(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032841
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】橋梁に用いられる免震ゴム支承の交換工法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/04 20060101AFI20220217BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20220217BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20220217BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
E01D19/04 B
E01D22/00 A
E04H9/02 331A
E04G23/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137083
(22)【出願日】2020-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】306033025
【氏名又は名称】日本鉄塔工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100221752
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 雅与
(74)【代理人】
【識別番号】100213746
【弁理士】
【氏名又は名称】川成 渉
(72)【発明者】
【氏名】東 幹人
(72)【発明者】
【氏名】香原 一道
(72)【発明者】
【氏名】北川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】木下 研人
【テーマコード(参考)】
2D059
2E139
2E176
【Fターム(参考)】
2D059AA37
2D059GG05
2D059GG39
2E139AA01
2E139AB03
2E139AC20
2E139AD04
2E139CA02
2E139CC02
2E139CC11
2E139CC17
2E176AA01
2E176BB27
2E176BB36
2E176DD22
(57)【要約】
【課題】施工時の安全性を確保しつつ、工期を短縮でき、ワイヤーソーに取り付けられたダイヤモンドワイヤーを破損させることなく、なお且つ環境にも配慮した橋梁に用いられる免震ゴム支承の交換工法が求められている。
【解決手段】ワイヤーソーを用いて免震ゴム支承を水平方向に切断する工程と、免震ゴム支承を撤去する工程と、新規免震ゴム支承を挿入する工程とを含むことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記免震ゴム支承を、ワイヤーソーを用いて、水平方向に切断する工程と、
前記免震ゴム支承を撤去する工程と、
新規免震ゴム支承を挿入する工程と
を含む、橋梁に用いられる免震ゴム支承の交換工法。
【請求項2】
前記免震ゴム支承を切断する工程において、
上内部補強鋼板と、下内部補強鋼板を切断することを含む、請求項1に記載の免震ゴム支承の交換工法。
【請求項3】
前記免震ゴム支承を撤去する工程において、
前記免震ゴム支承を切断する工程により形成された前記下内部補強鋼板の切断面間に滑り板を挿入することをさらに含む、
請求項1~3に記載の免震ゴム支承の交換工法。
【請求項4】
前記免震ゴム支承を切断する工程おいて、
ワイヤーソーに取り付けられたダイヤモンドワイヤーに触れるように設置された研材によって前記ダイヤモンドワイヤーの付着物を除去する、請求項1~3に記載の免震ゴム支承の交換工法。
【請求項5】
前記免震ゴム支承を切断する工程において、
前記ダイヤモンドワイヤーをカバーで覆い、
前記カバー内で前記免震ゴム支承を切断し、
前記ダイヤモンドワイヤーの一端方向から送風し、他端方向から吸塵する、または空気の流れ方向を切り替えることにより吸塵する
請求項1~4に記載の免震ゴム支承の交換工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境面・安全面に配慮しつつ、工期を短縮させることが可能なワイヤーソーを用いる、橋梁に用いられる免震ゴム支承の交換工法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁に用いられる支承は、橋梁の上部構造と下部構造との間に設置される部材である。上部構造には例えば主桁等が含まれ、下部構造には例えば橋台や橋脚等が含まれる。上記支承は、上部構造の荷重を下部構造に伝達するための機構を有し、近年では、耐震性を考慮して高減衰ゴムを用いた「免震ゴム支承」が汎用的に用いられている。この免震ゴム支承は、オゾンや紫外線により防振ゴムの結合が切れてひび割れ(「オゾンクラック」)が発生し、ひび割れの深さが深いと雨水等により、免震ゴム支承内の内部鋼板が腐食し、免震ゴム支承としての機能が劣化してしまう。その結果、地震の水平力に耐え切れずに免震ゴム支承が切断されてしまい易いという問題が生じている。このような問題が生じた免震ゴム支承は耐震性としての機能を遂行することができず、免震ゴム支承の取替が必要とされる。上記問題に加え、今後、経年劣化による免震ゴム取替も必要とされる。
【0003】
この免震ゴム支承の取替工法としては、ブレーカーによる斫り工法、または、ウォータージェット工法が一般的である。
ブレーカーによる斫り工法は、橋梁に設置された免震ゴム支承において、橋台または橋脚上に作業スペース用の高さが充分にある場合に用いられている。下部構造である下沓のゴム支承を支える部分をブレーカーを用いて斫り、免震ゴム支承と下沓を接続するアンカーボルトを露出させる。露出したアンカーボルトをガス切断して撤去し、上沓と免震ゴム支承を接続する外部取付ボルトを取り外した後、免震ゴム支承を撤去する。次いで、残置したアンカーボルトの上面に新たなベースプレートを溶接により連設して設置する。上記ベースプレートの上面に下沓を連設して設置する。新しい免震ゴム支承を固定するために、上沓にある外部取付ボルト締結口を再利用して、外部取付ボルトを介して上沓に接続し、下沓にある外部取付ボルト締結口を利用して、外部取付ボルトを介して下沓に接続する。そして下沓とベースプレートを溶接することで、新しい免震ゴム支承を完全に固定する。下沓の側面に連設するようにコンクリートを打設または無収縮モルタルを充填したのち、コンクリートが固まるまでの養生期間待機する。
【0004】
ここで、ウォータージェット工法とは、ウォータージェットを用いて下部構造である下沓の一部を斫り、作業用の足場を確保するとともに免震ゴム支承と下沓を接続するアンカーボルトを露出させる。次いで、露出したアンカーボルトをガス切断し、撤去する。上沓と上記免震ゴム支承を接続する外部取付ボルトを取り外した後、上記免震ゴム支承を撤去する。切断され、下沓上に残置されたアンカーボルトの上面に連設して、ベースプレートを設置する。上沓にある外部取付ボルト締結口を再利用することにより、新規免震ゴム支承を外部取付ボルトを介して上沓に接続する。上記新規免震ゴム支承の下鋼板とベースプレートをベースプレートボルトを介して接続する。上記新規免震ゴム支承の下鋼板の下面に連設するようにコンクリートを打設または無収縮モルタルを充填したのち、コンクリートが固まるまでの養生期間待機する。
【0005】
ウォータージェット工法は、高圧ポンプにより噴射される超高圧水を用いて行われるが、その作業は、橋台や橋脚上という高所で、しかも高さ300mm~400mm程度しかない狭い作業空間で、免震ゴム支承を切断するだけでなく、沓座を斫り、また、アンカーボルトを切断する作業をも要するものである。
その一方で、環境汚染を防ぐため、沓座の斫り作業やアンカーボルトの切断作業時には、高圧水のための排水設備と切断粉の飛散防止のための養生が必要である。加えて、ウォータージェット工法での斫り作業では100dBレベルもの騒音を発生させるため、防音設備の設営も必要となる。また、ゴム支承の交換後に、新たにコンクリートを打設して沓座を再形成しなければならないため、このコンクリートが固まるまでの養生期間を確保しなければならず、復旧までに時間を要するものであった。さらに、ウォータージェット工法では誤射等による事故を回避するため、実施者には細心の注意力が求められる。
【0006】
そのため、ウォータージェットを用いない安全な施工方法が提案されている。例えば、特許文献1では、ワイヤーソーを用いて支承のかさ上げ部を切断する工法が提案されており、また、特許文献2では、建物に設置された免震装置のゴム等の弾性体にダイヤモンドワイヤーを直接巻き付けて切断する工法が提案されている。
【0007】
しかし、特許文献1の工法は、ビルやマンション等の建物に用いられ、且つ新設時から取替を考えた免震構造であるため、安全性が確保されるものの、切断により生じた隙間にクラウドを注入し、固まるまでの養生期間を設けねばならず、施工期間が長期化してしまう欠点があった。また、特許文献2の工法では、安全性が確保され、コンクリートが固まるまでの養生期間が不要ではあるものの、免震ゴム支承切断時に摩擦熱によりゴムがダイヤモンドワイヤーに巻き付いて切断が不可能な状態になり、ダイヤモンドワイヤーの交換が必要となるため、施工費用を増大させる要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018‐119269号公報
【特許文献2】特開平11‐182055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
施工時の安全性を確保しつつ、工期を短縮でき、ワイヤーソーに取り付けられたダイヤモンドワイヤーを破損させることなく、なお且つ環境にも配慮した、橋梁に用いられる免震ゴム支承の交換工法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による工法は、ワイヤーソーを用いて免震ゴム支承を水平方向に切断する工程と、切断された免震ゴム支承を撤去する工程と、新規の免震ゴム支承を挿入する工程とを含む工法である。
本発明による工法によれば、橋台または橋脚上の作業スペースの高さに拘わらず免震ゴム支承の交換を行うことが可能であり、ウォータージェットを用いることがないため、排水設備や飛散防止養生は不要であり、騒音も70dB以下に抑えられるため防音設備も必要がない。また、沓座を斫ることがないので、アンカーボルトを切断し、新たなベースプレートを設置する必要がなく、そしてコンクリートを打設する必要もない。そのため、コンクリートが固まるまでの養生期間を確保する必要がなく、工期の短縮が可能である。そして本発明に係る工法を用いることで、沓座を傷つけることがないため、ウォータージェットを用いる斫り工事により意図しないクラックを沓座に生じさせるような二次的損傷を防ぐことができ、かつ、新設の免震ゴム支承をそのまま沓座に連結することが可能となる。
【0011】
上記免震ゴム支承を切断する工程において、上内部補強鋼板と、下内部補強鋼板を切断することを含んでもよい。上下内部補強鋼板は約20~30mm程度の厚さがあるため、ワイヤーソーを施工する者の技術力如何に拘わらず、施工者は水平方向への切断を容易に行うことができる。上内部補強鋼板を切断した後に下内部補強鋼板を切断してもよい。上内部補強鋼板を下内部補強鋼板よりも先に切断することにより、上内部補強鋼板と上鋼板が連結することで支持していた免震ゴム支承の荷重を、下内部補強鋼板および下鋼板に掛けることができる。これにより、上内部補強鋼板が切断された免震ゴム支承が左右に揺動しづらくなり、下内部補強鋼板の切断を安定して行える。あるいは、下内部補強鋼板を切断した後に上部内部補強鋼板を切断してもよい。これにより、切断された免震ゴム支承が自重により落下するため、後述の下内部補強鋼板を切断することで形成された切断面間に挿入される滑り板上に、切断した免震ゴム支承を容易に配置することができる。
【0012】
上記免震ゴム支承を撤去する工程において、免震ゴム支承を切断する工程により形成された下内部補強鋼板の切断面間に滑り板を挿入することをさらに含んでもよい。切断された免震ゴム支承を滑り板上に載置することで、免震ゴム支承を水平方向へ簡便に移動させて撤去することができる。
【0013】
上記免震ゴム支承を切断する工程おいて、ワイヤーソーに取り付けられたダイヤモンドワイヤーに触れるように配置された研材によって上記ダイヤモンドワイヤーの付着物を除去してもよい。免震ゴム支承のゴム層と内部鋼板は薄いゴムで全体的に覆われている。したがって、ワイヤーソーで免震ゴム支承の上下内部補強鋼板を切断するに際し、摩擦熱により溶解したゴム等の付着物が上記ダイヤモンドワイヤーに巻き付き、著しくワイヤーソーの切断効率を低下させてしまう。したがって、ワイヤーソーを安全・効率的に機能を回復させることが求められるが、研材を用いることにより、ダイヤモンドワイヤーに絡み付いたゴム等の付着物を除去し、ワイヤーソーの切断機能を回復させることができ、そのため、ワイヤーソーに取り付けられたダイヤモンドワイヤーの取替頻度を減少させ、切断効率を下げることなく切断工程を進行することが可能となる。
【0014】
上記免震ゴム支承を切断する工程において、上記ダイヤモンドワイヤーをカバーで覆い、カバー内で上記免震ゴム支承を切断し、ダイヤモンドワイヤーの一端方向から送風し、他端方向から吸塵してもよく、または空気の流れを切り替えることにより吸塵してもよい。免震ゴム支承の切断位置において上記ダイヤモンドワイヤーをカバーで覆うことで、切断時に生じる切断粉の飛散を防止することができる。切断中の上記ダイヤモンドワイヤーに一端方向から空気を送り込むことで、摩擦熱により上記ダイヤモンドワイヤーが損傷するのを防止する。また、一端方向に吸塵装置を配置し、ワイヤーソーによる切断工程で飛散する粉塵を収集することで、環境汚染を防ぐ効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、免震ゴム支承の構造を示す免震ゴム支承の正面図である。
【
図2】
図2は、主桁と橋台または橋脚の間に取り付けられた免震ゴム支承の正面図である。
【
図3】
図3は、本工法における免震ゴム支承の上内部補強鋼板の切断の工程を示す正面図である。
【
図4】
図4は、本工法における免震ゴム支承の下内部補強鋼板の切断の工程を示す正面図である。
【
図5】
図5は、本工法における免震ゴム支承の撤去の工程を示す正面図である。
【
図6】
図6は本発明の工法の変形例を示す図で、(A)は本工法における免震ゴム支承の切断の工程を示す正面図であり、(B)および(C)は免震ゴム支承の撤去の工程を示す正面図である。
【
図7】
図7は、本工法における上鋼板および下鋼板の撤去の工程を示す正面図である。
【
図8】
図8は、本工法における新規免震ゴム支承の取付の工程を示す正面図である。
【
図9】
図9は、本工法における研材を配置した免震ゴム支承の切断の工程を示す正面図である。
【
図10】
図10は、本工法におけるカバーで覆われたワイヤーソーに取り付けられたダイヤモンドワイヤーによる免震ゴム支承の切断の工程を示す正面図である。
【
図11】
図11は、本工法におけるカバーで覆われたワイヤーソーによる免震ゴム支承の切断の工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
免震ゴム支承3は、
図1に示されるように、弾性体であるゴム層と剛性体である内部鋼板が交互に積層されており、内部鋼板の最上端には厚さ20mm~30mmを有する上内部補強鋼板31が、内部鋼板の最下端には厚さ20~30mmを有する下内部補強鋼板32がそれぞれ設けられている。そして、ゴム層と内部鋼板はゴム膜Gで覆われている。
図2に示されるように、上鋼板41は内部取付ボルト33を介して上内部補強鋼板31と連結され、下鋼板42は内部取付ボルト33を介して下内部補強鋼板32と連結されている。さらに主桁1に連設する上沓51は外部取付ボルト53を介して上鋼板41と連結され、橋台または橋脚2に連設する下沓52は外部取付ボルト53を介して下鋼板42と連結されている。
本発明で用いられるワイヤーソーは、水を用いる湿式を用いてもよいが、水を用いない乾式である方が排水処理のための養生を必要としないため好ましい。ワイヤーソーはその種類・形状・大きさを問わず、施工時に適宜に選定されて用いることができる。
【0017】
本発明の実施例による工法は、まず、主桁1と橋台または橋脚2との間に、免震ゴム支承3を交換する間に免震ゴム支承3に係る垂直負荷を代わりに受けるように、複数のジャッキを設置する。次いで、上鋼板41と上沓51とを連結する外部取付ボルト53を緩めた後、免震ゴム支承3に加わる垂直負荷をジャッキにより坦持させるように適宜量をジャッキアップする。
【0018】
図3に示されるように、免震ゴム支承3の上内部補強鋼板31を切断する位置にワイヤーソーを設置する。次いで、ワイヤーソーを稼働させて、免震ゴム支承3の上内部補強鋼板31を水平方向に切断する。上および下内部補強鋼板31および32は20~30mmとワイヤーソーで切断するのに十分な厚みを有するため、施工者の技能や経験に拘わらず、容易に水平方向への切断が可能である。上内部補強鋼板31を水平方向に切断することで、ワイヤーソーに取り付けられたダイヤモンドワイヤーDに免震ゴムが実質的に付着することなく、安定した切断工程を遂行することが可能となる。上内部補強鋼板31を切断するに際しては、上内部補強鋼板31と上鋼板41とを結合する内部取付ボルト33を同時に切断してもよい。上内部補強鋼板31を切断した後、上記ダイヤモンドワイヤーDを取り外す。
【0019】
続いて、
図4に示されるように、免震ゴム支承3の下内部補強鋼板32を切断する位置にワイヤーソーを設置する。次いで、ワイヤーソーを稼働させて、免震ゴム支承3の下内部補強鋼板32を水平方向に切断する。下内部補強鋼板32を切断するに際し、下内部補強鋼板32と下鋼板42とを結合する内部取付ボルト33は同時に切断される。下内部補強鋼板32を水平方向に切断することで、ワイヤーソーに取り付けられたダイヤモンドワイヤーDが損傷することなく、安定した切断工程を遂行することが可能となる。
【0020】
図5に示されるように、下内部補強鋼板32を切断することにより形成された切断面間に、表面をテフロン(登録商標)等のような潤滑性部材で加工された滑り板6を挿入する。切断された免震ゴム支承3が滑り板6上で摺動自在に載置される。切断された免震ゴム支承3をレバーブロック(登録商標)により水平方向に滑り板6上を移動させて撤去する。切断された免震ゴム支承3を撤去した後、滑り板6も撤去する。
【0021】
ここにおいて、
図6の(A)に示されるように、免震ゴム支承3の下内部補強鋼板32を切断した後に、(B)に示されるように、下内部補強鋼板32を切断することで形成される切断面間に滑り板6を挿入することもできる。そして、(C)に示されるように、滑り板6を切断面間に挿入した後、上内部補強鋼板31を切断することで、免震ゴム支承3は自重により滑り板6上に容易に載置され、切断した免震ゴム支承3を滑り板6上で摺動自在に撤去できる。
【0022】
図7に示されるように、上鋼板41と上沓51とを連結していた外部取付ボルト53と、下鋼板42と下沓52を連結していた外部取付ボルト53を撤去する。上および下沓51および52に連結されていた上および下鋼板41および42を撤去する。このとき、上述した切断工程において残された上および下内部補強鋼板31および32の残置部分と、上および下鋼板41および42と上および下内部補強鋼板31および32を連結する内部取付ボルト33の残置部分も同時に撤去される。
【0023】
図8に示されるように、撤去された免震ゴム支承3が配置されていた空間に、既製品である新規免震ゴム支承Nをレバーブロック(登録商標)等の移動手段により(図示なし)水平方向に移動させて所定位置に配置する。上述した免震ゴム支承3の切断工程において、上沓51および下沓52を損傷することがないため、撤去された免震ゴム支承3の上鋼板41および下鋼板42を、既存の上沓51および下沓52のボルト締結口を再利用して外部取付ボルト53によってそれぞれ連結することができる。新規免震ゴム支承Nの上鋼板を外部取付ボルトにより上沓51に連結させた後に、同様に新規免震ゴム支承Nの下鋼板を外部取付ボルトにより下沓52に連結する。
【0024】
交換した新規免震ゴム支承Nがジャッキに加えられていた垂直負荷を坦持するように、主桁1と橋台または橋脚2の間に載置されていた複数のジャッキをジャッキダウンする。ジャッキダウン後に、主桁1と橋台または橋脚2の間に載置された複数のジャッキを取り外す。
【0025】
図9に示されるように、ワイヤーソーに取り付けられたダイヤモンドワイヤーDの走行経路の適当な位置に、上記ダイヤモンドワイヤーDに接触するように研材Kが配置される。ワイヤーソーが免震ゴム支承3を切断している間、ダイヤモンドワイヤーDが研材Kに触れることによりダイヤモンドワイヤーDに付着したゴム等の付着物を除去することができる。前述したように、免震ゴム支承3は全体をゴム膜Gで覆われているため、ワイヤーソーで水平方向に切断するに際して、摩擦熱により溶解したゴム等がダイヤモンドワイヤーDに付着する。ゴム等の付着物はダイヤモンドワイヤーDの切断効率を著しく低下させるため、これを安全かつ効率的に除去する必要がある。本発明において用いられる研材Kは、その種類・形状・大きさを問わず、上述の付着物除去効果を奏するものであれば良く、例えば、コンクリートブロック等を使用できる。この研材Kは、作業中にワイヤーソーが一時的または間欠的であっても触れることができる状態を保持できるのであれば、所定位置に固定されても固定されなくてもよい。
【0026】
図10および
図11に示されるように、免震ゴム支承3の切断位置において、切断粉の飛散を防止するために、ワイヤーソーに取り付けられたダイヤモンドワイヤーDをカバーで覆い、そのカバー内で上記ダイヤモンドワイヤーDを免震ゴム支承3に巻き付け切断する。カバーの一端に送風装置Sを配置し、他端に吸塵装置Qを配置する。または、カバーの一端に送風および吸塵を行うブロアバキュームといった送風・吸塵装置を配置する。ワイヤーソーが免震ゴム支承を切断している間、送風機Sがカバー内に向けて送風することにより、摩擦熱よってダイヤモンドワイヤーDが熱を持つことを防止できると共に、ダイヤモンドワイヤーDが免震ゴム支承3を切断することで生じる塵をカバーの他端に配置する吸塵装置Qに向けて送出する。カバーの他端の吸塵装置Qはカバー内から送風機Sによって送られてきた塵を吸塵する。これにより、ワイヤーソーが免震ゴム支承を切断することで生じる塵を吸塵することで、粉塵が生じることを防ぐことができる。ここにおいて、図示されていないが、上述したカバーの両端に送風機および吸塵装置をそれぞれ設ける代わりに、カバーの少なくとも一端にブロアバキュームと称される送風/吸塵装置を設け、送風と吸塵を切り替えるように構成することもできる。この送風/吸塵装置は、上述した送風機および吸塵装置をそれぞれ設けた場合と同様に、切断屑の除去並びにダイヤモンドワイヤーの冷却を行うが、ダイヤモンドワイヤーの切断作業位置に応じてより近距離の端部に向かって空気が流れるように方向を切り替えることができ、より効果的に切断屑の除去およびダイヤモンドワイヤーの冷却を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
上述した本発明の説明は、橋梁に係る免震ゴム支承の取替を目的として説明されたが、当業者にとって、マンション等の他の構造物に用いられる免震ゴム支承などに適合できることは容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0028】
1 主桁
2 橋台または橋脚
3 免震ゴム支承
31 上内部補強鋼板
32 下内部補強鋼板
33 内部取付ボルト
41 上鋼板
42 下鋼板
51 上沓
52 下沓
53 外部取付ボルト
6 滑り板
G ゴム膜
D ダイヤモンドワイヤー
N 新規免震ゴム支承
K 研材
S 送風装置
Q 吸塵装置
【手続補正書】
【提出日】2021-04-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震ゴム支承を、ワイヤーソーを用いて水平方向に切断する工程と、
前記免震ゴム支承を撤去する工程と、
新規免震ゴム支承を挿入する工程と
を含む、橋梁に用いられる免震ゴム支承の交換工法。
【請求項2】
前記免震ゴム支承を切断する工程において、
上内部補強鋼板と下内部補強鋼板を切断することを含む、
請求項1に記載の免震ゴム支承の交換工法。
【請求項3】
前記免震ゴム支承を撤去する工程において、
前記免震ゴム支承を切断する工程により形成された下内部補強鋼板の切断面間に滑り板を挿入することを含む、
請求項1または2に記載の免震ゴム支承の交換工法。
【請求項4】
前記免震ゴム支承を切断する工程おいて、
ワイヤーソーに取り付けられたダイヤモンドワイヤーに触れるように設置された研材によって前記ダイヤモンドワイヤーの付着物を除去することを含む、
請求項1~3のいずれかに記載の免震ゴム支承の交換工法。
【請求項5】
前記免震ゴム支承を切断する工程において、
前記ダイヤモンドワイヤーをカバーで覆い、
前記カバー内で前記免震ゴム支承を切断すると共に、
前記ダイヤモンドワイヤーの一端方向からカバー内に送風し、他端方向から吸塵する、または空気の流れ方向を切り替えることにより吸塵することを含む、
請求項1~4のいずれかに記載の免震ゴム支承の交換工法。