特開 2022-32502 マスク用鼻パッド

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022032502

(43)【公開日】2022-02-25

(54)【発明の名称】マスク用鼻パッド

(51)【国際特許分類】

   A41D 13/11 20060101AFI20220217BHJP

   A62B 18/08 20060101ALI20220217BHJP

【ＦＩ】

A41D13/11 Z

A62B18/08 Z

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2020136344

(22)【出願日】2020-08-12

(71)【出願人】

【識別番号】597051528

【氏名又は名称】佐藤 恒

(72)【発明者】

【氏名】佐藤 恒

【テーマコード（参考）】

2E185

【Ｆターム（参考）】

2E185AA07

2E185CC33

(57)【要約】

【課題】マスクの内側に装着して装着感を感じさせずに快適に鼻呼吸することができるマスク用鼻パッドを提供する。
【解決手段】マスクの内側に装着して鼻に当てるパッドにおいて、１）鼻の鼻梁位置に相当する鼻梁線部を線対称の中心として、鼻の側面に触れる１対の鼻側面と頬に触れる１対の頬当て面とを備え、２）面角度が異なる１対の鼻側面同士が鼻梁線部で、鼻側面と頬当て面同士とが鼻底線部で滑らかに連結され。３）鼻梁線部と鼻底線部で挟まれた鼻側面は一部の角（かど）が丸みを帯びた概略四角形の形状をしている。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

マスクの内側に装着して鼻に当てるパッドであり、鼻の鼻梁位置に相当する鼻梁線部を線対称の中心として、鼻の側面に触れる１対の鼻側面と頬に触れる１対の頬当て面とで構成されていることと、面角度が異なる１対の鼻側面ば鼻梁線部で、鼻側面と頬当て面は鼻底線部で、滑らかに連結されていることと、鼻梁線部と鼻底線部とで挟まれた鼻側面は一部の角が丸みを帯びた概略四角形の形状をしていることを特徴とするマスク用鼻パッド。

【請求項2】

前記頬当て面の周囲が肌から離れる方向に反り返っていることを特徴とする請求項１に記載のマスク用鼻パッド。

【請求項3】

前記鼻側面にマスクと貼りわせることができる貼り合わせ材が備わっていることを特徴とする請求項１及び２に記載のマスク用鼻パッド。

【請求項4】

前記鼻側面の鼻孔側の一対の辺において、一方の辺から他方の辺に架橋した架橋部を備えることを特徴とする請求項１乃至３に記載のマスク用鼻パッド。

【請求項5】

前記鼻側面の形に最もよく一致する仮想四角形の４頂点のそれぞれの角度が、５５度から８５度の間、７５度から１０５度の間、１３５度から１６５度の間、３５度から６０度の間の角度であることを特徴とする請求項１乃至４に記載のマスク用鼻パッド。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ウィルスの飛沫感染や花粉等の予防に用いるマスクの内側に装着するマスク用鼻パッドに関する。

【背景技術】

【0002】

ウィルスの飛沫感染対策や花粉症対策に用いられている一般の使い捨てマスクは、息苦しく喋りにくいという問題を抱えている。自ずと口呼吸になりがちだが、口呼吸を行うと口で吸った息は肺に直接入り、ウイルスやアレルゲンで汚れているので、口呼吸は万病のもとと言われている。さらに息苦しいままでいると、ストレスの蓄積や集中力の欠如といった事態に発展する可能性がある。

【0003】

息苦しさと不快感を軽減するため、従来よりマスクの内側に着用して鼻孔と口の周辺に空間を作る立体型のインナーマスクが提供されている。

【0004】

例えば特許文献１では、マスクの内側で唇と鼻の間に鼻より高い棒状の仕切りパッドを当接させて、口の周りの空間と鼻の周りの空間を分離する手段を提供している。

【0005】

また、特許文献２では、マスク使用者の両頬と鼻筋のテーパー面にかけて密着させた曲線形状のクッションパッドで使用者の顔面を持ち上げてマスク内空間を広げる手段を提供している。

【0006】

さらに、特許文献３では、マスク本体と顔面との間に、鼻及び口の周囲を覆う環状の介在物を挟んで、鼻と口の前の空間を保つ手段を提供している。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0007】

【特許文献1】特開２０１１－３０８０９号

【特許文献2】特開２０１３－４８８９８号

【特許文献3】特開２０１５－１９９２０号

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

しかしながら、特許文献１の方法では、仕切りパッドが鼻腔の直前にあるため、呼気の圧力が感じられて通気性の解放感がなく、長い間使用すると蒸れてくるという問題があったた。また、会話などで上唇部が動くうちに、マスクが下って仕切りパッドが口を塞ぐことがあり、マスクが下がらないようにマスクをきつく締めると仕切りパッドで上唇部が圧迫されるという問題があった。

【0009】

一方、特許文献２の方法では、クッションパッドが顔面曲線に沿って広い面積で顔面に接し、しかも厚みを厚くして鼻の高さよりも高くしてマスクを持ち上げているので、窮屈で重苦しい装着感があった。

【0010】

また、特許文献３の方法では、環状の物で鼻と口の周囲を囲んで鼻と口の前の空間を保つため、比較的大きな体積が必要であった。肌にソフトに接触するジェル状充填剤が充填されるとマスク全体が重くなり、軽装感がなくなるだけでなく、鼻柱に重みがかかって次第にズレ落ちてくるという問題があった。

【0011】

本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、マスクの内側に装着して装着感を感じさせずに快適に鼻呼吸することができるマスク用鼻パッドを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0012】

本発明にかかるマスク用鼻パッドは、マスクの内側に装着して鼻に当てるパッドであり、鼻の鼻梁位置に相当する鼻梁線部を線対称の中心として、鼻の側面に触れる１対の鼻側面と頬に触れる１対の頬当て面とで構成されていて、面角度が異なる１対の鼻側面ば鼻梁線部で、鼻側面と頬当て面は鼻底線部で、滑らかに連結されていて、鼻梁線部と鼻底線部とで挟まれた鼻側面は一部の角が丸みを帯びた概略四角形の形状をしている。

【0013】

好ましくは、頬当て面の周囲が肌から離れる方向に反り返っている。

【0014】

好ましくは、鼻側面に、マスクと貼りわせることができる貼り合わせ材が備わっている。

【0015】

好ましくは、鼻側面の鼻孔側の一対の辺において、一方の辺から他方の辺に架橋した架橋部を備える。

【0016】

好ましくは、鼻側面の形に最もよく一致する仮想四角形の４頂点のそれぞれの角度が、５５度から８５度の間、７５度から１０５度の間、１３５度から１６５度の間、３５度から６０度の間の角度である。

【発明の効果】

【0017】

上記のように構成された本発明のマスク用鼻パッドによれば、軽量でありながら、鼻梁線部の先端が実際の鼻の先端より大きく突き出てマスクを持ち上げて鼻の下の空間を作りだすので、快適に鼻呼吸ができるようになる。

【0018】

なお、頬当て面の周囲が肌から離れる方向に反り返っている場合は、主に頬当て面の中央平面がユーザーの頬に当たるので、頬当て面のエッジで肌に局所的な押圧を与えないという効果がある。

【0019】

なお、鼻側面にマスクと貼りわせることができる貼り合わせ材が備わっている場合は、鼻パッドの形状に沿ってマスクが貼り合わさるので、眼の下のマスクの隙間からの外気の侵入を防ぐ効果がある。

【0020】

なお、鼻側面の鼻孔側の一対の辺において、一方の辺から他方の辺に架橋した架橋部を備えた場合は、鼻パッドの変形耐力が強化されるので、より薄い材料で軽量な鼻パッドを提供できる効果がある。

【0021】

なお、概略４角形の鼻側面の４頂点のそれぞれの角度が、６０度から８５度の間、７５度から１０５度の間、１３５度から１６５度の間、３５度から６０度の間の角度であれば、マスクをかけても鼻と口の前に十分な空間をつくることができ、且つ鼻の上の鼻パッドがぐらつかずに安定して装着できる鼻パッドとなる効果がある。

【図面の簡単な説明】

【0022】

【図1】本発明の実施形態の１例であるマスク用鼻パッドの斜視図である。

【図2】本発明のマスク用鼻パッドがマスクに貼り合わさた様子を示した外観図である。

【図3】本発明のマスク用鼻パッドの装着位置を示した外観図である。

【図4】本発明のマスク用鼻パッド付きのマスクが、顔面に装着された様子を示した側面図である。

【図5】本発明のマスク用鼻パッドによって確保される空間を示した側面図である。

【図6】本発明の第一の実施例のマスク用鼻パッドの平面図である。

【図7】本発明の第一の実施例のマスク用鼻パッドの正面図である。

【図8】本発明の第一の実施例のマスク用鼻パッドの側面図である。

【図9】本発明の第一の実施例のマスク用鼻パッドの展開図である。

【図10】本発明の第一の実施例のマスク用鼻パッドの製作過程での斜視図である。

【図11】本発明の第一の実施例のマスク用鼻パッドの製作過程での斜視図である。

【図12】本発明の第二の実施例のマスク用鼻パッドの斜視図である。

【図13】本発明のマスク用鼻パッドの鼻側面の４頂点の角度評価表である。

【発明を実施するための形態】

【0023】

以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。

【0024】

図１は、本発明の実施形態のマスク用鼻パッドの１例の斜視図である。鼻の鼻梁位置に相当する鼻梁線部２を線対称の中心として、鼻の側面に触れる１対の鼻側面３と頬に触れる１対の頬当て面４とで構成されている。面角度が異なる鼻側面３と頬当て面４は鼻底線部５で滑らかに連結され、鼻梁線部２と鼻底線部５で挟まれた鼻側面３は一部の角が丸みを帯びた概略四角形の形状をしている。

【0025】

鼻梁線部２では、面角度の異なる１対の鼻側面３が狭い幅で滑らかに連結されている。鼻梁線部２の表面は平坦にしてもよいが、鼻パッドでマスクを立体的に持ち上げる目的には、巾が狭いほどよく、また、スムースに湾曲した形が取り扱いの上で人に優しい。

【0026】

頬当て面４は、鼻パッドを鼻に当てた時に、頬に当たって鼻パッドを支える役目をしている。頬当て面４のエッジで頬に局所的な圧力かからないように、面角度が異なる頬当て面４と鼻側面３は、鼻底線部５の位置でカーブしながら滑らかに連結され、且つ、頬当て面の周辺部６は、エッジが肌に触れないように、肌から離れる方向に反り返っている。

【0027】

鼻側面３に、マスクと貼り合わせができる貼り合わせ材８が配置されている。マスクを貼り合わせ材８で貼り合わせると、鼻パッドの形状に沿ってマスクが固定されるので、マスクの隙間からの外気の侵入を防ぐ効果がある。
貼り合わせ材８は接着剤でもよいが、マスクを交換しながら使えるように、マスクに対して脱着できる貼り合わせ材にするのが望ましい。

【0028】

図２は、本発明のマスク用鼻パッド１がマスク９の内側に貼り合わされた様子を示した外観図である。貼り合わせ材８で鼻パッド１の形状に沿ってマスクがはり合わさるので、鼻パッドを使わない時に比べて、眼の下のマスクの隙間からの外気の侵入をより確実に防ぐ効果がある。

【0029】

図３は、本発明の鼻パッドを鼻の上に載せる位置を示した外観図である。鼻のサイズに個人差があるので、鼻パッドは鼻に合った適切なサイズのものにすることが望ましい。

【0030】

図４及び図５は、本発明の鼻パッドをマスクと共に使用した時の様子を示した側面図とその拡大図である。図５には、マスク９の内側で作られるマスク内空間１０が示されている。実線で示めされているのが本発明の鼻パッドを装着した時のマスクとマスク内空間であり、点線で示されているのが、通常のマスク装着時のマスク内空間である。鼻パッド１を当てることで、口と鼻のためのマスク内の空間が広くなり、その分呼吸が楽になる。

【実施例0031】

以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。

【0032】

図６から図８は、本発明の第一の実施例のマスク用鼻パッドの基材の投影図である。本投影図は鼻パッド基材のものであるので、この基材の表面に貼り合わせ材、クッションシートや吸湿シートなどが必要に応じて配置され、或いは装飾が施されて完成品となる。

【0033】

図６の平面図では鼻梁線部２、鼻側面３、頬当て面４が示されている。
図７は正面図であり、特に頬当て面４が鼻側面３から滑らかに鼻底線部５で連結されている様子が示されている。さらに頬当て面の周辺部６は、頬から離れるように反り返っている。従って、頬に当たる部分は頬当て面のフラットな中央部だけになり、頬当て面４による頬への圧力が分散し、且つ頬当て面４のエッジによる局部的な押圧がかからない構造となっている。

【0034】

１対の鼻側面３は角度ｅで鼻梁線部で連結されている。角度ｅは、およそ５０度～７０度である。鼻の形や大きさに個人差があるので、オーダーメードでユーザーに合った角度の物を作ってもよいが、複数の角度の物を用意してユーザーに合ったものを選んでもらってもよい。

【0035】

図８は側面図であり、鼻側面３に角度位置が示されている。鼻側面３は概略４角形であり、丸みを帯びた角（かど）も存在するが、辺を延長することにより角度を求めることができる。各角度が適切な値でないと、鼻パッドがマスクの圧力でぐらついたり、口と鼻の先に快適な呼吸空間を形成できなかったりする。

【0036】

図１３の表は実際に検証された適切な角度範囲を示したものである。なお、角度ａは鼻側面上の鼻梁線部の先端の角における内角、角度ｂは鼻側面上の鼻梁線部の眼側の角における内角、角度ｃは鼻側面上の鼻底線部の眼側の角における内角、角度ｄは鼻側面上の鼻底線部の鼻孔側の角における内角である。
図１３の表より、角度ａは５５度から８５度の間、角度ｂは７５度から１０５度の間、角度ｃは１３５度から１６５度の間、角度ｄは３５度から６０度の間の角度であることが望ましい。鼻の形や大きさに個人差があるので、オーダーメードでユーザーに合ったものを作ってもよいが、前記の推奨角度の中で複数の形態を用意してユーザーに合ったものを選んでもらうことが工業的には望ましい。

【0037】

図９は、本実施例で使用したマスク用鼻パッドの展開図である。鼻梁線部と鼻底線部の折り目線は点線で描かれている。熱可塑性樹脂である厚み１．５ミリメートル厚の硬質ポリ塩化ビニル板を展開図の外形に合わせて切断した。その後、１６０℃の金型の間に挟んで図１０に示されたように鼻梁線部２で折り畳んだ形に成型した。さらに別の１６０℃の金型で、鼻底線部５で曲げて図１１のように頬当て面４を形成した。本実施例では２つの金型で２回成型を行っているが、１回で鼻梁線部、鼻底線部、及び頬当て面の周辺部の折り曲げ成型ができる金型で行うのが望ましい。或いは、成型に加えて切断まで同時に行える金型であればなお望ましい。

【0038】

その後、成型した鼻パッド基材の鼻側面３に、図１に示された貼り合わせ材８として、面ファスナーのフック面の裏側を接着剤で貼り付けて完成品とした。
貼り合わせ材は、面ファスナーに限らず、両面テープなどのようにマスクに接合できるものであればよい。

【0039】

マスク用鼻パッドの基材材料としては、実施例の材料にこだわる必要はなく、他のプラスチックや金属でも構わない。他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂などを用いることができる。材料によって差があるが、ある程度の強度を保持して装着感を感じさせない重量であることを考慮すると、厚みは１～２ミリメートルの範囲であることが望ましい。強度と硬度を補強するフィラーを混ぜたものも基材材料を薄くする上で一つの選択肢である。
また、鼻パッド自体の通気性が得られるポーラスなプラスチック材料であれば、長時間の装着における蒸れ防止になるのでさらに望ましい。

【0040】

金属材料の場合は、軽量で強度のあるアルミ合金やマグネシウム合金が望ましく、薄い厚みでも形状保持が可能で、プラスチック材料より薄くできるというメリットがある。

【0041】

また、プラスチック材料や金属材などの切断や成型手段は、前記実施例で述べたように金型成型加工で行うのがよいが、プラスチック製で多数個の製造を行う場合はインジェクションモールド加工が望ましい。

【0042】

図１２は、本発明の第二の実施例を示したもので、鼻側面の鼻孔側の一対の辺の間に架橋部１１が配置されている。架橋部１１を付加することによって、鼻パッドの強度や形状安定性が強化される。従って、架橋部がない鼻パッドに比べてさらに薄い材料で鼻パッドを製造できるメリットがある。架橋部の取り付け位置によっては、鼻孔を塞ぐことになるので、鼻孔を避けて設置するのが望ましい。

【0043】

また、架橋部の材料は、鼻パッド基材と同一である必要はなく、異なる材料でも構わないが、鼻パッド基材に求められるように、軽量で強度のある材料であることが望ましい。

【0044】

さらには、次のような処置をして、より快適で使い易いものにすることが望ましい。
１）鼻パッドの肌に触れる面に、肌に優しシート材料を貼る。
２）鼻パッドの肌に触れる面に、クッション性の材料を貼る。
３）鼻パッドの内側に、吸湿材料を敷設する。
４）鼻パッドに装着するシート或いは布は、簡単に新品と交換できるタイプにする。
５）鼻パッドの鼻梁線部や鼻側面に、小さな孔を複数個開けて通気性を改善する。

【符号の説明】

【0045】

１．鼻パッド
２．鼻梁線部
３．鼻側面
４．頬当て面
５．鼻底線部
６．頬当て面の周辺部
７．鼻側面の鼻孔側の辺
８．貼り合わせ材
９．マスク
１０.マスク内空間
１１.架橋部
１２.人の鼻
ａ．鼻側面上の鼻梁線部の先端の角における内角
ｂ．鼻側面上の鼻梁線部の眼側の角における内角
ｃ．鼻側面上の鼻底線部の眼側の角における内角
ｄ．鼻側面上の鼻底線部の鼻孔側の角における内角
ｅ．鼻側面の鼻孔側の１対の辺のなす角度

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】