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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032597
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】電磁ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/28 20060101AFI20220217BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20220217BHJP
   H01F 7/122 20060101ALI20220217BHJP
   F16D 121/22 20120101ALN20220217BHJP
【FI】
F16D55/28 B
F16D65/16
H01F7/122 C
F16D121:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136512
(22)【出願日】2020-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】399027060
【氏名又は名称】東京モートロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中村 匡志
(72)【発明者】
【氏名】土井 修
【テーマコード(参考)】
3J058
5E048
【Fターム(参考)】
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA88
3J058BA01
3J058CC07
3J058CC72
3J058CC77
3J058FA50
5E048AB06
5E048AC05
5E048AD07
(57)【要約】
【課題】強い制動力を安定的に発揮しながらも省電力な電磁ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】
電磁ブレーキ装置1は、ブレーキディス400、固定ディスク500、アーマチュア300、アーマチュアを付勢する付勢部材200及びアーマチュアを吸引するステータ100を備える。ステータ磁路部材105はUの字形の一端から他端にかけて第1ヨーク110、永久磁石130及び第2ヨーク120の順に配置されている。回転自在状態及び回転制動状態ではコイル通電はオフで回転自在状態及び回転制動状態を保持する。回転自在状態でコイル150に第1方向の所定の大きさの電流が流されると回転制動状態に移行し、回転制動状態でコイル150に第2方向に所定の大きさの電流が流されると回転自在状態に移行するように構成されている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制動対象の回転軸の動きを制動する電磁ブレーキ装置であって、
前記回転軸と一体的に回転可能であると共に、当該回転軸の中心軸線に沿ってスライド可能なブレーキディスクと、
前記ブレーキディスクの一方の側に同軸状態に対向配置された固定ディスクと、
前記ブレーキディスクの他方の側に同軸状態に対向配置され、前記中心軸線に沿ってスライド可能なアーマチュアと、
前記アーマチュアを前記ブレーキディスクが配置された方向に押し付ける付勢部材と、
前記アーマチュアに対し前記ブレーキディスクが配置された側とは反対の側に配置され、前記アーマチュアが前記ブレーキディスクから離れる方向に吸引する磁力を発生可能なステータと、を備え、
前記ステータは、コイルと、第1ヨーク、永久磁石及び第2ヨークを含むステータ磁路部材とを有し、
前記ステータ磁路部材は、前記中心軸線を含む平面で切断した面を断面視したときに前記コイルを取り囲むような略Uの字形をなし、該Uの字形の一端側の一端面及び他端側の他端面が前記アーマチュアに面するようにして配置されており、
前記ステータ磁路部材の各要素は前記Uの字形の一端から他端にかけて前記第1ヨーク、前記永久磁石及び前記第2ヨークの順に配置されており、
前記電磁ブレーキ装置は、
前記回転軸の回転が自在となる回転自在状態においては、前記コイルへの通電はオフでありながらも、前記アーマチュアが前記ステータ磁路部材の前記一端面及び前記他端面と当接した状態を保持し、
前記回転自在状態で前記コイルに所定の大きさの第1方向の電流が流されると、前記アーマチュアが前記ブレーキディスクの側に移動し前記ブレーキディスクと当接して前記回転軸の回転が制動される回転制動状態に移行し、
前記回転制動状態においては、前記コイルへの通電はオフでありながらも、前記ブレーキディスクが前記アーマチュア及び前記固定ディスクの間に当接しながら挟みこまれた状態を保持し、
前記回転制動状態で前記コイルに前記第1方向とは逆方向の第2方向に所定の大きさの電流が流されると、前記アーマチュアが前記ステータの側に移動し、前記ブレーキディスクが前記アーマチュア及び前記固定ディスクの当接から解放されて前記回転自在状態に移行する、ように構成されている、
ことを特徴とする電磁ブレーキ装置。
【請求項2】
被制動対象の回転軸の動きを制動する電磁ブレーキ装置であって、
前記回転軸と一体的に回転可能であると共に、当該回転軸の中心軸線に沿ってスライド可能なブレーキディスクと、
前記ブレーキディスクの一方の側に同軸状態に対向配置された固定ディスクと、
前記ブレーキディスクの他方の側に同軸状態に対向配置され、前記中心軸線に沿ってスライド可能なアーマチュアと、
前記アーマチュアを前記ブレーキディスクが配置された方向に押し付ける付勢部材と、
前記アーマチュアに対し前記ブレーキディスクが配置された側とは反対の側に配置され、前記アーマチュアが前記ブレーキディスクから離れる方向に吸引する磁力を発生可能なステータと、を備え、
前記ステータは、コイルと、第1ヨーク、永久磁石及び第2ヨークを含むステータ磁路部材とを有し、
前記ステータ磁路部材は、前記中心軸線を含む平面で切断した面を断面視したときに前記コイルを取り囲むような略Uの字形をなし、該Uの字形の一端側の一端面及び他端側の他端面が前記アーマチュアに面するようにして配置されており、
前記ステータ磁路部材の各要素は前記Uの字形の一端から他端にかけて前記第1ヨーク、前記永久磁石及び前記第2ヨークの順に配置されており、
前記電磁ブレーキ装置は、
前記回転軸の回転が自在となる回転自在状態においては、前記永久磁石を起磁力源とする磁気回路によって前記アーマチュアを吸引する力の大きさが、前記付勢部材によって前記アーマチュアを付勢する力の大きさを上回り、
前記回転自在状態から前記回転軸の回転が制動される回転制動状態へと遷移する際には、前記永久磁石及び前記コイルを起磁力源とする磁気回路によって前記アーマチュアを吸引する力の大きさが、前記付勢力の大きさを下回り、
前記回転制動状態においては、前記永久磁石を起磁力源とする磁気回路によって前記アーマチュアを吸引する力の大きさが、前記付勢力の大きさを下回り、
前記回転制動状態から前記回転自在状態へと遷移する際には、前記永久磁石及び前記コイルを起磁力源とする磁気回路によって前記アーマチュアを吸引する力の大きさが、前記付勢力の大きさを上回る、ように構成されている、
ことを特徴とする電磁ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁ブレーキ装置において、
前記回転自在状態における、前記永久磁石を起磁力源とする磁気回路によって前記アーマチュアを吸引する力の大きさと、前記付勢部材による前記アーマチュアを付勢する力の大きさとの差をΔf1とし、
前記回転制動状態における、前記永久磁石を起磁力源とする磁気回路によって前記アーマチュアを吸引する力の大きさと、前記付勢部材による前記アーマチュアを付勢する力の大きさとの差をΔf2としたときに、
Δf2>Δf1となるように前記永久磁石の起磁力、並びに、前記付勢部材のばね係数及び当該付勢部材の変位が設定されている、
ことを特徴とする電磁ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の電磁ブレーキ装置において、
前記永久磁石は、前記回転軸の前記中心軸線に近い前記Uの字形の前記一端の側で、かつ、前記一端面寄りの位置に配置されている、
ことを特徴とする電磁ブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の電磁ブレーキ装置において、
前記中心軸線を含む平面で前記電磁ブレーキ装置を切断した面を断面視したときに、前記中心軸線に垂直な方向の前記永久磁石の幅をWとし、前記中心軸線に垂直な方向の前記第1ヨークの前記一端面又は前記第2ヨークの前記他端面の幅をWとしたときに、
<Wとなるように構成されている、
ことを特徴とする電磁ブレーキ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電磁ブレーキ装置において、W<(W/2)となるように構成されていることを特徴とする電磁ブレーキ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己保持型の電磁ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被制動対象(例えばモータ、車等)の回転軸(例えばモータのシャフト、車輪の軸等)の動きを制動する装置として電磁ブレーキ装置が知られている。
従来の電磁ブレーキ装置(無励磁作動型)は、例えば特許文献1~3に記載されているように、回転軸と一体的に回転可能であると共に当該回転軸の中心軸線に沿ってスライド可能なブレーキディスクと、ブレーキディスクの一方の側に同軸状態に対向配置された固定ディスクと、ブレーキディスクの他方の側に同軸状態に対向配置され中心軸線に沿ってスライド可能なアーマチュアと、アーマチュアをブレーキディスクが配置された方向に押し付けるコイルばねと、アーマチュアに対しブレーキディスクが配置された側とは反対の側に配置され、アーマチュアがブレーキディスクから離れる方向に吸引する磁力を発生可能な、コイル及びヨークからなる電磁石と、を備える。
【0003】
従来の電磁ブレーキ装置(無励磁作動型)は、電磁石が励磁されていないときには、コイルばねの付勢力によってアーマチュアが付勢され、これによりブレーキディスクがアーマチュア及び固定ディスクの間に当接しながら挟みこまれて回転軸の回転が制動される。一方、電磁石が励磁されると電磁石から磁力が発生してアーマチュアが吸引され、上記したコイルばねの付勢力に逆らうようにしてアーマチュアがステータの側に移動し、ブレーキディスクがアーマチュア及び固定ディスクの当接から解放され、回転軸の回転が自在となる。
【0004】
しかしながら、従来の電磁ブレーキ装置(無励磁作動型)によれば回転自在状態においては常に電磁石のコイルに電流を流し続ける必要がある。このため省電力とはいえない。
【0005】
このような課題を解決するものとして、コイルばねを用いず、ブレーキの作動状態及び非作動状態(回転自在状態)の間で状態を遷移するときのみ電力を消費するいわゆる「自己保持型」の電磁ブレーキ装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭57-122836号公報
【特許文献2】特開2010-144852号公報
【特許文献3】特開2019-199957号公報
【特許文献4】特開平9-229105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6は、特許文献4に記載された電磁ブレーキ装置900の構成を示す図である。特許文献4に記載された電磁ブレーキ装置は、詳しい説明を省略するが、アーマチュアがロビン型のものであるため次のような課題を有している。
【0008】
(a)ブレーキの作動/非作動の状態切替に資する磁気回路上の場所(力点ともいえる)であるステータ磁路部材960の一端961及び他端962付近の第2フランジ部932と、ハブ916への押し付けを行い回転部の制動に資する場所(作用点ともいえる)である第1フランジ部931のブレーキ当接面931aと、が物理的に離れている。したがって、必ずしも上記した無励磁作動型の電磁ブレーキ装置のような強い制動力を得ることができない。
(b)アーマチュア930がロビン型であるため、第1フランジ部931及び第2フランジ部932が互いに動きを規制するという宿命を負っている。このため、第1フランジ部931側で、ブレーキ当接面931aを摩擦材913に当接してブレーキ作動状態としたときには、第2フランジ部932側では、第2フランジ部932の他方側の面932bとステータ磁路部材960の他端962との間には必ずエアギャップ9bを確保する必要がある。また、第2フランジ部932を挟んだ反対側にもエアギャップ9aが存在している。このため、エアギャップ9a,9bにより磁気回路上の磁気抵抗が大きくなり、これに伴い通過する磁束が小さくなり、その結果必ずしも十分な吸引力を得ることができない。よって、必ずしも強い制動力を得ることができない。
(c)摩擦材913が摩耗するとエアギャップ9bが減少し最終的には0(ゼロ)となる可能性がある。そうすると、ハブ916に対する押し付けの力が弱くなり、制動力を安定的に発揮できなくなる。
(d)アーマチュア930は中心軸線AXと平行な方向に沿って移動させる必要があるため、永久磁石933と第2フランジ部932の端部(図示を省略)との間にクリアランス9cを確保する必要がある。なお、永久磁石933の両隣に図示されている符号934はスペーサでありヨークとして機能していない。永久磁石933からみてヨークとして機能しているのはステータ磁路部材960及び第2フランジ部932である。このようにクリアランス9cが必要となるため磁気回路上の磁気抵抗が大きくなり、これに伴い通過する磁束が小さくなり、その結果必ずしも十分な吸引力を得ることができない。よって、必ずしも強い制動力を得ることができない。
【0009】
そこで、本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、強い制動力を安定的に発揮しながらも省電力な電磁ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、回転軸と一体的に回転可能であると共に、当該回転軸の中心軸線に沿ってスライド可能なブレーキディスクと、ブレーキディスクの一方の側に同軸状態に対向配置された固定ディスクと、ブレーキディスクの他方の側に同軸状態に対向配置され、中心軸線に沿ってスライド可能なアーマチュアと、アーマチュアをブレーキディスクが配置された方向に押し付ける付勢部材と、アーマチュアに対しブレーキディスクが配置された側とは反対の側に配置され、アーマチュアがブレーキディスクから離れる方向に吸引する磁力を発生可能なステータと、を備えた被制動対象の回転軸の動きを制動する電磁ブレーキ装置が提供される。
ここで、ステータは、コイルと、第1ヨーク、永久磁石及び第2ヨークを含むステータ磁路部材とを有する。ステータ磁路部材は、中心軸線を含む平面で切断した面を断面視したときにコイルを取り囲むような略Uの字形をなし、該Uの字形の一端側の一端面及び他端側の他端面がアーマチュアに面するようにして配置されている。ステータ磁路部材の各要素はUの字形の一端から他端にかけて第1ヨーク、永久磁石及び第2ヨークの順に配置されている。
電磁ブレーキ装置は、(i)回転軸の回転が自在となる回転自在状態においては、コイルへの通電はオフでありながらも、アーマチュアがステータ磁路部材の一端面及び他端面と当接した状態を保持し、(ii)回転自在状態でコイルに所定の大きさの第1方向の電流が流されると、アーマチュアがブレーキディスクの側に移動しブレーキディスクと当接して回転軸の回転が制動される回転制動状態に移行し、(iii)回転制動状態においては、コイルへの通電はオフでありながらも、ブレーキディスクがアーマチュア及び固定ディスクの間に当接しながら挟みこまれた状態を保持し、(iv)回転制動状態でコイルに第1方向とは逆方向の第2方向に所定の大きさの電流が流されると、アーマチュアがステータの側に移動し、ブレーキディスクがアーマチュア及び固定ディスクの当接から解放されて回転自在状態に移行するように構成されている。
【0011】
また、本発明の別の態様によれば、電磁ブレーキ装置は(イ)回転軸の回転が自在となる回転自在状態においては、永久磁石を起磁力源とする磁気回路によってアーマチュアを吸引する力の大きさが、付勢部材によってアーマチュアを付勢する力(付勢力)の大きさを上回り、(ロ)回転自在状態から回転軸の回転が制動される回転制動状態へと遷移する際には、永久磁石及びコイルを起磁力源とする磁気回路によってアーマチュアを吸引する力の大きさが、上記付勢力の大きさを下回り、(ハ)回転制動状態においては、永久磁石を起磁力源とする磁気回路によってアーマチュアを吸引する力の大きさが、上記付勢力の大きさを下回り、(ニ)回転制動状態から回転自在状態へと遷移する際には、永久磁石及びコイルを起磁力源とする磁気回路によってアーマチュアを吸引する力の大きさが、上記付勢力の大きさを上回るように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば強い制動力を安定的に発揮しながらも省電力な電磁ブレーキ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る電磁ブレーキ装置1の斜視図である。
図2】実施形態に係る電磁ブレーキ装置1を、図1(a)のPL1,PL2で示す2つの仮想面を展開して矢印Aに沿って見たときのA-A矢視断面図である。
図3】実施形態に係る電磁ブレーキ装置1の機能を説明するために示す図である。
図4】ステータ100によってアーマチュア300を吸引する力(吸引力fsc)及び付勢部材200によってアーマチュア300を付勢する力(ばね力fsp)を、アーマチュア300の位置との関係の下で表したグラフである。
図5】変形例に係る電磁ブレーキ装置2の要部拡大断面図である。
図6】特許文献4に記載された電磁ブレーキ装置900の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る電磁ブレーキ装置の実施形態について図面を参照して説明する。各図面は一例を示した模式図であり、必ずしも実際の寸法、比率等を厳密に反映したものではない。
【0015】
1.実施形態に係る電磁ブレーキ装置1の構成
(1)電磁ブレーキ装置1の概要
実施形態に係る電磁ブレーキ装置1は、図示しない被制動対象(モータ、各種の車等)の回転軸(モータのシャフト、車輪の軸等)の動きを制動する電磁ブレーキ装置である。
【0016】
図1は、実施形態に係る電磁ブレーキ装置1の斜視図である。図1(a)は電磁ブレーキ装置1の外観を示す図であり、図1(b)は電磁ブレーキ装置1を回転軸(シャフト700)の中心軸線AXに沿って分解したときの図である。図1においてリード線の表示は省略している。図2は、実施形態に係る電磁ブレーキ装置1を、図1(a)のPL1,PL2で示す2つの仮想面(ボルトねじ630,中心軸線AX,コイルばね200を含む仮想面)を展開して矢印Aに沿って見たときのA-A矢視断面図である。図2は、回転制動状態のときを示している。リブ、シャフト、ベアリング等の表示は省略している。
【0017】
図1及び図2に示すように、電磁ブレーキ装置1は、ステータ100、アーマチュア300、ブレーキディスク400及び固定ディスク500を備え、これらが図面左側から右側にかけてこの順番で回転軸(シャフト700)の中心軸線AXに沿って配置されている。付勢部材としてのコイルばね200は、ステータ100のばね穴125に配設されている《図1(b)及び図2参照》。
なお、回転軸(シャフト700)は必ずしも電磁ブレーキ装置1の必須構成要素というわけではないが、図1においては理解容易とするため他の構成要素と併せて示している。以下においてシャフトを回転軸700ということがあり、回転軸をシャフト700ということがある。同様に、コイルばねを付勢部材200ということがあり、付勢部材をコイルばね200ということがある。これらは相互に言い換えが可能である。
【0018】
電磁ブレーキ装置1を使用する際には、例えば適宜の固定部(被制動対象の固定部等)にステータ100を固定し、被制御対象のシャフト700をハブ610(後述)の開口部612に嵌挿し、当該シャフト700をボルトねじによりねじ穴(図示を省略)を通じてハブ610に固定するようにしてもよい。また、図1のようにシャフト700が電磁ブレーキ装置1のハブ610に予め嵌挿されている場合には、カップリング等を用いて当該シャフト700と被制動対象の回転部とを接続してもよい。
電磁ブレーキ装置1は、上記のように被制動対象に固定・接続した上で、リード線(図示を省略)を通じて外部からコイル150(後述)に所定の大きさの意図した方向の電流を流すとアーマチュア300が動くようになっている(詳細は後述)。なお、ここでの「固定・接続」は、直接的に行う固定・接続であっても別部品を介して間接的に行う固定・接続であっても構わない。
【0019】
ブレーキディスク400は、ハブ610と共に回転軸700と一体になって中心軸線AXを中心に回転するようになっている。アーマチュア300が固定ディスク500の側に移動し、固定ディスク500と共にブレーキディスク400を当接しながら挟み込むと、ブレーキディスク400はアーマチュア300及び固定ディスク500とのそれぞれの間の摩擦力によって動きが制動される。これによって回転軸700の動きも間接的に制動される(回転が減速する,回転が停止する,回転方向の動きを拘束する)。一方、アーマチュア300がステータ100側に移動すると、ブレーキディスク400がアーマチュア300及び固定ディスク500による当接から解放され回転が自在となる。これに伴い回転軸700も間接的に回転自在となる。
【0020】
以下、電磁ブレーキ装置1の各構成要素の詳細について構造を中心に説明を続ける。
(2)ブレーキディスク400
ブレーキディスク400は、回転軸700と一体的に回転可能であると共に、当該回転軸700の中心軸線AXに沿ってスライド可能になっている。ブレーキディスク400は、略リング状をなし、一方の側に固定ディスク500と当接する摩擦面を有しており、他方の側にアーマチュア300と当接する摩擦面を有している。
ブレーキディスク400は、スペーサディスク410と、該スペーサディスク410を挟むようにしてスペーサディスク410の両面に配置されたブレーキパッド420とを有している。
ブレーキパッド420は一定幅のリング状をなしており、一方の面はスペーサディスク410に密着固定され、他方の面(表面)は上記した摩擦面を形成している。ブレーキパッド420は比較的高い摩擦係数を有する材料でありながらも耐久性が高いものが望ましい。ブレーキパッド420の幅はスペーサディスク410の幅よりも遥かに狭い幅としている。スペーサディスク410は略リング状をなし、中央にはハブ610(後述)の輪郭形状に即した略四角形をした開口部412が形成されている《図1(b)参照》。スペーサディスク410は非磁性体、軟磁性体のどちらであっても構わない。
なお、ブレーキディスク400においてブレーキパッド420の配設を省略し、スペーサディスク410のみでブレーキディスク400を構成しても構わない。
【0021】
(3)ハブ610
ハブ610は、中心貫通孔を有しており、シャフト700が中心貫通孔の開口部612から嵌挿できるようになっている。嵌挿されたシャフト700は図示しない固定ねじでハブ610に固定できるようになっている。
ハブ610の外形は略四角柱であるが、四つの角においては中心貫通孔の中心である中心軸線AXを中心とする円弧とほぼ同等の輪郭形状に形成されており(厳密にいうと完全な円弧ではなく単に直線で面取りをした形状であって構わない)、上記したスペーサディスク410の開口部412の開口と整合するようになっている。この略四角形をなす輪郭形状のハブ610の外形寸法は、上記スペーサディスク410の開口部412の寸法よりも若干小さめに設定されており、ハブ610が上記スペーサディスク410の開口部412に嵌めることができるようになっている。
スペーサディスク410(ひいてはブレーキディスク400)とハブ610とはこのような関係になっているため、ブレーキディスク400は回転方向でハブ610に拘束されることになり、ハブ610(ひいては回転軸700)と一体的に回転するようになっている。その一方でスラスト方向にあっては、ブレーキディスク400は中心軸線AXに沿ってスライドできるようになっている。
【0022】
(4)固定ディスク500
固定ディスク500は、ブレーキディスク400の一方の側に同軸状態に対向配置されている。固定ディスク500は中央が開口した略リング状をなしており、開口部512においてシャフト700、ハブ610等を逃がしてこれらと干渉しないようになっている。
固定ディスク500のブレーキディスク400が配置される側にはブレーキディスク400と当接する摩擦面(図示を省略)を有している。固定ディスク500には皿穴510が120°間隔で3箇所設けられており、当該皿穴510に固定ディスク500の摩擦面が設けられた側の反対側からボルトねじ630が挿入できるようになっている。
ボルトねじ630が円筒状のカラー640の内孔642を貫通してステータ100(外周側の第2ヨーク120)に設けられたねじ穴124に螺合しており、これにより固定ディスク500はカラー640の高さで規定された離間間隔を保ちつつ、ステータ100に対し固定されている。
【0023】
(5)アーマチュア300
アーマチュア300は、ブレーキディスク400の他方の側に同軸状態に対向配置されている。アーマチュア300は軟磁性体からなる。アーマチュア300は、中央が開口した略リング状をなしており、開口部312においてシャフト700、ハブ610等を逃がしてこれらと干渉しないようになっている。
アーマチュア300のブレーキディスク400が配置される側にはブレーキディスク400と当接する摩擦面(図示を省略)を有している。かかる摩擦面が設けられた面とは反対側の面は、後述するステータ100のヨーク(110,120)と当接する当接面や、後述するコイルばね200の付勢を受ける面などを有している。
また、アーマチュア300の外周縁には、上記したカラー640に対応した位置に切り欠き320が設けられている。かかる切り欠き320にはカラー640が緩く係合しており、アーマチュア300がコイルばね200による付勢力やステータ100による吸引力によって移動する際には(詳細は後述)、アーマチュア300は切り欠き320を介してカラー640に案内されて中心軸線AXに沿ってスラスト方向にスライドできるようになっている。
【0024】
(6)コイルばね200(付勢部材)
付勢部材としてのコイルばね200は、後述するステータ100の第2ヨーク120に設けられた円形凹状のばね穴125に落とし込まれ、その一端がばね穴125の底となるばねの壁125aに当接されて規制され、他端がばね穴125からアーマチュア300の方向に中心軸線AXに沿って突出してアーマチュア300に当接している(図2参照)。
コイルばね200は、アーマチュア300の移動に伴ってその他端側も中心軸線AXに沿って、アーマチュア300が配置された側に伸縮可能となっている。
付勢部材としてのコイルばね200は、アーマチュア300をブレーキディスク400が配置された方向に押し付けている。なお、本明細書においてアーマチュア300をブレーキディスク400が配置された方向に押し付けることを「付勢する」というものとし、この押し付ける力を「付勢力fsp又はばね力fsp」というものとする。
なお、実施形態では付勢部材としてコイルばね200を取り上げて説明したが、これに限られるものではない。例えば、板バネ、適宜のアクチュエータ等により付勢部材を実現しても構わない。
【0025】
(7)ステータ100
ステータ100は、アーマチュア300に対しブレーキディスク400が配置された側とは反対の側に配置され、「アーマチュア300がブレーキディスクから離れる方向」に吸引する磁力を発生できるようになっている。なお、本明細書においてアーマチュア300を吸引する力を「吸引力fsc」というものとする。図2に示すように、ステータ100は大まかに捉えると、コイル150と、第1ヨーク110、永久磁石130及び第2ヨーク120を含むステータ磁路部材105とを有している。
【0026】
(7-1)コイル150は、リード線(図示を省略)を介して外部から所定の大きさの意図した方向の電流を供給し通電することにより、ステータ磁路部材105、アーマチュア300等の磁気回路(詳細は後述)を構成する部材を励磁する。コイル150は、ボビン140を用いて、当該ボビン140のレールに沿って中心軸線AXを中心に電線を巻回することによって得てもよい。なお、ボビン140は絶縁材からなる。
【0027】
(7-2)ステータ磁路部材105は、中心軸線AXを含む平面で切断した面を断面視したときに(図2のような状態)、コイル150を取り囲むような略Uの字形をなし、該Uの字形の一端側の一端面112及び他端側の他端面122がアーマチュア300に面するようにして配置されている。ステータ磁路部材105の各要素は、上記したUの字形の一端(回転軸に近い側)から他端(回転軸に遠い側)にかけて第1ヨーク110(内周ヨーク)、永久磁石130及び第2ヨーク120(外周ヨーク)の順に配置されている。
【0028】
なお、永久磁石130は、回転軸700の中心軸線AXに近い上記Uの字形の一端の側で、かつ、一端面寄りの位置に配置されているのが好ましい。
【0029】
ここで、ステータ磁路部材105の断面形状が「略Uの字形」というのは、一端側の一端面112及び他端側の他端面122がアーマチュア300に面しており、且つ、一端面112と他端面122との間を結ぶ部材は特段のエアギャップもなく閉じて連続しているという意味での「略Uの字形」であり、この限りにおいては略Cの字形や略くの字形に近いものもここでいう「略Uの字形」に含まれる。また、ここでの「ステータ磁路部材105」は、磁気回路(詳細は後述)を構成する部材一般をいうものとし、ヨークの他に永久磁石も含む概念とする。第1ヨーク110及び第2ヨーク120は軟磁性体からなる。
【0030】
(7-3)ステータ磁路部材105の断面形状は上記した通りであるが、ステータ磁路部材105の全体としては中央が開口した略リング形状又は略円筒形状をなしている《図2及び図1(b)参照》。ステータ磁路部材105の開口部102にはボールベアリング(図示を省略)が埋め込まれており、ボールベアリングの外輪がステータ磁路部材の側に固定されつつ、ボールベアリングの内輪がシャフト700に固定されている。
【0031】
(7-4)第2ヨーク120も同様に全体として中央が開口した略リング形状又は略円筒形状をなしており、アーマチュア300側に開口した円環状の凹溝121が形成されている。円環状の凹溝121を形成する第2ヨーク120の外周寄り(RD方向寄り)の壁はステータ磁路部材105の「他端」を構成しており、この他端におけるアーマチュア300に面した面はステータ磁路部材105の「他端面122」となっている。他端面122はアーマチュア300と当接する面となる。他端面122の幅は、他端面122以外の第2ヨーク120の幅(外周寄りの壁の幅)よりも小さく(狭く)設定されている。
円環状の凹溝121には、ボビン140と共にコイル150が収容されている。
円環状の凹溝121を形成する中央寄り(-RD方向寄り)の壁は、外周寄り(RD方向寄り)の壁よりも1段低くなっており、この中央寄りの低い方の段にリング状の永久磁石130が積層され、更にその上に、第2ヨーク120と共に永久磁石130を挟むようにしてリング状の第1ヨーク110が積層されている。
第2ヨーク120には円形凹状のばね穴125が形成されている。また、第2ヨーク120にはボルトねじ630と組み合わせて螺合可能なねじ穴124が形成されている。
【0032】
(7-5)永久磁石130は、やや扁平したリング状をなしており、例えば一方の面をN極、他方の面をS極となるように着磁したものを採用することができる。
永久磁石130は、該永久磁石130が有する正の磁極(N極)及び負の磁極(S極)を互いに結ぶ磁軸が、第1ヨーク110、永久磁石130及び第2ヨーク120が積層する方向(図2では左右方向)と一致するようにして配置されている。実施形態の例では、固定ディスク500が配置された側(図2右側の第1ヨーク110が積層された側)に正の磁極(N極)が出現し、それとは逆の側(図2左側の第2ヨーク120が積層された側)に負の磁極(S極)が出現するようにして永久磁石130を配置している。なお、正の磁極及び負の磁極の配置は、後述するコイル150への通電の制御を整合させるのであれば、上記と逆に配置しても構わない。
【0033】
(7-6)第1ヨーク110は、全体として中央が開口した略リング形状をなしており、アーマチュア300に面した側において、中央寄りが外周寄りの縁よりも1段低くなって略カップ状になっている。この外周寄りの縁の部分は、ステータ磁路部材105の「一端」を構成しており、その端面はステータ磁路部材105の「一端面112」となっている。一端面112はアーマチュア300と当接する面となる。
【0034】
(7-7)一端面112の幅Wは、一端面112を含む第1ヨーク110の全体の幅(この例では永久磁石130の幅Wと実質的に同じ)よりも小さく(狭く)設定されている。また、中心軸線AXを含む平面で電磁ブレーキ装置1を切断した面を断面視したときに、中心軸線AXに垂直な方向の永久磁石130の幅をWとし、中心軸線AXに垂直な方向の第1ヨーク110の一端面112又は第2ヨーク120の他端面122の幅をWとしたときに、W<Wとなるように構成されている。さらに、W<(W/2)となるように構成するのがより好ましい。
【0035】
2.実施形態に係る電磁ブレーキ装置1の機能
次に、電磁ブレーキ装置1の機能について図3~4を参照しながら順次説明する。
図3は、実施形態に係る電磁ブレーキ装置1の機能を説明するために示す図である。図3(a)、図3(c)、図3(e)及び図3(g)は第1フェーズ~第4フェーズにそれぞれ対応した要部拡大断面図である。なお、本図の各構成要素は模式的に示しているため図1及び図2の各構成要素とは寸法、比率等が異なっている。図3(b)、図3(d)、図3(f)及び図3(h)は第1フェーズ~第4フェーズにそれぞれ対応した電磁ブレーキ装置1に等価な磁気回路の図を示している。
【0036】
(1)電磁ブレーキ装置1に等価な磁気回路
まず、電磁ブレーキ装置1の機能を説明するにあたり、電磁ブレーキ装置1に等価な磁気回路についてはじめに説明する。
電磁ブレーキ装置1はこれまで述べたような構造を採っているため、1つの閉じた「磁気回路」を構成している。
「磁気回路」は、永久磁石130,コイル150を起磁力源として、永久磁石130のN極、第1ヨーク110、一端面112~アーマチュア300間のエアギャップAG、アーマチュア300、アーマチュア300~他端面122間のエアギャップAG、第2ヨーク120、永久磁石130のS極の経路によって作られた回路をいうものとする。但し、磁極の向きについては上記で例示した永久磁石の磁極配置の場合を想定したものである。
ここで、永久磁石130の起磁力をFmgとし、コイルの起磁力をFとし、磁気回路を構成する経路の磁気抵抗のうち第1ヨーク110、アーマチュア300及び第2ヨーク120による磁気抵抗(すなわちアーマチュア300がステータ磁路部材105の一端面112及び他端面122と当接した状態の全抵抗と同じ)をRCONとし、アーマチュア300がステータ100から離れエアギャップAGが少しでも生じているときの当該エアギャップAG部分の磁気抵抗をRAGとし、磁気回路を通過する磁束をΦとする《図2及び後述する図3参照》。
本実施形態においては、Fmgは一定であり、Fはコイルに流す電流の向き・大きさによって変わるものとし、RCONは一定であるとし、RAGはエアギャップAGの大きさによって変わるものとし、Φ(フェーズ番号に応じた添え字を付す)は状態によって変わり得るものとする。
【0037】
(1-1)第1フェーズの磁気回路
図3(a)に示すように、アーマチュア300がステータ100に完全に引き寄せられているときは回転軸の回転が自在となる。この状態を「回転自在状態」というものとする。回転自在状態でコイル150に電流を流さないとしたときの等価な磁気回路は、図3(b)に示す通りとなり、起磁力は永久磁石130によるFmgのみである(永久磁石を起磁力源とする磁気回路)。エアギャップAGは0(ゼロ)であるためRAGも0(ゼロ)となり全体の磁気抵抗はRCONのみとなる。このときの磁束はΦである。
【0038】
(1-2)第2フェーズの磁気回路
図3(c)に示すように、第1フェーズの回転自在状態でコイル150に所定の大きさの第1方向(ここでは紙面表面から紙面裏面の方向)の電流が流されると、アーマチュア300がブレーキディスク400の側(矢印B)に移動し始めることとなる。この状態に等価な磁気回路は、図3(d)に示す通りとなる。この回路における起磁力は永久磁石130によるFmgと、永久磁石の起磁力Fmgを減じる方向のコイル150による起磁力Fであり、これらを合成した全体の起磁力はFmg-Fである(永久磁石及びコイルを起磁力源とする磁気回路)。エアギャップAGが生じているためRAGも0(ゼロ)の状態から値ある状態となり、全体の磁気抵抗はRCON+RAGとなる。このときの磁束はΦである。このときの磁束Φの値は磁束Φの値よりも小さくなっている。したがって、第1フェーズよりも吸引力fscは弱まる方向となる。一般に、磁気回路においてエアギャップが大きいほどアーマチュアに働く吸引力も小さくなることが知られている。エアギャップが大きいと磁気回路全体の磁気抵抗が大きくなり、これに伴いエアギャップAG付近を通過する磁束が小さくなって吸引力が減じられるからである。
【0039】
(1-3)第3フェーズの磁気回路
図3(e)に示すように、アーマチュア300がブレーキディスク400を押し付け、ブレーキディスク400が完全にアーマチュア300及び固定ディスク500の間に当接しながら挟み込まれているときには回転軸の回転が制動される。この状態を「回転制動状態」というものとする。回転制動状態でコイル150に電流を流さないとしたときの等価な磁気回路は、図3(f)に示す通りとなり、起磁力は永久磁石130によるFmgのみである(永久磁石を起磁力源とする磁気回路)。エアギャップAGに対応した磁気抵抗はRAGはエアギャップの最大値AGmaxに対応した値となり、全体の磁気抵抗はRCON+RAG(AG=AGmax)となる。このときの磁束はΦである。一般にΦ≦Φ≦Φとなっている。
【0040】
(1-4)第4フェーズの磁気回路
図3(g)に示すように、第3フェーズの回転制動状態でコイル150に第1方向とは逆方向の第2方向(ここでは紙面裏面から紙面表面の方向)に所定の大きさの電流が流されると、アーマチュア300がステータ100の側(矢印C)に移動し始めることとなる。この状態に等価な磁気回路は、図3(h)に示す通りとなる。この回路における起磁力は永久磁石130によるFmgと、永久磁石の起磁力Fmgに加勢する方向のコイル150による起磁力Fであり、これらを合成した全体の起磁力はFmg+Fである(永久磁石及びコイルを起磁力源とする磁気回路)。エアギャップAGは減少しつつあるものの依然として残存していることからRAGも値ある状態となり、全体の磁気抵抗はRCON+RAGとなる。このときの磁束はΦである。このときの磁束Φの値は磁束Φの値よりも大きくなっている。したがって、第3フェーズよりも吸引力fscは強まる方向となる。第2フェーズのときと逆で、エアギャップが小さくなると磁気回路全体の磁気抵抗が小さくなり、これに伴いエアギャップAG付近を通過する磁束が大きくなって吸引力が強まるからである。
【0041】
(2)電磁ブレーキ装置1の諸元
アーマチュア300付近の構造からも分かるように(図2及び図3参照)、アーマチュア300の挙動・状態は、コイルばね200による「ばね力fsp」と、磁気回路によって生じる磁束Φ(厳密にいうとアーマチュア300~ステータ磁路部材105の一端面112及び/又は他端面122の間を通過する磁束Φ)による「吸引力fsc」と、の合成により決まってくることが理解できる。
ここで、ばねの強さ(ばね定数、ばねの配置位置(ばねの縮み量)、永久磁石の起磁力、コイルの起磁力、ヨークの透磁率、エアギャップの最大値AGmax等の「諸元」については本発明の作用・効果を奏する限りにおいて適宜に設定することができるが、本実施形態では、例えば図4に示すようなばね力fsp,吸引力fscを生じるように(詳細は次に説明)、これらの「諸元」が設定されて電磁ブレーキ装置1を構成している。
【0042】
(3)ばね力fsp,吸引力fscの関係とアーマチュア300の動き
図4は、ステータ100によってアーマチュア300を吸引する力(吸引力fsc)及び付勢部材200によってアーマチュア300を付勢する力(ばね力fsp)を縦軸とし、アーマチュア300の位置を横軸として、それらの関係を表したグラフである。縦軸のプラス域において符号Dで示す2点鎖線は、ばね力fspの大きさと吸引力fscの大きさを符号なしの状態で比較するために示す「ばね力の絶対値|fsp|」の曲線である。図中の矢印はフェーズの移行方向を示している。グラフにおいて横軸としているアーマチュア300の位置は、ヨーク(第1ヨーク110,第2ヨーク120)とアーマチュア300と間の間隔であるともいえ、具体的にはアーマチュア300のステータ100側の面とステータ磁路部材105の一端面112及び/又は他端面122との間のエアギャップAGに相当する。
以下、電磁ブレーキ装置1におけるばね力fsp,吸引力fscの関係と、アーマチュア300の動きについて、図4を参照しながら(図3も併せて参照)説明を続ける。
【0043】
(3-1)第1フェーズ(回転自在状態の自己保持)
第1フェーズは回転自在状態を自己保持するフェーズである。
グラフにおいて電磁ブレーキ装置1が第1フェーズにあるとき(AG=0のとき)には、吸引力が取る座標(0,fsc1)は、曲線Dで示すばね力の絶対値の座標よりもΔf1分だけ上にある。換言すると、回転軸700の回転が自在となる回転自在状態においては、永久磁石130を起磁力源とする磁気回路によってアーマチュア300を吸引する力(吸引力)fsc1の大きさが、付勢部材200によってアーマチュア300を付勢する力(ばね力又は付勢力)fsp1の大きさを上回っている。
ところで、第1フェーズではコイル150への通電はオフである。第1フェーズの磁気回路において起磁力源は永久磁石130のみであり、これだけだと吸引力fscが十分引き出せないようにも思える。しかし、一般に吸引力がアーマチュアの位置によって変わること(一般に、エアギャップAGが小さいほど磁気抵抗RAGも小さくなりアーマチュアに働く吸引力は大きくなる)を上手く活用して諸元を最適に設定すれば、永久磁石130のみによる吸引力fscだけでばね力fspを上回るように構成することができる。
【0044】
このように電磁ブレーキ装置1は、第1フェーズでは、コイル150への通電がオフでありながらも《図3(a)及び図3(b)参照》吸引力fscがばね力fspを常に勝るように構成されており、アーマチュア300が常にステータ100の側に引き付けられ、アーマチュア300がステータ磁路部材105の一端面112及び他端面122と当接した状態を保持するようになっている。
【0045】
(3-2)第2フェーズ(回転自在状態から回転制動状態への遷移)
第2フェーズは、第1フェーズ(回転自在状態)から第3フェーズ(回転制動状態)に遷移する過程のフェーズである。
第1フェーズの状態においてコイル150に所定の大きさの第1方向《図3(c)参照》の電流が流されると、上述したように永久磁石の起磁力Fmgを減じる方向のコイル150による起磁力Fが発生し、合成後の全体の起磁力はFmg-Fとなり、結果的に吸引力fscが弱められるようになっている。
第1フェーズから第2フェーズに移行すると、上記した原理により吸引力が弱まり第1フェーズの吸引力が取る座標が(0,fsc1)だったのが一旦(0,fsc2)に移行する。このとき、グラフのようにばね力の絶対値|fsp1|が吸引力fsc2に勝るため、アーマチュア300がステータ100から離されていくようになる(これに伴いエアギャップAGも増加する)。上記したように吸引力はアーマチュアの位置によって変わるため、吸引力fscはアーマチュア300の移動につれて(AGの変化につれて)グラフの曲線Eに沿って変化することとなる。一方、ばね力fspはばねの縮み量に応じて変化することから、ばね力fspについてもアーマチュア300の移動につれてグラフの直線Hに沿って変化することとなる。そして、回転制動状態となりアーマチュア300がそれ以上移動できないところまでエアギャップが広がると吸引力fscの取る座標は(AGmax,fsc3)となる。この間、吸引力fsc(曲線E)は常にばね力のばね力の絶対値(曲線D)を下回っている。
【0046】
つまり、回転自在状態から回転軸700の回転が制動される回転制動状態へと遷移する際(第2フェーズ)には、永久磁石130及びコイル150を起磁力源とする磁気回路によってアーマチュア300を吸引する力の大きさ(吸引力fsc)が、付勢力(ばね力fsp)の大きさを下回っている。
【0047】
別の言い方をすると、電磁ブレーキ装置1は、回転自在状態でコイル150に所定の大きさの第1方向の電流が流されると、アーマチュア300がブレーキディスク400の側に移動し、ブレーキディスク400と当接して回転軸700の回転が制動される「回転制動状態」に移行するよう構成されている。
【0048】
(3-3)第3フェーズ(回転制動状態の自己保持)
第3フェーズは回転制動状態を保持するフェーズである。
グラフにおいて電磁ブレーキ装置1が第3フェーズにあるとき(AG=AGmaxのとき)には、吸引力が取る座標(AGmax,fsc4)は、曲線Dで示すばね力の絶対値の座標よりもΔf2分だけ下にある。換言すると、回転制動状態においては、永久磁石130を起磁力源とする磁気回路によってアーマチュア300を吸引する力(吸引力)fsc4の大きさが、付勢力(ばね力)fsp2の大きさを下回っている。
【0049】
このように電磁ブレーキ装置1は、第3フェーズでは、コイル150への通電はオフでありながらも《図3(e)及び図3(f)参照》、ばね力fspが吸引力fscを常に勝るように構成されており、ブレーキディスク400がアーマチュア300及び固定ディスク500の間に当接しながら挟みこまれた状態を保持するようになっている。
【0050】
(3-4)第4フェーズ(回転制動状態から回転自在状態への遷移)
第4フェーズは、第3フェーズ(回転制動状態)から第1フェーズ(回転自在状態)に遷移する過程のフェーズである。
第3フェーズの状態においてコイル150に第1方向とは逆方向の第2方向《図3(c)参照》に所定の大きさの電流が流されると、上述したように永久磁石の起磁力Fmgに加勢する方向のコイル150による起磁力Fが発生し、合成後の全体の起磁力はFmg+Fとなり、結果的に吸引力fscが強められるようになっている。
第3フェーズから第4フェーズに移行すると、上記した原理により吸引力が強まり第1フェーズの吸引力が取る座標が(AGmax,fsc4)だったのが一旦(AGmax,fsc5)に移行する。このとき、グラフのように今度は吸引力fsc5がばね力の絶対値|fsp2|に勝るため、アーマチュア300がステータ100に近づいていくようになる(これに伴いエアギャップAGも減少する)。上記したように吸引力はアーマチュアの位置によって変わるため、吸引力fscはアーマチュア300の移動につれて(AGの変化につれて)グラフの曲線Gに沿って変化することとなる。一方、ばね力fspはばねの縮み量に応じて変化することから、ばね力fspについてもアーマチュア300の移動につれてグラフの直線Hに沿って変化することとなる。そして、アーマチュア300が完全にステータ100に当接してそれ以上移動できないところまでエアギャップが無くなるとと吸引力fscの取る座標は(0,fsc6)となる。この間、吸引力fsc(曲線G)は常にばね力のばね力の絶対値(曲線D)を上回っている。
【0051】
つまり、回転制動状態から回転軸700の回転が制動される回転自在状態へと遷移する際(第4フェーズ)には、永久磁石130及びコイル150を起磁力源とする磁気回路によってアーマチュア300を吸引する力の大きさ(吸引力fsc)が、付勢力(ばね力fsp)の大きさを上回っている。
【0052】
別の言い方をすると、電磁ブレーキ装置1は、回転制動状態でコイル150に第1方向とは逆方向の第2方向に所定の大きさの電流が流されると、アーマチュア300がステータ100の側に移動し、ブレーキディスク400がアーマチュア300及び固定ディスク500の当接から解放されて「回転自在状態」に移行するように構成されている。
【0053】
(3-5)また、電磁ブレーキ装置1は、Δf2>Δf1となるように永久磁石130の起磁力、並びに、付勢部材200のばね係数及び当該付勢部材200の変位が設定されている。ここでの「付勢部材200の変位が設定されている」とは、例えばコイルばね200の縮みの大きさが設定されていると言うことができる。具体的には、ばね穴125の深さ、AGmaxの寸法が適切に設定されていることをいうものとする。
【0054】
但し、回転自在状態(第1フェーズ)における、永久磁石130を起磁力源とする磁気回路によってアーマチュア300を吸引する力の大きさ|fsc1|と、付勢部材200によるアーマチュア300を付勢する力の大きさ|fsp1|との差をΔf1とし、回転制動状態(第3フェーズ)における、永久磁石130を起磁力源とする磁気回路によってアーマチュア300を吸引する力の大きさ|fsc4|と、付勢部材200によるアーマチュア300を付勢する力の大きさ|fsp2|との差をΔf2とする(図4参照)。
【0055】
(3-6)また、図4からも分かるように、ばね力fspの曲線H(0,fsp1)~(AGmax,fsp2)の傾きよりも、吸引力fscの曲線E(0、fsc2)~(AGmax,fsc3)又は曲線G(AGmax,fsc5)~(0,fsc6)の傾きの方が大きくなっている。すなわち、電磁ブレーキ装置1において、アーマチュア200の変位(横軸)に対して、付勢部材200による付勢力fspの変化率よりも、ステータ100による吸引力fscの変化率の方が高くなるように諸元が設定されている。
【0056】
以上の説明から理解できるように、実施形態に係る電磁ブレーキ装置1において、アーマチュア300に加えられる力は、大きく分けて、付勢部材200による付勢力(ばね力fsp)及びステータ100を中心とした磁気回路による吸引力(fsc)の2種の力である。なお吸引力(fsc)については、永久磁石130を起磁力源とする吸引力と、コイル150を起磁力源とする吸引力と、を発生することができるようになっている。
一方で、永久磁石130由来の起磁力Fmgは固定バイアスとして発生するようになっている(永久磁石130由来の吸引力はある程度必ず生ずるようになっている)。
他方で、コイル150由来の起磁力Fについては、コイルへの通電を適宜制御することによって(コイル150への通電/非通電(オフ)制御、通電する場合には第1の方向/第2の方向といった電流を流す方向の制御、電流の大きさの制御など)、当該起磁力Fmgの発生の仕方を意図に従ってコントロールできるようになっている。
【0057】
こうしたことから、実施形態における電磁ブレーキ装置1は、アーマチュア300の位置によって(エアギャップAGの大きさによって)磁気抵抗RAGが変わることを上手く活用しながら永久磁石130のみによる吸引力だけでばね力fspを上回るように構成して自己保持を行うことができるようにしつつ、「回転自在状態」と「回転制動状態」との間の遷移に当たっては、コイル150に流す電流の方向を変えることによって吸引力fscを強めたり(重畳)/弱めたりして、付勢力fspを上回るようにしたり/下回るようにしたりできるようになっている。
【0058】
3.実施形態に係る電磁ブレーキ装置1の効果
(1)実施形態に係る電磁ブレーキ装置1は、アーマチュア300をブレーキディスク400が配置された方向に押し付ける付勢部材200を備えており、上述したような構成となっているため、回転制動状態では主として付勢部材200による付勢力が制動に寄与することとなる。このため、永久磁石の起磁力のみに頼ってアーマチュアを動かして制動するという従来の自己保持型の電磁ブレーキ装置に比べ(特許文献4参照)、より強い制動力を安定的に発揮することができる。
【0059】
電磁ブレーキ装置1においては、ステータ磁路部材105としてヨーク(第1ヨーク110,第2ヨーク120)の他に永久磁石130を更に含んでいる。この永久磁石130を起磁力源とする磁気回路によって、回転自在状態では、コイル150への通電はオフでありながらも、アーマチュア300がステータ磁路部材105の一端面112及び他端面122と当接した状態を保持できるように構成されている。
このため、本発明の電磁ブレーキ装置は、従来の無励磁作動型の電磁ブレーキ装置(特許文献1~3参照)のように回転自在状態で常にコイルに電流を流し続ける必要もなくなり、従来よりも省電力な電磁ブレーキ装置となる。
【0060】
以上より、実施形態に係る電磁ブレーキ装置1は、強い制動力を安定的に発揮しながらも省電力なものとなる。
【0061】
(2)実施形態に係る電磁ブレーキ装置1においては、上記した付勢部材200を備え、かつ、ステータ100にはコイル150の他、ステータ磁路部材105の構成要素として永久磁石130を含んでいる。このとき、「回転自在状態においては、永久磁石130を起磁力源とする磁気回路によってアーマチュア300を吸引する力の大きさが、付勢部材200によってアーマチュア300を付勢する力の大きさを上回り」、「回転制動状態においては、永久磁石130を起磁力源とする磁気回路によってアーマチュア300を吸引する力の大きさが、付勢力の大きさを下回る」ように構成されている。
このため、コイル150に電流を流すことなく回転自在状態及び回転制動状態を保持することが可能となり、省電力な電磁ブレーキ装置となる。
【0062】
また、回転制動状態においては、主として付勢部材200による付勢力が制動に寄与することとなる。このため、永久磁石の起磁力のみに頼ってアーマチュアを動かして制動するという従来の自己保持型の電磁ブレーキ装置に比べ(特許文献4参照)、より強い制動力を安定的に発揮することができる。
【0063】
また、実施形態に係る電磁ブレーキ装置1は「回転自在状態から回転制動状態へと遷移する際には、永久磁石130及びコイル150を起磁力源とする磁気回路によって、アーマチュア300を吸引する力の大きさが、付勢力の大きさを下回り」、「回転制動状態から回転自在状態へと遷移する際には、永久磁石130及びコイル150を起磁力源とする磁気回路によって、アーマチュア300を吸引する力の大きさが、付勢力の大きさを上回る」ようにも構成されている。
このため、コイルの起磁力をいわば梃子のようにして、アーマチュアをブレーキディスク側に動かしたりステータ側に動かしたりすることが可能となり、回転自在状態と回転制動状態との間を任意に行き来することができる。
【0064】
以上より、実施形態に係る電磁ブレーキ装置1は、強い制動力を安定的に発揮しながらも省電力なものとなる。
【0065】
(3)永久磁石130は、回転軸700の中心軸線AXに近いUの字形の一端の側(第1ヨーク110の側)で、かつ、一端面112寄りの位置に配置されている。
このように、磁力源たる永久磁石130を、中心軸線AXに近い位置に配置することで、回転軸700により近い位置で強い吸引力を生じることが期待でき、より安定した制動を得ることができる。また、永久磁石130を一端面112寄りの位置に配置することで、アーマチュア300と当接する面(一端面112)に近い位置から比較的大きい磁束を生じせしめることが期待でき、効率よくアーマチュアを吸引することができる。
【0066】
(4)中心軸線AXに垂直な方向の永久磁石130の幅をWとし、中心軸線AXに垂直な方向の第1ヨーク110の一端面112又は第2ヨーク120の他端面122の幅をWとしたときに、W<Wとなるように構成されている。このため、アーマチュア300の側に磁束が渡される面となる一端面112又は他端面122の幅W2が、起磁力源たる永久磁石130の幅W1よりも狭められることから、狭い幅で磁束Φを誘導して磁束密度を高めることができ、効率よくアーマチュアを吸引することができる。さらに、W<(W/2)となるようにすることでこの効果を一層高めることができる。
【0067】
(5)|fsc1|と|fsp1|との差をΔf1とし、|fsc4|と|fsp2|との差をΔf2としたときに、Δf2>Δf1となるように永久磁石130の起磁力、並びに、付勢部材200のばね係数及び当該付勢部材200の変位が設定されている。換言すると、回転自在状態においてアーマチュアが第1ヨーク及び/又は第2ヨークに当接する力Δf1よりも、回転制動状態においてアーマチュアがブレーキディスクに当接する力Δf2のほうが大きくなるように設定されている。このため、実施形態に係る電磁ブレーキ装置1は、更に強い制動力を安定的に発揮することができる。
【0068】
(6)ブレーキディスク400は、スペーサディスク410と、該スペーサディスク410を挟むようにしてスペーサディスク410の両面に配置されたブレーキパッド420とを有している。
【0069】
ブレーキディスク400においてブレーキパッド420の配設を省略し、スペーサディスク410のみでブレーキディスク400を構成してもよいが、この場合、ブレーキディスク400~アーマチュア300間及びブレーキディスク400~固定ディスク500間の接触はそれぞれ金属同士の接触となる。このため、回転を制動しようとアーマチュア300をブレーキディスク400にぶつけると、摩擦面が不規則に削れてしまうことがあり、これに伴い摩擦の状態が変動しやすくなり、安定した摩擦を取り出すことができない場合がある。一方で、実施形態のように、スペーサディスク410の両面にブレーキパッド420を配置しておくと、上記不具合は生じることもなく安定的な摩擦を得ることができる。
【0070】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0071】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の数、材質、形状、位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0072】
(2)実施形態で説明した例において、永久磁石130は、回転軸700の中心軸線AXに近いUの字形の一端の側で、かつ、一端面112寄りの位置に配置されている態様を説明した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではない。例えば図5に示すように、永久磁石130’を、回転軸(図示を省略)の中心軸線AXから遠いUの字形の他端の側で、かつ、他端面寄りの位置に配置してもよい。なお、図5は、変形例に係る電磁ブレーキ装置2の要部拡大断面図で、図3(a)に対応する図面である。
【符号の説明】
【0073】
1,2,900…電磁ブレーキ装置、100…ステータ、102…(ステータの)開口部、105,960…ステータ磁路部材、110…第1ヨーク(内周ヨーク)、112…(Uの字形の一端側の)一端面、120…第2ヨーク(外周ヨーク)、121…凹溝、122…(Uの字形の他端側の)他端面、124…ねじ穴、125…ばね穴、125a…ばねの壁、130,130',933…永久磁石、140…ボビン、150…コイル、200…付勢部材(コイルばね)、300,930…アーマチュア、312…(アーマチュアの)開口部、320…切り欠き、400…ブレーキディスク、410…スペーサディスク、412…(ブレーキディスクの)開口部、420…ブレーキパッド、500…固定ディスク、510…皿穴、512…(固定ディスクの)開口部、610,916…ハブ、612…(ハブの)開口部、630…ボルトねじ、640…カラー、642…内孔、700…回転軸(シャフト)、913…摩擦材、931…第1フランジ部、931a…ブレーキ当接面、932…第2フランジ部、932b…(他方側の)面、961…(ステータ磁路部材の)一端、962…(ステータ磁路部材の)他端
図1
図2
図3
図4
図5
図6