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特開2022-32827エンジンモデル構築方法、プログラム、および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032827
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】エンジンモデル構築方法、プログラム、および装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 15/02 20060101AFI20220217BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20220217BHJP
   G06N 3/04 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
G01M15/02
G06N20/00
G06N3/04 145
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137059
(22)【出願日】2020-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】391008559
【氏名又は名称】株式会社トランストロン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】出川 拓真
【テーマコード(参考)】
2G087
【Fターム(参考)】
2G087BB01
2G087CC40
2G087EE22
2G087EE23
(57)【要約】
【課題】Chirp信号を用いたエンジン試験では、操作変数を変化させて網羅性の高い試験を行うようにしている。しかしながら、制御器の構築から評価にかかる試験工数は、その制御に所望の応答が得られない場合において、エンジン試験を繰り返し実施する必要があり、多くの試験工数が必要となる。
【解決手段】コンピュータが、エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて試験パターンを修正し、修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数の操作量と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得し、修正された試験パターンを入力、および時系列データを正解とする教師データを機械学習してエンジンモデルを構築する処理を実行する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、
前記操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と前記操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて前記試験パターンを修正し、
前記修正された試験パターンによる前記エンジン試験を実施して前記操作変数の操作量と前記操作変数に対する被制御量との時系列データを取得し、
前記修正された試験パターンを入力、および前記時系列データを正解とする教師データを機械学習してエンジンモデルを構築する
処理を実行することを特徴とするエンジンモデル構築方法。
【請求項2】
前記生成する処理は、前記試験パターンとして、前記操作変数の時系列変化を示すChirp信号を生成する処理を含むことを特徴とする請求項1に記載のエンジンモデル構築方法。
【請求項3】
前記構築する処理は、前記エンジンモデルとして、中間層を2層以上有する、RNN(Recurrent Neural Network)またはLSTM(Long Short Term Memory)による機械学習モデルを構築する処理を含むことを特徴とする請求項1に記載のエンジンモデル構築方法。
【請求項4】
前記コンピュータが、
前記エンジンモデルを用いて前記エンジンモデルのモデルパラメータをキャリブレーションするための物理法則に基づく数式を用いて第2のエンジンモデルを作成する
処理をさらに実行することを特徴とする請求項3に記載のエンジンモデル構築方法。
【請求項5】
前記コンピュータが、
前記エンジンモデルを線形化し、第2のエンジンモデルを作成する
処理をさらに実行することを特徴とする請求項1に記載のエンジンモデル構築方法。
【請求項6】
前記コンピュータが、
前記エンジンモデルを用いて前記被制御量を予測する第2のコンピュータに、前記第2のエンジンモデルを送信する
処理をさらに実行することを特徴とする請求項4または5に記載のエンジンモデル構築方法。
【請求項7】
前記コンピュータが、
前記第1の空間から、前記操作変数のとってはいけない領域を除外する処理と、
前記第2の空間から、前記変化速度値のとってはいけない領域を除外する処理と
の少なくとも1つの処理をさらに実行することを特徴とする請求項1に記載のエンジンモデル構築方法。
【請求項8】
前記コンピュータが、
空気過剰率に基づいて前記試験パターンを修正する
処理をさらに実行することを特徴とする請求項1に記載のエンジンモデル構築方法。
【請求項9】
コンピュータに、
エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、
前記操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と前記操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて前記試験パターンを修正し、
前記修正された試験パターンによる前記エンジン試験を実施して前記操作変数と前記操作変数に対する被制御量との時系列データを取得し、
前記修正された試験パターンを入力、および前記時系列データを正解とする教師データを学習してエンジンモデルを構築する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成する生成部と、
前記操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と前記操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて前記試験パターンを修正する修正部と、
前記修正された試験パターンによる前記エンジン試験を実施して前記操作変数と前記操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する取得部と、
前記修正された試験パターンを入力、および前記時系列データを正解とする教師データを学習してエンジンモデルを構築する構築部と
を有することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンモデル構築方法、プログラム、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Chirp信号によって、試験に用いる操作変数を時系列に沿って変化させる、自動車のエンジン試験が行われている。Chirp信号を用いたエンジン試験では、操作変数を変化させて網羅性の高い試験を行うようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、制御器の構築から評価までに実施するエンジン試験は、その制御に所望の応答が得られない場合において、繰り返し実施する必要があり、多くの試験工数を必要とする。
【0004】
一つの側面では、より少ない試験工数でエンジン試験を実施するためのエンジンモデルを提供できるエンジンモデル構築方法、プログラム、および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の案では、コンピュータが、エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて試験パターンを修正し、修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得し、修正された試験パターンを入力、および時系列データを正解とする教師データを機械学習することによりエンジンモデルを構築する処理を実行する。
【発明の効果】
【0006】
一つの側面では、より少ない試験工数でエンジン試験を実施するためのエンジンモデルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施例1にかかる構築装置100の機能構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、実施例1にかかるChirp信号を用いたエンジン試験の一例を示す図である。
図3図3は、実施例1にかかる網羅率に基づく信号修正の一例を示す図である。
図4図4は、実施例1にかかる空気過剰率に基づく信号修正の一例を示す図である。
図5図5は、実施例1にかかるエンジンモデル構築の一例を示す図である。
図6図6は、実施例1にかかるエンジンモデルの一例を示す図である。
図7図7は、実施例1にかかるモデル予測制御の一例を示す図である。
図8図8は、実施例1にかかるモデル予測制御の別例を示す図である。
図9図9は、実施例1にかかるエンジンモデル構築処理の流れを示すフローチャートである。
図10図10は、ハードウェア構成例を説明する図である。
図11図11は、エンジンモデル構築のブロック図である。
図12図12は、Chirp信号修正部のブロック図である。
図13図13は、第1Chirp信号修正部のブロック図である。
図14図14は、第2Chirp信号修正部のブロック図である。
図15図15は、エンジンモデル構築部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本願の開示するエンジンモデル構築方法、プログラム、および装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、各実施例は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0009】
[実施例1]
[構築装置100の機能構成]
まず、本願の開示するエンジンモデル構築方法を実施する構築装置100の機能構成について説明する。図1は、実施例1にかかる構築装置100の機能構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、構築装置100は、通信部110、記憶部120、および制御部130を有する。
【0010】
通信部110は、他の装置との間の通信を制御する処理部であり、例えば、通信インタフェースである。
【0011】
記憶部120は、各種データや、制御部130が実行するプログラムを記憶する記憶装置の一例であり、例えば、メモリやハードディスクなどである。記憶部120は、操作変数マスタ121、試験パターンテーブル122、試験条件マスタ123、およびエンジンモデルDB124を記憶する。
【0012】
操作変数マスタ121は、エンジン試験に用いる操作変数に関する情報を記憶するマスタである。操作変数マスタ121は、例えば、エンジン試験ごとに、用いる操作変数、操作変数の取りうる値の範囲、および操作変数の網羅率などを対応付けて記憶できる。
【0013】
試験パターンテーブル122は、構築装置100によって生成および修正されるChirp信号に関する情報を記憶するテーブルである。試験パターンテーブル122は、例えば、エンジン試験ごとに、生成および修正されたChirp信号などを対応付けて記憶できる。
【0014】
試験条件マスタ123は、安全性の高いエンジン試験を実施するための試験条件に関する情報を記憶するマスタである。試験条件マスタ123は、例えば、エンジン試験ごとに、とってはいけない操作変数の組み合わせの範囲、および操作変数の変化速度値などを対応付けて記憶できる。
【0015】
エンジンモデルDB124は、構築装置100によって構築されたエンジンモデル、および設計用モデルに関する情報を記憶するDB(データベース)である。ここで、設計用モデルとは、エンジンの各操作変数の操作量を予測する予測制御器上でエンジンモデルを動作させるために、当該エンジンモデルを用いて作成される第2のエンジンモデルである。なお、エンジンモデルDB124には、エンジンモデルや設計用モデルを構築するためのモデルパラメータを記憶できる。
【0016】
なお、上記はあくまで一例であり、記憶部120には、上記テーブルおよびマスタ以外にも様々な情報を記憶できる。
【0017】
制御部130は、構築装置100全体を司る処理部であり、例えば、プロセッサなどである。制御部130は、生成部131、修正部132、取得部133、構築部134、および送信部135を備える。なお、各処理部は、プロセッサが有する電子回路の一例やプロセッサが実行するプロセスの一例である。
【0018】
制御部130は、生成部131、修正部132、取得部133、構築部134などを制御して、より少ない試験工数でエンジン試験を実施するためのエンジンモデルを構築する。
【0019】
Chirp信号を用いたエンジン試験について説明する。図2は、Chirp信号を用いたエンジン試験の一例を示す図である。エンジン試験に用いるChirp信号は、エンジン試験に用いる操作変数の時系列変化を示すデータ、すなわち、試験パターンである。このようなChirp信号は、操作変数ごとに存在する。
【0020】
エンジン試験に用いる操作変数とは、具体的には、燃料噴射量、EGR(Exhaust Gas Recirculation:排気ガス再循環)率、タービン開度、ITH(Intake THrottle:吸気スロットル)開度などである。また、本明細書では、操作変数を単に変数と表現する場合がある。
【0021】
図2の例では、まず、操作変数1~n(nは任意の整数)ごとに、Chirp信号10-1~10-nが生成される。例えば、エンジン試験に用いる操作変数が5つの場合は、Chirp信号10-1~10-5が生成されることになる。
【0022】
次に、生成されたChirp信号10-1~10-nは、操作変数1~nの取りうる空間と操作変数1~nの変化速度値の取りうる空間との双方の網羅率を最大化するように、Chirp信号20-1~20-nに修正される。操作変数の変化速度値とは、操作変数を変化させる速度を示す値である。操作変数によっては、例えば、エンジン試験中に急激に変化させると危険な状態を招く場合もありうる。網羅率に基づくChirp信号の修正処理の詳細については後述する。
【0023】
次に、修正されたChirp信号20-1~20-nを用いてエンジン試験を行ない、操作変数1~nの操作量と当該操作変数1~nに対する被制御量1~nとの時系列データ50-1~50-nが取得される。
【0024】
そして、構築装置100は、エンジン試験に用いられた試験パターンであるChirp信号20-1~20-nを入力、および取得された時系列データ50-1~50-nを正解とする教師データを機械学習することでエンジンモデルを構築する。このようなエンジンモデルを用いて、操作変数を時系列変化させたときの当該操作変数に対する被制御量の時系列データを予測できる。
【0025】
なお、図2の例では、Chirp信号10-1~10-nや修正後のChirp信号20-1~20-nなどを同一の波形で示しているが、これらはあくまでもイメージであり、実際には、Chirp信号ごとに異なる波形を示しうる。また、Chirp信号の生成および修正、ならびにエンジン試験の実施のすべての処理を構築装置100が実行する必要はなく、処理ごとに別装置を用いて実行してもよい。
【0026】
生成部131は、エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成する。具体的には、生成部131は、例えば、操作変数マスタ121に記憶された、操作変数、および操作変数の取りうる値の範囲に基づいて、操作変数1~nごとに、各操作変数を時系列に沿って変化させるChirp信号10-1~10-nを生成する。
【0027】
修正部132は、操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて、生成部131によって生成された試験パターンを修正する。図3は、実施例1にかかる網羅率に基づく信号修正の一例を示す図である。図3に示すように、修正部132は、生成部131によって生成されたChirp信号10-1~10-nを、操作変数1~nの取りうる空間と、操作変数1~nの変化速度値の取りうる空間との双方の網羅率を最大化するように、修正する。
【0028】
操作変数1~nの取りうる空間とは、例えば、図3に示すように、各操作変数の組み合わせが取りうる座標空間である。当該座標空間について、操作変数1と操作変数2との組み合わせが取りうる座標空間を例として説明する。操作変数1と操作変数2との組み合わせが、当該座標空間を、それぞれの操作変数の時系列変化を示すChirp信号によって、満遍なく網羅するほど網羅率は高くなる。このように、操作変数の取りうる空間の網羅率がより高くなるように、Chirp信号が修正される。
【0029】
操作変数の取りうる空間の網羅率は、例えば、図3に示すように、座標空間を複数の領域に分割し、各領域に対する、操作変数の組み合わせの有無の割合によって算出される。
【0030】
また、図3の領域に×印で示されるように、操作変数の組み合わせによっては、とってはいけない領域が存在する場合がある。そのため、修正部132は、座標空間からこのような領域を除外した上で、当該領域に操作変数の組み合わせが含まれないようにChirp信号を修正する。
【0031】
操作変数1~nの変化速度値の取りうる空間については、操作変数1~nの取りうる空間の上記説明と同様である。以上のように、修正部132は、Chirp信号10-1~10-nを、各操作変数の取りうる空間と、各操作変数の変化速度値の取りうる空間との双方の網羅率を最大化するように、Chirp信号20-1~20-nに修正する。
【0032】
また、修正部132は、空気過剰率に基づいて試験パターンをさらに修正できる。図4は、実施例1にかかる空気過剰率に基づく信号修正の一例を示す図である。図4に示すように、修正部132は、Chirp信号20-1~20-nを、空気過剰率が所定の閾値を下回らないように、修正する。
【0033】
空気過剰率は、例えば、エンジンに吸入された空気質量を、供給された燃料を完全燃焼させる理論空気質量で除算することにより、取得される。空気過剰率は、例えば、1.0など所定の閾値を下回ると、不完全燃焼を引き起こし、一酸化炭素や黒煙が増加する異常な状態でエンジンが運転されることになる。また、空気過剰率は、燃料噴射量、EGR率、タービン開度、吸気スロットル開度などの操作変数による影響を受ける。そのため、修正部132は、空気過剰率が所定の閾値を下回らないように下限を設け、各操作変数、すなわちChirp信号20-1~20-nを、Chirp信号20’-1~20’-nに修正する。
【0034】
なお、空気過剰率は、所定の閾値を上回ると、必要以上に空気が供給されていることになるため排ガス熱損失が増加する。そのため、修正部132はさらに、空気過剰率に対する上限を設け、空気過剰率が所定の範囲内を保つように、Chirp信号を修正してもよい。
【0035】
また、修正部132は、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、およびNOx(窒素酸化物)などの排気ガス成分の規制値に基づいて、各成分の濃度が各規制値を上回らないように、Chirp信号を修正できる。排気ガス成分の規制値に基づくChirp信号の修正は、空気過剰率に基づくChirp信号の修正と併せて、または代えて実行されてよい。
【0036】
網羅率に基づいて修正されたChirp信号20-1~20-nを、空気過剰率や排気ガス成分の規制値に基づいてさらに修正したChirp信号をChirp信号20’-1~20’-nとして表現する。また、以下のエンジンモデル構築などの説明の中で、Chirp信号20-1~20-nとしている部分は、Chirp信号をChirp信号20’-1~20’-nに置き換えられてもよい。
【0037】
取得部133は、修正した試験パターンによるエンジン試験を実施して、操作変数1~nの操作量と、操作変数1~nに対する被制御量との時系列データ50-1~50-nを取得する。なお、実施されるエンジン試験は、エンジン実機を用いた試験であってもよいし、バーチャルエンジンを用いた仮想試験であってもよい。
【0038】
構築部134は、修正された試験パターンを入力、および時系列データを正解とする教師データを機械学習することでエンジンモデルを構築する。図5は、実施例1にかかるエンジンモデル構築の一例を示す図である。図5に示すように、修正部132によって修正された試験パターンであるChirp信号20-1~20-n、および取得部133によって取得された時系列データ50-1~50-nに基づいて、エンジンモデル80が構築される。これにより、エンジンモデル80は、操作変数としてChirp信号を入力すると、Chirp信号によってエンジンを運転した場合の、当該操作変数に対する被制御量の時系列データを予測し、出力できる。
【0039】
エンジンモデル80は、例えば、中間層(隠れ層)を2層以上有する、RNN(Recurrent Neural Network)またはLSTM(Long Short Term Memory)による機械学習モデルである。図6は、実施例1にかかるエンジンモデルの一例を示す図である。図6の例は、LSTMモデルの構造を示すものである。LSTMは、RNNの中間層のユニットをLSTM Blockと呼ばれるメモリと3つのゲートとに置き換えることにより、短期依存に加え、長期依存を学習でき、エンジン試験における各操作変数に対する被制御量をより高精度に予測できる。
【0040】
図6における各パラメータは、以下の式(1)~(6)を用いて算出される。
【0041】
【数1】
【0042】
【数2】
【0043】
【数3】
【0044】
【数4】
【0045】
【数5】
【0046】
【数6】
ここで、sはシグモイド関数、bはバイアス、Wは入力重み、Uは回帰重み、fおよびgは双曲線正接関数(tanh)をそれぞれ示す。
【0047】
このようなエンジンモデル80を用いて、操作変数の時系列変化を示すChirp信号から、Chirp信号によってエンジンを運転した場合の、当該操作変数に対する被制御量の時系列データを予測できる。そのため、エンジン試験にエンジンモデル80を用いて、モデル出力値の被制御量が制御目標値に追従するようモデル入力値の操作変数の操作量を決定することにより、より少ない試験工数で網羅性の高いエンジン試験を実施できる。
【0048】
図5の説明に戻り、構築部134は、エンジンの各操作変数の操作量を決定するモデル予測制御器上でエンジンモデルを動作させるために、エンジンモデル80を用いて別のモデルである設計用モデル81を作成する。設計用モデル81は、例えば、エンジンモデル80のモデルパラメータをキャリブレーションするための物理法則に基づく数式を用いて作成される。また、設計用モデル81は、エンジンモデル80を線形化して作成されてもよい。設計用モデル81も、エンジンモデル80同様、RNNまたはLSTMによる機械学習モデルである。
【0049】
送信部135は、構築部134によって作成された設計用モデル81を、設計用モデル81を用いてエンジンの各操作変数の操作量を決定するモデル予測制御器に送信する。
【0050】
次に、モデル予測制御器による操作量の決定、および決定した操作量に基づくエンジン試験の制御について説明する。図7は、実施例1にかかるモデル予測制御の一例を示す図である。
【0051】
図7の例では、モデル予測制御器の一例である予測制御器200は、設計用モデル81を用いた操作コストの最適化を行ない、エンジンの各操作変数1~nの操作量90-1~90-nを決定する。
【0052】
まず、予測制御器200は、設計用モデル81にエンジンの各操作変数1~nの操作量90-1~90-nを入力し、当該操作変数に対する被制御量を取得する。そして、制御目標値71に対する応答などを考慮した、例えば、以下の式(7)を用いてコスト関数Jを算出し、操作コストが最小となるように各操作変数の操作量を決定する。
【0053】
【数7】
ここで、pは予測を考慮する未来の一定期間、QおよびRΔuは重み係数、uは操作量、Δuは操作量の変化量、rは制御目標値71、yは被制御量51-1~51-nである。
【0054】
そして、操作コストが最小となった操作量90-1~90-nを用いて実エンジン300が制御される。
【0055】
なお、エンジン試験は、実エンジン300ではなく、エンジンモデル80を用いた仮想試験であってもよい。図8は、実施例1にかかるモデル予測制御の別例を示す図である。図8における予測制御器200の処理は、図7で説明した予測制御器200の処理と同様である。図8の別例では、予測制御器200によって決定した操作量90-1~90-nを用いて、エンジンモデル80を制御し、エンジン試験が行われる。
【0056】
[処理の流れ]
次に、実施例1にかかるエンジンモデル構築処理の流れを説明する。図9は、実施例1にかかるエンジンモデル構築処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
まず、図9に示すように、構築装置100の生成部131は、エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンとして、操作変数ごとのChirp信号を生成する(ステップS101)。
【0058】
次に、構築装置100の修正部132は、操作変数の取りうる空間の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる空間の網羅率とに基づいて、ステップS101で生成されたChirp信号を修正する(ステップS102)。また、修正部132は、空気過剰率や排気ガス成分の規制値に基づいて、Chirp信号をさらに修正することもできる。
【0059】
次に、構築装置100の取得部133は、ステップS102で修正されたChirp信号を用いてエンジン試験を実施して(ステップS103)、操作変数の操作量と、操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する(ステップS104)。
【0060】
次に、構築装置100の構築部134は、ステップS102で修正されたChirp信号を入力、およびステップS104で取得された時系列データを正解とする教師データを機械学習することでモデルを構築する(ステップS105)。
【0061】
ステップS105の実行後、図9に示す処理は終了するが、ステップS105で構築されたエンジンモデルを用いて、Chirp信号によってエンジンを運転した場合の、操作変数に対する被制御量の時系列データを予測できる。そして、エンジン試験の際、予測された時系列データを用いてエンジンまたは仮想エンジンを制御することにより、網羅性の高いエンジン試験をより少ない試験工数で行うことができる。
【0062】
[効果]
上述したように、構築装置100は、エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて試験パターンを修正し、修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数の操作量と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得し、修正された試験パターンを入力、および時系列データを正解とする教師データを機械学習してエンジンモデルを構築する。
【0063】
これにより、より少ない試験工数でエンジン試験を実施するためのエンジンモデルを提供できる。そして、構築されたエンジンモデルを用いて、エンジンの各操作変数の操作量を逐次最適化により決定して制御することにより、より少ない試験工数で網羅性の高いエンジン試験を実施できる。
【0064】
また、構築装置100によって実行される生成する処理は、試験パターンとして、操作変数の時系列変化を示すChirp信号を生成する処理を含む。
【0065】
これにより、Chirp信号を用いた網羅性の高いエンジン試験を実施するためのエンジンモデルを提供できる。
【0066】
また、構築装置100によって実行される構築する処理は、エンジンモデルとして、中間層を2層以上有する、RNN(Recurrent Neural Network)またはLSTM(Long Short Term Memory)による機械学習モデルを構築する処理を含む。
【0067】
これにより、エンジン試験の際のエンジンの各操作変数の操作量に対する被制御量を、より高精度に予測できるエンジンモデルを提供できる。
【0068】
また、構築装置100は、エンジンモデルを用いてエンジンモデルのモデルパラメータをキャリブレーションするための物理法則に基づく数式を用いて第2のエンジンモデルを作成する処理をさらに実行する。
【0069】
これにより、エンジン試験の際のエンジンの各操作変数の操作量を決定するモデル予測制御器上で動作するエンジンモデルを提供できる。そして、モデル予測制御器上でエンジンモデルを用いて、エンジン試験の際のエンジンの各操作変数の操作量を決定することで、より少ない試験工数でエンジン試験を実施できる。
【0070】
また、構築装置100は、エンジンモデルを線形化し、第2のエンジンモデルを作成する処理をさらに実行する。
【0071】
これにより、エンジン試験の際のエンジンの各操作変数の操作量を決定する予測制御器上で動作するエンジンモデルを提供できる。そして、予測制御器上でエンジンモデルを用いて、エンジン試験の際のエンジンの各操作変数の操作量を決定することで、より少ない試験工数でエンジン試験を実施できる。
【0072】
また、構築装置100は、エンジンモデルを用いて被制御量を予測する第2のコンピュータに、第2のエンジンモデルを送信する処理をさらに実行する。
【0073】
これにより、予測制御器上でエンジンモデルを用いて、エンジン試験の際のエンジンの各操作変数の操作量を予測でき、より少ない試験工数でエンジン試験を実施できる。
【0074】
また、構築装置100は、第1の空間から、操作変数のとってはいけない領域を除外する処理と、第2の空間から、変化速度値のとってはいけない領域を除外する処理との少なくとも1つの処理をさらに実行する。
【0075】
これにより、異常な状態を引き起こさないように修正された試験パターンを教師データとして学習して構築された、より少ない試験工数で安全かつ網羅性の高いエンジン試験を実施できるエンジンモデルを提供できる。
【0076】
また、構築装置100は、空気過剰率に基づいて試験パターンを修正する処理をさらに実行する。
【0077】
これにより、異常な状態を引き起こさないようにさらに修正された試験パターンを教師データとして学習して構築された、より少ない試験工数でより安全かつ網羅性の高いエンジン試験を実施できるエンジンモデルを提供できる。
【0078】
[システム]
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更できる。また、実施例で説明した具体例、分布、数値などは、あくまで一例であり、任意に変更できる。
【0079】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。例えば、構築装置100の生成部131と修正部132とを統合できる。
【0080】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0081】
[ハードウェア]
上述した構築装置100のハードウェア構成について説明する。図10は、ハードウェア構成例を示す図である。図10に示すように、構築装置100は、通信部100a、HDD(Hard Disk Drive)100b、メモリ100c、およびプロセッサ100dを有する。また、図10に示した各部は、バスなどで相互に接続される。
【0082】
通信部100aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD100bは、図1に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0083】
プロセッサ100dは、図1に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD100bなどから読み出してメモリ100cに展開することで、図1で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、構築装置100が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、例えば、プロセッサ100dは、生成部131や修正部132などと同様の機能を有するプログラムをHDD100bなどから読み出す。そして、プロセッサ100dは、生成部131や修正部132などと同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0084】
このように、構築装置100は、プログラムを読み出して実行することで各処理を実行する情報処理装置として動作する。また、構築装置100は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施例と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施例でいうプログラムは、構築装置100によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用できる。
【0085】
なお、このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布できる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行できる。
【0086】
[実施例2]
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態および構成にて実施されてよいものである。例えば、構築装置100は、以下で説明する構成であってもよい。
【0087】
図11は、エンジンモデル構築のブロック図である。図11におけるChirp信号生成部、Chirp信号修正部、およびエンジンモデル構築部は、それぞれ、構築装置100の生成部131、修正部132、および構築部134の一例である。また、図11における実エンジンシステムは、エンジン実機、バーチャルエンジン、またはエンジン実機を用いて生成された機械学習モデルであるエンジンモデルであってよい。
【0088】
図12は、Chirp信号修正部のブロック図である。図11のChirp信号修正部は、図12に示すように、第1Chirp信号修正部と第2Chirp信号修正部とにより構成されてよい。
【0089】
図13は、第1Chirp信号修正部のブロック図である。図12の第1Chirp信号修正部は、図13に示すように、網羅率最適化部、網羅率算出部、ならびに変数の取りうる空間検出部および変数の変化速度値の取りうる空間検出部により構成されてよい。
【0090】
図14は、第2Chirp信号修正部のブロック図である。図12の第2Chirp信号修正部は、図14に示すように、空気過剰率検出部により構成されてよい。
【0091】
図15は、エンジンモデル構築部のブロック図である。図11のエンジンモデル構築部は、図12にモデル構築部として示すように、モデル構造決定部、操作量検出部、および被制御量検出部とにより構成されてよい。
【0092】
また、以上の実施例1を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0093】
(付記1)コンピュータが、
エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、
操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて試験パターンを修正し、
修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数の操作量と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得し、
修正された試験パターンを入力、および時系列データを正解とする教師データを機械学習してエンジンモデルを構築する
処理を実行することを特徴とするエンジンモデル構築方法。
【0094】
(付記2)試験パターンを生成する処理は、試験パターンとして、操作変数の時系列変化を示すChirp信号を生成する処理を含むことを特徴とする付記1に記載のエンジンモデル構築方法。
【0095】
(付記3)エンジンモデルを構築する処理は、エンジンモデルとして、中間層を2層以上有する、RNNまたはLSTMによる機械学習モデルを構築する処理を含むことを特徴とする付記1に記載のエンジンモデル構築方法。
【0096】
(付記4)コンピュータが、
エンジンモデルを用いてエンジンモデルのモデルパラメータをキャリブレーションするための物理法則に基づく数式を用いて第2のエンジンモデルを作成する
処理をさらに実行することを特徴とする付記3に記載のエンジンモデル構築方法。
【0097】
(付記5)コンピュータが、
エンジンモデルを線形化し、第2のエンジンモデルを作成する
処理をさらに実行することを特徴とする付記1に記載のエンジンモデル構築方法。
【0098】
(付記6)コンピュータが、
エンジンモデルを用いて被制御量を予測する第2のコンピュータに、第2のエンジンモデルを送信する
処理をさらに実行することを特徴とする付記4または5に記載のエンジンモデル構築方法。
【0099】
(付記7)コンピュータが、
第1の空間から、操作変数のとってはいけない領域を除外する処理と、
第2の空間から、変化速度値のとってはいけない領域を除外する処理と
の少なくとも1つの処理をさらに実行することを特徴とする付記1に記載のエンジンモデル構築方法。
【0100】
(付記8)コンピュータが、
空気過剰率に基づいて試験パターンを修正する
処理をさらに実行することを特徴とする付記1に記載のエンジンモデル構築方法。
【0101】
(付記9)コンピュータに、
エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成し、
操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて試験パターンを修正し、
修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数の操作量と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得し、
修正された試験パターンを入力、および時系列データを正解とする教師データを機械学習してエンジンモデルを構築する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【0102】
(付記10)試験パターンを生成する処理は、試験パターンとして、操作変数の時系列変化を示すChirp信号を生成する処理を含むことを特徴とする付記9に記載のプログラム。
【0103】
(付記11)エンジンモデルを構築する処理は、エンジンモデルとして、中間層を2層以上有する、RNNまたはLSTMによる機械学習モデルを構築する処理を含むことを特徴とする付記9に記載のプログラム。
【0104】
(付記12)コンピュータに、
エンジンモデルを用いてエンジンモデルのモデルパラメータをキャリブレーションするための物理法則に基づく数式を用いて第2のエンジンモデルを作成する
処理をさらに実行させることを特徴とする付記11に記載のプログラム。
【0105】
(付記13)コンピュータに、
エンジンモデルを線形化し、第2のエンジンモデルを作成する
処理をさらに実行させることを特徴とする付記9に記載のプログラム。
【0106】
(付記14)コンピュータに、
エンジンモデルを用いて被制御量を予測する第2のコンピュータに、第2のエンジンモデルを送信する
処理をさらに実行させることを特徴とする付記12または13に記載のプログラム。
【0107】
(付記15)コンピュータに、
第1の空間から、操作変数のとってはいけない領域を除外する処理と、
第2の空間から、変化速度値のとってはいけない領域を除外する処理と
の少なくとも1つの処理をさらに実行させることを特徴とする付記9に記載のプログラム。
【0108】
(付記16)コンピュータに、
空気過剰率に基づいて試験パターンを修正する
処理をさらに実行させることを特徴とする付記9に記載のプログラム。
【0109】
(付記17)エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成する生成部と、
操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて試験パターンを修正する修正部と、
修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数の操作量と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する取得部と、
修正された試験パターンを入力、および時系列データを正解とする教師データを機械学習してエンジンモデルを構築する構築部と
を有することを特徴とする装置。
【0110】
(付記18)生成部によって実行される試験パターンを生成する処理は、試験パターンとして、操作変数の時系列変化を示すChirp信号を生成する処理を含むことを特徴とする付記17に記載の装置。
【0111】
(付記19)構築部によって実行されるエンジンモデルを構築する処理は、エンジンモデルとして、中間層を2層以上有する、RNNまたはLSTMによる機械学習モデルを構築する処理を含むことを特徴とする付記17に記載の装置。
【0112】
(付記20)構築部は、エンジンモデルを用いてエンジンモデルのモデルパラメータをキャリブレーションするための物理法則に基づく数式を用いて第2のエンジンモデルを作成する処理をさらに実行することを特徴とする付記19に記載の装置。
【0113】
(付記21)構築部は、エンジンモデルを線形化し、第2のエンジンモデルを作成する処理をさらに実行することを特徴とする付記17に記載の装置。
【0114】
(付記22)エンジンモデルを用いて被制御量を予測する第2のコンピュータに、第2のエンジンモデルを送信する送信部をさらに有することを特徴とする付記20または21に記載の装置。
【0115】
(付記23)修正部は、
第1の空間から、操作変数のとってはいけない領域を除外する処理と、
第2の空間から、変化速度値のとってはいけない領域を除外する処理と
の少なくとも1つの処理をさらに実行することを特徴とする付記17に記載の装置。
【0116】
(付記24)修正部は、
空気過剰率に基づいて試験パターンを修正する
処理をさらに実行することを特徴とする付記17に記載の装置。
【0117】
(付記25)プロセッサと、
プロセッサに動作可能に接続されたメモリと
を備えた装置であって、プロセッサは、
エンジン試験に用いる複数の操作変数が時系列に沿って変化する試験パターンを生成する生成部と、
操作変数の取りうる第1の空間の第1の網羅率と操作変数の変化速度値の取りうる第2の空間の第2の網羅率とに基づいて試験パターンを修正する修正部と、
修正された試験パターンによるエンジン試験を実施して操作変数の操作量と操作変数に対する被制御量との時系列データを取得する取得部と、
修正された試験パターンを入力、および時系列データを正解とする教師データを機械学習してエンジンモデルを構築する構築部と
を有することを特徴とする装置。
【符号の説明】
【0118】
10-1~10-n、20-1~20-n、20‘-1~20’-n Chirp信号
50-1~50-n 時系列データ
51-1~51-n 被制御量
70 運転条件
71 制御目標値
80 エンジンモデル
81 設計用モデル
90-1~90-n 操作量
100 構築装置
100a 通信部
100b HDD
100c メモリ
100d プロセッサ
110 通信部
120 記憶部
121 操作変数マスタ
122 試験パターンテーブル
123 試験条件マスタ
124 エンジンモデルDB
130 制御部
131 生成部
132 修正部
133 取得部
134 構築部
135 送信部
200 予測制御器
300 実エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15