(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032587
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】湿気硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/10 20060101AFI20220217BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20220217BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
C08L101/10
C08K5/098
C08K5/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136484
(22)【出願日】2020-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000227342
【氏名又は名称】日東化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 貴之
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA031
4J002EC017
4J002EG056
4J002FD156
4J002FD157
4J002GJ02
(57)【要約】
【課題】本発明は、薄層未硬化の問題を解消することができる湿気硬化型組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、反応性加水分解性ケイ素含有基を有する重合体[A]、ジカルボン酸スズ化合物[B]、および、アルコール[C]を含有する湿気硬化型組成物であって、前記ジカルボン酸スズ化合物[B]は、化学式(1)で表され、前記アルコール[C]は、化学式(2)~(7)で表される、湿気硬化型組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性加水分解性ケイ素含有基を有する重合体[A]、ジカルボン酸スズ化合物[B]、および、アルコール[C]を含有する湿気硬化型組成物であって、
前記ジカルボン酸スズ化合物[B]は、化学式(1)で表され、
前記アルコール[C]は、化学式(2)~(7)で表される、湿気硬化型組成物。
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、相互に同一であっても異なっていてもよい)
H
k-C-R
4
4-K (2)
(式中、R
4は、-(CH
2)
m-OHであり、mは、0~3であり、相互に同一であっても異なっていてもよい。kは、0または1である。)
N-R
5
3 (3)
(式中、R
5は、-(CH
2)
n-OHであり、nは、1~3であり、相互に同一であっても異なっていてもよい。)
【化4】
(式中、R
6は、-(CH
2)
p-OHであり、p=0~2であり、相互に同一であっても異なっていてもよい。Aは、酸素原子または炭素原子である。)
【化5】
(式中、R
7は、水素原子、ヒドロキシル基または炭化水素基であり、相互に同一であっても異なっていてもよい。)
【化6】
【化7】
【請求項2】
前記アルコール[C]の含有量は、前記ジカルボン酸スズ化合物[B]に対して0.1~1.0質量%である、請求項1に記載の湿気硬化型組成物。
【請求項3】
前記アルコール[C]は、4-ターシャリー-ブチルカテコール、アスコルビン酸、ピロガロール、ヒドロキシキノール、ジトラノールおよび、トリエタノールアミン、グリセリン、イノシトールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の湿気硬化型組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤やシーリング剤に有用な湿気硬化型組成物として、ポリエーテル、ポリエステル、あるいはエチレン性不飽和化合物やジエン系化合物の重合体などを主鎖とする架橋可能な加水分解性ケイ含有基を有する有機重合体を主成分として用いるものが知られている。これら加水分解性ケイ素含有基を有する有機重合体は、触媒の存在下で、室温において大気中の水分により加水分解性ケイ素含有基が加水分解を起こし、シロキサン結合を形成することで硬化させる。この加水分解性ケイ素含有基を有する有機重合体を用いる硬化性組成物は、硬化性、貯蔵安定性、耐候性などに優れている。
【0003】
前記加水分解性ケイ含有基を有する有機重合体の硬化触媒としては、2-エチルヘキサン酸スズ、n -オクチル酸スズなどのジカルボン酸スズ(II)化合物、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエートなどの有機錫(IV)化合物や、ナフテン酸鉄、オクチル酸鉛などのその他の金属化合物が用いられる。中でも有機スズ(IV)化合物、ジカルボン酸スズ(II)化合物は、硬化速度および硬化物性に優れているので、汎用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭61-60867号公報
【特許文献2】特開2002-285018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機スズ化合物は、いずれも環境や人体に及ぼす影響が大きいことから、使用に際しては充分な注意が必要となる。
【0006】
また、2成分タイプの変成シリコーン樹脂系シーリング材(施工直前に主剤と硬化剤を混合し塗布するタイプ)に、ビス(2-エチルヘキサン酸)スズやビス(n-オクチル酸)スズなどのスズ化合物を用いた場合(例えば特許文献1)、シーリング材を施工した際にシーリングの薄層部分の硬化不良による残留タック(薄層未硬化現象)が発生するなどの意匠上の大きな問題があった。この問題を解決する手段として、ネオデカン酸スズのような3級カルボン酸スズ化合物を硬化触媒として使用することが提案されているが(特許文献2)、前記問題を解消することはできなかった。
【0007】
そこで、前記従来技術に鑑みて、本発明は、薄層未硬化の問題を解消することができる湿気硬化型組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、反応性加水分解性ケイ素含有基を有する重合体[A]、ジカルボン酸スズ化合物[B]、および、アルコール[C]を含有する湿気硬化型組成物であって、前記ジカルボン酸スズ化合物[B]は、化学式(1)で表され、前記アルコール[C]は、化学式(2)~(7)で表される、湿気硬化型組成物が提供される。
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、成分[A]~[C]をを含有する湿気硬化型樹脂組成物を用いることで、薄層未硬化の問題が解消されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
1.重合体[A]
重合体[A]は、反応性加水分解性ケイ素含有基を、分子末端または側鎖に1分子当たり少なくとも1個有する。反応性加水分解性ケイ素含有基は、重合体[A]分子の末端に存在していても、側鎖に存在していてもよく、さらに末端と側鎖の両方に存在していてもよい。反応性加水分解性ケイ素含有基は、重合体[A]の1分子当たり少なくとも1個あればよいが、硬化速度、硬化物性の点からは、1分子当たり平均して1.5個以上あるのが好ましい。反応性加水分解性ケイ素含有基を前記主鎖重合体に結合させる方法としては公知の方法が採用できる。
【0012】
反応性加水分解性ケイ素含有基は、加水分解性基(例:ハロゲン、アルコキシ、アルケニルオキシ、アシロキシ、アミノ、アミノオキシ、オキシム、アミド)又は水酸基からなる反応性基と結合したケイ素原子を有する基であり、湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することにより縮合反応を起こす性質を有する。具体的には、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基などが挙げられる。
【0013】
ここで、1つのケイ素原子に結合した反応性加水分解性基の数は1~3の範囲から選択される。また、1つのケイ素原子に結合した反応性加水分解性基は1種であってもよく、複数種であってもよい。さらに反応性加水分解性基と非反応性加水分解性基が1つのケイ素原子に結合していてもよく、加水分解性基と水酸基が1つのケイ素原子に結合していてもよい。反応性加水分解性ケイ素含有基としては、取り扱いが容易である点で、特にアルコキシシリル基(モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基を含む)が好ましい。
【0014】
また上記のアルコキシシリル基のうち、トリアルコキシシリル基は、活性が高く良好な硬化性が得られること、また、得られる硬化物の復元性、耐久性、耐クリープ性に優れることから好ましい。一方、ジアルコキシシリル基、モノアルコキシシリル基は、貯蔵安定性に優れ、また、得られる硬化物が高伸び、高強度であることから好ましい。
反応性加水分解性ケイ素含有基がジアルコキシシリル基である重合体[A]と、トリアルコキシシリル基である重合体[A]を併用すると、硬化物の物性と硬化性とのバランスが取れ好ましい。
【0015】
重合体[A]としては、有機重合体[A1]、オルガノポリシロキサン[A2]が例示される。
【0016】
(有機重合体[A1])
本発明に用いる有機重合体[A1]の主鎖としては炭素原子を有するもの、例えば、アルキレンオキシド重合体、ポリエステル重合体、エーテル・エステルブロック共重合体、エチレン性不飽和化合物の重合体、ジエン系化合物の重合体などが挙げられる。
【0017】
前記アルキレンオキシド重合体としては、
〔CH2CH2O〕n
〔CH(CH3)CH2O〕n
〔CH(C2H5)CH2O〕n
〔CH2CH2CH2CH2O〕n
などの繰り返し単位の1種または2種以上を有するものが例示される。ここで、nは同一又は異なって2以上の整数である。これらアルキレンオキシド重合体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記の繰り返し単位を2種以上含む共重合体も使用できる。
【0018】
ポリエステル重合体としては、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フタル酸、クエン酸、ピルビン酸、乳酸等のカルボン酸およびその無水物ならびにそれらの分子内および/または分子間エステルおよびそれらの置換体等を繰返し単位として有するものが例示される。
【0019】
エーテル・エステルブロック共重合体としては、上述したアルキレンオキシド重合体に用いられる繰り返し単位および上述したポリエステル重合体に用いられる繰り返し単位の両方を繰返し単位として有するものが例示される。
【0020】
また、エチレン性不飽和化合物及びジエン系化合物の重合体としては、エチレン、プロピレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの単独重合体、またはこれらの2種以上の共重合体が挙げられる。より具体的にはポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、エチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリイソプレン、スチレン-イソプレン共重合体、イソブチレン-イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン-クロロプレン共重合体、アクリロニトリル-クロロプレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0021】
有機重合体[A1]としては、分子内に含窒素特性基等の極性基を有する有機重合体を用いることもできる。上記含窒素特性基の具体例としては(チオ)ウレタン基,アロファネート基,その他のN-置換ウレタン基,N-置換アロファネート基等の(チオ)ウレタン基由来の結合基、(チオ)ウレア基,ビウレット基,それ以外のN-置換ウレア基,N,N'-置換ウレア基、N-置換ビウレット基,N,N'-置換ビウレット基等の(チオ)ウレア基由来の結合基、アミド基、N-置換アミド基等のアミド基由来の結合基、イミノ基由来の結合基に代表される含窒素特性基や、(チオ)エステル基、(チオ)エーテル基等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらのなかでは、硬化性の高さから含窒素特性基が好ましく、合成の容易さから、(チオ)ウレタン基由来の結合基、(チオ)ウレア由来の結合基がより好ましい。また、該含窒素特性基は、上記有機重合体[A1]中に1個だけ含まれていてもよく、さらに1種又は2種以上の含窒素特性基が複数含まれていてもよい。ここで「(チオ)」及び「N-置換」の表記は上記と同様である。
【0022】
有機重合体[A1]中に上記含窒素特性基等の極性基が含まれると、硬化物の強靱性が向上するうえ、硬化性及び接着強さが高まる。特に、上記架橋性ケイ素基が含窒素特性基等の極性基を介して主鎖に連結されている場合、より硬化性が高まる。その理由としては、該含窒素特性基の極性基同士が、水素結合等の相互作用により強く引き合うことが挙げられる。該含窒素特性基の極性基同士が強く引き合うことにより、硬化性樹脂の分子同士も強く結びつく(ドメイン形成する)ことで硬化物に強靱性が発現すると考えられるのである。また、上記架橋性ケイ素基が含窒素特性基等の極性基を介して主鎖に連結されている場合、該含窒素特性基同士ドメイン形成に際し、それに伴って該架橋性ケイ素基同士も近接することによって、該架橋性ケイ素基同士の接触確率も向上し、さらに、該含窒素特性基中の極性基による触媒硬化によって該架橋性ケイ素基同士の縮合反応性が向上することが考えられる。
【0023】
このような有機重合体[A1](変成シリコーン系ポリマー)は、例えば、特公昭61-18569号公報に記載されている方法等の公知の方法によって製造することができるか、或いは市販されている。市販品としては、例えば、株式会社 カネカ製のカネカMSポリマーシリーズ(MSポリマーS203、MSポリマーS303、MSポリマーS903、MSポリマーS911、MSポリマーSAX520等)、サイリルシリーズ(サイリルポリマーSAT200、サイリルポリマーMA430、サイリルポリマーMAX447等)、MAシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ;旭硝子株式会社製のESシリーズ(ES-GX3440ST等),ESGXシリーズ等、が例示される。
【0024】
本発明で用いる有機重合体[A1]の数平均分子量は、特に制限はないが、過度に高分子のものは高粘度であり、硬化性組成物とした場合、使用上困難となる為、30000以下が望ましい。このような有機重合体は、公知の方法によって製造することができるが、上記した株式会社カネカ製のカネカMSポリマー等の市販品を使用してもよい。
【0025】
(オルガノポリシロキサン[A2])
本発明に用いるオルガノポリシロキサン[A2]は、主鎖がSi-Oで表されるシロキサン結合で構成されたものであり、さらにシロキサン結合を構成するケイ素原子に有機基が結合している。このような有機基としては、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基;シクロヘキシル等のシクロアルキル基;ビニル、イソプロペニル、置換ビニル等のアルケニル基;アリル基、クロチル、メタリル等の置換アリル基;フェニル、トルイル、キシリル等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル等のアラルキル基;及びこれら有機基の水素原子の全部もしくは一部がハロゲン原子で置換された基、例えばクロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などが挙げられる。
【0026】
オルガノポリシロキサン[A2]としては、
(-Si(R)2-O-)m
(式中、Rは同一又は異なって有機基、mは2以上の整数を示す。)
で表される繰り返し単位を有するものが例示される。具体例としては、
(-Si(CH3)2-O-)m
(-Si(C2H5)2-O-)m
(-Si(Ph)2-O-)m
(-Si(-CH=CH2)2-O-)m
などの繰り返し単位の1種または2種以上を有するものが例示される。ここでmは同一又は異なって2以上の整数である。オルガノポリシロキサン[A2]は単独の主鎖から構成されていてもよく、あるいは2種以上の主鎖から構成されていてもよい。
【0027】
オルガノポリシロキサンは直鎖状であっても、3官能形(R'SiO1.5)または4官能形(SiO2)を含む分岐状のものであってもよい。また、硬化物の物性や用途により、必要に応じて2官能形(R'2SiO)や1官能形(R'3SiO0.5)を組み合わせてもよい(ここで、R'は有機基)。さらに加水分解性ケイ素含有基は分子末端、分子鎖の途中の何れに結合していてもよい。
なお、オルガノポリシロキサンは一般的に平均組成式としてRaSiO4-a/2で示される(例えば、特開2005-194399号や特開平8-151521号公報等)。上記の表記はこれに従った。
【0028】
本発明で用いるオルガノポリシロキサン[A2]の粘度は特に制約はないが過度に高粘度のものは、作業性が低下したり、得られる硬化物の物性が損なわれたりするおそれがあるので、25℃における粘度が0.025~100Pa・sの範囲にあるのが望ましい。このようなオルガノポリシロキサンは、公知の方法によって製造することができるが、GE東芝シリコーン(株)製のトスシールシリーズ、信越化学工業(株)製のシーラントシリーズ、東レダウコーニング(株)製のSHシリーズ等の市販品を使用することができる。
【0029】
2.ジカルボン酸スズ化合物[B]
本発明に用いるジカルボン酸スズ化合物[B]は、化学式(1)で表される。
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、相互に同一であっても異なっていてもよい)
【0030】
式中、R1、R2、R3で示される炭素原子数1~10のアルキル基としては、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシルなどが挙げられる。この炭素数は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
ジカルボン酸スズ化合物[B]の具体例としては、ジ酢酸スズ、ジピバリン酸スズ、ビス(2-エチル酪酸)スズ、ビス(2-エチルヘキサン酸)スズ、ビス(n-オクチル酸)スズ、ビス(ネオノナン酸)スズ、ビス(イソノナン酸)スズ、ビス(ネオデカン酸)スズ、ジラウリン酸スズ、ジステアリン酸スズなどが挙げられ、ビス(2-エチルヘキサン酸)スズ、ビス(イソノナン酸)スズ、ビス(ネオデカン酸)スズが好ましい。これらのジカルボン酸スズ化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ジカルボン酸スズ化合物[B]は、公知の方法によって製造することができる。たとえば、ジカルボン酸2モルと塩化第一スズ約1モルとを、約2モルのアルカリ化合物の存在下で、溶媒中において30~70℃程度の温度で加熱することによって、製造することができる。原料のジカルボン酸としては、相当するジカルボン酸の1種または2種以上の混合物を使用すればよい。市販品も使用でき、たとえば、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ネオデカン酸PG、バーサチック10などが挙げられる。
【0033】
本発明において、重合体[A]100重量部に対するジカルボン酸スズ化合物[B]の割合は、0.1~20質量部、特に1~10質量部の割合で使用するのが好ましい。前記範囲内にある場合、硬化性能や表面タックの改善において優れ、また、硬化物の物性、安定性の面でも優れる。この割合は、具体的には例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0034】
3.アルコール[C]
本発明に用いるアルコール[C]は、化学式(2)~(7)で表される。
【0035】
Hk-C-R4
4-K (2)
(式中、R4は、-(CH2)m-OHであり、mは、0~3であり、相互に同一であっても異なっていてもよい。kは、0または1である。)
【0036】
N-R5
3 (3)
(式中、R5は、-(CH2)n-OHであり、nは、1~3であり、相互に同一であっても異なっていてもよい。)
【0037】
【化4】
(式中、R
6は、-(CH
2)
p-OHであり、p=0~2であり、相互に同一であっても異なっていてもよい。Aは、酸素原子または炭素原子である。)
【0038】
【化5】
(式中、R
7は、水素原子、ヒドロキシル基または炭化水素基であり、相互に同一であっても異なっていてもよい。)
【0039】
【0040】
【0041】
式中、R7で示される炭化水素基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリー-ブチル基等が挙げられる。
【0042】
アルコール[C]の具体例としては、
化学式2で表される化合物としては、例えば、グリセリン、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
化学式3で表される化合物としては、例えば、トリエタノールアミン等が挙げられる。
化学式4で表される化合物としては、例えば、イノシトール、グルコース、ガラクトース等が挙げられる。
化学式5で表される化合物としては、例えば、4-ターシャリー-ブチルカテコール、ピロガロール、ヒドロキシノール等が挙げられる。
【0043】
アルコール[C]の中でも、4-ターシャリー-ブチルカテコール、アスコルビン酸、ピロガロール、ヒドロキシキノール、ジトラノールおよび、トリエタノールアミン、グリセリン、イノシトールが好ましく、4-ターシャリー-ブチルカテコールが更に好ましい。
【0044】
本発明において、ジカルボン酸スズ化合物[B]に対するアルコール[C]の割合は、0.1~2.0質量%、特に0.5~1.5質量%で含有するのが好ましい。前記範囲内にある場合、あらかじめジカルボン酸スズ化合物[B]に溶解させることが可能であり、アルコール[C]の分散不良を防ぐことができる点で優れる。この割合は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0045】
4.他の添加物
本発明の湿気硬化型組成物は、前記成分に加えて、さらに、硬化促進剤、充填剤、接着付与剤、着色剤、可塑剤、硬化遅延剤、タレ防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、溶剤など、硬化性組成物に通常添加される各種添加剤を配合することができる。
【0046】
硬化促進剤としては、たとえば、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、n-ヘキサデシルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7(DBU)などのアミン系化合物が挙げられる。これらのアミン化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化促進剤の使用量は、ジカルボン酸スズ化合物[B]100質量部に対して、1~200質量部が好ましく、とくに好ましくは10~100質量部である。前記範囲内にある場合、硬化促進効果が充分に発揮されたり、作業性改善や硬化後の表面タックが軽減されたりするなどの傾向がある。
【0047】
充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、クレー、焼成クレー、ガラス、ベントナイト、有機ベントナイト、シラスバルーン、ガラス繊維、石綿、ガラスフィラメント、粉砕石英、ケイソウ土、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化チタンなどが挙げられる。
充填剤の使用量は、硬化物の用途、要求性能に応じて広範に変わるものであるが、たとえば、反応性加水分解性ケイ素含有基を有する重合体[A]質量部に対して10~300質量部程度の範囲から適宜選択される。
【0048】
接着付与剤としては、公知の種々のアミノ基置換アルコキシシラン化合物、またはその縮合物を配合することができ、具体的には、γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、δ-アミノブチル(メチル)ジエトキシシラン、N,N'―ビス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンおよびこれらの部分加水分解物などが挙げられる。また、基材への密着性の向上のために、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランなどのビニルアルコキシシラン化合物を使用できる。
【0049】
着色剤としては、具体的には、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどが挙げられる。
【0050】
可塑剤としては、具体的には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジイソデシル、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、ペンタエリスリトールエステルなどのポリオール化合物のエステル類、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ系可塑剤、塩素化パラフィンなどが挙げられる。
【0051】
タレ防止剤としては、具体的には、水添ヒマシ油、無水ケイ酸、有機ベントナイト、コロイド状シリカなどが挙げられる。
【0052】
本発明の湿気硬化型組成物の硬化処理は、通常環境雰囲気下での湿気硬化による。硬化処理における硬化触媒の可使時間は、現場施工上の面から1時間以上であることが好ましく、さらに好ましくは1~8時間である。本発明においては、ジカルボン酸スズ化合物[B]を用いることにより、可使時間を1時間以上に設定することが可能であり、かつ短期間内に表面のベタツキを解消することができる。
【0053】
本発明の湿気硬化型組成物は、通常前記反応性加水分解性ケイ素含有基を有する重合体[A]を含有する主剤成分と、ジカルボン酸スズ化合物[B]を含有する硬化触媒成分とからなる2成分系硬化性組成物として使用される。もとより1成分系硬化性組成物として使用できる。
【0054】
本発明の湿気硬化型組成物は、シーリング剤、コーティング剤、弾性接着剤などの用途に使用できる。
【実施例0055】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。
【0056】
1.ジカルボン酸スズ化合物の製造例
<製造例1(ビス(2-エチルヘキサン酸スズ B-1)>
窒素導入管を取り付けた1000mlナスフラスコに、2-エチルヘキサン酸288.4g(2モル)と48%水酸化ナトリウム水溶液166.7g(水酸化ナトリウム:2モル)を量り込み、マグネチックスターラーにて充分に混合した後、塩化第一錫225g(1モル)を加え、60℃で20分反応させ、反応混合物をトルエンにて抽出し、減圧下で濃縮して淡黄色透明の液体のジカルボン酸スズ化合物B-1(ビス(2-エチルヘキサン酸)スズ)405gを得た。
【0057】
この化合物をFT-IRにて分析し、2-エチルヘキサン酸のカルボニル基の吸収1738cm-1が消失し、1650cm-1に-CO-O-Sn-O-CO-中のカルボニル基の吸収を確認した。
【0058】
<製造例2(ビス(イソノナン酸)スズ B-2)>
製造例1の2-エチルヘキサン酸をイソノナン酸316.4g(2モル)に変更し、製造例1と同じ製造設備を用い、同じ製造方法にて淡黄色透明の液体のジカルボン酸スズ化合物B-2(ビス(イソノナン酸)スズ)433gを得た。
【0059】
この化合物をFT-IRにて分析し、イソノナン酸のカルボニル基の吸収1738cm-1が消失し、1650cm-1に-CO-O-Sn-O-CO-中のカルボニル基の吸収を確認した。
【0060】
<製造例3(ビス(ネオデカン酸)スズ B-3)>
製造例1の2-エチルヘキサン酸をネオデカン酸344.6g(2モル)に変更し、製造例1と同じ製造設備を用い、同じ製造方法にて淡黄色透明の液体のジカルボン酸スズ化合物B-3(ビス(ネオデカン酸)スズ)461gを得た。
【0061】
この化合物をFT-IRにて分析し、ネオデカン酸のカルボニル基の吸収1738cm-1が消失し、1650cm-1に-CO-O-Sn-O-CO-中のカルボニル基の吸収を確認した。
【0062】
2.主剤と硬化剤の調製
表1に示される各種添加剤を同表に示される部数(質量%)添加し、混練して主剤を調製した。一方、製造例1~3で得られたジカルボン酸スズ化合物B-1~B-3および各種添加剤を表2~表4に示される割合(質量部)で混合し、混練して硬化剤を調製した。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
表中に示される材料の詳細は、以下の通りである。
カルファイン200M:炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)
スーパー1500:炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)
MSポリマー S203:シリル基含有有機重合体((株)カネカ製)
MSポリマー S303:シリル基含有有機重合体((株)カネカ製)
DINP:ジェイプラス(株)製
サンソサイザーEPS:新日本理化(株)製
アロニックスM-309:東亜合成(株)製
ディスパロン308:楠本化成(株)製
3260PW:松原産業(株)製
UV70:Sabostab UV70(SABO製)
イルガノックス1010:BASF製
ラウリルアミン:関東化学(株)製1級試薬
4-ターシャリー-ブチルカテコール:DIC(株)製、化学式(5)
アスコルビン酸:昭和電工(株)製、化学式(6)
ピロガロール:東京化成工業(株)製特級試薬、化学式(5)
ヒドロキシキノール:東京化成工業(株)製特級試薬、化学式(5)
トリエタノールアミン:米山薬品工業(株)特級試薬、化学式(3)
グリセリン:ミヨシ油脂(株)製、化学式(2)
イノシトール:東京化成工業(株)製特級試薬、化学式(4)
ジトラノール:東京化成工業(株)製特級試薬、化学式(7)
2,5-ジ-ターシャリー-ブチルハイドロキノン:精工化学(株)製
没食脂酸:富士化学工業(株)製
フロログルシノール:東京化成工業(株)製特急試薬
ジエタノールアミン:(株)日本触媒製
N,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン:東京化成工業(株)製特級試薬
1,3-プロパンジオール:東京化成工業(株)製特級試薬
1,2-シクロヘキサンジオール:東京化成工業(株)製特級試薬
【0068】
3.薄層硬化性評価
表2~表4に示す実施例・比較例の主剤と硬化剤とを混合した湿気硬化型組成物について、以下に示す薄層硬化性評価を行った。その結果を表2~表4に示す。なお、主剤および硬化剤の調製、両成分の混合から硬化まで室温25±1℃、湿度50~60%の恒温室にて行った。
【0069】
表に示すように、成分[A]~[C]を含む全ての実施例は、薄層硬化性が良好であった。一方、成分[C]の代わりに、その他アルコールを含む全ての比較例では、薄層硬化性が良好でなかった。
【0070】
<薄層硬化性評価>
主剤と硬化剤とを混合した湿気硬化型組成物をグラインドゲージに塗布して、室温25±1℃、湿度50~60%で24時間放置した後、層厚が5μm、15μm、25μmとなる位置において、ポリエチレンシートでの指触にて表面の硬化度合を判定し、以下の基準で評価した。
○:タック無し
△:タック有り
×:未硬化(ポリエチレンシートへの樹脂移り有り)