(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032762
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】イオンミリング装置および試料ホルダー
(51)【国際特許分類】
H01J 37/30 20060101AFI20220217BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H01J37/30 Z
H01J37/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136922
(22)【出願日】2020-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】美野 達郎
(72)【発明者】
【氏名】轟 弘樹
【テーマコード(参考)】
5C001
5C034
【Fターム(参考)】
5C001AA01
5C001BB07
5C001CC08
5C034AA02
5C034AB04
5C034AB09
(57)【要約】
【課題】試料の加工対象部を確実に支持し、かつ、イオンビームの照射によってはじき飛ばされた物質が試料に残留することを抑制できるイオンミリング装置を提供する。
【解決手段】イオンミリング装置の試料ホルダー27は、試料11の加工対象部11bを除く部分を遮蔽する遮蔽部材29と、遮蔽部材29との間に試料11を挟んで固定する試料固定部材31とを備える。遮蔽部材29は、試料11の加工位置を決めるエッジ部29aを有する。試料固定部材31は、イオンビーム12の照射方向においてエッジ部29aよりも下流側に配置され、エッジ部29aとの間で加工対象部11bを支持する支持部33を有する。支持部33は、試料11と接触する第1面34と、第1面34と所定の角度をなす第2面35とを有し、所定の角度が90°以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームの照射によって試料を加工するとともに、前記試料を支持する試料ホルダーを備えるイオンミリング装置であって、
前記試料ホルダーは、
前記試料の加工対象部を除く部分を遮蔽する遮蔽部材と、
前記遮蔽部材との間に前記試料を挟んで固定する試料固定部材と、
を備え、
前記遮蔽部材は、前記試料の加工位置を決めるエッジ部を有し、
前記試料固定部材は、前記イオンビームの照射方向において前記エッジ部よりも下流側に配置され、前記エッジ部との間で前記加工対象部を支持する支持部を有し、
前記支持部は、前記試料と接触する第1面と、前記第1面と所定の角度をなす第2面とを有し、前記所定の角度が90°以下である
イオンミリング装置。
【請求項2】
前記所定の角度が鋭角である
請求項1に記載のイオンミリング装置。
【請求項3】
前記イオンビームの照射によって前記試料と前記試料固定部材とを同時に加工する
請求項1または2に記載のイオンミリング装置。
【請求項4】
前記試料ホルダーに対して着脱可能な突き出し量設定部材を備え、前記突き出し量設定部材を用いて、前記遮蔽部材、前記試料固定部材および前記試料を位置決めすることにより、前記試料の突き出し量が設定可能に構成されている
請求項1~3のいずれか一項に記載のイオンミリング装置。
【請求項5】
前記遮蔽部材が固定される第1のクランプ部材と、
前記試料固定部材が固定される第2のクランプ部材と、
前記第1のクランプ部材および前記第2のクランプ部材を介して、前記遮蔽部材と前記試料固定部材とを締め付ける締め付け部材と、
を備える請求項1~4のいずれか一項に記載のイオンミリング装置。
【請求項6】
前記試料固定部材は、前記第1面と前記第2面とを有する前記支持部を複数有する
請求項1~5のいずれか一項に記載のイオンミリング装置。
【請求項7】
前記試料ホルダーは、前記試料固定部材の先端側が後端側よりも高くなるように傾斜可能に設けられている
請求項1~6のいずれか一項に記載のイオンミリング装置。
【請求項8】
イオンビームの照射によって試料を加工するイオンミリング装置に用いられる試料ホルダーであって、
前記試料の加工対象部を除く部分を遮蔽する遮蔽部材と、
前記遮蔽部材との間に前記試料を挟んで固定する試料固定部材と、
を備え、
前記遮蔽部材は、前記試料の加工位置を決めるエッジ部を有し、
前記試料固定部材は、前記イオンビームの照射方向において前記エッジ部よりも下流側に配置され、前記エッジ部との間で前記加工対象部を支持する支持部を有し、
前記支持部は、前記試料と接触する第1面と、前記第1面と所定の角度をなす第2面とを有し、前記所定の角度が90°以下である
試料ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンミリング装置および試料ホルダーに関連する発明である。
【背景技術】
【0002】
イオンミリング装置は、イオンビームによって試料を加工する装置である。イオンミリング装置は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡などの電子顕微鏡で観察される試料、あるいは、電子プローブマイクロアナライザー、オージェマイクロスコープなどの分析装置で分析される試料を作製するために用いられる。イオンミリング装置によって試料を加工する場合は、試料の非加工対象部を遮蔽する遮蔽部材を使用し、この遮蔽部材を介して試料にイオンビームを照射する(たとえば、特許文献1を参照)。
【0003】
従来のイオンミリング装置は、遮蔽部材に試料をセットするために、たとえば
図54に示す構成を備えている。
図54において、試料200は、試料載台210に貼り付けて固定されている。試料載台210の上方には、板状の遮蔽部材220が配置されている。試料200は、試料載台210と遮蔽部材220との間に挟まれて固定されている。このように固定された試料200には、図示しないイオンソースから放出されたイオンビーム230が、遮蔽部材220を介して照射される。これにより、遮蔽部材220のエッジ部220aから突き出した試料200の先端部(以下、「加工対象部」ともいう。)200aがエッチングによって取り除かれる。このため、遮蔽部材220のエッジ部220aの直下に、試料200の断面が形成される。このような断面加工を行うことにより、電子顕微鏡での観察あるいは分析装置での分析に適した試料が得られる。
【0004】
従来のイオンミリング装置において、遮蔽部材220の先端部は試料200の先端部近傍に配置されるが、試料載台210の先端部は試料200の先端部から離れて配置される。このため、
図55に示すように、薄いフィルム状の試料200を取り扱う場合、試料200は自己の形状を保持できず、試料200の先端側が撓んでしまう。
【0005】
そこで、特許文献1には、
図56に示すように、試料200を接着剤で基板240に取り付け、この状態で試料200と基板240とを、試料載台210と遮蔽部材220との間に挟み込む技術が記載されている。この技術によれば、薄いフィルム状の試料200であっても、試料200の加工対象部200aを確実に支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された従来のイオンミリング装置は、イオンソースから放出されるイオンビーム230が、遮蔽部材220および基板240を介して試料200に照射される構成になっている。このため、
図57に示すように、試料200の先端部が基板240の先端部よりも引っ込んだ位置に配置されると、イオンビーム230の上流側から見て、試料200の加工対象部200aが遮蔽部材220および基板240によって遮られてしまう。その結果、イオンビーム230が試料200に照射されず、試料200を加工できなくなる。
【0008】
また、上記
図54に示す従来のイオンミリング装置は、ブロック状の試料、あるいは弾力のある試料200を、遮蔽部材220と試料載台210との間に挟み込んだ場合に、
図58に示すように、試料200の先端付近がイオンビーム230の中心軸に対して傾斜し、試料200と遮蔽部材220との間に隙間250が生じることがある。そうすると、イオンビーム230の照射によってはじき飛ばされた物質260が、隙間250を通して試料200に付着する。イオンビーム230の照射によってはじき飛ばされた物質260が試料200に付着する現象は、リデポジションと呼ばれる。リデポジションによって試料200に付着した物質260は、イオンビーム230の照射によって除去されず、加工後も試料200に残留してしまう。また、イオンビーム230の中心軸に対して試料200が傾斜すると、
図59に示すように、試料200の深い位置まで加工目標(スルーホールなど)270が存在する場合に、イオンビーム230の照射によって加工されるライン280が加工目標270から外れてしまう。この問題は、試料200の深い位置に加工目標が存在する場合にも生じる。
【0009】
本発明の目的の1つは、試料の加工対象部を確実に支持することができるとともに、イオンビームの照射によってはじき飛ばされた物質が試料に残留することを抑制することができるイオンミリング装置および試料ホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、イオンビームの照射によって試料を加工するとともに、前記試料を支持する試料ホルダーを備えるイオンミリング装置であって、試料ホルダーは、試料の加工対象部を除く部分を遮蔽する遮蔽部材と、遮蔽部材との間に試料を挟んで固定する試料固定部材と、を備える。遮蔽部材は、試料の加工位置を決めるエッジ部を有する。試料固定部材は、イオンビームの照射方向においてエッジ部よりも下流側に配置され、エッジ部との間で加工対象部を支持する支持部を有する。支持部は、試料と接触する第1面と、第1面と所定の角度をなす第2面とを有し、所定の角度が90°以下である。
また本発明は、イオンビームの照射によって試料を加工するイオンミリング装置に用いられる試料ホルダーであって、試料の加工対象部を除く部分を遮蔽する遮蔽部材と、遮蔽部材との間に前記試料を挟んで固定する試料固定部材と、を備える。遮蔽部材は、試料の加工位置を決めるエッジ部を有する。試料固定部材は、イオンビームの照射方向においてエッジ部よりも下流側に配置され、エッジ部との間で加工対象部を支持する支持部を有する。支持部は、試料と接触する第1面と、第1面と所定の角度をなす第2面とを有し、所定の角度が90°以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試料の加工対象部を確実に支持することができるとともに、イオンビームの照射によってはじき飛ばされた物質が試料に残留することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るイオンミリング装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るイオンミリング装置の要部を示す概略側面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るイオンミリング装置を用いて試料を加工する場合の手順を説明する図である。
【
図4】試料と試料固定部材の配置例を示す概略側面図である。
【
図5】イオンビームの照射によって試料が加工される様子を示す図(その1)である。
【
図6】イオンビームの照射によって試料が加工される様子を示す図(その2)である。
【
図7】イオンビームの照射によって試料が加工される様子を示す図(その3)である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るイオンミリング装置の変形例を示す概略側面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るイオンミリング装置の要部を示す概略側面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るイオンミリング装置の要部を示す概略正面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態と比較されるイオンミリング装置の要部を示す正面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係るイオンミリング装置の効果を説明する概略正面図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係るイオンミリング装置の要部を示す概略側面図である。
【
図14】本発明の第4実施形態に係るイオンミリング装置の要部を示す概略側面図である。
【
図15】イオンビームの照射によって試料の断面が傾斜する様子を示す概略側面図である。
【
図16】試料固定部材の先端部が直角に形成されている場合の、試料固定部材と試料との配置状態の一例を示す概略側面図である。
【
図17】
図16に示す配置状態のもとでイオンビームの照射によって試料が加工される様子を示す図(その1)である。
【
図18】
図16に示す配置状態のもとでイオンビームの照射によって試料が加工される様子を示す図(その2)である。
【
図19】試料固定部材の先端部が鋭角に形成されている場合の、試料固定部材と試料との配置状態の一例を示す概略側面図である。
【
図20】
図19に示す配置状態のもとでイオンビームの照射によって試料が加工される様子を示す図(その1)である。
【
図21】
図19に示す配置状態のもとでイオンビームの照射によって試料が加工される様子を示す図(その2)である。
【
図22】
図19に示す配置状態のもとでイオンビームの照射によって試料が加工される様子を示す図(その3)である。
【
図23】
図19に示す配置状態のもとでイオンビームの照射によって試料が加工される様子を示す図(その4)である。
【
図24】カメラを用いて試料の突き出し量を設定する例を示す概略側面図である。
【
図25】本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
【
図26】
図25に示す試料位置決め治具が備える突き出し量設定部材の構成を示す概略側面図である。
【
図27】第1の接触部と第2の接触部との段差を設定する例を示す図である。
【
図28】本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具を用いて試料を試料ホルダーにセットする場合の手順を説明する図(その1)である。
【
図29】本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具を用いて試料を試料ホルダーにセットする場合の手順を説明する図(その2)である。
【
図30】本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具の第1具体例を示す斜視図である。
【
図31】
図30に示す試料位置決め治具が備える第1のツールの構成を示す斜視図である。
【
図32】
図30に示す試料位置決め治具が備える突き出し量設定部材および第2のツールの構成を示す斜視図である。
【
図33】第1具体例において、第2のツールに対する突き出し量設定部材の取り付け構造を示す断面図である。
【
図34】第1具体例において、第2のツールに対する突き出し量設定部材の取り付け構造を示す斜視図である。
【
図35】本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具の第2具体例を示す側面図である。
【
図36】
図35に示す試料位置決め治具が備える第1のツールの構成を示す斜視図である。
【
図37】
図35に示す試料位置決め治具が備える第2のツールおよび突き出し量設定部材の構成を示す斜視図である。
【
図38】第2具体例において、第1のツールに第2のツールを取り付けるための構造を説明する図である。
【
図39】第2具体例において、第2のツールに対する突き出し量設定部材の取り付け構造を示す断面図である。
【
図40】本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具の第3具体例として、第1のツールの構成を示す斜視図である。
【
図41】本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具の第3具体例として、第2のツールおよび突き出し量設定部材の構成を示す斜視図である。
【
図42】第3具体例において、第1のツールに第2のツールを取り付けるための構造を説明する図である。
【
図43】本発明の第6実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
【
図44】本発明の第7実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
【
図45】本発明の第8実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
【
図46】本発明の第9実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
【
図47】本発明の第9実施形態に係る試料位置決め治具の第1変形例を示す概略側面図である。
【
図48】本発明の第9実施形態に係る試料位置決め治具の第2変形例を示す概略側面図である。
【
図49】本発明の第10実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
【
図50】本発明の第11実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
【
図51】
図50に示す試料位置決め治具の構成を示す概略平面図である。
【
図52】本発明の第12実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
【
図53】本発明の第12実施形態に係る試料位置決め治具を用いて試料を位置決めする状態を示す概略側面図である。
【
図54】従来のイオンミリング装置における試料の支持状態を示す概略側面図(その1)である。
【
図55】従来のイオンミリング装置における試料の支持状態を示す概略側面図(その2)である。
【
図56】従来のイオンミリング装置における試料の支持状態を示す概略側面図(その3)である。
【
図57】従来のイオンミリング装置における試料の支持状態を示す概略側面図(その4)である。
【
図58】従来のイオンミリング装置における試料の支持状態を示す概略側面図(その5)である。
【
図59】従来のイオンミリング装置における試料の支持状態を示す概略側面図(その6)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るイオンミリング装置の構成例を示す概略図である。
図1に示すイオンミリング装置10は、たとえば、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で観察される試料を作製するため、あるいは、電子プローブマイクロアナライザー、オージェマイクロスコープなどの分析装置で分析される試料を作製するために用いられる。イオンミリング装置10は、加工の対象物である試料11にイオンビーム12を照射することにより、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡での観察に適した形状に試料11を加工する装置である。
【0015】
図1に示すように、イオンミリング装置10は、真空チャンバー15と、試料ステージ引出機構16と、イオンソース17と、試料ステージ18と、回転機構19と、排気部20と、排気制御部21と、カメラ22と、制御部23と、電圧電源24と、回転駆動部25と、表示部26とを備えている。制御部23は、イオンソース制御部23aと、回転制御部23bとを備えている。
【0016】
真空チャンバー15は、中空の容器である。排気部20は、真空チャンバー15に接続されている。排気部20の駆動は、排気制御部21によって制御される。排気部20は、排気制御部21の制御下で駆動することにより、真空チャンバー15内の空気を排出する。
【0017】
試料ステージ引出機構16は、真空チャンバー15から試料ステージ18を引き出すための機構である。試料ステージ引出機構16は、真空チャンバー15の開口部を塞ぐように、真空チャンバー15に開閉可能に取り付けられている。試料ステージ引出機構16には、試料ステージ18および回転機構19が取り付けられている。
【0018】
試料ステージ18は、試料ステージ引出機構16を閉じた状態では真空チャンバー15の内部に収容される。また、試料ステージ18は、試料ステージ引出機構16を開いた状態では真空チャンバー15の外部に引き出して配置される。試料ステージ引出機構16の開閉状態は、真空チャンバー15に対して試料ステージ引出機構16を
図1の左右方向に移動させることによって切り替え可能である。試料ステージ18は、試料ホルダー27を介して試料11を支持するステージである。試料ホルダー27は、試料11を支持するホルダーである。試料ホルダー27は、ベースとなるホルダー本体28と、遮蔽部材29とを備えている。遮蔽部材29については後段で詳しく説明する。試料ホルダー27は、試料ステージ18に対して着脱可能である。試料11は、板状に形成されている。
【0019】
回転機構19は、試料ステージ18を介して試料ホルダー27を回転させる機構である。回転機構19の回転軸19aは、イオンビーム12の中心軸と直交し、かつ試料11が遮蔽部材29から突出する方向(図中のY方向)と平行に配置されている。回転機構19は、回転駆動部25の駆動にしたがって試料ホルダー27を回転させる。その際、試料ホルダー27は、回転機構19の回転軸19aを中心に回転する。回転制御部23bは、回転駆動部25を介して試料ホルダー27の回転を制御する。回転機構19は、試料ステージ18と一体に試料ホルダー27を回転させる機構でもよいし、試料ステージ18と別体に試料ホルダー27を回転させる機構でもよい。
【0020】
イオンソース17は、真空チャンバー15の上部、すなわち天井部分に配置されている。イオンソース17は、イオンビーム12を放出する部分である。イオンソース17は、たとえば、ガスイオン銃によって構成される。ガスイオン銃は、アルゴンガスを放電によりイオン化させてイオンビームを放出するイオン銃である。イオンソース17は、真空チャンバー15の内部空間に向けてイオンビーム12を鉛直下方に放出する。
【0021】
以降の説明では、イオンビーム12の中心軸と直交する二軸方向のうち、一方の方向をX方向、他方の方向をY方向とする。また、イオンビーム12の中心軸と平行な方向であって、かつ、X方向およびY方向に直交する方向を、Z方向とする。本発明の実施形態において、X方向およびY方向は水平二軸方向となっており、Z方向は鉛直方向(上下方向)となっている。また、イオンビーム12の中心軸12a(
図2参照)は、鉛直方向と平行な軸となっている。
【0022】
電圧電源24は、イオンソース17に電気的に接続されている。電圧電源24は、イオンソース17に電圧を印加する電源である。電圧電源24は、イオンソース制御部23aの制御下でイオンソース17に電圧を印加することにより、イオンソース17からイオンビーム12を放出させる。イオンソース制御部23aは、電圧電源24を介してイオンソース17を制御する。
【0023】
カメラ22は、カメラ回動機構30によって回動可能に設けられている。カメラ回動機構30は、試料ステージ引出機構16の上部に取り付けられ、試料ステージ引出機構16と一体に移動する。カメラ22は、カメラ回動機構30の回動により、第1の位置と第2の位置とに配置可能である。第1の位置は、カメラ22の光軸がZ方向と平行に配置される位置である。第1の位置にカメラ22を配置すると、カメラ22の光軸は試料11の加工位置を通過するように配置される。第2の位置は、
図1に示すように、カメラ22がZ方向に対して大きく傾いて配置される位置である。
【0024】
カメラ22は、試料ホルダー27に支持された試料11と遮蔽部材29とを撮影する。この撮影には、カメラ22の代わりに光学顕微鏡を用いてもよい。表示部26は、カメラ22が撮影した画像を表示する。表示部26は、モニター(ディスプレイ)またはタッチパネルによって構成される。
【0025】
図2は、本発明の第1実施形態に係るイオンミリング装置の要部を示す概略側面図である。
図2に示すように、試料ホルダー27は、上述したホルダー本体28および遮蔽部材29の他に、試料固定部材31および試料載台32を備えている。遮蔽部材29は、板状に形成されている。遮蔽部材29は、エッジ部29aを有している。エッジ部29aは、遮蔽部材29の先端に形成されている。遮蔽部材29の先端面29bは、イオンビーム12の中心軸12aに対して僅かに傾いている。
【0026】
遮蔽部材29のエッジ部29aは、試料11の加工位置を決める部分である。すなわち、試料11は、遮蔽部材29のエッジ部29aを基準に加工される。このため、試料11の加工目標は、遮蔽部材29のエッジ部29aの位置に合わせて配置される。試料11の加工目標は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で試料11を観察するときに、観察の対象となる部分、あるいは、電子プローブマイクロアナライザー、オージェマイクロスコープなどで試料11を分析するときに、分析の対象となる部分である。遮蔽部材29のエッジ部29aは、遮蔽部材29の先端面29bと、遮蔽部材29の遮蔽面29cとの角部に形成されている。遮蔽面29cは、試料11と接触する面である。遮蔽面29cは、試料11の加工対象部11bを除いて、試料11を遮蔽する面である。すなわち、遮蔽部材29は、試料11の加工対象部11bを除く部分、すなわち非加工対象部を遮蔽している。
【0027】
遮蔽部材29の遮蔽面29cは、試料11の上面に接触して配置される。試料11の一部は、試料11の先端面11aを含めて、遮蔽部材29のエッジ部29aから突き出して配置され、その突き出した部分が加工対象部11bとなる。加工対象部11bは、イオンビーム12の照射によって取り除かれる部分である。
【0028】
試料固定部材31は、遮蔽部材29との間に試料11を挟んで固定する部材である。試料固定部材31は、板状に形成されている。試料固定部材31は、支持部33を有している。支持部33は、第1面34と第2面35とによって形成されている。第1面34は、試料固定部材31の上面に相当する。第1面34は、遮蔽部材29の遮蔽面29cと反対側で試料11と接触する面である。すなわち、第1面34は、試料11の下面に接触して配置される。第2面35は、第1面34と所定の角度θをなしている。
【0029】
支持部33は、イオンビーム12の照射方向において遮蔽部材29のエッジ部29aの下流側に配置されている。支持部33は、エッジ部29aとの間で試料11の加工対象部11bを支持する部分である。支持部33を形成する第1面34と第2面35とのなす角度、すなわち所定の角度θは、90°以下(ただし、0°よりも大きい)である。所定の角度θは、好ましくは鋭角である。また、所定の角度θは、好ましくは、60°以下であり、より好ましくは、55°以下であり、さらに好ましくは、45°以下である。このように所定の角度θを小さく設定した場合は、支持部33がくさび状に形成される。
【0030】
試料載台32は、試料固定部材31を介して試料11が載置される台である。試料固定部材31は、ネジ36によって試料載台32に固定されている。試料載台32は、Z方向において、試料固定部材31を挟んで遮蔽部材29とは反対側に配置されている。
【0031】
続いて、本発明の第1実施形態に係るイオンミリング装置を用いて試料を加工する場合の手順について説明する。以下に述べる手順は、試料作製方法を含む。
【0032】
まず、
図3に示すように、試料ホルダー27に試料11をセットする。試料11のセットは、次の手順で行う。まず、イオンミリング装置10のオペレーターは、遮蔽部材29のエッジ部29aと試料固定部材31の先端31aとを図示しない基準平面に接触させることにより、
図2において、遮蔽部材29のエッジ部29aと試料固定部材31の先端31aとがY方向で同じ位置、すなわち面一となるよう、それらの位置を調整する。試料固定部材31の先端31aとは、Y方向において、イオンビーム12が照射される側の端部をいう。次に、オペレーターは、位置調整が済んだ遮蔽部材29と試料固定部材31との間に試料11を挿入する。この段階では、遮蔽部材29と試料固定部材31との間に、試料11の厚み寸法よりも大きな隙間を確保する。つまり、試料11の位置を固定せずに、試料11を自由状態にしておく。次に、オペレーターは、
図3に示すように、試料ホルダー27に突き出し量設定部材37を装着し、この突き出し量設定部材37を用いて試料11の突き出し量を設定する。具体的には、遮蔽部材29の先端面29bに突き出し量設定部材37を接触させるとともに、試料11の先端面11aを突き出し量設定部材37の凹部38に接触させる。これにより、試料11の加工対象部11bが、遮蔽部材29のエッジ部29aから所定量だけ突き出して配置される。試料11における加工対象部11bの突き出し量は、遮蔽部材29のエッジ部29aを基準に規定される。加工対象部11bの突き出し量は、加工目標の位置にもよるが、多くの場合、50μm以上100μm以下の範囲内で設定される。
【0033】
次に、オペレーターは、試料11の先端面11aと突き出し量設定部材37の凹部38との接触状態を維持しつつ、遮蔽部材29と試料固定部材31との間に試料11を挟み込むことにより、試料11を固定する。このとき、試料11の先端部は、遮蔽部材29と試料固定部材31とによって上下両面から支持される。また、試料11の加工位置は、遮蔽部材29のエッジ部29aと試料固定部材31の先端31aとによって挟み込まれる。このため、薄いフィルム状の試料11であっても、試料11の先端側を撓ませることなく、試料11の加工対象部11bを確実に支持することができる。また、試料11の先端付近は、試料固定部材31の支持部33によって遮蔽部材29に押し付けられる。このため、ブロック状の試料、あるいは弾力のある試料を取り扱う場合でも、イオンビーム12の中心軸12aに対して試料11の先端付近を傾斜させることなく、試料11を支持することができる。したがって、遮蔽部材29と試料11とを互いに密着させて固定することができる。
【0034】
上述のように試料11をセットしたら、オペレーターは、試料ホルダー27から突き出し量設定部材37を取り外した後、試料ホルダー27を試料ステージ18に装着する。試料ホルダー27の装着は、試料ステージ18を試料ステージ引出機構16によって真空チャンバー15の外側に引き出した状態で行われる。その際、試料ホルダー27は、遮蔽部材29を上側、試料固定部材31を下側にして、試料ステージ18に装着される。また、試料11の突き出し量は、カメラ22の撮影画像を利用して確認される。試料11の突き出し量を確認する場合は、カメラ回動機構30の回動によりカメラ22を第1の位置に配置し、その状態でカメラ22の撮影画像を表示部26に表示する。これにより、オペレーターは、表示部26に表示されるカメラ22の撮影画像を利用して試料11の突き出し量を確認することができる。
【0035】
次に、オペレーターは、カメラ回動機構30の回動によりカメラ22を第2の位置に配置した後、試料ステージ18を試料ステージ引出機構16によって真空チャンバー15に押し込むことにより、試料ステージ18を真空チャンバー15内に収容する。このとき、試料ステージ18と一緒に試料ホルダー27と試料11とが真空チャンバー15内に収容される。
【0036】
次に、オペレーターの操作により、上記
図2に示す状態でイオンソース17からイオンビーム12を放出することにより、遮蔽部材29を介して試料11にイオンビーム12を照射する。このとき、イオンソース17は、電圧電源24がイオンソース制御部23aからの制御指令を受けてイオンソース17に電圧を印加することで、イオンビーム12を放出する。これにより、試料11は、イオンビーム12の照射によってエッチングされる。このとき、試料固定部材31の先端31aが鋭角に形成されていると、たとえば
図4に示すように試料固定部材31の先端31aが試料11の先端面11aより突き出して配置された場合でも、イオンビーム12の照射によってはじき飛ばされた物質が試料11に残留しにくくなる。その理由は以下のとおりである。
【0037】
まず、
図4に示すように遮蔽部材29を介して試料11にイオンビーム12を照射すると、このイオンビーム12は試料固定部材31の先端部分にも照射される。このため、
図5に示すように、試料固定部材31の先端31aがエッチング(スパッタリング)され、このエッチングによってはじき飛ばされた物質39が試料11の先端面11aに付着する。このとき、試料固定部材31の先端31aを直角に形成しておけば、鈍角に形成する場合に比べて、試料11の先端面11aに対する物質39の付着量を少量に抑えることができる。また、試料固定部材31の先端31aを鋭角に形成しておけば、試料11の先端面11aから突き出した試料固定部材31の一部は、
図6に示すように、試料11の加工対象部11bよりも早くエッチングされて消失する。また、試料固定部材31の先端31aが鋭角になっていると、物質39の発生が少量に抑えられる。このため、試料11の先端面11aに対する物質39の付着量をより少量に抑えることができる。
【0038】
また、試料11の先端面11aから突き出した試料固定部材31の一部が消失した後は、試料11のエッチングと試料固定部材31のエッチングとが同時に進行する。言い換えると、イオンミリング装置は、イオンビーム12の照射によって試料11と試料固定部材31とを同時に加工する。このため、試料固定部材31のエッチングによって発生した物質39が試料11の先端面11aに付着しても、付着した物質39は、試料11のエッチングによって素早く除去される。したがって、試料11の加工対象部11bをエッチングによって取り除いた段階では、
図7に示すように、試料11の断面14に物質39がほとんど残らない。以上の理由により、試料固定部材31の先端31aが鋭角に形成されていると、試料11に物質39が残留しにくくなる。
【0039】
このように本発明の第1実施形態に係るイオンミリング装置10は、遮蔽部材29との間に試料11を挟んで固定する試料固定部材31を備え、この試料固定部材31は、遮蔽部材29のエッジ部29aとの間で加工対象部11bを支持する支持部33を有する。このため、試料11の加工対象部11bを確実に支持することができる。また、試料固定部材31の支持部33は、試料固定部材31の先端31aを直角または鋭角とする第1面34と第2面35とを有する。このため、イオンビーム12の照射によってはじき飛ばされた物質が試料11に残留することを抑制することができる。
【0040】
また、試料11の上面および下面は、そのほぼ全面にわたって遮蔽部材29と試料固定部材31とに密着した状態となる。このため、イオンビーム12の照射によって試料11が発熱した場合に、試料11の上下両面から、遮蔽部材29および試料固定部材31へと熱を逃がすことができる。これにより、試料11を加工する際の放熱性および冷却効果を高めることができる。
【0041】
なお、上記第1実施形態においては、試料載台32にネジ36を用いて試料固定部材31を固定する構成を採用したが、本発明はこれに限らず、たとえば
図8に示す構成を採用してもよい。
図8においては、試料11が接着剤などで試料固定部材31に貼り付けられている。この貼り付け状態において、試料11と試料固定部材31は、先端面11aと先端31aとがY方向で同じ位置となるように、位置調整されている。また、試料11を貼り付け済の試料固定部材31は、ワックスあるいは接着剤などで試料載台32に貼り付けられている。一方、遮蔽部材29は、試料11の加工位置にエッジ部29aが配置されるよう、位置決めされる。このような構成であっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
また、上記第1実施形態において、試料固定部材31は、遮蔽部材29と異なる形状で形成されているが、本発明はこれに限らず、遮蔽部材29と同じ形状の試料固定部材31を用いてもよい。その場合、試料固定部材31は、試料11を挟んで遮蔽部材29と上下対称に配置される。
【0043】
また、上記第1実施形態においては、試料載台32と試料固定部材31とを固定するネジ36(
図2参照)を用いているが、本発明はこれに限らず、たとえば図示しないネジによって試料固定部材31を遮蔽部材29の方向に押し上げる構成を採用してもよい。
【0044】
また、上記第1実施形態においては、試料載台32と別体で試料固定部材31を設けているが、本発明はこれに限らず、試料固定部材31と試料載台32とが一体構造になっていてもよい。
【0045】
<第2実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態に係るイオンミリング装置の要部を示す概略側面図であり、
図10は、本発明の第2実施形態に係るイオンミリング装置の要部を示す概略正面図である。
図9および
図10に示すように、試料ホルダー27は、上述した遮蔽部材29および試料固定部材31の他に、一対のクランプ部材41,42を備えている。クランプ部材41は第1のクランプ部材に相当し、クランプ部材42は第2のクランプ部材に相当する。遮蔽部材29は、ネジ43によってクランプ部材41に固定されている。試料固定部材31は、ネジ44によってクランプ部材42に固定されている。遮蔽部材29には、ネジ43の雄ネジ部に噛み合う雌ネジ部(図示せず)が形成され、クランプ部材41には、ネジ43の頭部と軸部とを挿入可能な段付き孔(図示せず)が形成されている。同様に、試料固定部材31には、ネジ44の雄ネジ部に噛み合う雌ネジ部が形成され、クランプ部材42には、ネジ44の頭部と軸部とを挿入可能な段付き孔(図示せず)が形成されている。
【0046】
一対のクランプ部材41,42は、一対のネジ45a,45bによって固定されている。一対のネジ45a,45bは、クランプ部材41およびクランプ部材42を介して、遮蔽部材29と試料固定部材31とを締め付ける締め付け部材に相当する。クランプ部材41には、ネジ45aの雄ネジ部に噛み合う雌ネジ部(図示せず)が形成され、クランプ部材42には、ネジ45aの頭部と軸部とを挿入可能な段付き孔(図示せず)が形成されている。同様に、クランプ部材41には、ネジ45bの雄ネジ部に噛み合う雌ネジ部(図示せず)が形成され、クランプ部材42には、ネジ45bの頭部と軸部とを挿入可能な段付き孔(図示せず)が形成されている。
【0047】
図11は、本発明の第2実施形態と比較されるイオンミリング装置の要部を示す正面図である。
図11に示す比較例では、遮蔽部材29と試料固定部材31とが、一対のネジ47a,47bによって締め付けられている。試料11は、遮蔽部材29と試料固定部材31との間に配置されている。また、試料11は、一対のネジ47a,47bによる締め付け力により固定されている。
【0048】
このように、遮蔽部材29と試料固定部材31とを一対のネジ47a,47bによって直接締め付けると、遮蔽部材29と試料固定部材31が締め付け力によって湾曲する。このため、試料ホルダー27を正面から見た場合、試料11の両端部に加わる締め付け力は大きくなるが、試料11の中央部に加わる締め付け力は小さくなる。つまり、試料11に加わる締め付け力のばらつきが大きくなる。したがって、試料11と遮蔽部材29との密着性、および、試料11と試料固定部材31との密着性が悪化する。
【0049】
これに対し、一対のクランプ部材41,42を介して遮蔽部材29と試料固定部材31とを締め付けると、
図12に示すように、各々のクランプ部材41,42が一対のネジ45a,45bによる締め付け力を受けて湾曲しても、遮蔽部材29と試料固定部材31はほとんど湾曲しない。その理由は、遮蔽部材29とクランプ部材41とはネジ43によって固定されているが、構造的には別個の部材であり、クランプ部材41が湾曲しても、遮蔽部材29の形状は元の形状に維持されるからである。同様に、試料固定部材31とクランプ部材42とはネジ44によって固定されているが、構造的には別個の部材であり、クランプ部材42が湾曲しても、試料固定部材31の形状は元の形状に維持されるからである。このため、試料ホルダー27を正面から見た場合、一対のネジ45a,45bによる締め付け力は試料11全体に均等に加わる。したがって、試料11と遮蔽部材29との密着性、および、試料11と試料固定部材31との密着性が向上する。また、遮蔽部材29および試料固定部材31のいずれか一方または両方が消耗した場合に、消耗品である遮蔽部材29や試料固定部材31の交換に容易に対応することができる。
【0050】
<第3実施形態>
図13は、本発明の第3実施形態に係るイオンミリング装置の要部を示す概略側面図である。
図13に示すように、試料固定部材31は、Y方向の両端部に支持部33a,33bを有している。支持部33aは、試料固定部材31の先端部に、第1面34と第2面35aとによって形成されている。支持部33bは、試料固定部材31の後端部に、第1面34と第2面35bとによって形成されている。第2面35aは、第1面34に対して所定の角度θ1で傾斜し、第2面35bは、第1面34に対して所定の角度θ2で形成している。所定の角度θ1は、90°以下(ただし、0°よりも大きい)である。所定の角度θ1は、好ましくは鋭角である。また、所定の角度θ1は、好ましくは、60°以下であり、より好ましくは、55°以下であり、さらに好ましくは、45°以下である。この点は、所定の角度θ2についても同様である。本実施形態では、θ1=θ2に設定されている。ただし、θ1≠θ2に設定されていてもよい。
【0051】
このように試料固定部材31の先端部に支持部33aを形成し、後端部に支持部33bを形成することにより、次のような効果が得られる。
図13に示すように、試料11にイオンビーム12を照射すると、試料固定部材31の先端部にもイオンビーム12が照射される。このため、試料固定部材31は、先端31aから徐々に削れて摩耗する。試料固定部材31の摩耗量が多くなると、支持部33を鋭角に形成することで得られる効果が小さくなる。そこで、試料固定部材31の摩耗量が所定量に達した場合は、試料固定部材31の先端部と後端部の位置を入れ替える。これにより、試料固定部材31の先端部のみに支持部33を形成する場合(
図2参照)に比べて、支持部33を鋭角に形成することで得られる効果を維持しつつ、試料固定部材31を使用できる回数を増やすことができる。
【0052】
なお、上記第3実施形態においては、試料固定部材31の先端部と後端部の計2箇所に支持部33(33a,33b)を形成した例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、試料固定部材31が平面視四角形の板状の部材であれば、4辺のうちの3辺またはすべての辺に支持部33を形成してもよい。この点は、試料固定部材31が平面視5角形以上の多角形の部材である場合も同様である。
【0053】
<第4実施形態>
図14は、本発明の第4実施形態に係るイオンミリング装置の要部を示す概略側面図である。
図14に示すように、試料ホルダー27は、水平面と平行なXY平面に対してZ方向(上下方向)に傾斜可能に設けられている。これに対し、イオンビーム12の中心軸12aは、XY平面に対して垂直、すなわちZ方向と平行である。イオンミリング装置の構成として、試料ホルダー27の傾斜角度は、一定角度でもよいし、変更可能でもよい。試料ホルダー27を傾斜させ、かつ、その傾斜角度を調整可能な機構については、たとえば特開2018-190628号公報に記載された機構(回動機構)を利用することができる。
【0054】
上述のように試料ホルダー27を傾斜させると、遮蔽部材29、試料固定部材31および試料載台32が、試料11と一緒に傾斜した状態となる。このとき、試料固定部材31は、試料ホルダー27の傾斜により、先端31aが後端31bよりも高く配置される。同様に、試料11は、先端面11aが後端面よりも高く配置される。つまり、試料ホルダー27は、上述した回動機構により、試料固定部材31の先端31a側が後端31b側よりも高くなるように傾斜可能に設けられている。
【0055】
このような配置状態のもとで試料11にイオンビーム12を照射すると、イオンビーム12の照射によって形成される試料11の断面は、試料11の上面に対して、より垂直に近い面となる。その理由は次のとおりである。
【0056】
まず、イオンビーム12を試料11に照射する場合、加工レートを決めるイオンビーム12の電流密度は、イオンソースから離れるほど低下する。つまり、イオンソースからの距離が長くなるほど加工レートが低下する。イオンソースからの距離は、試料11の厚み方向において、遮蔽部材29から離れるほど、すなわち下方にいくほど長くなる。このため、遮蔽部材29に近い試料11の上面側の加工レートと、遮蔽部材29から遠い試料11の下面側の加工レートとを比較すると、試料11の下面側のほうが上面側よりも加工レートが低くなる。したがって、試料ホルダー27を傾斜させずに試料11にイオンビーム12を照射すると、
図15に示すように、試料11の断面14は、試料11の上面側から下面側に向かってなだらかに傾斜(突出)した形状になる。
【0057】
これに対し、上述のように試料ホルダー27を傾斜させて試料11にイオンビーム12を照射すると、イオンビーム12の中心軸12aに対して試料11の断面は上記同様に傾斜するものの、加工中の試料11は断面の傾斜を打ち消す方向に傾斜しているため、結果的に試料11の断面は、試料11の上面に対して、より垂直に近い面となる。したがって、試料ホルダー27を傾斜させた方が、試料11の観察や分析に適した断面が得られる。
【0058】
一方で、たとえば
図16に示すように、試料固定部材31の先端部が、鋭角ではなく直角に形成されている場合は、試料固定部材31の先端31aの位置と試料11の先端面11aの位置を揃えて、試料ホルダー27を傾斜させたときに、試料固定部材31の先端31aが試料11の先端面11aよりも出っ張った状態になる。このため、
図17に示すように、試料11にイオンビーム12を照射すると、このイオンビーム12が試料固定部材31に照射されやすくなる。その結果、イオンビーム12の照射によって試料固定部材31から物質39がはじき飛ばされ、この物質39が試料11の先端面11aに付着する。試料11の先端面11aに付着した物質39は、試料11にイオンビーム12が照射されることで、ある程度は除去される。しかし、イオンビーム12の照射による試料11の加工は、試料固定部材31の先端31aが試料11の先端面11aよりも出っ張った状態で行われる。このため、試料11を遮蔽部材29のエッジ部29aの直下まで加工した段階、すなわち試料11の加工が終了する段階まで、試料固定部材31の先端31aはイオンビーム12の照射によってエッチングされ続ける。したがって、
図18に示すように、試料11の加工を終えても、試料11の先端面11aに物質39が付着したままになる。
【0059】
これに対し、
図19に示すように、試料固定部材31の先端部(支持部33)が鋭角に形成されている場合は、試料固定部材31の先端31aの位置と試料11の先端面11aの位置を揃えて、試料ホルダー27を傾斜させたときに、試料固定部材31の先端31aが試料11の先端面11aから出っ張らない。このため、
図20および
図21に示すように試料11の加工が進行しても、試料固定部材31の先端31aはほとんどエッチングされない。ただし、
図22に示すように、試料11を遮蔽部材29のエッジ部29aの直下付近まで加工した段階では、試料固定部材31の先端31aがイオンビーム12によってエッチングされる。このため、エッチングによって試料固定部材31の先端31aからはじき出された物質39が、試料11の先端面11aに付着する。その際、第1面34と第2面35とのなす角度が鋭角になっていると、試料固定部材31の先端31aはエッチングによってすぐに消失する。また、試料固定部材31の先端31aからはじき出されて試料11の先端面11aに付着した物質39も、エッチングによってすぐに取り除かれる。したがって、
図23に示すように、加工後に得られる試料11の断面14は、物質39の残留が非常に少なく、かつ、試料11の上面に対して、より垂直に近い面となる。これにより、試料11の観察や分析に適した断面を得ることができる。
【0060】
<第5実施形態>
一般に、イオンミリング装置のオペレーターは、試料ホルダー27に試料11をセットする場合、
図24に示すように、遮蔽部材29の上方にカメラ22を配置し、このカメラ22で試料11と遮蔽部材29とを撮影する。また、オペレーターは、表示部26に表示されるカメラ22の撮影画像を見ながら、Y方向における試料11の位置を微調整することにより、エッジ部29aからの試料11の突き出し量Lを所望の寸法に設定する。
【0061】
図24において、試料11は、クリップ51を用いて固定されている。クリップ51は、支点部52を中心に揺動自在に支持されている。クリップ51は、バネ53の力F1で一方向に付勢されている。バネ53の一端はクリップ51に接続され、バネ53の他端はホルダー本体28に接続されている。ホルダー本体28は、遮蔽部材29を固定状態に支持する。試料11は、クリップ51から試料11に加えられる押圧力F2によって遮蔽部材29に固定されている。押圧力F2は、バネ53の力F1でクリップ51を一方向に付勢することによって発生する力である。
【0062】
上述したように、イオンミリング装置のオペレーターは、カメラ22の撮影画像を確認しながら、試料11の位置を微調整して、試料11の突き出し量Lを設定する必要があり、この設定作業に複雑な操作が要求される。また、大気中での試料11の化学反応を避けるために、大気から遮断されたグローブボックス内で試料11をセットする場合は、突き出し量の設定作業そのものが非常に困難になる。そこで、本発明の第5実施形態およびこれ以降の実施形態においては、試料の突き出し量の設定を簡易な操作で行えるようにすることを主目的とする。
【0063】
図25は、本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
試料位置決め治具は、イオンミリング装置10で加工対象となる試料11を位置決めするために用いられる治具であり、より具体的には、試料ホルダー27に試料11をセットする際に用いて好適な治具である。
【0064】
図25に示すように、試料位置決め治具55は、突き出し量設定部材56と、第1のツール57と、第2のツール58とを備えている。突き出し量設定部材56は、四角いブロック状の部材である。突き出し量設定部材56の形状は、必要に応じて変更可能である。突き出し量設定部材56は、たとえば、金属材料によって構成される。突き出し量設定部材56は、
図26に示すように、第1の接触部61と、第2の接触部62とを有している。第1の接触部61は、突き出し量設定部材56を用いて試料11の突き出し量を設定する場合に、遮蔽部材29の先端面29bに接触する部分であり、第2の接触部62は、試料11の先端面11aに接触する部分である。第2の接触部62は、第1の接触部61よりも凹んで形成されている。換言すると、第1の接触部61と第2の接触部62との間には、第1の接触部61を凸部、第2の接触部62を凹部とする段差D(
図26参照)が設けられている。
【0065】
上述した段差Dは、オペレーターが所望する試料11の突き出し量に応じて設定される。
図27は、第1の接触部61と第2の接触部62との段差Dを設定する例を示す図である。
第1の接触部61と第2の接触部62との段差D(μm)は、試料11の突き出し量L(μm)に応じて、下記の(1)式により設定される。
D=L×cos(90-θa)° …(1)
【0066】
上記(1)式において、θaは、遮蔽部材29の先端面29bの傾斜角度であり、この先端面29bと遮蔽面29cとのなす角度でもある。ここでは一例として、θa=85°とする。そうした場合、所望する試料11の突き出し量Lが100μmであれば、上記(1)式からD≒99.6μmと求まる。
したがって、試料11の突き出し量Lを100μmに設定したい場合は、第1の接触部61と第2の接触部62との段差Dを99.6μmに設定し、この設定にしたがって突き出し量設定部材56を作製すればよい。
【0067】
再び
図25に戻って説明すると、第1のツール57には、ネジ63によってホルダー本体28が固定されている。また、第1のツール57には、ネジ64によって第2のツール58が固定されている。第1のツール57とホルダー本体28は、ネジ63の取り付けおよび取り外しにより、互いに着脱可能に構成されている。また、第1のツール57と第2のツール58は、ネジ64の取り付けおよび取り外しにより、互いに着脱可能に構成されている。
【0068】
突き出し量設定部材56は、第2のツール58に取り付けられている。突き出し量設定部材56と第2のツール58との間には、バネ65が介在している。バネ65は、遮蔽部材29の先端面29bに第1の接触部61を押し付けるように突き出し量設定部材56を付勢する付勢部材に相当する。バネ65は、たとえばコイルバネによって構成されるが、バネの種類は問わない。また、バネ65に代えて、図示しないゴム状弾性体によって付勢部材を構成してもよい。
【0069】
続いて、上記構成からなる試料位置決め治具55を用いて試料11を試料ホルダー27にセットする場合の手順について説明する。
まず、オペレーターは、
図28に示すように、遮蔽部材29を支持するホルダー本体28と第1のツール57とをネジ63によって固定する。これにより、ホルダー本体28に第1のツール57が固定される。
【0070】
次に、オペレーターは、
図29に示すように、第1のツール57と第2のツール58とをネジ64によって固定する。これにより、第1のツール57に第2のツール58が装着される。第2のツール58には予め突き出し量設定部材56が取り付けられている。第1のツール57に第2のツール58を装着する場合は、突き出し量設定部材56の第1の接触部61を遮蔽部材29の先端面29bに接触させる。その際、第1の接触部61は、バネ65の付勢力によって遮蔽部材29の先端面29bに押し付けられる。
【0071】
次に、オペレーターは、上記
図25に示すように、遮蔽部材29の上に試料11を載せて、試料11の先端面11aを突き出し量設定部材56の第2の接触部62に押し当てる。試料11の先端面11aを第2の接触部62に押し当てる方法は、たとえば下記の(a)~(d)に示すように、種々の方法が考えられる。
(a)試料11の後端を工具などで押す。
(b)試料11の後端をバネの力を利用して押す。
(c)試料11の後端をネジによって押し込む。
(d)試料位置決め治具55全体を傾斜させて試料11を重力によって滑り落とす。
【0072】
いずれの方法を採用する場合でも、試料11の押し当てによって突き出し量設定部材56の位置が動かないよう、バネ定数の大きなバネ65を用いるとよい。これにより、上記
図27に示すように、試料11の突き出し量Lが、第1の接触部61と第2の接触部62との段差Dに応じて所望の寸法に設定される。また、試料11の突き出し量Lは、遮蔽部材29のエッジ部29aを基準に設定される。
【0073】
次に、オペレーターは、遮蔽部材29に対して試料11をクリップ51によって固定する。次に、オペレーターは、第1のツール57から第2のツール58を取り外した後、ホルダー本体28から第1のツール57を取り外す。これにより、試料ホルダー27に対する試料11のセットが完了する。その後、オペレーターは、試料ホルダー27を試料ステージ18に装着する。以降は、上記第1実施形態と同様の手順で試料11を加工する。
【0074】
ここで、試料ホルダー27にセットされる試料11が、充電された電池材料である場合は、試料11の先端面11aを突き出し量設定部材56の第2の接触部62に接触させたときにショートを起こすおそれがある。このため、電池材料などの試料11を取り扱う場合は、ショートの発生を避けるために、突き出し量設定部材56を絶縁材料によって構成することが好ましい。ただし、ショートの発生を避けるためには、必ずしも突き出し量設定部材56全体を絶縁材料によって構成する必要はなく、第2の接触部62だけを絶縁材料によって構成してもよいし、試料11の先端面11aが接触する第2の接触部62の表面を絶縁膜によって被覆してもよい。また、試料11と突き出し量設定部材56との電気的な絶縁のための構成は、第5実施形態以外の実施形態にも適用可能である。また、突き出し量設定部材を用いた試料の位置決め方法は、上述した第1実施形態(
図3参照)~第4実施形態にも適用可能である。
【0075】
以下、本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具の具体例について説明する。なお、本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具によって得られる効果については、具体例の説明を終えた後に述べる。
【0076】
(第1具体例)
図30は、本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具の第1具体例を示す斜視図である。
図30に示すように、試料位置決め治具55-1は、突き出し量設定部材56-1と、第1のツール57-1と、第2のツール58-1とを備えている。
【0077】
図31は、
図30に示す試料位置決め治具55-1が備える第1のツール57-1の構成を示す斜視図であり、
図32は、
図30に示す試料位置決め治具55-1が備える突き出し量設定部材56-1および第2のツール58-1の構成を示す斜視図である。
【0078】
第1のツール57-1は、
図31に示すように、ホルダー受け部66と、固定用つまみ67と、ガイド溝68とを備えている。ホルダー受け部66は、第1のツール57-1に試料ホルダー(図示せず)を載せるときに、試料ホルダーを受ける部分である。
【0079】
固定用つまみ67は、ホルダー受け部66に載せられた試料ホルダーを固定するためのつまみである。固定用つまみ67は、図示しない雄ネジ部を有し、この雄ネジ部に対応する雌ネジ部69が第1のツール57-1に形成されている。雌ネジ部69は、第1のツール57-1を正面から見て、左右に1つずつ形成され、そのうちの一方の雌ネジ部(図示せず)に固定用つまみ67の雄ネジ部が噛み合っている。雌ネジ部69を左右両方に形成しておけば、オペレーターが右利きか左利きかにかかわらず、操作しやすい側に固定用つまみ67を取り付けて試料位置決め治具55-1を使用することができる。
【0080】
ガイド溝68は、第2のツール58-1を第1のツール57-1に取り付ける場合に、第1のツール57-1の取り付け位置をガイドする溝である。ガイド溝68は、第1のツール57-1を正面から見て、第1のツール57-1の左右両側に形成されている。
【0081】
第2のツール58-1は、
図32に示すように、突き当て部70と、固定用つまみ71と、アーム部72と、取り付け用ブロック73とを備えている。突き当て部70は、第2のツール58-1を第1のツール57-1に取り付ける場合に、第1のツール57-1に突き当てられる部分である。固定用つまみ71は、第2のツール58-1を第1のツール57-1に固定するためのつまみである。固定用つまみ71は、図示しない雄ネジ部を有し、この雄ネジ部に対応する雌ネジ部74が第2のツール58-1に形成されている。雌ネジ部74は、第2のツール58-1を正面から見て、左右に1つずつ形成され、そのうちの一方の雌ネジ部(図示せず)に固定用つまみ71の雄ネジ部が噛み合っている。雌ネジ部74を左右両方に形成しておけば、オペレーターが右利きか左利きかにかかわらず、操作しやすい側に固定用つまみ71を取り付けて試料位置決め治具55-1を使用することができる。
【0082】
アーム部72は、第2のツール58-1を第1のツール57-1に取り付ける場合に、第1のツール57-1のガイド溝68に挿入される部分である。アーム部72は、第2のツール58-1を正面から見て、第2のツール58-1の左右両側に形成されている。取り付け用ブロック73は、突き出し量設定部材56-1を取り付けるためのブロックである。取り付け用ブロック73は、突き当て部70にネジ止めで固定されている。
【0083】
なお、第1具体例においては、突き当て部70およびアーム部72が一体構造になっており、取り付け用ブロック73は突き当て部70にネジ止めで固定されているが、これに限らず、突き当て部70、アーム部72および取り付け用ブロック73を一体構造にしてもよい。
【0084】
図33は、第2のツール58-1に対する突き出し量設定部材56-1の取り付け構造を示す断面図であり、
図34は、その斜視図である。
図33および
図34に示すように、突き出し量設定部材56-1は、一対のガイドピン75と、抜け止め用ネジ76と、バネ77とを用いて、第2のツール58-1の取り付け用ブロック73に取り付けられている。バネ77は、上述したバネ65(
図25参照)と同様に、付勢部材に相当する。バネ77の一端側は、突き出し量設定部材56-1に形成されたポケット部56aに挿入され、バネ77の他端側は、取り付け用ブロック73に形成されたネジ孔73aに挿入されている。ネジ孔73aには、セットスクリュー(六角孔付き止めネジ)78が挿入されている。セットスクリュー78は、ネジ孔73aの中心軸方向に移動可能である。セットスクリュー78は、ネジ孔73aの中心軸方向でバネ77の端部位置を変えることにより、バネ77による突き出し量設定部材56-1の付勢力を調整可能である。
【0085】
一対のガイドピン75は、
図34に矢印で示す突き出し量設定部材56-1の回転方向のずれを抑制するピンである。一対のガイドピン75は、互いに平行に配置されている。一対のガイドピン75は、取り付け用ブロック73に対して突き出し量設定部材56-1が接近離間する方向に、突き出し量設定部材56-1を移動自在に案内している。各々のガイドピン75の一端側は、突き出し量設定部材56-1に形成された第1のピン挿入孔(図示せず)に挿入され、各々のガイドピン75の他端側は、取り付け用ブロック73に形成された第2のピン挿入孔73b(
図30参照)に挿入されている。
【0086】
抜け止め用ネジ76は、バネ77の一端側がポケット部56aから抜け出たり、各々のガイドピン75の一端側が第1のピン挿入孔から抜け出たりしないよう、取り付け用ブロック73に対する突き出し量設定部材56-1の最大離間距離を規定するネジである。抜け止め用ネジ76は、頭部76aと、軸部76bと、雄ネジ部76cとを一体に有している。これに対し、取り付け用ブロック73には、大径孔73cと小径孔73dからなる段付き孔が形成されている。抜け止め用ネジ76の頭部76aは、大径孔73cに収容されている。抜け止め用ネジ76の軸部76bは、小径孔73dに挿入されている。大径孔73cの直径は頭部76aの直径よりも大きく設定されている。小径孔73dの直径は軸部76bの直径よりも大きく設定されている。小径孔73dと軸部76bとの間には、両者の寸法差に応じたクリアランスG1が存在する。このクリアランスG1の存在により、取り付け用ブロック73は、抜け止め用ネジ76の揺動を適度に吸収できる構造になっている。一方、突き出し量設定部材56-1には、雌ネジ部56bが形成されている。抜け止め用ネジ76の雄ネジ部76cは、この雌ネジ部56bに噛み合っている。なお、抜け止め用ネジ76の構造については、軸部76bのほぼ全長にわたって雄ネジ部76cが形成されていてもよい。
【0087】
上記構成からなる試料位置決め治具55-1において、突き出し量設定部材56-1は、バネ77の付勢力により、一対のガイドピン75に案内されて取り付け用ブロック73から離間する方向に付勢される。また、突き出し量設定部材56-1は、バネ77の付勢力によって抜け止め用ネジ76の頭部76aが段付き孔(大径孔73c、小径孔73d)の段部に突き当たることにより、取り付け用ブロック73から所定の距離だけ離間した状態に保持される。この状態で、突き出し量設定部材56-1をバネ77の付勢力に抗して取り付け用ブロック73の側に押し込むと、
図33に示すように、抜け止め用ネジ76の頭部76aが段付き孔(大径孔73c、小径孔73d)の段部から離れる。
【0088】
続いて、試料位置決め治具55-1を用いて試料11を位置決めする場合の手順について説明する。
まず、オペレーターは、遮蔽部材29を含む試料ホルダーを第1のツール57-1のホルダー受け部66に載せる。次に、オペレーターは、固定用つまみ67を回転操作することにより、試料ホルダーを第1のツール57-1に固定する。このとき、遮蔽部材29は、固定用つまみ67により試料ホルダーと共に固定される。
【0089】
次に、オペレーターは、第1のツール57-1に第2のツール58-1を取り付ける。この取り付けに際して、オペレーターは、第2のツール58-1のアーム部72を第1のツール57-1のガイド溝68に挿入すると共に、第2のツール58-1の突き当て部70を第1のツール57-1に突き当てる。これにより、突き出し量設定部材56-1の第1の接触部61-1は、遮蔽部材29の先端面29bに接触する。また、バネ77は、遮蔽部材29の先端面29bに第1の接触部61-1を押し付けるように突き出し量設定部材56-1を付勢する。また、突き出し量設定部材56-1は、バネ77の付勢力に抗して取り付け用ブロック73の側に押し込まれる。
【0090】
その際、
図33に示すように、小径孔73dと軸部76bとの間にクリアランスG1が存在すると、このクリアランスG1の存在によって抜け止め用ネジ76が揺動する。抜け止め用ネジ76の揺動は、遮蔽部材29の先端面29bの傾斜角度θa(
図27参照)に倣って突き出し量設定部材56-1が傾斜することによって起こる.これにより、突き出し量設定部材56-1の第1の接触部61-1を遮蔽部材29の先端面29bに密着させることができる。
【0091】
次に、オペレーターは、固定用つまみ71を回転操作することにより、第2のツール58-1を第1のツール57-1に固定する。次に、オペレーターは、遮蔽部材29の上に試料11を載せた後、試料11の先端面11aを突き出し量設定部材56-1の第2の接触部62-1に押し当てる。押し当て方法は前述したとおりである。次に、オペレーターは、遮蔽部材29に対して試料11をクリップ51によって固定する。以降の手順については、上記第5実施形態で記述した内容と重複するため、説明を省略する。
【0092】
(第2具体例)
図35は、本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具の第2具体例を示す側面図である。また、
図36は、
図35に示す試料位置決め治具55-2が備える第1のツール57-2の構成を示す斜視図であり、
図37は、
図35に示す試料位置決め治具55-2が備える第2のツール58-2および突き出し量設定部材56-2の構成を示す斜視図である。
【0093】
図35~
図37に示すように、試料位置決め治具55-2は、突き出し量設定部材56-2と、第1のツール57-2と、第2のツール58-2とを備えている。
【0094】
第1のツール57-2は、
図36に示すように、ホルダー受け部80と、固定用つまみ81と、凹部82と、3つの取り付け用ピン83と、上下一対の突き当て面84とを備えている。ホルダー受け部80は、第1のツール57-2に試料ホルダー(図示せず)を載せるときに、試料ホルダーを受ける部分である。
【0095】
固定用つまみ81は、ホルダー受け部80に載せられた試料ホルダーを固定するためのつまみである。固定用つまみ81は、図示しない雄ネジ部を有し、この雄ネジ部が、第1のツール57-2に形成された雌ネジ部(図示せず)に噛み合っている。凹部82は、突き当て面84よりも凹んで形成されている。第1のツール57-2における凹部82の内側は、貫通した空間になっている。一対の突き当て面84は、互いに同一平面をなすように形成されている。
【0096】
取り付け用ピン83は、第1のツール57-2に第2のツール58-2を取り付けるためのピンである。3つの取り付け用ピン83は、第1のツール57-2を正面から見て、三角形の頂点に位置するように配置されている。また、3つの取り付け用ピン83のうち、2つの取り付け用ピン83は上側の突き当て面84に配置され、1つの取り付け用ピン83は下側の突き当て面84に配置されている。各々の取り付け用ピン83は、
図38に示すように、頭部83aと軸部83bと雄ネジ部83cとを一体に有する。これに対し、第1のツール57-2の突き当て面84には雌ネジ部85が形成され、この雌ネジ部85に雄ネジ部83cを噛み合わせることにより、第1のツール57-2に取り付け用ピン83が固定されている。
【0097】
第2のツール58-2は、
図37に示すように、3つの取り付け用孔86と、上下一対の突き当て面87と、収容部88と、凹溝89とを備えている。3つの取り付け用孔86は、上述した3つの取り付け用ピン83に対応して第2のツール58-2に形成された孔である。取り付け用孔86の内径は、取り付け用ピン83の頭部83aの外径よりも僅かに大きく設定されている。
【0098】
また、第2のツール58-2には、
図38に示すように、ネジ孔90が形成されている。ネジ孔90は、取り付け用孔86に直交する状態で形成されている。ネジ孔90にはボールプランジャ91が挿入されている。ボールプランジャ91は、図示しないバネを内蔵しており、このバネによって付勢されたボール91aを有している。ボール91aは、取り付け用孔86の内周面よりも取り付け用孔86の径方向内側に突き出して配置されている。
【0099】
一対の突き当て面87は、上述した一対の突き当て面84に対応して第2のツール58-2に形成されている。一対の突き当て面87は、互いに同一平面をなすように形成されている。収容部88は、突き出し量設定部材56-2を収容する部分である。収容部88は、第2のツール58-2を正面から見て、第2のツール58-2の中央部に形成されている。凹溝89は、試料位置決め治具55の側方から突き出し量設定部材56-2の第1の接触部61-2および第2の接触部62-2を確認できるよう、突き当て面87よりも凹んで形成されている。凹溝89は、第2のツール58-2を正面から見て、収容部88の左右両側から第2のツール58-2の左右端まで水平に形成されている。
【0100】
図39は、第2のツール58-2に対する突き出し量設定部材56-2の取り付け構造を示す断面図である。
図39に示すように、突き出し量設定部材56-2は、抜け止め用ネジ92と、バネ93とを用いて、第2のツール58-2の収容部88に取り付けられている。バネ93は、上述したバネ65(
図25参照)と同様に、付勢部材に相当する。バネ93の一端側は、突き出し量設定部材56-2に形成された第1ポケット部94に挿入され、バネ93の他端側は、第2のツール58-2に形成された第2ポケット部95に挿入されている。
【0101】
抜け止め用ネジ92は、バネ93の一端側が第1ポケット部94から抜け出たり、バネ93の他端側が第2ポケット部95から抜け出たりしないよう、収容部88の奥側端面88aに対する突き出し量設定部材56-2の最大離間距離を規定するネジである。抜け止め用ネジ92は、頭部92aと、軸部92bと、雄ネジ部92cとを一体に有している。これに対し、第2のツール58-2には、大径孔96aと小径孔96bからなる段付き孔が形成されている。抜け止め用ネジ92の頭部92aは、大径孔96aに収容されている。抜け止め用ネジ92の軸部92bは、小径孔96bに挿入されている。大径孔96aの直径は頭部92aの直径よりも大きく設定されている。小径孔96bの直径は軸部92bの直径よりも大きく設定されている。小径孔96bと軸部92bとの間には、両者の寸法差に応じたクリアランスG2が存在する。このクリアランスG2の存在により、第2のツール58-2は、抜け止め用ネジ92の揺動を適度に吸収できる構造になっている。一方、突き出し量設定部材56-2には、雌ネジ部97が形成されている。抜け止め用ネジ92の雄ネジ部92cは、この雌ネジ部97に噛み合っている。
【0102】
また、
図36および
図37に示すように、第1のツール57-2の上面には左右一対の位置合わせ用溝98が形成され、この位置合わせ用溝98に対応して第2のツール58-2の上面にも左右一対の位置合わせ用溝99が形成されている。
【0103】
なお、突き出し量設定部材56-2の回転方向のずれは、前述した第1具体例と同様に、一対のガイドピンによって抑制される構成になっている。また、抜け止め用ネジ92の構造については、軸部92bのほぼ全長にわたって雄ネジ部92cが形成されていてもよい。
【0104】
上記構成からなる試料位置決め治具55-2において、突き出し量設定部材56-2は、バネ93の付勢力により、収容部88の奥側端面88aから離間する方向に付勢される。また、突き出し量設定部材56-2は、バネ93の付勢力によって抜け止め用ネジ92の頭部92aが段付き孔(96a、96b)の段部に突き当たることにより、収容部88の奥側端面88aから所定の距離だけ離間した状態に保持される。この状態で、突き出し量設定部材56-2をバネ93の付勢力に抗して収容部88の奥側に押し込むと、
図39に示すように、抜け止め用ネジ92の頭部92aが段付き孔(96a、96b)の段部から離れる。
【0105】
続いて、試料位置決め治具55-2を用いて試料11を位置決めする場合の手順について説明する。
まず、オペレーターは、遮蔽部材29を含む試料ホルダーを第1のツール57-2のホルダー受け部80に載せる。次に、オペレーターは、固定用つまみ81を回転操作することにより、試料ホルダーを第1のツール57-1に固定する。このとき、遮蔽部材29は、固定用つまみ81により試料ホルダーと共に固定される。
【0106】
次に、オペレーターは、第1のツール57-2に第2のツール58-2を取り付ける。この取り付けに際して、オペレーターは、第1のツール57-2の位置合わせ用溝98と第2のツール58-2の位置合わせ用溝99とを目印に、ツール同士の位置を合わせる。また、オペレーターは、第2のツール58-2の取り付け用孔86に第1のツール57-2の取り付け用ピン83を挿入しつつ、各々のツールの突き当て面84,87同士を突き当てる。これにより、突き出し量設定部材56-2の第1の接触部61-2は、遮蔽部材29の先端面29bに接触する。また、バネ93は、遮蔽部材29の先端面29bに第1の接触部61-2を押し付けるように突き出し量設定部材56-2を付勢する。また、突き出し量設定部材56-2は、バネ93の付勢力に抗して収容部88の奥側に押し込まれる。
【0107】
その際、
図39に示すように、小径孔96bと軸部92bとの間にクリアランスG2が存在すると、このクリアランスG2の存在によって抜け止め用ネジ92が揺動する。抜け止め用ネジ92の揺動は、遮蔽部材29の先端面29bの傾斜角度θa(
図27参照)に倣って突き出し量設定部材56-2が傾斜することによって起こる。これにより、突き出し量設定部材56-2の第1の接触部61-2を遮蔽部材29の先端面29bに密着させることができる。
【0108】
一方、ボールプランジャ91のボール91aは、
図38に示すように、取り付け用ピン83の頭部83aによって一旦、押し込まれた後、頭部92aを乗り越える。そして、突き当て面84,87同士を突き当てた状態では、頭部83aと軸部83bとの境界部に形成される斜面83dにボール91aが接触する。また、ボール91aは、ボールプランジャ91に内蔵されたバネの力F3で斜面83dに押し付けられる。そうすると、第2のツール58-2には、取り付け用ピン83の中心軸方向と平行な向きに引き込み力F4が加わり、この引き込み力F4によって第2のツール58-2が第1のツール57-2に固定される。
【0109】
次に、オペレーターは、遮蔽部材29の上に試料11を載せた後、試料11の先端面11aを突き出し量設定部材56-2の第2の接触部62-2に押し当てる。押し当て方法は前述したとおりである。次に、オペレーターは、遮蔽部材29に対して試料11をクリップ51によって固定する。以降の手順については、上記第5実施形態で記述した内容と重複するため、説明を省略する。
【0110】
なお、上記第2具体例においては、第1のツール57-2に第2のツール58-2を取り付けてツール同士を固定するために、取り付け用ピン83、取り付け用孔86、ネジ孔90およびボールプランジャ91を利用しているが、これに限らず、たとえば下記の第3具体例のように磁力を利用してもよい。
【0111】
(第3具体例)
図40は、本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具の第3具体例として、第1のツール57-3の構成を示す斜視図であり、
図41は、第2のツール58-3および突き出し量設定部材56-3の構成を示す斜視図である。なお、この第3具体例においては、前述した第2具体例のツール構成と相違する点について説明し、重複する内容は省略する。
【0112】
第1のツール57-3は、
図40に示すように、ホルダー受け部100と、固定用つまみ101と、凹部102と、3つの止めネジ103と、上下一対の突き当て面104とを備えている。ホルダー受け部100、固定用つまみ101、凹部102、および上下一対の突き当て面104については、上記第2具体例におけるホルダー受け部80、固定用つまみ81、凹部82、上下一対の突き当て面84と同様である。
【0113】
3つの止めネジ103は、第1のツール57-2を正面から見て、三角形の頂点に位置するように配置されている。また、3つの止めネジ103のうち、2つの止めネジ103は上側の突き当て面104に配置され、1つの止めネジ103は下側の突き当て面104に配置されている。各々の止めネジ103は、
図42に示すように、第1のツール57-3に形成されたネジ孔105に噛み合っている。止めネジ103は、磁性材料からなる六角孔付き止めネジによって構成されている。止めネジ103の一端は、突き当て面104に開口するネジ孔105の出口部分において、突き当て面104と面一、もしくは突き当て面104よりも僅かにネジ孔105の奥側に凹んで配置されている。
【0114】
第2のツール58-3は、
図41に示すように、3つの磁石106と、上下一対の突き当て面107と、収容部108と、凹溝109とを備えている。上下一対の突き当て面107、収容部108および凹溝109については、上記第2具体例における上下一対の突き当て面87、収容部88および凹溝89と同様である。第2のツール58-3には、突き出し量設定部材56-3が取り付けられている。第2のツール58-3に対する突き出し量設定部材56-3の取り付け構造については、上記第2具体例の場合と同様である。また、
図40および
図41に示すように、第1のツール57-3の上面に左右一対の位置合わせ用溝118を形成し、この位置合わせ用溝118に対応して第2のツール58-3の上面に左右一対の位置合わせ用溝119を形成する点についても、上記第2具体例の場合と同様である。
【0115】
3つの磁石106は、上述した3つの止めネジ103に対応して第2のツール58-3に埋め込まれている。各々の磁石106は、たとえば、圧入、接着などによって第2のツール58-3に固定されている。また、磁石106の一端面は、突き当て面107と面一、もしくは突き当て面107よりも僅かに凹んで配置されている。
【0116】
続いて、上記構成からなる第1のツール57-3および第2のツール58-3を備える試料位置決め治具を用いて試料11を位置決めする場合の手順について説明する。
まず、オペレーターは、第1のツール57-3に第2のツール58-3を取り付ける。この取り付けに際して、オペレーターは、まず、第1のツール57-3の位置合わせ用溝118と第2のツール58-3の位置合わせ用溝119とを目印に、ツール同士の位置を合わせる。これにより、3つの止めネジ103と3つの磁石106との位置合わせがなされる。また、オペレーターは、第1のツール57-3の止めネジ103に第2のツール58-3の磁石106を近づける。そうすると、
図42に示すように、止めネジ103と磁石106との間に発生する磁気吸引力F5により、各々のツールの突き当て面104,107同士が突き当たる。これにより、第1のツール57-3に第2のツール58-3を取り付けてツール同士を固定することができる。
【0117】
上述した第1具体例、第2具体例および第3具体例を含む、本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具55においては、突き出し量設定部材56が有する第1の接触部61および第2の接触部62のうち、遮蔽部材29の先端面29bに第1の接触部61を接触させ、かつ、試料11の先端面11aに第2の接触部62を接触させることにより、試料11の突き出し量Lが設定される。そのため、本発明の第5実施形態に係る試料位置決め治具55によれば、試料11の突き出し量Lの設定を簡易な操作で行うことができる。また、試料11のセットをグローブボックス内で行う場合でも、突き出し量の設定作業を容易に行うことができる。また、所望の突き出し量が異なる試料11を取り扱う場合は、上述した段差D(
図27参照)が異なる複数の突き出し量設定部材56を用意しておき、その中から所望の突き出し量に適合する突き出し量設定部材56を選んで使用することにより、適切に対応することができる。また、遮蔽部材29を固定可能な第1のツール57を備える構成であれば、遮蔽部材29の材質および形状に関係なく、試料11の突き出し量Lを設定することができる。
【0118】
<第6実施形態>
図43は、本発明の第6実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
本発明の第6実施形態に係る試料位置決め治具は、前述した第5実施形態に係る試料位置決め治具(
図25参照)と比較して、第1のツール57および第2のツール58を、単体のツールで構成した点が異なる。具体的には、
図43に示すように、試料位置決め治具55は、ホルダー本体28にネジ63によって固定されるツール120を備え、このツール120が一体構造になっている。
【0119】
本発明の第6実施形態に係る試料位置決め治具55では、ツール120を一体構造とすることにより、上記第5実施形態に係る試料位置決め治具に比べて、第1のツール57に第2のツール58を取り付けたり、第1のツール57から第2のツール58を取り外したりする操作が不要になる。このため、試料11の突き出し量Lの設定を、より簡易な操作で行うことができる。
【0120】
<第7実施形態>
図44は、本発明の第7実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
本発明の第7実施形態に係る試料位置決め治具は、前述した第5実施形態に係る試料位置決め治具(
図25参照)と比較して、突き出し量設定部材56を透明な材料によって構成した点と、第1のツール57に観察窓122を形成した点とが異なる。突き出し量設定部材56を構成する透明な材料としては、たとえば、ガラス、樹脂などを挙げることができる。
【0121】
観察窓122は、突き出し量設定部材56を通して試料11の加工対象部11bを観察可能な位置に形成されている。また、観察窓122は、たとえば第1のツール57に貫通孔を設け、この貫通孔を透明な材料(ガラス、樹脂など)で埋めることによって形成される。なお、観察窓122は、第1のツール57に設けられた貫通孔のみによって構成してもよい。
【0122】
本発明の第7実施形態に係る試料位置決め治具55においては、突き出し量設定部材56を用いて試料11の突き出し量を設定した後、
図44に示すZ1方向から目視、光学顕微鏡またはカメラによって、試料11の突き出し量を確認することができる。これにより、試料11の突き出し量が所望の突き出し量に一致しているかどうかを、ホルダー本体28から第1のツール57を取り外す前に、第1のツール57上で確認することが可能となる。
【0123】
なお、本発明の第7実施形態に係る試料位置決め治具は、第1のツール57に観察窓122を設けているが、本発明はこれに限らず、上記第5実施形態に係る試料位置決め治具のツール57、あるいは上記第6実施形態に係る試料位置決め治具のツール120に観察窓を設けてもよい。
【0124】
<第8実施形態>
図45は、本発明の第8実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
図45に示すように、試料位置決め治具55は、突き出し量設定部材56によって構成されている。突き出し量設定部材56は、第1の接触部61および第2の接触部62の他に、磁石123を有している。磁石123は、第1の接触部61の表面であって、かつ、遮蔽部材29の先端面29bと対向する位置に配置されている。突き出し量設定部材56が有する磁石123の数は、1つでもよいし、複数でもよい。遮蔽部材29は、たとえばステンレス鋼などの磁性材料によって構成される。
【0125】
続いて、上記構成からなる試料位置決め治具55を用いて試料11を位置決めする場合の手順について説明する。
まず、オペレーターは、遮蔽部材29の先端面29bと突き出し量設定部材56の第1の接触部61とを近づける。これにより、遮蔽部材29と突き出し量設定部材56との間に磁気吸引力が発生し、この磁気吸引力によって突き出し量設定部材56の第1の接触部61が遮蔽部材29の先端面29bに押し付けられる。
【0126】
次に、オペレーターは、突き出し量設定部材56の第1の接触部61を遮蔽部材29の先端面29bに接触させたまま、試料11の先端面11aを突き出し量設定部材56の第2の接触部62に突き当てる。次に、オペレーターは、遮蔽部材29に対して試料11をクリップ51によって固定する。次に、オペレーターは、遮蔽部材29から突き出し量設定部材56を取り外す。これにより、試料11のセットが完了する。
【0127】
本発明の第8実施形態に係る試料位置決め治具においては、磁石123を有する突き出し量設定部材56だけで、試料11の突き出し量を設定することができる。このため、上述した第5~第7実施形態の構成に比べて、試料位置決め治具55の部品点数を削減し、かつ、試料位置決め治具55の小型化を図ることができる。
【0128】
<第9実施形態>
図46は、本発明の第9実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
図46に示すように、試料位置決め治具55は、クリップ式の突き出し量設定部材56cを備えている。突き出し量設定部材56cは、第1の接触部61および第2の接触部62を有している。突き出し量設定部材56cの端部には、クリップ用のバネ125の一端が取り付けられている。バネ125の他端は、クリップ片126に取り付けられている。クリップ片126は、揺動支点部127を中心に揺動自在に支持されている。揺動支点部127は、突き出し量設定部材56cとクリップ片126との間に挟まれている。突き出し量設定部材56cおよびクリップ片126に対して、バネ125の力F7は外向きに加わっている。
【0129】
一方、遮蔽部材29は、ホルダー本体28に固定されている。遮蔽部材29は、たとえばバネ式の固定ピン(図示せず)によって遮蔽部材29の両端部をホルダー本体28に押さえ付けることにより、ホルダー本体28に固定される。また、遮蔽部材29が磁性材料によって構成される場合は、ホルダー本体28に磁石(図示せず)を設け、この磁石の磁気吸引力によって遮蔽部材29をホルダー本体28に固定してもよい。
【0130】
続いて、上記構成からなる試料位置決め治具55を用いて試料11を位置決めする場合の手順について説明する。
まず、オペレーターは、ホルダー本体28に遮蔽部材29を固定する。次に、オペレーターは、遮蔽部材29に突き出し量設定部材56cを取り付ける。その際、オペレーターは、バネ125の付勢力に抗して突き出し量設定部材56cの端部とクリップ片126の端部とを近づけ、その状態で突き出し量設定部材56cとクリップ片126との間に遮蔽部材29を挟んだ後、バネ125の力を解放する。そうすると、遮蔽部材29は、突き出し量設定部材56cとクリップ片126とによって挟み込まれる。このため、突き出し量設定部材56cの第1の接触部61は、バネ125の付勢力によって遮蔽部材29の先端面29bに押し付けられる。
【0131】
次に、オペレーターは、ホルダー本体28の上に試料11を載せた後、試料11の先端面11aを突き出し量設定部材56cの第2の接触部62に突き当てる。次に、オペレーターは、遮蔽部材29に対して試料11をクリップ51によって固定する。次に、オペレーターは、遮蔽部材29から突き出し量設定部材56cを取り外す。その際、オペレーターは、バネ125の付勢力に抗して突き出し量設定部材56cの端部とクリップ片126の端部とを近づけ、その状態で突き出し量設定部材56cとクリップ片126とを遮蔽部材29から分離する。これにより、試料11のセットが完了する。
【0132】
本発明の第9実施形態に係る試料位置決め治具においては、クリップ式の突き出し量設定部材56cだけで、試料11の突き出し量を設定することができる。このため、上述した第5~第7実施形態の構成に比べて、試料位置決め治具55の部品点数を削減し、かつ、試料位置決め治具55の小型化を図ることができる。
【0133】
なお、クリップ式の突き出し量設定部材56cは、
図47に示すように、遮蔽部材29の先端部にクリップ用の突起部29dが形成されている場合に用いてもよい。この場合は、遮蔽部材29の突起部29dを、バネ125の力F7で突き出し量設定部材56cとクリップ片126との間に挟み込む。これにより、突き出し量設定部材56cの第1の接触部61は、バネ125の付勢力によって遮蔽部材29の先端面29bに押し付けられる。このため、突き出し量設定部材56cの第2の接触部62に試料11の先端面11aを接触させることで、試料11の突き出し量を設定することができる。
【0134】
また、クリップ式の突き出し量設定部材56cは、
図48に示すように、ホルダー本体28を支持するベース部材128にバネ125を用いて取り付けられた構成であってもよい。この構成を採用した場合、オペレーターは、まず、バネ125の付勢力に抗して突き出し量設定部材56cをベース部材128から離間する方向に引き込み、その状態でベース部材128の上にホルダー本体28を載せる。次に、オペレーターは、突き出し量設定部材56cをバネ125の付勢力にしたがって遮蔽部材29に押し当てる。これにより、突き出し量設定部材56cの第1の接触部61は、バネ125の付勢力によって遮蔽部材29の先端面29bに押し付けられる。このため、突き出し量設定部材56cの第2の接触部62に試料11の先端面11aを接触させることで、試料11の突き出し量を設定することができる。
【0135】
<第10実施形態>
図49は、本発明の第10実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
本発明の第10実施形態に係る試料位置決め治具55は、前述した第5実施形態に係る試料位置決め治具55(
図25参照)と比較して、2つの点が異なる。
1つは、遮蔽部材29と試料固定部材31との間に試料11を挟んで固定している点である。もう1つは、突き出し量設定部材56の第2の接触部62が、試料固定部材31の先端31aと試料11の先端面11aとに接触するように構成している点である。
【0136】
上記構成の試料位置決め治具55を用いて試料11を位置決めする場合は、まず、突き出し量設定部材56の第1の接触部61をバネ65の付勢力によって遮蔽部材29の先端面29bに接触させる。次に、遮蔽部材29の上に試料11と試料固定部材31とを載せた後、突き出し量設定部材56の第2の接触部62に試料11の先端面11aと試料固定部材31の先端31aとを接触させ、この状態でクリップ51により試料11と試料固定部材31とを固定する。これにより、遮蔽部材29、試料11および試料固定部材31が位置決めされると共に、試料11の突き出し量が設定される。この場合、試料固定部材31の先端31aは、試料11の先端面11aよりも突き出した状態になる。
【0137】
<第11実施形態>
図50は、本発明の第11実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図であり、
図51は、
図50に示す試料位置決め治具の構成を示す概略平面図である。なお、
図51においては、ホルダー本体28、クリップ51およびバネ53を省略している。
本発明の第11実施形態に係る試料位置決め治具55は、上述した第10実施形態に係る試料位置決め治具55(
図49参照)と比較して、第2のツール58に一対の突き出し部58aを設けた点が異なる。各々の突き出し部58aの突端面58bは、遮蔽部材29と試料固定部材31とを位置決めするための基準面である。
【0138】
上記構成の試料位置決め治具55を用いて試料11を位置決めする場合は、遮蔽部材29のエッジ部29aに突き出し部58aの突端面58bが接触するように、第1のツール57に第2のツール58を取り付ける。このとき、突き出し量設定部材56の第1の接触部61は、バネ65の付勢力によって遮蔽部材29の先端面29bに接触した状態となる。次に、遮蔽部材29の上に試料11と試料固定部材31とを載せる。次に、突き出し量設定部材56の第2の接触部62に試料11の先端面11aを接触させると共に、突き出し部58aの突端面58bに試料固定部材31の先端31aを接触させ、この状態でクリップ52により試料11と試料固定部材31とを固定する。これにより、遮蔽部材29、試料11および試料固定部材31が位置決めされると共に、試料11の突き出し量が設定される。この場合は、一対の突き出し部58aの突端面58bに遮蔽部材29のエッジ部29aと試料固定部材31の先端31aとを接触させることにより、遮蔽部材29のエッジ部29aの位置と試料固定部材31の先端31aの位置を揃えて配置することができる。
【0139】
<第12実施形態>
本発明の第12実施形態に係る試料位置決め治具は、上述した第2実施形態に係るイオンミリング装置が備える試料ホルダー27(
図9参照)の構成に適用される治具である。
図52は、本発明の第12実施形態に係る試料位置決め治具の構成を示す概略側面図である。
図52に示すように、試料位置決め治具55は、前述した第5実施形態等と同様に、突き出し量設定部材56と、第1のツール57と、第2のツール58とを備えている。第1のツール57および第2のツール58は一体構造になっていてもよい。第1のツール57には起立部57aが設けられている。起立部57aは、第1のツール57に一体に形成されている。ただし、これに限らず、起立部57aは、ネジ止め等によって第1のツール57に固定される構成であってもよい。起立部57aは、垂直な基準面57bを有している。基準面57bは、遮蔽部材29と試料固定部材31とを位置決めするための面である。
【0140】
上記構成からなる試料位置決め治具55を用いて試料11を位置決めする場合は、まず、
図52に示すように、クランプ部材41にネジ63を用いて第1のツール57を取り付けるとともに、第1のツール57にネジ64を用いて第2のツール58を取り付ける。このとき、遮蔽部材29のエッジ部29aを起立部57aの基準面57bに接触させて、ネジ43により遮蔽部材29をクランプ部材41に固定する。また、試料固定部材31の先端31aを起立部57aの基準面57bに接触させて、ネジ44により試料固定部材31をクランプ部材42に固定する。これにより、遮蔽部材29のエッジ部29aの位置と試料固定部材31の先端31aの位置を揃えて配置することができる。なお、この段階では、クランプ部材41とクランプ部材42との間に、試料11の厚み寸法よりも若干大きい隙間を確保しておく。
【0141】
次に、ネジ63を緩めることによりクランプ部材41と第1のツール57との固定状態を解除した後、
図53に示すように、試料ホルダー27と試料位置決め治具55の向きを図の左右方向で相対的に反転させて、ネジ63によりクランプ部材41と第1のツール57とを固定する。このとき、遮蔽部材29の先端面29bを突き出し量設定部材56の第1の接触部61に接触させる。また、試料ホルダー27を試料位置決め治具55に載せる前に、クランプ部材41とクランプ部材42との間に試料11を挿入しておく。次に、試料11の先端面11aを突き出し量設定部材56の第2の接触部62に接触させ、その状態で一対のネジ45a,45b(
図52および
図53ではネジ45bのみ表示)を締め付ける。これにより、遮蔽部材29のエッジ部29aを基準に試料11の突き出し量を設定することができる。
【0142】
なお、起立部57aの基準面57bと同様の位置決め機能は、前述した実施形態に係る試料位置決め治具に持たせることも可能である。たとえば、上記
図31に示すように、第1のツール57-1に起立部57a-1を設け、この起立部57a-1が有する基準面57b-1により、遮蔽部材29と試料固定部材31とを位置決めすることができる。また、
図41に示す第2のツール58-3においては、突き当て面107と反対側(裏側)の面を基準面とし、この基準面により遮蔽部材29と試料固定部材31とを位置決めすることができる。
【0143】
以下に、本発明に係る試料位置決め治具の好ましい態様を付記する。
(付記1)
試料の加工位置を決めるエッジ部を先端に有し、前記試料の加工対象部を除く部分を遮蔽する遮蔽部材を備えるイオンミリング装置に用いられる試料位置決め治具であって、
前記遮蔽部材の前記エッジ部からの前記試料の突き出し量を設定する突き出し量設定部材を備え、
前記突き出し量設定部材は、前記遮蔽部材の先端面に接触する第1の接触部と、前記第1の接触部よりも凹んで形成され、前記試料の先端面に接触する第2の接触部と、を有する
試料位置決め治具。
(付記2)
前記遮蔽部材の先端面に前記第1の接触部を押し付けるように前記突き出し量設定部材を付勢する付勢部材を備える
付記1に記載の試料位置決め治具。
(付記3)
前記付勢部材はバネである
付記2に記載の試料位置決め治具。
(付記4)
前記遮蔽部材が固定されるツールを備え、
前記突き出し量設定部材は、前記ツールに取り付けられている
付記1~3のいずれか一つに記載の試料位置決め治具。
(付記5)
前記ツールは、前記遮蔽部材が固定される第1のツールと、前記第1のツールに着脱可能な第2のツールと、を備え、
前記突き出し量設定部材は、前記第2のツールに取り付けられている
付記4に記載の試料位置決め治具。
(付記6)
前記ツールは、一体構造になっている
付記4に記載の試料位置決め治具。
(付記7)
前記突き出し量設定部材は、透明な材料によって構成され、
前記ツールは、前記突き出し量設定部材を通して前記試料の前記加工対象部を観察可能な位置に観察窓を有する
付記4に記載の試料位置決め治具。
(付記8)
前記遮蔽部材は、磁性材料によって構成され、
前記突き出し量設定部材は、前記遮蔽部材の先端面と対向する位置に磁石を有する
付記1に記載の試料位置決め治具。
(付記9)
前記突き出し量設定部材の少なくとも前記第2の接触部は、絶縁材料によって構成されている
付記1~8のいずれか一つに記載の試料位置決め治具。
【0144】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。たとえば、上述した実施形態では、本発明の内容を理解しやすいように説明しているが、本発明は、上述した実施形態で説明したすべての構成を必ずしも備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、これを削除し、または他の構成を追加し、あるいは他の構成に置換することも可能である。
【符号の説明】
【0145】
10…イオンミリング装置
11…試料
11a…先端面
11b…加工対象部
12…イオンビーム
27…試料ホルダー
29…遮蔽部材
29a…エッジ部
29b…先端面
31…試料固定部材
33…支持部
34…第1面
35…第2面
41…クランプ部材(第1のクランプ部材)
42…クランプ部材(第2のクランプ部材)
45a,45b…ネジ(締め付け部材)
55…試料位置決め治具
37,56…突き出し量設定部材
57…第1のツール
58…第2のツール
61…第1の接触部
62…第2の接触部
122…観察窓
123…磁石
バネ…バネ(付勢部材)
L…突き出し量
θ…角度