(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032455
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】有害動物の捕獲通報システム
(51)【国際特許分類】
A01M 23/00 20060101AFI20220217BHJP
G16Y 10/05 20200101ALI20220217BHJP
【FI】
A01M23/00 Z
G16Y10/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136249
(22)【出願日】2020-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】512050014
【氏名又は名称】株式会社 アイエスイー
(74)【代理人】
【識別番号】230115336
【弁護士】
【氏名又は名称】山下 あや理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 完
(72)【発明者】
【氏名】早川 真史
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BA32
2B121BA58
2B121DA63
2B121EA21
2B121FA14
2B121FA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高齢者による罠のパトロールを軽減できる有害動物捕獲通報システムを提供する。
【解決手段】罠Tに有害動物が捕獲されたことを検知する無線式のトリガーセンサーS1と、そのセンサーの検知出力信号を中継基地局Mを介して受信するウェブサーバWと、そのサーバとインターネットを介して送・受信し得る罠管理人の戸別受信機Rとを備え、上記サーバは戸別受信機の押しボタン54操作によるアクセスを受けたならば、有害動物の捕獲情報をその罠の設置場所又は罠名と一緒に戸別受信機へ通報し、その通報が戸別受信機のスピーカー55から音声として出力されるように設定した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生の有害動物が生息する一定の地区に設置される複数の罠と、
その罠に有害動物が捕獲されたか否かを検知する無線式のトリガーセンサーと、
そのトリガーセンサーの検知出力信号を中継基地局を介して受信するウェブサーバと、
複数の上記罠を管理する罠管理人の住居に設置されて、上記ウェブサーバとインターネットを介して送・受信し得る戸別受信機とを備え、
上記ウェブサーバはトリガーセンサーの検知出力信号を受信した場合、その罠による有害動物の捕獲状態であると判定して、上記戸別受信機からボタンの押し操作によるアクセスを受けたならば、その捕獲情報を罠名又は罠の設置場所と併せて戸別受信機へ通報すると共に、
その通報が戸別受信機のスピーカーから音声として又は/及び表示部の表示として出力されるように設定したことを特徴とする有害動物の捕獲通報システム。
【請求項2】
野生の有害動物が生息する一定の地区に設置される複数の罠と、
その罠に有害動物が捕獲されたか否かを検知する無線式のトリガーセンサーと、
そのトリガーセンサーの検知出力信号を中継基地局を介して受信するウェブサーバと、
複数の上記罠を管理する罠管理人の住居に設置されて、上記ウェブサーバとインターネットを介して送・受信し得る戸別受信機と、
上記罠管理人の家族や親類、役所の担当者、その他の支援者が所持するパソコンやスマートフォン、タブレット端末、その他の通信端末とを備え、
上記ウェブサーバはトリガーセンサーの検知出力信号を受信した場合、その罠による有害動物の捕獲状態であると判定して、上記戸別受信機からボタンの押し操作によるアクセスを受けたならば、その捕獲情報を罠名又は罠の設置場所と併せて戸別受信機へ通報すると共に、その通報が戸別受信機のスピーカーから音声として又は/及び表示部の表示として出力され、
また、ウェブサーバは上記戸別受信機からボタンの押し操作によるアクセスを1日中受信しなかった場合、その罠管理人の異常事態であると判定して、インターネットを介して上記支援者の通信端末へ通報し、
更に、上記ウェブサーバは同じく戸別受信機からボタンの予め決められた長い押し操作によるアクセスを受信した場合、その罠管理人の緊急事態であると判定して、やはりインターネットを介して上記支援者の通信端末へ通報するように設定したことを特徴とする有害動物の捕獲通報システム。
【請求項3】
無線式のトリガーセンサーから中継基地局への遠距離無線通信が、無線従事者免許の不要な150MHzのLPWA通信であることを特徴とする請求項1又は2記載の有害動物の捕獲通報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主として高齢の猟師による罠のパトロールを軽減するための有害動物捕獲通報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
山間部の一定地区に設置した複数の罠をパトロールする猟師や農林業従事者など(以下、罠管理人という)に対し、猪や鹿などの有害動物がその罠に捕獲されたことを通報する手段として、捕獲支援サーバから罠管理人の所持するスマートフォンやタブレット端末、パソコンなどの通信端末へメール送信するシステムは、例えば特許文献1に記載のとおり公知である。
【0003】
他方、特許文献2には罠と作用的に連結された送信機から、その罠に捕獲されたことの信号を発信し、その信号を受信した受信機が音を出力すると同時に、その信号の周波数と発信間隔をデジタル表示する器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-129735号公報
【特許文献2】実公平7-25035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の捕獲通報システムは便利であるが、どこの地区においても上記罠管理人としては高齢者が多く、自分の通信端末を所持していても、その受信したメールの閲覧操作を円滑に行えず、まして通信端末から支援サーバにアクセスして、格納されている有害動物の録画映像データやリアルタイム映像などを閲覧することができない。その通信端末を使いこなせないため、上記捕獲通報システムが役立たない結果となっている。
【0006】
この点、特許文献2に記載の捕獲器具では、高齢者にとって困難な操作を行う必要はないが、一方的にスピーカーからの音を聴き、デジタル表示の数字を見るだけであり、能動的な意志表示を行う術がないため、例えば高齢者の留守中であったり、体調不良であったり、緊急事態が発生していたりしても、その様子(安否)を誰も確認することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題の解決を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では有害動物の捕獲通報システムとして、野生の有害動物が生息する一定の地区に設置される複数の罠と、
【0008】
その罠に有害動物が捕獲されたか否かを検知する無線式のトリガーセンサーと、
【0009】
そのトリガーセンサーの検知出力信号を中継基地局を介して受信するウェブサーバと、
【0010】
複数の上記罠を管理する罠管理人の住居に設置されて、上記ウェブサーバとインターネットを介して送・受信し得る戸別受信機とを備え、
【0011】
上記ウェブサーバはトリガーセンサーの検知出力信号を受信した場合、その罠による有害動物の捕獲状態であると判定して、上記戸別受信機からボタンの押し操作によるアクセスを受けたならば、その捕獲情報を罠名又は罠の設置場所と併せて戸別受信機へ通報すると共に、
【0012】
その通報が戸別受信機のスピーカーから音声として又は/及び表示部の表示として出力されるように設定したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2ではやはり有害動物の捕獲通報システムとして、野生の有害動物が生息する一定の地区に設置される複数の罠と、
【0014】
その罠に有害動物が捕獲されたか否かを検知する無線式のトリガーセンサーと、
【0015】
そのトリガーセンサーの検知出力信号を中継基地局を介して受信するウェブサーバと、
【0016】
複数の上記罠を管理する罠管理人の住居に設置されて、上記ウェブサーバとインターネットを介して送・受信し得る戸別受信機と、
【0017】
上記罠管理人の家族や親類、役所の担当者、その他の支援者が所持するパソコンやスマートフォン、タブレット端末、その他の通信端末とを備え、
【0018】
上記ウェブサーバはトリガーセンサーの検知出力信号を受信した場合、その罠による有害動物の捕獲状態であると判定して、上記戸別受信機からボタンの押し操作によるアクセスを受けたならば、その捕獲情報を罠名又は罠の設置場所と併せて戸別受信機へ通報すると共に、その通報が戸別受信機のスピーカーから音声として又は/及び表示部の表示として出力され、
【0019】
また、ウェブサーバは上記戸別受信機からボタンの押し操作によるアクセスを1日中受信しなかった場合、その罠管理人の異常事態であると判定して、インターネットを介して上記支援者の通信端末へ通報し、
【0020】
更に、上記ウェブサーバは同じく戸別受信機からボタンの予め決められた長い押し操作によるアクセスを受信した場合、その罠管理人の緊急事態であると判定して、やはりインターネットを介して上記支援者の通信端末へ通報するように設定したことを特徴とする。
【0021】
更に、請求項3では無線式のトリガーセンサーから中継基地局への遠距離無線通信が、無線従事者免許の不要な150MHzのLPWA通信であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の構成によれば、有害動物の捕獲情報がその捕獲された罠の設置場所又は罠名と一緒に、ウェブサーバから罠管理人の住居にある戸別受信機へ通報され、その戸別受信機のスピーカーから音声として又は/及び表示部の表示として出力されるようになっているため、その罠管理人がパソコンやスマートフォンなどの通信端末を上手に操作できない高齢者であっても、そのスピーカーの音声を聴くか又は/及び液晶モニターなどの表示部の表示を見るだけで、どこの罠に有害動物が捕獲されているか、予め確実に知ることができ、その結果複数の罠をパトロールする時間と労力の浪費を無くせる効果があるほか、その捕獲された有害動物の駆除(止め殺し)や罠の再度仕掛け直し(リセット)を行うなどの準備にも役立つ。
【0023】
しかも、その場合有害動物の捕獲情報はウェブサーバから罠管理人の戸別受信機へ、一方的に通報されるのではなく、戸別受信機のボタンを押し操作することにより、その戸別受信機からウェブサーバへアクセス(問合せ/要求)して初めて、言わばその回答としてウェブサーバから戸別受信機へ通報されるようになっているため、罠管理人が不在(留守中)であることはなく、上記捕獲情報を確実に知得できるのであり、ウェブサーバが上記戸別受信機からのアクセスを受信することによって、その罠管理人の安否を自ずと確認できる効果もある。
【0024】
また、請求項2の構成によれば、請求項1の構成に伴う上記効果が得られることに加えて、罠管理人の戸別受信機からウェブサーバへ、万一上記アクセスを1日中(24時間)受信することがなかった場合には、その罠管理人の異常事態であると判定する一方、上記戸別受信機からボタンの予め決められた長い押し操作によるアクセスを、ウェブサーバが受信した場合には、その罠管理人の緊急事態であると判定して、何れもウェブサーバからインターネットを介して支援者の通信端末へ通報するようになっているため、高齢な罠管理人を健康上や防犯上、安全に見守ることに役立つ効果もある。
【0025】
上記請求項1、2の何れにあっても、請求項3の構成を採用するならば、150MHzの電波はその長い波長によって、山間部の障害物を容易に越えることができ、LPWA通信が省電力通信であることとも相俟って、山間部に設置される罠での有害動物捕獲用に導入しやすい効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の好適な実施形態に係る有害動物捕獲通報システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図5】第1センサー(トリガーセンサー)の設置状態を示す部分拡大平面図である。
【
図7】くくり罠の変形実施形態(2種)を示す断面模式図である。
【
図8】
図6から抽出した第1センサー(トリガーセンサー)の拡大断面模式図である。
【
図9】
図2から抽出した第2センサー(ワイヤーセンサー)の拡大断面模式図である。
【
図10】上記有害動物捕獲通報システムの動作シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態に係る有害動物捕獲通報システムを詳述する。
図1はくくり罠に適用した有害動物捕獲通報システムの全体構成を示すブロック図であり、そのくくり罠の一例を
図2~6に示している。
【0028】
上記有害動物捕獲通報システムは
図1から明白なように、野生の鹿や猪、その他の有害動物が生息する山間部の一定地区に設置された複数のくくり罠(子機)(T)と、その各くくり罠(T)からの後述する有害動物捕獲情報を中継基地局(親機)(M)を介して受信するウェブサーバ(管理サーバ)(W)と、上記複数のくくり罠(T)を管理する罠管理人の住居などに設置されて、ウェブサーバ(W)と送・受信することにより、有害動物捕獲情報を知得する戸別受信機(R)と、その主に高齢な罠管理人の家族や親類、役所の担当者、その他の支援者が所持して、その罠管理人における異常事態や緊急事態の通報を受けるスマートフォンやパソコンなどの通信端末(P)とから成り立っている。
【0029】
上記主要な構成部材のうち、先ずくくり罠(T)を
図2~6に基づいて具体的に説明すると、(10)はその平面視の矩形や円形などに造形された枠体であり、後述する捕獲ワイヤー(11)のループ保持体(12)を受け止める受け桟(13)を備えている。(14)はその枠体(10)と相似な矩形や円形などの踏み板であり、その中心部からは前後一対の向かい合うループ保持体取付け用ブラケット(15)が一体的に垂立されている。
【0030】
上記捕獲ワイヤー(11)は長尺な連続一本物として、その先端部(一端部)がループ(11a)を形作るように巻き曲げられており、基端部(他端部)は樹木や支柱、その他の固定物(16)へ取り付け固定されるようになっている。
【0031】
また、ワイヤー(11)の中途部には上記ループ(11a)の口径を常時収縮する方向へ弾圧付勢するバネ手段(B)が設置されている。そのバネ手段(B)はワイヤー(11)の先端側に配置される接続管(17)と、コイルバネ(18)と、同じくワイヤー(11)の基端側に配置されるバネ圧縮管(19)とから成り、これらが順次ワイヤー(11)へ通し込まれた状態にある。
【0032】
上記コイルバネ(18)は接続管(17)とバネ圧縮管(19)との前後相互間に封入されており、バネ圧縮管(19)の移動操作によって押し縮められるようになっている。(20)はそのバネ圧縮管(19)の位置決めストッパーであり、これによって上記ループ(11a)の口径収縮力を強弱調整することができる。
【0033】
上記ワイヤー(11)のループ保持体(12)は左右一対として、平面視の向かい合う円弧形状をなし、その切り離し両端基部が上記踏み板(14)のループ保持体取付け用ブラケット(15)へ、ほぼ水平の支点軸(21)によって起伏的な回動自在に枢着されている。
【0034】
(22)は両ループ保持体(12)の円弧面(凸曲面)に列設されたワイヤー受け入れ凹周溝であって、外向き(横向き)拡開するほぼV字状をなし、その両ループ保持体(12)のワイヤー受け入れ凹周溝(22)へ掛け渡す状態として、上記ワイヤー(11)のループ(11a)が係脱自在に係止されるようになっている。
【0035】
その場合、踏み板(14)が上記枠体(10)よりも小さな相似の矩形や円形などとして、その枠体(10)の囲い内部を昇降し得る収容状態にあるに比し、左右一対のループ保持体(12)における円弧形状の先端部は、
図5、6のように枠体(10)の上記受け桟(13)によって下方から受け止められたほぼ水平の伏倒状態にあり、この状態において上記凹周溝(22)へ受け入れたワイヤー(11)のループ(11a)を、予めの拡大した一定口径に保持している。
【0036】
つまり、ワイヤー(11)のループ(11a)が上記バネ手段(B)による口径収縮力に抗して、有害動物の脚を包囲し得るよう強制的に拡張されているのである。
【0037】
そして、このような準備状態にあるくくり罠(T)の踏み板(14)が、有害動物による踏み下げ荷重を受けて下降すると、これをトリガーとして一緒に下降する左右一対の上記ループ保持体(12)は、その支点軸(21)を中心として円弧形状の先端部から一挙に起立するよう回動作用するため、そのバネ手段(B)による予めの口径収縮力を付勢された状態にあるワイヤー(11)が、その両ループ保持体(12)の上記凹周溝(22)から勢い良く弾き出され解放(離脱)することになると同時に、そのループ(11a)の口径がすばやく収縮されるのである。
【0038】
(23)は上記ループ保持体(12)の先端側を下方から受け止め支持すべく、踏み板(14)の左右両端部に取り付けられた一対の調整ネジであり、これを上下方向へ進退操作することによって、そのループ保持体(12)の起伏的な回動角度を予め零となる水平の伏倒状態に調整準備することができるようになっている。
【0039】
(24)はくくり罠(T)の設置時に、作業者が誤って踏み板(14)を押し下げる危険防止用のストッパーピンであり、上記枠体(10)へ左右方向から抜き差し自在に差し込むようになっている。そのストッパーピン(24)はくくり罠(T)の設置後に抜き取られ、踏み板(14)が枠体(10)の内部で下降し得る準備状態に保たれることは、言うまでもない。
【0040】
上記構成のくくり罠(T)を設置作業するに当っては、有害動物の通路となる地面(G)に設けた凹所(25)へ、その枠体(10)をほぼ水平の設置状態に収納し、ストッパーピン(24)を差し込むことにより、ワイヤー(11)のループ保持体(12)が枢着されている踏み板(14)の下降しない安全状態に保つ。
【0041】
それから、ループ受け入れ用凹周溝(22)にワイヤー(11)のループ(11a)が受け入れ係止されたループ保持体(12)の左右一対を、上記枠体(10)の内部へ挿入セットして、そのループ保持体(12)の先端部を枠体(10)の受け桟(13)へ戴置させた状態に保った後、上記ストッパーピン(24)を枠体(10)から抜き取って、そのループ保持体(12)と踏み板(14)を枠体(10)内での下降し得る状態に準備する。
【0042】
そして、上記ワイヤー(11)の基端部を
図2のように樹木の幹や杭、支柱、その他の固定物(16)に取り付け、その地面(G)に沿って延在するワイヤー(11)や枠体(10)、ループ保持体(12)を上方から木の葉や草、その他によって全体的に被覆し、くくり罠(T)を見えない設置状態に保つのである。
【0043】
このような状態において、猪や鹿、その他の有害動物が上記踏み板(14)を踏み下げれば、
図6の仮想線から示唆されるように、その踏み板(14)と一緒に下降する上記ループ保持体(12)の左右一対は、その支点軸(21)の廻りにすばやく起立して、その凹周溝(22)からワイヤー(11)のループ(11a)が勢い良く弾き出され解放(離脱)すると同時に、そのループ(11a)の口径が自ずと収縮することにより、有害動物の脚(A)を強く締め付け捕獲することになる。
【0044】
尚、先には
図3~6に基づき、踏み板(14)の下降に連れて起立的に回動するループ保持体(12)を説示したが、要するに捕獲ワイヤー(11)のループ保持体(12)がトリガーとして下降することにより、ワイヤー(11)のループ(11a)を弾き出し解放(離脱)し得る限り、例えば
図7(イ)のような踏み板(14)の下降により、枠体(10)への取付け支点軸(26)を中心として、伏倒的に回動するループ保持体(12)や、
図7(ロ)のような踏み板(14)との一体物として、一緒の直線的に下降するループ保持体(12)などを採用しても良い。(27)は折損可能な爪楊枝などの支持ピンを示している。
【0045】
何れにしても、上記くくり罠(T)には無線式の第1センサー(以下、トリガーセンサーということもある)(S1)と、同じく無線式の第2センサー(以下、ワイヤーセンサーということもある)(S2)とが設置されており、その第1、2センサー(S1)(S2)が有害動物の捕獲検知センサーとして、両者から検知出力信号を受けた場合に、くくり罠(T)による有害動物の捕獲状態であると判定するようになっている。
【0046】
上記トリガーセンサー(S1)は、言わばトリガーとなる上記踏み板(14)又はこれと一緒に動く上記ループ保持体(12)がワイヤー(11)のループ(11a)を弾き出し解放(離脱)したか否か検知するものであって、図示の実施形態ではホールICを使った磁気センサー(28)又は磁気型の近接スイッチ(無接点スイッチ)から成り、
図6、8のようなマグネット(永久磁石)(29)が上記ループ保持体(12)の先端部から張り出す取付片(12a)に取り付けられている一方、磁性体(30)の皿頭付きボルトなどがループ保持体(12)の先端部を受け止める上記枠体(10)の受け桟(13)に取り付けられていて、その磁性体(ボルト)(30)が磁化したか否かを検知し、磁化していなければ(吸着力の解除状態)、上記ループ保持体(12)がワイヤー(11)のループ(11a)を弾き出し解放(離脱)した状態、延いてはそのループ(11a)の口径収縮力により有害動物の脚(A)を締め付け捕獲した状態として、その捕獲したことの検知出力信号を発するようになっている。(31)は上記磁性体(ボルト)(30)の固定ナットである。
【0047】
そして、上記トリガーセンサー(S1)の検知出力信号は
図1のブロック図に示す如く、その送信部(32)から第2センサー(ワイヤーセンサー)(S2)の受信部(33)へ、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fiなどのシステムを利用して近距離無線通信されることになる。(34)は上記磁気センサー(28)又は磁気型の近接スイッチ(無接点スイッチ)を内蔵した制御ボックスであり、上記枠体(10)の内部における就中受け桟(13)の下面に取り付けられている。(35)は制御部(センサー基板)であって、CPUやメモリーなどを具備してあり、バッテリーから電源供給を受ける。。
【0048】
他方、上記第2センサー(ワイヤーセンサー)(S2)はワイヤー(11)の伸縮や振動を検知するものであって、図示の実施形態では上記トリガーセンサー(S1)と実質的に同じ磁気センサー(36)又は磁気型の近接スイッチ(無接点スイッチ)から成り、
図2、9のような磁性体(37)の皿頭付きボルトなどが制御ボックス(38)へ、その皿頭の下向き露出状態に取り付けられている一方、マグネット(永久磁石)(39)が上記ワイヤー(11)の中途部から上向く分岐ワイヤー(40)の上端部に取り付けられており、その磁性体(ボルト)(37)が磁化したか否かを検知し、磁化していなければ(吸着力の解除状態)、上記ワイヤー(11)がその分岐ワイヤー(40)も含む全体として激しく振動した状態、つまり捕獲された有害動物が暴れ動いたことの検知出力信号を発するようになっている。(41)は上記制御ボックス(38)に対する磁性体(ボルト)(37)の固定ナットである。
【0049】
その場合、制御ボックス(38)は
図2のように、固定物(16)である樹木の枝などに取り付けられている。(42)はそのワイヤーセンサー(S2)の制御ボックス(38)に内蔵された制御部(センサー基板)であって、CPUやメモリーなどを有しており、バッテリーから電源供給を受けるようになっている。
【0050】
また、上記トリガーセンサー(S1)から入力した検知情報とワイヤーセンサー(S2)の磁気センサー(36)から出力した検知情報とを一緒にして、
図1のブロック図に示唆する如く、その送信部(43)から中継基地局(親機)(M)へ例えばLPWAやLTEなどの省電力通信方式を利用して遠距離無線通信する。
【0051】
その通信には特に150MHzのLPWA通信を使用することが好ましい。波長が長いため、山間部の障害物に遮断されるおそれがないほか、この周波数では無線従事者免許が不要のため、誰でも広く便利に使用できるからである。
【0052】
この点、図示の実施形態ではトリガーセンサー(S1)の検知出力信号を一旦ワイヤーセンサー(S2)の受信部(33)へ送信し、そのワイヤーセンサー(S2)の送信部(43)から中継基地局(M)へ、両センサー(S1)(S2)の検知出力信号をまとめて送信するようになっているが、その両センサー(S1)(S2)の検知出力信号を各別に中継基地局(M)へ無線送信(モバイル通信)するように定めても良い。
【0053】
要するに、中継基地局(M)は各地区に設置されている複数のくくり罠(T)とデータ通信を行って、その上記第1、2センサー(S1)(S2)によるくくり罠(T)の有害動物捕獲情報を受信し、インターネットを介してデータセンターや捕獲支援センターなどのウェブサーバ(管理サーバ)(W)へ送信(通報)するようになっている。(44)(45)はその中継基地局(M)の受信部と送信部である。
【0054】
上記データセンターや捕獲支援センターなどのウェブサーバ(管理サーバ)(W)は、
図1のブロック図に示すようなCPU(46)やメモリー(47)などを有する制御部(48)のほか、受信部(49)と送信部(50)も具備しており、上記くくり罠(T)による有害動物の捕獲情報を中継基地局(M)から、インターネットを介して受信部(49)に受信すると、その捕獲情報を各地区に設置されている複数のくくり罠(T)のうち、どこ(設置場所)にあるくくり罠(T)からのそれであるかを制御部(48)のCPU(46)において特定し、罠管理人の戸別受信機(R)からアクセス(問合せ/要求)を受けた時に、送信部(50)からその戸別受信機(R)へ通報(回答)するようになっている。
【0055】
つまり、ウェブサーバ(W)における制御部(48)の就中CPU(46)は
図10の動作シーケンス図に示すように、上記くくり罠(T)の第1センサー(トリガーセンサー)(S1)と第2センサー(ワイヤーセンサー)(S2)とが反応して、その両センサー(S1)(S2)の検知出力信号を上記中継基地局(M)から受信した場合に、そのくくり罠(T)に有害動物が捕獲された状態であると判定し、併せてそのくくり罠(T)の設置場所又は罠名も特定する。
【0056】
上記罠管理人は一定地区に設置された複数のくくり罠(T)を管理しており、そのパトロールする時間と労力などを節減するため、各自の住居に戸別受信機(R)を設置している。その戸別受信機(R)は
図1のブロック図に示すような制御部(51)と、ウェブサーバ(W)とモバイル通信する送信部(52)並びに受信部(53)のほか、上記ウェブサーバ(W)にアクセス(送信)するためのスイッチボタン(54)と、そのウェブサーバ(W)からの有害動物捕獲情報を音声によって聴くためのスピーカー(55)も具備している。
【0057】
そして、罠管理人はその各自管理しているくくり罠(T)の有害動物捕獲情報を知得すべく、
図10の動作シーケンス図に示す如く、その戸別受信機(R)のスイッチボタン(54)を1日当たり(毎日)少なくとも1回、好ましくは数回押し操作して、その送信部(52)から上記ウェブサーバ(W)にアクセスする。
【0058】
そうすれば、そのアクセス(送信)による問合せ/要求を受けたウェブサーバ(W)側では、上記くくり罠(T)による有害動物の捕獲情報が記憶されている場合、これをメモリー(47)から読み出して、その特定したくくり罠(T)の設置場所又は罠名と併せて罠管理人の戸別受信機(R)へ通報(回答)すると共に、そのスイッチボタン(54)の押し操作によるアクセスがあったことを以って、その罠管理人が高齢者であっても、防犯上や健康上安全であることの確認としている。スイッチボタン(54)が毎日押し操作されているか否か(音信不通になっていないか)を、ウェブサーバ(W)側においてチェックしているのである。
【0059】
上記ウェブサーバ(W)からの通報(回答)は、戸別受信機(R)の制御部(51)において音声情報に変換され、スピーカー(55)から例えば「A地(場所名又は罠名)の罠が捕獲しました」という音声として出力されるようになっており、その拡声することも可能である。
【0060】
そのため、高齢の罠管理人であっても、これを聴くだけで、どこ(設置場所)のくくり罠(T)に有害動物が捕獲されているかを、予め知ることができる結果、無駄なパトロールの時間と労力を無くせるのであり、その捕獲された有害動物を処理したり、再度くくり罠(T)を仕掛け直したりするなどの準備にも役立つ。
【0061】
図示実施形態の場合、罠管理人は戸別受信機(R)のスピーカー(55)から出力される音声を、聴くようになっているが、そのスピーカー(55)に代えて又は加えて、液晶モニターやその他の表示部を設置(接続)し、その表示部の出力する表示画面を見ることにより、捕獲した罠の設置場所も含む有害動物の捕獲情報を知得できるように構成しても良い。
【0062】
また、罠管理人の戸別受信機(R)からウェブサーバ(W)に対して、そのスイッチボタン(54)の押し操作によるアクセス(送信)が1日中(24時間)無かった場合、ウェブサーバ(W)は罠管理人の異常事態であると判定して、その罠管理人の家族や親類、役所の担当者、その他の支援者が所持する通信端末(P)へ、メールやLINEなどで通報し、その支援者が罠管理人に電話したり、住居を訪問したりして、その安否を確認するようになっている。
【0063】
更に、罠管理人の戸別受信機(R)からウェブサーバ(W)に対して、そのスイッチボタン(54)の長い押し操作によるアクセス(送信)があった場合、ウェブサーバ(W)は罠管理人の緊急事態であると判定して、その罠管理人の上記支援者が所持する通信端末(P)へ、やはりメールやLINEなどで通報し、その支援者が罠管理人の住居を訪問して、救助などの必要な支援を行うようになっている。
【0064】
その場合、上記スイッチボタン(54)の長い押し操作時間は例えば3~5秒として、その長時間のアクセスを受けたウェブサーバ(W)から通信端末(P)へ緊急事態の通報が行われることを、予め罠管理人やその支援者に伝えておくことは言うまでもない。その長押し操作時間を予め3~5秒に設定しておくのである。
【0065】
上記支援者の通信端末(P)はパソコンやタブレット端末、スマートフォンなどのモバイル、その他のインターネットを介して上記ウェブサーバ(W)と通信できる機器であれば足りる。尚、罠管理人における上記異常事態の通報や緊急事態の通報を行わず、ボタン(54)が毎日押し操作されているか否かの安否確認だけを行う有害動物捕獲通報システムとすることもでき、その場合上記支援者の通信端末(P)は不要である。
【0066】
図示の実施形態では第1、2センサー(S1)(S2) が反応して、その両センサー(S1)(S2)の検知出力信号を受けた場合に、ウェブサーバ(W)がくくり罠(T)による有害動物の捕獲状態であると判定するようになっているが、その第2センサー(ワイヤーセンサー)(S2)の設置を省略し、第1センサー(トリガーセンサー)(S1)だけの検知出力信号を受けた場合に、ウェブサーバ(W)がくくり罠(T)による有害動物の捕獲状態であると判断するように設定しても良い。
【0067】
また、上記踏み板(14)又はループ保持体(12)がトリガーとなり、そのワイヤー(11)のループ(11a)が弾き出し開放(離脱)したか否かを、第1センサー(トリガーセンサー)(S1)によって検知するくくり罠(T)に適用した有害動物捕獲通報システムを説示したが、くくり罠(T)に代わる箱罠(檻)や囲い罠、その他の罠(捕獲設備)についても、本発明を適用実施することができる。
【0068】
つまり、箱罠や囲い罠に適用する有害動物捕獲通報システムの構成としては、その罠が出入口の開閉扉を上昇した開扉状態に仮止め保持するトリガーと、そのトリガーを解放して出入口の閉扉状態に作動制御する制御装置(コントローラー)と、罠に対する有害動物の侵入状態を検知する無線式の赤外線センサー(侵入検知センサー)とから成り、その赤外線センサーが有害動物の侵入状態を検知した出力信号に基づき、制御装置が上記開閉扉のトリガーを解放すべく作動制御して、閉扉状態の罠内に有害動物を捕獲すると共に、その上記赤外線センサーの送信部から捕獲状態の検知出力信号が中継基地局(親機)(M)へ無線通信(好ましくは150MHzのLPWA通信)されるようになっておれば良い。その他の中継基地局(M)やウェブサーバ(W)、戸別受信機(R)、通信端末(P)の構成並びにその動作は、
図1、10に記載の図示実施形態と実質的に同一である。
【符号の説明】
【0069】
(10)・・・枠体
(11)・・・捕獲ワイヤー
(12)・・・ループ保持体
(14)・・・踏み板
(28)(36)・・・磁気センサー
(29)(39)・・・マグネット(永久磁石)
(30)(37)・・・磁性体(ボルト)
(32)(43)(45)(50)(52)・・・送信部
(33)(44)(49)(53)・・・受信部
(35)(42)(48)(51)・・・制御部
(40)・・・分岐ワイヤー
(54)・・・スイッチボタン
(55)・・・スピーカー
(A)・・・・有害動物の脚
(B)・・・・バネ手段
(M)・・・・中継基地局
(P)・・・・通信端末
(R)・・・・戸別受信機
(S1)・・・トリガーセンサー
(S2)・・・ワイヤーセンサー
(T)・・・・くくり罠
(W)・・・・ウェブサーバ