域におけるケース105の側面からの熱流を測定する。表示装置104は、測定器103が測定した熱流の測定結果を表示する。
【0021】
次に、本発明の実施の形態1に係る溶接方法について、図3を参照して説明する。
【0022】
まず、第1工程S101で、溶接対象のケース105の外側側面の開口の近傍の測定領域に熱流センサ101を配置する。ケース105の開口に、蓋106がレーザ溶接される。
【0023】
次に、第2工程S102で、ケース105の開口の上に蓋106を載置する。次いで、第3工程S103で、レーザ溶接機102を用い、ケース105と蓋106との接合部の蓋106の上側よりレーザ121を照射し、ケース105と蓋106とを接合部でレーザ溶接する。このとき、熱流センサ101および測定器103を用いて、測定領域におけるケース105の側面からの熱流を測定する。測定器103による測定結果は、逐次に表示装置104に表示される。
【0024】
次に、第4工程S104で、上述したように、溶接時に測定した熱流の測定結果をもとに、ケース105と蓋106との接合部における溶接の状態を把握する。例えば、接合部における溶接の良不良を把握する。例えば、表示装置104に表示される熱流の測定結果を、予め測定することで用意してある正常値と比較することで異常な値が確認された場合、この測定結果が得られたときに溶接していた製品は、接合部に接合不良があるものとして不良品とする。
【0025】
また、測定領域に熱流センサ101を複数配置している場合、複数配置した熱流センサ101の各々の測定結果より、接合部における溶接の不良箇所を把握することもできる。また、第3工程S103の溶接の一構成例において、測定している熱流の変動に対応させて、照射するレーザの出力を制御することもできる。
【0026】
例えば、レーザ溶接を実施しているときに(過程で)、表示装置104に表示される熱流の測定結果(熱流値)を逐次に確認し、熱流値の変動(熱流値が下がる)状態が見られた場合、レーザ溶接機102におけるレーザ121の出力値を若干低下させる。この種のレーザ溶接では、溶接時に、ケース105および蓋106の蓄熱により、時間とともに溶接ビートが大きくなる場合がある。この状態では、熱流センサ101により測定される熱流値が低下する。この状態が確認された場合は、レーザ121の出力値を若干低下させる。このようにすることで、溶接ビートの拡大が防止でき、接合部全域で、均一な大きさの溶接ビートを得ることができるようになる。
【0027】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る溶接システムについて、図4を参照して説明する。この溶接システムは、熱流センサ101、レーザ溶接機102、測定器103、表示装置104を備える。これらの構成は、前述した実施の形態1と同様である。実施の形態2では、さらに、判定装置108を備える。
【0028】
判定装置108は、測定器103が測定した熱流の測定結果をもとに、ケース105と蓋106との接合部における溶接の状態を判定する。判定装置108は、例えば、接合部における溶接の良不良を判定する。判定装置108は、例えば、実験により求められた熱流センサ101の測定による正常値を記憶している。判定装置108は、実際の溶接時に測定器103が測定した結果と、予め測定することで用意してある正常値とを比較し、良不良を判定する。例えば、測定結果が正常値から所定の範囲で外れている場合、判定装置108は、この測定結果が得られたときに溶接していた製品は、接合部に接合不良があるものとして不良品と判定する。
【0029】
また、判定装置108は、複数配置した熱流センサ101の各々の測定結果より接合部における溶接の不良箇所を判定することもできる。例えば、各々の熱流センサ101の測定結果と正常値とを比較し、測定結果が正常値から所定の範囲で外れている熱流センサ101の配置箇所に、溶接の不良が発生しているものと判定する。
【0030】
判定装置108は、例えば、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)と主記憶装置と外部記憶装置となどを備えたコンピュータ機器である。主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作する(プログラムを実行する)ことで、判定装置108の上述した各機能が実現される。上記プログラムは、上述した判定装置108の各機能をコンピュータが実行するためのプログラムである。
【0031】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3に係る溶接システムについて、図5を参照して説明する。この溶接システムは、熱流センサ101、レーザ溶接機102、測定器103、表示装置104を備える。これらの構成は、前述した実施の形態1と同様である。また、この溶接システムにおいても、前述した実施の形態2と同様に、判定装置108を備える。
【0032】
実施の形態3では、さらに、制御装置109を備える。制御装置109は、測定器103が測定している熱流の変動に対応させて、照射するレーザの出力を制御する。例えば、制御装置109は、レーザ溶接を実施しているときに、熱流センサ101および測定器103で測定される熱流の測定結果(熱流値)を逐次に確認する。この確認の中で、制御装置109は、熱流値の変動(熱流値が下がる)状態が見られた場合、レーザ溶接機102におけるレーザ121の出力値を若干低下させる。
【0033】
この種のレーザ溶接では、溶接時に、ケース105および蓋106の蓄熱により、時間とともに溶接ビートが大きくなる場合がある。この状態では、熱流センサ101により測定される熱流値が低下する。この状態を確認した制御装置109は、レーザ121の出力値を若干低下させる。この制御により、溶接ビートの拡大が防止でき、接合部全域で、均一な大きさの溶接ビートを得ることができるようになる。
【0034】
制御装置109は、例えば、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)と主記憶装置と外部記憶装置となどを備えたコンピュータ機器である。主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作する(プログラムを実行する)ことで、制御装置109の上述した各機能が実現される。上記プログラムは、上述した制御装置109の各機能をコンピュータが実行するためのプログラムである。
【0035】
以上に説明したように、本発明によれば、ケースと蓋とのレーザ溶接において、熱流センサを用いて測定領域におけるケースの側面からの熱流を測定するので、溶接の不良が容易に把握できるようになる。
【0036】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0037】
101…熱流センサ、102…レーザ溶接機、103…測定器、104…表示装置、105…ケース、106…蓋、107…押さえ治具、121…レーザ。
図1
図2
図3
図4
図5