(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032602
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】計器用センサ
(51)【国際特許分類】
G08C 19/00 20060101AFI20220217BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20220217BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
G08C19/00 301G
G08C15/00 E
G01B11/26 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136539
(22)【出願日】2020-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】592007601
【氏名又は名称】株式会社コンテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比野 一茂
(72)【発明者】
【氏名】深澤 康雄
【テーマコード(参考)】
2F065
2F073
【Fターム(参考)】
2F065AA39
2F065BB11
2F065EE11
2F065FF01
2F065FF04
2F065FF65
2F065GG17
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065PP22
2F073AA03
2F073AB01
2F073AB02
2F073AB11
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC14
2F073CD11
2F073DD01
2F073DE06
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073FG09
2F073FG11
2F073FH05
2F073GG01
2F073GG04
(57)【要約】
【課題】指針の角度によって計測値を示す計器について、計器の内部構造を改造することなくその計測値を自動的に取得できるようにする。
【解決手段】計器用センサ20は指針15の角度によって計測値を示す計器10に取り付けられる。計器用センサ20の備える撮影器が指針15の指針画像を撮影する。計器用センサ20の備える画像解析部が、指針画像の画像解析を行うことにより、指針15の角度を算出する。算出された指針15の角度またはその角度に応じた値が他の機器へと送信される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な指針が設けられており前記指針の角度によって計測値を示す計器に取り付けられる計器用センサであって、
撮影器と、画像解析部と、通信器と、を備え、
前記撮影器は、前記計器の前記指針を撮影した指針画像を取得し、
前記画像解析部は、前記指針画像の画像解析を行うことにより、前記指針画像における前記指針の角度を算出し、
前記通信器は、前記画像解析部が算出した前記指針の角度またはその角度に応じた値を他の機器へと送信すること
を特徴とする計器用センサ。
【請求項2】
前記撮影器を覆う遮光外装が設けられており、
前記遮光外装は、開口部を備えており、前記開口部以外からの入射光を遮断するものであり、前記開口部が前記指針に臨むように前記計器へ取り付けられるものであること
を特徴とする請求項1に記載の計器用センサ。
【請求項3】
前記遮光外装は、前記指針の回転中心を含む領域を前記計器の外部から覆い隠す一方で、前記指針の一端を含む領域が前記計器の外部から視認可能となるように前記計器へ取り付けられること
を特徴とする請求項2に記載の計器用センサ。
【請求項4】
前記遮光外装の内部に、前記遮光外装の内部から前記指針を照らす照明器が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の計器用センサ。
【請求項5】
前記画像解析部および前記通信器は電池で駆動する電池駆動端末装置に組み込まれており、
前記電池駆動端末装置は、電力を供給可能なケーブルを介して前記遮光外装へ接続されており、前記撮影器による前記指針画像の取得が行われるときにのみ、前記遮光外装への電力供給を行うこと
を特徴とする請求項2に記載の計器用センサ。
【請求項6】
前記撮影器に、前記撮影器の傾きを検出する傾き検出器が取り付けられており、
前記傾き検出器は、検出された前記撮影器の傾きを前記画像解析部へ送信し、
前記画像解析部は、前記指針画像から算出される前記指針の角度を、前記撮影器の傾きに応じて補正すること
を特徴とする請求項1に記載の計器用センサ。
【請求項7】
前記画像解析部は、前記指針画像を入力データとして、それに対応する前記指針の角度を出力データとして返すAIモデルを用いて、前記指針の角度を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の計器用センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計器に取り付けられる計器用センサに関するものであり、特に、回転可能な指針の角度によって計測値を示す計器に取り付けられる計器用センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
既存の計器には、回転可能な指針の回転角度によって計測値を示すものがある。こうした計器はアナログメータと呼ばれることがある。従来は、作業者が指針を目視することでアナログメータ(計器)が示す計測値の読み取りが行われている。典型的なアナログメータにおいては、円弧の周方向に沿って刻まれた目盛りを有する目盛板が設けられており、指針はこの目盛板と平行な平面内で回転する。そして作業者は、指針の先端位置に対応する目盛りが示す値を計測値として読み取る。
【0003】
特許文献1および特許文献2においては、こうしたアナログメータが示す計測値を目視によることなく自動的に(いわば電子的に、あるいはデジタル的に)取得することが提案されている。
【0004】
特許文献1においては、指針の軸上に配置された磁石の磁界を検知する2つの磁力センサを用いることで指針の角度を特定することが行われている。特許文献2においては、指針と共に回転する渦巻き状の導電性ターゲットが指針の中央近傍に備えられており、この導電性ターゲットの動きを誘導型近接センサで読み取ることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/044280号
【特許文献2】特許第6313883号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されている発明では、計器の内部構造の改造が必要となる。すなわち、特許文献1に記載の発明を実施するためには、計器の指針と目盛板を覆っている透明カバーを取り外して、指針の軸上に磁石を取り付ける作業が必要である。また、特許文献2に記載の発明を実施するためには、やはり透明カバーを取り外して、導電性ターゲットを指針の中央近傍に貼り付ける作業が必要である。
【0007】
このような内部構造の改造を行うには作業者が十分に作業に習熟する必要がある。また習熟した作業者であってもこの改造は手間のかかるものである。したがって計器が多数存在する場合に、それら全ての計器に改造を施すには多大な作業コスト(人件費、作業時間)が必要となる。
【0008】
そこで本発明は、指針の角度によって計測値を示す計器、いわゆるアナログメータにおいて、その内部構造を改造することなく少ない作業コストで、計測値を自動的に(電子的に、あるいはデジタル的に)取得できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る実施形態の一例としての計器用センサは、回転可能な指針が設けられており前記指針の角度によって計測値を示す計器に取り付けられる計器用センサであって、撮影器と、画像解析部と、通信器と、を備え、前記撮影器は、前記計器の前記指針を撮影した指針画像を取得し、前記画像解析部は、前記指針画像の画像解析を行うことにより、前記指針画像における前記指針の角度を算出し、前記通信器は、前記画像解析部が算出した前記指針の角度またはその角度に応じた値を他の機器へと送信することを特徴とする。
【0010】
また、前記撮影器を覆う遮光外装が設けられていることが好ましく、前記遮光外装は、開口部を備えており、前記開口部以外からの入射光を遮断するものであり、前記開口部が前記指針に臨むように前記計器へ取り付けられるものであるとよい。
【0011】
また、前記遮光外装は、前記指針の回転中心を含む領域を前記計器の外部から覆い隠す一方で、前記指針の一端を含む領域が前記計器の外部から視認可能となるように前記計器へ取り付けられることが好ましい。
【0012】
また、前記遮光外装の内部に、前記遮光外装の内部から前記指針を照らす照明器が設けられていることが好ましい。
【0013】
また、前記画像解析部および前記通信器は電池で駆動する電池駆動端末装置に組み込まれており、前記電池駆動端末装置は、電力を供給可能なケーブルを介して前記遮光外装へ接続されており、前記撮影器による前記指針画像の取得が行われるときにのみ、前記遮光外装への電力供給を行うことが好ましい。
【0014】
また、前記撮影器に、前記撮影器の傾きを検出する傾き検出器が取り付けられていることが好ましく、前記傾き検出器は、検出された前記撮影器の傾きを前記画像解析部へ送信し、前記画像解析部は、前記指針画像から算出される前記指針の角度を、前記撮影器の傾きに応じて補正するとよい。
【0015】
また、前記画像解析部は、前記指針画像を入力データとして、それに対応する前記指針の角度を出力データとして返すAI(人工知能)モデルを用いて、前記指針の角度を算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施形態の一例としての計器用センサによれば、撮影器によって指針画像が撮影可能な位置に計器用センサが取り付けられていればよいので、計器が指針を覆う透明カバーを備えていたとしても、その透明カバーの外側から計器用センサが取り付けられればよい。すなわち、作業者は従来技術のように透明カバーを取り外して計器の内部構造に改造を行う必要がない。よってこの計器用センサによれば、少ない作業コストで計測値の自動的な取得が可能になる。
【0017】
また、撮影器を覆う遮光外装が設けられている場合には、撮影器と指針との間に障害物が入り込んで指針画像が取得できなくなることや、撮影器に指針側以外からの入射光が入り込むことにより計測値の正しい読取が行えなくなることが防止される。
【0018】
また、指針の一端を含む領域が計器の外部から視認可能となるように遮光外装が計器へ取り付けられる場合は、遮光外装を含む計器用センサが計器に取り付けられた状態でも、作業者は目視による計測値の確認を行うことができる。
【0019】
また、遮光外装の内部に照明器が設けられる場合は、指針画像の取得の際に常に安定した照明条件で撮影が行われることとなり、画像解析に適した好ましい指針画像が得られるようになる。
【0020】
また、画像解析部および通信器が電池で駆動する電池駆動端末装置に組み込まれている場合には、外部からの電力供給を受けずとも計器用センサが単独で動作することが可能になる。さらに指針画像の取得が行われるときにのみ電池駆動端末装置が遮光外装への電力供給を行うことにより、電力消費が最小限に抑えられる。
【0021】
また、撮影器に傾き検出器が取り付けられている場合には、撮影器を含む計器用センサが計器(特に指針)に対して傾いて取り付けられていたとしても、算出される指針の角度が傾きに応じて補正され、正しい角度が自動的に得られるようになる。
【0022】
またAIモデルを用いて指針の角度の算出が行われる場合には、画像解析部による指針画像の画像解析の精度や速度がより向上することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る実施形態の一例としての計器用センサと、計器用センサが取り付けられる計器を示す斜視図。
【
図2】
図1の計器用センサの構造を概略的に示す模式図。
【
図3】
図1の計器用センサが取り付けられた状態の計器を示す正面図。
【
図4】
図3の計器用センサによって撮影される指針画像の例を示す図。
【
図5】
図1の計器用センサと外部機器との通信の様子を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、本発明に係る実施形態の一例としての計器用センサ20と、その計器用センサ20が取り付けられる計器10の斜視図が示されている。
図1の計器10は、目盛板12と、指針15と、回転軸16と、透明カバー18とを備えている。
【0025】
[計器10の構造]
目盛板12には円弧状の線が記されているとともに、その円弧の周方向に沿って目盛りが刻まれている。回転軸16(回転中心)は目盛板12の表面から垂直に伸びている。指針15はこの回転軸16に取り付けられて、回転軸16を中心として回転可能となっている。計器10は指針15の角度によって計測値を示すものであればどのような種類のものであってもよいが、
図1には具体例としてブルドン管圧力計が示されている。ここでは指針15の角度によって計測対象の計測値としてMPa(メガパスカル)値、すなわち圧力値が示されるものとする。
図1の計器10は計測範囲が0MPaから1MPaまでとなっており、目盛板12には目盛りが0.1MPa刻みで設けられているとともに、数値が0.2MPa刻みで記されている。
【0026】
図1の計器10の外形は回転軸16に沿って扁平な円筒状となっており、その円筒状の形状の一端を塞ぐように透明カバー18(ガラス、プラスチック、アクリルなどの透明な材質製)が取り付けられている。
図1に示す通り、目盛板12と指針15は透明カバー18越しに外部から視認可能となっている。
【0027】
計器10の指針15は、計測対象の圧力に応じて目盛板12と平行な平面内で回転軸16を中心として回転する。これにより、指針15の先端は、目盛板12に記された円弧状の線に沿って移動する。作業者は、指針15の先端が指している目盛板12上の目盛り(先端位置と対応する目盛り)が示す値を、計器10の示す計測値(ここでは圧力値)として読み取る。
【0028】
[計器用センサ20の構造]
本実施形態においては、上記のような計器10に計器用センサ20が取り付けられる。本実施形態の計器用センサ20は
図1に示す通り円筒状の外形(計器10の外形よりは小さい円筒)を有しており、その円筒状の外形の一端が、取付用の部材(
図1においては両面テープ22)を介して計器10の透明カバー18に取り付けられる。ここでは計器用センサ20の円筒状外形の中心軸と指針15の回転軸16とが一致するように取り付けが行われる。これにより、
図3に示すように、指針15の回転軸16(回転中心)を含む領域が、外部から見て計器用センサ20(特に後述の遮光外装25)によって覆い隠される形となる。その一方で、計器用センサ20は計器10の外形よりは小さいため、指針15の一端(先端)は外部から視認可能なままとなっている。こうした位置関係が実現可能な具体的な寸法の一例としては、計器10(目盛板12)の直径が100mm(半径が50mm)、指針15の半径(回転軸16から先端までの距離)が45mm、計器用センサ20の外形の直径が30mm(半径が15mm)であるとよい。
【0029】
図2には、計器用センサ20の構造が概略的に示されている。計器用センサ20はその円筒状の外形を形成する遮光外装25と、接続ケーブル33を介して遮光外装25へ接続された電池駆動端末装置30とを有している。遮光外装25は、その内部に設けられた照明器24および撮影器26を覆うように設けられている。遮光外装25はその内部への入射光を遮断する材質(例えばステンレス鋼などの金属)で形成されている。遮光外装25はその円筒状の形状の一端(
図2においては図中左側の端部)に開口部を備えており、この開口部からは遮光外装25の内部へ光が入射可能となっている。この開口部を備えた端部が、
図1に示すように両面テープ22を介して計器10へ取り付けられる。すなわち計器用センサ20は開口部が指針15に臨むように計器10へ取り付けられることになる。この状態では遮光外装25の内部(特に撮影器26)に指針15側以外からの入射光が入り込まないようになる。
【0030】
遮光外装25の内部には照明器24および撮影器26が設けられている。照明器24は
図2に示す通り遮光外装25の内周面に沿って配置される扁平な円筒状の形状を有する。照明器24は具体的には、円筒状のブラケットと、そのブラケットの周方向に沿って取り付けられた複数の光源(例えばLEDや電球)とを含む構造となっている。光源は遮光外装25の開口部側(すなわち指針15側)へ光を投射するように設けられる。その一方でブラケットは
図2に示す通り中心部が空洞となった円筒状の形状である。そのため、光源から投射されて指針15(および目盛板12)で反射された光は、ブラケットに阻まれることなく中心部の空洞を抜けて撮影器26へ至るようになっている。
【0031】
撮影器26は指針15を撮影して指針画像を取得するためのカメラモジュール27(例えばCCDカメラ)を備えている。カメラモジュール27は開口部側に向けられており、計器用センサ20が計器10へ取り付けられた状態では指針15の撮影を行うようになっている。指針15、照明器24、撮影器26の位置関係について、例えば遮光外装25の直径が30mm、長さが40mmである場合には、照明器24と撮影器26はどちらも遮光外装25の開口部と反対側の端部、すなわち指針15から約40mm程度離れた位置に設けられているとよい。ただし撮影器26自身の影が指針画像に写り込まないように、照明器24の方がやや開口部寄りに設けられる。
【0032】
さらに、撮影器26には、撮影器26の傾きを掲出する傾き検出器28(例えば重力方向からの傾きを検出する静電容量型の加速度センサ)が取り付けられている。カメラモジュール27が撮影して取得した指針画像、および傾き検出器28が検出した撮影器26の傾きのデータは、遮光外装25の外部へ延びる接続ケーブル33を介して電池駆動端末装置30へ送信される。
【0033】
[電池駆動端末装置30について]
電池駆動端末装置30は電池40の電力によって駆動する装置であり、
図2の電池駆動端末装置30は制御部32、画像解析部34、通信器36を備えている。なお、前述の接続ケーブル33が電力を供給可能なケーブルである場合には、電池40の電力が接続ケーブル33を介して遮光外装25(の内部に設けられた撮影器26と照明器24)へ供給されるようになっていてもよい。例えば計器10の設置場所が工場内の複雑な配管部であったりすると、その計器10の周りに十分な電力を確保できるだけの電源を配置できない場合がある。そのような場合には、計器用センサ20本体(ここでは遮光外装25)から離れた十分なスペースがある位置(例えば3m先)に電池駆動端末装置30および電池40を配置し、その電池40から接続ケーブル33を介して計器用センサ20本体へ電力供給が行われるようにすればよい。
【0034】
電池駆動端末装置30の制御部32はマイクロコントローラやマイクロプロセッサなどの半導体ユニット(いわゆるCPUやMPU)によって構成され、電池駆動端末装置30内でのデータ処理や通信制御などを行う。
【0035】
画像解析部34は画像処理機能を備えた半導体ユニット(例えばいわゆるGPU)であり、撮影器26から送信された指針画像の画像解析を行って、その指針画像における指針15の角度を算出する。画像解析部34を構成する半導体ユニットは例えば、指針画像を入力データとして、それに対応する指針15の角度を出力データとして返すAIモデルが組み込まれたPLD(プログラマブルロジックデバイス)であってもよい。
【0036】
図2においては、画像解析部34が算出した指針15の角度のデータは制御部32へ送られる。制御部32は角度のデータに対して、通信のために必要なデータ加工(時刻情報の付与やパケット化など)を行う。そして、算出された角度の値、または角度に応じた値(例えば後述の傾き補正が行われた値や、目的の計測値である圧力値へと変換された値、あるいは他の機器での取り扱いが容易となるように処理された値)が、通信器36を介して他の機器(後述の外部機器52など)へと送信される。
【0037】
[計器用センサ20の取り付け作業]
以上の実施形態においては、計器用センサ20を計器10へ取り付けるために必要な作業は、両面テープ22を用いて透明カバー18上へ計器用センサ20を貼り付けることのみである。したがって作業者は、透明カバー18を取り外したり、計器用センサ20の内部構造に手を加えたりする必要がなく、簡単な手順で計器用センサ20の取り付けを行うことができる。
【0038】
なお、計器用センサ20を計器10へ取り付ける作業を行うにあたっては、作業者は取付治具を用いて取り付け作業を行ってもよい。取付治具としては例えば、計器10の透明カバー18の直径(例えば100mm)と同程度の大きさの円盤の中央に計器用センサ20の遮光外装25の直径(例えば30mm)と同程度の大きさの円形穴(遮光外装25端部の形状に合わせた取付穴)が設けられたものを用いることができる。この取付治具を用いた取り付け作業においては、作業者はまず取付治具の円盤で透明カバー18がぴったり覆われるように取付治具を位置合わせする。その状態で作業者が取付治具中央の取付穴に合わせて計器用センサ20を透明カバー18へ取り付ければ、計器用センサ20の撮影器26が計器10の指針15の回転軸16周りの指針画像を正しく取得できるように計器用センサ20が位置合わせされる。なおここで、回転軸16の位置が透明カバー18の中央から離れた位置である場合には、回転軸16の位置に合わせて取付穴が設けられているとよい。
【0039】
上記の取付治具に、計器10に対する計器用センサ20の角度を合わせるための構造が設けられていてもよい。例えば透明カバー18と遮光外装25外形の周方向上の特定位置に突起が設けられていて、その突起と嵌り合う切り欠きが取付治具の外周および取付穴の縁に設けられているとよい。この場合、取付治具の切り欠きが透明カバー18および遮光外装25の突起と嵌り合うように作業者が位置合わせを行うことで、計器用センサ20が計器10に対して傾きの無い状態で取り付けられる。
【0040】
計器用センサ20が計器10に対して傾きの無い状態というのは、撮影器26の取得する指針画像における指針15の角度が、目視による指針15の角度と一致する状態である。
図4に、傾きの無い状態で取り付けられた計器用センサ20の撮影器26が取得する指針画像が例示されている。計器用センサ20の遮光外装25が開口部以外からの入射光を遮断するため、指針画像には回転軸16を含む領域の指針15のみが写り込むこととなる。
【0041】
[指針画像および角度算出について]
図4には指針画像の例が6つ示されており、左端の状態が回転角度の基準(0°)であり、残りの5例はそこから指針15が回転軸16周りで60°ずつ時計回りに回転した様子である。
図4に示されている通り、本実施形態の計器10においては指針15の角度0°の状態が計測値0.0MPaに相当し、角度300°の状態が計測値1.0MPaに相当する。この場合、指針15の角度が60°増加するごとに計測値は0.2MPa増加する。
【0042】
画像解析部34における指針15の角度算出においては、指針15が基準の角度(0°)からどれだけ回転しているかが画像解析により算出される。例えば角度0°の基準画像が予め記憶されており、取得された指針画像と基準画像との比較により指針画像における指針15の角度が算出される。指針画像を入力データとして、それに対応する指針15の角度を出力データとして返すAIモデルを用いて指針15の角度が算出される場合には、AIモデルは指針画像から直接的に角度の値を出力する。ここで用いられるAIモデルは、何らかの入力データを受け取ると、その入力データに対応した出力データを返すという、入出力関係を記述したモデルであり、いわば一種の関数のような働きを持つ。
【0043】
AIモデルは多数の指針画像について、それぞれ基準画像から指針15がどれだけの回転角度となっているかを蓄積した学習データに基づいて、深層学習や教師あり学習によって作成されるものであるとよい。つまりAIモデルの作成においては基準画像と指針画像との比較が行われるが、完成したAIモデルを用いた画像解析においては基準画像との比較が行われることなく、指針画像から直接的に角度の値が出力されるということである。
【0044】
[傾き補正]
なお、上述の通り撮影器26には傾き検出器28が取り付けられているので、計器用センサ20が計器10に対して多少傾いていたとしても、画像解析部34は撮影器26の傾きに応じて補正を行うことにより、正しく角度の算出を行うことができる。補正の具体例としては、ひとまず傾きがないものとして角度の算出を行った上で、算出された角度に傾き分の補正を行えばよい。例えば撮影器26が重力方向に対して反時計回りに10°傾いていると検出された場合には、算出された指針15の角度から10°だけ減じた値を最終的な算出角度とする。ここで、傾き検出器28が3軸(ロール、ピッチ、ヨー)での傾き検出を可能なものである場合には、回転軸16周りの傾きだけでなく、鉛直軸に対する傾き、および水平軸に対する傾きに関する補正も可能となる。鉛直軸に対する傾きおよび水平軸に対する傾きに関する補正は単純な加減算ではなくなるが、計算方法は傾きの値に応じて一意に決まるため、自動的な補正が可能である。
【0045】
[外部機器52へのデータ送信について]
以上のようにして算出された指針15の角度に関するデータは、電池駆動端末装置30の通信器36を介して外部機器52(他の機器)へと送信される。
図5には、外部機器52へのデータ送信がネットワーク50を介して行われる様子が示されている。
【0046】
外部機器52は計器10による計測値の確認を必要とするユーザが実際に計測値の確認を行うための機器であり、例えばSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)システムにおける監視役を担うサーバ装置である。通信器36は、LTEや無線LANなどによる無線通信機能を備えたものであることが好ましく、その無線通信機能によりインターネットなどのネットワーク50(通信ネットワーク)上へデータを送信することが可能であるとよい。この場合、計器10から遠く離れた場所に設けられた外部機器52においても、ネットワーク50を介して計器10の指針15の角度、ひいては計測値が確認可能となる。また計器10が工場内の多数の箇所に配置されておりその一つ一つを有線でネットワーク50や外部機器52へ接続することが困難な場合でも、無線通信機能を用いることで、多数の計器10からのデータをネットワーク50へ送信することが可能となる。
【0047】
外部機器52へ送信されたデータが指針15の角度の値そのままである場合には、外部機器52において、その角度を計測値に変換する処理が行われる。例えば計器10の特性を表す2計測点のデータが予め外部機器52に与えられていれば、外部機器52はその2計測点のデータを基に角度を計測値に変換することが可能である。
【0048】
2計測点のデータとは、角度とそれに対応する計測値との組み合わせデータを2組揃えたもの(例:角度0°に対応する0.0MPa、角度300°に対応する1.0MPa)であり、その2組のデータから他の角度に対応する計測値(前述の例では1°あたり1/300MPa)を算出可能なものである。この2計測点のデータは、作業者が実際に計器10を目視して確認したデータ(実測値)でもよいし、計器10の目盛り配置に応じた理想上のデータ(理想値)であってもよい。
【0049】
このように、角度から計測値への変換が計器用センサ20ではなく外部機器52で行われるようになっていれば、計器用センサ20で行われる処理が最小限で済む。そのため計器用センサ20(特に制御部32と画像解析部34)に高い処理能力を持つ高価な半導体装置を組み込む必要がなく、計器用センサ20を製造するための部材調達コストが低減される。
【0050】
[電力消費について]
計器用センサ20で行われる処理が最小限であれば、電池駆動端末装置30の電池40の電力消費も抑えられる。特に角度と計測値との対応関係が線形でない場合(例えば対数関数的な対応関係になっている場合)には、計測値への変換に高い処理能力と大きな電力消費が必要となるため、変換処理が外部機器52で行われることが好ましい。
【0051】
ここで、電池40の電力消費をさらに抑えるために、照明器24と撮影器26への電力供給が必要最小限に行われるようになっていると好ましい。例えば制御部32が接続ケーブル33を介した電力供給を制御できるようになっており、基本的には電池40から遮光外装25(の内部の照明器24と撮影器26)への電力供給が遮断されるようになっているとする。そして計器10の計測値が必要とされるとき(例えば一定時間毎、あるいは外部機器52から計測指示を受信したときなど)にのみ、制御部32は遮光外装25への電力供給を行い、照明器24による指針15への光の照射および撮影器26による指針画像の取得を行うようにする。このようにすれば、照明器24と撮影器26が電力を消費するのは撮影器26による指針画像の取得が行われるときのみとなるので、より電力消費が抑えられる。
【0052】
以上の実施形態においては、計器10に取り付けられた計器用センサ20は、作業者の手を介することなく、撮影器26による指針画像の取得と画像解析部34による画像解析を自動的に行い、指針15の角度(またはそれに応じた値)のデータを外部機器52へ送信する。これにより、外部機器52は送信されてきたデータを基に計器10の示す計測値を自動的に取得することが可能になる。すなわち計器10の配設された施設において作業者が何ら作業を行わずとも、計器10による計測値が外部機器52において自動的に取得される。さらにこの計器用センサ20は両面テープ22で透明カバー18へ貼り付けるだけで計器10へ取り付けることができ、透明カバー18を取り外したり計器10を分解したりなどの難しい作業が必要ない。したがってこの実施形態の計器用センサ20によれば、少ない作業コストで計測値の自動的な取得が可能になる。
【0053】
なお、上記の実施形態においては角度から計測値への変換処理が外部機器52で行われことになっているが、この変換処理は計器用センサ20(特に画像解析部34または制御部32)で行われてもよい。特に変換処理が複雑ではない場合や、複雑であっても制御部32や画像解析部34で容易に処理可能な場合には、変換処理による消費電力はさほど大きくならないため、電池駆動端末装置30内の画像解析部34または制御部32で変換処理が行われてもよい。あるいは計器用センサ20への電力供給が商用電源から行われる場合など、消費電力を気にしなくてよい場合には、変換処理が計器用センサ20(特に画像解析部34または制御部32)で行われてもよい。
【0054】
また上記の実施形態においては制御部32、画像解析部34、通信器36は遮光外装25とは別体の電池駆動端末装置30内に設けられているが、遮光外装25内に制御部32、画像解析部34、通信器36の少なくとも一つ(特に画像解析部34)が設けられていてもよい。
【0055】
また上記の実施形態においては遮光外装25の形状が円筒状となっているが、遮光外装25は円筒状でなくともよく、撮影器26に対する外部からの入射光を遮断しつつ、指針15側からの光を撮影器26へ導くことが可能な形状であればよい。例えば遮光外装25は四角柱筒、六角柱筒などの形状であってもよい。
【0056】
また、AIモデルによる画像解析が行われる場合、そのAIモデルの基となる学習データは、指針画像を多く蓄積したものであるほど好ましい。すなわち、指針画像を多く蓄積した学習データに基づいたAIモデルを用いることで、画像解析の精度や速度が向上する。そこで、各計器用センサ20で取得された指針画像は、画像解析部34での画像解析に用いられるのと並行して、その画像解析結果と共に外部機器52へ送信されるようになっていてもよい。指針画像を受信した外部機器52は、その指針画像と画像解析結果を基に学習データを再構築し、AIモデルを再教育する。これにより、多数の計器用センサ20で行われる多数の画像解析結果を基にAIモデルが再教育されて、画像解析の精度や速度がさらに向上していくことが期待される。
【符号の説明】
【0057】
10 計器
12 目盛板
15 指針
16 回転軸
18 透明カバー
20 計器用センサ
22 両面テープ
24 照明器
25 遮光外装
26 撮影器
27 カメラモジュール
28 傾き検出器
30 電池駆動端末装置
32 制御部
33 接続ケーブル
34 画像解析部
36 通信器
40 電池
50 ネットワーク
52 外部機器