(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032818
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】エンジン試験方法、プログラム、および装置
(51)【国際特許分類】
G01M 15/02 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
G01M15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137043
(22)【出願日】2020-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】391008559
【氏名又は名称】株式会社トランストロン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】出川 拓真
【テーマコード(参考)】
2G087
【Fターム(参考)】
2G087BB01
2G087BB25
2G087BB26
2G087DD20
2G087EE23
(57)【要約】
【課題】Chirp信号を用いたエンジン試験では、網羅性の高い試験を行うため、操作変数の取りうる空間と操作変数の変化速度値の取りうる空間との双方の網羅率を最大化するように制御される。しかしながら、エンジン試験中の操作変数や変化速度値によっては、排気ガスの悪化や失火などが発生した異常な状態でエンジンが運転される可能性がある。
【解決手段】コンピュータが、エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて試験パターンを修正し、空気過剰率に基づいて試験パターンを修正し、修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する処理を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、
空気過剰率に基づいて前記試験パターンを修正し、
前記修正された試験パターンによる前記エンジン試験を実施して前記操作変数と前記操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する
処理を実行することを特徴とするエンジン試験方法。
【請求項2】
前記生成する処理は、前記試験パターンとして、前記操作変数の時系列変化を示すChirp信号を生成する処理を含むことを特徴とする請求項1に記載のエンジン試験方法。
【請求項3】
前記コンピュータが、
前記操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と前記操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて前記試験パターンを修正する
処理をさらに実行することを特徴とする請求項1に記載のエンジン試験方法。
【請求項4】
前記コンピュータが、
前記第1の空間から、前記操作変数のとってはいけない領域を除外する処理と、
前記第2の空間から、前記変化速度値のとってはいけない領域を除外する処理と
の少なくとも1つの処理をさらに実行することを特徴とする請求項3に記載のエンジン試験方法。
【請求項5】
前記コンピュータが、排気ガスの規制値に基づいて前記試験パターンを修正する処理をさらに実行することを特徴とする請求項1に記載のエンジン試験方法。
【請求項6】
前記空気過剰率に基づいて修正する処理は、前記操作変数の1つである燃料噴射量を変更して前記試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする請求項1に記載のエンジン試験方法。
【請求項7】
前記空気過剰率に基づいて修正する処理は、前記操作変数の1つであるEGR率を変更して前記試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする請求項1に記載のエンジン試験方法。
【請求項8】
前記空気過剰率に基づいて修正する処理は、前記操作変数の1つであるタービン開度を変更して前記試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする請求項1に記載のエンジン試験方法。
【請求項9】
前記空気過剰率に基づいて修正する処理は、前記操作変数の1つである吸気スロットル開度を変更して前記試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする請求項1に記載のエンジン試験方法。
【請求項10】
コンピュータに、
エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、
空気過剰率に基づいて前記試験パターンを修正し、
前記修正された試験パターンによる前記エンジン試験を実施して前記操作変数と前記操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成する生成部と、
空気過剰率に基づいて前記試験パターンを修正する修正部と、
前記修正された試験パターンによる前記エンジン試験を実施して前記操作変数と前記操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する取得部と
を有することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン試験方法、プログラム、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Chirp信号によって、試験に用いる操作変数を時系列に沿って変化させる、自動車のエンジン試験が行われている。Chirp信号を用いたエンジン試験では、操作変数を変化させて網羅性の高い試験を行うように制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、エンジン試験中の操作変数によっては、排気ガスの悪化や失火などが発生した異常な状態でエンジンが運転される可能性がある。
【0004】
一つの側面では、安全性の高いエンジン試験を実施できるエンジン試験方法、プログラム、および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の案では、コンピュータが、エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、空気過剰率に基づいて試験パターンを修正し、修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する処理を実行する。
【発明の効果】
【0006】
一つの側面では、安全性の高いエンジン試験を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、Chirp信号を用いたエンジン試験の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施例1にかかる試験装置100の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、実施例1にかかるエンジン試験の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例1にかかる網羅率に基づく信号修正の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例1にかかる空気過剰率に基づく信号修正の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例1にかかる試験パターン生成処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、ハードウェア構成例を説明する図である。
【
図8】
図8は、Chirp信号を用いたエンジン試験のブロック図である。
【
図9】
図9は、Chirp信号修正部のブロック図である。
【
図10】
図10は、第1Chirp信号修正部のブロック図である。
【
図11】
図11は、第2Chirp信号修正部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本願の開示するエンジン試験方法、プログラム、および装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、各実施例は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0009】
[実施例1]
まず、Chirp信号を用いたエンジン試験について説明する。
図1は、Chirp信号を用いたエンジン試験の一例を示す図である。エンジン試験に用いるChirp信号は、エンジン試験に用いる操作変数の時系列変化を示すデータ、すなわち、試験パターンである。このようなChirp信号は、操作変数ごとに存在する。
【0010】
エンジン試験に用いる操作変数とは、具体的には、燃料噴射量、EGR(Exhaust Gas Recirculation:排気ガス再循環)率、タービン開度、ITH(Intake THrottle:吸気スロットル)開度などである。また、本明細書では、操作変数を単に変数と表現する場合がある。
【0011】
図1の例では、まず、操作変数1~n(nは任意の整数)ごとに、Chirp信号10-1~10-nが生成される。例えば、エンジン試験に用いる操作変数が5つの場合は、Chirp信号10-1~10-5が生成されることになる。
【0012】
また、生成されたChirp信号10-1~10-nは、操作変数1~nの取りうる空間と操作変数1~nの変化速度値の取りうる空間との双方の網羅率を最大化するように、Chirp信号20-1~20-nに修正される。操作変数の変化速度値とは、操作変数を変化させる速度を示す値である。操作変数によっては、例えば、エンジン試験中に急激に変化させると危険な状態を招く場合もありうる。
【0013】
そして、修正されたChirp信号20-1~20-nを用いてエンジン試験が行われる。しかしながら、エンジン試験中の操作変数や変化速度値、すなわち、Chirp信号20-1~20-nやそれらの変化速度によっては、排気ガスの悪化や失火などが発生しうる異常な状態でエンジンが運転される可能性がある。そこで、本実施形態にかかる試験装置100は、Chirp信号である試験パターンを修正し、安全性の高いエンジン試験を実施するための、操作変数と、当該操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する。
【0014】
[試験装置100の機能構成]
次に、試験装置100の機能構成について説明する。
図2は、実施例1にかかる試験装置100の機能構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、試験装置100は、通信部110、記憶部120、および制御部130を有する。
【0015】
通信部110は、他の装置との間の通信を制御する処理部であり、例えば、通信インタフェースである。
【0016】
記憶部120は、各種データや、制御部130が実行するプログラムを記憶する記憶装置の一例であり、例えば、メモリやハードディスクなどである。記憶部120は、操作変数マスタ121、試験パターンテーブル122、および試験条件マスタ123を記憶する。
【0017】
操作変数マスタ121は、エンジン試験に用いる操作変数に関する情報を記憶するマスタである。操作変数マスタ121は、例えば、エンジン試験ごとに、用いる操作変数、操作変数の取りうる値の範囲、および操作変数の網羅率などを対応付けて記憶できる。
【0018】
試験パターンテーブル122は、試験装置100によって生成および修正されるChirp信号に関する情報を記憶するテーブルである。試験パターンテーブル122は、例えば、エンジン試験ごとに、生成および修正されたChirp信号などを対応付けて記憶できる。
【0019】
試験条件マスタ123は、安全性の高いエンジン試験を実施するための試験条件に関する情報を記憶するマスタである。試験条件マスタ123は、例えば、エンジン試験ごとに、とってはいけない操作変数の組み合わせの範囲、および操作変数の変化速度値などを対応付けて記憶できる。
【0020】
なお、上記はあくまで一例であり、記憶部120には、上記テーブルおよびマスタ以外にも様々な情報を記憶できる。
【0021】
制御部130は、試験装置100全体を司る処理部であり、例えば、プロセッサなどである。制御部130は、生成部131、修正部132、および取得部133を備える。なお、各処理部は、プロセッサが有する電子回路の一例やプロセッサが実行するプロセスの一例である。
【0022】
制御部130は、生成部131、修正部132、および取得部133などを制御して、安全性の高いエンジン試験を実施するための操作変数と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する。
図3は、実施例1にかかるエンジン試験の一例を示す図である。
【0023】
図3に示すように、制御部130は、操作変数1~nごとにChirp信号10-1~10-nを生成し、網羅率に基づいてChirp信号10-1~10-nを、Chirp信号20-1~20-nに修正する。さらに、制御部130は、空気過剰率に基づいてChirp信号20-1~20-nを、Chirp信号30-1~30-nに修正する。網羅率および空気過剰率に基づくChirp信号の修正処理の詳細については後述する。
【0024】
そして、制御部130は、Chirp信号30-1~30-nを用いてエンジン試験を実施する。エンジン試験は、エンジン実機を用いた試験であってもよいし、バーチャルエンジンを用いた仮想試験であってもよい。
【0025】
なお、
図3の例では、Chirp信号10-1~10-nや修正後のChirp信号20-1~20-nなどを同一の波形で示しているが、これらはあくまでもイメージであり、実際には、Chirp信号ごとに異なる波形を示しうる。また、Chirp信号の生成および修正、ならびにエンジン試験の実施のすべての処理を試験装置100が実行する必要はなく、処理ごとに別装置を用いて実行してもよい。
【0026】
生成部131は、エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成する。具体的には、生成部131は、例えば、操作変数マスタ121に記憶された、操作変数、および操作変数の取りうる値の範囲に基づいて、操作変数1~nごとに、各操作変数を時系列に沿って変化させるChirp信号10-1~10-nを生成する。
【0027】
修正部132は、操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて、生成部131によって生成された試験パターンを修正する。
図4は、実施例1にかかる網羅率に基づく信号修正の一例を示す図である。
図4に示すように、修正部132は、生成部131によって生成されたChirp信号10-1~10-nを、操作変数1~nの取りうる空間と、操作変数1~nの変化速度値の取りうる空間との双方の網羅率を最大化するように、修正する。
【0028】
操作変数1~nの取りうる空間とは、例えば、
図4に示すように、各操作変数の組み合わせが取りうる座標空間である。当該座標空間について、操作変数1と操作変数2との組み合わせが取りうる座標空間を例として説明する。操作変数1と操作変数2との組み合わせが、当該座標空間を、それぞれの操作変数の時系列変化を示すChirp信号によって、満遍なく網羅するほど網羅率は高くなる。このように、操作変数の取りうる空間の網羅率がより高くなるように、Chirp信号が修正される。
【0029】
操作変数の取りうる空間の網羅率は、例えば、
図4に示すように、座標空間を複数の領域に分割し、各領域に対する、操作変数の組み合わせの有無の割合によって算出される。
【0030】
また、
図4の領域に×印で示されるように、操作変数の組み合わせによっては、とってはいけない領域が存在する場合がある。そのため、修正部132は、座標空間からこのような領域を除外した上で、当該領域に操作変数の組み合わせが含まれないようにChirp信号を修正する。
【0031】
操作変数1~nの変化速度値の取りうる空間については、操作変数1~nの取りうる空間の上記説明と同様である。以上のように、修正部132は、Chirp信号10-1~10-nを、各操作変数の取りうる空間と、各操作変数の変化速度値の取りうる空間との双方の網羅率を最大化するように、Chirp信号20-1~20-nに修正する。
【0032】
また、修正部132は、空気過剰率に基づいて試験パターンを修正する。
図5は、実施例1にかかる空気過剰率に基づく信号修正の一例を示す図である。
図5に示すように、修正部132は、Chirp信号20-1~20-nを、空気過剰率が所定の閾値を下回らないように、修正する。
【0033】
空気過剰率は、例えば、エンジンに吸入された空気質量を、供給された燃料を完全燃焼させる理論空気質量で除算することにより、取得される。空気過剰率は、例えば、1.0など所定の閾値を下回ると、不完全燃焼を引き起こし、一酸化炭素や黒煙が増加する異常な状態でエンジンが運転されることになる。また、空気過剰率は、燃料噴射量、EGR率、タービン開度、吸気スロットル開度などの操作変数による影響を受ける。そのため、修正部132は、空気過剰率が所定の閾値を下回らないように下限を設け、各操作変数、すなわちChirp信号20-1~20-nを、Chirp信号30-1~30-nに修正する。
【0034】
なお、空気過剰率は、所定の閾値を上回ると、必要以上に空気が供給されていることになるため排ガス熱損失が増加する。そのため、修正部132はさらに、空気過剰率に対する上限を設け、空気過剰率が所定の範囲内を保つように、Chirp信号を修正してもよい。
【0035】
また、修正部132は、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、およびNOx(窒素酸化物)などの排気ガス成分の規制値に基づいて、各成分の濃度が各規制値を上回らないように、Chirp信号を修正できる。排気ガス成分の規制値に基づくChirp信号の修正は、空気過剰率に基づくChirp信号の修正と併せて、または代えて実行されてよい。
【0036】
取得部133は、修正した試験パターンによるエンジン試験を実施して、操作変数1~nと、操作変数1~nに対する被制御量との時系列データを取得する。この際実施されるエンジン試験は、エンジン実機を用いた試験であってもよいし、バーチャルエンジンを用いた仮想試験であってもよい。
【0037】
そして、その後に実施されるエンジン試験では、取得部133によって取得された時系列データを用いて、各操作変数を各被制御量によって制御し、安全性の高いエンジン試験を実施できる。
【0038】
[処理の流れ]
次に、実施例1にかかる試験パターン生成処理の流れを説明する。
図6は、実施例1にかかる試験パターン生成および修正処理の流れを示すフローチャートである。
【0039】
まず、
図6に示すように、試験装置100の生成部131は、エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンとして、操作変数ごとのChirp信号を生成する(ステップS101)。
【0040】
次に、試験装置100の修正部132は、操作変数の取りうる空間の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる空間の網羅率とに基づいて、ステップS101で生成されたChirp信号を修正する(ステップS102)。
【0041】
次に、修正部132は、空気過剰率を取得し(ステップS103)、当該空気過剰率に基づいて、ステップS102で修正されたChirp信号をさらに修正する(ステップS104)。空気過剰率に基づくChirp信号の修正(ステップS103およびS104)の代わりに排気ガス成分の規制値に基づくChirp信号の修正を実行してもよい。
【0042】
次に、試験装置100の取得部133は、ステップS104で修正されたChirp信号を用いてエンジン試験を実施して(ステップS105)、操作変数と、操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する(ステップS106)。ステップS106の実行後、
図6に示す処理は終了する。
【0043】
[効果]
上述したように、試験装置100は、エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、空気過剰率に基づいて試験パターンをさらに修正し、修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する。
【0044】
これにより、その後のエンジン試験を実施する際に、当該時系列データを用いて操作変数を制御し、安全性の高いエンジン試験を実施できる。
【0045】
また、試験装置100によって実行される生成する処理は、試験パターンとして、操作変数の時系列変化を示すChirp信号を生成する処理を含む。
【0046】
これにより、Chirp信号を用いた安全かつ網羅性の高いエンジン試験を実施できる。
【0047】
また、試験装置100は、操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて試験パターンを修正する処理をさらに実行する。
【0048】
これにより、安全かつ網羅性の高いエンジン試験を実施できる。
【0049】
また、試験装置100は、第1の空間から、操作変数のとってはいけない領域を除外する処理と、第2の空間から、操作変数の変化速度値のとってはいけない領域を除外する処理との少なくとも1つをさらに実行する。
【0050】
これにより、異常な状態を引き起こさないように試験パターンを修正し、より安全かつ網羅性の高いエンジン試験を実施できる。
【0051】
また、試験装置100は、排気ガスの規制値に基づいて試験パターンを修正する処理をさらに実行する。
【0052】
これにより、排気ガスの規制を遵守するように試験パターンを修正し、より安全性の高いエンジン試験を実施できる。
【0053】
また、試験装置100によって実行される空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つである燃料噴射量を変更して試験パターンを修正する処理を含む。
【0054】
これにより、空気過剰率をより効率的に調節し、安全性の高いエンジン試験を実施するための試験パターンを修正できる。
【0055】
また、試験装置100によって実行される空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つであるEGR率を変更して試験パターンを修正する処理を含む。
【0056】
これにより、空気過剰率をより効率的に調節し、安全性の高いエンジン試験を実施するための試験パターンを修正できる。
【0057】
また、試験装置100によって実行される空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つであるタービン開度を変更して試験パターンを修正する処理を含む。
【0058】
これにより、空気過剰率をより効率的に調節し、安全性の高いエンジン試験を実施するための試験パターンを修正できる。
【0059】
また、試験装置100によって実行される空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つである吸気スロットル開度を変更して試験パターンを修正する処理を含む。
【0060】
これにより、空気過剰率をより効率的に調節し、安全性の高いエンジン試験を実施するための試験パターンを修正できる。
【0061】
[システム]
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更できる。また、実施例で説明した具体例、分布、数値などは、あくまで一例であり、任意に変更できる。
【0062】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。例えば、試験装置100の生成部131と修正部132とを統合できる。
【0063】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0064】
[ハードウェア]
上述した試験装置100のハードウェア構成について説明する。
図7は、ハードウェア構成例を示す図である。
図7に示すように、試験装置100は、通信部100a、HDD(Hard Disk Drive)100b、メモリ100c、およびプロセッサ100dを有する。また、
図7に示した各部は、バスなどで相互に接続される。
【0065】
通信部100aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD100bは、
図2に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0066】
プロセッサ100dは、
図2に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD100bなどから読み出してメモリ100cに展開することで、
図2で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、試験装置100が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、例えば、プロセッサ100dは、生成部131や修正部132などと同様の機能を有するプログラムをHDD100bなどから読み出す。そして、プロセッサ100dは、生成部131や修正部132などと同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0067】
このように、試験装置100は、プログラムを読み出して実行することで各処理を実行する情報処理装置として動作する。また、試験装置100は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施例と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施例でいうプログラムは、試験装置100によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用できる。
【0068】
なお、このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布できる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行できる。
【0069】
[実施例2]
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態および構成にて実施されてよいものである。例えば、試験装置100は、以下で説明する構成であってもよい。
【0070】
図8は、Chirp信号を用いたエンジン試験のブロック図である。
図8におけるChirp信号生成部およびChirp信号修正部は、それぞれ、試験装置100の生成部131および修正部132の一例である。また、
図8における実エンジンシステムは、エンジン実機、バーチャルエンジン、またはエンジン実機を用いて生成された機械学習モデルであるエンジンモデルであってよい。
【0071】
図9は、Chirp信号修正部のブロック図である。
図8のChirp信号修正部は、
図9に示すように、第1Chirp信号修正部と第2Chirp信号修正部とにより構成されてよい。
【0072】
図10は、第1Chirp信号修正部のブロック図である。
図9の第1Chirp信号修正部は、
図10に示すように、網羅率算出部、ならびに変数の取りうる空間検出部および変数の変化速度値の取りうる空間検出部により構成されてよい。
【0073】
図11は、第2Chirp信号修正部のブロック図である。
図9の第2Chirp信号修正部は、
図11に示すように、空気過剰率検出部により構成されてよい。
【0074】
また、以上の実施例1を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0075】
(付記1)コンピュータが、
エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、
空気過剰率に基づいて試験パターンを修正し、
修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する
処理を実行することを特徴とするエンジン試験方法。
【0076】
(付記2)試験パターンを生成する処理は、試験パターンとして、操作変数の時系列変化を示すChirp信号を生成する処理を含むことを特徴とする付記1に記載のエンジン試験方法。
【0077】
(付記3)コンピュータが、
操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて試験パターンを修正する
処理をさらに実行することを特徴とする付記1に記載のエンジン試験方法。
【0078】
(付記4)コンピュータが、
第1の空間から、操作変数のとってはいけない領域を除外する処理と、
第2の空間から、変化速度値のとってはいけない領域を除外する処理と
の少なくとも1つの処理をさらに実行することを特徴とする付記3に記載のエンジン試験方法。
【0079】
(付記5)コンピュータが、排気ガスの規制値に基づいて試験パターンを修正する処理をさらに実行することを特徴とする付記1に記載のエンジン試験方法。
【0080】
(付記6)空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つである燃料噴射量を変更して試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする付記1に記載のエンジン試験方法。
【0081】
(付記7)空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つであるEGR率を変更して試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする付記1に記載のエンジン試験方法。
【0082】
(付記8)空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つであるタービン開度を変更して試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする付記1に記載のエンジン試験方法。
【0083】
(付記9)空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つである吸気スロットル開度を変更して試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする付記1に記載のエンジン試験方法。
【0084】
(付記10)コンピュータに、
エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、
空気過剰率に基づいて試験パターンを修正し、
修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【0085】
(付記11)試験パターンを生成する処理は、試験パターンとして、操作変数の時系列変化を示すChirp信号を生成する処理を含むことを特徴とする付記10に記載のプログラム。
【0086】
(付記12)コンピュータに、
操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて試験パターンを修正する
処理をさらに実行させることを特徴とする付記10に記載のプログラム。
【0087】
(付記13)コンピュータに、
第1の空間から、操作変数のとってはいけない領域を除外する処理と、
第2の空間から、変化速度値のとってはいけない領域を除外する処理と
の少なくとも1つの処理をさらに実行させることを特徴とする付記12に記載のプログラム。
【0088】
(付記14)コンピュータに、排気ガスの規制値に基づいて試験パターンを修正する処理をさらに実行させることを特徴とする付記10に記載のプログラム。
【0089】
(付記15)空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つである燃料噴射量を変更して試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする付記10に記載のプログラム。
【0090】
(付記16)空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つであるEGR率を変更して試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする付記10に記載のプログラム。
【0091】
(付記17)空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つであるタービン開度を変更して試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする付記10に記載のプログラム。
【0092】
(付記18)空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つである吸気スロットル開度を変更して試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする付記10に記載のプログラム。
【0093】
(付記19)エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成する生成部と、
空気過剰率に基づいて試験パターンを修正する修正部と、
修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する取得部と
を有することを特徴とする装置。
【0094】
(付記20)試験パターンを生成する処理は、試験パターンとして、操作変数の時系列変化を示すChirp信号を生成する処理を含むことを特徴とする付記19に記載の装置。
【0095】
(付記21)修正部が、
操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて試験パターンを修正する
処理をさらに実行させることを特徴とする付記19に記載の装置。
【0096】
(付記22)修正部が、
第1の空間から、操作変数のとってはいけない領域を除外する処理と、
第2の空間から、変化速度値のとってはいけない領域を除外する処理と
の少なくとも1つの処理をさらに実行することを特徴とする付記21に記載の装置。
【0097】
(付記23)修正部が、排気ガスの規制値に基づいて試験パターンを修正する処理をさらに実行することを特徴とする付記19に記載の装置。
【0098】
(付記24)空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つである燃料噴射量を変更して試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする付記19に記載の装置。
【0099】
(付記25)空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つであるEGR率を変更して試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする付記19に記載の装置。
【0100】
(付記26)空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つであるタービン開度を変更して試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする付記19に記載の装置。
【0101】
(付記27)空気過剰率に基づいて修正する処理は、操作変数の1つである吸気スロットル開度を変更して試験パターンを修正する処理を含むことを特徴とする付記19に記載の装置。
【0102】
(付記28)プロセッサと、
プロセッサに動作可能に接続されたメモリと
を備えた装置であって、プロセッサは、
エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成する生成部と、
空気過剰率に基づいて試験パターンを修正する修正部と、
修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する取得部と
を有することを特徴とする装置。
【符号の説明】
【0103】
10-1~10-n、20-1~20-n、30-1~30-n Chirp信号
100 試験装置
100a 通信部
100b HDD
100c メモリ
100d プロセッサ
110 通信部
120 記憶部
121 操作変数マスタ
122 試験パターンテーブル
123 試験条件マスタ
130 制御部
131 生成部
132 修正部
133 取得部