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特開2022-32676固体撮像素子及び固体撮像素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032676
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】固体撮像素子及び固体撮像素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136706
(22)【出願日】2020-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】井本 知宏
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA02
4M118AA05
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA02
4M118CA33
4M118CA34
4M118EA01
4M118EA14
4M118EA16
4M118FA06
4M118GA02
4M118GA09
4M118GB03
4M118GB07
4M118GB10
4M118GB11
4M118GB14
4M118GB19
4M118GC08
4M118GC14
4M118GC17
4M118GD04
4M118GD07
4M118GD11
(57)【要約】
【課題】微細画素でも集光効率を向上させることが可能であり、優れた感度を備えた固体撮像素子及び固体撮像素子の製造方法を提供することを目的とする
【解決手段】本実施形態に係る固体撮像素子1は、半導体基板10と、光電変換素子11と、色フィルター100と、反射低減層40と、マイクロレンズ200と、を備え、マイクロレンズ200は、光電変換素子11側に最も近接して配置された第1のマイクロレンズ層20と、第1のマイクロレンズ層20のレンズ面上に積層するように形成された第2のマイクロレンズ層21とを有し、第1のマイクロレンズ層20の屈折率は、1.75以上2.2以下の範囲内であり、反射低減層40及び第2のマイクロレンズ層21の各屈折率は、第1のマイクロレンズ層20の屈折率よりも低い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に設けられ、平面視でマトリクス状に配置された複数の光電変換素子と、
前記複数の光電変換素子のそれぞれに対応させて配置された複数色の色フィルターが、予め設定した規則パターンで二次元的に配置された色フィルター層と、
前記色フィルター層上に設けられた反射低減層と、
前記反射低減層上に設けられ、前記複数色の色フィルター及び前記複数の光電変換素子にそれぞれ対応させて配置された複数のレンズを有するマイクロレンズ層と、
を備え、
前記マイクロレンズ層は、前記光電変換素子側に最も近接して配置された第1のマイクロレンズ層と、前記第1のマイクロレンズ層のレンズ面上に積層するように形成された第2のマイクロレンズ層とを有し、
前記第1のマイクロレンズ層の屈折率は、1.75以上2.2以下の範囲内であり、
前記反射低減層及び前記第2のマイクロレンズ層の各屈折率は、前記第1のマイクロレンズ層の屈折率よりも低い固体撮像素子。
【請求項2】
前記反射低減層の屈折率は、前記第2のマイクロレンズ層の屈折率よりも高く、且つ前記第1のマイクロレンズ層の屈折率よりも低い請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記反射低減層の屈折率は、1.55以上1.8以下の範囲内である請求項1または請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記反射低減層の膜厚は、10nm以上200nm以下の範囲内である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記第1のマイクロレンズ層の膜厚は、100nm以上400nm以下の範囲内である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記第2のマイクロレンズ層の屈折率は、1.4以上1.75以下の範囲内である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記マイクロレンズ層のFill Factorは、85%以上100%以下の範囲内である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記マイクロレンズ層は、隣接する前記複数のレンズがそれぞれ接触しており、前記色フィルターの角部上にギャップを有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記第1のマイクロレンズ層は、波長380nm以上700nm以下の可視光の範囲での消衰係数が1.0×10-3以下である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項10】
前記第1のマイクロレンズ層は、無機材料で形成されている請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項11】
前記マイクロレンズ層は、シリコンの窒化物またはシリコンの酸窒化物で形成されており、前記光電変換素子から離れるほど酸素含有量が高くなる請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項12】
前記マイクロレンズ層のレンズ面上に設けられ、上面が平坦になるように形成されたレンズ平坦化層を備える請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項13】
前記レンズ平坦化層は、屈折率が1.1以上1.6以下の範囲内の樹脂によって形成されている請求項12に記載の固体撮像素子。
【請求項14】
前記第2のマイクロレンズ層の膜厚は、50nm以上150nm以下の範囲内である請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項15】
前記第2のマイクロレンズ層の膜厚は、前記第1のマイクロレンズ層の膜厚よりも薄い膜厚である請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項16】
複数の光電変換素子が平面視でマトリクス状に配置され、複数の前記光電変換素子の間に素子分離構造が設けられた半導体基板上の前記光電変換素子を取り囲む位置に、隔壁を形成する工程と、
前記隔壁で囲まれた前記光電変換素子に対応する位置に、複数色の色フィルターをそれぞれ形成する工程と、
前記色フィルター及び前記隔壁の上部に、屈折率が1.55以上1.8以下の範囲内である樹脂層または無機材料層で構成された反射低減層を形成する工程と、
前記反射低減層の上部に、屈折率が1.75以上2.2以下の範囲内である窒化シリコン膜またはシリコン酸窒化膜から形成され、前記複数の光電変換素子にそれぞれ対応する位置に複数のレンズを備え、膜厚が100nm以上400nm以下の範囲内である第1のマイクロレンズ層を形成する工程と、
前記第1のマイクロレンズ層のレンズ面上に、前記第1のマイクロレンズ層よりも低い屈折率を有するシリコン酸窒化膜または酸化シリコン膜から形成された第2のマイクロレンズ層を形成する工程と、
を備える固体撮像素子の製造方法。
【請求項17】
前記第1のマイクロレンズ層を形成する工程は、
前記色フィルター、前記反射低減層、前記窒化シリコン膜またはシリコン酸窒化膜、樹脂層、及びレジスト層がこの順に積層された積層体の前記レジスト層に対するフォトリソグラフィにより、前記レジスト層にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを熱フローによって溶融させて、レンズ形状に成形する工程と、
前記レンズ形状に成形された前記レジストパターンをマスクとして前記樹脂層に対するドライエッチングを行い、前記樹脂層をレンズ母型に成形する工程と、
前記レンズ母型をマスクとして前記窒化シリコン膜またはシリコン酸窒化膜に対するドライエッチングを行い、前記窒化シリコン膜またはシリコン酸窒化膜をマイクロレンズに成形する工程と、
を有する請求項16に記載の固体撮像素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子及び固体撮像素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等に搭載されるCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサ等の固体撮像素子は、高画素化、微細化が進んでおり、特に微細なものでは1.1μm×1.1μmを下回る画素サイズとなっている。
【0003】
固体撮像素子は、複数の光電変換素子と対になる色フィルターをそれぞれ設けることでカラー化を図っている。また、固体撮像素子に設けられた光電変換素子が光電変換に寄与する領域(開口部)は、固体撮像素子のサイズや画素数に依存する。その開口部は、固体撮像素子の全面積に対し、20%以上50%以下程度に限られている。開口部が小さいことは、そのまま光電変換素子の感度低下につながることから、固体撮像素子では感度低下を補うために光電変換素子上に集光用のマイクロレンズを形成することが一般的である。マイクロレンズで光を集光して光電変換素子の受光部に導くことで、固体撮像素子の感度が向上できる。
【0004】
また、近年、微細画素の感度やシェーディング特性を改善するために、裏面照射型固体撮像素子(BSI:Back Side Illumination)が開発されている。裏面照射型固体撮像素子では、光の入射側に多層メタル配線を設けないことで、開口部を固体撮像素子の全面積の50%以上にすることができ、入射光を効率良く光電変換素子に取り込むことができる。しかしながら、裏面照射技術を用いることで、光電変換素子が固体撮像素子の光が入射する表面側に存在する。このため、色フィルターに隣接する別の色フィルターの漏れ光が光電変換素子に入ることや、光電変換素子の内部で吸収される光が隣接する光電変換素子に入ることや、光電変換されて発生した電子が隣接する光電変換素子の回路部に流れるなどの要因で混色が発生しやすくなる。その対策として、色フィルター間に隔壁を形成し、隔壁により光を遮る、または隔壁が導波路として光を誘導するようにしている、また、光電変換素子間にも深い素子分離構造を形成し、電子の流れや光電変換素子内部で吸収される光を分離するようにしている(特許文献1、2)。
【0005】
固体撮像素子の高画素化や微細化に伴い、光電変換素子と一対でマイクロレンズを形成する必要がある。このため、マイクロレンズの形成領域のサイズは小さくなり、マイクロレンズの微細化が求められている。また、マイクロレンズをそのまま微細化した場合、マイクロレンズによる集光点がずれることや、マイクロレンズの端で光の集光能力が劣ることがある。このため、各色フィルター間の隔壁部分に光が当たるなど、光を効率的に光電変換素子に集められないという問題がある。これを解決するために、マイクロレンズを微細化した上で、マイクロレンズのアスペクト比を上げる必要があるが、微細化しつつアスペクト比が高い形状に制御することは、製造プロセス上困難である。更に、アスペクト比を高くすると、隣接するマイクロレンズ同士が干渉するため、レンズ形状を維持しつつ微細化することができないという問題がある。
【0006】
このような問題を解決する技術として、特許文献3には、マイクロレンズの材料に屈折率の高い材料を用いて、マイクロレンズ間の平らになるスペース(即ち、レンズが形成されていないスペース)を設けずにマイクロレンズを形成することで、高画素化や微細化した固体撮像素子でも光の取り込み効率を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献4には、マイクロレンズを複数層構造で形成し、各層の膜厚を調整することで、感度むらを抑制したマイクロレンズが開示されている。さらに、特許文献5には、無機材料からなるマイクロレンズの屈折率と、マイクロレンズと色フィルターとの間に形成した非平坦化層の膜厚との関係を示して、感度特性の低減を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6052353号公報
【特許文献2】国際公開第2017/073321号
【特許文献3】特開2005-019573号公報
【特許文献4】特開2015-230896号公報
【特許文献5】特許第6366101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、マイクロレンズに相対的に屈折率の高い無機材料を用いると、マイクロレンズと色フィルターとの界面やマイクロレンズの内部で入射光が反射して受光効率が低下する場合がある。
【0009】
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、微細画素でも集光効率を向上させることが可能であり、優れた感度を備えた固体撮像素子及び固体撮像素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る固体撮像素子は、半導体基板と、前記半導体基板に設けられ、平面視でマトリクス状に配置された複数の光電変換素子と、前記複数の光電変換素子のそれぞれに対応させて配置された複数色の色フィルターが、予め設定した規則パターンで二次元的に配置された色フィルター層と、前記色フィルター層上に設けられた反射低減層と、前記反射低減層上に設けられ、前記複数色の色フィルター及び前記複数の光電変換素子にそれぞれ対応させて配置された複数のレンズを有するマイクロレンズ層と、備え、前記マイクロレンズ層は、前記光電変換素子側に最も近接して配置された第1のマイクロレンズ層と、前記第1のマイクロレンズ層のレンズ面上に積層するように形成された第2のマイクロレンズ層とを有し、前記第1のマイクロレンズ層の屈折率は、1.75以上2.2以下の範囲内であり、前記反射低減層及び前記第2のマイクロレンズ層の各屈折率は、前記第1のマイクロレンズ層の屈折率よりも低いことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る固体撮像素子の製造方法は、複数の光電変換素子が平面視でマトリクス状に配置され、複数の前記光電変換素子の間に素子分離構造が設けられた半導体基板上の前記光電変換素子を取り囲む位置に、隔壁を形成する工程と、前記隔壁で囲まれた前記光電変換素子に対応する位置に、複数色の色フィルターをそれぞれ形成する工程と、前記色フィルター及び前記隔壁の上部に、屈折率が1.55以上1.8以下の範囲内である樹脂層または無機材料層で構成された反射低減層を形成する工程と、前記反射低減層の上部に、屈折率が1.75以上2.2以下の範囲内である窒化シリコン膜またはシリコン酸窒化膜から形成され、前記複数の光電変換素子にそれぞれ対応する位置に複数のレンズを備え、膜厚が100nm以上400nm以下の範囲内である第1のマイクロレンズ層を形成する工程と、前記第1のマイクロレンズ層のレンズ面上に、前記第1のマイクロレンズ層よりも低い屈折率を有するシリコン酸窒化膜または酸化シリコン膜から形成された第2のマイクロレンズ層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微細画素でも集光効率を向上させることが可能であり、優れた感度を備えた固体撮像素子及び固体撮像素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子の構造を示す部分断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子の色フィルター配列を示す部分平面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子の変形例の構造を示す部分断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る固体撮像素子の構造を示す部分断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る固体撮像素子のマイクロレンズ層の一構成例を示す部分平面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る固体撮像素子の一構成例を示す部分平面図である。
図7】他の方法により形成した固体撮像素子のマイクロレンズ層の一構成例を示す部分平面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、隔壁構造形成工程までを示す図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、第1の色フィルター形成工程を示す図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、第2の色フィルター形成工程を示す図である。
図11】本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、第3の色フィルター形成工程を示す図である。
図12】本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、反射低減層形成工程を示す図である。
図13A】本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、マイクロレンズ形成工程を示す図である。
図13B】本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、マイクロレンズ形成工程を示す図である。
図14】本発明の実施例1に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、マイクロレンズ平坦化層形成工程を示す図である。
図15】本発明の実施例2に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、マイクロレンズ形成工程を示す図である。
図16A】本発明の実施例3に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、マイクロレンズ形成工程を示す図である。
図16B】本発明の実施例3に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、マイクロレンズ形成工程を示す図である。
図17A】本発明の他の実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、色フィルターに感光性を持たせずに、ドライエッチングで色フィルターを形成する工程を示す図である。
図17B】本発明の他の実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、色フィルターに感光性を持たせずに、ドライエッチングで色フィルターを形成する工程を示す図である。
図17C】本発明の他の実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を示す工程断面図であって、色フィルターに感光性を持たせずに、ドライエッチングで色フィルターを形成する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ここで、図面は模式的なものであり、色フィルター等の各層の厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、固体撮像素子の色フィルターの構成を示す断面図では、後述する公知のベイヤー配列を元に記載するが、実際のベイヤー配列では、3色以上の色フィルターが後述する図面のように横に並ぶ構造とはならないことがある。また、以下に示す各実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定されるものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
また、本実施形態では、固体撮像素子の光電変換素子同士の間に素子分離構造があり、各色フィルターの間に隔壁構造がある構造について記載するが、本発明は、これらの構造を備えない公知の構造に対して、マイクロレンズを形成する際にも用いることができる。
【0016】
1.第1実施形態
(固体撮像素子の構成)
本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子の構成について、図1及び図2を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る固体撮像素子1は、半導体基板10と、半導体基板10の上方に配置された複数のマイクロレンズ200と、半導体基板10とマイクロレンズ200との間に設けられた色フィルター100及び隔壁50とを備えており、色フィルター100とマイクロレンズ200との間には反射低減層40を備えている。また、マイクロレンズ200の上には、マイクロレンズ平坦化層300が形成されている。
【0017】
半導体基板10は、二次元的、すなわち平面視でマトリクス状に配置された複数の光電変換素子11と、各光電変換素子11間で変換した電子が混在しないように光電変換素子11間に素子分離構造12とを有している。
なお、図1に示す断面図は、図2に示すI-II線での部分断面図に相当する。また、図2は、図1に示すIII-IV線での断面図(部分平面図)に相当する。
【0018】
マイクロレンズ200は、複数のマイクロレンズ層で形成されている。具体的には、マイクロレンズ200は、光電変換素子11に最も近接して設けられた(すなわち、最も下部に設けられた第1のマイクロレンズ層20、その上部に形成された第2のマイクロレンズ層21で構成されている。
色フィルター100は、複数色の色フィルターで構成されている。具体的には、色フィルター100は、第1の色フィルター14、第2の色フィルター15及び第3の色フィルター16が所定の規則パターンで配置されて構成される。つまり、色フィルター100は、複数の光電変換素子11のそれぞれに対応させて配置された第1の色フィルター14、第2の色フィルター15及び第3の色フィルター16が、予め設定した規則パターンで二次元的に配置されている。
【0019】
隔壁50は、第1の色フィルター14、第2の色フィルター15及び第3の色フィルター16のそれぞれの間に形成されている。つまり、隔壁50は、隣り合う色フィルター間にそれぞれ形成されている。隔壁50は、内側の隔壁30と、隔壁30を保護して覆っている隔壁31の二層で形成されている。
反射低減層40は、色フィルター100とマイクロレンズ200との間に形成されている。
【0020】
図1は、マイクロレンズ200の上部にマイクロレンズ平坦化層300が存在する構成を図示しているが、固体撮像素子1の構成によっては、マイクロレンズ平坦化層300は無くてもよい。
また、隔壁50は、隔壁30及び隔壁31の二層の構成を示しているが、固体撮像素子1の構成によっては、1層の構成でも、2層以上の構成でもよい。また、隔壁50は、高さが色フィルター100より低くても、高くてもよく、フラットでもよい。また、固体撮像素子1の画素サイズが大きい場合は、隔壁50は無くてもよい。
【0021】
以下、本実施形態に係る固体撮像素子1を説明するにあたり、色フィルター100の製造工程上最初に形成し、且つ色フィルター100における占有面積が最も広い色フィルターを第1の色フィルター14と定義する。また、色フィルター100の製造工程上二番目に形成する色フィルターを第2の色フィルター15、色フィルター100の製造工程上三番目に形成する色フィルターを第3の色フィルター16とそれぞれ定義する。他の実施形態であっても同様である。また、以下の説明では、第1の色フィルター14がグリーンである場合を想定して説明するが、第1の色フィルター14がブルーまたはレッドであってもよい。
以下、固体撮像素子1の各構成要素について詳細に説明する。
【0022】
(光電変換素子及び半導体基板)
図1に示すように、本実施形態に係る固体撮像素子1における半導体基板10には、画素位置に対応する複数の光電変換素子11が二次元的に配置されている。光電変換素子11のそれぞれは、光を電気信号に変換する機能を有している。また、複数の光電変換素子11が配置された半導体基板10には、固体撮像素子1に入射した光が光電変換素子11で吸収される前に隣接する光電変換素子11にその入射した光が入ることや、光電変換した電子が隣接する他の光電変換素子11の回路に流れないように、素子分離構造12が形成されている。素子分離の方法としては、例えば、素子分離領域の半導体基板10をドーピングする方法や、空隙を空ける方法、あるいは金属や酸化物、窒化物、誘電体などを埋め込む方法などさまざまな手法を用いることができるが、光や電子が隣接する他の光電変換素子11の回路に流れにくい構造が望ましい。素子分離の方法としては、一般的には、光電変換素子11間の半導体基板10をエッチングで掘り込んだ後で、金属や酸化物、誘電体などを堆積して形成する方法が用いられる。光電変換素子11が形成されている半導体基板10は、通常、表面(光入射面)の保護及び平坦化を目的として、最表面に保護膜が形成されている。半導体基板10は、可視光を透過して、少なくとも300℃程度の温度に耐えられる材料で形成されている。ここで、半導体基板10に用いられる耐熱材料としては、例えば、Si、SiO等の酸化物及びSiN等の窒化物、並びにこれらの混合物等のSiを含む材料等が挙げられる。このとき、光電変換素子11は、後述するマイクロレンズ200の材料やその高さ等に合わせて、入射した光を受光可能な位置に配置される。
【0023】
(色フィルター及び隔壁)
所定の配置パターンにより色フィルター100を構成する第1の色フィルター14、第2の色フィルター15及び第3の色フィルター16(第1、第2及び第3の色フィルターの一例)は、入射光を色分解する各色(グリーン、ブルー及びレッド)に対応するフィルターである。図1に示すように、第1の色フィルター14、第2の色フィルター15及び第3の色フィルター16は、半導体基板10と反射低減層40との間に設けている。第1の色フィルター14、第2の色フィルター15及び第3の色フィルター16は、複数の光電変換素子11のそれぞれに対応するように、画素位置に応じて予め設定された規則パターンで配置されている。
【0024】
図2は、第1の色フィルター14、第2の色フィルター15、及び第3の色フィルター16、並びに色フィルター100を構成する各色フィルターの間に形成された隔壁50の配列を平面的に示す図である。図2に示す配列は、いわゆるベイヤー配列であり、第1の色フィルター14、第2の色フィルター15及び第3の色フィルター16を敷き詰めた配列である。
なお、本実施形態では、固体撮像素子1の各色フィルター(第1の色フィルター14、第2の色フィルター15及び第3の色フィルター16)は、必ずしもベイヤー配列に限定されず、また、各色フィルターの色もレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色に限定されない。また、色フィルター100の配列の一部に、屈折率を調整した透明の層や、可視光は遮光し赤外線は透過する層(すなわち赤外線用などのフィルター)を配置してもよい。また、隣接する4つの画素を同じ色として、16個の画素でベイヤー配列を構成するように複数画素を用いて配置してもよい。
【0025】
色フィルター100を構成する各色フィルターは、所定の色の顔料(着色剤)と、熱硬化成分または光硬化成分とを含んでいる。例えば、第1の色フィルター14は着色剤としてグリーン顔料を含み、第2の色フィルター15はブルー顔料を含み、第3の色フィルター16はレッド顔料を含んでいる。
【0026】
隔壁50は、色フィルター100を構成する複数色の色フィルター(第1の色フィルター14、第2の色フィルター15及び第3の色フィルター16)のそれぞれの間に形成される。本実施形態では、第1の色フィルター14の側壁部(外周囲)に設けられた隔壁50により、第1の色フィルター14と、第2の色フィルター15及び第3の色フィルター16のそれぞれとを分け隔てることができる。隔壁50は、図1に示すように、隔壁50の内側(内部)に位置する隔壁30と、隔壁30の外側を覆うように位置する隔壁31とで形成された2層構成であってもよい。
【0027】
隔壁30は、遮光性が高く、エッチングなどで精度良く微細加工できる金属材料、例えばタングステン(W)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)の膜で形成することが好ましい。また、隔壁30は、更に、隔壁30の下層をタングステンで形成し、隔壁30の上層をチタンで形成するなど、複数の金属膜による積層構造であってもよい。また、上述した金属の単体ではなく、上述した金属の化合物を用いて隔壁30を形成してもよい。
【0028】
隔壁31は、隔壁30の外側を覆うように、例えば、SiOやSiN、あるいはSiONなどの酸化物、窒化物、酸窒化物などを用いて形成されている。また、隔壁31を、色フィルター100を構成する材料よりも低屈折率材料を用いて形成することで光導波路のように光を誘導できる構成で形成してもよい。また、この隔壁31が隔壁30の保護膜となり、隔壁30に金属を用いた場合に、その金属が反応(化学反応)して劣化することを抑制することができる。なお、隔壁30は、金属と酸化物、金属と窒化物、あるいは金属と酸窒化物のように、複数の材料を用いて形成したものであってもよい。
また、隔壁31は、隣接する色フィルター100に入る光を遮光可能な材料、反射可能な材料、または光導波路を構成可能な材料で形成することが好ましい。
【0029】
隔壁30同士は、図2に示すように、切れ目なく連続して形成されていてもよいし、隔壁31同士も切れ目なく連続して形成されていてもよい。
また、図2に示すように、平面視で、隔壁50の幅は、隣接する色フィルター100の組み合わせに応じて、狭くしてもよいし、広くしてもよい。例えば、第1の色フィルター14と第2の色フィルター15との間に位置する隔壁50の幅は、第1の色フィルター14と第3の色フィルター16との間に位置する隔壁50の幅よりも広くてもよいし、狭くてもよい。このように、隔壁50の幅を、隣接する色フィルター100の組み合わせに応じて狭くすることで、各画素における受光面積を必要に応じて増加させることができるため、固体撮像素子1の感度を調整することができる。また、隔壁50の幅を、隣接する色フィルター100の組み合わせに応じて広くすることで、各画素間における機械的強度を必要に応じて高めることができるため、固体撮像素子1の強度を部分的に調整することができる。
【0030】
また、隔壁30の高さは、色フィルター100全体の高さ、あるいは隔壁50全体の高さに対して30%以上100%以下の範囲内であれば好ましく、45%以上55%以下の範囲内であれば、より好ましい。隔壁30の高さが上記数値範囲内であれば、隣接する色フィルターに入る光を効果的に遮光、または反射することができる。
また、図2に示すように、平面視で、隔壁30の幅は、隔壁50全体の幅に対して10%以上50%以下の範囲内であれば好ましく、20%以上30%以下の範囲内であれば、より好ましい。隔壁30の幅が上記数値範囲内であれば、隣接する色フィルターに入る光を効果的に遮光、または反射することができる。
【0031】
(マイクロレンズ)
固体撮像素子1におけるマイクロレンズ200は、半導体基板10の上方において、画素位置に対応する位置に配置されている。すなわち、マイクロレンズ200は、複数の光電変換素子11のそれぞれに対応する位置に複数のレンズがそれぞれ設けられる。マイクロレンズ200は、マイクロレンズ200に入射した入射光を光電変換素子11のそれぞれに集光させることにより、光電変換素子11の感度低下を補うことができる。本実施形態のマイクロレンズ200は、図1に示すように、複数のマイクロレンズ層が積層するように形成されていてもよい。また、マイクロレンズ200は、光電変換素子11に最も近い下層に設けられた第1のマイクロレンズ層20がマイクロレンズ形状をしており、第2のマイクロレンズ層21及び第2のマイクロレンズ層21よりも上層に位置する複数のマイクロレンズ層が第1のマイクロレンズ層20のレンズ面上を覆うように形成されている構成が好ましい。なお、図1は、マイクロレンズ200が第1のマイクロレンズ層20と第2のマイクロレンズ層21の2層で形成されている形態を示している。
【0032】
マイクロレンズ200で集光効率を向上させるためには、第1のマイクロレンズ層20は高屈折率材料で構成されていることが好ましい。具体的には、第1のマイクロレンズ層20を構成する材料の屈折率は、1.75以上2.2以下の範囲内であれば好ましく、1.85以上2.0以下の範囲内であればより好ましく、1.90以上1、95以下の範囲内であればさらに好ましい。屈折率が2.2を超える材料の場合、マイクロレンズ200の集光能力は向上するが、反射低減層40との屈折率差が大きくなることでマイクロレンズ200と反射低減層40との界面で反射光量が増えて、集光効率が低下する場合がある。また、屈折率が1.75未満の材料の場合、マイクロレンズ200に十分な集光能力を付与することが困難となり、使用する上で必要な集光効率が得られない場合がある。以下、本実施形態において「高屈折率」とは、屈折率が1.75以上であることを意味し、「高屈折率材料」とは、屈折率が1.75以上である材料を意味する。
なお、マイクロレンズの従来構造では、一般的にマイクロレンズ200の材料として有機系樹脂の材料が用いられており、有機系樹脂では、比較的高い屈折率を有する材料であってもその値は1.8以下程度である。また、比較的屈折率が高い有機系材料を用いると、透過率が低下しやすい傾向がある。
【0033】
微細な固体撮像素子1が使用される一般的なカメラモジュールの場合、マイクロレンズ200は光が入射してくる外側は屈折率が1に近い空気(空気層)と接している。マイクロレンズ200の屈折率が1.75以上の場合、マイクロレンズ200による集光能力は向上するが、マイクロレンズ200と空気(空気層)との間で屈折率差が大きいため、光の反射が起こり易くなる。この場合、マイクロレンズ200の内部を透過(通過)する光量が減少して、受光感度の低下を招く可能性がある。その場合には、後述するマイクロレンズ平坦化層300を設ければよい。
【0034】
屈折率が高く、380nmから700nmの可視光の透過率が高い無機材料は、例えば、窒化シリコン(屈折率約、2.0)、酸化ジルコニウム(屈折率約、2.2)、酸化チタン(屈折率約2.49)、硫化亜鉛(屈折率:約2.35)、酸化亜鉛(屈折率:約2.01)、酸化ハフニウム(屈折率:約1.91)、窒化アルミニウム(屈折率約、2.16)、酸化タンタル(屈折率約、2.16)などが考えられる。マイクロレンズ200を形成する場合は、マイクロレンズ200の下層に設けられた反射低減層40及び色フィルター100の耐熱温度が一般的に300℃以下であるため、この温度以下で形成できる材料を用いることが好ましい。つまり、マイクロレンズ200を形成する材料は、300℃以下の温度で形成でき、且つドライエッチングなどの公知の方法で形状加工が容易であり、さらに後述する消衰係数が低い材料ならどの材料でも問題ないが、形成温度や前述した屈折率差による反射を考慮すると、無機材料としては窒化シリコンを用いることが好ましい。無機材料として透明で高屈折率を示す窒化シリコンを用いることにより、第1のマイクロレンズ層20は、高い屈折率のマイクロレンズとなる。第1のマイクロレンズ層20が高い屈折率を示すことにより、第1のマイクロレンズ層20の高さを従来よりも低く形成しても、入射光を各レンズに対応して設けられた画素(光電変換素子11)にそれぞれ入射させることができる。また、第1のマイクロレンズ層20の高さを従来よりも低く形成することができるため、隣接する画素(光電変換素子11)に入射されるべき入射光が第1のマイクロレンズ層20によって遮断され、固体撮像素子1全体の受光効率が低下することを抑制できる。このため、各色での感度特性を損なうことなく、高い集光特性を示す固体撮像素子1を提供することができる。
【0035】
窒化シリコン(Si)の屈折率は一般的に2.0程度であるが、成膜条件によってシリコンと窒素との割合が変わり、屈折率は1.7から2.2程度まで変化する。また、窒化シリコンをマイクロレンズ200の材料として用いる場合は、透過率が高い必要がある。透過率は、材質の膜厚によって変化するため、指標としては光学定数の消衰係数で示すことができる。発明者らはマイクロレンズ200に用いる材料として、消衰係数が重要と知見した。屈折率と消衰係数とは成膜条件で違いが現れる。固体撮像素子1で使用される窒化シリコンは、CVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて形成されることが多い。CVDを用いて形成する際の成膜条件は、温度、圧力、ガス種及びガス流量などの制御により、品質が異なる。マイクロレンズ200の下層に設けられた色フィルター100の耐熱温度が300℃以下である場合には、上記の条件でプラズマ源を用いて低圧環境下で低温プロセスを用いることができるプラズマCVD(Plasma-enhanced Chemical Vapor Deposition)を使用することで、窒化シリコンを品質良く形成することができる。窒化シリコンの屈折率が高い成膜条件では消衰係数が悪くなりやすく、屈折率と消衰係数とが両方優れている成膜条件の場合は、条件の範囲が狭く、膜が内包する応力が高くなりやすい傾向がある。応力が高い場合は、色フィルター100上にマイクロレンズ200を形成する際には適していない傾向がある。そのため、マイクロレンズ200(例えば、第1のマイクロレンズ層20)に用いられる窒化シリコン膜としては、屈折率が1.75以上2.0以下の範囲内であり、波長380nm以上700nm以下の可視光の範囲での消衰係数が1.0×10-3以下であればより好ましく、屈折率が1.85以上2.0以下の範囲内であり、波長400nm以上700nm以下の範囲での消衰係数が1.0×10-3以下であれば最も好ましい。
【0036】
前述した条件は、窒化シリコン膜を形成した場合であるが、プラズマCVDで形成する際に酸素が含まれるNOガスなどを併用することで、酸窒化シリコン(組成式SiON)膜を形成することができる。酸窒化シリコンは酸素の含有量により、窒化シリコン(屈折率:2.0)から酸化シリコン(屈折率:1.45)までの屈折率を得ることができ、消衰係数も制御し易い。そのため、酸窒化シリコンを第1のマイクロレンズ層20の材料として用いてもよい。
【0037】
第1のマイクロレンズ層20の形成方法としては、色フィルター100上に、各種の成膜条件で、高屈折率の第1の層を形成する。第1の層の形成方法としては、前述した窒化シリコン膜をプラズマCVDで形成する方法が好ましい。次に、後述するレンズ母型を形成するための第2の層である中間犠牲層を形成する。中間犠牲層は、樹脂材料により形成され、例えば熱フロー性を有さない感光性樹脂(即ち、熱フローしない感光性樹脂)が用いられる。これにより、熱フローにより感光性樹脂パターンが溶融し、体積が膨張して隣接するレンズ同士が接触することを回避できる。その結果、隣り合うレンズ同士の境界部分で形状崩れの発生を防ぐことが可能となる。
【0038】
ここで、レンズ母型の形成に採用可能な熱フローしない感光性樹脂としては、ガラス転移温度が高く、100℃~220℃の条件の熱処理によって硬化前に形状が崩れることがない熱可塑性の樹脂材料が好適である。このような熱フローしない感光性樹脂としては、質量平均分子量(Mw:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のスチレン換算による測定値)が10,000以上30,000以下の範囲内のベース樹脂を含有していることが好ましい。より好ましくは、ベース樹脂の質量平均分子量が20,000以上30,000以下の範囲内である。ベース樹脂の質量平均分子量が10,000以上であることにより耐熱性及び熱フロー耐性の両方が向上する。また、ベース樹脂の質量平均分子量を30,000以下にすることにより、現像時の溶解性が低下しないため、残渣の発生を抑えることができる。
【0039】
続いて、レンズ母型を形成するために感光性のあるフォトレジストを中間犠牲層上に形成する。このフォトレジストを選択的に露光現像することで、マイクロレンズ200を形成する場所にフォトレジストを形成する。そして、このフォトレジストを加熱することにより、レジストパターンを熱フローしてレンズ形状に形成する。
次に、レンズ形状のレジストパターンをマスクとして中間犠牲層全面にドライエッチングを行い、ポジ型のレジストパターンが全量削れる時間設定でエッチングをすることで、中間犠牲層にレンズ形状を転写したレンズ母型を形成する。
続いて、レンズ母型をマスクとして第1の層全面にドライエッチングを行い、第1の層にレンズ母型の形状を転写して第1のマイクロレンズ層20を形成する。
マイクロレンズ200のレンズ形成方法は、前述したレジストパターンの熱フロー法を用いる方法以外にも公知の方法を用いることができる。例えば、階調パターンのフォトマスクを用いて、露光量を調整することで、第1の層が現像後に直接レンズ形状になるように形成してもよい。
【0040】
この際、第1のマイクロレンズ層20の高さ方向の膜厚は、100nm以上400nm以下の範囲内であれば好ましい。なお、「第1のマイクロレンズ層20の高さ方向の膜厚」とは、半円形状レンズの底面(第1実施形態においては、反射低減層40の上面)から第1のマイクロレンズ層20のレンズの頂点までの高さをいう。各光電変換素子11のピッチ(すなわち第1のマイクロレンズ層20が有する複数のレンズのピッチ)が1.0μm以下の微細構造の場合、第1のマイクロレンズ層20の高さ方向の膜厚は、100nm以上400nm以下の範囲内であれば好ましく、150nm以上300nm以下の範囲内であればより好ましく、180nm以上220nm以下の範囲内であればさらに好ましい。
【0041】
微細な画素パターンにおいて、第1のマイクロレンズ層20の高さが高くなると、隣接する画素(光電変換素子11)に入射されるべき入射光が第1のマイクロレンズ層20によって遮断され、固体撮像素子1の受光効率(受光感度)が低下するという問題がある。また、マイクロレンズ200の形成箇所の面積が狭い条件で第1のマイクロレンズ層20の膜厚(レンズ高さ)を高くすると、レンズの谷部に相当する部分の膜厚が厚くなり、レンズ形状が崩れて光が混色してしまう領域が形成されるという問題もある。しかしながら、第1のマイクロレンズ層20の高さ方向の膜厚範囲を上記数値範囲内とすることにより、これらの問題を抑制することができ、高い集光特性を示す固体撮像素子1を提供することができる。
また、第1のマイクロレンズ層20の高さをより低くすることで、光電変換素子11に集光される光が増加して、受光効率が向上する。特に、第1のマイクロレンズ層20の高さを100nm以上400nm以下の範囲内とすることで、グリーン(G)、ブルー(B)、レッド(R)の全ての色において良好な感度特性を得ることができる。
【0042】
マイクロレンズ200の第2のマイクロレンズ層21は、第1のマイクロレンズ層20による反射を低減する層である。前述したように、第1のマイクロレンズ層20の屈折率が1.75以上2.2以下の範囲内である場合、屈折率の低い空気(空気層)もしくはマイクロレンズ平坦化層300がマイクロレンズ200の外側にあるため、第1のマイクロレンズ層20の表面での光の反射量が多くなり、感度低下が起こり易い。そのため、複数の層で構成されたマイクロレンズ200の第2のマイクロレンズ層21及び第2のマイクロレンズ層21よりも上層のマイクロレンズ層は、屈折率を制御して反射防止層を形成する。すなわち、第1のマイクロレンズ層20のレンズ面上に第1のマイクロレンズ層20よりも屈折率が低い第2のマイクロレンズ層21を設けることにより、固体撮像素子1の感度特性を損なうことを防止することができる。第2のマイクロレンズ層21の屈折率は、1.4以上1.75以下の範囲内であれば好ましく、1.4以上1.60以下の範囲内であればより好ましく、1.45以上1.55以下の範囲内であればさらに好ましい。第2のマイクロレンズ層21の屈折率が上記数値範囲内であれば、空気(空気層)もしくはマイクロレンズ平坦化層300と、空気(空気層)もしくはマイクロレンズ平坦化層300と接触するマイクロレンズ200との屈折率差が小さくなるため、入射光の反射量が低減して集光効率が向上する。
【0043】
本実施形態では、図1に示すように、マイクロレンズ200が2層構成の場合には、第2のマイクロレンズ層21の材料としては、酸化シリコン(SiO)、または、酸素量の多い酸窒化シリコン(SiON)が適している。すなわち、第2のマイクロレンズ層21の材料は、第1のマイクロレンズ層20の材料よりも酸素含有量が高いことが好ましい。第2のマイクロレンズ層21の材料における酸素含有量は、第1のマイクロレンズ層20の材料における酸素含有量に比べて、1.1倍以上10倍以下の範囲内であれば好ましく、1.5倍以上5倍以下の範囲内であればより好ましく、2倍以上4倍以下の範囲内であればさらに好ましい。第2のマイクロレンズ層21の材料における酸素含有量が上記数値範囲内であれば、第2のマイクロレンズ層21に反射防止層としての機能を確実に付与することができる。
【0044】
第2のマイクロレンズ層21の材料として酸化シリコンを用いる場合は、プラズマCVDなどの気相成膜方法以外にも、SOG(Spin On Glass)やシロキサンなどの塗布型の材料を用いて酸化シリコンを形成してもよい。
また、前述したマイクロレンズ200の下層にある色フィルター100の耐熱温度である300℃以下の温度で第2のマイクロレンズ層21を形成できる方法であれば、公知のどの方法を用いてもよい。
【0045】
また、第2のマイクロレンズ層21の膜厚は、第1のマイクロレンズ層20の膜厚よりも薄い5nm以上200nm以下の範囲内であれば好ましく、50nm以上150nm以下の範囲内であればより好ましく、80nm以上100nm以下の範囲内であればさらに好ましい。微細な画素パターンにおいて、第2のマイクロレンズ層21の高さが高くなると、隣接する画素(光電変換素子11)に入射されるべき入射光が第2のマイクロレンズ層21によって遮断され、固体撮像素子1の受光効率(受光感度)が低下するという問題がある。また、マイクロレンズ200の形成箇所の面積が狭い条件で第2のマイクロレンズ層21の膜厚(レンズ高さ)を高くすると、レンズの谷部に相当する部分の膜厚が厚くなり、レンズ形状が崩れて光が混色してしまう領域が形成されるという問題もある。しかしながら、第2のマイクロレンズ層21の高さ方向の膜厚範囲を上記数値範囲内とすることにより、これらの問題を抑制することができ、高い集光特性を示す固体撮像素子1を提供することができる。
【0046】
また、第1のマイクロレンズ層20の膜厚T1に対する第2のマイクロレンズ層21の膜厚T2の比率(T2/T1)は、0.125以上1.0以下の範囲内であることが好ましい。第1のマイクロレンズ層20の膜厚T1に対する第2のマイクロレンズ層21の膜厚T2の比率が上記数値範囲内であれば、上述した問題を抑制することができ、高い集光特性を示す固体撮像素子1を提供することができる。
【0047】
(マイクロレンズ平坦化層)
本実施形態では、マイクロレンズ200の上部(光が入射方向)に、マイクロレンズ200のレンズ面上に設けられ、上面が平坦に形成されたマイクロレンズ平坦化層300が形成されている。一般的な固体撮像素子の場合は、マイクロレンズ200の外側は空気層であり、カメラモジュール構造として、その上部に集光レンズや、赤外線カット板などのモジュール構造が形成されている。
【0048】
本実施形態に示すような、一つの画素サイズが1μm以下になるような微細化した固体撮像素子1の場合、マイクロレンズ200の構造も同様に微細化しており、マイクロレンズ200を構成する各レンズの間隔が光の波長に近づく構成となる。そして、そのような構成においては、マイクロレンズの構造自体がフレネルレンズや回折レンズのように入射する光に対して影響をおよぼす構造になる可能性が高くなる。そのため、通常時は空気層が外側にあるような一般的な固体撮像素子の場合でも、マイクロレンズ200の上部にはマイクロレンズ平坦化層300を形成することが適している。
【0049】
マイクロレンズ平坦化層300の材料としては、有機材料や無機材料が考えられるが、屈折率を考慮した材料が望ましい。マイクロレンズ200の上方が空気(空気層)になるような一般的なモジュールの場合、マイクロレンズ平坦化層300を形成する材料は、空気の屈折率と、マイクロレンズ200の表面に位置している第2のマイクロレンズ層21の屈折率との間の屈折率を有した材料であることが望ましい。具体的には、マイクロレンズ平坦化層300の屈折率は、1.1以上1.6以下の範囲内の屈折率であれば好ましく、1.20以上1.45以下の範囲内であればより好ましく、1.30以上1.40以下の範囲内であればさらに好ましい。また、マイクロレンズ平坦化層300を形成する材料は、上記数値範囲内の屈折率であって、可視光に対して透過率が高い材料であれば、さらに望ましい。これにより、マイクロレンズ平坦化層300を介して入射した光がマイクロレンズ200の表面で反射することを抑制し、集光特性、感度特性を向上させつつ微細な固体撮像素子を得ることができる。ここで、上記「可視光に対して透過率が高い材料」とは、具体的には、波長380nm以上700nm以下の可視光領域での透過率が90%以上である材料をいう。
【0050】
また、マイクロレンズ平坦化層300の膜厚は、100μm以下の範囲内であれば、特に制限はないが、マイクロレンズ200を平坦化できる膜厚が望ましい。つまり、マイクロレンズ平坦化層300は、マイクロレンズ200の凹凸形状を平坦化できるのであれば、その膜厚は問わない。
マイクロレンズ平坦化層300を構成する材料は、相対的に屈折率が低い材料であればよく、例えば、有機系樹脂に無機ポリマーとしてシロキサン系ポリマーやシリカ、あるいはフッ素ポリマーを含有させることで屈折率を1.6以下にした材料、または、有機系樹脂に中空フィラーを含有させることで屈折率を1.6以下にした材料であってもよい。上記の方法に限らず、透明性が高く平坦にできる材料の組み合わせであれば、マイクロレンズ平坦化層300の材料としては問題ない。
【0051】
(反射低減層)
反射低減層40は、第1のマイクロレンズ層20と色フィルター100の間に設けられ、第1のマイクロレンズ層20と色フィルター100との屈折率差による入射光の反射を低減する層である。本実施形態では、第1のマイクロレンズ層20の屈折率は1.75以上2.2以下の範囲内であり、各色フィルターの屈折率は、各色で異なり、各色を透過する波長で1.4以上1.75以下の範囲内である。色フィルター100と第1のマイクロレンズ層20との間に大きな屈折率差があると、色フィルター100と第1のマイクロレンズ層20との界面で入射光の反射等が発生し易くなり、入射光が損失して感度が低下することがある。このため、反射低減層40の屈折率は、第1のマイクロレンズ層20と色フィルターの各屈折率に近い値である1.55以上1.8以下の範囲内であれば好ましく、1.65以上1.75以下の範囲内であればより好ましく、1.65以上1.70以下の範囲内であればさらに好ましい。反射低減層40の屈折率が1.55以上1.8以下の範囲内である場合、反射低減層40と第1のマイクロレンズ層20との屈折率の差が小さくなり、且つ反射低減層40と色フィルター100との屈折率の差が小さくなるので、入射光の損失を低減して集光性能を向上させることができる。
【0052】
また、反射低減層40の屈折率は、第2のマイクロレンズ層21の屈折率よりも高いことが好ましく、具体的には、第2のマイクロレンズ層21の屈折率の1.1倍以上1.3倍以下の範囲内であればより好ましい。反射低減層40の屈折率が、第1のマイクロレンズ層20と色フィルターの各屈折率に近い値である1.55以上1.8以下の範囲内であり、且つ第2のマイクロレンズ層21の屈折率よりも高い場合には、各層間における屈折率の差が最も小さくなるので、入射光の損失を低減して集光性能を向上させることができる。つまり、反射低減層40の屈折率は、第2のマイクロレンズ層21の屈折率よりも高く、且つ第1のマイクロレンズ層20の屈折率よりも低くてもよい。
【0053】
また、反射低減層40の膜厚は、色フィルター100を形成している各色フィルター(第1の色フィルター14、第2の色フィルター15、第3の色フィルター16)と隔壁50とによって形成される段差を平坦化可能な膜厚であればよい。段差の平坦化により、第1のマイクロレンズ層20を成膜する際に、段差なくマイクロレンズ層を成膜可能となり、バラつきが少ないマイクロレンズ200を形成することができる。
反射低減層40の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノールノボラック系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、スチレン系樹脂及びケイ素系樹脂等のうち少なくとも一種類を含有する樹脂により形成される。
【0054】
また、反射低減層40は、上述の有機化合物以外でも、例えば、珪素、炭素、酸素、水素、錫、亜鉛、インジウム、アルミニウム、ガリウム、チタン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ハフニウム、銀及びフッ素のうち少なくとも1種類を含有する化合物、酸化化合物、窒化化合物、または酸窒化化合物により形成されてもよい。これらの材料の化合物としては、例えば、ITOやZnO、TiO、あるいはHfO等を用いることができる。また、反射低減層40は、これらの材料により単層または多層に形成されていてもよい。
【0055】
本実施形態では、上述のように、反射低減層40の材料として有機系樹脂を用いることで、反射低減層40を形成してもよい。また、反射低減層40の材料として酸窒化シリコンを用いた場合には、酸窒化シリコンにおける酸素の割合を調整することで、反射低減層40の屈折率及び透過率を調整してもよい。酸窒化シリコンにおける酸素の割合を増やせば屈折率が低下して透過率が向上する。反射低減層40の透過率は、波長380nm以上700nm以下の可視光領域で90%以上が好ましい。
【0056】
反射低減層40の膜厚は、10nm以上300nm以下の範囲内の膜厚が好ましい。また、固体撮像素子1の微細化、及び混色を抑制する観点から反射低減層40は薄い方が好ましいため、反射低減層40の膜厚は10nm以上200nm以下の範囲内であればより好ましく、50nm以上200nm以下の範囲内であればさらに好ましく、80nm以上150nm以下の範囲内であれば最も好ましい。反射低減層40の膜厚が上記数値範囲内であれば、微細化された固体撮像素子1における混色を確実に抑制することができ、且つ色フィルター100と隔壁50との間に生じる段差を確実に平坦化することができる。
【0057】
また、本実施形態の反射低減層40は、色フィルター100と第1のマイクロレンズ層20との応力や熱膨張係数の差を緩和する目的もあり、この目的が果たせる範囲で薄い膜であることが好ましい。なお、色フィルター100と隔壁50との間に生じる段差を平坦化する必要がなく、色フィルター100と第1のマイクロレンズ層20との応力や熱膨張係数の差を緩和することだけを目的にするのであれば、反射低減層40の膜厚は、10nm以上20nm以下の範囲内であってもよい。
また、反射低減層40の膜厚は、色フィルター100の膜厚よりも薄くてもよい。反射低減層40の膜厚を、色フィルター100の膜厚よりも薄くする場合には、反射低減層40の膜厚は、色フィルター100の膜厚の0.05倍以上0.5倍以下の範囲内であることが好ましい。反射低減層40の膜厚を上記数値範囲内とすることで、固体撮像素子1を容易に低背化することができる。
【0058】
<変形例>
以下、本発明の第1実施形態の変形例について、図3を用いて説明する。図3に示すように、本実施形態に係る固体撮像素子1は、マイクロレンズ平坦化層300を有していたが、本発明はこのような構成に限られない。
例えば、図3に示すように、第1実施形態の変形例に係る固体撮像素子1Aは、半導体基板10と、色フィルター100と、反射低減層40と、マイクロレンズ200と、隔壁50とを備えている。すなわち、マイクロレンズ平坦化層300を有していない点で第1実施形態に係る固体撮像素子1と相違する。
なお、半導体基板10、色フィルター100、反射低減層40、マイクロレンズ200及び隔壁50は、第1実施形態で説明した各部と同一の構成であるため説明を省略する。
【0059】
<第1実施形態の効果>
本実施形態の固体撮像素子1では、色フィルター100とマイクロレンズ200との間に、反射低減層40が設けられている。このため、第1のマイクロレンズ層20と色フィルター100との屈折率差による内部反射を低減することができる。また、第1のマイクロレンズ層20の屈折率は、1.75以上2.2以下と相対的に高いため、レンズ高さ(レンズ底面からレンズ頂点までの高さ)が100nm以上400nm以下と相対的に低くてもレンズの集光能力が高い。さらに、第2のマイクロレンズ層21により第1のマイクロレンズ層20の表面反射を低減することができる。
【0060】
また、反射低減層40は、他の層(例えば、色フィルター100や第1のマイクロレンズ層20)からの応力を緩和するとともに、第1のマイクロレンズ層20の形成条件の範囲を広くする利点がある。具体的には、プラズマCVDなどの成膜装置を使用する際に、成膜温度を高くすることが可能となる利点がある。第1のマイクロレンズ層20の形成に用いられる無機材料などは、成膜温度により内包する応力などが変化する傾向にあるため、上述したように反射低減層40を設けることで応力などを緩和する効果が得られる。そのため、成膜温度が設定温度よりも多少変動しても、品質上問題が発生しなくなる効果が得られる。
【0061】
また、反射低減層40は、色フィルター100及び隔壁50の間に段差が発生した場合に平坦にすることができ、マイクロレンズ200を好適に形成することができる。
また、反射低減層40は、マイクロレンズ200をドライエッチングで形成する際のストッパー層としても機能する。
これらによって、マイクロレンズ200の集光効率が向上して高感度な固体撮像素子1を形成できる。
【0062】
本実施形態では、通常の光電変換素子のみの構成を元に記述したが、本発明はこれに限定されるものではない。固体撮像素子には、近年、焦点検出用に光電変換素子部の一部の構造を変えて像面位相差オートフォーカス(Phase Detection AF)が形成されている素子もある。像面位相差オートフォーカスは、撮像素子内の複数の焦点検出画素を用いて信号からずれ量を求め、焦点の補正量を算出する。そのような構造の場合、撮像素子内で一部配列が変わることや、複数の画素を一つの画素として形成されることがある。像面位相差オートフォーカスの画素は、1画素分、2画素分、4画素分などの様々な構成があるが、その場合は光電変換素子に対応する色フィルターやマイクロレンズは必ずしも光電変換素子とは一対とはならない。例えば、光電変換素子が複数に対して、色フィルター及びマイクロレンズが1個の構成や、光電変換素子と色フィルターが複数に対して、マイクロレンズが1個の構成がある。また、これらの構成に合わせて、隔壁50が形成されている。このよう像面位相差オートフォーカスが形成された固体撮像素子の場合でも、本実施形態は適用でき、その部分のマイクロレンズが、光電変換素子と必ずしも一対にはならず、形状が若干異なるだけで、それ以外の部分は実施形態と同様とすることができる。
【0063】
2.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について、図4を用いて説明する。図4に示すように、本実施形態に係る固体撮像素子2は、マイクロレンズ200が、第2のマイクロレンズ層21の上面に設けられた第3のマイクロレンズ層22を有している点で、第1実施形態に係る固体撮像素子1と相違する。
以下、固体撮像素子2の構成について、第1実施形態に係る固体撮像素子1と異なる部分を記載する。
【0064】
(マイクロレンズ)
マイクロレンズ200は、第1のマイクロレンズ層20、第2のマイクロレンズ層21、及び第3のマイクロレンズ層22を有している。第1のマイクロレンズ層20及び第2のマイクロレンズ層21は、第1実施形態に係る固体撮像素子1の第1のマイクロレンズ層20及び第2のマイクロレンズ層21と同様である。
第3のマイクロレンズ層22は、第2のマイクロレンズ層21による反射を低減する層であり、第2のマイクロレンズ層21よりも低い屈折率を有している。第3のマイクロレンズ層22は、第2のマイクロレンズ層21よりも酸素含有量が高いことが好ましい。例えば、第3のマイクロレンズ層22の屈折率は、1.2以上1.5以下の範囲内であってもよく、1.3以上1.5以下の範囲内であればより好ましい。上記数値範囲内であれば、第3のマイクロレンズ層22は、第2のマイクロレンズ層21による反射を確実に低減することができる。また、例えば、第3のマイクロレンズ層22の酸素含有量は、第2のマイクロレンズ層21の酸素含有量の1.1倍以上10倍以下の範囲内であってもよく、2倍以上5倍以下の範囲内であればより好ましい。上記数値範囲内であれば、第3のマイクロレンズ層22は、第2のマイクロレンズ層21による反射を確実に低減することができる。
【0065】
本実施形態では、マイクロレンズ200は3層で形成されている構成を示すが、光電変換素子11に近い下層から上層に進むにつれて、屈折率が低くなる傾向であれば何層備えていても問題ない。
第3のマイクロレンズ層22の厚さは、第2のマイクロレンズ層21の厚さの0.5倍以上2倍以下の範囲内であってもよく、0.5倍以上1倍以下の範囲内であればより好ましい。上記数値範囲内であれば、マイクロレンズ200全体の低背化を維持しつつ、第2のマイクロレンズ層21による入射光の反射を確実に低減することができる。
【0066】
(マイクロレンズの形成方法)
第1のマイクロレンズ層20の形成工程までは、第1実施形態と同様である。
次に、第2のマイクロレンズ層21を形成する。第2のマイクロレンズ層は、その屈折率が1.5以上1.75以下の範囲内となるように形成する。
次に、第3のマイクロレンズ層22を形成する。第3のマイクロレンズ層22は、その屈折率が1.3以上1.5以下の範囲内となるように形成する。こうして、マイクロレンズ200の内側から外側に進むにつれて段階的に屈折率を下げて、空気との屈折率差を小さくすることで、マイクロレンズ200の表面での反射を低減する。
【0067】
第2のマイクロレンズ層21及び第2のマイクロレンズ層21よりも上層のマイクロレンズ層は、一層ごとに形成してもよいし、連続的に形成してもよい。例えば、プラズマCVDを用いて形成する酸窒化シリコンを用いて第2のマイクロレンズ層21及び第2のマイクロレンズ層21よりも上層のマイクロレンズ層を形成してもよい。具体的には、上述の酸窒化シリコンは、初期は窒素の割合が多い条件で形成して、途中で酸素の割合が多い条件に徐々に変更して形成することで、酸窒化シリコンの屈折率を制御してもよい。途中で酸素の割合が多い条件に変更する方法としては、例えば、窒素ガスや酸素ガスの流量を変化させる方法が挙げられる。
【0068】
また、第3のマイクロレンズ層22の膜厚を厚くすることで、その屈折率と、その形状とを変化させることができる。第3のマイクロレンズ層22の上面を平坦化することで、後工程であるマイクロレンズ平坦化層300の形成を省略化することができ、固体撮像素子の製造工程を容易にすることも可能となる。
第2のマイクロレンズ層21及び第2のマイクロレンズ層21よりも上層のマイクロレンズ層にマイクロレンズ平坦化層300の効果を付与する場合は、例えば屈折率が1.2以上1.5以下の範囲内の低屈折率材料を用いて第2のマイクロレンズ層21及び第2のマイクロレンズ層21よりも上層のマイクロレンズ層を形成してもよい。
【0069】
<第2実施形態の効果>
第2実施形態を用いることで、高屈折率マイクロレンズ表面の入射光の反射を低減して、集光能力を向上することが可能となる。
【0070】
3.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について、図5から図7を用いて説明する。図5は、本実施形態に係る固体撮像素子3の一構成例を示す平面図である。固体撮像素子3は、半導体基板10と、色フィルター100と、マイクロレンズ200Aと、隔壁50と、反射低減層40とを少なくとも備えている。固体撮像素子3は、マイクロレンズ200に代えて、マイクロレンズ200Aを備えている点で、第1実施形態の固体撮像素子1及び第2実施形態の固体撮像素子2と相違する。
以下、マイクロレンズ200Aについて詳細に説明する。なお、半導体基板10、色フィルター100、隔壁50及び反射低減層40は、第1実施形態及び第2実施形態で説明した各部と同一の構成であるため説明を省略する。
【0071】
(マイクロレンズ)
マイクロレンズ200Aは、マイクロレンズ200と同様に、複数(例えば2層)のマイクロレンズ層で形成されている。本実施形態では、マイクロレンズ200Aが、光電変換素子11に最も近い下層に設けられた第1のマイクロレンズ層20Aと、第1のマイクロレンズ層20Aのレンズ面上に設けられた第2のマイクロレンズ層21Aとを備える場合について説明する。なお、第1のマイクロレンズ層20A及び第2のマイクロレンズ層21Aの断面構成は、マイクロレンズ200の第1のマイクロレンズ層20及び第2のマイクロレンズ層21と同様であり、後述する図5において第1のマイクロレンズ層20A及び第2のマイクロレンズ層21Aは図示しない。
【0072】
マイクロレンズ200Aは、複数の光電変換素子11にそれぞれ対応する複数のレンズを有している。図5に示すように、マイクロレンズ200Aは、隣接する複数のレンズが平面視で接触している。マイクロレンズ200Aでは、隣接する複数のレンズが平面視で線状に接触しているが、必ずしも線状に接触している必要はない。また、マイクロレンズ200Aは、色フィルター100を構成する第1の色フィルター14、第2の色フィルター15及び第3の色フィルター16それぞれの角部上(四隅)に隙間(ギャップ)を有し、各レンズが当該角部上を覆わない形状となっていてもよい。また、マイクロレンズ200Aは、光電変換素子11を有する一つの画素上をレンズが覆う割合を示す「Fill Factor」が85%以上100%以下の範囲内であれば好ましく、90%以上100%以下の範囲内であればより好ましい。Fill Factorが85%以上100%以下の範囲内である場合、隣接するレンズ間の隙間による集光特性の低下を抑制し、グリーン(G)、ブルー(B)またはレッド(R)のいずれの色も受光感度が向上するため好ましい。
【0073】
以下、図6を参照して、Fill Factorについて説明する。図6は、4つの画素及び各画素P上に設けられた4つのレンズの平面構成を模式的に示した平面図である。Fill Factorは、以下の式(1)で規定される。
Fill Factor[%]={1-(a×a)/(A×A)}×100 ・・・(1)
ここで、Aは画素サイズ、aはレンズに生じたギャップGの対角線上の距離を示しており、a<Aである。また、Fill Factorは、一つの画素上をレンズが覆う割合を示し、最大で100%となる。
【0074】
以上のようなマイクロレンズ200Aは、後述するレンズ母型20b、20eを介したマイクロレンズの形成方法を用いることにより形成することができる。
なお、図7に示すように、後述するレンズ母型20b、20eを用いずにマイクロレンズ(200’)を形成した場合、各画素P上において当該マイクロレンズ20’のレンズ間のギャップGが大きくなる。ただし、高屈折率のマイクロレンズは、従来のマイクロレンズと比較して、高屈折率なレンズにより入射光を集光するため、レンズ間のギャップGが大きくても集光能力の低下が小さい。
【0075】
<第3実施形態の効果>
本実施形態では、Fill Factorが85%以上100%以下の範囲内であるマイクロレンズ200Aを備えることにより、集光特性を向上させることができる。マイクロレンズ200Aが有するギャップGによる感度特性の影響は、マイクロレンズ200A(第1のマイクロレンズ層20)のレンズ高さを低くした時により影響を受ける。このため、第1のマイクロレンズ層20の膜厚が100nm以上400nm以下の範囲内、より好ましくは100nm以上200nm以下の範囲内である場合において、レンズ間のギャップGを小さくすることで、微細、且つより高感度の固体撮像素子3を提供することができる。
【0076】
[実施例]
以下、本発明に係る固体撮像素子及び従来の固体撮像素子の各構成について、具体的に説明する。
<実施例1>
実施例1では、上述の第1実施形態に係る固体撮像素子1(図1参照)と同様の製造方法を説明する。
まず、図8(a)から図8(c)に示すように、二次元的に配置された光電変換素子11を備え、各光電変換素子11の間が素子分離構造12で素子分離されている半導体基板10を用意した(図8(a))。半導体基板10としては、光電変換素子11のパターンサイズが1μm以下の微細なものを使用した。
【0077】
(隔壁の形成)
次に、この半導体基板10上に、隔壁50を形成した(図8(b)、図8(c))。まず、この半導体基板10上に、プラズマCVDによりタングステン膜を350nmの膜厚で成膜した。次に、そのタングステン膜上に、ポジ型レジスト(TDMR-AR:東京応化工業株式会社製)を、スピンコーターを用いて1000rpmの回転数でスピンコートした後、90℃で1分間プリベークを行った。これにより、感光性樹脂マスク材料層(エッチングマスク)であるフォトレジストを膜厚1.5μmで塗布したサンプルを作製した。この感光性樹脂マスク材料層であるポジ型レジストは、紫外線照射により、紫外線照射部分が化学反応を起こして現像液に溶解するようになった。
このサンプルに対して、フォトマスクを介して露光するフォトリソグラフィを行った。露光装置は光源にi線の波長を用いた露光装置を使用した。フォトリソグラフィでは、感光性樹脂マスク材料層のうち、色フィルターを形成する部分に対して紫外線を照射した。
【0078】
次に、2.38質量%のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドライド)を現像液として用いて現像工程を行い、色フィルターを形成する場所に開口部を有する感光性樹脂マスク材料層を形成した。感光性樹脂マスク材料層としてポジ型レジストを用いた場合には、現像後脱水ベークを行い、感光性樹脂マスク材料層であるフォトレジストの硬化を行うことが多い。今回は、120℃の温度で脱水ベークを実施した。感光性樹脂マスク材料層は、膜厚を1.5μmで形成した。
次に、感光性樹脂マスク材料層をマスクとして、タングステン膜のドライエッチングを行った。この際、平行平板方式のドライエッチング装置を用いた。また、下地の半導体基板10に影響を与えないように、途中でエッチング条件の変更を行い、タングステン膜のドライエッチングを多段階で実施した。
【0079】
以下、本実施例で実施したドライエッチングについて説明する。
始めに、ドライエッチングに用いたガス種について説明する。本実施例では、SF、Arの二種を混合したエッチングガスを用いてエッチングを実施した。SFのガス流量を50ml/min、Arのガス流量を100ml/minとした。また、この際のチャンバー内の圧力を2Paの圧力とし、RFパワーを1000Wとして実施した。この条件を用いて、感光性樹脂マスク材料層から露出するタングステン膜の総膜厚200nmのうちの90%に相当する180nm程度をエッチングした。この段階で、次のエッチング条件に変更した。
【0080】
次に、SF、O、Arの三種を混合したエッチングガスを用いてエッチングを実施した。SFのガス流量を5ml/min、Oのガス流量を50ml/min、Arのガス流量を100ml/minとし、感光性樹脂マスク材料層から露出するタングステン膜の全てをエッチングで除去した。
次に、エッチングマスクとして用いた感光性樹脂マスク材料層の除去を行った。この際用いた方法は溶剤を用いた方法であり、剥離液104(東京応化工業株式会社製)を用いてスプレー洗浄装置で感光性樹脂マスク材料層の除去を行った。その後、酸素プラズマによるアッシングを行い、残留している感光性樹脂マスク材料層の除去を行った。これらの工程により、半導体基板10上に格子形状にタングステン隔壁構造を有する内側の隔壁30を膜厚(高さ)350nm、幅60nmで形成した(図8(b))。
【0081】
次に、プラズマCVDを用いて、隔壁31となるSiO膜を形成した。この際用いたSiOの成膜条件は、タングステンパターン(隔壁30)に対して、高さ方向に厚膜で形成される条件を用いている。隔壁30と隔壁31とにより形成した隔壁50の高さは600nmであった(図8(c))。なお、隔壁31となるSiO膜を形成した際、半導体基板10の露出した表面を、隔壁31を構成するSiO膜で覆った(図8(c))。
【0082】
(第1の色フィルターの形成)
次に、第1の色フィルター14を形成する第1の色フィルター形成工程を行った(図9(a)、図9(b))。
まず、第1の色フィルター14を設けるべく、グリーン(G)の顔料を含有し感光性を有するレジスト(以下、グリーンレジスト14aと言う)を、隔壁50を形成した半導体基板10の全面に塗布した(図9(a))。なお、グリーンレジスト14aの塗布前に、半導体基板10の全面に対して、密着性を向上させるため疎水化表面処理(HMDS処理)を施してもよい。
【0083】
次に、フォトリソグラフィによりグリーンレジスト14aを選択的に露光した後、現像を行い、第1の色フィルター14の形成位置に対応するグリーンフィルターパターンを形成した。このとき、グリーンレジスト14aの主成分である樹脂としては、感光性を持たせたアクリル系の樹脂を用いた。また、グリーンレジスト14aに用いた顔料は、それぞれカラーインデックスにてC.I.PG58、C.I.PY150であり、顔料濃度は60質量%であった。また、グリーンフィルターパターンの膜厚は600nmであった。
次に、グリーンフィルターパターンを強固に硬化させるため、ホットプレートを用いて230℃で6分間ベークを行い硬化して、第1の色フィルター14を形成した(図9(b))。この加熱工程を経た後は、第3の色フィルター形成工程等の工程を経ても、第1の色フィルター14の剥がれや、パターンの崩れ等は確認されなかった。
【0084】
(第2の色フィルターの形成)
次に、第2の色フィルター15を形成する第2の色フィルター形成工程を行った(図10(a)、図10(b))。
まず、第2の色フィルター15を設けるべく、ブルー(B)の顔料を含有し感光性を有するレジスト(以下、ブルーレジスト15aと言う)を、第1の色フィルター14形成領域を除く半導体基板10の全面に塗布した(図10(a))。なお、ブルーレジスト15aの塗布前に、半導体基板10の全面に対して、密着性を向上させるため疎水化表面処理(HMDS処理)を施してもよい。
【0085】
次に、フォトリソグラフィによりブルーレジスト15aを選択的に露光した後、現像を行い、第2の色フィルター15の形成位置に対応するブルーフィルターパターンを形成した。このとき、ブルーレジスト15aの主成分である樹脂としては、感光性を持たせたアクリル系の樹脂を用いた。また、ブルーレジスト15aに用いた顔料は、それぞれカラーインデックスにてC.I.PB156、C.I.PV23であり、顔料濃度は50質量%であった。また、ブルーフィルターパターンの膜厚は590nmであった。
次に、ブルーフィルターパターンを強固に硬化させるため、ホットプレートを用いて230℃で6分間ベークを行い硬化して、第2の色フィルター15を形成した(図10(b))。この加熱工程を経た後は、第3の色フィルター形成工程等の工程を経ても、第2の色フィルター15の剥がれや、パターンの崩れ等は確認されなかった。
【0086】
(第3の色フィルターの形成)
次に、第3の色フィルター16を形成する第3の色フィルター形成工程を行った(図11(a)、図11(b))。
まず、第3の色フィルター16を設けるべく、レッド(R)の顔料を含有し感光性を有するレジスト(以下、レッドレジスト16aと言う)を、第1の色フィルター14形成領域及び第2の色フィルター15形成領域を除く半導体基板10の全面に塗布した(図11(a))。なお、レッドレジスト16aの塗布前に、半導体基板10の全面に対して、密着性を向上させるため疎水化表面処理(HMDS処理)を施してもよい。
【0087】
次に、フォトリソグラフィによりレッドレジスト16aを選択的に露光した後、現像を行い、第3の色フィルター16の形成位置に対応するレッドフィルターパターンを形成した。このとき、レッドレジスト16aの主成分である樹脂としては、感光性を持たせたアクリル系の樹脂を用いた。また、レッドレジスト16aに用いた顔料は、それぞれカラーインデックスにてC.I.PR254、C.I.PY139であり、顔料濃度は60質量%であった。また、レッドフィルターパターンの膜厚は610nmであった。
【0088】
次に、レッドフィルターパターンを強固に硬化させるため、ホットプレートを用いて230℃で6分間ベークを行い硬化して、第3の色フィルター16を形成した(図11(b))。この際、レッドフィルターパターンは、その周囲を矩形性の良いグリーンフィルター(第1の色フィルター14)及び隔壁50に囲まれており、矩形性良く形成される。そのため、レッドフィルターパターンは、開口の底面及び周囲との間で、密着性良く硬化することが確認された。
以上の工程により、第1の色フィルター14、第2の色フィルター15、第3の色フィルター16を備える色フィルター100を形成した。
【0089】
次に、色フィルター100の上面に、反射低減層40を形成した(図12)。反射低減層40は、第1のマイクロレンズ層20と色フィルター100との屈折率差による入射光の反射を低減するために形成される。また、反射低減層40を形成することにより、レッド、ブルー、グリーンの三色で形成した色フィルター100と隔壁50との段差が低減されて、色フィルター100とマイクロレンズ200との応力が緩和される。また、マイクロレンズ200を窒化シリコンで形成する場合には、マイクロレンズ200の熱膨張係数が色フィルター100の熱膨張係数と異なるが、反射低減層40を設けることでそれらの熱膨張係数の差を緩和する効果もある。また、反射低減層40は、マイクロレンズ200をドライエッチングで形成する際のストッパー層としての効果もある。
【0090】
本実施例では、アクリル樹脂を含む塗布液の粘度を調整して回転数1000rpmでスピンコートし、ホットプレートにて温度230℃で10分間の加熱処理を施して樹脂を硬化し、反射低減層40を形成した。この際の反射低減層40の膜厚は100nmであり、反射低減層40の可視光の透過率は99%であった。また、反射低減層40の屈折率は1.7であった。
【0091】
(マイクロレンズ形成工程)
次に、マイクロレンズ200を形成するマイクロレンズ形成工程を行った(図13A(a)~図13B(d))。
反射低減層40を形成した色フィルター100の上層に、プラズマCVDを用いて窒化シリコン(SiN)膜20aを600nmの膜厚で形成した(図13A(a))。この際、プラズマCVDでの成膜温度は200℃とした。形成した窒化シリコン膜20aの屈折率は1.90であり、波長300nmよりも長波長領域における消衰係数は1.0×10-4以下であった。
【0092】
次に、形成した窒化シリコン膜20aの上に、アルカリ可溶性・感光性・熱リフロー性を全て有する樹脂を塗布して感光性犠牲層を形成した。その後、その感光性犠牲層を、フォトマスクを使用してフォトリソグラフィのプロセスによりパターン化した後、200℃で熱処理して犠牲層であるレンズ母型20bを形成した。レンズ母型20bは、厚さ約300nmのスムースな半円形状が複数設けられて形成された(図13A(b))。
【0093】
次に、フロン系ガスであるCF及びCの混合系ガスを用いてドライエッチングを施し、レンズ母型20bのパターンを窒化シリコン膜20aに転写し、第1のマイクロレンズ層20を形成した(図13B(c))。この際のエッチングは、レンズ母型20bと窒化シリコン膜20aとのエッチングレートが同等であり、選択比が1となる条件で実施した。ドライエッチング時間は5分とした。これにより、第1のマイクロレンズ層20の半円形状レンズの頂点から半円形状レンズの底面(反射低減層40の上面)までの高さが300nmとなるように、第1のマイクロレンズ層20を形成した。
【0094】
次に、第1のマイクロレンズ層20の上層に、成膜装置としてプラズマCVDを用いて第2のマイクロレンズ層21となる酸化シリコン(SiO)膜を50nmの膜厚で形成した(図13B(d))。酸化シリコン膜の屈折率は1.46であった。これにより、マイクロレンズ200を形成した。ここで、上記「50nmの膜厚」とは、第2のマイクロレンズ層21の頂点における膜厚が50nmであることをいう。
【0095】
次に、マイクロレンズ平坦化層300を形成するマイクロレンズ平坦化層形成工程を行った(図14)。
マイクロレンズ平坦化層300は、例えば、屈折率1.21の有機系樹脂を用いて形成した。マイクロレンズ200が形成された半導体基板10上に、この有機系樹脂を500nmの膜厚で回転塗布して、マイクロレンズ200が形成された半導体基板10の表面を平坦化した。なお、マイクロレンズ平坦化層300は、この厚みに限られたものではなく、マイクロレンズ200の凹凸の高さよりも厚く、当該凹凸を平坦化可能な厚みであればよい。
【0096】
以上の各工程により、実施例の固体撮像素子1を形成した。
以上のようにして得た固体撮像素子1は、マイクロレンズ200が高屈折率の材料で形成されていることで集光能力が向上しており、さらにマイクロレンズ200と色フィルターとの反射率差による反射も低減できており、良好な感度を有するものとなった。
【0097】
<実施例2>
実施例2は、マイクロレンズ200を形成する際に、積層するマイクロレンズの層数が3層である点で実施例1と異なる。実施例2において、第1のマイクロレンズ層20を形成するまでの各工程は、実施例1における第1のマイクロレンズ層20を形成するまでの各工程(図8(a)~図13B(c))と同様である。このため、以下、第1のマイクロレンズ層20形成後の構成について説明する。
【0098】
第1のマイクロレンズ層20を形成した後で、成膜装置としてプラズマCVDを用いて第2のマイクロレンズ層21となる酸窒化シリコン(SiON)膜を形成した。第1のマイクロレンズ層20を形成する際に用いる窒化シリコン(SiN)膜を成膜する際には、ガス種としてSiH、NH、Nを用いるが、第2のマイクロレンズ層21を形成する際に用いる窒化酸化シリコン(SiON)膜を成膜する場合は、上述したSiH、NH、NにNOガスを加えて、且つ主にNOガスと他のガスとの流量比を変えることで、窒化酸化シリコン(SiON)膜の屈折率を制御する。本実施例では、第2のマイクロレンズ層21として、屈折率1.68の窒化酸化シリコン(SiON)膜を膜厚が50nmとなるように形成した。ここで、上記「50nmの膜厚」とは、第2のマイクロレンズ層21の頂点における膜厚が50nmであることをいう。
【0099】
次に、第2のマイクロレンズ層21の上に、第3のマイクロレンズ層22として、プラズマCVDを用いて酸化シリコン(SiO)膜を成膜した(図15(a))。酸化シリコン(SiO)膜の屈折率は1.46であり、その膜厚は50nmで形成した。ここで、上記「50nmの膜厚」とは、第3のマイクロレンズ層22の頂点における膜厚が50nmであることをいう。
次に、マイクロレンズ平坦化層300を形成するが、そのマイクロレンズ平坦化層300は、実施例1のマイクロレンズ平坦化層300と同様(図14)にして形成した(図15(b))。これにより、マイクロレンズ200を形成した。
【0100】
以上の各工程により、実施例2の固体撮像素子を形成した。
本実施例では、マイクロレンズ200を多層で形成することで、高屈折率材料で形成したマイクロレンズ200自体の入射光に対する反射をさらに低減し、受光感度をさらに向上する利点がある。
【0101】
<実施例3>
実施例3は、マイクロレンズ200に代えて、マイクロレンズ200Aを備えている点で、実施例1や実施例2と異なる。実施例3において、反射低減層40を形成するまでの各工程は、実施例1(図8(a)~図12)と同様である。このため、以下、第1のマイクロレンズ層20となる窒化シリコン膜20aの形成工程以降の工程について説明する。
【0102】
図16A(a)に示すように、第1のマイクロレンズ層20となる窒化シリコン膜20aを形成した後、窒化シリコン膜20aの上に樹脂材料により中間犠牲層20cを形成した。
次に、図16A(b)に示すように、中間犠牲層20cの上にレジストによりレンズ形状を有するマスク20dを形成した。
続いて、図16B(c)に示すように、マスク20dをマスクとしてドライエッチングにより中間犠牲層20cをマイクロレンズ形状に加工し、レンズ母型20eを形成した。このとき、レンズ間の間隔が狭まるように、中間犠牲層20cに対してマイクロレンズ形状を転写した。
続いて、図16B(d)に示すように、レンズ母型20eをマスクとして、窒化シリコン膜20aをドライエッチングによりマイクロレンズ形状に加工した。これにより、第1のマイクロレンズ層20を形成した。
【0103】
最後に、実施例1と同様に、第2のマイクロレンズ層21を形成し、その後、マイクロレンズ平坦化層300を形成した。このとき、Fill Factorが85%以上99%以下の範囲内となるようにマイクロレンズ200を形成した。Fill Factorの調整は、マスク20dの形状、中間犠牲層20c及び窒化シリコン膜20aのエッチング条件を調整することで行った。マスク20dの形状はフォトマスクパターンを変更することで調整し、エッチング条件の調整は圧力、RFパワー、ガス流量比を変更することで行った。
以上により、隣接する複数のレンズが平面視でそれぞれ線上に接触しており、第1の色フィルター14、第2の色フィルター15及び第3の色フィルター16それぞれの角部上(四隅)にギャップGを有するマイクロレンズ200を備えた固体撮像素子を形成した。
【0104】
<固体撮像素子の評価>
上述した各実施例の固体撮像素子を形成する際に、ドライエッチングのレンズ母型20b、20eの高さを変更することで、マイクロレンズ200の高さを可変とすることができる。また、レンズ母型20b、20eの形状を変更することによりマイクロレンズ200のFill Factorを可変とすることができる。そのため、表1に示す数値にマイクロレンズ200の高さ及びFill Factorを調整・変更して、受光感度評価を実施した。また、比較として、高屈折率材料をマイクロレンズの材料に適用せずに、従来材料である有機系樹脂を用いてマイクロレンズを形成した。なお、従来構造の固体撮像素子については後述する。
固体撮像素子の評価は、表1に示すように、サンプルNo.1~サンプルNo.15の各固体撮像素子に対して行った。ここで、サンプルNo.1~サンプルNo.4は従来構造の固体撮像素子、サンプルNo.5~サンプルNo.10は実施例1に係る構造の固体撮像素子、サンプルNo.11は実施例2に係る構造の固体撮像素子、サンプルNo.12~サンプルNo.15は実施例3に係る構造の固体撮像素子である。
【0105】
<従来構造>
従来構造の固体撮像素子は、マイクロレンズがアクリル樹脂を含む有機系樹脂材料にて形成されている点で各実施例の固体撮像素子と異なる。
従来構造の固体撮像素子におけるマイクロレンズは、以下のようにして形成した。従来構造の固体撮像素子におけるマイクロレンズは、色フィルター形成工程までは実施例1と同一工程(図8(a)~図11(b))により形成した。
【0106】
次に、アクリル樹脂を含む有機系樹脂材料を膜厚1.0μmの厚みになるように回転塗布して、230℃で加熱硬化し、有機系樹脂膜を色フィルター100及び隔壁50の上面に形成した。
次に、形成した有機系樹脂膜上に、アルカリ可溶性・感光性・熱リフロー性を全て有する樹脂を塗布して感光性犠牲層を形成した。その後、その感光性犠牲層を、フォトマスクを使用して、フォトリソグラフィのプロセスによりパターン化した後、200℃で熱処理して、レンズ母型を形成した。サンプルNo.1~サンプルNo.4において、厚さがそれぞれ約200nmから約500nmのスムースな半円形状が複数設けられたレンズ母型を形成した。
【0107】
次に、フロン系ガスであるCFとCとの混合系ガスを用いてドライエッチングを施し、そのレンズ母型のパターン形状を有機系樹脂膜に転写し、樹脂系マイクロレンズ層を形成した。この際のエッチングは、レンズ母型と有機系樹脂膜とのエッチングレートが同等であり、選択比が1に近い条件で実施した。このようにして、サンプルNo.1~サンプルNo.4において、樹脂系マイクロレンズ層の半円形状レンズの頂点から半円形状レンズの底面(赤色の第3の色フィルター16の上面)までの高さがそれぞれ200nmから500nm(表1参照)となるように、エッチング時間を調整して樹脂系マイクロレンズ層を形成した。
さらに、形成した樹脂系マイクロレンズ層上にプラズマCVDを用いて酸化シリコン(SiO)膜(第2のマイクロレンズ層)を成膜した。
【0108】
表1に、サンプルNo.1~サンプルNo.15の各固体撮像素子のマイクロレンズの材料及び構造を示す。表1に示すレンズ高さは、サンプルNo.1~No.4は樹脂系マイクロレンズ層のレンズ高さを示し、サンプルNo.5~サンプルNo.15は第1のマイクロレンズ層のレンズ高さを示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表2に、サンプルNo.1~サンプルNo.15の各固体撮像素子の受光感度評価結果を比較した結果を示す。受光感度評価は、従来構造の固体撮像素子で感度が良好であったサンプルNo.2を受光感度の基準として、各サンプルの受光感度の増減量に基づいて行った。
【0111】
【表2】
【0112】
サンプルNo.1~サンプルNo.4の結果より、従来構造ではマイクロレンズ高さが300nmで受光感度のピーク(最高値)が得られた。
【0113】
実施例1に係る構成の固体撮像素子は、第1のマイクロレンズ層20が窒化シリコンであり、マイクロレンズ200と色フィルター100との間に反射低減層40を備えた構造であるが、サンプルNo.5~サンプルNo.10の結果より、従来構造のマイクロレンズ高さと比較して、第1のマイクロレンズ層20の膜厚が100nm以上400nm以下の範囲内である場合には、従来構造よりも良好な受光感度が得られることが示された。これは、高屈折率のレンズによって集光性能が向上して、色フィルター100と高屈折率のマイクロレンズ(マイクロレンズ200)との界面での反射を反射低減層40で抑制したためである。ただ、高屈折率のマイクロレンズ200においても、レンズ高さが100nm未満ではレンズとしての集光性能が十分でなく、レンズ高さが450nm以上では隣接画素に入射するべき入射光がマイクロレンズによって遮られて、受光感度が僅かに悪化することが示された。なお、受光感度が従来構造の固体撮像素子の受光感度に対して、3%減(-3%)の範囲内であれば、本願発明の課題を解決し得るものである。
【0114】
次に、マイクロレンズ高さが同一のサンプルNo.7とサンプルNo.11とを比較した結果、実施例1に係る構成のサンプルNo.7と、実施例2に係る構成のサンプルNo.11は、共に高い受光感度が得られたが、サンプルNo.11の受光感度がサンプルNo.7の受光感度に比べて僅かに高かった。
サンプルNo.11(実施例2)は、マイクロレンズ200を3層構造で形成したことで、マイクロレンズ200を2層構造で形成したサンプルNo.7よりも高屈折率マイクロレンズ表面での光の反射を低減する効果が得られ、サンプルNo.7(実施例1)よりも受光感度が向上している。このように、サンプルNo.11では、プロセスの工程数が増えるものの、受光感度を向上させる構造として用いることができる。
【0115】
サンプルNo.12~サンプルNo.15は、マイクロレンズ200を実施例3の方法で形成したことで、マイクロレンズ200のFill Factorが85%以上99%以下と高く、実施例1及び実施例2の方法で形成した場合と比較してより高い受光感度を得ることができた。したがって、隣接する複数のレンズがそれぞれ接触しており、Fill Factorが85%以上100%以下のマイクロレンズ200を有する固体撮像素子を用いることが好ましい。
【0116】
実施例1~3ではマイクロレンズ平坦化層300を形成した例で説明したが、コスト削減のためマイクロレンズ平坦化層300を形成しない場合においても、反射低減層40を有した高屈折率マイクロレンズ(マイクロレンズ200)と同様に、良好な感度特性は確認された。
【0117】
以上、各実施形態及び各実施例により本発明を説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により記される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって形成されうる。
【0118】
また、第1から第3の各実施形態では、色フィルター100は感光性を持たせた色フィルター100の材料を半導体基板10の全面に塗布し、選択的に色フィルター100を形成する箇所を露光することで硬化させて、色フィルターパターンを形成した。しかしながら、色フィルター100の材料は、このような構成に限られない。例えば、図17A~Cに示すように、色フィルター(例えば、第1の色フィルター14)の材料に感光性を持たせずに、熱硬化性樹脂などを用いて加熱ベークで硬化した後で(図17A(a))、フォトレジスト60を塗膜してフォトマスクによりパターンを露光して(図17A(b))、フォトレジスト60でマスクパターン60aを形成して(図17B(c))、開口したい位置の色フィルターだけをエッチングで除去して(図17B(d))、剥膜洗浄によりフォトレジスト(マスクパターン)60aを除去(図17C(e))するプロセスを用いてもよい。
【0119】
また、このドライエッチングプロセスと感光性色フィルターを用いたリソグラフィプロセスとを併用してもよい。
また、各実施形態には、色フィルター100の形成工程として公知の形成工程を用いてもよい。
また、本実施形態では、隔壁50を色フィルター100と同様の高さとなるように形成した場合について説明したが、隔壁50の高さは、例えば、色フィルター100の半分程度の高さであってもよい。
【符号の説明】
【0120】
10・・・半導体基板
11・・・光電変換素子
12・・・素子分離構造
14・・・第1の色フィルター
15・・・第2の色フィルター
16・・・第3の色フィルター
20・・・第1のマイクロレンズ層
21・・・第2のマイクロレンズ層
22・・・第3のマイクロレンズ層
30、31、50・・・隔壁
40・・・反射低減層
100・・・色フィルター
200・・・マイクロレンズ
300・・・マイクロレンズ平坦化層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C