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特開2022-32724面格子の取付構造および面格子付きサッシ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032724
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】面格子の取付構造および面格子付きサッシ
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/01 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
E06B9/01 K
E06B9/01 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136817
(22)【出願日】2020-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】592220200
【氏名又は名称】株式会社丸忠
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】米丸 忠良
【テーマコード(参考)】
2E020
【Fターム(参考)】
2E020AB08
2E020BA03
2E020BC06
(57)【要約】
【課題】火災の発生でサッシが高温で変形することを防止する、面格子の取付構造を提供する。
【解決手段】面格子6をサッシ2に取り付けるための面格子の取付構造であって、面格子の上端部に設けられて面格子をサッシのサッシ上枠21に取り付ける上取付構造10と、面格子の下端部に設けられて面格子をサッシに対して回動自在に軸支する下取付構造15とを備え、上取付構造は、面格子の面格子上枠31に設けられた面格子上係合部36に係合する第1上係合部材40と、サッシ上枠に設けられたサッシ上係合部26に係合する第2上係合部材50と、第1上係合部材と面格子上係合部と第2上係合部材との間での連結固定を形成する第1樹脂部材60とを有し、第1樹脂部材の溶融でサッシ上係合部に対する第2上係合部材の係合が解除されることにより、面格子がサッシから離れるように回動する。
【選択図】図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面格子をサッシに取り付けるための面格子の取付構造であって、
前記面格子の上端部に設けられて前記面格子を前記サッシのサッシ上枠に取り付ける上取付構造と、
前記面格子の下端部に設けられて前記面格子を前記サッシに対して回動自在に軸支する下取付構造とを備え、
前記上取付構造は、前記面格子の面格子上枠に設けられた面格子上係合部に係合する第1上係合部材と、前記サッシ上枠に設けられたサッシ上係合部に係合する第2上係合部材と、前記第1上係合部材と前記面格子上係合部と前記第2上係合部材との間での連結固定を形成する第1樹脂部材とを有し、
前記第1樹脂部材の溶融で前記サッシ上係合部に対する前記第2上係合部材の係合が解除されることにより、前記面格子が前記サッシから離れるように回動することを特徴とする、面格子の取付構造。
【請求項2】
前記第1上係合部材および前記面格子上係合部の仮止めが、第2樹脂部材によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の取付構造。
【請求項3】
前記第1樹脂部材および前記第2樹脂部材が、ポリカーボネートからなることを特徴とする、請求項2に記載の取付構造。
【請求項4】
前記第1樹脂部材および前記第2樹脂部材が、それぞれ、第1樹脂ネジおよび第2樹脂ネジであることを特徴とする、請求項3に記載の取付構造。
【請求項5】
前記第1上係合部材を前記面格子上係合部に沿って移動させる付勢部材を有し、
前記第1上係合部材の移動によって前記第1樹脂部材および前記第2樹脂部材が溶断されることを特徴とする、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の取付構造。
【請求項6】
前記付勢部材が、引張コイルバネであることを特徴とする、請求項5に記載の取付構造。
【請求項7】
前記サッシに対する前記面格子の回動を規制する回動規制構造を有することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の取付構造。
【請求項8】
サッシと、
前記サッシに取り付けられる面格子と、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の取付構造とを備えることを特徴とする、面格子付きサッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、面格子の取付構造および面格子付きサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、面格子をサッシに取り付けるための取付構造が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の取付構造では、面格子をケンドル方式などによって窓枠に嵌め込み、面格子を固定金具でサッシに固定することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-219605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、面格子が固定金具でサッシに密着して固定されているため、火災の発生により、火熱が窓の防火設備に加えられた場合、サッシが高温で変形するおそれがある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、火災の発生でサッシが高温で変形することを防止する、面格子の取付構造および面格子付きサッシを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の一態様に係る面格子の取付構造は、
面格子をサッシに取り付けるための面格子の取付構造であって、
前記面格子の上端部に設けられて前記面格子を前記サッシのサッシ上枠に取り付ける上取付構造と、
前記面格子の下端部に設けられて前記面格子を前記サッシに対して回動自在に軸支する下取付構造とを備え、
前記上取付構造は、前記面格子の面格子上枠に設けられた面格子上係合部に係合する第1上係合部材と、前記サッシ上枠に設けられたサッシ上係合部に係合する第2上係合部材と、前記第1上係合部材と前記面格子上係合部と前記第2上係合部材との間での連結固定を形成する第1樹脂部材とを有し、
前記第1樹脂部材の溶融で前記サッシ上係合部に対する前記第2上係合部材の係合が解除されることにより、前記面格子が前記サッシから離れるように回動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、火災の発生によって火熱が窓の防火設備に加えられた場合、第1樹脂部材の溶融で係合が解除されることにより、面格子がサッシから離れるように回動するので、サッシが高温で変形することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る面格子付きサッシの斜視図である。
図2図1の面格子付きサッシをサッシ側から見たときの斜視図である。
図3】面格子の取付構造における上取付構造を示す斜視図である。
図4図3の上取付構造を別の角度から見たときの斜視図である。
図5図4のV-V線に沿った断面図である。
図6】面格子の取付構造における下取付構造を示す斜視図である。
図7】上取付構造の第1上係合部材を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)のVII-VII線に沿った断面図、(C)は側面図である。
図8】上取付構造の第2上係合部材を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9】上取付構造のバネ掛け部材を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)のIV-IV線に沿った断面図である。
図10】面格子が開位置にあるときの面格子付きサッシの斜視図である。
図11図10の面格子付きサッシをサッシ側から見たときの斜視図である。
図12図10の面格子付きサッシにおける回動規制構造を示す斜視図である。
図13図10の面格子付きサッシにおける下取付構造を示す斜視図である。
図14】面格子が閉位置にあるときの上取付構造を説明する図である。
図15図14の上取付構造を別の角度から見たときの図である。
図16図15のXVI-XVI線に沿った断面図である。
図17】面格子が開位置にあるときの上取付構造を説明する図である。
図18図17の上取付構造を別の角度から見たときの図である。
図19図17の上取付構造をさらに別の角度から見たときの図である。
図20】面格子が閉位置にあるときの面格子付きサッシの断面図である。
図21】火災の発生によって面格子が開位置になったときの面格子付きサッシの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、この発明に係る面格子6の取付構造および面格子付きサッシ1の実施の形態を説明する。
【0011】
〔実施形態〕
図1から図19を参照しながら、一実施形態に係る面格子6の取付構造および面格子付きサッシ1を説明する。図1は、一実施形態に係る面格子付きサッシ1の斜視図である。図2は、図1の面格子付きサッシ1をサッシ2側から見たときの斜視図である。図3は、面格子6の取付構造における上取付構造10を示す斜視図である。図4は、図3の上取付構造10を別の角度から見たときの斜視図である。図5は、図4のV-V線に沿った断面図である。図6は、面格子6の取付構造における下取付構造15を示す斜視図である。図7は、上取付構造10の第1上係合部材40を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)のVII-VII線に沿った断面図、(C)は側面図である。図8は、上取付構造10の第2上係合部材50を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)のVIII-VIII線に沿った断面図である。図9は、上取付構造10のバネ掛け部材66を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)のIV-IV線に沿った断面図である。図10は、面格子6が開位置にあるときの面格子付きサッシ1の斜視図である。図11は、図10の面格子付きサッシ1をサッシ2側から見たときの斜視図である。図12は、図10の面格子付きサッシ1における回動規制構造70を示す斜視図である。図13は、図10の面格子付きサッシ1における下取付構造15を示す斜視図である。図14は、面格子6が閉位置にあるときの上取付構造10を説明する図である。図15は、図14の上取付構造10を別の角度から見たときの図である。図16は、図15のXVI-XVI線に沿った断面図である。図17は、面格子6が開位置にあるときの上取付構造10を説明する図である。図18は、図17の上取付構造10を別の角度から見たときの図である。図19は、図17の上取付構造10をさらに別の角度から見たときの図である。
【0012】
図1および図2に示すように、面格子付きサッシ1は、サッシ2と、面格子6とを備える。サッシ2は、矩形形状をしたサッシ枠体20を有する。サッシ枠体20は、サッシ上枠21と、サッシ横枠22と、サッシ下枠23とを有する。サッシ枠体20は、住宅などの建造物に設けられた通風用の開口に固定されて使用される。使用時におけるサッシ2は、鉛直方向に立設状態で通風用の開口などに固定される。サッシ2は、防火設備として機能しており、例えば、2枚の窓を水平方向にスライド可能に収容する。
【0013】
面格子6がサッシ2に取り付けられるが、面格子6の取付構造に関する詳細な説明は、後述する。面格子6は、矩形形状をした面格子枠体30を有する。面格子枠体30は、面格子上枠31と、面格子横枠32と、面格子下枠33とを有する。面格子6は、複数のルーバー7を開閉可能に支持する防犯用の部材である。図2に示すように、面格子6の上端部では、例えば、面格子6を正面から見て、右側と、左側と、略中央部との三箇所において上取付構造10が設けられている。
【0014】
図3から図5および図7から図9を参照しながら、面格子6の取付構造における上取付構造10を説明する。図3から図5に図示する上取付構造10は、面格子6を正面から見て、左側に位置するものである。なお、上取付構造10を構成する構成要素や部材は、第1樹脂ネジ60および第2樹脂ネジ69を除いて、耐熱性を有する金属材料(例えばステンレス)からなる。
【0015】
上取付構造10は、面格子6の上端部に設けられる。上取付構造10は、面格子6をサッシ2のサッシ上枠21に取り付けるために設けられている。上取付構造10は、第1上係合部材40と、第2上係合部材50と、第1樹脂ネジ60とを有する。第1上係合部材40は、面格子6の面格子上枠31に設けられた面格子上係合部36に係合する。第2上係合部材50は、サッシ2のサッシ上枠21に設けられたサッシ上係合部26に係合する。第1樹脂ネジ60は、第1上係合部材40と面格子上係合部36と第2上係合部材50との間での連結固定を形成する第1樹脂部材として働く。これにより、容易に且つ確実な取り付けを可能にする。
【0016】
第1上係合部材40は、図7に示すように、上から見たときにL字状に屈曲した板状体であり、第1基部41と、第1曲がり部43とを有する。第1基部41は、上下方向且つ左右方向に延在する。第1基部41には、例えば、3つのネジ穴45が長手方向に並んで形成されている。第1上係合部材40における3つのネジ穴45は、面格子上係合部36における3つの挿通穴65(図12に図示)に対応する。第1曲がり部43は、上下方向且つ前後方向に延在する。第1曲がり部43には、例えば、1つの引掛穴48が形成されている。第1上係合部材40は、収容部39の中に収容される。収容部39は、面格子上枠31の上端部に形成されて、面格子上係合部36によって画定される空間である。
【0017】
第2上係合部材50は、図8に示すように、横から見たときにクランク状に屈曲した板状体であり、第2基部51と、第2曲がり部52と、第2係合部53とを有する。第2基部51は、上下方向且つ左右方向に延在する。第2基部51には、例えば、2つの貫通した取付穴55が長手方向に並んで形成されている。取付穴55は、例えば長穴である。第2上係合部材50における2つの取付穴55は、第1上係合部材40における3つのネジ穴45のうち、バネ掛け部材66の側に位置する2つのネジ穴に対応する。2つの取付穴55は、第1樹脂ネジ60による連結固定に使用される。第1上係合部材40における3つのネジ穴45のうち、バネ掛け部材66の反対側に位置する1つのネジ穴は、後述する第2樹脂ネジ69による仮止めに使用される。第2曲がり部52は、水平方向に延在する。第2係合部53は、例えば、サッシ2と対面する側にせり出すように上下方向且つ左右方向に延在する。
【0018】
第1樹脂部材60として働く第1樹脂ネジ60は、雄ネジであって、ネジ部61を有する。第1樹脂ネジ60のネジ部61は、第2上係合部材50の取付穴55と面格子上係合部36の挿通穴65(図12に図示)とに挿通されるとともに、第1上係合部材40のネジ穴45と螺合する。図5に示すように、第1上係合部材40および第2上係合部材50で面格子上係合部36を挟持した状態で第1樹脂ネジ60を締め付けることにより、第2上係合部材50が、面格子6の面格子上枠31に設けられた面格子上係合部36に連結固定される。第2上係合部材50が第1樹脂ネジ60で面格子上係合部36に連結固定されるとき、第2係合部53は、第1上係合部材40よりも上方に、すなわち面格子上枠31よりも上方に、突出する。第2上係合部材50の第2係合部53は、サッシ上枠21のサッシ上係合部26に係合するように構成されている。第1樹脂ネジ60が軟化して溶融すると、第2係合部53およびサッシ上係合部26の間での係合が解除されるので、面格子6が移動可能にすなわち回動可能になる。
【0019】
第1樹脂ネジ60は、熱可塑性樹脂から構成される。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリカーボネートであり、例えば、180℃以上220℃以下の融点を有する。ポリカーボネートは、適度な機械的強度および融点を有するので、取付性および防火性を満たすことができる。
【0020】
第1樹脂ネジ60が熱可塑性樹脂から構成されることにより、面格子付きサッシ1を有する建物内部で火災が発生したときに、建物内部からの熱で第1樹脂ネジ60が軟化して溶融する。これにより、サッシ上係合部26に対する第2上係合部材50の係合が解除されるので、面格子6がサッシ2から離れる方向に移動可能にすなわち回動可能になる。面格子6がサッシ2から離れるように、移動するすなわち回動することで、面格子6による閉鎖空間が開放され、建物内部の熱を外部に逃がすことができる。面格子付きサッシ1であっても、サッシ2に対して防火上の悪影響を与えないようにすることができ、サッシ2の遮炎性能を維持することができる。詳細は後述する。
【0021】
図14から図16に示すように、上取付構造10は、さらに、付勢部材62を有する。
【0022】
付勢部材62は、例えば、第1上係合部材40を面格子上係合部36に沿って左右方向に付勢状態で移動させる引張コイルバネ62である。これにより、上取付構造10を面格子6の右側上端部や左側上端部に配設でき、上取付構造10の係合が安定する。引張コイルバネ62の一側のフック64が、第1上係合部材40の引掛穴48に引っ掛けられている。引張コイルバネ62の他側のフック64が、面格子上枠31に取り付けられたバネ掛け部材66の引掛部68に引っ掛けられている。引張コイルバネ62は、自然長よりも長く引き伸ばされた状態で、バネ掛け部材66と第1上係合部材40との間で保持されている。引張コイルバネ62は、第1上係合部材40をバネ掛け部材66に近付ける方向に付勢する。
【0023】
製品を出荷するときには、引張コイルバネ62の引き伸ばし状態を保持するために、第1上係合部材40が、第2樹脂ネジ69によって面格子上係合部36に仮止めされる。すなわち、第1上係合部材40と第2上係合部材50と面格子上係合部36との間での連結固定を形成する前に、第1上係合部材40および面格子上係合部36の仮止めが、第2樹脂ネジ69によって行われる。これにより、容易に且つ確実な取り付けを可能にする。言い換えると、第2樹脂ネジ69は、第1上係合部材40の仮止めに使用され、第2樹脂部材として働く。これにより、図16のように、第1樹脂ネジ60を用いて第2上係合部材50をサッシ上係合部26に対して係合させる係合作業を現場で容易に行うことができる。
【0024】
図4図5および図16に示すように、第1樹脂ネジ60を用いて、第1上係合部材40と第2上係合部材50と面格子上係合部36との間での連結固定が形成される。第2樹脂ネジ69によって第1上係合部材40が面格子上係合部36に仮止めされた状態で、サッシ2の側から、第2上係合部材50をサッシ上係合部26に係合させ、第1樹脂ネジ60で第2上係合部材50を第1上係合部材40に固定する。これにより、面格子6をサッシ2のサッシ上枠21に取り付ける上取付構造10が完成する。このような上取付構造10は、面格子6が閉位置にあるときの上取付構造10に対応する。
【0025】
したがって、上記上取付構造10により、面格子6がサッシ2のサッシ上枠21に取り付けられる。また、上記上取付構造10によれば、第1上係合部材40および第2上係合部材50が面格子上係合部36に固定されるのに対して、第2上係合部材50がサッシ上係合部26に係合するので、サッシ2にダメージを与えることなく、上取付構造10を面格子付きサッシ1に配設できる。
【0026】
第2樹脂部材として働く第2樹脂ネジ69は、第1樹脂ネジ60と同じ熱可塑性樹脂から構成される。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリカーボネートであり、例えば、180℃以上220℃以下の融点を有する。ポリカーボネートは、適度な機械的強度および融点を有するので、取付性および防火性を満たすことができる。
【0027】
第2樹脂ネジ69が、第1樹脂ネジ60と同じ熱可塑性樹脂から構成されることにより、面格子付きサッシ1を有する建物内部で火災が発生したときに、建物内部からの熱で第2樹脂ネジ69が軟化して溶融する。これにより、面格子上係合部36に対する第1上係合部材40の仮止めが解除される。引張コイルバネ62により、第1上係合部材40が面格子上係合部36に沿って左右方向にスライド移動することによって、第1樹脂ネジ60および第2樹脂ネジ69が溶断される。これにより、第1樹脂ネジ60および第2樹脂ネジ69を確実に溶断できる。
【0028】
図17および図18を参照しながら、面格子6が開位置にあるときの上取付構造10について説明する。
【0029】
火災が発生すると、火熱によって第1樹脂ネジ60および第2樹脂ネジ69が軟化して溶融する。このとき、引張コイルバネ62によって、第1上係合部材40が面格子上係合部36に沿ってバネ掛け部材66の方にスライド移動する。第1上係合部材40のスライド移動によって、第1樹脂ネジ60および第2樹脂ネジ69が、確実に溶断される。そして、第1樹脂ネジ60の溶融でサッシ上係合部26に対する第2上係合部材50の係合が解除される。係合が解除された第2上係合部材50は、落下する。
【0030】
次に、図6および図13を参照しながら、面格子6の取付構造における下取付構造15について説明する。なお、下取付構造15を構成する構成要素や部材は、耐熱性を有する金属材料(例えばステンレス)からなる。
【0031】
面格子6の下端部において、面格子6を正面から見て、右側のコーナー部と、左側のコーナー部との二箇所に下取付構造15が設けられている。これにより、下取付構造15は、面格子6をサッシ2に対して回動自在に軸支する。下取付構造15は、第1軸支部材80と、第2軸支部材90とを有する。
【0032】
第1軸支部材80は、横から見たときにL字状に屈曲した板状体であり、第1軸支基部82と、第1軸支曲がり部83とを有する。第1軸支基部82は、前後方向且つ左右方向に延在する。第1軸支基部82には、例えば、2つの取付穴(図示しない)が長手方向に並んで形成されている。第1軸支基部82は、下固定ネジ85で面格子下枠33に固定される。第1軸支曲がり部83は、前後方向且つ上下方向に延在する。第1軸支曲がり部83は、長円形状の軸支穴86を有する。
【0033】
第2軸支部材90は、上から見たときにL字状に屈曲した板状体であり、第2軸支基部92と、第2軸支曲がり部94とを有する。第2軸支基部92は、前後方向且つ上下方向に延在する。第2軸支基部92は、第1軸支曲がり部83に当接する。第2軸支基部92には、軸支ピン87が立設されている。軸支ピン87は、軸支穴86に挿通される。第2軸支曲がり部94は、左右方向且つ上下方向に延在する。第2軸支曲がり部94は、サッシ横枠22に設けられるサッシ下係合部27に係合する。
【0034】
したがって、上記下取付構造15により、面格子6がサッシ2に対して回動自在に軸支される。また、上記下取付構造15によれば、第1軸支部材80が面格子下枠33に固定されるのに対して、第2軸支部材90がサッシ横枠22のサッシ下係合部27に係合するので、サッシ2にダメージを与えることなく、下取付構造15を面格子付きサッシ1に配設できる。
【0035】
図1図10図11および図12を参照しながら、面格子6の取付構造における回動規制構造70について説明する。なお、回動規制構造70を構成する構成要素や部材は、耐熱性を有する金属材料(例えばステンレス)からなる。
【0036】
面格子6を正面から見て、面格子6の左側面上部および右側面上部の二箇所に回動規制構造70が設けられている。これにより、面格子6の回動が規制されるとともに、面格子6が支持される。回動規制構造70は、サッシ側ブラケット71と、サッシ側アーム72と、面格子側アーム75とを有する。
【0037】
サッシ側ブラケット71は、U字状に屈曲した板状体であり、サッシ2のサッシ横枠22の辺を挟んで係合するように構成される。サッシ側ブラケット71は、前後方向且つ上下方向に延在する。サッシ側ブラケット71には、サッシ側リンクピン74が立設されている。
【0038】
サッシ側アーム72は、サッシ2の側において、長円形状のサッシ側リンク穴73を有する。サッシ側リンクピン74は、サッシ側リンク穴73に挿通される。サッシ側アーム72は、サッシ側ブラケット71に対して回動自在に支持される。サッシ側アーム72は、面格子6の側において、上リンクピン78を有する。
【0039】
面格子側アーム75は、サッシ2の側において、長円形状の面格子側リンク穴79を有する。上リンクピン78は、面格子側リンク穴79に挿通される。面格子側アーム75は、面格子6の側において、上リンク穴を有する。面格子横枠32に立設された面格子側リンクピン76は、上リンク穴に挿通される。面格子側アーム75は、面格子横枠32に対して回動自在に支持される。
【0040】
したがって、上記回動規制構造70により、面格子6の回動が規制される。また、上記回動規制構造70によれば、面格子側アーム75が面格子横枠32に回動自在に支持されるのに対して、サッシ側ブラケット71がサッシ横枠22の辺に係合するので、サッシ2にダメージを与えることなく、回動規制構造70を面格子付きサッシ1に配設できる。
【0041】
次に、図14から図21を参照しながら、面格子6が閉位置にあるときから、火災の発生によって面格子6が開位置に回動するときの状態変化を説明する。
【0042】
図14から図16、および、図20は、面格子6が閉位置にあるときを示している。2つの第1樹脂ネジ60によって第1上係合部材40が面格子上係合部36および第2上係合部材50に連結固定される。それとともに、1つの第2樹脂ネジ69によって第1上係合部材40が面格子上係合部36に仮止めされている。第1上係合部材40は、引き伸ばし状態にある引張コイルバネ62により、バネ掛け部材66に近づく方向に付勢されている。そして、図16に示すように、第2上係合部材50の第2係合部53が、サッシ上枠21のサッシ上係合部26に係合する上取付構造10により、面格子6がサッシ2のサッシ上枠21に取り付けられる。
【0043】
図17から図19、および、図21は、面格子6が開位置にあるときを示している。面格子付きサッシ1を有する建物内部で火災が発生したときに、建物内部からの熱で第1樹脂ネジ60および第2樹脂ネジ69が軟化して溶融する。このとき、引張コイルバネ62の付勢力で、第1上係合部材40が、図18に示す矢印の方向にスライド移動することにより、第1樹脂ネジ60および第2樹脂ネジ69が、確実に溶断される。第1樹脂ネジ60および第2樹脂ネジ69の溶断により、第1上係合部材40および第2上係合部材50が分離される。分離された第2上係合部材50は、図19に示すように、例えば落下する。
【0044】
第1上係合部材40および第2上係合部材50が分離することにより、サッシ上係合部26に対する第2上係合部材50の係合が解除される。そして、図21に示すように、下取付構造15により、面格子6がサッシ2から離れる方向に回動するが、回動規制構造70により、面格子6の回動が規制される。面格子6がサッシ2から離れるように回動することで、面格子6による閉鎖空間が開放され、建物内部の熱を外部に逃がすことができる。
【0045】
このように、面格子付きサッシ1であっても、サッシ2に対して防火上の悪影響を与えないようにすることができ、サッシ2の遮炎性能を維持することができる。また、面格子6が開いた状態でサッシ2に係止しているので、面格子6がサッシ2から不用意に脱落することを防止できる。
【0046】
したがって、上述した面格子6の取付構造によれば、火災の発生によって火熱が窓の防火設備に加えられた場合、第1樹脂ネジ60の溶融で係合が解除されることにより、面格子6がサッシ2から離れるように回動するので、サッシ2が高温で変形することを防止できる。
【0047】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0048】
面格子6の上端部に設けられる上取付構造10の個数や配置、第1樹脂ネジ60および第2樹脂ネジ69の個数や配置は、それぞれ、サッシ2の大きさに応じて適宜に決められる。
【0049】
回動規制構造70は、面格子6の回動を規制する長さを有する金属製のチェーンあるいはケーブルワイヤーとすることもできる。
【0050】
第2係合部53をサッシ上係合部26に係合させて面格子6をサッシ2のサッシ上枠21に取り付けた後は、仮止め用に使用した第2樹脂ネジ69を取り除くようにしてもよい。
【0051】
第1樹脂部材60および第2樹脂部材69として、それぞれ、第1樹脂ネジ60および第2樹脂ネジ69を例示したが、樹脂製のクリップやプッシュリベットなどを用いることもできる。
【0052】
この発明および実施形態をまとめると、次のようになる。
【0053】
この発明の一態様に係る面格子6の取付構造は、
面格子6をサッシ2に取り付けるための面格子6の取付構造であって、
前記面格子6の上端部に設けられて前記面格子6を前記サッシ2のサッシ上枠21に取り付ける上取付構造10と、
前記面格子6の下端部に設けられて前記面格子6を前記サッシ2に対して回動自在に軸支する下取付構造15とを備え、
前記上取付構造10は、前記面格子6の面格子上枠31に設けられた面格子上係合部36に係合する第1上係合部材40と、前記サッシ上枠21に設けられたサッシ上係合部26に係合する第2上係合部材50と、前記第1上係合部材40と前記面格子上係合部36と前記第2上係合部材50との間での連結固定を形成する第1樹脂部材60とを有し、
前記第1樹脂部材60の溶融で前記サッシ上係合部26に対する前記第2上係合部材50の係合が解除されることにより、前記面格子6が前記サッシ2から離れるように回動することを特徴とする。
【0054】
上記構成によれば、火災の発生によって火熱が窓の防火設備に加えられた場合、第1樹脂部材60の溶融で係合が解除されることにより、面格子6がサッシ2から離れるように回動するので、サッシ2が高温で変形することを防止できる。
【0055】
また、一実施形態の面格子6の取付構造では、
前記第1上係合部材40および前記面格子上係合部36の仮止めが、第2樹脂部材69によって行われる。
【0056】
上記実施形態によれば、第1樹脂ネジ60を用いて第2上係合部材50をサッシ上係合部26に対して係合させる係合作業を現場で容易に行うことができる。
【0057】
また、一実施形態の面格子6の取付構造では、
前記第1樹脂部材60および前記第2樹脂部材69が、ポリカーボネートからなる。
【0058】
上記実施形態によれば、ポリカーボネートが適度な機械的強度および融点を有するので、取付性および防火性を満たすことができる。
【0059】
また、一実施形態の面格子6の取付構造では、
前記第1樹脂部材60および前記第2樹脂部材69が、それぞれ、第1樹脂ネジ60および第2樹脂ネジ69である。
【0060】
上記実施形態によれば、容易に且つ確実な取り付けを可能にする。
【0061】
また、一実施形態の面格子6の取付構造では、
前記第1上係合部材40を前記面格子上係合部36に沿って移動させる付勢部材62を有し、
前記第1上係合部材40の移動によって前記第1樹脂部材60および前記第2樹脂部材69が溶断される。
【0062】
上記実施形態によれば、第1樹脂ネジ60および第2樹脂ネジ69が、確実に溶断される。
【0063】
また、一実施形態の面格子6の取付構造では、
前記付勢部材62が、引張コイルバネ62である。
【0064】
上記実施形態によれば、上取付構造10を面格子6の右側上端部や左側上端部に配設でき、上取付構造10の係合が安定する。
【0065】
また、一実施形態の面格子6の取付構造では、
前記サッシ2に対する前記面格子6の回動を規制する回動規制構造70を有する。
【0066】
上記実施形態によれば、面格子6の回動が規制されるとともに、面格子6が支持される。
【0067】
この発明の別の局面に係る面格子付きサッシ1は、
サッシ2と、
前記サッシ2に取り付けられる面格子6と、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の取付構造とを備えることを特徴とする。
【0068】
上記実施形態によれば、火災の発生によって火熱が窓の防火設備に加えられた場合、第1樹脂部材60の溶融で係合が解除されることにより、面格子6がサッシ2から離れるように回動するので、サッシ2が高温で変形することを防止できる。
【符号の説明】
【0069】
1…面格子付きサッシ
2…サッシ
6…面格子
7…ルーバー
10…上取付構造
15…下取付構造
20…サッシ枠体
21…サッシ上枠
22…サッシ横枠
23…サッシ下枠
26…サッシ上係合部
27…サッシ下係合部
30…面格子枠体
31…面格子上枠
32…面格子横枠
33…面格子下枠
36…面格子上係合部
39…収容部
40…第1上係合部材
41…第1基部
43…第1曲がり部
45…ネジ穴
48…引掛穴
50…第2上係合部材
51…第2基部
52…第2曲がり部
53…第2係合部
55…取付穴
60…第1樹脂ネジ(第1樹脂部材)
61…ネジ部
62…引張コイルバネ(付勢部材)
64…フック
65…挿通穴
66…バネ掛け部材
68…引掛部
69…第2樹脂ネジ(第2樹脂部材)
70…回動規制構造
71…サッシ側ブラケット
72…サッシ側アーム
73…サッシ側リンク穴
74…サッシ側リンクピン
75…面格子側アーム
76…面格子側リンクピン
78…上リンクピン
79…面格子側リンク穴
80…第1軸支部材
82…第1軸支基部
83…第1軸支曲がり部
85…下固定ネジ
86…軸支穴
87…軸支ピン
90…第2軸支部材
92…第2軸支基部
94…第2軸支曲がり部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図19
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図21