(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032625
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂発泡粒子、その製造方法及びポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/16 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
C08J9/16 CES
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136590
(22)【出願日】2020-08-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 将武
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA24
4F074AA24A
4F074AA25A
4F074AB03
4F074AB05
4F074AC02
4F074AD21
4F074AG06
4F074AG10
4F074BA32
4F074BA84
4F074BC12
4F074CA34
4F074CA35
4F074CA39
4F074CA42
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA18
4F074DA33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】色調のむらの発生を抑制するとともに、優れた難燃性を有する発泡粒子成形体とすることができるポリオレフィン系樹脂発泡粒子、その製造方法またはポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体を提供する。
【解決手段】発泡粒子には、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする基材樹脂と、カーボンブラックと、難燃剤と、が含まれている。発泡粒子の嵩密度は10~100kg/m
3である。カーボンブラックの配合量は基材樹脂100質量部に対して0.5~10質量部である。難燃剤には下記一般式(I)で表されるヒンダードアミン系化合物が含まれており、配合量は基材樹脂100質量部に対して0.01~1質量部である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする基材樹脂と、カーボンブラックと、難燃剤と、を含むポリオレフィン系樹脂発泡粒子であって、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度が10~100kg/m
3であり、
前記カーボンブラックの配合量が前記基材樹脂100質量部に対して0.5~10質量部であり、
前記難燃剤には下記一般式(I)で表されるヒンダードアミン系化合物が含まれており、
前記ヒンダードアミン系化合物の配合量が前記基材樹脂100質量部に対して0.01~1質量部である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【化1】
(ただし、前記一般式(I)におけるR
1及びR
2はそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記ヒンダードアミン系化合物の分子量が600~800である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度が10~30kg/m3である、請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形してなるポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体。
【請求項5】
FMVSS No.302に規定された燃焼性試験において自己消火性を示す、請求項4に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体。
【請求項6】
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする基材樹脂と、カーボンブラックと、難燃剤と、を含み、10~100kg/m
3嵩密度を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
前記基材樹脂、前記カーボンブラック、前記難燃剤及び発泡剤を含有しており、密閉容器内で水性媒体中に分散した発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を前記水性媒体とともに前記密閉容器から該密閉容器内よりも低い圧力下に放出して発泡させる発泡工程を有しており、
前記カーボンブラックの配合量が前記基材樹脂100質量部に対して0.5~10質量部であり、前記難燃剤には下記一般式(I)で表されるヒンダードアミン系化合物が含まれており、前記ヒンダードアミン系化合物の配合量が前記基材樹脂100質量部に対して0.01~1質量部である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【化2】
(ただし、前記一般式(I)におけるR
1及びR
2はそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基を表す。)
【請求項7】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法が、前記基材樹脂、前記カーボンブラック及び前記難燃剤を含むポリオレフィン系樹脂粒子を作製する造粒工程を有しており、前記発泡工程において、前記密閉容器内の水性媒体中に分散させた前記ポリオレフィン系樹脂粒子に前記発泡剤を含浸させて前記発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子とする、請求項6に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項8】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法が、前記発泡工程により得られた一段発泡粒子を耐圧容器内に入れ、前記一段発泡粒子に無機系物理発泡剤を含浸させることにより前記一段発泡粒子の気泡内の圧力を上昇させ、次いで、前記耐圧容器から取り出した前記一段発泡粒子を前記気泡内の圧力よりも低圧下で加熱することにより、前記一段発泡粒子の嵩密度を低下させる二段発泡工程をさらに有している、請求項6または7に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子、その製造方法及びポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形してなるポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体は、例えば、梱包材や自動車部材、建築材料などの種々の用途に使用されている。この種のポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体は、カーボンブラックにより着色されることがある。また、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体には、難燃性を高める目的で、ヒンダードアミン系難燃剤が添加されていることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、特許文献1のようなヒンダードアミン系難燃剤及びカーボンブラックを含むポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体の外観特性を向上させることが望まれている。
【0005】
また、カーボンブラックを含む発泡粒子成形体においては、成形体密度が低くなると、樹脂量が少なくなるため、燃焼速度が速く、燃焼し易い傾向がある。それ故、所望の難燃性を発揮させるためには、ヒンダードアミン系難燃剤の添加量を増やす必要がある。しかし、ヒンダードアミン系難燃剤の添加量を増やすと、発泡粒子成形体の表面の色調のむらが大きくなる場合があった。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、優れた難燃性を有し、かつ、外観特性にも優れる発泡粒子成形体を得ることができるポリオレフィン系樹脂発泡粒子、その製造方法およびこのポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形してなるポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする基材樹脂と、カーボンブラックと、難燃剤と、を含むポリオレフィン系樹脂発泡粒子であって、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度が10~100kg/m3であり、
前記カーボンブラックの配合量が前記基材樹脂100質量部に対して0.5~10質量部であり、
前記難燃剤には下記一般式(I)で表されるヒンダードアミン系化合物が含まれており、
前記ヒンダードアミン系化合物の配合量が前記基材樹脂100質量部に対して0.01~1質量部である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子にある。
【0008】
【0009】
ただし、前記一般式(I)におけるR1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0010】
本発明の他の態様は、前記の態様のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形してなるポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体にある。
【0011】
本発明のさらに他の態様は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする基材樹脂と、カーボンブラックと、難燃剤と、を含み、10~100kg/m3嵩密度を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
前記基材樹脂、前記カーボンブラック、前記難燃剤及び発泡剤を含有しており、密閉容器内で水性媒体中に分散した発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を前記水性媒体とともに前記密閉容器から該密閉容器内よりも低い圧力下に放出して発泡させる発泡工程を有しており、
前記カーボンブラックの配合量が前記基材樹脂100質量部に対して0.5~10質量部であり、前記難燃剤には下記一般式(I)で表されるヒンダードアミン系化合物が含まれており、前記ヒンダードアミン系化合物の配合量が前記基材樹脂100質量部に対して0.01~1質量部である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法にある。
【0012】
【0013】
ただし、前記一般式(I)におけるR1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基を表す。
【発明の効果】
【0014】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子(以下、「発泡粒子」という。)には、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする基材樹脂と、カーボンブラックと、前記特定のヒンダードアミン系化合物を含む難燃剤とが含まれている。前記特定のヒンダードアミン系化合物は、発泡粒子の気泡径のばらつきを小さくすることができる。気泡径のばらつきの小さい発泡粒子を型内成形することにより、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体(以下、「発泡粒子成形体」という。)における色調のむらを小さくすることができる。
【0015】
また、発泡粒子の気泡径のばらつきが小さくなると、発泡粒子の気泡膜の厚みのばらつきが小さくなる。それ故、前記発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体には、燃焼しやすい部分が形成されにくい。従って、前記発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体は、優れた難燃性を有している。
【0016】
以上のように、前記発泡粒子を型内成形することにより、優れた難燃性を有し、かつ外観特性にも優れる発泡粒子成形体を得ることができる。
【0017】
また、前記発泡粒子成形体は、前記発泡粒子から構成されている。それ故、前記発泡粒子成形体は、色調のむらを小さくすることができるとともに、優れた難燃性を有している。
【0018】
また、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法は、基材樹脂、カーボンブラック、難燃剤及び発泡剤を含有しており、密閉容器内で水性媒体に分散した発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子(以下、「発泡性粒子」という。)を水性媒体とともに前記密閉容器から該密閉容器内よりも低い圧力下に放出して発泡させる発泡工程を有している。それ故、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法によれば、発泡工程において、発泡粒子内に形成される気泡のばらつきを低減することができる。その結果、前記発泡粒子を容易に得ることができる
【0019】
以上のように、前記の態様によれば、優れた難燃性を有し、かつ、外観特性にも優れる発泡粒子成形体を得ることができるポリオレフィン系樹脂発泡粒子、その製造方法またはポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、高温ピークの面積の算出方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。また、下限として数値又は物性値を表現する場合、その数値又は物性値以上であることを意味し、上限として数値又は物性値を表現する場合、その数値又は物性値以下であることを意味する。
【0022】
(発泡粒子)
前記発泡粒子には、基材樹脂と、カーボンブラックと、難燃剤とが含まれている。
【0023】
<基材樹脂>
前記発泡粒子における基材樹脂の主成分はポリオレフィン系樹脂である。本明細書において、基材樹脂の主成分とは、基材樹脂中の質量比率が50質量%以上である成分をいう。また、本明細書において、ポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のオレフィン系モノマーの単独重合体及びオレフィン系モノマーに由来する成分を60モル%以上含有する共重合体をいう。
【0024】
より具体的には、ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、エチレン系アイオノマー、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン及びオレフィン系モノマーとスチレン系モノマー等のオレフィン系モノマーと共重合し得るモノマーとの共重合体等を使用することができる。
【0025】
ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状超低密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体;エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-ブテンブロック共重合体、エチレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-メチルメタクリレート共重合体等のエチレン系モノマーに由来する成分を60モル%以上含有するエチレン系共重合体等が例示される。
【0026】
エチレン系アイオノマーとしては、エチレン-メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマー等が例示される。
【0027】
ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びアタクチックポリプロピレン等のプロピレン単独重合体;プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン三元共重合体、プロピレン-アクリル酸共重合体及びプロピレン-無水マレイン酸共重合体等のプロピレン系モノマーに由来する成分を60モル%以上含有するプロピレン系共重合体等が例示される。基材樹脂中には、これらのポリオレフィン系樹脂から選択される1種の樹脂が含まれていてもよいし、2種以上の樹脂が含まれていてもよい。
【0028】
基材樹脂には、ポリプロピレン系樹脂が含まれていることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂を含む発泡粒子成形体は、緩衝性や圧縮歪回復性、軽量性に優れているため、梱包材や自動車部材、建築材料などの用途に特に好適に使用することができる。
【0029】
また、基材樹脂には、ポリオレフィン系樹脂の他に、本発明の目的及び作用効果を損なわない範囲で他の樹脂やエラストマー等のポリオレフィン系樹脂以外の材料が含まれていてもよい。ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂が例示される。また、ポリオレフィン系樹脂以外のエラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が例示される。基材樹脂中におけるポリオレフィン系樹脂の割合は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、基材樹脂がポリオレフィン系樹脂のみから構成されていることが特に好ましい。
【0030】
<カーボンブラック>
前記発泡粒子には、基材樹脂100質量部に対して0.5~10質量部のカーボンブラックが配合されている。カーボンブラックの配合量を前記特定の範囲とすることにより、発泡粒子及び発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体を十分に着色することができる。カーボンブラックの配合量が少なすぎる場合には、カーボンブラックによる着色が不十分となり、発泡粒子成形体の色調にむらが生じやすくなるおそれがある。カーボンブラックの配合量が多すぎる場合には、発泡粒子成形体の難燃性の悪化を招くおそれがある。
【0031】
発泡粒子成形体の色調のむらをより効果的に抑制する観点からは、カーボンブラックの配合量を基材樹脂100質量部に対して1質量部以上とすることが好ましく、2質量部以上とすることがより好ましい。また、発泡粒子成形体の難燃性の悪化をより確実に回避する観点からは、カーボンブラックの配合量を基材樹脂100質量部に対して7質量部以下にすることが好ましく、4質量部以下にすることがより好ましい。
【0032】
カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等を使用することができる。カーボンブラックは、ポリオレフィン系樹脂への分散性と材料コストとのバランスに優れたファーネスブラックであることが好ましい。
【0033】
<難燃剤>
前記発泡粒子には、難燃剤が配合されている。難燃剤には、少なくとも、下記一般式(I)で表されるヒンダードアミン系化合物が含まれている。
【0034】
【0035】
ただし、前記一般式(I)におけるR1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基を表す。前記一般式(I)におけるR1及びR2は、直鎖状脂肪族炭化水素基であってもよいし、分岐状脂肪族炭化水素基であってもよいし、脂環式炭化水素基であってもよい。前記一般式(I)におけるR1及びR2は、直鎖状脂肪族炭化水素基であることが好ましい。難燃剤による難燃性向上の効果をより高める観点からは、前記一般式(I)におけるR1及びR2の炭素数は、5~15であることが好ましく、11であることが特に好ましい。
【0036】
前記ヒンダードアミン系化合物は、それ自体が難燃性を向上させる作用を有しているだけではなく、発泡粒子の気泡径のばらつきを低減する作用を有している。すなわち、前記特定のヒンダードアミン系化合物は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子に従来用いられているヒンダードアミン系難燃剤に比べて分子量が小さいため、基材樹脂との相溶性に優れている。そのため、前記ヒンダードアミン系化合物は、基材樹脂中において凝集しにくい性質を有している。このようなヒンダードアミン系化合物を難燃剤として用いることにより、前記発泡粒子の製造過程において難燃剤の凝集物に起因する気泡核の形成を抑制することができる。その結果、複数の発泡粒子の気泡径同士を比較した場合における前記発泡粒子の気泡径のばらつきを低減することができる。
【0037】
また、前記発泡粒子の気泡径のばらつきを低減することにより、発泡粒子の気泡膜の厚みのばらつきも低減することができると推測される。基材樹脂中の主成分であるポリオレフィン系樹脂が可燃性樹脂であるため、気泡膜の厚みのばらつきが大きい場合、気泡膜の厚い部分が燃えやすくなる。そのため、気泡径のばらつきが小さな発泡粒子を型内成形することにより、得られる発泡粒子成形体の気泡膜の厚みのばらつきを小さくし、優れた難燃性を有する発泡粒子成形体とすることができると考えられる。
【0038】
以上のように、前記ヒンダードアミン系化合物を難燃剤として使用することにより、ヒンダードアミン系化合物自体が有する難燃性向上作用と、気泡径のばらつきの低減に由来する難燃性向上作用とを相乗的に作用させることができる。その結果、優れた難燃性を有する発泡粒子成形体とすることができる。また、前記ヒンダードアミン系化合物を難燃剤として使用することにより、優れた難燃性を確保しつつ、従来のヒンダードアミン系難燃剤に比べて配合量を低減することができる。
【0039】
前記ヒンダードアミン系化合物の配合量は、基材樹脂100質量部に対して0.01~1質量部である。ヒンダードアミン系化合物の配合量を前記特定の範囲とすることにより、発泡粒子の気泡径のばらつきを低減し、優れた難燃性を有する発泡粒子成形体とすることができる。前記ヒンダードアミン系化合物の配合量が少なすぎる場合には、前記ヒンダードアミン系化合物による難燃性向上の効果が不十分となりやすい。前記ヒンダードアミン系化合物の配合量が多すぎる場合には、発泡粒子の気泡径のばらつきが大きくなりやすく、難燃性の悪化や発泡粒子成形体の外観特性の悪化を招くおそれがある。
【0040】
発泡粒子成形体の色調のむらの発生をより効果的に抑制するとともに優れた難燃性を有する発泡粒子成形体とする観点からは、前記ヒンダードアミン系化合物の配合量を基材樹脂100質量部に対して0.05質量部以上とすることが好ましく、0.1質量部以上とすることがより好ましい。また、発泡粒子の気泡径のばらつきの増大をより確実に回避する観点からは、前記ヒンダードアミン系化合物の配合量を基材樹脂100質量部に対して0.8質量部以下にすることが好ましく、0.5質量部以下にすることがより好ましい。
【0041】
前記ヒンダードアミン系化合物の分子量は600~800であることが好ましい。この場合には、発泡粒子の気泡径のばらつきをより低減し、発泡粒子成形体における色調のむらの発生をより効果的に抑制するとともに、優れた難燃性を有する発泡粒子成形体とすることができる。なお、前記発泡粒子中に1種類のヒンダードアミン系化合物が含まれている場合、前述したヒンダードアミン系化合物の分子量は、当該ヒンダードアミン系化合物を構成する原子の原子量の合計である。
【0042】
前記発泡粒子中に複数種類のヒンダードアミン系化合物が含まれている場合、前述したヒンダードアミン系化合物の分子量は、発泡粒子中に含まれるヒンダードアミン系化合物の分子量の加重平均とする。また、発泡粒子中に含まれる個々のヒンダードアミン系化合物のモル比率が不明である場合、ポリスチレンを標準物質とするGPCにより求められる数平均分子量をヒンダードアミン系化合物の分子量とすることができる。
【0043】
前記発泡粒子中の難燃剤は、前記一般式(I)で表されるヒンダードアミン系化合物から選択される1種または2種以上の化合物から構成されていてもよい。また、前記発泡粒子中の難燃剤には、前記一般式(I)で表されるヒンダードアミン系化合物に加えて、前記ヒンダードアミン系化合物以外の他の難燃剤が含まれていてもよい。他の難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤、金属水酸化物、前記一般式(I)で表されるヒンダードアミン系化合物以外のヒンダードアミン系難燃剤等が例示される。
【0044】
発泡粒子中の難燃剤に前記一般式(I)で表されるヒンダードアミン系化合物以外の他の難燃剤が含まれる場合、他の難燃剤の配合量は、前述した作用効果を損なわない範囲であればよい。例えば、難燃剤中の前記一般式(I)で表されるヒンダードアミン系化合物の配合量は、40質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、難燃剤が前記ヒンダードアミン系化合物のみから構成されていることが特に好ましい。
【0045】
<添加剤>
前記発泡粒子には、難燃助剤、気泡調整剤、触媒中和剤、滑剤、結晶核剤、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。発泡粒子中の添加剤の含有量は、例えば、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0046】
<発泡粒子の嵩密度>
前記発泡粒子の嵩密度は、10~100kg/m3である。発泡粒子の嵩密度は50kg/m3以下であることが好ましく、30kg/m3以下であることがより好ましく、20kg/m3以下であることがさらに好ましい。この場合には、発泡粒子成形体の軽量性をより向上させることができる。また、発泡粒子の嵩密度が低くなると、発泡粒子中の基材樹脂の量が少なくなるため、発泡粒子成形体の燃焼速度が上昇しやすい。前記発泡粒子は、前記特定のヒンダードアミン系化合物を難燃剤として用いることにより、かかる状況においても発泡粒子成形体の優れた難燃性を確保することができる。
【0047】
一方、発泡粒子成形体の剛性をより高める観点からは、前記発泡粒子の嵩密度は15kg/m3以上であることが好ましく、18kg/m3以上であることがより好ましく、20kg/m3以上であることがさらに好ましい。
【0048】
前述した発泡粒子の嵩密度は、以下の方法により算出される値である。まず、500個以上の発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置する。このようにして得られる発泡粒子群をメスシリンダー内に自然に堆積するようにして充填し、メスシリンダーの目盛から発泡粒子群の嵩体積(単位:L)を読み取る。そして、メスシリンダー内の発泡粒子群の質量(単位:g)を前述した嵩体積で除した値を単位換算することにより、発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m3)を得ることができる。
【0049】
<高温ピーク>
前記発泡粒子は、熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線において、ポリオレフィン系樹脂固有の吸熱ピーク(以下、「固有ピーク」という。)の頂点よりも高温側に、1つ以上の吸熱ピーク(以下、「高温ピーク」という。)が現れる結晶構造を有していることが好ましい。この場合には、発泡粒子の独立気泡率をより高めることができるとともに、発泡粒子成形体を成形する際の成形条件を広い範囲から選択することができる。また、得られる発泡粒子成形体の剛性をより高めることができる。かかる観点からは、高温ピークにおける吸熱量(以下、「高温ピーク熱量」という。)は、5J/g以上であることが好ましく、8J/g以上であることがより好ましい。また、高温ピーク熱量は、50J/g以下であることが好ましく、40J/g以下であることがより好ましい。
【0050】
発泡粒子の高温ピーク熱量は、以下の方法により算出することができる。まず、約1~3mgの発泡粒子を試験片とし、JIS K7122-1987に規定されたプラスチックの転移熱測定方法に従って試験片を加熱溶融させる際のDSC曲線を取得する。DSC曲線の温度範囲は30℃から融解ピーク終了時の温度よりも30℃高い温度までとし、加熱中の昇温速度は10℃/分とする。発泡粒子が高温ピークを有する場合、DSC曲線には、
図1に示すように、固有ピークΔH1と、固有ピークΔH1の頂点よりも高温側に頂点を有する高温ピークΔH2とが現れる。
【0051】
次に、DSC曲線上における80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当する点βとを結ぶ直線L1を引く。なお、融解終了温度Tは、高温ピークΔH2における高温側の端点、つまり、DSC曲線における、高温ピークΔH2と、高温ピークΔH2よりも高温側のベースラインとの交点である。
【0052】
直線L1を引いた後、固有ピークΔH1と高温ピークΔH2との間に存在する極大点γを通り、グラフの縦軸に平行な直線L2を引く。この直線L2により固有ピークΔH1と高温ピークΔH2とが分割される。高温ピークΔH2の吸熱量は、DSC曲線における高温ピークΔH2を構成する部分と、直線L1と、直線L2とによって囲まれた部分の面積に基づいて算出することができる。
【0053】
なお、前述の方法によってDSC曲線を取得した後、発泡粒子を一旦冷却し、再度DSC曲線を取得した場合、DSC曲線には固有ピークΔH1のみが現れ、高温ピークΔH2はDSC曲線から消失する。
【0054】
<発泡粒子の平均気泡径Dav>
前記発泡粒子の平均気泡径Davは、50μm以上であることが好ましく、70μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。この場合には、比較的少量のカーボンブラックで発泡粒子成形体を効果的に着色することができる。一方、発泡粒子の気泡径のばらつきを抑制する観点からは、前記発泡粒子の平均気泡径Davは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、350μm以下であることがさらに好ましい。
【0055】
発泡粒子の平均気泡径Davは、以下の方法により算出される値である。まず、発泡粒子を概ね2等分となるように分割する。走査型電子顕微鏡を用い、分割により露出した切断面が視野内に全て納まるように拡大写真を取得する。得られた拡大写真上に、発泡粒子の最表面から中央部を通って反対側の最表面まで、2本の線分を隣り合う線分同士のなす角度が等しくなるように引く。すなわち、隣り合う線分同士のなす角度は90°となる。
【0056】
このようにして得られた2本の線分の長さの合計を線分と交差する気泡の総数で除した値を、個々の発泡粒子の気泡径とする。以上の操作を無作為に抽出した複数の発泡粒子に対して行い、それぞれの発泡粒子について得られた発泡粒子全体の気泡径を相加平均した値を、発泡粒子の平均気泡径Davとする。平均気泡径の算出に用いる発泡粒子の数は、例えば、30個以上とすることができる。
【0057】
<気泡径の変動係数DCV>
複数の発泡粒子において、発泡粒子同士を比較した場合の気泡径のばらつきの程度は、気泡径の変動係数DCVによって表され、気泡径の変動係数DCVの値が小さいほど発泡粒子の気泡径のばらつきが小さいことを意味する。前記発泡粒子の気泡径の変動係数DCVは、25%以下であることが好ましく、23%以下であることがより好ましく、21%以下であることがさらに好ましい。この場合には、発泡粒子の気泡径のばらつきをより低減し、発泡粒子成形体の色調のむらをより効果的に抑制するとともに、優れた難燃性を有する発泡粒子成形体とすることができる。
【0058】
発泡粒子の気泡径の変動係数DCVは、具体的には以下の方法により算出される値である。まず、前述した発泡粒子の平均気泡径の算出方法と同様の方法により、複数の発泡粒子の気泡径を算出する。次いで、これらの発泡粒子の気泡径に基づいて発泡粒子の平均気泡径Dav(単位:μm)及び発泡粒子の気泡径の標準偏差Dsd(単位:μm)を算出する。なお、発泡粒子の気泡径の標準偏差Dsdは、気泡径の不偏分散の平方根である。発泡粒子の気泡径の標準偏差Dsdは、具体的には下記数式(1)により算出される値である。下記数式(1)における記号nは、気泡径を算出した発泡粒子の総数を示す。
【0059】
【0060】
また、発泡粒子の気泡径の変動係数DCV(単位:%)は、平均気泡径Davに対する発泡粒子の気泡径の標準偏差Dsdの比Dsd/Davを百分率で表した値である。
【0061】
<嵩倍率Xに対する発泡粒子の気泡径の変動係数DCVの比DCV/X>
前記発泡粒子の嵩倍率Xに対する発泡粒子の気泡径の変動係数DCVの比DCV/Xの値は、0.40以下であることが好ましい。気泡径の変動係数DCVの値は、嵩倍率Xが高くなるほど大きくなる傾向があるため、嵩倍率の異なる発泡粒子間の気泡径のばらつきの程度を単純に気泡径の変動係数DCVの値のみで比較することは難しい。しかし、前述した傾向に基づけば、気泡径の変動係数DCVを嵩倍率Xで除することにより、嵩倍率Xの影響を考慮した気泡径のばらつきの程度を示す指標を得ることができる。
【0062】
それ故、嵩倍率Xに対する発泡粒子の気泡径の変動係数DCVの比DCV/Xの値を用いることにより、嵩倍率Xの異なる発泡粒子間の気泡径のばらつきの程度を比較することができる。具体的には、DCV/Xの値は、値が小さいほど嵩倍率Xを考慮した気泡径のばらつきが小さいことを意味する。
【0063】
前記発泡粒子の嵩倍率Xに対する発泡粒子の気泡径の変動係数DCVの比DCV/Xを、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.38以下、さらに好ましくは0.35以下、特に好ましくは0.34以下とすることにより、発泡粒子の気泡径のばらつきをより低減することができる。その結果、発泡粒子成形体の色調のむらの発生をより効果的に抑制するとともに、優れた難燃性を有する発泡粒子成形体とすることができる。なお、前記発泡粒子の嵩倍率Xに対する発泡粒子の気泡径の変動係数DCVの比DCV/Xの下限は、概ね0.15である。また、前述した発泡粒子の嵩倍率Xは、基材樹脂の密度を発泡粒子の嵩密度で除した値である。
【0064】
(発泡粒子成形体)
前記発泡粒子を型内成形することにより、発泡粒子成形体を得ることができる。具体的には、発泡粒子成形体は、次のようにして製造される。まず、所望する成形体の形状に対応したキャビティを有する金型内に発泡粒子を充填し、スチームなどの加熱媒体により金型内で多数の発泡粒子を加熱する。キャビティ内の発泡粒子は、加熱によってさらに発泡すると共に、相互に融着する。これにより、多数の発泡粒子が一体化し、キャビティの形状に応じた発泡粒子成形体が得られる。
【0065】
<難燃性>
発泡粒子成形体の難燃性は、FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard) No.302に規定された燃焼性試験を実施した場合の燃焼終了位置、燃焼継続時間及び燃焼距離に基づいて評価することができる。FMVSS No.302に規定された燃焼性試験方法は、具体的には以下の通りである。
【0066】
まず、前記発泡粒子を型内成形した後、得られた発泡粒子成形体を切削することにより板状の試験体を作製する。次に、試験体を温度21℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置し、試験体の状態を調整する。状態を調整した後の試験体における、長さ方向の基端から38mm離れた位置に開始線を引くとともに、基端から292mm離れた位置に終了線を引く。次いで、試験体をFMVSS No.302専用チャンバーのU字型フレームに取り付ける。
【0067】
次に、バーナーに着火し、炎の高さが38mmとなるようにガス量及び空気量等を調節する。この状態でバーナーの先端中央が試験体の基端における幅方向の中央となるようにバーナーを移動させ、バーナーの炎を試験体に15秒間接触させる。その後、バーナーの炎を試験体から離し、試験体の燃焼位置が開始線に到達してから燃焼が終了するまでの燃焼継続時間を計測する。
【0068】
本明細書において、発泡粒子成形体の難燃性の程度は、自己消火性、遅燃性及び易燃性の3段階のうちいずれかの段階に分類される。具体的には、試験体の燃焼が開始線に到達する前に終了した場合、または、試験体の燃焼終了位置が開始線から50mm以内であり、かつ、燃焼継続時間が60秒以内である場合には、発泡粒子成形体が自己消火性を有していると判定する。また、前述した自己消火性に該当しない場合であって、開始線からの燃焼距離を燃焼継続時間で除することにより得られる燃焼速度が102mm/分以下の場合には、発泡粒子成形体が遅燃性を有していると判定する。そして、前述した自己消火性に該当しない場合であって、燃焼速度が102mm/分を超える場合には、発泡粒子成形体が易燃性を有していると判定する。
【0069】
前記発泡粒子成形体は、FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard) No.302に規定された燃焼性試験を行った場合に遅燃性を有することが好ましく、自己消火性を有することがより好ましい。この場合には、発泡粒子成形体を、高い難燃性を求められる用途に好適に使用することができる。特に、自己消火性を有する発泡粒子成形体は、例えば自動車部材や建築材料等の用途に好適である。
【0070】
(発泡粒子の製造方法)
前記発泡粒子は、例えば、基材樹脂、カーボンブラック、難燃剤及び発泡剤を含有しており、密閉容器内で水性媒体に分散した発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子を水性媒体とともに前記密閉容器から該密閉容器内よりも低い圧力下に放出して発泡させる発泡工程を有する製造方法により作製することができる。
【0071】
前記製造方法においては、発泡工程により得られた発泡状態の粒子をそのまま発泡粒子としてもよい。また、後述するように、発泡工程により得られた発泡状態の粒子を一段発泡粒子とし、一段発泡粒子を用いて二段発泡工程を行うことにより、発泡粒子を作製することもできる。より嵩密度が低い発泡粒子を得る観点からは、発泡工程を行った後に二段発泡工程を行うことが好ましい。
【0072】
前記製造方法により製造された発泡粒子は、気泡径のばらつきが小さく、優れた難燃性を有している。以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0073】
<造粒工程>
前記製造方法は、発泡工程に先立って、基材樹脂、カーボンブラック及び難燃剤を含むポリオレフィン系樹脂粒子(以下、「樹脂粒子」という。)を作製する造粒工程を有していてもよい。造粒工程における樹脂粒子の作製方法は、特に限定されることはない。例えば、押出成形によって基材樹脂、カーボンブラック及び難燃剤を混練しつつ押し出すことによりストランドを作製し、次いで、ペレタイザー等によりストランドを所望の寸法に切断することにより、前記樹脂粒子を得ることができる。造粒工程において得られた樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより、発泡性樹脂粒子を得ることができる。樹脂粒子への発泡剤の含浸は、発泡工程内で行ってもよいし、発泡工程とは別の工程として行ってもよい。
【0074】
<発泡工程>
発泡工程においては、まず、樹脂粒子または発泡性樹脂粒子を密閉容器内に入れ、水などの水性の分散媒中に分散させる。この際、必要に応じて、密閉容器内の分散媒に樹脂粒子を分散させるための分散剤や分散助剤、界面活性剤等を添加してもよい。
【0075】
分散剤としては、例えば、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ等の無機微粒子を使用することができる。これらの無機微粒子は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。分散助剤としては、例えば、硫酸アルミニウム等を使用することができる。また、界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤を使用することができる。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
密閉容器内に発泡性樹脂粒子が入っている場合には、密閉容器を密封した後、容器内を加圧しつつ加温することにより、発泡性樹脂粒子を軟化させる。この際、必要に応じて、容器内に発泡剤を加え、発泡性樹脂粒子に更に発泡剤を含浸させてもよい。
【0077】
一方、密閉容器内に樹脂粒子が入っている場合には、密閉容器を密封した後、容器内に発泡剤を加える。これにより、発泡剤を樹脂粒子に含浸させて発泡性樹脂粒子とする。この際、密閉容器内を加圧しつつ加温することにより、樹脂粒子への発泡剤の含浸を促進することができる。
【0078】
いずれの場合においても、発泡性樹脂粒子内に含浸した発泡剤が十分な量となった後に、密閉容器の内容物を容器の内圧よりも低い圧力下に放出することにより、発泡性樹脂粒子を発泡させて発泡粒子または一段発泡粒子を得ることができる。
【0079】
なお、カーボンブラック及び難燃剤は、造粒工程において基材樹脂と混練する方法により樹脂粒子中に配合してもよく、発泡工程において分散剤や分散助剤と共に密閉容器内に添加する方法により発泡性樹脂粒子中に配合してもよい。難燃剤を発泡粒子中に均一に分散させる観点からは、造粒工程において、基材樹脂と、カーボンブラックと、難燃剤とを混練してポリオレフィン系樹脂粒子を造粒することが好ましい。
【0080】
なお、カーボンブラックの配合量は、最終的に得られる発泡粒子中のカーボンブラックの含有量と同程度の量となる。同様に、難燃剤の配合量は、最終的に得られる発泡粒子中の難燃剤の含有量と同程度の量となる。
【0081】
前記発泡工程のように、密閉容器内において発泡剤を含浸させた後、密閉容器の内容物を放出させると同時に発泡させる、いわゆるダイレクト発泡と呼ばれる方法は、発泡粒子の嵩密度を容易に低くすることができる。その反面、ダイレクト発泡においては、密閉容器の内容物を密閉容器内よりも低い圧力下に放出することにより発泡させるため、発泡粒子の気泡径のばらつきが大きくなりやすい。しかし、前記製造方法においては、樹脂粒子中に、気泡径のばらつきの増大を抑制することができる、前記特定のヒンダードアミン系化合物が含まれている。それ故、前記製造方法においてかかる樹脂粒子を用いることにより、発泡粒子の気泡径のばらつきの増大を抑制しつつ、嵩密度の低い発泡粒子を容易に得ることができる。
【0082】
発泡工程において使用される発泡剤としては、例えば、炭化水素及びハロゲン化炭化水素などの有機系物理発泡剤や、二酸化炭素、窒素、空気及び水等の無機系物理発泡剤を使用することができる。有機系物理発泡剤として使用し得る炭化水素には、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン等が挙げられる。有機系物理発泡剤として使用し得るハロゲン化炭化水素には、例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、テトラクロロジフルオロエタン等が挙げられる。有機系物理発泡剤としては、前述した物質を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。同様に、無機系物理発泡剤としては、前述した物質を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
発泡剤は、無機系物理発泡剤であることが好ましい。無機系物理発泡剤を用いて樹脂粒子を発泡させることにより、最終的に、発泡倍率が高く、粒度分布の狭い発泡粒子を容易に得ることができる。無機系物理発泡剤としては、発泡倍率が高く、粒度分布の狭い発泡粒子をより容易に得る観点から二酸化炭素を使用することが好ましい。また、二酸化炭素は不燃性であるため、発泡剤として二酸化炭素を用いることにより、発泡剤に起因する発泡粒子及び発泡粒子成形体の難燃性の悪化を回避することができる。
【0084】
発泡剤の添加量は、基材樹脂の種類や発泡剤の種類、目的とする発泡粒子の嵩密度等に応じて適宜設定することができるが、基材樹脂100質量部に対して0.1質量部~30質量部、好ましくは0.5質量部~15質量部、より好ましくは1質量部~10質量部が使用される。
【0085】
前記発泡工程は、樹脂粒子を発泡させる前に、前述した高温ピークを生成させる工程を含んでいてもよい。高温ピークを生成させる方法としては、例えば、密閉容器内で樹脂粒子を分散媒内で特定温度範囲内に保持して熱処理を行う方法を採用することができる。熱処理を行うタイミングは特に限定されることはなく、発泡剤の含浸前、含浸中及び含浸後のいずれかの時点で熱処理を行ってもよいし、前述した時点のうち2以上の時点にまたがって行われてもよい。この熱処理により、ポリオレフィン系樹脂固有の結晶に由来する融解ピーク(固有ピーク)と、該固有ピークよりも高温側に位置する融解ピーク(高温ピーク)を示す結晶構造を有する発泡粒子を得ることができる。
【0086】
<二段発泡工程>
前記製造方法は、耐圧容器内において前記発泡工程により得られた一段発泡粒子に無機系物理発泡剤を含浸させることにより前記一段発泡粒子の気泡内の圧力を上昇させ、次いで、前記耐圧容器から取り出した前記一段発泡粒子を前記気泡内の圧力よりも低圧下で加熱することにより、前記一段発泡粒子の嵩密度を低下させる二段発泡工程をさらに有していてもよい。
【0087】
前記製造方法において、樹脂粒子を前記発泡工程と前記二段発泡工程との2段階で発泡させることにより、低密度の発泡粒子をより容易に得ることができる。また、2段階で発泡させる場合には、1段階で発泡させる場合に比べて、同一の嵩密度における発泡粒子の気泡径のばらつきをより低減させやすい。これにより、発泡粒子成形体における色調のむらの発生をより効果的に抑制するとともに、優れた難燃性を有する発泡粒子成形体とすることができる。
【0088】
より具体的には、二段発泡工程は、例えば以下のようにして実施される。まず、二段発泡工程に用いる一段発泡粒子を準備する。二段発泡工程に用いる一段発泡粒子としては、発泡工程が完了した後、大気圧下での養生を行った後の一段発泡粒子を用いることが好ましい。一段発泡粒子の養生方法としては、従来の養生方法と同様の方法を採用することができる。
【0089】
一段発泡粒子を準備した後、一段発泡粒子を加圧可能な耐圧容器内に入れる。次いで、耐圧容器内に無機系物理発泡剤を供給することにより耐圧容器内を加圧し、一段発泡粒子に無機系物理発泡剤を含浸させる。このようにして無機系物理発泡剤を含浸させることにより、一段発泡粒子の気泡内の圧力を含浸前よりも上昇させることができる。
【0090】
二段発泡工程においては、耐圧容器内の一段発泡粒子を加温しながら加圧してもよい。この場合には、一段発泡粒子への無機系物理発泡剤の含浸をより促進することができる。二段発泡工程において一段発泡粒子を加温する場合、ブロッキング、つまり、一段発泡粒子同士が融着して塊を形成する現象を抑制する観点から、一段発泡粒子の加熱温度が発泡粒子を構成する樹脂の融点よりも低くなるようにすることが好ましい。
【0091】
二段発泡工程において使用する無機系物理発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、空気、スチーム等を使用することができる。これらの無機系物理発泡剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。二段発泡工程においては、取り扱いが容易な空気を無機系物理発泡剤として使用することが好ましい。
【0092】
二段発泡工程に用いられる一段発泡粒子の気泡内の圧力(内圧)は、例えば特許文献1に記載された方法により測定することができる。
【0093】
一段発泡粒子への無機系物理発泡剤の含浸が完了した後、一段発泡粒子を耐圧容器から取り出す。この一段発泡粒子を気泡の内部の圧力よりも低圧下でスチーム等を用いて加熱して、個々の気泡を膨張させることができる。その結果、一段発泡粒子の嵩密度を低下させ、所望の嵩密度を備えた発泡粒子を得ることができる。二段発泡工程の後に得られる発泡粒子の嵩密度は、10~30kg/m3であることが好ましい。
【0094】
なお、本明細書において、発泡工程において使用する容器を「密閉容器」、二段発泡工程において使用する容器を「耐圧容器」と称したが、いずれも密閉可能であり、圧力を付与できる容器であればよく、同一の容器を使用してもよい。
【実施例0095】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子、その製造方法及びポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体の実施例を以下に説明する。なお、本発明に係る発泡粒子、その製造方法及び発泡粒子成形体の具体的な態様は、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【0096】
(実施例1~実施例5及び比較例6~比較例7)
<造粒工程>
押出機に、基材樹脂と、カーボンブラックと、難燃剤と、気泡調整剤とを供給し、押出機内でこれらの成分を混練しつつ押し出すことにより、これらの成分を含むストランドを作製した。その後、得られたストランドを、ペレタイザーを用いて切断することにより、長さ/直径比が2.0、平均質量が1.0mgの樹脂粒子を得た。
【0097】
実施例1~実施例5及び比較例6~比較例7における基材樹脂は、具体的には、エチレンに由来する成分の含有量が3.1質量%であるプロピレン-エチレンランダム共重合体である。プロピレン-エチレンランダム共重合体の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローインデックスは7.3g/10分であり、密度は900kg/m3であり、融点は141.2℃であり、融解終了温度は155.0℃である。
【0098】
難燃剤としては、ビス(1-ウンデカンオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート(株式会社ADEKA製「アデカスタブ FP-T80」、分子量681)を使用した。実施例1~実施例5及び比較例6~比較例7において使用した難燃剤は、具体的には、下記構造式(II)に示す化学構造を有している。難燃剤の配合量は、基材樹脂100質量部に対して表1及び表2に示す割合とした。なお、前述した「アデカスタブ」は、株式会社ADEKAの登録商標である。また、該ヒンダードアミン系化合物の分子量は、カタログ値である。
【0099】
【0100】
カーボンブラックとしては、ファーネスブラックを使用した。カーボンブラックの配合量は、基材樹脂100質量部に対して表1及び表2に示す割合とした。気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛粉末を使用した。気泡調整剤の配合量は、基材樹脂100質量部に対して0.05質量部とした。
【0101】
<発泡工程>
内容量5Lのオートクレーブに、樹脂粒子100質量部に対して0.3質量部の分散剤と、0.01質量部の分散助剤と、0.004質量部の界面活性剤と、300質量部の分散媒とを封入した。実施例1~実施例5及び比較例6~比較例7において使用した分散剤はカオリンであり、分散助剤は硫酸アルミニウムであり、界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムであり、分散媒は水である。
【0102】
次いで、オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を供給し、ゲージ圧で1.0MPa(G)となるまでオートクレーブ内を加圧した。なお、(G)を付した圧力の単位は、ゲージ圧、つまり、大気圧を基準とした圧力の値であることを意味する。その後、オートクレーブ内を攪拌しながら2℃/分の昇温速度で144℃に達するまでオートクレーブ内を昇温させた。オートクレーブ内の温度が144℃に達した後、攪拌を継続しつつこの温度を15分間保持した。
【0103】
次いで、オートクレーブ内を攪拌しながら2℃/分の昇温速度で149℃に達するまでオートクレーブ内を昇温させた。オートクレーブ内の温度が149℃に達した後、オートクレーブ内に二酸化炭素を供給してオートクレーブ内の圧力を2.3MPa(G)に調整しつつ、149℃の温度を15分間保持した。その後、オートクレーブ内に二酸化炭素を供給してオートクレーブ内の圧力を2.35MPa(G)に上昇させ、背圧をかけた状態でオートクレーブを開放し、内容物を大気圧下に放出させた。以上により、樹脂粒子を発泡させて、一段発泡粒子を得た。
【0104】
<二段発泡工程>
発泡工程において得られた一段発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間放置して養生を行った後、耐圧容器内に養生後の一段発泡粒子を充填した。次いで、耐圧容器内に無機系物理発泡剤としての空気を注入し、24時間かけて耐圧容器内の圧力を常圧から0.60MPa(G)まで上昇させた。この圧力を24時間維持して無機系物理発泡剤を気泡内に含浸させた。耐圧容器から取り出した一段発泡粒子の気泡内の圧力(ゲージ圧)は、表1及び表2に示す値であった。
【0105】
次に、耐圧容器から取り出した一段発泡粒子を二段発泡機に充填し、表1の「スチーム圧」欄に示す圧力(ゲージ圧)の飽和水蒸気を供給することにより、一段発泡粒子の温度を表1に示す温度まで上昇させた。この温度を15秒間維持した後、耐圧容器を開放して内容物を大気圧下に放出することにより、一段発泡粒子をさらに発泡させた。以上により、発泡粒子を得た。
【0106】
なお、一段発泡粒子の気泡内の圧力の測定方法は、以下の通りである。まず、無機系物理発泡剤が含浸された一段発泡粒子を耐圧容器から取り出した。次いで、一段発泡粒子を、一段発泡粒子は通過させないが空気は自由に通過できるサイズの針穴が多数設けられた70mm×100mm程度のポリエチレン製袋の中に収容し、耐圧容器から一段発泡粒子を取り出した時点から60秒以内に気温23℃、相対湿度50%の大気圧下の恒温室に移動させた。そして、一段発泡粒子を耐圧容器から取り出してからの経過時間が120秒に達した時点で、恒温室内において一段発泡粒子の質量Q(単位:g)を測定した。なお、一段発泡粒子の質量Qには、ポリエチレン製袋の質量は含まれない。
【0107】
質量Qの測定後、一段発泡粒子が収容されたポリエチレン製袋を恒温室内に48時間放置した。その後、一段発泡粒子の質量U(単位:g)を測定した。なお、一段発泡粒子の質量Uには、ポリエチレン製袋の質量は含まれない。
【0108】
恒温室内に一段発泡粒子を放置している間、一段発泡粒子の気泡内に存在する無機系物理発泡剤等の気体は、気泡内の圧力と大気圧との圧力差によって気泡膜を透過し、一段発泡粒子の外部へ自然に放出される。その結果、恒温室内に48時間放置した一段発泡粒子の気泡内の圧力は、大気圧と平衡に達する程度まで低下する。それ故、前述した一段発泡粒子の質量Qから恒温室内に48時間放置した一段発泡粒子の質量Uを差し引くことにより、耐圧容器内において含浸された無機系物理発泡剤の質量W(単位:g)を算出することができる。
【0109】
以上により得られた無機系物理発泡剤の質量W(単位:g)を物質量(単位:mol)に換算した後、下記数式(2)に示す理想気体の状態方程式に代入することにより、無機系物理発泡剤を含浸した時点の一段発泡粒子の気泡内の圧力P(単位:MPa(G))を算出することができる。このようにして算出される圧力Pの値は、ゲージ圧、つまり、大気圧を基準とした場合の気泡内の圧力である。
P=(W/M)×R×T/V ・・・(2)
【0110】
なお、上記式(2)における記号Mは無機系物理発泡剤のモル質量(単位:g/mol)であり、Rは気体定数であり、T(単位:K)は恒温室の室温であり、V(単位:L)は気泡の容積である。本例における無機系物理発泡剤のモル質量Mは、空気の平均モル質量である28.8g/molであり、恒温室の室温Tは296Kである。気体定数Rは0.0083MPa・L/(K・mol)とした。
【0111】
また、気泡の容積Vは、一段発泡粒子の見掛け体積から一段発泡粒子に占める基材樹脂の体積を差し引くことにより算出される値である。気泡の容積Vの算出方法は、具体的には以下の通りである。まず、前述した気泡内の圧力の測定に用いた一段発泡粒子とは別に、500個以上の一段発泡粒子からなる一段発泡粒子群を準備した。この一段発泡粒子群を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中に2日間放置した。次いで、温度23℃のエタノールが入ったメスシリンダーを用意し、一段発泡粒子群を上記メスシリンダー内のエタノール中に金網等を使用して沈めた。水位上昇分より読みとられる一段発泡粒子群の体積V1(単位:L)を測定した後、一段発泡粒子群の質量W1(単位:g)を体積で除することにより一段発泡粒子の見掛け密度W1/V1(単位:g/L)を得ることができる。
【0112】
恒温室内に48時間放置した一段発泡粒子の質量Uを前述した一段発泡粒子の見掛け密度W1/V1で除することにより、気泡内の圧力の測定に用いた一段発泡粒子の見掛け体積(単位:L)を算出することができる。また、恒温室内に48時間放置した一段発泡粒子の質量Uを単位換算した基材樹脂の密度で除することにより、気泡内の圧力の測定に用いた一段発泡粒子に占める基材樹脂の体積(単位:L)を算出することができる。それ故、以上により算出された一段発泡粒子の見掛け体積から一段発泡粒子に占める基材樹脂の体積を差し引くことにより、気泡の容積V(単位:L)を得ることができる。
【0113】
<型内成形>
本例では、前述の方法により得られた発泡粒子を型内成形し、長さ350mm、幅200mm、厚み50mmの寸法を有する平板状の発泡粒子成形体を作製した。まず、発泡粒子を温度40℃、相対湿度20%、1atmの環境中に24時間放置して乾燥させた後、耐圧容器内に発泡粒子を充填した。そして、耐圧容器内に空気を注入し、12時間かけて耐圧容器内の圧力を常圧から0.15MPa(G)まで上昇させた。この圧力を12時間維持して空気を気泡内に含浸させた。耐圧容器から取り出した発泡粒子の気泡内の圧力は、表1及び表2に示す値であった。なお、発泡粒子の気泡内の圧力の測定方法は、前述した一段発泡粒子の気泡内の圧力の測定方法と同様である。
【0114】
次に、耐圧容器から取り出した発泡粒子を、前述した寸法を有する発泡粒子成形体を成形可能な金型に充填した。そして、金型内に、表1及び表2の「成形圧」欄に示すゲージ圧の飽和水蒸気を供給することにより型内成形を行った。以上により、前述した寸法を有する発泡粒子成形体を得た。
【0115】
(実施例6)
実施例6は、難燃剤として、実施例1~実施例5において用いた化合物と、BASF社製「Flamestab NOR116」を併用した以外は、実施例1~実施例5と同様の構成を有している。また、実施例6の製造方法は、難燃剤を前述のように変更した以外は実施例1~実施例5の製造方法と同様である。
【0116】
本例において使用した難燃剤は、具体的には、下記構造式(III)に示す化学構造を有している。なお、「Flamestab」はBASF社の登録商標である。
【0117】
【0118】
(比較例1~比較例5)
比較例1~比較例5は、難燃剤として、前述したBASF社製「Flamestab NOR116」を併用した以外は、実施例1~実施例5と同様の構成を有している。また、比較例1~比較例5の製造方法は、難燃剤を前述のように変更した以外は実施例1~実施例5の製造方法と同様である。
【0119】
(一段発泡粒子及び発泡粒子)
実施例及び比較例の一段発泡粒子及び発泡粒子の物性は、以下のようにして測定される。
【0120】
<高温ピーク熱量及び総熱量>
高温ピーク熱量及び総熱量の測定に用いる測定試料は、一段発泡粒子であってもよいし、発泡粒子であってもよい。本例においては、一段発泡粒子を測定試料として示差走査熱量測定を行った。具体的には、約2mgの一段発泡粒子を試験片とし、JIS K7122-1987に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に従って試験片を加熱溶融させ、この際のDSC曲線を得た。測定温度範囲は30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度までとし、加熱時の昇温速度は10℃/分とした。
【0121】
このようにして得られたDSC曲線における吸熱ピークを、前述の方法により固有ピークΔH1と高温ピークΔH2とに分割した(
図1参照)。そして、固有ピークΔH1の面積と高温ピークΔH2の面積との合計を総熱量の値とし、高温ピークΔH2の面積を高温ピーク熱量の値とした。実施例1~実施例6における一段発泡粒子の高温ピーク熱量及び総熱量は表1に示す通りであった。また、比較例1~比較例7における一段発泡粒子の高温ピーク熱量及び総熱量は表2に示す通りであった。
【0122】
<一段倍率及び一段発泡粒子の嵩密度>
500個以上の一段発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間放置した。このようにして得られた一段発泡粒子群をメスシリンダー内に自然に堆積するようにして充填し、メスシリンダーの目盛から一段発泡粒子群の嵩体積(単位:L)を読み取った。そして、メスシリンダー内の一段発泡粒子群の質量(単位:g)を前述した嵩体積(単位:L)で除した値を単位換算することにより、一段発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m3)を得た。実施例1~実施例6における一段倍率及び一段発泡粒子の嵩密度は、表1に示す通りであった。また、比較例1~比較例7における一段倍率及び一段発泡粒子の嵩密度は、表2に示す通りであった。
【0123】
<発泡粒子の嵩倍率X及び嵩密度>
発泡粒子の嵩倍率X及び嵩密度の測定方法は、一段発泡粒子に替えて発泡粒子を用いる以外は前述した一段倍率及び一段発泡粒子の嵩密度の測定方法と同様である。実施例1~実施例6における発泡粒子の嵩倍率X及び嵩密度は、表1に示す通りであった。また、比較例1~比較例7における発泡粒子の嵩倍率X及び嵩密度は、表2に示す通りであった。
【0124】
<発泡粒子の平均気泡径Dav、標準偏差Dsd及び変動係数DCV>
発泡粒子を概ね2等分となるように分割した後、走査型電子顕微鏡を用い、分割により露出した切断面が視野内に全て納まるように拡大写真を取得した。これらの拡大写真上に、発泡粒子の最表面から中央部を通って反対側の最表面まで、2本の線分を隣り合う線分同士のなす角度が等しくなるように引いた。すなわち、隣り合う線分同士のなす角度が90°となるように2本の線分を引いた。このようにして得られた2本の線分の長さの合計を、線分と交差する気泡の総数で除することにより、個々の発泡粒子の気泡径(単位:μm)を算出した。以上の操作を無作為に抽出した50個の発泡粒子に対して行い、得られた発泡粒子の気泡径を相加平均した値を発泡粒子の平均気泡径Davとした。
【0125】
また、以上のようにして算出した50個の発泡粒子の気泡径を用いて標準偏差Dsd及び変動係数DCVを算出した。なお、気泡径の標準偏差Dsdは、気泡径の不偏分散の平方根である。また、発泡粒子の変動係数DCV(単位:%)は、平均気泡径Davに対する気泡径の標準偏差Dsdの比Dsd/Davを百分率で表した値である。実施例における発泡粒子の平均気泡径Dav、標準偏差Dsd及び変動係数DCVは表1に示す通りであった。また、比較例1~比較例7における発泡粒子の平均気泡径Dav、標準偏差Dsd及び変動係数DCVは表2に示す通りであった。
【0126】
<一段発泡粒子の平均気泡径dav、気泡径の標準偏差dsd及び変動係数dCV>
一段発泡粒子の平均気泡径dav、気泡径の標準偏差dsd及び変動係数dCVの測定方法は、発泡粒子に替えて一段発泡粒子を用いる以外は前述した発泡粒子の平均気泡径Dav、標準偏差Dsd及び変動係数DCVの測定方法と同様である。実施例1~実施例6における一段発泡粒子の平均気泡径dav、気泡径の標準偏差dsd及び変動係数dCVは、表1に示す通りであった。また、比較例1~比較例7における一段発泡粒子の平均気泡径dav、気泡径の標準偏差dsd及び変動係数dCVは、表2に示す通りであった。
【0127】
(発泡粒子成形体)
実施例及び比較例の発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体の特性の評価方法は以下の通りである。
【0128】
<成形体密度>
発泡粒子成形体の質量を、寸法に基づいて算出される体積で除した値を成形体密度(単位:kg/m3)とした。実施例1~6における発泡粒子成形体の成形体密度は、表1に示した通りであった。また、比較例1~比較例7における発泡粒子成形体の成形体密度は、表2に示す通りであった。
【0129】
<難燃性>
FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard) No.302に規定された燃焼性試験方法に準じた方法により難燃性の評価を行った。具体的には、まず、発泡粒子成形体を切断することにより、長さ350mm、幅102mm、厚み12.7mmの板状を呈し、長さ350mmの辺と幅102mmの辺とに囲まれた面の一方がスキン面である試験体を作製した。この試験体における、長さ方向の基端から38mm離れた位置に開始線を引くとともに、基端から138mm離れた位置に終了線を引いた。この試験体を用い、スキン面がバーナーの炎に触れるようにしてFMVSS No.302と同様の方法により燃焼性試験を行った。
【0130】
表1及び表2の「難燃性」欄に記載した記号の意味は以下の通りである。
A:試験体の燃焼が開始線に到達する前に終了した場合
B:試験体の燃焼が開始線を超えて継続し、かつ、開始線から燃焼終了位置までの燃焼速度が102mm/分以下であった場合
C:試験体の燃焼が開始線を超えて継続し、かつ、開始線から燃焼終了位置までの燃焼速度が102mm/分を超えた場合
【0131】
試験体の燃焼が開始線を越えた記号「B」及び記号「C」の場合には、3個の試験体の燃焼速度のうち最も速かった燃焼速度の値を表1の「燃焼速度」欄に記載した。試験体の燃焼が開始線を超える前に終了した記号「A」の場合には、同欄に記号「-」を記載した。なお、前述した「燃焼速度」は、開始線から燃焼終了位置までの距離(単位:mm)を、燃焼位置が開始線に到達してから燃焼が終了するまでの燃焼継続時間(単位:分)で除した値である。
【0132】
<外観特性>
発泡粒子成形体における長さ350mmの辺と幅200mmの辺とに囲まれたスキン面から無作為に30か所の測定位置を設定した。分光測色計(コニカミノルタジャパン株式会社製「CM-5」)を用いてこれらの測定位置の色調を測定し、CIE 1976 L*a*b*色空間における色座標を取得した。なお、色調の取得は反射測定で行い、測定径はφ8mmとし、測定方式はSCE方式とした。
【0133】
外観特性の評価においては、前述した30か所の測定位置において得られたL*値の最大値と最小値との差を使用した。具体的には、表1及び表2の「評価」欄には、L*値の最大値と最小値との差が3未満の場合に記号「A」、3以上4未満の場合に記号「B」、4以上5未満の場合に記号「C」、5以上の場合に記号「D」をそれぞれ記載した。L*値は明るさの指標であり、値が大きくなるほど明るいことを示す。L*値の最大値と最小値との差が小さいほど明るさの差が小さく、色むらが小さいことを意味する。
【0134】
【0135】
【0136】
表1に示したように、実施例1~実施例6の発泡粒子には、カーボンブラックが含まれているとともに、難燃剤として、前記構造式(II)で表されるヒンダードアミン系化合物が使用されている。また、カーボンブラックの配合量及び前記ヒンダードアミン系化合物の配合量は、それぞれ前記特定の範囲内である。そのため、実施例1~実施例6の発泡粒子成形体における色調のむらの発生を抑制することができるとともに、優れた難燃性を有する発泡粒子成形体とすることができる。以下、実施例と比較例とをより詳細に比較する。
【0137】
実施例1の発泡粒子には、カーボンブラックと、前記特定のヒンダードアミン系化合物からなる難燃剤とが含まれている。そのため、実施例1の発泡粒子は、難燃剤の種類が異なり、嵩密度が同程度である比較例1に比べて気泡径の変動係数を小さくし、気泡径のばらつきの増大を抑制することができた。その結果、実施例1の発泡粒子からなる発泡粒子成形体は、比較例1の発泡粒子からなる発泡粒子成形体に比べて色調のむらの発生を抑制することができた。
【0138】
同様に、実施例2と比較例2との比較、及び、実施例3と比較例3との比較からも、実施例2及び実施例3の発泡粒子は、難燃剤の種類が異なり、嵩密度が同程度である比較例2及び比較例3に比べて気泡径のばらつきを小さくできることが理解できる。
【0139】
実施例4の発泡粒子におけるヒンダードアミン系化合物の配合量は、実施例1~実施例3の発泡粒子よりも少ない。実施例4の発泡粒子は、このように難燃剤の配合量が比較的少ない場合であっても実施例1~実施例3の発泡粒子と同様に気泡径の変動係数を小さくすることができる。さらに、実施例1~実施例3と実施例4との比較から、前記特定のヒンダードアミン系化合物を用いる場合には、優れた難燃性を維持しつつヒンダードアミン系化合物の配合量を低減できることが理解できる。
【0140】
一方、比較例4の発泡粒子は、実施例4の発泡粒子に比べて気泡径の変動係数が大きく、気泡径のばらつきが大きい。そのため、比較例4の発泡粒子を型内成形すると、発泡粒子成形体の内部に基材樹脂が比較的多く存在する部分と比較的少なく存在する部分とが形成されやすい。また、比較例4における難燃剤の配合量は比較的少ないため、難燃剤に由来する難燃性向上の効果が比較的小さい。そのため、比較例4の発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体は、基材樹脂が比較的多く存在する部分において燃焼が継続しやすくなり、自己消火しにくいことがある。
【0141】
実施例5の発泡粒子における前記ヒンダードアミン系化合物の配合量は、実施例1~実施例3の発泡粒子よりも多い。実施例5の発泡粒子は、このように難燃剤の配合量が比較的多い場合であっても実施例1~実施例3の発泡粒子と同様に気泡径の変動係数を小さくすることができる。一方、比較例5の発泡粒子は、実施例5の発泡粒子に比べて気泡径の変動係数が大きく、気泡径のばらつきが大きい。実施例5と比較例5との比較から、前記特定のヒンダードアミン系化合物を用いる場合には、前記特定のヒンダードアミン系化合物の配合量を多くした場合にも気泡径のばらつきの増大を抑制し、発泡粒子成形体における色ムラの発生を抑制できることが理解できる。
【0142】
比較例6の発泡粒子における前記ヒンダードアミン系化合物の配合量は前記特定の範囲よりも多い。そのため、比較例6の発泡粒子は、実施例1~実施例6の発泡粒子に比べて気泡径のばらつきが大きくなった。
【0143】
比較例7の発泡粒子における前記ヒンダードアミン系化合物の配合量は前記特定の範囲よりも少ない。そのため、比較例7の発泡粒子からなる発泡粒子成形体は、実施例1~実施例6の発泡粒子からなる発泡粒子成形体に比べて難燃性に劣る。
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法が、前記基材樹脂、前記カーボンブラック及び前記難燃剤を含むポリオレフィン系樹脂粒子を作製する造粒工程を有しており、前記発泡工程において、前記密閉容器内の水性媒体中に分散させた前記ポリオレフィン系樹脂粒子に前記発泡剤を含浸させて前記発泡性ポリオレフィン系樹脂粒子とする、請求項6に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法が、前記発泡工程により得られた一段発泡粒子を耐圧容器内に入れ、前記一段発泡粒子に無機系物理発泡剤を含浸させることにより前記一段発泡粒子の気泡内の圧力を上昇させ、次いで、前記耐圧容器から取り出した前記一段発泡粒子を前記気泡内の圧力よりも低圧下で加熱することにより、前記一段発泡粒子の嵩密度を低下させる二段発泡工程をさらに有している、請求項6または7に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法。