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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032446
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】繊維処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/328 20060101AFI20220217BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20220217BHJP
   D06M 23/12 20060101ALI20220217BHJP
   D06M 11/155 20060101ALI20220217BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
D06M13/328
D06M15/643
D06M23/12
D06M11/155
D06M13/463
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136230
(22)【出願日】2020-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】榎本 由人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 亮
(72)【発明者】
【氏名】石森 奈奈
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 晋
【テーマコード(参考)】
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4L031AB31
4L031BA13
4L031DA05
4L033AB04
4L033AC09
4L033BA46
4L033BA86
4L033CA59
4L033CA60
4L033CA64
4L033DA02
(57)【要約】
【課題】機能性カプセルの分散安定化と他の機能発現とを両立した繊維処理剤組成物を提供する。
【解決手段】繊維処理剤組成物であって、下記の(A)~(D)成分:
(A)エステル基、エーテル基及びアミド基からなる群より選ばれる1種以上の基により分断されていてもよい炭素数10~24の炭化水素基を分子内に1個以上含有するアミン化合物、その中和物及びその4級化物からなる群から選ばれる1種以上のカチオン界面活性剤、
(B)シリコーン化合物、
(C)水溶性無機塩、及び
(D)機能性カプセルを含み、
(A)成分の含量が、繊維処理剤組成物の総質量に対して6~25質量%であり、
(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)が0.5よりも大きくかつ6未満であり、かつ
(B)成分と(C)成分との質量比(B/C)が25よりも大きいことを特徴とする、繊維処理剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維処理剤組成物であって、下記の(A)~(D)成分:
(A)エステル基、エーテル基及びアミド基からなる群より選ばれる1種以上の基により分断されていてもよい炭素数10~24の炭化水素基を分子内に1個以上含有するアミン化合物、その中和物及びその4級化物からなる群から選ばれる1種以上のカチオン界面活性剤、
(B)シリコーン化合物、
(C)水溶性無機塩、及び
(D)機能性カプセルを含み、
(A)成分の含量が、繊維処理剤組成物の総質量に対して6~25質量%であり、
(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)が0.5よりも大きくかつ6未満であり、かつ
(B)成分と(C)成分との質量比(B/C)が25よりも大きいことを特徴とする、繊維処理剤組成物。
【請求項2】
(B)成分が、2~8のHLBを有する、請求項1に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項3】
(B)成分が、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、又はジメチルシリコーンである、請求項1又は2に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項4】
(B)成分がポリエーテル変性シリコーンである、請求項1又は2に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項5】
(C)成分が、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、又は塩化ナトリウムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項6】
(C)成分が塩化カルシウムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項7】
(A)成分の含量が、繊維処理剤組成物の総質量に対して10~20質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項8】
(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)が2~5である、請求項1~7のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項9】
(B)成分と(C)成分との質量比(B/C)が100~1000である、請求項1~8のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項10】
下記の計算式で算出されるTI値が2.0~5.0である、請求項1~9のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
TI値=(6rpm下での粘度値)/(60rpm下での粘度値)
計算式中の6rpm及び60rpmは、B型粘度計のスピンドル回転速度である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、香りの持続性等の機能を繊維処理剤へ付与するために、機能性物質を内包した機能性カプセルが用いられている。
機能性カプセルを繊維処理剤中で安定に分散させる技術として、カプセルに内包された物質と繊維処理剤の比重調節や、繊維処理剤の増粘等が採用されている。増粘手段として構造粘性付与剤が一般的に用いられており、例えば、モノアルキルカチオン等を特定比率で配合する技術が知られている(特許文献1)。
その他、シリコーン化合物を繊維処理剤へ配合する技術が知られている(特許文献2~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-227515号公報
【特許文献2】特開2017-25422号公報
【特許文献3】特開2003-96674号公報
【特許文献4】国際公開第WO2004/061197号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造粘性付与剤は機能性カプセルを安定に分散させる機能を有するものの、他の機能は発現しないため、繊維処理剤の製造コスト的に不利な場合が多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
機能性カプセルの分散安定化と他の機能発現の両立という課題を鋭意検討した結果、本発明者は、機能性カプセルを含む繊維処理剤組成物においてシリコーン化合物をカチオン界面活性剤及び水溶性無機塩のそれぞれに対して特定量で用いると、機能性カプセルを安定に分散させつつ、更に、処理した繊維製品のしわを防止できることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔10〕に関するものである。
〔1〕繊維処理剤組成物であって、下記の(A)~(D)成分:
(A)エステル基、エーテル基及びアミド基からなる群より選ばれる1種以上の基により分断されていてもよい炭素数10~24の炭化水素基を分子内に1個以上含有するアミン化合物、その中和物及びその4級化物からなる群から選ばれる1種以上のカチオン界面活性剤、
(B)シリコーン化合物、
(C)水溶性無機塩、及び
(D)機能性カプセルを含み、
(A)成分の含量が、繊維処理剤組成物の総質量に対して6~25質量%であり、
(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)が0.5よりも大きくかつ6未満であり、かつ
(B)成分と(C)成分との質量比(B/C)が25よりも大きいことを特徴とする、繊維処理剤組成物。
〔2〕(B)成分が、2~8のHLBを有する、前記〔1〕に記載の繊維処理剤組成物。
〔3〕(B)成分が、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、又はジメチルシリコーンである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の繊維処理剤組成物。
〔4〕(B)成分がポリエーテル変性シリコーンである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の繊維処理剤組成物。
〔5〕(C)成分が、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、又は塩化ナトリウムである、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
〔6〕(C)成分が塩化カルシウムである、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
〔7〕(A)成分の含量が、繊維処理剤組成物の総質量に対して10~20質量%である、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
〔8〕(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)が2~5である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
〔9〕(B)成分と(C)成分との質量比(B/C)が100~1000である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
〔10〕下記の計算式で算出されるTI値が2.0~5.0である、前記〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
TI値=(6rpm下での粘度値)/(60rpm下での粘度値)
計算式中の6rpm及び60rpmは、B型粘度計のスピンドル回転速度である。
【発明の効果】
【0007】
後記の実施例で示されるように、本発明にしたがうと、構造粘性付与剤を用いることなく機能性カプセルを安定に分散させ、更に繊維製品のしわを防止できる。したがって、本発明は、従来製品にはない付加価値を有しかつ経済性に優れた繊維処理剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔(A)成分:カチオン界面活性剤〕
(A)成分は「エステル基、エーテル基及びアミド基からなる群より選ばれる1種以上の基により分断されていてもよい炭素数10~24の炭化水素基を分子内に1個以上含有するアミン化合物、その中和物及びその4級化物からなる群から選ばれる1種以上のカチオン界面活性剤」である。
(A)成分は、主に、(B)成分と一緒になって、繊維処理剤組成物に柔軟性付与機能を与えるために配合する。
(A)成分は、炭素数10~24の炭化水素基を分子内に1個以上含有するアミン化合物、その中和物及びその4級化物からなる群より選ばれ、かつ、カチオン界面活性剤として機能するものである。
アミン化合物中、炭化水素基は窒素原子に結合しており、窒素原子へ結合している炭化水素基の数は1~3である。
炭化水素基の炭素数は10~24、好ましくは12~22、特に好ましくは14~18である。
炭化水素基は、エステル基、エーテル基及びアミド基からなる群より選ばれる1種以上の基により分断されていてもよい。分断基としてはエステル基が特に好ましい。分断基の数は炭化水素基1つにつき1つである。分断基が有する炭素原子は、炭化水素基の炭素数にカウントするものとする。
【0009】
中和物とは、前記のアミン化合物を酸で中和して得られる化合物である。中和に用いる酸としては、塩酸、硫酸、メチル硫酸やパラトルエンスルホン酸等が挙げられる。中和物はアミン塩の形であることが好ましい。
中和物の製造は、予め酸で中和したアミン化合物を水で分散させる、液状若しくは固体状のアミン化合物の酸水溶液中への投入、又は、アミン化合物と酸との水中への同時投入等により実施できる。
【0010】
4級化物とは、前記のアミン化合物のうち、窒素原子へ結合している炭化水素基の数が3であるもの(3級アミン)を4級化剤で処理することで得られる化合物である。4級化剤としては、塩化メチルやジメチル硫酸等が挙げられる。
【0011】
(A)成分の例としては、一般式(A-I)~(A-VII)で表されるアミン化合物、その中和物又はその4級化物が挙げられる。
【0012】
【0013】
(A-I)~(A-VII)の各式中、R1は同一又は異なっていてもよい炭素数15~17の炭化水素基(換言すれば、炭素数16~18の脂肪酸からカルボキシル基を除くことで誘導される残基)である。炭化水素基はアルキル基でもよく、アルケニル基であってもよい。R1を誘導するための脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、直鎖脂肪酸や分岐脂肪酸が挙げられる。飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸の質量比は、好ましくは95/5~50/50である。不飽和脂肪酸にはシス体とトランス体が存在するが、その質量比(シス体/トランス体)は、好ましくは25/75~100/0であり、より好ましくは40/60~80/20である。
1を誘導するための好ましい脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リノレン酸、アラキジン酸、ガトレイン酸、エイコセン酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10~60)や、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10~60)等が挙げられる。より好ましくは、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸及びリノレン酸の混合物であって、飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸の質量比が95/5~50/50、シス体/トランス体の質量比が40/60~80/20、ヨウ素価が10~50、炭素数18の脂肪酸含量が混合物総質量に対して80質量%以上、かつ、リノール酸及びリノレン酸の合計量が混合物総質量に対して2質量%以下である混合物である。
【0014】
一般式(A-I)で表される化合物と一般式(A-II)で表される化合物とを含む組成物は、前記の脂肪酸混合物(又はそのメチルエステル化物)と、メチルジエタノールアミンとを縮合反応させて合成できる。その際、機能性カプセルの分散安定性をより良好にするために、両化合物の質量比(A-II/A-I)が99/1~50/50となる様に合成することが好ましい。
【0015】
一般式(A-I)で表される化合物の4級化物と一般式(A-II)で表される化合物の4級化物とを含む組成物の合成では、4級化剤として塩化メチルやジメチル硫酸を使用できるが、分子量が小さく4級化に必要な量が少ない塩化メチルが好ましい。その際、機能性カプセルの分散安定性をより良好にするために、両4級化物の質量比(A-IIの4級化物/A-Iの4級化物)が99/1~50/50となる様に合成することが好ましい。
4級化反応では、未反応物(すなわち、A-Iの化合物とA-IIの化合物)が残留する。その際、4級化物に含まれるエステル基の加水分解に対する安定性の観点から、4級化物(A-Iの4級化物+A-IIの4級化物)と未反応物(A-Iの化合物+A-IIの化合物)の質量比(4級化物/未反応物)が99/1~70/30となる様に合成することが好ましい。
【0016】
一般式(A-III)で表される化合物と、一般式(A-IV)で表される化合物と、一般式(A-V)で表される化合物とを含む組成物は、前記脂肪酸組成物(又はそのメチルエステル化物)と、トリエタノールアミンとを縮合反応させて合成できる。その際、機能性カプセルの分散安定性をより良好にするために、各化合物の質量比((A-IV+A-V)/A-III)が99/1~50/50となる様に合成することが好ましい。
【0017】
一般式(A-III)で表される化合物の4級化物と一般式(A-IV)で表される化合物の4級化物と一般式(A-V)で表される化合物の4級化物とを含む組成物の合成では、4級化剤として塩化メチルやジメチル硫酸等を使用できるが、4級化反応の反応性の観点からジメチル硫酸が好ましい。その際、機能性カプセルの分散安定性をより良好にするために、各4級化物の質量比((A-IV+A-V)/A-III)が99/1~50/50となる様に合成することが好ましい。
4級化反応では、未反応物(すなわち、A-IIIの化合物と、A-IVの化合物と、A-Vの化合物)が残留する。その際、4級化物に含まれるエステル基の加水分解に対する安定性の観点から、4級化物(A-IIIの4級化物+A-IVの4級化物+A-Vの4級化物)と未反応物(A-IIIの化合物+A-IVの化合物+A-Vの化合物)の質量比(4級化物/未反応物)が99/1~70/30となる様に合成することが好ましい。
【0018】
一般式(A-VI)で表される化合物と一般式(A-VII)で表される化合物とを含む組成物は、前記脂肪酸組成物とN-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチル-1,3-プロピレンジアミン(J. Org. Chem., 26, 3409(1960)に記載の方法にしたがいN-メチルエタノールアミンとアクリロニトリルの付加物とから合成)とを縮合反応させて合成できる。柔軟性付与効果を良好にするために、両化合物の質量比(A-VII/A-VI)が99/1~50/50となる様に合成することが好ましい。
【0019】
一般式(A-VI)で表される化合物の4級化物と一般式(A-VII)で表される化合物の4級化物とを含む組成物の合成では、4級化剤として塩化メチルを使用できる。その際、柔軟性付与効果を良好にするために、両4級化物の質量比(A-VIIの4級化物/A-VIの4級化物)が99/1~50/50となる様に合成することが好ましい。
4級化反応では、未反応物(すなわち、A-VIの化合物とA-VIIの化合物)が残留する。その際、4級化物に含まれるエステル基の加水分解に対する安定性の観点から、4級化物(A-VIの4級化物+A-VIIの4級化物)と未反応物(A-VIの化合物+A-VIIの化合物)の質量比(4級化物/未反応物)が99/1~70/30となる様に合成することが好ましい。
【0020】
前記の組成物のなかでは、一般式(A-III)で表される化合物の4級化物と、一般式(A-IV)で表される化合物の4級化物と、一般式(A-V)で表される化合物の4級化物とを含む組成物がより好ましい。
この場合、柔軟剤としての機能をより高める観点から、各4級化物の含量は、組成物の総質量に対して、(A-III)の4級化物が5~98質量%、(A-IV)の4級化物が1~60質量%、(A-V)の4級化物が0.1~40質量%であることが好ましい。より好ましくは、組成物の総質量に対して、(A-III)の4級化物が10~55質量%、(A-IV)の4級化物が30~60質量%、(A-V)の4級化物が5~35質量%である。
【0021】
(A)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
【0022】
(A)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。2種類以上の(A)成分を含む混合物を用いる場合、窒素原子に結合した炭化水素基の数が2又は3であるアミン化合物の含量が、混合物の総質量に対して50質量%以上であると、柔軟剤としての機能をより高めることができるので好ましい。
【0023】
(A)成分の含量は、繊維処理剤組成物の総質量に対して6~25質量%、好ましくは10~20質量%である。(A)成分の含量が6質量%以上であると、繊維製品に対するより優れた柔軟効果を発揮し得る。(A)成分の含量が25質量%以下であると、繊維処理剤組成物の粘度を使用性の観点でより適切なものとすることができる。
【0024】
〔(B)成分:シリコーン化合物〕
(B)成分は、機能性カプセルを繊維処理剤組成物中で安定に分散させ、かつ、しわ防止機能を繊維処理剤組成物へ付与するために配合する。
シリコーン化合物は、直鎖構造、分岐構造、又は架橋構造のいずれであってもよい。
シリコーン化合物は、1種以上の有機官能基等で変性された変性シリコーン化合物であってもよい。また、シリコーン化合物はオイルでもよく、エマルジョンであってもよい。
シリコーン化合物のHLBは、好ましくは2~8、より好ましくは2~7、更に好ましくは3~7である。
シリコーン化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000~200,000、より好ましくは5,000~100,000、更に好ましくは10,000~5,0000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーション法に従って測定できる。
【0025】
シリコーン化合物の例としては、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーンや、カルビノール変性シリコーン等が挙げられる。
(B)成分としては、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン及びジメチルシリコーンが好ましく、ポリエーテル変性シリコーンがより好ましい。
【0026】
ポリエーテル変性シリコーンの例としては、アルキルシロキサンとポリオキシアルキレンとの共重合体等が挙げられる。アルキルシロキサンのアルキル基の炭素数は1~3が好ましい。ポリオキシアルキレンのアルキレン基の炭素数は2~5が好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンは市販品を使用できる。市販品としては、ダウ・東レ社製のDOWSIL CF 1188 Nや、DOWSIL FZ―2191、L―7002及びSH8700等が挙げられる。
【0027】
アミノ変性シリコーンは、ジメチルシリコーン骨格の末端又は側鎖にアミノ基が導入された化合物である。アミノ基以外に、水酸基、アルキル基やフェニル基等の置換基(例えば、アミノプロピル基)が導入されていてもよい。
アミノ変性シリコーンはオイルでもよく、乳化剤(ノニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤等)で乳化させたエマルジョンでもよい。オイルの場合、25℃における動粘度は、繊維処理剤組成物の扱いやすさの観点から好ましくは50~20000mm2/sであり、より好ましくは100~10000mm2/sである。動粘度は、オストワルド型粘度計で測定できる。
【0028】
ジメチルシリコーンはオイルでもよく、乳化剤エマルジョンでもよい。
ジメチルシリコーンは市販品を使用できる。市販品としては、ダウ・東レ株式会社製のDOWSIL SH200 Fluid 100,000 cStや、信越化学工業株式会社製のx-52-2127等が挙げられる。
【0029】
(B)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(B)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0030】
(B)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.5~12質量%、より好ましくは1~10質量%、更に好ましくは2~8質量%である。含量が12質量%以下であると、優れた使用性をもたらす粘度を維持しつつ、配合目的を達成できる。
【0031】
〔(C)成分:水溶性無機塩〕
(C)成分は、繊維処理剤組成物の粘度をコントロールして、機能性カプセルを安定に分散させるために配合する。
水溶性無機塩の例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウムや、塩化ナトリウム等が挙げられ、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムが好ましい。
【0032】
(C)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(C)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0033】
(C)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.002~0.5質量%、より好ましくは0.005~0.2質量%、更に好ましくは0.005~0.1質量%である。
【0034】
〔(D)成分:機能性カプセル〕
機能性カプセルは、カプセル内に内包された芯物質に起因する様々な機能を繊維処理剤組成物へ付与するために配合する。機能性カプセルは、芯物質と当該芯物質を覆う壁物質とから構成される。
【0035】
芯物質としては、繊維処理剤分野でカプセル封入物質として一般的に用いられているものを特に制限なく使用できる。具体例としては、香料、精油、増白剤、虫除け剤、シリコーン、ワックス、香味料、ビタミン、スキンケア剤、酵素、プロバイオティクス、染料、顔料、香料前駆体、冷感剤、温感剤、フェロモン等の誘引剤、抗菌剤、漂白剤、香味料、甘味料、ワックス、薬剤、肥料や、除草剤等が挙げられる。
芯物質は、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0036】
芯物質である香料組成物としては、繊維処理剤分野で公知のものを特に制限なく使用できる。具体例としては、衣類用の柔軟剤や洗剤等で一般的に使用されているエッセンシャルオイル、アブソリュートや合成香水成分(炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、アセタール類、ケタール類及びニトリル類等)等が挙げられる。
香料組成物に含まれる香料は単一種類でもよく、複数種類でもよい。
香料組成物に配合する好ましい香料の例は特開2010-520928号公報に記載されており、例えば、Agrumex、Aldron、Ambrettolide、Ambroxan、ケイ皮酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、Boisambrene、セドロール、酢酸セドリル、Celestolide/Crysolide、Cetalox、シトロネリルエトキサレート、Fixal、Fixolide、Galaxolide、Guaiacwood Acetate、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、ヘキシルケイ皮アルデヒド、サリチル酸ヘキシル、IsoE Super、安息香酸リナリル、ケイ皮酸リナリル、フェニル酢酸リナリル、Javanol、メチルセドリルケトン、Moskene、Musk、Musk Ketone、Musk Tibetine、MuskXylol、Myraldyl Acetate、酢酸ネロリジル、Novalide、Okoumal、カプリル酸パラクレシル、フェニル酢酸パラクレシル、Phantolid、ケイ皮酸フェニルエチル、サリチル酸フェニルエチル、Rose Crystals、Rosone、Sandela、テトラデカニトリル、Thibetolide、Traseolide、Trimofix O、2-メチルピラジン、アセトアルデヒドフェニルエチルプロピルアセタール、アセトフェノン、アルコールC6(以下において、表記法Cnは、n個の炭素原子及び1つのヒドロキシル官能基を有するすべての物質を含む)、アルコールC8、アルデヒドC6(以下において、表記法Cnは、n個の炭素原子及び1つのアルデヒド官能基を有するすべての異性体を包含する)、アルデヒドC7、アルデヒドC8、アルデヒドC9、ノネニルアルデヒド(nonenylic aldehyde)、グリコール酸アリルアミル、カプロン酸アリル、酪酸アミル、アルデヒドアニシック(anisique)、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアセトン、ベンジルアルコール、酪酸ベンジル、ギ酸ベンジル、イソ吉草酸ベンジル、ベンジルメチルエーテル、プロピオン酸ベンジル、Bergamyl Acetate、酢酸ブチル、樟脳、3-メチル-5-プロピル-2-シクロヘキセノン、ケイ皮アルデヒド、シス-3-ヘキセノール、酢酸シス-3-ヘキセニル、ギ酸シス-3-ヘキセニル、イソ酪酸シス-3-ヘキセニル、プロピオン酸シス-3-ヘキセニル、チグリン酸シス-3-ヘキセニル、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルニトリル、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、クミンアルデヒド、シクラールC、酢酸(シクロヘキシルオキシ)-2-プロペニルエステル、ダマセノン、アルファ-ダマスコン、ベータ-ダマスコン、ギ酸デカヒドロベータ-ナフチル、マロン酸ジエチル、ジヒドロジャスモン、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、ジヒドロテルピネオール、アントラニル酸ジメチル、ジメチルベンジルカルビノール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、ジメチルオクテノン、ジメトール(Dimetol)、ジミルセトール、エストラゴール、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、安息香酸エチル、ヘプタン酸エチル、エチルリナロール、サリチル酸エチル、酪酸エチル2-メチル、オイカリプトール、オイゲノール、酢酸フェンキル、フェンキルアルコール、4-フェニル-2,4,6-トリメチル1,3-ジオキサン、2-オクチン酸メチル、4-イソプロピルシクロヘキサノール、2-sec-ブチルシクロヘキサノン、酢酸スチルアリル、ゲラニルニトリル、酢酸ヘキシル、アルファ-イオノン、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、イソ-シクロシトラール、ジヒドロイソジャスモン、イソ-メントン、イソ-ペンチレート、イソ- プレゴール、シスジャスモン、左旋性カルボン、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、カルビン(carbinic)酸3-ヘキセニルメチルエーテル、1-メチル-シクロヘキサ-1,3-ジエン、リナロール、リナロールオキシド、ペンタン酸2-エチルエチルエステル、2,6-ジメチル-5-ヘプテナール、メントール、メントン、メチルアセトフェノン、メチルアミルケトン、安息香酸メチル、アルファ-メチルケイ皮アルデヒド、メチルヘプテノン、メチルヘキシルケトン、メチルパラクレゾール、酢酸メチルフェニル、サリチル酸メチル、ネラール、ネロール、4-tert-ペンチル-シクロヘキサノン、パラ-クレゾール、酢酸パラ-クレシル、パラ-t-ブチルシクロヘキサノン、パラ-トルイルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、酢酸フェニルエチル、フェニルエチルアルコール、酪酸フェニルエチル、ギ酸フェニルエチル、イソ酪酸フェニルエチル、プロピオン酸フェニルエチル、酢酸フェニルプロピル、フェニルプロピルアルデヒド、テトラヒドロ-2,4-ジメチル-4-ペンチル-フラン、4-メチル-2-(2-メチル-1-プロペニル)テトラヒドロピラン、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、プロピオン酸スチルアリル、スチレン、4-メチルフェニルアセトアルデヒド、テルピネオール、テルピノレン、テトラヒドロ-リナロール、テトラヒドロ-ミルセノール、トランス-2-ヘキセナール、酢酸ベルジルやViridine等が挙げられる。
【0037】
壁物質としては、繊維処理剤分野でカプセル化材料として用いられているものを特に制限なく使用できる。具体例としては、天然系高分子(ゼラチンや寒天等)、油性膜形成物質(油脂やワックス等)や、合成高分子物質(ポリアクリル酸系、ポリビニル系、ポリメタクリル酸系、メラミン系、ウレタン系等)等が挙げられる。
壁物質は、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0038】
香料を芯物質とするカプセル化香料の壁物質は、カプセル破壊時の発香性の観点から、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂或いは尿素-ホルムアルデヒド樹脂からなるアミノプラストポリマーや、ポリアクリル酸系或いはポリメタクリル酸系のポリマーが好ましい。特開2010-520928号公報に記載されているアミノプラストポリマーが特に好ましい。具体的には、ポリアミン由来の部分/芳香族ポリフェノール由来の部分/メチレン単位、ジメトキシメチレン及びジメトキシメチレンを有するアルキレンおよびアルキレンオキシ部分からなるターポリマーが好ましい。
【0039】
カプセル化香料の例としては、フィルメニッヒ社製のBLUEFLOWERPOP「FFMHN2814」;ジボダン(GIVAUDAN)社製のGREEN BREEZE CAPS、ORCHARD GARDEN CAPS、RAINBOW CAPS、VELVET CAPS、AURORACAPS及びCOSMICCAPSや;IFF社製のUNICAP101及びUNICAP503等が挙げられる。
冷感剤を芯物質とする冷感カプセルの例としては、SALVONA Technologies社製のMultiSal SalCool、HydroSal FreshCool、SalSphere SalCoolや、日華化学株式会社製のネオアージュAROMA-C等が挙げられる。
温感剤を芯物質とする温感カプセルの例としては、三木理研株式会社製のリケンレジンRMC-TOや、SALVONA Technologies社製のHydrosal Heat等が挙げられる。
他の例としては、三木理研株式会社製のリケンレジンNFHO-W(抗菌効果)や、リケンレジンRMC-HBP(防虫効果)及びRMC-PT(防虫効果)等が挙げられる。
【0040】
機能性カプセルの平均粒子径は10~30μmであることが好ましい。前記粒子径を有する機能性カプセルは衣類への吸着性に優れ、かつ繊維処理剤組成物中に安定に分散することができる。
【0041】
(D)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(D)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
(D)成分の含量は配合目的を達成できる限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.0001~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0042】
〔(A)~(C)成分の配合比率〕
(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)は、0.5よりも大きくかつ6未満、好ましくは2~5、より好ましくは3~5である。前記の質量比範囲であると、機能性カプセルを安定に分散させつつ、繊維製品へしわ防止性を付与できる。
(B)成分と(C)成分との質量比(B/C)は、25よりも大きい、好ましくは100~1000、より好ましくは200~800である。前記の質量比範囲であると、機能性カプセルを安定に分散させることができる。
【0043】
〔任意成分〕
本発明の効果を損なわない範囲で、(A)~(D)の必須成分以外の任意成分を繊維処理剤組成物へ配合してもよい。
【0044】
〔(E)成分:水溶性の非イオン性高分子〕
(E)成分は構造粘性付与剤である。本発明の繊維処理剤組成物では、機能性カプセルの分散性をより向上させるために、水溶性の非イオン性高分子を配合してもよい。
「水溶性」とは、対象非イオン性高分子1gを水1000g(25℃)へ添加し攪拌して25℃下で24時間静置したときに、外観上沈殿や層分離等がみられない溶液を形成する性質をいう。
(E)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。(E)成分の例としては、高分子デキストリン(三和澱粉工業株式会社 商品名:サンデック#30)、環状構造保有分岐状グルカン(特開2012-120471に記載)や、高度分岐環状デキストリン(グリコ栄養食品株式会社製 商品名:クラスターデキストリン))等が挙げられる。
(E)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
(E)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.05~3質量%、さらに好ましくは0.2~2質量%である。(E)成分の含量が5質量%以下であると、繊維処理剤組成物の使用性を良好に維持しつつ、配合効果が得られる。
【0045】
〔(F)成分:ノニオン界面活性剤〕
(F)成分は、繊維処理剤組成物の安定性(特に凍結復元性)を向上するために配合する。
ノニオン界面活性剤としては、繊維処理剤分野で公知の成分を特に制限なく使用できる。例としては、多価アルコール、高級アルコール、高級アミン又は高級脂肪酸から誘導されるものを使用できる。より具体的には、グリセリン又はペンタエリスリトールに炭素数10~22の脂肪酸がエステル結合してなるグリセリン脂肪酸エステルまたはペンタエリスリトール;炭素数10~22のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(該アルキルの炭素数1~3)エステル;EOの平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン;炭素数8~18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド;EOの平均付加モル数が10~100モルである硬化ヒマシ油等が挙げられる。なかでも、炭素数10~18のアルキル基を有し、EOの平均付加モル数が20~80モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0046】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、一級イソトリデシルアルコール(炭素数13)にエチレンオキシド(EO)を平均60モル付加したもの、一級イソトリデシルアルコールにエチレンオキシド(EO)を平均40モル付加したものや、アルキル基の炭素数が12~14の直鎖型第2級アルコールにEOを平均50モル付加したもの等が挙げられる。
【0047】
(F)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。市販品としては、ライオンケミカル(株)より販売されている、商品名:TA600-75(1級イソトリデシルアルコール(炭素数13)のEO60モル付加物)や、商品名:レオコールTDA-400-75(1級イソトリデシルアルコールのEO40モル付加物)等が挙げられる。
(F)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
(F)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.2~10.0質量%、より好ましくは1.0~7.0質量%、さらに好ましくは1.5~4.0質量%である。
【0048】
〔(G)成分:香料〕
(G)成分は、繊維処理剤組成物自体の香りつけや、同組成物による処理後の繊維製品への香りつけのために配合する。
(G)成分は、カプセル化香料((D)成分:機能性カプセル)に芯物質として含まれる香料とは別の、カプセルに内包されていない香料である。
(G)成分としては、繊維処理剤組成物へ配合できることが知られているものを特に制限なく使用できる。使用できる香料のリストは、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.Iand II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)および「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin 」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)および「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載されている。
【0049】
下記の香料成分(G-1)、(G-2)、(G-3)及び(G-4)は、本発明の繊維処理剤組成物で処理した繊維製品の乾燥後の残香感を高めることができるので好ましい。

(G-1):アンブロキサン、ボアザンブレンフォルテ、アンバーコア、カラナール及びアンブリノールからなる群から選択される少なくとも1種の香料成分
(G-2):パチョリオイル、ジャバノール、ポリサントール及びイソボルニルシクロヘキサノールからなる群から選択される少なくとも1種の香料成分
(G-3):イソイースーパー及びベルトフィックスからなる群から選択される少なくとも1種の香料成分
(G-4):クマリン、9-デセノール及びダマスコン類(例えば、α-ダマスコン、β-ダマスコン及びδ-ダマスコン)からなる群から選択される少なくとも1種の香料成分

(G-1)~(G-4)は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。(G-1)~(G-4)はカプセル化香料の芯物質として使用してもよい。
【0050】
その他の(G)成分としては、以下のものが挙げられる。
炭化水素系の香料成分として、例えばリモネン、α-ピネン、β-ピネン、ターピノレン等が挙げられる。
アルコール系の香料成分として、例えばリナロール、ゲラニオール、シトロネロール、ジヒドロミルセノール、ターピネオール、l-メントール、ボルネオール、フェニルエチルアルコール、チモール、オイゲノール等が挙げられる。
エーテル系の香料成分として、例えば1,8-シネオール、ローズオキサイド、アネトール、エストラゴール等が挙げられる。
アルデヒド系の香料成分として、例えばウンデシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、リラール、デュピカール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、シクラメンアルデヒド、リリアール、ヘリオトロピン、ヘリオナール、バニリン等が挙げられる。
ケトン系の香料成分として、例えばα-イオノン、β-イオノン、α-イソメチルイオノン、ダイナスコン、マルトール、ジヒドロジャスモン、シスジャスモン、ラズベリーケトン等が挙げられる。
エステル系の香料成分として、例えば酢酸シス-3-ヘキセニル、酢酸リナリル、酢酸p-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸トリシクロデセニル、酢酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、2-メチル酢酸エチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、メチルフェニルグリシド酸エチル、フルテート等が挙げられる。
ラクトン系の香料成分として、例えばγ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン等が挙げられる。
ムスク系の香料成分としては、例えばガラクソリド(Galaxolide)、シクロペンタデカノリド、エチレンブラシレート、6-アセチルヘキサテトラリン、ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン等が挙げられる。
【0051】
(G)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(G)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用(香料組成物)してもよい。
香料組成物には、繊維処理剤組成物に一般的に使用される溶剤を配合してもよい。香料用溶剤としては、ジプロピレングリコール(DPG)やイソプロピルミリステレート(IPM)等が挙げられる。
【0052】
(G)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1~5.0質量%、より好ましくは0.5~1.0質量%である。
【0053】
(G)成分である香料組成物には香料用酸化防止剤を配合してもよい。香料用酸化防止剤としては、繊維処理剤分野で一般的に用いられているものを特に制限なく使用できる。具体例としては、2,6-ジ-t-ジブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、t-ブチル-p-ヒドロキシアニソール(BHA)、p-メトキシフェノール、β-ナフトール、フェニル-α-ナフチルアミン、テトラメチルジアミノジフェニルメタン、γ-オリザノール、ビタミンE(α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)・1/3クエン酸塩、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、クェルセチンや、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等が挙げられる。好ましくは2,6-ジ-t-ジブチル-4-ヒドロキシトルエンである。
酸化防止剤の含量は、(G)香料組成物の総質量に対して、例えば0.001~10質量%、好ましくは0.01~5質量%である。
【0054】
〔(H)成分:防腐剤〕
(H)成分は、繊維処理剤組成物の防腐力や殺菌力を強化し、長期保存中の防腐性を保つために配合する。
(H)成分としては、繊維処理剤分野で公知の成分を特に制限なく使用できる。具体例としては、イソチアゾロン系の有機硫黄化合物、ベンズイソチアゾロン系の有機硫黄化合物、安息香酸類、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
イソチアゾロン系の有機硫黄化合物としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-ブチル-3-イソチアゾロン、2-ベンジル-3-イソチアゾロン、2-フェニル-3-イソチアゾロン、2-メチル-4,5-ジクロロイソチアゾロン、5-クロロ-2-メチル-3-イソチアゾロン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンや、これらの混合物等が挙げられる。なかでも、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンが好ましく、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンとの混合物がより好ましく、前者が約77質量%と後者が約23質量%との混合物やその希釈液(例えば、イソチアゾロン液)が特に好ましい。
ベンズイソチアゾロン系の有機硫黄化合物としては、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン、類縁化合物としてジチオ-2,2-ビス(ベンズメチルアミド)や、これらの混合物等が挙げられる。なかでも、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンが特に好ましい。
安息香酸類としては、安息香酸又はその塩、パラヒドロキシ安息香酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルや、パラオキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0055】
(H)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(H)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用(香料組成物)してもよい。
(H)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.0001~1質量%である。
【0056】
〔その他任意成分〕
前記の(A)~(H)成分以外にも、繊維処理剤組成物の香気や色調の安定性を向上させるための酸化防止剤や還元剤、乳濁剤(ポリスチレンエマルジョンなど)、不透明剤、縮み防止剤、洗濯じわ防止剤、形状保持剤、ドレープ性保持剤、アイロン性向上剤、酸素漂白防止剤、増白剤、白化剤、布地柔軟化クレイ、帯電防止剤、移染防止剤(ポリビニルピロリドンなど)、高分子分散剤、汚れ剥離剤、スカム分散剤、蛍光増白剤(4,4-ビス(2-スルホスチリル)ビフェニルジナトリウム(チバスペシャルティケミカルズ製チノパールCBS-X)など)、染料固定剤、退色防止剤(1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジンなど)、染み抜き剤、繊維表面改質剤(セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼや、ケラチナーゼなどの酵素)、抑泡剤、水分吸放出性など絹の風合い・機能を付与する成分(シルクプロテインパウダー、それらの表面改質物、乳化分散液、具体的にはK-50、K-30、K-10、A-705、S-702、L-710、FPシリーズ(出光石油化学)、加水分解シルク液(上毛)、シルクゲンGソルブルS(一丸ファルコス))や、汚染防止剤(アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンイソフタレート単位とポリオキシアルキレン単位とからなる非イオン性高分子化合物、例えば、互応化学工業製FR627、クラリアントジャパン製SRC-1など)等を適宜配合できる。
【0057】
〔水〕
繊維処理剤組成物は、好ましくは水を含む水性組成物である。
水としては、水道水、イオン交換水、純水や、蒸留水等を使用できる。なかでもイオン交換水が好適である。
水の含量は特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。含量が50質量%以上であると、ハンドリング性がより良好となる。
【0058】
〔繊維処理剤組成物のpH〕
繊維処理剤組成物のpHは特に限定されないが、保存経日に伴う(A)成分の加水分解を抑制する等の観点から、25℃におけるpHを、好ましくは1~6、更に好ましくは2~4の範囲に調整する。
pH調整には、塩酸、硫酸、リン酸、アルキル硫酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、ジメチルアミン等の短鎖アミン化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩や、アルカリ金属珪酸塩等を使用できる。
【0059】
〔繊維処理剤組成物の粘度〕
繊維処理剤組成物の粘度(25℃)は、好ましくは500mPa・s未満、より好ましくは300mPa・s未満である。粘度は、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて測定できる。
【0060】
〔繊維処理剤組成物のTI値〕
繊維処理剤組成物は、下記の計算式で算出され、チキソトロピー性を反映する指標となるTI値が、好ましくは2.0~5.0、より好ましくは2.5~4.0である。計算式中、6rpm及び60rpmは、B型粘度計のスピンドル回転速度である。

TI値=(6rpm下での粘度値)/(60rpm下での粘度値)

せん断速度(スピンドル回転速度)が変わっても粘度の変化がない水のようなニュートン流体の場合、TI値は1となる。1より大きいTI値は、せん断速度が小さい方が、せん断速度が大きい場合に比べ高い粘度を有すること(すなわち、チキソトロピー性を有する)ことを示す。
繊維処理剤組成物のTI値が2.0以上であると、優れたチキソトロピー性が得られ、(D)成分の分散安定性が向上する。TI値が5.0以下であると、優れたチキソトロピー性による(D)成分の分散安定性の向上を保持しつつ、繊維処理剤組成物の計量時に当該組成物をキャップへ取り出しにくい等の不具合を抑制できる。
【0061】
〔繊維処理剤組成物の製造方法〕
繊維処理剤組成物は、公知の方法、例えば主剤としてカチオン界面活性剤を用いる従来の繊維処理剤と同様の方法で製造できる。
例えば、(A)成分及び(B)成分を含む油相と、水相とを、(A)成分の融点以上の温度条件下で混合して乳化物を調製し、得られた乳化物に(C)成分、(D)成分及び必要に応じて他の成分を添加、混合することにより、繊維処理剤組成物を製造できる。
【0062】
〔繊維処理剤組成物の使用方法〕
繊維処理剤組成物を用いた繊維製品の処理方法は特に制限されず、例えば、柔軟剤、芳香剤(繊維製品の香りづけ)や、しわとり剤として使用できる。
柔軟剤として使用する方法としては、洗濯のすすぎの段階ですすぎ水に繊維処理剤組成物を溶解させて処理を行う方法や、たらいのような容器中で繊維処理剤組成物を水に溶解させ、更に繊維製品を入れて浸漬処理する方法が挙げられる。いずれも場合も、適度な濃度に希釈して使用するが、浴比(繊維製品に対する処理液の重量比)は3~100倍、特に5~50倍であることが好ましい。具体的には、全使用水量に対して、(A)成分の濃度が好ましくは0.01ppm~1000ppm、さらに好ましくは0.1ppm~300ppmとなるような量で使用することが好ましい。
芳香剤やしわとり剤として使用する場合、繊維製品への適用方法は特に限定されない。例えば、繊維製品を繊維処理剤組成物中に浸漬した後風乾してもよいし、繊維処理剤組成物をスプレー容器に収納し、繊維製品に対して当該組成物を噴霧した後風乾してもよい。特に、家庭においても手軽に実施できる簡便性や、必要量の繊維処理剤組成物を繊維製品のニオイが気になる部位のみへ適用できるという経済性の点から、繊維処理剤組成物をスプレー容器に収納し、繊維製品に噴霧して使用する方法が好ましい。噴霧量は、繊維製品へ付着したニオイの強度に依存するため特に限定されないが、繊維製品の質量に対して、好ましくは5~80質量%、より好ましくは10~50質量%である。
繊維製品の種類は特に限定されないが、例えば、ワイシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、ブラウス、チノパン、スーツ、スラックス、スカート、ジャケット、コート、ニット、ジーンズ、パジャマ、テーブルクロス、ランチョンマット、カーテン、クッション、座布団、ソファ、枕カバー、シーツ、ベッドパッド、枕、布団、ベッドカバー、毛布、マットレス、靴、トイレマット、バスマット、玄関マット、カーペット、ラグや、絨毯等が挙げられる。
繊維製品の素材も特に限定されないが、例えば、綿、ウール、麻等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、テンセル、ポリノジック等の再生繊維及びこれら各種繊維の混紡品、混織品、混編品等が挙げられる。
【実施例0063】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例において、各成分の配合量はすべて質量%(指定のある場合を除き、純分換算)を示す。
【0064】
〔(A)成分:カチオン界面活性剤〕
下記のA-1~A-4を使用した。

A-1:特開2003-12471号公報の実施例4に記載の手順に従って合成したカチオン界面活性剤。A-1は、一般式(A-III)、(A-IV)及び(A-V)で表される化合物(各式中、R1は炭素数15~17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物であった。なお、R1を誘導する脂肪酸について、飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸の質量比は60/40であり、不飽和部分のシス体/トランス体の質量比は75/25であった。

A-2:カチオン界面活性剤(東南合成(株)製、商品名:HITEX RO16E)。A-2は、一般式(A-III)、(A-IV)及び(A-V)で表される化合物(各式中、R1は炭素数15~17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物であった。

A-3:カチオン界面活性剤(STEPAN社製、商品名:STEPANTEX-SE-88)。A-3は、一般式(A-III)、(A-IV)及び(A-V)で表される化合物(各式中、R1は炭素数15~17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物であった。

A-4:カチオン界面活性剤。A-4は、脂肪酸とメチルジエタノールアミンとのモル比1.5:1での反応生成物を塩化メチルで四級化して得られる、N,N-ビス(ステアロイル-オキシ-エチル)N,N-ジメチルアンモニウムクロライドとN-(ステアロイル-オキシ-エチル)N-ヒドロキシエチルN,Nジメチルアンモニウムクロライドとの1:1モル混合物であり、一般式(A-I)及び(A-II)で表される化合物(各式中、R1は炭素数15~17のアルキル基及びアルケニル基である)を塩化メチルで4級化したものを含む組成物であった。
【0065】
〔(B)成分:シリコーン化合物〕
下記のB-1~B-3を使用した。

B-1:ポリエーテル変性シリコーン(ダウ・東レ株式会社製、商品名:DOWSIL CF 1188 N)。

B-2:アミノ変性シリコーン。B-2は、ジメチルシリコーン骨格の片方の末端にアミノプロピル基が導入されたポリジメチルシロキサンのオイルである。オストワルド型粘度計で測定したB-2の動粘度(25℃)は450mm2/s(450cSt)であった。
B-2は以下の手順で調製した。
反応性シリコーンオイル(Shin-Etsu Silicones of America社製(Akron,OH,USAより入手可能)。商品名:KF-8008。分子量:10,000~12,000)と、ジエチルアミンとを完全に混合した。混合物を、周囲条件下で10分間かけてヘキサメチレンジイソシアネートへ添加し、均質になるまで混合した。均質混合物を120℃で2時間保持して、透明な粘性液体(オイル)を得た。

B-3:ジメチルシリコーン(ダウ・東レ株式会社製、商品名:DOWSIL SH200 Fluid 100,000 cSt)
【0066】
〔(C)成分:水溶性無機塩〕
下記のC-1を使用した。

C-1:塩化カルシウム(商品名:粒状塩化カルシウム、株式会社トクヤマ製)
【0067】
〔(D)成分:機能性カプセル〕
下記のD-1を使用した。

D-1:GREEN BREEZE CAPS(GIVAUDAN社製のカプセル化香料)。
【0068】
〔(E)成分:水溶性の非イオン性高分子〕
下記のE-1を使用した。

E-1:クラスターデキストリン(登録商標)(グリコ栄養食品株式会社製)。E-1は、3万~100万程度の重量平均分子量を有する非イオン性グルカンであり、1つの内分岐環状構造部分(16~100個程度のグルコースで構成)と、内分岐環状構造部分に結合した多数の非環状グルコース鎖(外分岐構造部分)とから構成されていた。E-1の重量平均重合度は2500程度であった。また、1gのE-1を水1000g(25℃)へ添加し攪拌して、25℃下で24時間静置したとき、外観上、沈殿や層分離等はみられなかった。
【0069】
〔(F)成分:ノニオン界面活性剤〕
下記のF-1を使用した。

F-1:ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテルEO60モル(ライオンケミカル社製、商品名:TA600-75)。F-1は、BASF社製ルテンゾールTO3にエチレンオキサイド(EO)を平均60モル付加させたものである。
【0070】
〔(G)成分:香料〕
下記の表に示す組成を有する香料組成物G-1を使用した。表中の含量の値は、香料組成物の総質量に対する含量(質量%)である。

【0071】
〔(H)成分:防腐剤〕
下記のH-1~H-2を使用した。

H-1:1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(商品名:Nipacide BIT20、クラリアントジャパン株式会社製)

H-2:イソチアゾロン液(商品名:ケーソンCG-ICP、ダウケミカルズ社製)
【0072】
〔繊維処理剤組成物の調製方法〕
後記の表1に示す組成を有する繊維処理剤組成物を調製した。表1中、各成分の数値の単位は、繊維処理剤組成物の総質量に対する質量%である。
表1中の「A/B」は、(A)成分と(B)成分との質量比を示す。「B/C」は、(B)成分と(C)成分との質量比を示す。
【0073】
繊維処理剤組成物は、ガラス容器(内径100mm、高さ150mm)と攪拌機(アジターSJ型、島津製作所製)を用い、次の手順で調製した。
(A)成分、(B)成分、(F)成分及び(G)成分を混合攪拌して、油相混合物を得た。
(H)成分をバランス用イオン交換水に溶解させて水相混合物を得た。バランス用イオン交換水の質量は、油相混合物と、(C)成分((C)成分を溶解するのに必要なイオン交換水を含む)と、(D)成分((D)成分を希釈するのに必要なイオン交換水を含む)と(E)成分((E)成分を溶解するのに必要なイオン交換水を含む)との合計量を980gから差し引いた残部に相当した。
次に(A)成分の融点以上に加温した油相混合物をガラス容器に収納して攪拌しながら、(A)成分の融点以上に加温した水相混合物を2度に分割して添加し、攪拌した。水相混合物の分割比率は20:80(質量比)とし、攪拌は回転速度1,000rpmで、1回目の水相混合物添加後に3分間、2回目の水相混合物添加後に2分間行った。
しかる後、(C)成分、(D)成分及び(E)成分を添加した。尚、(C)成分は15%質量水溶液(添加前にイオン交換水に溶解して調製)として用い、(D)成分は水溶液(添加前にイオン交換水で3倍に希釈して調製)として用い、(E)成分は30%質量水溶液(添加前にイオン交換水に溶解して調製)として用いた。必要に応じて、塩酸(試薬1mol/L、関東化学)又は水酸化ナトリウム(試薬1mol/L、関東化学)を適量添加してpH(25℃)を2.8に調整し、更に全体質量が1,000gになるようにイオン交換水を添加して、目的の繊維処理剤組成物を得た。
【0074】
〔繊維処理剤組成物の評価〕
1.(D)成分(カプセル化香料)の分散性
繊維処理剤組成物を軽量PSガラスビン(PS-No.11、田沼硝子工業所製)に80mL入れて密栓したものを評価用サンプルとした。評価用サンプルを25℃で1ヶ月保存した後の(D)成分の分散性を、下記の4段階評価基準に従って、5名の専門パネラーが目視評価した。5名の平均点(小数点第1位まで算出)を下記判定基準に適用して、(D)成分の分散性を判定した。判定結果を表1の「(D)成分の分散性」の欄に示す。商品価値上、〇以上を好ましいものとした。

<評価基準>
4:保存前のサンプルと同等と認められるもの
3:わずかにカプセルの浮遊が認められるもの
2:カプセルの浮遊が認められるが、軽い振とうにより容易に再分散するもの
1:カプセルの浮遊が認められ、ガラスビンへの付着もあり、軽い振とうでは再分散が困難なもの

<判定基準>
◎◎◎:3.5点以上
◎◎:3.0以上~3.5点未満
◎:2.5以上~3.0点未満
〇:2.0以上~2.5点未満
△:1.5以上~2.0点未満
×:1.5点未満
【0075】
2.繊維処理剤組成物のTI値
25℃に調節した繊維処理剤組成物の粘度を、B型粘度計(TOKIMEC社製、ローターNo.2)で測定した。測定は、2つのスピンドル回転速度(6rpm(10回転後)及び60rpm(10回転後))下で行った。各粘度値を下記計算式に適用してTI値を算出した。結果を表1の「TI値」の欄に示す。商品価値上、2.0以上のTI値を好ましいものとした。
TI値=(6rpm下での粘度値)/(60rpm下での粘度値)
【0076】
3.繊維製品のしわ防止
繊維処理剤組成物によるしわ防止性を、ワイシャツを用いて評価した。
以下の手順に従い、洗濯処理したワイシャツ(綿100%)を繊維処理剤組成物で柔軟処理した。

(評価用布の前処理)
市販のワイシャツ(UNIQLO製)を、市販洗剤「トッププラチナクリア」(ライオン社製)で、二槽式洗濯機(東芝製VH-30S)を用いて、以下の前処理を3回行った。
前処理:洗剤標準使用量、浴比30倍、45℃の水道水での洗浄10分間と、続く注水すすぎ10分間とのサイクルを2回。

(洗濯時すすぎ工程における繊維処理剤組成物による処理)
前処理洗浄したワイシャツ(UNIQLO製)1.0kgを、二槽式洗濯機(東芝製VH-30S)を用いて、市販洗剤「トッププラチナクリア」(ライオン社製)で10分間洗浄し(標準使用量、標準コース、浴比30倍、25℃の水道水使用)、その後、1分間の脱水を行い、次いで1回目のすすぎを3分間行った。1回目のすすぎの後、1分間の脱水を行い、次いでに続いて2回目のすすぎを3分間行った。この2回目のすすぎの開始時に、上記の各例で得た繊維処理剤組成物を添加して、3分間の柔軟処理(仕上げ剤6.67mL、浴比20倍、25℃の水道水使用)を行った。柔軟処理後、脱水を1分間行った。
処理後、二槽式洗濯機からワイシャツを取出し、20℃、40%RHの恒温恒湿条件下で18時間乾燥させ、下記に示す評価に供した。
柔軟処理に供しなかったワイシャツを対照とした。
ワイシャツについたしわを、下記の5段階評価基準に従い5名の専門パネラーが官能一対比較した。5名の平均点(小数点第1位まで算出)を下記判定基準に適用して、しわ防止性を判定した。判定結果を表1の「しわ防止性能」の欄に示す。商品価値上、〇以上を好ましいものとした。

<評価基準>
5:対照よりもかなりしわがない
4:対照よりもややすしわがない
3:対照と同等
2:対照よりもややしわがある
1:対照よりもかなりしわがある

<判定基準>
◎:4.5点以上
〇:3.5以上~4.5点未満
△:3.0以上~3.5点未満
×:3.0未満
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、繊維処理剤分野で利用可能である。
【0078】
【表1】