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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032834
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】リーンバーンエンジン用燃料組成物
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/06 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
C10L1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137072
(22)【出願日】2020-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小畠 健
(72)【発明者】
【氏名】内木 武虎
(57)【要約】
【課題】リーンバーンエンジンのリーン限界を拡大させることが可能な、リーンバーンエンジン用燃料組成物を提供すること。
【解決手段】炭素数4~6の炭化水素の含有量が50体積%以上であり、かつ、直鎖オレフィンの含有量が10体積%以上である、リーンバーンエンジン用燃料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数4~6の炭化水素の含有量が50体積%以上であり、かつ、直鎖オレフィンの含有量が10体積%以上である、リーンバーンエンジン用燃料組成物。
【請求項2】
炭素数4~6の炭化水素の含有量が75体積%以上であり、かつ、直鎖オレフィンの含有量が15体積%以上である、請求項1に記載のリーンバーンエンジン用燃料組成物。
【請求項3】
オレフィンの総量に対する直鎖オレフィンの割合が、90体積%以上である、請求項1又は2に記載のリーンバーンエンジン用燃料組成物。
【請求項4】
直鎖オレフィンの総量に対する炭素数4~6の直鎖オレフィンの割合が、90体積%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のリーンバーンエンジン用燃料組成物。
【請求項5】
炭素数4~6の炭化水素の総量に対する炭素数4~6の直鎖オレフィンの割合が、50体積%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のリーンバーンエンジン用燃料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーンバーンエンジン用燃料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、理論空燃比より薄い混合気で燃料を燃焼させるリーンバーンエンジンが知られている。このようなリーンバーンエンジン用の燃料としては、例えば、特許文献1に、アルキレートガソリン、接触改質ガソリン、軽質接触分解ガソリン及びコーカーライトガソリンよりなる群から選ばれた1種以上のガソリンを配合したことを特徴とするリーンバーンエンジン用燃料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-182579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リーンバーンエンジンにおいて、運転可能な空燃比(空気/燃料)の上限はリーン限界と称され、このリーン限界を拡大することで、燃費の向上、燃焼の安定化等が期待される。
【0005】
本発明は、リーンバーンエンジンのリーン限界を拡大させることが可能な、リーンバーンエンジン用燃料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、炭素数4~6の炭化水素の含有量が50体積%以上であり、かつ、直鎖オレフィンの含有量が10体積%以上である、リーンバーンエンジン用燃料組成物に関する。
【0007】
一態様において、炭素数4~6の炭化水素の含有量は75体積%以上であってよく、直鎖オレフィンの含有量は15体積%以上であってよい。
【0008】
一態様において、オレフィンの総量に対する直鎖オレフィンの割合は、90体積%以上であってよい。
【0009】
一態様において、直鎖オレフィンの総量に対する炭素数4~6の直鎖オレフィンの割合は、90体積%以上であってよい。
【0010】
一態様において、炭素数4~6の炭化水素の総量に対する炭素数4~6の直鎖オレフィンの割合は、50体積%以上であってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リーンバーンエンジンのリーン限界を拡大させることが可能なリーンバーンエンジン用燃料組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本実施形態の燃料組成物は、炭素数4~6の炭化水素を主成分(例えば50体積%以上)とする燃料組成物である。また、本実施形態の燃料組成物は、直鎖オレフィンを含有し、直鎖オレフィンの含有量が10体積%以上の燃料組成物である。
【0014】
すなわち、本実施形態の燃料組成物は、軽質分である炭素数4~6の炭化水素を主成分としつつ、直鎖オレフィンの比率が10体積%以上となるように組成が調整されている。このような燃料組成物は、リーンバーンエンジンのリーン限界を拡大させることができ、リーンバーンエンジン用燃料組成物として(特に、空燃比が2以上の超稀薄燃焼用として)好適に用いることができる。
【0015】
なお、本明細書中、燃料組成物における各成分の含有量は、JIS K 2536-2「石油製品-成分試験方法 第2部:ガスクロマトグラフによる全成分の求め方」に記載の方法で測定される値を示す。
【0016】
本実施形態の燃料組成物において、炭素数4~6の炭化水素の含有量は、リーン限界をより拡大できる観点から、好ましくは65体積%以上、より好ましくは75体積%以上であり、80体積%以上、85体積%以上、90体積%以上、95体積%以上又は99体積%以上であってもよく、100体積%であってもよい。
【0017】
炭素数4~6の炭化水素には、例えば、炭素数4~6のパラフィン(炭素数4~6の直鎖パラフィン、炭素数4~6の分岐パラフィン)、炭素数4~6のオレフィン(炭素数4~6の直鎖オレフィン、炭素数4~6の分岐オレフィン)、炭素数6の芳香族化合物(ベンゼン)等が含まれていてよい。
【0018】
炭素数4~6の炭化水素としては、炭素数5の炭化水素が好ましい。炭素数4~6の炭化水素に占める炭素数5の炭化水素の割合は特に限定されないが、例えば50体積%以上であってよく、60体積%以上、70体積%以上、80体積%以上、90体積%以上、95体積%以上、97体積%以上又は99体積%以上であってもよく、100体積%であってもよい。これにより、上記効果がより顕著に得られる傾向がある。
【0019】
本実施形態の燃料組成物において、炭素数5の炭化水素の含有量は、リーン限界をより拡大できる観点から、好ましくは65体積%以上、より好ましくは75体積%以上であり、80体積%以上、85体積%以上、90体積%以上、95体積%以上又は99体積%以上であってもよく、100体積%であってもよい。
【0020】
本実施形態の燃料組成物は、直鎖オレフィンを含有する。直鎖オレフィンは、内部オレフィンでも末端オレフィンでもよい。直鎖オレフィンとしては、炭素数4~6の直鎖オレフィンが好ましく、炭素数5の直鎖オレフィンがより好ましい。
【0021】
本実施形態の燃料組成物は、直鎖オレフィン以外の他のオレフィン(例えば分岐オレフィン)を更に含有していてもよい。他のオレフィンの含有量は特に限定されないが、オレフィンの全量基準で、例えば20体積%以下であってよく、上記効果がより顕著に得られる観点からは10体積%以下、5体積%以下又は1体積%以下であってもよく、0質量%であってもよい。すなわち、オレフィンの総量に対する直鎖オレフィンの割合は、例えば80体積%以上であってよく、上記効果がより顕著に得られる観点からは90体積%以上、95体積%以上又は99体積%以上であってもよく、100質量であってもよい。
【0022】
本実施形態の燃料組成物において、直鎖オレフィンの総量に対する炭素数4~6の直鎖オレフィンの割合は、例えば80体積%以上であってよく、上記効果がより顕著に得られる観点からは90体積%以上、95体積%以上又は99体積%以上であってもよく、100質量であってもよい。
【0023】
本実施形態の燃料組成物において、炭素数4~6の炭化水素の総量に対する炭素数4~6の直鎖オレフィンの割合(炭素数4~6の炭化水素の総量を100体積%としたときの、炭素数4~6の直鎖オレフィンの含有量)は、例えば5体積%以上であってよく、10体積%以上、15体積%以上、20体積%以上、25体積%以上、30体積%以上、35体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上、80体積%以上、90体積%以上、95体積%以上、97体積%以上又は99体積%以上であってもよく、100体積%であってもよい。これにより、上記効果がより顕著に得られる傾向がある。
【0024】
炭素数4~6の直鎖オレフィンとしては、炭素数5の直鎖オレフィンが好ましい。炭素数4~6の直鎖オレフィンに占める炭素数5の直鎖オレフィンの割合は特に限定されないが、例えば50体積%以上であってよく、60体積%以上、70体積%以上、80体積%以上、90体積%以上、95体積%以上、97体積%以上又は99体積%以上であってもよく、100体積%であってもよい。これにより、上記効果がより顕著に得られる傾向がある。
【0025】
本実施形態の燃料組成物において、直鎖オレフィンの総量に対する炭素数5の直鎖オレフィンの割合は、例えば80体積%以上であってよく、上記効果がより顕著に得られる観点からは90体積%以上、95体積%以上又は99体積%以上であってもよく、100体積%であってもよい。
【0026】
本実施形態の燃料組成物における芳香族分は、好ましくは5体積%以下であり、より好ましくは3体積%以下、更に好ましくは2体積%以下、一層好ましくは1体積%以下であり、0体積%であってもよい。
【0027】
本実施形態の燃料組成物は、含酸素化合物を更に含有していてもよい。
【0028】
含酸素化合物は、構成元素として酸素を含む有機化合物である。含酸素化合物としては、例えば、含酸素複素環式化合物、含酸素芳香族化合物、含酸素脂肪族化合物等が挙げられる。含酸素化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
含酸素複素環式化合物は、含酸素複素環を有する化合物である。含酸素複素環式化合物としては、例えば、フラン環、テトラヒドロフラン環、エチレンオキシド環、プロピレンオキシド環、ピラン環、テトラヒドロピラン環、ベンゾフラン環、ベンゾピラン環等の含酸素複素環を有する化合物が挙げられる。含酸素複素環式化合物としては、上記効果がより顕著に得られる観点から、フラン環を有する化合物が好ましい。フラン環を有する化合物としては、例えば、フラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフランが挙げられる。フラン環を有する化合物としては、フラン、2-メチルフランが特に好ましい。
【0030】
含酸素芳香族化合物は、構成元素として酸素を含み、芳香環を有する化合物である。含酸素芳香族化合物としては、例えば、芳香環に直接結合する酸素原子を有する芳香族化合物(例えば、アルコキシベンゼン、フェノール類等)等が挙げられる。アルコキシベンゼンとしては、例えば、アニソール、フェネトール、プロピルオキシベンゼン等が挙げられる。アルコキシベンゼンとしては、沸点範囲の観点から、アニソール及びフェネトールが好ましい。
【0031】
含酸素脂肪族化合物としては、例えば、アルコール類、エーテル類等(例えば、エタノール、イソブチルアルコール、ETBE(エチル-tert-ブチルエーテル)等が挙げられる。
【0032】
含酸素化合物としては、エタノールが好ましい。
【0033】
本実施形態の燃料組成物において、含酸素化合物の含有量は、燃料組成物の全量に対して、例えば50体積%未満であってよく、35体積%以下、25体積%以下、20体積%以下、15体積%以下、10体積%以下、5体積%以下又は1体積%以下であってもよく、0体積%であってもよい。
【0034】
本実施形態の燃料組成物は、上記以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、清浄分散剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、表面着火防止剤、氷結防止剤、助燃剤、帯電防止剤、着色剤、防錆剤、水抜き剤、識別剤、着臭剤、摩擦調整剤等が挙げられる。これらの他の成分の合計含有量は、燃料組成物の全量に対して、例えば1体積%以下であってよく、0.5体積%以下が好ましく、0.1体積%以下がより好ましく、0体積%であってもよい。
【0035】
清浄分散剤としては、通常使用される清浄分散剤を用いることができ、例えば、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンなどのガソリン清浄分散剤として公知の化合物を用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、N,N’-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジイソブチル-p-フェニレンジアミン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ヒンダードフェノール類等が挙げられる。金属不活性化剤としては、例えば、N,N’-ジサリチリデン-1,2-ジアミノプロパンのようなアミンカルボニル縮合化合物等が挙げられる。表面着火防止剤としては、例えば、有機リン系化合物等が挙げられる。氷結防止剤としては、例えば、多価アルコール又はそのエーテル等が挙げられる。助燃剤としては、例えば、有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、高級アルコール硫酸エステル等が挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。着色剤としては、例えば、アゾ染料等が挙げられる。防錆剤としては、例えば、有機カルボン酸又はその誘導体類、アルケニルコハク酸エステル等が挙げられる。水抜き剤としては、例えば、ソルビタンエステル類等が挙げられる。識別剤としては、例えば、キリザニン、クマリン等が挙げられる。着臭剤としては、例えば、天然精油合成香料等が挙げられる。摩擦調整剤としては、例えば、高級カルボン酸モノグリセリド及び高級カルボン酸のアミド化合物の混合物等が挙げられる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例0037】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
燃料組成物として1-ペンテンを用い、下記の方法でリーン限界の測定を行った。結果を表1に示す。
【0039】
<リーン限界の測定>
リーン限界は、下記の試験エンジンを使用し、回転数2000rpm、図示平均有効圧力800kPa、トルク最大となる最小進角点火時期(MBT)の条件下で空気過剰率を変更することで測定した。リーン限界は、図示平均有効圧力の変動率が3%を超える点における空気過剰率とした。なお、空気過剰率とは試験時の混合気の空燃比を燃料組成物の理論空燃比で除したものであり、当量比φの逆数となる。
(試験エンジン)
エンジン:単気筒
排気量:563cc
噴射方式:ポート噴射式
【0040】
(実施例2)
燃料組成物として2-ペンテンを用い、実施例1と同じ方法でリーン限界の測定を行った。結果を表1に示す。
【0041】
(実施例3~7)
下記表1に示す組成の燃料組成物を準備し、実施例1と同じ方法でリーン限界の測定を行った。結果を表1に示す。なお、燃料組成物の組成は、JIS K 2536-2「石油製品-成分試験方法 第2部:ガスクロマトグラフによる全成分の求め方」により測定された値を示す。
【0042】
(比較例1)
燃料組成物としてメチルシクロペンタンを用い、実施例1と同じ方法でリーン限界の測定を行った。結果を表2に示す。
【0043】
(比較例2~4)
下記表2に示す組成の燃料組成物を準備し、実施例1と同じ方法でリーン限界の測定を行った。結果を表2に示す。
【0044】
(比較例5)
燃料組成物として下記表2に示す組成のハイオクガソリン相当燃料を準備し、実施例1と同じ方法でリーン限界の測定を行った。結果を表2に示す。
【0045】
なお、表1~2中、各成分の割合を示す数値の単位は、体積%である。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】