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特開2022-32685押出発泡法によるスチレン系樹脂発泡体の製造方法、及び製造される発泡体、並びに、製造方法に使用する発泡性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032685
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】押出発泡法によるスチレン系樹脂発泡体の製造方法、及び製造される発泡体、並びに、製造方法に使用する発泡性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/12 20060101AFI20220217BHJP
   C08K 5/02 20060101ALI20220217BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20220217BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20220217BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220217BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
C08J9/12 CET
C08K5/02
C08L25/04
C08L25/18
C08K3/04
C08K3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136727
(22)【出願日】2020-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】520030844
【氏名又は名称】ディーディーピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 洋
(72)【発明者】
【氏名】森本 恵一
(72)【発明者】
【氏名】若林 正行
(72)【発明者】
【氏名】西岡 伸悟
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA09B
4F074AA32
4F074AA32B
4F074AA33
4F074AA98
4F074AC02
4F074AC17
4F074AG10
4F074AG20
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA48
4F074BA53
4F074CA22
4F074CC04X
4F074CC05Y
4F074CC22X
4F074CC32X
4F074CC32Y
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA07
4F074DA18
4F074DA24
4F074DA32
4J002BC041
4J002BC112
4J002DA027
4J002DE138
4J002EB029
4J002EB066
4J002FD132
4J002FD207
4J002FD208
4J002FD326
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】本発明は、高い断熱性能を有し、密度が低く、成形性に優れたスチレン系樹脂発泡体を製造できる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、スチレン系樹脂と、スチレン系樹脂1kgに対して、1.1モル以下の1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を含む発泡剤と、を混合して発泡性樹脂組成物を得る工程を含む、スチレン系樹脂発泡体を製造する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂と、スチレン系樹脂1kgに対して、1.1モル以下の1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を含む発泡剤と、を混合して発泡性樹脂組成物を得る工程を含む、スチレン系樹脂押出発泡体を製造する方法。
【請求項2】
更にスチレン系樹脂1kgに対して、0.3~0.8モルの塩化アルキルを共発泡剤として含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発泡剤が、スチレン系樹脂1kgに対して、0.5~1.1モルの1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5~5.0重量パーセントの放射低減剤を含む請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
放射低減剤が、グラファイト(黒鉛)、酸化チタン、又はグラファイト(黒鉛)と酸化チタンの混合物である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
スチレン系樹脂発泡体は、30~41Kg/m3の密度及び、0.1mm以上の気泡径を有する請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
スチレン系樹脂押出発泡体は、0.022W/m・K以下の熱伝導率を有する請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
スチレン系樹脂と、
(A)スチレン系樹脂1kgに対して、0.1~1.1モルの1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)、及び、
(C)スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5~5.0重量パーセントのグラファイト(黒鉛)、酸化チタン、又はグラファイト(黒鉛)と酸化チタンの混合物から選択される放射低減剤を含む発泡性樹脂組成物。
【請求項9】
スチレン系樹脂と、
(A)スチレン系樹脂1kgに対して、0.1~1.1モルの1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)と、
(B)スチレン樹脂系1kgに対して、0.3~0.8モルの塩化アルキルと、
(C)スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5~5.0重量パーセントのグラファイト(黒鉛)、酸化チタン、又はグラファイト(黒鉛)と酸化チタンの混合物から選択される放射低減剤と、
を含む発泡性樹脂組成物。
【請求項10】
更に臭素化ビニル芳香族・ブタジエン共重合体を含む請求項8又は9に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項11】
スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5~5.0重量パーセントのグラファイト(黒鉛)、酸化チタン、又はグラファイト(黒鉛)と酸化チタンの混合物から選択される放射低減剤及び、1.0~6.0重量パーセントの臭素化ビニル芳香族・ブタジエン共重合体を含み、密度が30~41Kg/m3であり、気泡径が0.1mm以上であり、0.022W/m・K以下の熱伝導率を有するスチレン系樹脂押出発泡体において、該押出発泡体は該押出発泡体1kgあたり0.1~1.1モルの1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を含有するスチレン系樹脂押出発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出発泡法によるスチレン系樹脂発泡体の製造方法、及び製造される発泡体、並びに、製造方法に使用する発泡性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
押出発泡により成形したスチレン系樹脂発泡体は、建築用などの断熱材として用いられている。スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法としては、スチレン系樹脂および放射低減剤などの各種添加剤を押出機に添加して加熱溶融しゲル化した後、発泡剤を注入して発泡に適した温度までゲルを冷却し、これを低圧域に押出すことにより発泡体を連続的に製造する方法が知られている。また、このようにして製造されたスチレン系樹脂発泡体は、熱伝導率が低いことが知られている。
【0003】
発泡剤としては、地球環境保護の点から、オゾン層を破壊せず、地球温暖化係数が小さい発泡剤が好ましいため、二酸化炭素、ジメチルエーテル、エタノール、水、ブタン・プロパン等の飽和炭化水素、及び塩化メチル・塩化エチル等の塩化アルキル系の発泡剤が用いられている。しかしながら、エーテル系、アルコール系、飽和炭化水素及び塩化アルキル系の発泡剤は、可燃性のガスである。一方で、保管時の燃焼、建築物に使用後の火災を考慮して、JISではA 9521において発泡体に難燃性能を付与することを求めており、これらの可燃性ガスを発泡剤として多量に用いることは好ましくない。
【0004】
近年、オゾン破壊係数が0で、地球温暖化係数が低く、燃焼しにくいハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンが開発されている。これらの発泡剤の熱伝導率はブタン等の炭化水素系発泡剤より低く、発泡体からの逸散速度も小さく、難燃または不燃であるため、熱伝導率の低い発泡体を得るためには良好な発泡剤である。
【0005】
上記のハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィン系の発泡剤を用いて、熱伝導率の低いスチレン系樹脂押出発泡体を得ることが知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、特許文献1においては、実施例にあるように、得られた良好な発泡体の熱伝導率は0.022W/mK以上であり、熱伝導率が充分に低いとは言えない。また、良好なフォームの密度は45Kg/m3を以上であり、コストの観点から満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2015-522696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、高い断熱性能を有しながら、密度が低く、JIS A 9521に定める燃焼性を満足し、成形性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スチレン系樹脂に、一定の含有量以下の1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を含む発泡剤を混合して、発泡性樹脂組成物を得て、押出発泡することにより、高い断熱性能を有し、密度が低く、成形性に優れたスチレン系樹脂発泡体を製造出来ることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、スチレン系樹脂と、スチレン系樹脂1kgに対して、1.1モル以下の1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を含む発泡剤と、を混合して発泡性樹脂組成物を得る工程を含む、スチレン系樹脂発泡体を製造する方法である。
【0010】
本発明では、更にスチレン系樹脂1kgに対して、0.3~0.8モルの塩化アルキルを共発泡剤として含むことが好ましい。また、発泡剤が、スチレン系樹脂1kgに対して、0.5~1.1モルの1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を含むことが好ましい。
【0011】
更に、本発明では、スチレン系樹脂100重量部に対して、放射低減剤を0.5~5.0重量パーセント含むことが好ましく、1.5~4重量パーセント含むことが更に好ましい。また、放射低減剤は、グラファイト(黒鉛)、酸化チタン、又はグラファイト(黒鉛)と酸化チタンの混合物から選択されることが好ましい。
【0012】
本発明で製造されたスチレン系樹脂発泡体は、30~41Kg/m3の密度及び、0.1mm以上の気泡径を有することが好ましい。また、本発明で製造されたスチレン系樹脂発泡体は、0.022W/m・K以下の熱伝導率を有することが好ましい。
【0013】
本発明の別の態様では、
スチレン系樹脂と、
(A)スチレン系樹脂1kgに対して、0.1~1.1モルの1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)、及び、
(C)スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5~5.0重量パーセントのグラファイト(黒鉛)、酸化チタン、又はグラファイト(黒鉛)と酸化チタンの混合物から選択される放射低減剤を含む発泡性樹脂組成物である。
【0014】
また、本発明は、スチレン系樹脂と、
(A)スチレン系樹脂1kgに対して、0.1~1.1モルの1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)と、
(B)スチレン樹脂系1kgに対して、0.3~0.8モルの塩化アルキルと、
(C)スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5~5.0重量パーセントのグラファイト(黒鉛)、酸化チタン、又はグラファイト(黒鉛)と酸化チタンの混合物から選択される放射低減剤と、
を含む発泡性樹脂組成物である。
更に、本発明の発泡性樹脂組成物は、臭素化ビニル芳香族・ブタジエン共重合体を含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明は、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5~5.0重量パーセントのグラファイト(黒鉛)、酸化チタン、又はグラファイト(黒鉛)と酸化チタンの混合物から選択される放射低減剤及び、1.0~6.0重量パーセントの臭素化ビニル芳香族・ブタジエン共重合体を含み、密度が30~41Kg/m3であり、気泡径が0.1mm以上であり、0.022W/m・K以下の熱伝導率を有するスチレン系樹脂押出発泡体において、該押出発泡体は該押出発泡体1kgあたり0.1~1.1モルの1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を含有するスチレン系樹脂押出発泡体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、スチレン系樹脂に、一定の含有量以下の1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を含む発泡剤を混合して、発泡性樹脂組成物を得て、押出発泡することにより、高い断熱性能を有し、密度が低く、成形性に優れたスチレン系樹脂発泡体を製造出来る。そして、得られた押出発泡体は、高い断熱性能を有し、密度が低いことから、断熱材等の建材に広く使用することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体は、スチレン系樹脂、または任意に各種添加剤を加えたスチレン系樹脂組成物を加熱溶融してゲル化し、このゲルに、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を含む発泡剤を添加し、押出発泡させて製造される。まず、原料となるスチレン系樹脂、及び、スチレン系樹脂組成物について説明する。
【0018】
<スチレン系樹脂>
本発明で用いられるスチレン系樹脂は、特に限定されるものではなく、例えばスチレン単量体のみから得られるポリスチレンホモポリマー;スチレン単量体と、スチレンと共重合可能な単量体あるいはその誘導体とから得られるランダム、ブロックまたはグラフト共重合体;臭素化ポリスチレン;ならびにゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレンなどが挙げられる。
【0019】
スチレンと共重合可能な単量体としては、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレンジクロロスチレンおよびトリクロロスチレンなどのスチレン誘導体;ビニルトルエン、ビニルキシレンおよびジビニルベンゼンなどのビニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、ブタジエンおよびアクリロニトリルなどの不飽和化合物あるいはその誘導体;無水マレイン酸ならびに無水イタコン酸などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。スチレン系樹脂としては、ポリスチレンホモポリマーが特に好ましい。スチレン系樹脂の重量平均分子量は10万~30万であり、好ましくは15万~25万であり、より好ましくは18万~22万である。
【0020】
<任意成分>
本発明では、放射低減剤、難燃剤、安定剤、有色顔料、気泡調整剤などを任意成分として用いることができる。熱伝導率を低下させるという観点からは、放射低減剤を添加することが好ましい。得られる発泡体がJIS A 9521に定める燃焼性を満たすためには、難燃剤を添加することが好ましい。
【0021】
放射低減剤としては、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタンなどが挙げられる。スチレン系樹脂に添加する放射低減剤の量としては、スチレン系樹脂100重量部に対して0.1~10重量部、好ましくは、0.5~5.0重量部、さらに好ましくは、1.5~4重量部である。また、放射低減剤としては、グラファイト(黒鉛)、酸化チタン、又はグラファイト(黒鉛)と酸化チタンの混合物から選択されることが好ましい。なお、上述の放射低減剤は、加熱溶融されたスチレン系樹脂に添加する前に、スチレン系樹脂への分散性等を考慮して予めポリスチレン系樹脂とのマスターバッチとしておくことが好ましい。放射低減剤を使用することにより、熱伝導率が低い発泡体を製造することが出来る。
【0022】
難燃剤としては、臭素化ブタジエン・ビニル芳香族共重合体が好ましい。中でも臭素化ブタジエン・ビニル芳香族共重合体の中でも、高い難燃性が得やすいことから、臭素化ブタジエン・スチレン共重合体が好ましい。臭素化前のスチレン・ブタジエン共重合体は、ジブロック共重合体(例えばスチレン・ブタジエンブロック共重合体)、トリブロック共重合体(例えばスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)、テトラブロック共重合体(例えばスチレン・ブタジエン・スチレン・ブタジエンブロック共重合体)又はマルチブロック共重合体(例えばスチレン・ブタジエン・スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)のいずれであってもよい。スチレン・ブタジエン共重合体は、ランダム重合を含む既知のいずれの方法によって調製したものでも良いが、連続するアニオン重合又はカップリング反応によって調製したものが好ましい。これらの中でも臭素化スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体のような臭素化トリブロック共重合体が特に好ましい。本発明における難燃剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して1~6重量部で、好ましくは2~4重量部である。難燃剤を使用することにより、好ましい範囲の燃焼性を有する発泡体を製造できる。
【0023】
安定剤としては、例えば酸化マグネシウム、エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフォスファイト、亜リン酸エステル、エポキシ化大豆油等を用いることができる。
【0024】
気泡調整剤としては、ポリエチレン、ポリエチレンワックス、タルク等を用いることができる。滑剤としては、例えばステアリン酸バリウム等のステアリン酸金属塩等を用いることができる。
【0025】
本発明では、スチレン系樹脂に、上記の任意に各種添加剤を加えたものをスチレン系樹脂組成物と呼ぶ。そして、スチレン系樹脂組成物に、発泡剤等を加えたものを発泡性樹脂組成物と呼ぶ。
【0026】
<発泡剤>
本発明では、発泡剤として1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を使用する。HCFO-1224ydは、異性体としてE型とZ型とがあるが、物性がほぼ同等であり特には限定されない。HCFO-1224ydは、例えば、商品名AMOLEA(登録商標)1224ydとして、AGC株式会社から入手することができる。
【0027】
HCFO-1224ydの使用量は、スチレン系樹脂1Kgに対して、1.1モル以下あれば良いが、0.1~1.1モル、好ましくは0.5~1.1モル、より好ましくは0.6~1.1モル、更に好ましくは0.8~1.05モルである。この範囲内とすることで、発泡成形性が良好で、熱伝導率が低く且つ良好な難燃性を有する発泡体を得ることができる。
【0028】
<共発泡剤>
本発明では共発泡剤として、塩化アルキルを用いることができる。塩化アルキルは、熱伝導率が低く、また核効果が小さいため、HCFO-1224ydによって非常に小さくなりがちな気泡径を大きくする効果を奏する。また、発泡体が臭素系の難燃剤等を含有する場合には、プロセス系内の腐食を防ぐ観点からも水等に比べて塩化アルキルを使用することが好ましい。塩化アルキルとしては、塩化メチル、塩化エチル等が挙げられるが、特に塩化エチルは気泡径を大きくする効果及び毒性の観点から好ましい。
【0029】
塩化アルキルの使用量はスチレン系樹脂1Kgに対して、0.3~0.8モル、好ましくは0.3~0.6モルである。この範囲内とすることでHCFO-1224ydと併用した場合に低い熱伝導率並びに好ましい気泡径(0.1~0.5mm)及び発泡体断面積を得ることができる。
【0030】
塩化アルキル以外の共発泡剤も含むことができ、ブタン類については、少量添加しても良い。ブタン類の添加量は、スチレン系樹脂1Kgに対して、好ましくは0.2モル以下、より好ましくは0.15モル以下、特に好ましくは実質的に0モルである。
【0031】
なお、炭素数1~3の低級炭化水素及びエーテル類のような核効果の高い発泡剤を含むことは好ましくない。これらの発泡剤が含まれると得られる発泡体の気泡径が小さくなりすぎて成形性が悪くなるなど、悪影響が出るためである。
【0032】
<発泡性樹脂組成物>
本明細書において、発泡性樹脂組成物とは、上記スチレン系樹脂組成物に、発泡剤を添加したものを言う。本発明の発泡体を製造する方法においては、発泡性樹脂組成物は発泡剤を添加した際に、中間体として生じるが、予めスチレン系樹脂組成物と発泡剤を混合して発泡性樹脂組成物とすることも出来る。本発明の発泡性樹脂組成物は、スチレン系樹脂と、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を発泡剤として含む。
【0033】
HCFO-1224ydの含有量は、スチレン系樹脂1kgに対して、0.1~1.1モルであり、好ましくは、0.5~1.1モルである。また、発泡性樹脂組成物は、放射低減剤を含むことが好ましく、放射低減剤は、グラファイト(黒鉛)、酸化チタン、又はグラファイト(黒鉛)と酸化チタンの混合物から選択されることがより好ましい。放射低減剤の含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5~5.0重量パーセントであり、好ましくは1.5~4重量である。
【0034】
また、本発明の発泡性樹脂組成物は、更に塩化アルキルを共発泡剤として含むことが好ましい。塩化アルキルの含有量は、スチレン樹脂系1kgに対して、0.3~0.8モルであり、0.3~0.6モルであることが好ましい。更に、本発明の発泡性樹脂組成物は、臭素化ビニル芳香族・ブタジエン共重合体を含むことが好ましい。
【0035】
<スチレン樹脂発泡体の製造方法>
本発明では、スチレン系樹脂または任意に添加剤を加えたスチレン系樹脂組成物を加熱溶融し、発泡剤を添加し、これを押出発泡させることにより、スチレン系樹脂発泡体を製造することができる。例えば、主原料のスチレン系樹脂とその他種々の添加物を押出機のホッパーに投入し、発泡剤を圧入して混練した後、冷却機でゲルを均一に冷却して、ダイから大気圧下に押出発泡することで製造することができる。
【0036】
スチレン系樹脂を加熱溶融する際の溶融温度は、160~240℃、好ましくは170~230℃、より好ましくは180~220℃で、押出機によって固形原料を溶融混練する。また、発泡剤を圧入する際の圧力は、110~200kg/cm2、より好ましくは120~185kg/cm2である。押出機によって溶融された固形原料と発泡剤はミキサー(回転数:20~40rpm、より好ましくは25~35rpm)によって混練され、クーラーによってゆっくりと冷却される。また、ゲルを冷却し発泡するときの最適温度は、100~130℃、より好ましくは110~125℃である。
【0037】
<樹脂発泡体>
本発明の製造方法によって得られたスチレン系樹脂発泡体は、JIS A1412-2に規定された測定方法において測定した熱伝導率が0.022W/m・K以下である。本発明の樹脂発泡体は、スチレン系樹脂組成物に、グラファイト等の放射低減剤を含有させることにより、熱伝導率が低い発泡体を製造出来る。
【0038】
また、このスチレン系樹脂発泡体は、密度が42Kg/m3以下であることが好ましい。さらに、スチレン系樹脂発泡体の気泡径は0.1~0.5mmであることが好ましい。0.1mm未満であると密度が高くなり、所定の発泡体の断面積(幅、厚み)が得られにくくなり、更に発泡速度が速いため成形不良となり、また0.5mmを越えると放射が大きくなり熱伝導率が大きくなる。加えて、得られるスチレン系樹脂発泡体は、JIS A 9521に定める燃焼性を満足することが好ましい。本発明の樹脂発泡体は、発泡性樹脂組成物として、難燃剤、例えば、臭素化ブタジエン・スチレン共重合体を含有するものを使用することにより、燃焼性を満足する発泡体を製造することが出来る。
【0039】
更に、好ましい態様で、本発明は、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5~5.0重量パーセントのグラファイト(黒鉛)、酸化チタン、又はグラファイト(黒鉛)と酸化チタンの混合物から選択される放射低減剤及び、1.0~6.0重量パーセントの臭素化ビニル芳香族・ブタジエン共重合体を含み、密度が30~41Kg/m3であり、気泡径が0.1mm以上であり、0.022W/m・K以下の熱伝導率を有するスチレン系樹脂押出発泡体において、該押出発泡体は該押出発泡体1kgあたり0.1~1.1モルの1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を含有するスチレン系樹脂押出発泡体である。
【実施例0040】
<押出発泡体の調製方法>
まず、重量平均分子量210,000(ゲル浸透クロマトグラフィーにより、分子量既知の標準ポリスチレン換算で測定される値)のスチレン樹脂Aを使用した。
【0041】
また、放射低減剤としてグラファイト(伊藤黒鉛工業社製 人造黒鉛):11.3重量%、酸化チタン(ケマーズ社製:Ti-PureR-104、平均粒径0.25μm):21.4重量%、炭酸カルシウム(白石カルシウム社製):13重量%、ワックス(クラリアントジャパン製 リコワックス PE-520):8.5重量%、及び、顔料(東洋インキ社製リオノールブルーFG-7330):1.3重量%を、スチレン樹脂44.5重量%と予め混合したマスターバッチ(マスターバッチB)を、放射低減剤Bとして用意した。そして、スチレン樹脂A:100重量部に対して、この放射低減剤Bを、7.8重量部の比率で添加した。
【0042】
更に、難燃剤組成物C(スチレン樹脂A:100重量部に対して、難燃剤として臭素化ブタジエン・スチレン共重合体(ランクセス社製 Emerald Innovation 3000):3.0重量部、安定剤としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ECN-1280、ハンツマン社製):0.5重量部、エポキシ化大豆油:0.2重量部、及びアルキルフォスファイト(Doverphos S-9228、Dover Chemical Corporation製):0.2重量部を添加)を加えた。このようにして、スチレン樹脂A、放射低減剤B、及び難燃剤組成物Cを含むスチレン系樹脂を、ベーススチレン系樹脂として使用した。
【0043】
<発泡体の製造>
上記ベーススチレン系樹脂を押出機のホッパーに投入した。更に表1に示す各種発泡剤を圧入した後、押出機中で溶融された固形原料と発泡剤はミキサー(回転数:30rpm)によって混練し発泡性樹脂組成物を得た。冷却機でゲルを均一に125℃に冷却し、ダイから大気圧下に押し出し発泡させて発泡体を得た。
【0044】
【表1】
【0045】
<分析方法>
得られた発泡体の各種物性値を以下の方法で測定した。
(密度)発泡体の重量(kg)を発泡体の体積(m3)で割ることで算出した。
(気泡径)ASTM D 3576に準拠する方法で測定した。
(熱伝導率)JIS A1412-2:1999に準拠する方法(平均温度23℃)にて測定した。
(燃焼性)JIS A9521:2017付属書C記載の試験方法Aにて測定した。
なお、発泡体の押出成形性は、良好な成形品が成形されたか否かを評価した。また、発泡体の表面欠陥は、成形品の表面を目視によりボイドの有無を評価した。
【0046】
(実施例1)
上記ベーススチレン系樹脂(スチレン樹脂A、放射低減剤B、及び難燃剤組成物Cを含む)を使用し、スチレン系樹脂100重量部に、12.4重量部のHCFO-1224yd(スチレン系樹脂1kgに対して、0.84モル)、及び、3.6重量部の塩化エチル(スチレン系樹脂1kgに対して、0.55モル)を添加して発泡体を製造した。なお、上記のように放射低減剤B(グラファイトを11.3重量%及び酸化チタンを21.4重量%含有)は、7.8重量部の比率でスチレン樹脂A:100重量部に対して含まれるため、グラファイトは0.85重量%、酸化チタンは1.61重量%含まれていた。
【0047】
(実施例2)
上記ベーススチレン系樹脂を使用し、スチレン系樹脂100重量部に、14.0重量部のHCFO-1224yd(スチレン系樹脂1kgに対して、0.94モル)、及び、2.9重量部の塩化エチル(スチレン系樹脂1kgに対して、0.45モル)を添加した以外は、実施例1と同様の条件で発泡体を製造した。
【0048】
(実施例3)
上記ベーススチレン系樹脂を使用し、スチレン系樹脂100重量部に、15.2重量部のHCFO-1224yd(スチレン系樹脂1kgに対して、1.02モル)、及び、2.2重量部の塩化エチル(スチレン系樹脂1kgに対して、0.34モル)を添加した以外は、実施例1と同様の条件で発泡体を製造した。
【0049】
(比較例1)
上記ベーススチレン系樹脂を使用し、スチレン系樹脂100重量部に、16.7重量部のHCFO-1224yd(スチレン系樹脂1kgに対して、1.13モル)、及び、1.5重量部の塩化エチル(スチレン系樹脂1kgに対して、0.24モル)を添加した以外は、実施例1と同様の条件で発泡体を製造した。
【0050】
(比較例2)
上記ベーススチレン系樹脂を使用し、スチレン系樹脂100重量部に、17.5重量部のHCFO-1224yd(スチレン系樹脂1kgに対して、1.18モル)、及び、1.5重量部の塩化エチル(スチレン系樹脂1kgに対して、0.23モル)を添加した以外は、実施例1と同様の条件で発泡体を製造したが、気泡径が小さすぎて、表面に欠陥がある不良な成形品しか得られなかった。
【0051】
【表2】
【0052】
(実施例1~3及び、比較例1、2の評価)
上記表2に記載のように、ベーススチレン系樹脂に、スチレン系樹脂1kgに対して、HCFO-1224ydを発泡剤として、0.84~1.02モル加えた場合(実施例1~3)、良好な押出成形性を示し、表面に欠陥のない発泡体が得られた。得られた発泡体は、32~41(Kg/m3) の密度で、気泡径は0.12~0.31mmで、0.0204(W/mK)以下の極めて良好な熱伝導率を有した。HCFO-1224ydの比率を、1.13モル、1.81モル(比較例1,2)に増加させると、押出成形上の問題が生じ、表面に欠陥がある不良な成形品しか得られなかった。
【0053】
<HCFO-1224ydの含有量の変更>
(実施例4)
上記ベーススチレン系樹脂を使用し、スチレン系樹脂100重量部に、9.5重量部のHCFO-1224yd(スチレン系樹脂1kgに対して、0.64モル)、4.0重量部の塩化エチル(スチレン系樹脂1kgに対して、0.62モル)及び、0.7重量部のブタン(スチレン系樹脂1kgに対して、0.12モル)を添加した以外は、実施例1と同様の条件で発泡体を製造した。
【0054】
(実施例5~9)
上記ベーススチレン系樹脂を使用し、下記の表3に記載のように、スチレン系樹脂100重量部に、8.0~1.0重量部のHCFO-1224yd(スチレン系樹脂1kgに対して、0.54~0.07モル)、5.0重量部の塩化エチル(スチレン系樹脂1kgに対して、0.78モル)及び、0.5~3.2重量部のブタン(スチレン系樹脂1kgに対して、0.09~0.55モル)を添加した以外は、実施例1と同様の条件で発泡体を製造した。
【0055】
【表3】
【0056】
(実施例4~9の評価)
上記表3に記載のように、発泡剤Aの濃度を、スチレン系樹脂1kgに対して、0.64~0.07モルの範囲で変化させて、発泡体を製造したところ、良好な押出成形性で、表面に欠陥のない発泡体が得られた。得られた発泡体は、27~32(Kg/m3) の密度で、気泡径は0.35~0.52mmで、0.0210~0.0247(W/mK)の熱伝導率を有した。
【0057】
<共発泡剤の変更>
(実施例10)
実施例1において、3.6重量部の塩化エチルの代わりに、3重量部のブタン(スチレン系樹脂1kgに対して、0.55モル)を添加した以外は、実施例1と同様の条件で発泡体を製造した。
【0058】
(実施例11)
実施例1において、3.6重量部の塩化エチルの代わりに、2.3重量部の二酸化炭素(スチレン系樹脂1kgに対して、0.52モル)を添加し以外は、実施例1と同様の条件で発泡体を製造した。
【0059】
(実施例12)
実施例1において、3.6重量部の塩化エチルを除いて、スチレン系樹脂100重量部に、12.4重量部のHCFO-1224yd(スチレン系樹脂1kgに対して、0.84モル)のみを加えた以外は、実施例1と同様の条件で発泡体を製造した。
【0060】
(実施例13)
実施例3において、2.2重量部の塩化エチルを除いて、スチレン系樹脂100重量部に、15.2重量部のHCFO-1224yd(スチレン系樹脂1kgに対して、1.02モル)のみを加えた以外は、実施例3と同様の条件で発泡体を製造した。
【0061】
(実施例14)
実施例3において、2.2重量部の塩化エチルの代わりに、2重量部のブタン(スチレン系樹脂1kgに対して、0.34モル)を添加した以外は、実施例3と同様の条件で発泡体を製造した。
【0062】
(比較例3)
比較例1において、1.5重量部の塩化エチルを除いて、スチレン系樹脂100重量部に、16.7重量部のHCFO-1224yd(スチレン系樹脂1kgに対して、0.84モル)のみを加えた以外は、比較例1と同様の条件で発泡体を製造した。
【0063】
【表4】
【0064】
(実施例10~14及び、比較例3の評価)
上記表4に記載のように、共発泡剤としての塩化エチルに代えて、ブタン、二酸化炭素を使用した場合(実施例10,11、14)、又は、共発泡剤(塩化エチル)を含まない場合(実施例12,13)に製造した発泡体は、塩化エチルを含む場合(実施例1)と比較すると、ブタン、二酸化炭素、共発泡剤なしの順で、熱伝導率は上昇する傾向を示した。また、共発泡剤なしの場合、発泡体の密度はかなり高くなった(55~56Kg/m3)。二酸化炭素を使用した場合、塩化エチルやブタンを使用した場合と比較して、発泡体の気泡径も小さくなった。以上から、塩化エチルを共発泡剤として使用することにより、より熱伝導率が低い良好な発泡体が得られた。
【0065】
<放射低減剤の含有量の変更>
(実施例15)
ベーススチレン系樹脂(スチレン樹脂A:100重量部、放射低減剤B:7.8重量部)の代わりに、スチレン樹脂A100重量部に対する、放射低減剤Bの比率を、5.0重量部にしたこと以外は同様の条件で作成したスチレン系樹脂を使用して、実施例3と同様の条件で発泡体を製造した。ここで、放射低減剤Bは、5.0重量部の比率でスチレン樹脂A:100重量部に対して含まれるため、グラファイトは0.55重量%、酸化チタンは1.05重量%含まれていた。
【0066】
(実施例16)
ベーススチレン系樹脂(スチレン樹脂A:100重量部、放射低減剤B:7.8重量部)の代わりに、スチレン樹脂A100重量部に対する、放射低減剤Bの比率を、11.5重量部にしたこと以外は同様の条件で作成したスチレン系樹脂を使用して、実施例3と同様の条件で発泡体を製造した。ここで、放射低減剤Bは、11.5重量部の比率でスチレン樹脂A:100重量部に対して含まれるため、グラファイトは1.24重量%、酸化チタンは2.34重量%含まれていた。
【0067】
<放射低減剤を含まない場合>
(比較例4)
ベーススチレン系樹脂(放射低減剤Bを含むもの)から、放射低減剤Bを除いた以外は同様の条件で作成したスチレン系樹脂(スチレン樹脂A及び難燃剤組成物Cを含む)を使用して、実施例3と同様の条件で発泡体を製造した。
【0068】
(比較例5)
ベーススチレン系樹脂(放射低減剤Bを含むもの)から、放射低減剤Bを除いた以外は同様の条件で作成したスチレン系樹脂(スチレン樹脂A及び難燃剤組成物Cを含む)を使用して、比較例1と同様の条件で発泡体を製造した。
【0069】
(比較例6:難燃剤を含まない場合)
ベーススチレン系樹脂(難燃剤組成物Cを含むもの)から、難燃剤組成物Cを除いた以外は同様の条件で作成したスチレン系樹脂(スチレン樹脂A及び放射低減剤Bを含む)を使用して、比較例1と同様の条件で発泡体を製造した。
【0070】
【表5】
【0071】
(実施例15~16及び、比較例4~6の評価)
上記表5に記載のように、スチレン樹脂A100重量部に対する、放射低減剤Bの比率を、7.8重量部(実施例3)から、5.0重量部(実施例15)、11.5重量部(実施例16)に変更して発泡体を製造したところ、比率を増加させることにより、熱伝導率はより低下する傾向を示した。また、放射低減剤Bを含まない条件で製造した発泡体は、熱伝導率がかなり高くなった(比較例4)。また、難燃剤Cを含まない条件で製造した発泡体(比較例6)は、燃焼性等も考慮すると必ずしも満足できるものではなかった。
【0072】
(参考例1:HFO-1234zeの使用)
上記ベーススチレン系樹脂を使用し、スチレン系樹脂100重量部に、発泡剤として、9.5重量部のHFO-1234ze(スチレン系樹脂1kgに対して、0.84モル)、及び、3.6重量部の塩化エチル(スチレン系樹脂1kgに対して、0.55モル)を添加した以外は、実施例1と同様の条件で発泡体を製造したが、気泡径が小さすぎて、表面に欠陥がある不良な成形品しか得られなかった。
【0073】
(参考例2:HCFO-1233zdの使用)
上記ベーススチレン系樹脂を使用し、スチレン系樹脂100重量部に、発泡剤として、10.9重量部のHCFO-1233zd(スチレン系樹脂1kgに対して、0.84モル)、及び、3.6重量部の塩化エチル(スチレン系樹脂1kgに対して、0.55モル)を添加した以外は、実施例1と同様の条件で発泡体を製造したが、波打ち成形され、表面に欠陥がある不良品しか得られなかった。この発泡体の熱伝導率、密度、及び燃焼性の測定出来ず、気泡径は、0.4mmであった。
【0074】
【表6】
【0075】
(参考例1、2の評価)
上記表6に記載のように、発泡剤Aとして、HCFO1224ydの代わりに、HFO-1234ze又は、HCFO-1233zdを使用して、発泡体の製造をしたが、いずれの場合も、押出成形性に問題があり、波打ち成形され、表面に欠陥がある不良品しか得られなかった。
【0076】
上記のように、本発明では、スチレン系樹脂に、HCFO-1224ydを発泡剤として使用することにより、押出成形性に優れた発泡体を製造できた。また、得られた発泡体は、密度が低く、高い断熱性能を有していた。