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特開2022-32794硬化性シリコーン組成物、封止材、および光半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032794
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物、封止材、および光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20220217BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020136991
(22)【出願日】2020-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】520070769
【氏名又は名称】デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 真弓
(72)【発明者】
【氏名】竹内 絢哉
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP04X
4J002CP14W
4J002GJ02
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】ガラス基板上への優れた濡れ性を示すことができるとともに、平滑な表面の硬化物を形成できる、硬化性シリコーン組成物を提供すること。
【解決手段】(A-1)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超であるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(A-2)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超である直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(B)全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて2質量%以下で含まれる、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%以下である直鎖状オルガノポリシロキサン、又は、セリウム含有オルガノポリシロキサン、(C)(B)成分とは異なる、一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含む、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び(D)ヒドロシリル化反応用触媒、を含む、硬化性シリコーン組成物により、上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A-1)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超であるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(A-2)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超である直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて2質量%以下で含まれる、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%以下である直鎖状オルガノポリシロキサン、又は、セリウム含有オルガノポリシロキサン、
(C)(B)成分とは異なる、一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含む、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(D)ヒドロシリル化反応用触媒、を含む、硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(A-1)及び(A-2)成分のオルガノポリシロキサンの含有量が、組成物中の全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、30質量%以上90質量%以下である、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
(B)成分のオルガノポリシロキサンが、500以上の数平均分子量を有する、請求項1または2に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
(B)成分のオルガノポリシロキサンの含有量が、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、1.5質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンがケイ素原子結合アリール基を含み、(C)成分のケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が、5モル%以上50モル%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量が、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、5質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物を含む、封止材。
【請求項8】
請求項7に記載の封止材を備える、光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性シリコーン組成物に関し、より具体的には、光半導体の封止材に好適に用いられる硬化性シリコーン組成物に関する。また、本発明は、こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物からなる封止材により封止された光半導体装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、硬化して、優れた耐熱性、耐候性、及び透明性を有する硬化物を形成することから、光学材料として広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂の少なくとも1種からなる主剤(X)(屈折率RI):100質量部に、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂の少なくとも1種からなり、主剤(X)とは屈折率の異なる添加剤(Y)(屈折率RI):0質量部を超え100質量部以下が添加・分散されているものであり、前記主剤(X)と前記添加剤(Y)の屈折率差が、未硬化の状態で|RI-RI|≧0.0050のものであることを特徴とする硬化性樹脂組成物が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、(A)化学式1:(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2の平均組成式を有するポリオルガノシロキサンと、(B)化学式2:(R SiO1/2)e(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2の平均組成式を有するポリオルガノシロキサンと、(C)化学式3の化合物とを含み、数式1:|A-B|>0.03(前記化学式1~3において、R、RおよびYはそれぞれ独立的なエポキシ基または一価炭化水素基であり、Rのうち少なくとも1つまたはRのうち少なくとも1つはアルケニル基であり、aは0または正数であり、bは正数であり、cは0または正数であり、dは0または正数であり、b/(b+c+d)は0.65以上であり、eは0または正数であり、fは0または正数であり、gは0または正数であり、hは0または正数であり、f/(f+g+h)は0.65未満であり、gとhは同時に0でなく、iは0.2~1であり、jは0.9~2であり、数式1において、Aは前記(A)~(C)成分のうちのいずれか一成分の屈折率であり、Bは前記(A)~(C)成分のうちの他の2つの成分の混合物の屈折率である。)を満たすことを特徴とする硬化性組成物が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、(A)平均組成式(1):R SiO(4-a-b)/2(式中、Rはアルケニル基を示し、Rは脂肪族不飽和結合を有しない置換または非置換の1価炭化水素基を示し、aは0.0001~0.2を満たす正数であり、bは1.7~2.2を満たす正数であり、但しa+bは1.9~2.4を満たす正数である。)で示され、屈折率の異なる、珪素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンの混合物であって、前記オルガノポリシロキサン混合物に含まれるオルガノポリシロキサンの25℃における屈折率の差が0.05~0.12であるオルガノポリシロキサン混合物、(B)下記平均組成式(2):H SiO(4-c-d)/2(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない置換または非置換の1価炭化水素基を示し、cは0.001~1.0を満たす正数であり、dは0.5~2.2を満たす正数であり、但しc+dは0.72~2.5を満たす正数である。)で示され、珪素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンシロキサン:(A)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基1モルに対して、前記珪素原子に結合した水素原子が0.1~5モルとなる量、及び(C)白金系触媒:有効量を含有するシリコーンゲル組成物であって、該シリコーンゲル組成物を硬化させた硬化物のJISK2207で規定される針入度が10~200であることを特徴とするシリコーンゲル組成物が記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、(A-1)平均単位式(1):(RSiO3/2(R SiO2/2(R SiO1/2(SiO4/2(式中、Rは独立に炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、及び水酸基のいずれかを示し、但し、分子中に少なくとも2つは炭素数2~6のアルケニル基を有し、0≦a≦0.8であり、0<b<1であり、0≦c≦0.8であり、0≦d≦0.8であり、a+b+c+d=1である)で表されるオルガノポリシロキサンと、(A-2)下記平均単位式(2):(RSiO3/2(R SiO2/2b1(RSiO2/2b2(R SiO1/2(SiO4/2(式中、Rは独立に炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、及び水酸基のいずれかを示し、Rは独立に炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、及び水酸基のいずれかを示し、但し、分子中に少なくとも2つは炭素数2~6のアルケニル基を有し、かつ、分子中に少なくとも2つは炭素数6~12のアリール基を有し、a、c及びdは前記と同じであり、0<b1<1であり、0≦b2<1であり、a+b1+b2+c+d=1である)で表されるオルガノポリシロキサンと、(B)水素原子が直接結合しているケイ素原子を1分子中に2つ以上持つオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(C)ヒドロシリル化反応用触媒と、(D)顔料又は染料とを含有するものであり、前記(A-1)成分と前記(A-2)成分とのJIS K0062:1992に記載された方法で測定した589nmにおける25℃での屈折率差の絶対値が0.05以上であることを特徴とする硬化性オルガノポリシロキサン組成物が記載されている。
【0007】
また、特許文献5には、(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)所定の一般式で表される直鎖状オルガノポリシロキサン、(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、(D)蛍光体、および(E)ヒドロシリル化反応用触媒から少なくともなる硬化性シリコーン組成物が記載され、また、当該硬化性シリコーン組成物の硬化物の表面にしわが全く観察されず、硬化物が平坦性に優れることが記載されています。
【0008】
近年、発光ダイオード(LED)等の光半導体装置に用いられるシリコーン封止材は、より高い光取り出し効率を達成するために、高い透明性及び高屈折率が要求されている。通常、シリコーン封止材に高い屈折率を付与するために、分子鎖にアリール基を有するオルガノポリシロキサンを含む硬化性シリコーン組成物が用いられる。しかしながら、従来の高屈折率の硬化性シリコーン組成物は、ガラス基板に対する濡れ性が不十分であり、また、従来の高屈折率の硬化性シリコーン組成物で形成された硬化物は、表面にシワが発生することにより平滑性が不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-221880号公報
【特許文献2】特表2015-524503号公報
【特許文献3】特開2012-251116号公報
【特許文献4】特開2017-39848号公報
【特許文献5】特開2014-156532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ガラス基板上への優れた濡れ性を示すことができるとともに、平滑な表面の硬化物を形成できる、硬化性シリコーン組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、本発明の硬化性シリコーン組成物を含む封止材を提供することにある。また、本発明のさらに別の目的は、本発明の封止材で封止された光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく、本件発明者は、鋭意検討した結果、驚くべきことに、高屈折率の硬化物を形成できるアリール基含有硬化性シリコーン組成物において、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%以下である直鎖状オルガノポリシロキサン又はセリウム含有オルガノポリシロキサンを少量加えることにより、ガラス基板に対する濡れ性が向上し、且つシワの発生が抑制された平滑な表面の硬化物を形成できることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
したがって、本発明は、
(A-1)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超であるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(A-2)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超である直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて2質量%以下で含まれる、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%以下である直鎖状オルガノポリシロキサン、又は、セリウム含有オルガノポリシロキサン、
(C)(B)成分とは異なる、一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含む、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(D)ヒドロシリル化反応用触媒を含む、硬化性シリコーン組成物に関する。
【0014】
前記(A-1)及び(A-2)成分のオルガノポリシロキサンの含有量は、組成物中の全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0015】
(B)成分のオルガノポリシロキサンが、500以上の数平均分子量を有することが好ましい。
【0016】
B)成分のオルガノポリシロキサンの含有量が、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、1.5質量%以下であることが好ましい。
【0017】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンがケイ素原子結合アリール基を含み、(C)成分のケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が、5モル%以上50モル%以下であることが好ましい。
【0018】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量が、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、5質量%以上であることが好ましい。
【0019】
本発明はまた、本発明に係る硬化性シリコーン組成物を含む、封止材にも関する。
【0020】
本発明はまた、本発明に係る封止材を備える、光半導体装置にも関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物によれば、ガラス基板上への優れた濡れ性を示すことができるとともに、平滑な表面の硬化物を形成できる。また、本発明に係る封止剤によれば、本発明の硬化性シリコーン組成物を含むので、シワの発生が抑制された平滑な表面の硬化物で光半導体を封止できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[硬化性シリコーン組成物]
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、
(A-1)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超であるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(A-2)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超である直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、及び、
(B)全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて2質量%以下で含まれる、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%以下である直鎖状オルガノポリシロキサン、又は、セリウム含有オルガノポリシロキサン、
(C)(B)成分とは異なる、一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含む、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(D)ヒドロシリル化反応用触媒、を含む。
【0023】
以下、本発明の硬化性シリコーン組成物の各成分について詳細に説明する。
【0024】
(A)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A)成分は、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンである。(A)成分は、(A-1)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超であるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、(A-2)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超である直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとを含む。
【0025】
(A)成分のオルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量は、30モル%超であり、好ましくは32モル%以上であり、より好ましくは35モル%以上であり、さらに好ましくは39モル%以上であり、優先的には42モル%以上であり、特に好ましくは45モル%以上である。なお、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0026】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1,000以上100,000以下である。なお、重量平均分子量はGPCで測定することができる。
【0027】
(A)成分に含まれるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。
【0028】
(A)成分のオルガノポリシロキサンに含まれるアリール基としては、特に限定されないが、炭素数が6~20個のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基が例示され、好ましくはフェニル基である。
【0029】
(A)成分に含まれるアルケニル基及びアリール基以外のケイ素原子に結合する基としては、アルケニル基及びアリール基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(A)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基は、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基から選択される。
【0030】
(A)成分のケイ素原子結合有機基全体に占めるアルケニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、ケイ素原子結合有機基の合計の0.5モル%以上、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上であり、また、例えば70モル%以下であり、好ましくは60モル%以下であり、より好ましくは50モル%以下である。なお、アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析法、または以下の滴定法によって求めることができる。
【0031】
滴定法により各成分中のアルケニル基量を定量する方法について説明する。オルガノポリシロキサン成分中のアルケニル基含有量は、ウイス法として一般的に知られる滴定方法により精度よく定量することができる。原理を下記に述べる。まずオルガノポリシロキサン原料中のアルケニル基と一塩化ヨウ素とを式(1)に示すように付加反応させる。次に式(2)に示される反応により、過剰の一塩化ヨウ素をヨウ化カリウムと反応させヨウ素として遊離させる。次に遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。
式(1)CH=CH- + 2ICl → CHI-CHCl- + ICl(過剰)
式(2)ICl+KI → I + KCl
滴定に要したチオ硫酸ナトリウムの量と、別途作成したブランク液との滴定量の差から、成分中のアルケニル基量を定量することができる。
【0032】
(A)成分のケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上である。また、好ましくは、(A)成分の含有量は、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下であり、特に好ましくは80質量%以下である。
【0033】
以下、(A-1)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超であるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、(A-2)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超である直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンについて、より詳細に説明する。
【0034】
(A-1)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超であるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A-1)成分は、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超である、レジン状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンである。(A-1)成分は、1種のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンでもよいし、あるいは2種以上のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0035】
本明細書において、レジン状オルガノポリシロキサンとは、分子構造中に分岐状または網目状構造を有するオルガノポリシロキサンを意味する。一実施形態において、(A-1)成分のレジン状オルガノポリシロキサンは、その分子構造中に少なくとも1つのRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)及び/又はSiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含む。本発明の好ましい一実施形態において、(A-1)成分のレジン状オルガノポリシロキサンは、T単位を含み、Q単位は含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0036】
一実施形態において、本発明の(A-1)成分は、
平均単位式(I):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
(式中、Rは同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価の炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、且つ、Rの30モル%超はアリール基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、a、b、c、d、およびeは、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、0≦d<0.5、0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0を満たす数である。)で表されるレジン状のオルガノポリシロキサンであり得る。
【0037】
上記(I)において、Rのハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。Rは、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。また、Xのアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、およびプロピル基が例示される。
【0038】
上記式(I)において、aは、好ましくは、0≦a≦0.9の範囲であり、より好ましくは0≦a≦0.7の範囲であり、特に0≦a≦0.5の範囲である。式(I)において、bは、好ましくは、0≦b≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.3の範囲であり、特に0≦b≦0.1の範囲である。式(I)において、cは、好ましくは、0≦c≦0.85の範囲であり、より好ましくは0≦c≦0.8の範囲である。式(I)において、dは、好ましくは、0≦d≦0.4の範囲であり、より好ましくは0≦d≦0.25の範囲であり、さらに好ましくは0≦d≦0.1の範囲である。式(I)において、eは、好ましくは、0≦e≦0.3の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.2の範囲であり、特に0≦e≦0.1の範囲である。
【0039】
一実施形態において、式(I)のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を含む。すなわち、この実施形態において、上記式(I)でaは0よりも大きく、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上である。また、上記式(I)において、cは0よりも大きく、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.4以上であり、さらに好ましくは0.6以上である。別の実施形態において、式(I)のレジン状オルガノポリシロキサンは、M単位及びT単位のみからなり、すなわち、上記式(I)において、b及びdは0である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、(A-1)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子末端にアルケニル基を含有する。(A-1)成分のレジン状オルガノポリシロキサンは、好ましくは、SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)にアルケニル基を有し、分子側鎖(すなわち、SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位))にアルケニル基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、(A-1)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子側鎖にアリール基を有し、分子末端にはアリール基を有さない。すなわち、(A-1)成分のレジン状オルガノポリシロキサンは、好ましくは、D単位及びT単位にアリール基を有し、より好ましくはT単位のみにアリール基を有し、M単位にはアリール基は有さない。
【0042】
(A-1)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは55質量%以上である。また、好ましくは、(A-1)成分の含有量は、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下であり、特に好ましくは75質量%以下である。
【0043】
(A-2)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超である直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A-2)成分は、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超である、直鎖状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンである。(A-2)成分は、1種の直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンでもよいし、あるいは2種以上の直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0044】
本発明の一実施形態において、(A-2)成分は、
平均構造式(II):R SiO(R SiO)SiR
(式中、Rは式(I)のものと同じであり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、且つ、Rの30モル%超はアリール基であり、mは5~1,000の整数である。)で表される直鎖状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであり得る。
【0045】
本発明のさらなる一実施形態において、上記式(II)の直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、好ましくは分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサンであり、具体的には、以下の平均構造式(III)
式(III):R SiO(R SiO)SiOR
(式中、Rはアルケニル基であり、Rはアルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、Rは、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%超となる量でアリール基を示し、mは5~1,000の整数である。)で表され得る。
【0046】
式(III)のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、およびドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、炭素数が2~6個のアルケニル基が好ましく、特に好ましくはビニル基である。
【0047】
式(III)のアルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。
【0048】
上記式(II)及び(III)において、mは、5以上であり、好ましくは10以上であり、より好ましくは15以上であり、さらに好ましくは20以上である。また、上記式(III)及び(V)において、mは、1,000以下であり、好ましくは500以下であり、より好ましくは300以下であり、さらに好ましくは100以下である。
【0049】
(A-2)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、0.1質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは0.7質量%以上である。また、好ましくは、(A-2)成分の含有量は、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは25質量%以下である。
【0050】
(B)ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%以下である直鎖状オルガノポリシロキサン、又は、セリウム含有オルガノポリシロキサン
(B)成分は、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて2質量%以下で含まれるオルガノポリシロキサン成分であって、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%以下である直鎖状オルガノポリシロキサンか、又は、セリウム含有オルガノポリシロキサンから選ばれる成分である。(B)成分は、1種の直鎖状オルガノポリシロキサン又はセリウム含有オルガノポリシロキサンでもよいし、あるいは2種以上の直鎖状オルガノポリシロキサン又はセリウム含有オルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0051】
(B)成分のうち、直鎖状オルガノポリシロキサンに含まれるアリール基としては、特に限定されないが、上記した(A)成分のものと同じものが例示でき、すなわち、炭素数が6~20個のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基が例示され、好ましくはフェニル基である。
【0052】
(B)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量は、30モル%以下であり、好ましくは25モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下である。また、(B)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量は、0モル%であってもよい。なお、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。また、(B)成分のオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合アリール基を含まなくてもよい。
【0053】
(B)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンの数平均分子量は、好ましくは、500以上であり、より好ましくは700以上であり、さらに好ましくは1,000以上であり、また、好ましくは100,000以下である。なお、数平均分子量はGPCで測定することができる。
【0054】
一実施形態において、本発明の(B)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、
式(IV):R SiO(R SiO)SiR
(式中、Rは水素原子またはハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただしRのうちアリール基は30モル%以下であり、nは5~1,000の整数である。)で表され得る。
【0055】
上記式(IV)中のRのハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。Rは、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。Rは、好ましくは、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、特にビニル基、または炭素数が6~20個のアリール基、特にフェニル基から選択される。
【0056】
本発明の(B)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、少なくとも一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含むアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含むことができ、具体的には、
式(V):R SiO(R SiO)SiR
(式中、Rは上記式(I)のものと同じであり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、かつ、Rのうちアリール基は30モル%以下であり、mは5~1,000の整数である。)で表される直鎖状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含み得る。
【0057】
(B)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンであるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合官能基全体に占めるアルケニル基の量は、特に限定されないが、0.001モル%以上が好ましく、より好ましくは0.01モル%以上であり、さらに好ましくは0.1モル%以上であり、例えば30モル%以下であり、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下である。なお、アルケニル基の含有量は、全てのアルケニル基をビニル基として置き換えたときのビニル基のモル%として計算することができ、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析、または上記滴定法によって求めることができる。
【0058】
本発明の一実施形態において、上記式(V)のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、好ましくは分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサンであり、具体的には以下の式(VI)
式(VI):R SiO(R SiO)SiOR
(式中、Rはアルケニル基であり、Rは上記式(III)のものと同じであり、ただし、Rは、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が30モル%以下となる量でアリール基を示し、mは5~1,000の整数である)で表される。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、およびドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、炭素数が2~6個のアルケニル基が好ましく、特に好ましくはビニル基である。
【0059】
上記式(V)及び(VI)において、mは、5以上であり、好ましくは10以上であり、また、1,000以下であり、好ましくは900以下であり、より好ましくは800以下である。
【0060】
本発明の別の実施形態において、(B)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含む直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むことができ、具体的には、
式(XI):R SiO(R SiO)SiR
(式中、Rは水素原子またはアルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRは水素原子であり、かつ、Rのうちアリール基は30モル%以下であり、mは5~500の整数である。)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含み得る。
【0061】
式(XI)中のRのアルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。
【0062】
上記式(XI)において、mは、5以上であり、好ましくは10以上であり、また、500以下であり、好ましくは300以下であり、より好ましくは100以下である。
【0063】
(B)成分の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子鎖末端にケイ素原子結合水素原子を含んでもよいし、又は、分子鎖側鎖にケイ素原子結合水素原子を含んでもよい。こうした(B)成分の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体が例示される。
【0064】
本発明の好適な一実施形態において、(B)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、構造単位中に少なくとも1つのジメチルシロキサン単位を含んでもよい。
【0065】
本発明の(B)成分はまた、セリウム含有ポリシロキサンでもあり得る。(B)成分のセリウム含有オルガノポリシロキサンは、例えば、塩化セリウムまたはカルボン酸のセリウム塩と、シラノール基含有オルガノポリシロキサンのアルカリ金属塩との反応により調製され得る。そのため、本明細書において、用語「セリウム含有オルガノポリシロキサン」とは、シラノール基含有オルガノポリシロキサンとセリウム塩とを反応することにより得られるものであり、オルガノポリシロキサンのシラノール基とセリウム原子とが化学的に結合したものを意味し得る。好ましくは、(B)成分のセリウム含有ポリシロキサンは、ポリシロキサン中にジメチルシロキサン単位を含むセリウム含有ジメチルポリシロキサンであり得る。
【0066】
上記のカルボン酸のセリウム塩としては、2-エチルヘキサン酸セリウム、ナフテン酸セリウム、オレイン酸セリウム、ラウリン酸セリウム、およびステアリン酸セリウムが例示される。塩化セリウムとしては、三塩化セリウムが例示される。
【0067】
また、上記のシラノール基含有オルガノポリシロキサンのアルカリ金属塩としては、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンのカリウム塩、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンのナトリウム塩、分子鎖片末端がシラノール基で封鎖され、一方の分子鎖片末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンのカリウム塩、および分子鎖片末端がシラノール基で封鎖され、一方の分子鎖片末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンのナトリウム塩が例示される。なお、このオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、およびドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、およびナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、およびフェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ならびにこれらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。
【0068】
上記の反応は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびブタノール等のアルコール;トルエン、およびキシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、およびヘプタン等の脂肪族炭化水素;ミネラルスプリット、リグロイン、および石油エーテル等の有機溶媒中で、室温もしくは加熱することにより行われる。また、得られる反応生成物は、必要に応じて有機溶媒や低沸点成分を留去したり、沈析物をろ過することが好ましい。また、この反応を促進するために、ジアルキルホルムアミド、ヘキサアルキルホスホアミド等を添加してもよい。このようにして調製されるセリウム含有オルガノポリシロキサン中のセリウム原子の含有量は、0.1~15質量%の範囲内であるものが好ましい。
【0069】
本発明の硬化性シリコーン組成物において、(B)成分のオルガノポリシロキサンの含有量は、組成物中の全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、2質量%以下であり、好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1.3質量%以下である。また、本発明の硬化性シリコーン組成物は、組成物中の全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、(B)成分を好ましくは0.001質量%以上で含み、より好ましくは0.01質量%以上で含む。
【0070】
(C)(B)成分とは異なる、一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含む、オルガノハイドロジェンポリシロキサン
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、(C)成分として、(B)成分とは異なる、一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含む、架橋剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む。(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種のみのオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いてもよく、2種以上のオルガノハイドロゲンポリシロキサンを組み合わせて用いてもよい。こうしたオルガノハイドロゲンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、および三次元網状構造が例示され、好ましくは、直鎖状または分岐鎖状構造である。
【0071】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子は、分子末端か、または、分子末端以外の側鎖にケイ素原子結合水素原子が含有されていてもよい。(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、一価の炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
【0072】
このような(C)成分としては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、H(CHSiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサン、ならびにH(CHSiO1/2単位、(CHSiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサンが例示される。
【0073】
一実施形態において、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、好ましくは、以下の平均構造式
平均構造式(VII):R SiO(R SiO)SiR
で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むことができ、式(VII)中、Rは各々独立に、アルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価の炭化水素基であり、Rは水素原子であり、mは1~100の整数である。
【0074】
(C)成分の上記式(VII)において、Rのアルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。Rは、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。また、Xのアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、およびプロピル基が例示される。Rは、好ましくは、炭素数が1~12個のアルキル基、特にメチル基、及び、炭素数が6~20個のアリール基、特にフェニル基から選択される。
【0075】
上記式(VII)のmは、好ましくは50以下であり、より好ましくは30以下であり、さらに好ましくは10以下であり、優先的には、5以下であり、特に好ましくは3以下である。
【0076】
一実施形態において、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、好ましくは、以下の平均単位式
平均構造式(VIII)::(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
で表されるレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでもよく、式(VIII)中、Rは各々独立に、アルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価の炭化水素基であり、Rは水素原子であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、a、b、c、d、およびeは、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、0≦d<0.5、0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0を満たす数である。
【0077】
(C)成分の上記式(VIII)において、Rは、上記式(VII)のRと同じものから選択できる。
【0078】
上記式(VIII)において、aは、好ましくは、0.1≦a≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.2≦a≦0.8の範囲であり、特に0.3≦a≦0.7の範囲である。式(VIII)において、bは、好ましくは、0≦b≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.3の範囲であり、特に0≦b≦0.1の範囲である。式(VIII)において、cは、好ましくは、0.1≦c<0.9の範囲であり、より好ましくは0.2≦c≦0.8の範囲であり、特に0.3≦c≦0.7の範囲である。式(VIII)において、dは、好ましくは、0≦d≦0.4の範囲であり、より好ましくは0≦d≦0.3の範囲であり、さらに好ましくは0≦d≦0.1の範囲である。式(VIII)において、eは、好ましくは、0≦e≦0.3の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.2の範囲であり、特に0≦e≦0.1の範囲である。
【0079】
一実施形態において、式(VIII)のレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、M単位及びT単位を含む。また、別の実施形態において、上記式(VIII)のレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、M単位及びT単位のみからなり、すなわち、上記式(VIII)において、b及びdは0である。
【0080】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、好ましくは、ケイ素原子結合官能基として、アリール基を含む。発明の好ましい実施形態において、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子側鎖にアリール基を有し、分子末端にはアリール基を有さない。(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量は、特に限定されないが、好ましくはケイ素原子結合官能基全体の5モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上であり、さらに好ましくは15モル%以上であり、特に好ましくは20モル%以上であり、また、好ましくはケイ素原子結合官能基全体の50モル%以下であり、より好ましくは45モル%以下であり、さらに好ましくは40モル%以下であり、特に好ましくは35モル%以下である。
【0081】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの数平均分子量は、特に限定されないが、通常、100以上1000以下であり、好ましくは100以上750以下であり、より好ましくは100以上500以下である。なお、数平均分子量は、GPCで測定することができる。
【0082】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明に係る硬化性シリコーン組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、3質量%を超える量で含まれ、より好ましくは、10質量%以上で含まれ、さらに好ましくは15質量%以上で含まれる。また、(C)成分のオルガノポリシロキサンは、好ましくは、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて50質量%以下の量で含まれ、より好ましくは40質量%以下の量で含まれ、さらに好ましくは35質量%以下の量で含まれ、特に好ましくは30質量%以下の量で含まれる。
【0083】
また、別の実施形態において、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、例えば、硬化性シリコーン組成物中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、オルガノポリシロキサン成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~10モルとなる量であり、好ましくは、0.5~5モルとなり、特に、0.8~2.5モルとなる量であり得る。(C)成分中のケイ素原子結合水素原子の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0084】
(D)硬化用触媒
本発明の硬化性シリコーン組成物は、(D)成分として、本組成物に含まれるオルガノポリシロキサン成分を硬化するための硬化用触媒を含み得る。発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類の(D)硬化用触媒を含んでもよいし、2種類以上の(D)硬化用触媒を含んでもよい。
【0085】
(D)成分の硬化用触媒は、本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化機構がヒドロシリル化反応硬化型である場合、ヒドロシリル化反応触媒であり、ヒドロシリル化反応硬化型のシリコーン組成物の硬化を促進するための触媒である。このような(D)成分としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金とオレフィンの錯体、白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体、白金を担持した粉体等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム、パラジウム黒、トリフェニルフォスフィンとの混合物等のパラジウム系触媒;さらに、ロジウム系触媒が挙げられ、特に、白金系触媒であることが好ましい。
【0086】
(D)成分の配合量は、本組成物に含まれるオルガノポリシロキサン成分の硬化に必要な触媒量であり、特に制限されるものではないが、例えば白金系触媒を用いた場合、この白金系触媒に含まれる白金金属量は、シリコーン組成物中に重量単位で0.01~1000ppmの範囲内となる量であることが実用上好ましく、特に、0.1~500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0087】
(E)他のオルガノポリシロキサン成分
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、上記オルガノポリシロキサン成分以外に、他のオルガノポリシロキサン成分を含むことができる。
【0088】
(エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサン)
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、他のオルガノポリシロキサン成分として、エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンを含み得る。本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンを含んでもよいし、2種類以上のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンを含んでもよい。
【0089】
エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合官能基として、エポキシ基含有有機基を含み、その他、ハロゲン置換または非置換の一価の炭化水素基を含み得る。ハロゲン置換または非置換の一価の炭化水素基としては、上述したものと同じものが挙げられる。エポキシ基含有有機基としては、例えば、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-プロピル基等のエポキシシクロアルキルアルキル基;3,4-エポキシブチル基、7,8-エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基が例示され、好ましくは、グリシドキシアルキル基であり、特に好ましくは、3-グリシドキシプロピル基である。
【0090】
一実施形態において、本発明のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、
式(IX):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
(式中、Rは同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価の炭化水素基又はエポキシ基含有有機基であり、但し、一分子中少なくとも1つのRはエポキシ基含有有機基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、a、b、c、d、およびeは、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、0≦d<0.5、0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0を満たす数である。)で表されるレジン状オルガノポリシロキサンを含む。
【0091】
上記(IX)において、Rは、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基、及びエポキシ基含有有機基から選択される。
【0092】
好ましい実施形態において、式(IX)のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンは、Rにアルケニル基を含み、さらに好ましくは(R SiO1/2)単位中のRにアルケニル基を含む。エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアルケニル基の量は、特に限定されないが、0.01モル%以上が好ましく、より好ましくは0.1モル%以上であり、さらに好ましくは0.2モル%以上であり、例えば30モル%以下であり、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下である。なお、アルケニル基の含有量は、全てのアルケニル基をビニル基として置き換えたときのビニル基のモル%として計算することができ、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0093】
好ましい実施形態において、式(IX)のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、(R SiO2/2)単位中のRにエポキシ基含有有機基を含む。エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合官能基全体に占めるエポキシ基含有有機基の量は、特に限定されないが、0.1モル%以上が好ましく、より好ましくは1モル%以上であり、さらに好ましくは5モル%以上であり、例えば50モル%以下であり、好ましくは40モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である。なお、エポキシ基含有有機基の量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0094】
上記式(IX)において、aは、好ましくは、0≦a≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.05≦a≦0.6の範囲であり、特に0.1≦a≦0.4の範囲である。式(IX)において、bは、好ましくは、0≦b≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.1≦b≦0.7の範囲であり、特に0.2≦b≦0.5の範囲である。式(IX)において、cは、好ましくは、0≦c≦0.85の範囲であり、より好ましくは0.2≦c≦0.75の範囲であり、特に0.3≦c≦0.7の範囲である。式(IX)において、dは、好ましくは、0≦d≦0.4の範囲であり、より好ましくは0≦d≦0.45の範囲であり、さらに好ましくは0≦d≦0.3の範囲である。式(IX)において、eは、好ましくは、0≦e≦0.3の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.2の範囲であり、特に0≦e≦0.1の範囲である。
【0095】
本発明の一実施形態において、本発明の硬化性シリコーン組成物がエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンを含む場合、そのレジン状オルガノポリシロキサンの含有量は、特に限定されないが、例えば、組成物中の全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0096】
(環状オルガノポリシロキサン)
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、一実施形態において、環状オルガノシロキサンを含んでもよく、この直鎖状オルガノシロキサンは以下の単位式(X)で表され得る。
単位式(X):(R SiO)
式中、Rは各々独立に、ハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、nは25℃の粘度が1000mPa以下となる数である。なお、粘度は、JIS K7117-1に準拠した回転粘度計によって測定することができる。
【0097】
上記式(X)において、Rのハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。Rは、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。
【0098】
一実施形態において、環状オルガノポリシロキサンは、一分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を含み得る。環状オルガノポリシロキサンがケイ素原子結合有機基にアルケニル基を含む場合、ケイ素原子結合有機基全体に占めるアルケニル基の量は、特に限定されないが、例えば、10モル%以上であり、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上である。また、追加の環状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合有機基全体に占めるアルケニル基の量は、例えば、80モル%以下であり、好ましくは70モル%以下であり、さらに好ましくは60モル%以下である。
【0099】
環状オルガノポリシロキサンの量は、特に限定されないが、本発明の硬化性シリコーン組成物が環状オルガノポリシロキサンを含む場合、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上で含まれ、また、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下の量で含まれ得る。
【0100】
(F)顔料
発明に係る硬化性シリコーン組成物は、(F)成分として顔料をみ得る。(F)顔料は、1種類の(F)顔料を含んでもよいし、2種類以上の(F)顔料を含んでもよい。
【0101】
(F)顔料としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物;ガラスバルーン、ガラスビーズ等の中空フィラー;その他、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化アンチモンが例示される。また、黒色顔料として、たとえば、酸化鉄、アニリンブラック、活性炭、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0102】
(F)顔料は、反射率・耐光性を高める目的で、さらに表面処理を施しても良い。表面処理の種類としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、有機化合物、シロキサン処理など、公知の表面処理が挙げられる。有機化合物としては、特に限定されないが、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機シロキサン等の有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩、有機金属化合物等が挙げられる。表面処理の方法としては、公知の方法であれば特に限定されず、(1)あらかじめ表面処理された顔料をシリコーン組成物中に混合させる方法、(2)顔料とは別に表面処理剤をシリコーン組成物中に添加し、組成物中で顔料とを反応させる方法、などを用いることができる。
【0103】
(F)成分の平均粒径や形状は限定されないが、一次粒径は1nm~50μmの範囲内であることが好ましい。なお、本明細書において、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0104】
本組成物において、(F)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくはオルガノポリシロキサン成分の合計100質量部に対して0.01質量部以上30質量部以下で含まれ得る
【0105】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、アセチレン化合物、有機リン化合物、ビニル基含有シロキサン化合物、ヒドロシリル化反応抑制剤、硬化遅延剤、顔料以外の無機充填剤、または、無機充填剤の表面を有機ケイ素化合物により疎水処理してなる無機充填剤、粉体の表面処理剤又は界面活性剤、ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、粘着性付与剤、離型剤、金属石鹸、耐熱性付与剤、耐寒性付与剤、熱伝導性充填剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、蛍光体、溶剤等が挙げられる。
【0106】
ヒドロシリル化反応抑制剤は、シリコーン組成物のヒドロシリル化反応を抑制するための成分であって、具体的には、例えば、エチニルシクロヘキサノールのようなアセチレン系、アミン系、カルボン酸エステル系、亜リン酸エステル系等の反応抑制剤が挙げられる。反応抑制剤の添加量は、通常、本組成物全体の0.001~5質量%である。
【0107】
硬化遅延剤としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシランが例示される。この硬化遅延剤の含有量は限定されないが、本組成物に対して、質量単位で、10~10000ppmの範囲内であることが好ましい。
【0108】
無機充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、シルセスキオキサン、酸化マグネシウム、酸化鉄、タルク、マイカ、ケイ藻土、ガラスビーズ等の金属酸化物粒子;水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の無機充填剤;ガラス繊維等の繊維状充填剤、これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物で表面疎水化処理した充填剤等が挙げられる。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。但し、無機充填剤の配合量は、本組成物の40質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
【0109】
粉体の表面処理剤としては、特に限定されないが、オルガノシラザン類、オルガノシクロシロキサン類、オルガノクロロシラン類、オルガノアルコキシシラン類、低分子量の直鎖状シロキサン類、有機化合物などが挙げられ、ここで、有機化合物としては、例えば、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機シロキサン等の有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩、有機金属化合物、有機金属錯体、フッ素系有機化合物、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0110】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、各成分を混合することにより調製できる。各成分の混合方法は、従来公知の方法でよく特に限定されないが、通常、単純な攪拌により均一な混合物となる。また、任意成分として無機充填剤等の固体成分を含む場合は、混合装置を用いた混合がより好ましい。こうした混合装置としては特に限定がなく、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ヘンシェルミキサー等が例示される。
【0111】
[封止剤]
本発明は、本発明の硬化性シリコーン組成物を含む封止材にも関する。本発明の封止材は、光半導体用の封止材である。本発明の封止剤の形状は、特に限定されないが、好ましくはフィルム状またはシート状である。そのため、本発明はまた、本発明の硬化性シリコーン組成物を固化して得られるフィルムにも関する。本発明のフィルムは、半導体素子を封止するためのフィルム状封止材に好ましく用いられ得る。本発明の封止剤またはフィルムにより封止される半導体は特に限定されず、例えば、SiC、GaN等の半導体または発光ダイオードなどの光半導体が挙げられる。
【0112】
本発明の封止剤またはフィルムによれば、本発明の硬化性シリコーン組成物を含むので、シワの発生が抑制された平滑な表面の硬化物で光半導体を封止できる。
【0113】
[光半導体装置]
本発明の光半導体装置は、光半導体素子が上記本発明の封止材で封止されものである。換言すれば、光半導体素子が上記本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物により封止、被覆、または接着されている。この光半導体素子としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体が例示され、特に、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。
【0114】
発光ダイオード(LED)は、光半導体素子の上下左右から発光が起きるので、発光ダイオード(LED)を構成する部品は、光を吸収するものは好ましくなく、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。そのため、光半導体素子が搭載される基板も、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。こうした光半導体素子が搭載される基板としては、例えば、銀、金、および銅等の導電性金属;アルミニウム、およびニッケル等の非導電性の金属;PPA、およびLCP等の白色顔料を混合した熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、BT樹脂、ポリイミド樹脂、およびシリコーン樹脂等の白色顔料を含有する熱硬化性樹脂;アルミナ、および窒化アルミナ等のセラミックスが例示される。
【実施例0115】
本発明の硬化性シリコーン組成物を以下の実施例および比較例により詳細に説明する。
【0116】
以下の実施例および比較例において、下記に示す原料成分を用いた。以下でMeはメチル基を表し、Viはビニル基を表し、Phはフェニル基を表し、Epは3-グリシドキシプロピル基を表す。
成分a-1:平均単位式 (ViMeSiO1/225(PhSiO3/275で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン:ケイ素原子結合官能基全体に占めるフェニル基の量 66.7モル%
成分a-2-1:平均構造式 ViMeSiO(PhMeSiO)25SiMeViで表される分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサン:ケイ素原子結合官能基全体に占めるフェニル基の量 44.6モル%
成分a-2-2:平均構造式 ViMeSiO(MeSiO)60(PhSiO)30SiMeViで表されるオルガノポリシロキサン:ケイ素原子結合官能基全体に占めるフェニル基の量 32.3モル%
成分b-1:平均構造式 ViMeSiO(MeSiO)150SiMeViで表される分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサン;ケイ素原子結合官能基全体に占めるフェニル基の量 0モル%
成分b-2:平均構造式 ViMeSiO(MeSiO)310SiMeViで表される分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサン;ケイ素原子結合官能基全体に占めるフェニル基の量 0モル%
成分b-3:平均構造式 ViMeSiO(MeSiO)530SiMeViで表される分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサン;ケイ素原子結合官能基全体に占めるフェニル基の量 0モル%
成分b-4:平均構造式 MeSiO(ViMeSiO)(MeSiO)800SiMeで表される側鎖アルケニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン;ケイ素原子結合官能基全体に占めるフェニル基の量 0モル%
成分b-5:平均構造式 ViPhSiO(MeSiO)12SiPhViで表される分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサン;ケイ素原子結合官能基全体に占めるフェニル基の量 13.3モル%
成分b-6:平均構造式 ViMeSiO(MeSiO)200(PhSiO)50SiMeViで表される分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサン;ケイ素原子結合官能基全体に占めるフェニル基の量 19.8モル%
成分b-7:平均構造式 HMeSiO(MeSiO)20SiMeHで表される分子鎖両末端ハイドロジェンシロキシ基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサン;ケイ素原子結合官能基全体に占めるフェニル基の量 0モル%
成分b-8:平均構造式 MeSiO(HMeSiO)50SiMeで表される側鎖ハイドロジェンシロキシ基含有直鎖状オルガノポリシロキサン;ケイ素原子結合官能基全体に占めるフェニル基の量 0モル%
成分b-9:セリウム含有ジメチルポリシロキサン;ケイ素原子結合官能基全体に占めるフェニル基の量 0モル%
成分b’-1:平均単位式 (MeSiO1/245(ViMeSiO1/215(SiO4/240で表されるオルガノポリシロキサン
成分b’-2:平均単位式 (HMeSiO1/2(SiO4/2)で表されるオルガノポリシロキサン
成分b’-3:平均単位式 (MeSiO2/2)(ViMeSiO2/2)(EpSiO3/2)で表されるオルガノポリシロキサン
成分b’-4: ビスマレイン酸塩
成分b’-5: 平均単位式 (ViMeSiO1/2(MeSiO3/2)で表されるオルガノポリシロキサン
成分b’-6: 平均構造式 ViMeSiO(MeSiO)60(PhSiO)30SiMeViで表されるオルガノポリシロキサン
成分b’-7: 平均単位式 (MeSiO1/2(ViMeSiO1/217(MeSiO3/239(PhSiO3/239で表されるオルガノポリシロキサン
成分c-1:平均構造式 HMeSiO(PhSiO)SiMeHで表される、オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分c-2:平均単位式 (HMeSiO1/260(PhSiO3/240で表される、オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分d-1:白金濃度が4.0質量%である白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体
成分e-1:平均単位式 (ViMeSiO1/225(EpMeSiO2/240(PhSiO3/275で表されるエポキシ基及びアルケニル基含有レジン状オルガノポリシロキサン
成分e-2:平均単位式 (ViMeSiO2/2
成分f-1:平均一次粒子径7nmのシリカ(トクヤマ社製の製品名DM-30)
成分f-2:平均一次粒子径280nmのカーボンブラック(Cancarb社製の製品名N990)
成分f-3:平均一次粒子径13nmのカーボンブラック(ORION ENGINEERED CARBONS社製の製品名FW200)
成分f-4:メジアン径18μmのガラスバブルズ(3M社製の製品名 iM30K)
成分g:エチニルシクロヘキサノール
【0117】
[硬化物の作成]
各成分を表1~表7に示す組成(質量%)で混合し、KURABO製遊星式撹拌・脱泡装置マゼルスター KK-VT300を用いて、真空度1.8Paの条件下で2分間撹拌した。この硬化性シリコーン組成物をガラス板(100mm×100mm)上に塗工機を用いて250μmの厚みでコートした後、熱循環式オーブンに入れ、150℃で30分保持した後、冷却、室温に戻して、硬化物を作成した。
【0118】
[評価]
実施例または比較例にかかる各組成物において、硬化物の表面平滑性およびガラス基板に対する濡れ性を次のようにして評価し、結果を表1~表7に示した。
【0119】
[表面平滑性]
ガラス板にコートした硬化物の表面をKEYENCE社製レーザー顕微鏡(VK-X1000)を用いて観察し、硬化物の表面にしわが生じているものを「×」、硬化物の表面にしわが全く観察されないものを「〇」として評価した。
【0120】
[ガラス基板に対する濡れ性]
ガラス板にコートした硬化物を目視により観察し、ガラス上で剥離しているものを「×」、全く剥離していないものを「〇」として評価した。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
【表6】
【0127】
以上の結果から分かるとおり、本発明の実施例1~20の硬化性シリコーン組成物は、シワの形成が抑制され、表面の形状が平滑な硬化物を形成できた。また、本発明の実施例1~20の硬化性シリコーン組成物は、ガラス基板に対する濡れ性が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体等の光半導体用の封止材として特に有用である。