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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032423
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】導波管スロットアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/22 20060101AFI20220217BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H01Q13/22
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136169
(22)【出願日】2020-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小田 康明
(72)【発明者】
【氏名】石村 直敬
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA09
5J021AB05
5J021GA05
5J021HA04
5J045AA05
5J045AA26
5J045DA04
5J045FA05
5J045HA01
5J045NA07
(57)【要約】
【課題】本開示は、導波管スロットアンテナの指向性を制御するにあたり、導波管スロットアンテナの導波方向と垂直面内の指向性が、グレーティングローブ及びヌル点を意図せず生じさせることをなくすとともに、導波管スロットアンテナが、電源の分配器に起因する損失及び周波数特性を生じさせないことを目的とする。
【解決手段】本開示は、導波管22の広壁面にスロット23-1、23-2が形成される導波管スロットアンテナ2であって、単一の導波管22の導波方向と垂直方向に複数のスロット23-1、23-2が配列されることを特徴とする導波管スロットアンテナ2である。具体的には、単一の導波管22の広壁面の中心軸24上に1個のスロット23-1が形成されることを特徴とする導波管スロットアンテナ2である。
【選択図】図2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波管の広壁面にスロットが形成される導波管スロットアンテナであって、
単一の前記導波管の導波方向と垂直方向に複数の前記スロットが配列される
ことを特徴とする導波管スロットアンテナ。
【請求項2】
単一の前記導波管の広壁面の中心軸上に1個の前記スロットが形成される
ことを特徴とする、請求項1に記載の導波管スロットアンテナ。
【請求項3】
単一の前記導波管の広壁面の中心軸に対して一方側に複数の前記スロットが形成される
ことを特徴とする、請求項1に記載の導波管スロットアンテナ。
【請求項4】
単一の前記導波管の広壁面の中心軸に対して両方側に複数の前記スロットが形成される
ことを特徴とする、請求項1に記載の導波管スロットアンテナ。
【請求項5】
単一の前記導波管の導波方向に複数の前記スロットが同一の又は異なる長さを有する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の導波管スロットアンテナ。
【請求項6】
単一の前記導波管の導波方向と垂直方向に配列される複数の前記スロットが、単一の前記導波管の導波方向に単一の前記導波管の管内波長と等しい間隔で配列される
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の導波管スロットアンテナ。
【請求項7】
単一の前記導波管の導波方向と垂直面内の指向性が正面方向に関して非対称性を有する
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の導波管スロットアンテナ。
【請求項8】
単一の前記導波管の導波方向と垂直面内の指向性が所定方向においてヌル点を有する
ことを特徴とする、請求項1又は4に記載の導波管スロットアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導波管スロットアンテナの指向性を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
導波管スロットアンテナの指向性を制御する技術が、特許文献1等に開示されている。従来技術の導波管スロットアンテナを図1に示す。導波管スロットアンテナ1は、電源11及び2本の導波管12-1、12-2を備える。各々の導波管12-1、12-2の広壁面の各々の中心軸14-1、14-2に対して一方側に、各々のスロット13-1、13-2が形成される。電源11の分配器から各々の導波管12-1、12-2への給電線路の長さの差分に応じて、各々の導波管12-1、12-2の励振位相の差分が制御され、導波管スロットアンテナ1の導波方向と垂直面内のアジマス指向性が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-226159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、各々の導波管12-1、12-2の広壁面の幅は、基本モードのみを励振させるため、λ/2(λは真空中の使用波長)より広い。すると、各々のスロット13-1、13-2の間の間隔は、各々の導波管12-1、12-2の狭壁面の厚さを考慮して、λ程度に広がる。よって、導波管スロットアンテナ1の導波方向と垂直面内のアジマス指向性は、グレーティングローブ及びヌル点を意図せず生じさせる。そして、導波管スロットアンテナ1は、電源11の分配器に起因する損失及び周波数特性を生じさせる。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、導波管スロットアンテナの指向性を制御するにあたり、導波管スロットアンテナの導波方向と垂直面内の指向性が、グレーティングローブ及びヌル点を意図せず生じさせることをなくすとともに、導波管スロットアンテナが、電源の分配器に起因する損失及び周波数特性を生じさせないことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、単一の導波管の導波方向と垂直方向に、複数のスロットが配列されるようにした。よって、各々のスロットの間の間隔は、λ程度(λは真空中の使用波長)に広がらない。そして、導波管スロットアンテナは、電源の分配器を備えない。
【0007】
具体的には、本開示は、導波管の広壁面にスロットが形成される導波管スロットアンテナであって、単一の前記導波管の導波方向と垂直方向に複数の前記スロットが配列されることを特徴とする導波管スロットアンテナである。
【0008】
この構成によれば、導波管スロットアンテナの導波方向と垂直面内の指向性が、グレーティングローブ及びヌル点を意図せず生じさせることをなくすとともに、導波管スロットアンテナが、電源の分配器に起因する損失及び周波数特性を生じさせないことができる。
【0009】
また、本開示は、単一の前記導波管の広壁面の中心軸上に1個の前記スロットが形成されることを特徴とする導波管スロットアンテナである。
【0010】
この構成によれば、単一の導波管の広壁面の中心軸上の1個のスロットでは、横切る電流は0であるものの、単一の導波管の広壁面の中心軸から外れた残りのスロットでは、横切る電流は有限である。そして、残りのスロットから放射される電界と、残りのスロットと空間結合する1個のスロットから再放射される電界と、が合成される。よって、導波管スロットアンテナの導波方向と垂直面内の指向性が、正面方向に関して非対称性を有し、グレーティングローブ及びヌル点を意図せず生じさせることをなくせる。
【0011】
また、本開示は、単一の前記導波管の広壁面の中心軸に対して一方側に複数の前記スロットが形成されることを特徴とする導波管スロットアンテナである。
【0012】
この構成によれば、単一の導波管の広壁面の中心軸に対して一方側の複数のスロットでは、横切る電流は同方向である。そして、各々のスロットから放射される電界と、各々のスロットと空間結合する他のスロットから再放射される電界と、が合成される。よって、導波管スロットアンテナの導波方向と垂直面内の指向性が、正面方向に関して非対称性を有し、グレーティングローブ及びヌル点を意図せず生じさせることをなくせる。
【0013】
また、本開示は、単一の前記導波管の広壁面の中心軸に対して両方側に複数の前記スロットが形成されることを特徴とする導波管スロットアンテナである。
【0014】
この構成によれば、単一の導波管の広壁面の中心軸に対して両方側の複数のスロットでは、横切る電流は逆方向である。そして、各々のスロットから放射される電界と、各々のスロットと空間結合する他のスロットから再放射される電界と、が合成される。よって、導波管スロットアンテナの導波方向と垂直面内の指向性が、所定方向においてヌル点を意図して生じさせ、グレーティングローブを意図せず生じさせることをなくせる。
【0015】
また、本開示は、単一の前記導波管の導波方向に複数の前記スロットが同一の又は異なる長さを有することを特徴とする導波管スロットアンテナである。
【0016】
この構成によれば、単一の導波管の広壁面上の一のスロットに対する、単一の導波管の広壁面上の他のスロットのコンダクタンス又はサセプタンスが、一の及び他のスロットの長さの差分に応じて調整される。そして、一の及び他のスロットから放射される電界と、一の及び他のスロットと空間結合する他の及び一のスロットから再放射される電界と、が合成される。よって、導波管スロットアンテナの導波方向と垂直面内の指向性が、グレーティングローブ及びヌル点を意図せず生じさせることをなくせる。
【0017】
また、本開示は、単一の前記導波管の導波方向と垂直方向に配列される複数の前記スロットが、単一の前記導波管の導波方向に単一の前記導波管の管内波長と等しい間隔で配列されることを特徴とする導波管スロットアンテナである。
【0018】
この構成によれば、上記の課題を解決するための手段に示した複数のスロットのパターンを、単一の導波管の導波方向に単一の導波管の管内波長と等しい間隔で配列することにより、導波管スロットアンテナから放射される電界の強度を高くすることができる。
【0019】
また、本開示は、単一の前記導波管の導波方向と垂直面内の指向性が正面方向に関して非対称性を有することを特徴とする導波管スロットアンテナである。
【0020】
この構成によれば、上記の課題を解決するための手段に示したように、導波管スロットアンテナの導波方向と垂直面内の指向性が、正面方向に関して非対称性を有し、グレーティングローブ及びヌル点を意図せず生じさせることをなくせる。
【0021】
また、本開示は、単一の前記導波管の導波方向と垂直面内の指向性が所定方向においてヌル点を有することを特徴とする導波管スロットアンテナである。
【0022】
この構成によれば、上記の課題を解決するための手段に示したように、導波管スロットアンテナの導波方向と垂直面内の指向性が、所定方向においてヌル点を意図して生じさせ、グレーティングローブを意図せず生じさせることをなくせる。
【発明の効果】
【0023】
このように、本開示は、導波管スロットアンテナの指向性を制御するにあたり、導波管スロットアンテナの導波方向と垂直面内の指向性が、グレーティングローブ及びヌル点を意図せず生じさせることをなくすとともに、導波管スロットアンテナが、電源の分配器に起因する損失及び周波数特性を生じさせないことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来技術の導波管スロットアンテナを示す図である。
図2】本開示の第1の導波管スロットアンテナを示す図である。
図3】本開示の第2の導波管スロットアンテナを示す図である。
図4】本開示の第3の導波管スロットアンテナを示す図である。
図5】本開示の第4の導波管スロットアンテナを示す図である。
図6】本開示の第5の導波管スロットアンテナを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0026】
本開示の第1の導波管スロットアンテナを図2に示す。導波管スロットアンテナ2は、電源21及び単一の導波管22を備える。ここで、単一の導波管22の導波方向と垂直方向に、2個のスロット23-1、23-2が配列される。そして、単一の導波管22の広壁面の中心軸24上に、1個のスロット23-1が形成される。さらに、単一の導波管22の広壁面の中心軸24に対して一方側に、1個のスロット23-2が形成される。
【0027】
スロット23-2は、単一の導波管22の広壁面の中心軸24から、0.26λ(λは真空中の使用波長)だけ離れた位置に形成される。スロット23-1、23-2は、それぞれ、単一の導波管22の導波方向に、0.49λ、0.49λの長さを有する。つまり、スロット23-1、23-2の間の間隔は、λ程度に広がらずλ/4程度となる。そして、導波管スロットアンテナ2は、電源21の分配器を備えない。
【0028】
すると、スロット23-1では、横切る電流は0であるものの、スロット23-2では、横切る電流Iは有限である。そして、スロット23-2から放射される電界と、スロット23-2と空間結合するスロット23-1から再放射される電界と、が合成される。
【0029】
よって、図2の第2段に示したように、導波管スロットアンテナ2の導波方向と垂直面内のアジマス指向性が、正面方向に関してビームチルトを有し、グレーティングローブ及びヌル点を意図せず生じさせることをなくせる。そして、導波管スロットアンテナ2が、電源21の分配器に起因する損失及び周波数特性を生じさせないことができる。
【0030】
本開示の第2の導波管スロットアンテナを図3に示す。導波管スロットアンテナ3は、不図示の電源及び単一の導波管31を備える。図3の第1段では、図2の第1段と比べて、単一の導波管31、スロット32-1、32-2及び中心軸33は、それぞれ、単一の導波管22、スロット23-1、23-2及び中心軸24に対応する。
【0031】
図3の第2段では、図3の第1段と同様に、単一の導波管31の導波方向と垂直方向に、2個のスロット32-1、32-2が配列される。ただし、単一の導波管31の広壁面の中心軸33に対して一方側に、2個のスロット32-1、32-2が形成される。
【0032】
スロット32-1は、単一の導波管31の広壁面の中心軸33から、0.05λ(λは真空中の使用波長)だけ離れた位置に形成される。スロット32-2は、単一の導波管31の広壁面の中心軸33から、0.26λだけ離れた位置に形成される。スロット32-1、32-2は、それぞれ、単一の導波管31の導波方向に、0.49λ、0.49λの長さを有する。つまり、スロット32-1、32-2の間の間隔は、λ程度に広がらずλ/4程度となる。そして、導波管スロットアンテナ3は、電源の分配器を備えない。
【0033】
すると、スロット32-1、32-2では、横切る電流I、Iは同方向である。そして、スロット32-1、32-2から放射される電界と、スロット32-1、32-2と空間結合するスロット32-2、32-1から再放射される電界と、が合成される。
【0034】
よって、図3の第4段に示したように、導波管スロットアンテナ3の導波方向と垂直面内のアジマス指向性が、正面方向に関してビームチルトを有し、グレーティングローブ及びヌル点を意図せず生じさせることをなくせる。そして、導波管スロットアンテナ3が、電源の分配器に起因する損失及び周波数特性を生じさせないことができる。
【0035】
図3の第3段では、図3の第1段と同様に、単一の導波管31の導波方向と垂直方向に、2個のスロット32-1、32-2が配列される。ただし、単一の導波管31の広壁面の中心軸33に対して両方側に、2個のスロット32-1、32-2が形成される。
【0036】
スロット32-1は、単一の導波管31の広壁面の中心軸33から、0.05λ(λは真空中の使用波長)だけ離れた位置に形成される。スロット32-2は、単一の導波管31の広壁面の中心軸33から、0.26λだけ離れた位置に形成される。スロット32-1、32-2は、それぞれ、単一の導波管31の導波方向に、0.49λ、0.49λの長さを有する。つまり、スロット32-1、32-2の間の間隔は、λ程度に広がらずλ/4程度となる。そして、導波管スロットアンテナ3は、電源の分配器を備えない。
【0037】
すると、スロット32-1、32-2では、横切る電流I、Iは逆方向である。そして、スロット32-1、32-2から放射される電界と、スロット32-1、32-2と空間結合するスロット32-2、32-1から再放射される電界と、が合成される。
【0038】
よって、図3の第4段に示したように、導波管スロットアンテナ3の導波方向と垂直面内のアジマス指向性が、所定方向においてヌル点を意図して生じさせ、グレーティングローブを意図せず生じさせることをなくせる。そして、導波管スロットアンテナ3が、電源の分配器に起因する損失及び周波数特性を生じさせないことができる。
【0039】
本開示の第3の導波管スロットアンテナを図4に示す。導波管スロットアンテナ4は、不図示の電源及び単一の導波管41を備える。図4の第1段では、図2の第1段と比べて、単一の導波管41、スロット42-1、42-2及び中心軸43は、それぞれ、単一の導波管22、スロット23-1、23-2及び中心軸24に対応する。
【0040】
図4の第2段では、図4の第1段と同様に、単一の導波管41の導波方向と垂直方向に、2個のスロット42-1、42-2が配列される。そして、単一の導波管41の広壁面の中心軸43上に、1個のスロット42-1が形成される。さらに、単一の導波管41の広壁面の中心軸43に対して一方側に、1個のスロット42-2が形成される。
【0041】
スロット42-2は、単一の導波管41の広壁面の中心軸43から、0.26λ(λは真空中の使用波長)だけ離れた位置に形成される。スロット42-1、42-2は、それぞれ、単一の導波管41の導波方向に、0.51λ、0.49λの長さを有する。つまり、スロット42-1、42-2の間の間隔は、λ程度に広がらずλ/4程度となる。そして、導波管スロットアンテナ4は、電源の分配器を備えない。
【0042】
すると、スロット42-1では、横切る電流は0であるものの、スロット42-2では、横切る電流Iは有限である。そして、スロット42-1に対する、スロット42-2のコンダクタンス又はサセプタンスが、スロット42-1、42-2の長さの差分0.02λに応じて調整される。そして、スロット42-2から放射される電界と、スロット42-2と空間結合するスロット42-1から再放射される電界と、が合成される。
【0043】
よって、図4の第4段に示したように、導波管スロットアンテナ4の導波方向と垂直面内のアジマス指向性が、正面方向に関してビームチルトを有するとともに、図4の第1段と比べて、ビームチルトの度合を小さくできる。そして、導波管スロットアンテナ4が、電源の分配器に起因する損失及び周波数特性を生じさせないことができる。
【0044】
図4の第3段では、図4の第2段と同様に、単一の導波管41の導波方向と垂直方向に、2個のスロット42-1、42-2が配列される。そして、単一の導波管41の広壁面の中心軸43上に、1個のスロット42-1が形成される。さらに、単一の導波管41の広壁面の中心軸43に対して一方側に、1個のスロット42-2が形成される。
【0045】
スロット42-2は、単一の導波管41の広壁面の中心軸43から、0.26λ(λは真空中の使用波長)だけ離れた位置に形成される。スロット42-1、42-2は、それぞれ、単一の導波管41の導波方向に、0.54λ、0.49λの長さを有する。つまり、スロット42-1、42-2の間の間隔は、λ程度に広がらずλ/4程度となる。そして、導波管スロットアンテナ4は、電源の分配器を備えない。
【0046】
すると、スロット42-1では、横切る電流は0であるものの、スロット42-2では、横切る電流Iは有限である。そして、スロット42-1に対する、スロット42-2のコンダクタンス又はサセプタンスが、スロット42-1、42-2の長さの差分0.05λに応じて調整される。そして、スロット42-2から放射される電界と、スロット42-2と空間結合するスロット42-1から再放射される電界と、が合成される。
【0047】
よって、図4の第4段に示したように、導波管スロットアンテナ4の導波方向と垂直面内のアジマス指向性が、正面方向に関してビームチルトを有するとともに、図4の第2段と比べて、ビームチルトの度合を小さくできる。そして、導波管スロットアンテナ4が、電源の分配器に起因する損失及び周波数特性を生じさせないことができる。
【0048】
図4の実施形態では、図2の第1段及び図3の第1段に示した導波管スロットアンテナ2、3において、2個のスロットが同一の又は異なる長さを有するようにしている。図4の変形例として、図3の第2、3段に示した導波管スロットアンテナ3において、2個のスロットが同一の又は異なる長さを有するようにしてもよい。
【0049】
本開示の第4の導波管スロットアンテナを図5に示す。導波管スロットアンテナ5は、不図示の電源及び単一の導波管51を備える。単一の導波管51の導波方向と垂直方向に、3個(一般に複数)のスロット52-1、52-2、52-3が配列される。
【0050】
図5の第1段では、単一の導波管51の広壁面の中心軸53上に、1個のスロット52-1が形成される。そして、単一の導波管51の広壁面の中心軸53に対して一方側に、2個のスロット52-2、52-3が形成される。すると、スロット52-1では、横切る電流は0であるものの、スロット52-2、52-3では、横切る電流I、Iは同方向である。そして、スロット52-2、52-3から放射される電界と、スロット52-2、52-3と空間結合するスロットから再放射される電界と、が合成される。
【0051】
図5の第2段では、単一の導波管51の広壁面の中心軸53上に、1個のスロット52-2が形成される。そして、単一の導波管51の広壁面の中心軸53に対して両方側に、2個のスロット52-1、52-3が形成される。すると、スロット52-2では、横切る電流は0であるものの、スロット52-1、52-3では、横切る電流I、Iは逆方向である。そして、スロット52-1、52-3から放射される電界と、スロット52-1、52-3と空間結合するスロットから再放射される電界と、が合成される。
【0052】
図5の第3段では、単一の導波管51の広壁面の中心軸53に対して一方側に、3個のスロット52-1、52-2、52-3が形成される。すると、スロット52-1、52-2、52-3では、横切る電流I、I、Iは全て同方向である。そして、スロット52-1、52-2、52-3から放射される電界と、スロット52-1、52-2、52-3と空間結合するスロットから再放射される電界と、が合成される。
【0053】
図5の第4段では、単一の導波管51の広壁面の中心軸53に対して両方側に、3個のスロット52-1、52-2、52-3が形成される。すると、スロット52-1、52-2、52-3では、横切る電流I、I、Iは一部逆方向である。そして、スロット52-1、52-2、52-3から放射される電界と、スロット52-1、52-2、52-3と空間結合するスロットから再放射される電界と、が合成される。
【0054】
このように、導波管スロットアンテナ5の導波方向と垂直面内の指向性が、グレーティングローブ及びヌル点を意図せず生じさせることをなくすとともに、導波管スロットアンテナ5が、電源の分配器に起因する損失及び周波数特性を生じさせないことができる。
【0055】
図5の変形例として、図5の第1~4段に示した導波管スロットアンテナ5において、3個(一般に複数)のスロットが同一の又は異なる長さを有するようにしてもよい。
【0056】
本開示の第5の導波管スロットアンテナを図6に示す。導波管スロットアンテナ6は、不図示の電源及び単一の導波管61を備え、単一の導波管61の導波方向と垂直方向のみならず、単一の導波管61の導波方向においても、複数のスロットを配列される。
【0057】
まず、単一の導波管61の広壁面の中心軸63上に、1個のスロット62-1が形成される。そして、単一の導波管61の広壁面の中心軸63に対して一方側(図6では、右方側)に、1個のスロット62-2が形成される。さらに、単一の導波管61の導波方向と垂直方向に配列される2個のスロット62-1、62-2の組み合わせが、単一の導波管61の導波方向に単一の導波管61の管内波長λと等しい間隔で配列される。
【0058】
一方、単一の導波管61の広壁面の中心軸63上に、1個のスロット62-4が形成される。そして、単一の導波管61の広壁面の中心軸63に対して他方側(図6では、左方側)に、1個のスロット62-3が形成される。さらに、単一の導波管61の導波方向と垂直方向に配列される2個のスロット62-3、62-4の組み合わせが、単一の導波管61の導波方向に単一の導波管61の管内波長λと等しい間隔で配列される。
【0059】
ここで、2個のスロット62-1、62-2の組み合わせと、2個のスロット62-3、62-4の組み合わせとは、単一の導波管61の導波方向に単一の導波管61の管内波長λの半分の間隔で隣接して配列される。すると、スロット62-1、62-4では、横切る電流は0であるものの、スロット62-2、62-3では、横切る電流I、Iは同方向である。そして、スロット62-2、62-3から放射される電界と、スロット62-2、62-3と空間結合するスロットから再放射される電界と、が合成される。
【0060】
このように、複数のスロット(62-1、62-2)、(62-3、62-4)のパターンを、単一の導波管61の導波方向に単一の導波管61の管内波長λと等しい間隔で配列することにより、導波管スロットアンテナ6から放射される電界の強度を高くすることができる。なお、一のスロット(62-1、62-2)のパターンのみを配列してもよい。また、他のスロット(62-3、62-4)のパターンのみを配列してもよい。
【0061】
図6の実施形態では、図2の第1段、図3の第1段及び図4の第1~3段に示した導波管スロットアンテナ2、3、4において、単一の導波管22、31、41の導波方向においても、複数のスロットを配列するようにしている。図6の変形例として、図3の第2、3段及び図5の第1~4段に示した導波管スロットアンテナ3、5において、単一の導波管31、51の導波方向においても、複数のスロットを配列するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示の導波管スロットアンテナは、導波方向と垂直面内の指向性が正面方向に関して非対称性を有するときには、チルト方向に存在する物標を検知するレーダ等に適用することができる。本開示の導波管スロットアンテナは、導波方向と垂直面内の指向性が所定方向においてヌル点を有するときには、振幅モノパルス方式(和差ビームの間の強度差分に基づいて物標を検知するにあたり、正面方向にヌル点を有する差ビームを発生させる。)のレーダや、ヌル点方向に存在する物標を検知しないレーダ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1、2、3、4、5、6:導波管スロットアンテナ
11、21:電源
12-1、12-2、22、31、41、51、61:導波管
13-1、13-2、23-1、23-2、32-1、32-2、42-1、42-2、52-1、52-2、52-3、62-1、62-2、62-3、62-4:スロット
14-1、14-2、24、33、43、53、63:中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6