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  • 特開-非水系リチウムイオン二次電池用負極 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032567
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】非水系リチウムイオン二次電池用負極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20220217BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220217BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220217BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136450
(22)【出願日】2020-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】根岸 佳之
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050CB11
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA10
5H050EA23
5H050FA16
5H050FA17
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】十分な電池容量を備えつつ、充放電によるSi系粒子の膨張及び収縮に追従して電池の寿命特性を良好にすることができる非水系リチウムイオン二次電池用負極を提供すること。
【解決手段】1次粒子径が150nm以下であるSi系合金粒子を含む負極活物質と、1次粒子径が80nm以下である粒子状導電助剤を含む導電助剤と、ポリアクリル酸またはカルボキシメチルセルロースの少なくとも一方を含むバインダと、を含み、前記負極活物質100質量部に対する、前記導電助剤の混合量が20質量部以上40質量部以下であり、前記バインダの混合量が10質量部以上30質量部以下であり、体積密度が0.7g/cm以上0.85g/cm以下である負極合剤層を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次粒子径が150nm以下であるSi系合金粒子を含む負極活物質と、
1次粒子径が80nm以下である粒子状導電助剤を含む導電助剤と、
ポリアクリル酸またはカルボキシメチルセルロースの少なくとも一方を含むバインダと、
を含み、
前記負極活物質100質量部に対する、前記導電助剤の混合量が20質量部以上40質量部以下であり、前記バインダの混合量が10質量部以上30質量部以下であり、
体積密度が0.7g/cm以上0.85g/cm以下である負極合剤層を備える非水系リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項2】
前記負極活物質は、表面が膜厚2nm以上の炭素材料で被覆された前記Si系合金粒子を含む
請求項1に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項3】
前記バインダは、アルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素で中和された前記ポリアクリル酸または前記カルボキシメチルセルロースを含む
請求項1又は2に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項4】
前記粒子状導電助剤は、前記負極活物質100質量部に対して10質量部以上20質量部以下含まれている
請求項1から3のいずれか1項に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項5】
前記粒子状導電助剤は、カーボンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、及びケッチェンブラックの少なくとも1種である
請求項1から4のいずれか1項に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項6】
前記導電助剤は、直径150nm以下であり、かつ長さ3μm以上10μm以下である繊維状導電助剤をさらに含む
請求項1から5のいずれか1項に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項7】
前記繊維状導電助剤は、前記負極活物質100質量部に対して10質量部以上20質量部以下含まれている
請求項6に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項8】
前記繊維状導電助剤は、気相成長炭素繊維又はカーボンナノチューブの少なくとも1種である請求項6又は7に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水系リチウムイオン二次電池用負極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負極の活物質にSi系粒子を用いることにより高容量化を可能にした非水系リチウムイオン二次電池は、充電時にSi系粒子が膨張することにより粒子が割れ、電池容量が劣化するという課題があった。
これに対し、Si系粒子をナノサイズに微小化することにより、膨張してもSi系粒子が割れることがない非水系リチウムイオン二次電池用負極が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/131864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ナノサイズのSi系粒子は膨張により粒子が割れることはないが、膨張自体は発生するため、膨張に対応した電極構成にする必要があった。特にナノサイズの粒子では、マイクロサイズの粒子と比較して表面積が数十倍と非常に大きくなるため、ナノ粒子に最適化した材料組成が不可欠であった。
【0005】
本開示は、十分な電池容量を備えつつ、充放電によるSi系粒子の膨張及び収縮に追従して電池の寿命特性を良好にすることができる非水系リチウムイオン二次電池用負極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る非水系リチウムイオン二次電池用負極は、1次粒子径が150nm以下であるSi系合金粒子を含む負極活物質と、1次粒子径が80nm以下である粒子状導電助剤を含む導電助剤と、ポリアクリル酸またはカルボキシメチルセルロースの少なくとも一方を含むバインダと、を含み、前記負極活物質100質量部に対する、前記導電助剤の混合量が20質量部以上40質量部以下であり、前記バインダの混合量が10質量部以上30質量部以下であり、体積密度が0.7g/cm以上0.85g/cm以下である負極合剤層を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る非水系リチウムイオン二次電池用負極であれば、十分な電池容量を備えつつ、充放電によるSi系粒子の膨張及び収縮に追従して電池の寿命特性を良好にすることができる非水系リチウムイオン二次電池用負極を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第一実施形態に係る非水系リチウムイオン二次電池用負極の一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、図1に示す構成は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造などが下記のものに限定されるものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
本開示の非水系リチウムイオン二次電池用負極の基本構成について、図1を用いて説明する。
図1は、非水系リチウムイオン二次電池用負極1の構成を示す断面図である。非水系リチウムイオン二次電池用負極1は、集電体2と、集電体2上に形成された負極合剤層3とを備えている。すなわち、非水系リチウムイオン二次電池用負極1は、集電体2上に、負極合剤層3が積層された構造である。
【0011】
<集電体>
集電体2は、良導電性の材質が好ましく、例えば、金、銀、銅、ニッケル、ステンレス、チタン、白金等の金属箔単体若しくはこれら金属を2種以上含む合金から構成される。
集電体2の厚さは、6μm以上20μm以下の範囲内が好ましい。集電体2の厚さが6μm以上であれば、非水系リチウムイオン二次電池用負極1に機械的強度を付与することができる。集電体2の厚さが20μm以下であれば、非水系リチウムイオン二次電池用負極1に柔軟性を付与することができる。
また、集電体2の負極合剤層3側の面における表面粗さRaは、0.1μm以上3μm以下の範囲内が好ましい。集電体2の表面粗さRaが0.1μm以上であれば、集電体2と負極合剤層3との接着強度が向上する。集電体2の表面粗さRaが3μm以下であれば、負極合剤層3を安定して集電体2に固定することができる。
【0012】
<負極合剤層>
負極合剤層3は、図1に示すように、集電体2上に形成されている。負極合剤層3の厚さは、75nm以上100μm以下の範囲内が好ましく、75nm以上60μm以下の範囲内がより好ましい。負極合剤層3の厚さが75nm以上であれば、負極として良好に機能し、十分な電池容量を確保することができる。負極合剤層3の厚さが60nm以下であれば、電池の微小化を実現できる。
負極合剤層3は、負極活物質と、バインダと、導電助剤とを含んでいる。以下、これらの材料について説明する。
【0013】
(1)負極活物質
負極合剤層3には負極活物質が含まれている。負極活物質は、リチウム(Li)を可逆的に吸蔵及び放出できる活物質である。本実施形態の負極活物質は、Si系合金粒子(以下、単に「Si系粒子」とも称する。)である。Si系粒子は、例えば、SiOxであり、xが0以上1.5以下であれば好ましい。xが1.5より小さい場合、十分にLiの吸蔵及び放出量を確保することが可能になる。
本実施形態の負極活物質としては、上述のようにSi系粒子が好ましいが、Liを可逆的に吸蔵及び放出出来るものであれば、特に制限がなく、公知のものも使用出来る。なお、本実施形態においては、Liと合金化する材料を活物質として使用することが望ましい。
【0014】
高容量であるSi系粒子は、充電時に膨張して粒子が割れ、充放電に寄与しなくなってしまう可能性がある。このため、本実施形態の負極活物質としては、充電時に割れない、或いは割れにくいサイズの粒子(1次粒子)を用いることが望ましい。本実施形態では、割れないサイズの粒子、或いは割れにくいサイズの粒子として、粒径(平均1次粒子径)が150nm以下の粒子を用いることが望ましい。ここで、粒径が150nm以下の粒子の比表面積はおおよそ20m/g以上となる。そのため、本実施形態で用いるSi系粒子は、その比表面積が20m/g以上であることが望ましい。Si系粒子の平均1次粒子径は、例えば、SEM(装置:JEOL S4800)を用いて測定したSEM画像から無作為に抽出した500個のSi系粒子に対し、各粒子の粒径を平均化することで決定したものであってもよい。また、Si系粒子の比表面積は、BET法を用いて決定したものであってもよい。具体的には、Si系粒子の比表面積は、JIS Z 8830(ISO 9277)に準拠した測定方法や、日本粉体工業技術協会規格であるSAP 11に準拠した測定方法によって決定されたものであってもよい。
【0015】
比表面積が大きい粒子は一般に嵩高く、その比表面積が20m/g以上の場合にはタップ密度は0.2g/cm以下となる場合が多い。ここで、タップ密度は、例えば、JIS Z 2512に準拠した測定方法や、日本粉体工業技術協会規格であるSAP 05-98に準拠した測定方法によって決定されたものであってもよい。
【0016】
ナノサイズのSi系粒子は、電子導電性を向上させるためにSi系粒子の表面を炭素(C)などで被覆することが望ましい。Si系粒子の表面に形成する被覆層の厚さは2nm以上30nm以下が望ましく、4nm以上10nm以下がより望ましい。被覆層の厚さが2nm以上であれば、Si系粒子と水等の極性溶媒との接触による水素の発生を抑止することができる。被覆層の厚さが30nm以下であれば、Si系粒子同士間での導電パスを確保することができる。Si系粒子の表面に形成する被覆層の厚さ(平均厚さ)は、例えば、測定したTEM画像から無作為に抽出した500個のSi系粒子に対し、各粒子の被覆層の厚さを平均化することで決定したものであってもよい。また、Si系粒子にボロンやリン等の不純物を添加して、導電性を向上させてもよい。
【0017】
Si系粒子の表面を炭素等で被覆する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、Si系粒子の表面にアモルファスカーボンを蒸着させてもよい。
【0018】
(2)バインダ
本実施形態の負極合剤層3には、Si系粒子同士を結着させるためのバインダが含まれている。また、バインダは、Si系粒子を負極スラリー中に安定的に分散させるための分散剤としての役割も兼ねている。
本実施形態のバインダとしては、ポリアクリル酸またはカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いることが出来る。これにより、負極活物質と導電助剤とを結着するのみならず、集電体2との接着性も確保することができる。本実施形態で使用可能なバインダは、例えば、分子量が1000以上500万以下の範囲内であるポリアクリル酸またはカルボキシメチルセルロースからなる高分子を含んだものであってもよい。また、本実施形態のバインダは、ポリアクリル酸の塩またはカルボキシメチルセルロースの塩であってもよい。また、本実施形態のバインダは、アルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素による分子間架橋、或いは架橋剤による分子間架橋を含んだポリアクリル酸またはカルボキシメチルセルロースであってもよい。また、本実施形態のバインダがポリアクリル酸またはカルボキシメチルセルロースである場合には、各高分子は、アルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素によって中和されていてもよい。
【0019】
(3)導電助剤
負極合剤層3には導電助剤が含まれている。本実施形態においては、導電助剤に粒子状導電助剤が含まれている。これにより、Si系粒子間の接点数を十分に確保することができる。
粒子状導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラックの少なくとも1種であることが好ましい。また、上述した材料以外であっても、本実施形態の粒子状導電助剤として、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、さらには、酸化チタンや酸化ルテニウム等の金属酸化物、金属ファイバー等を使用出来る。そのなかでもストラクチャー構造を呈するカーボンブラックが好ましく、特にその一種であるファーネスブラックやケッチェンブラック、アセチレンブラック(AB)が望ましい。
【0020】
粒子状導電助剤は、1次粒子径が80nm以下であることが好ましい。粒子状導電助剤の1次粒子径が80nm以下であれば、導電性を向上させることができる。
また、粒子状導電助剤の混合量は、負極活物質の混合量を100質量部とした場合に、10質量部以上20質量部以下含まれていることが好ましい。粒子状導電助剤の混合量が10質量部以上であれば、導電性が向上し、電極抵抗が増加するのを防ぐことができる。粒子状導電助剤の混合量が20質量部以下であれば、導電助剤に対する負極活物質量を十分に確保して、Li吸蔵容量が低下するのを防ぐことができる。
【0021】
また、本実施形態において、粒子状導電助剤を含む導電助剤は、繊維状導電助剤をさらに含んでいる。これにより、充放電時にSiの膨張及び収縮に追従することができる。
繊維状導電助剤としては、例えば、気相成長炭素繊維又はカーボンナノチューブの少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
繊維状導電助剤は、直径150nm以下であることが好ましい。繊維状導電助剤の直径が150nm以下であれば、充放電によるナノサイズのSi系粒子の膨張及び収縮に十分に追従することができる。
また、繊維状導電助剤の長さは、3μm以上10μm以下であることが好ましい。繊維状導電助剤の長さが3μm以上であれば、導電助剤として良好に機能し、導電性を向上することができる。繊維状導電助剤の長さが10μm以下であれば、ナノサイズのSi系粒子の充放電時における膨張及び収縮に十分に追従することができる。
【0023】
また、繊維状導電助剤の混合量は、負極活物質の混合量を100質量部とした場合に、10質量部以上20質量部以下含まれていることが好ましい。繊維状導電助剤の混合量が10質量部以上であれば、導電性が向上し、電極抵抗が増加するのを防ぐことができる。繊維状導電助剤の混合量が20質量部以下であれば、導電助剤に対する負極活物質量を十分に確保して、Li吸蔵容量が低下するのを防ぐことができる。
【0024】
(本実施形態の効果)
以上のような非水系リチウムイオン二次電池用負極1は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態の非水系リチウムイオン二次電池用負極1は、負極活物質であるSi系粒子の1次粒子径が150nm以下である。
この構成によれば、充電時の膨張によるSi系粒子の割れの発生を抑制可能な非水系リチウムイオン二次電池用負極1を提供することができる。
【0025】
(2)本実施形態の非水系リチウムイオン二次電池用負極1は、導電助剤に粒子状導電助剤と繊維状導電助剤とを含んでいる。
この構成によれば、導電性に優れ、かつ充放電によるSi系粒子の膨張及び収縮に追従することができる非水系リチウムイオン二次電池用負極1を提供することができる。
【実施例0026】
(実施例1)
以下、本開示を実施例によりさらに詳しく説明するが本開示は、実施例により何ら限定されるものではない。
<実施例1-1>
水250.7gに、結着剤としてポリアクリル酸(和光純薬工業製、分子量100万)22.8g、水酸化ナトリウム(関東化学製)12.66gを加え、ディスパーを用いて攪拌してポリアクリル酸水溶液を作製した。続いて、この高分子溶液に、バインダとしてアジリジン系架橋剤の10%水溶液0.9gを加えて、20分間攪拌した。さらに、塩化カルシウムの100倍希釈水溶液14.1gを加えて攪拌した。以上により、10%濃度のバインダ水溶液を作製した。
【0027】
作製したバインダ水溶液12.7gに、負極活物質として粒子径75nmのSi粒子4.5gと、導電助剤としてアセチレンブラック及び気相成長炭素繊維の混合物0.89gとを溶かし込み、負極スラリーを作製した。このとき、アセチレンブラックの1次粒子径を80nmとした。また、気相成長炭素繊維の直径を150nmとし、かつ長さを6μmとした。
【0028】
作製した負極スラリーを集電体である銅箔上に塗工し、乾燥させることにより負極とした。
ここで、負極において、負極活物質の混合量100質量部に対するバインダの混合量を15質量部、導電助剤の混合量を20質量部とした。このとき、導電助剤は、アセチレンブラックの混合量を10質量部、気相成長炭素繊維の混合量を10質量部とした。
【0029】
負極と対極であるリチウム箔との間にポリエチレン製多孔質セパレータを配置して、電池ケースに収納し、電解液を注液し、電池ケースを密閉することにより、ハーフセルの非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
以上により、実施例1-1の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0030】
<実施例1-2>
気相成長炭素繊維の直径を100nmに変更した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、実施例1-2の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0031】
<実施例1-3>
アセチレンブラックの1次粒子径を60nmに変更した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、実施例1-3の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0032】
<実施例1-4>
気相成長炭素繊維の長さを10nmに変更した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、実施例1-4の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0033】
<実施例1-5>
気相成長炭素繊維の長さを3nmに変更した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、実施例1-5の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0034】
<実施例1-6>
気相成長炭素繊維の長さを2nmに変更した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、実施例1-6の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0035】
<実施例1-7>
導電助剤として、アセチレンブラックのみを使用した。このとき、アセチレンブラックの混合量を20質量部とした。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、実施例1-7の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0036】
<比較例1-1>
導電助剤として、気相成長炭素繊維のみを使用した。このとき、気相成長炭素繊維の混合量を20質量部とした。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、比較例1-1の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0037】
<比較例1-2>
Si粒子の粒子径を2000nmに変更した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、比較例1-2の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0038】
<比較例1-3>
気相成長炭素繊維の直径を170nmに変更した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、比較例1-3の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0039】
<比較例1-4>
アセチレンブラックの1次粒子径を100nmに変更した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で、比較例1-4の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0040】
<評価判定>
上述した実施例1-1から1-7、比較例1-1から1-4で得られた二次電池について、以下の方法で電池容量の評価を行った。
【0041】
<評価>
〔電池容量〕
実施例1-1から1-7及び比較例1-1から1-4の二次電池を電池電圧が4.2Vになるまで充電し、その後1Cで放電した場合に得られた放電容量を電池容量として測定し、以下の◎、〇、△、×の4段階で評価した。
<評価基準>
◎:電池容量が1800mAh/g以上である場合
○:電池容量が1600mAh/g以上1800mAh/g未満である場合
△:電池容量が1500mAh/g以上1600mAh/g未満である場合
×:電池容量が1500mAh/g未満である場合
評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1中に表されるように、実施例1-1から1-7、比較例1-2の評価結果から、実施例1~7のように負極活物質の粒子径が150nm以下である場合には、比較例2のように負極活物質の粒子径が150nmより大きい場合と比べて電池容量が大きいことがわかった。
【0044】
また、実施例1-1から1-6、比較例1-1の評価結果から、実施例1-1から1-6のように導電助剤としてアセチレンブラックと気相成長炭素繊維とを使用する場合には、比較例1-1のように導電助剤として気相成長炭素繊維のみを使用する場合と比べて電池容量が大きいことがわかった。
【0045】
また、実施例1-1から1-7、比較例1-3の評価結果から、実施例1-1から1-7のように気相成長炭素繊維の直径が150nm以下である場合には、比較例1-3のように気相成長炭素繊維の直径が150nmより大きい場合と比べて電池容量が大きいことがわかった。
【0046】
また、実施例1-1から1-7、比較例1-4の評価結果から、実施例1-1から1-7のようにアセチレンブラックの1次粒子径が80nm以下である場合には、比較例1-4のようにアセチレンブラックの1次粒子径が80nmより大きい場合と比べて電池容量が大きいことがわかった。
【0047】
(実施例2)
<実施例2-1>
水250.7gに、結着剤としてポリアクリル酸(和光純薬工業製、分子量100万)22.8g、水酸化ナトリウム(関東化学製)12.66gを加え、ディスパーを用いて攪拌してポリアクリル酸水溶液を作製した。続いて、この高分子溶液に、バインダとしてアジリジン系架橋剤の10%水溶液0.9gを加えて、20分間攪拌した。さらに、塩化カルシウムの100倍希釈水溶液14.1gを加えて攪拌した。以上により、10%濃度のバインダ水溶液を作製した。
【0048】
作製したバインダ水溶液12.7gに、負極活物質として粒子径75nmのSi粒子4.5gと、導電助剤としてアセチレンブラック及び気相成長炭素繊維の混合物0.89gとを溶かし込み、負極スラリーを作製した。このとき、アセチレンブラックの1次粒子径を80nmとした。また、気相成長炭素繊維の直径を150nmとし、かつ長さを6μmとした。
【0049】
作製した負極スラリーを集電体である銅箔上に塗工し、乾燥させることにより負極とした。
ここで、負極において、負極活物質の混合量100質量部に対するバインダの混合量を10質量部、導電助剤の混合量(アセチレンブラックと気相成長炭素繊維との合計量)を20質量部とした。また、導電助剤におけるアセチレンブラックと気相成長炭素繊維との質量比を1:1とした。
【0050】
負極と対極であるリチウム箔との間にポリエチレン製多孔質セパレータを配置して、電池ケースに収納し、電解液を注液し、電池ケースを密閉することにより、ハーフセルの非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
以上により、実施例2-1の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0051】
<実施例2-2>
導電助剤の混合量を40質量部に変更した。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、実施例2-2の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0052】
<実施例2-3>
バインダの混合量を15質量部に変更した。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、実施例2-3の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0053】
<実施例2-4>
導電助剤の混合量を40質量部に変更した。それ以外は実施例2-3と同様の方法で、実施例2-4の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0054】
<実施例2-5>
バインダの混合量を30質量部に変更した。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、実施例2-5の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0055】
<実施例2-6>
導電助剤の混合量を40質量部に変更した。それ以外は実施例2-5と同様の方法で、実施例2-6の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0056】
<比較例2-1>
導電助剤の混合量を5質量部に変更した。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、比較例2-1の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0057】
<比較例2-2>
導電助剤の混合量を10質量部に変更した。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、比較例2-2の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0058】
<比較例2-3>
導電助剤の混合量を60質量部に変更した。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、比較例2-3の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0059】
<比較例2-4>
バインダの混合量を15質量部、導電助剤の混合量を5質量部に変更した。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、比較例2-4の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0060】
<比較例2-5>
導電助剤の混合量を10質量部に変更した。それ以外は比較例2-4と同様の方法で、比較例2-5の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0061】
<比較例2-6>
バインダの混合量を30質量部、導電助剤の混合量を5質量部に変更した。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、比較例2-6の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0062】
<比較例2-7>
導電助剤の混合量を10質量部に変更した。それ以外は比較例2-6と同様の方法で、比較例2-7の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0063】
<比較例2-8>
バインダの混合量を5質量部、導電助剤の混合量を5質量部に変更した。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、比較例2-8の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0064】
<比較例2-9>
導電助剤の混合量を10質量部に変更した。それ以外は比較例2-8と同様の方法で、比較例2-9の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0065】
<比較例2-10>
導電助剤の混合量を20質量部に変更した。それ以外は比較例2-8と同様の方法で、比較例2-10の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0066】
<比較例2-11>
導電助剤の混合量を40質量部に変更した。それ以外は比較例2-8と同様の方法で、比較例2-11の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0067】
<比較例2-12>
導電助剤の混合量を60質量部に変更した。それ以外は比較例2-8と同様の方法で、比較例2-12の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0068】
<比較例2-13>
バインダの混合量を50質量部、導電助剤の混合量を5質量部に変更した。それ以外は実施例2-1と同様の方法で、比較例2-13の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0069】
<比較例2-14>
導電助剤の混合量を10質量部に変更した。それ以外は比較例2-13と同様の方法で、比較例2-14の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0070】
<比較例2-15>
導電助剤の混合量を20質量部に変更した。それ以外は比較例2-13と同様の方法で、比較例2-15の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0071】
<比較例2-16>
導電助剤の混合量を40質量部に変更した。それ以外は比較例2-13と同様の方法で、比較例2-16の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0072】
<比較例2-17>
導電助剤の混合量を60質量部に変更した。それ以外は比較例2-13と同様の方法で、比較例2-17の非水系リチウムイオン二次電池を作製した。
【0073】
<評価判定>
上述した実施例2-1から2-6、比較例2-1から2-17で得られた二次電池について、以下の方法で電池容量の評価を行った。
【0074】
<評価>
〔電池容量〕
実施例2-1から2-6及び比較例2-1から2-17の二次電池を電池電圧が4.2Vになるまで充電し、その後1Cで放電した場合に得られた放電容量を電池容量として測定し、以下の◎、〇、△、×の4段階で評価した。
<評価基準>
◎:電池容量が1800mAh/g以上である場合
○:電池容量が1600mAh/g以上1800mAh/g未満である場合
△:電池容量が1500mAh/g以上1600mAh/g未満である場合
×:電池容量が1500mAh/g未満である場合
評価結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
表2中に表されるように、実施例2-1から2-6、比較例2-8から2-17の評価結果から、実施例2-1から2-6のようにバインダの混合量が10質量部以上30質量部以下である場合には、比較例2-8から2-17のようにバインダの混合量が10質量部未満又は30質量部より大きい場合と比べて電池容量が大きいことがわかった。
【0077】
また、実施例2-1から2-6、比較例2-1から2-7の評価結果から、実施例2-1から2-6のように導電助剤の混合量が20質量部以上40質量部以下である場合には、比較例2-1から2-7のように導電助剤の混合量が20質量部未満又は40質量部より大きい場合と比べて電池容量が大きいことがわかった。
【0078】
なお、本開示の非水系リチウムイオン二次電池用負極は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1:非水系リチウムイオン二次電池用負極
2:集電体
3:負極合剤層
図1