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特開2022-32701針付きシリンジの製造方法および針付きシリンジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032701
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】針付きシリンジの製造方法および針付きシリンジ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/34 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
A61M5/34 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136766
(22)【出願日】2020-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健
(72)【発明者】
【氏名】菊島 光一
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066FF05
4C066KK05
4C066PP02
(57)【要約】
【課題】製造コストを低減することが可能な針付きシリンジの製造方法および針付きシリンジを提供する。
【解決手段】針付きシリンジの製造方法は、先端に針先11Aを有する針管11の基端11B側に、針管11の外周面を軸方向において部分的に覆うホルダ12を装着する第1工程と、互いに当接される第1金型21および第2金型22から構成されるシリンジ用金型20を開いた状態で、第1金型21に設けられた先端側針管収容部24内に針管11の先端側を挿入すると共に、先端側針管収容部24の入口側に設けられた先端側ホルダ係止部24Aにホルダ12の先端部12Aを係止させる第2工程と、シリンジ用金型20を閉じてホルダ12の軸方向における一部をシリンジ用金型20のキャビティ23内に配置する第3工程と、シリンジ用金型20のキャビティ23内に樹脂を充填してシリンジを形成する第4工程と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に針先を有する針管の基端側に、前記針管の外周面を軸方向において部分的に覆うホルダを装着する第1工程と、
互いに当接される第1金型および第2金型から構成されるシリンジ用金型を開いた状態で、前記第1金型に設けられた先端側針管収容部内に前記針管の先端側を挿入すると共に、前記先端側針管収容部の入口側に設けられた先端側ホルダ係止部に前記ホルダの先端部を係止させる第2工程と、
前記シリンジ用金型を閉じて前記ホルダの軸方向における一部を前記シリンジ用金型のキャビティ内に配置する第3工程と、
前記シリンジ用金型のキャビティ内に樹脂を充填してシリンジを形成する第4工程と、
を含むことを特徴とする針付きシリンジの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の針付きシリンジの製造方法において、
前記第3工程では、前記ホルダの基端面を前記第2金型に当接させることを特徴とする針付きシリンジの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の針付きシリンジの製造方法において、
前記第3工程では、前記ホルダの基端部を前記第2金型に設けられた基端側ホルダ係止部に係止させることを特徴とする針付きシリンジの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の針付きシリンジの製造方法において、
前記第1工程では、前記ホルダを前記針管に対して溶接することを特徴とする針付きシリンジの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の針付きシリンジの製造方法において、
前記第2工程の前に、前記ホルダの外周面に粗面を形成する予備工程を含むことを特徴とする針付きシリンジの製造方法。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の針付きシリンジの製造方法において、
前記第1工程では、ホルダ用金型のキャビティ内に前記針管の軸方向における一部を配置した状態で前記ホルダ用金型のキャビティ内に樹脂を充填して前記ホルダを形成することを特徴とする針付きシリンジの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の針付きシリンジの製造方法において、
前記第1工程の前に、前記針管の外周面に粗面を形成する予備工程を含むことを特徴とする針付きシリンジの製造方法。
【請求項8】
先端に針先を有する針管、および前記針管の基端側に装着されて前記針管の外周面を軸方向において部分的に覆うホルダを有するホルダ付き針管と、
インサート成形によって前記ホルダ付き針管と接合されたシリンジと、を備え、
前記ホルダは、少なくとも先端面が前記シリンジから露出していることを特徴とする針付きシリンジ。
【請求項9】
請求項8に記載の針付きシリンジにおいて、
前記ホルダは、基端面が前記シリンジから露出していることを特徴とする針付きシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針付きシリンジの製造方法および針付きシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インシュリン投与等に使用される比較的容量の小さいシリンジには、針ハブを介さずに、針管が直接シリンジ(外筒)に接合されているものが存在する。このような針付きシリンジでは、一般に接着剤を使用して針管がシリンジに接合されている。
【0003】
但し、針管とシリンジの接合に接着剤を使用した場合、接着剤の成分が薬液等に溶出または漏出し、薬液等が投与される生体に悪影響を及ぼす可能性があるという問題があった。特に、予めシリンジ内に薬液等を充填したプレフィルドシリンジにおいては、接着剤が薬液等と接触している期間が長く、接着剤の成分の薬液等への溶出量または漏出量も多くなるため、接着剤に代わる接合方法が求められていた。
【0004】
これに対し、シリンジを射出成形する金型に針管を固定して(保持させて)シリンジを針管と一体的に形成する、すなわちインサート成形によって針付きシリンジを製造する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。インサート成形によれば、接着剤を使用せずに針管とシリンジを接合することができるため、接着剤の成分の薬液等への溶出または漏出という問題を解消することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-61856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の手法では、2つのチャック部材によって挟持することで針管を金型に固定するようにしているため、金型に対して移動可能なチャック部材およびチャック部材を移動させる機構を必要とする等、金型およびその周辺機器の構成が複雑となり、製造コストが増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑み、製造コストを低減することが可能な針付きシリンジの製造方法および針付きシリンジを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の針付きシリンジの製造方法は、先端に針先を有する針管の基端側に、前記針管の外周面を軸方向において部分的に覆うホルダを装着する第1工程と、互いに当接される第1金型および第2金型から構成されるシリンジ用金型を開いた状態で、前記第1金型に設けられた先端側針管収容部内に前記針管の先端側を挿入すると共に、前記先端側針管収容部の入口側に設けられた先端側ホルダ係止部に前記ホルダの先端部を係止させる第2工程と、前記シリンジ用金型を閉じて前記ホルダの軸方向における一部を前記シリンジ用金型のキャビティ内に配置する第3工程と、前記シリンジ用金型のキャビティ内に樹脂を充填してシリンジを形成する第4工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の針付きシリンジの製造方法によれば、ホルダを装着した針管において段付き部となる先端部を利用して針管をシリンジ用金型に固定することが可能となるため、シリンジ用金型およびその周辺機器の構成を複雑化したり、針管収容部を高精度に加工したりする必要がなく、低コストで針付きシリンジをインサート成形により製造することができる。
【0010】
また、本発明の針付きシリンジの製造方法によれば、自己投与用のプレフィルドシリンジの普及に伴って需要が高まっている痛みの少ない細径の針管についても、ホルダを介した固定により低コストでインサート成形が可能となっている。また、シリンジ用金型やチャック部材等を直接針管に接触させる必要がないため、針管に疵や変形等が生じるのを防止することができる。
【0011】
また、本発明の針付きシリンジの製造方法において、前記第3工程では、前記ホルダの基端面を前記第2金型に当接させることが好ましい。
【0012】
これによれば、シリンジ用金型およびその周辺機器の構成を複雑化することなく、ホルダを装着した針管を第1金型および第2金型の間に挟持して安定的に保持することができる。また、第2金型においてコアピン(中子)の先端部に設けられることとなるホルダの基端部の係止構造を簡略化または省略することが可能となるため、シリンジの内側に生じるデッドスペース(ガスケットの先端面が当接しない窪み)の容積を低減することができる。
【0013】
また、本発明の針付きシリンジの製造方法において、前記第3工程では、前記ホルダの基端部を前記第2金型に設けられた基端側ホルダ係止部に係止させることが好ましい。
【0014】
これによれば、シリンジ用金型およびその周辺機器の構成を複雑化することなく、ホルダを装着した針管を第1金型および第2金型の両方に係止させて安定的に保持することができる。
【0015】
また、本発明の針付きシリンジの製造方法において、前記第1工程では、前記ホルダを前記針管に対して溶接することが好ましい。
【0016】
これによれば、インサート成形、溶着または圧接等の他の接合手法と比較して、確実にホルダを針管に装着することができる。
【0017】
また、本発明の針付きシリンジの製造方法において、前記第2工程の前に、前記ホルダの外周面に粗面を形成する予備工程を含むことが好ましい。
【0018】
これによれば、表面の凹凸によりシリンジを構成する樹脂との接触面積が増加すると共にアンカー効果が生じるため、ホルダとシリンジの接合性および接合強度を高めることができる。
【0019】
また、本発明の針付きシリンジの製造方法において、前記第1工程では、ホルダ用金型のキャビティ内に前記針管の軸方向における一部を配置した状態で前記ホルダ用金型のキャビティ内に樹脂を充填して前記ホルダを形成することも好ましい。
【0020】
これによれば、インサート成形を2段階に分けて行うこととなるため、シリンジと針管を一度にインサート成形する場合よりもコストを低減することが可能になると共に、より細い針管についてインサート成形を行うことが可能となる。具体的には、ホルダはシリンジよりもはるかに小さく、また複雑な形状も要求されないため、ホルダ用金型もシリンジ用金型よりも小さく且つ簡素な構成となり、インサート成形時の射出圧力や保圧条件等の成形条件も緩和されることとなる。従って、細い針管を直接固定するホルダ用金型であっても比較的低い加工精度で製造することが可能であり、また、ホルダのみを針管と一体的に形成する1段階目のインサート成形は、簡易的なものとなる。そして、上述のように、ホルダを装着した針管と一体的にシリンジを形成するようにすることで、2段階目のインサート成形が低コストになると共に、より細い針管をシリンジと共にインサート成形することが可能となる。
【0021】
また、本発明の針付きシリンジの製造方法において、前記第1工程の前に、前記針管の外周面に粗面を形成する予備工程を含むことが好ましい。
【0022】
これによれば、表面の凹凸によりホルダを構成する樹脂との接触面積が増加すると共にアンカー効果が生じるため、針管とホルダの接合性および接合強度を高めることができる。
【0023】
また、本発明の針付きシリンジは、先端に針先を有する針管、および前記針管の基端側に装着されて前記針管の外周面を軸方向において部分的に覆うホルダを有するホルダ付き針管と、インサート成形によって前記ホルダ付き針管と接合されたシリンジと、を備え、前記ホルダは、少なくとも先端面が前記シリンジから露出していることを特徴とする。
【0024】
本発明の針付きシリンジによれば、ホルダ付き針管において段付き部となるホルダの先端部を利用して針管をシリンジ用金型に固定することが可能となるため、シリンジ用金型およびその周辺機器の構成を複雑化したり、針管収容部を高精度に加工したりする必要がなく、低コストで針付きシリンジをインサート成形により製造することができる。
【0025】
また、本発明の針付きシリンジによれば、自己投与用のプレフィルドシリンジの普及に伴って需要が高まっている痛みの少ない細径の針管についても、ホルダを介した固定により低コストでインサート成形が可能となっている。また、シリンジ用金型やチャック部材等を直接針管に接触させる必要がないため、針管に疵や変形等が生じるのを防止することができる。
【0026】
また、本発明の針付きシリンジにおいて、前記ホルダは、基端面が前記シリンジから露出していることが好ましい。
【0027】
これによれば、シリンジ用金型およびその周辺機器の構成を複雑化することなく、ホルダを装着した針管を可動側金型および固定側金型の間に挟持して安定的に保持することができる。また、例えば固定側金型におけるコアピン(中子)の先端部に設けられることとなるホルダの基端部の係止構造を簡略化または省略することが可能となるため、シリンジの内側に生じるデッドスペースの容積を低減することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の針付きシリンジの製造方法および針付きシリンジによれば、製造コストを低減することが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】Aは、本発明の一実施形態である針付きシリンジの正面図である。Bは、図1AにおけるI-I線断面図である。
図2】AおよびBは、針付きシリンジの製造方法を示した概略図である。
図3】針付きシリンジの製造方法を示した概略図である。
図4】針付きシリンジの製造方法を示した概略図である。
図5】針付きシリンジの製造方法を示した概略図である。
図6】A~Cは、インサート成形によってホルダを針管に装着する方法を示した概略図である。
図7】針付きシリンジの製造方法の変形例を示した概略図である。
図8】針付きシリンジの製造方法の変形例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。まず、針付きシリンジ1の構成について説明する。図1Aは、本発明の一実施形態である針付きシリンジ1の正面図であり、図1Bは、図1AにおけるI-I線断面図である。
【0031】
針付きシリンジ1は、針先を皮膚の表面より穿刺し、生体に薬液等を注入するために用いるものである。図1AおよびBに示されるように、針付きシリンジ1は、生体に穿刺可能な針先11Aを先端に有する針管11と、針管11の基端11B側に装着されて針管11の外周面を軸方向において部分的に覆うホルダ12と、ホルダ12が装着された針管11(ホルダ付き針管13)とインサート成形によって接合されたシリンジ(外筒)14とを備えている。
【0032】
針管11は、上述のように針先11Aによって生体に穿刺される部分である。針管11の先端部には、針先11Aを鋭利にするための刃面が形成されている。針管11のサイズは、特に限定されるものではなく、例えばISO9626に規定される16~33ゲージ(外径:1.7~0.2mm)のものを使用することができる。
【0033】
本実施形態では、針管11の材料としてステンレス鋼(SUS304)を使用しているが、針管11の材料はこれに限定されるものではなく、例えばチタン合金等のその他の金属を採用することができる。また、本実施形態では、針管11の外径を略一定としているが、例えば針先11A側の外径を基端11B側よりも小さくする等、針管11の外径を軸方向において変化させるようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、針管11の横断面の形状を円形状としているが、針管11の横断面の形状は、例えば多角形状等であってもよい。また、針管11は、穿刺時の皮膚との間の摩擦を軽減すべく、表面にフッ素樹脂等のコーティングが施されたものであってもよい。
【0035】
ホルダ12は、インサート成形時に金型に係止される部分であると共に、シリンジ14と接合する部分である。本実施形態では、予め針管11にホルダ12を装着して針管11よりも大径の部分を有するホルダ付き針管13を構成し、このホルダ付き針管13と一体的にシリンジ14をインサート成形することで、金型やその周辺機器を複雑化することなく、低コストで針付きシリンジ1を製造することを可能としている。
【0036】
ホルダ12は、針管11の基端11B側に配置されており、針管11の外周面を軸方向において部分的に覆う円筒状に構成されている。本実施形態では、ホルダ12は溶接またはインサート成形によって針管11に装着(接合)されている。
【0037】
本実施形態では、ホルダ12の先端部12Aおよび基端部12Bがホルダ付き針管13とシリンジ14をインサート成形する際に金型に係止される部分であり、先端部12Aと基端部12Bの間の中間部12Cがシリンジ14と接合する部分となっている。従って、針付きシリンジ1においてホルダ12の先端部12Aおよび基端部12Bは、シリンジ14から露出した状態となっている。
【0038】
換言すると本実施形態では、ホルダ12の先端部12Aおよび基端部12Bがシリンジ14から露出するように針付きシリンジ1を構成することで、ホルダ12の先端部12Aおよび基端部12Bの係止による針管11の金型への固定を可能としている。そして、この結果、金型やその周辺機器を複雑化することなく、低コストで針付きシリンジ1を製造することが可能となる。
【0039】
ホルダ12の材料は、特に限定されるものではなく、各種金属や各種樹脂等の適宜の材料を採用することができる。但し、ホルダ12を金属から構成する場合には、針管11との溶接性の観点から、ホルダ12の材料は針管11と同一または同種の金属であることが好ましい。また、ホルダ12を樹脂から構成する場合には、インサート成形によるシリンジ14との接合性の観点から、ホルダ12の材料は、シリンジ14と同一または同種の樹脂であることが好ましい。
【0040】
なお、本実施形態では、ホルダ12を円筒状に構成しているが、ホルダ12は、例えばC字状、U字状またはコの字状の横断面を有するものであってもよい。また、本実施形態では、ホルダ12の外形状を円柱状に構成しているが、ホルダ12の外形状は、例えば楕円柱状、角柱状、円錐台状または角錐台状等であってもよいし、段付き部や適宜の凹凸形状を外周面に備える形状であってもよい。
【0041】
シリンジ14は、内部に薬液等を収容する部分であり、有底円筒状に構成されている。シリンジ14の先端側となる底部には、先端側に向けて突出する突出部14Aが設けられており、ホルダ付き針管13はこの突出部14Aと接合している。突出部14Aの外周には、突出部14Aの強度を確保しつつ射出成型時のヒケやボイド等の発生を防止すべく、複数のリブが設けられている。また、突出部14Aの先端側には、円筒状の嵌合部14Bが設けられている。この嵌合部14Bは、針管11を保護するためのキャップ(図示省略)と嵌合する部分である。
【0042】
ホルダ12を介して突出部14Aに接合された針管11の内部は、シリンジ14の内部と連通している。シリンジ14の基端側は、押し子(図示省略)を挿入するための開口となっている。この開口の外周には、外側に向けて張り出すリング状のフランジ14Cが設けられている。なお、シリンジ14の各部の形状は、特に限定されるものではなく、任意の形状を採用することができる。
【0043】
また、シリンジ14の材料は、特に限定されるものではないが、内部に収容された薬液等を視認可能な透明または半透明の樹脂であることが好ましい。本実施形態では、シリンジ14を環状ポリオレフィン(COP)から構成しているが、例えば環状オレフィンコポリマー(COC)またはポリプロピレン(PP)等からシリンジを構成するようにしてもよい。
【0044】
次に、針付きシリンジ1の製造方法について説明する。図2AおよびBならびに図3~5は、針付きシリンジ1の製造方法を示した概略図である。初めに、金属製のホルダ12を溶接によって針管11に装着(接合)する場合について説明する。
【0045】
第1工程では、ホルダ12を針管11に装着する。具体的には、まず図2Aに示されるように、円筒状のホルダ12内に針管11を挿入し、針管11の基端11B側の所定の位置(本実施形態では、針管11の基端11B側がホルダ12からわずかに突出する位置)にホルダ12を配置する。そして、針管11およびホルダ12を適宜の治具で固定し、ホルダ12の先端面12A1および基端面12B1にレーザ光Lを照射してホルダ12を針管11に溶接する。これにより、図2Bに示されるように、溶接箇所に溶融部12Dが形成され、針管11とホルダ12が一体となったホルダ付き針管13が得られる。
【0046】
本実施形態では、針管11が比較的小径であることから微細な溶接が可能なレーザ溶接を採用しているが、例えばアーク溶接、電子ビーム溶接またはロウ付け等、その他の溶接方法を採用するようにしてもよい。また、溶接は、針付きシリンジ1の密閉性を確保すべく、針管11の全周に亘って行うことが好ましい。
【0047】
なお、ホルダ12の外周面には、第1工程の前の予備工程において例えばブラスト処理を施し、予め粗面を形成しておくこと(凹凸形状を設けておくこと)が好ましい。ホルダ12の外周面に粗面を設けることで、表面の凹凸によりシリンジ14を構成する樹脂との接触面積が増加すると共にアンカー効果が生じるため、シリンジ14を構成する樹脂との接合性および接合強度を高めることが可能となる。この場合、粗面の表面粗さRaは、0.2μm以上であることが好ましく、0.2μm以上2.0μm以下の範囲であればより好ましい。
【0048】
この予備工程は、第1工程の前に行ってもよいし、第1工程の後、後述する第2工程の前に行ってもよい。また、粗面は、ホルダ12に対して全体的に設けるにしてもよいし、例えば中間部12Cのみ等、部分的に設けるようにしてもよい。また、例えばエッチング等、ブラスト処理以外の手法により、ホルダ12の外周面に粗面を設けるようにしてもよい。
【0049】
次に、第2工程では、図3に示されるように、シリンジ14を形成するシリンジ用金型20にホルダ付き針管13を係止させる。本実施形態では、シリンジ用金型20を横方向に開閉する横型の成形機を使用すると共に、シリンジ用金型20のうち、シリンジ14の先端側を形成する第1金型21を可動側金型とし、シリンジ14の基端側を形成する第2金型22を固定側金型としている。
【0050】
第1金型21には、嵌合部14B周辺を形成するキャビティ23と共に、針管11の針先11A側を収容する先端側針管収容部24と、ホルダ12の先端部12Aが係止される先端側ホルダ係止部24Aと、ホルダ12の先端部12Aを先端側ホルダ係止部24Aに誘導する先端側テーパ部24Bと、が設けられている。
【0051】
先端側針管収容部24は、キャビティ23側から穿たれた横断面が円形状の深穴であり、針管11の外周面との間に適宜の隙間が生じる内径に設定されている。先端側ホルダ係止部24Aは、先端側針管収容部24の入口側(キャビティ23側)を拡径して設けられており、ホルダ12が嵌合する内径、またはホルダ12の外周面との間に樹脂が流入しない程度の隙間が生じる内径に設定されている。先端側テーパ部24Bは、先端側ホルダ係止部24Aからキャビティ23側に向けて漸次拡径するように設けられている。
【0052】
第2金型22は、シリンジ14の主要部分を形成する本体部25と、シリンジ14の突出部14A周辺を形成するスライド部26と、シリンジ14を中空状に形成するコアピン27と、を備えており、これらを組み合わせることでシリンジ14の基端側を形成するキャビティ23が構成されている。また、コアピン27の先端部には、針管11の基端11B側を収容する基端側針管収容部28と、ホルダ12の基端部12Bが係止される基端側ホルダ係止部28Aと、ホルダ12の基端部12Bを基端側ホルダ係止部28Aに誘導する基端側テーパ部28Bと、が設けられている。
【0053】
基端側針管収容部28は、先端側針管収容部24と同様に、キャビティ23側から穿たれた横断面が円形状の穴であり、針管11の外周面との間に適宜の隙間が生じる内径に設定されている。同様に、基端側ホルダ係止部28Aは、基端側針管収容部28の入口側(キャビティ23側)を拡径して設けられており、ホルダ12が嵌合する内径、またはホルダ12の外周面との間に樹脂が流入しない程度の隙間が生じる内径に設定されている。また、基端側テーパ部28Bは、基端側ホルダ係止部28Aからキャビティ23側に向けて漸次拡径するように設けられている。
【0054】
具体的に第2工程では、シリンジ用金型20を開いた状態で、第1金型21の先端側針管収容部24内に針管11の針先11A側を挿入し、そのままホルダ12の先端部12Aを先端側ホルダ係止部24A内に挿入して係止させる。上述のように、先端側ホルダ係止部24Aは、ホルダ12が嵌合する内径または比較的小さい隙間が生じる内径に設定されている。また、ホルダ12の先端部12Aは、ホルダ付き針管13の軸方向における中間部分、すなわち重心の近傍に位置している。
【0055】
従って、横型の成形機であってもホルダ12の先端部12Aを先端側ホルダ係止部24A内に挿入するだけで、先端部12Aを先端側ホルダ係止部24Aに安定的に係止させることが可能となっている。また、先端側テーパ部24Bがホルダ12の先端部12Aを先端側ホルダ係止部24Aと略同芯となる位置に誘導するため、先端部12Aの先端側ホルダ係止部24A内への挿入も容易となっている。
【0056】
先端側針管収容部24の深さは、ホルダ12の先端面12A1が先端側ホルダ係止部24Aの底面24A1(段差面)に当接した状態で、針管11の針先11Aが先端側針管収容部24の底面24Cに接触しない深さに設定されている。従って、ホルダ付き針管13は、ホルダ12の先端面12A1を先端側ホルダ係止部24Aの底面24A1に当接させることで、第1金型21に対して軸方向に位置決めされるようになっている。
【0057】
また、先端側針管収容部24の内径は、先端側ホルダ係止部24Aにおいて樹脂の流入が防止されることから、針管11の外径に対して比較的大き目に設定されている。すなわち、先端側針管収容部24は、ホルダ12の先端部12Aを先端側ホルダ係止部24Aに係止させる際に、針管11の刃面等が接触し難いように構成されており、これにより本実施形態では、針管11の針先11A側に疵や変形等が生じるのを防止している。
【0058】
次に、第3工程では、第1金型21を第2金型22に向けて移動させ、図4に示されるように、第1金型21を第2金型22に当接させてキャビティ23を閉塞する(すなわち、シリンジ用金型20を閉じる)。このとき、針管11の基端11B側においてホルダ12よりも突出している部分が基端側針管収容部28内に収容されると共に、ホルダ12の基端部12Bが基端側ホルダ係止部28A内に収容されて係止される。また、ホルダ12の基端面12B1が、基端側ホルダ係止部28Aの底面28A1(段差面)に当接し、ホルダ付き針管13が第1金型21と第2金型22の間で挟持される。
【0059】
従って、第1金型21を第2金型22に当接させてキャビティ23を閉塞した状態では、ホルダ12は、軸方向における一部、具体的には先端側ホルダ係止部24Aに収容された先端部12Aおよび基端側ホルダ係止部28Aに収容された基端部12Bを除いた中間部12Cがキャビティ23内に配置されることとなる。また、ホルダ12の先端面12A1が先端側ホルダ係止部24Aの底面24A1に当接し、ホルダ12の基端面12B1が基端側ホルダ係止部28Aの底面28A1に当接することで、ホルダ付き針管13がシリンジ用金型20に対して軸方向に位置決めされることとなる。
【0060】
ホルダ12の基端部12Bは、基端側テーパ部28Bによって基端側ホルダ係止部28Aと略同芯となる位置に誘導されるため、第1金型21を移動させるだけで、基端部12Bを基端側ホルダ係止部28Aに係止させると共に、針管11の基端11B側を基端側針管収容部28内に収容することが可能となっている。
【0061】
また、基端側針管収容部28の深さは、ホルダ12の基端面12B1が基端側ホルダ係止部28Aの底面28A1に当接した状態で、針管11の基端11Bが底面28Cに接触しない深さに設定されている。そして、基端側針管収容部28の内径は、針管11の外径に対して比較的大きめに設定されている。すなわち、本実施形態では、針管11の基端11B側においても、疵や変形等が生じるのを防止している。
【0062】
次に、第4工程では、キャビティ23内に樹脂を充填し、シリンジ14をホルダ付き針管13と一体的に形成する。キャビティ23内に充填された樹脂は、キャビティ23内に配置されたホルダ12の中間部12Cの外周面を包接した状態で固化し、これによりホルダ付き針管13がシリンジ14と接合される。すなわち、シリンジ14は、ホルダ12と軸方向において部分的に接合した状態、換言すれば、ホルダ12の軸方向における一部と接合した状態で形成される。
【0063】
また、ホルダ12の先端部12Aおよび基端部12B、すなわち先端側ホルダ係止部24Aおよび基端側ホルダ係止部28A内に収容された部分は、樹脂と略接触しないため、完成した針付きシリンジ1においてシリンジ14から露出した状態となる。
【0064】
次に、第5工程では、図5に示されるように、シリンジ用金型20を開いて形成された針付きシリンジ1を離型させ、必要に応じてバリ取り等の後処理を行う。以上の手順により、針付きシリンジ1が完成する。なお、図5に示される離型時のシリンジ用金型20の状態は、必ずしも正確なものではない。
【0065】
このように、本実施形態では、予め針管11に針管11よりも大径のホルダ12を装着してホルダ付き針管13を構成し、このホルダ付き針管13における段付き部(すなわち、ホルダ12の先端部12Aおよび基端部12B)を活用して針管11をシリンジ用金型20に固定する(保持させる)ようにしているため、シリンジ用金型20およびその周辺機器の構成を複雑化することなく低コストで針付きシリンジ1を製造することが可能となっている。
【0066】
また、従来はインサート成形が困難であった30ゲージ以降の細い針管11であっても、安定的にシリンジ用金型20に固定してシリンジ14と一体的にインサート成形することが可能となっている。また、シリンジ用金型20やチャック部材等を直接針管11に接触させることなく、針管11をシリンジ用金型20に固定することができるため、針管11における疵や変形等の発生を防止することが可能となっている。
【0067】
また、針管11を直接シリンジ用金型20に固定するようにした場合、小径の深穴となる先端側針管収容部24を、針管11との隙間に樹脂が流入しない内径に高精度に加工する必要があるが、本実施形態では、比較的大径の浅穴である先端側ホルダ係止部24Aにおいて樹脂の流入を阻止することができるため、先端側針管収容部24の加工精度を落とすことが可能となっている。
【0068】
これにより、シリンジ用金型20の製造コストを低減することができる。また、先端側ホルダ係止部24Aにおいて樹脂の流入を阻止することで、先端側針管収容部24を比較的大径とすることができるため、先端側針管収容部24との接触に起因する針管の疵や変形等の発生を防止することが可能となる。さらに、先端側針管収容部24を比較的大径に構成することで、1つのシリンジ用金型20を複数サイズの針管11に対応させることが可能となる。
【0069】
また、本実施形態では、先端側ホルダ係止部24Aによって最初にホルダ付き針管13を支持するようにしていることから、インサート成形時に針管の基端側を最初に支持する従来技術と比較して、基端側針管収容部28および基端側ホルダ係止部28Aを浅く構成することが可能となっている。これにより、針付きシリンジ1の使用時にガスケットの先端面が当接しないためデッドスペースとなる窪み14Dを、従来よりも浅く構成することができる。すなわち、本実施形態の針付きシリンジ1では、薬液等の投与後にシリンジ14内に残留する薬液の量が、従来のインサート成形によるシリンジよりも少ないものとなっている。
【0070】
なお、本実施形態では、第1金型21を可動側金型とし、第2金型22を固定側金型としているが、第1金型21を固定側金型とし、第2金型22を可動側金型とするようにしてもよい。また、第2~5工程において、第1金型21および第2金型22を上下に配置する竪型の成形機を用いるようにしてもよい。この場合、第1金型21を下側に配置することで、ホルダ付き針管13を安定的に第1金型21に固定することができる。
【0071】
次に、第1工程において樹脂製のホルダ12をインサート成形によって針管11に装着(接合)する場合について説明する。図6A~Cは、インサート成形によってホルダ12を針管11に装着する方法を示した概略図である。この場合の第1工程では、ホルダ用金型30を横方向に開閉する横型の成形機を使用して、ホルダ12を針管11と一体的に形成するインサート成形を行う。
【0072】
ホルダ用金型30は、可動側金型である第3金型31と、固定側金型である第4金型32と、から構成されている。そして、第3金型31には、ホルダ12を形成するキャビティ33と、針管11の基端11B側が係止される針管係止部34が設けられている。また、第4金型32には、針管11の針先11A側を収容するホルダ用針管収容部35が設けられている。
【0073】
針管係止部34は、キャビティ33側から穿たれた横断面が円形状の穴であり、針管11が嵌合する内径、または針管11の外周面との間に樹脂が流入しない程度の隙間が生じる内径に設定されている。また、ホルダ用針管収容部35は、キャビティ33側(第3金型側)から穿たれた横断面が円形状の深穴であり、針管11の外周面との間に樹脂が流入しない程度の隙間が生じる内径に設定されている。そして、ホルダ用針管収容部35の深さは、第3金型31を第4金型32に当接させてキャビティ33を閉塞した状態で、針管11の針先11Aが底面35Aに接触しない深さに設定されている。
【0074】
具体的にこの場合の第1工程では、まず図6Aに示すように、ホルダ用金型30を開いた状態で、針管11の基端11B側を針管係止部34内に挿入して係止させる。このとき、針管11の基端11Bが針管係止部34の底面34Aに当接することで、針管11は軸方向に位置決めされる。次に、第3金型31を第4金型32に向けて移動させ、図6Bに示すように、針管11の針先11A側をホルダ用針管収容部35内に挿入しつつ、第3金型31を第4金型32に当接させてキャビティ33を閉塞する(すなわち、ホルダ用金型30を閉じる)。そして、キャビティ33内に樹脂を充填し、ホルダ12を針管11と一体的に形成する。
【0075】
キャビティ33内に充填された樹脂は、針管11を軸方向において部分的に包接した状態で固化し、これにより針管11がホルダ12と接合される。最後に、図6Cに示すように、ホルダ用金型30を開いて形成されたホルダ付き針管13を離型させ、必要に応じてバリ取り等の後処理を行う。以上の手順により、針管11へのホルダ12の装着が完了する。
【0076】
なお、針管11の外周面には、第1工程の前の予備工程において例えばブラスト処理を施し、ホルダ12を構成する樹脂と接合する部分に予め粗面を形成しておくことが好ましい。針管11の外周面に粗面を設けることで、ホルダ12を構成する樹脂との接合性接合強度を高めることができる。この場合、祖面の表面粗さRaは、0.2μm以上であることが好ましく、0.2μm以上2.0μm以下の範囲であればより好ましい。
【0077】
このように、インサート成形によって針管11にホルダ12を装着するようにしてもよい。ホルダ用金型30は、シリンジ用金型20よりも小さく且つ簡素な構成であり、インサート成形時の射出圧力や保圧条件等の成形条件も緩和されるため、シリンジ用金型20よりも要求される加工精度が低く、低コストで針管係止部34およびホルダ用針管収容部35を形成することが可能となっている。また、30ゲージ以降の細い針管11についても、インサート成形によってホルダ12を装着することが可能となっている。
【0078】
すなわち、本実施形態では、インサート成形を2段階に分けて行うことで、1回のインサート成形でシリンジ14を針管11と一体的に形成する場合よりも、低コストで針付きシリンジ1を製造することを可能としている。また、1回のインサート成形では製造が困難であった30ゲージ以降の細い針管11を備える針付きシリンジ1についても、インサート成形による製造を可能としている。
【0079】
なお、ホルダ用金型30において、第3金型31を固定側金型とし、第4金型32を可動側金型とするようにしてもよい。また、横型の成形機ではなく、第3金型31および第4金型32を上下に配置する竪型の成形機を用いるようにしてもよい。この場合、第3金型31を下側に配置することで、針管11を安定的に第3金型31に固定することができる。
【0080】
次に、針付きシリンジ1の製造方法および針付きシリンジ1の変形例について説明する。図7および8は、針付きシリンジ1の製造方法の変形例を示した概略図である。この例では、第3工程においてホルダ12の基端部12Bをコアピン27の先端部に係止させずに、ホルダ12の基端面12B1をコアピン27の先端部に設けた当接面28Dに当接させるようにしている。その他の部分は図1~6に示される例と同一なので、以下、異なる部分についてのみ説明する。
【0081】
この例では、図7および8に示されるように、コアピン27の先端部に基端側針管収容部28のみが設けられ、この基端側針管収容部28の開口(入口)の外周に円環状の当接面28Dが設けられている。そして、図7に示されるように、第3工程において第1金型21を第2金型22に当接させることでホルダ12の基端面12B1が当接面28Dに当接し、これによりホルダ付き針管13が第1金型21と第2金型22の間で挟持されるようになっている。
【0082】
本実施形態では、ホルダ12の先端部12Aを先端側ホルダ係止部24Aに係止させるようにしているため、ホルダ12の基端面12B1を当接面28Dに当接させるだけでも、ホルダ付き針管13を安定的に保持および位置決めすることが可能となっている。そして、この例では、第3工程においてホルダ12の中間部12Cと共に基端部12Bがキャビティ23内に配置されることとなる。
【0083】
第4工程では、キャビティ23内に充填された樹脂は、キャビティ23内に配置されたホルダ12の中間部12Cおよび基端部12Bを包接した状態で固化し、これによりホルダ付き針管13がシリンジ14と接合される。そして、図8に示されるように、第5工程においてシリンジ用金型20を開き、必要に応じて適宜の後処理を行うことで、この例の針付きシリンジ1が得られる。
【0084】
この例の針付きシリンジ1は、図8に示されるように、ホルダ12の中間部12Cおよび基端部12Bの外周面がシリンジ14と接合している。従って、この例の針付きシリンジ1は、ホルダ12の先端部12Aがシリンジ14から露出すると共に、ホルダ12の基端部12Bのうち基端面12B1のみがシリンジ14から露出している。
【0085】
このように、第3工程においてホルダ12の基端部12Bをコアピン27の先端部に係止させるのではなく、ホルダ12の基端面12B1をコアピン27の先端部の当接面28Dに当接させるのみとすることで、デッドスペースとなる窪み14Dをさらに浅く構成することが可能となる。すなわち、この例によれば、薬液等の投与後にシリンジ14内に残留する薬液の量をより低減することができる。
【0086】
なお、この例では、当接面28Dの外径をホルダ12の外径と略同一に設定しているが、当接面28Dの外径は、ホルダ12の外径よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。また、この例において、基端側針管収容部28の入口側(キャビティ23側)に適宜のテーパ部を設けるようにしてもよい。
【0087】
その他、図示は省略するが、図7および8に示される例と同様にコアピン27の先端部に基端側針管収容部28のみを設け、第3工程において針管11の基端11Bを基端側針管収容部28の底面28Cに当接させるようにしてもよい。この場合、針管11の基端11B側におけるホルダ12からの突出量よりも基端側針管収容部28を浅く構成し、ホルダ12の基端面12B1にも樹脂を接触させるようにすることができるため、デッドスペースとなる窪み14Dをさらに浅く構成することが可能となる。また、図7および8に示される例からさらに基端側針管収容部28を省略し、第3工程において針管11の基端11B(基端面)をコアピン27の先端面に当接させるようにしてもよい。
【0088】
また、先端側ホルダ係止部24Aは、ホルダ12の先端部12Aの外周面と周方向において部分的または断続的に当接する突起またはリブ等から構成されるものであってもよい。この場合、ホルダ12の先端面12A1との間で先端側針管収容部24内への樹脂の流入を阻止するようにすればよい。
【0089】
先端側ホルダ係止部24Aをこのように構成した場合、完成した針付きシリンジ1では、ホルダ12の先端部12Aが部分的にシリンジ14から露出することとなる。換言すれば、針付きシリンジ1は、ホルダ12の先端部12Aのうち少なくとも先端面12A1がシリンジ14から露出するものであればよい。
【0090】
同様に、基端側ホルダ係止部28Aは、ホルダ12の基端部12Bの外周面と周方向において部分的または断続的に当接する突起またはリブ等から構成されるものであってもよい。
【0091】
また、第2金型22に基端側ホルダ係止部28Aを設ける場合、シリンジ用金型20を閉じた状態において、ホルダ12の先端面12A1および基端面12B1のいずれか一方のみが先端側ホルダ係止部24Aの底面24A1または基端側ホルダ係止部28Aの底面28A1に当接するようにしてもよい。すなわち、ホルダ付き針管13のシリンジ用金型20への固定は、軸方向において所定の自由度を有するものであってもよい。
【0092】
また、ホルダ12の材質および針管11への接合方法は特に限定されるものではなく、第1工程では、例えば溶着、圧接、焼き嵌めまたはカシメ等、材質に応じた既知の他の接合方法を採用することができる。また、ホルダ12を樹脂から構成した場合においても、第2工程の前にホルダ12の外周面に粗面を形成するようにしてもよい。また、ホルダ付き針管13は、針管11の基端11B側がホルダ12から突出しないように構成されるものであってもよい。
【0093】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の針付きシリンジの製造方法および針付きシリンジは、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、針付きシリンジ1の各部の形状および配置は、本実施形態において示した形状および配置に限定されるものではなく、任意の形状および配置を採用することができる。同様に、シリンジ用金型20およびホルダ用金型30の構成は、本実施形態において示した構成に限定されるものではない。
【0094】
また、上述の実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0095】
1 針付きシリンジ
11 針管
11A 針先
11B 針管の基端
12 ホルダ
12A ホルダの先端部
12A1 ホルダの先端面
12B ホルダの基端部
12B1 ホルダの基端面
13 ホルダ付き針管
14 シリンジ
20 シリンジ用金型
21 第1金型
22 第2金型
23 シリンジ用金型のキャビティ
24 先端側針管収容部
24A 先端側ホルダ係止部
28A 基端側ホルダ係止部
30 ホルダ用金型
33 ホルダ用金型のキャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8