(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032729
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】積層体、建造物用フィルム、膜構造物、建造物、膜構造物の建築方法及び膜構造物の補修方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20220217BHJP
B32B 43/00 20060101ALI20220217BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20220217BHJP
E04B 1/34 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B32B43/00
B32B7/06
E04B1/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136836
(22)【出願日】2020-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】安本 憲朗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 敬司
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK07C
4F100AK17A
4F100AK18A
4F100AK25B
4F100AK52D
4F100AK62C
4F100AK66C
4F100AL01A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB05B
4F100CB05D
4F100EJ91C
4F100EJ91E
4F100EJ94
4F100GB07
4F100JK06
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】エチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂系フィルムに傷が発生するのを防止する。
【解決手段】エチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂系フィルム(A)の一方又は両方の面に、保護フィルム(B)が粘着層(C)を介して剥離可能に貼合された積層体であって、前記フッ素樹脂系フィルム(A)から前記粘着層(C)と共に前記保護フィルム(B)を23℃、相対湿度50%の環境下、つかみ移動速度300mm/minで180°剥離する際の平均剥離強度が0.05N/25mm以上0.50N/25mm以下である、積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂系フィルム(A)の一方又は両方の面に、保護フィルム(B)が粘着層(C)を介して剥離可能に貼合された積層体であって、前記フッ素樹脂系フィルム(A)から前記粘着層(C)と共に前記保護フィルム(B)を23℃、相対湿度50%の環境下、つかみ移動速度300mm/minで180°剥離する際の平均剥離強度が0.05N/25mm以上0.50N/25mm以下である、積層体。
【請求項2】
前記フッ素樹脂系フィルム(A)が、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体及びエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体の何れか一方又は両方を含有するフィルムである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記粘着層(C)の厚みが1~20μmであり、前記保護フィルム(B)の厚みが20~80μmである請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記フッ素樹脂系フィルム(A)の厚みが50μm以上500μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記保護フィルム(B)がポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の何れか一方又は両方を含有し、前記粘着層(C)が(メタ)アクリル系粘着剤を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
ロール状に巻き取られた、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体から、前記保護フィルム(B)を剥離してなる、建造物用フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の建造物用フィルムを備える、膜構造物。
【請求項9】
請求項8に記載の膜構造物を備える、建造物。
【請求項10】
フッ素樹脂系フィルム(A)の一方の面に粘着層(C)を介して保護フィルム(B)が貼合され、他方の面にシリコーン系粘着層(E)を設けた、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
シリコーン系粘着層(E)のフッ素樹脂系フィルム(A)と接していない面にセパレータ(F)が貼合された、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
テープ状である請求項10又は11に記載の積層体。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体を複数枚用意する工程と、
複数枚の前記積層体のそれぞれの端部において、前記保護フィルム(B)を部分的に剥離し、前記フッ素樹脂系フィルム(A)を露出する工程と、
前記積層体のそれぞれの端部において露出した前記フッ素樹脂系フィルム(A)同士を重ね合わせて熱融着することにより、複数枚の前記積層体が接合された接合体を形成する工程と、
前記接合体を躯体に展張する工程と、
未剥離の前記保護フィルム(B)を前記接合体から剥離する工程と、
を含む膜構造物の建築方法。
【請求項14】
請求項10~12のいずれか1項に記載の積層体を用意する工程と、
前記セパレータ(F)が貼合されている場合、前記積層体から前記セパレータ(F)を剥離する工程と、
前記積層体を、シリコーン系粘着層(E)が貼合面となるように、膜構造物の補修すべき膜部分に貼合する工程と、
前記膜部分に貼合された前記積層体から前記保護フィルム(B)を剥離する工程と、
を含む膜構造物の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂系フィルムに関する。また、本発明は当該フッ素樹脂系フィルムを用いた建造物用フィルム、膜構造物、建造物、膜構造物の建築方法及び膜構造物の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(以下、「ECTFE」ともいう。)及びエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(以下、「ETFE」ともいう。)といったエチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂系フィルムは、耐候性、耐薬品性、難燃性及び溶融成形性を生かし、半導体製造機器の構造部品、各種耐蝕ライニング材等に使用されている。また、ECTFE等は押出成形が可能であり、フィルム成形も可能であることから、表面保護フィルム、太陽電池用部材フィルム、離型フィルム、膜構造物用フィルム等の各種用途に使用されている。
【0003】
ECTFE等のエチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂系フィルムに関連する先行技術文献としては以下が例示される。
【0004】
国際公開第2017/033701号(特許文献1)においては、透明性及び外観に優れたECTFEを含む樹脂フィルムの製造方法を提供することを目的とした発明が記載されている。当該文献には、ECTFEを含む樹脂組成物から樹脂フィルムを作製する際に、ブレーカープレートの開口率、スクリーンメッシュの目開き、Tダイ吐出口での樹脂温度とTダイ吐出口から吐出される樹脂を受ける冷却ロールの表面温度との差を特定の範囲にすることにより、樹脂組成物の温度上昇や異物混入を防ぎつつ、ECTFEの結晶化を抑制可能であることが記載されている。
【0005】
また、特許文献1では、ECTFEを含む樹脂フィルムを基材の表面保護フィルムとして使用することも記載されている。この場合には、樹脂フィルムの接着性の付与を目的とした表面改質を行った後に、表面改質後の樹脂フィルムの表面に接着樹脂を塗工し、基材に積層することが記載されている。
【0006】
国際公開第2018/066584号(特許文献2)においては、優れた透明性を維持でき、黄変を生じにくいECTFE樹脂組成物を提供することを目的として、ビスフェノール系酸化防止剤を添加することが提案されている。当該ECTFE樹脂組成物はシート状に成形可能であり、当該シートは膜構造物に好適に使用することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2017/033701号
【特許文献2】国際公開第2018/066584号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、ECTFE等のエチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂系フィルムは膜構造物へ適用可能であるが、その実用性に関しては十分な検討がなされていない。例えば、膜構造物はスポーツ施設や商業施設といった比較的大型の建造物への適用されることも多いところ、施工時に傷つきやすいという問題があった。例えば、フィルムを広げるときに発生する傷、フィルムの上を人が歩くことにより発生する傷、及び、複数枚のフィルムを接合するときに発生する傷、複数枚のフィルムを接合したことで大面積化したフィルムを運搬用に丸めるときに発生する傷等、様々な場面で傷が生じており、取り扱いに注意を要していた。傷の発生を防止するために施工を慎重に行う結果、施工時間が長期化するといった問題も懸念される。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一実施形態において、エチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂系フィルムに傷が発生するのを防止することを課題とする。また、本発明は別の一実施形態において、当該フッ素樹脂系フィルムを用いた建造物用フィルム、膜構造物、建造物、膜構造物の建築方法及び膜構造物の補修方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するべく種々の研究を行った結果、エチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂系フィルムの一方又は両方の面に、粘着層と共に剥離可能な保護フィルムを貼合することが有効であることを見出し、以下に例示される本発明に至った。
【0011】
[1]
エチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂系フィルム(A)の一方又は両方の面に、保護フィルム(B)が粘着層(C)を介して剥離可能に貼合された積層体であって、前記フッ素樹脂系フィルム(A)から前記粘着層(C)と共に前記保護フィルム(B)を23℃、相対湿度50%の環境下、つかみ移動速度300mm/minで180°剥離する際の平均剥離強度が0.05N/25mm以上0.50N/25mm以下である、積層体。
[2]
前記フッ素樹脂系フィルム(A)が、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体及びエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体の何れか一方又は両方を含有するフィルムである、[1]に記載の積層体。
[3]
前記粘着層(C)の厚みが1~20μmであり、前記保護フィルム(B)の厚みが20~80μmである[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]
前記フッ素樹脂系フィルム(A)の厚みが50μm以上500μm以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の積層体。
[5]
前記保護フィルム(B)がポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の何れか一方又は両方を含有し、前記粘着層(C)が(メタ)アクリル系粘着剤を含有する、[1]~[4]のいずれか1項に記載の積層体。
[6]
ロール状に巻き取られた、[1]~[5]のいずれか1項に記載の積層体。
[7]
[1]~[6]のいずれか1項に記載の積層体から、前記保護フィルム(B)を剥離してなる、建造物用フィルム。
[8]
[7]に記載の建造物用フィルムを備える、膜構造物。
[9]
[8]に記載の膜構造物を備える、建造物。
[10]
フッ素樹脂系フィルム(A)の一方の面に粘着層(C)を介して保護フィルム(B)が貼合され、他方の面にシリコーン系粘着層(E)を設けた、[1]~[6]のいずれか1項に記載の積層体。
[11]
シリコーン系粘着層(E)のフッ素樹脂系フィルム(A)と接していない面にセパレータ(F)が貼合された、[10]に記載の積層体。
[12]
テープ状である[10]~[12]のいずれか1項に記載の積層体。
[13]
[1]~[6]のいずれか1項に記載の積層体を複数枚用意する工程と、
複数枚の前記積層体のそれぞれの端部において、前記保護フィルム(B)を部分的に剥離し、前記フッ素樹脂系フィルム(A)を露出する工程と、
前記積層体のそれぞれの端部において露出した前記フッ素樹脂系フィルム(A)同士を重ね合わせて熱融着することにより、複数枚の前記積層体が接合された接合体を形成する工程と、
前記接合体を躯体に展張する工程と、
未剥離の前記保護フィルム(B)を前記接合体から剥離する工程と、
を含む膜構造物の建築方法。
[14]
[10]又は[11]に記載の積層体を用意する工程と、
前記セパレータ(F)が貼合されている場合、前記積層体から前記セパレータ(F)を剥離する工程と、
前記積層体を、シリコーン系粘着層(E)が貼合面となるように、膜構造物の補修すべき膜部分に貼合する工程と、
前記膜部分に貼合された前記積層体から前記保護フィルム(B)を剥離する工程と、
を含む膜構造物の補修方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態に係る積層体は、エチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂系フィルム(A)の一方又は両方の面に、適度な剥離強度で貼合された保護フィルム(B)を備える。このため、保護フィルム(B)を剥離する前の種々の過程(梱包、運搬、施工等)において、フッ素樹脂系フィルム(A)の表面が傷つくのを防止することができ、必要な時には保護フィルム(B)を容易に剥離してフッ素樹脂系フィルム(A)を使用することが可能である。保護フィルム(B)は粘着層(C)と共に剥離可能であり、フッ素樹脂系フィルム(A)の表面にはほとんど粘着層(C)は残存しないので、粘着層(C)を別途除去する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る積層体の積層構造を示す模式的な断面図である。
【
図2】本発明の第二の実施形態に係る積層体の積層構造を示す模式的な断面図である。
【
図3】第一の実施形態に係る複数枚の積層体が接合された接合体を形成する工程を説明するための模式的な側面図である。
【
図4】比較例3~6の積層体を製造する際に使用した製造装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を例示的に示したものであり、これにより本発明の技術的範囲が狭く解釈されることを意図するものではない。
【0015】
(1.第一の実施形態)
図1を参照すると、第一の実施形態に係る積層体(1)は、エチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂系フィルム(A)の一方又は両方の面に、保護フィルム(B)が粘着層(C)を介して剥離可能に貼合されている。フッ素樹脂系フィルム(A)が、保護フィルム(B)の一方又は両方の面に剥離可能に貼合されていることで、必要時に保護フィルム(B)を剥がすことが可能である。例えば、保護フィルム(B)を剥がし、フッ素樹脂系フィルム(A)を使用することができる。
【0016】
第一の実施形態に係る積層体(1)の形態には特に制限はないが、例えば、ロール状に巻き取られた形態、所定の大きさにカットされたシート状等で提供可能である。後述する建造物用フィルムとして利用する場合は、大面積を要するため、ロール状に巻き取られた形態で提供され、巻き戻して使用するのが便宜である。
【0017】
第一の実施形態に係る積層体(1)は、保護フィルム(B)を粘着層(C)と共にフッ素樹脂系フィルム(A)から剥がすことができる。換言すれば、第一の実施形態に係る積層体(1)においては、保護フィルム(B)と粘着層(C)の間の剥離強度よりも、フッ素樹脂系フィルム(A)と粘着層(C)の間の剥離強度が小さい。保護フィルム(B)を剥がすことで一緒に粘着層(C)がフッ素樹脂系フィルム(A)から剥がれると、フッ素樹脂系フィルム(A)の表面には実質的に粘着層(C)は残存しないので、粘着層(C)を別途除去する必要がなくなる。保護フィルム(B)と粘着層(C)の間の剥離強度は必要に応じて、保護フィルム(B)の粘着層(C)と接する面に対してコロナ処理及びプラズマ処理等の表面改質処理を行うことで、高めることができる。
【0018】
フッ素樹脂系フィルム(A)から粘着層(C)と共に保護フィルム(B)を剥離する際の剥離強度は、梱包、運搬又は施工時等の意図しない剥離を防ぐという観点からは、高い方が好ましい。一方で、当該剥離強度は、高すぎると使い勝手が悪化し、また、剥離時にフッ素樹脂系フィルム(A)が変形したり、粘着層(C)がフッ素樹脂系フィルム(A)の表面に有意に残存したりするおそれがある。この観点から、フッ素樹脂系フィルム(A)から粘着層(C)と共に保護フィルム(B)を23℃、相対湿度50%の環境下、つかみ移動速度300mm/minで180°剥離する際の平均剥離強度は0.05N/25mm以上0.50N/25mm以下であることが好ましい。当該平均剥離強度の下限は好ましくは0.07N/25mm以上であり、より好ましくは0.10N/25mm以上である。当該平均剥離強度の上限は好ましくは0.45N/25mm以下であり、より好ましくは0.40N/25mm以下である。
【0019】
上記の180°剥離試験は以下の手順で行う。まず、フッ素樹脂系フィルム(A)が内側にある場合は、予めフッ素樹脂系フィルム(A)が露出するように余分な層を剥離しておく。例えば、
図1に示す積層体(1)の場合は、剥離強度を求める側とは反対側の保護フィルム(B)を剥離しておき、
図2に示す積層体(2)の場合は、セパレータ(F)を剥離しておく。剥離後、粘着層(C)又はシリコーン系粘着層(E)が残存していても問題はない。次いで、強力な両面テープでSUS板に積層体のサンプルのフッ素樹脂系フィルム(A)側を固定する。積層体のサンプルから保護フィルム(B)を少し剥離する。次いで、SUS板及び保護フィルム(B)をそれぞれチャッキングし、温度:23℃、相対湿度:50%、サンプルサイズ:長さ150mm×幅25mm、つかみ移動速度:300mm/minの条件で180°剥離試験を行い、平均剥離力を求める。その他の条件は、JIS K6854-2:1999に準拠する。サンプルは5個以上用意し、平均剥離力の算術平均を測定値とする。
【0020】
フッ素樹脂系フィルム(A)に含まれるエチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂としては、限定的ではないが、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EFEP)が挙げられる。フッ素樹脂系フィルム(A)に含まれるエチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂は一種でもよいし、二種以上でもよい。フッ素樹脂系フィルム(A)は、これらの中でも、耐熱性の理由により、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)及びエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の何れか一方又は両方を含有することが好ましく、難燃性及び透明性の観点から、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)を含有することがより好ましい。
【0021】
一実施形態において、フッ素樹脂系フィルム(A)は、エチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂を80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することが更により好ましい。別の一実施形態において、フッ素樹脂系フィルム(A)は、ECTFE及びETFEの一方又は両方を合計で80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することが更により好ましい。更に別の一実施形態において、フッ素樹脂系フィルム(A)は、ECTFEを80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することが更により好ましい。
【0022】
ECTFEとしては、エチレン(以下、「Et」ともいう。)とクロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」ともいう。)の二種のモノマーを使用した共重合体の他、前記モノマーに加え、(パーフルオロヘキシル)エチレン、(パーフルオロブチル)エチレン、(パーフルオロオクチル)エチレン、[4-(ヘプタフルオロイソプロピル)パーフルオロブチル]エチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等の一種又は二種以上を第3モノマーとして使用した共重合体を使用することができる。
【0023】
ECTFEにおけるEtとCTFEのモノマー比(モル比)については、特に制限を受けるものでは無いが、好ましくはEt/CTFE=30/70~70/30、より好ましくは40/60~60/40である。Et/CTFEが70/30以下であると、フッ素樹脂の特徴である透明性、耐候性、防汚性等を損なわないようにすることができる。また、Et/CTFEが30/70以上であると、高温使用時における酸性ガス発生量を抑制することができる。
【0024】
ETFEとしては、エチレン(以下、「Et」ともいう。)とテトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)の二種のモノマーを使用した共重合体の他、前記モノマーに加え、(パーフルオロヘキシル)エチレン、(パーフルオロブチル)エチレン、(パーフルオロオクチル)エチレン、[4-(ヘプタフルオロイソプロピル)パーフルオロブチル]エチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等の一種又は二種以上を第3モノマーとして使用した共重合体を使用することができる。
【0025】
ETFEにおけるEtとTFEのモノマー比(モル比)については、特に制限を受けるものでは無いが、好ましくはEt/TFE=30/70~70/30、より好ましくは40/60~60/40である。Et/TFEが70/30以下であると、フッ素樹脂の特徴である透明性、耐候性、防汚性等を損なわないようにすることができる。また、Et/TFEが30/70以上であると、高温使用時における酸性ガス発生量を抑制することができる。
【0026】
エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)及びエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)は、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体(例えばジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、グラジエントコポリマー等のリニアタイプ、アームファースト法又はコアファースト法で重合した星型共重合体等)、重合可能な官能基を持つ高分子化合物であるマクロモノマーを用いた重合により得られる共重合体(マクロモノマー共重合体)、及びこれらの混合物等が挙げられる。なかでも、樹脂の生産性の観点から、交互共重合体が好ましい。
【0027】
フッ素樹脂系フィルム(A)は、本発明の目的を損なわない範囲において、酸化防止剤を一種又は二種以上添加してもよい。酸化防止剤としては、限定的ではないが、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0028】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、3,9-ビス[2-{3-(tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、及び2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のアルキル置換ビスフェノール系酸化防止剤を好適に使用できる。
【0029】
フェノール系酸化防止剤のフッ素樹脂系フィルム(A)への添加量は、特に限定されないが、フッ素樹脂系フィルム(A)の質量を基準にして、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。1.0質量%以下であると、フッ素樹脂系フィルム(A)の黄変を抑え、かつ透明性が低下し過ぎること防ぐことができる。0.01質量%以上であると、酸性ガス低減効果が有意に得られる。
【0030】
リン系酸化防止剤としては、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェリン、亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、亜リン酸トリス(4-ノニルフェニル)、亜リン酸ジフェニル(2-エチルヘキシル)、ジフェニルイソデシルホスファイト等の亜リン酸エステル系酸化防止剤を好適に使用できる。
【0031】
リン系酸化防止剤のフッ素樹脂系フィルム(A)への添加量は、特に限定されないが、フッ素樹脂系フィルム(A)の質量を基準にして、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。1.0質量%以下であると、フッ素樹脂系フィルム(A)の黄変を抑えかつ透明性が低下し過ぎることを防ぐことができる。0.01質量%以上であると、酸性ガス低減効果が有意に得られる。
【0032】
フッ素樹脂系フィルム(A)には、本発明の目的を損なわない範囲において、エチレンモノマー単位を含むフッ素樹脂以外の樹脂を一種又は二種以上添加してもよい。そのような樹脂として、例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのターポリマー等が挙げられる。
【0033】
更に、フッ素樹脂系フィルム(A)は、本発明の目的を損なわない範囲において、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤、着色剤、顔料、発泡剤、難燃剤等を適宜含有することができる。
【0034】
フッ素樹脂系フィルム(A)のJIS K7136:2000に基づいて測定されるHAZEは、透明性を高めるという観点から、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更により好ましく、2%以下であることが最も好ましく、例えば0.1~20%の範囲とすることができる。ただし、意匠性の観点から架橋アクリル微粒子、シリカ粒子、ポリシロキサン粒子のような艶消し剤を添加し、意図的にHAZEを高める場合はこの限りではない。
【0035】
フッ素樹脂系フィルム(A)のJIS K7375:2008に基づいて測定される全光線透過率は、透明性を高めるという観点から、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更により好ましく、例えば80~95%とすることができる。
【0036】
フッ素樹脂系フィルム(A)の厚みは、特に制限はないが、50~500μmであることが好ましく、100~400μmであることがより好ましく、200~300μmであることが更により好ましく、250~300μmが特に好ましい。フッ素樹脂系フィルム(A)の厚みが50μm以上であることはハンドリング性の観点で好ましい。また、フッ素樹脂系フィルム(A)の厚みが500μm以下であることは、低コスト化に寄与する。
【0037】
フッ素樹脂系フィルム(A)は、例示的には、Tダイからフィルム状に溶融押出成形する方法により製造可能である。押出機としては、単軸スクリュー型、二軸スクリュー型、タンデム型等が一般的なものとして使用できるが、押出機系内における樹脂の滞留を防止する点で、単軸スクリュー型押出機が好ましい。単軸スクリュー型押出機に使用するスクリュー形状としては、過度なせん断発熱を伴わない構成であれば、特に限定されないが、過剰なせん断をかけずに溶融押出しする上で、フルフライトスクリューがより好ましい。Tダイより押し出されたフィルムは、透明性を発現する観点から、直ぐにTダイに近接した冷却ロールに接触し、冷却されながら引き取ることが好ましい。その後、フッ素樹脂系フィルム(A)はロール状に巻き取ることができる。フィルムの厚みは、Tダイのリップ口の間隔を調節し、巻き取り速度を調節することで、制御することができる。
【0038】
保護フィルム(B)はフッ素樹脂系フィルム(A)を保護する機能を有する。また、保護フィルム(B)は、粘着層(C)と十分な剥離力で接着していることで、保護フィルム(B)をフッ素樹脂系フィルム(A)から剥離する際、粘着層(C)を伴って剥離する機能を有する。保護フィルム(B)の構成材料は、上記機能を達成する限りにおいて、特段の制限はないが、剥離された後に廃棄又はリサイクルされることが想定されており、安価な材料で構成されることが望ましい。保護フィルム(B)は更に、ある程度の柔軟性を有し、ロール状に巻き取った際に破断や浮き上がりがないことが望ましい。
【0039】
保護フィルム(B)は、限定的ではないが、例えば樹脂フィルムとして提供されることができる。上記の機能に鑑みれば、保護フィルム(B)は、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリフッ化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等のポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の樹脂を含有することができる。保護フィルム(B)は、これらの樹脂を一種含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。これらの中でも、柔軟性の理由により、保護フィルム(B)はポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の何れか一方又は両方を含有することが好ましい。上記の他、保護フィルム(B)は紙製であってもよい。
【0040】
一実施形態において、保護フィルム(B)は、樹脂成分を80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することが更により好ましい。別の一実施形態において、保護フィルム(B)は、ポリオレフィン系樹脂を合計で80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することが更により好ましい。更に別の一実施形態において、保護フィルム(B)は、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の何れか一方又は両方を合計で80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することが更により好ましい。
【0041】
保護フィルム(B)は、本発明の目的を損なわない範囲において、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤、着色剤、顔料、発泡剤、難燃剤等を適宜含有することができる。
【0042】
保護フィルム(B)の厚みは、20~80μmであることが好ましく、25~75μmであることがより好ましく、30~70μmであることが更により好ましく、40~65μmが特に好ましい。保護フィルム(B)の厚みが20μm以上であると貼合時のハンドリング性に優れる。また、B層の厚みを80μm以下とすることにより、ロール状に巻き取った際にロールの直径が大きくなり過ぎない。
【0043】
例示的には、保護フィルム(B)は、フッ素樹脂系フィルム(A)と同様に、Tダイからフィルム状に溶融押出成形する方法により製造可能である。
【0044】
粘着層(C)は、粘着剤で構成される層であり、フッ素樹脂系フィルム(A)よりも保護フィルム(B)に対して大きな剥離強度で固定されていることが必要である。粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等を挙げることができる。このような粘着剤は、単独で使用してもよいし、又は二種以上を混合して使用してもよい。(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの一方又は両方を意味する。本発明に好適に用いられる(メタ)アクリル系粘着剤の詳細は国際公開第2016/010013号に記載されている。これらの中でも(メタ)アクリル系粘着剤が粘着力の調整のしやすさの理由により好ましい。
【0045】
粘着剤は、粘着形態で分類すると、ホットメルト粘着剤、感圧粘着剤、二液混合型粘着剤、熱硬化型粘着剤、及びUV硬化型粘着剤などに分けることができるが、これらの中でも熱やUV光を発する装置が不要であるとの理由により、感圧粘着剤が好適に利用可能である。
【0046】
(メタ)アクリル系粘着剤の具体例としては、たとえば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のC2~C12アルキルエステルの少なくとも一種(モノマーA)と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等の官能基含有アクリル系モノマーの少なくとも一種(モノマーB)との共重合体を好適に使用することができる。上記モノマーAとモノマーBの共重合比は、モノマーAとモノマーBの合計100質量部中、質量比で表して、モノマーA/モノマーB=99.9/0.1~70/30であり、好ましくは99/1~75/25の範囲である。
【0047】
特に好適な(メタ)アクリル系共重合体としては、ブチルアクリレート(BA)とアクリル酸(AA)の共重合体が挙げられる。この場合、ブチルアクリレート(BA)とアクリル酸(AA)の共重合比は、BAとAA合計100質量部中、質量比で表して、BA/AA=99.9/0.1~70/30であり、好ましくは99.5/0.5~80/20の範囲である。BAとAAの合計100質量部中、AAが0.1質量部以上であると、架橋剤併用での粘着物性コントロールが容易になる。また、BAとAAの合計100質量部中、AAが30質量部以下であると、ガラス転移点(Tg)が下がり、低温での貼り付きが良くなり、施工性も向上する。
【0048】
粘着剤には、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加物を添加することができる。
【0049】
粘着層(C)は一般的な方法で形成することができる。例えば、保護フィルム(B)におけるフッ素樹脂系フィルム(A)との貼合面に粘着剤を直接塗布し乾燥させる方法(ダイレクト塗工法)がある。また、セパレータに粘着剤を塗工し、乾燥させてから保護フィルム(B)におけるフッ素樹脂系フィルム(A)との貼合面に貼り合せる方法もある。
【0050】
粘着剤の塗工は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ドクターブレード、コンマコーター、リバースコーター等、従来公知の塗工装置を用いて行うことができる。また、含浸、カーテンコート法等により粘着剤を塗工してもよい。必要に応じて冷却、加熱、又は電子線照射を行いながら粘着剤を塗工してもよい。
【0051】
粘着剤を塗工した後の乾燥は、架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40℃以上(通常は60℃以上)であり、150℃以下(通常は130℃以下)程度とすることが好ましい。
【0052】
粘着層(C)を形成する工程では、粘着剤を塗工し、乾燥させた後、さらに、粘着層(C)内における成分移行の調整、架橋反応の進行、並びに、粘着層(C)内に存在し得る歪の緩和などを目的としてエージングを行ってもよい。
【0053】
粘着層(C)の厚さは特に制限はない。一般的に粘着層(C)の厚さが小さくなると被着体に対する密着性は低下しやすくなる傾向にあることから、剥離強度を調整することを目的として、粘着層(C)の厚みを適宜制御することができる。例えば、粘着層(C)の厚さは、1~20μmであることが好ましく、3~15μmであることがより好ましく、5~10μmであることが更により好ましい。なお、上記厚さは粘着剤の乾燥後の厚さ(μm/Dry)を意味する。
【0054】
フッ素樹脂系フィルム(A)と保護フィルム(B)が粘着層(C)介して剥離可能に積層された積層体の製造方法は、限定的ではないが、例えば、フッ素樹脂系フィルム(A)を作製した後、別ラインで保護フィルム(B)とフッ素樹脂系フィルム(A)を粘着層(C)を介して積層することにより製造することができる。積層方法は、例えば、ロール式ラミネート法が挙げられる。ロール式ラミネート法を実施する際の積層条件としては、例えば、23~30℃の環境温度、40~60%の相対湿度、0.2~1.0MPaのピンチ圧とし、5~20m/minのライン速度、0.1~1秒の加圧時間の範囲で適宜調整することができる。保護フィルム(B)と粘着層(C)の間の剥離強度は必要に応じて、保護フィルム(B)の粘着層(C)との接合面に対してコロナ処理、プラズマ処理などの表面処理を行うことで、高めることができる。
【0055】
(2.第二の実施形態)
図2を参照すると、第二の実施形態に係る積層体(2)は、フッ素樹脂系フィルム(A)の一方の面に粘着層(C)を介して保護フィルム(B)が貼合され、他方の面にシリコーン系粘着層(E)が設けられている。シリコーン系粘着層(E)が設けられていることで、第二の実施形態に係る積層体(2)を、シリコーン系粘着層(E)を介して、物品に貼合することが可能である。
【0056】
第二の実施形態に係る積層体(2)におけるフッ素樹脂系フィルム(A)、保護フィルム(B)及び粘着層(C)については、剥離強度等の相互関係も含め、第一の実施形態で述べた通りであるので重複する説明を省略する。
【0057】
シリコーン系粘着層(E)はシリコーン系粘着剤で構成される層である。シリコーン系粘着剤は耐候性に優れており、また、他の粘着剤に比べてフッ素樹脂系フィルムとの粘着性に優れている点で有利である。シリコーン系粘着剤は例えば、シリコーンガムとMQレジン、有機溶剤、及びヒドロシリル基(SiH基)含有の架橋剤、並びに必要に応じて使用される硬化触媒を含有する。MQレジンとは1官能基のモノマー(M単位)と4官能基のモノマー(Q単位)から合成された3次元構造をもつポリマーである。3次元構造を持つポリマーの数量平均分子量は好ましくは10~100000であり、より好ましくは100~10000である。各官能基のモノマーの有機基としては、メチル基を用いるのが好適であるが、付加反応型のシリコーン系樹脂の場合、アルケニル基を用いることが好適である。
【0058】
シリコーン系粘着剤には、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加物を添加することができる。
【0059】
シリコーン系粘着層(E)のフッ素樹脂系フィルム(A)と接していない面にはセパレータ(F)を貼合してもよい。セパレータ(F)が貼合されていることで、積層体(2)を物品に貼合する工程を実施するまでの間、シリコーン系粘着層(E)を保護することが可能である。セパレータ(F)としては、例えば、剥離紙及び剥離フィルム等が挙げられる。一実施形態において、剥離紙は基材となる紙と、紙の表面に形成された剥離層を有する。一実施形態において、剥離フィルムは基材となる樹脂フィルムと、樹脂フィルムの表面に形成された剥離層を有する。樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレン(PE)等が挙げられる。剥離層は、例えば溶剤型、無溶剤型、又はエマルジョン型のシリコーン樹脂を含有することができる。基材と剥離層の間には目止め層が存在していてもよい。
【0060】
シリコーン系粘着層(E)は一般的な方法で形成することができる。例えば、フッ素樹脂系フィルム(A)の前記他方の面にシリコーン系粘着剤を直接塗布し乾燥させる方法(ダイレクト塗工法)がある。また、セパレータ(F)にシリコーン系粘着剤を塗工し、乾燥させてからフッ素樹脂系フィルム(A)の前記他方の面に貼り合せる方法もある。
【0061】
セパレータ(F)を後に剥離する際、シリコーン系粘着層(E)はフッ素樹脂系フィルム(A)に固定されたまま、セパレータ(F)を剥がすことができるのが望ましい。すなわち、シリコーン系粘着層(E)とフッ素樹脂系フィルム(A)の間の剥離強度よりも、シリコーン系粘着層(E)とセパレータ(F)の間の剥離強度が小さいことが望ましい。そこで、シリコーン系粘着層(E)とフッ素樹脂系フィルム(A)の間の剥離強度を高めるために、例えば、フッ素樹脂系フィルム(A)のシリコーン系粘着層(E)と接する面に対してコロナ処理及びプラズマ処理等の表面改質処理を行ってもよい。また、セパレータ(F)のシリコーン系粘着層(E)と接する面に対して離型剤等をコーティングすることで、シリコーン系粘着層(E)とセパレータ(F)の間の剥離強度を低下させることも可能である。
【0062】
シリコーン系粘着剤の塗工は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ドクターブレード、コンマコーター、リバースコーター等、従来公知の塗工装置を用いて行うことができる。また、含浸、カーテンコート法等によりシリコーン系粘着剤を塗工してもよい。必要に応じて冷却、加熱、又は電子線照射を行いながら粘着剤を塗工してもよい。
【0063】
シリコーン系粘着剤を塗工した後の乾燥は、架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40℃以上(通常は60℃以上)であり、150℃以下(通常は130℃以下)程度とすることが好ましい。
【0064】
シリコーン系粘着層(E)を形成する工程では、粘着剤を塗工し、乾燥させた後、さらに、シリコーン系粘着層(E)内における成分移行の調整、架橋反応の進行、並びに、シリコーン系粘着層(E)内に存在し得る歪の緩和などを目的としてエージングを行ってもよい。
【0065】
シリコーン系粘着層(E)の厚さは特に制限はない。一般的にシリコーン系粘着層(E)の厚さが小さくなると被着体に対する密着性は低下しやすくなる傾向にあることから、剥離強度を調整することを目的として、シリコーン系粘着層(E)の厚みを適宜制御することができる。例えば、シリコーン系粘着層(E)の厚さは、5~100μmであることが好ましく、10~60μmであることがより好ましく、30~50μmであることが更により好ましい。なお、上記厚さは粘着剤の乾燥後の厚さ(μm/Dry)を意味する。
【0066】
セパレータ(F)の厚みは、特に制限はないが、20~100μmであることが好ましく、30~70μmであることがより好ましく、40~60μmであることが更により好ましい。セパレータ(F)の厚みが20μm以上であることはハンドリング性の観点で好ましい。また、セパレータ(F)の厚みが100μm以下であることは、低コスト化に寄与する。
【0067】
(3.用途)
第一の実施形態及び第二の実施形態に係る積層体の用途は特に制限されないが、例えば保護フィルム(B)を剥離することで建造物用フィルムとして使用可能である。第一の実施形態に係る積層体は、膜構造物の施工に好適に使用できる。第二の実施形態に係る積層体は、膜構造物を構成する膜部分の補修工事に好適に使用できる。従って、本発明の一実施形態によれば、建造物用フィルムを備える膜構造物が提供され、本発明の別の一実施形態によれば、そのような膜構造物を備える建造物が提供される。膜構造物には、例えば、建造物の屋根材、壁材、窓材及び被覆材等が挙げられる。また、建造物としては、例えば、プール、アスレチック、サッカースタジアム、ベースボールスタジアム、体育館等のスポーツ施設、空港、駅、高速道路、歩道、バスターミナル、バスおよびタクシー乗り場、カーポート、倉庫、集会場、展示場、養殖施設、園芸施設(農業用大型グリーンハウス、パイプハウスを含む)、自動車及び船舶等が挙げられる。
【0068】
保護フィルム(B)を積層体から剥がすタイミングについては特に制限はないが、例えば膜構造物を建築する場合、躯体に展張した後に保護フィルムを剥がすことがフッ素樹脂系フィルム(A)を保護する観点で望ましい。例えば、第一の実施形態に係る積層体を用いて膜構造物を施工する方法は、積層体の端部において保護フィルム(B)を部分的に剥離してから躯体に展張する工程と、その後に未剥離の保護フィルム(B)を剥離する工程を含む。躯体への展張方法は特に制限はないが、保護フィルム(B)を部分的に剥離することで露出したフッ素樹脂系フィルム(A)の端部を、柱及びフレーム等の躯体に固定された展張金具へ取り付ける方法が挙げられる。
【0069】
展張金具が挟持部を有する場合、展張金具へ固定し易くするため、フッ素樹脂系フィルム(A)の端部を折り曲げ、折り返し部分の内部空間にワイヤー等の芯材を通すこともできる。折り返し部分の先端は熱融着することで固定することができる。
【0070】
大面積の膜構造物を建築する場合、第一の実施形態に係る積層体を複数枚接合して使用することが求められることがある。このような場合、本発明の一実施形態によれば、以下の膜構造物の建築方法が提供される。
第一の実施形態に係る積層体を複数枚用意する工程と、
複数枚の前記積層体のそれぞれの端部において、保護フィルム(B)を部分的に剥離し、フッ素樹脂系フィルム(A)を露出する工程と、
積層体のそれぞれの端部において露出したフッ素樹脂系フィルム(A)同士を重ね合わせて熱融着することにより、複数枚の前記積層体が接合された接合体を形成する工程と、
前記接合体を躯体に展張する工程と、
未剥離の前記保護フィルム(B)を前記接合体から剥離する工程と、
を含む膜構造物の建築方法。
【0071】
図3には、複数枚の積層体が接合された接合体を形成する工程を説明するための模式的な側面図が示されている。ここでは、第一の実施形態に係る二枚の積層体(1)のそれぞれの端部において、保護フィルム(B)を部分的に剥離することで露出した二枚のフッ素樹脂系フィルム(A)が熱融着される様子を示している。フッ素樹脂系フィルム(A)同士を重ね合わせて熱融着した後は、保護フィルム(B)を全部剥離する工程を実施するまでの間、フッ素樹脂系フィルム(A)の露出部分に再度保護フィルム(B)を貼合してもよい。
【0072】
膜構造物を構成する膜部分には、亀裂や穴が発生する場合があるが、そのような場合は簡便に補修できることが望ましい。本発明の一実施形態によれば、以下の膜構造物の補修方法が提供される。
第二の実施形態に係る積層体を用意する工程と、
セパレータ(F)が貼合されている場合、前記積層体からセパレータ(F)を剥離する工程と、
前記積層体を、シリコーン系粘着層(E)が貼合面となるように、膜構造物の補修すべき膜部分に貼合する工程と、
前記膜部分に貼合された前記積層体から前記保護フィルム(B)を剥離する工程と、
を含む膜構造物の補修方法。
【0073】
前記積層体の大きさ及び形状は、補修すべき膜部分の大きさ及び形状に合わせて適宜調整すればよいが、例えば、長尺のロールテープ状にして提供することが汎用性の高さの観点から好ましい。
【実施例0074】
以下、本発明を実施例に基づいて、比較例と対比しつつ詳細に説明する。
【0075】
<1.実施例1~10に係る積層体の作製>
(1-1.フッ素樹脂系フィルム(A)の用意)
<ECTFEフィルム>
ECTFE樹脂(Solvay社製 “Halar ECTFE 700HC”)100質量部に対し、フェノール系酸化防止剤(住友化学株式会社製、スミライザーGA-80)0.2質量部、及びリン系酸化防止剤(住友化学株式会社製、スミライザーGP)0.2質量部を予備混合した。得られた予備混合物を、φ30mmの二軸押出機(株式会社神戸製鋼所製、L/D=44)を用い、250℃で溶融混合しストランド状に押出した後、冷却し、ペレタイザーで均一に混合されたペレットを作製した。次いで、このペレットを65mm単軸押出機(株式会社GMエンジニアリング製、L/D=25)で、圧縮比2.3のフルフライトスクリューを用い、十分な可塑化が可能な押出機の設定温度で溶融混練した後、コートハンガー方式のTダイ(設定温度250℃、シート幅1200mm、下方吐出方式)を用いてフィルム状に押し出した。Tダイより押し出されたフッ素樹脂系フィルム(A)は、直ぐにTダイに近接したキャスティングロール(冷却水の設定温度40℃)とタッチロール(冷却水の設定温度40℃)の間に挿通しながら引き取った。このようにして得られたフッ素樹脂系フィルム(A)は、キャスティングロールの回転方向に沿って移動した後、冷却ロール(冷却水の設定温度30℃)上に搬送されることで冷却され、最後にリールによって巻き取った。表1に記載のフッ素樹脂系フィルム(A)の厚みは、ダイヤルシートゲージで任意の5点を測定したときの平均値である。
<ETFEフィルム>
ETFEフィルム(Nowofol社製(品番Nowoflon ET6235Z))を用意した。表1に記載のフッ素樹脂系フィルム(A)の厚みは、ダイヤルシートゲージで任意の5点を測定したときの平均値である。
【0076】
(1-2.保護フィルム(B)の用意)
以下に示す感圧粘着タイプの保護フィルム(B)を用意した。保護フィルム(B)の片面には粘着層(C)が積層されており、品番毎に異なる基材厚み及び粘着力を有する。表1に記載の保護フィルム(B)及び粘着層(C)の厚みは、ダイヤルシートゲージで任意の5点を測定したときの平均値である。
(1)大王加工紙工業株式会社製DMFマスキングフィルム(品番:FM-115、基材:ポリエチレン系樹脂、粘着剤:アクリル系粘着剤)
(2)大王加工紙工業株式会社製DMFマスキングフィルム(品番:FM-125、基材:ポリエチレン系樹脂、粘着剤:アクリル系粘着剤)
(3)大王加工紙工業株式会社製DMFマスキングフィルム(品番:FM-315、基材:ポリプロピレン系樹脂、粘着剤:アクリル系粘着剤)
(4)大王加工紙工業株式会社製DMFマスキングフィルム(品番:FM-330、基材:ポリプロピレン系樹脂、粘着剤:アクリル系粘着剤)
(5)大王加工紙工業株式会社製DMFマスキングフィルム(品番:FM-315D、基材:ポリプロピレン系樹脂、粘着剤:アクリル系粘着剤)
【0077】
(1-3.積層体の作製)
上記で用意したフッ素樹脂系フィルム(A)の片面上に、上記で用意した粘着層(C)付き保護フィルム(B)を、粘着層(C)が内側になるように積層し、ロール式ラミネート機を用いて、23℃の環境温度、50%の相対湿度、10m/minのライン速度で、0.5MPaのピンチ圧を0.5秒間加えることにより、積層体を作製した。試験番号に応じて、フッ素樹脂系フィルム(A)及び保護フィルム(B)の組み合わせを表1に記載の通り変化させた。
【0078】
<2.比較例1~2に係るフィルム>
実施例1で用意したECTFEフィルム(比較例1)及びETFEフィルム(比較例2)をそのまま使用した。
【0079】
<3.比較例3~6に係るフィルム>
(3-1.保護フィルム(B)の用意)
以下に示す自己粘着タイプの保護フィルム(B)を用意した。これらの保護フィルム(B)は粘着層を有しない。表1に記載の保護フィルム(B)の厚みは、ダイヤルシートゲージで任意の5点を測定したときの平均値である。
(1)大王加工紙工業株式会社製DMFマスキングフィルム(品番:FM-4000、基材:ポリオレフィン系樹脂)
(2)大王加工紙工業株式会社製DMFマスキングフィルム(品番:FM-5000、基材:ポリオレフィン系樹脂)
(3)大王加工紙工業株式会社製DMFマスキングフィルム(品番:FM-6030、基材:ポリオレフィン系樹脂)
(4)東レ株式会社製ポリエステルフィルム(品番:ルミラーS10、基材:PET)
【0080】
(3-2.積層体の製造)
図4には、比較例3~6の積層体を製造するのに使用した製造装置(400)を説明するための概略側面図が示されている。製造装置(400)は、フッ素樹脂系フィルム(A)を押出成形するTダイ(410)と、Tダイ(410)の出口(412)の下方に配設されたタッチロール(420)及びキャスティングロール(430)と、タッチロール(420)へと保護フィルム(B)を繰り出すためのリール(440)と、キャスティングロール(430)の側方に配設された冷却ロール(450)と、積層体(1)を巻き取るためのリール(490)を備える。また、図示を省略するが、押出機がTダイ(410)の上方に配設されている。
【0081】
実施例1と同様の条件でTダイからECTFEフィルムを押し出した。Tダイより下方に押し出されたフッ素樹脂系フィルム(A)は、キャスティングロール(430)(冷却水の設定温度40℃)とタッチロール(420)(冷却水の設定温度40℃)上の保護フィルム(B)との間に挟んだ。これにより、フッ素樹脂系フィルム(A)は冷却固化されると同時に、保護フィルム(B)をフッ素樹脂系フィルム(A)に剥離可能に積層した。このようにして得られた積層体(1)は、キャスティングロール(430)の回転方向に沿って移動した後、冷却ロール(450)(冷却水の設定温度30℃)上に搬送されることで冷却され、最後にリール(490)によって巻き取った。表1に記載のフッ素樹脂系フィルム(A)の厚みは、ダイヤルシートゲージで任意の5点を測定したときの平均値である。
【0082】
<4.特性評価>
(4-1.剥離強度)
上記で作製した積層体からサンプルを採取し、フッ素樹脂系フィルム(A)から粘着層(C)と共に保護フィルム(B)を23℃、相対湿度50%の環境下、つかみ移動速度300mm/minで180°剥離する際の平均剥離強度を、引張圧縮試験機(株式会社東洋精機製作所製 ストログラフVE1D)を用いて、先述した測定手順により求めた。結果を表1に示す。
【0083】
(4-2.学振形摩耗試験)
上記で作製した積層体からサンプルを採取し、学振形摩耗試験を行った。具体的には、試験片台に積層体のサンプル(200mm×25mm)を固定し、保護フィルム(B)の上から摩擦子(スチールウール(ボンスター#0000))を、荷重500gf、往復回数1000回、往復速度30回/minの条件で往復運動させた。試験終了後に保護フィルム(B)を剥離し、フッ素樹脂系フィルム(A)の傷の有無を目視確認した。その他の試験条件はJIS P8136:1994に従った。なお、比較例1及び比較例2は保護フィルム(B)を備えていないので、フッ素樹脂系フィルム(A)に対して学振形摩耗試験を行った。結果を表1に示す。
【0084】
【0085】
<5.考察>
保護フィルム(B)を備えていなかった比較例1及び比較例2は、摩耗による損傷を受けた。また、比較例5は保護フィルムを備えていたことで損傷度合いは軽減された。ただし、摩耗がフッ素樹脂系フィルム(A)にまで達することで発生する損傷が部分的に見られた。
粘着層(C)を備えなかった比較例3~6は、保護フィルム(B)とフッ素樹脂系フィルム(A)の間の剥離強度が小さすぎ、自重での剥離が確認された。
これに対して、粘着層(C)を介して適切な剥離強度で保護フィルム(B)とフッ素樹脂系フィルム(A)が積層された実施例1~10においては、フッ素樹脂系フィルム(A)が保護フィルム(B)によって保護されることで摩耗による損傷を受けることはなかった。また、実施例1~10においては、保護フィルム(B)が粘着層(C)と共に剥離したため、剥離後のフッ素樹脂系フィルム(A)の表面に粘着層(C)が実質的に残存することもなかった。そして、0.06N/25mm~0.48N/25mmの剥離強度は、比較例3~6のような不具合は見られない一方で、人手で容易に剥離できる程度の剥離強度であり、剥離時の作業性にも優れていた。