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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032808
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】感染予防システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20220217BHJP
   B66B 1/18 20060101ALI20220217BHJP
   G07C 9/37 20200101ALI20220217BHJP
   G07C 9/38 20200101ALI20220217BHJP
【FI】
G16H20/00
B66B1/18 Z
G07C9/37
G07C9/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137025
(22)【出願日】2020-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 卓馬
(72)【発明者】
【氏名】魚谷 翔吾
【テーマコード(参考)】
3E138
3F502
5L099
【Fターム(参考)】
3E138AA01
3E138CC01
3E138GA02
3E138JA02
3E138JB16
3E138JC19
3F502HB10
3F502JA16
3F502KA02
3F502KA05
3F502KA09
5L099AA00
(57)【要約】
【課題】感染症のリスクを低減すること。
【解決手段】利用者を乗せたかごを昇降制御するエレベーター制御装置と、前記かごに乗り降りする利用者に関する情報を取得する利用者情報取得装置と、前記エレベーター制御装置による運行情報と前記利用者の乗降実績とを用いて、感染症に係るリスクをフロア別に示す指標データを生成し、前記指標データを管理者及び/又は利用者に通知する管理装置とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者を乗せたかごを昇降制御するエレベーター制御装置と、
前記かごに乗り降りする利用者に関する情報を取得する利用者情報取得装置と、
前記エレベーター制御装置による運行情報と前記利用者の乗降実績とを用いて、感染症に係るリスクをフロア別に示す指標データを生成し、前記指標データを管理者及び/又は利用者に通知する管理装置と
を備えることを特徴とする感染予防システム。
【請求項2】
請求項1に記載の感染予防システムにおいて、
前記利用者情報取得装置は、前記利用者の体温測定を行う赤外線カメラユニットを含み、
前記管理装置が生成する前記指標データは、前記赤外線カメラユニットの出力を用いて求められる各フロアの人数、密集度及び体温分布のうちいずれかを含むことを特徴とする感染予防システム。
【請求項3】
請求項2に記載の感染予防システムにおいて、
前記利用者情報取得装置は、前記かご及び/又は昇降エリアに設けられることを特徴とする感染予防システム。
【請求項4】
請求項3に記載の感染予防システムにおいて、
前記管理装置は、複数のかごの運行情報を取込み、それぞれのかごの乗降者数を合算することで前記各フロアの人数を求めることを特徴とする感染予防システム。
【請求項5】
請求項3に記載の感染予防システムにおいて、
前記管理装置は、前記指標データが規定以上のリスクを示したリスク検出フロアについて、当該リスク検出フロアを行先として指定する操作を禁止することを特徴とする感染予防システム。
【請求項6】
請求項3に記載の感染予防システムにおいて、
前記管理装置は、前記指標データが規定以上のリスクを示したリスク検出フロアについて、当該リスク検出フロアを行先として指定する操作を受け付けるに際し、注意を喚起する報知を行うことを特徴とする感染予防システム。
【請求項7】
請求項3に記載の感染予防システムにおいて、
前記管理装置は、前記指標データが規定以上のリスクを示したリスク検出フロアについて、当該リスク検出フロアを行先として指定する操作を受け付けたならば、他のフロアからの呼びの対象から除外される専用運転状態とし、前記リスク検出フロア以外の行先への運行を行った後に、前記リスク検出フロアへ運行することを特徴とする感染予防システム。
【請求項8】
請求項6に記載の感染予防システムにおいて、
前記かごは、行先のフロアを指定する操作ボタンをフロア毎に備え、
前記管理装置は、前記指標データが規定以上のリスクを示したリスク検出フロアに対応する操作ボタンに係る表示態様と、リスク検出フロア以外に対応する操作ボタンに係る表示態様とを異ならせることを特徴とする感染予防システム。
【請求項9】
請求項1に記載の感染予防システムにおいて、
前記利用者情報取得装置は、可視光領域の画像を撮影する可視光カメラユニットを含み、
前記管理装置は、前記可視光カメラユニットの撮影結果を用いて前記利用者を個人識別し、個人別に乗降実績を管理することを特徴とする感染予防システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターが設置された建物における感染予防システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、感染による発熱者の把握・入館抑制の手法として、建物エントランスや建物内のセキュリティゲートに設置する赤外線カメラ等の温度センサーを用い、発熱者を判定すると、アラートを出して待機しているガードマンが該当者をこれ以上侵入しないようにする手法が知られている。
【0003】
更に、上述した手法について、発熱者を判定するとフラッパーゲートを閉じて人手を介さず、自動で通行禁止にしたり、その先のエレベーターの呼び登録を制限するエレベーター連動制御方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開番号WO 2017/057274 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、セキュリティゲートでの発熱者侵入防止及びエレベーター呼び登録制限について、セキュリティゲート利用者がIDカードをかざすことで個人を特定し、具備した温度センサーにより発熱の検出を行っている。この従来技術では、発熱の有無のみ検出しているため、高発熱者のみ侵入制限されるため、例えば、発症前に感染力を有する感染症に対応することができない。特に近年では、罹患の有無に関わらず、密集状態の発生自体が感染のリスクと認識され、係るリスクの減少が求められている。
【0006】
換言するならば、従来の技術は、発症後の人物との接触を防ぐという一面的なリスク回避に寄与するに過ぎず、感染症の多様なリスクを総合的に考慮し、感染症の予防を行うことはできなかった。
【0007】
以上のことから本発明は、感染症の多様なリスクを総合的に考慮し、感染症のリスクを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為、本発明に係る感染予防システムは、利用者を乗せたかごを昇降制御するエレベーター制御装置と、前記かごに乗り降りする利用者に関する情報を取得する利用者情報取得装置と、前記エレベーター制御装置による運行情報と前記利用者の乗降実績とを用いて、感染症に係るリスクをフロア別に示す指標データを生成し、前記指標データを管理者及び/又は利用者に通知する管理装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、感染症のリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係るエレベーターシステム、赤外線カメラ、管理サーバー、ダッシュボードの全体構成の一例を示す図。
図2】本発明の実施例に係る個人識別と体温測定の一括管理の一例を示す図。
図3】本発明の実施例に係るフロア毎の体温と密集度を分布化し利用者へ情報開示する流れを示すフローチャート図。
図4図3に係る一般利用者へ情報開示する内容の一例を示す図。
図5図3に係る建物管理者へ情報開示する内容の一例を示す図。
図6図3に係るフロア毎の密集度に合わせエレベーターの運行を禁止する一例を示すフローチャート図。
図7図3に係るフロア毎の密集度に合わせエレベーターの運行を制限する一例を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例0012】
図1は、本発明の実施例に係る感染予防システムに含まれるエレベーターシステム、赤外線カメラ、管理サーバー、ダッシュボードの全体構成の一例を示す図である。エレベーターは、運行制御を行うエレベーター制御装置1と、利用者である乗客が乗り降りするかご2を有する。エレベーターが複数設置された建物は、エレベーター全体を適切に制御し運行効率を安定させるために、群管理制御装置4が備えてある。尚、エレベーターが1台ないし2台など、少数である場合はこの群管理制御装置4が付かない場合もあるが、群管理制御装置4内の各機能(後述)をエレベーター制御装置1に取込むことで群管理制御装置4の各機能を実現可能である。本実施例では群管理制御装置4がある物として記述する。
【0013】
エレベーター制御装置1は、運行制御を行う運行制御部11と、かご2内の操作を検出する呼びボタン検出部12と、前述した呼びボタン検出部12からの検出情報を受けた運行制御部11による制御に基づき呼び登録操作を行う呼び登録部13と、かご2内の赤外線カメラの情報を取得するかごカメラ情報取得部14と、かご2内にフロア(階床)などの運行情報を通知するアナウンス再生部15と、前述した各部12~15を仲介してかご2と通信するためのかご通信部16と、群管理制御装置4とエレベーターの運行状態・運行制御やかご内赤外線カメラの情報を通信するための群管理制御装置通信部17とを備える。
【0014】
かご2は、各階へ運行するために操作するかご呼びボタン21と、かご内の状況を撮影し、乗客の個人識別及び体温測定を行うことができるかご内赤外線カメラ22と、かご内にフロアなどの運行情報などをアナウンスするスピーカー23とを備える。かご内赤外線カメラ22は、温度分布を画像として取得する赤外線カメラユニットに加え、可視光領域の画像をカラー画像として撮影する可視光カメラユニットを備えている。
【0015】
各階のエレベーターホール3には、ホール(昇降エリア)の状況を撮影し、乗客の個人識別及び体温測定を行うことができるホール赤外線カメラ31を備える。ホール赤外線カメラ31は、温度分布を画像として取得する赤外線カメラユニットに加え、可視光領域の画像をカラー画像として撮影する可視光カメラユニットを備えている。赤外線カメラユニットが撮影した画像は乗客の体温測定に用いられ、可視光カメラユニットが撮影した画像は個人識別に用いられる。また、図示を省略したが、エレベーターホール3には、上又は下のいずれかを行先方向として指定する呼びボタンであるホールボタンが設けられている。
【0016】
群管理制御装置4は、前記エレベーター制御装置1と通信する為のエレベーター通信部41と、各階のホール赤外線カメラの情報を取得するホールカメラ情報取得部42と、管理サーバー5に通信するための管理サーバー通信部43とを備える。
【0017】
建物は、建物全体の状態を管理するための管理装置として管理サーバー5を備えている。管理サーバー5は、前記群管理制御装置4と通信するための群管理制御装置通信部51と、かご内赤外線カメラ22及びホール赤外線カメラ31の情報を取得するカメラ情報取得部52と、エレベーターの運行状態(現在何階に停止中か、何階に向けて移動中か等)を取得するエレベーター情報取得部53とを備える。記録部54は、現在・過去の情報(エレベーターの運行情報、カメラからの個人識別情報、体温情報)を記録する。また、記録部54には当該建物のフロア毎の延床面積も記録している。
【0018】
さらに、管理サーバー5は、ダッシュボードとして、利用者へ情報を可視化する機能を備えており、記録部54から管理者向け(個人情報など含む)に情報抽出し開示を行う管理者情報開示部55と、一般利用者むけ(個人情報を含まない)に情報抽出し開示を行うユーザー情報開示部56と、これら情報を管理者や一般利用者のパソコン・スマートフォンと通信して情報開示を行う為の端末通信部57を備えている。
【0019】
利用者がエレベーターのかご2に乗り込む際、必ず何階かのエレベーターホール3にいる為、その階のホール赤外線カメラ31で撮影することにより、利用者の個人識別と体温測定が行なえる。かご2に乗り込んだ際はかご内赤外線カメラ22で撮影することで、当該利用者の個人識別と体温測定を行い、管理情報を更新することができる。また、かご2から他の階に降りた場合も、その階のホール赤外線カメラ31により管理が可能である。
【0020】
更に、エレベーター制御装置1の運行状態を管理サーバーが取得することで、利用者が下りた階や、目的階に到着するまでに途中に停止した階や、乗り合わせた他の利用者を総合的に管理することも可能である。
【0021】
尚、かご内の管理を行うことでより精度の高い管理が行なえるが、エレベーターの運行を取得することで、ホール赤外線カメラ31のみでも本発明は実現可能である。かご2に乗り込む際と降りる際とで、人の向きは180度反転するため、ホール赤外線カメラ31で顔を映せないことを考慮し、顔認証を基本に更に服装や色を含めて識別することにより、より精度良く管理ができる。
上述した管理を、建物内全ての人に行うことで、全体管理が可能となる。
【0022】
図2は本発明の実施例に係る個人識別と体温測定を一括管理の一例を示す図である。本図は一例として5名の人物に対して個人識別、体温測定を行い、記録部54にて管理する内容を示している。かご内赤外線カメラ22ないしホール赤外線カメラ31は、管理サーバー5と接続する為に、個体ごとにカメラ識別番号が割り当てられている。前記カメラ識別番号が、どのフロア・かごに設置されているかは予め決まっているため、カメラから情報取得することでどの場所の人物を検出したかを知ることができる。
【0023】
例えばAさんが1Fホールでエレベーターを待っている状態をホール赤外線カメラ31が撮影すると、管理サーバー5には「個体識別:Aさん、体温:35.5℃、撮影場所:1Fホール、測定日時:6/19 12:10」のように記録される。その後、Aさんがかご2に乗り込むと、かご内赤外線カメラ22により撮影され、管理サーバー5には「個体識別:Aさん、体温:35.7℃、撮影場所:2号機かご内、測定日時:6/19 12:11」のように記録され、前回記録した情報は1つ前の情報として保存される。
Bさん以降も同様であり、記録した情報は各赤外線カメラで撮影するたびに更新され、蓄積される。
【0024】
図3は、本発明の実施例に係るフロア毎の体温と密集度を分布化し利用者へ情報開示する流れを示すフローチャート図である。図2で説明したように、管理サーバー5には予め建物内の人物の情報を常に収集・更新しているものとする。また、図3に示した処理は、例えば利用者の乗降が発生する度に実行する。
【0025】
ステップS101では、管理サーバー5の記録部54に記録された管理情報テーブルから、各個人の最新情報を抽出する。この最新情報には、記録日時・個人のID情報・記録場所・測定体温を含んでいる。
ステップS102は、抽出した人を予め設定した体温分布(例として「35℃未満」「35~35.9℃」「36~36.9」「37~37.4℃」「37.5℃」とし説明する)及び各階フロア・かご毎に分類を行う。
ステップS103は、分類した情報により、各階フロア・かごに何人が居るかが判明しているため、人数を元に密集度を割り出す。ここでは、各フロアの有効床面積と、一人当たりのソーシャルディスタンス面積(例として、2m×2m×π=12.6mとする)と人数から密集度を算出する。また、体温分布毎の人の密度(3Fフロアでは37℃台が16%居る等)も合わせて算出する。
ステップS104はステップS103で算出した結果を表化し、管理サーバー5の端末通信部を介して利用者へ情報開示を行う。
以上説明した流れを繰り返すことにより、リアルタイムで各フロアの密集度や体温を利用者に開示することが可能である。
【0026】
図4は、図3に係る一般利用者へ情報開示する内容の一例を示す図である。
図3のステップS103で算出した情報は、図4の表のように利用者へ開示される。前述した説明の通り、建物の各フロアやかご内に体温何度の人が何人居て、フロア毎の密集度が何%かを知ることができる。また、本図は一例であるが、仮に37℃以上を注意、37.5℃以上を警告と設定すると、37℃以上の人がいるフロア、37・5℃以上の人がいるフロアを枠線や色付けにより示し、利用者へ注意を促す対応を行う。尚、本図では表現していないが、同様に、密集度が50%以上、80%以上の場合に視覚的に注意を促す対応を行うとしても良い。
【0027】
すなわち、各フロアの人数、密集度及び体温分布は、感染症に係るリスクをフロア別に示す指標データとして用いられる。また、例えば体温について37℃以上や37.5℃以上を規定以上のリスクとするならば、これらの条件を満たしたフロアがリスク検出フロアとなる。リスク検出フロアは、人数、密集度、体温などの複数の指標のいずれかが規定以上であるものとすればよい。また、同一の指標について複数段階の規定を設けてもよい。
【0028】
なお、建物に入った時点や、建物内で運動した場合に、一時的に体温が上昇する場合があるが、該当者の測定した体温が37℃や37.5℃を超えた場合も、その前後の体温状態から判断して(例えば体温上昇が10分以内に納まる)、注意を解除する対応を取ってもよい。
【0029】
図5は、図3に係る建物管理者へ情報開示する内容の一例を示す図である。
図4と同様に可視化して注意を促すことができるが、管理サーバー5は個人識別情報も取得しているため、建物管理者向けに、発熱者の個人情報を知らせる。本図では、4Fに37.5℃の発熱者を検出しており、建物管理者は該当する箇所を選択することにより、個人情報を確認することができる。本図説明では、例としてFさんとするが、Fさんが現在何階にいて体温が何度であるかの他に、過去に赤外線カメラで撮影された情報を時系列で確認することで、Fさんがどのような行動を取っているか確認することができる。
【0030】
当然ながら、管理サーバー5には全員の情報が記録してあるため、Fさんが行動した時間に接触した疑いのある人をマーキングすることも可能である。
一例であるが、ひとつの赤外線カメラにFさんを含めて他の人物が同時に撮影され、一定時間同時にいる状態が継続された場合や、Fさんが撮影された前後数秒に他の人物が撮影された場合に、その他の人物をマーキングすることができる。
【0031】
図6は、図3に係るフロア毎の密集度に合わせエレベーターの運行を禁止する一例を示すフローチャート図である。ステップS101~ステップS104は、図3と同じ内容であるため説明を省略する。図6に示したフローチャートでは、ステップS104の後、ステップS201に進む。
【0032】
ステップS201にて、管理サーバー5は発熱者の多い階、或いは密集度の高い階を確認する。ここでは、図4図5に記載の4Fが発熱者が多く密集度が高い階(リスク検出フロア)として説明する。
ステップS202にて、4Fが発熱者・密集度の高い階(リスク検出フロア)であるため、YesとなりステップS203に進む。
【0033】
ステップS203にて、管理サーバー5は、群管理制御装置4を経由してエレベーター制御装置1に対して該当階の呼び登録禁止を通信する。エレベーター制御装置1は4F呼び登録禁止を受信することにより、呼び登録部13の4F登録を禁止とする。
尚、図示をしていないが、4F登録を禁止とし、かご2内に人がいることをかご赤外線カメラ22で検出した際や、利用者がかご2内に乗り込み4F呼びボタンを押下した場合に、「現在4階は密集度が非常に高く、感染のリスクがあるために運行を一時禁止しております」や「現在4階は発熱の疑いのある者がいて、感染のリスクがあるために運行を一時禁止しております」や「詳しくは建物のダッシュボードにアクセスしご確認ください」等のメッセージを、アナウンス再生部15によりスピーカー23から再生することで、利用者に注意を促す。
【0034】
ステップS203の後は、ステップS101に戻る。
時間が経過し、密集度が低下する、発熱者が居なくなる等で該当階が無い場合(ステップS202の図中No)、ステップS204に進む。
ステップS204では、管理サーバー5の記録部54から、前回は密集度が高い、または発熱者がいた階があったかを確認する。前回は4Fが該当していたため、YesとなりステップS205に進む。
ステップS205では、更に、前回捕捉した状態から一定時間経過しているかを判断する。例として、この一定時間を10分として説明する。この時は、10分経過していない為、Noとなり、ステップS101に戻り、本処理を繰り返す。
ここで10分経過すると、Yesとなり、ステップS206に進む。
【0035】
ステップS206では、密集度が低く発熱者もいない状況が10分以上継続しているため、管理サーバー5は、群管理制御装置4を経由してエレベーター制御装置1に対して該当階の呼び登録禁止の解除を通信する。エレベーター制御装置1は4F呼び登録禁止解除を受信することにより、呼び登録部13の4F登録を禁止解除し、通常の運行制御に戻る。
この際に、アナウンス再生部15によりスピーカー23から「4Fの密集度が低下しましたので、通常の運行に戻ります」や「4Fに発熱の疑いのある者がおりませんので、通常の運行に戻ります」等と再生することで、利用者へ安心感を与える。
【0036】
図7は、図3に係るフロア毎の密集度に合わせエレベーターの運行を制限する一例を示すフローチャート図である。ステップS101~ステップS104、及びステップS201、S202、S204、S205は、図6と同じ内容であるため説明を省略する。
【0037】
ステップS202、4Fが発熱者・密集度の高い階(リスク検出フロア)であるため、YesとなりステップS301に進む。
ステップS301にて、管理サーバー5は、群管理制御装置4を経由してエレベーター制御装置1に対して該当階の呼び登録注意を通信する。ここでは、呼び登録注意を二段階認証とする例を記載する。エレベーター制御装置1は4F呼び登録注意を受信することにより、呼び登録部13の4F登録を二段階認証とする。
尚、図示をしていないが、4F登録を二段階認証とし、かご2内に人がいることをかご赤外線カメラ22で検出した際は、「現在4階は密集度が非常に高く、感染のリスクがあるために運行時に確認を取っております」や「現在4階は発熱の疑いのある者がいて、感染のリスクがあるために運行時に確認を取っております」や「詳しくは建物のダッシュボードにアクセスしご確認ください」等のメッセージを、アナウンス再生部15によりスピーカー23から再生することで、利用者に注意を促す。
【0038】
また、利用者がかご2内に乗り込み4F呼びボタンを押下した場合は、「現在4階は密集度が非常に高く、感染のリスクがあるために運行時に確認を取っておりますが、向かいますか?」や「現在4階は発熱の疑いのある者がいて、感染のリスクがあるために運行時に確認を取っておりますが向かいますか?」等のメッセージを、アナウンス再生部15によりスピーカー23から再生し、再生終了から一定のインターバル(例として3秒)の間に再度4Fが押された場合に、行き先登録を行う。またその際は、「4Fに向かいます。お気を付けください」のメッセージを再生するとより親切である。
【0039】
ステップS205でYesの場合、ステップS302に進む。
ステップS302では、密集度が低く発熱者もいない状況が10分以上継続しているため、管理サーバー5は、群管理制御装置4を経由してエレベーター制御装置1に対して該当階の呼び登録注意の解除を通信する。エレベーター制御装置1は4F呼び登録注意解除を受信することにより、呼び登録部13の4F登録を注意解除し、通常の運行制御に戻る。
この際に、アナウンス再生部15によりスピーカー23から「4Fの密集度が低下しましたので、通常の運行に戻ります」や「4Fに発熱の疑いのある者がおりませんので、通常の運行に戻ります」等と再生することで、利用者へ安心感を与える。
【0040】
上述した図7の処理において、利用者が4Fを押すと二段階認証による操作となるが、かご2内に他の利用者がいて、他の利用者が別の階の呼びボタンを操作している場合、他の利用者へも感染リスクが発生する。そのため、二段階認証に加えて運行制御部11にて配車制御を行う対応として良い。一例として、1FからAさん、Bさん、Cさんがかご2に乗り、かご呼びボタン21の操作によって、それぞれ2F、4F、6Fを行先と指定した場合を考える。リスク検出フロアがなければ、1Fを出発したかご2は、2F、4F、6Fの順に停止する。また、この運行中に3Fや5Fのホールボタンから呼びがあれば、3Fや5Fにも停止する。
【0041】
しかし、4Fがリスク検出フロアであれば、4Fを行先とする操作が二段階認証操作となり、二段階認証が行われると、当該かご2を専用運転状態とする。この専用運転状態では、かご2は他のフロアからの呼びの対象から除外されるため、各階ホールボタンからの呼びに応じなくなる。そして、リスク検出フロア以外の以外への行先(2F,6F)への運行を行った後に、リスク検出フロア(4F)に運行する。すなわち、かご2は2F、6F、4Fの順に通過・停止し、2Fと6Fに向かう人(AさんとCさん)に対する感染リスクを発生させない対応を取る。最後に4Fに到着し、Bさんが降りて無人状態になった所で、専用運転から通常運転に戻し、各階ホールボタンからの呼びに応じるようになる。
【0042】
また、管理サーバー5は、リスク検出フロアに対応する操作ボタンに係る表示態様と、リスク検出フロア以外に対応する操作ボタンに係る表示態様と異ならせる制御を行うことができる。例えば、4Fがリスク検出フロアであるならば、4Fのかご呼びボタン21を赤く点灯させることで、かご2に乗った利用者に対し、4Fが感染のリスクのあるフロアであると注意喚起することができる。
【0043】
上述してきたように、本実施例に係る感染予防システムでは、利用者を乗せたかごを昇降制御するエレベーター制御装置1と、かご2に乗り降りする利用者に関する情報を取得する利用者情報取得装置と、エレベーター制御装置1による運行情報と利用者の乗降実績とを用いて、感染症に係るリスクをフロア別に示す指標データを生成し、指標データを管理者及び/又は利用者に通知する管理装置としての管理サーバー5とを備える。かかる構成及び動作により、密集状態の発生自体などを含めた感染症の多様なリスクを総合的に考慮し、感染症のリスクを低減することができる。
リスクの総合的な考慮とは、複数の項目についての評価を用いて最終的な評価を行うものである。本実施例では、フロアの密集度と体温分布の項目を用い、「密集度が50%以上」又は「体温37℃以上の人物が所在」のいずれかを満たしたときにリスク検出フロアであるとの最終的な評価を行う場合を説明したが、リスクの評価は任意の方法で行うことができる。例えば、人数、密集度、体温分布などをそれぞれスコアに置き換え、各項目のスコアに係数を付して足し合わせることで、最終的なスコアを求めてもよい。また、密集度を示すスコアと体温分布を示すスコアを掛け合わせて最終的なスコアを求めてもよい。
【0044】
また、本実施例では、利用者情報取得装置として、利用者の体温測定を行う赤外線カメラユニットや、可視光領域の画像を撮影する可視光カメラユニットを用いることできる。そして、赤外線カメラユニットの出力を用いて求められる各フロアの人数、密集度、体温分布などを指標データとすることができる。
【0045】
また、可視光カメラユニットの撮影結果を用いて利用者を個人識別し、個人別に乗降実績を管理することも可能である。
また、利用者情報取得装置は、かごや昇降エリアであるホールに設けることで、利用者の乗降実績を取得することができる。
【0046】
また、管理サーバー5は、複数のかごの運行情報を取込み、それぞれのかごの乗降者数を合算することで前記各フロアの人数を求める。このように、1のフロアに複数のエレベーターがある場合には、それぞれのエレベーターのかごにおける乗降者数を合算することでフロアに所在する利用者の数を求めることができる。求めた人数は、そのまま指標データしてもよいし、密集度などの算出に用いてもよい。
なお、複数のエレベーターの一部から乗降者数を取得し、その乗降者数から全体の乗降者数を推定して、フロアの人数を求めることも可能である。
【0047】
また、管理サーバー5は、指標データが規定以上のリスクを示したリスク検出フロアについて、当該リスク検出フロアを行先として指定する操作を禁止することで、感染の抑制を実現する。または、リスク検出フロアを行先として指定する操作を受け付けるに際し、注意を喚起する報知を行うことで、感染の抑制を実現してもよい。さらに、リスク検出フロアを行先として指定する操作を受け付けたならば、他のフロアからの呼びの対象から除外される専用運転状態とし、リスク検出フロア以外の行先への運行を行った後に、リスク検出フロアへ運行することで、感染の抑制とリスク検出フロアへのアクセス確保とを両立することができる。
【0048】
また、管理サーバー5は、指標データが規定以上のリスクを示したリスク検出フロアに対応する操作ボタンに係る表示態様と、リスク検出フロア以外に対応する操作ボタンに係る表示態様とを異ならせることで、かごに搭乗した利用者に効果的に注意喚起を促すことができる。
【0049】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、かかる構成の削除に限らず、構成の置き換えや追加も可能である。
【0050】
例えば、建物の出入口にも赤外線カメラを設けることで、外部との出入りがあるフロア(1Fなど)の人数、密集度、体温分布を精度よく求める構成としてもよい。また、エレベーター以外のフロア間の移動手段(エスカレーターや階段)に対しても、赤外線カメラを設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:エレベーター制御装置 11:運行制御部 12:呼びボタン検出部 13:呼び登録部 14:かごカメラ情報取得部 15:アナウンス再生部 16:かご通信部 17:群管理制御装置通信部 2:かご 21:かご呼びボタン 22:かご内赤外線カメラ 23:スピーカー 3:エレベーターホール 31:ホール赤外線カメラ 4:群管理制御装置 41:エレベーター通信部 42:ホールカメラ情報取得部 43:管理サーバー通信部 5:管理サーバー 51:群管理制御装置通信部 52:カメラ情報取得部 53:エレベーター情報取得部 54:記録部 55:管理者情報開示部 56:ユーザー情報開示部 57:端末通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7